───冒険の書02/初めてのフィールドバトル───
【ケース64:弦月彰利(再)/果てしなく続くこの草原で】 そうしてフィールドに出た我ら───だったが。 彰利 「しもうた!ポーション売って武器買えばよかった!」 中井出「しまった!その手があったか!」 丘野 「迂闊でござるよ……!」 真穂 「HPは顧みないんだね……」 それが男ですから。 防御よりも破壊力!これ、初心者の知恵。 彰利 「まあいいコテ!とりあえず初心者修練場で貰ったナックルを装備して、と」 丘野 「拙者は忍刀を二刀流でござる」 中井出「俺はグレートソードだな。     つーかグレートソードってなんでこう無駄にデカいかね」 真穂 「わたしは……偽水晶の杖、だって……」 皆様が武器を装備する中、真穂さんが武器の名前を見て何気にヘコんでいた。 そういえばどうしてか修練場の受付さん、真穂さんの武器の名前言わなかったよね。 まさかこげな裏があろうとは……悠介、怖いコ……!! 彰利 「真穂さんドンマイ。水晶が偽者でも武器には変わりないし」 真穂 「それはそうなんだけどさ……。     うう……なんだか通販とかでニセモノを掴まされた気分だよぅ……」 中井出「剣士の武器とアコライトの武器の名前に差がありすぎないか?これ」 彰利 「面白けりゃそれでいいっしょ」 ともあれ僕はナックルを両手につけると、ゆっくりと構えた。 敵は───んむ、近くのジャイアントビーがいいでしょう。 彰利 「皆さん準備OK?」 丘野 「いつでも来いでござるよ!」 真穂 「うん、OK」 中井出「よし、それでは突貫!!」 総員 『サーイェッサー!!』 僕らは一斉に駆け出した! 相手の強さなぞ解らんから戦って実感するほか無し! そんなわけでジャイアントビーを背中から不意打ちナックル!!  ───ゴバァンッ!! GB 『ピギギッ!?』 彰利 「チッ!浅かった!」 殴りつけた筈が、丁度横に動いた所為でクリティカルとはいかなかった。 だがその避けた方向に提督のグレートソードが振り下ろされる! GB 『ギッ!』  ヒュフォンッ! 中井出「とわっ!?さ、避けたぁっ!?」 これは驚きだ! 確実に死角から振り下ろした筈の攻撃がこうもあっさりとまあ! 丘野 「驚いている場合ではござらん!皆は箸で蝿を捕らえられるでござるか!?     今のこの状況は虫対武器!飛ぶ虫に何かを当てるのが難しいのは当然でござる!」 なるほど正論! おのれ悠介!なにもこげなところでリアルを追求せんでも! 真穂 「【エール】!!」 数瞬絶望に包まれた僕らを真穂さんのエールが包みます。 ───そうだ!まだ諦めちゃあならん! つーか攻撃躱された程度で絶望してたらゲームにならん!! 丘野 「いくでござる!“投擲物を分身させる能力(ちから)
”!!」 丘野くんが地面に落ちていた石を拾って投擲した! するとその石が五つに分裂し、ジャイアントビーを襲う!! ……ちなみに『投擲物を分身させる能力』とか言ってるけど、ただの分身魔球です。  ボゴスッ! GB 『ピギッ!?』 彰利 「おお当たった!!」 攻撃が当たったと同時にジャイアントビーの頭の上に赤い文字で数字が現れた! 7……ダメージかなんかかね?体験版ではなかった機能だ。 中井出「よっしゃ!一気に畳み掛けるぞ!」 彰利 「オウヨ!!そぉおぅりゃああっ!!!」 一気に接近!同時にナックル!  ゴバァンッ!! GB 『ギャビッ!?』 ナイスヒット! 当たる……よく見てやりゃあ当たるぞこりゃ! 彰利 「提督!相手の動きを追うように攻撃するんじゃ!」 中井出「解ってるって!───オラそこぉっ!!」  ───チッ!! 中井出「っ───チィ!!掠っただけかい!!」 丘野 「しからば拙者が!忍刀二刀流───回転剣舞!」 丘野くんがステータスを全て素早さに振り分け、疾駆とともに刀を振る!  ───フォフォンフォンッ!! 丘野 「おやっ!?」 しかし所詮は低レベルのステータス。 そげなものを振り分けたからって、すぐに追いつけるわけもない。 GB 『ギィッ!!』  ゾブシャアッ!! 丘野 「ギャーーーッ!!」 GBの攻撃!丘野くんは頭を噛みつかれた!! 丘野 「あだだだだ!!なにをするでござる!離すでござるーーーーっ!!!」 真穂 「……ああ!