───冒険の書248/VS刻震竜4───
【ケース598:弦月彰利/黒と死神を宿す月の家系のお話】 ヒュフォンッ!───チャキッ…… 黒死霧葬剣ダークマターを振るい、構える。 悠介と修行した時にかじった程度の剣術の型だが、どうにも頼りなさ満点。 やっぱアタイって体術の方が向いてる気がすんのよね。 でも出てきた精霊武具が剣だったんだからしょぉおおがねぇえじゃない? これが終わったらペリカンさんに合成してもらうかな…… 稀黒装レヴァルグリードを主体にする方向で。 でもダークマターの名前、かなり好きなんだがグムー。 い、いや、猫の技術を信じよう。 ダークマターを篭手と具足に鍛ち直してもらやぁいいのよ! そうすりゃレヴァルグリードじゃなくてダークマターを主として合成出来るし! っと、こげなこと考えてる場合じゃねぇやね。 いよいよサウザンドドラゴンが動き出しおったわ。 彰利 「……ふむ」 月の家系の身となったこの体で何処までいけるか……そりゃ解らん。 じゃけんども、だからこそかつての緊張感が蘇ってくる。 中井出に続けて語るつもりだった言葉になるが、 死神状態じゃなけりゃあ俺がすぐ死ぬのは事実だ。 けどそれは鍛えてなけりゃの話。 そこをよく考えてみれば、中井出だって人間のままだ。 武具があるとはいえ、基本的にゃあ俺もそう変わらない。 だったらそう、武具でも己自身でも、死なないように鍛えてやりゃあいいのだ。 幸いにしてこの世界にはそれが出来る要素がゴロゴロと転がっている。 だから月の家系に戻ったのだ。 死神の力の全てをダークマターに託す形で。 死神化は出来るには出来るが、今となっては能力は変わらない。 壁抜けが出来るとか空浮けるとか、その程度の恩恵がある程度だ。 壁抜けは出来なくても空飛ぶくらいなら月空力で十分だ。 それに───死神の力は剣から簡単に引き出せる。 つまり、恐れるものなどあんまりないのだ! 彰利 「ラインゲートは無くなった!死神王化も不可能になった!だがそれがどうした!」 死神化は“一応”ってレベルで出来るが、全部の鎌を剣に合成させた今、 死神になってもならなくても強さ変わらんのだ! ならば───そう!ならばもう月の家系として戦った方が面白ェじゃねぇの! 彰利 「今だけは貴様に感謝さ中井出!貴様の生き様はアタイに多大な影響を及ぼした!」 中井出「うぅ……ナス漬けが来るよぅ……ナス漬けが来るんだよぅ……!」 彰利 「ナス漬け!?ちょっと目ェ離した隙にどんな幻覚見てんのてめぇ!!」 中井出「───ハッ!?あ、あれ!?ナス漬けは!?………………夢!?     ば、馬鹿な……俺はさっきまでHPとともに黄竜剣を溜めてた筈……!」 彰利 「立ったまま寝るなとは言わんけどね。夢の内容くらい解りやすくしません?」 中井出「夢がコントロールできるものならそうしていたい」 彰利 「俺もだよ」 ウヌ。そしてこげなこと話してる場合じゃねぇや。 彰利 「いやぁ月操力を操るのも久々なもんじゃから興奮しとるぜアタイ。     思わず“キャア!アタイのなにかのボルテージが最高潮に!”とか叫びたくなる」 中井出「漠然としたなにかのボルテージなんだな」 彰利 「オウヨ」 言いながらダークマターを握る。 軽く意識すれば能力を引き出せる仕様のものだ、扱いに困ることはない。 俺自身の月操力パワーが尽きようが、 合成したルナカオスの恩恵で武器から好きなだけ月操力放てるし。 これはいい武器ですよ奥さん。誰だ、奥さんって。 まあ合成させた結果か、力自体が一本に絞られた感じになったんだけどね。 黒、影、闇に関わる能力と運命破壊に長けた剣がこれです。 ダークイーターとか災狩などの闇殺し関係は一切使用不可。 その代わりに黒影闇と運命破壊がより一層に強くなりました。最強。 思いっきり武器だから骨子にゃあ出来んけど。 だから全部の鎌を骨子にして能力全開状態にする、 アンリミテッドブラックオーダーも出来なくなってしまった。 名前好きだったんだけど、しゃあないわね。 彰利 (今使えるのはデスティニーブレイカーとダークネスフロントくらいか。     ほんと、随分と削られたもんだなぁ……) けど胸に溢れるのはかつての高揚。 どこぞの親友を守りたい一心で無茶を続けてきたあの頃の高揚だ。 守る必要が今のあいつにあるかといえばもちろんない。 ただ、高揚が胸の中に宿ることは、俺にしてみればとても嬉しいことだった。  ───俺の力は、未来を切り開くために。 それだけのために頑張って身に着けたものだ。 今更なにのために、なんて変えるつもりもない。 未来を切り開きたいのは事実だしな。 彰利 「よっしゃ、頭ン中の整理終了!     ほいじゃあアタイ行くけど、貴様も回復終わったら参戦めされいよ?」 中井出「ヤバイと感じたら逃げる男、博光です」 彰利 「……アタイもそうすっかなぁ」 きっと誰もが僕らを責めるだろう。 けどね、恐怖に負けない強さもあれば、 恐怖にあえて負けて、自分の弱さを知ることも大事なのさ。 彰利 「ッシャァアーーーーッ!!月空力-弱-!」 死神の力なんぞ引き出さず、月空力で浮遊してレッツゴー! 空をゆくのではなく、大地をゴシャーーーアーーーッ!!と滑る方向で! 我こそは我である!他の何者でもない!名乗り上げ!?そんなもん知らん!! 彰利 「デェエエスティニィイイイイッ!!!」 ズゴゴゴとゆっくりと動くサウザンドドラゴンの前足に早くも肉薄! 低空滑走の勢いをそのままに、影黒闇剣(えいこくあんけん)に運命破壊の力を全力で篭もらせて一閃!! 彰利 「ブレイク!!」  ギョバァッフィィインッ!!! 一撃で前足の鱗を破壊!───といきたかったが、破壊出来たのは精精で俺の全長分程度。 破壊した運命はもちろん、“物理攻撃が効かない”という事象だ。 鱗の硬さなんてのはやり方次第でどうとでもなる。 なにせ、鱗の間と間に剣を切りつけたから。 次いで即座にダークネスフロントを斬った箇所に纏わりつかせる。 黒で場を作るのではなく、圧縮させ、憑依させることで回復効果を殺したのだ。 こうして斬りつける度にダークネスフロントを纏わりつかせれば、 回復出来ずにいずれ腐る。 影黒闇以外での回復概念を破壊し蝕む闇だ、強い光属性でも持ってない限り払えやしない。 細かな能力なぞ要らん───そう、これだけありゃあ十分よ! 運命破壊は俺の実力と事象の確立……とは違うな。 存在する“当然”の率によって時間が制限される。 たとえば“心臓と脳を完全に潰されても死なない”なんて規定破壊は数秒保つかどうか。 完全黒状態ならまだしも、今の状態でやったら確実に、1分待たずにオダブツだろう。 運命、決まり事の破壊ってのはそれだけ難しいということだ。 彰利 「チッ───やっぱ剣ってのはダメだ。野生味がてんでねぇ。     俺ゃもっと荒っぽいのが好きなんだけどねぇっ!」 愚痴をこぼしながらも続けざまに剣を振るう。 同じ箇所を幾度も幾度もだ。 すぐに反対側の前足で反撃されたが、転移で後方に移動することで容易く避ける。 ───OKOK!!勘取り戻してきた! いやぁやっぱいいねえ月操力は! 彰利 「アルファレイドカタストロファァアーーーーッ!!!」  ガンガガガガガガォオオオオンッ!!! 転移して、地に足をついたのを合図に軽く後方に跳躍&アルファレイド連射!! ダークネスフロントに包まれて回復出来ない傷口にこれでもかと言うほど撃ちまくり、 傷をどんどんと広げてゆく!千里の道も一歩からと言います! OK先人よ!ちまちましたのは嫌いだが、今は貴様が正しい!  ルヴォアガフォォオンッ!!! 彰利 「うおあっ───!!」 アルファレイドを惜しげもなく放ちまくっている最中、 それらを無視して突き出された右前足が、俺の眼前を横に通り過ぎた。 バックステップしてなかったらモロだ。 上半身と下半身が、腹を抉り取られてオサラバしているところだ。 ひやりと流れる汗が、実に鬱陶しい───なんて頭に浮かんだ時、 俺の目が映した景色には、俺目掛けて振るわれる巨大な爪の束が───! やべ───!転移───間に合わ───!  ドガガガガガガガガォオンッ!!! 彰利 「《ゾッ───!》いぢっ───!い、っ……!?」 俺を貫通どころか、俺という存在を、腹とかせこいこと言わずに全身を抉る筈だった爪が、 横から飛んできた幾つもの光によって逸らされた。 脇腹を掠めていったが、そんなもの絶命しちまうよりはどこまでもマシだった。 黒状態なら即座に回復出来るが、それに頼るのはまだ早い。 黒は“器”であって“能力”じゃない。 家系に戻って、ようやくそのことに気づけた。 死神王になってからは妙は自信めいたものが心について回っていた所為で、 それが当然みたいになっちまってて気づけなかった事実。 確かに黒状態になればいろいろなことが出来るようになる。 行動次第じゃほぼ無敵だし、姑息に生きれば負けることなど早々無いが─── それも“レヴァルグリードの力を黒に吸収する”と決めた時点で器でしかない。 能力と成り得るのは全てを吸収した時だ。 使えるには使えるが、死神状態でもない俺が使えば体がパンクするだけ。 中井出が使う特殊能力のペナルティみたいなもんなのだ。 しかも俺は死神化を使うつもりが全然無い。 何故ってその方が面白ェからよ! 彰利 「よっ!はっ!とっ!そらそらそらそらぁっ!!」  ガンゴンギンッ!  ザンガガガガガガガゾフィィンッ!!! チョロチョロ動く俺を追って振るわれる爪を、 全てギリギリ届くか届かないかの距離を保って捌く。 爪が届きそうになれば足で蹴り、勢いのままにジャンプして攻撃を連ね、 ヤバくなれば斬った反動を利用して攻撃を避けながら距離を取り。 ……言っちゃなんだが、混ざり者だが人として戦うのは久しぶりだ。 こうして向き合ってみて、思い出せたことはなにも心構えだけじゃない。 かつては俺もこうして、いつ死ぬか解らないような緊張の只中に居たのだと。 “人”であるからこそ胸に沸く恐怖ってもんがある。 死んでもやり直しが効くから無茶も出来る、なんて考えは既に無くなっていた。 あるのは“死んだらおしまい”って恐怖と、 死なないように死に物狂いで生きようとする覚悟ばかり。 そんなだから黒や死神化に頼り、 死から遠ざかっていた自分がどれだけ怠惰してたかが認識出来た。 ───そりゃ、慢心もする。 死が遠いってことは、自分が強いんだと勘違いするようなもんだ。 命ってのは危機に陥っても、自分だけは死なないなんて馬鹿なことを考える。 だからこうして自分だけに攻撃が……死の気配が向いていると、嫌でも解る。 中井出が覚悟がどうとか言う理由も、立ち向かわなきゃいけない理由も─── こんな時に熱くなれずに、得意げにべらべらくっちゃべる馬鹿がどれほどの馬鹿なのかも。 混ざり者だろうが人として産まれた自分が、 自分をもっと知りたいっていうのなら、死神になった時点で解る筈もない。 もっと知れ、俺。 常識なんかに囚われるな。 規定を破壊し、見えない先に心を馳せるのが俺の生き方だろうが───! 鎌の数が多いから死神王? ふざけろ、あんなもの、南無のコピー能力が無けりゃ実現しなかった。 鎌の技の数だけ得意な気分に浸ろうが、そんなものは実力でもなんでもねぇ。 全てを解放し、圧縮した先に残ったのはなんだ?