───冒険の書247/VS刻震竜3───
【ケース597:中井出博光(再)/覚悟だけを心に身につけた人間のお話】 笑顔がウルトラZだった以下略!!  バゴォンッ!! 中井出「ニーチェ!!」 ジークフリードを手に落下した僕は、 暴れまわるバーサーカーの一撃によって大地に叩き落されました。 それでも笑顔を忘れなかった僕を誰か褒めてください。じゃないと本気で泣きます。 麻衣香「あっ───ヒ、ヒロ、ちゃん?」 落ちた先には麻衣香が居た。 木村夏子二等もだが、殴り落とされた僕を心配する目はどこにもありゃしなかった。 中井出「ああ麻衣《ゴドンゴ!》ニーチェ!」 麻衣香「ばかばか!ヒロちゃんのばかーーーっ!!」 稀緑杖グルグリーズの先端のドラゴンフェイスで頬を殴られた。 落下とともにカッコよく攻撃に移って参戦するつもりが、 どうしてこういっつも格好つかないんだろうか俺は。 中井出「ち、ちくしょう!その馬鹿な旦那をなんの問題があって殴る!」 夏子 「問題なほど馬鹿だからじゃない?」 中井出「いきなりなんてひどい!」 麻衣香「ひどいのはヒロちゃんでしょ!?うぅっ……もう!もうもうもう!!     どうしてっ……どうしてこんな時にみんなを巻き込んで戦争なんてぇえっ!!」 中井出「面白いからだ!《どーーんドゴォッ!》ニーチェ!!」 夏子 「うわっ……倒れながらも胸張った途端に顔面に……」 胸を張った真面目な顔にグルグリーズが落とされた。 しかもかなり強烈の。ああ、星が見えるスター。 麻衣香「怖かったんだからね!?怖かっ、たん……だからぁっ……!!」 中井出「バカモン!いい歳をしたオバサンが人前で泣くなど《ドガァッ!》ニーチェ!!」 麻衣香「いつまでも童心だけは無くすなって言ってたヒロちゃんのセリフじゃない!!     もうっ……!ばかばかばかぁあーーーーーっ!!!!」 ボスを前に僕の妻が幼児化! 涙を流しながらヒステリッて杖を振りまくってきてます! 麻衣香「ばかば《ビチッ!》いたっ!!ばかっ!《びしっ!》いたっ!あ、ううう!!」 だが俺はそれをVITを下げて受けることでダメージの半分を彼女に返し、 むしろそれで冷静にさせるというかつてない方法を取りました。 麻衣香「………」 次第に攻撃の手も緩み、地面に“の”の字を書き始めるハニー。 夏子 「うわーーあ……こんな止め方初めて見ましたであります提督」 中井出「人はこうして誰かを傷つけることで心の痛みを知り、強くなるのさ」 夏子 「言葉は格好いいのに無駄に正解でセコイところがさすが提督でありますな」 中井出「任せてくれたまえ」 ともあれ現状確認をGOだ。 降り立った場所は自然要塞が結構遠くに見える位置の、山の上である。 ちらりと横を見れば、大きく抉れた山の残骸。 そこがなにで削られたかは考えないでおこう。 中井出「現状確認終了!ようするにヤバイ状況であるな!?木村夏子二等!」 夏子 「サーイェッサー!!まったくもってその通りであります!     ゼプシオン殿がいらしてくれてから戦況は大分変わったと思いきや、     ヤツめ、攻撃を受ける度に力を増してゆくのであります!     まるでそう、長い眠りから覚めてゆくが如く!     ……あ、言いたいことはなんとなく解るでありますサー」 チラリと、サウザンドドラゴンの足元で戦うゼットを見たのに気づかれたらしい。 晦たちの記憶の中じゃあ随分とやんちゃしてたみたいだからな、ゼット。 謎の生命体だった時の、攻撃される度に力を思い出す、なんてのはある意味反則だった。 夏子 「それで、提督さんはどちらへ?要塞側か前線側かここ、中間か」 中井出「僕帰る」 夏子 「一番の戦闘力の要がそうしちゃってどうするんでありますかサー!     ここはサーらしく蛮勇なところをどどーんと!」 中井出「僕強くなんかないもん!みんな僕を買い被ってるんだ!     僕にそんな力なんかないよ!ていうかサーなのに蛮勇確定なの!?」 夏子 「倒置ツッコミはいいでありますサー!     妻をもやもやさせたサーには特攻する責任があるであります!」 中井出「や、俺責任って言葉大嫌いだから」 夏子 「そこで冷静に返さないでよ中井出くん!!」 中井出「うむ!嫌いなものを嫌いと言う勇気もまた、人には必要だと思うのだ!     ではそろそろ行こう!木村夏子二等!突撃の狼煙をあげろ!」 夏子 「……わたしは突撃しませんでありますよ?」 中井出「……ロングホーントレイン!」 夏子 「わたしに死ねとおっしゃいますか!確かにそれだとわたしは突撃してないけど!」 説明しよう!ロングホーントレインとは、人と人とが背中合わせに両腕を組み、 一人が一人を背負ってその頭を角に見立てて突っ込む奥義である! この技の利点は角役の背負われている者だけが とても痛い目を見るという素晴らしいもので、 トレイン……走る役の者は疲れるだけでちっとも痛くないステキ奥義である! ってだから御託終了! 中井出「木村夏子二等!ヤツの戦闘力はいかほどか!」 夏子 「イェッサァッ!ヤツの戦闘力は53万で、あと三回変身を残しております!」 中井出「そうか!その度にパワーアップするのだな!?」 夏子 「イェッサァッ!実は既に二回変身しているであります!」 中井出「なんだってーーーーっ!!?」 なんという恐ろしいヤツよ! それはつまり礼儀正しいけど無礼なあの方の兄よりも一回変身回数が多いということか!? ……変身限界なんて俺達知らないよな。 中井出「OK!変身するたびに強くなるなら強くなる前に潰せばいいのさ!     敵が全力を出すまで待つなど主人公のやることさ!     俺はそんな回りくどいことをするよりも弱いうちにブッ潰すね!……弱いよね?」 夏子 「強いであります!」 中井出「僕帰る《ガシィ!》離してぇえーーーーーっ!!!!」 踵を返した途端に捕まった! ぬ、ぬうう!この博光が逃げ出そうとしていたことに逸早く気づくとは! 夏子 「て〜とく?いい加減にしないと怒るでありますよ」 中井出「うむ!危機的状況であり、     奮い立たねばならぬ状況で逃げ出す臆病者シチュエーション……     一度やってみたかった!……でも怖いのは本当だからね?」 夏子 「足、震えてるしね。わたしもだけど」 中井出「いや……つーかほんとにゼプシオンとバーサーカーだけでなんとかならない?     ここで俺が混ざっててんでダメージ与えられなかったら、     俺ってとても恥ずかしい人なんだけど」 夏子 「今さら提督さんになにを恥ずかしがることがあると?」 中井出「───……そうか!僕にはもう恥も外聞もなかったんだった!     なんだ!それだけのことだったんじゃないか!───うあぁーーーん!!」 納得してしまった自分にこそ涙が溢れました。 ともあれ、状況はそう穏やか賑やかに済ませられるほど平和なものじゃないらしい。 中井出「聞いてくれ木村夏子二等。今この博光はとっても行き遅れの気分を味わっている。     なんというかそのー、飛び降り様に格好よく斬りつけたりして参戦すれば、     まだ“やるぜ!”的な気分も沸いたと思うんだが……     登場シーンがあまりにも情けなすぎたために普通に帰りたい僕が居る」 夏子 「……提督殿」 中井出「わあ、凄い呆れた顔。解ったよぅ、やるよぅ……くそ。     怖いものを怖いと言って何が悪いんだよコノヤロー」 夏子 「と言いつつ、どう刻震竜の裏を掻いてくれようかと思う提督であった」 ……バレてる。 そりゃ怖い。 怖いが、恐怖の象徴である敵の裏を掻けたらとても楽しそうだ……そうは思いませんか? 中井出「はぉおおお……()ァッ!!」 ならばこそ、もう一度気を引き締め、ドゴォンッ!と地面を蹴り弾き飛び出す。 ジークムントとジークリンデを手に飛翔し、その巨大な胸殻へと───一閃!! 中井出「フウウンヌォオッ!!」  ゴギィインッ!!! 中井出「いがぁっちっ!?」 気合を込めた一閃はしかし、鏡のような巨大な鱗によって弾かれた。 なんて硬さ……手応えがまるで、金槌で金属でもブン殴ったみたいな感触だ。 改めてただデカいだけの竜じゃないということを認識させられた。 けどこんなもんは予想の範疇だ。 伝説とまで謳われてるヤツが、そう簡単に真っ二つに出来る筈もない。 中井出「ならばこちらも───誠意を以って応えねばならんな!」 ほんとは使いたくなかったけど、 後から全力を出すパターンは大嫌いな俺なのでもう解放します! 何故使いたくなかったかといえば、筋肉痛がヒドイから。 え?はい、ただそれだけです。ペナルティ筋肉痛の痛みは尋常ではないのだ。 筋肉痛ごときを恐れるなんてとか言うヤツが居たら、 是非ともその痛みを味わわせてやりたい。 全身筋肉痛なんて普通じゃ体験できない痛みだし。 中井出「火闇霊章発火!人器解放100%中の100%!!     さらにマグニファイ&エンペラータイム!」  ピピンッ♪《火闇霊章発動!バーストブレイドの効果!》  ピピンッ♪《人器解放!人体能力の極限を解放!》  ピピンッ♪《エンペラータイム!マグニファイ中に限り全ての制限能力が解放される!》 フオオ!力が漲る!溢れる! あとの筋肉痛が滅茶苦茶怖いけど漲る! だがこれだけでは終わりません! どうせペナルティが控えてるなら、惜しみなくフルパワー!! 中井出「そして覚えたてのォオ───     ドォオオラゴンインストォオーーーーーール!!!」  コォオオドッゴォオオオンッ!!!! 能力発動と同時に体全体が真龍王の炎に包まれる。 だがそれはすぐに俺の体に馴染むように埋没すると、俺の体を灼闇色に点滅させる。 焼けた薪のようにジワリジワリと点滅する体からは、 ハッキリとバハムートの力を感じさせてくれた。 復活する前になんかそれっぽいことを聞いたような気がしたが、 その能力は真龍鞘ランドグリーズに付加されていた。 一定時間ランドグリーズの能力を完全解放させ、炎として霊章を通して体に埋没させる。 それによりランドグリーズに宿っている力を強引に使用出来るようにするスキルであり、 鞘に納めなくとも十秒待たずとも全ての技がランクアップされ、 バハムートの力の恩恵か、身体能力も向上する。 もちろんそんな至れり尽くせりの能力だ、 その“一定時間”っていう効果時間が過ぎればペナルティが襲い掛かる。 ……でもどうしてかペナルティが筋肉痛なんだよね。 あの……管理者様? なにか俺に筋肉痛になってもらいたいほどの恨みでも持ってるんですか? ともあれ、これで準備は完了! 中井出「どぉうらぁっ!!」  バガゾガァッフィバガガガガォオンッ!!! バーストブレード───霊章爆破で加速された斬撃が鏡面鱗を斬り砕き、 追加効果の火を以ってボマースキルで爆破! よし……全力でならこの鱗───砕ける!! でも痛い!霊章爆破の反動って骨身に染みる! 