そういえば蜂って黒いものを狙うとか!」 中井出「ああ、だから髪の毛に」 彰利 「しかし今がチャンスでは?丘野くん噛んでるおかげで動けないみたいだし」 中井出「なるほど」 丘野 「なっ!?ちょ、待つでござる!!それはあんまりでござるよ!?」 中井出「当たらんようにする!覚悟を決めろ丘野二等!」 丘野 「さ、サーイェッサー!!」 提督の攻撃! 提督はグレートソードを振るった!!  ───ゾバシィッ!! GB 『ギビィイイッ!!!』 命中!提督はGBの羽を片方切り落とした!! ……となれば当然GBは地面に落下。 GB 『ギ、ギギギ……』 地面をのた打ち回るGB。 もちろんそんな彼(?)に僕らは…… 彰利 「クォックォックォッ……栄華を極めたキサマの時代は今終わる……。     地に落ちたものよのォォォォ〜〜〜〜ッ……文字通ォォォォり」 ニヤニヤと暗黒を煮詰めたようなステキな笑みをしつつ、GBを囲んで見下ろした。 あとはまあ……ご恒例のリンチで。 彰利 「オォオオオオーーーーーーーッ!!!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオ     ラオラオラオラオラウゲェエーーーッ!!!!」 動けないGBをボコ殴りにしてやりました。 もう花山さんのマウントナックルにも匹敵するほどに。 しばらくするとGBはモシャアと塵になり、僕らに経験値が齎されました。 彰利 「GB……強敵だった……」 中井出「一番最初からこれじゃあ先が思いやられるが……」 真穂 「とりあえずなんでもありっていうのが確認できただけでもいいんじゃないかな。     普通のゲームじゃ出来ないよ?魔物の羽を切り落としたあとにボコボコなんて」 そう……このゲームの戦闘における自由性が今ここで実証されたのです。 もうなんでもありだコレ。 しかもスッピーたちが関わっていながら、それが一切修正されてねぇとくる。 それはつまり、この線でそのまま行こうってことになったことに他ならない!! まあ空界に慣れるためのゲームなんだし、 実際通りに出来なきゃ意味がないのは確かだけどね。 彰利 「フ……フフフ……俺達が集まれば勝てねぇヤツなんて居ねェぜ!?     もっと奥行こう奥!フィールドの果てまでレッツゴー!!」 中井出「おう!」 丘野 「拙者たちの実力を見せつけてやるでござるよ!」 真穂 「大丈夫かなぁ……」 彰利 「大丈夫大丈夫!フムフハハハハハハハハ!!!!」 この時僕らは絶好調でした。 もう何も怖いものなどなかった。 あどけない子供の如く、危険なところへ敢えてゴートゥー。 そう───僕らの夏は輝いていたっ……!! ───……15分ほど前までは。 ドゴォオオオオオオオオンッ!!!! 総員 『ほぎゃあああああああああああっ!!!!!』 突如として現れた強敵っ……! まるで歯が立たず、役にも立たない修練場の提供武器っ……!! 戦慄っ……そうっ……これが戦慄っ……!! 中井出「なんでたかだか歩いて十五分のところにオーガメイジが居るんだよ!!」 丘野 「ヒィイ!ブリザドを執拗に使ってきてるでござるよ!!     凍る!全てが凍るでござる!!」 真穂 「あぁああん!!だから嫌だったのにぃいーーーっ!!!」 彰利 「い、否!みんな、今こそ10分アビリティを使って戦うべきだ!!」 中井出「なっ───正気か彰利一等兵!相手は一体とはいえオーガ族だぞ!?」 彰利 「正気でありますSir!この程度で挫けていては、精神の強化など夢のまた夢!     ───提督!私達はそのためにこの世界に降り立ったのではないのですか!?」 中井出「あ、彰利一等兵……!貴様という男は……!!」 丘野 「フッ……拙者を忘れてもらっては困るでござるよ?     死ぬ時は一緒と誓い合ったでござろう、あの桃園で」 真穂 「あの……誓ってないんだけど」 中井出「たとえ何処にあれど、(ゆか)しき喜びがあなたとともにあらんことを、だっけ?」 彰利 「提督、それ違う」 丘野 「我ら生まれた日は違えど、死ぬ時は同じ日同じ場所でって感じだったでござる」 彰利 「誓ったん?」 丘野 「誓ってないでござる」 彰利 「ダメじゃん」 真穂 「ね、ねぇっ!今危機的状況だって解ってる!?解ってるよね!?     