───あなた死ぬわ/ヤツの名は包山龍(パオシャンロン)───
【ケース633:中井出博光(再)/豪放磊落真弓(タイム)】 コチャッ、キィ…… 中井出「博光です」 ノート『藪から棒になんだ』 晦ルームでヒロラインの調整をしていたらしいノートン先生を発見。 居なかったらそのまま閉めるつもりでいたドアノブから手を離し、テクテクと中へ。 もちろん鍵は閉めてと。 中井出「グヘヘヘヘ、じょ、嬢の体にもうとんでもないことしたるわ。     す、すぐによくなるし大声あげてもあのー、     誰も来やしねぇのじゃよ?《ベパァン!》ポルポ!!」 ノート『話があるならばさっさとしろ』 中井出「ハ、ハイ……すんませんした……」 後ろ手に鍵を閉めるという行為で思いついたネタは、 顔面に放たれた衝撃波であっさり無駄に終わりました。 うう……鼻血が……。 ドリアード『こんにちは、博光さん。ニーヴィレイは元気にしてますか?』 中井出  「気絶してます」 ドリアード『……あまり無茶はしないでくださいね』 苦笑いがとても印象的でした。 ううむ、こんな綺麗な苦笑いは見たことがねー。 中井出「で……話なんだけど。ノートン先生や他の精霊やイセリ子さんは知ってるよね。     僕が近い将来、死亡することは」 ノート『…………ああ。汝はルドラとの決戦を前に、既に脱落していることになる。     そういった未来なら、既に何度も確認している』 中井出「ウワー……改めて言われるとショックだ……か、回避する方法とかはないのかな」 ノート『様々な事柄を想定してみたがな。無理だ。     それこそ奇跡めいたことでも起きぬかぎり……いいや、その奇跡ですら不可能だ』 中井出「おお!絶体絶命か!ここまで言葉通りの絶対絶命初めて!」 ていうかあのー、アナタにそんなこと言われると物凄くグサリと来るんですが? ノート『ふざけるな。真面目な話だ』 中井出「失礼な!僕は真面目さ!や、確定しちゃってるなら慌てることでもないでしょう。     だったらそれを受け入れて、抜け出せそうな裏道を探しつつ楽しめばいいのさ。     絶対絶命だからって、その瞬間までの時間が一気に消えるわけでもなし。     だから僕は楽しみます!それまでの時間を!俺は俺の命を諦めねーぜ!?     確定してるんだったらその常識の先に行くために足掻いたらぁ!!」 ノート『無理だ、と言っているんだがな』 中井出「無理じゃねー!無理と決めるのは最後まで足掻きに足掻いて、     それでもダメだった時に言う言葉だ!貴様こそふざけるな精霊王!     視ただけで、訪れてもいねー未来になにをそんなに怯えておるか!」 ノート『…………』 ノートン先生が呆れた顔で、俺の目から俺の足へと視線を移す。 無様に震えている、俺の足へと。 中井出「怖い!滅茶苦茶怖いさそりゃ怖い!これだってただの破れかぶれみたいなもんさ!     だ、だがなー!こうでもしなきゃ立ってられない俺が居るんだ!     ふざけてるとか真面目じゃないとか誰に言われようが、     俺は俺が俺らしくあればそれでいいと思っています!それでいいじゃない」 ノート『破れかぶれで楽しもうとして、汝は本当に楽しいか?』 中井出「破れかぶれでも楽しもうとしない余生になぞ希望を持ちなどしねー!     ていうかもっとじっくり話そうと思ってたのに!     物凄い勢いで俺の死亡が確定してしまった!しかも助かる見込みがないなんて!」 ノート『私の“不可能を可能にする力”を使えばどうとでもなるだろうがな。     だがそれを使ってしまえば、ルドラとの戦いで私は使い物にならなくなる。     それだけは避けねばならん』 中井出「あぁうん、それは解るかも」 ノートン先生は主力になる筈だ。 そんなノートン先生の力が衰えてしまえば、こちらの負けは確定。 なにせ相手側にもノートン先生が居るのだから、それだけは避けねばならない。 ノート『死んだ汝を生き返らせるという方法もあるが───』 中井出「NOそれはダメ!