───冒険の書239/空は花火で大地はミサイル───
【ケース574:中井出博光(再)/ジャガッタ】 ゾガフィザゴゾゴガフィンゴフィンゾフィィインッ!!! シェーラ「うわわわわわわわわぁあああーーーーーーーっ!!!!」 中井出 「キャーーーーーッ!!!」 空を飛ぶ!俺が飛ぶ!雲を突きぬけ星になる!いろんな意味で星になりそう! 竜族が!おぞましいほどの数のワイバーンが僕らを襲う! クサナギで空を飛びながら双剣でワイバーンを弾きまくるが、 どうにもこうにも数が多すぎて困っております! 中井出「ヘッ……ヘァアアーーーッ!!!」 ザギィンゾギィンザギィンゾファシュゴバァッシャアッ!! ワイバーン『グギャァアアアアッ!!!!』 だが甘し!ジークムントとジークリンデの竜族への破壊力とて尋常ではない! 既にワイバーンの鱗ならあっさりと斬り裂けるくらいの斬れ味を誇っているのだ! ……問題なのは敵の数とその攻撃力なの、解って。 中井出「チクショォオオオ!!ナメんなよテメェエエ!!     ギミックチェンジ!ウェポンチャクラム!《ゴシャーン!!》」 唱えながら武具に意志を通すと、我が指からニーヴェルンゲンが出現! それが取っ手のような形と大きさに変化すると同時に俺の腕の霊章が消え、 ニーヴェルンゲンの輪に霊章が刻まれてゆく。 するとそこに手にしていた双剣が吸い込まれ、 まるで呪われる前にそうしていたかのように霊章輪に納まった……その間僅か0.5秒!! 中井出「ウヒャアアアア!!     素のままの腕が懐かし《ガブシャア!》ギャアーーーーッ!!!」 喜びと驚きも束の間、そのつややかな腕の肉がワイバーンに噛み千切られた! おのれこいつらよってたかって……!竜族の誇りはどうしたの!?ねぇ!! あんたら竜族って基本攻撃力がバカ高いんだから勘弁してよもう! シェーラ「どどどどうするんですのー!?わわわたくしもう帰りたいざますーーっ!!」 中井出 「なんか口調が変になってるよ!?───だがご安心めされい!」 輪の中心にある取っ手めいたソレを強く握り締め、意志を通す。 するとガシャァッキィイン───ッ!という澄んだ音とともに、 今まで合成や融合させてきた刃という刃が霊章輪から咲き乱れる。 それは輪に刻まれた霊章から飛び出ており、 輪の表面全域に至るまでの全てを刃物で埋め尽くしていた。 これに意志を通して回転させるということ……その意味を知るがいい! 中井出「ダァアブルヘッドモォビットォオオオッ!!」 キィンッ───ヴゥウウウィイイイイイイインッ!!!! チュガァアアアバシャシャシャシャギギャギャギャバギャボギャゾフィィンッ!!! ワイバーン『ガギャァアアアアアアアッ!!!!』 中井出  「ギャアアアアアアアアアアアッ!!!!」 真空波さえ巻き起こすほどの速度で回転するウェポンチャクラムで、 飛んで来たワイバーンを斬ってみたんだが───な、なんと生々しい!! 鱗を砕いて肉を裂き、噴き出る血さえも霧散させてブッ叩斬る……!! この感触、普通に斬るより生々しいよ!チェーンソーで斬ってるみたいだよ! それに問題点発覚! それぞれをエジェクト感覚で飛び出させてるから、 飛び出てるそれぞれの武器はそれぞれの武器でしかないよコレ! そりゃあ埋め込んだ竜宝玉のお蔭で全武具には屠竜効果が通ってるけど、 基本的に竜族への効果的攻撃にはなりえないものばかりだ! ……竜族以外の群がる敵になら相当役立つんだろうけど…… 回転してる所為か物凄く軽いし、 右手から左手、左手から右手への持ち手のスイッチも凄く楽だし。 でもこれなら───《ガシャガキィンッ!!》───うむ! どうせ高速回転するなら、飛び出てる刃をジークムントとジークリンデだけにすれば……! 中井出「うぉおおおらぁあああっ!!《ヴフィィイイイインッ!!!》」 刃満載の時ほどではないけど風を切る音を高鳴らせて回転する双刃! それを、手に持つリングを振り捌くことで振り回してゆく! まずは……真正面から飛んでくるワイバーンへ、擦れ違い様に!  ゾガガガガガフィガザザザザフィィンッ!! ワイバーン『…………!!』 中井出  「う、お……っ!?」 物凄い手応えが腕に残った。 でもそれは決して重いものじゃなく、敵を倒した、と確信させる方の手応えで…… ワイバーンは叫ぶことも出来ないままに全身を切り刻まれ、塵と化していた。 中井出「つっ……強ぇええーーーーーーっ!!!」 これ強ぇえ!! このギミックいいよ気に入った!気に入っちゃったよ猫の里のみんな! よ、よしよし!どんどん試していこう! まずは霊章輪を戻して、と───つーかこの要領で狂戦士の指輪って───  ヴヴー!《狂戦士の指輪は呪われていて外せない!》 ……だめでした。 ニーヴェルンゲンに意志を通して、出来ない?ともちかけてみたんだが……。 だが迅速な試み、感謝する! 中井出「延びろ!“鬼灯丸(ほおずきまる)”!!」 霊章輪から解除された双剣を手にした俺は、 早速互いの柄の底───槍で言う石突きの部分を密着させて唱える。 すると互いに一本ずつだった柄が繋がり、一本の柄となる! これぞ無想双牙刃!使い方は至って簡単! 中国拳法映画とかでよくある長尺棍を振り回すようにして、 両端にあるジークムントとジークリンデの刃で敵を斬る……それだけである! え?棍なんて使ったことあるのかって?ハハハ、あるわけないじゃないか。 だが大丈夫!なにを隠そう、俺はゲームの達人だぁああああっ!! NINJAGAIDENΣで無想新月棍をこよなく愛していた俺にとって、 こんなものなどお茶の子さいさい!(だと信じたい) 中井出「あたぁっ!