なんでそんなに冷静に語り合ってられるの!?」 男三人『原中だから』 真穂 「うわぁああん!!意味は通ってないのになんか妙に説得力があるよぅ!!」 隣を全速力で走っていた真穂さんが涙ながらに語りました。 しかし確かにこのままでは逃げきれん! なんつーかあっちの方が足速いです!やっぱレベルの差なのか!? 彰利 「エィイ!こうしててもいずれブチコロがされる!!     皆さん、戦いますぞ!ともに白髪の生えるまで!!」 中井出「何年オーガメイジと戦う気だよ!!」 彰利 「知らん!!」 丘野 「やる気になってくれたでござるな!?では拙者が仕掛けるでござるから、     それを合図にすぐに10分アビリティを発動させるでござるよ!」 彰利 「よしきた!」 中井出「あぁもう!なんか今すげぇ晦の気持ちが解る!!」 真穂 「提督さんよりわたしの方が解るよぅ!」 ンなこと言ってる場合じゃないんですがね……。 まあ理解者が増えるのはいいことですがね。 中井出「目覚めろグレートソード!“マグニファイ”!!」 モシャアアン!!───中井出のマグニファイが発動!! グレートソードの潜在能力を一時的に引き出す!! 彰利 「ではいきますぞ!“界王拳”!!」 モシャアアン!!───俺の界王拳が発動!! 全格闘ステータスが上昇した!! 真穂 「もうっ……どうなっても知らないんだからねっ!?【エール】!!」 丘野 「行くでござる!」 さらに真穂さんがエールを使用し、 丘野くんがオーガメイジの気を引くために分身魔球で石を投擲!! 彰利 「よしっ!行きますぞ提督!」 中井出「どんとこいだ!そぉらぁっ!!」  ジョパァンッ!! 提督の攻撃!───クリティカルヒット!!オーガメイジに5のダメージ!! 中井出「かっ……()ってぇえええーーーーーーっ!!!!」 彰利 「なんの!幻竜拳!」 提督の攻撃ののちに一気に間合いを詰めてからの全力ナックル!! だが───ゴコォッ! 彰利 「って……うおっ……!2!?たった2ダメージ!?」 結論。 こりゃ強ぇええええや。 オーガメイジ『ゴォオオオオオオオオッ!!!!!』 彰利    「……逃げんべ」 中井出   「んだ」 そう決めてからは早かったッス。 オーガメイジが例の如くブリザドを詠唱し始めた刹那に駆け出した。 しかしそれに気づいたオーガメイジが詠唱を中断!物凄い速さで追ってきた!! 彰利 「ギャア速ェエ!!どうすんの提督!!」 中井出「お、俺に訊くなぁあーーーーっ!!!!」 真穂 「このままじゃまた全滅だよぅ!」 丘野 「───……!お師さん……とうとうこの時が来たようでござる」 ザザァッ!! 彰利 「なっ───!?」 中井出「丘野二等兵!?キサマなにを───」 丘野 「走るでござる!ここは拙者が引き受けた!!」 何を思ったのか丘野くんが逃走を解除した! しかもたったひとりでオーガメイジに向き合ったのだッッ!! 丘野 「いくでござる……忍法───“生分身”!!」 ドシュゥウウウウンッ!!!───丘野くんの“生分身”!! なんと丘野くんは総勢26人まで分身した!! オーガメイジ『グ……グォオッ……!?』 丘野×26 『フフフ……どれが本物の拙者か解らんでござろう。        さあみんな!今のうちに逃げ出すでござるよ!        これだけの人数がバラバラに逃げ出せば、        オーガメイジは混乱するでござる!』 彰利    「お……おおおお……!!カッコイイ!カッコイイぜ丘野くん!!」 中井出   「サンキュウ丘野くん!さ、真穂さん!逃げ出しますよ!?」 真穂    「うんっ!」 こうして僕らは再度逃走をゾブシャア!! 丘野B「ギャアアアーーーーーーーッ!!!!」 丘野C「お、丘野Bィイイーーーーーーーッ!!!!」 丘野T「お、丘野Bがやられたぁああーーーーーーーっ!!!!!」 まさに外道!! なんとオーガメイジは逃げ出した丘野くんら26人をひとりずつ始末しようと、 いきなり武器を振り回してきたのだ! 丘野U「どどどどうするでござる!?このままでは───」 彰利 「落ち着け丘野くん!     ナビによれば、生分身は本体が殺されない限りダメージは0らしいから!!     どうにかして本体だけが生き残れば、またいくらでも生分身が可能だそうだ!」 