───冒険の書243/ワールドデストロイヤー───
【ケース583:晦悠介/最強の人間】 ゴォオオッ───ガギィンッ!! バルバトス「さぁっ!来いよォッ!貴様ら全員ンンッ!!微塵切りにしてやるぜぇぃ!」 火闇の渦が、振るわれる斧によって霧散した。 その先に立っているのは一人の男。 姿は既に提督のものではなく、それこそ変身を思わせるほどの別人がそこには居た。 彰利 「よりにもよってバルバトスって……!ええいなにくそっ!     とにかく戦わなきゃ倒せないんだ!突っ込むっきゃねぇえーーーーーっ!!!」 悠介 『ば、ばかっ!お前傷も癒えてないのに───!』 俺よりもゲーム経験の高い彰利だ、相手の強さが解らないほど馬鹿じゃない。 けど所詮はゲームキャラ、なんて思いがあったのだろう。 死神王化も発動できないくらいに疲弊してるってのに突っ走ると、 稀黒装レヴァルグリードで殴りかかった。 ───が。  ゴギィンッ!! 彰利   「いづっ!?あ、れ───!?       攻撃当たってるのに手応えらしい手応えが───」 バルバトス「貴様に俺と戦う資格はァアッ……ねぇえええーーーーィイイッ!!!!」  キュヴォァイズガァアガガガガォオオンッ!!! 彰利 「ガァアアアォアアアアアッ───…………!!」 バルバトスがその右手に持つ斧……ディアボリックフォッグが光ったと思うや、 斧から巨大で凶々しい黒と赤を混ぜたような波動が放たれ───彰利を滅ぼし尽くした。 いくら弱ってたとはいえ一撃って……冗談じゃないぞ、あいつ滅茶苦茶強い。 岡田   「チチチチープエリミネイトだぁあっ!!!」 丘野   『普通に“必殺技”使ってくるなんてずるいでござるーーーーっ!!』 藤堂   「我に策あり!」 岡田   「おお藤堂!もう戻ったのか!」 丘野   『おお!チャクラムに微塵切りにされた藤堂殿!』 藤堂   「ご丁寧に死因を公言してんじゃねぇえーーーーっ!!       いいかてめぇら!相手がバルバトスならこの勝負、俺達の勝ちだ!」 浩介   「ぬう!?そのココロは!?」 藤堂   「バルバトスは回復行為を一切行わん!       戦う以外の行為全てが軟弱だと断ずるが故だ!」 悠介   『……マテ。ってことは』 バルバトス「軟弱者は消え失せろォッ!!ジェノサイドブレイバァアーーーーーッ!!!」  ドガァアッチュゥウウウウンッ!!!! 悠介 『やっぱりぃいいいいいいいっ!!!!』 “戦わない”という、ヤツから見ると軟弱行為が彼の心に火を付けた!! 再び放たれる黒赤の波動が俺達へと放たれる!! ───ようはとにかく戦いまくれってことだろ!?だったら……! 悠介 『“電光石火”(ライカ)!!《キュバァンッ!》ぜぇえぁあああああっ!!!』 総員 『散ッ!!《シュババッ!》』 ローラーブレード型の神器、ライカを出現させて地面を滑る。 所詮は波動系だ、距離があれば横に避けれるし、避けた後は敵を攻撃し放題だ。 地面を滑りながらヴィジャヤを手に、一気にバルバトスへと攻撃を仕掛ける!!  ヒュフォソギザゴォンッ!! 悠介 『げはぁっ!!?……っ……ん、な……!!』 斬り込んだ───確かに敵を斬ったのに、怯むこともなく攻撃を返してきたやがった……! 腹が熱い……!斧が、俺の腹を刻んで───やべっ……! 藍田 『やろっ───三点切分(デクパージュ)!!』  ドガガガァンッ!! 悠介 『っ……づはっ───!』 追撃で殺されると確信したところに、藍田が割って入ってくれた。 喉と胴と足を一気に蹴った攻撃はバルバトスの注意を俺から逸らしてくれた。 だから俺は体勢を立て直すためにも、斬られた腹を庇いながら距離を───あ。 バルバトス「漢に後退の二文字はねェエエいッ!!!」  ズギャオドッガァアアンッ!!! 悠介 『ぐあはぁあああああっ!!!』 後退したのが合図だった。 気づいた時にはもう遅い─── 呆れるくらいの疾駆で距離を詰めてきたバルバトスはそのまま俺にぶちかましをし、  ドガァッ!ガゴッ!ドッ……ドガッ!ゴコッ!ドシャアッ!! 悠介 『がっ!ぐっ!……がっ……はぁっ……!!』 地面と平行に吹っ飛ばして大地を豪快に転げさせてくれた。 まるでゼプシオンに吹っ飛ばされた時みたいだ……体が軋む。 丘野   『いくでござる!炎雷覇ショット!《ドチュチュチュチュチュ!!》』 バルバトス「《ドガァンドガァンドガァンドガァン!!》ぬぅうりやぁああぉおおぅ!!」 丘野   『うおおおおおおおあああああっ!!?       ファイヤショット無視して突っ込んでくるでござるーーーっ!!』 俺に気をとられている隙を突いて、 刀から炎の玉を放つ丘野がバルバトスを攻撃する───が、 確かに当たってるのに当たることを一切気にせず丘野へと走ってゆく!! 丘野   『わわわ解ったでござるーーーっ!!こいつやっぱり       常時ハイパーアーマー状態で《ザゴバァンッ!》ギャーーッ!!』 岡田   「丘野ーーーッ!!くそっ!コノヤ《ガシィッ!》うおわっ!?」 バルバトス「俺の背後に立つんじゃねぇっ!!」  ルオドッガァアンッ!!! 岡田 「っ……がっ……ぎあっ……!!」 丘野を強引に斧で斬りつけたバルバトスを後ろから切りつけようとした岡田だったが、 頭の後ろに目でもついているのか……後ろも見ずに伸ばした手が岡田の襟首を掴み、 強引に前方の地面をへと叩きつける。 岡田は背中から叩きつけられた所為かゲポッ……と嫌な音を喉から立たせ、 筋肉を硬直させるみたいに動きを鈍くさせて苦しみ、 バルバトス「いつまで寝てんだァッ!!」  ヂガドッガドッガドッガァンッ!!! ───追撃として放たれた雷撃踏み付けで、あっさりと塵と化してしまった。 総員   『ざわ……』 バルバトス「縮こまってんじゃねぇぇえええええっ!!」 総員   『ヒィイイイイイ!!恐怖に怯える暇すらねぇえええっ!!!』 考えが甘かったのをまず挙げたい。 確かに回復はしないのだが、それが必要ないくらいに滅法打たれ強くて滅法強い。 しかも常時ハイパーアーマー……こっちがいくら攻撃したってその攻撃を掻い潜って…… というか無視して斧を振り下ろしてくる。 退けばボコボコ、進めばボコボコ、防御すればボコボコにされ、背後を取ればボコボコ。 戦わなければボコボコにされ、命乞いすりゃボコボコだった。 ───けど、ひとつだけ言えることがある。 苦労はするが、ダメージはきちんと蓄積されてゆく。 提督の言う通りだ───こいつは提督の能力の一切を使わない。 雷撃踏み付け……トランプルも、こいつの固有技みたいなもののようだ。 いわば全く別の能力を使うイレギュラーだ。 だからうおぉおわああああああっ!!!? バルバトス「ぬぅうんっ!!」 悠介   『ちょ待《ゴガギィンッ!!》ぐわぁあっつぅうううううっ!!!』 全力で振り下ろされた斧を剣で弾き落とす─── ってこっちの都合お構いなしで襲ってくるところとか提督みたいだなちくしょう!! つーかバルバトスを前に、 引くことが出来ずに震えながら武器を手にするみんなが酷く悲しく見えた。 引くことは許されないし、立ち止まったままだと襲われる。 だからジリジリと少しずつ前に進む悲しさ……。 なぁ、そんなことやっててもいずれはゼロ距離になるんだぞ……? そんなことを囁きかけても、無駄のようだった。 凍弥 「う、うわぁあーーーーーっ!!」 もう怯えに怯えた……たとえばモンスターに立ち向かうただの村人のようだった。 悠介   『凍弥!もういっそヤケッパチになれ!攻撃し続けていれば勝てるんだ!』 凍弥   「そんなこと言われたって───」 バルバトス「死ぬかァアッ!!」  