中井出「───否!」 忘れるなどんな時も! 諦めない!それが俺達人間の唯一の武器なんだよ!! 中井出「おぉおりゃぁああああああああっ!!!!」  ギシャゴギャガバババギャゴァシャァッ!!  ゴンバババババゴギガォンッ!! 一心不乱に連ねる連ねる連ねる連ねる連ねる!! 双剣を手に身を振るい腕を振るい、 リミットを越えたことで黄竜の光を放つ剣で幾度も幾度も撃を連ねてゆく! 既に六閃化済みの剣は鏡面鱗を次々と砕き、燃やし、爆破させ、塵を化させてゆく! だが───その威力、その速度に一番驚いているのは俺自身に違いない。 呆れるほど体が軽く、振るう剣にバランスを持っていかれることもないのだ。 ドラゴンインストールの力なんだろうけど、 まさかここまで身体能力が向上するだなんて思ってなかった。 普通ならチャクラムブレードにして回転させた方が攻撃も早いが、 この速度なら双剣六閃で攻撃したほうが凄まじく速い。 見れば、六閃の剣の軌跡が追いつけないほどの速度で俺の腕が動いているのが解る。 だがそれも火闇の力が馴染んでいくと速度を増し、 剣の軌跡にも追いつけるほどの速度でやがて動き出した。  ───鏡の破片の雨が降る。 それはまるでこの青空を映す輝きの如く。 陽の光を浴びてはキラキラと輝くソレは、 氷雪地帯に眩く光るダイヤモンドダストのようだ。 中井出「オララストォッ!!」 が、そんな綺麗な景色の目を奪われるほど、俺のハートはロマンスに溢れていない。  ゴバキャァンッ!! 胸殻の残りを一閃にて破壊する。 するとその奥からは分厚い筋肉と皮膚に覆われた肉体があり、 それは鱗なんかよりもよっぽど硬そうだった───ので、 一切の躊躇も容赦もなく、長剣化させたジークフリードを前方に突き出して力を解放! 中井出「受けるがいい古の竜よ!これぞ真龍王のイレイザーキャノン!     レイジングギガフレアァアーーーーーーーッ!!!!」  キュヴォァィグバォガガガガォオオンッ!!!! 剣の刃身全体から放たれた眩き赤と黒の光───灼闇の波動が、 サウザンドドラゴンの剥き出しの胸へと直撃する───って! 中井出「どぁわぅおおわぁああああっ!!?」 強ッ!反動が強すぎる!! 撃った途端に腕が勝手にバンザイをするかのように上方に!! だがしかしその威力たるや、サウザンドドラゴンの巨体を吹き飛ばすほどのもの───! まさかの吹き飛びを見せた巨体が空を舞い、背中から山へと落下する! サウザンドドラゴンの足元で戦っていたやつらは落下時の震動をモロに受け、 ギャーと騒ぎながら動きを止められていた。 そりゃそうだ、あの巨体だ。歩くだけでも普通に地震が巻き起こるサイズだろう。 中井出「ぬええええいりゃぁあああああっ!!!!」 などと思いながらもすぐさま飛翔! 倒れた身体を起こそうとしているサウザンドドラゴンの尻尾を掴み、 今まさに持てる力の全てを込めてェエエエッ!!! 中井出「受けてみよ!久々の───STRマックス!     ジャアアアイアントッ!スウィイイイイングッ!!!」 藍田 「サー!さすがにそれは無───理ぃいいいいいっ!!?」 追撃しようと駆けてきていた藍田二等がなにか言ってたが気にしない! 血管でも切れかねん力を以って身を振るい、 尻尾をもぎ取らん裂帛の気合とともにサウンザンドドラゴンを振り回す!! 凍弥 「う、うわぁああ無茶苦茶だこいつーーーーっ!!」 岡田 「俺たちがどれだけ攻撃しても怯みもしなかったのに、     よりにもよってジャイアントスウィング!?」 田辺 『すげぇや!さっすが天下の中井出さんだ!』 巨体が横になり、円を描く。 風を切る音は突風どころの騒ぎではなく、振り回す巨体が切り立った山を破壊し、 今までこんなことをされたことがないであろうサウザンドドラゴンに とびっきりの動揺を与えた。───に違いねー! 中井出「ぬぉおおおおおおおっ!!!」  ブフォワァッ!!! 散々っぱら回したのちに中空へ解放! もちろん大して飛ばせやしなかったが、ようは無防備状態に出来ればそれでよかったのだ。 中井出「エネルギー!全ッ開ッ!!ジュースティングッ!スラッシャァアーーーーッ!!」 それを追って、山吹色の光を纏って飛翔する。 眩い光は俺の速度をさらに上昇させ、 少しの間も無くサウザンドドラゴンへと追いつかせる。 瞬間、目が合う。 俺が見下ろし、サウザンドドラゴンが見上げる状態だ。 その目が鋭くなり、口が開かれるまでにそう時間は必要じゃあなかった。  ───そう、それを待っていた。 即座にブレイブポットを発動。 巨大なミサイルを出現させ、巨大な口目掛け─── 中井出「ヘルユー」  ガシュンッ! 一言だけ発してミサイルを発射させた───瞬間、視界が真っ白になる。 耳を劈く轟音に、身体を襲う物凄い衝撃と風圧。 目の前が爆裂し、 閉じた視界でも瞼の先がどれほどの惨状になったのかが簡単に予想出来るくらいの衝撃。 轟音は既に聴覚が聞き取ることを放棄するほどのものとなったようで、 爆風に吹き飛ばされながらも何も聞こえない中で俺は笑った。悪魔的に。 吹き飛ばされた拍子に背中にあった発射台が落下したようだが気にしない。 もう、ミサイルは撃ったのだから。 なにを撃ったのかといえば……ハイペリオン───一番破壊力のある核ミサイルである。 それを巨大竜の口に放り込んでやったのだ。 咄嗟に口を閉じようとしたのが災いとなった。 サウザンドドラゴンはハイペリオンミサイルを見事に噛み締め、爆発した。 俺が見たのはそういう景色で、爆風が治まった今、目を開いてみれば─── サウザンドドラゴン『ルガァアォアァアッ!!!』 中井出      「う、おっ───!?おわぁああああああっ!!!」 爆煙を裂くようにして起き上がるサウザンドドラゴンが目の前に! どうやら俺は思い切り爆風に飛ばされたらしく、結構な高さの中空に居るんだが─── それでもそんな場所に立つだけで顔が届くこいつのバカデカさには口が閉じれない。 しかもどうやら俺を“敵”として認識したらしく、 要塞でも猛者どもでもバーサーカーやゼプシオンでもなく、 俺を───俺だけを眉間に皺を寄せながら睨んできやがった。 その迫力たるや、まるでデスゲイズを視認した時と同じほどの恐怖を感じさせるもので。 俺は思わず喉の奥から“ひぃ”と小さな悲鳴を上げた。 ……それは恥ずかしいことではなかったから、すぐに歯を噛み締めて攻撃体勢に移る。 ───筈だった。  ギガォチュドガガガガォオオンッ!!!! 中井出「うがぁあああぐがああああああっ!!!」 ……巨大な口から放たれた極光が、俺の左足を消さなければ。 ───なんて言うと思ったかこのスダコ野郎!! 中井出「ぐあぁああああこの野郎ォオオオオッ!!!     よくもよくも俺の足をォオオオオオオッ!!!」 痛みで意識がどこかへブッ飛びそうなのを絶叫で誤魔化し、 涙さえ流しながらジークフリードを突き出した。 痛みに狂う人間がすることなんて限られている。 銃を持ってるヤツなら錯乱めいて銃を撃ちまくるか、情けなく喚くだけか。 どうやら俺は前者だったようで、 突き出した長剣からレイジングギガフレアを撃ちまくっていた。 だがそれも続けざまに放たれた極光に相殺され、消滅する。 しかしそれでいい!目的はその先である!! 中井出「黄竜剣おりゃぁあああああーーーーーーっ!!」  ギシャゴバドッガァアォオンッ!!! サウザンドドラゴン『グガァアアォオオッ!!!』 ギガフレアを相殺したことで極光を吐き終えたその鼻頭に、渾身の一撃をくれてやった。 同時に回復スキルが発動し、僅かだが太股から先が消えていた足が再生し、伸びる。 痛みは増すばかりだが、そんなものも敵が怯んでいるうちにグミを噛んでさっさと治した。 リミットは残り一分───既に全力なんて出してるが、 それ以上に高威力の技をここぞとばかりに出していかねばヤバイ。 ならばどうするか?───特攻でしょう! うだうだ考えるのは性に合わねーから突っ込む! 中井出「武装錬金!!」 ギラリ、と再び睨まれながら発動させたのは鎧化&超巨大化。 飛んで視線を合わせるのではなく、巨大化して視線を合わせるべく実行した。  ドゴォオオーーーーーーンッ!!! 甲冑男爵『全身甲冑(フルプレートアーマー)の武装錬金!“破壊男爵”(バスターバロン)!!』 天を衝かんとするサウザンドドラゴンの全長。 それに追いつかんとするほどの巨体となり、 バーサーカーや英雄王の身長を越え、サウザンドドラゴンをガン見する! ヒャッハァー!?ご機嫌だぜ古龍!? これでダメだったら普通サイズで足の指細切れにしてやっかンよ!?夜露死苦!? ───……なんで疑問系で言うんだろうね、ああいう言葉って。 甲冑男爵『ヌゥウウウンッ!!!』  バゴンガァアッ!! だが今はそんなことどうでもよしとばかりに右拳を振るう! ナックルガードで殴ったサウザンドドラゴンの顔面が勢いに持っていかれ、 口でも切ったのか血を少し吐き出した。 鱗が硬いなら、肉が硬いなら内側から! そう!徹しの奥義が今こそ光る! 甲冑男爵『フンハァッフッオラオラオラオラオラドォオゥラァッ!!!』  ドガァンドガァンドガァンドガァンッ!!  バガドガゴバドボゴバァンゴバァンバガァンッ!! 顔面をフルスイングナックルで素早く殴りまくり、 怯んだところへ体全体をかちあげんほどのボディブロー! 次いで反射的に身体を折るサウザンドドラゴンにサミングをし、 再び怯んだソイツの砕けた胸目掛けてガンザックを発動。 甲冑男爵『塵と帰れ!古の龍よ!!』 背中のガンザックが闇の炎を爆発させる。 両手のナックルガードを合わせた俺は強い衝撃とともに目の前の古龍目掛けて飛翔し、 一つの弾丸となってサウザンドドラゴンにぶちかましを加える。 徹しを含んだ双拳でのぶちかましは当然俺にも衝撃を残すが、 胸を陥没しかねない一撃を前に反吐をブチ撒けたサウザンドドラゴンを見たら、 多少の痛みくらいは我慢できた───途端、 吹き飛びかけたサウザンドドラゴンの尻尾が俺の首に巻きつき、 腹筋をする人間のように倒れかける身体を力任せに起き上がらせると、 まだナックルガードも合わせたままで体勢も立て直せていない俺目掛けて頭突きをした!  ゴガァンッ!! 甲冑男爵『ぐぁっはっ───!?』 バヅンッ!とブレーカーが落ちたような衝撃だった。 刹那的に視界が真っ黒になった俺は、 何度か目を瞬かせてからそれが頭突きだったと解るほどに状況を見失っていた。 竜に頭突きされるなんてそうそう無い……にしたって頭突きだけでこの威力かよ! 甲冑男爵『う、おっ……!』 痛む頭部を反射的に触ってみれば、甲冑の頭部がヘコんでいるのが解った。 甲冑男爵『じょっ……冗談だろ!?      霊章融合で武器と同じくらい+がある筈だってのに───!』 やばい。 これは防具の無いところに喰らったら即死級の破壊力だ。 