丘野A「そ、そうなんでござるか。ホフゥ……ひと安心でござるよ。     さぁみんな!オーガメイジの気を引くために散るでござる!!」 丘野Aが分身たちに撹乱を命じた!! 丘野C「いやでござる!だったらキサマが死ぬでござるよ!!」 丘野R「あんな惨たらしい死に方は御免でござる!!」 なんと!丘野×24が丘野Aを裏切った!! 丘野A「なんと!?ほ、本体が死ねば全てが死ぬんでござるよ!?」 丘野O「それでもいやでござるーーーーっ!!!!」 丘野W「さあ行くでござる!キサマが死ねば拙者が助かるんでござるよ!!」 丘野A「や、やめるでござる!24対1なんて卑怯でござるぞ!?」 やがて喧嘩を始める分身と本物。 そうしてる間にも丘野くんは次々とコロがされ、彼らは取り乱し始めた。 中井出「………」 彰利 「……なんつーか……ねぇ?」 真穂 「……ヘタに正確に分身した所為で、なんかもう流石は原中って感じだね……」 それからはもう大変でした。 とりあえず無視して逃走することにした僕らは、 何故か全員一緒に、同じ方向に逃げ出す丘野くんたちに呆れつつも逃走を続行。 オーガメイジのブリザドや棍棒での一撃などで、 次々と絶命する生分身丘野くんたちにむしろ恐怖しながらも逃走を続行。 ……そうして、なんとか花舞う町エーテルアロワノンまで戻ったところで、 とうとう丘野くん本体が一撃の名の下に絶命。 まだ残っていた丘野RとLとともに、光に包まれて消え去った。 【ケース65:弦月彰利(再)/花舞う町、エーテルアロワノン(再)】 …………。 エリアチェンジすると追ってこれないらしいゲーム特性に感謝をしつつ、 消えてしまった丘野くんを思うこと数分。 僕らは再び武器屋に行くと、じっくりと武器の値段や質を見ていった。 多分丘野くんは教会に飛ばされてるんだろうけど、正直教会が何処にあるのか解らん。 だから無視しました。 彰利 「あんちゃん、ポーションって一個いくらで売れるん?」 店員 「売却ですか?……これは道具ですね。道具は道具屋に売ってください。     武器屋に道具を売られても困りますので」 彰利 「おお……それは正論」 ゲームの常識をゆっくりと説かれた気分でした。 そうだよねぇ……普通は武器屋が道具を買い取るなんてこと、無いよねぇ。 さてそうなると道具屋を探さなきゃならんことになるんですが……。 彰利 「マップってあったっけ?」 中井出「あるんじゃないか?     アイテムのこととかはバックパックがどうのって晦が言ってただろ」 彰利 「あ、そか。じゃあ───」 真穂 「あ、ちょっと待って。システム一覧に『MAP』っていうのがあるよ」 彰利 「ほほう。どらどら」 システムナビを開いてマップを開く。 すると……おお、きちんとこの町の全景が見渡せます。 さすが真穂さん。 細かいところまでチェックしておりますな。 真穂 「えーと……道具屋さんと防具屋さんはこの武器屋さんと隣接してるみたいだね」 彰利 「んむ、そのようで。んじゃあ早速行ってみますか」 中井出「よっしゃ」 それぞれがコクリと頷いて、道具屋へと歩きました。 まあ目と鼻の先ってのはこういうことを言うんだろうけど、すぐに辿り着きましたがね。 道具屋「いらっしゃい。なにか入用かい?」 彰利 「入用ザンス。ポーションを売りに来た」 道具屋「そいつぁあ丁度よかった。今ポーションの仕入れが少なくてね。     どうだい、普段より高値で買い取らせてもらうが」 彰利 「マジですか!?」 道具屋「ポーションの値段は3B$(30円)。     あんたが持ってきたポーションの数は20。     ……よし、全部で8S$(800円)で買い取ろう。どうかな」 彰利 「よし売った!」 道具屋「ありがとよ。ほら、金だ」 ガシャシャシャシャンッ♪───8S$を受け取った!! おお……2S$も儲けしまった。 しかもワンダープロジェクトJみたいな売買の音が鳴った。 中井出「よ、よし、そんじゃ俺も売ろう!」 道具屋「ポーションか。ポーションはさっき少しばかり手に入ってね。     それより少し安くなっちまうが、いいかい?」 中井出「ぬおっ!?そうなのか!?」 道具屋「あんた初心者かい?だったら説明してやろうか。     