───冒険の書01/少年の午後───
【ケース62:弦月彰利/花舞う都『エーテルアロワノン』】 ───ザァアアッ……!! 彰利 「ひょっ……ひょぉおぇええ〜〜〜〜〜〜っ!!!!」 ヒロラインに精神を投じた途端、広がったのは桜吹雪の舞う町。 眩しいばかりの桜の花弁が舞い、しかし体に纏わりつくことなく流れてゆく。 丘野 「風流……っ!風流でござるよ!!」 中井出「凄いもんだな……俺、こんな景色見るの初めてだ」 真穂 「う、うんっ……わたしも……!!」 ここに居るのは体験版を介して新たな世界に解き放たれた我らのみ。 他の皆様は初心者修練所から始めているようで、 恐らくジョブも手に入れてませんでしょう。 ───あれから蒼空院邸に戻り、スッピーたちに適当な挨拶を済ませた我ら。 そんな我らは早速スッピーたちに経過を訊き、 丁度キリのいいところだと言われるや否や接続。 創造世界に精神だけを投じて降り立ったわけです。 ……いや、それにしても綺麗です。 目を開けた途端にこんな景色なもんだから感動ですよ? これだけのことをするっつーのは恐らく自然の精霊ニンフたちでしょう。 彰利 「お、俺ちっと町回ってくる!!」 丘野 「あ、拙者も同行するでござるよ!」 中井出「ま、待て!抜け駆けするより一緒に回ろう!     こんな町だって人にぶつかれば絡まれるかもしれないんだぞ!」 真穂 「う、わっ……!そ、そうだった……!」 何故か皆様最初の一言を絶対にどもりつつも駆け出した。 もちろんみんなでだ。 丘野 「しかし見事でござるな……。これだけ桜が舞っているというのに、     建物が見えなくなるということがござらん」 彰利 「この桜吹雪自体がイメージなんデショ。     それよか早速武器屋行かない?みんな揃うまで暇だしさ」 中井出「べつに待ってなくても、四人でフィールドに出るって方法もあるぞ?」 真穂 「だめだよ提督さん。まずは情報収集から始めないと。     まだわたしたち、なにをすればいいのか解らないんだから」 中井出「っと、そか」 真穂さんの言う通りです。 魔王が居るのなら魔王とも戦いますが、それにしても戦う理由というものが必要だ。 『博光の野望オンライン』って名前は適当につけたものだから、 ゲーム内容に無理に盛り込まなくてもいいとしてもだ。 まず目的を持たんことにはなんとも。 彰利 「しかしこう歩いてみると……ゲームの中の町って案外広いもんだね?」 真穂 「そうだね。でも不思議。感覚としては地界で言う外国の商店街みたいなのに、     一歩外れれば魔物の居るフィールドなんだもん」 彰利 「そだねー。なんかそのヘン、ほんとゲームって感じだ」 丘野 「あ、しかし待つでござるよ。拙者たち、まだ一円も持ってないでござる」 中井出「んあ……そういやそうだな。だったら───」 提督が徐に傍にあったタルを探る。 すると───チャリンッ♪ 中井出「おっ……金見つけた」 彰利 「マジですか!?」 なんと!提督の手には確かに硬貨が! しかも空界と同じ通貨らしく、提督が手に入れたのは2A$(アルデット)
だった。 真穂 「これっていくらなの?」 彰利 「2A$……まあ、2円あたりです」 中井出「しょぼいな……」 彰利 「一応おさらいしときましょ。空界の通貨には適当に分けて、     A$、B$、S$、PG、G$があって、それぞれを───     アルデット、ブロデット、シルデット、プラデット、ゴルデットって呼ぶ。     ようするにアルミ、ブロンズ、シルバー、プラチナ、ゴールドって、     そう覚えてもらえりゃいい。     A$は1の位、B$は10位、S$は100の位、P$は1000の位。     で、そうなればGは10000の位、と。     その上───10万〜1000万の位を例える$は無いんだけど、     一億はM$……マリデットって読んでる。     ようするにマテリアル通貨って感じのやつね。     まあ一億なんて数字、悠介じゃなきゃ稼げねぇから気にせんでええよ」 総員 『稼いだの!?』 彰利 「む?んむ、稼いだよ?今悠介ってば空界では知る人ぞ知る金持ちだから。     