───冒険の書236/家賃なしの住居を探そう───
【ケース565:弦月彰利/ハリー・ポッターと……部屋】 ……。 彰利 「べつにさ、秘密じゃなくてもよかったと思うんだ」 悠介 「解るように言ってくれ。ていうかなんの前振りもなくなんだいきなり」 YO僕彰利! 今日はSO……ここ、元盗賊団洞窟本部にして現獣人勢力本部洞窟よりお送りします! 彰利 「キャリーポッターだよキャリーポッター。あの人気のあった小説の。     大体よー……秘密なんてものはよォ悠介?     いつかバレちまうものなんじゃあ〜〜〜ねぇの〜?なぁ?     それを秘密がどうとか言うのってよォオ……ほら、どうなんだ?」 悠介 「……それは解ったけど、なんだって面倒な言い回ししてるんだお前は」 彰利 「JOJOっぽく語ってみたいナーと。     ちなみにキャリーポッターの話は心底どうでもいい」 しかしだ。 部屋に関係した問題が俺達にあるのは確かなのヨネー。 何故ってホレ、無駄に人数多くなっちゃったから、もうこの洞窟じゃ過ごし辛いのよ。 だからどこぞにある遺跡でもなんでもちょっぱって過ごすのはどうかな?って。 その旨を語りたかったのアタイ。もっと愛を込めて。 彰利 「もっと別のさ、深い洞窟か広い建物探さん?     勧誘のお蔭で結構な数の人々が仲間になってくれたし、     こうなったらもうワールドデビューするっきゃねぇっしょ」 悠介 「って言われてもな。俺もこの後、ワールドデビューするために     モンスターユニオン復興しなくちゃいけないくてだな」」 彰利 「いいじゃない!復興するまでは一緒にいろいろやってこーよ!     広くてステキな建物!そんな場所にアタイは住みたい!     候補としては〜……あ、あそこなんかどげんね?なんつったっけ?     ホレ、前にミストドラゴンが巣ゥ作ってたっつー場所の近くにある───」 悠介 「常霧の町ガランディアか。確かにあそこにはもう誰も居ないだろうけど」 彰利 「オウヨ。それかセントールとかランダークを立て直して住むのもアリかと。     つーかキミどうなん?竜回路解放してから体調とかは」 悠介 「ん、平気だ。木村に感謝だな、驚くくらいあっさり儀式執り行ってくれたし」 うん、アタイもびっくり超びっくり。 元提督軍のムッチーのことだから、いろいろ条件つけてくるかと思ったのに。 ただ法王ジョブに必要なアイテム手に入れたらちょうだい、ってだけだった。 別に隠しジョブにゃあ興味ないから即断オッケーの悠介だったけども…… 彰利 「それはなにより。で、住居だけど」 悠介 「確かに、どこか考えておかないと困るな。     俺だってモンスターを落ち着かせられる場所が欲しいのは確かだ。     ……待てよ?あの湖の先の水の神殿は……ってダメだな、村が近すぎる」 彰利 「ウィ?なんじゃ?」 悠介 「なんでもない」 ……?まあいいコテ。 ともかく住居だ、それをなんとかしなけりゃ獣人勢力ですよーって大手を振れない。 どっかないかな、広くて住み心地よくて、快適で修行とかも出来る───……あ。 彰利 「……ひとつだけあった、最適な物件」 悠介 「?……なんだそれ。最適……?」 彰利 「オウヨ!浮遊城だよ浮遊城!     天空城と呼んだらラピュタを思い出さずにはいられねーあそこ!     あそこならキッチンもあるし修行場もベッドもある!     使い慣れとるし、住みやすいし!よくなくなぁ〜〜〜い?」 悠介 「あ……確かにいいなっ!あそこを拠点に出来れば相当どっしりと構えられるな!」 彰利 「OKノッテきましたね親友!ほいじゃあ早速!」 悠介 「ってちょっと待った!───……どうやって行くんだ?」 彰利 「あ〜〜〜ん?そげなもん転移でウギャアと……ってしまった、使えないんだった」 悠介 「それ以前にそのウギャアって擬音はなんなんだ、     どう聞いても転移する音じゃないだろ」 彰利 「ノーズフェンシングドリルをくらったウォーズマンの気持ちになってみました」 悠介 「……話進めようか」 彰利 「………」 静かに無視された。 彰利 「ほいじゃあマイケルジジーソンに掛け合ってみるってのは?」 悠介 「獣人の住処にするからくださいってか?無茶にもほどがあるだろ」 彰利 「グ、グウ……じゃあ空を飛ぶ?」 悠介 「ワイバーンがごっちゃりと居るが」 彰利 「グムムー……いきなりハードルが高ぇなオイ……あ、だったらさ。     妖精に掛け合ってゲート開いてもらうのは?」 悠介 「敵勢力の俺達に協力してくれるとは思えないだろ……」 彰利 「……ギャアもう!だったらどうすんのよてめぇダーリンこの野郎!!     言ってごらんなさいよ!なにか案があるのなら今すぐ言ってごらんなさいよぉ!」 悠介 「男なら正面突破!」 彰利 「ギャアなんかいきなりクライマックスの予感!     空飛ぶ案を却下したくせになんてヒドイ!」 