道具や防具といったものはなにも無制限に生産されるわけじゃあねぇ。     そういった職人が材料を揃えて、一から精製していくのさ。     だから店に入荷するのも、そうやって誰かが作ったものってわけだ。     当然そうなれば、数が増えれば買取値が安くなるし、     減れば高く買い取らせてもらう。いいかいペーペーさんよ、忘れるな。     こうしてる今でも、きちんと世界は動いてるんだぜ」 中井出「……およそゲームらしくないことを説かれてしまった」 でも確かにこういうアクティブタイムゲームは、 こうしてのんびりしてる間にも動いとるんだよね。 オンラインゲームは大体そうだけど。 道具屋「よし、初心者価格ってことであんたも8S$で買い取ろう。根性入れて頑張んな」 中井出「あ……っと、あんがとさん」 ガシャシャシャシャシャンッ♪───提督は8S$を受け取った!! 彰利 「真穂さんは?どうする?」 真穂 「アコライトだからね。基本HPもみんなに比べて少ないからこのままでいいや」 彰利 「そうすか?んだば……武器屋に戻りましょう」 中井出「よしきた」 真穂 「防具を買うって考えは微塵にも無いんだね……」 いわば回復役の真穂さんは、それはもう疲れた顔をしていた。 ───……。 ……。 で、だ。 店員 「8S$で買える武器はこれだけになりますが」 彰利 「ぬう」 武器屋に来た僕らは、その悲しい攻撃力に泣きたくなった。 似たような攻撃力で値段がバラバラ……まあ、ゲームにゃあよくあるものですがね。 これならナックルのままレベル上げた方が経済的っぽい。 彰利 「しゃあないな。防具も見ていきますか」 中井出「そうだな」 真穂 「しょうがないから行くんだ……」 いわば回復役の真穂さんは、やっぱり疲れた顔をしていた。 ───……。 ……。 で、防具屋。 防具屋「いらっしゃい。なにか入用かい?」 彰利 「予算8S$で買える防具ってなにがあるかね?」 防具屋「8S$ね……1000S$あれば一式を見繕ってやれるんだが、     今のあんちゃんたちならまず、その装備で金溜めたほうがいいと思うぜ」 彰利 「む……」 防具屋っつーか、店の人とは思えない親切説明だ。 まさか買わないほうがいい的なことを言われるとは。 彰利 「ふむ……ところでおいちゃん?魔物って金落とすの?」 防具屋「どうだろうねぇ。俺は別にブレイバーってわけじゃねぇから知らねぇなぁ。     そういうことは情報屋のアルギーに訊いてみるといい」 彰利 「ほうほう。で、アルギーって誰?」 真穂 「地図にも載ってるくらい有名みたいだよ?     『情報屋アルギー』って店が裏路地にあるって書いてある」 中井出「裏路地って……なんか金とか必要になりそうだなオイ」 彰利 「そうさね……よし、アルギーさんは無視しよう。     それと新たな新情報だねこりゃ。     一応この世界にはブレイバーシステムがあるみたいだ」 中井出「ん……そりゃこのおっちゃんが言ってたから解るけどよ。それってどうなんだ?     一応俺達ってもう剣士やモンクってジョブ持ってるわけだろ?」 真穂 「ナビによればブレイバーシステムとメイガスシステムっていうのがあって、     ブレイバーシステムを取得してると、     剣士やモンクっていう直接攻撃系に関わる武器防具やアイテムとかが     少し割り引きされるんだって。その代わりにメイガスシステムは取得出来ないで、     魔法系の武器防具や魔術は値段が割り増しされるんだとか」 ぬお……つまり直接系を極めたいなら浮気はすんなってことかね? 真穂 「それとブレイバーシステムかメイガスシステムによって、     入れる場所とか入れない場所が設定されるみたい。     魔術ギルドにはブレイバーは入れなくて、     肉弾系ギルドにはメイガスは入れない、って」 彰利 「えーと……それってさ、もしかしてどっちにするか決めた時点で、     ジョブチェンジしてもそういうところには永劫入れないってこと?」 真穂 「そうみたい。だからもし弦月くんが     ブレイバーじゃなくてメイガスシステムを受け入れたとしたら、     ブレイバーギルドには入れないってことになって、     折角貰った格闘能力アップのファーストジョブスキルが無駄になるってこと」 彰利 「な、なんとまあ……!!