しかも俺の首には尻尾が巻きついていて、 俺の目の前にはぎしいいいと歯軋りをするサウザンドドラゴンが居るのだ。 心を支配しようとしているのは恐怖だ。 今すぐなにもかもを捨てて逃げ出したくなる。 だがそんな時こそ、それがピンチでも、一回だけ深く呼吸をする。  ───それで、十分だった。 再び頭突きをしようとするサウザンドドラゴンに合わせ、俺も身を捻って力を溜める。 残り十三秒───この時間を全力で楽しむ! 甲冑男爵『覚悟───完了!古の竜よ───!』  ゴォゴバァッガァアッ!! サウザンドドラゴン『ゴガァッ!?』 勢いをつけて頭突きをしてきたその顔面に全力の拳を叩き込み、 手がナックルガードごと砕けようとも叫ぶ。 己の、魂を込めて───!! 甲冑男爵『臆さぬならば!かかってこい!!』 残り九秒! 俺は甲冑を解除し双剣に戻すとグミを口に放り込んで噛みながら六閃化を済ませ、 大地に足をしっかりと着けて、ひゅうっ……と息を吸った。 ドラゴンインストール効果で常に解放されている、 ゲオルギアスの滅竜とスキルランクアップ効果。 そして人器とエンペラータイムによって極限まで解放されている自分の力全てを以って、 未だ俺を放さないこの頑固者目掛けて双剣を振るう! 中井出「超速滅竜剣疾風斬!!」 技名を叫ぶまでもなく既に振るっていた六閃化+冥空斬翔剣=全四十八閃が、 それこそその場を剣の軌跡だけしか見えなくなるほどの速度で暴れ回る! ただでさえドラゴンインストールで上昇していた剣戟速度が疾風の奥義によって強化され、 さらに六閃化に加えて冥空斬翔剣という四閃化奥義まで追加した日には、 目の前で起こる現象は既に剣の暴風雨のよう。 いくら硬い鱗であろうとも繰り返し放たれる滅竜と黄竜の連撃に耐えられる筈もなく、 次々と粉々になっては雨のように地面に落ちていった。 次に降り注ぐのは血の雨。 肉を破壊し、切り刻み、 噴き出す血液さえ微塵にせんほどの剣の嵐が玉である血液を雨のように細かに刻んだ。 声  「う、わ……うわぁあああっ!!血だ!血の雨だぁああっ!!」 声  「へ、兵士長!あれは───あの巨大な男は噂の魔王では───!」 声  「なにっ!?ま、魔王め!何故こんなところに!」 下方で様々な声が聞こえるが、それすらも無視して撃を連ねた。 だが───ついに剣がサウザンドドラゴンの肉を突き破り、 硬い感触───骨に到達した刹那。 中井出「あがっ───!?」 体が急に小さく、いや、普通のサイズに戻り、体中が凄まじい痛みに襲われる。 タイムリミットだ……エンペラータイムの効果時間が切れたのだ。 て、いうか、ですねェィ……!? 中井出「いだぁあああああああああがががががうがああああああああああっ!!!!」 筋肉が!全身の筋肉が痛ぇえ!! 今までの比じゃないくらいに痛ぇ!! こ、これはどういった困難ですか!?はたまた苦難ですか!? もしやドラゴンインストールの所為!?って確実にそれだって! だって身体能力が異常なくらいに上がってたし! きっとその動きに僕の体がつていけなかったのだンヮ? なんて急死に一生番組の外国人翻訳ボイスで思ってる場合じゃねぇええええっ!! 小さくなったことで尻尾からは逃れられたけど、 巨大な目は俺を見失うことなくしっかり睨んでやがるし! あれだけ切り刻んだってのにどれほどの耐久力持ってるんだよ!! あ、ダメ。尻尾が来る。そして俺は様々な状態異常。 衰弱とマヒが身体を襲ってて、しかも筋肉痛なもんだからてんで動けない。 中井出(ああ……死ぬ……死ぬな……こりゃ……) 頭の中に父蔵の姿が浮かんだ。 え?父蔵が誰なのかって?父蔵は父蔵さ、トライアングルヘッドのステキガイさ。  ゾガァッギィイインッ!!! ……轟音が耳に届いた。 アレ?もう死んだ?と思うものの、開きっぱなしの視界は空の青を映していた。 そんな、体が動かないが故に落下してゆくだけの俺が次に見たものは─── 鋭い尾撃を剣で斬り弾く英雄王の姿だった。 ゼプシオン「無茶のしすぎだ、休んでいろ、少年」 落下してゆく俺を見ず、背中で語るは英雄王。 ……漢だ!彼の背中に漢を見た! でもあのー、俺、体痺れてて、しかもエンペラータイムの所為でHP1状態なんですけど。 落ちたら死ぬといいますか、休むことすら出来グチャア! ゼプシオン「ぬあっ!?」 総員   『あ……』 死んだ。 総員   『見捨てたぁあーーーーっ!!       英雄王が動けずに落下してゆく提督を見捨てたぁあーーーーっ!!』 ゼプシオン「ち、違う!私はだな!!」 岡田   「背中に漢を見せながら、背中で殺すステキガイ!それがこの人ゼプシオン!」 藍田   『背中で殺す紳士だ!ナイスステキガイ!』 田辺   『ステキガイだぁあーーーーっ!!ステキガイの誕生だぁあーーーーっ!!』 ゼプシオン「少しは緊張感というものを持てぇえーーーーーーっ!!!」 ───……。 ……。 ゴゾォ……! 中井出「やあ」 悠介 「うわぁっ!?あ、な、なななんだ提督か……って、もう死んだのか!?」 中井出「到着から五分フラット!我ながら素晴らしい速度だと思う」 まあさんざんっぱら殴ってやったし斬りもした。 最初っから疾風奥義使ってりゃあ結構違ったのかもしれんが、 生憎と現在超筋肉痛で床を這いずっている始末だ。 しかも苦痛に顔が歪んでいるため、パッと見じゃあゾンビチックである。 じゃなきゃ晦がここまで驚く道理もない。 でもとりあえず復活と同時にマグニファイをストックしておいた。 この状態じゃあ戦えるか解ったもんじゃない。 だったら10分のリスクはあるが、先にストックしときゃあOKだ。 悠介 「……今、武器の合成してもらってるんだ」 中井出「そか。俺は大絶賛筋肉ちゅーちゅー……じゃなくて、きゅんにゅく……ぐおお!     き、筋肉痛、中、だ!」 悠介 「噛んだあとに立て直すのって難しいよな、うん」 中井出「そこでしみじみ冷静に返されるのも嫌だよね、うん」 痛む身体をゴロリと仰向けにする。 見えるのは天井だ。 大木の密集体が天上を作っている。 その上の上のそのまた上にある教会からわざわざゾルゾルと這ってきたんだが、 いやはや階段から転げ落ちた時はあまりの痛さにまた死ぬところだった。 痛みの所為で死ぬのは東に行った時以来になるから勘弁してほしい。 悠介 「今は外、どんな感じなんだ?」 中井出「この大砲の音聞けば解るだろ。今でも絶賛大戦闘中だ。     鱗とか甲殻はこれでもかってくらい破壊してきたから、     今なら大砲も余裕でダメージになるぞ」 悠介 「敵に回ると恐ろしいけど、味方だと物凄く頼りになるな。さすが提督だ」 中井出「ククク、武具とレベルは世界を救うのです。     俺自身に技術なんてなくたって、     武具とレベルが支えてくれる……それがR!P!G!     だからこそ僕は《ズキィーーーン!!》ギャアーーーーーッ!!!」 叫ぶことで力を込めた途端に地獄の苦しみが身を襲った! その痛みは連鎖に連鎖を重ね、再び全身を駆け巡ると俺から考える力さえ奪ってゆく! ア、アレ……?頭まで痛くなってきたヨ……?もしかして頭まで筋肉痛? 考える力がいるってことは、脳にも筋肉があったりするんでしょうカ? 悠介 「辛そうだな提督……ってうわぁっ!?白目剥いてる!?     提督!?しっかりしろ提と───うおわ泡まで吹き始めてる!     提督!?提督!!気をしっかり持てって!───え?なに?お花畑?川?     やめろ提督!そっちに行っちゃだめだ!そっちに行ったら───!     ……へ?誰も手ェ振ってくれてない?あ、やっ……そこで落ち込むなよ!     つーかそこは誰かが手ェ振っててくれる場面だろ!?     なのに───へぇ!?逆にこっち来いって知らないおっさんに手招きされてる!?     どうしてそんなところでまで常識破壊してんだよあんたって男は!!     ててて店長ォオオオオ!!!店長を呼べェエエエ!!じゃなかった!!     えぇと誰だったっけかええと!レ、レアズ将軍!?レアズ将軍だったよな妖精王!     頼む来てくれ提督がヤバイ!」 中井出「ヤバくないよ!正常だよ!みんなが勝手に僕をマニアって呼ぶんじゃないか!」 悠介 「そういう意味じゃない!つーかそんなことに文句をつけるために復活するなよ!」 中井出「グフフ、この博光にかかれば筋肉痛の一つや二つ、どうということもない」 悠介 「そうなのか?」 中井出「なにせ今、三つだからな」 悠介 「涙、流しっぱなしだしな」 狂人とエンペラータイムと人器。 この三つ全てが筋肉痛ペナルティってのはどうかしてると思うのです。 勇者の魂は消えたが、それでもそれらの力を使うには俺の体は弱すぎるようで、 火闇霊章を使っただけでも筋肉痛が起こる。 バーストブレードを使うと余計にだ。 悠介 「その様子じゃ続戦は無理そうか」 中井出「出来るさ!《ガバズキーーン!!》ギャアーーーーッ!!!     っ……ふぐっ……ぐっ……!で、できるもんっ……!できるんだからねっ!?     ななななによっ!人の気も知らないで勝手なことばっかり言って!     勘違いするんじゃないわよ!?     べべべつにあんたのために戦うんじゃないんだから!《ポッ》」 悠介 「気色悪いからツンデレ怒りはやめろ!」 立ち上がり、けじめをつける、しかめっ面。 じゃなくて、強引に立ち上がった俺は鋭い激痛に頬を濡らし、 それでもまるで出来の悪いSFロボットのようにガシャコーンガシャコーンと歩くと、 ガラスなど無い樹の窓枠から外を眺めた。 そこでは今も続いている凄絶バトルが一望できる。 それを見たら、ここでじっとなんてしていられない気持ちが溢れてくる。 もう、覚悟は決まったのだから。 でもなぁ、この体じゃあなぁ。 中井出「よし僕行く!」 悠介 「無茶せず残ってろぉおっ!!そんな体でどうする気だよ!」 中井出「どうする……?決まってるだろ?全身を灼闇で繋いで無理矢理動かす!」 悠介 「決まっててそんな強引手段なのか!?」 中井出「コツは狂いし者……勇者のこと内側から見てたから解る。     腕が千切れても炎で繋げるなんて滅茶苦茶なことしてたけど、まあ。     そんなわけでうん僕行くね?」 完全に村人の服となってもらっていたランドグリーズに意志を通し、 灼闇を紡ぐ糸となってもらう。 全身に痛みが走るが、筋肉痛ほどではないのでまだ我慢できる領域だった。 ……OK、いける。 小さく呟き、ニーヴェルンゲンに意志を通す。 やってもらうのはただひとつだ。 霊章を、今の俺のレベルで引き出せるだけ引き出してもらう。 普段は肘までしか浮かんでいないコレだが、火闇を使う時は肩まで伸びる。 それはその時の強さがこの状態よりも強いからだ───と思いたい。 そう願った途端、なにやら体中がなにかに覆われるような感覚。 ……ハテ? 悠介 「……あ、ところで提とうぉおう!?」 中井出「え?なに?」 悠介 「どどどどどどどうしたんだよ少し目を外した間になにがあった!?     黒いぞお前!あ、あ……あー……鏡が出ますっ!《ポムッ》」 なにやら慌てた晦が鏡を創造。 まるでリモコンを見せ付ける猫のように、どうだー!といった感じに突き出してきた。 それを覗いてみると……そこにアヴェンジャーが居た。 中井出「晦!赤いターバンみたいなの創造してくれ!あ、やっぱいーや。     ブリュンヒルデ!コーディネイトよろしく!《ゾリュリュリュリュ……》ヤー!」 ジャキィイイン!───ブリュンヒルデが俺の意志を受け取り、形を変える! すると鏡に映る僕の姿は見事にアヴェンジャーチックに! ……体全体を埋め尽くしている霊章が余計にアヴェンジャーっぽさを醸し出している。 ううむ、これは新発見だ。 中井出「俺、決めたよ!これからはアヴェンジャーと呼んでくれ!」 悠介 「なにに復讐したいんだお前は」 中井出「この世に蔓延る正義の使者どもに、     悪だというだけで襲い掛かることがどれほど悪辣外道なのかを教えたい」 悠介 「悪だって正義ってだけで襲いかかるだろ?」 中井出「ばかお前、悪は相手が正義だろうが悪だろうが等しく平等に悪辣外道なんだぞ?     悪しか敵と見做さない正義などに悪は屈せぬ!     正義を振りかざすと正義は正義でなくなるが、     悪を振りかざしてもずっと悪なのさ!     ……しかし、なんだな。上半身裸で腰布とターバンだけってのはどうなんだ?」 悠介 「俺に訊かれてもな」 いや、もちろん下は穿いてるよ?サブリガだけど。 腰布もジャングルの王者みたいに短いものじゃなく、足元まである長いタイプのヤツだし。 中井出「よしではGO!《ズキィーーン!!》ギャオアーーーーッ!!!」 飛び立とうとして無理と悟った。 身体を霊章だらけにして、火闇で繋ぐっていったって、 動かそうとする意志はどうやっても身体を、筋肉を動かす。 火闇を巧に操って身体を動かすなんて器用なことを俺に出来るわけもなく、 俺はあまりの激痛に涙を流しながらゴトリと倒れた。 悠介 「しっかりしろ復讐者!まだなににも復讐してないだろう!」 中井出「ググー!この痛みを貴様に移すことが出来れば、     貴様にこの痛みの辛さが解るかーとか平気で言えるのにー!」 悠介 「……提督って妙なところで律儀だよな」 中井出「教えようと努力もしてないのに解るわけないとか言うのは嫌いだし。     ククク、だがこのままで終わるこの博光と思うな……!     このような痛みなど、慣れてくればまた快感に───ならないよ!」 悠介 「一人乗り突っ込みはやめろ!サムイだけだろうが!」 中井出「うるせー!この覚悟がまだ胸の中にあるうちに、俺は動かなきゃならんのだ!     痛さがなんだー!《ズキィーーン!》痛い痛い痛い!痛いよ!!」 悠介 「少し触られただけでそのザマのお前が、どうして刻震竜と戦えるんだよ……」 声  『その通りだ。少し落ち着け』 中井出「誰!?───アアッ!レアズ将軍!」 聞こえた声に振り向くと、そこにははたはたと宙を舞うレアズ将軍が! そしてその姿が晦の手でがしぃと鷲掴まれると、 レアズ『うわっ!?な、なにをする貴様!』 悠介 「いや。親友の話では妖精の鱗粉は傷に効くらしくてな」 倒れ伏している俺の体に、ブンブカと振るって鱗粉を落とし始めた。 すると我が体がパパァアアと輝き、ジワジワと体が休まっていくような……! あ、そうか、俺にはそれがあった〜〜〜〜っ! 中井出「我が右手に然!我が左手に元素!───義聖拳!!」 自然と元素の力を手に込めて、マナを掻き集めて我が裡に沈める! するとどうだろう、筋肉痛が次第に緩和してゆくではないか! 鱗粉で癒されるならもしやと思ったが……素晴らしい! 中井出「GO!《ドシューーーーン!!》」 悠介 「あっ!おーーい提督ーーーっ!?多少治ったからって無茶は───」 グオフォフォフォ!!無茶でも苦茶でもやってみなけりゃ解らぬわ!! そんな言葉を飛び立った窓枠から俺を見る晦にアイコンタクトで送ると、 ジークフリードから出るジェット噴射を利用して、 再びサウザンドドラゴンのもとへと突っ込んでいった。 飛び交う砲弾やバリスタの弾の数に呆れながらもそれらを掻い潜って飛翔。 的確とまではいかないものの、 みんな剥げた鱗の先……つまりサウザンドドラゴンの胸部を狙いまくっていた。 それらは今までとは違い確実にサウザンドドラゴンを怯ませていて、 無茶な攻撃も苦茶な大激痛も無駄じゃなかったんだなぁとしみじみ思わせてくれた。 中井出「アァーーーハッハッハッハ!!!バレットウェポンズ!!」 ストリートファイターシリーズのサガットのように笑いながら、 ブライブポットからバレットウェポンズを解放! ゴシャーンと出てきたそれは、マイクロミサイルポッドよりも大きな巨大兵器だった。 どれくらい巨大かといえば、俺の体では明らかに背負いきれないほどの巨大さ。 モビルスーツが背負うくらいの大きさですかこれ。 いや、さすがそこまでデカくはない。 せいぜい巨人が背負うくらいの大きさだ。 だが背負った途端にこれがなんなのかを読み取った俺は、 輝く極上ガイアスマイルですかさず叫び、発射した。 中井出「ミサイルポッドの武装錬金!ジェノサイドサーカス!!」  ドパチュチュチュチュチュチュチュゥウウウウウウンッ!!! ミサイルの一つ一つが俺の身長よりもデカイというステキな物体が次々と巣立ってゆく! 巣立つって喩えはどうかと思うけどなんかそんな感じなのでええい構わん俺が許す! 一発撃つごとに確実に軽くなってゆく背中の重みが、一つ一つの重量を物語っている。 そんな、鉄の塊みたいなものが風を切って、 マーキングミサイルのようにサウンザンドドラゴンへと真っ直ぐに向かってゆく。  ボンガガガガドバドバボバァンッ!!! 響く轟音と弾ける爆煙。 それらを斬り裂くように追撃の剣閃を放つが、 切り裂いた爆煙の先には未だ元気リンリンなサウザンドドラゴンが存在していた。 さすがにそう効くとは思ってなかったけど、 傷口ですら大して広げられなかった事実にはかなりショックを受けた。 コココ……!ショックを受けながらも既に次弾は用意済みだがなァア……!! 中井出「ワハハハハ!!ウェポンズウェポンズウェポンズゥウーーーッ!!!」 なんかもう怖さよりも面白さが上回ったために、 重火器をブレイブポットで呼び出しては放ちまくった。 ヲゥガリランチャーやロケットランチャー、プロトンキャノンやセンチネルレーザー。 ランダムに出るものを片っ端から放ちまくっているのだ。 その度に巻き起こる爆煙なぞ既に知ったことではない! まるで目標をセンターに入れてスイッチとブツブツ呟く少年のように、 煙も無視してシュートヒムシュートヒムシュートヒム!! 声  『ててて提督ーーーっ!!あんまり下に振動くるようなもの撃つなーーーっ!!』 と、そんな時に僕の耳に届いたのは藍田二等の絶叫。 見下ろしてみれば、サウザンドドラゴンの足に執拗に攻撃している素晴らしき7人や、 ゼットやゼノさんたちが僕を見上げていた。 だが攻撃すれば振動が行くのは、これだけデカイ奴相手じゃ仕方なきこと! 故に新たに引き出したサブマシンガン・キャノンイングラムを藍田に向けて放ると、 声  『ヒャッハァーーーッ!!ご機嫌だぜェーーーッ!!』 と叫んでフルオートマシンガンキャノン二丁拳銃をスタイリッシュに撃ち始めた。 普通のサブマシンガンとは違うところは、 弾が小さな弾ではなく大砲めいたものだということ。 でも連射速度はまるっきりサブマシンガン。 なもんだから衝撃も半端じゃないが、藍田は元気に撃ちまくっていた。 うんうん、やっぱ男の子は重火器に弱いものさ。 俺はといえばまだ体の筋肉痛が消えきってないから、物理攻撃はちと遠慮したいところ。 なので重火器や剣閃を撃ちまくることでダメージを与えていた。 いやしかしバレットウェポンズってほんといろんな種類があるなぁ! こういうのがあればよかったっていうやつがほとんどあるじゃないか! サウザンドドラゴン『ルガァアアオガァアアッ!!!!』 でも、あのー、みんな攻撃してるのに、 どうしてこの子ったら僕だけを睨んで咆哮しているのでしょう。 なんて考えるまでもないか……うん、俺だったら、散々ボコられたらそいつを狙うね。 すぐにエンペラータイム使ってリミット外してもいいんだけど、 なにやら警告みたいなものがナビにちらついていて、 “強引に筋肉痛を鎮めてから  エンペラータイムなどの筋肉痛ペナルティアビリティを使用すると、  さらに辛い筋肉痛に襲われるペナルティが発生します” とか恐ろしいことが書いてあるのだ。 ……つ、使えないっしょ?怖いよこんなの。今でも物凄く痛いっていうのに。  ビュゴォゥンッ!!ボギャドガァンッ!! 中井出「うぎああっ!?」 思考の途中、視界の外から襲い掛かってきた尾撃が俺の右半身に炸裂し、 その勢いのままに地面へと叩きつけられた。 中井出「ブ、ゲッ……!な、んだ、そりゃ……!     デカすぎて気づけないなんて事態、予想だにしてなかったぞ……!」 藍田 『ヒャハッ!?おお提督大丈夫か提督!弾が切れたんで新しいのくれ!』 中井出「心配してるようで全然心配してないねキミ!     ええいもうここにまとめて置いておくから好きなだけ使えい持ってけコソドロ!」 藍田 『や、提督。そこは泥棒って言おうぜ?』 中井出「うむ断る!なぜならば!その方が面白いからだ!     というわけでハイこれ重火器ね!?     俺ちっとあの巨大竜をこれでもかってくらいボコりたくなったから、     姑息な手段をこれでもかってくらい実行することにするから!」 ブレイブポットから重火器を出しまくり、地面に置いてレッツハバナーウ!! 飛ぶことはせず、大地を駆けて、 サウザンドドラゴンの足元で戦う皆様とともに足を狙い始めたのでした! 彰利 「おお!?中井出じゃねーの!     さっき流星となって地面に落ちていっとらんかった!?」 と、その先で一足お先に足を攻撃していた彰利一等兵と遭遇。 踏み潰されない程度に適度に距離を空けては攻撃を繰り返しているらしい。 中井出「うむ!あたかも宇宙からやってくるたびにクレーター作る野菜星人が如く、     高い位置から見事に落とされた博光である!」 彰利 「オウヨ!その博光がこんな足元になんの用じゃい!」 中井出「とりあえずナマヅメハーガス!!」 彰利 「よっしゃあノった!!」 凍弥 「真面目に戦ってくれよ!」 中井出「バァアッカモォオーーーーン!!せっかくの巨大生物バトルだぞ!?     そんな馬鹿正直に普通に戦ってなにが面白い!     勘違いしているようだから教えてやるがな!     