───冒険の書241/VS中井出(チュー)師父(せんせい)───
【ケース581:晦悠介/遠方より……つーか空より来たる者】 ゴゴシャッ!ベキャッ……ゴシャッ……! 彰利 「あそこか───って確認とるまでもねぇよね」 空よりワイバーンが落ちまくってきている。 ある者は燃え、ある者は凍り、ある者は雷を帯び─── 呆れるくらいの数の竜族が、地面へと為す術なく叩きつけられていた。 真穂 「うう……行くのやだなぁ……」 彰利 「何をおっしゃるウサギさん!強敵を前にしてわくわくしねぇなど!     戦人の風上にも置けねぇぜ!     しかも相手が中井出とくりゃあ暴れ甲斐もあるってもんよぉ!     ウフフ、確かに強ぇえだろうけど守護竜と戦うよりゃマシに違いねー!」 藍田 「悪いことは言わないからその考え捨てた方がいいぞ一等兵てめぇ」 彰利 「なんて辛辣な!だがオウヨ!俺はもはや今までの俺じゃあねぇ!     油断して足元掬われるようなことは───」 岡田 「足元を掬われると思ってるならそんな考えは捨てたほうがいいぞ一等兵てめぇ」 彰利 「何故キミまで!?だ、大丈夫だって!俺強くなったから!」 田辺 「否である。貴様は未だに傲慢の只中におるわ。     足元を掬われるというのは下の者が上の者を掬うという意味。     驕るでないわ一等兵風情が!提督が居る位置は遙か高み!     死神王だかなんだか知らねーが、     異端の者が強くなったところで当然と思われるだけ!」 藤堂 「よく考えてみろよ……あの人、地界の回路だけ持った生粋の地界人だぞ……?」 彰利 「……アア」 彰利がよく解ったって顔をした。 そうだな……神だとか死神が強いのは普通だ。 人間なんて神や死神に軽く扱われるような存在だってのも確かだ。 人間の魂を狩り、扱ったりするのが死神で、 人間の進む道や歴史を簡単に変えられるのが神。 だったら今現在、そんな俺達より確かに強いあの人間はどういった生物なんでしょうか。 いや、それがどうであれ───これから始まる戦いは避けられるものじゃない。 今は全力を以って提督を打倒する……それだけに集中する!!  ゴカァアアアアアアアッ!!! 悠介 「───!来たぞ!」 彰利 「おっしゃあ!行くぜよ!!」 春菜 「いつかの借り、返してやるんだから!」 分厚い雲が螺旋状に切り裂かれ、眩い光がその場に下りる。 それはまるでスポットライトのようで───なるほど、メールで来た通りだ。 “なんとなく派手に登場したい”って書かれたメールを飛ばされた時は何事かと思ったが。 ナギー『強化や回復などはわしとシードに任せるのじゃ!     各々、全力でヒロミツ打倒に燃えるのじゃーーーっ!!』 全員 『ウオオオオオオーーーーーーッ!!!』 彰利 「…………こうなると、中井出が可哀相に思えてきません?」 猛者 『だからその考えは捨てろというのに』 彰利 「言ってみただけだっての!そう、アタイはもうかつてのアタイじゃ───」 悠介 「そういって真っ先にやられるのがお前なんだよな」 彰利 「なんですと!?オオヨ上等だ!だったら本気の本気でかかっちゃうよ俺!!     あっという間に終わっちゃってもしらねーからね!?」 シード『それは構わないが、せいぜい死なないように気をつけるんだな』 遥一郎「言っておくけどな、中井出は本当に、冗談抜きで強いぞ?     呪いが解けただけならまだしも、試練まで終わってたら手に負えない」 彰利 「解っとらぁな!!」 ああダメだ、多分こいつ解ってない。 このまま突っ込んでも真っ先にやれるだけの噛ませ犬で終わりそうだ。 悠介 「───みさお」 みさお「解ってます。鎌!解!《ゴシャァッキィンッ!!》───“神魔月昂刃”(ルナティックブライト)』 みさおが鎌を解放し、その力を以って神と死神の力を増幅させてゆく。 おまけに闇と光の宝玉の持ち主の力を強化し、神や死神だけでなく大勢の力を引き上げた。 ───と、その時。  ヒョ〜〜〜……スタッ。 中井出「やあ」 全員 『えらく普通に現れたぁあーーーっ!!!』 フェルダールきっての常識破壊の魔王、中井出博光提督が現れた!! ……なんか、物凄く普通に。 藍田 「テメェエエエエエッ!!!派手に登場するんじゃなかったかコラァアアアッ!!」 彰利 「とんでもなく普通に降りてきて普通に挨拶って……何処が派手なんだァアッ!!     空気読めよテメェエエエエエエッ!!!!」 中井出「人が空から降りてきて無事だったんだぜ……?派手だろ?」 総員 『………たっ……確かに!』 常識的に考えれば派手といえば派手だった。 飯田 「って、こんなところでだけ常識振りかざしてんじゃねぇよこのクズが!!」 島田 「死ね!!」 中井出「馬鹿かてめぇ!常識だったら死んでおるわこのクズが!!」 彰利 「そりゃそうだけどなんか違うと思わん!?」 中井出「思わん!老人状態で登場しようかとも思ったけど、     時間がなさそうだからやめた俺の気持ちを誰が知る!     そして武器を手に対峙する……その意味が解っているな彰利一等兵!!」 彰利 「オウヨもちろんだ死ねぇえええーーーーーっ!!!」 中井出「安全装置は外して」 彰利 「エッ───オアッ!?」 中井出「死ねェエエエーーーーーーーッ!!!!」 彰利 「キャーーーーッ!!?」 切りかかった彰利に対し、冷静に虚を突く彼はなんというかもう中井出だった。 だが利点はこっちにある───提督のレベルは確かに高いだろうが、 こっちも猫たちやドワーフたちといった亜人族の協力によって、 今出来る限界まで武具を鍛えた。 さらに言えばレベルだって3000いってるヤツも居るのだ、そう簡単には負けられない! ───……筈だったんだが。  キシャヴァドォッガァアアアアンッ!!!! 悠介 「───……え?」 俺のすぐ横を、レーザーめいたものが飛んでいった。 そして、なにが───と確認する行為は…… ただその直線状に居た仲間の死を確認するだけの行為となった。 凍弥 「う、あ……!?あぶっ……!」 浩介 「おお!佐古田が死んだ!」 浩之 「今日は祝杯だなブラザー!」 凍弥 「言ってる場合かぁあっ!!     ちょっ……冗談じゃないぞ!?油断してたとはいえ一撃かよ!」 仲間たちの中に動揺が広がゾガッフィドッガァアアアッ!!! 若葉 「ひきゃーーーーっ!!」 春菜 『あぐぅっ!?こ、このっ……!』 中井出「ふはははは!!女子供といえど容赦はせん!!     むしろ真っ先にコロがしてくれるわ!!     そうなりたくなければ全力を出すがいい!     出そうとする隙を突いてコロがしてあげるから!     俺は朽木白哉戦の一護くんみたいに甘くねぇぞぉおおっ!!     シャンドラの火を灯せェエエエイ!!」  ゾガゾガゾガゾガゾフィゾバゴバシャアッ!!! 総員 『ヒギャアアアアアアッ!!!』 提督が武器を手に暴れまわる───ってダメだ!考える余裕すらねぇ!! 提督の野郎、一瞬の動揺も見逃さないつもりだ! 隙が出来たらすかさず攻撃してやがる! 悠介 「余力を残そうだなんて思うな!!最初から全力で行け!!」 藍田 『言われるまでもねぇよ!!滅びの母の力───解放ォオオッ!!     火炎霊装フラムベルグの加護を以って、帯熱スキルを極限まで解放する!』 遥一郎「あ───ひとつ言い忘れた!あいつに魔法は撃たないでくれ!跳ね返してくる!」 真穂 「うわぁ戦い辛ァアアーーーーーーッ!!」 なんて騒いでるうちから次々と吹き飛ぶ猛者連中やブリタニア陣営。 ところどころで爆発が起きたり風が巻き起こったり、 水が跳ねたり瓦礫が吹き飛んだり───って何処まで奔放なんだよあいつ! 悠介 『───提督!』 中井出「おお晦一等兵!来てくれたのか、助かる!」 悠介 『ああ───って違うだろ!いつから味方に』 中井出「死ねぇええーーーーっ!!!」 悠介 『うおわ!?《ガギギガガボッガァアンッ!!》ぐあぁあああああああっ!!!』 騙まし討ちをされ、いきなり振るわれた巨大剣を雷の精霊武具、 神真槍雷剣ヴィジャヤで受け止めるが───炸裂する爆発を前に、腕が悲鳴を上げた。 彰利 『ギャアもう戦いづれぇ!     この野郎戦いの最中だってのに隙を作らせまくって突きまくってくんのよ!     