───冒険の書234/宝玉のある風景───
【ケース563:中井出博光/戒めの宝玉を捜しましょう】 ……お空が綺麗だった。 これでドラゴンさえ飛んでなけりゃあなぁと思うのは勝手ですか? ナギー『………』 中井出「………」 ナギーに膝枕される時間が続きます。 いやね、動けないんだよ。どうなってんのコレ。 中井出「フフフ……人体の神秘に人体がついてこれないとはおかしなものだ……」 いわゆる筋肉痛です。 体がてんで動きやしない。 無理すれば動くけど、メキミキと嫌な感触が体全体から感じられる。 骨とか筋とか思いっきり軋んでるってことでしょう。 寝転がってても腰や背中が痛いくらいだ。 やだなぁ……狂いし者に体を乗っ取られた後みたいで、いい気はしない。 心地いい疲労感とかならいいんだけど、これは間違い無く痛すぎって部類に入る。 なもんだから空を見上げるしかやるこがない。 いやしかしいい天気だ。 これで竜が飛んでなければ本当によかったんだが…… 声  「あ、居た居た。おーいこっちだ〜!提督見つけたぞ〜!」 ……どうやら空を見て和むのはここまでのようだ。 ウヌ、この声は田辺か。 もうレッドドラゴンは始末してきたってことか。 それは是非とも素材を頂かねば〜〜〜っ! あぁでも体痛い……。 田辺 「サー、ご機嫌うるわしゅう?」 中井出「全身が痛いである……」 丘野 「いったい何をすれば戦闘終了後も痛いでござる?」 中井出「う、うむ……人体の能力を極限まで引き出してみた故である……」 そう、体が限界を越えたから痛いんじゃない。 俺が引き出したのは、あくまで人の裡に眠る残り80%よ。 もちろん今まで上げたレベル分、その80%の上限も膨らんでたわけだけど。 しかし100%ヒューマンって凄いんだなぁ…… 柄を握る手こそが破裂しそうなくらいに力が篭ったよ。 そんなマックスマッスルコントロールの所為でこんな激痛味わってるんだけどさ。 中井出「ぬっ……ぐ、ぐおおお……!!《ビキッ!ミシッ!バキッ!!》」 岡田 「サ、サー?体から謎の効果音がなっているでありますが?」 中井出「だ、大事ない……《ミキッ!》ごめんなさい大事あります」 これは一大事である……動かすだけでもとても痛い。 でも根性で立ち上がることにした。 中井出「《メェエリキキキキキ……!!》ふんぎんがぁあーーーーっ!!!」 藤堂 「あ、ああっ!提督が!提督が立ったわ!」 中井出「どこのクララだよ俺!《ズキィーーーン!!》ギャアーーーーッ!!」 なんとか立ち上がってはみたものの、やっぱり痛い僕のボディ。 これってえーと……魂レベルで痛いってことでいいのかな。 ……魂レベルで筋肉痛って、物凄くアホらしい喩えなんですが。 中井出「あぁいだだだだ……!!そ、それで……どうだったのだ素晴らしい6人よ……」 岡田 「とりあえずこれをどうぞ」 中井出「お、おお?」  コシャンッ♪《炎竜素材を受け取った!》  コシャンッ♪《赤竜の竜宝玉を受け取った!》 中井出「マ、マア!いいのかい!?」 藍田 「イェッサー!俺達が持てるだけ剥いだのを提督用に集めたものですサー!」 清水 「今回の守護竜バトルは俺達にとっていい経験になりました。     やっぱ油断はいけませんですサー」 中井出「……やっぱ6人がかりでも大変だったか」 藤堂 「全滅しましたサー」 田辺 「全力でやったけど、最後の最後で気ィ抜いてしまいました、サー」 岡田 「お蔭で、その最後の最後にケシズミになったってわけですサー」 中井出「そうか……そりゃ大変だったようだな」 守護竜ってほんと半端無しに強いやつばっかりだからな……。 結局一度も死なずに倒せたのなんて少ないにも程がある。 つーか……あれ?今回のダークドラゴンだけだったりする? あ、ああいや、アースドラゴンも……だよね? スノードラゴンはどうだったっけな。