ルオゴヴァギャアッ!!! 凍弥 「ぐっはぁっ───!!」 無造作に振るわれた黒と赤を混ぜたような炎を纏った一撃が、凍弥の頭部を砕く───! すぐに浩介が走り寄るが───まずい! 浩介   「同───」 バルバトス「消えるかァアッ!!」 浩介   「ぬお《ゾゴォッ!!》が───!!」 凍弥を一撃で屠り、次いで振るわれた斬り上げが浩介の首を飛ばす───! そして、それを見て息を飲んだ浩之の首を片手で掴むと軽々と持ち上げ、 バルバトス「土ォ下座してでも生き延びるのかァアッ!!」  ザゴゾバァンッ!! 膝蹴りで宙に舞わせたかと思いきや、 即座に斬り下ろしで地面に叩きつけるように斬滅した。 総員   『ざわ』 バルバトス「縮こまってんじゃねぇぇえええええっ!!」 総員   『いやぁあああああああっ!!!』 ……解ったことが一つだけある。 この男の前では、俺達は馬鹿みたいに前進するしかない兵隊のように、 ただただ只管に戦い続けるしかないのだと。 でも戦い続けるしかないにしても、それを喜ぶやつは居るわけで。 ゼット『ルゥウウオオオオオオオオオッ!!!』 ライン『ルァアアアアアアッ!!!!』 ゼノ 『オォオオオオオオオッ!!!』  ヂガガガガギゴギガギザゴゾファゴフィィンッ!!!! 他の者を弱者と断じてしまえるあいつらは、 それはもう嬉々としてバルバトスとやり合っていた。 今まで攻撃しなかったのはどうやら様子見だったようだが─── バルバトス「今死ねぇい!すぐ死ねぇい!!骨まで砕けろォッ!!」  ドガァンッ!ゾガァンッ!ヂガガガォオオンッ!!!! ゼット『グアオッ!!』 ライン『がはぁっ!』 ゼノ 『ぐぬぅううっ!!』 ……こちら側が誇る血気盛んメンバーでも、旗色の悪さは怪しい毒薬の色並に悪かった。 攻撃の全ては大振りであり、避けることも可能なんだが─── 後退すればぶちかましをされるため、バックステップは出来ないから相当にやりづらい。 だがそれこそを望む、似た者同士がそこには居た。 ゼット『ふははははは!!いいぞ、いいぞぉおおおおっ!!!     戦いとは!殺し合いとはこういうものでなければ───!!     中井出博光!貴様の身に何が起きたのかは問わぬ!     今はあらゆる力を以って俺を楽しませろ!!───すぐに終わるのはつまらん!     ありったけの回復アイテムを使い、命尽きるまで俺を楽しませろ!!     この乾きを!飢えを!枯渇を!潤してみせろ!!』 歌でもろうじそうな馬鹿者だ。 そんな彼が言葉の通りバックパックからグミを取り出し、 ヒョイと口に入れた───時点で、彼と彼の側に居るヤツの死は確定していた。  ゴヴァアアッキィイインッ!!! ゼット『なに───!?景色の暗転《ガキィッ!》がはっ!?』 景色の暗転───次いで、目にも留まらぬ疾駆と、ゼットの首を掴む豪腕。 突然のことに虚を突かれたゼットの前には、 鬼の形相で顔面の神経をピグッピグッと躍動させながら怒る修羅が居た。 バルバトス「アァアイテムなぞォオ……!!」  ゴバァガァアアンッ!!! ゼット『ぐはぁっ!!』 掴み上げられたゼットが地面に叩きつけられる。 それはどれほどの速度だったのか、地面に巨大なクレーターが出来るほど、 ゼットの体は地面に減り込んでいた。 バルバトス「使ってんじゃァアッ───!!」  ゴボゾガガガボガァッ!!! ゼット『ぐあぁああっ!!』 次いで、埋もれたゼットを地面ごと中空に吹き飛ばす破壊の一撃。 地面を抉り、瓦礫ごと中空に斬り上げられたゼットは、 血を撒き散らしながら苦悶の表情を見せる。 ───そして最後。 その攻撃に巻き込まれたゼノとシュバルドラインもろとも、 バルバトス「ねぇえええええええいィイッ!!!」  ズゴァッフィィイインッ!!! 跳躍とともに振り上げられた斧がゼットの体を斬滅する。 余波に巻き込まれただけでも塵と化したゼノとシュバルドラインは、 ただご愁傷様だとしか言いようがない。 などと心の中で十字を切っていると、 バルバトス「……貴様らァ……そんなところで長々となにをしている……」 佐古田  「ゲッ!見つかったッス!」 佐知子  「ちょっ───どうすんのよ!」 さっきからずっと何かをやっていた佐古田と佐知子さんがギクリと肩を跳ねさせる。 何を、といえば───なにかを調合していたようだ。 しかもドーピング系統の薬品っぽい。 バルバトス「畜生にも劣る下劣な行為ぃ……見過ごすほどの腑抜けではないわぁっ!!」 佐古田  「ぬ、ぬおぉァア……!!物凄い威圧感ッス……!」 バルバトス「鼠のように逃げおおせるかァッ!!       この場で死ぬかァッ!どちらか選べぇええいィッ!!」 佐古田  「じゃあ逃げるッス!!」 バルバトス「男に後退の二文字はねぇええええい!!!!」 佐古田  「どうしろって言うッスギャアアアアア!!!」  ドゴォン!ギョガァアガガガォオオンッ!!! ……佐古田、リタイア。 ぶちかまされてジェノサイドブレイバーされて消滅した。 清水   「……なぁ……確かにずっと戦ってりゃ勝てるなろうけどさ……。       それが酷く先の話になりそうだって思ってるの、俺だけか……?」 田辺   『言ってる場合じゃねぇよ!来た来た来たぁあああっ!!』 バルバトス「ぶるぅうううあぁあああぁああっ!!!」 清水&田辺『キャッチマイハァアーーーーーーッ!!?』 OHベリーメロン。 ……その後俺達は、蒼色の修羅にボコボコにされた。 ───……。 ……。 ズドドドドドッ─── 彰利 『最初から全力ッ!!ビッグバンかめはめ波ァアーーーーーーーーッ!!!』  ダンッ───ギガァチュズガガガォオンッ!!! しっかりとコロがされ、復活してからここまで。 途中で鎌を解放して能力を引き出している彰利と合流。 一緒に走り、やがてバルバトスが見えたところで跳躍した彰利は、 出し惜しみは馬鹿のすることだと断じていきなりビッグバンかめはめ波を撃った。 耳を劈く音が、波動が、地面を抉ってなお威力を無くさずに蒼の鬼へと向かってゆく! それに対してのバルバトスは───そのまま突っ込んできたぁあああっ!!!  ズガォヴァンガガガガガァアッ!!! クリーンヒット!なのにてんでいい予感がしないのはザヴォアァッ!! 彰利   『ヒエッ!?うぉおああぁああああああっ!!!!』 悠介   『うぉおおわぁあああああああっ!!?』 バルバトス「さあ、見せてもらおうか!貴様らのもがきとやらをォオッ!!」 飛翼を広げての一点集中フルブレイクカタストロファー! それをくらいながら、普通に闇の極光から飛び出てきたよこいつ!! 滅茶苦茶だこいつ!基本防御力とかが尋常じゃない! みさお『ステータスが高いんだったらステータスを下げるまでです!───聖ちゃん!』 悠介 『へ───?』 聖  『うん任せて!災厄の象徴たる者を弱体に導け!“不浄を滅する災狩の大鎌”(ディザスティングヴァニッシャー)!!』 聖がゴシャァンッ!と出現させた鎌を回転させる! それは確かにこの災厄的な人間には通用するだろうが─── 悠介 『ままま待てぇえっ!!』 彰利 『ノー聖!それダメ!ノォオオオオオッ!!』 俺達は目の前にその災厄さんが居るのも忘れて聖の制止にかかった。 だが時既に遅く─── 聖    『え───《ドンッ!》あ』 悠介&彰利『あ』 回転させた鎌を地面に突き立ててしまった聖を中心に、 災いを弱体化させる闇の場が展開された。 ああ……終わった……戻ってきて早々……終わったな……こりゃ……。  マジュウンッ!《弱体化効果!バルバトスの防御力が下がった!!》 ……下がった。ああ、下がったな。下がってしまった。  