まあもちろん、それを鼻にかけるようなことは全くせんで、     かなり細々と暮らしてるらしいんだけど」 俺も聞いた話だからようと知らんね。 中井出「純粋にすっげぇええヤツだったのな、晦って……」 丘野 「記憶の映像じゃあそれっぽいことはなにひとつ無かったでござるが……」 彰利 「ガキどもがそれに頼っても困るっしょ?     そこんところはオイラと悠介で省かせてもらった。     そげなわけで、悠介や俺が見られたら困るって思ったものは全部見せてません。     ……なのにあのベリッ子ヤムヤムが妙なところだけを開放するもんだから……」 中井出「そんな簡単に人の能力を干渉+改変されると立場が無いんだが……」 彰利 「そら今更でしょう。     人外の能力のことなら提督より我らにこそ先んじるものがありますよって。     それに忘れたかね?俺はともかく悠介はアルマデルキング様ですよ?     空界の技法はほぼ全部といっていいほど持ってます。     それは禁呪から正当能力まで様々な部分でです。     そんなんに今更我らが勝てる筈無いっしょ。特に精霊になった悠介にはね」 さらに言えば今の悠介は前の悠介より空界寄りだ。 今張り合ったところで、魔術や式といった空界技法では絶対勝てん。 物理攻撃での力比べなら勝てる自信あるけどね? 中井出「あ……そういや修行がどうのって言ってたっけ。     精霊がどうとかはまあ……晦の人物特性考えりゃ解ることだからいいとして、     どんな修行やってんだ?」 彰利 「いつものように限界突破系ですわ。     つーかまさか精霊のことがあっさりスルーされるとは思わなかった」 真穂 「晦くんだからね……」 丘野 「晦殿でござるからなぁ……」 中井出「晦だからなぁ……」 満場一致のようだった。 悠介の『人物特性:苦労人』をよく知っている原中であればこその理解だ。 昔っからあいつって周りに振り回されたり、いらぬ疑いかけられたり、 さらに面倒ごとを押し付けられたりと苦労背負うことばっかだったからね。 まあそれだけ頼られてるってこと───にはならんな。 ありゃ天が与えたもうた天災だ。天才じゃなくて。 彰利 「悠介で思い出したけど。実際どうなるんかね。     結局精霊全員と契約し直したわけだけどさ、     やっぱこのまま悠介がゲームマスター続けるんかね」 真穂 「あ、うん。それわたしも気になってた。     どうせだったら一緒にやれた方が楽しいと思うんだけど」 丘野 「それは拙者もそう思うでござるよ桐生殿。     彼はこのままゲームマスターで終わらせるには惜しい男でござる」 中井出「うむ。是非ともなんとかしてこの創造空間に参加してもらいたいものだが……」 丘野 「提督殿!創造空間ではなくヒロラインでござる!!」 中井出「う、うーさい!!違うっていったら違うんだいっ!!」 提督は我侭でした。 そして僕らも相当です。 彰利 「それはさておき、ここだよね?武器屋って」 中井出「んあ?……っと、そうみたいだな。いつの間に……」 目の前に聳え立つ大きな建物。 我らは一度目を合わせるとコクリと頷き、中に入った。  ガチャッ───…… 彰利 「ち〜〜っす」 丘野 「おぉっ……豪華そうな武具がいっぱい置いてあるでござるよ……!!」 中井出「よし彰利一等兵!早速ローバーアイテムだ!」 彰利 「やりませんよ!!」 大体オイラ今シーフじゃねぇっての!! ……や、べつにシーフになったらやるって言ってるわけじゃないよ? 彰利 「まあとりあえず……おい店主」 店員 「やあいらっしゃい。今店長が留守にしてるんで、僕が店番です」 気が弱そうだけど人の良さそうなあんちゃんがペコリとお辞儀をした。 丘野 「ほほう、なかなか人の良さそうな人でござるな」 彰利 「なんだと!店主を呼べ!     貴様では話にならん!!この店では客に茶も出さんのか!!」 中井出「なっ───えぇっ!?」 真穂 「ちょ、弦月くん!?なんで武器屋で微食倶楽部発動させてるの!?」 雄山 「黙れ小娘が!!私は弦月ではない!海原雄山(うなばらおっさん)だ!!」 店員 「どういった入用でしょうか」 雄山 「貴様!この武器はこの雄山が陶芸家としても有名であることを知ってのものか!」 