死者は死者!もう復活だのは無しだと決めたでしょう!     断っておくが俺は蘇生なぞ望むかもしれねーけどされても嬉しくねーからなー!     たった一度の人生!だから栄えるぜ人間魂!!     俺はどこまでも人としてありたいのだ!だから復活させないでください」 ノート『…………さて、マスターや弦月彰利がどう出るか───』 中井出「絶対に止めてください。僕とキミの約束だ!!」 ズイ!と突き出した右拳。 とくに意味はないが……ノートン先生は残念そうな顔をしながらも、 そこに自分の右拳を当ててくれた。 ノート『本当に、いいんだな?』 中井出「後悔は後でするものだから後でたっぷりします。     俺が死ぬのってヒロラインの中……だよね?」 ノート『ああ。いずれルドラの力で魂の回復能力が塗り替えられる。     そうなった世界では、死んでしまえば復活できず、そのままだ。     そこで汝は死ぬ。傷だらけの姿を雨に打たれ、孤独なままにだ』 中井出「うへー……」 夢で見たまんまの死に方じゃないですか。 中井出「逃れられんのですね?」 ノート『ああ。全ての者がヒロラインから抜け出た景色の中、     汝の魂のない体だけがそこに転がり、残されていた。     汝の魂自体がヒロラインとともに消滅するのだ、当然だろう』 中井出「あうう……」 ああもう……狂おしいほど死亡確定。 ……OK上等だ、ならばその未来、なんとしてでも塗り替えてくれる。 だって死にたくはないし、まだまだ楽しみたい。 精霊王にキミは死にますよと言われて、 頷きはするし受け入れはするが、 諦めてしまうほどつまらん人生を突き進むつもりはないのです。 でも、あの夢が確かなのだとしたら───…… 中井出「……それだけがショックだなぁ……。まあ、そっちも頑張るからいいけど」 頑張ってもダメだったらもう盛大に泣こう。 泣きまくりながら、それでも最後まで粘ってやる。 中井出「OK!すっきりしました!じゃあ僕これからピクニックだから戻るね?」 ノート『緊張感のない男だな……これから死ぬという話をした矢先にピクニックか』 中井出「や……だからぁあ……。もうノートン先生!?何度言ったら解りますの!?     ヘンに悟るのはおよし!死ぬからなんだというのです!     さっきも言ったけど死ぬまでの間になにも出来ないわけではないのですよ!?     こ、これは侮辱!もっと生きよう!     もっと楽しもうとしている人へのこれは侮辱だ!」 ノート『そう言うな。これで、ここに居る精霊全員が汝をわりと気に入っている。     死んでほしくないと思う気持ちに嘘はないのだ』 中井出「ウソ!ウソよ!あなたっていっつもそう!     そうやって悟ったフリして《ゴパァン!!》ウモルチェ!!」 ノート『嘘はないと言った』 中井出「コワカカカカ……!!」 また鼻に衝撃波が……! ノ、ノートン先生……俺の鼻になにか恨みでも……!? ノート『現在、汝を生かす方法を皆で探している。     それに集中しているわけでもないが……可能性はほぼゼロ……いや、ゼロだ』 中井出「言い直したぁあーーーーーーっ!!」 希望すら持たせてくれないよこの精霊王! すげぇ!これでよく死んでほしくないとか言えたものだ!それは褒めてやる!じゃなくて! 中井出「1%もないんじゃケンシロウも諦めるしかないじゃないか!     も、もっと頑張ろうよ!ほら!ねっ!?」 ノート『0だ』 中井出「うわぁああああああん!!」 どうあっても死ぬらしいです。 ノート『汝が生き残る方法はあるにはある。     もちろんルドラとの戦闘にも出ることが出来るだろう。     だが、それをすれば負けるのは確実に我々の方だ』 中井出「え?もしかして僕がルドラ側に寝返るとか?」 ノート『いいや。肝心なところがフィルターをかけられていてな。     忌々しいことだが、それ以上を視ることが出来ないでいる』 中井出「なんでそんな中で僕の死だけが確定事項!?」 