って言ってる側から来たァアアーーーーーーッ!!!』 ルヴォォオン!!ギガァッフィゴガァアッフィガギィンッ!!! 彰利 『いぎっ!ぐっ!ぐあああ一撃一撃が骨身に染みるゥウウウウッ!!!』 提督の攻撃は相変わらず無茶苦茶で、多少剣術を齧っていれば余裕で捌けるものばかりだ。 だが武器のレベルが俺達とはケタが違う。 試しに調べてみれば、その数値はもう俺達の武具とは次元が違っていた。 悠介 『プッ……+5963!?ちょっと待て冗談じゃないぞ!?』 彰利 『5963!?武具に青春かけすぎだぁあーーーーーーっ!!!』 藍田 『言ってもしゃあないだろ!悪魔風脚(ディアブルジャンブ)───最上級挽き肉(エクストラアッシ)!!』 タタンッ、と俺達の横を横転で奔る藍田が、 鋭い横への跳躍とともに目にも留まらぬ連続足攻撃を放つ! だが提督はヂュガガガガガッ!!! 中井出「いぎゃちゃちゃちゃぁあああああっ!!!」 ……普通に喰らってた。 彰利 『なんなのオマエェエエ!!強いのか弱いのか解りゃしねェよ!!』  ボッガァアンッ!! 藍田 『ッ───ぐあぁああっ!!!』 彰利 『……アレ?』 悠介 『だからそうやってホウケるのをやめろって言ってるんだ!ヘッジホッグだよ!』 彰利 『ゲェ!くそうまた厄介なもんを───!     いくぜ中井出!今からてめぇにとっておきをくれてやる!』 中井出「はははは待て待てぇええ〜〜〜っ!!」  ドンガガガガガキシャゴバァアォオンッ!!! 蒲田 「ヒィイイイイ!!フレイムサークル展開させながら追ってくるぅうううっ!!!」 俊也 「触るなぁ!あの炎爆発するぞぉおっ!!!」 彰利 『………』 悠介 『……な?わざわざ相手に確認とってから技出す馬鹿が何処に居るんだ。     出すって決めたならな、彰利。もう行動は終わってるんだよ』 彰利 『プ、プロシュート兄ぃ……』 悠介 『見たところ、提督も解放されたスキルを一つ一つ試してるみたいだ。     だから全力で攻めるなら今───そう、今しかない。     全部試されたあと、何があるかなんて予測がつかない』 なにせ提督だから。 絶対に予測のナナメ上を行くに決まってるんだ。 しかもそうと解ってても、そのナナメ上に何があるかが解らないから性質が悪い。 だがこちらも近距離攻撃ばかりではないことを忘れてもらっちゃ困る。 魔法がダメだとしても、まだ弓がある! 春菜 『逃げ回ってばかりだと思わないで!───鳴り響け!わたしのメロス!!』  キヒャァアアアンッ!! 高く跳躍した先輩が、右手に持つ矢を自身の左腕に浮かんでいるメロスの戦士の証に当て、 バイオリンを弾くかのようにヒュンッと引く。 すると離れていても耳に届く鋭い音が高鳴り、矢に輝きが篭る───! 春菜 『これがわたしの旅路の成果!てぇえやぁあああああっ!!!』  ゴシャァアアォオオゥウウンッ!!! やがて放たれた矢は死神の力を以って闇の竜にも似た波動になり、提督を襲う! だが提督は近くに居た柿崎の手を掴むと、覇王のメロス目掛けて力任せに─── 柿崎 「えっ!?いやちょ───     まままぁああーーーっ!!!《ブォンッ!!》ぎゃあああああーーーーっ!!」 ───ブン投げた!! 春菜 『えっ!?や、ちょっと!待って待ってぇえーーーーっ!!』 敵だからってあっさり盾に使うその決断力……さすが提督!外道である! だがこのままじゃ柿崎が─── 遥一郎「間に合え!エアブラスト!!」  フォファドパァンッ!! 柿崎 「ぐへっ!?」 ───いや、大丈夫だった。 咄嗟に穂岸が風魔法で柿崎を吹き飛ばしてくれた。 お蔭で覇王のメロスはそのまま提督に───! 中井出「とんずらぁあーーーーーっ!!!」 全員 『逃げたぁあーーーーーーっ!!!』 ───当たる前に普通に逃げた! 避けるとか格好のつく表現じゃなくて、普通に逃げた!! ああもういちいちやることなすこと人間だなぁこの人!! 岡田 『少しは格好よく出来ないのかよ提督てめぇ!     と言いつつエースインザフォール!!』 中井出「出来ぬ!《ゾゴァッフィゾブシャア!!》ヌグオオッ!!」 岡田 『へっ!?なんでわざと《ブシャアッ!!》ぐっ……へっ……!?     かっ……そ、うか……!ヘッジホッグ狙い───ウオッ!?』 中井出「死ぬぅえ!!!」 岡田 『《ザゴォン!!》ギャーーーーッ!!』 彰利 『アーーーッ!!』 凍弥 「だぁああ無茶苦茶だこいつ!!どうしろってんだよぉおおっ!!」 奥義をわざとくらってヘッジホッグで返したところで、 そのダメージに怯んだ隙に全力の一撃でトドメ……たまらない。 やること為すこと無茶苦茶すぎだ。 だがそこにこそ弱点があると信じよう。 そう……回復される前に全員で、全力で!! 中井出「貴様らに言っておくこどがある!     今、この博光と戦っている時間はまさにしみったれた時間!     だが貴重な時間であると知れ!もう少々経つと大変なバケモノが現れる!     そいつは俺よりも強く、俺よりも残忍であろう!     だから今のうちにこの博光との戦いで慣れておくのだ!     サウザンドドラゴンはアンヘルに押さえてもらっている方向で考えてよいな!?」 ナギー『うむ!その通りなのじゃ!』 中井出「了!ならば来い!この博光に勝てぬようではこれより来る者を倒すなど不可能!     だから今こそこの言葉を贈るよ。贈るからね。───俺の屍を越えてゆけ!!     これより我が技術の全てを見せよう!そして対策を練るのだ!     い、言っとくけど、べつにアンタたちのためにやるんじゃないんだからね!?     そこんとこちゃんと解ってるんでしょうね!《ポッ》」 彰利 『キモイよ!だが解った!なにがなんだか知らねーけど学ぼう!』 中井出「OKその意気やよし!ではゆくぞ皆の者!───まずは体術からである!」 ジャコォンッ!と長剣を腰の背中に納めた提督が、ギュッと拳を構える。 ファフニールという名前のそれは怪しい赤色を秘めており、 見るからに何か危険な香りがした。 だが言ってられない状況ではある……あまり時間をとられると、 サウザンドドラゴン対策の準備が出来ないからだ。 ライン『拳とは面白い!誰も行かぬなら私が行かせてもらうとしよう!』 中井出「千歩氣攻拳ーーーッ!!」  ドゴォーーーン!! ライン『なにぃ!?』 なんの前振りもなく突き出された提督の拳から、巨大な拳の形をした氣が放たれる!! それを見たシュバルドラインは一瞬硬直したが、すぐにそれをくぐるようにして疾駆! 提督の目の前に一気に迫る! さらにそれ以外の方向から猛者どもが不意打ちクラッシュを実行! 四方を囲むように一気に仕掛ける!! ナギー『───はっ!?いかんのじゃー!』 悠介 『え───!?あっ───!』 中井出「ククク……!52の関節技のひとぉーーーつ!キャプチュードォオオッ!!」 ライン『ぬあっ───!?』 ザッと構え、一気にシュバルドラインを持ち上げる提督! だが多少の反撃は予測していたんだろう、シュバルドラインは中井出の首根っこを掴み、 その首に鋭い爪を突き立てた!! 中井出「《ザブシャアッ!!!》ギャアーーーーーーーッ!!」 田辺 『よっしゃ怯んだ!奥義───夢幻魔空殺!!』 その痛みに怯んだ提督目掛け、田辺が幻魔を振るってゆく!  ゾゴッフィゾゴッフィギファアンッ!!  ヂャガガガガガゾガファフィフィィンッ!!! 中井出「ギャアアアアーーーーーーッ!!!!」 ニ連撃ののちの三撃目で中井出を中空へ飛ばし、 追って跳躍後に一撃とも見える速度の九連撃───! 次いで横一閃を切り込み、トドメの縦からの一刀両断で提督を斬りつける! さらに他方からも連撃が加えられる───が、 提督は痛がるだけでまだまだ余裕がありそうだ。 ……つーかあんな連撃でも死なないってのはどうかしてるぞおい! ギャーで済むダメージじゃないだろあれ! 田辺 『《ブシャアッ!》ぐあっ……!ヤ、ヤロッ……!     VITマックスで受けやがったなテメッ……!』 一気に叩き込んだ攻撃の半分のダメージが田辺に返る。 だがそんな散々と火花が散った景色の中でも提督はシュバルドラインを離さず、 中井出「コココ……!基本は忘れぬよ……!そしてェエ……!」 ライン『《ギュムッ……!》