俺は真面目に戦いたいから強くなるのではない!     楽しみたいから強くなっているのだ!     なのに真面目にやってなにが楽しい!だからはい、ハーガス」 凍弥 「無駄に人間の男らしさを見た気がする……」 足の指だけで俺達が数人居たって敵わないほどの大きさのソレを前に、 ランドグリーズの中でたっぷりと寝かせた紅蓮蒼碧の巨大長剣をジャゴォンッ!と構え、 振るうというよりは的を絞って的確に穿とうと接近する。 こう、ね?爪と指の間に剣を横に添えてね?こう……縦にひっくり返すの。 中井出「ショラァッ!!《ゴギンッ!》───あれ?」 だが目論見は失敗。 そりゃそうだ、斬り剥がすんじゃなくてただテコっぽく剥がそうとしただけだ。 竜族の爪がそんなんで剥がれるわけもない。 ならばどうするかなんて考えるまでもなねー! 爪と指の間にジークフリードブッ刺して!そんでもってSTRマックスで強引に剥がす!!  ゾギンッ!ミギブギチチチィッ!!! 声  『ルギャアオギャァアアアッ!!!!』 中井出「ぐおわうるせぇえーーーーーーーっ!!!!」 彰利 「耳がぁあああっ!!!ぐあああ耳がぁああっ!!」 一気に半分ほど肉を裂いて掘り起こした途端に耳を劈く絶叫! 空気さえ震わせるソレが聴覚に届くや、耳の奥が痺れるくらいの激痛が俺達を襲った。 だが肉さえ露出しちまえばこっちのもん! 血が噴き出すそこに再度深くジークフリードを突き刺し、 中井出「レイジングギガフレアァアーーーーッ!!!!」 無慈悲なる極光を足の肉の中で爆発させる!! HPもTPも然の加護でとっとと回復してるから、 遠慮なくギヴォガガガギャゴガガガガガ!!! ブゴォッチャボガガガガォオンッ!!!! 声  『グオルギャァアアアアッ!!!!』 ジークフリードが呆れるほどの振動とともに極光を放つ。 足の肉の中で爆発させることで硬い鱗も皮も無視で関係無しに暴れまわる光は、 巨大な足を内側から破壊し、皮と鱗に守られた足を光で膨張させ、破裂させた。 当然そんなことをされれば立っていられる理由も法則もなく、 大地にどっしりと足を構えていたサウザンドドラゴンが体勢を崩す。 俺はすぐさまグミを数個取り出してエクスポーションで流し込むと、 破壊してズタズタの右足方面に傾いてきたサウザンドドラゴンの体を駆け上がりながら、 滅竜疾風斬でところどころ鱗や皮を破壊部位に斬撃を連ねていった。 武器は双剣。 身の振り方一つで速度も撃の強さも相当に変わるソレを以って、 絶えることなく連ねてゆく。 正直まだ筋肉が痛むが、好機というのはたまにしか来ないから好機と言うのだ。 それをわざわざ逃してやる手は無い! 彰利 「キャアなんかカッコイイ!よっしゃあ俺もやるぜ〜〜〜っ!!」 それに便乗してきたのが彰利であり、黒い剣を鈍く輝かせると、 駆け上がるのではなく浮きながら撃を連ねていった。 彰利 「運命破壊せし漆黒の鎌(デスティニーブレイカー)!こやつの体が硬い既定を破壊しろ!     そらそらそらそらそらそらぁあああーーーーーーーっ!!!!」  ザンザンザンザンザザンザンッ!!! ここまでくるとさすがの一言。 彰利は鎌の能力を上手く使い、 効果時間の続く限りに黒の剣でサウザンドドラゴンを斬りつけていった。 中井出「おおお!なんと素晴らしい!」 彰利 「クォックォックォッ!アタイにかかれば竜の鱗も皮膚も肉の硬さもこげなもんよ!     そィで悠介は!?何処!?何処なの!?」 中井出「斬りながらよくそこまでくっちゃべってられんねお前!俺もだけど!     晦なら今猫ンところで武器の合成やってもらってる!」 彰利 「そうなん!?さすがアタイのダーリン!やることがアタイと似てるワ!」 中井出「え?お前なんかやったの?」 彰利 「なにそのやっちゃいけない的なしゃべり方!失礼!とても失礼ネ!     多分解ってて言ってるんだろうからどうでもいいけど!     しょぉおおおおがねぇなぁああ〜〜〜〜〜っ!!     そこまで知りてぇって言うならよぉおおお〜〜〜しょおおがねぇなぁあああっ!!     教えてや───」 中井出「知りたくないからいいや」 彰利 「聞いてぇええーーーーーーーっ!!!!あ、あのね!?     アタイここに辿り着いてからすぐに猫とペリカンにかけあってね!?     武器の合成してもらったの!な、なんだと思う!?あ、いや言うから聞いて!?     俺の持つ鎌全部をね!?もう引きずり出すの面倒だから剣に合成させたの!」 中井出「なにぃ!?じゃあ貴様───」 彰利 「うん。鎌の数が0になったから、もう死神王じゃねー」 中井出「うわー……」 ……なんてやりとりを、ゴンゴシャザギャゾバと肉を削ぎながらやってる。 今や鱗の大半も血ととともに落下し、俺達の前には血塗れの巨大竜が居るだけだ。 剣を振るえば斬れるし、砲弾をぶつければもちろんダメージは通る。 片足だけで強引に起き上がったのには驚かされたが、 そんなことで今更手が止まるほどハッピーな生き様さらしちゃいない。 彰利 「なんかね!もうね!てめぇ見てたら王とかどうでもよくなっちまった!     いつからそんなんにこだわってたんだろうね俺!     アタイはアタイがアタイならそれでよかったっつーのに!     久しぶりに娘たちや小僧と鍋囲んだら昔のこと思い出してさ!     そしたら───なんかね!もうほんとぜ〜んぶ馬鹿らしくなっちまった!     だからスッピーにお願いしたの!アタイを元に戻してェエエエ!って!     したっけもう二度と変更は出来んぞって条件つきで元に戻った!     遠き者は耳に聞け!近き者は目にも見よ!     アタイこそが月の家系が“弦月”の最強を担うパーフェクトダンディ!     弦月ィイーーーーッ!アァーーーキィーーートォオーーーシィーーーーッ!!!」 ジャジャァーーーーーン!!! わざわざ効果音まで掻き鳴らして叫ぶ自称ダンディがここに居た。 しかもそこで発動させてみせたのは……多分、だけど……月奏力。 中井出「彰利一等兵!貴様まさか死神の力を捨てたのか!?」 彰利 「ノォサー!全部剣に託しただけじゃい!考えを改めてみたのだ!     一度は弦月の名からも開放された〜とか言ってたけど、     なぁあんで俺があんなカスどものことでグチグチしなくちゃなんねーんだと!     あいつらのことなんざ知らん!だが俺の苗字は間違いもなく弦月!     もし親があんなクズとして生きてなくても俺は弦月として生まれてた!     苗字に罪はねーのだと!     そして俺は間違い無く月の家系、弦月彰利として生まれたのだと!     その答えに行き着いたらみんな馬鹿らしくなっちまった!」 そりゃ……随分と気づくのが遅かったっつーか……。 いや……気づいてなかったのか? 俺だってガキん頃は中井出って苗字を嫌ってたりしたんだぞ? なにせあだ名が“王様はロバ”だった。 エロマニア騒動のお陰でそんなあだ名を覚えてるヤツは居なくなったけど。 彰利 「───気づいちまったのさ……!     親友に追いつくためになんでもかんでも強くなろうとしてた自分の醜さに……!     答えに行き着いて自分を見つめ直してみたらどうだい!     肩書きばっか偉くなってて、その実自分の実力はもらいもんばっかじゃねぇか!     だから戻ることにしたのさー!俺が、俺だけが頑張って手に入れた力のためにー!     俺は自分自身の月操力と、     合成させることでダークマターに備わったルナカオスの月操力とで先をゆくのだ!     まあ……死神であることにはそう変わりはないんじゃけどねー!?     卍解とか鎌解は使えなくなりましたー!     まあ全ての鎌を完全解放状態で合成させたから、     既にこの剣自体が素敵ウェポンなんだけどー!」 中井出「黒操術はー!?どうすんだー!?」 彰利 「黒はスッピーに貰った能力だから別に死神の能力じゃあねぇのよ!     幾度も歴史を繰り返すことでアタイの魂の中に溜まった黒の具現だからね!     こればっかりはレヴァルグリードの力を吸収するための器だから、     どうにも出来んそうだ!きっぱり言われました!」 中井出「つーかお前さー!     死神状態じゃないとすぐ死ぬってノートン先生に釘刺されてただろー!?」 彰利 「クォックォックォッ!それについても既に解決済みYO!実は」  ヴァゴドガァンッ!!! 中井出&彰利『ぐあぁあああーーーーーーっ!!!!』 連撃が途絶えた。 たったの一撃で、胸部あたりにまで辿り着いていた俺と彰利は地面に叩き落とされ、 胃の中のものを血とともにブチ撒けた。 中井出「うっ……げっ……ごぼがっ!がはっ!」 彰利 「ぎ……!」 喉が焼けるように痛い。 落とされた拍子に内側に衝撃が徹ったんだろう、 普段痛まないような場所が痛み、口内に鉄の味が広がる。 ───だがだ! 中井出「はっ……話の続きを……聞こうじゃ、ないかね……!」 彰利 「キャアすげぇ紳士的!なのにボロボロ!俺もだけど!」 話の続きが気になった俺は、ボロボロの状態でも構わずに先を促した。 おおう、ステータス部分にジェノサイドハートの文字が浮かび上がった。 ……あ、背水もだ。やばいなぁ。 だが痛みがあってこそのファンタジー。 殺す気でいくなら殺される覚悟をお持ち? 殴る気でいくなら殴られる覚悟をお持ち? イジメるヤツらはイジメられる覚悟をお持ち? 全てのものにはしっぺ返しがあると常に思う!じゃなきゃ常識破壊など出来ぬ! だってそうじゃないと、 殴られた時とか正論ツッコミされた時とかにカチンときちゃうから。 人は会話の時こそ己に余裕を持つべきだと思うのです。 余裕持ちすぎた所為で今とってもダメージデカイけど。 凍弥 「……言っちゃなんだけどさ。彰衛門と、えーと提督さんか。     あんたら揃うとどうしてこう緊張感が無くなるんだ?」 と、そこへ呆れた口調で蹲る僕らを見下ろし呟く凍弥ボーイ。 血反吐吐きながらのスマイルですが受け取ってやってください、と笑顔を返した。 中井出「グオッフォフォ……!それは《ドゴォン!》キャーーーッ!!」 彰利 「ワーーーーッ!!」 目のっ……目の前にっ……デケェ足がっ……!! 中井出「ノー!だめ!やっぱお話中止!作戦変更!いのちだいじに!」 彰利 「!《ダダァッ!》」 中井出「あれっ!?待て!なんで逃げるんだーーーっ!!」 有無も言わずに我先にと逃げ出す彰利の肩を掴んで向き直らせた。 すると皮肉交じりのどこか見下したような顔で、 彰利 「誰だって自分が一番かわいいのさ……アンタだってそうだろ?」 お決まりのトルネコさんの名言を語られた。 いや……これ実際どうなんだ?トルネコさんにやられた勇者の気持ちが気になる。 なにせ相手はトルネコさん。 活躍の場など無いと言える伝説の武器屋だ。 