結局、運命破壊だけじゃねぇか。 ダークネスフロントはゼノの鎌の昇華だが、こんなの黒操とそう変わらない。 もっと自分を見ろ。 どれだけの鎌、どれだけの肩書きで固めようが、 結局俺は自分で手に入れた力にこそこうやって高揚を思い出してるんだから。 鎌の力を無意味にかき集めていた、 妙なコレクター気分の浮き足立ったものとは違う確かな高揚。 そりゃあ、死神の力が必要だった時は確かに存在した。 今更過去を振り返って、死神になんてならなければとかそんなことは思わない。 死神になったことで得られる経験は馬鹿に出来ないものだったからだ。 彰利 「月切力&月壊力!!俺に開けぬものはない!     ───開け!太平洋プレートォオオオオッ!!!」 迫る尾撃を前に地面に複合月操力を注入! 岩盤を爆発で盛り上がらせたかのような速度で一気に浮き上がらせガード! だが地面程度で抑えられるなんざ思っちゃいない俺は、即座に月空力で転移を実行。 サウザンドドラゴンの頭部付近にまで一気に飛び、 両手にそれぞれ月醒力と月切力を込めて合わせる。 岩盤を盛り上げたのはガードだけじゃない─── 敵の目から俺を見えなくさせることも狙っていた。 だからサウザンドドラゴンにしてみれば俺はまだ岩盤の先に居ると思われている。 そんな無防備な頭部目掛けてぇええっ!! 彰利 「天に三宝、日、月、星!地に三宝、火、水、風!───龍炎拳!!」 燃え盛る月操の飛翔斬撃を繰り出す!!  ゾギャァシィインッ!!! サウザンドドラゴン『ゴギャァアアグガァアアアッ!!!!』 ───なんてものを馬鹿正直に頭に落としたところでダメージなど無いだろう。 だからわざわざ叫んで上を向かせ、無防備の目に全力で振り落とした。 さすがに対象がデカすぎて両目までとはいかなかったが、左目を傷つけることは叶った。 小さな裂傷だが、視力は落ちている筈だ。 怯んだところに一発デカイの!これぞゴロの知恵! ちなみにこの場合、ゴロは喧嘩と書きましょう。 今こそ我が月操力、ルナカオスの月操力を解放する時! 彰利 「フゥウウルブレイクウゥウッ!!!カァアタストロ───!?」 痛みに怯むことなど刹那的だった。 ───本能だ。 怯めばいいようにやられるだけだと、ヤツの本能が他でもない、ヤツを動かした。 俺をしっかりと見据え、光が漏れる口をギパァアと開いて───!!  ゾンガガガガフィギシャァアォオンッ!!! 彰利 「───ハレ?」 死ぬかもぉお!と思った途端、巨大な波動剣閃に襲われたサウザンドドラゴンの頭部。 後下方から放たれた眩さがサウザンドドラゴンを襲うと、 光は鱗や皮膚を削ぐとともに、口に溜めていた極光までもを破壊していった。 さっきもだが、こりゃいったい───なんて考えるまでもねぇ。 今ここに居て、 刻震竜の攻撃を相殺や掻き消しなんて芸当が出来るヤツっていったら一人しか居ない。 後ろを向き、さらに下方を見てみれば、 再び地面に剣を突き刺した状態で、やあと軽く手をあげるヒューメンが一人。 無茶苦茶な野郎だよ、ほんと。 あの気軽さでこの強さは、つくづく頭が下がる。 状況の悪さ、死のラインってのをよく知ってなきゃ、 ここまでピンポイントで助け船なんて出せないだろうに。 彰利 「つーかキミもうHPマックスなんじゃないの!?」 でも言いたいことはあったから、 怯むサウザンドドラゴンの右前足に斬りかかりながら叫んだ。 今見た波動はレイジングなんたらとかいうのではなかっただろうか。 そうは思ったものの、調べてみた中井出師父のTPは低いまま。 代わりにHPは最大値近くにまで上っているが─── だったらレイジングなんたらってのは撃ってない筈。 HPTPを1だけ残して使うとか言ってたし……じゃあ? 中井出「グングニルに黄竜剣の力を上乗せしてゲオルギアスでパワーアップ!     さらに“全てためる”スキルで限界以上に溜めまくって撃ってみました!」 ……すげぇ納得。 ゲオルギアスとかなんだとか言われてもピンと来ないが、 なにせ中井出の武具だ、なにかを発動させるってだけでとんでもねぇに違いない。 現にサウザンドドラゴンを一撃で怯ませたわけだ。 つくづく、敵になると恐ろしいが、味方になると頼もしいヤツである。 ……時々彼の目がギシャアと怪しく光るのは、 きっといつ裏切ってくれようかを考えてるからだろうけど。 あれだな、もしかしたらもう少しで倒せそうって時に俺達を全滅に導くかもしれん。 で、経験値を独り占めに……うおお適当に考えてみただけなのにすげぇやりそう! OK!ならば俺は逆に貴様を屠ってくれよう! 出来るかどうかではない!やりたいと思い、実行に移すことこそが大事! 彰利 「エル・トーーール!!!」  ヂガドゴゴゴゴガォオオンッ!!! 距離を取りながら虚空から雷の波動を放ちまくる。 月操力のなじみっぷりは相当だ。 死神であった頃よりむしろ体が軽いくらい。 なにより楽しくて仕方が無い。 もしかしたらと思うことも当然ある。 死神っていう、普通ならば感情というものとは程遠い場所に生きる存在になった時、 俺は感情の一部を死神って種族自体の所為で抑制されちまってたのではーとか。 うん、被害妄想ですな。 今楽しいのは今が楽しいから!それでいいじゃあねぇか! 彰利 「よっはっほっ!とあぁっ!!」  ヂガァンヂガァンヂガァンヂガガガガガォオオオオンッ!!! 久しぶりのエネルの真似に、俺の中の童心が素直に燥ぐのが解る。 2億ボルトを惜しげも無く放ち、 ダークネスフロントで包みっぱなしの右前足をこれでもかというくらい痛めつけてゆく。 振り返される攻撃の全ては全て紙一重で避けて。 巨体であるが故に次の行動の動きが詠みやすい。 さっきから月視力全開でいってるんだから、詠めなきゃ困るがネ! 使ってても虚を突かれまくる原因は言わずもがな、時の力だろう。 どれだけ詠んでも、時で行動変異をされちゃあ詠みなど無力だ。 彰利 (次は左から尾撃───ってうおお右から!?) 予測をあっさりと覆された時の緊張感は尋常じゃない。 体力さえ奪っていくほどの怖さがそこにはある。 何故って、一撃でも食らえば瀕死、もしくは絶命できるからだ。 覚悟ってのは不思議なもんで、 これと決めたらそれを達成するまで意地でも生きようって思える。 それは必死になれた時の人間が素直に思える思考。 俺にもまだそんなものが残っていたってことが、酷くうれしかった。 彰利 「《フォバァォオンッ!!》キャーーーッ!!」 余裕を以って紙一重でなく、正真正銘のギリギリ紙一重で攻撃を躱した。 無意識に口からこぼれた、怪虫に襲われそうになった仲田くんの叫びは気にしない方向で。 過程がどうであれ、予測した未来の先を突かれるってのは酷く疲れる。 見た未来を時で変えるってのはつまり、こうだ。 俺が月視力で見た未来を、簡単に言えば“時”ででっちあげること。 こうなるであろう筈の未来自身を時の力で作り上げるのだ。 未来視の能力に、“そう行動するつもりもないもの”を割り込ませる。 俺が月視力で見た未来ってのはつまり、こいつが一足先に割り込ませた未来。 時の能力ってのは文字通り、時を操るものだ。 だから今の自分から一秒先の自分を録画しといて、それを未来視をしたヤツに見させる。 で、自分自身はその通りには行動せずに別の行動をとる。 ……今までやられてたのはつまり、そういうものだ。 恐らくな話になるけど、これは無意識の力……カウンター能力みたいなもんだ。 未来を覗いて行動しようってヤツに仮初の未来を上映する、なんていう底意地の悪い能力。 が、事此処に至り。 そんなカウンターなぞ、 カウンターで返してやりゃあいいという結論は、ひどくあっさりと俺の胸に落ちた。 規定を壊すのが俺の生き様。 鎌や死神(レオ)の原動力となった、俺の生きた証なのだから。 彰利 (時を操れんのがてめぇだけだと思うなよ───!) 月視力&月空力。 視覚で未来を視て、月空力でさらに先の未来を覗く。 月視力でカウンタータイム(命名/俺)をわざと発動させて、 俺の視覚に一秒先の間違った未来を上映させる。 その上で月視力に月空力を組み合わせ、上映されている未来のさらに一手先を覗く。 するとどうだ。 牙で攻撃してくる映像が途中で急に切り替わり、 尾撃に吹き飛ばされる俺の姿が見えるじゃないか。 彰利 「つーことは次は尾撃!《ヴォフォォゥウンッ!!!》ヒョーーーーウ!!」 出した結論通りに来た攻撃をひらりと躱す。 てんでOKだ───月操力のどれもが俺の神経を昂ぶらせて力をくれる。 まるで今まで構ってやらなかったことに沈み、構ってやっていることに喜ぶかのように。 彰利 「貴様の攻撃───全て詠みきる!     貴様には死んだことを後悔する時間すら与えん!キングクリムゾンエピタフ!!」 俺とこいつとの戦いは即ち、詠みと騙し、事象破壊と破壊抑制の競い合いだ。 敵が強くなれば強くなるほど事象破壊は難しくなる。 詠みと騙しは相手が操る時間を延ばせば伸ばすほど容易じゃなくなるわけだ。 俺に要求されるのは集中のみ。 死神になってからは滅多に使用しなくなったものだ。 この感覚も酷く懐かしい。 人から外れるってことは、人としての能力からも外れるってことなのだと改めて理解した。 彰利 (───) キィン……と意識を細める。 敵の動きに集中、見える未来に集中、さらにその先の未来に集中。 ……反撃の好機に集中。 ただし集中するために“リズム”は用いらない。 何故ならリズムから来る集中は、リズムが狂った時点で集中ではなくなるからだ。 敵が自分が願うテンポで襲い掛かる是非は無いのだ。 集中するなら頭で、目で、殺気で、 あらゆるものから届く情報からただ一点のみに集中点を絞り込み、対応する。 あらゆる情報から導き出した集中は、“あらゆるもの”が否定され続けても、 “あらゆるもの”が最後の一つになり、やがて全否定されるまでは集中出来るということ。 集中するために必要なものはなにも一つじゃない。 リズムだけに囚われるな。 彰利 「───」 すぅ、と息を吸い、迫る攻撃に備える。 まずは───左から尾撃。次は斜め上から爪攻撃。避けたところにレーザー。 次から次へと放たれる攻撃を全て紙一重で避け、 避けついでに事象破壊を行使しながら、少しずつでも同じ箇所に傷をつけてゆく。 斬りつけるたびにダークネスフロントの規模を増やし、 “回復”という概念からも遠ざけてゆく。 こいつの耐久力がどれほどものかなんてことは知らない。 が、コケの一念なんやら。 悔しいが今の俺じゃあこいつに致命傷を与えられない。 それが悔しいかといえば……うん、正直、男として悔しい。 なにもしてなかったわけじゃない。 貰いものの力だろうがなんだろうが、自分には多少なりとも力があった。 その全てを以ってしても、せいぜいで小さな切り傷をつける程度の力。 それは、とてもとても悔しいことだった。 自分の無力を嘆くなんて、悔しがるなんて、どれくらいぶりのことだろう。 死神であった頃の自分なら、 こんなのどうせ鎌をもっと強化すれば───とか言って片付けてた。 けど今の俺は……とても悔しくて、今までの自分を殴ってやりたいくらいだった。 彰利 「ぜやぁっ!!」 ゾフィィンッ!───物理攻撃は通用しないという事象を破壊しながらの一閃。 