ぬぐっ!?き、貴様離───』 逃さぬようにさらに力を込めると高く跳躍! そこから成る技は皆様ご存知のあれだった。 中井出「トルネードフィッシャーマンズスープレックスゥッ!!」 ライン『うおぉおおーーーーーーっ!!?』  ギャルルルルルルドッガァアアアンッ!!! ライン『ぐふぁああーーーーーーっ!!!!』 見事なトルネードが炸裂! シュバルドラインが地面に叩きつけられ、血反吐を吐いた───だけでは終わらない! 中井出「《ギリィッ!》ぬっ……う、ぉおおおおおおおおおっ!!!」 硬くきつく握り締めた拳が、倒れたシュバルドラインの顔面目掛けて振り落とされる!! 藍田 『させるか!!バズーカチャンネルァアアーーーーーーッ!!!』 中井出「《バゴォンッ!!》ゲファーーーリ!!?」 悠介 『───!よし!』 今のは入った!! 完全に力を込めたところへの攻撃だ、VITにはそうステータスが回ってなかった筈! 彰利 『オーライいくぜぇ!九頭竜闘気!!紅葉刀閃流無刀の型!闘覇-滅-“降竜”!!』 一方で吹き飛ぶ提督を先回りして構えるのは彰利! いつかやった勝手な我流技を足に込め、飛んでくる提督目掛けて───放つ!!  ズドガゴォンッ!! 中井出「うぐがぁっ!!」 空へ向けて飛ばされた提督の体が、今度は地面に向け斜め下へ─── 藤堂 『OK次ぃっ!!ロックオン&バニシングレイ!!』  キュヴォァィンッ!ドガガチュゥウウンッ!!! 次いで待ち構えていた藤堂が、ARMからレーザーを発射! 提督は再び上空へと飛ばされ、跳躍していた丘野のもとへと飛んでゆく! 丘野 『劫火(ごうか)───焼焔斬(しょうえんざん)!!』  フォガゾバァンッ!! 中井出「ぐあちゃぁあーーーーっ!!!」 燃え盛る斬撃が提督を襲い、地面に向けて吹き飛ばす! 夜華 『待っていたぞ……紅葉刀閃流嵐華の極み!“穿紅鱗・殺華(せんこうりん・さっか)”!!』  フィキィンッ───バッシャァアアアアッ!!!! 中井出「───、が───!」 落下に合わせて振るわれた、究極の一撃が提督を容赦なくブッ飛ばす! そこへさらに追い討ちをかけるのは───再び藍田!! 藍田 『防御を固めても徹しは通るだろ───!STRマックス!鬼神黒掌!!』 中井出「キャーーーッ!!?《ギャオッ!!》」 藍田 『───へっ!?』 だがそこへ来て提督の態度が豹変する。 急に叫び出し、体に赤色の光を纏うと吹き飛んでゆく筈の軌道から強引に逸れたのだ。 藍田 『───界王拳!?なんで《ガシィッ!》うおわっ!?』 中井出「わはははは!!ザーボンドライバーだちょーーーっ!!!」 しかも戸惑う藍田の後方に回るとその体を腕ごと抱き締め、 暴風を巻き起こし、地面目掛けて頭から物凄い速度で落下を始める!! 藍田も浮遊能力で抗おうとするが、提督のグラビティがそれを許さない! 藍田 『うわわわわ提督たんま!たんまたんまぁああーーーーーっ!!!』  キュゴドッガァアアアアンッ!!! ……落ちたらもう終わりだった。 藍田は大地に聳え立つ人柱となり、もう動かなかった。 中井出「ククク……!さあ来るがいい亡者どもよ……!     我が名は魔王博光……!我はまだまだ元気だぞグオッフォフォ……!!」 赤い闘気を散らしながら大地に降り立つ提督。 その姿は……なんだかんだでボロボロだった。 彰利 『眺めるのも可哀相なくらいボロボロじゃねぇか!!コノヤロー!』 中井出「うるさいよもう!《ドクンッ……!》うぐっ……!?うわやべっ……!     そろそろやべぇ……!ほんとやば───」 彰利 『キョホッ!?なにやら知らねーが今こそ好機!全軍打って出る!!』 中井出「いやちょっと待て!今マジでやばいんだって!やば───」  ザグドゴゴシュドシュザクゾスザグシャアッ!!! 中井出「ぎっ!がっ!うがっ……!」 全員が全員、よってたかって斬撃や打撃の雨を降らす! その間、どうにも提督の様子がおかしいと思ったが─── 中井出「待てっつっとろーがバカモォオーーーーーーン!!!」 ドッゴォオオオオオオーーーーンッ!!!!!! 全員 『ほぎゃぁああああーーーーーーっ!!!!』 大地とともに景色が炸裂した。 巨大な火柱が天を衝くかの如く立ち登り、 それに巻き込まれた俺達は空の旅へと強制的に参加させられた。 何が起きた、というより音で即座に理解できた。 中井出花火だ、これ……。  ドゴゴシャバキベキゴンゴシャドシャア!! なんてことを思いながら受身も取れずに地面に叩きつけられる無惨な俺達。 中でも落ちる部分が悪いヤツらは、そのまま昇天してしまった。 悠介 『ぐはっ……がっ……つぅ……!!』 彰利 『へ、へががっ……!こ、これ……キツすぎ……!』 あまりにも不意打ちすぎたために、防御が間に合わなかった。 お蔭でマックスだったHPが見る影もなく減ってやがる……! 中井出「カカカカカカ……!!」 ……でも一番辛そうなのは提督だったりした。 もうほんと……こいつだけは何がやりたいのか全く解らない。 だがチャンスだ───! 悠介 『衝撃が出ます───弾けろぉっ!!』 提督目掛けて、目には見えない“衝撃”だけを創造する! いつか、学生時代に彰利に騙されてやったアレだ。 だがこれなら防御してもしなくても、自爆の所為でHPが少ない提督は─── 中井出「ストック解除!漢神の祝福!《モンシャアアン!!》───美しい」 総員 『なにぃいいいいいいーーーーーっ!!?』 衝撃がポコリと弾けた。 ……生きてる。 ───ってちょっと待て!界王拳使っただろ!?なのになんで漢神の祝福───えぇ!? 中井出「驚いてる驚いてる……!その顔だ!その顔が見たかったんだ!」 悪戯が成功した子供のように燥いでいる提督を前に、生き残ったやつらは固まるしかない。 状況に頭がついていかない……いったいどうなってるんだ……? ってそうか、ストックか!?ジョブチェンジして、10分アビリティだけをストックして、 またジョブチェンジしてストックって……じゃなきゃ説明がつかないぞ!? ジョブ能力を幾つも有するなんて、そんな─── い、いや、そういや前にもこんなことがあった! あれは炎の夜───ホツマの村での戦いの時だ。 アーチャーだった筈の提督が魔法めいたものを使ってた……そう、あの時だ。 RX 『あ、言い忘れてた。提督、変身能力をすっぴんにしてもらったお蔭で、     マスターしたジョブのアビリティを好き勝手に使えるらしい』 全員 『先に言えって言っただろうがぁああっ!!!』 RX 『だから忘れてたって言ってるだろうが!!』 謎は全て解けた!つーかすっぴんにしただけでそんなことが可能なのか!? あ、いや───変身能力がすっぴんになったっていうんなら、確かにそれは─── 考えやがったな提督の野郎……! 凍弥 「───考えてても仕方ない!死んでもなんでもダメージを与え続ければ倒せる!」 彰利 『よく言った小僧!ではゆくが───あれ?なにやってんのアイツ』 中井出「自然の皆!オラに元気を分けてくれ!!《キュヴォアァアアッ!!!》」 ナギー『おおっ!?自然が……自然が動いておるのじゃ!』 遥一郎「マナが集束してる───!?これはっ……!!」 両手を掲げる提督の頭上に、緑色の光が集束してゆく! それはあたかも元気玉のようで───! 彰利 『てめぇ元気玉まで使えんの!?     ちくしょう負けっかぁああっ!!ビッグバンッ───』 中井出「出来たーーーーーーっ!!」 彰利 『速ェエーーーーーーーッ!!!』 ゴシャーンと、提督の頭上でおぼろげだったマナたちが、 巨大な塊としてくっきりと出現する! 自然の……マナを集めてるにしたって集束が速すぎるだろ! 中井出「いっけぇえーーーーっ!!」  ドゴォオッシュゥウウウーーーーーーン!!!! 悠介 『うおあぁあーーーーっ!!?』 しかも躊躇することなくいきなり放ってきやがった!! 遥一郎「ようはマナだ───分散させてやればどうにかなる!     ドリ……ナギー!自然のマナなんだ、なんとか出来るだろ!?」 ナギー『もちろんなのじゃ!こんなものはちょいといじれば───     《キュゴゴゴゴゴ!!……シュポンッ》……ざっとこんなものなのじゃ』 中井出「アーーーッ!!」 あっさり吸収してしまった。 