悠介 「俺達も提督のお蔭でまあまあレベル上がってるしな。     梃子摺るかもしれないけど、負けることはそうそうないと思う。     だから、もう正面突破でいいだろ」 彰利 「グウウ〜〜〜ッ、わ、解った〜〜〜っ」 はい決定! 住居変更……場所は意地でも天空城! あそこを根城に、アタイたちはこの乱世を生き延びるのだ! さあ楽しくなってきやがった! 中井出どもがあの浮遊要塞なら、アタイたちは天空城だ! ……なんて考えはうっちゃっといてもいいのです、この際広い住居が欲しい。 だってここ、夜になるとすげぇ湿っぽいんだもん。 世が世ならナメクジごっちゃりハウスだよ絶対。 ───……。 シュゴォオオオオオオオッ!!!! 彰利 『イィイイイイイイッハァアーーーーッ!!!』 悠介 『天空城がある方向はこっちでよかったのかー!?』 彰利 『オウヨ!?オウヨオウヨー!───オウヨ!!』 中空を飛翔する! それぞれが死神、神状態となってごしゃーと! でもあれおかしーな。 悠介 『……なぁ彰利?おかしいと思わないか?』 彰利 『おかしくてもいい!このままゴーレッツゴー!!』 悠介 『け、けどなぁ!あれだけ居た竜族がてんで居ないって……!』 彰利 『ややこしーことなんてどうでもヨロシ!我らの願いは一つ!     天空城に辿り着いてそこを根城にすることのみよ!』 でもやっぱり不思議。 あれだけ鬱陶しく飛んでた竜族どもが居なくなってる。 もしやデスゲイズに一掃された? ……にしては随分速かったような……昼まではまだごっちゃりだった筈なのに。 悠介 『───!?あ、彰利!あそこ!あっちの空見てみろ!』 彰利 『ホワイ!?───ぬおっ!?』 遠くの空で巨大な影が蠢いていた。 その影の大きさは異常ともとれる大きさ……まさかデスゲイズ!? ……や、違う、ありゃ……竜の大群だ。 悠介 『なんだありゃ……彰利、見に行ってみるか?』 彰利 『オウヨなんだかめっちゃ気になる!襲い掛かってきたら返り討ちよ!』 ならばこそGO! オイラは天へと昇る飛翔を横へ傾け、悠介とともにゴシャーと蠢く影へと飛んでいった。 蠢いては爆発し、爆発しては蠢き続ける謎の影…… 謎っつーか竜であることは間違いねぇけどウヒャア賑やかそうじゃぜ!? 巻き込まれないかむしろ心配ですぜあたしゃあ。 自分で突っ込もうとしといて言ってりゃ世話ないけどね。 ───……。 そうして近づいた蠢く影の側。 ま、間近で見るとさらなる迫力があるぜ〜〜〜っ! でもやっぱおかしい。 空のあちらこちらを飛んでいた竜族が、どうして今だけこんな虚空に固まってるのか─── 悠介 『……気づいたか?彰利。竜達の真ん中で誰かが戦ってる……』 彰利 『OH?───うおマジだ!     こんな数の竜族とやりあうなんて命惜しくねぇのか!?───って』 ……待たれよ。 いまやこの世界でまともに竜族とやりあうバッキャローマンなぞ限られてる。 その中で空飛んだり爆裂したりするヤツっつーたら…… 彰利 『な、中井出だ!中井出に違いねー!』 悠介 『提督!?いやいや待て!いくら提督でもここまでの無謀はしないだろ!』 彰利 『それが面白さに繋がっているならヤツはなんでもやるって!     中井出って存在を甘く見るな!』 悠介 『たまには甘く見てやれよ!NPCかなにかだって!』 彰利 『じゃ、無視して行く?NPCならほっといてもどうってことないし』 悠介 『NPCだから助けようって思ったりしないのかよお前は……!     恩を売ればなにか褒賞があるかもしれないだろうが……』 彰利 『OK最高だ!ならば今すぐ恩を売ろう!』 そんでビッグな小遣いを───オォオッ!!?  ドンガガガガガバゴゴガォオオオンッ!!!! 彰利&悠介『ウッヒョオオオーーーーーーッ!!!?』 竜族の塊が吹き飛んだ!! その隙間もすぐに竜によって埋め尽くされるが─── その少しの瞬間に見えたNPCの姿は、凶々しい甲冑に身を包んだ謎の存在だった。 悠介 『───!?ジュノーン!?』 そう。その姿を喩えるならば、不死王ジュノーン。 暗黒を煮詰めたような風貌と、死を連想させる強さ。 彰利 『逃げんべ』 悠介 『いきなりだなおいっ!まだジュノーンって決まったわけじゃないだろ!』 彰利 『仕方ねーべや!俺あいつとはまだ関わりたくねぇし!     いいから上行くべ!貴様が行かんのなら俺が先に行くかんな!』 悠介 『あっ!待てこらっ!───ああもう!』 誰だか知らんがさようなら! 恨むならそげな装備で戦ってた自分を恨みなさい! ほんとにジュノーンだったならザマーミロ!  ドガァンドガバゴドゴォンガバァンゴバァンッ!!! 彰利 『ヒョオオ〜〜〜ッ!!?』 なんて思ってる間にも竜どもが大地へと落とされてゆく……! 何者か知らんけどマジで強いですよあいつ! なんで竜たちに集中攻撃受けてんのか知らねーけど! 悠介 『お、おい彰利!あいつ素手で竜族吹き飛ばしまくってるぞ!』 彰利 『なんと!?』 素手!?