ほあたぁっ!ホアッチョウ!!」 ブルンッ!ブフォンヒョン!ヒョフォン……ッ!……フォンッ……! 中井出「やり辛ぇえーーーーーっ!!!」 たった今気づいた! 無想新月棍はアグレッシヴに動いて、体ごとで棍をぶつけるようなもんだった! だがしかし足場をクサナギに任せている俺では、 あんなアグレッシヴな攻撃は出来やしない! シェーラ「ばかばか早く構えろぉおおっ!!」 中井出 「う、うるせー!言われるまでもねー!!」 これは大地に立ってじゃなきゃ満足には使えんかも……だが今使う!! なにも回転させて攻撃する必要なんざないのだ、もっと自由に生きようぜ僕! 中井出 「よし!姫っちしっかり掴まっとけよ!」 シェーラ「言われるまでもなく掴まってますわよ!!」 中井出 「こんな時まで口調変えるなんてどんな根性!?」 騒ぎながらも意識集中! 刃と考えるな……棒と考えろ! 中井出「ぜやぁっ!」 まず正面の敵に、大きく幅を取って両手で持った双牙刃での一撃! ジークムント側を振り下ろしてワイバーンの左瞼から顎までを切り裂き、 すかさず上向きになった後方を向いているジークリンデを、 そのまま後ろから迫るワイバーンに突き刺す! さらにそのまま身を回転させるようにしてクサナギを移動させ、 突き刺した肉を捻り切るようにして横から迫るワイバーの頭を両断!! すぐさま頭上に振り上げたジークムントが尾撃で攻撃してきたワイバーンの尻尾を切断し、 クサナギでの上昇とともに追って走るジークリンデの一撃が、 尻尾を切られて怯んだワイバーンの頭を斬り割る───! 中井出「ほっ……ほはぁーーーっ!!はっ……はぁーーっ!はーーっ!」 せっ……成功した!すげぇ!映画さながらになんとも珍しく格好よくキマったよ! くるくる回転しちゃったよ僕!う……嬉しい!地味に嬉しい! 今まででこんな風にビシィッとキマったことなんてバゴォンッ!! 中井出「ニーチェ!!」 ……あるわけねぇよなぁ……。 ええ、喜んだところへの痛烈な不意打ち尾撃でした。 くそう、新たなギミックが僕の意志を緩くする……! でも楽しいからなんかもういいです。バンザイ…………!武具バンザイ………………っ! シェーラ「貴様竜族たちになにかやったのか!?      昼のうちに昇った時は見向きもされなかったであろう!」 中井出 「うるせーなァアア!!      ぶっちゃけ竜族を引き寄せるものを武具に合成させちゃっただけなんだよ!      もう後に引かず真っ直ぐGOするしか俺にはねーんだよ!!」 などと銀魂サンタの口調を真似てみるが、なんの解決にもなりゃしねー! ならば……やっちまうか?───男ならやってやれだ! 中井出「《メコッ……モコモコッ!》ぬおぉおおおおおおっ!!!     100%中の100%ォオオオオオッ!!!」 人器をフルパワーで解放!! さらに武器をウェポンチャクラムにして、刃をジークムントとジークリンデのみにする! 中井出「さらに!!《コパカフィィインッ!!!》     人器で膨れ上がったステータスをマグニファイの鬼人化で倍!     器詠の理力を全力解放して武具能力を極限まで引き出す!!!     ついでにストック解除界王拳!!今出来る全力を引き出して立ち向かおう!!     何故って!?俺は敵の力量を見て加減するヤツが大嫌いだからだ!!     戦うって決めたならな、竜族よ!既に相手を仕留めることだけを考えるもんだ!」 甘く見た結果で負けたら話にもなりはしない! ならば全力でぶつかって勝つか負けるか───その方がよっぽどいい! ワイバーン『クギャアアォオオッ!!!』 中井出  「あっと忘れてた。───ストック解除、明鏡止水」  ピキィイーーーーン───……!! ワイバーン『グアッ!?』 景色が反転するが如く、とても鋭く意識が研ぎ澄まされる。 古の竜宝玉を取りに来た際に襲ってきた竜族をコロがした時、 ジョブを武士にしてたお蔭で得た能力だ。 向かって来るワイバーンの速度がとてもとてもゆっくりに見えるくらいだ。 これぞ人間の集中の極致、集中領域。 人器100%解放中に一点に意識を集中、研ぎ澄ませると発動する人器奥義。 効果時間はたったの30秒……だが、それだけあれば十分だ。 中井出「人氣発勝(ジンキハッショオ)ォッ!」  ゴヴァァッフィィンッ!! 色が反転した集中領域の中、クサナギを蹴って前へと跳躍した。 上にではなく、前へ。 中井出「死を視る事……」 そして武士秘奥義“明鏡止水”からの派生、一閃を発動させ、 纏めて掛かって来たワイバーンどもを斬り抜ける。 中井出「……帰するが如し!」  ゾブシャァアアアッ!!! ワイバーンども『グワオギャァアアアアッ!!!!』 30秒が経過する前に自分の意思で集中領域を解除して、 斬り殺されたことを気づかせないままに塵にしてみた。 もちろんすぐさまクサナギを呼び寄せて、その上に着地するのも忘れない─── っていうかすかさずワイバーンが襲い掛かっておわああーーーーーっ!!! 中井出「シベリアン・タルラーナ!!」  ギュイイイイヂョギャギャギャギャギャァアアッ!!!! ワイバーン『グギャアーーーーーッ!!!』 咄嗟に回転する双剣を盾に、ワイバーンを向かえ打った。 間に合わないだろうと思えばあっさり間に合ったそれは、 向かって来るワイバーンの牙を、口を、顔を、体を微塵に切り刻み、 この大空の塵と化させた。 ステータスがとんでもないことになってるから、 切り刻んで吹き飛ばす程度じゃ済まなかったようだ……。 いや、あの……すいません、ここまでするつもりはもちろんあった。 中井出「こちとら時間が限られとるんじゃああっ!!     