ゴシャァアッフィィインッ!!! バルバトス「貴様の死に場所は───ここだぁっ!       ここだ!ここだ!ここだぁああっ!!」  ピピンッ♪《ヴァイオレントペイン発動!        バルバトスの攻撃力が極大UP!防御力がDOWN!!》 ……そして発動する、割に合わない状況。 フレイムサークルとして、 バルバトスを中心に円を描いて燃え盛る火闇がやけに眩しかった。 悠介 『こなくそぉおおっ!!』  ヒュフォンフォンフォンフォガギゴギゾフィザフィガギィンッ!! 悠介 『うがぁあああっ!!パワーファイターのくせに武器捌きが巧ぇええっ!!』 彰利 『頑張りたまえよチミィ!ヴィジャヤの名が泣きますよ!?そぉおおい!!』  フフォガガガガガギィンッ!!! 彰利 『あー───こりゃ確かに《ブフォンッ!》ほわったぁあああっ!!?』 連撃を繰り出すも、大半は巨大な斧で防がれてしまう。 しかも防ぐとともに素手での攻撃や蹴りまでやってきて、隙あらば掴もうとさえしてくる。 だってのに後ろに下がればぶちかまし……辛いぞこれ! 彰利 『こんにゃろっ───来たれ冥界の波動!ロードオブデスラインゲー───』  ゴシャァッキィインッ!!! バルバトス「一発で沈めてやるよォオ……!!」 彰利   『イヤァアアアアアッ!!!ウソ!ウソです!!       世界引っ張ったりしないからそれだけはぁあああっ!!!』 藍田   『言うより止めろぉっ!!』 岡田   「戻って早々どんなカーニヴァルだよまったくもう!!」 藤堂   『だが俺達は恐れぬ!』 田辺   『《ゴバァォンッ!》御託よりも先に連撃食らわせて止めねぇか!       牙銀大砲───溜めてる暇がねぇ!だったら幻魔だ!』 総員   『喋ってる暇あったら攻撃ぃいいいっ!!!』 彰利の世界展開に反応して力を溜め始めたバルバトスを見て、 その場に居た事情を知る者全てが一気に疾駆! それだけはさせるまいと攻撃をしまくって止めに入る!!  ザグザグドシュゴシャボゴドゴバギャドカゴッシャアッ!!!  ザガゾガゾフィザフィズバラシャシャシャシャシャゾガァッフィィインッ!!!! 丘野 『うおおおおお無月散水にも動じねぇでござるーーーっ!!』 田辺 『夢幻魔空殺が通用しねぇええーーーーーっ!!』 彰利 『止めないとっ…………!止めないといけないのに…………っ!     攻撃してるのに…………がっ…………ダメっ…………!』 総員 『ふざけてる場合じゃねぇだろうがこのスダコ!!』 彰利 『ごめんなさいごめんなさい!本当にごめんなさい!!     まさか世界にまでカウンター能力持ってるなんて───!!』 斧を右手に持ち、振り被る状態で体を捻って力を溜めている蒼の修羅。 ゲームの方では攻撃しまくれば止められたというのに、なんでこう───! 彰利 『ち、ちくしょう!だったら超外道奥義!金ちゃんクラーーーッシュ!!』  ガギィンッ!! 彰利 『───……ここまでハイパーアーマーですか。なんてゴールデン』 悠介 『もういい!彰利!ここまで来たらどうしたって一緒だ!     ラインゲート完全に開いて攻撃しろ!』 彰利 『オッ……いいねぇキミのそういうところ大好きだぜ親友!!     そんじゃあいくぜ!ロードオブデスラインゲートォオッ!!!』 一度はすぐに引っ込めたラインゲートを完全に引っ張り込む。 そしてそこから流れ込む死神の力を黒に吸収させ、力を増幅させてゆく───!! バルバトス「覚悟はァ……出来たかぁあ……!?」 総員   『あ』 バルバトス『ワールドデストロイヤァアーーーーーッ!!!』 ゴォギバァッシャォオオオオオンッ!!! ガバシャシャシャシャシャシャドッシャァアアアアアンッ!!!! 災厄の炎が暴れ狂った。 まるで全方向に圧縮したジェノサイドブレイバーを放ったかのような一撃は あっさりと彰利のラインゲートを破壊。 その上でその場に居た俺達全員を屠り尽くし─── 俺達は神父のありがたい説教を受けることとなった。 ───……。 ……。 そして再度戻って来た時。 そこには先に昇天めされていたゼットたちが居た。 いや、正しくはゼットだ。 竜人と化し、瘴気を吸い込んで力にしてバルバトスと戦っている。 斧同士ということもあってか戦い方は多少似通ってはいるが、 技術ではゼット、力ではバルバトスという感じの戦いになっている。 いや……あのゼットが技術に頼るしかないなんて、どういう相手だよ……。 ただの力任せでも、ゼットに負ける自信あるぞ俺……。 藍田 『負けるかぁあ!!武装錬金&エナジードレイン!!』 そしてここに、ゼットのジョブ能力のエナジードレインに対抗する男が一人。 じゃなくて。 悠介 「すぅっ……はぁ───んっ!」 彰利 「準備はOK?……いい加減、本気の本気でかかるぜ?」 悠介 「ああ」 槍雷剣を握る手に力を込める。 いこう───能力の全てを使ってでも、あの蒼の修羅を打倒する! 悠介 「神力解放!120%ォオオッ!!《キュバァンッ!》』 彰利 「死神の力だと死力でいいんかね。     なにやら思い切り頑張ってる力を解放するみたいな感じだけど───     死力解放!140%ォオオッ!!《メギャアンッ!!》 悠介 『妙なところで対抗意識燃やすんじゃない!』 彰利 『うるせーーーっ!大体なんで120%なのかね!     どんな中途半端さだー!?コノヤロー!たまには124.8%とか言ってみろ!』 悠介 『それこそ半端だろうが───っていくぞ彰利!ゼットが圧されてる』 彰利 『なんですと!?ちくしょうてめぇ空界での強さを思い出せタコ!     こっち側になった途端に弱くなるなんて     漫画やゲームのライバルキャラかテメーワ!』 相手が強すぎるだけなんだろうけどな。 いや、飲まれるな。 敵が強すぎるのはよく解った───あとは戦い続けるだけだ。 度肝を抜かれる強さだが、諦めなければ勝てると信じてる。 悠介 『けど、贅沢言うならラグがあればな……』 彰利 『それこそ言ってもしょーがねー!ホレ!いいから我らの力を見せてやりますよ!     精霊武具“黒死霧葬剣(ダークマター)”!アタイの新たな武器の強さを見せたるでぇえい!』 悠介 『ってお前!ルナカオスは!?』 彰利 『合成させた!』 悠介 『たわけぇえええええっ!!!』 人が苦労して創造した武器をなんだとっ……! ああいやもういい!言ってる場合じゃない! 今はとにかく疾駆の先に居る蒼の修羅をコロがすことだけ考える! 悠介 『神真槍雷剣(ヴィジャヤ)!ブレードオープン!』 走りながらヴィジャヤに意識を通し、剣を変形させる。 正面から見た刃身の中心から左右に割れ、無数の雷を発生させているソレは、 よくあるシューティングなどでレーザーを撃つ兵器を彷彿とさせる。 あれだな、テイルズオブデスティニーで言うベルクラント。 あれのビーム発射装置の形に似ている。 ならば先が割れたソレでなにをするのかといえば、それもまた同じだ。 猫たちが提督の武具をいじってて閃いたものらしいが、果たして─── 悠介 『───』 集中する。 足を動かしながら、只管に。 やがて頭に溜まったイメージと雷の力を一気に爆発させ、 軽く割れたかのようにズレたが真っ直ぐ前を向いている刃を二本の伝導体とし、 その中心にイメージと雷を通過させて放つ! 悠介 『“超電磁波動砲”(メガレールカノン)!!』  キュォオゥィヂガァアッチュゥウウウンッ!!!!  ガシャンッ!バシュゥウウッ……!! 分かれた刃身の狭間を通過して放たれたレーザーはバルバトス目掛けて飛翔する。 