妙な状況になったけど、ナギーが仲間でよかった……! 悠介 『……さて。それじゃあマナでの攻撃や回復や強化は、     言われた通りナギーとシードに任せるとして』 彰利 『俺達はてめぇの始末に専念しますかねェ〜〜〜ィエ』 中井出「うむよく言った!ならば俺も───誠意を以って応えねばならんな!!」 ゴシャジャギィンッ!!───言葉とともに、提督が腰の剣を抜き取る!って…… 悠介 『もうジークフリードかよ!能力全部見せるんじゃなかったのか!?』 中井出「大丈夫全部見せるから!だから来てくれ全力で!     “全力じゃなきゃ俺は倒せないぜ”なんて言うつもりはさらさらねー!     俺はただ貴様らの本気が見たいだけだ!     貴様らの本気にこの博光の本気がどれほど通用するのか……     それを見たいだけなのだ!故に来い!全力で来るのだ!」 カッと目を見開く提督……だが、ちょっと待て。 悠介 『……提督はどうなんだ?それは全力なのか……?』 中井出「いやあの……僕全力出しちゃうと後遺症がひどくて……」 悠介 『……へ?いや……余裕だから使わないとかじゃなくて───』 中井出「余裕じゃないよ!ほっといてくれ!俺はもういっぱいいっぱいなんだよ!     この博光が自らを過信し、余力を残すクズと思うたか!     俺はいつでも全力投球!子供にだって全力を尽くす!!     だ、だがなー!能力解放の後遺症は加減がどうとかそういう問題じゃねーんだよ!     そうじゃなかったらもうとっくに使ってるよ失礼な!!」 総員 『………』 ……実に提督らしい理由だった。 だがその情けない目つきが突如として変わる。 ───こりゃ、くるな。 中井出「じゃあいいよもう!どうなっても知らないからなー!?」 彰利 『フッ……返り討ちだぜ』 中井出「え?じゃあ貴様が死ぬの?」 彰利 『なんで!?───え!?どうなってもしらんって俺達に言ったんしょ!?』 中井出「いや……僕がどうなっても知らないからなって意味だったんだけど」 総員 『………』 どこまで自分に自信がないんだろうかこいつは。 まあいい、なにかを発動させるつもりなら、死んだやつらがここに来る時間稼ぎになる。 HPを回復させようとしたら問答無用で攻撃すればいいだけどのことだ、なんとかなる。  …………そう、タカを括った自分が愚かだった。 中井出「まずは人器解放100%ォオオッ!!《ゴコォキィイイイインッ!!!》     さらに長剣を双剣に変えて武器はしっかり二刀流!《ジャキィン!》     マグニファイでステータスを倍化して、     さらにエンペラータイム発動!!《ピキィイイーーーン……!!》     スキルリミットとアビリティリミット全てを解放させる!     トドメに武器をウェポンチャクラム化!     刃はジークムントとジークリンデのみにし、それらで六閃化を発動!     ───……お覚悟、よろしいな?」 ……提督の体が輝き、なにかヤバイ予感をさせる。 いや、確実にやばい。 あの輪状の武器でどう攻撃するのかは解らないが、感じる気配がさっきまでとは段違いだ。 これはギヂャゴヴァアヴァヴァヴァォオンッ!!! 声  『うぎゃあああーーーーーーっ!!!!!』 悠介 『っ───!?後ろ!?』 提督が消えたと思ったら、突然後方で黄竜の波動が弾けた。 振り向いてみればそこに立っていた仲間たちは塵と化し、残ったものは───殺気!?  ヒュフォゴヴァシャォンッ!! 悠介 『《バギィッ!》がっ───!?ぐあぁああああっ!!!』 向かって来る殺気に向けて剣を振るった。 だが俺の一撃は無数の黄竜剣によって弾かれ、 殺しきれなかった威力の末は俺の利き腕を容易く破壊した。 彰利 『悠介!?───な、なにがどうなってんだよこれ!』 俺の剣が弾かれた一瞬だけ、提督の武器が見えた。 それは輪状の中心部を高速回転する六閃化された双剣であり。 烈風脚か───恐らくあれで高速移動してこちらを攻撃しまくっているのだ。 彰利 『アイーダ!ちとヤバイ!気絶してねーで起きれー!』 藍田 『《ガボッ……ズボォッ!》ぶはぁっ!!───げほっ!ごっほげほっ!!』 いい加減目が覚めたのか、彰利が地面に突き刺さったままの藍田を掘り起こす。 そしてこの状況をさあと見せると───藍田は妙に納得したように“手遅れだ”と言った。 藍田 『エンペラータイムやっちまったんだろ?     じゃあ勝つことはあまり考えない方がいいぞ。狙うのは逃げ切ることのみだ』 彰利 『え?なして?』 悠介 『効果が切れると衰弱状態になって動けなくなるからだ』 彰利 『OH』 そういえば以前そんなことがあった。 あの時のアレは偶然に近いが、果たして今、それが叶うかどうか…… 藍田 『ってウオッ!?どうしたんだその腕!思いっきり折れてるじゃねぇか!』 悠介 『提督の攻撃弾いたらこうなった。かなりヤバイぞ今の提督。     双剣状態だった頃がやさしすぎたくらいだ』 ただでさえ高速回転している双剣が六閃化され、 さらにその一撃一撃に黄竜剣封入だからな……泣きたくなる。 なるんだが───  ギガガガガガジャガガギガガガゴギガギギガァン!!! ゼット『ルゥウウウウオオオオオオッ!!!!』 あそこで攻撃弾いてやがるあいつ、何者? こっちは腕が折れたのに───ってそうか! 腕が折れてもどうしても、 みさおとナギーを始めとする魔法使いに回復してもらいながら戦ってるのか! 確かに魔法を弾かれるんじゃあ魔法使いは魔法に徹した方が効率がいい! ゼット『グッ……!強いな……!感動的なまでの強さだ、中井出博光!!     よもやただの人間である貴様にこうも押されるとは……!だが』 中井出「死ねぇええーーーーーっ!!!!」 ゼット『ぐっ!?ぐぉおあぁあああーーーーーっ!!!!』 彰利 『ギャアひでぇ!友人関係のくせに友人の言葉も半端に圧しにかかりやがった!』 遥一郎「っ……だめだ!回復が追いつかない!」 麻衣香「だったら攻撃!メテオまでは跳ね返せないでしょ!     ストック解除!メテオスウォーーーム!!《ゴキィンッ!!》」 ───景色が暗転する! 途端、空から無数の隕石が提督目掛けて落下する! いや、提督に限ったことじゃなくて俺達目掛けても無差別に!! 中井出「無駄無駄ァアア!!《ゴコォッキィイインッ!!!》     エタァーナルッ……ディザスタァアアーーーーーーッ!!!!」  フォガァッキィイインッ!!! 麻衣香「え───えぇえええっ!!?」 だが提督はゼットから離れると跳躍し、 振ってくる隕石を───なんと長剣化させた武器で跳ね返してきた!! それも一度だけじゃなく、自らに降りかかる火の粉を払うかのようにいくつもいくつも!  ドンガガガガガガォオオンッ!!!! 総員 『ほぎゃああああーーーーーーっ!!!』 呆れる他なかった。 秘奥義扱いの大魔法まで弾くなんてどうかしてる……しかも威力が向上していて、 メテオに災いを彷彿とさせる奇妙なオーラを纏わせて、 巨大なレーザーにして飛ばしてきていやがる。 彰利 『《ヂッ……!》いづっ……!───ってギャア!なんかTP半分奪われた!』 悠介 『掠っただけでかよ!』 全ての能力を見せるとか言ってたけど、いったいどれだけ能力持ってるんだ提督は! もういい加減、戦うのも辛くなる相手と化してるんだが……!? ───い、いや、弱音を吐くなよ俺! 逆に考えればいい……この世界で頑張れば、人だってあそこまで強くなれる。 そうだ、これは希望の具現じゃないか。 俺達全員があの高みまで行けば……未来は捨てたもんじゃない! 悠介 『ヤケクソも勇気の内だ!いくぞ!……───?』 と駆け出したが、提督が武装を解除。 双剣と貸した武器を鞘に納めると、なんと武具全てを一つの鞘と剣にしてしまった。 それでも装備は村人の服のままの提督が、 それらを自分の前方に突き出すと声高らかに叫ぶ。 中井出「武装錬金!!」 と。 途端に巨大な鞘と剣が散開し、それらが提督を包むと───!!  ドゴォオオーーーーーーンッ!!! 甲冑男爵『全身甲冑(フルプレートアーマー)の武装錬金!“破壊男爵”(バスターバロン)!!』 …………。 総員 『ほっ……ほ、ほほほほぎゃあああーーーーーっ!!!』 目の前に!目の前に巨大な男爵が!! え!?あれ!?