ノート『ルドラの思惑だろう。どうやらルドラは汝には死んでほしくないらしい。     それがどういった経緯からくるものなのかは測りきれんがな』 中井出「そ、そうなの?」 ルドラが僕に死んでほしくないと? 何故だろう。 未来の僕が彼になにかしたのかな。 中井出「まあいいや、ともかく僕は今を生きます。無茶で無謀でも結構!それが冒険!」 大体死ぬと言われたからって落ち込まなきゃいけない理由が俺にはない。 そりゃあ生きたいとは思うけど、だからって落ち込むのとは違うのだ。 他のやつがそうだろうが、ともかく俺は違う。 ノート『やれやれ……───中井出博光』 中井出「え?なに?」 戻ろうかな、と振り向いたところにノートン先生の声。 振り向くと、小さな光が俺に向けて投げられていた。 中井出「うるさい」  コパァン!! ノート『ぬおわぁあーーーーーっ!!?』 そこで炸裂するリーダーうるさい! 光を叩き落した僕は、それがなんなのかも解らず、 とりあえずノートン先生にニコリと笑みを贈った。 ノート『たわけ!今すぐそれを拾って飲み込め!』 中井出「え?やだよばっちぃ」 ノート『叩き落したのは誰だ!』 中井出「俺だぁあーーーーーーーっ!!!《どーーーん!!》」 でも拾います。 ばっちぃと言ったのは言ってみたかっただけですので。 中井出「で、これを飲むのはいいとして。人をやめることになったりしないよね?     なったら呪い殺しますよ?」 ノート『……人にそんなことを言われたのは初めてだぞ、私は』 中井出「ありがとう世界初。で、どうなんですか?」 ノート『人をやめるということにはならん。     ただ魂を増殖させる───待て待て!何故わざわざゴミ箱に捨てようとする!』 中井出「馬鹿野郎ォオーーーーーッ!!!     あれほど蘇生めいたもんはやらんと言っただろーーがーーーーっ!!     魂を二つに増やすなど冗談ではないわ!     俺は俺のままで居たいと言ってるでしょ!?」 ノート『解った!解ったから待て!     その魂とて簡単に作り出せるものではないんだ!今すぐそれを返せ!』 中井出「え?ダメだよ?だってこれ僕が拾ったんだもん」 ノート『………………ま、待て。汝、それをどうする気で───』 中井出「…………《ニコリ》」 笑むや否やダッシュ!! 廊下へと続くドアをガッと掴んでアレ開かない!! なんで!?どうして!?ってしまった俺鍵かけたじゃん!! ええい開け開けってギャアアアア!!焦って上手くいかねぇええええっ!! ノート『はっはっはっは、何処へ行こうというのかね……』 中井出「開いてぇえーーーーーっ!!!」 その後わたしは怒気溢るる精霊王にボコボコにされた。 ───……。 ガシャァアーーーーーン!!!! 声  『しまった逃げられた!!』 中井出「ワハハハハ!!油断大敵だぁあーーーーーーーっ!!!」 しかしタダではやられません! 隙をついて窓ガラスをブチ破った僕は、庭の芝生に降り立つや激走! すぐにノートン先生が魔法で我が体を戒めようとするが、ゴキィンッ!! 甲冑男爵『全身甲冑の武装錬金!破壊男爵!!』 声   『なっ───』 全身を男爵様で包み、魔法を跳ね返すとやっぱり逃走!! しかしその直後、 目の前に転移してきたノートン先生御自らに、拳でボコボコにされた。 ───……。 死ュウウウウウ………… 中井出「グビグビ……」 ノート『まったく……とんでもない人間も居たものだ……』 で、現在は晦の部屋に連れ戻され、うつ伏せで倒れている状態。 すぐ傍には呆れる風情のノートン先生が居て、 ドリアードに僕の回復を頼もうとそちらを向いている。 フ、フフフ……!愚かなり精霊王……!この博光を前に余所見をするなど……! あ、足だ……!足を掴んで……!掴みさえすれば……! ほぉおうわりゃぁっ!! ノート『《がしっ》───?なんだ、起きれ───』 中井出「三陰光圧痛(さんいんこうあっつう)