店員 「店ではどの装備をしたらどうステータスが上がるかも確認してから購入できます。     そうですね、まずはスモールソードあたりなんてどうでしょうか。     軽くて扱いやすい上に値段もお手ごろですよ」 中井出「……ものの見事に無視されてんな」 雄山 「貴様はクビだ!出ていけぇっ!!」 丘野 「あ、キレたでござる」 真穂 「少しは反応があるって信じてたんじゃないかな。     だってほら、製作したのが晦くんだから」 二人 『あ〜〜〜〜あ……』 雄山 「おっ……おのれ!この雄山を試すようなことをしおって!!     この雄山、もうしんぼうたまらん!!」 この雄山は見本品としてカウンターに出されている剣を手に取って、 ニコヤカスマイルの店員へと投げガバシィッ!! 三人 『それはマズイ!!それだけはダメだぁっ!!!』 仲間三人に同時に押さえつけられました。 普段なら振り払うとこですが、悲しいかな……ゲームの世界じゃ力がそう変わらない。 多勢に無勢ってこういうことよね。 彰利 「えぇい離せ!離せというに離せぇえええーーーーっ!!!」 初代熱血硬派事態を恐れるあまり、俺を取り押さえる僕の仲間。 中井出「ば、ばかものっ!     貴様にはこの無限に広がる(広がってません)武器の数々が目に入らんのか!!」 彰利 「この彰利、生来目など見えておらぬ!!」 中井出「それが当然みたいに嘘つくなよ!男塾の月光かてめぇは!!」 真穂 「それが男塾だってすぐに解る提督さんも相当に凄いと思うけど」 丘野 「そういう桐生殿とて知っているのでござろう?」 真穂 「原中ですから」 ムンと胸を張る真穂さん。 こういうところはずっと前から変わってませんな。 でも昔のビクビクオドオド真穂さんから比べりゃ相当な進化です。 彰利 「グーム、解ったよぅ。     でもさ、オイラきっと悠介ならやってくれるって信じてたのよ?     きっと僕の思考回路をステキに先読みしてさ、ね?解るでしょ?」 中井出「そ、そうか!キングオブファイターズを利用したな!?」 彰利 「してませんよ失礼な!!」 丘野 「ではどうしたというのでござるか!?」 彰利 「だからね!?今は悠介の話をしてるんであって、KOFなんて関係ないの!     悠介なら俺のことをちったぁ考慮して海原雄山のことをだね!?」 真穂 「晦くんならそれを敢えて逆にすると思う……」 中井出「あ、俺も」 丘野 「晦殿は弦月殿には特別遠慮無いでござるからなぁ」 彰利 「グ、グゥムッ……!!」 即座に『そうかも』とか思った時点で俺の負けのような気がした。 彰利 「さて、そんじゃこの話は終わりにして……ゆっくり武器でも見てますか」 中井出「そうだな」 丘野 「手裏剣は無いでござるか……?」 真穂 「あ、モーニングスター」 彰利 「………」 切り替えの早い人々で良かった。 そげなことをしみじみと思ったのちに、俺もゆっくりと店内を見てゆくことにしました。 ……そういや、今皆様はどうしてるでしょうなぁ。
【Side───閏璃凍弥】 ドゴンドゴドゴゴシャシャシャシャアアアアアアアアッ!!!! 総員 『ほぎゃあああああああああっ!!!!!』 戦慄ッ……!! そう、それは戦慄という名の戦慄っ……!! 凍弥 「だぁ訳解らぁああーーーーーーーんっ!!!!」 鷹志 「なんなんだよあの神父!空飛んで来てるぞ!?」 凍弥 「大丈夫だ!俺達にはパーシモンシールドがある!!」 柿崎 「当然の如く人を盾にすんなぁああーーーーーっ!!!!!」 迫り来る神父! 飛翔する神父! 何故か大群な神父!! そう、それはゼルダの伝説で使われた伝説のニワトリ効果!! まさか晦がこんな面白い機能を付けてるとは!! 清水   「チィイ!偉そうだからって殴ったのが運の尽きだ!」 藍田   「いいやよく殴った!そこんところはナイスだ!」 友の里陣営『いい仕事だ(グッジョブ)!!』 来流美  「それよりどうするのよこれ!!       ひとりでさえ邪神並みの戦闘力秘めてるのに、       こんな数に勝てっこないじゃない!!」 凍弥   「お前なら出来る!」 来流美  「出来ないわよ!!」 岡田   「大丈夫だ!なにせこちらには伝説の黒竜王が居る!!」 