思い出せん。 中井出「なんにせよである。貴様ら、戒めの炎宝玉は見つけたか?」 総員 『あ』 ……忘れてたようだ。 中井出「ウヌヌ、ならば仕方ない……闇宝玉も探さないといけないし、     ここはエィネを呼ぶべきだな」 ナギー『どうするのじゃ?』 中井出「まず使者を出すのだ。えーと……銀水晶よ!妖精界へのゲートを開きたまえ!」 銀水晶をスヴァーと掲げて高らかに叫ぶ! こう……なんていうのか、カッコイイ勇者さまのごとく! ……でもあんまかっこよくないねコレ。 普通にやればよかった。  シャァアヒィイイン……!! 総員 『シャーヒーン!?』 それでもゲートは開かれ、僕らはその効果音こそに一人の老騎士を思い浮かべていた。 中井出「では……あとはこのゲートを潜り、エィネを連れてくるのだ。     一方通行だから一人が入ったら戻ってこれない。     だが妖精界にエィネを連れ出し、もう一度俺がこちらからゲートを開けば……な?     その大役を───ナギー!貴様に任せる!───行ってくれるな?」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「うむいい返事だ!ではゆくのだナギー新兵!現在使用出来る唯一の転移方法で!」 バッと手を翳すと、それに合わせて走ってゲートに消えゆくナギー! それを確認してからナギーにtellを飛ばし、連絡を取り合った。 藍田 「へぇえ……さすが提督、狡賢いことには頭が回りますな」 中井出「ククク、これが悪魔の底力よ」 丘野 「悪魔は関係ないでござるがね」 中井出「ところで……結局なんにも出来なかったトレジャーさんがた」 俊也 「いや……もう忘れてていいからほっといてくれ……」 佐知子「そうそう、役に立てそうにないって思った時点で、     遺跡漁りに専念させてもらってたんだから」 夏純 「……《こくこく》」 中井出「なんだって!?ずるいぞ!     僕らが戦っている間にアイテムを横取りしたのだな!?」 佐知子「ま、ま、ま、落ち着きなさいって。     腹立たしいことに、ほんとトラップばっかりでな〜んにもなかったんだから」 総員 『うわぁ……』 衝撃的事実だ……普通少しは宝くらい置いてあるもんだろうに。 もしかして原中対策ですかイセリアさん。 俊也 「ダークドラゴンが遺跡から出たお蔭かどうか解らないけどさ、     遺跡内部の闇が完全に無くなったんだ。だから松明で十分進めたし、     中心にデカい穴が空いてるお蔭で動きやすかったんだけど……     本当に、な〜んも、モノの見事になかった」 じゃあここにはほんと、守護竜しか居なかった、と……。 なんて嫌な遺跡だ。 俊也 「まあ、こうまであからさまに露出した遺跡だ。     誰が潜って宝を盗っていっても文句は言えないだろ」 そうなんだが……なにやら悔しいっていうのが現状。 そんな悲しみを胸に、痛む体を庇いながらもう一度空を見上げて思う。 ……来る時、空って暗くなかったっけ? 中井出「そういやさ、ここって常闇の領域じゃなかったっけ。     なんでこんなに明るいの?今さらだけど」 遥一郎「それについては簡単だろ」 中井出「おやホギー」 物凄くだるそうなホギーが現れた!! その横には相当疲れていそうなシードも。 でも話の続きが気になったので、特に声はかけないでおいた。 中井出「簡単って、なに?」 遥一郎「お前が自爆して遺跡を破壊したのは、     あいつが体質変化使って完全実体化した後だろ。     つまり常闇の領域の闇の全ては、あいつの体の一部だったってことさ」 中井出「ゲッ……うへぇ……想像しただけで気持ち悪いな……。     じゃあなに?天候さえ覆っちまうほどの竜に、俺達勝てたの?」 