あれ提督か!?どうしてバロン!? いやいやそれよりどうして巨大!? そりゃ提督が巨大化出来ることは知ってたけど、あれって博打スキルじゃなかったのか!? 彰利 『バッ……バ、ババババ……!!』 ナギー『おおおすごいのじゃー!』 シード『すごい……!父上はこんなことも出来たのか!』 みさお『感心してる場合じゃありません!来ますよ!!』  バサァッ!! 甲冑男爵『ガン・ザックオープン!───ナックルガードセット!!』  ガキ、ガキィンッ!! 甲冑男爵が背中のマントを翻し、 ロケット噴射口のようなものがついた鋼鉄のリュックサックめいたものを解放。 さらに両手についたナックルを前方で合わせ、妙に縮こまる。 それは何かの前……準備……って─── 悠介  『うわぁああ馬鹿馬鹿!!そんなもんその大きさでやったらぁああっ!!』 彰利  『ノー!ダメ!やめて男爵!やめ───』 甲冑男爵『ガンザック!起動!───勇者どもよ!塵と帰れ!!』 全員  『いや──────!』  キュボガドッガァアンッ!!! ───……その日、我らにその巨体を降らせた男爵は、 たったの……たったの一撃で俺達を全滅させた。 黄竜の力を身に纏った火の玉タックルはVITマックス程度で弾ける規模ではなく、 はっきり言って心の何処かで“相手は人間だ”なんて思って安心していたことを、 俺達は心の底から後悔する運びとなった。 ───……。 ……。 ザザザザザザァアッ!!! 彰利 『リベンジだ!この野郎!』 中井出「やあ」 彰利 『やあじゃねィェーーーーッ!!』 ややあって戦場に戻って来た俺達を待っていたのは、 すっかり自然回復してしまった普通サイズの提督だった。 衰弱に追い込むことは叶わず、結局振り出しに戻ってしまったのだ。 彰利 『解った!も〜〜〜お解った!貴様ほんと強い!認めるよ!     だが俺は悟ったね!この世界で頑張れば、俺達はもっと高みにいける!     修行ばっかじゃダメだ───旅を経て、武具を強化することも高みへの一歩だ!』 凍弥 「ていうかそれを武具一つで叶えるんだから尋常じゃないよな……」 彰利 『この変人野郎!!』 中井出「否定はせん」 彰利 『そこはしなさいよ!』 中井出「死ねぇえーーーーーっ!!!」 彰利 『キャアアアーーーーーーアアアッ!!?』 ツッコんだ途端に奇襲!! 提督が双剣を手に襲い掛かってきた!! ゼノ 『させぬ!』  ガギィンッ!!! 中井出「ぬわっと!?」 だがそれは、ゼノが繰り出した一撃によって逸らされ、地面を砕く結果となる。 ───そこを突いての不意打ち! ライン『オォオオオオッ!!!』  フオドッガァアアンッ!!! 中井出「ぶっはぁっ!?」 まるで待ち構えていたかのような拳の一撃が、提督の顔面を捉えた! ライン『《ズキィッ!》ぐっ……ダメージ反射がなんだという!!     こちらが死ぬ寸前まで攻撃を続け───!!』  ドガァンドガァンバガァドボォッ!! 中井出「がっ!ぐへっ!うぶっ!ぶへぁっ!!」 ライン『その寸前になったら交代をすればいい!!───ゼノよ!』 ゼノ 『言われるまでもない!!《ガギィンッ!!》』 散々と殴り、ダメージが蓄積してくるとシュバルドラインが後退する。 だが回復はさせぬと断ずるが如く、魔人漆黒鎌を解放したゼノが、 その漆黒の爪を以って提督の身を切り刻んでゆく! 遥一郎「よく確認させてもらったよ……。     魔法が効かないなら、魔法使いがする行動なんて回復と強化だけだ。     役割が固定されている分、迷うこともなければ───     さっきまでの戦いでお前のストックも尽きている。     10分アビリティも使えない状態なら、まだ俺達にこそ勝機がある!」 雪音 「わーおさっすがホギッちゃん!情報整理が速ーーい!」 遥一郎「ていうか……なんだ。戦場にウェイトレス姿ってどうなんだ?」 雪音 「だってだってこれはあのトンガリくんがぁ!!」 メイドもどうかしてるけどな。  ギギャギャギャギャギャギャギィンッ!!! ゼノ 『ぬぅっ───!?』 なんて一方はほっといて───今まさにぶつかりあっている人垣の中心では、 ゼノの攻撃を双剣化&六閃化させた武器で弾いた提督の姿があった。 よくアニメなどであるように、剣舞のあとに華麗に跳躍して後方に降り立つ─── そんな風にして着地した提督は……そこで待ち構えていた猛者どもにボコボコにされた。 藍田 『やっちまえぇえーーーーっ!!オラァアーーーーッ!!』 田辺 『オラオラァアーーーーーッ!!!』 中井出「ギャアアアーーーーーーッ!!!」 ……。 彰利 『……あのさ、強いって認めた途端にああだとさすがに力が沸いてこないんだけど』 悠介 『だとしたら気ィしっかり持っとけ。     提督は敵に隙を作らせる技法をさせたらとことん魔王級だ。     現に“こいつは強い”って意識が、今の状況の所為でみんなから薄れ始めてる』 彰利 『狙ってやってるならスゲェよそれ!』 悠介 『実際、言っちゃなんだが武具が無ければ提督はそんなに強くない。     技術もなければなにかに長けてるわけでもない。     ……厄介なことに、みんなそれを知ってるからどうしても油断しちまう』 彰利 『ワーー……』 悠介 『だから気を緩めるな。提督の野郎、多分またなにかどんでん返ししてくるぞ』 彰利 『や……それはなんとなく予想がつくっつーか』  ゴファアアッキィインッ!! 声  『紅蓮に炎!蒼碧に元素!連ねて一つの力と成す!義聖剣!!』 総員 『ウギャア止めろぉおおおおっ!!!』 炎と元素───そう聞いただけで、 いつか自然要塞バトルに参加したやつらは駆け出していた。 アレはヤバイ───!やばすぎる!!……と走り出したというのに時既に遅く─── 中井出「真の姿を現せ……業炎の剣!!」 フレイムサークルから噴き出る紅蓮の炎、 そしてジークフリードから暴風級に噴き出る炎が、 自らを回転させて跳躍する提督とともに天へと向かって衝き昇る!!  ヴォガガガガガォオオオオオンッ!!! 声  『うわわなんだこれぎゃあああああーーーーーーっ!!!!』 幾多の声が戸惑いとともに巨大な炎柱に飲まれ、提督とともに天へと昇る。 その規模は猫だった時の比ではない。 離れていた場所に居たやつらまでもを炎の渦が巻き込み、 爆裂させながら空へといざなうのだ。 中井出「その身に焼き付けろォッ!!」 次いで落下の炎撃。 自らが纏う炎が火の鳥のような形となり、  ゾバンガガガガガォオオンッ!!! 落下と同時に地面に突き立てられた業炎の剣が大爆発を巻き起こす!! 当然炎の渦の消滅とともに重力に引かれて落ちたやつらを飲み込むそれは、 飲み込んだもの悉くを嫌っていうくらいに爆裂させ、 レベルの低いやつ、防御ポイントを忘れたヤツを散々と滅ぼしてゆく───! 中井出「奥義───!」 次───!烈風脚で地面を蹴った提督が、この惨劇に驚愕し、 動けないでいた人垣に突っ込んで極炎を纏った巨大剣での突きを見舞って吹き飛ばし、 中井出「業魔(ごうま)ァッ!!」 さらに振り向いての烈風脚で戻ってくると同時に、 果敢にも追撃しようとしたやつらを袈裟斬りで爆滅───!! そして最後だ。 高く跳躍し、高速で自らを回転させた提督が、 中井出「灰燼剣(かいじんけん)!!」 着地と同時に振り下ろした斬撃が極大の走る火柱を放ち、  ゴバァアガガガガドンガァアォオオンッ!!! その前方に居たやつらの悉くを燃やし、爆発させ、屠り去った───! それがただ真っ直ぐに走る炎だったらよかった。 だがそれは扇状に放たれ、ただの前方だけでなく、 恐らく提督の視野に収まる位置に立っていた者全てが燃やし尽くされた。 春菜 『え……や……う、うそ……、でしょ?     あの数を……10分アビリティも無く……?』 打倒提督を心に極めていた先輩にとってそれは、絶望以外の何物でもなかっただろう。 だが驚愕は当然だ。 俺達とはやはり、武器の強さのケタが違うのだ。 レベルも普通に考えて1000〜2000は違う。 攻撃をすれば確かにダメージは与えられるが、 それも反撃されると同時に回復されてしまう。 ゼット『……胸が踊るな……!この裡に眠る破壊衝動……!今の貴様ならば───!!』 だがそんな状況でも愉快そうに疾駆するのはゼット。 