ゼット  「………」 みさお  「ゼットくん、ほら」 ゼット  「……無理だな。貴様ら忘れたのか?この空間は精神空間であり創造空間だ。       この場に精神として誘われたからには力は平等に落とされる」 岡田   「あ……あっちゃあああーーーーーーーっ!!!!」 田辺   「しかしラバーズに促されなきゃ何も言わないって……ヒネたガキですかキミ」 ゼット  「黙れ」 しかしながら俺も同意見だったりする。 だってなぁ、ムスッとした顔でそっぽ向いてたのに みさおちゃんに促されたからって応えるって…… あれじゃ本当に母親の影に隠れる子供だ。 柾樹 「と、とにかく叔父さん!神父はもういいから外に出ましょうよ!!」 凍弥 「柾樹……男にはな、逃げちゃいけない時ってのがあるんだ……」 柾樹 「お、叔父さん……?」 凍弥 「解るな?解ったら黙って頷いて、柿崎を男にしてやれ……」 柿崎 「なっ!ちょ、待て!なんで俺が!     つーか勝手になんでもかんでも捏造するのやめろお前!!」 凍弥 「友よ……俺は貴様の成長に賭ける!!」 柿崎 「賭けられたって勝てるもんじゃねぇだろあの神父!!」 まったくもって正論だった。 正論すぎて泣けてくるくらいだ。 凍弥 「穂岸!?穂岸ィーーッ!!     貴様の知性的戦闘方法でなんとかこの状況を打破して居ねぇ!!」 由未絵「穂岸くんならさっき『勝てる気がしないから』って言って、     バトルフィールドの方に行っちゃったけど……」 凍弥 「フオッ!?」 迂闊!まさか穂岸がこうも諦めのいいヤツだったとは! つーか無理!この神父に勝てる気がしないのは俺も同じだ!! というわけで隣に居る柿崎の肩をポムと叩き─── 凍弥 「いけ、矢島。じゅうまんボルトだ」 柿崎 「ねぇよ!!つーか誰が矢島だ!!」 言ってみたが無駄だった。 凍弥 「それじゃあ───」 鷹志 「まあ───」 来流美「とりあえず───」 総員 『逃げよっか……』 そうと決まれば早かった。 それぞれが一気に床を蹴り、出口へと走る走る! が─── 神父 「ええことしよかぁ」 総員 『キャーーーーーーーッ!!!?』 一瞬にして回り込まれた俺達は、文字通りボッコボコにされた。 ……理屈ではない。 きっとこのゲームがどんなゲームだろうが、 俺達のラスボスはこいつなのだろうと思いながら。 【Side───End】
中井出「……んあ?どうしたー?彰利ー」 彰利 「あ、いや……なんでしょうね」 なにやら今、同志が一気に増えたようなそうでないような。 気の所為だね、きっと。 彰利 「それよりもだ。なぁあんちゃん?武器のレンタルってやってる?」 店員 「買うか売るかのどちらかのみになります。     ただし買う時の値段と売る時の値段は同じですので、     安心して買っていただけると思います」 中井出「おっ……そりゃいいや。RPGの武器防具屋って言ったら、     高いの買わせといて半額で買う、なんてよくあるしな」 あれは許せん、と言いつつ鉄棘バットをシゲシゲと見る提督。 ……さっきからアレばっか見てるけど、何気に気に入ったんスカね。 彰利 「まあどちらにしても金が足りんわけね。ではまず金を稼ぐ方法から考えよう」 丘野 「やはり魔物が落とすのではないでござろうか」 中井出「いや、ここはやっぱり彰利一等兵に金を盗んでもらうとかだな」 彰利 「キミ、よっぽど俺に外道シーフになってほしいみたいね」 中井出「ピックポケットなんて面白そうじゃないか」 彰利 「あの……俺、町に入った途端に石とか投げられんのイヤだよ?」 中井出「俺だって嫌だ」 ダメじゃん。 彰利 「まあとりあえずはだ。イベントが始まる前にちょろっと外で戦って来ませんか?     俺としては精神の野郎に実戦経験をた〜んと積ませたいんでのぅ」 丘野 「それは拙者も同感でござるよ!それぞれのアビリティも試して見たいでござる!」 真穂 「ん。それじゃあまず外に出よっか」 中井出「よしきた。それでは総員、努力と根性と腹筋を以ってこの乱世を生き延びよ!     バトルフィールドへ全速前進!!」 総員 『サーイェッサー!!』 こうして僕らの、町の様子などほったらかしのバトルが始まったのだった……!! Next Menu back