肉体に限界が来る前に貴様ら全員あの世行きにしてくれるわぁあーーーっ!!     ドゥオォーーーリェエエッ!!!」 奇妙な声を出しつつ高速回転するウェポンチャクラムを投擲する! 俺の手から離れたニーヴェルンゲンはブーメランのように宙を舞い、 だがそれは決して手元に戻ってこない適当なブーメランとは違い、 今なおずっと空の先を目指している俺の手元へと竜を切り刻みながら戻って来た。 タネは器詠の理力だ。俺と武具がこれで繋がっている限り、 オールエジェクトギミックをやった時のように武具と武具は引かれ合う。 ……この双剣に属性が戻ったら、面白いことになるだろうなぁ……。 これを投げたりしたらアンタ、風と炎とが猛る素晴らしき高速回転武器に……! うわぁやばいよ!早く呪いも試練も終わらせたい! でもこのワイバーンたちが行かせてくれやしねー! そしてそろそろ体が悲鳴を上げてまいりました!ままならねー! 中井出「ええい構わん!辛くなっても限界まで頑張る!それが男だ任侠だ!     ───老若男女差別なんてしねーけどな!!」 まさに外道!! なわけだからアイテムマグニファイ発動! 発動し忘れていた火闇を巻き起こし、 それこそ全力でワイバーンどもの殲滅へと取り掛かったのだった───!! ───……。 ……。 ひょろろろろろ……どべちゃっ。 中井出 「アウッ!」 シェーラ「ふきゅっ!」 そうしてグレイドラゴンの袂に辿り着いたのが深夜も深夜、 真ん丸い月が煌々と光る深い夜の刻だった。 結局のところ敵に襲われても上昇しながら戦っていたという行為が “逃げ”と認識されていたらしく、俺は心身ともに疲れきっていた。 お蔭でクサナギのジェット噴射も心なしヘボイ。 グレイドラゴン『……随分とボロボロだな』 中井出    「いやぁまいったよ、ファンたちが解放してくれなくてさ」 グレイドラゴン『貴様の言うファンはよってたかって噛み付いたり引っ掻いたりするのか』 中井出    「見てたんなら助けてよもう!!《ズキィーーン!》ギャアーーーッ!!」 こいつやっぱり僕のこと嫌いだね。 そりゃ散々バカにしまくってりゃ当然なんだけど。 そして僕、体が滅茶苦茶痛い。 ワイバーンども滅ぼしてからここに辿り着くまで、 ずっとクサナギの上で休んでたから大分回復はしてるけど……それでも痛い。 グレイドラゴン『そ、それよりだ。夜にここに訪れたということは……』 中井出    「うむ。これより月光竜孵化の儀式を執り行う。         ……本当に孵化するかは解んねーけどな!!」 まさに外道! じゃなくて、ちゃちゃっと進めよう。 話じゃ月光が最も集束するのは深夜。 もう深夜中の深夜なんだから、さっさと行かねば機を逃す。 中井出 「ではGO!!」 シェーラ「《がばしっ!》うわっ!だ、だから小脇に抱えるのはやめよと───!!」 中井出 「うるせー!こちとら痛い体に鞭打って行動しとんのじゃー!!      ───各馬一斉にスタートォッ!」 わっしょーいと抱えたシェーラとともにクサナギに乗り、 自然回復した気力を以って発進!! お隣の月光大陸目掛けてレッツハバナーウ!! ───……。 ……そして一分もしない内に着きました。 なにせほんと隣だしね。 中井出 「うむ。して……シェーラシェーラよ、ここでなにをすればいいのだ?」 シェーラ「シェーラである。変な名で呼ぶなうつけ者が」 中井出 「なんだとこの漬け物が!」 シェーラ「誰が漬け物だ!」 うつけ者って言葉に対抗したら物凄い剣幕で怒鳴られた。 グレイドラゴン『御託はいい!早くしろ!』 中井出    「わあ」 そして、付いてきたグレイのおっちゃんはとても興奮していた。 ……本当に大丈夫か?このおっさん。 シェーラ「では開始する。月の巫女として今ここに命ずる。      我が御名、我が力を以って月の光をこの場に導きたまえ……」 中井出 「お?」 目を閉じて空に向けて両手を広げていた姫っちが片目を薄く開けて、 他の場所より高く平面な祭壇めいた場所の中心を促す。 ようするにここに卵を置けということなのだろう。 だが俺は敢えて自分が立ってみた。 シェーラ「あっ!こら貴様!」 するとシュパァアアと空から舞い降りる月光!! 辺りがとても暗いというのに俺だけに舞い降りる光……! それはまるでスポットライトのよう……! ここまでお膳立てされてはなにもしないわけにはゆくまいよ……! 中井出 「皆さんこんにちは……中井出博光です。      今日は僕のコンサートに来てくれてありがとう。      それでは一曲目、聞いてください……“決意の朝に”《バサァッ》」 シェーラ「脱ぐな歌うな輝くなぁっ!!      いいから出ろ!その光は貴様などにはもったいのない高貴な───!」  ホゴリュリュリュンッ♪《月の集束した光を浴び、EX宝玉が変化!              隠し属性“月属性”を得た!》 中井出 「…………あれ?」 なにやらログに色違いの文字が……それに謎の効果音も。 そして何故か狭まってくる月の光……あれ?僕のリサイタルは? シェーラ「このうつけがぁーーーーっ!!」 中井出 「《マゴシャーーン!!》ニーーーーチェ!!」 レイピア持ってるくせに何故かナックルな月の巫女で天使の姫な彼女に殴られた!! 中井出 「な、なにをなさるの?」 シェーラ「やかましい!この月の光の集束は一度行うとしばらくは出来ないのだぞ!      それを貴様が浴びてどうするか!」 中井出 「なんだとてめぇ!そういうことは最初に言っておかなきゃダメじゃないか!」 