ブライと馬車番をしているのがお似合いなくらいの伝説っぷりだろ彼は。 そんな彼にこの言葉を言われたら……なぁ? 彰利 「《パゴシャア!》パゴア!」 とりあえずムカツいたんで殴っておきました。 彰利 「な、殴ったな!?親にも散々殴られたのに!」 中井出「うむ殴《パゴォ!》エコナ!」 あっさり殴り返された。 そしてどうしてか健康的だった。 中井出「やりゃーがったなトンガリ!!」 彰利 「さんをつけろよデコスケ野郎!」 中井出「やりゃーがったなトンガリさん!」 彰利 「オホホホ!あなたもなかなかにできておりましてよ王様はロバさん!」 中井出「なんでそこでそれ出すの!?エスパー!?     さっき俺が思ってたことなんで出すの!?ウィズパー!?」 彰利 「エスパーはわからんでもないけどウィズパー!?     どこのくにおくん飲料だよ俺!!どうせなら俺“ひやしあめ”がいい!」 凍弥 「解らない話はいいから戦ってくれってぇええっ!!」 彰利 「お黙り輝き太郎!!だったら貴様も我らを止めてないで戦いたまえ───     よォオッホォオオオオオッ!!!?」  ゴガァアアガガガボガァアンッ!!!!  バガガガガガガォオオオオンッ!!! 総員 『ほぎゃああああああーーーーーーーーっ!!!!』 見上げるサウザンドドラゴンの目が鈍く輝いた! と思ったらそこからビームが! え、ぇええ!?竜が目からビームって───なんて面白いんだ!! 中井出「すげぇ!この竜すげぇよ!     まあ口からレーザー吐けるならビームくらいはって思ってた時もあったけどさ!」 彰利 「でも威力が半端じゃねぇYO!     辺り一帯が焼け野原状態ですよ!?なにこの威力!」 言うとおり、景色の大半が一瞬にして変わってしまった。 山は吹き飛ぶし草原は黒く焦げるし、 こいつが歩いてきた道はクレーターだらけで見る影もない。 ……でも一番ひどいのは、俺はこいつを投げたことでブッ潰れた山だったりして…… アア、ちょっぴり罪悪感が。 ち、違うよ!?アレってばサウザンドドラゴンがやったんだよ!?僕じゃないもん!! 彰利 「ほいで!?これからどうするよ!」 中井出「とりあえず寝かせちまうのだ!倒れた時の衝撃は尋常ではないだろうが、     足を潰して地面に寝転がせちまえば這いずりゾンビ程度の速度しか出せない筈!     …………ひと這いずりの規模がでけーけど!」 彰利 「おおなるほど!冴えてるじゃねーのエリー!」 中井出「エリーとか言うのやめようね!?     カワイイ愛称っぽいけど結局それってエロマニアって言いたいだけでしょ!?」 だがやることが決まればそれに集中! 当ても無く手を彷徨わせるのも悪くはないが、やっぱりこれぞと決めて暴れ回り、 気が向いたらあっさりとその目的を捨てるのが素敵なのだ! 中井出「よっしゃあマグニファイ───は……出来ないから、     ジェノサイドハートと背水とで素敵な力を弾き出す!」 彰利 「クォックォックォッ!人呼んで“五月荘のマッスル仮面様”とは俺のことよ!」 中井出「お前ロビンだろうが!」 彰利 「言ってみたかったんだよ!」 潰れた片足をかばうようにして歩くサウザンドドラゴンの、 潰れていない足を目指して走る。 片方の足から片方の足へと辿り着くために走らなきゃいけないなんて、 どんなドリームですかここは! 中井出「紅蓮に然!蒼碧に災───ってあれ?」 ジークを双剣にして属性を解放しようとするも、ハタと気づいて走りながら首を傾げる。 災の文字が竜になってる。ホワイ? ……えーと?真龍王の力で……災に竜属性が上書きされた? ………………なにそれ。知らねー。 や、なんかそれっぽい夢を見たような気がするにはするんだが─── でも上書きっていっても災いの力自体が消滅するわけでもない。 そんな風に簡単に消えてくれるんだったら、 俺だって呪いのことで苦労する必要もなかった。 ……普通に使えるみたいだな、災いの力。 中井出「うしゃ。紅蓮に然、蒼碧に災!連ねて一つの力と成す!義聖剣!!」 双剣に込めた然と災の属性を長剣化させることで融合させ、効果を俺自身に降り注がせる。 災の恩恵───TP回復の一切が効かなくなるが、 STRが極大上昇するパワー馬鹿能力である。 だが筋肉痛が続き、 ジェノサイドハートと背水が発動している俺にはこれくらいが丁度良し! 中井出「アイテムマグニファイ!怪力の丸薬の能力を増幅させて飲み込み、     さらに火闇霊章発破!我が力全てをSTRへと移行してぇえええっ!!!     ぬおおおおおおおおおりゃあぁあああああああああっ!!!!」 走り、そのままの勢いを以って巨大長剣を振るう! 後先考えずに振るったソレはゴヴァーンと刻震竜の足をブッ払い───ってウオオ!!? 彰利 「ギャアすげぇ!一発で足払いやがった!」 中井出「やっ───つーかこれヤバイ!じ、地震に備えろぉおっ!!」 彰利 「てめぇがなんとかなさいよ!って言ってる場合じゃねィェーーーッ!!     それでは参りましょう懐かしの月操力!月然力・地!地精-崩-!!」 彰利が地面に右膝と左手を着き、力を流し込む! と同時に倒れてゆくサウザンドドラゴンの背中目掛け、 一気に地面から突き出した巨大な大地の剣が倒れこむサウザンドドラゴンを弾く! 彰利 「うお硬ぇ!そりゃ刺さるだなんて思ってなかったけど───!     中井出てめぇ!どうして背中の鱗も破壊しておかなかったの!」 中井出「無茶言うなぁあ!前面破壊するだけで精一杯だったんだよ!それより前見ろ前!」 彰利 「解っとらぁな!そいそいそぉい!!」  ゾゴゴゴゴゴガァンガァンガァンガァンッ!! 地面に手を着きながら能力を解放させ、 次々と出現させる大地の剣がサウザンドドラゴンの体を弾いてゆく。 だがその重力もサウザンドドラゴンの体が斜になればなるほど重くなり、 勢いも増してゆき、とうとう大地の剣だけでは押さえられなくなってきた。 ───そこへ! 藍田 『お客様……食事中は極力音を立てませんように。     “反行儀(アンチマナー)キックコース”!!』 皆様が蜘蛛の子が如く散る中で、倒れゆくサウザンドドラゴンの真下に立った藍田が、 サウザンドドラゴンの背中に向けて蹴りを放つ!  ドゴズガァアアアンッ!!! 総員 『アッーーー!!』 フタエノキワミっぽい声が全員から漏れた。 ところでアレはどんな言葉なんだろうね?伸ばしてるって考えていいのだろうか。 いや、俺としてはアーーッ!だと思うんだ。 逆にアッーー!ってどんな叫びなのかって知りたいくらいで、 ってだからそんなこと考えてる場合じゃないって! 岡田 「死んだぁあーーーーーっ!!」 RX 『ホリデー垣内が死んだぁあーーーーーっ!!』 藍田が潰れた! 反行儀キックコースでは弾ききれなかったのか、あっさりストレートに! 田辺 『藍田!?藍田ぁあーーーーっ!!』 藤堂 『よし!今のうちにこいつの四肢を破壊しよう!』 田辺 『よし来た』 凍弥 「え───藍田ってやつはいいのか!?」 総員 『捨ておけ』 そしてみんなクズだった。 いやそんなことはもうどうでもよいわ!(確認するまでもなくどうせクズだという意味で) 中井出「私は右足を完璧に潰します。あなた方は左足をお願いします」 彰利 「なにぃ!?てめぇもしや一人で右足を!?     ……つーかなんだったっけ!?     それっぽい言葉を俺、どっかで見たか聞いたかした気がするのYO!」 岡田 「女神VS最終防衛システム!」 彰利 「───おお!懐かしいなぁ!じゃあ任せた!」 中井出「即答なの!?や……い、言ったの俺だけど、さぁあ……!!」 まさかこんなにあっさりと承諾されるなんて……。 ええいままよ!ままならんことをままなるようにするためにままよと叫ぼうOHままよ! 中井出「殺劇舞荒剣(さつげきぶこうけ)ぇーーーん!!」 殺戮モードを全力で利用! 身体能力が向上した状態で素早く横倒しになったサウザンドドラゴンの右足に接近し、 鱗の間から剣を刺し込み、強引に剥がしてからすぐさまその剥がした部位に連撃連閃!! そう!これぞバトル!昔のRPGはなぁ!直接攻撃が全てだったんだぞぉ!? 技なんてものがなくて、ただズバズバ斬るだけ! 一度原始に帰れ!FF4でカウンター覚えさせたセシルだけで進んで、 バッカスの酒飲みながらカウンターバーサーカーになって敵どもを屠り散らせ! そしたらバブイルの巨人の中で終局を迎えることになるから多分!! ちくしょう!最大レベルが99じゃなけりゃあ四天王ごとき! 中井出「ちぃいいっくしょおおおおおおっ!!ちぃいいいっくしょおおおおおっ!!!!     貴様には解るまい!一人だけ滅茶苦茶強くして一人でクリアしたいロマンが!     エンゼルチャクラム!なんかもういいからこいつの足ブッチギれ!」 霊章をニーヴェルンゲンに移動させて作る紅蓮蒼碧の双剣円月輪。 それを高速回転させ、さらに火闇霊章も発動させてさらにさらにジークムントからは炎を、 ジークリンデからは風を巻き起こし、 会心スキルを始めとする様々なスキルを全力で解放しながら、 さながら神をチェーンソーで惨殺するかのようにウェポンチャクラムを振るってゆく! 中井出「シベリアン・タルラーナァアアアアアッ!!!!」  キュイヂャギャゾボボギゴボギファンッ!!! 鱗の下の傷を広げ、さらに根を掘るように傷つけた裂傷を回転斬撃で広げてゆく! ここまでくりゃもう我が剣に斬れぬものはあんまり無し! 殺劇舞荒剣と六閃化の力でどんどんとHP減ってくけど、 その度に攻撃力上がってるからむしろワクワクさんが盆踊り状態さ! 中井出「はい掘ってぇーーっ!掘ってぇええ!!担いでぇええかっついでぇえ!!     チョッチョンガァアアチョン!!」 意味不明な叫びとともに身を振るい武具を振るい、 あらかた微塵に刻んだら巨大な傷目掛けてチャクラムを投げつけ、 俺自身は拳と足とで肉や骨を破壊! チャクラムにはさらにさらに傷を広げてもらい、みるみるうちに右足を破壊していった! 中井出「我が篭手に滅竜よ宿れ……!ランドグリーズ!」 防御を捨てて全てを破壊に! ジークとニーヴェルンゲンを抜かした全てを鞘とし、そこからさらにそれを篭手に変換! 紫の炎を発するようになったファフニールをこれでもかというほど振るい、 右足をどんどんと潰してゆく! チャクラムの方は器詠の理力で操り、上部を。 俺自身はこの拳を以って横倒しになった足の下部を脛から腿にかけて次々と破壊する! だが当然そこまでやりゃあ敵さんも黙ってる筈もなく、 再び俺目掛けて振るわれた尾撃が、HPがもう残り少ない体を撃ちつける!!  バゴォンッ!! 彰利 「キャーーーッ!!!?」 彰利の悲鳴が聞こえた。 恐らく左足の方で俺のことでも眺めていたんだろう。 だが───ククク……!だが……!グオッフォッフォ……!! 