”!!」 ノート『《グキィッ!!》ぐわぁああーーーーーーっ!!?』 余所見をした彼の足首のスネの内側、 足首から訳10センチにあるとされる急所を強く圧迫!! 烈海王でも転倒へと屈してしまう激痛に襲われ、 バランスを崩したノートン先生を火闇から出したジャバウォックとともに持ち上げて、 割れていない窓ガラス目掛けてブン投げる!!  ワガァッシャァアアアアンッ!!! すると突然のことだったのか、それとも予想外の痛さだったのか、 窓ガラスをブチ破るまで体勢を立て直せなかった彼は見事に背中で窓を破壊! しかしすぐに空中で止まるや、困惑顔で僕を睨んできました。 ノート『ぬぐっ───!な、汝な!何故こんな時にばかり奇妙な力を発揮───』 中井出「ごわぁあ〜〜〜っ!     ノートン先生が窓ガラス破ったぁ〜〜〜〜っ!!」 ノート『きっ───きぃいいいいいききき貴様ァアアアアアアアッ!!!!?』 中井出「い〜けないんだ〜いけないんだ〜!櫻子さんに〜言ってやろ〜〜〜っ!!」 精霊王様からの“貴様”発言に正直僕のハートはドッキリさ! だから叫びながらもドアに向かってぶちかましをし、ドアを破壊しながら廊下に出て逃走! ……した先に、仁王立ちしている般若面のノートン先生がドゴシャァン!! ノート『ぐおっ!?』 構わん突っ込む! ダンターク流奥義ぶちかましをした僕は、 バランスを崩すノートン先生の横を潜り抜けガシズルゥッ!! ノート『待てとぬわっ!?』 襟首を掴まれるであろうことを予測して脱いだ上着を囮に大激走! そして階段へと辿り着いたところで再びノートン先生がエンカウント!! ノート『汝な、いい加減に───』 中井出「う、うわぁああああ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」 ノート『うん?なに───なぁっ!?《ガッ!!》』 だが僕はいじめられっこ究極最終奥義道連れ自殺を発動!! 階段の前に立つノートン先生を抱き締め、そのままの勢いで前進&跳躍!! さらに重力100倍を発動させて───! 中井出「わはははははは!!!ザーボンドライバーだちょーーーーーっ!!!」 ノート『ま!待て待て待て!待てと言っている!     汝は今なにをしているか《ドゴバギャズガァンッ!!》ぐがぁっ!?』 彼の頭が玄関ホールに突き刺さりました。 そんな彼の傍に跪いて一言。 中井出「若すぎる……遅すぎる……そしてなんと弱い……」 息子を倒したマホメド・アライのように、どこか虚ろな目で口を半開きにして言ってみた。 するとゴバァンッ!! 弾ける床!起き上がるノートン先生!そして溢れ出す肉汁!じゃなくて殺気!! ノート『汝は』 中井出「砂掛けババァーーーーッ!!!」 ノート『《バサァッ!》ぐわぁっぷ!?』 ノートン先生が掘り返した床の塵を集めてお目めに投擲! そうしてから僕は逃走した!脇目も振らずに、ただ逃げたのだッツ!! ……途端、炸裂する僕の足元。 嫌な予感がしたので跳躍の予備動作として大きく大地に屈む! だがフェイントとして烈風脚で前方へと疾駆! 次の瞬間には虚空から雨のような刃の束が落下してきていて───おお危ない! ジャンプしてたら串刺しでした! なんて思った直後に目を焼くような閃光に包まれて、僕はHP1を残して倒れました。 あの……たった一人のヒューマンを止めるためなんかに、 なにも“全ての始まりにして終わりなる者”まで使わんでもいいじゃない……。 ───……。 ……。 櫻子 「ノートちゃん?いくら直せるからといって、家を破壊するのは感心しないわよ?」 ノート『し、しかしだな櫻子、これは中井出博光が……』 櫻子 「他人を原因にしても、壊したのはノートちゃんでしょう?」 ノート『う、ぐぅう……!』 中井出「やーいやーい怒られてやぁああんのぉおおおぅ《ベシベシ》」 ノート『ギィイーーーーイィイイイイ!!!!』 さて……なんの因果からか始まった追走劇は、 ノートン先生が櫻子さんに説教されるという素晴らしい形で幕を下ろした。 