シェーラ「貴様は月光竜様を孵化させるために来たと言っておっただろう!!      それがどうして貴様が入ると予測出来る!!」 中井出 「ククク、この博光はいつも貴様の予測の範疇の外に居る……!      そのことを忘れていた貴様こそが敗北の原因よグオッフォフォ……!」 シェーラ「この場合敗北したのは当初の目的を達成できなかった貴様だろう!!」 中井出 「大丈夫だってホラ!まだ光残ってるから!ハイ卵セットオン!      ───あとは任せたシェーラシェーラ!!」 シェーラ「きぃいいいいさぁあああまぁああああああああああっ!!!!!」 力を失い細ってゆく光! それを見て慌てて力を紡ぐシェーラシェーラ! そしてかつてないほどのムキムキ怒号フェイスで僕をお睨みになられているグレイさん! がっ……頑張ってくださいシェーラ様!僕まだ死にたくない!! 中井出 「がんばれーーーーっ!!まっなっ《ぶっ》」 シェーラ「気が散るから黙っておれ!!」 中井出 「ぎょ、御意……」 つい彰利みたいな謝り方をしてしまった……。 しかしそうこうしてる内に、細ッこい光の下にある月光竜の卵に異変が起きる! カタカタと震えだし、なんと月光を吸収し始めたのだ!! 中井出「オ〜〜〜ッ」 それはなんとも神秘的な光景……! 光なんてものを飲み込んでゆく卵を前に、俺は一時時間を忘れて魅入ってしまった……! …………しかし待てども待てども孵化はせず、 やがて月光は潰え……辺りには先程よりも暗い夜だけが残された。 中井出 「あれ?孵化は?」 シェーラ「……解らない。月光はわたしの意に反して消えた。      限界だったわけじゃない、細くてもまだまだ出せる筈だった」 中井出 「……じゃあ、月光は十分だったとしても、      孵化に必要ななにかがこの卵には足りないと?」 シェーラ「恐らくは、だが……」 ううむ……竜族のことなどさっぱりだからな……。 殊戸瀬二等の時は随分あっさりと孵化したもんだが、 守護竜ともなるとそうもいかないらしい。 中井出    「グレイさん、なにか助言は……」 グレイドラゴン『……我にも解らん。知っての通り守護竜族は転生を繰り返して生きる。         死んだとして、卵に戻るわけではないのだ。         それが卵になってしまい、孵化しようとしないとくる。         ……お手上げだ、我から言えることなどなにもない』 中井出    「ゲェ……」 な、なんだと……ここに来て解呪が出来ないというのか……!? せっかく様々な準備をしたというのに、ダメだと……!? 中井出「…………あ。原点回帰」 ハタと悩むのをやめた。 そして低い段差のてっぺんの中心に置いてある卵を手にして、調べるを発動。 すると───  ◆月光竜の卵───げっこうりゅうのたまご  今や絶滅したとされる月光竜の卵。  いわゆる前足が飛翼である飛竜とは違い、  前足後ろ足ともに揃い翼もある、“ドラゴン種”の卵。  月光竜は竜族の中でも一際小さいことで知られ、  そのサイズは飛竜よりも小さいとされている。  月の光を食べ、栄養として補給した状態にあり、栄養は十分のようだ。  ただし孵化するにはあまりにも時間が早く、卵の中の体が完成しきっていない。  *能力:孵化、持っているだけで心が静まる ……。 中井出「……時間?───時間か!     栄養は月の光をたらふく食ったから大丈夫だそうだけど、     孵化するにはまだ早いそうだ!つまり……え?それまで解呪不可能?」 オウノウ……待って……ちょっと待って………………っ! ない……っ……そんなの……そんなのってないだろ……っ……なあっ…………! 中井出「あっ……あぁあ…………っ……!ああああ………………っ!!」 ぐにゃあああああ……と景色が歪む……! 溢れる…………!涙が…………っ!とめどなく…………っ! シェーラ   「時間……そればかりはわらわがどうにか出来るものではないな……」 中井出    「いや待った!時間……時間だ!みさおちゃんの協力が必要だ!         もしくは彰利の───否、ここはゼットと一緒のみさおちゃんにしよう。         くそう、今日はあっちこっち飛び回ったりで休む暇がないな……!」 グレイドラゴン『待て。それならばそのみさおというのをここへ呼べ。         下へ降りて孵化させることは我が許さん』 中井出    「エエッ!?なんで!?どうして!?」 グレイドラゴン『下は竜族混乱の瘴気で溢れ返っている。         我はそんなものを吸い込むつもりはない。         かといってともに行かねば孵化が見れぬ。だから呼べ』 うわぁすげぇ自分勝手だこの竜!───でもそうだね。 俺がまた下に行こうとすると、 どこからともなくワイバーンが襲ってきそうだし。 中井出「よし、じゃあtellを───………………いや待てよ?」 ふと思い出したことがあった。 いつか、麻衣香に聞いたことだ。 俺はかつて、ゾンビと接吻をした時、ショックのあまり老人と化したそうで…… しかも老人化した僕はとても強かったらしい───ってそれはどうでもいいんだ。 思い出すべきはその老人化というもの。 あのイセリアさんが、 そんな状態異常を精神疲労の時だけにしかならないようにするだろうか。 中井出「………」 ものは試し……だな。 中井出 「シェーラ、これ持ってて」 シェーラ「なに?」  コシャンッ♪《月光竜の卵を預けた》 中井出    「そして出来るだけ離れといて。グレイのおっさんも」 グレイドラゴン『妙案があるというのなら、邪魔はすまい』 言葉とともに距離を取るグレイドラゴンとシェーラ姫にありがとと返すと、 俺は誰にも敵意を向けずに───ランダムルーレットを発動させた。 