遥一郎「自分のレーザーで死んだんだから、自爆みたいなものだけど」 それ考えるとアホみたいなヤツだった。 ああいや……実際結構アホだったかも。 中井出「じゃあ常闇の領域を歩いた人の肺には闇の欠片がた〜っぷりと……!     そしてそれが固まった時、肺からダークドラゴンベビーが……!」 遥一郎「こっ……怖いこと言わないでくれ……想像するだけで嫌だ」 うん、自分で言っといて寒気がしたし。 ……っと、ナギーから連絡が通った。 中井出「ナギー、OKか?」 声  『OKなのじゃ。いつでもよいぞ』 中井出「よし。じゃあ───銀水晶よ!開け……なんで開けゴマなんだろね?     まあいいやゲートオープン!」 銀水晶を掲げてレッツオープンザゲート! シャーヒーンという音を出して虚空に出現する縦長の穴が、 妖精界の草原を僕らに見せ付けた時、 即座にそこからシュバッと飛んできたのはナギーとエィネ。 もちろんナギーは妖精の姿をしていて、出てくると同時に元の姿に戻ったが。 エィネ『ヒ〜ロミ〜ツさんっ♪』 中井出「やってみろ。その瞬間、僕の丸太のような足がキミを潰す」 エィネ『なにを物騒なこと言ってるんですか!まだなにも言ってませんですよ!』 中井出「ウソだ!言われなくたって解るさ!どうせ僕を殴ろうっていうんだろ!?     こんな時ばっかり呼び出しやがってぇえって!」 エィネ『文句だけなら言いますけど、呼んでくれたことに対しての文句はありませんよ』 あれ?そうなの? 出てきて早々にヒロミツさん、だなんて言うもんだからまた殴られるかと……。 エィネ『なんのかんのでわたしに出来ることはこれくらいですから。     元々そのためにヒロミツさんとの旅に同行した筈なのに、     置いていかれたりしましたからね……。     でもそれももういいです、水に流しましょう』 中井出「お湯で流してください」 エィネ『無茶言わないでください』 藍田 「よくもまあこの状況でそんな言葉がポンポン出るよな」 中井出「頭に浮かんだことを口にする勇気……貴方にはありますか?」 僕にはある。 勇気と呼ぶには相応しくない思考回路でごめんなさいだけど。 エィネ『では早速。え〜…………下ですね』 遥一郎「下か?……地面だな」 俊也 「遺跡の中ってことじゃないか?けどそれっぽいのなんてなかったけどな」 中井出「ちゃんと探したのか?壁をノックしてみて音が違うところを破壊してみたりして」 俊也 「きっ……貴重な文化遺産にそんなことするかぁ!!」 中井出「馬鹿野郎!あるだけでなんの足しにもならん遺産なぞより、     あって役立つ宝だろうか馬鹿かてめぇこの馬鹿!!馬鹿!!」 俊也 「そこまで馬鹿馬鹿言うことないだろ!     トレジャーハンターは宝もそりゃ大事だけど、遺跡だって大事にするんだよ!」 中井出「そうか。俺は容赦なく破壊するが。……トレジャーハンターじゃねーからな!!」 総員 『まさに外道!!』 遥一郎「仮にトレジャーハンターだったとしても、     トレジャーハンターは宝さえハントできればそれでいいんだよとか言って、     遺跡をこれでもかってくらい破壊しまくる気もするけど」 藍田 「当たり前だろうが!ここにおわすお方をどなたと心得る!」 遥一郎「エロマニア」 総員 『その通りだ』 中井出「ブッコロがすぞてめぇら!!」 総員 『………』 中井出「あ、あれ?ちょっ……な、なんでみんなして僕を囲むの?     やめっ……突付かないで突付かないで!今体が筋肉痛でっ……!!     痛い痛い痛い!!やめてぇえええ!!引っ張らないで押さないで!!     動くだけで痛いのにそんなっ……ヴァーーーーッ!!!」 ───……。 ……。 中井出「うぐっ……ひっく……うえぇえ……」 丘野 「というわけで……」 岡田 「泣いてしまった」 遥一郎「強いのか弱いのかどっちなんだよ本当に……」 中井出「魔王だって人の子なんだよ!