撃ち終えたヴィジャヤは分かれた刃身を閉じ、 分かれる部分があるということなど見分けることが出来ないほど密着し、 持っているだけでも熱いくらいの蒸気を吐き出す。 ヴィジャヤの固有能力、レールガンだ。 溜めずに撃てばガン……つまり銃になり、放たれる雷も線ではなく弾。 だが溜めるとカノンとなり、波動砲に至るという、亜人種たちによる傑作。 つくづく思う……提督の武器が強いわけだ、と。 いくら素材がよくても、鍛える者の腕が悪ければ宝の持ち腐れ。 しかし猫たちはあの短時間で、 俺の武器をこんなにも素晴らしいものに仕立て上げてしまった。 提督がギミックを好きになる理由、解る気がする。 ラグもかつて槍化だの弓化だのを有していたが、さすがにこんなのはなかった。 だから楽しくてしょうがない。  ヂガァアガガガォオオオンッ!!!! バルバトス「ぬぅううあぁああぉおおぅ!!ぬゥウるいわァアアッ!!!」 ───なのにクリーンヒットでも平気で走ってくる彼が勇ましくて泣きたくなる。 だが効いてないわけじゃないのは解ってるから、 怯えもせず泣きもせず肉薄し、連撃を叩き込むことに専念した。  ギガァンガギガガギゾフィンガギンゴフィィンッ!! 振るい、突き、払い、敵の攻撃を避けてはその間隙を縫って一撃一撃を確実に当てていく。 だが相手も流石の腕前。 斧の重みか攻撃自体はそう速くないんだが、疾駆速度や防御面が長けすぎていて辛い。 何故ならこちらは、先に戦っていたゼットに加わった俺と彰利の三人で撃を連ねている。 それに対してのバルバトスは一人で、武器は巨大な斧とくる。 人の身の丈ほどありそうなソレを豪快に振るっては、俺達三人を圧し続けていた。 何故三人でしか突っ込まないのかなんてのは簡単だ。 背後に回れば殺されるからだ。 接近戦でいっぺんに戦えるのはせいぜいで4〜6。 しかしその4〜6は敵の背後に回る数も合わせてのものだ。 正面と横からの攻撃しかまともに入れられないなら、三人で戦うしかないというわけだ。  ゴギィンッ!……ギチッ……!ギリィッ……!! 悠介   『くっ……!ぐ……!!』 バルバトス「どぉおうしたぁあ……!!貴様のもがきはその程度かァア……!!」 剣と斧が衝突する。 鍔迫り合いのような形で固まった俺だったが、いくら押しても圧し弾けない。 しかもこっちは両手で圧しているっていうのに、相手は右手一本とくる。 さらに言えば余裕の顔で放ってくる若本ヴォイスがやけに耳にくるというか……!! いやいい声だぞ!?俺は若本さんの声が大好きだ!あの独特の喋り方とか大好きだ! けどなぁ!この強さの前じゃ声が好きとか言ってられないんだよ! 逆に声に余裕が含まれすぎてて悔しいんだよチクショオオッ!! ───ギャリィンッ!! 悠介 『づはぁっ───!!っ……くそっ!頭が下がるぞ英雄たちに!     こんなヤツとまともにやれるなんてどうかしてる!』 圧し弾くのは無理と判断した俺は、自らを下がらせるようにして相手の斧を弾いた。 こういう場合にはぶちかましは発動しないらしく、ひとまず安堵の息を吐けた。 彰利 『そーゆーときはァッ!アタイにお任ッせェエーーーーイ!!     バルバトスの弱点は音!どれだけ防御力があろうが魔法耐性がバケモノ級だろうが     人間である以上聴覚はあるし嗅覚もある!そこを利用するのが愛!!』 ゼット『そんな知識があるならさっさと言えクズめが!!』 彰利 『わあなんてストレートなってフヒャオワッ!!』  ヒュゴガギィンッ!! 彰利 『いっぎ……!!だぁあもうこいつ攻撃力ありすぎ!!     ガードの上からでもなんてダメージだよ!!』 相変わらず無造作に振るわれる斧を弾いた彰利だったが、その威力に体が浮いた。 飛ぶことも忘れて足をバタつかせ、地面を探っては降り立つ彰利だったが、 その顔にはもはや焦りしか見受けられなかった。 そういった状況整理の中でも容赦なく斧は振るわれ、 俺とゼットは彰利を守るようにしてそれらを防いでいた。 何故って、ここで“音”を使えるのは月奏力を持つヤツか彰利くらいなもんだからだ。 彰利 『もう話してる余裕なんざありゃしねー!───我が影より鎌解放!     音の鎌───“凪穂奏でし囁きの旋律”(ウィルリネイトアツェア)!     ───ちくしょう!月奏力が普通に使えてりゃこんな、     鎌出したり解放したりなんて面倒なことしなくて済むのにYO!!』 悠介 『いいから早くしろ!《ガギィンッ!》かっ……!ぐ……!そう長くは保たねぇ!』 ゼット『馬鹿げた強さだ……!瘴気に毒された頭も冷めるほどだぞこれは……!』 攻撃力が馬鹿高いまま、てんで下がりもしない。 だから連撃を恐れるあまりに亀になってしまうんだが、 バルバトス「まごついてんじゃねぇ!!」  ヴフォゴギャギリィンッ!! 悠介 『うぎっ───!?う、うぉわわわぁあああっ!!!』 そんな防御一辺倒も、力任せの攻撃で防御体勢があっさりと崩され。 そこに発生する無防備状態を戦闘狂な彼が見逃す筈もなく─── 悠介 『っ───だぁああっ!!』 けど俺は弾かれた腕を筋をおかしくしてでもいいという意気のもとに無理矢理下ろし、 飛んでくる追撃が致命傷になるのを防いだ。 だがそれも付け焼刃もいいところ。 ガギィンッ!という音とともに再び腕ごと弾かれ、 そうしてもなお速度も威力も緩和しなかった一撃が俺の腹を割り、 夥しいほどの血がその場に噴き出した。 悠介 『ぎあっ!?がっ───あ、がぁあああああっ!!!!』 ゼット『チィッ!下がっていろ晦悠介!俺以外に易々と殺されるなど許さんぞ!』 悠介 『っ……』 随分と勝手を言ってくれる。 けど下がったところで回復アイテムも魔法も使えない。 使えばジェノサイドカウンターが飛んでくることが解ってるからだ。 田辺 『おっしゃあ下がってろ晦!ここは素晴らしき俺達に任せてもらうぜ!』 RX 『───下がったらカウンターの餌食だけどな!』 岡田 「だからどなたか死んでもいいから回復役を志願するヤツ募集中!」 藤堂 『遠距離攻撃が出来るヤツは離れた位置から一斉射撃!』 藍田 『それが弱いものでもいいから攻撃できるやつはしていくべし!』 丘野 『───そうだ晦殿!後ろに下がって回復の霧を創造してほしいでござる!     そうすればそれは術でもアイテムでもないでござる!     それが終わったあとは投擲物の創造をお願いしたいでござる!』 またも勝手を言ってくれる。 けど下がればカウンターが来る今、どうやって─── 藍田 『“空軍・(アルメ・ド・レール)パァワッシュゥッ”!!』 悠介 『《バゴォンッ!》ゲファーーーリ!!?』 とか思っていた矢先に、振るわれた藍田の足が俺を後方へと吹き飛ばした。 しかし“なにを───”と言おうとした口は開かれず、 困惑が納得の域へと達するのは速かった。 そう、後ろに下がるのがダメならば、吹き飛ばされればいいのだ。 頭柔らかいなぁあいつら─── よくもまあそんなことをポンポンと閃かせるものだ、この状況で。 さすが原中。 ……いや、俺も原中だ、もっと柔軟的に行かなきゃいけない。 悠介 『───傷を癒す霧が出ます。弾けろ!』 腹を割られた痛みに耐えながら霧を創造。 すると少しずつだが腹の痛みが治まっていくのを感じ、ようやく一息がつけた。 次いで創造するのは武器───属に言う投擲武器というものだ。 ここで炸裂弾など創造しようものならカウンターが入るだろうことを見越してのもの。 ただし中途半端なものではなく、当然爆発の付加能力なども追加した武器としての創造。 HPを食うが、どうせここでなにもせず待っているくらいなら、 これくらいの創造はお任せあれだ。 藍田 『ふっ!だぁっ!せいっ!はっ!ふっ!だぁっ!!』 