真紅の斧を手に、黒竜王の力を最大限に引き出して提督に襲い掛かる!  ガバァンガァアッ!!! 中井出「ぐえぁはあっ!!?」 人垣を一気に抜けての攻撃だ───身構える前に提督を吹き飛ばした一撃は、 提督に相当なダメージを与えて吹き飛ばした。 ゼット『乾く……乾く乾く乾くのだ!!この瘴気が我を暴竜に変えんとする!!     俺と戦え中井出博光!力を!力の解放をォオオオオオッ!!!』 みさお『ゼットくん!ダメ!力に飲まれないで!!』 彰利 『ギャアこんな時に暴走!?でも強くなるならそのままでGO!!     こうなりゃ形振りなんて構ってらんねー!中井出をブッコロがせぇえっ!!!』 藍田 『命令すんなクズが!』 岡田 『一等兵風情が粋がるな!!』 彰利 『こんな時くらい素直にハワーって言いましょうよ!!』 経緯はどうあれ、エナジードレインをしたゼットが魔竜王へと変異する。 だが竜になったわけではなく、竜人状態で提督へと飛翔していったのだ。 その速度たるや呆れるほどのものであり、提督や藍田が使う烈風脚に迫る速度があった。 だがやばい───!それはヤバイんだ、ゼット───!! 中井出「紅蓮に元素!蒼碧に災!連ねて一つの力と成す!義聖剣!!」 流れるような作業で双剣を長剣化させた提督が、 緑色の光を帯びたジークフリードを巨大鞘に変えた一つの鞘に納め、ゼットを待ち構える! 武具の全てが鞘になったために提督の防御力は相当下がったが─── だがそれでも提督は鞘を戻さず剣も構えず、ゼットを迎え撃った!! ゼット『ガァアアアッ!!』  ブファオンッ!! 中井出「キャーーーッ!!」 ……いや、迎え撃ったは言いすぎだ。 振るわれる攻撃を必死の形相で避けてる。 ゼット『どうした……戦え!戦え戦え戦え戦え戦え戦え!!     我の乾きを潤せ!今の貴様ならそれが出来る筈だ!!』 中井出「……9……10!よし解ったぜ親友!これが俺から貴様に贈る最高の一撃だ!     いくぜ───ゲオルギアス!解放!!」  ゴガァッシャァアアンッ!!! ゼット『───!?』 納めていた剣を背中の巨大鞘から抜き放った途端、 目に見えて荒れ狂うほどの緑色の雷光が剣から溢れ出した───! しかもその雷は緑色の光の他に紫の光を帯びており……ああ、解る。 かつては竜の力も有していた俺だ。 あれが“竜族”に対して絶対的な力を秘めたものだということが、本能的に解った。 だからゼットも息を飲んだ。 ───その焦りが、隙になると解っていてもだ。 中井出「我が呪い……受けてみよォオオッ!!無限流極意-無双剣-!!」 ゼット『っ───はっ!くあぁああああっ!!!』 本能というものはどうしようもないくらいに鋭敏だ。 解っていてもどうしようも出来ない事態を巻き起こす。 だからそれは、ゼットの反応が少しだけ遅れた……ただそれだけが、敗因だったのだ。  ゴカァアッフィンッ!!!!  ゾボガガガガガォオオオオンッ!!! ゼット『ギガァアアアアアアアアッ!!!!     ガッ───ガァアアォアァアアアア───ァ…………ァ…………』  ゴファァアアァァ───……ァァアォゥゥン…………!! 竜の力を解放しすぎれば確かに強くはなれるだろうが……提督相手にそれは無謀だ。 幾多の守護竜を屠り、その度にそれらの素材で武具を強化してきた提督にとって、 対竜族への攻撃は効果的中の効果的。 事実、ゼットは己が身を飲み込むほど巨大な剣閃に襲われ─── その範囲が届かなかった足首から下だけを残し、そこから上を消滅させられたのだから。 彰利 「う、あ……うおぁあああああっ!!?」 みさお『そんなっ……ゼットくん!?ゼットくぅうーーーーん!!』 やがて、残った足も塵と化す。 強い……冗談抜きで強ゾブシャア!! 悠介 『ぐぉあぁああああっ!!!?』 中井出「なにをホウケておるかバッカモーーーン!!     戦いの最中に他に意識を取られるとは大したタマよ!     達人とか強いヤツが相手なら、     ここで貴様は“これで一度死んだぞ”とか言われるんだぞ!?」 悠介 『だからって目潰しするか普通!!』 中井出「ボ、ボスがもう近くまで来ているんだ!     ドッピオ状態の俺に出来ることっていったら、     それを見越して貴様らに全てを見せることしかないのだ!でも安心して?     もしボスが到着しても、俺はボスの中でボスを全力でバックアップするから」 悠介 『訳が解らん上にいい意味じゃないだろそれ!!』 中井出「ところでもうそろそろ、     10分アビリティ使ってから10分が経とうとしております。     貴様はその間、この博光と話をするだけで満足か?」 悠介 『───!くそ!』 またやっちまった───!岡田の時といい、どうして俺はこう───! だが過ぎた時間を取り戻すように焦って剣を振るうほど、 それは勢いもない情けない攻撃となり、全力で逃げ出した提督には届かなかった。 悠介 『ってだからどうしていちいち逃げ方が無様なんだお前はぁあーーーーっ!!』 即座に疾駆! 提督の背中を追って───……背中?───そうか背中だ!! 悠介 『みんな!背中だ!提督の背中を狙え!』 彰利 『───キャアそうYO!!彼奴の弱点は背中!あそこを集中的に狙えば勝てる!』 中井出「わっ!もうバレた!」 バレたんじゃなくて思い出したんだが───提督の焦りは本物だ。 その証拠に巨大鞘化させていた武具を元に戻し、 ステータスをSTRとVITとAGIに回してる。 武器は双剣に戻し、四方からの攻撃に備えて辺りをキョロキョロと見渡しまくっている。 ……事情を知らない人が見たら、明らかに挙動不審な青年だった。 閏璃 「背中である!背中を狙い仕留めるでおじゃる!朕の命であるぞ、ゆけ!!」 柿崎 「偉そうに言うならまずお前が行けって!!」 閏璃 「無礼者!聖王たる朕に死ねと申すか!」 柿崎 「無礼極まりない聖王に言われたくないわい!!」 閏璃 「ほざきやがれ!朕は聖王なるぞ!《バゴォンッ!!》ブギャーーーイ!!」 来流美「いいからさっさと行くわよ!」 閏璃 「解ったから顔面殴るのはやめろ暴力女!!」 来流美「だったら言われるまでもなく動きなさいトーヘンボク!!」 とにかく突っ込む! 突っ込んで、コロがされてでもブチノメす! じゃないと─── 鷹志 「───お?……ってやべぇ!おい凍弥!柿崎!     竜刻山でサウザンドドラゴンが復活したって!報告が来た!」 閏璃 「なにぃ!?貴様いつから王国と文通を!?」 鷹志 「文通じゃない!何か異変があったら魔法で報せるって言われてただろうが!」 閏璃 「……朕は知らぬが?」 柿崎 「お前、そんなだからソナナニスに信用されてなかったんじゃないか?」 閏璃 「貴様聖王である朕を《コパァン!!》痛い!」 来流美「だからそれはもういいって言ってるでしょ!?」 鷹志 「晦ー!アンヘルが確かに押さえてくれてるらしいけど、     精霊が近くに居ないと辛いらしいんだー!     ここに魔法使い居てもあまり役に立てないなら、魔法使いだけでも精霊たちと     サウザンドドラゴンの方に回ってもらったらどうだー!?」 悠介 『なっ……なんで俺に訊く!そういうのは穂岸に訊いてくれ穂岸に!     俺はそういう戦略めいたものが滅法苦手なんだよー!』 遥一郎「───よし!じゃあ俺達はサウザンドドラゴンの方に行ってるから!     回復と援護は───ナギーにシード、任せても平気か!?」 ナギー『誰にものを言っておるのじゃー!』 シード『言われるまでもない!行くならさっさと行ってしまえ!』 遥一郎「解った!じゃあ神父送りにされたヤツらが戻ってきたら伝えておいてくれ!」 言って、穂岸が駆けてゆく。 それを皮切りにして後を追うように魔法使いの皆々様方が駆け、 どうしてかネクロマンサーである木村まで走っていった。 ……確かに、ネクロマンサーは接近戦向きじゃないし……どうしてかってことはないか。 藍田 『さあ提督よ───ここに残りし戦人全員が貴様の背中を狙い撃つ!     果たして貴様は……滅ばずにいられるかな?』 中井出「え?えと……やってみなけりゃ解らないから大きいこと言えないんだけど……」 悠介 『それくらい虚勢ででもいいからデカく出てみろ提督てめぇ!!』 中井出「うるさいよもう!