なんだよみんなして!     逆の立場だったら泣いてたのはお前なんだぞー!?     て、提督だぞー!?ばかにすんなー!!」 遥一郎「馬鹿にっていうか……哀れだ」 中井出「……普通にひどいねお前」 そもそもこんなことしてる暇があったらさっさと宝玉を捜すべきだと思うんだが。 ショック療法と言っていいのか、体の痛みも治まったし。 中井出「よし、じゃあエィネサーン、ワタシと一緒に宝玉をアレ居ねぇ!!」 遥一郎「エィネならお前が集団イジメ受けてる間に、     トレジャーハンターたちと遺跡に潜っていったぞ?」 中井出「なんとな!?もし宝があったらどうするんだ!」 遥一郎「や、なかったって言ってただろ?」 中井出「俺だったら全部手に入れた上で平気でそう言うが?」 遥一郎「それはまさしくお前だったらだ、安心しろ」 中井出「…………」 物凄い理解のされ方してるんだなぁ俺って……。 今の一言で、俺の人となりが理解出来たような気さえしたよ……。 そうやって悲しみに暮れていた時、 巨大な穴からヒョコリと出てきたのはトッスィー率いるトレハンメンバーども。 その手には……オオ、戒めの宝玉が! 中井出「宝は!?宝はどうだったの!?ねぇ!」 俊也 「宝玉のことをまず訊けよ!……や、一応あったけど───」 中井出「殺して奪う」 俊也 「なにをする貴様ーーーッ!!」 遥一郎「トラクタービーム」 中井出「《ミョイイィイ……!》あわっ!?うおっ!?     な、なななナニコレナニコレアレレー!?《ドグシャアッ!》ニーチェ!!」 武器を手に駆け出そうとした僕は何故か宙に浮き、地面に叩きつけられた。 ぬ、ぬうこれは……トラクタービーム……! 一部のテイルズシリーズで使われていた反重力魔法だ……! 俊也 「襲い掛かる前に最後まで聞いてくれよ……!     宝はあったにはあったけど、金が1000$あっただけなんだよ!」 中井出「くれ」 俊也 「やるかっ!……代わりにこれ渡すから、勘弁してくれ」 中井出「ぬ?お、おお」  ガシャガシャチンッ♪《クエスト報酬金額2000$を受け取った!》  コシャンッ♪《戒めの闇宝玉を受け取った!》  中井出「……代わりって割には2000$なんだな」 俊也 「出さなきゃいけない金額だからいいんだ。あと、これな」 コサッとさらに手の上に置かれたのは……よく解らん物体だった。 なんだこれ。 俊也 「よく解らないけど、嫌な予感がするからあんたに」 中井出「うわー、すげぇ言い方」 俺は厄介物収集者ですか? でも貰えるもんは貰っておこう。 ……なになに?  ◆骨粉───こっぷん  巨大生物の骨粉。恐らくは竜族の骨が粉化したもの。  小さな袋に入っているため、一見いけないクスリに見えなくもない。  どんな効果があるかなんて解らないが、どうやら力ある生物の骨粉だったらしく、  謎の宝玉と合わせて持っているだけで竜族に狙われやすくなる。  どうやら竜族に関係のある生物のものかと思われるが……?  *固有能力:竜族を招く ───……アレ? なにやらとても興味深淵な文字が……。 中井出(謎の宝玉って───これだよな) ゴソゴソとバックパックを漁って、昨夜村からかっぱらった宝玉を取りだす。 それは怪しい輝きを秘めていて、 喩えるなら……そう、竜宝玉にとても似ているものだった。 でも竜宝玉っていったら守護竜が体内精製するもので……アレ? ちょっと待て、ものすご〜く嫌な予感、じゃないな、確信めいたものが僕の中に……。 とするなら、ダークドラゴンが真っ先に俺を狙った理由が解る気が……。 中井出「なんつーかさ、俺ってこの世界じゃゆっくりしてられない気がする」 丘野 「それは提督殿がこの世界で少しずつ重ねてきたことの集大成でござるよ」 中井出「いらないよそんな集大成!