櫻子さんに必死になって弁解をするノートン先生だが、 逆に痛いところを突かれて言葉を飲み込む。 そんな彼にべしべしと尻を叩いて挑発してみると、 それはもう悔しそうな顔を見ることが出来ました。 壊れた玄関ホールも今は直り、 無駄に挑発した僕は櫻子さんにぴしゃんと頭を叩かれておりました。 でもこうして僕を叱ってくれる人なんて居なかったから、 逆に新鮮でむしろ嬉しいくらいです。 中井出「グオッフォフォ……!!この喧嘩(ゴロ)、預けとくぜ……?」 ノート『待て。魂の玉を返せ』 中井出「し、失敬だなキミは!なんてことを言うんだキミ!     私の魂のタマを返せだなんて!それはキミ、チ……!」 ノート『違う!捻じ曲げるのはいい加減によせと言っている!』 中井出「ごえぇええええ〜〜〜〜〜……?くれるんじゃなかったのぉおお〜〜〜〜……?」 ノート『汝が飲まないのであれば、それは人間の手に余るものだ。返すのだ』 中井出「ククク……!ただではやれんなぁあ〜〜〜〜っ!!」 ノート『なっ……汝は!何処まで外道であれば気が済むのだ!』 中井出「望みとあらば何処までも!……博光です。     さあ、この魂が欲しければえーと………………返します」 ノート『思いつかなかったのか……はぁ。まったく、これでは私は怒られ損ではないか』 中井出「クズが《パゴォン!!》アボリ!!」 ノート『散々と引っ掻き回した汝がそれを言うな』 精霊王ナックルが僕の頬を砕きました。 あまりの痛みにギャアアアと叫びながら転げまわるほどにええ痛いですマジで痛い。 でもそれも少しすると癒され、僕は自然のみんなに多大な感謝をするのでした。 中井出「ちくしょうこの乱暴精霊王め……     いつかひどい目に合わせてやるんだからねっ!《ポッ》」 ノート『気色の悪い目で私を見るな頬を染めるなくねくねするな』 中井出「というわけでやっぱりこれ返しません」 ノート『それは返せ!大体!酷い目と言うのであればさっきの悶着だけで十分だろう!     私に投げっ放しだのぶちかましだの     パイルドライバーだの砂掛けだのをやったのは貴様が初めてだぞ!』 中井出「馬鹿野郎!パイルドライバーじゃねぇ!ザーボンドライバーだ!」 ノート『やられた方にしてみれば同じだ!馬鹿者め!』 中井出「わ〜馬鹿って言った〜!馬鹿って言う方が馬鹿だもんね〜!     ───しまった!先に言った俺も馬鹿だった!」 ノート『……………………ああ、すまなかったな。確認するまでもなく馬鹿だった』 中井出「うるせぇ馬鹿!」 ノート『こっ───!ここまで真っ直ぐに馬鹿と言われたのは初めてだぞ!     貴様覚悟は出来ているんだろうな!』 中井出「お?なんだてめぇ俺とやろうってのか?やろうってんだな?お?     言葉だけ使ってる俺にてめぇから手ェ出そうってんだな?お?」 ノート『ごっ……ゴゴゴギィイイイイイイイ!!!』 彰利流・人を逆上させるシャドーボクシングで、 軽くジャブをしながらこれまた軽くフットワーク。 すると血管ムキムキで顔を赤くする精霊王! おお!こんな顔も出来たのか精霊王様! ノート『……構わん。馬鹿だろうが小者だろうが私は貴様をブチノメすと決めたぞ』 中井出「あれぇ!?───ク、フフフ……!     ど、どうやら貧乏クジを引いちまったみたいだぜ……!」 ノート『フ、フフフ……なに、すぐに終わる。貴様にはこの精霊魔法だけで十分───!』 中井出「ちょ、ちょっと待ってよなにその物騒な諸力!     そんなの使われたら───あ、ああっ!櫻子さん止めてぇええっ!!     この精霊さんまた家を破壊しようとしてる!」 ノート『なにっ!?《がばしっ!》ぐわっ!?き、貴様!』 我が言葉と視線に騙され、後方へと振り返るノートン先生を背中から抱き締めた。 当然、櫻子さんは既に厨房に戻っている。 ノート『なななな汝なぁあああっ!!人をたばかるのも大概に───』 中井出「さよなら天さん……」 ノート『ま、待て待て待て待て待てぇえええええええっ!!!     私はまだ誰の超越もしていないんだぞ!     そんな状態で───グワァアーーーーーーーーッ!!!』 ───……。