否───させまくった。 間隙も無く、どんな効果が発動しようとも構わず、空白の9番が発動するまで───! 【ケース575:朝月俊也/集えよ勇者たち1】 ドゴォオオオオーーー……ン…………!! 俊也 「……ん?」 どこかで何かが炸裂する音がした。 けど、どれだけ見渡してもなにもない。 ……まあ、いいか。 俊也 「けど、でっかいイベントバトルには戦わなくても参加しておくもんだな」 佐知子「闇竜素材、結構手に入ったしね。で、次の目的は?」 俊也 「それがさ、元常闇の領域で会った……藍田って居ただろ?     あいつからtellが来ててさ。なんでもドリアードからヘンなことを聞いたとかで」 夏純 「?」 俊也 「近いうちに、速ければこの夜の内にデカいバトルが始まるかもしれないって。     だから自分を強化出来る状態にあるなら全力で強化しろって」 佐知子「……?よく解らないわね」 それは俺もだ。 強化出来る状況って言われても、そんな状況って訪れるもんなのか? ああ、武具を強化って意味ならまだ解るけど。 佐知子「あ……もしかして、ってそうよ!話からして順を追ってみれば、     あの闇の守護竜倒した時点で然までの守護竜倒してあるんじゃない!     っていうことは───」 俊也 「───サウザンドドラゴンか!」 夏純 「!」 噂だけならもう何度も耳にしている、伝説の巨大竜。 その大きさは守護竜の中でもトップクラス、山と見紛うほどの巨体であり、 サウザンドドラゴンが歩いただけでも凶悪な災害となるって、あの……!? あんなのが来るなら確かに準備をしないわけにはいかない。 ていうか何を呆けてたんだ俺達は! 俊也 「猫の里に戻ろう!闇素材で武具を強化するんだ!」 佐知子「そうした方がよさそうね……。闇の守護竜戦ではぜんぜん役に立てなかったし」 夏純 「……《こくこく》」 そうと決まればと、 チェックインしようとしていた宿から飛び出して、来た道を戻っていった。 ……いや、完全に走る前にルルカ牧場を発見した俺達は、 そこで金を払ってルルカで走りだした。 ……他のやつらはもう利用していないだろうが、実はこのルルカ、 バージョンアップの度にプレイヤーの総合レベルに合わせて速度が上がっていたりした。 あとになれば走った方が速いと思ってるやつらばっかりのようだが、 どうしても荷物が多くなるトレジャーハンターな俺達にしてみれば、 ルルカにいろいろ積むのは常套手段。 その時に発見出来た小さな知恵である。 【ケース576:簾翁みさお/集えよ勇者たち2】 ゼット「ぐっ……チィイ……!」 ゼットくんの苛立ちげな呻きが聞こえる。 竜族混乱の瘴気がフェルダールに放たれて以来、 少しずつだけど理性を蝕まれていっているゼットくん。 それは恐らくシュバルドラインさんもだろうけど、 二人とも竜王たる意地で今までそれらを押さえつけてきた。 だけど眠っている時ばかりは抑えておけるものじゃない。 時々こうやって呻いては、深く眠れない日々を過ごしていた。 と───そんな時に耳に届いた違和感。 tellかなと思って意識を繋げてみると、相手は藍田さんだった。 声  『みさおちゃんか!?今大丈夫か!?』 みさお「え……は、はい、平気ですけど……」 出た途端の大声に、少し驚いた。 何事かなと思いつつも、既にいい予感がしないのは経験の賜物でしょうか─── 声  『サウザンドドラゴンが目覚めるかもしれないんだ!     面倒だろうけど、一度猫の里───マップの猫の形した山のところに来てくれ!     もう他の大半のやつにはtellしたけど、思い当たるヤツが居たらtellよろしく!』 みさお「サウ、ザンド───って守護竜ですか!?《ブツッ》あ……あれっ!?     ちょ───藍田さん!?藍田さん!!」 ……言いたいことだけ言って、さっさと切ってしまったようだ。 どうしよう、こっちはそれどころじゃないのに……。 みさお「ゼットくん……」 ゼット「……聞いていた。いくぞセシル。     ひと暴れすれば、この嫌な気分も払拭出来るだろう。     ……どうやらあいつも、同じ考えのようだしな」 みさお「え……?」 ゼットくんの視線を追って虚空を見上げると、 シュバルドラインさんと───ゼノさんが飛翔していくのが見えた。 ……どうやら本当に大事が迫ってるみたいです。 この世界に降りて、全員が揃うなんてことは滅多にないですから…… もしかしたらその滅多が、エトノワール城下以来では久しぶりに訪れることに……? い、いえ、今はともかく猫の里に行くことを前提にしましょう。 時属性はわたしの管轄…… サウザンドドラゴンを倒したいって気持ちがわたしにはありますし。 属性解放でゼクンドゥスさんがどれほど力を解放できるのかは解りませんが、 力が封印されているっていうなら解放してあげたいと思う。 それにしてもどうなっているんだろう、いくら封印された守護竜だっていっても、 こんなに数を揃えなきゃいけない相手なんでしょうか。 ……一気に潰してしまおうって気持ちも解らないでもないですが。 とにかく行きましょう、急がないといろいろと後手に回ってしまうかもしれないから。 【ケース577:晦悠介/集えよ勇者たち3】 ───ヴヴッ───! 悠介 「ほいこちら晦」 声  『以下同文!』 悠介 「解るか!!」 魔法都市、深夜の宴にて、耳に届いた違和感を繋げてみれば─── 相手はどうやら藍田のようだった。 声  『そっちにゃまだ連絡行ってなかったか。悪いんだけど猫の里に来てくれ。     