幾度も斬りつけた結果は、巨大な鱗一枚を剥いだ程度。 歯痒くて、下唇を噛んだ。 この世界をもっともっと澄んだ目で見ていれば、もっと上に行けてた筈なのに。 死神王の力に固執しないで、この世界こそに固執していれば。 ……今になって悔やまれた。 俺はまだやれた筈だと。 俺は、こんなに弱くなかった筈だと。 高揚だけじゃあ満たされない。 俺……こんなもんじゃない。 もっともっと、強くあれた筈だ。 もっと、自分の生き方を、力を、進んできた道を、誇れた筈なのに───!! 彰利 「《ヂッ───!》いづっ───!くっ……!」 集中が乱れた……歯痒い。 自分への情けなさで集中が途切れるなんて。 だけど、やっぱり悔しくて仕方が無かった。 力の上に胡坐をかいて、王だ王だって踏ん反り返っていた自分が情けない。 ───そんな悔しさが顔に出てたんだろうか。 体勢を立て直す意味と、呼吸を整える意味で地面に着地し、少しの距離を離れた時。 「なに悔しがってんのかよく解るけど。だったらこれから強くなりゃいいんじゃないか?」 という、随分とこの状況に似合わない言葉が耳に届いた。 ……振り返ると、そこにはきょとんとした顔で俺を見る……人間の姿が。 たったそれだけだ。 俺の顔を見て何かを感じたから言った言葉。 それだけなのに───ただ、とても救われた。 振り返るより早く、耳に声が届いた刹那に、心が軽くなるのを感じた。 「なにを悔しがってるのか解らないけど」じゃなく、解るけどと言ってくれた。 きっと他のヤツが言ったら嘘にしか聞こえなかった言葉が、 あいつが言うだけで現実味を帯びて、簡単に胸に届いた。 そして、そんななんでもない言葉が、こんなにも温かい。 失敗は教訓になるんだと。 これから強くなるために努力をしてもいいのだと、言ってくれた。 俺は期待に応えられるだろうか。 また死神だった頃のように、理屈を並べて逃げてしまうんじゃないだろうか。 ……いや、そうじゃない。 あいつは“期待”なんてものを俺にはよこしていない。 あいつの目から感じられるものはただひとつ。  今が楽しくないなら、これからを目一杯楽しもうぜ っていう、子供の感情を掻き集めたような視線だけだった。 ……ああ、俺はまた間違えるところだった。 誰かの期待に応えるために冒険するんじゃない。 自分が楽しむために冒険して、その上で強くなる。 そうだ……この世界ではそんなことが普通に出来るんだ。 それなのに理由をつけては、現実から目を背けていた。 もういいだろう。 もう十分休ませてもらった。 我侭も言ったし、くだらない妄言も吐いた。 彰利 (……なぁ。俺は───《キィイン……!》速ッ!!返答速ッ!!) 俺は、もう一度お前らと冒険してもいいんだろうか。 そう、月操力に語りかけようとしたら、心の中がとても暖かくなった。 それが答えだ。 俺はもう───迷う時は迷う! 迷わないなんて言えないし! 彰利 「───よし!どっからでもかかってこい!     あ、うそ。出来れば一点からで《ヒュヴァォンッ!!》ってギャーーーッ!!!」 弾けるニヤケ顔で胸の前で拳を叩き合わせた途端、 例によって振り落とされた尾撃を紙一重で避ける。 しかしながら地面に着地していたことが災いした。 尾撃が砕いた地面の瓦礫が飛び、俺のつぶらな瞳にサクッと突き刺さったのだ。 彰利 「ぐあぁあああああっ!!!目がぁあっ!!目がぁあああああああっ!!!」 まるでドリアンのヒゲ目潰しをくらったかのよう! ゲバルがやったヒゲ目潰しはきっとアレを真似たものに違いない! ストーカーが趣味かな!?ミスターセカン!! 今までだったら黒化して異物を外に除去〜なんてことをしていたが───ああくそ! こんな痛みさえ久しぶりで懐かしいって思えちまうなんて、どうかしてるぞ俺! 彰利 (ッチィ……!) 刺さったのは左目だ。 しかし人体ってのは困ったもんで、痛けりゃ涙が出る。 それも、片方からだけ出すなんて器用な真似が出来るわけもないのが事実であり、 左目は血にまみれ、右目はすっかりと涙に濡れ、 どれだけ瞬きしたところで滲んだ視界は一向に改善されやしないのだ。 ええいくそっ……集中しろ集中。 あれだけの巨体だ、動く時にはなにかしらの音が拾える筈───! 彰利 「───、……」 息を吐くと同時、右方向からガゴォッ、という岩を砕くような重く鈍い音───これだ! 音からして地面スレスレの横薙ぎの尾撃! 即座に跳躍してバゴドガァンッ!! 彰利 「ぶげがはぁああああっ!!!」 避ける筈が地面に叩き落とされた。 声  「グオッフォッフォ……!何気ない音にまんまと騙されおったわクズめが……!!」 そして、痛みに苦しみもがく俺の耳に届くは物凄く黒い笑い。 もう軽く殺意が芽生えるほどのそれは、間違う筈も無い僕らの提督の声だった。 彰利 「げほっ……て、てめっ……!」 落下の拍子に瓦礫が落ちた目と、体全体に月生力を。 思ったよりも回復の速い事実に妙な懐かしさと感心を抱きながら、 視力が戻った目で斜め後ろの後方を見てみれば、すっかりHPマックスで、 ものすげぇムカつく顔(まぁガイアスマイルだが)をしている中井出の姿がァアアア!! おぉおお今すぐ接近してブン殴ってやりてぇわあんにゃろう!! 彰利 「てめぇねぇえ!!こんな時にまで人を騙すってどういう神経しとんのよ!」 中井出「自分の神経なんて見たこともねぇからどういうなんて言われても知らぬ!!」 彰利 「ギィイイイイイイイ!!!正論だけどものめっさムカつく!!     言い回しがムカつく!テメェコンニャロブチコロガス!!」 中井出「おぉ!?なんだてめぇ俺とやろうってのか!?言っとくけど俺ゃ弱ぇぞ!?     “全てためる”を実行中だから余計な攻撃が出来ねぇし!」 彰利 「よっしゃあだったら一方的に殴ってくれるぜオリャ《バゴォ!》ペプシ!     なっ……殴ったぁあーーーーっ!!     攻撃出来ないとか言ってたくせに殴ったぁーーーっ!!」 中井出「ワハハハハ!!嘘だーーーっ!!     溜めてるもの以外の攻撃をしたのに、溜めるが解除されてたまるかクズが!」 彰利 「もてあそんだな!?ピュアなアタイのハートを弄んだな!?」 中井出「何を言う。遊んだだけだ。失礼なことをぬかすな」 彰利 「あ、はいあの……すんません……ってなんでアタイが謝んなきゃならんとね!     ってキャアアアアアア!!来たきたきたきたぁあああーーーーーっ!!」 ギャースカと騒ぐうちに、振りかぶられていたらしい前足攻撃が、 アタイたち目掛けて振り下ろされる! アタイは咄嗟に逃げ出したが、なんと中井出は攻撃から逃げずにジークフリードを構え、 ドッガァアと片手持ちのソレで受け止めてみせた! よほどの衝撃があっただろうに、吹き飛ばされもせずに受け止める姿はまるで勇者! ……あ、ちなみにウソです。 彼なら俺より早く、早々にとんずらこきました。 彰利 「キミの生への執着には頭が下がるわいマジで!」 中井出「いいか彰利一等兵!こう考えるんだ!そうすれば意地でも生きようと思える!」 彰利 「えぇ!?なになにイカ子さん!」 ドタドタと逃げながらの会話は無様以外のなにものでもない。 ないんだが、それを楽しいと感じてる俺は、心底もう死神じゃあなかった。 中井出「ある日、自分はとあるミスで敵にコロがされそうになってしまいました。     HPは残りわずか。しかも町は遠くときていて、アイテムも無い。     けど頑張って攻撃を躱すなりクリティカルを狙うなりして、     勝ってしまえば自然治癒で助かります。     ですが死んでしまえば町の教会までひとっとびです。     どうせ金もないのだし、死んで次に備えたほうがいいとあなたは思い、     愚かにもわざと死んでしまいました。実に馬鹿です」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」 中井出「しかし彼はいつまで経っても教会で蘇ることはありませんでした。     何故なら管理者の方でトラブルが起き、     復活システムにミスが出現していたのです。     すぐに復旧しましたが時既に遅し。あなたの魂は死に絶え、二度と───」 彰利 「お、おおお俺生きるよ!意地でも生き残る!!     そ、そうだよな!いくら精霊たちが万全にしてくれてるからっつったって、     異常が無いなんて言い切れねぇんだよな!!うわすげぇ目ェ覚めた!!」 そう。 様々なプログラムにバグが存在するように、 ヒロラインって世界が“創られたもの”って時点でバグはどこかに存在する。 それがいつ復活システムに現れるかなんて、俺達にも精霊たちにも解るわけがないのだ。 そして俺は、死にたくないと心の底から思った。 いや、正しく言えばそんなことはずっと昔から。 ゼノを打倒できた頃からずっと思っていた。 ただ、それから気が抜けたこととか、死神になったこととかで、 そういった意識が深層に埋もれていたんだ。 ───今なら言えることがある。 俺は、死にたくない。生きて、これからの未来を最高のものにし続けていきいたい。 他でも無い、ここまで馬鹿な無茶に付き合ってくれる、こいつらと一緒に。 死ぬわけにはいかない理由なんてそれだけで十分だった。 彰利 「───っとぉっ!?」 中井出「あ」 ふと、俺達への攻撃が止んだ。 振り向いてみれば、俺達から興味を無くしたのか、 再びエトノワール方面へと歩き出すサウザンドドラゴン。 目的を忘れちゃいかんな、 あいつの狙いは俺達の殲滅じゃなくてエトノワールに安置されている物体だ。 そんでもって俺達は、力不足でもあいつをコロがさなきゃならんのだ。 気合いを入れろ弦月彰利!逃げるなとは言わねぇけど、逃げるだけじゃ面白くねぇぞ! ───覚悟だ! 気合いと、覚悟を! 彰利 「───」 覚悟、という単語が頭に浮かんだ拍子、つ、と……中井出に視線がいった。 ……いい顔してる。 今を全力で楽しんでやがる。 恐怖に歪んだり素直に驚いたり、そのくせ攻撃の時は真面目な顔して、 反撃されたら泣き赤子みたいなコエェ顔して。 ……ああ、なるほど、って思えた。 答えなんて簡単だ。 どうしてあいつは戦う前から覚悟を決めず、 戦ってる最中に臆さぬならばかかってこいと叫ぶのか。 戦う前に決めた覚悟には“必死さ”が足りないのだ。 もしくは“本気の心”が。 死ぬかもしれないじゃなく、本当に死ぬって奇妙な確信が胸を恐怖で締め付ける時、 ただ悲鳴をあげるんじゃなくて、ちっぽけでもいいから勇気を持って立ち向かう。 ああ……それが覚悟じゃなくてなんだというのだろう。 そんなことさえ忘れてしまうような場所に、いつの間にか俺は立っていたのだ。 いつかは、当たり前のように持っていた考えだった筈なのに……。 彰利 「───……なぁ中井出!」 中井出「なんだってーーーっ!!?」 彰利 「まだなんにも言ってませんよ失礼な!!     あ、あのさぁ!その───ギャアもう!     てめぇが余計な口挟むから言いづらくなっちまったじゃねーの!」 中井出「そんな時こそ声を大にして言うのだ!“大丈夫!キミなら出来る!”」 彰利 「どこのブートキャンプのキャッチコピーだよもう!!     ……はぁ。よもやまた、深いため息を吐く日が来ようとは……。     でもいい!言う!