【Side───その頃のモミー】 ドゴォオオーーーー………ォォ……ン………!! 悠介 「………」 ルナ 「………」 もはやお馴染みの炎柱が遥か彼方の天を衝いた。 今度はどんな無茶をしてるんだか知らないが……ハテ? 感じるノートの気配が随分と小さくなったような……気の所為か? 彰利 「悠介悠介〜!次あっち行こうぜ!スーアイあったスーアイ!」 悠介 「アイスって言えよ……」 夜華 「うう……《ガタガタガタガタ……!!》」 悠介 「そして篠瀬はいい加減彰利の腕にすがりつくのはやめろ……」 彰利 「いや〜もうほんとどうしようもないHIKIKOMORIですな夜華さんたら。     まるで外界を恐れるUSAGIさんですわ」 ルナ 「おやっさーん、いい大根仕入れられたー?」 八百屋「おっ、来たねぇルナちゃん。これなんかどうだい」 ルナ 「むっ───《キュミミミィイイン……!》……こっちのちょうだい」 八百屋「あやっ……ルナちゃんにはいっつもいいモノ持ってかれちゃうなぁ。     よっ、と……これをこうして、と……はいよっ、お待ちっ!」 ルナ 「ん、あーりがとー」 悠介 「………」 一応はデートという名目で来ているというのに、 大根を買ってゆく妻にどうツッコミ入れればいいんだろうか俺は。 ていうか既に常連なのかお前は。 そもそもなんなんだ、その異様な鑑定眼は。 彰利 「ルナっちは案外社交的なのねぇ〜ィェ。そこんとこ比べっとよぉ……」 夜華 「うう……《ガタガタガタガタ……!》」 彰利 「なんとかなりません?この……けしからんおっぱい」 悠介 「けしからんのはお前の脳だ」 彰利 「だってYO!こうぎゅうっと抱きつかれてると腕にホレ!ねぇ!!」 悠介 「ルナ〜行くぞ〜」 ルナ 「あ、うん。それじゃね、おやっさん」 八百屋「おう!また来てくんな!」 彰利 「あんダーリン!」 悠介 「ダーリン言うな!」 無視して歩き始めた俺を、彰利が篠瀬を引きずりながら追ってくる。 それはまるでオモチャを買ってもらえない子供が親を懸命に引っ張る姿のようで、 俺はなんとなくおかしくなって苦笑するように笑った。 それから気になって、もう一度見てみた空。 けど、そこにはもう炎の跡はなく───ただ、穿たれて円状に散った雲だけが残っていた。 【Side───End】
ゴコッ……パラパラ…… 中井出「カカカカカカカカ…………!!」 ノート『ぐはっ……お、ぐおあ……!!』 瓦礫が地面に落ちる中で、僕とノートン先生はクレーターの真ん中でヤムチャ様優勝です。 いや意味が解らんがとりあえず体から煙を出していた。 中井出「ア、アオア〜〜〜〜ッ」 すぐに追撃といきたいところだが、現実世界での自爆は体に負担がかかりすぎるらしい。 体がギシミシと軋んで、上手く動けやしない。 そんな時は集気法。 いや……ほんと俺って武具がないとダメダメだね……。 中井出「ほ、ほがっ……は、は……はぁああ〜〜〜……」 体が回復してくると、動きもそれなりになってくる。 腕や足に力を込めてみる……うん、立てそうだ。 というわけで立ち上がりがしっ。 中井出「アレ?」 ノート『…………《ニコリ》』 塵まみれの彼が、笑顔で立っていて……立とうとした僕の頭を掴んでおりました。                          アァアアアーーーーーーッ!!! ───……。 ……。 ザァアッ……!! ナギー『ここがわしらがピクニックをするハローナル渓谷か〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ』 中井出「どおれ明日は大暴れしてやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」 そんなわけで空界、ハローナル渓谷。 