それって既に進む道が決められちまうってことじゃん!」 真穂 「あ、でもごめん、無駄とはちょっと違うみたい。     そうすることで、魔法拳とか魔法剣とかも使用可能になるんだって。     ただし基本的に攻撃力とかが下がっちゃうから、     そこのバランスを考えるべきだ、って」 彰利 「グ、グゥ〜〜〜〜ム」 難しいことですねこれは……! どうすりゃいいのやら。 中井出「それってつまりさ。属性を持つ相手には有効に戦えるってことだろ?     敵が氷系のモンスターだったら魔法剣(火)とかで切り刻むとか」 真穂 「あ、うん。そうみたい。でも元々から火属性のついた武器とかもあるから、     そういうのを考えると劣っちゃう時もあるみたいで……」 中井出「あー、そっか……」 真穂 「ただしモンクはかなり特殊で、     メイガス系のモンクはアンデッド系相手だと相当に有利に戦えるんだって。     対アンデッドの時だけ、武器に自然に聖属性がエンチャントされるとか」 彰利 「ほうほう……それは興味深い……」 真穂 「ほかにもいろいろ書いてあるけど……どうする?」 彰利 「ん、いいや。まず丘野くんが来るまで話し合いましょう。     纏めたいこともいろいろあるし」 真穂 「ん、そうだね」 中井出「よし。じゃあそこの噴水広場で休みながら話すか」 彰利 「ラーサー」 こうして僕らは、少しの間この世界についてを語り合うことにしました。 覚えなきゃならんことは相当数です。 なにせアレだ、空界の精霊全てが関わってるゲームだから、その分スケールがデカそうだ。 なにはともあれ、じっくりいろいろ知っていきましょうかね。 ……かなり疲れるだろうけど。 ───……。 ……。 さて、一応話し合って解ったことを纏めてみましょう。 丘野くんとも合流できたことだし。 えーと……? 1:死んだり教会の神父と話したりすると、10分アビリティはリセットされる。   リセットされるとまたすぐに行使可能になる。そういう意味で神父ジョブは消去。   ちなみに生分身アビリティをより実態的に構成したのはイドである。   分身すればするほど死ぬ数が増えるためらしい。なお、分身は必ず『一撃で死ぬ』。 2:金は町のタルや壷や魔物から手に入る。   魔物、といっても、魔物社会における金などの概念を持つ魔物のみ。   例としてはスネークマンなどの人語を介す魔物。   魔物が落とす武器などを売っても金にはなるが、   店に同じ武器が増えると値段が下げられる。 3:地図は買わなくてもナビに付属されている。 4:ブレイバーシステム、メイガスシステムはそれぞれのギルドで登録してもらえる。   各方面毎、どちらかで首飾りのステータスが登録されると、   もう片方のギルドには入れなくなる。当然そういった関連のギルドにも立ち入り禁止。 5:食事、食材系アイテムは腐らないらしい。   鳥系や魚系の魔物は食材にもなるので、消滅させることなく肉を手に入れよう。   なお植物系の魔物の中にも食材になる魔物が居るので、見極めよう。   調理ギルドに入っていると『目利き』のスキルを貰えるので、   それを使って食材になるか否かを見極めることが出来る。 6:メイガスシステムに登録していながらも肉弾戦を好む者は、   その武具に魔法効果をエンチャントさせることが出来る。   その際エンチャント制限は無いので全力で戦える。   武具などに既にエンチャントされている永続エンチャント属性には限りがあり、   古代魔術系の魔法はエンチャントされていないので、   それを覚えるまでは辛いが、覚えてしまえば頼もしい戦力となる。   例/剣士:流星剣(メテオエンチャント)、モンク:爆砕拳(フレアエンチャント)   ブレイバーシステムに登録していながらも魔術戦を好む者も上記とあまり変わらない。   ただし、ブレイバー登録の魔術師はHPが高くMPが少なく、   メイガス登録の剣闘士はHPが低くMPが高いので注意。 7:ブレイバー登録で肉弾戦を極めた者には師範から奥義が伝授される。   メイガス登録の魔術師を極めた存在にもそれは同じく齎される。   