素手とおっしゃいましたか今! 竜族を素手!?すげぇ!……つーかそれってもうジュノーンなんじゃないの? でもいっちょツラでも見てみてぇ気も───って、あ。 謎の武装マン『ギャアアアしつけぇえええっ!!!ななななんなんだ貴様らぁあっ!!        なんの目的があってこの僕をギャアアアアアアッ!!!!        やめてやめてもうやめてぇええっ!!助けてぇえええええっ!!!!』 …………中井出だった。 悠介 『……じゃ、行くか』 彰利 『そうね』 悠介 『ほんとそう』 強いなぁとか思ってたら相当いっぱいいっぱいだった彼がそこに居た。 それで十分じゃねぇの……!僕らは十分確認したじゃないかッツ!! そんなわけだからあっさりと無視することにした俺達は、 天空城目掛けて一直線に飛んでいったのでした。 ……。 ヒュゥウォオオ………… 彰利 「……うへ〜、この前の賑やかさとはまるで真逆な静けさだな」 悠介 「人ッ子一人居ないな……」 天空城は酷く静かだった。 ザウスどももマイケルジジーソンの中に取り込まれているのか、 もうここには居ないようだ。 管理する者が居なくなった建物なんて、いくら趣があっても寂しいだけなのだ。 それを、俺達はずっと昔に孤独という答えとともに現実から教わった。 彰利 「んむ、これはこれでやりやすいやね。     ほいじゃあここを獣人勢力の拠点とさせてもらうぜ〜〜〜っ」 ───。 OK!文句言うやつ一人も無し! 居たとしても力業でいただくつもりじゃったけどね? 彰利 「ムヒョヒョヒョ、これだけの設備だ、きっと無重力転移装置とかあるに違いねぇ。     それを使えば大地とこことを行き来できるとか、     そんなスペシャルサービスがきっとある」 悠介 「よし、じゃあまずはそれを探して」 ドゴシャドガンドガドガドッゴーーーーーン!!! 彰利 「ヌオォオオアアッ!?」 悠介 「な、なんの音だ!?」 いや、なんか確認せんでも予想がついた。 だって振り向いたら竜族がドゴゴシャバキゴキって落下しまくってきてんだもの。 声  『敵が竜なら常勝無敗!あなただぁれと問われりゃ唱えん!     我こそが原沢南中学校迷惑部提督!中井出博光であるーーーーっ!!!』 空中から聞こえる声に視線を上げれば、太陽を背にゴシャーンと輝く謎の甲冑野郎!! つーかもうバロンだ!男爵だ!ジークフリートに身を包んだ甲冑男爵だ!! 男爵 『あ、あぁーーーっ!!ちなみに竜なら常勝不敗って全くのデマだからね!?     か、勘違いしないでね竜族さん!』 そしてやっぱり何処までも格好つかない人間だった。 彰利 「お前なにやってんのォオ!?こんなところでェエ!!」 男爵 『やあ』 悠介 「や……やあじゃなくて」 ゴシャーンと落下してきた中井出だが、その風情は何処までもマイペース。 そのくせ追い詰められると幼児退行する、俺が言うのもなんだけど変人さ。 男爵 『ちょっとここに用があってさ。貴様らこそどうしたの?』 彰利 「おお、ちとここを拠点に世界を知っていこうかなって。     武舞台もベッドも浴場も巨大図書室もあるんだ、利用しねぇ手はねぇぜ?」 男爵 『なに!?そんなこと神が許さんぞ!』 彰利 「ならば神とも戦うまで!」 男爵 『退けぬか!』 彰利 「退けぬ!!」 男爵がオガーと問い詰めてきたのでアタイも全力で返します。 つーかなにやりたくてこんな格好してるんだろねこの人。 悠介 「それで、提督はここになんの用があって来たんだ?」 男爵 『天空城を大地に降ろしに来たのさ』 悠介 「………」 彰利 「……ウィ?い、今なんと?」 男爵 『天空城をね?降ろしに来たのさ』 彰利 「いやあのキミね……いきなり何を言い出すのかね。     ここ降ろすって、降ろしてどうすんのかね。     アタイたちここ居城にするってゆーとるじゃねぇの」 男爵 『や、ここはもうなんていうか好きに使ってOKさ。     俺の目的はここを地面に降ろすだけだし。そう、降ろすのさ。棚卸のように。     棚から牡丹餅。棚からっていうことはきっと発見してしまったという意味。     その牡丹餅の賞味期限はリミットブレイクされている』 悠介 「訳が解るように説明してくれ」 男爵 『OH!体をフルプレートで包んでいる時くらい違う自分になりたい衝動!     キミなら解るだろうマイベストクラスメイト!     いつか紙袋を被ったあの頃の青春を忘れてしまったのなら、     今のキミは偽りの貴公子さ!貴公子なのに偽りなのさ!     偽りなのさ!偽りの貴公子さ!偽りまくってるのさ!偽り王子さ!』 悠介 「公務仮面のことなら今すぐ忘れてくれ」 男爵 『忘れないよ!世界中の誰もが忘れたとしても、     僕がキミを覚えてる覚えてるからね覚えててあげる!……博光です』 彰利 「違う自分じゃねーじゃねぇの!名乗ってんじゃんキミ!」 悠介 「そもそも別れ際の男女みたいなセリフで人の過去を語らないでくれ頼むから!」 