つーか一言で理解される俺の集大成ってなに!?     厄介ごとばっか押し付けられるこっちの身にもなってよ!」 藍田 「ちなみに今回の厄介ごとは?」 中井出「……や、や〜……なんか僕、     これから竜族に狙われまくるハメになったみたいで───あ、あれ?     ちょっ……待ってよ!なんで急に距離取るの!?     ……え?飛竜たちがハゲワシの如く宙に集まってきてる理由はそれか?     うわぁほんとだ集まってきてる!なにあの数!     いやでもそれは解ったけどどうしてみんな僕から距離取るの!?     ……巻き込まれるのは嫌だから?そんなストレートな理由で!?     待ってよ!こればっかりは僕の所為じゃないでしょ!?     いいよもう返すよこれ!トッスィー!?あれトッスィー!?     何処に行ったの!?ねぇ!これ返───待ってぇええっ!!     みんなして逃げていかないでぇえっ!!僕だけ独りなんてヤだぁあーーーっ!!     ヤ───ヒィ!竜族どもが降下して……!いででいだいだギャアアアア……!!!     や、やめろよぉお!!僕なんにも悪いことしてないじゃ───ヴァーーーッ!!」 ───……。 ……。 シュゥウウウ…… 中井出「うぐっ……ひっく……うぇええ……」 総員 『それでどうして勝てるかな……』 中井出「真っ先に見捨てて逃げたヤツらに言われたくないやい!!     し、死ぬとこだったんだぞーーっ!!?飛竜だのドラゴンだのに襲われて……!     もうたくさん!実家に帰らせていただきます!     騙されたと思ってって言われてきたのに本当に騙されるなんて思わなかったわ!」 田辺 「どこの苦労人主婦の言葉だそれは」 中井出「なんか昔コミックバンチあたりで見たような見てないような」 いいながら、みるみる塞がってゆく傷を見て一息。 はぁ〜あ……また体が痛み出したよちくしょう……。 藍田 「つーか提督、普通に強かったな……何事?あれ」 中井出「人体能力解放法……らしいけど。     人の中に眠る残り80%を自在に操る人間の奥義さ!     なんでも人であり、地界の回路だけを持つ者にしか解放できないらしい」 丘野 「おおっ!それは興味深いでござるな!」 田辺 「それであれだけの数の竜族屠ったのかよ……。     人って案外すげぇのな……提督見てれば解るけど」 中井出「あの……それって褒めてるんだよね?」 なにやら含みがあるように聞こえてならないのは、僕の耳が荒んでいるからですか? 中井出「ククク……だが今のはほんの40%といったところ……。     100%を引き出せばこの程度では済まないぜ……?(俺が)」 岡田 「おお……!男として産まれたからには一度は言ってみたいセリフだ……!」 田辺 「なのにその提督自身がボロボロってところがまた、提督らしいっつーか……」 総員 『つくづく格好つかねぇヤツだよな、お前……』 中井出「ほっといてよもう!!一斉に言うことないでしょ!?なんだよもう!」 でもほんと、本来の20%に20%プラスしただけの40%。 それでもこの痛みなのだ。 100%引き出したらさっきみたいに動けなくなるのも無理はない。 言ってみれば40%を引き出したんじゃなく、40%しか引き出せなかっただけだし。 100%の後遺症はそれほど重いということだろう。 引き出せてたならいつでも全力。それが僕のモットーです。 けどまあ面白いかったからよし。 中井出「よ、よ〜し!あとは戒めの炎宝玉だぜ〜〜〜っ!」 遥一郎「そうだな。でも20m以上近づかないでくれ」 中井出「なんで!?なにこのいきなりな中傷!」 ホギーの言葉に大驚愕! でも改めてみんなを見てみると、みんな僕から距離を取ったままだったりしました。 なにこの円の動き!