俺がこうしている間にも立ち向かう三人の連撃は続き、彰利が空中から音波攻撃を放つ。 そして自分の意思ではない出来事で後ろに飛ばされた場合は、 無理をせず待機している者と後退。 霧の中で傷を癒し、それが終われば吹き飛ばされてきたヤツと後退。 そういった行動を幾度も幾度も繰り返していた。 何故ならどれだけ攻撃を与えようが、 こっちはたった一撃の攻撃でHPの大半が奪われてしまうからだ。 とことんバケモノだこいつ……これで人間だなんてどうかしてるぞ。 悠介 『───はぁっ……よし、創造が完了した!     手の空いてるやつから取りにきてくれ!』 佐古田「空きまくってるッス」 ルナ 『これを投げればいいの?』 悠介 『いや、お前は引き続き場の属性値上昇をしといてくれ。     回復力の規模が大分変わってくる』 ルナ 『むー……ずっと空中で独りぼっちって退屈なのよぅー……』 悠介 『そのお蔭で一回もコロがされてないだろ?』 ルナ 『みんなが死ぬたびに“降りてこいこの軟弱者がぁあっ!!”って叫ばれまくった』 悠介 『………』 気にするなとだけ言っておいた。 声  『どわぁああっち!!』  ヒュゴドグシャアッ!! 藍田 『ぐっへぇっ!!』 悠介 『おかえり』 藍田 『い、いででで……!た、ただいま……』 藍田が吹っ飛ばされてきた。 いや、藍田だけじゃない。 見てみれば様々な場所に様々なやつらが転がってたりする。 吹き飛ばされたら交代する案は良かったのかもしれないが、 敵の攻撃力とこっちの回復力が釣り合っていないのだ。 だから─── みさお『月生力を展開します!聖ちゃん、サポートを!』 聖  『うん!───椛ちゃん!』 椛  『解ってます!』 それに釣り合う、もしくは上回る回復は確かに必要だ。 だが今の俺の創造じゃあ、ここまでがせいぜいだ。 イメージは出来るが創造にまで至ってくれない…… つまり力量不足だとゲームの世界が言っている。 こればかりはゲームというルールに縛られているため、 根性論でなんとかなるほど甘くない。 ……もっと精進しないといけない。 月の欠片集めも、回路集めも。 声  「ブチ殺す!ジェノサイドブレイバァアーーーーッ!!!」  ヂョギャガガガガガガォオオンッ!!!! 声  『うぎゃあああああああああああっ!!!!』 ……それ以前にこの戦いを終わらせないと、先が見えない……。 黒赤の波動に飲まれ、吹き飛ばされ、塵と化してゆく仲間たちの姿。 自分らの身長よりも余程に大きいあんなものに飲み込まれれば、 無事でいられるわけもない。 が───本当にあいつがゲームの中のバルバトスと同じ行動をとるというのなら、 あいつの体力はもう大分下がっている筈───! そうだ、いくら強くたって、このレベルのこの人数を相手に、 無防備で突っ込み続けて無事でいられる筈もない。 加えて彰利が放つ音波攻撃や、 月奏力が使えるやつらの音波攻撃をくらい続けていればダメージも蓄積される。 なのに、鼓膜を破壊されても耳から血を流しても、 顔色ひとつ変えないで突っ込んでくるアイツが異常すぎるんだが。 でも……そんな敵を前に、体が震える。 いつかゼットに訊かれたっけ、貴様は戦を楽しまないのか、って。 俺はいろんな成り行きで戦闘の中に身を置いて、 自分の気持ちに正直進んできたから今ここ立っている。 空界を駆け抜けた時も、そして今も、なにかしらの強制はもちろんあったかもしれない。 けどここに至ったのは確かな自分の意思だ。 感情を手にして、考えて、悩んで───そこに今の俺がある。 武器を持つ手は震えているか? 癒えた体は震えているか? ならばその震えは怯えから来るものか、戦への意気から沸き上がるものか、どっちだ? 悠介 『…………』 怖い。 傷つけるのも傷つけられるのも、怖い。 それが感情を手にして得た俺の戦いへの気持ち。 でもそれでいいって思える。 怖さも知らないで戦いに望むやつは、ただの無鉄砲か戦闘狂だ。 俺は確かに自分の意思でここに至ったけど、怖くなかったことなんてきっと無かった。 悠介 『すぅっ───疾ッ!!』 大地を蹴る。 武器を手に、敵に向かって。 ───体は依然として震えている。 怖い……ああ、怖いな。 でも鍛えた自分が何処までいけるのか……それを想像するのはとても楽しいものだ。 イメージの中の自分は常に最強。 それを具現出来れば、それこそ敵なんて居ないだろう。 ……自分の実力じゃないってことと、鍛えてきた自分を無駄にしてもいいのなら。 俺はそんなのは嫌だから、イメージをぶつけるのは創造物だけにしておく。 悠介 『岡田!』 岡田 「おお晦!もういいのか《パゴォンッ!》へぶっ!?」 悠介 『悪い!交代してくれ!』 バルバトスに群がる中でも一際ボロボロだった岡田を後方へ吹き飛ばし、参戦。 ───自分の努力が実る瞬間が好きだ。 それは戦闘でもなんでも同じことで、 結局それが戦うことが好きってことになるのならそれもいいだろう。 男として産まれて、最強の自分に憧れなかったって言えばウソになる。 だから─── バルバトス「覚悟は出来たかァア……!?」 悠介   『ってうぎゃあああああっ!!       なんでワールドデストロイヤー溜めてんだよぉおおっ!!!』 岡田   「ありがとう晦!俺を恐怖から救い出してくれたこと……俺忘れるからな!」 悠介   『覚えててくれぇえええええっ!!!!』 バルバトス『ワールドデストロイヤァーーーーーッ!!!』 悠介   『いや───!』 ……次の瞬間、俺が見ている世界から色が消えた。 【ケース584:弦月彰利/NO-FUTURE】 ギシャガォオンッ!!! ルフォォオッ───オォオオ……ゥウウ……ゥン…… 彰利 『あいやぁ……』 黒赤の閃光が瞬いた時、空中に居るアタイとルナっち以外の全てが塵と化した。 すげぇよワールドデストロイヤー……あんなん喰らったら何も残らんよ。 必死に逃げてた岡田くんも炎に包まれて消滅しちゃったし。 彰利 『だがなー!貴様の弱点は音だって解ってんだ!故にくらえ!超音域波動弾!!』 鎌を振り上げ、音という音を掻き集めるが如く力を込める。 そんでもって燃え盛る大地の中心でアタイを見上げているゲーティアさん目掛けてッ! 彰利 『くぅうたばりゃぁあああっ!!!』  フォガァァォオオンッ!!! 音の波動が大気を揺らし、まるで水に震動を加えたみたいに震えるのが肉眼で見えた。 それほどの音域がゲーティアさんにブチ当たると、 燃え盛る炎は音によって一瞬にして消滅。 だが───その場にあった熱さえも消え去ったそこで───…… バルバトス「せっかく生かしておいたというのにィイ……その程度かァア……」 彰利   『キャアアアアアアアッ!!!!!』 心の底から絶叫が放たれた。 弱点属性ブチ当ててもこれ!?掠り傷だけだよ!? バルバトス「微ィイ塵に砕けろォオッ!!」  キュヴォアヴォガガガガォオオンッ!!!! 彰利 『うひぃいいいいいいっ!!!』 上空目掛けて放たれたジェノサイドブレイバーを辛うじて避ける。 だが辛うじてすぎた所為で、我が黒衣のマントが……掠っただけで燃え尽きた。 彰利 『ギャア神様!!助けてぇええっ!!』 ルナ 『わたし死神だけど!?ホモっちこそなんとかしなさいよぅーーっ!!』 彰利 『見たでしょ今の!     ビッグバンかめはめ波でも音波攻撃でもダメって俺もう泣きたい!』 ルナ 『だったら今すぐレヴァルグリードの力完全解放すればいいでしょー!?     いつまでまごまごやってんのさホモっち!』 彰利 『グ、グウウウウウウウウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!』 