ただしメイガス登録の戦士や、   ブレイバー登録の魔術師といった『エンチャンター』には奥義は齎されない。   そのために『エンチャンター』には魔法剣などといった特殊能力が存在する。   が、肉弾戦も魔術戦も鍛えなければいけないため、かなり苦労する。   なお、エンチャンターになったからといってモミアゲは伸びないので安心するように。 8:ようするにヒロラインには大きく分けて、   『ブレイバー』と『メイガス』と、その中間である『エンチャンター』がある。   それらは『クラス』と呼ばれていて、ブレイバーなら勇者、   メイガスなら魔術師、エンチャンターなら魔導戦士という名になる。 9:ブレイバー、メイガスギルド以外のギルドには誰だろうが何個だろうが入れる。   ギルドは鍛冶、調理、錬金があり、   鍛冶は骨や革や鉄や白銀の細工から木工など、さまざまな細工を。   調理は食材調達から調理、裁縫などといった家事的なもの全てを。   錬金は彫金、錬成、薬品精製などといった幅広い薬品作りなどを一緒くたにしている。 10:武器防具の合成は合成屋か合成の壷、怪盗ペリカンなどで可能。    怪盗ペリカンは魔物であり、冒険者のアイテムを盗んで口に含む習性があり、    口に含まれたものはなにがなんでも合成させられる。    合成させたい時は、大事なものは誰かに預けておきましょう。    なお、ペリカン族は足が速いので、    合成させたはいいけど逃げられた、などということが無いように気をつけること。    一番確実なのがペリカンを仲間にすることだが、    ペリカン族は警戒心が強い上に仲間になり辛いらしい。    合成例/杖+ポーション=癒しの杖(効果:弱)        スタン・パンセンの腕サポーター+ダイナマイト=ダイナマイトどんどん ……と、大体こんなもんかな。 ちなみに合成屋には飼いならされたペリカンが居るらしく、 そいつが合成してくれるそうだ。 中井出「つーかなんでわざわざここでダイナマイトどんどんなんだ?」 彰利 「まさか『浦安鉄筋家族』ネタがこげなところで使用されてるとは……」 大変驚きですが……まあそこんところは悠介の茶目っ気ってことで無視しましょう。 それよりもだ。 彰利 「問題はこのバトルギルドシステムだよな……。     エンチャンターには正直憧れるが、そうすると奥義が覚えられんとくる」 中井出「俺もだ……。エンチャンターには素直に憧れる。     晦の闘いの歴史見てると、どうもなぁ」 いいよなぁ、皇竜剣(ラグ)。 俺もああいう固有武器が欲しいもんじゃて。 となると……やっぱ入るギルドは鍛冶ギルドでしょうか? まあそれは後にするとして、今はアレだ。登録ギルドの話。 どっちの方面で行くかだよなぁ。 まあ俺はブレイバー一本で行くつもりだけど。 魔術系は他の人に任せたいって思うしね。 彰利&中井出『……よし!俺はブレイバー一本で通す!───うおう』 口に発した言葉が綺麗にハモりました。 それはそれはステキな偶然です。 彰利 「つーかさ、この『モミアゲは伸びないので安心するように』って、     絶対に悠介以外の誰か……高い確率でスッピーが入れた説明っしょ」 真穂 「うん。素直にこう言えるのって無の精霊さんくらいだろうし」 丘野 「というか生分身アビリティは、     いくらなんでも死の精霊の趣味丸出しでござるよ……」 彰利 「確実に一撃死らしいしなぁ……。     23人もの丘野くんが一撃で次々と死ぬ様はマジで怖かったし」 丘野 「こっちはたまったもんじゃないでござるよ……」 丘野くんはそれはもう悲しそうな声でそうおっしゃった。 ほんとよく死ぬ人だよね、丘野くんって。 彰利 「さて……いろいろ解ったところでどうしよっか」 真穂 「ん───あ、ちょっと待って。GM……ゲームマスターだね。     晦くんから連絡事項が届いてる」 彰利 「む?どらどら?」 真穂さんのシステムナビを横から覗く───が、何が書いてあるのかまるで解らない。 彰利 「ありゃ?読めませんよ?」 真穂 「目の前からじゃないと読めない設定だからね。自分のナビ見てね」 彰利 「グ、グゥムッ……」 そういやそんなことを言ってたような気もする。 そげなわけでオイラは自分の首飾りでシステムを開いてナビを起動。 