男爵 『じゃあキミはいったい僕にどんなセリフで過去を語ってほしいというんだい』 悠介 「語るな!!」 男爵 『キミはなんでも先を読んでしまうんだね……     そう言えば僕が詠うことも読んでいたんだろう?いたんだよね?いたのさ!     だから僕はキミのためにこの歌を歌う……聞いてください、センチメンタルな』 悠介 「彰利……こいつなんとかしてくれ」 いきなり助けを請われたんですけど……。 ここ最近アタイも結構丸くなったから、悠介も結構苦労心が緩んでたんでしょうな。 物凄く疲れた顔しとるでよ。 男爵 『あなたの……青い空をぉ〜……二人でぇ〜見つめ〜てぇ〜いたぁ〜〜……♪     頬に触〜れたぁ風が濡〜〜れるとぉ〜、     あの空が〜……少し遠ざかぁ〜〜ぁある〜♪』 そして歌いだす甲冑。 ……どうしようかコレ。 男爵 『あなたとぉ……同じ空を〜〜〜っ見上げてたぁはず〜なぁ〜〜のにぃ〜〜〜♪     日々の暮ぅ〜〜らしぃ、追いかけ〜〜ていてぇ〜〜、     わたしぃ、あの空ぁ〜見失ぁ〜〜ってぇ〜〜た〜〜〜っ♪』 いや……なんかもう無視して行こうか。 歌に熱中してるみたいだし、邪魔したら悪ぃよコレ。 そんな意を込めて悠介に目配せすると、悠介はあっさりと頷いて静かに動き始めた。 さようなら男爵……せめてそこで歌い続けていてくれ。 ───……。 ……。 悠介 「見つかったか〜〜〜っ?」 彰利 「んーにゃー!だめじゃーーーい!!」 そうして奥へと移動して無重力エレヴェーターを探す時間が続きます。 つーてもまだあまり時間は経ってないけど。 声  『おぉおおーーーもぉーーーいだすぅうーーーーーっ!!     おーーおーーーきぃなぁーーー背中ァアーーーーッ!!!     目の前ぇえええにぃいいいひぃいいろがぁあああってぇえええええいたぁあっ!!     ひぃいいいとぉおりたたぁああずぅみぃ見ぃい上ぁああげてるぅう!!     センチメンタァアアルゥなぁああ青い空をォオオオオオオオッ!!!!』 外では全自動絶叫甲冑が未だに歌を歌っております。 結構奥にまで来てるのにここまで響かせるなんて、どんな声してんでしょうね彼。 男爵 『やあ』 彰利 「うぎゃあああああああっ!!!!!」 悠介 「どうした彰とうぉおおおおっ!!?ててて提督!?なんでここに───!」 探しものを探しに、もひとつ隣の部屋へと出ようとしたら、入り口でバロンと遭遇! 不意を突かれまくった俺は、無意識に絶叫あげておりました。 男爵 『途中で喉が痛くなったから歌をやめたんだけどね。     キミたちが目の前に居なくて僕こそがセンチメンタルだったよ。     だから歌いながら歩いてキミたちを探し回っていたのさ。ぐるぐる回ったのさ。     でも飽きたからもうやめるよ』 悠介 「……そうしてくれ」 彰利 「いきなり甲冑姿で出てこんどくれ……!心臓に悪いったらねぇわい……!」 男爵 『それなら僕はキミのハートの良薬になりたい……良薬は口に苦いっていうからね。     だからその心臓への悪さも積み重なれば癒されるよ癒されるもんね』 彰利 「………」 どうしよう。 もうほんとどうしようこの人。 姿がバロンなのに中身が男爵じゃないなんてどんな不釣合いなんデショね……。 彰利 「ねぇ中井出?別の自分になるのはいいけど、     その飛翔せし広原くんは勘弁してくれません?」 男爵 『キミが望むなら僕は太陽になろう。     世の暗ささえ眩ませる太陽になりたいいやなるんだ。     大人には楽しさを、子供にも楽しさを、老人にも楽しさを、     そして名も名乗れない幼き赤子には慈愛を以って心を唱えよう。     ……僕のお乳をお飲み』 彰利 「人の話を聞きんしゃい!!ああもうテメーそれ脱げコノヤロー!!」 埒も無し! 辛抱たまらんアタイはとうとう男爵に掴みかかり、強引に鎧を剥がしに出た!! ……んじゃけど。 彰利 「ほごっ!ふんっ!ムンアーーーッ!!……ア、アアレェ!?外れねぇ!!」 押しても引いてもビクともせんよこれ! ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……! 今やアタイの腕力は竜の鱗ですら簡単にもぎとれると勝手に自負してるというのに……! ───とか思ってる間にガシャァンって大きな音を立てて、 何故か巨大な鞘になる男爵甲冑! 彰利 「………」 悠介 「………」 中井出「やあ」 なんか知らんけど改めて挨拶されました。 でもアタイらホウケるだけで精一杯。 なんつーか……ま〜たオイラたちの知らんところで妙なスキル手に入れたみたいねコヤツ。 中井出「う〜らどっこいしょぉっ!《ブフォンッ!ガシャァンッ!!》」 巨大鞘を背中にかけ、妙なポーズを取る目の前の提督。 ほんとこいつはなにやりたいんデショ……。 彰利 「悠介、タッチ」 悠介 「へ?な、なにがだ?」 ───。 【ケース566:晦悠介/タッチダウン】 ───……。 