なぁ中井出!人間って強ぇえなぁ!!」 中井出「なんだそりゃイヤミかこの野郎!     イヤミなら僕はキミが泣くまで殴るのをやめないぞ!」 彰利 「なんで俺いきなりキレられてんの!?     や、普通に人間って強ぇなって思っただけだよ!?ほんとだよ!?     実力的な話じゃなくて精神面でって意味ね!?解る!?」 中井出「いや……人間って精神弱ぇええぞ……?しみじみ言うけど」 ほんとにしみじみ言われた。 中井出「精神汚染魔法とかは簡単にかかるし、洗脳もされやすいし、     足も遅けりゃ頭の回転も遅いし空も飛べないし魔法も使えないし……。     病気になりやすいし霊的なものに呪われると対処法があまりないし、     壁抜けは出来ないし……」 彰利 「あ……いやその、軽いこと言ってすんません……なんかほんとすんません……」 見直した地界人像がガラガラと崩れていく気分だった。 みさお「……あの、ですね。戦う気、あります?」 と、そんな僕らにツッコミを入れてきたのがみさおさん。 呆れた顔が実に印象的である。 中井出「おおみさおちゃん丁度よかった!     キミと聖ちゃんに訊いておきたいことがあったんだけど」 みさお「わたしと聖ちゃんに……ですか?いったいなにを───」 中井出「ほら、二人とも神や死神のパワーをUPさせたり、ダウンさせたりが出来るだろ?     その応用でさ、誰かの能力を全体化して振り分けることって出来ないかなー、と」 みさお「全体化ですか。あの……まあ、はあ。出来るには出来ますけど。     ───彰衛門さん、月影力を使うことになりますけど、元に戻ったんですよね?」 彰利 「主語が抜けとるとツッコミたいところじゃけんど、     そげなこと言っとる場合じゃないしね。オウヨ、オイラ月の家系」 みさお「それではあと若葉さんと木葉さんにも協力してもらって───」 彰利 「あと椛にもだな。みずきは───おらんね。何処でなにやっとんのだか。     しゃあない、出来る人数でやるとして───キミなにやりたいの?」 中井出「なにをするかも聞いてないのに話を進めるお前、嫌いじゃないよ?     死神やめてから急に丸くなったんじゃないか?」 彰利 「実感トラーイ!じゃなくて実感しとる」 うむ、ひしひしと。 俺ってこんなに物分り速かったっけ?と首を傾げてるところだ。 彰利 「そんで、なにを?」 傾げながら言う。 お陰で視界がヘンな感じだが、無意味な行動のためか妙に頭の中が冷静になっていった。 サウザンドドラゴンはエトノワールへと向かっている。 大砲やバリスタの弾、魔法や飛び道具をくらいながらだ。 翼を落とされた刻震竜は飛ぶことはもちろん、 走ることもなくゆっくりと後ろ足二本で歩いてゆく。 まるで、そんなものは撃つだけ無駄だと体で示すが如く。 横目に見る景色はそんなものだ。 逸る気持ちは首をかしげたことで、馬鹿みたいな話だけど薄まっていた。 そこへ届けられた中井出の声は、やっぱりよく耳に届いた。 一発で暗記したね、なんだったら気絶したあとぺらぺら唱えてやってもいい。 だって、それだけ衝撃的な言葉だったから。 中井出「ちまちまやるのはつまらん。どうせなら一気にオギャーと暴れたい。     ああ、オギャーは発音的にはおぎゃあああだ。白面な?」 いちいち細かいやつである。 ここは別に暗記するべきところじゃあなかった。 中井出「で、なにを広めてもらうのかというとだな。     俺が使う能力を、影を使ってみんなに届けてほしいんだ」 彰利 「なに?マグニファイとか?」 中井出「うむ!……出来る?」 みさお「それはその……まあ。神と死神、それから月の家系ら限定になってしまいますが。     回路の問題で、神か死神か月の家系かでないと、     そういったものを通すほど影を繋げられないんですよ。     晦の家系、月影力を持った若葉さんと木葉さんがその例です。     月の家系同士や、耐性の低い普通の地界人ならリンクは容易です。     ただしそこに空界の回路や、     天界の回路が混ざるとなると話は別で《がしぃっ!》ひゃあっ!?」 中井出「みさおちゃん!御託はよろしい!出来るか出来ないか!」 みさお「ででで出来ます!神と死神と月の家系と生粋の地界人限定ですけどっ!」 中井出「よろしい!では早速繋げるのだ簾翁一等兵!     ヤツは既にエーテルアロワノンに迫っている!     猛者どものキャーという悲鳴が     なんかもうすごい勢いで聞こえまくってて楽しい限りだが、     潰されるわけにはいかんのだ!」 両肩……二の腕あたりかね。を掴まれてがくがくと揺すられるみさおさん。 うむ、なにやら新鮮だ。 ちらちらこっちの様子を伺ってるゼットも、なんだかんだで微笑ましい。 つーか戦ってなさい貴様は。 みさお「わ、解りました。それでは───彰衛門さん、“影”の行使を」 彰利 「OK」 ───自分でも驚くくらい自然に頷いて、ダークマターを構えていた。 滅多なことじゃ頼らないと決めてた筈なのに。 ……なんて言ってる状況じゃないんだよな。 今が“よっぽど”なんだ。なにを躊躇する必要がある。 彰利 「───」 右手に持った黒の剣で、己の影を突き刺す。 すると黒の剣は俺の影に沈み込み、刃身を埋め、柄を埋め、やがて見えなくなる。 それとともに俺の背には八枚の黒の飛翼。 瞳の色も家系のシンボルである緋から深闇へと変わり、 体全体が強大な力に沈むのを感じた。 ……これがレヴァルグリードの片鱗。 死神王の時はあまり意識して感じ取れなかったが、これは異常な強さだ。 果ての無い黒と影と闇じゃなければ、器として成り立ちやしない。 彰利 『───』 黒と影と闇が俺の体の中で渦巻いている。 それはとても荒々しいもので、 自分が今までどうやってそれらを抑えていたのかを、一瞬忘れた。 悪い意味でじゃない。 忘れるほど、当然として受け入れられたのだ。 そうなると不思議なもので、黒と影と闇とが俺の中で大人しくなるのが解った。 ……思い出してもみよう。 元々レヴァルグリードは俺との協力を快く受け取ってくれた筈だ。 それが俺の中に中々溶け込まないってことは、俺の方に問題があったということ。 問題が明確でない以上は手探りが続くわけだが───焦ることはないのだろう。 今はこんなにも落ち着いているのだ。 死神であった頃では感じられなかったであろう安らぎ。 それとともに浮かぶ僅かな一体感。 これを糧に、今はただ───目の前の敵を打倒するための努力だけを、 惜しみなく尽くしていこう。 彰利 『接続(アクセス)、我が(シン)』 まずは俺と中井出とみさおとを影で繋ぐ。 若葉ちゃんと木葉ちゃんは───離れてるからいいか、べつに。 みさお「───、接続を確認しました。我が祖名“冥月”の名の下に、月の名よ奮い立て」 中井出とみさおを影で繋ぐと、みさおが頷いたのちに冥月刀を振り上げる。 するとみさおの影が自然要塞目掛けて伸び、俺の影は死神目掛けて幾重にも伸びてゆく。 みさお「母───いえ。椛さんとの接続を確認しました。     月影力にて意思を通達……確認。了承を得ました。──いきますよ中井出さん!」 彰利 『こっちも死神との連結を確認したぜ!みさおの方は月の家系と神とだな。     ……うし!準備は整ったぜ中井出よ!     なにする気か知らねぇが、バシッと決めてやれ!』 中井出「よっしゃあ!そんじゃいくぜぇええっ!!……一緒に地獄を見ればいいんだ」 みさお「えっ!?あ、あの!?今なんと───!?」 中井出「まずは義聖剣の効果が切れたことで回復したTPと、     回復させたHPとを合わせてレイジングギガフレアを───ストック!     HPTPともに1になったところで、     皇帝竜の逆鱗とジェノサイドハートと背水が自動発動!     ブレイブポットからリミットグローヴとV-MAX、     マイティガードとマイティストライク、     メタルボディとマクスウェルシステムを発動!バリアチェンジで月属性を付加!     アイテムマグニファイを怪力の丸薬に使って極飲!     月と災を合成させて災の恩恵を発動!TPが回復しない代わりにSTR極大上昇!     次いでマグニファイ&エンペラータイム&人器120%解放!     そんでトドメにドォゥラゴンインストォオーーーゥル!!!」  ドゴォオオオオオオオンッ!!!! 彰利 『ウギャアアアアアイイ!!!』 みさお「ふくぅううっ!!?やっ───!?体が、熱っ───!?」 影を通して物凄い何かが徹ってゆく。 う、うわ……なんだこりゃ……!尋常ならざる力の波動が俺の体に宿って……!? みさお「す、すごっ……!これが人体能力120%……!?     鎌の解放もしていないのに、呆れるくらいに体が軽くて───」 中井出「ほわぁあはははは!!立ち止まってる時間がもったいないぞぅ者どもよ!     さぁ攻撃だ!今こそ好機!全軍撃って出る!!」 総員 『ハワァアーーーーッ!!!!』 影からの恩恵を受けた者たちは、喉が破裂せんくらいの勢いで叫んだ。 否、叫ばずにはいられなかったのだ。 だって、こんなにも心が熱い。 じっとしていられず、なにかを成したいと心の底から思えてならない。 これが───これがお前の心の熱さか、中井出よ! さて……それはいいんだが、一緒に感じるこの言いようのない不安と焦りはなに? 中井出「ちなみに3分経ったら地獄の筋肉痛+麻痺&衰弱タイムなので。     死にたくなければ全力でサウザンドドラゴンを倒すことだグオッフォフォ……!」 総員 『中井出ぇえええええっ!!てめぇえええええええっ!!!』 面識のある親しいヤツからあまり深くは知り合ってないやつらまで、 叫ばずにはいられない状況がウェルカムだった。 3分!?3分でサウザンドドラゴンコロがせって!? 彰利 『中井出てめぇ!物理攻撃効かないのにSTRばっか増やしてどうすんのさ!     これじゃあダメージ与えられんままで終わるよ!?』 中井出「ええい解らぬか彰利一等兵!直接攻撃でなければいいのだ!     つまり力任せに振り回したり、爪を怪力で毟り取ったりと、     ようするに“攻撃”でなければいいのだ!」 彰利 『あ───ああああああああ!!』 そうだ!そうだよそうじゃねぇの! つまり直接攻撃じゃない限り、首絞めるのも自由だし首ヘシ折るのも自由! 攻撃が弾かれるなら、ナマヅメハーガスの要領で鱗剥がしたりするのはアリなんだ!! すげぇやさっすが天下の中井出さんだ!俺達が予想しないことを平然と思いつく!! RPGなどのゲームでは馬鹿正直に武具で攻撃してしまうところだが、そこは中井出。 率先して肉迫すると、ダークネスフロントが付着したままの裂傷に手を突っ込み、 ブギミギと傷を広げだした!! サウザンドドラゴン『グギャァアアォオオオオンッ!!!』 これにはさすがのサウザンドドラゴンも絶叫! すぐさま反対の前足の爪で攻撃をするが、皇帝竜の逆鱗の効果で物理攻撃は一切無効化! そうして異常さに気づいたのだろう。 サウザンドドラゴンは口を大きく開けると中井出目掛けて極光レーザーを射出! ───した途端に中井出は烈風脚で前足を蹴り弾くと離脱! 残された前足は自分が放った極光レーザーによって傷口を広げられ、またまた絶叫。 ……やべぇ、なんかサウザンドドラゴンが可哀想に思えてきてる俺が居る。 中井出「グオッフォッフォ……!愚かよ愚か……!己の攻撃で自爆するとは……!     さあ!物理攻撃はしないが激しく燃えるぜ火闇霊章!!     右手に炎!左手に月!義聖拳!三千大千世界全焦土ォオオオッ!!!」 中井出の体全体が物凄い炎に包まれる! 激しき灼闇の炎は近づくもの全てを焼き、爆滅しながら燃え猛っている……! 見ているだけでも引火しそうなくらいの激しい炎を身に、いったいなにを─── とか思い始めた途端、中井出がサウザンドドラゴン裂傷に潜り込んだ!! ───途端に爆裂しまくる裂傷!! サウザンドドラゴン『グオアギィイイァアアアッ!!!!』 彰利       『ヒィイイイイイッ!!!』 ウギャア痛い!あれ痛いよ絶対痛い!! 滅茶苦茶な爆発を巻き起こす荒ぶる炎が体の中に入るって───想像しただけで痛ぇよ!! しかも俺のダークネスフロントが、 竜族の肉体に存在するであろう回復力さえ殺してる所為で自然治癒さえ許さない! 見る間にサウザンドドラゴンの右前足は内部膨張を始め、 中井出が潜り込んだ傷口からは夥しいほどの血がバシャバシャと……! ……想像してみよう。 爆発を続ける小さな寄生虫が、傷口から体の中に進入する様を。───って無理! 想像したくもねぇよそんなの! 彰利 『エィイ!落ち着け俺!否!より一層熱くなれ!俺!』 3分だ!3分以内にヤツを討伐せねば俺達を待つのは祝福ではなく激痛! 悩む暇よりもより一層の攻撃を! 彰利 『一点集中!フルブレイクカタストロファー!!』 全月操力&ダークマター内の全ての力を集めて放つ!! 巨大な闇光は二足で進むサウザンドドラゴンのもう片方の前足に直撃し、 闇光に負けないほどの巨大な爆発を巻き起こしては消えることなく放たれ続ける! ……すげぇ!撃ちまくってんのにてんで疲れねぇし枯渇しねぇ! アビリティだけでこれほどの能力を叩き出すとは…… これがエンペラータイムの……中井出の武具の力なのか! ゼノ 『忌々しいが漲る……!尽きることなく溢れる力が我に戦えと訴えている!!』 夜華 『ほざくな!わたしだ!わたしが戦う!!』 春菜 『力を力を力をォオオオッ!!』 つーかみんなかつてない己の力に暴走しかけてません!? 特に更待先輩殿がヤバイ感じで光の矢を暴風雨の如く撃ちまくってんですけど!? 月の家系の方々と死神、そんでもって───神はまだここには居ないけど、 確実に大変なことになってるに違いないと確信する。マジで。 かく言う俺も、体と心が熱くなって仕方が無い。 大事なのはハートだぜ?って、 中井出と武具たちの意思が僕らの内側で親指立ててスマイルしているのだ! しかもそんなスマイルが、俺達をさらなる高揚へと至らせる! まるで中井出に号令をされて、 サーイェッサー!!と本気で叫ぶ時の高揚が倍加され続けているような───! ウヌウ!じっとしてられん!だが自分を見失う気はてんでしないのが提督クオリティ!? これすごいよマジで! 粉雪 『《ズキュウウゥン!!》彰利!社長命令だ!右斜め50度にフルブレイク!』 彰利 『いつからキミ社長になったの!?』 言いつつ右の適当な上方にフルブレイクレーザーを! するといつの間に放たれたのか、 サウザンドドラゴンの目から出た破壊光線を破壊するフルブレイク! お、おおお……!!なんという的確な未来視……!さすがは粉雪……! 伊達に未来視の鎌眼(れんがん)を持ってねぇ……! 粉雪 『夜華!全力で風を巻き起こし右後ろ足を払え!     春菜!多少しか払えぬ足をさらに浮かせるために助力しろ!     みさお!ゼットとともに左後ろ足を払え!全力でだ!     彰利!次に来る大砲でヤツは後方に倒れる!     フルブレイクで上手く上体を逸らさせ、右前足から地面に倒れるようにしろ!』 彰利 『ウ、ウヌウウ!!』 でもね!?あのね!?確かにその未来は視えてるけど、 その後にまた別の未来が視えてるんだけど!? それってまた時間変異させられてるんじゃないかなぁ! とはいっても既にみんな行動を開始し、 砲弾が直撃するや後方に倒れ始めるサウザンドドラゴン───ってウソでしょう!? ……ええい疑ってる時間がもったいねぇ!やるっきゃねぇだろこの野郎!! 彰利 『フルブレイク注入!一剣流オメガレイドカタストロファー!!』 剣に封じ込められた鎌の力と月操力、そんでもって黒の力を解放して剣閃を放ちまくる! 普段なら一発撃つだけでも疲労困憊の奥義だが、何発撃っても息が乱れない! 矢継ぎ早に放つ剣閃がサウザンドドラゴンの体を弾き、 徐々にだが回転させてゆく様は見ていて実に爽快! ああんイケナイ……!クセになっちゃいそう……! だが忘れるな俺……これは中井出の力の恩恵があってこそ。 慢心は既に敵である。 無自覚とはいえ、気づくのに千年近くかかってんだ───もう惑わされるな。 そうは思うが、見事に回転させ、右前足から地面に叩き落とした時は、 その場に居る全員で心から絶叫した。 悲鳴の類ではない、祭りを成功させた瞬間、仲間たちと一緒に叫ぶように。 瞬間、サウザンドドラゴンの右前足はぐしゃりと嫌な音を立てて潰れる。 普段なら抑えも効くだろうが、あそこは爆裂し続ける中井出師父が潜り込んだ場所。 内部など既にズタズタだったのだろう、少しも耐えることなく潰れ、今では見るも無残だ。 つーかすげぇよ粉雪!俺の月視力なんて及びもせん未来視だ……お見事! 未来変化さえスッ飛ばした未来視を実現させおったわ! ……しっかし結構傷つくぞ? オメガレイド放ちまくってるってのに、弾くことくらいしか出来ねぇなんて。 …………出来ることはまだ残ってるが、今はちと機じゃない。 残り一分……その時になったらやってみようと思ってる。 こげなこと言ったら、中井出あたりに罵倒されそうだけどね。 彰利 『永劫なる闇よ……我が意思に集え!』 唱え、倒れているサウザンドドラゴンの上空に闇の光を発射! 間も無く破裂し、雨のように降り注ぐ闇の光を前に、 オメガレイドの剣閃をラッシュラッシュラッシュ!! 虚空の闇から放たれ続ける光へ誘うように刻震竜を剣閃で弾き、強引に浮かせてゆく! 普段ならここまで速い攻撃なぞ出来ないだろう。 オメガレイドが強力だって事実を加えたところで、 双剣閃や、中井出みたいに四十八閃でもないかぎり、 剣閃であのデカさを浮かせるのは至難。 それが出来るのは、身体能力強化のお陰だろう。 月の家系の身体能力は、普通の地界人からすればズバ抜けている。 けど死神に比べたら劣るもので、実際に動きづらくなったかもと思ったのも事実だ。 が、とんでもない。 身体能力に振り回されていた感のある死神王時代に比べれば、 むしろ家系の身体能力は俺の体には心地よいくらいだった。 それを中井出スキルで強化された日には、心地よさも倍増するというもの。 今までの、どこか持て余していた死神王の身体能力とはまるで違う。 ……そこまで考えて、 彰利 (……そりゃ、持て余す筈だ) やっぱり、すとんと腑に落ちた。 家系の身体能力は、俺が千年近くを掛けて歴史を繰り返し、馴染ませたじゃじゃ馬だ。 だけど死神王の能力はまるっきり貰いもの。 千年近くを繰り返すことで黒とともに染み込んだ家系のものとは訳が違う。 しっかり噛み合わされた歯車はいくら速度を上げようが、滅多なことでは外れない。 つまり、そういうことなのだ。 今までの俺の体は噛み合わさっていなかった歯車を、 能力で無理矢理回転させていたようなものだ。 いくら能力が高性能でも、 噛み合わさっていないものを効率よく回転させることなど出来るわけがなかったのだ。 その結果が、能力だけに満ち溢れた誤解の慢心。 能力ばっか大きくして、自分は強いんだと勘違いしたアホゥの完成だ。 能力が高い=自分が強いなんて真実アホだ。  『───俺が強いのではない。武具が強いのよ』 そう言えるアホが知り合いに居て、どうして気づけなかったのかがひたすらに悔やまれた。 まあ、悔やむのは後でいい。先に経つ悔やみが無いのなら、後で存分に悔やむとしよう。 そのための後悔だ。 今はそれよりも、ちょっとでも通用する攻撃の嬉しさを存分に解放しよう。 残り1分51秒。 この間になにが出来て、なにをすれば効果的でかつ面白いのか。 そんなことを自然と考えられる懐かしい自分が、今はただ嬉しかった。  ドゴオオオオオオオオン!! 彰利 『オワッ!?』 ───と、考えながらもサウザンドドラゴンを剣閃で浮かしいたアタイの耳に届く轟音。 なにごとかと首だけをメリキキキと動かして後ろを向くと、 岡田 「キャーーッ!?」 後ろでヲゥガリランチャーバーストを撃っていた岡田くんにしこたま驚かれた。 ……おおしまった、黒状態だからってついつい首を180℃回してしまった。 ともかく、どうやら轟音が鳴ったのは自然要塞エーテルアロワノンかららしい。 次いで飛んできたのは───我らと同じく、高揚を抱いてきた同胞(はらから)だった。 彰利 『……よっ』 悠介 『……よう』 交わす言葉など僅か。 それだけで、自分たちがあの頃に戻れた気になれた。 あの日───全てを失っても友達だけは失わなかった、境内での軽い挨拶。 目の前の親友も思い出してくれてるのだろうか。 あの、心楽しき秋の日を。 ああいや、思い出すよりも呆れた風情でアタイのこと見てるね。 ……しまった、首が180℃回転中だった。 彰利 『キャア!ダーリンたらアタイの恥ずかしいところバッチリ見つめちゃって!』 悠介 『恥ずかしい違いだろそれはっ!』 ハイ、状況的に恥ずかしいだけです。 そんな風にして頬を染めている麗しいアタイを見て、 悠介は一瞬ポカンとした顔をすると、……テクテクと歩いてきて───一撃。 彰利 『《バゴォ!》ダップス!!───ダーリンがぶった!』 訳もわからず殴られた!……でも反動で首は正位置に戻りました。 ……さらに180℃回った状態で。 悠介 『……とりあえず、おかえり』 彰利 『ホヘ?…………オ、オウヨ、ただいま』 なにかしらの違和感ってのを、悠介も感じてたのかもしれない。 嬉しさを押し隠したようにぶっきらぼうにそっぽ向きながら言う悠介は、 なんつーか思春期の子供みたいだった。 雨降りの日に捨て猫にミルクとかやってそうだ。 だがしかしだ。 彰利 『ホアッチョォウ!!』 悠介 『《バゴォ!》ギボッ!?』 一発は一発なので、激打のケンシロウの声を真似て殴り返しておいた。 そしたらボギー愛子みたいな声で返された。 なにより、アタイはまだ納得出来ておらぬ点がある! 彰利 『アタイ、ただいま!キミ、ただいま!?』 悠介 『すまん、以前の俺が見えん』 彰利 『やっぱりだよこのノータリン!』 悠介 『ノータリン!?って彰利!』 彰利 『ふお?オォオオオオオッ!!?』 ギラリと俺を睨む巨大な眼がビームを放ってきた! 咄嗟にオメガレイド剣閃を放つが、双眼から放たれたうちの一つしか破壊出来なかった。 あ、やばい。直撃するかも。───悠介に。 悠介 『おぉおおい!!?それだけデカい剣閃なんだからもっとこう───!!』 彰利 『ソーリー!なんかもうソーリー!』 悠介 『ええいくそっ!バーリア!』 藤堂 『あれ?《ドゴォオン!》イ゙ェアアアア!!』 