間近に迫ったグレイトバトルに向けて、強化出来るものを散々と強化するから』 悠介 「……話が見えないんだが……グレイトバトル?」 声  『サウザンドドラゴンが目覚めるんだよ!     今の俺達じゃ心許ないから全勢力で討伐軍を募って戦おうってことになったんだ!     あらかたの猛者どもには連絡行ってるから、     もうそっちにも連絡行ってると思ったのに……』 サウザンド……ってあの封印されし守護竜ってやつか!? 悠介 「もう然までの守護竜全員倒したのか!?」 声  『おー!レッドドラゴン以外ほぼ全部、提督が片付けたぞー!』 悠介 「あいつほんとに人間かよ!」 今こそ疑いたくなるような状況だった。 悠介 「あ、あー……それでその提督自身もそこに居るのか?」 声  『や、それがナギーの話じゃどうにも変でさ。     これからヒロミツが敵に回って、     この全フェルダールに迷惑をかける行為を始めるから準備しろって』 悠介 「……その迷惑っていうのがサウザンドドラゴン復活なんじゃないのか?」 声  『や、確かに提督が持ってる戒めの宝玉砕けば、     然までの属性解放と守護竜殲滅は完遂するんだけどさ。     ……な〜んかそれだけじゃない気がするんだよ。     だって今提督、グラウベフェイトー山に行ってるっていうんだぞ?     呪いを解いてもらおーってんで、月光竜を孵化させるためだとかなんとか』 悠介 「あ……」 そういや彰利が殊戸瀬や綾瀬から聞いたって言ってたな。 月光竜の鱗は万能薬であり、 さらに言えばデスゲイズの呪いを受けた者から産まれたそいつには“耐性”が宿っている。 血を抜けば血清に、鱗を使えば恐らく竜族混乱の瘴気の毒も浄化出来るだろう。 提督はそれを狙って孵化を……? 悠介 「……そこに殊戸瀬は居るか?」 声  『や……居たんだけどな。     その話聞いた途端に上の大地に連れてってくれって騒ぎだして。     妖精どもに詰め寄って珍しくギャーギャー言うもんだから、気絶させた。     傷つけてでも脅迫するくらいの風情だったからな。     そんなことしちまったら提督が怒りそうだ』 悠介 「……そか」 出来れば俺もその鱗は欲しいが……いや、卵の殻でもいい。 それがあればディルが持ち直せるんだとしたら、是非欲しい。 声  『とにかくそんなわけだから、出来るだけ早く来てくれ。     あ、あと近くに誰か居たら声かけといてくれ。     こっちはもう随分集まってるから。───じゃな』 ブツッ───……若干の慌ただしさを残しながら、通信は切れた。 次いで俺は宴の席を眺めるが……さて、どうしたもんかな。 この幸せな家族の団欒めいた雰囲気を果たして、壊していいものかどうか……。 ……いいや、壊そう。 悠介 「彰利、穂岸、ちょっといいか?」 彰利 「ほっほ?なにかな悠介……」 遥一郎「……帰してくれるんだったら喜んで聞くが……」 悠介 「似たようなもんだよ。……これからサウザンドドラゴンが復活するかもしれない。     だから猫の里に来て戦闘準備をしてくれって連絡が来た」 椛  「え……」 聖  「それはつまり、この楽しい時間を捨てて集えってことですか?」 悠介 「いちいち睨むな馬鹿者。……そういうことになる」 遥一郎「よし行こう」 ノア 「どこまでもお供します、マスター」 サクラ「行くです、与一」 レイラ「そこに澄音さんも居るんですよね?穂岸さん」 遥一郎「移動してなければね」 雪音 「ハワワどうしようホギッちゃん!わたし竜となんか戦ったことないよ!」 遥一郎「なるようにしかならないから安心して戦え」 雪音 「うう……ホギッちゃんが冷たいよぅ」 穂岸陣営は行く気満々のようだ。 ───が、弦月陣営は───ぐでぐでである。 凍弥 「椛、すぐに向かおう」 椛  「いやです」 聖  「こんな穏やかな時間なんて久しぶりなんです。せっかくですけど」 凍弥 「や……あのなぁ」 彰利 「ほっほっほ……やれやれ、二人とも甘えん坊さんで恥ずかしいねぇ……」 凍弥 「お前が甘やかしすぎなんだよ彰衛門……」 彰利 「ほほ?可愛い娘たちを甘やかしてなにが悪いんじゃ……」 凍弥 「……悠介さん、行きましょう。     とろけた椛には何言っても無駄だって解ってますから」 悠介 「だな。よし、じゃあ俺達先に行ってるから、ほどほどにな」 彰利 「うむうむ……気をつけて行くのじゃぞ……」 目を細める彰利に見送られながら、俺と凍弥、穂岸陣営は地面を蹴った。 向かう場所は猫の里……マップで唯一、クッキリと猫の顔の輪郭の形をした場所である。 転移出来ないのがもどかしいが、さすがに準備も出来ないまま戦うのだけはごめんだ。 【ケース578:中井出博光/バストア地方のサーディンフィッシュ】 ゴコッ……ゴシャッ…… 中井出「カカカカカカカカカ…………!!」 もう……何発自爆しただろうか。 何回ひどい目に遭っただろうか……。 何度、死亡しただろうか……。 もういい加減休みたい……だがマボロシの9番が開くまでは───!  ジャンッ!!《博打No.25!しあわせ光線!!》 シュワワワワァア〜〜〜〜ッ…… 中井出「ああ……幸せ……!」 じゃないって!何回目だよもう! これだけやって9番だけが全然出ないなんてどれだけ運が無いんだ俺! ごらんなさい!シェーラもグレイさんも呆れ顔でこっち見てるじゃない!! グレイさんに至っては、さっさとみさおとかいうヤツを呼べとか言ってる始末だよ! 最初から我が武具の裡に秘められし奇跡なんか信用してないよ! 中井出「このままで……このままでいいわけがないだろジーク!     