訳も解らずに振られた手の軌道に自分の手を構えた。 するとぱすん、って馬鹿みたいな音とともになにかがタッチされたらしい。 ……よく解らないことは考えないようにしよう、 じゃなきゃ身が保たないことは……しばらく忘れてたが、今思い出した。 悠介 「は、話戻すか……。それで提督はここになにしに来たんだ?」 中井出「ああそれなんだけど。ここを地面に降ろすつもりなのは話したよな?」 悠介 「はいストップ!それだ!どうして下に降ろそうだなんて思ったんだ!」 中井出「交通の便が不便だからに決まってるじゃないか!ウソだけど!」 いきなりウソばらしてどーすんだ。 悠介 「で、本当のところは?」 中井出「ククク、簡単に言うと思ったか?     この俺の暖かな誇り……それはそう簡単に緩められるものじゃない!」 彰利 「2$あげるから言えコノヤロー!!」 中井出「《チャリンッ》実はこの天空城にある古の竜宝玉を奪ってしまおうかと」 悠介 「随分と緩い誇りだなぁおい!!」 中井出「元々誇れるほどの誇りがないから」 ああなるほど…… 納得出来るのが異常なのにそれが異常でもなんでもないのはどうしてなんだろうか。 悠介 「や……けどな、最低限の誇りくらいは持ってたほうが……」 中井出「人が持てる誇りなんてタカが知れてるのさ……聞いてアロエリーナ。     人が言う誇りは誇りではなく自己満足。     それを己が誇りと呼び、回りがそれを認めるか否かさ。     そして俺っていうヤツはそんなものよりも楽しむ方向の満足を選んだ。     敢えて言うなら楽しみこそが僕の誇り!自己満足ッッ!!     そんなわけだから人としての誇りは要らない。     そもそもを考えよう。人としての誇りとはなんだろう。     人であるなら、人であることをやめぬのなら人は人である。     外道であろうと善人であろうとしようと人は人。     だが僕はそんな人が大好きです。     醜かろうと人であることをやめはしない……中井出博光です」 彰利 「確かに人間って醜いわなぁ。     アタイら元月の家系の野郎どもは悉く人の汚さ醜さを知っとるからね。     中井出の言いたいことは、まあ解るやもだけど。     だからこそどうして好きでいられるかが解らんわ」 中井出「僕は人間を愛してる。人として産まれ人として生き人として死ぬと決めている。     すぐ疑うしすぐ裏切るしすぐ怒る……     信じる信じないを謳っては心の中では言葉半分の生物……それが人間。     僕らの出会いは特種で、理解の方向も特種だった。     けど違う世界で僕らがキミ達を本気で拒絶した世界もあったかもしれない。     人ってなんて卑しく醜いんだろうね……     防衛だ、先手だと謳っては藪を突付いて蛇を出し、     出てきた蛇を災いと謳って全員で突き殺すんだ。醜いね、美しくないね」 彰利 「そこまで理解して何故に?」 中井出「面白いからさ《バサァッ!》」 今までの暗さとは一変、サワヤカスマイルでどうしてか上着をはだける変態一丁。 中井出「考えれば考えるほどろくでもない生き物だけどね、楽しむという一点はとても暖か     い。イジメて楽しむだの見下して楽しむだのをするんじゃない、一緒に馬鹿をして     最高の瞬間を最高の仲間とともに。イジメてもイジメられ返され、見下してもボコ     ボコにされる。そんな全力でぶつかり合える間柄を僕はずっと探していた。だがそ     んなものは何処を探しても有り得ない幻想。どれだけ言葉で飾ろうとも、それを実     現するのは簡単じゃあなかったのさ。猛者やキミたちが地界人であることをやめる     ことに素直だった事実、もちろん僕も解らないわけじゃないよ。だけど僕は地界     人で居たいのさ。僕は誰でもない、ただの中井出博光として生きたい。醜さも卑し     さも、全てを曝け出した僕であり続ける……それは即ち地界人・中井出博光であり     続けることを意味するのさ。卑劣で外道であくどい……だけど時には仁義を胸に。     出来事からなにも学ばないやつらは学ばないやつらのままでもいい。でも僕は変わ     るよ。変わり続けるからね。学習速度が遅くても学んでいくからね。何故ってそれ     が僕の中の人間像だからさ。僕は僕が中井出博光らしくあればそれでいいのさ。何     故なら人をやめた人が必ずしも好きでやめたわけじゃないだろうからね。無理矢     理に、時には同意の上でのこともあったかもしれないけど、確かに心は地界人と誓     いを立てている人だっているだろう。人であった頃のことを忘れない……それはと     ても尊いことだと思う。でも果たして、人の醜さを眼前にしてもまだそんなことが     言えるだろうか。僕は言ってみたい。言うだけならタダだし。今まさにこの場での     この言葉さえもがきっとタダの戯言なのかもしれない。