それを言われるとオラ辛ぇ。 彰利 『だ、だがなー!アタイだって好きでマゴついてんじゃねィェーーーーッ!!     すぐに解放出来るならすぐに解放してぇわコノヤロー!!』 ルナ 『暴走してもいいからやれこのホモー!!』 彰利 『ホモホモ言うんじゃありません!!いつまで人のことホモ扱いなの貴様は!!     だがその提案はナイス!どうせここで浮いてたっていつかコロがされるだけだし、     暴走してもいいなら心の底から愛を叫ぼう!』 ガギンッ!ゴギガギィンッ!! 篭手を強く握り締め、能力を解放する。 悠介と合流して以降、鍛錬の度に少しずつ解放していたが、どれも進歩は得られなかった。 ……怖かったんだと思う。 皇竜王の力は、今の俺達からしてみれば、それこそ人知を超えた力だ。 そんなものを解放するという事実が、果たして俺の体の許容で叶うのかと。 でもやめだ、そんなの。 いつまでも先延ばしに出来ないのが今。 こうしている間にも、明日にも、ルドラが仕掛けてこない可能性はゼロじゃない。 だから少しずつでもと思ってた。 一歩一歩前進していけばいつかは、と。 出来ない自分を自分で慰めて、いつかはって思いながら解放できない日々を送った。 でも……違うんだよな、そうじゃないんだ。 俺に一歩一歩なんてのは似合わねぇ。 無限地獄を彷徨っていた俺にならそれは似合ったかもしれない。 けど今、黒の秩序となって許容を呆れるくらいに広めた俺だからこそ。 人をやめちまった俺だからこそ、一歩一歩なんてのはもう今さらだ。 ───恐怖は持ったままでいい。 けど、怠惰は捨てていこう。 ずるずると先延ばしにして、いつか危機が訪れても親友が、 誰かがなんとかしてくれるなんて甘い考えは捨ててしまえ。 もう、そんなことを願えるガキの自分とはサヨナラだ。 あの頃苦労した分だけ、もう十分に悠介に任せてきただろ? だから─── 彰利 (集中……集中……集中……集中……ッ!!) 稀黒装レヴァルグリード─── これが古の皇竜王の力を安定させる補助輪だとスッピーは言った。 だったらその補助輪としての能力───思う存分披露されませい!! 竜の回路なんてのはいらねー!ただその力全てを我が黒として!  バゴオッ!ボゴッ!ベキメキッ……ボゴッ! 彰利 『ごあぅ!?あぐぅあぁああああああっ!!!!』 力が暴走する。 俺の体の中に存在するレヴァルグリードの力が、 俺の黒では許容できないと拒絶するように。 けどそれは間違いだ───俺の弱い心が出した勝手な答え。 そうじゃない……なんのための黒だ。 無限の黒こそ俺の世界。 果てのない底なしの闇こそ俺の力。 そして……我が動きを忠実に受け取る影こそが我が意志の軌道。 彰利 『───連ねるは(げん)連言(れんげん)より軌道と成す。     意は創造と化し、その在り方は正に人───』 ───詠え。 彰利 『無二で在りつつ無二に在らず、唯一で在りながら既に虚無……』 俺が最も集中出来る、かつての友と詠った詩を。 彰利 『束ねる思考は例外に堕ち、虚無なる無象は有象へ換わる───』 そうだ……俺だけの力で許容できないというのなら。 彰利 『その在り方は神が如く。     越せぬ壁など我が身にあらず、我が意思こそが無限の自由……!』 知識として在る我が全てを以って、そう───あいつのように、越えてゆけ───!! 彰利 『ならばその在り方をここに示し、無限の自由を世界と謳え───!!』 俺に世界の創造なんて無理だ。 だが今まで経験してきたもの全てを利用して、なにかに立ち向かうことが確かに出来る。 経験は無駄にはならない。 力ってのは自分を傲慢にするためのものじゃない。 そして───頼りっぱなしなのも守られっぱなしなのももうゴメンだと あの頃の俺が泣いているのも、 逃げ出すための理由になんかしていいものじゃないんだ───!! 彰利 『オッ……ぉおおおおおおおおっ!!!!』 篭手と具足が高密度の闇黒の影を噴き出す。 より黒く、より深く、俺自身の黒をより一層に染めるために。 でも解放できるのはここまでだった。 これ以上は俺が保たないと、誰でもない俺の中の黒が悲鳴をあげていた。 ───だったらそれでいい。 ここまで解放できたことをただ感謝する。 そして─── 彰利 『悪いとは言わねぇ……終わりにさせてもらうぞ!』 溢れる力を一点に集中させ、十七枚の飛翼を以って地面のバルバトス目掛けて飛翔する! 反撃されたって構わない……この全力の一撃をブチ当てるためにバゴォンッ!! 彰利 『ゲハッ───!?』 ……否だ。 粋がれたのはそこまで。 溢れる力に黒が負け、右腕が破裂した。 次いで左腕、両肩、足、様々な部位が破裂し、黒い血液が噴き出ていった。 彰利   『はっ……あ、ぐがっ……!かっ……はぁっ……!』 バルバトス「……フンッ……使いこなせんようでは意味がないな」 彰利   『声優繋がりで神我人(かがと)の真似すんなぁあーーーーーっ!!!』 ちくしょうどいつもこいつもナメやがって! だったら見せてやる!ヤケッパチの恐ろしさってヤツを! 俺だってなぁ!俺だって好きでかませ犬やっちまったわけじゃねぇんだかんな!? 己の中のシリアス空間さえ貴様もろとも吹っ飛ばしてやる! 彰利 『俺の体を食い散らかしても構わねぇ!     レヴァルグリード!とっとと俺の力になりやがれ!     ちまちまなんて性に合わねぇんだよ!だから───来い!!』 意識を我が裡に。 頭の中ではいつまでも、集中のための詩が流れている。 世界も人も、己も物も、思い通りにいくものなんて何一つとして存在しない。 だが自分の意思は無限の自由だと謳う詩が。 根性論で越せない壁ならどうするか?ンなもん五体を以ってなんとかする! 根性ってのは意志の問題!意志でダメなら体で払おうホトトギス!!  ドッコンッ……!! 彰利 『ギアッ……!?』  ブギッ……ビギミギゴバグキャッ……!! 彰利 『ア、ア……ガ、グガアガギ……!!』 体全体が躍動し、黒の体が砕けてゆく。 だが構わん壊れるならそこまでの体ぞ! 彰利 『ガッ……ア、ガァアアアアアッ!!!!』  ズゴボボボゴオァアアッ!!!! 砕けた体から闇が噴き出る。 体が原型を───弦月彰利という体を維持出来なくなり、 ただの黒の存在と成り果ててゆく。 段々と意識も薄れ、やがて───…………やがて。 【ケース585:晦悠介/パンツァードラグーン壺井】 声  『ゴシャァアアゥォオオオオオンッ!!!!』 総員 『うおぉあぁっ!?』 それは───決戦場目掛けて足を急がせている時だった。 空に小さな点───ルナを確認出来るところまで来ていた俺達の視界に、 突然巨大な黒い竜が出現した。 悠介 「───っ……あれは……!」 その姿を知っている。 いつか狭界で見たレプリカと同じ姿───だが威圧感が比べ物にならない。 ゼット「皇竜王レヴァルグリード……!?馬鹿な、何故ヤツが───!」 逝屠が形だけで動かしたものとは段違いの圧力を感じる。 これだけ遠くに居るのに、体がこれ以上を進むことを拒んでいる。 藍田 「あ……あれ?体が前に進まねー」 岡田 「よし、殴り飛ばしてでも進もう」 藍田 「それだ」 悠介 「お前らこんな状況なのに物凄く己に正直な……」 藍田 「進めない状況で進んでみる……一度やってみたかったんだ」 丘野 「恐怖で足が竦み、動けなくなる状況なんてきっと滅多にないでござるよ」 藍田 「つーわけで……お、後ろには下がれるな。じゃあ───」 悠介 「俺が行く。頼んでいいか?」 藍田 「なんだかんだでノリ気じゃねぇか。よし乗れ!《ゴバァォンッ!》』 藍田が身を翻しながら、力を解放してゆく。 