中井出「効かんわぁあーーーーーっ!!!!     オラオラオラオラオラオラァアーーーッ!!!!」  ゴバガガガガガガガボォンッ!!!  ゾボガガガガガガフィィインッ!!!! 尾撃を食らおうが殴る殴る殴る!刻む刻む刻む!! HPは既に百の位程度……一撃食らえば死ぬのは間違いない! だがだ!貴様の攻撃なぞこの俺には効きはしないのだ!! 彰利 「アレェエーーーーッ!!?何故!?なんで生きてんだてめぇ!!」 中井出「皇帝竜の逆鱗っていう物理攻撃無効能力が発動しているからです!最強!!」 みんなと戦ってる時やベルセルク状態の時は発動することなく終わったが、 こうなった今、瀕死の僕ほど恐ろしい者など多分おるまい! 死んでないけど、死してなお恐ろしい魔王博光の力、思い知るがいい! 焦ったように尾撃を幾撃も降らせる刻震竜が今はいっそ哀れよ! 彰利 「ヒィイ!ゴヴァーンってすげぇ音鳴ってんのに全然動じねぇよあの魔王!!」 岡田 「つーか俺達多勢でかかってまだまだ鱗に手間取ってんのに、     一人であの速さってなんなんだよ!───ええいみんなちょっと離れててくれ!     ウェイクアップ&ダンシングソード!!《ゴシャァアッキィイン!!》     ブレイブハート全開!エースインザァアッ……!フォォオオオオル!!!」  キギャオフィズガガガガァンッ!!!!  ゴパァアッシャァアアンッ!!!! 彰利 「うおぉおっ!!?す、すげっ……鱗破壊出来た!     やりゃあ出来るじゃねぇの岡田ちゃん!」 岡田 「ブレイブハートが上手くクリティカルばっか出してくれたお陰だ!     じゃなけりゃ破壊できなかったし、     最初からそれが出来れば最初の一撃でとっくに破壊出来てたよ!」 彰利 「オッケェエイ!ならば───     ショラショラショラショラショラショラァアーーーーッ!!!!」  ザンザゴゾゴズバゾシャズシャゴボシャアッ!!! 物騒な物音にチラリと横目に様子を見てみると、 彰利が黒い剣で鱗が剥げたサウザンドドラゴンの足を これでもかというくらいに切り裂いていた。 恐らくブレイカーを今でも発動させてるんだろう、 いとも容易く皮を突き破った黒は肉を裂き、千切り、刻み、 それに続く素晴らしき7人やゼットが次々と足を破壊してゆく。 一度肉が露出してしまえば、やはり生物。 皮や鱗ほどの高度はそこにはなく、筋肉と骨以外はそう障害にはならないのだ。 が、俺が担当している右足同様に左足を潰される感触に焦りを感じたのか。 俺を執拗に狙っていた尾撃は翻り、左足を狙うあいつら目掛けて一気に振るわれた。  ドッガァアアアアアアンッ!!!! 総員 『ほぎゃああああああっ!!!』 巨大な尻尾に潰される者と、中空に吹き飛ばされる者。 数からして既に尋常じゃないが、 空に飛ばされたやつらは不幸だったとしか言いようがない。 為す術なく空に放り出されたやつらはサウザンドドラゴンが放つレーザーによって屠られ、 あっさりと塵と化してしまったのだ。 やっぱこいつ、動きは遅いけど攻撃力が尋常じゃない。 そりゃ、これだけタッパがあれば解らんでもないが───肉も筋肉の密集みたいな体だし。 って、うおぉおおおっ!? サウザンドドラゴン『グガオロォオオオッ!!!』  ゴバァン!ドガァン!ゴヴァアアッ!!! 足は破壊した。 確かに破壊したが───サウザンドドラゴンは飛翼を強引にはためかせると、 仰向け状態だった体を無理矢理起こし、 後ろ足を引きずるようにして前足だけで歩き始めた。 その振動は引きずる振動とも相まって地震の震度を増加させる。 中井出「ここまで執着するほどのものがこの先にあるのかよ……」 彰利 「それっぽいことは寝たきりのロリ道化師ホギーに聞いたぜ?     なんでもレファルド……じゃなかった、     エトノワールにサウザンドドラゴンに関係するブツが安置されてるとか」 中井出「僕これからエトノワールブッ潰して宝奪ってくる」 彰利 「うおおいきなりなんて冗談をってギャア目がマジだ!!」 中井出「そっから見えるの!?どんな視力してんだてめぇ!!」 彰利 「クォックォックォッ……!     アタイのアルティメットアイを嘗めてもらってはキャアアアーーーーッ!!!」 後ろ足を無くしたサウザンドドラゴンは苛立ちげに尻尾を振り回し、 眼下の俺達を執拗に潰しにかかる。 破壊力は今更言うまでもない。 しなやかでいて速く、そのくせ強力。 たったの一撃で大半の者が瀕死状態に陥るソレはまさに歩く災厄。 中井出「どぉっせぇえええええええい!!!」 だがその尾撃の先を体全体で受け止め、強引に引き止める!! ピンと張った尻尾───それを懇親とともに引き、 サウザンドドラゴンを地面から引き剥がすと反対側へと横半月を描くように投げ捨てる!! 彰利 「おわぁあああ!!?ってなんかもういちいち驚いてらんねぇけど!     キミほんと人間!?あげにデケェ敵を投げ捨てるなんて!」 中井出「力こそがパワー!そのまんまだけど素敵な言葉さ!おっしゃあ追撃レッツゴー!」 彰利 「おうともさ!アァアアアルファレイドッ!カタストロファァアーーーーッ!!!」  ガガガォンガォンガォンガォオン!!!  ドンガガガガガァアアアーーーーッ!!! 少し離れた場所に落ちたサウザンドドラゴン目掛け、 突き出した黒の剣からアルファレイドを幾重にも放つ彰利! それに習うように俺も篭手を鞘に変換、ジークフリードを納めたのちに十秒! その間にも彰利は容赦なくアルファレイドを叩き込み、ワハハハと笑っていた。 中井出「精霊よ、背負いし(えん)の荷を解き放て!     その魂が宿りし剣を今、振りかざす時!深淵より蘇り、魔王の名において滅す!     究極剣技!クリムゾンセイバァアアアアーーーーーーッ!!!」 たっぷり十秒チャージ! 月の属性とゲオルギアスにて増幅させた闇の光を、突き出したジークフリードから放出!  ウォガァッチュゥウウウンッ!!!! レイジングロアのようなレーザーが放たれ、 間も無くサウザンドドラゴンが居るであろう爆煙の先へと飛翔! さらなる爆煙を巻き起こし、そこからサウザンドドラゴンを吹き飛ばしていった───! 彰利 「ウヒャヒャヒャヒャ!!     なんか俺楽しくなってきたよ!てめぇ強ぇえなぁ中井出!」 中井出「ワハハハハハハハハ!!     修行なぞせずとも強くなれる!それが僕らのR!P!G!     体捌きや技術なぞ本能で覚えればこそ!さあいこう彰利一等兵!     ドロー!モンスターカード!」 彰利 「ドロー!モンスターカード!」 形振り構わず突っ込んだ。 作戦!?そんなのありゃしねー! そんなもん考えてる暇があるなら敵を全力で蹴散らさん!! サウザンドドラゴン『グガァアォオオッ!!!』 と走った途端にサウザンドドラゴンが起き上がる。 ゴバァン!と普通に飛竜以上の大きさを誇る飛翼をはためかせ、強引に。 だが今の俺の狙いはまさにその飛翼! あれと前足を破壊しちまえば起き上がれなくなるに違いない! 卑怯!?なんとでもいいたまえヨ!!  ゴパッ……コカカカキキ……!! ───なんて思っていた時だ。 奇妙な音が耳につき、嫌な予感を覚えながらも走っていたんだが───  ピピンッ♪《体質変化!サウザンドドラゴンの体が変異する!!》 高い咆哮とともに、サウザンドドラゴンの体が灰色の光に包まれていくじゃないか! しかも体質変化って───本気で変身を残していたのかこいつは!どこのフリーザですか! 状況に慌ててるうちに(といっても波動系の飛び道具は散々撃ったが)変身が終わり、 俺達の前には妙にテラ光りするサウザンドドラゴンの姿が現れた。 だがそれで終わったわけではないらしく、バリ、バリィッ!という妙な、 なにかが裂ける音が耳に届くと─── ゼット『───!?脱皮だと!?』 そう。 サウザンドドラゴンが己の鱗を皮ごと破り、なんと脱皮を始めたのだ! 竜って脱皮するんですか!?とツッコミたかったが、幻想こそがファンタジー! 既にこの世界自体が俺達の常識を超えたものだからこそその名前がついているのだ! ならば何が起きようともむしろ受け入れて─── 脱皮したばかりのプニョプニョボディを斬り刻もう! 外道!?好きに呼びたまえヨ!! サウザンドドラゴン『コァアアアカカカカォオオオンッ!!!』  バギギギギギィイッ!!! 中井出「うえぇえっ!!?」 だがしかし、向かう過程でサウザンドドラゴンの皮膚は高速に硬質化した。 それはさっきまでの鱗よりも硬く、より弾力性を持つようなものへだ。 彰利 「はっ……速ぇええーーーーっ!!ってゲェエ!!!足!足生えてる!!     せっかく破壊したっつーのに!!」 脱皮とともに足が生えるなんてどういう生き物だよ! い、いやそりゃあ体積は一回り小さくなったけど! うむ!ならば考えるより先手先手じゃ! ゼット 『相手は時の竜だ。時くらい操れても不思議はない。      恐らく時の力で脱皮した己の体の時間を飛ばしたのだろうよ。      ───気を引き締めろ、来るぞ!』 甲冑男爵『来る!?馬鹿を言っちゃいかん!むしろこっちから行く!      ガンザックオープン!屠竜奥義“弾丸男爵”(マグナムバロン)!!!』 ゼットが喋ってる間にとっとと巨大化&鎧化を終了させた俺は、 ガンザックに火を点してレッツ屠竜奥義!! 己自身を弾丸とし、時間調節能力によって 柔らかい体を硬く固めていっているサウザンドドラゴン目掛けて突撃を開始した! 甲冑男爵『塵と帰れ!巨大竜!!』  ズガォドンガガガガガァアアッ!!!! サウザンドドラゴン『グギャァアアォオオオッ!!!!』 無防備な刻震竜に、ナックルガードが直撃するのにはそう時間は要らなかった。 すっかり元通りになっていた胸殻に渾身が衝突すると、 勢いも手伝って俺とサウザンドドラゴンは遥か遠くの景色へとブッ飛ぶ。 元々上手く着地する予定も無く最大出力で飛んだ結果だ。 勢いのままに盛大に体勢を崩した俺はサウザンドドラゴンとともにズガガガァと吹き飛び、 だが強引に体勢を立て直すと、 胸の前に突き出した状態で合わせていたナックルガードを解除すると力強く握り締める! 甲冑男爵『ヌゥオオオオオオオッ!!!』 そして吹き飛んだままの状態でサウザンドドラゴンの上に乗っかり、 再度砕けた胸殻の下、露出した肉へと渾身の一撃を振り下ろす!!  ドゴゴガァアアンッ!!! 炸裂する拳! 横に吹き飛んでいた巨体が地面に減り込み、 それを確認するや殴った反動を利用してそのまま跳躍! 月と元素の力を合わせ、我が巨体+グラビティ能力全開の重力を100倍にし───!!  ドォッガァアアンッ!!! サウザンドドラゴン『ブギャァオァッッ!!!』 砕けた胸へと垂直落下! 巨大なクレーターごときでは済まないほどの重さをくれてやり、 鱗や筋肉ごと内部の骨を砕いてやった───!! 