うん、言ってて僕は人間の     どこが好きなのかがまるで解らなくなってきた。もしかしたら好きじゃないのかも     しれない。むしろ嫌いかもしれない。だが構わないさめげないさ。嫌いでもいい。     でも僕は人をやめないよ。醜い自分とも付き合っていくよ。だって綺麗ごとだけで     は生きていけないのもまた人間だからね。人間はいいよ。醜いって断言できるとこ     ろが実にいい。どこが醜いって心が醜いのさ。それをキミたちの過去と僕のじーさ     んの惨劇で理解した上で言おう。僕は人として、一人の中井出博光であり続ける」 悠介 「随分いっぺんに喋ったが……あー……お前のじーさまって……」 中井出「後の調べでわかったけど、やっぱ親族に毒盛られたってさ。     それもじ〜〜〜っくり時間をかけて弱らせていくやつ。     少しずつ、しかも随分と間隔空けて飲ませるから     天寿を全うしたようにポックリいくんだとさ。     だから事件時の解剖や死因なんか調べやしない。     そのまま火葬だ、証拠は残らない」 彰利 「キミ、それどうやって調べたの?」 中井出「冥界のスペシャルアドバイザーに協力を仰いだ」 ああ、シェイドか……。 暇だから呼べば現れるようなヤツだしな……って前に聞いたか?これ。 中井出「おかしいね、怒ってもいいところなのに、不思議と怒りは浮かばなかったよ。     ただそんなことまでして金を得ようとした親族にこそ落胆したのさ。     人って醜いね。そりゃ落胆するなって方がムチャだよ。     ムチャと言う名のヤムチャだね。お茶と肉まんをどうぞ。     でも最初から醜いって解ってればそれ以上落胆しなくて済むと思わないかい?     死んだ人をとって、復讐を願ってるとか仕返しをすれば報われるとか、     そんなこともまた自己満足。たとえじーさんやばーさんにそんなことを言われても     僕はそんなことはしないし、やろうとも思わないよ」 彰利 「へー……アタイならもう遠慮なく食っちまうけどねぇ〜〜〜ィェ」 中井出「それこそが価値観の違いだろ。     金が必要で、生きるためならって状況なら俺だってそうする。     その時になってみなきゃ解らない、もしくは絶対にしないと口々に言うけど、     俺は逆にそうする自信のほうこそあると言える。     死にたくない、絶対に生きたいと思ったなら、どんな方法をとっても生きる。     それが“絶対に生きる”ということだと、俺は俺なりに考えた。     覚悟っていうのはそういうものさ。無様でも情けなくても、     生きると決めたら生きていることこそが勝利よ!     あ、だからって自分の意識がないのは勘弁ね?それじゃあ自分が生きてないから」 彰利 「うんじゃあ俺もう行くね?《がしぃ!》」 中井出「待って」 適当なところで軽く相槌を打った彰利が逃げ出した!───途端に捕まった! 彰利 「話長ェエのよキミ!アタイら用事あるからもうこれでいいでしょ!?」 中井出「よくねーーーーっ!!正直もう人間の醜さについては     語り続けても仕方ねーくらい醜いからどうでもいいけど!     だがキミたちがこの天空城を居城とするなら───それもよし!」 彰利 「じゃあなんでアタイを止めたのアンタァア!!」 中井出「ただこの一言が言いたかった!人間全部を嫌いにならないでくれ……っ!」 彰利 「こんだけ引っ張っといて桑原の真似かよこの野郎!!T樫先生に謝れ!!」 中井出「T樫先生ごめんなさい!ふはははは謝ったぞどうだコノヤロー!!」 彰利 「ぬおお素直に謝りやがった!じゃあ俺もう行くね?」 中井出「うん。じゃあ遠野くん、わたしはこっちだから」 ニコリと笑って、彼は去っていった。 彰利 「…………なにやりたかったんだろね、中井出のヤツ」 悠介 「だから……古の宝玉を取りたかったんだろ?     ───って行かせたらヤバイじゃないか!」 彰利 「へ?───ギャアしまった!」 き、聞けば天空城ってのはかつての勇者どもが、 今の中井出のように竜宝玉を集めて浮かせたものだと聞く〜〜〜っ! その浮遊の要たる竜宝玉を奪われては、 う、浮いていられる時間のなど微々たるものになってしまう〜〜っ! 彰利 「OK僕に任せろマイフレンド!」 悠介 「なにぃ!?」 ドンッ!と音を立てて石床に手を付く彰利。 それからなにかを探るように目を閉じ、意識を集中させてゆく。 彰利 『───足音を感知。この先の通路を右に曲ったようやね。     ンー……ン、ンー……おっしゃあ影の結合完了!!     掴むぜヒューマン!シャドウバインド!!』 ゾリュゥウンッ!!───床につけていた手が影に沈む。 次いでギャアーーーッ!という声が向こうの通路の方から聞こえてきた。 彰利 『…………なんかこうもあっさり捕まえられると、歯応えがないんだけど……』 悠介 「あいつが魔王だって言って、馬鹿な人種以外に誰が信じるんだろうなぁ……」 彰利 『ほんにね……』 ゾリュゾリュと彰利が自分の影から自分の手を引っ張り上げてゆく。 ……と、吊られるように───パパァアアアアッ!! 彰利 『ウオッ!?』 ───光輝く提督の姿が!! 中井出「あなたが落としたのは金の博光ですか?銀の博光ですか?」 しかも訳の解らないこと言い出してるし! どこまで体張って今を楽しめば気が済むんだこの提督野郎は! ……けどここでウソついたらどうなるんだ? 泉の精霊じゃあるまいし、正直に言ったら……ああ、まあ…… 漏れなく提督が手に入るんだろうけど。 じゃあ逆にウソをついたら? ───…………だめだ!好奇心に勝てない! 悩むな!本能に生きろ!! 悠介 「……き、金のっ……金の博光だっ!!」 中井出「嘘だ!!」 彰利 『なにぃ!?《ガシィッ!!》オワッ!?オワァアアーーーーーッ!!!』 悠介 「うわぁっ!?」 本能に生きた結果、 中途半端に影から飛び出てた提督が急に彰利の首根っこに掴みかかった! しかもそのまま自ら影の中に潜り込むと、彰利まで引きずり込みやがったのだ! ……だが、そりゃいくらなんでも無謀だ提督。 相手は黒の王だ。影の中で彰利に勝てるヤツなんざそうそう居ない。 声  『テ、テメェエエエッ!!影の中でアタイに喧嘩を売るとはいい度胸だぁあっ!!     武器が強いとはいえ影の中でッ!このアタイにッ!』 声  『ランダムルーレット……発動!!』 声  『助けてぇえええええっ!!!』 ……前言撤回。なんかダメそうだった。 なんて思った直後ドッゴォオオオオオオンッ!!!! 悠介 「だわぁあぅあっ!?」 強烈な爆音、強烈な地震とともに、 こぼれた墨汁のように床に広がる影から強烈な赤い閃光が噴き出した!! ……どうやらビンゴだったらしい。 悠介 「……行くか」 まあ、なんだ。 待っててもしばらく出てこれなさそうだし、 俺だけででも反重力エレベーター装置を探すとしよう。 本当にあればの話だが。 ───……。 ……。 ガコッ……ココォン……! 悠介 「……ふぅ」 歩き続けて十と数分程度だろうか。 走って探すほど渇望しているわけでもなく、あくまで自分のペースで探し者をする俺は、 案外探し者が下手なんじゃないだろうかと自分にこそ頭を痛め始めていた。 ……さて、巨大図書室に見取り図でもないもんかって見てみたけど、 そんなものは見事になかった。どうしたらいいんだろうな、まったく。 どうするって、探すしかないんだけどさ。 悠介 「………」 ……少し、提督が言ってたことを思い出してみる。 古の竜宝玉を手にしようとする提督と、それが無ければ地面に落ちる大陸と。 別に俺……というか彰利は、この場所さえ手に入れば文句はない筈だ。 だから経緯がどうあれ、ここが手に入るなら…… 空に浮いてようが地面に根付こうがどっちだって構わないだろうに。 けど、竜宝玉ね。 提督はそれを集めてどうする気なんだろうな。 一説じゃあ、竜宝玉は加工したらその力を失うとかって……。 それを手に入れる理由ってのは…………エーテルアロワノンの強化? ……や、違うよな、古の宝玉にはせいぜいここを浮かせる程度の力しかない筈だ。 それをどうするって……ん、解らん。 中井出「悩み事か?」 悠介 「ああ、うん……ちと解らないことがあってさ。     なぁ提督。提督はどうして古の竜宝玉なんかを手に入れようとしてるんだろうな」 中井出「ああ……そりゃあれじゃないか?多分武器を強化させたい一心でだと思うぞ?」 悠介 「まあ……そうだろうとしか思えないわけだけどさ。     実際一番に思いついたのがそれだし───……っていつからそこに居た」 中井出「貴様が若葉ちゃんに一円を差し出した瞬間から」 悠介 「どれほど昔からここに居るんだよお前は!!     ───って、あ、あれっ!?彰利はどうした!?」 バッと見渡しても、提督は居るのに彰利が居ない。 まさかコロがされた!? 中井出「ヤツか……ククク、愚かにもこの魔王博光に戦いを挑んだあいつか……!     ヤツならば今頃……!」 悠介 「い、っ……今頃……!?───あ、いや……どうせ大したことじゃないんだろ?」 中井出「え?自爆くらって気絶してるのをいいことに、     エジェクトした全部の武器使って壁に突き刺してきたけど」 悠介 「うぉおおい!?かつてないほどひどすぎるだろ!!     どうしてお前はそう人の予想の裏に行き着けるんだよ!」 中井出「ウソだからだ!」 悠介 「ウソなのかよ!!」 中井出「彰利ならほら天井」 悠介 「へ?───上?」 つ、と見上げてみる。 ……が、なにも居ない。 居ないじゃないか、と小さく漏らしながら視線を戻すと─── 今度は提督が居なくなっていた。 悠介 「え……あれ?て、提督〜?おーい」 …………行こう。 きっと隠れん坊をしたい年頃なんだ、そっとしておいてやろう。 俺は俺で自分の目的を遂行すればそれでいいじゃないか。 ───……。 ……。 