まるで僕を包囲する警備員のような……! しかも僕が動くたびに、その円までもが同じように動く! な、なんと完成された包囲網よ……!じゃなくて! 岡田 「や〜〜……だって提督って竜族に狙われてるんだろ?」 田辺 「竜族ってたまに戦うのならいいけど、頻繁に襲われるのも……」 藤堂 「なぁ……?」 中井出「は、薄情者!僕ら素晴らしき7人だろ!?     その一人にこんな素晴らしくない扱いを……っ!ひどい!なんてひどい!」 総員 『誰だって自分が一番可愛いのさ……アンタだってそうだろ?』 中井出「そこでトルネコさんはやめなさい!!     ああもう最近それを言えてない自分がどれだけ追い込まれた状況にあるのか理解で     きるよ今なら!!でも言われてばっかりなのってとても悔しいですね!     だから───…………あ、彰利ー?うん僕博光。うん、うん……そうそう。     実は今僕の手元に戒めの闇宝玉があってね?うん、うん。     そう、コレを壊せばキミも精霊武具を手に入れられるってわけよ。     おお、その通りだとも。───え?壊せ?ホホホやだ」 藍田 「うわぁこの大勢の前で堂々とウサ晴らししてる!!」 丘野 「すげぇや!さっすが天下の中井出さんだ!」 岡田 「自分からtell飛ばしといて、やだってキッパリ言ったぞ!」 藤堂 「なんのためにかけたんだこの人!」 田辺 「憂さ晴らし以外のなんの目的もねぇんだきっと!すげぇ!普通に外道だ!」 中井出「壊してほしくば今すぐ指定の口座に指定する金を振り込め……!     おっとポリスには言うんじゃあねぇぜ?言ったら貴様の奥さんに……!」 声  『え?夜華さん?夜華さんなら近くに居るぜ!?     残念だが夜華さんになにかするっていう脅迫なら───』 中井出「奥さんにあることないこと吹聴する」 声  『卑怯だぞてめぇ!!や、やめれ!それだけはやめれ!     夜華さんったら一度誤解すると長ェんだから!!』 中井出「グウェッフェッフェッフェ……!それは貴様の心尽くし次第だなぁ……!!」 遥一郎「こ……こいつ……!」 総員 『クズだ……!』 中井出「よってたかって一人をイジメる貴様らに言われたくないよ!!」 でも少しだけ心が暖かくなりました。 ナイス外道。 中井出「ハハハ、ウソウソ。宝玉なら壊してあげるようん。だが一つだけ頼みがあるんだ。     それを聞いて、叶えてくれたらいいよ」 声  『しっかりと叶えてくれたら、まで言いやがったね……。     聞くだけにしようと思ったのに』 中井出「うむ。俺だったらそうしてた。だが俺だからこそそう返した。     まあ頼みっていうのは他でもないんだが……」 声  『あぁん!?なんね!さっさとせんね、このだらずが!』 中井出「死んでください白骨化して」 声  『なんてストレートな!!しかも白骨化限定で!?     あ、あのー、せめて黒骨化にまかりませんか?』 声  『そういう問題じゃないだろ!!』 おやこの声は晦。 やっぱ近くに居たのか。 声  『あ、あー……提督か?今いろいろと立て込んでるからまた今度にしてくれないか?     こいつ、隙があるとすぐに修行をサボるから、集中させないとダメなんだ』 中井出「ああうん、ただちょっと話したかっただけだからいいけど」 声  『キミなに!?ちょっとした話で人に白骨死体になれって言うの!?     どんなちょっとした話なのそれ!!』 中井出「あ、キャッチホンだ。切るぞ彰利」 声  『ああっ、待ちたまえ!!』 ブツッ……───悪は去った。 どっちかって言うと悪は俺だけどね。 中井出「ふう……ざわついた心がとても落ち着いた……!」 総員 『うわぁすげぇいい顔!!』 中井出「まあまあ。ところでトッスィーは?」 岡田 「次の用事があるからと。     提督にモノ渡してから少ししてすぐに走っていきました!