彰利 『藤堂ーーーっ!!』 たまたま隣に居た藤堂がビームの餌食に! 悠介 『ってしまったぁあああーーーーーっ!!!焦る余りになんてことを!!     つーかなんか凄い声出してなかったか!?こいつ!』 彰利 『イ゙ェアアアア!!って、まるで呪いの館っぽい声出してたね』 悠介 『の……呪いの館?』 初心者には“呪いの館スタイリッシュ”をお勧めします。 スタイリッシュひろしは強ぇぜ?……じゃなくて。 だがそうか、……そうか!スタイリッシュひろしだ! 物理が効かないなら、接近しながら剣閃撃ちまくればいいのだ! つーか俺なら物理攻撃効かないって事象を破壊出来るし、 今の限界突破状態なら事象破壊も問題なく継続して出来る筈! くそっ!どうしてもっと早くに気づかなかったんだか!! それに離れた状態じゃあレーザーやビームだって撃たれやすいが、 近くに居れば、されるのは直接攻撃! それらは中井出の逆鱗能力で弾けるから、───いいことづくめじゃねぇか! うおおすげぇぜ中井出!さすがは僕らの提督さん!! 改めて、なによりも冒険を優先した男の武具の強さに惚れ惚れしそうだ! え?中井出自身には惚れ惚れしないのかって? 彼の場合、こう言ったほうが喜ぶからいいのさ。 自分の強さよりも武具とレベルにこそ喜ぶやつだし。 彰利 『レッツスタイリッシュ!!ヒャハァーーーーッ!!!』 うだうだ考えるより先手先手じゃ!鴨川会長!アンタは正しい!!  ビジュビジュンッ!! 彰利 『そぉおうりゃぁあああっ!!!』 離れた位置から一気に転移! 剣閃から解放されたサウザンドドラゴンが地面に落下するのと同時に、 光の雨を降らせていた場所に出現した俺は、落下とともに零距離剣閃を放ちまくる! 当然そこまで肉薄するなら剣も鱗に当たるってもんだが、 直接攻撃が通用しないって事象と鱗が硬いって事象を破壊しながらの攻撃だ。 鱗は案外簡単に吹き飛び、剣閃が皮を裂き、血が吹き出てゆく。 ……やべぇ、ほんとにすげぇぞ中井出のエンペラータイム。 これなら残り一分の時にやるつもりのアレも、成功しそうな気がする。 で、こんなに至れり尽くせりな能力がペナルティで済む筈もないわけで。 今からちょっと……いやかなり不安だったりした。  ザンザンザンザンゾフィゾフィゾフィゾフィィンッ!!! 斬りつけながら剣閃!離れても剣閃! 高揚に満たされながら体を動かす! すげぇ……すげぇよこれ! イメージした通りに体が動くのってなんて気持ちがいいんだろう! 死神王の時はこんなことなかった! 体ばっかが暴走してる感じで、こんな一体感なんてなかった! ありがとうひろし!スタイリッシュひろし!! 今最高にイ゙ェアアアア!!な気分だぜェエエエ!!───それじゃ死んでるか。  バゴォンッ!! 彰利 『フヴォァアアッチ!!?』 突如背中に走る衝撃! どうやら前方に夢中になる余り、背中から迫る尾撃に気づかなかったらしい。 ───だが死なぬ! 中井出師父の加護を受けた我らに直接攻撃は無駄!! 謝謝!謝謝中井出師父!!これほんとすげぇよ! でも喜びが増せば増すほどペナルティが怖くなるのは俺だけですか!? ゼノ 『ぬ───!?』 彰利 『ぬ?』 ふと、ゼノと目が合いました。 てゆゥか起きあがろうとする刻震竜の背中にトンと降りてきた。 アタイは背中に乗ってたからまあ体面するのは当然なわけで。 しかし高揚の只中にあっても目的は見失わない。 普段なら我と戦えと叫ぶゼノも、小さく笑うと───俺との共闘を雰囲気で望んできた。 元々が死神であるゼノは、死神の状態こそが適切。 それを見せ付けるように漆黒の爪を巨大化させると、それを振るい、鎌閃を放ちまくる。 一度振るうだけで五閃も放ち、しかも決して威力が低いわけでもない。 ちゃんと強くなってるんだ、この世界で。 そんな中で俺はなにをしてきたのか……くそっ、つくづく悔やまれる……! この体に起こった奇跡だって中井出の能力だ。 時間が過ぎれば消えちまうし、望んだってすぐに身につけられるわけじゃない。 でも……そうだ、すぐには身につかないかもしれない。 結構苦労することになるだろう。けど不可能じゃない筈だ。 世はまさにファンタジー! フェルダールを駆け抜けることで至れる場所はまだまだある筈だ! 彰利 『ぬぉおおおおおっ!!!』 落ち込んでる暇などアラズ! 残り1分5秒!さあ!スパートかけてまいりましょう! 悠介もルナっちとともに無茶なこと始めたみたいだし、ここで燻っててどうしますか! さあいざ参らん限界突破!! 彰利 『レヴァルグリード強引解放!イ゙ェアアアア!!』 バルバトスバトルの時は意識が維持出来なかったが、 今の限界突破モードなら出来ると思いたいなんとなく! ともあれ解放!───した途端に望んだわけでもないのに、 稀黒装レヴァルグリードが発動し、八枚の黒飛翼の他に九枚の飛翼が出現する! 次にそれがどんどん巨大化して───って、あれ? 彰利 『あがぁっ!?いがっ───』 体がベコボコと変異する。 黒と影と闇が溢れだし、俺の体を覆いつくすように───! あ……なんかヤバイ。 また暴走するかも。 するかも……なんだけど。 不思議なもので、してもいいかな、なんて考えてる俺が居た。 抵抗するのが普通だろうけど、今は普通じゃないことに挑戦してみたい。 そうすることでしか見えない景色がきっとある筈だから。 ……ああ、つまりそういうことなのか。 なんでも“こうなるのは嫌だ”とか言ってるヤツは、常識の破壊なんて出来やしない。 むしろなんでも受け入れて、 その上でそれが嫌だ、それはいいって決めるヤツこそが常識を破壊できる。 経験をしてないヤツが嫌だだのいいだの言ったら、それはただの我侭なのだ。 それを認識したら、ふと……心の奥底を、コンコン、とノックされた気がした。 きっと力に溺れて、目の前のことしか目に入ってなかった馬鹿な俺では気づけなかった音。 彰利 (カムイン) 呼吸をひとつ、迎え入れてみた。 どんな来訪者かは解らないが、ヤバかったりしても……俺には助けてくれる仲間が居る。 それでいいじゃないか。 ああ、そうだ……ようやく解った。 仲間が居るってのはただ単に心地いいだけじゃない。 笑えるだけでも馬鹿やっていられるだけでもない。 自分を任せられるって、なんて暖かいんだろうな───…… そんなことを思いながら、俺は静かに───ノックをするなにかを迎え入れた。 【ケース599:晦悠介/白と神を宿す月の家系のお話】 散々悩んだのは事実だった。 いや、いきなり事実だーとか言われたって訳が解らんだろうが。 少なくとも精霊たちやイセリアに呆れられたのは事実だ。 けどまあ根本はあまり変わっていなかったりする。 ただ月の家系に戻っただけ。 かなり強引だったから、魂である今の体に結構な負担がかかっている。 そもそも別のなにかには二度となれないぞと忠告されたものを強引に捻じ曲げたのだ、 当然だろう。 後遺症と言うべきではないが、俺は“神寄り”の月の家系になった。 彰利が死神を濃く持つように、俺は神を濃く。 それもまあ以前通りと言えば以前通りだ。 彰利が濃い死神の血、弦月を。俺が濃い神の血、朧月を。 結局元のサヤに戻るんだったら今までの騒動はなんだったんだって話だが─── 不思議なことに、体は酷く落ち着いて、馴染んでいる。 神になろうが死神になろうが、精霊になろうが竜人になろうが、こんな一体感はなかった。 つまるところ、産まれた体が一番合うのだろう……魂ってやつには。 中井出の強さの秘密も、そんなところにあるのかもしれない。 ついでだから“白”の能力も戻してもらった。 詳しく言えば白と光と雷。 ノートやオリジンに言わせると、 “確かに今すぐ一つに絞れというのは酷だったかもしれん”だそうで。 大いに悩め、決断力の無い主め、とつっぱねられた。 現在もっぱら猛省中である。 魂レベルでの書き換えだから、魂に負担を掛けすぎるってのはよく解ってたんだけどな。 回路を全部集めていない状態だったのが幸いした。 全部揃っていたらさすがに無理だったと太鼓判を押された。 ……とても必要のない太鼓判だった。 ただし、肉体に戻った時の痛みは尋常ではないらしい。 神に書き換えられていた回路が月の家系のものに戻るんだ、当然だろう。 さらに言うと、既に地界の回路が他の回路に吸収されてしまっているため、 神側の月の家系ってことになるらしい。 彰利も長い死神生活の中で地界の回路は吸収されたらしいから、あいつは死神側。 人に近いけど人ではない、月の家系という名の神か死神。それが俺と彰利だった。 悠介 『……はぁ』 白モードの自分の手を見下ろす。 彰利にレヴァルグリードの加護があるように、俺には別の加護がある。 ソードの……ノートの創造神時代の知り合いの魂らしい。 今や廃れすぎて、名前を覚えているのはノートぐらいという、古の聖神と魔神の魂。 古の聖魔神ってのは全部で13人。 理想神アレス、希望神ウィル、慈愛神アンテフィルト、暴騒神ナルタイト、 静沈神アーテム、時操神ティムデリス、閃足神アルファフィロイセ、 斬聖神アルハザード、破壊神アンスウェラー、 破界神バルバロッサ、狂神グランベルグ、魔王カオスエグゼプター。 そこに創造神ソードを加えたのがそれらしい。 カオスエグゼプターは天界を騒がせた滅茶苦茶なヤツで、 レイル、レイン、ゼロ=クロフィックスの力の素と言われている。 そんなヤツらの魂を組み込まれちまったもんだから、こっちはもう大変だ。 まあ……能力は受け継げなかったが、力だけなら少しはってやつだ。 第一魂自体がもう何千以上も昔のものだ。 とっくに劣化し、力以外に受け取れるものがなかった。 ……その力ってのがまあ、レヴァルグリードには劣るけど、 それに近い相当なものってので困ってるんだが。 ようするにあれだ、彰利と同じように、ゆっくりと白に溶け込ませていけ、と。 悠介 『……はぁああ……』 さて、現在の俺だが。 無茶な回路変換が過ぎて、まともに動けない状態だ。 ここに飛んでくるのだけでほぼ精一杯ってくらいの情けなさ。 高揚に包まれてどうしようもなくなったからスッ飛んできたんだが、このザマである。 まいった……暴れたいのに暴れられないのって物凄く、その、辛い。 そんなわけでルナをカモォ〜ン!と北本ヴォイスで呼んだわけだが─── 今思うと、なんとなく……本当になんとなくだが、 あの声を小杉十郎太氏が言うとよく似合ってる気がする。 ルナ 『むー』 ルナにしてみれば複雑以外のなにものでもないらしい。 月の家系に戻ったぞ〜と言ってみたらパァアッと笑顔になってくれた───のだが、 古の聖魔神の魂を白に封入されたと言ったらモシャアアアと鬱オーラが。 悠介 『そんなにうーうー言わないでくれ……。身体能力が滅茶苦茶上がってて、     しかもそれが体に馴染みすぎてるっていうのに、     全然まったく好き勝手に動かせないこっちの身にもなってほしい……』 ルナ 『むー……どうして月の家系に戻ろうってもっと早くに思わなかったのよぅー』 悠介 『いろいろなことに気づくのが遅すぎた……だな。     神や死神の力を得ることで強くなってきたのが今までだ。     でもこの世界で旅して、いろいろあって、     そして……中井出と本気の本気で戦った。