ゴ……ココォ……ォオ……ン…… 悠介 「………」 おかしい。 もう30分くらいになるか? 中井出からの反応も彰利からの反応もなにもない。 まるでこの城には俺だけしか居ないみたいな、そんな静けさがここにはあった。 小説とかでありそうな状況だな。 実は俺以外全員消えてしまっていたとか、殺されていたとか。 ……そもそもが俺と彰利と提督しか居ないんだから、 俺が特に喋らない分あいつらだけで騒げってこともまあ無理があるんだが。 それでもやかましいんだよなぁ……あの二人が揃うと。 それにドゴォンッ!!! 悠介 「うわぁった!?ななななんだぁっ!?」 地震!?また中井出花火か!? ……にしては変だ……地震っていうよりは妙に引っ張られるような感覚が───! ……マテ。……え?落ちてる?  ピピンッ♪《竜宝玉が何者かによって奪われました。        間も無くこの天空城は地面へ向けて落下します》 悠介 「うぉおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!!?」 落ちてる!間違いなく落ちてる! ヤバイだろこれは! 悠介 「しまったぁああっ!!探しものなんかより提督を止めるべきだったぁああっ!!」 提督に宝玉奪われたらどのみち落ちるんじゃねぇか! しかも落下だろ!?間違い無く崩れるだろこの天空城!! 声  「うぉおーーーい悠介ーーーっ!!」 悠介 「とっ……彰利!」 聞こえた声に、通路を振り返ると、長い通路の奥からこちらに走ってくる彰利。 提督は……当然ながら一緒じゃあなかった。 彰利 「やべぇええよコレ!どうすんの!?このままじゃアタイらの愛の巣が粉々YO!」 悠介 「愛の巣言うな!!───提督捕まえて、宝玉を取り返すしかないだろ!」 彰利 「NO!!悠介それは違うぜ!?なんつーかもう中井出のことはほっといて、     この落ちゆく城を俺とキミとでゆっくりと地面に降ろす!     そんな手段もあるのYO!可能性を捨てるなフレンド!」 悠介 「だったらどうすんのとか訊くなぁっ!!     ───ていうかこんなデカイもの、俺とお前で地面まで降ろしていけるのか!?」 彰利 「クォックォックォッ……悠介はまだまだね〜ィェ。男なら───やってやれだ!!     細かい心配するよりやって失敗ミスって地獄!それこそ男の生き様よ!」 悠介 「そうじゃなくてだな……!外見てみろ外!     降ろすのはいいが、竜族たちに襲われながらじゃどうしようもないだろ!」 言いながらバッと大き目のガラス無しの窓から外を促した。 その先を俺と対面してる彰利がボーと眺め…… 彰利 「…………悠介、ゆーすけ。とりあえず外見てみ?」 悠介 「……へ?」 そう言った。 その落ち着き払った……じゃないな。 妙に呆れた顔に疑問を抱いて、質問するより先に振り向いてみる。 ガラスの無い窓は風を通し放題で、落下を始めたこの城にしてみれば妙に風が吹き込んで、 あまりいいものではなかったが─── その先に、大変ヘンテコな風景が俺の視界を待っていた。 なにって。まあその、なんだ。 悠介 「……来る時もだったけど。なんだって提督、あんなに竜族に狙われてるんだ?」 彰利 「さあねぇ……いっそ憐れなくらいに襲われまくっとるね……」 大空の中空に、また巨大な竜族の蠢きがあった。 そこから辛うじて聞こえる絶叫が、その中心に彼が居ることを俺達に教えていた。 悠介 「……じゃあ……城、支えるか」 彰利 「そやね……」 竜族に襲われる心配はゼロだった。 何故って、言うまでもなく提督が竜族全部を引きつけてくれているからだ。 引きつけているんじゃなくて襲われてるんだろうけど。 またヘンなもの合成したり持ったりしてるんだろうな。 憶測で言うなら、 あの村が襲われた原因が提督が持っていったものの中にあるんだとしたら、 それこそが今襲われてる原因なんだろうし。 自業自得だってことで見捨てさせてもらおう。 彰利 「つーかあいつどうやって飛んでんだろ。剣は持ってねぇみたいじゃけど。     呪われてる所為で飛べなくなったとか言ってたよねィェ?」 悠介 「また設定の裏掻いて遊んでるんだろ。提督なら無理矢理にでもそうしそうだ」 彰利 「……中井出だしね───ってすげぇ!     中井出の野郎が赤く輝いてワイバーン吹き飛ばしまくってるぞ!?」 悠介 「おっ……ほんとだ。あれって界王拳か?」 彰利 「今モンクやっとんのかね。     ありゃ?モンクジョブって破棄されたんじゃなかったっけ?」 悠介 「そうだった気がするけど…………まあ、提督だしな」 彰利 「中井出だしなぁ……」 深く考えないほうがよさそうだ。 考えたらいつか戦う時を思って憂鬱になりそうだし。 そんな風にして奇妙な脱力感に包まれながら、 俺達は居城とすべき城が壊れないように落下を緩めるため、 飛翔しながらSTRマックスや創造、黒操を駆使して大地を目指したのだった……。 Next Menu back