サー!」 ああなるほど……道理で姿が見えないと……。 ……そうだな、俺達もとっとと行動に移ろう。 中井出「ではこれより!レッドドラゴンの領域であるフレイムマウンテンに……行く前に。     猫の里に戻って武器を鍛えるものとする!!」 藍田 「さすがですサー!」 丘野 「ここで直行するとか言っていたら戸惑っていたところであります!サー!」 中井出「バカモーン!発言する時は挙手を忘れるでないわ!!」 総員 『失礼しましたサー!!』 岡田 「サー!発言許可を願います!」 中井出「うむ!なんだ岡田二等!」 岡田 「闇宝玉はまだ破壊しないのでありますか!?」 中井出「うむ!どうせならいっぺんに破壊しようと思う!     そのための準備期間が武器を鍛える時間だと思え!」 藍田 「サー!発言許可を!」 中井出「ぬう!何事だ藍田二等!」 藍田 「サンキューサー!───ちと話が見えないのでありますが!?」 中井出「うむ!実はこの博光は全ての然までの戒めを解放した時点で、     究極的に暴走することが予想される!     その討伐を貴様ら、及び名誉ブリタニア人どもに任せたい!」 藍田 「暴走でありますか!?」 岡田 「い、いったい何故でありますか!?」 中井出「うむ!それは秘密だ!何故ならば───その方が面白いからだ!!」 藍田 「サーイェッサー!!ならば深くは訊かないであります!」 岡田 「面白いのならなにも文句はありません!サー!!」 清水 「………」 素晴らしき皆様とナギーとシードが敬礼する中で、 清水くんだけがとても微妙な顔をしていた。 だからそんな彼に話してはならぬとアイコンタクト。 これで了。 暴走とはどんな状態になるのか、まだハッキリとは解らんけど…… バルバトスになるんだったら散々と引っ掻き回したいし。 中井出「ではGO!!」 遥一郎「いや……ゲート作ったほうが早くないか?」 中井出「キミってほんと勢い殺すの巧いよね……」 遥一郎「提案しただけでどうしてそこまで絶望的に言われなきゃならない……。     じゃあえっと、エィネ。頼んでいいか?」 エィネ『お任せです。博光さんの銀水晶では一人ずつしか通れませんからね』 なんだか最近みんなが冷たい……こんにちは、中井出博光です。 なんのかんのと騒ぎながらもわくわくさんを胸に僕らはゲートをくぐった。 散々暴れたから、色濃い自然を探すのに手間取ったけど、とにかくくぐった。 そうして戻った先で猫に散々と武具を鍛えてもらい─── その鍛えてもらっている間にフレイムマウンテンへGO! ───……。 ザムゥ〜〜ッ。 中井出「こ、ここが陽気煌くフレイムマウンテンか〜〜〜っ」 ナギー『どおれ今日はひと暴れしてやるとするか〜〜〜っ』 エィネ『普通に感想を述べられないんですか……』 やってきたのは俺とナギーとエィネ。 他のやつらは口々に暑いのやだぁとかぬかしおって……でもうん解るかも。早くも暑い。 いや、熱い。既に暑いじゃ済まされなくなってる。 自然のパワーで卵がゆで先生になってしまうくらいの熱さ……は言いすぎか? でもそう喩えたくなるくらい熱い。 なにせ既にクーラードリンクを飲んだあとだというのにこんなにも熱いのだ。 うう、今なら蜃気楼が見える気がする……。 そんな場所にクサナギでズギャッと飛んで来た僕らは、 とてもホットな生き様をさらしていた。夏場にこれはキツイぜトニー。 中井出「さぁてとぉ……エィネ、宝玉どこ……?」 エィネ『ちょ、ちょっと待ってください……頭がぼ〜っとして……』 中井出「なにぃそれはいかん……でもごめんよ、     武具も持たずに村人の服一丁の僕には、     本気と書いてマジと読むほどに出来ることがなにもない」 ナギー『ほんに武具が無ければ少し強い程度の村人なのじゃな……』 中井出「へへっ……だから言ったろ?」 