レヴァルグリードと対面した。     そしたら……自分を偽って手に入れた力に情けなさを感じた。     俺にとっては創造こそが武器だ。ガキの頃から付き合ってきた能力だ。     自分本来の力……朧月の月蝕力に気づくより先に行使して、     お前に会ってからいろいろな使い方を知った。     月鳴力とは名ばかりの雷を出せてたのも創造の理力のお陰だし、     いろいろな困難があっても乗り越えられたのは、これがあったからだ』 俺がルナと契約した証がこれだ。 そして過去で言う未来の俺がノートと会い、ノートが神界に至り、 ブラッドリアと戦った末に俺に流れ込んできた、いわば歴史自体の胎動の証。 これを武器にするなら神である必要も精霊で居る必要もない。 だから戻りたいと思った。 みんなが言う、“以前の晦悠介に戻りたかった”って理由にももちろん繋がっている。 月の家系に戻ったところで、自分がどうだったのかなんてものは思い出せなかったが。 悠介 『う───《ビジュンッ……!》くは……ぁ……!」 白モードが勝手に消滅する。 どうやら白モードが保っていられないほどに魂が疲弊しているようだ……頭が痛い。 ルナ 『んー……ねーゆーすけ?月の家系に戻るのってそんなに大事なことだったの?     今のゆーすけ見てると、無理してるようにしか見えないんだけど』 悠介 「そりゃ外見的判断すぎるだろ……。     あー……けど、大事だったといえば大事だった。     彰利が月の家系に戻ってる事実には驚いたけど、まあそれも合わせて。     正直な、俺はもう世界がどーとかなんてどうでもいいんだ。     壊れるなら壊れるで、それだけ未来の俺の頭が悪いってことだ。     あいつはあいつであって俺じゃない。だから考え方も違うし、行動力も違う。     馬鹿な話じゃないか、自分の手で守れなかった未来があって、     それが悲しいからって過去の仲間を殺すなんて。     守れなかった仲間を自分の手で殺すことになるんだぞ?     俺だったらそんなことしたくない」 じゃあ守るのか?と訊かれれば、そりゃ守るさ。 援護って意味だが。 そう……俺より強いやつなんてもういっぱい居るんだ。 戦って散々負けた。 ラグがあれば、神魔の力があれば、なんて言い訳が通用しないくらいに負けた。 恐怖とともに感心すら覚えて、やがてそれは頼りにするカタチにまで至った。 そして気づいたことがある。 いつしか俺は周りを下に見ていたんだな、って。 頑張ってるんだ、強いのは当たり前だ。 感心がどうとかなんてことを胸に抱くこと自体が間違っていた。 だからだろう。 あいつと目を合わせて、よぉと言った時に胸によぎった暖かさが、今も離れない。 交わす言葉など僅かだった。 けど、それだけで自分たちがあの頃に戻れた気がした。 あの日───友達を失うかもしれないと恐怖しながら、 無我夢中で発動させた……魂結糸を通じてルナから引き出した月癒力。 そして、その先で待っていた、境内での軽い挨拶。 今戦いの最中に居る親友も思い出してくれたのだろうか。 あの、心楽しき秋の日を。 悠介 「………」 ルナ 『……《ビジュンッ》……悠介?」 ルナが鎌解を解除して俺の隣に立ち、 伺うように俺の顔を覗きながら、ぴとりと腕を組んでくる。 よっぽどヘンテコな顔をしてたんだろうか。 普段なら首に抱きついてくるのに、珍しいこともあるもんだとヘンな感想が頭に浮かんだ。 ……人は進むことは出来るけど、過去に戻ることは出来ない。 以前の俺に戻りたいと願う俺が過去の自分に至ることは出来るだろうか。 ……多分、無理だ。 以前の俺にはないものを、今の俺は持っている。 その結果が今の俺ならば、以前の俺に戻るにはそれを切り捨てなきゃいけない。 そんなのは嫌だ。 回路だって捨てよう。強さももういらない。 けど、今まで生きてきた証だけは、捨てていいようなものじゃないんだ。 回路のように変換されても生き続けてくれるならいい。 強さも、自分がああだったって覚えてられるならいいだろう。 じゃあ、生きた証を捨ててしまったら、俺は俺でいられるか? ………………違う。 もういい、たくさんだ。 悠介 「接続(アクセス)、我が(シン)」 意識を白く染めてゆく。 真っ白になれ。悩みも、苦しみも、全部真っ白に───! 悠介 「───よし!ルナ、合体だ!」 ルナ 「へあ?───ヤ!」 悠介 「ええい俺が神側でも気にするな!あくまで神“側”だ!     月の家系であることに変わりはない!ていうかまずい!もう時間がない!」 そう思って向き直った視界。 間近に迫るタイムリミットの中、他の連中はどうしてるのかと見てみると、 田辺 『イ゙ェアアアア!!』 妖魔・田辺が噛み砕かれて死んでいた。 RX 『イ゙ェアアアア!!』 次いでRX・清水が足で踏み潰され、 丘野 『イ゙ェアアアア!!』 フレイムヘイズ・丘野が尾撃で潰され、 岡田 「イ゙ェアアアア!!」 岡田がレーザーで抹消されていた。 ……どうして全員イ゙ェアアアア!!だったのかはとてもとても疑問に残ったが。 粉雪 『彰利!社長命令だ《チュボォン!》イ゙ェアアアア!!』 って待て!どうして日余までイ゙ェアアアア!!って! ───……ああ、いや……多分提督と繋がってるからだろうな……。 素晴らしき7人はただ普通に言ってるだけで、目からビームでコロがされた日余は、 影で繋がっている提督の意識に言語能力を奪われたんだろう。 じゃなきゃ社長命令だ〜なんて言う筈もない。 ……マテ。じゃあ今こうして繋がってる状態で死んだら、 望む望まないを問わずにイ゙ェアアアア!!なのか!? ───と、そんなことを思っていると耳に届く違和感。 すぐに通信を繋げてみると、相手は……穂岸だった。 悠介 「ど、どうした?」 声  『いや……今、教会で休ませてもらってるんだけどな……。     復活するやつら全員が“アアアアェイ゙!!”って奇妙な声出してて……     な、なにか理由とか、解らないか……?』 悠介 「………」 彰利か提督に訊いてくれ、とだけ言って通信を終えた。 とりあえず……うん、絶対に死にたくなくなった。 悠介 「よしルナ!合体だ!」 ルナ 「や、やだってば!」 悠介 「死んだら強制的にイ゙ェアアアア!!だぞ!?いいのかお前!俺はヤだ!!」 ルナ 「もう言ってるじゃないのさー!」 悠介 「ばかお前!断末魔がイ゙ェアアアア!!なんだぞ!?     今際の際に残す言葉がイ゙ェアアアア!!って!     大事な遺言を残す筈がイ゙ェアアアア!!って叫ぶのと同じだろうが!     毒受けてジワジワ死んで、     “最後に聞かせたい言葉がある……!”って言葉のあとに死んじまってみろ!     聞かせたい言葉がイ゙ェアアアア!!になるんだぞ!?     お前が一人、サウザンドドラゴンの爪の前に倒れたとして!     駆け寄った俺に残したい言葉があったとして!それがイ゙ェアアアア!!って!     お前それでいいのか!?本当にいいのか!?」 ルナ 「やぁあああああっ!!なんだか知らないけどやぁあーーーーっ!!」 悠介 「だったら後楽園で俺と合体!ってなんか俺の意識も混沌としてきてる!     こういう時は───神器解放!亜神器・天地創造(テンソウ)!!」 創造の理力と神器を合わせた時のみ使える能力を発動! そうだ!体が上手く動かせないなら、 動かせる世界を作ってしまえばズキィーーーーン!!! 悠介 「ぐわぎゃあああーーーーーーーっ!!!!」 途端に全身に走る大激痛! ああダメ……!星が見えるスター……! まだなのか……!?まだ世界創造には届かないのか俺よ……! ええい否だ!!根性だ、晦悠介!英雄じゃなく根性の人となれ! 何度でも立ち上がれる英雄じゃなく、 立ち上がれる限りの回数の中で最初から全力を出せる修羅であれ! 根性論で動けるうちは諦めるな!それが我らの───原ソウル!!  ───届け! 悠介 「連ねるは───」  ───届け! 悠介 「連言より軌道と───」  ───届け、届け……届け届け届けぇえええっ!! 悠介 「《ブヂィッ!》いっぎゃあああああああああああああーーーーーーーっ!!!!」 結論から申しまして、駄目でした。 だってなにか切れたって今!死ぬ覚悟で続けろ!?無茶言うな死にたくないぞ俺は! 厳密に言うとイ゙ェアアアア!!なんて断末魔を残して逝きたくない!! ───いや、だったらせめて提督タイムが続いてる今だけでも無理してみようホトトギス。 悠介 「細かい詠唱一切無視!創造せよ汝!“天地創造”(テンソウ)!!」 唱えて力を込めた途端に傷口を強引に裂くような痛みが走る! だが無視して続けた。 どうせここに居たって役に立てないのだ。 ならばせめて無茶の一つでもして仲間の援護くらいはしたい。 なわけだから、半端なラグの力と理力と神器を全力解放して、ラグを地面に突き刺す!! するとブワァアアアアッ!!と景色が広がり───って成功した!? あまり広がりは見せてはくれなかったが、 突き刺した剣を中心に20メートル程度は広がった。 悠介 「───」 ルナ 「あれ?」 しかし、広がる世界に違和感を覚える。 何故って、それは……広がった景色が黄昏の草原ではなく、月夜と黄昏の草原だったから。 ルナと融合してないのに、どうしてこれが───?  ピピンッ♪《メールが届きました》 悠介 「………」 そして、狙い澄ましたかのようなメール。 軽く目を通してみればイセリアからの報せで、 “やっぱり世界創造はキミだけに決めた!”とか書いてあった。 ……なんでも彰利がラインゲート行使が出来なくなったのをきっかけに決めたらしい。 って、あ、あーあーあー…………あーあ……世界消えちゃったよ……。 悠介 「は、かっ……くそっ……!どうやらここまで《バヅンッ───》」 ……意識のブレーカーが落ちた。 何もかもが真っ黒になり、何がどうなったのかも解らないまま、 ただ地面が冷たいかも……という感触だけが、俺が感じた最後のブツへの感想だった。 ……ちなみに。 完全に意識が飛ぶ直前、多数のイ゙ェアアアア!!を聞いた。 奇跡の提督タイムの時間が切れたのだろう───わりと近くから聞こえたということは、 ルナもか……と考えると、案外心地よく神父送りにされた俺なのであった。 ……ああもちろん、俺も無理矢理にイ゙ェアアアア!!って言葉が口から漏れた。 ───……。 ……。 メェエエエリキキキキキキ…………!!!!! 総員 『アォオオオオ……!!オォオオアァアォオオオ……!!!』 そして現在激烈筋肉痛な俺達。 神父がなにやら言っていたが、 それすら気にしていられないほどの激痛が俺達を襲っている。 実に柿野くんが女になってしまいそうなくぐもった悲鳴である。 彰利 「カッチューア……!ムエ・カッチューア……!」 春菜 「ハワカマミカカキカココキキ……!!」 粉雪 「あぁああ〜〜……!目がぁあ〜〜……!目がぁああ〜〜〜〜……っ!」 見渡す限り、酷い惨状だ。 どうやらみんな、効果が切れると同時に筋肉痛の痛みでショック死したようだ。 一様に立っていられずにもがき苦しみ、 中でも日余は両目を押さえながらムスカ大佐状態だ。 時眼視・冥の使いすぎからくる後遺症だろう。 ていうかな、苦しむのは解るが、みんな謎の言葉放ちすぎだ。 ……ムエカッチューアってなんだったっけか。 悠介 「ぬ、ぐ……《ズキィーーーン!!》ギョアァアアーーーーーーーッ!!!!」 這いずってでも戦いに参戦しようとしたが、キッパリ断言こりゃ無理だ! 他のやつらもやはり同じようで、ギャーとかギエーとか叫びまくっている。 ……月の家系と死神と神は全員アウトだ。 ゼノでさえ倒れたまま動けないでいるほどだ……実に新鮮だ。 とはいえ……って、あれ?提督が居ないような……。 悠介 「あきと《ズキィーーーン!》うぎゃああああああーーーーーっ!!!!」 彰利 「な、なにかね《ズキィーーーーン!!!》あぉがあああああああっ!!!!」 喋らない方が利口な生き方であると全身の筋肉が訴えかけていた。 なるほど……こりゃ俺達大勢の敵を前に、提督が使用をしぶるわけだ。 こんなに痛いんじゃあいちいち使ってられない。 すまん提督……今どうしてるのかわからんが、強く生きてくれ……。 この分じゃ参戦は望めそうにない……。 悠介 「つーかお前……なにかする気じゃなかったのか……!?」 彰利 「心のドアをノックして現れた誰かさんを迎え入れました……。     で……いろいろ話してこれからって時にズキーンと……」 悠介 「レヴァルグリード、か……?」 彰利 「ドナルドです」 悠介 「マジでか!?《ズキィーーーーン!!!》あぐあぁあああーーーっ!!!」 彰利 「フッハッハッハ!?ドナルドなわけ《ズキィーーーン!!》ぎええええっ!!!」 親友二人そろって、俺達は実に馬鹿だった。 痛さに苦しんでドタバタ暴れ回って余計に痛くて暴れ回ってさらに痛くて暴れ回って、 気づけばボス戦中だっていうのに───まあその、気絶してしまった。 【ケース600:中井出師父/寄生人ヒロミツ】 ゾヴォォオ……!! 中井出「HOWRRRRYYEEE……!!」 こちらアルファツーだぜ!隠密状況は順調だぜイ゙ェアアアア!! HP1の状態で筋肉痛&麻痺&衰弱!バッドなスメルがプンプンだが大丈夫だぜ! 何故なら僕は───サウザンドドラゴンの内部に居るからだぜ!! ……ええ、もぐりっぱなしで今も生きているんだぜ。 そして俺は死ぬ予感がまるでしないんだぜ。 何故って、物理攻撃無効化の皮膚の下に居るんだぜ!? 魔法かなんかでこの内部が吹き飛ばないかぎり、多分無敵なんだぜ!? や……俺も出来ればさっさとHP回復したりとかしたいんだけど、麻痺状態でしてだぜ。 中井出「………」 待てだぜ。 思ったんだが、ほら、たとえば腕を枕にして一夜を明かした時だぜ。 腕が他人のものみたいに動かない時ってあるよねだぜ? ……だぜつけんの疲れるからやめよ。 ともかくそんな時は、思いっきり意識を高めれば動くもんだ。 ならば、麻痺だから動けないって考えるんじゃなく、 むしろちょっとずつでも動けますよ?と考えてみれば─── 中井出「ふんっ……!くっ……!ぬがぁっ!ホアァアアッ!!!」 ……うん、それ無理。 グオッフォッフォ……!だがこの博光が、体が動かない程度で諦めると思うてか……! 中井出「必殺入れ歯カミカミ!!」  カブシャア!! 目の前にある、火闇で焼けて今が食べごろなお肉を噛む! そう、喋れはするのだから口は動く! そんでもってこれはサウザンドドラゴンの体の一部! 厳密に言えばまだ筋とかいろいろ繋がってたりするから、もろに体なわけで。 口でグギギィと引っ張ると、痛みに筋やらなにやらが躍動するのが解った。 中井出「《ゴシャアアーーーム!!》美味ぇえええーーーーーーっ!!!!」 そして古の巨大竜のお肉はとても美味でした!! 人類初ッ…………!サウザンドドラゴンを食う男ッッ!! そんな見出しで紹介されたい気分です。 で、モノ食うのに何ページも使うの。解説付きで。 いやでも……美味いよコレェエ……!!味知ったら一発アウトだよ即絶叫だよォ……!! なんで食事しに来たわけでもねーのにこんなにうずうずしなくちゃなんねーんだ……? 思わず口から光吐いてしまったじゃないか。 ……これで状態異常回復効果〜とかあればよかったんだが。 そんな都合のいいことがあるわけもなかった。 しかもそろそろ酸素が辛くなってきたといいますか……踏んだり蹴ったりだチェン。 麻痺のお陰で筋肉痛には苦しまされてない……というか感じなくて済んでるが、 この麻痺が解けた時のことを思うと体が震える思いだ。 ……い、今の内にマナ集束を……じ、ジーク?ジーク!? マナ集めて僕を癒し───あ、あれ?ジーク?…………ジークさん? ───……ジーク!?ちょ、ジーク!?返事してジーク!ジーーーーク!! ジョー起きて!ジョーーーーッ!!!もしかして麻痺!?あなたも麻痺なのジョー!! ……はうあっ!ま、麻痺が……麻痺が解ける!! 感じる……ヤツが!筋肉痛の野郎がヒタリヒタリと歩み寄ってくるのが!! ララァが……ララァが音もなく───ア、アーーーーーッ!!! 中井出「ッ───、───!!……!!───!!」 ぃやっ───ば、がばばががががびががぁあああああああああっ!!!? いがっ……!!い、たいってレベルじゃっ……!! ───はっ!?ジーク!?まあジーク!?あなたがジーク!? じゃなくてジークフリードから反応があった! どうやら本気で俺と一緒に麻痺状態だったらしい! い、いやそんな確認はいいから集束法集束法!!  ミヂヂヂヂ…… 中井出「かっ……回復が遅ぇえーーーっ!!《ズキィーン!!》ぐぎゃああーーーっ!!」 ペナルティでもいくらなんでもやりすぎだ!ヘブンが!ヘブンが見える! 発音的にはヘヴンの方向でそれっぽい楽園が今なら見える! 手ェ伸ばしたら召されそうだ!……それって本当にヘヴンですか? だが生きることは放棄せぬ! お肉も食べて麻痺も解けた今、心配なのは衰弱かなぁ……。 麻痺は治ったくせに、どうにも体が言うことをきかない。 もちろん筋肉痛の所為って部分もあるだろうが、それにしてもだ。 これが原因だろうな……回復が遅いの。 だったら─── 中井出「ブレイブポット……ドレインタッチ&義聖拳……!     水と然属性を合わせて“水の恩恵”を発動……!」 焼け爛れた肉に手を添えることでHPを吸収し、水の恩恵でさらにHPを回復。 しかし衰弱状態の所為か普段の最大HPまでは回復せず、 5分の1程度までしか回復しなかった。 まあ……それでもかなりのHPなわけだけど、 サウザンドドラゴン相手じゃ一撃保つかどうか。 衰弱は……うむ!今こそ火闇霊章で筋を繋げて動く時! ってだから火闇霊章使うだけでも筋肉痛なんだって! ウグー!ど、どうするべきか〜〜〜っ! 中井出「ふっ……ぐ、ぐぅう……!!」 無理矢理に動かしてみるも、高熱に襲われた時のように意識がはっきりしない。 そうしてみてようやく気づけるくらいに感覚が鈍っていて、汗がだらだらと流れている。 そのくせ痛みだけはヂグンヂグンと体を蝕むのだから性質が悪い。 だが能力は使える……エンペラータイムとかはしばらく使わないけど。 さすがに筋肉痛はもう勘弁だし、ペナルティ項目に真っ赤な字で、 次に完全回復を待たずに行使する場合は、即死級の痛みが襲いますとか書いてあるし。 あの……それもう筋肉痛じゃないよね? 中井出「……ク、ククク……!」 しかし、衰弱だからとこの博光が動かないと思ったら大間違いである。 義聖拳が出来た。 武器を持つのは筋肉を使いすぎるので無理だが、義聖拳ならば使える。 マナ集束法で魔法もどきを撃つのもいい。 そして─── 中井出「まさかこんな悲しみのだっとさーん状態で使う羽目になろうとは……」 集めたマナを、両腕の霊章に沈んでいるジークムントとジークリンデに流してゆく。 そうしてからはふぅと息を吐き、やがて放つ。 中井出「俺にしては珍しいINTマックス!!竜族魔法!フレア!!」 唱えると同時に、 根性で、ブルブルとなんとか突き出した左腕のホズから灼闇の粒子が放たれる。 放たれた光は点滅を繰り返しながら肉に付着するとゴバババババォオンッ!!! 中井出「ウオォワキャアーーーッ!!?《ズキィーーン!!》ギョアアーーーーッ!!!」 目の前が爆裂する! 小さな粒子だった筈の灼闇は巨大な爆発となり、 肉という肉を破壊し、サウザンドドラゴンの内部に巨大な空洞を作った。 中井出「う、うお……うおゎああああ……!!」 す、すげぇ……!竜族魔法ってすげぇ……!……って、あ……。 破壊した先から彰利が纏わりつかせた黒っぽいなにかが傷を覆って、 再生しようとする筋や肉などを殺してく……。 お、おお、これなら動けない俺でも何度でも───しまった! フレアは戦闘中一回しか撃てないんだった! くそう好き勝手に撃たせてくれよぅ魔法ってやつを! 僕の!僕の心躍る魔法だぞ!?思う存分撃たせてくれたっていいじゃ───OK! 今度エンペラータイムやったら思う存分使ってくれる! 今はまだ、ジワジワとだけど治っていっている筋肉痛の痛みに耐える時! これは……試練だ。 筋肉痛に打ち勝てという試練と……俺は受け取った。 ……すげぇ悲しい試練ですね。と悲しみを抱きつつ、 戦闘中だと言うのにギャアと鳴くワガママストマックに肉を詰めてゆく。 中井出「《モリモリ……》いやしかし美味いなこの肉。     燃やし尽くすのがもったいない味わいだチェン」 そんなわけで取り出したのが世界最強の武器“剥ぎ取りナイフ”。 剥ぎ取る時にのみ出現する伝説の刃で、これで切れぬものなど無い。 “攻撃”には使えず、あくまで剥ぎ取りの時にのみ出現する天地崩壊剣。 きっとこれなら世界創造の折に天地乖離も楽に出来るに違いない。……じゃなくて。 既に千切れかけている肉をシャリショリと剥いでゆく。 試しにまだ躍動している肉や筋を斬りつけようとするが、その瞬間には消えてしまう。 解っていたことだが、さすがにこればっかりはどうにもならん。 いつか、モンスターを脇に置いて、 出現させた剥ぎ取りナイフをペリカンの口に放り込もうとしたことがあったが、 手から離れた瞬間にはもう無くなっていたということがあった。 合成も無理とくるから口惜しい。 中井出「……よし、回収完了。グォフォフォ、武具の素材にはならんが、     美味しい食材としては役に立ってくれる筈さ」 マナの集束は続く。 然と月とが筋肉痛への癒しを高め、加護が自然治癒でジワジワと傷を癒してくれる。 サウザンドドラゴンは未だ暴れているらしく、内部への振動はかなりのものだ。 周りが炎やフレアで焼けていなかったら、とっくに血の濁流に飲まれて溺死してる。 ……酸素は然の加護でなんとかなっています。大変ありがたい。 中井出「……ん、ん───ふっ!」 軽くジャブをする。 まだ痛むが、麻痺が解けた瞬間ほどではない。 ……よしいける!いけるってことにして行く!むしろゴー! え?何処にゴーなのかって? グオッフォッフォ……!!もちろんこのまま心臓目掛けてまっしぐらよ……!! 正攻法!?良心!?戦士としての誇り!?知らんよそんなもの!! 戦いってのは戦いだからこそ戦いなのだ!勝てばいいのよ勝てば!! グフフフフ……!さあ待っているがいいハートブレイクの時よ……! ハブアブレイク!ハブアキットカット!! 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