俺は身を振るう藍田が上げた足に丁度乗っかれるように跳躍し、体勢を傾けると─── 藍田 『“空軍・(アルメ・ド・レール)パワーシュートォッ”!!』  トンッ───ヒュバフォォンッ!! 振り払う勢いに飛ばされながら、遠く離れたルナの袂へと急いだ。 ……まあその。 領域へと入った時点で体は恐怖に硬直してて、満足に動かせないわけだが…… ならばこの勢いに乗った俺がどうなるかなんてことは、大体予想がつくわけであって。 その、つまり、……助けてくれ。  ヒュゴォドゴシャシャズベシャシャゴシャーーアーーーッ!!! 悠介 「ちぇるしぃいいーーーーーーーーっ!!!!!」 硬直したまま空を飛んだ俺は、ものの見事に受身も取れずに顔面から着地。 かなりの距離を顔面で滑り、顔をボロボロにしつつ……ぐしゃり、と倒れた。 そんな俺を、虚空で恐怖に固まったルナが見下ろしていた。 ……ああ、なんて恥ずかしいんだろうな、ちくしょう。 でもここまで来てしまったら、 もう逃げられないという観念めいた感情が湧き上がってくる。 その所為か痛みの所為か体も動き、のろのろと立ち上がった俺は巨大な黒の竜を見上げた。 ていうか……まあその、なんだ。 悠介 (…………《ちらり》) 右手に見えますのが皇竜王。 悠介 (……《チラリ》) ……左手に見えますのがバルバトス=ゲーティア。 悠介 (………) なんて大変な位置に俺は居るんだろうな。 試しにルナに助けてくださいとアイコンタクトをしてみたが、 我が妻は泣きそうな顔で……なんとか首を横に振るだけだった。 バルバトス「大した威圧感だぁ……!だがァア……」 悠介   (わぁ馬鹿馬鹿っ!刺激するな黙ってろ!) このレヴァルグリードは本物だ。 どうしてこの世界に居るのかは解らない───わけじゃないが、 それにしたって攻撃なんかしてみろ! この場がどんなことになるか解ったもんじゃないっ! ……とアイコンタクトをしてみたが、 バルバトス「クズがァア!!言いたいことがあるなら力で語れぇええい!!!」 目で理解させる行為は軟弱なのだそうだ───ってうぉわぁあああっ!!?  ブフォゾブシャアッ!! 悠介 「ぎあっ───は、あ───!神力、───解放っ!《ゾフィンッ!》』 体が竦んだままの所為で、襲われても反応しきれなかった。 だからせめてと神力を解放し、VITを重点的に上げたステータスで構える。 こいつにとって戦いってのは当然のことであり、 強敵が居るのはそれがたとえどれほど強い相手だろうが喜ばしいことなのかもしれない。 悠介 (けどそんなものはこっちにはいい迷惑だぞ、くそっ───うぐっ!?) チリチリと湧き出す苛立ちを振り払いながら、集中して武器を握った───筈だった。 だが神力を解放してからというもの、恐怖による息苦しさとは別のものが俺の体を襲った。 それは───神冥拒絶反応。 神が冥界の空気を嫌うように、死神が神界の空気を嫌う。 そういった拒絶反応が俺に降りかかった。 ……やっぱりだ。このレヴァルグリードは彰利自身。 冥界の空気に似たものが漏れているのはその所為だ。 ……少しでも意識が残っていればいいんだが、それは望めそうにない。 だが希望は持つべきだと俺の心が囁いている。 悠介 『……いけ矢島、じゅうまんボルトだ』 はは、なーんてキュヴォァアアカカカォオオオンッ!!!! 悠介 『キャーーーッ!!?』 バルバトスをピッと指差したポーズのままレヴァルグリードを見上げて絶叫! ななななんか反応して口に物凄いエネルギー溜め始めてますが!? つーか状況的に非常にヤバイのにちっとも危険な雰囲気じゃないのは俺の所為か!? それ以前に……お、おいちょっと待て!?なんで俺の方向いてんだお前! ちょ───彰利!?待て!それは待て! バルバトス「ぬぅううりやぁああぉおおっ!!!」 悠介   『お前も待てぇえええっ!!!』 咄嗟にヴィジャヤを振るい、振るわれたディアボリックフォッグを弾く。 いや、弾かれた。 けど逸らすことは成功して、なんとかダメージを負わずに済んだんだが─── なんで俺、怪物二体に囲まれてるんだろうなぁ……。 今までは自分を誤魔化したりのらりくらりとしてきたけど、 状況が切羽詰まるといっつもこれ……。 確かに飛ばしてくれって言ったのは俺だぞ藍田よ。 でも、よりにもよってここに飛ばすことないだろ藍田よぉお……!! 悠介 『《……ブチリ》……もういい。こうなりゃ自分も未来も知ったことかぁっ!!     あーそうだよ責任だとか使命だとか夢だとか、     そんな荷物は背負い込むだけ億劫だよ中井出の言う通りだちくしょう!!     神、天、竜回路全力解放!回路が焼ききれてもいいから力送れこの野郎!!     どうせどの回路も神力にしかならないんだから出来ないとは言わせねぇぞ!!     力を寄越せ!今を楽しむための力を!今の俺がラインゲート使えてたとしたら     容赦なく全精霊から力奪えるぞコノヤロー!!《ジュウッ!》うあちゃあ!?』 言っても仕方の無いことを口走───った途端、頭に強烈な熱と頭痛!! だが俺はこの感覚を知っていたりする。 普段……いや、今までのヤツはそう高い熱じゃなかったんだが───  ピピンッ♪《空界の回路、“精霊側”が解放された!》  ピピンッ♪《空界の回路、竜と霊が揃いました。残る回路は死神のものだけです》 ───っていきなりワケが解らんッ!! 解るように説明しろ解るように!って言ってる側から来たぁああああっ!! バルバトス「縮こまってんじゃァア───ねぇええええええええい!!!!」 悠介   『好きで縮こまってんじゃないわぁあっ!うおおおおおおっ!!!』  ゴギィンガギゴガォバガァンドガガギガギィンッ!!!! 悠介 『ぐあぁああああっ!!!』 回路全解放しても大して太刀打ち出来てねぇええッ!!! く、くそっ!だったら手に入れたばっかりの精霊の回路も───解放!! 全て神力にして全力で力を引き出す! ……なに!?これ以上は無理!?構わんやれ。いーからやれ。 悠介 『《ブギッ!》ぎぃっ!?』 コメカミのあたりが妙な音を立てた。 それでも回路の解放をやめない。 そうだ、責任も使命も夢も、そんなこと知ったことじゃない。 俺は俺として産まれてきた。 人を守ることは確かに素晴らしいことだ。 誰かがそれをしたなら素直に褒めてやりたいって思える。 でも、だからなんだ? それは必ず俺がそうしなきゃいけないことじゃない。 人の評価は他人が決めるもので、自分がそうありたいとどれだけ願おうが─── 他人が自分を誤解し、それを広めてしまった時点で自分を保つことなど出来やしない。 だったら俺は、誤解されようがどうしようが我を我として選べる道を歩みたい。 てめぇ勝手上等。 誰かのために生きるんじゃない、 俺は俺がそうしたいことを選んで好き勝手に生きさせてもらう。 この解放で俺の魂になにかしらの影響が出て、未来が閉ざされようがもういいだろう。 未来に希望を持つことはいいことだ。 でもそのために我慢しなきゃいけない理由が今の俺には見つからない。 悠介 『がぁああああああっ!!!!』  ヂガァアォオオンッ!!! 奇麗事なんてもういいだろう。 ガキの頃からいつだって世界にこそを不満を持ったガキだった。 未来を諦めたいわけじゃない、 ただ誰しもが不満に思うだろうことを不満に思っただけなのだ。 誰かが何かを我慢しなきゃいけない時、 どうして真っ先に自分が我慢しなければいけないのか。 そんなことを、ガキの頃に毎日思った。 貰われものだからだとか兄だからだとか、男だからとか神主だからだとか、 大人だからとか親だからとか、強いからとか英雄だからだとか王だからだとか─── ああ、もういい……いいだろう、もう。 