ニコリと笑いながら穴の頭をグイッと親指でこすって見せた。 その際、親指を立てるようにするのを忘れない。 これぞ熱血少年が時折やるポーズ。 威張ることじゃないけどね。 中井出「だがマグニファイなどの能力は未だ健在よ。     武器さえあれば能力引き出せるぞ?     体術なら界王拳も出来るし、千歩氣攻拳も放てるし……なんだ、     格闘に走れば僕も少しは戦えるじゃないか」 ナギー『それでも外道の限りを尽くすのじゃな?』 中井出「そうそう!目潰ししたり砂かけしたり不意打ちしたり!     そしてそれから………………     然の精霊にここまで理解されてる俺の外道っぷりってどうなんだろう……」 エィネ『今さらなに言ってるんですか……』 中井出「ああ、うん……今さらなんだ……」 手遅れ感満載の響きですね、エィネさん。 でもいいんだ、こうでなくちゃ面白くない。 初対面時のナギーの堅苦しさといったらなかったもの。 でも見るもの全てきゃいきゃい騒いでたナギーを懐かしいと思うのも事実で…… ちょっぴり残念だと思う僕も心の中に存在していた。 エィネ『あ、ああ……えと……この先です……。     頂上ではなくて……側面のでっぱりの下から反応が……』 中井出「や……貴様本当に大丈夫?かなりくらくらしてるようだが」 エィネ『へのつっぱりはいらんのです……』 重症のようだった。 仕方なしに俺はエィネをやさしくキャッチングすると、 月光竜の卵同様に我が服の中に便利に収納した。 するとそれを見て目を輝かせるナギー!! 中井出「ちょっ……なにその目!無理だよ!入るわけないでしょナギーが!!」 ナギー『やる前から無理と決めるのはよくないことであろ!』 中井出「やらなくても解るよ!破けちゃうよ僕の村人の服が!     だめだよ!これ僕の一張羅なんだから!」 ナギー『……どうやって手に入れたのじゃ?』 中井出「かっぱらった!」《どーーーん!!》 ナギー『胸を張って言うことでもないであろ!     ……む、むー……!ではヒロミツ、わしを背負うのじゃ』 中井出「どりゃーーーっ!一本背負いーーーっ!!」  ガシドゴォオンッ!! ナギー『ふぎゃうっ!?』 中井出「じゃあ行こう」 見事な一本だった! ソノダもきっと認めるほどの背負いだった! だからと、僕は光の漏れる出口へと勇ましく歩いてゆく勇者のように歩きだした……! 立ち止まれない……俺達の戦いは───始まったばかりなのだから! ナギー『い、いきなりなにをするかぁっ!!』 中井出「し、知らんのかナギー!今のは一本背負いといって、背負いの高等技術なのだぞ!     ナギーが背負ってほしいと言うから心を邪鬼にして背負ったというのに!」 ナギー『普通に背負えばよかろ!高等技術なぞいらんのじゃ!』 中井出「グ、グゥム……だが断る。この熱いのにオンヴなどしたらさらに熱いじゃないか。     大体貴様、この博光に甘えすぎな己を治すのではなかったのか?」 ナギー『そんな昔のことは忘れたの』 中井出「ぬう、ナイス性格だナギー」 ……まあいいか、闇竜バトルが終わったら思い切り甘やかしてやろうって決めてたし。 そんなわけだからナギーの前に屈むと、オンヴお決まりのポーズでナギーを待った。 中井出「セットイン!」 ナギー『ラジャービュー!!』 でも当然と言うべきなのか、我らのオンヴが普通に行われる筈もなく。 変形合体するロボのごとく無意味に時間をかけ、 飛び回ったり走り回ったりしたのちにようやくオンヴを完了する……! 中井出「………」《ぜぇぜぇぜぇぜぇ……》 ナギー『………』《はぁはぁはぁはぁ……》 気づけば二人とも汗だくだったのは言うまでもなかった。 疲れはしないんだけど……ほら……ね?熱さにやられてるというか……。 Next Menu back