鎧ごしにもバキベキと小気味の悪い音が響く。 しかしこの博光に容赦無し! どれほど苦しもうが敵であるからには幾程にも拳を落とそうホトトギス!! 甲冑男爵『オォオオオオオオオッ!!!!』 ナックルガードで肉が露出した胸部を殴る殴る殴る!! その度に骨が砕けたそこがグシャグシャと嫌な音を出すが、知ったことではないわ!! 覚悟とは!決して折れぬ覚悟とは! 嫌なことであろうが無視して突き進めるほどの意思のことを言う!と思う!  ギュルゴギィッ!! 甲冑男爵『ぐわぁっ!?』 不意に首を襲う圧迫感。 これは尻尾───!?っておぅわあああドガァンッ!! 甲冑男爵『っ……ふんがぁああっ!!』 巻きついた尻尾に持ち上げられ、地面に叩きつけられそうになったが強引に足で着地! 巻きつく尻尾を逆に掴み、 持ち上げると今度はこちらの番とばかりにジャイアントスウィング!! 甲冑男爵 『いくぜ英雄王!バッティングの用意は十分か!?』 ゼプシオン「来るがいい!我が渾身、見せてくれよう!!」 甲冑男爵 『よっしゃあ!そぉおおりゃぁああああっ!!!!』 ジャイアントスウィングで振り回していたサウザンドドラゴンを、 英雄王目掛けて放り投げる! 遠心力も手伝ってか無防備のままに回転しながら飛ぶサウザンドドラゴン─── そこへ、待ち構える英雄王が振りかぶり、斬撃を下ろす!!  ゾガギファァンッ!!! 閃く一閃! オリハルコンの巨大剣が鋭く輝いたと思うや、 交差する巨躯と巨躯が擦れ違い───やがてズバァンッ!! サウザンドドラゴン『グガアアアアアッ!!!』 サウザンドドラゴンの背より生えていた飛翼が巨大な音と振動とともに、大地に転がる! 彰利 「う、おっ……すげぇええええっ!!!」 ゼット『チッ……さすがは斬竜王といったところか……!     いくら溜めの時間があったとはいえ、一撃でとはな……!』 飛行能力を失ったサウザンドドラゴンが地面を転がる。 それだけでも地震はとんでもないもので、 尾撃とレーザーにやられなかった者たちをしばらくの間行動停止にさせた。 だがサウザンドドラゴンは平気な風情で起き上がると、 四本足で地面を弾き、エトノワール目掛けて走り出した! 岡田 「なんだありゃあ!速え!───つーか地震の所為で上手く追えねぇ!」 田辺 『背中ン乗れ岡田!一気に近づくぞ!』 岡田 「お、お───おお!!」 走る度に巻き起こる地震。 飛行能力を持たない者がそれを追うのは酷なことで、 だが機転が回るやつらは飛行能力を持つ者とともにすぐさまに追跡を開始する。 かく言う俺もガンザックを広げ、即座に飛翔! ナックルガードを合わせたままに爆発的な突進を開始し、 大地に衝撃波を巻き起こしながらサウザンドドラゴンへと肉薄する! RX 『ギャアアアアアアア!!!』 藤堂 『提督提督!地面スレスレでガンザックはギャアアアアアアアアア!!!』 いろいろ巻き込んだが気にしない! むしろその衝撃で吹き飛んだことで、 サウザンドドラゴンの背中に落ちたやつも居ることだし!  ガシヴオドッガァアアアアンッ!!! サウザンドドラゴン『ガグォアアッ!!』 だがそんなサウザンドドラゴンの尻尾を掴むや、振り上げ、逆側に叩き落す! 当然背中に乗ってたヤツもプチリといったが気にしない! 再び血を吐くその口目掛けてナックルガードをゴガァォオンッ!!! 甲冑男爵『くわぁあぅっ!!?』 落とす前に放たれたレーザーを紙一重で躱した。 危ねぇ……!あのまま無理矢理拳落としてたら確実に死んでた……! なにせこっちはHP1だ。 ジェノサイドハートは極限までに引き出せているが───ってそうだ! 甲冑男爵『ブレイブポット発動!“リミットグローヴ”!!』 HP1の時のみ、鬼神の如き力を発揮する能力を発動! 背水とジェノサイドハートとの相乗効果───そして! 甲冑男爵『お待ちかねの10分経過!マグニファイ!!』 STRに全てを託した状態でのステータス倍加能力! そして一撃目だけ防御力半分無視のアーマーキラー、 一撃目だけ攻撃力4倍のオーガインパクト、 次の一撃だけが確実にクリティカルのストライクブラストなどなど、 出来うる限りの力を込めてぇええええっ!!! 甲冑男爵『零距離ガンザック!徹しスキル付き弾丸男爵ゥウウーーーーーーーッ!!!!』  キュヴォアヴォガガガォオオンッ!!!!  ドォオッガァアアンッ!!!! 弾けるスパーク! 飛び散る瓦礫に山々!そして血飛沫!! 既に砕けた胸部に突き刺さったナックルガードが胸部を突き破り、 俺の腕が肘間接まで一気に埋まる! それを確認した刹那にクレーターでは追いつかなかったのか大地が割れ、 さらなる地震がこの場を襲う! だが構うものかと、ガンザックの速力が消えた瞬間に、 血を吐くサウザンドドラゴンの足を強く引いて割れ目から引きずり出し、 勢いのままに中空へと投げ捨てる! 甲冑男爵『ブレイブポット!V-MAX発動!!《キュヴァアアアアアンッ!!》      いぃいくぜぇええええっ!!ガンザックコスミックレイヴ!』  ゴォオッ───ドゴォオオオオンッ!!!  ドガァン!ドガァン!ドガァン!ドガァン!  ズガォドガォバガァンドガァアンッ!!! 勢いよく地面を蹴り、ガンザックで飛翔! コスミックレイヴの光を纏ったためか空中での行動がひどく用意になり、 ガンザックを使っても飛びすぎることもなく、的確に狙った場所へと激突を繰り返す!! その度に鱗が飛び散り、砕けた骨が胸部の肉から突き出て、血を撒き散らしている。 苦し紛れに尾撃を繰り出すが、 それさえ弾いて効果時間いっぱいにコスミックレイヴで痛めつけ、 トドメとばかりに地面に叩き落とした! そして効果が切れる直前にスターライトシャワーを射出! 地面に激突してなお俺を睨みつけるサウザンドドラゴン目掛けて、光の雨を降らせる!  ドガガガガガガガガガォオンッ!!!! サウザンドドラゴン『ガグァギャァアアアアッ!!!           ───ッ……グガァアッ!!!』  ギガァアガガガチュゥウウンッ!!! 甲冑男爵『───!?』 だがここでまさかの反撃!! スターライトシャワーを放ちながら未だ空中に居た俺目掛け、 サウザンドドラゴンは巨大な口いっぱいから巨大なレーザーを放ってきた! 大気さえ破壊しながら俺目掛けて飛ぶそれは、 恐らくHPがMAXであろうが一撃で死ぬであろう迫力を確かに持っていて─── やべぇっ!HP1でどうにか出来るもんじゃねぇ!!死───! 彰利 「おっそい遅いぃっ!!月空力!“異翔転移”!!」 キヒィンッ!ビジュンッ!! 甲冑男爵『うおっ───!?』 だが、空中に居た筈の俺は突然大地に転移させられ、 その瞬間に俺が居た筈の空中には巨大なレーザーが昇っていった。 そして先にある雲を燃やし尽くし、やがて消える。 彰利  「うへぇえ……!すげぇレーザー……!」 甲冑男爵『わ、わり……!助かったわ……!』 彰利  「オウヨ!つーか男爵様に“わり”とか言われると複雑な気分」 甲冑男爵『ほっといてよ!』 さすがにあんなものを見せられてはHP1のままでってのは辛い。 だから俺は体を元のサイズに戻し、鎧を鞘三本と村人の服などに戻すと、 マナ集束法と集気法とでHPを回復させていった。 彰利 「いや怖ぇ怖ぇ。あんなのくらったら一発アウトだよ即通報だよ」 中井出「通報関係ないけどね。どこの黒サンタだそりゃ」 HPがみるみる回復してゆく。 おまけにキャリバーも使用してHPを回復させてゆく。 いや、回復キャリバーがあるって素敵だな。 アイテムの方は咄嗟の時に残しとかないと死ねそうだから、こうしてるわけだが。 彰利 「つーかキミもよくもまあHP1であそこまでやれたね」 中井出「緊張感は尋常じゃあなかった。このスリルがたまらんのだ」 死ぬのはごめんだけどね。 ……って、あれ?ブラストヒーリングしてるのにTPが回復しない……しまった! 災いの恩恵使ったからTPが回復しないんだった! ええいこれではTP消費するものが使えない! …………いいか、別に。 TP消費でのキャリバーは撃てなくなってしまったが、待ってれば属性は蓄積されていく。 TP消費してアトリビュートキャリバーやると、 蓄積待ち時間が無くてやりやすかったんだが……ええい気にしてる暇はない! キャリバーをブラストヒーリングからチャージングヒールに変えて、と……! 中井出「すまん後頼んだ。HP回復するまで動けないから俺」 彰利 「何故!?」 中井出「バリアチェンジで然属性纏って、チャージングヒール発動させてるんだ。     これって地面に剣刺してないと発動出来なくてさ。だから動けない。     HP回復とためるを同時に出来る素敵キャリバーなんだが、     如何せん動けないのが最大のネックというか、ウゥム……!」 彰利 「ウヌ!任せておくのだ清麿!私の力であの巨大トカゲを倒してみせ───」  ゴバガガガメギゴギバギ……!!  ピピンッ♪《体質変化!サウザンドドラゴンの体が変異する!!》 彰利 「アレェエーーーーーッ!!!?」 サウザンドドラゴンの体が再び光に包まれ、脱皮を始める! 即座にゼプシオンが疾駆し、斬りかかるがゴギィンッ! ゼプシオン「───!?この感触───!!」 脱皮したばかりだというのに剣は柔らかい筈の皮膚に弾かれ、 逆にゼプシオンが吹き飛ばされた。 彰利 「こりゃまさか───アルティメットアイ!《パワーーーッ……!》     …………ゲゲェエーーーッ!!物理攻撃完全反射状態!?     魔法反射の次は攻撃反射かよ!!あ、でも魔法は効くようになってる」 ゼット『フン、厄介なことだな……。     直接攻撃が効かないとなると、波動系や光弾系能力でいくしかないわけか』 彰利 「あと魔法ね。アタイはむしろ波動系とか、     そっちの飛び道具関係に長けてるからえーけど。ゼットンは?」 ゼット『見くびるな死神。これしき、どうということもない』 岡田 「むぅ……俺はちと何も出来ないかも。     飛び道具系の早撃ちはもちろんあるが、あんまり強くねぇんだよな」 田辺 『俺は牙銀大砲撃ちまくるわ。ディヤァアォアァアッ!!《ゴバァオォンッ!!》』 彰利 「……キミさ、牙銀になる時ってその言葉言わんと変身出来んの?」 田辺 『グワァアッハッハッハ!気分の問題よぉ!』 わざわざ牙銀の変身シーンを忠実に再現する田辺も田辺だが、 そんなところで固まってワイワイと会話するあなた方も相当に度胸メンだ。 ともかくあとは任せよう。 俺はHP回復とともに、限界ブッチギリまで力を溜めておく。 即座にキャリバーや波動系能力が放てない以上、俺も今は手も足も出ねー! だからうん僕休んでる。 危なくなったら逃げる方向で、ここでこの戦いの行く末を見守っていよう。 ……もちろん、3分経過する前にまだ使ってない黄竜剣をキメるつもりであるが。 Next Menu back