みんなと過ごす世界が俺は好きだ。 それを消さないためには力が必要で、 けど力を限界以上に引き出そうとすると回路が壊れるかもしれない。 回路が壊れれば生きたまま死ぬみたいなことになって、世界を守るどころじゃなくなる。 そんなループなんてものを壊したかった。いつだって抜け出したかった。 どうして俺がって考えたことだって、感情が浮上してからは何度だってあった。 けど相談出来る相手なんて居やしない。抱えるしかなかったんだ。 でも、もういい。 誰に遠慮することなんてなかった。 ラインゲートが使えるなら精霊の力全てを吸収する自信が今の俺にはある。 そう確信した途端に精霊の回路が解放されたってことは、そういうことなんだろう? 誰もが我が儘言う中で、自分だけいい子で居なきゃいけない理由が俺には見えない。 言っちゃダメだって言うヤツが居るなら、今度はお前が抱いていけ───俺は知らん!  ゴガァアアガガガキィンッ!! ───体が雷光に包まれる。 死神以外の回路を手に入れ、解放した俺のシンボルは───やっぱり雷だったらしい。 神のくせに神術のひとつも使えない、ただ想像と創造のみを武器にするたわけた神。 吹っ切ってみれば頭は酷く軽く、責任から逃げ出してみれば、 それらに圧し掛かかられていた見えない翼は酷く軽いものだった。 悠介   『うん……うん。いい感触だ……───よしとりあえずお前!       我と戦えぇえええええっ!!《ザゴファァンッ!!》ギャーーーッ!!』 バルバトス「今日の俺は紳士的だ……運が良かったな」 こっちが攻撃の意思を見せるまで待っていてくれたようだが、 敵意を剥き出しにした途端にあっさりと斬られた。 無意味にゼノの真似なんてするもんじゃない。 だが斬られた部分もすぐに雷によって修復され、癒えていった。 雷身化……って言えばいいんだろうか。 体が悲鳴上げようが無理矢理に回路の力を引き出した結果、 暴走しないようにと体が勝手に雷をあふれ出させた───というより体が雷になった。 お蔭で斬られても、よっぽど雷が散らされない限りは修復が可能だ。 そしてそんなことに喜んでいた矢先、 レヴァルグリード『グガァアオシャァアアッ!!!』  フィガァォオガガガガォオオンッ!!!! 悠介 『へ───?うぎゃあああああーーーーーーーっ!!!!』 溜めるに溜めたらしい闇の極光レーザーが、無情にも放たれた。 慌てて逃げようとああ無理だこれ避けられんわ……。 悠介 『電磁場を作って粒子を拡散させる!───うわぁ無理ぐあぁああああっ!!!』 発生させた電磁場を秒と保たず破壊され、俺は波動の奔流に飲み込まれ、消滅した。 【ケース586:藍田亮/竜の皇王さま】 ゴコォオオッ……ォオオ……ォゥンン……!! 藍田 『うっ……くぅうう……!!』 黒いのに眩しいと感じた爆発が治まった。 耳を劈く音も、体を縛る恐怖も、今はない。 ただ視力が届く場には昏倒している弦月が居て、それをルナさんが見下ろしていた。 晦は───……完全に抹消されたようだ。 そりゃそうだ、あんなのくらって生きてる方が─── バルバトス「貴様らごときにィイ……!俺は……死なんぞ……!」 ウギャアどうかしてる!! 生きてる!生きてるよアイツ! そりゃ晦と違って直撃じゃなかったけど、それでも生きてるなんてすげぇよあいつ! だが攻めるなら今! 藍田 『うおおおおおーーーーっ!!     バル様の経験値の撃破ボーナスを頂くのはこの俺だァアーーーッ!!』 藤堂 『なにぃさせるかぁあっ!!ローラーダッシュ!!《ギュィイイイイッ!!》』 岡田 「あっ!て、てめぇ!!」 俺の疾駆を皮切りに皆様が走りだす。 相手が弱ってると見るや強気になる……とことんまでに現金な俺達。 だがこだわる必要なんてないさ! 経験値が欲しいから走る……ゲームプレイヤーってのはそういうものなのだから! そりゃオブリビオンで経験値欲しさに 難度マックスにして馬を攻撃しまくりたくもなるさ! 藍田 『しゃぁああらぁあああああっ!!!』 だが今はこの藍田が一歩を先んじる! 烈風脚を駆使して走り、四歩目で大きく弾くように前方に跳躍した俺は、 速度を殺さぬままに足を振り上げミニッツスパガシィッ!! 藍田 『うぶぅっ!!』 ───当てる筈だったんだが、いや、正確に言えば蹴りは当たったんだが、 そんなことを意に介せず顔面を鷲掴みにしてきやがったこの人!! バルバトス「ハッハァーーーッ!!砕けろォッ!!」  ドガゴバシャァンッ!!! 藍田 『ぐげぁはぁっ!!』 顔が手放されたかと思いきや、膝蹴りで打ち上げられた後に斧で地面に叩きつけられた。 元気っ……!この人元気すぎ……! HPは確かに少ない筈なのに、相変わらず防御らしい防御しないよこの人……!! 回復したいがアイテム使ったらそれこそ死ぬ。 ならばHPなど気にせずバトって バルバトス「いつまで寝てんだぁっ!!」 藍田   『うわあぁあっ!!?《ゴロドゴォンッ!》ヒィイイイッ!!!』 振り上げられた足を見て咄嗟に横に転がった! 途端にさっきまで俺の頭があった地面を踏み砕く雷撃の具足……!! あ、あ……危ねぇえ……!顔が潰れるところだよ……! ゼット『とったぞ───!これで潰れろ!!』 そんなトランブル(踏みつけ)後の隙を狙い、飛翔してきたゼットが強撃の斧を振るう! 渾身が込められたそれはやっぱり防御なぞしなかったバルバトスの肩から脇腹を裂き……! バルバトス「ぬぐっ……!はぁっ……!」 たたらを踏む破壊英雄。 その胸からは血が噴き出し、勇ましく構えていた斧も今はだらんと下がっている。 お、終わったのか……?終わったよな? ゼット『……梃子摺らせてくれたな。     あのレヴァルグリードが死神王が変異したものだったことには驚いたが、     貴様の強さにも驚かされたぞ』 藍田 『ふんぬはっ……《ガバァッ!》ち、違うゼットくん!     口上ってのは倒してから言うもんだ!バルバトスはまだ倒れてもいないだろ!』 ゼット『なに……?馬鹿なことを。     ここまでの致命傷を負って歩を進める相手など何処に居る』 ゴコォッフィィインッ!!! バルバトス「一発で沈めてやるよォオ……!!」 藍田   『動く必要がないから言ってるんだってばぁあーーーーーっ!!!』 ゼット  『なにっ!?貴様、何処にそんな力が───!!』 だらん、と下がった腕に力を込め、手にする斧には黒赤の閃光を! そこから放たれる破壊の炎は全てを焼き尽くす地獄巡りの片道切符───!! 藍田 『う、うわぁああーーーーっ!!フリーザさまぁあーーーーーーっ!!!』 目前に迫る死に混乱した俺は、 ベジータを前に逃げ出すドドリアさんみたいにして空へと逃げた。 だが時既に遅く───散々と渾身を以って斬りつけるゼットくんをまるで意に介さず、 バル様は破壊の斧を振り下ろした。 バルバトス「覚悟はァア……出来たかァア……!?       ワールドデストロイヤァアアーーーーッ!!!!」  キュボゴヴァァッファアォオオオオオンッ!!!!  バンガガガガガドッガァアアアッ!!!! 総員 『うぎゃぁあああああああっ!!!!』  ゴォオッ……ォオ───ォォゥゥウン………… 死んだ。 恐怖から解放されて、俺達と同じくトドメを狙って降りたルナさんともども。 バルバトス「貴様らはァ……俺の最高のオモチャだったぜ……」 最後に聞こえたのはそんな言葉。 そして最後に見えたのは、再び火闇の渦に飲み込まれてゆくバル様の姿だった。 うあー……また何かに変身するのかな……それとも提督に戻るのか……。 どちらにしろもう勘弁してほしかった。 Next Menu back