そんなの僕の勝手じゃないか!!」 殊戸瀬「───提督!」 中井出「ぬおお!?今度はなに!?」 殊戸瀬「……答えて。提督の呪いは解けたのね?それは卵の殻?それとも鱗のお蔭?」 中井出「殻である!まだあるからハイあげる」 ヒョイッ─── 殊戸瀬「あっ───!」 ひょいと放り投げられたなにか─── 金色の欠片を見て、殊戸瀬が慌てて受け止めようとする。 だがその先には極上ガイアスマイルで双剣に属性を込め、 長剣化させた武器を構える提督の姿が───!! ってうおおこいつ最低だ! 自分のワイバーンが心配で必死な女に対して笑顔のままに剣を振り下ろそうとしてる! けどあれは俺も欲しい───だから止める!絶対に止める!! 悠介 『っ───だぁああああっ!!!』 疾駆する!全力で、AGIをマックスにして! 地面を蹴り、倒れかねないくらいに体を傾けて、ただ走った───! アレを使えばもっと速かったんだろうが、咄嗟に頭が働かなかった。 けど───間に合った!殊戸瀬の前にギリギリで立つことが─── 中井出「《にやぁああああ……!!》」 悠介 『ぐあっ!?』 ぐおあああやられた!こいつの狙い、最初から助けに入ろうとする愚か者だったんだ! 戦闘中自分のことに集中出来ないたわけを殺すために、 わざとこんなゆっくりと構えて───くわぁああああああっ!!? 彰利 『危ない親友!よし行け永田!』 永田 「《ブンッ!》え?《ガシィッ!》ギャッ!」 悠介 『あ』 いつの間にかどこかへ消え失せた提督のジークフリード。 つまり徒手空拳状態の提督の両手が、永田の首を掴んでいた。 その……恐らく、俺の首を掴むはずだったであろう手が。 中井出「絶命奥義ィイ───三千大千世界全焦土(さんぜんだいせんせかいぜんしょうど)ォオオッ!!!!」  ゴバァアアンッ!!! 彰利 『オワッ!?な、なんじゃいアレ!』 悠介 『炎───!?やばい!離れろ殊戸瀬!!』 殊戸瀬「───っ!」 提督の腕から、少し近くに居るってだけでも焼き焦げそうなほどの温度の炎が吹き荒れる! それは巨大な火柱となり提督と永田を包み込み─── 永田 「あっ!がっ!ぎあぁあああああああああっ!!!!」  ゴガバババババババガァアアアアンッ!!!! 首を絞められ持ち上げられている永田の体が───爆発しながら焦げ、消滅してゆく……! 彰利 『う、あ……』 やがて塵さえ燃やされ尽くした永田は火柱の中で消滅し─── 燃え盛る火柱の中で、ただ提督の腕の霊章だけが怪しく輝いていた。  ゴファァォウンッ!! 中井出「やあ」 総員 『っ……』 その霊章から出現させた巨大剣で炎を切り裂いた提督が、俺達を見てニコリと笑む。 さすがに……そう、さすがに猛者たちといえど笑えない状況になってきた。 冗談抜きで滅法強い……どうすりゃいいだ、くそ───って、マテ。 悠介 『あ……あれ?なんか随分と人数が減った気がするんだが……』 岡田 「お?おお、猛者どもなら“ファンタジーに降りたんなら一度は魔法使いやりてー”     とか言って、ほぼ全員が魔法使いになったからサウザンドドラゴン方面に」 彰利 『なにもこんな時にそんな願望実現させんでもいいっしょ!?     誰!?誰なのやつらにロビンズイコン渡したの!』 藍田 『一緒に向こうに行ったムナミーん家の柾樹くん』 彰利 『あやつかぁあーーーーっ!!!』 凍弥 「メイガスの数に対してブレイバーが少なすぎじゃないか!     どうするんだよ彰衛門!」 彰利 『アタイが知るわけねぇデショ小僧この野郎!!』 状況は、回復役が減ったと考えるだけで十分なんだが─── それでも混乱と動揺は避けられなかった。 特に猛者以外の連中の動揺は結構高いものだ。 閏璃 「《ソワソワソワ……!》」 来流美「鬱陶しいわね今度はなによ!」 閏璃 「ち、朕は由未絵が側におらぬと落ち着かんのでおじゃる!」 来流美「とりあえず殴らせなさい」 閏璃 「え《バゴォン!》ギャーーーッ!!!」 よし。あっちは無視しよう。 というかこの状況、 中井出「エンゼルチャクラム♪《テコーン♪》ドゥォオーーリェエィッ!!!」  ブフォォンッ!!ゾガガガガガガバシャゾファゴバシャォンッ!!! 藤堂 『ぐあぎゃあああーーーーーっ!!!!』 ……自分のことだけ考えないと本気で死ぬ。 ってあのチャクラムブーメランにもなるのかよ!! 藍田 『うえぇっ!?藤堂があっさり!』 岡田 「なんなんだよあの大回転チャクラム!     受けても弾いても受けきれないし弾ききれねぇ!」 彰利 『なんだってOKさ!     ちと外道じゃけんど、他の野郎どもに意識を取られてる内に───!     終わりにしようぜ中井出よ……これであの世へ送ってやる!!』  ゾゴゴゴゴゴゴフィィインッ!!!! 軽く空中に浮いた彰利の背に、十七枚の黒の飛翼が突き出る。 それぞれの黒翼は大気から、 そして彰利が所持する無数の鎌から力を引き出せるだけ引き出し、 それらを翼ごと彰利の体に沈めてゆく。 やがて中井出に向けて突き出された双掌より───!! 彰利 『ビッグバンッ───』 中井出「───《ニコリ》」 彰利 『───!?かっ……かめはめ波ァアアーーーーーーーッ!!!!』  ドガァアッチュゥウウウウンッ!!!! 豪快な音を巻き上げ、周囲に居たヤツまでも巻き込んで巨大なレーザーが放たれる!! 漆黒であるそれはまるで、全てを飲み込まんとする黒という色のようだ─── だが提督は撃たれる直前に彰利の顔を見て笑みまで浮かべたのに、動こうともしない。 それどころかレーザー目掛けてゆっくりと歩き出したのだ!!  ドガガガガガォオオオオオンッ!!! それから少しもしない内に提督を飲み込むレーザー。 提督を飲み込んでなお消えないソレは、 この一撃で提督をケシズミにしてくれんとする彰利の意志の現われなのだろう。 そしてそれは彰利の死神化が完全に解けるまで続き─── 彰利 「《どざぁっ!》いでっ……は、はぁっ……はぁっ……!!     ど、どうだ、このやろ……!さすがにこれなら……!」 十秒以上も放ち続けた結果、彰利の死神王化は解け、浮いていた体が地面に落ちた。 荒い息を吐くのも無理は無い……あんなに無茶苦茶な力の放出をすれば、 いくらゲームの中でも体に異常をきたす。 だがアレを喰らえば誰しもがタダでは済まないのは目に見えて明らかだ。 ゼットも、もちろん俺は傷を追う程度じゃ済まない。 ……下手をすれば消滅の可能性だってある。 だってのに─── 中井出「くだらん技だな……ただホコリを巻き上げるだけか?」 ……全然、全く傷を負っていないあいつをどう説明すればいいんだろうか。 彰利 「なっ───!?がっ……え……!?」 い、いや───アビリティだ!絶対にアビリティだなにかしらの! じゃなきゃ説明がつかないだろ! ───なんて緊張を走らせた矢先から、砂埃を吸い込んだ所為かゲホゴホと咳き込む提督。 ……ほんと、緊張感のないやつだ。 藍田 『んな馬鹿な……!猫状態でも尋常じゃない数の兵士をケシズミにした     弦月のビッグバンかめはめ波が……!』 田辺 『提督のことだから絶対にタネがある筈だ!     調べる発動!───なになに……?絶対回避中……?     いかなる攻撃も通用しません……ってこれか!』 中井出「ギャアアバラしちゃだめぇええ!!!」 そしてあっさりと説明がついた提督マジック。 心底驚いて損した……。 しかも俺も調べるを発動させてみれば、たった今効果が切れたらしい絶対回避。 提督は悪戯がバレた子供のように、 寂しそうでいてバツが悪そうな顔で再び挙動不審になった。 ……なんか、もう驚くのも疲れてきた。 そうだな、凍弥の言う通りだ。 やられようがどうしようが、もうツブそう。 悠介 『提督……お前確か、人器っていうの使えるんだよな』 中井出「そうだ」《どーーーん》 悠介 『そ、そこで無駄に胸を張られてもな───けど、だったらいいもの見せてやる。     竜の回路を開放したことで手に入れたこの能力───“神器”!!』 中井出「なんだとぐわぁあーーーーっ!!」 悠介 『まだなにもやってないだ───』 中井出「死ねぇえええーーーーーっ!!!!」 悠介 『うおぉおーーーーーっ!!!?』 不意を突いて提督が襲い掛かってきた! だが───落ち着け、冷静に───先読みする!! 