このままで終われないだろ武具の中の意志たち!     このままでいいわけがないだろ武具に宿った持ち主たちの思念よ!!     俺達の……ともに強くなってきた俺達の力を見せてやろうぜ!?」 だから届けこの願い! 俺達はこんなところで───立ち止まってなんかいられないんだぁああああああっ!!!  ジャンッ!《博打No.23!自爆!!》 涙が止まらなかった。  シュカァッ───!! ───……。 ……。 ブスブスブスブス……!! 中井出「カカカカカカカカ……!!」 幸いにして誰かと敵対しているわけでもない俺は、ダメージを負ってもすぐに回復する。 とはいえ、もう心の方がズタボロです。 ほんと、どれだけ運がないんだよ俺……それでも退かぬ、侠客立ち。 侠客関係ないけどね。 だからまあ……たまには神頼みでもしてみよう。 こういうのも一興だと思うんだ、俺。 中井出「ランダムルーレット───発動発動発動発動発動発動発動!!!!」 ダラララララララ……!!  ジャンッ!《博打No.29!ハイペリオン!》  ジャンッ!《博打No.29!ハイペリオン!》  ジャンッ!《博打No.29!ハイペリオン!》  ジャンッ!《博打No.29!ハイペリオン!》  ジャンッ!《博打No.29!ハイペリオン!》  ジャンッ!《博打No.29!ハイペリオン!》  ジャンッ!《博打No.29!ハイペリオン!》 かぁああああみぃいいいいいいっ!!! 神!神ぃいいいいっ!!うぉおおおおおおおお神ぃいいいいいいいっ!!! オォオオオオオッ……オォオッ───!!オォオオオオオオオオッ!!!!  ───その夜、俺は……  無駄な方向で奇跡が起きた悲しみを……  ただただ神への憎しみへの心に換え続けたのであった…… 【ケース579:晦悠介/集った勇者たち】 ザムゥ〜…… 悠介 「悪いっ、待ったか?」 総員 『ううん?わたしも今来たところだから』 悠介 「全員でたわごとぬかすな!!」 辿り着いた場所は猫の里───から大分離れた場所。 あまり人が集まりすぎると、 猫の里が竜族に襲われる可能性があるからと移動した場所らしい。 移動したことを猫たちに聞いた俺達は今ここに辿り着いたわけだが、 既にみんなここに揃っており、最後が俺達だったようだ。 悠介 「それで、サウザンドドラゴンが復活するって───」 ナギー『うむ、それなんじゃがの』 人垣の中心に立って説明会を行っていたのはナギーだった。 ちっこい体を浮遊させ、集ったみんなを見渡せるようにして少しずつ回転している。 ナギー『現在、既に地から然までの守護竜を討伐してある事実は、     各員に報せが通ったと思うのじゃ。     じゃがこれだけではサウザンドドラゴンの封印は解かれぬ。     戒めの宝玉を破壊し、属性を解放───     さらには然までの守護竜の転生体への移行が必要じゃ。     後者はいわば討伐じゃから成っておるが、問題は属性の解放じゃな。     今ヒロミツは戒めの闇宝玉のみ持っておる。     火宝玉はエレメントアンヘル回収の旅の途中で砕いておったからの』 藍田 「あ、道理で。戻ってきて早々、イフリートが精霊武具をくれた理由がそれか」 彰利 「アタイのは!?闇はなんでまだなの!?ねぇ!」 悠介 「どこから沸いて出たお前っ!!」 凍弥 「魔法都市に残ってたんじゃなかったのか!?」 彰利 「走るのめんどいからキミらの影に潜んでました」 悠介 「……あのなぁ」 椛  「すいません、ラクチンでした」 聖  「楽しかったです」 ……最早なにも言うまい……。 ナギー『静粛に。───当のヒロミツは今、デスゲイズの呪いの解呪のため、     グラウベフェイトー山の大陸に隣接する月光大陸に行き、     月光竜の孵化を試みておるそうじゃ』 麻衣香「来るべき決戦に向けての前準備…………じゃないんだよね?」 ナギー『決戦という意味では合っているのかもしれぬがの。わしもよく解らんのじゃ。     ただその時が来たら容赦なく攻撃してくるのだぞ、とは言われたの』 麻衣香「……つまり敵にはなるっていうことね……」 忙しいやつだなあいつも……ていうか、なんだ?それがグレイトバトルなのか? いくら提督だからって、この人数相手じゃ勝てないと思うが。 むしろ一方的だ……───って考えは捨てた方がいいか。 守護竜を討伐したのがほぼ提督だけだっていうなら、 ここまでに至った提督の武器は それぞれの守護竜素材で相当強くなっていることが予測される。 提督だけなら翻弄されなければどうってことない。 ただあの武器は厄介だ。 アレと提督が合わさると、もうとことんまでに常識が通用しない。 みさお「……あの。さすがに敵に回るといっても、     回るのはサンザンドドラゴンを倒したあと……ですよね?」 ナギー『……ヒロミツがそんな常識的なことをすると思うてか?』 みさお「訊いたわたしが馬鹿でした……」 総員 『まったくだ!!』 藍田 「提督のことだ、きっとその状況を全力で楽しむに違いない」 丘野 「しかし疑問点1、でござるよ?     何故このタイミングで敵に回らなければならないでござる?     魔王が故の所業でござるか?」 清水 「あー……いやー……それはちょっと違うっつーか……」 岡田 「……?今日は変だぞお前。どうかしたのか?」 麻衣香「───ハッ!?もしかしてなにか知ってる!?」 清水 「し、知らん!」 彰利 「そりゃ知ってますって言ってるようなもんじゃぜてめぇ!!     言え!何を知っておるのかね!!」 清水 「フッ……バレちまっちゃあしょうがねぇ……誰が言うもんかぁあーーーっ!!     