したっけ……確かに手紙みたいのが届いてる。 彰利 「えーとなになに……?もうじき───おお!     もうじき皆様がこっちに来るそうな!     初心者修練場もさっさとクリアしたらしいぞえ!?」 丘野 「本当でござるか!?」 中井出「そうらしい。最初のイベントは全員一緒にやるらしいから、     そこで待機してろって」 丘野 「なるほど……あれでござるかな、城かなにかに行って目的を説明されるとか」 中井出「いや……鮮やかな町が最初の舞台となるゲームの場合、定番はアレだ」 丘野 「アレ?なんでござるか?」 真穂 「あ───あれかなぁ」 彰利 「アレでしょうなぁ……」 なんかもう予感があった。 ……この町、絶対に崩壊する。 それはもう予感というより直感でした。 だから僕らは、教えることで納得した丘野くんとともに頷き合うと走り出したのだッッ!! 中井出「タルと壷と木箱などをくまなく調べろ!アイテムや金銭は残らず取るんだ!!     アイテムや金を見つけた際はテルシステムで連絡をするように!     間違えてその場所に行ってタイムロスをするという事態が無いように!!     それでは各自の健闘を祈る!イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!」 ザザッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!!!』 タイムリミットは皆様が来るまで! その間に、この町を攻略するのだッッ!! ───……。 ……。 と───そげなわけで。 彰利 「毒針とフライパンと包丁を手に入れたぜ〜〜〜っ!!」 中井出「俺は合計230S$とデッキブラシだ!」 丘野 「拙者は黒魔法『メラメーラ』と釘バットを発見したでござるよ!!」 真穂 「わたしはボクシンググローブと木製モーニングスター、     それから十手二丁を手に入れたよ!」 集まってみれば中々ステキなものが発見されました。 早速それを皆様で分け合うこととなり、 俺はボクシンググローブを受け取り、提督がデッキブラシと釘バットをキープ。 丘野くんが十手二丁と毒針と包丁を受け取って、 真穂さんがメラメーラと木製モーニングスターとフライパンを獲得。 金は全員で山分けしてひと段落を得た。 真穂 「えっと……?」 シュゴォオオ!キィンッ♪ 真穂さんは早速メラメーラの書を読み、メラメーラを覚える。 アコライトなのに攻撃魔法も自由自在ってのはステキすぎだと思いますが、 このゲーム、どんなジョブだろうが魔法は覚えられるのです。 ただし肉弾マニアさんが魔法を覚えると奥義を教えてもらえなくなる。 つまりはそういうことかと。 まだ詳しい話は解ってないのでなんとも言えませんがね。 ───などと思っていた時でした。 突然噴水広場の噴水の近くが光り輝き、猛者どもを始めとする皆様がご降臨なされた! 凍弥 「よっ……よっしゃーーーっ!ようやく神父の呪縛から解放されたぞーーーっ!!」 鷹志 「長かった……!!ああ長かったなぁ……!!」 柿崎 「これでようやく本格的に冒険が出来る……!!」 御手洗「あそこはもう修練場とは名ばかりの監獄島だよ……!!」 皆様一様に修練場への文句(主に神父への)をこぼしている。 そりゃね……あの聖職者は本気でムカつくし。 丘野 「これで、死んだらまた神父のところへ飛ばされると知ったら、     いったいみんなはどうなるでござろうな」 彰利 「……やっぱ居たん?」 丘野 「居たでござるよこの町にも。     例の如く殴りつけてやったでござるが、やっぱりボコボコにされたでござる」 彰利 「キメ文句はやっぱり『死んでしまうとは情けない』か?」 丘野 「バッチリそうでござった。     もう聞くこともないだろうと思っていた故に拙者の我慢も限界だったでござるよ」 で、殴って殴られてあっさり昇天。 再度あの素晴らしい説法をくらったと。 彰利 「まあなんにせよ───」 これで役者は揃いました。 あとはドゴォオオオオオオンッ!!!! 町人 「うわぁあああああっ!!!モ、モンスターだぁああああっ!!!!!」 総員 『辿り着いた途端にモンスター侵略イベントかよ!!』 休む暇も息吐く暇もありませんでした。 Next Menu back