悠介 『“電光石火”(ライカ)!!《キュバァンッ!!》』 中井出「ぬおっ!?き、貴様それは───」 提督のチャクラムが俺の顔面に接触するかしないかの僅かな刹那。 足に出現した、高速回転するローラーブレードが一気に俺を提督から遠ざける! 中井出   「き、ききき貴様ァアーーーーッ!!まさかっ!そんなッッ!!」 彰利    「ダーリン!?てめぇ天界人でもねぇのに───!」 悠介    『俺に言われたって知るかぁーーーっ!!        竜の回路を手に入れた後に神っていう存在ってことと、        なにかをなにかに変える力……        変化の指輪の効果の所為か使えるようになったんだよ!』 中井出&彰利『くれ!』 悠介    『やれるかぁっ!!』 距離を取るやライカを解除し、地面に降り立つ。 仕様条件が神回路の解放状態だから、結構体に負担がかかるのだ。 出来れば長くは使いたくない能力の上、 これを発動させているうちは足が地面に根付いたかのように跳躍が出来なくなる。 中井出「グ……グオッフォフォ……これはこれは死ねぇえーーーーーっ!!!」 悠介 『うおおっ!?すっ……少しは言葉を繋げる努力をしろこのぉおおっ!!』 提督が再びチャクラムを手に襲い掛かってくる! ……ってこんなデカくて凶悪なチャクラムなんて見たことないわぁーーーっ!! 悠介 『くそっ!“鉄”(くろがね)!!』  ドゴォンッ!! 中井出「ヒィッ!!───…………あ、あれ?     音はすれども玉が《バゴォンッ!!》ぐぎゃぁああああああっ!!」 悠介 『───っし!』 右手を翳し、撃った砲弾が提督の背中を狙う。 構えた右手にはなにもない。 何故なら、そう願わない限りは俺の手になんか出現しやしないものだからだ。 砲台は提督の後方の虚空に存在し、用を為したそれはさっさと消滅した。 中井出「げはっ!ぐはっ……!な、なんで後ろ、から……!」 STRを高めていたところに丁度くらったんだろう……それも背中に。 提督のダメージは甚大なものになったようだ。 中井出「《ピキーン!》見切ったァアッ!!     貴様は真天界人……じゃなかった、真神界人……いわゆるネオ扱いで、     自分自身という神の器と物質をなにかに変える力を持つ者!     そして恐らくだが貴様の神器には能力が宿っている!     植木くんなら木!ロベルトなら理想を現実に変える力!     ならば貴様は───創造!!神器に創造を混ぜたと見た!     故に何処にでも神器を創造することが出来て、     自らを囮に俺の背中を狙うことが出来た……だな?     ふふ、解ってる、解ってるよ、解ってるからね」 悠介 『………』 時々この人の思考の回転力には脱帽する。 ゲームで鍛えた理解力なのか、超常的なものにはひどく頭が回りやがる。 そう……俺の神器に付加された能力は創造。 能力側の限定条件は目に見える位置じゃなければ創造出来ないこと。 逆に言えば目に見える場所なら何処にでも神器を出すことが可能だが、 例えば向き合っている人の背後に創造することは出来ない。……見えないからな。 さっきのは提督の後方の高い位置に鉄を創造して撃っただけだ。 残念ながらまだレベル2には達していない……回路が足りないんだそうだ。 悠介 (……?) ……マテ。 なんか提督らしくないぞ? 戦闘の最中にこんなにだらだらと、誤魔化すみたいに話をするヤツじゃあなかった筈だ。 それがどうして─── 中井出「……、が、ぐ……!」 注意深く見てみれば、提督は時々苦しげに頭を抱えていた。 武器を霊章に納めたまま、取り出しもしないでだ。 もしかしてさっき言ってた後遺症ってやつか……? いや、それにしては発症するのが遅すぎる。 だったら───? 中井出「あ……、ぐあ……!く……!く、くそ……!どうやらここまでのようだ……!」 彰利 「なにぃ!?死ぬの!?」 中井出「死なないよ!なにいきなり酷いこと言ってるの!     僕が僕としていられる瞬間がここまでってことになるってことさ!」 悠介 『……?それってどういう───』 中井出「《ドクンッ……!》ぐぉあっ!……ぐ、ふぐっ……!い、いいか貴様ら……!     これは俺の願いである……!     どうか……どうか俺の中の怪物を鎮めてやってくれ……!     ヤツはもうそこまで来ている……!だから……げほっ!だから……!」 彰利 「怪物って……ワケ解んねーぞ中井出この野郎!     怪物ってのはアレか!?エロマニアの化身か!?」 中井出「違うよ!!だからなんでそうなるの全然違《ドクンッ……!》ふぐっ……!     ぐ、うう……!だ、だめだ……もうほんとここまでみたいだ……!」 悠介 『提督……?』 明らかに提督の様子がおかしい。 また不意打ちをしてくるのかと身構えていたが、その様子もなく─── ただ苦しげに頭を抱えて、なにかに耐えながら俺達に言葉を残そうとしている。 なにか……あったのか?この状況に辿り着くまでに。 中井出「最後だ……貴様らに届けたい言葉がある……」 来流美「……不意打ち狙いってわけじゃなさそうね。……なに?」 中井出「俺はここで……貴様らに俺の能力の大半を見せた……。     見せ切れなかったものもあるが、ほぼを見せられたと思う……」 悠介 『提督……お前……』 迫る何かを前に、俺達に必死に教えようとしてたのか? 恐らく───体を乗っ取るであろう何かに怯えながら…… 彰利 「中井出……てめぇってやつは……」 彰利も提督の言葉の意味に気づいたのか、呆然とした表情で提督を見ていた。 他のやつらもそうだ。 皆が皆提督を見て、立ち尽くしている。 …………ただ一人、清水を除いて。───って、え?どうしてだ? 中井出「その、見せた能力なんだがな───これから来るヤツ、全然使わないから」 総員 『───エ?』 思考が停止した。 ……ちょっと待て、今この提督なんて言った? 悠介 『ちょ、ちょちょちょちょー……ちょっと、待て……。     それじゃあなにか……?少しずつ何かに備えようとしてた俺達は───』 中井出「ワハハハハ!!この博光が迫る何かに怯えるあまり、     手の内を見せる常識人だとでも思うたか!     むしろ逆よ!この状況さえ利用して散々と手に入れた能力を試させてもらったわ!     ……これより我が身に訪れるのは俺の装備、俺の能力とは全く関係を持たぬ者。     いつまでそいつの状態で居るかは正直解らんが、     一度我が意識を食って誕生した者は打倒でもせん限り引っ込まぬだろう……。     さあ来るがいい勇者ど《ドクンッ!》はぐおっ!?     ちょ、ちょっと待ってまだ喋ってるでしょ!?最後くらいカッコよく締めさせ……     ア、イヤ、ダメ!ホント駄目!ちょっと待ってあと少しで終わるんだから!     やめ───ヴァーーーーーッ!!!」  ガンバババババババォオオオオンッ!!!! 総員 『うおぉおおああっ!!?』 笑い、だが途中で切羽詰った顔になっていた提督が、 黒と赤を混ぜたような炎に飲み込まれる。 彰利 「ぐおおお!物凄ぇ気だ!悔しいがオラ数倍はありそうだ!」 藍田 『清水てめぇ!まだ何か知ってるなら教えろ!これなんなんだ!?     提督の身に一体なにが起こっているっていうんだ〜〜〜〜っ!』 RX 『どうしてそこで肉チックなのかは敢えてツッコミ入れないが、     これより提督はヤツになるのだ』 藍田 『ヤツ!?ヤツって───』 RX 『ベルセルクで言う鎧の狂戦士』 総員 『うわぁ……』 よりにもよってかよ。 そりゃ確かに提督の武具での特性なんて使ってきそうにもない。 RX 『あ、でもそうだって確定してるわけじゃないから、多分別のものが来る』 岡田 「お前の予想は?」 RX 『提督の言葉から察するに───』 火闇が集束する。 天を衝くほどの渦を巻いていたそれはやがて、 人一人分くらいの高さまで渦を圧縮させると─── ゴバァン!という激しい音を掻き鳴らし、……その場に一人の男の姿を見せ付けた。 RX 『……バルバトス=ゲーティア』 総員 『いやああああああーーーーーっ!!!!』 俺達の意志は、絶叫とともに今まさにひとつになった。 Next Menu back