貴様らは来たる地獄を前に談笑しているがいい!     い、言っておくが……戦う相手を提督だなんて思わねぇほうがいいぜ……!?     俺も直接見たわけじゃないが、ありゃバケモンだ……感じで解る」 ブルッ……と、掻き抱いた肩を震わせる清水。 ……いったいなにがあるっていうんだ……? 武器のことを言ってるんだったら、多分違うとは思うが…… 提督とは思わないほうがいい……? 田辺 「質問。提督が敵に回るのは解ったってことにしといて、     サウザンドドラゴンはどうするんだ?」 ナギー『うむ。ひとまずはアンヘルたちに押さえておいてもらおうと思うのじゃ。     もしくはA班B班に分かれ、一方がヒロミツを、     一方がサウザンドドラゴンを押さえるという作戦をじゃな』 閏璃 「これ娘。そのアンヘルというのはなんだ?朕に詳しく聞かせるでおじゃる」 ナギー『…………なんなのじゃ?この無駄に偉そうな男は』 来流美「ただの馬鹿よ、無視していいわ」 閏璃 「貴様朕を愚弄《バゴォンッ!》イギャア!!」 来流美「いいからアンタは黙ってる……!!」 閏璃 「貴様!正式に聖王になった朕に向かって拳を《ごがすっ!》ギャウッ!!」 来流美「黙りなさい」 閏璃 「ぜ……善処するでおじゃる……」 既にチームワークは泥沼だった。 ていうか、なんだ、 悠介 「閏璃が聖王になったのか」 藍田 「なりたいからキーアイテム持ってたらくれーって呼びかけてたからな。     俺は修羅になれればそれでよかったし」 田辺 「別に渡したからって二度とチェンジできないわけでもないしな。     そう思ったらもうホイホイって渡せたってわけさ」 悠介 「……なるほど」 氷の精霊との契約は蹴ったのに、ジョブは欲しいのか。 そこらへんの違いがよく解らん。 ナギー『無駄話はやめるのじゃ。───して、如何にするか決まったかの?』 雪音 「まず全員で提督さんをコロがすのがいいと思うよー!!」 飯田 「奇遇だな、娘よ……この飯田もサウザンドドラゴンはアンヘル……だっけ?     そいつが強いならそいつに任せて、提督を集団リンチにするのがいいと思う」 島田 「いいや!ここはアンヘルってやつの力も借りて提督を片付けるべきだ!」 佐野 「違うだろ!ここはサウザンドドラゴンを誘き寄せて、     そいつも含めた全員で提督を───!!」 藍田 「いや!ここは提督をだな!」 藤堂 「ノー!そこはああやって提督を───!」 ナギー『あー……なんじゃ。     おぬしらがヒロミツしか狙う気がないのはよーく解ったのじゃ』 普通にひでぇ連中だった。 もちろん俺もその中の───………………ん? 悠介 「……なぁ彰利?あれ───あれなんだ?」 彰利 「んあ?おー…………?」 藍田 「……?ああ、ありゃ見たことあるぞ俺。     確か提督がプラチナル平原を吹き飛ばしたハイペリオンってギャアーーーッ!!」 悠介 「プラチナル平原ってあの地図から消滅したオワァーーーーーッ!!!?」 空より舞い降りる破滅の弾丸……! 弾丸って呼ぶには大きすぎるそれは、しかし確かに弾丸を大きくしたようなもので─── あ、やべ───死ぬ……。 悠介 「そそそそ総員防御壁展開ぃいいいいっ!!!」 麻衣香「命令しないでよ一等兵風情が!」 柴野 「何様のつまりよクズが!!」 悠介 「こんな時まで原ソウル炸裂させるなぁあああああっ!!!」 魔術師一同が一気に魔法障壁を張る! さすがに死ぬとなれば猛者連中も必死になり、障壁を張る。 だが一撃目で障壁は破壊され、ニ撃目で人垣は吹き飛び、 三撃目が……つーか惨劇目になった。  ドゴォオオオオオオンッ!!  ドガァアアアンッ!!  バゴガドッガァアアアアアッ───!! 全員 『うぎゃぁああああああああああっ!!!!』 ……パーティーは全滅した。 ───……。 ……。 ましゃぁあああん……! 神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない!!」 全員 『…………』 とりあえず……全員の提督への決戦意識が確かなものになった。 こんなものを平気でバカバカ撃ってくるなら、確かに準備しなけりゃならん……。 全力で……全力を以って、自分たちを強化して戦わねば負けるのは俺達だ───! 彰利 「こりゃヤベェよ……こんなもんバカバカ撃たれまくったら勝てやしねぇ……。     皆さん!このままじゃやべぇYO!我らは全力を以って強くならねばなりません!     暢気にみんなでかかれば勝てる〜なんて思ってる場合じゃなかった!」 総員 『とりあえずお前にだけは言われたくない』 彰利 「しっ……失礼な!!」 悠介 「中途半端なのは事実だろうが。お前は寄り道が多すぎるんだよ」 彰利 「とりあえずお前にだけは言われたくない」 悠介 「しっ……失礼な!!」 どっちもどっちかもしれない。 彰利は強くなることに遠回りで、俺は自分のことに関してはいっつも遠回りだった。 なら───今こそ、打倒提督を心に、遠回りの自分たちを解放してやるべきだ。 悠介 「……行くか。決戦が来る前までに、出来るだけ自分たちを強化しよう。     何が出来るか、じゃない。強くなるって目的が決まってるなら、     あとは自分の努力次第なんだから」 みさお「……あの、父さま?既に皆さん、走り去ってますけど」 悠介 「───あら?」 見れば、教会に居るのは俺とみさおとゼットだけだった。 ちょっと待て、出て行く音なんて聞かなかったぞ俺。 …………あ、ああ……まあいいや、あとはやれることをやるだけだ。 Next Menu back