ノートン先生に改めてボコボコにされた僕は、 魂の玉を強奪されたのち……なにやら他の精霊たちに  “ここまでスピリットオブノートに食らいついたのは貴様が初めてだ” とか言われて、手厚い看護をしてもらって現在に至ります。 傷?ええ、綺麗さっぱりありません。 特にドリアードたちニンフの看護は素晴らしいもので、 癒しから状態異常の発見、削除まで全て行ってくれました。 ……その中に俺の音痴が混ざっていたことに、俺は声を出して泣いたけどね……。 俺、自然の精霊に状態異常と感知されるほど音痴だったのか……って泣きました。 中井出「あ、あ、あー……アーーーーーーーーーシアーーーーーーーーーーッ!!!!」 麻衣香「ヒロちゃん、またなに叫んでるの?」 中井出「発声練習!言葉に特に意味はない!」 紀裡 「…………お父さん、同窓会とかいうのに出かけてから随分変わったね」 中井出「失礼な!うん変わったかも。だが失礼な!……変わったか」 シード『ち、父上……仰っている意味が解りません……』 中井出「う、うむ。詳しく言うと、今とてもビエネッタが食いたい」 麻衣香「また懐かしいものを……。でも今でも売ってるのかな」 中井出「あの子供心をガッシリ掴むアイスの人気がそうそう落ちる筈もなし!     きっとあるさ!というわけで買ってきます!」 麻衣香「今から!?」 中井出「5分以内に戻れるといいね!」 断言せずに希望的な言葉だけを残して各馬一斉にスタートォッ!! 一緒に居ると約束を交わしたナギーを抱きかかえ、 ジークフリードに乗ってサーフティール……ではなく、 リヴァイアラボ目掛けて飛んだのでした。 ───……。 ……。 ガチャドバァーーン!! 中井出「ワムウ!!」 そうして訪れたのは未来の地界のリヴァイアラボ! ノックの回数で出る場所が変わるそこで適当にノックし、降り立ったのは鈴訊庵! だが場所なぞどうでもいい!地界であるのなら、ビエネッタがきっとある筈!! 早速僕は鈴訊庵の二階の窓をガラリと開け、 そこから時をかける少女伝統のポーズでヴァーと飛び出し、 最寄のスーパー目指して走ったのだった。 ……しまった!スーパーの位置が解らん! いいや未来だし僕関係ない!空飛んだりして探そう! いやいっそ超巨大化を! 体は〜〜よし!ブリュンヒルデに頼んであれをこうして───OKパオシャンロン! ではいくぞ!超・巨大化〜〜〜〜っ!!! 【ケース634:風間雄輝/カンパニーでのお仕事の合間に】 ……ズズゥ……ゥウン…… 風間 「……?地震……?」 カンパニーの休憩室でテレビを眺めていると、ふと……地面が揺れた気がした。 最近地震なんてなかったのに、珍しいな───とか思っていた矢先、 番組が急遽特別番組みたいなものに切り替わって─── 男  『え、えー!大変なことが起こっております!     ごらんくださいあの巨大な猿を!あ、すいません!現在生放送でお送り───     あ、は、はい!昂風街よりお報せします!現在昂風街より───!』 風間 「エ?」 ガタガタと揺れる映像を見る。 カメラマンが相当慌ててるのか、なかなか画面が定まらない状況のさなか。 一瞬だけ、巨大な物体が見えたような……しかもここ、酷く見覚えがあるような…… 男  『失礼しました!ご、ごらんください!突如現れた巨大生物を!     猿のような形ですが、あんな巨大な猿は見たことがありません!     こ、こちらは今はアパート代わりになっている、えー……鈴訊庵!     鈴訊庵前からお報せしています!!』 風間 「ぶはぁーーーーーーーっ!!?」 す、鈴訊庵!?鈴訊庵って───うわぁでかい!! なんだあのデカい猿!! 男  「ぞ、続報です!あの猿は、かつて週刊少年ジャンプで連載されていた、えー……     ぎん……銀魂!銀魂という漫画に出ていた、     パオシャンロンという猿に酷似しているとか!」 似てるとかそういうこと言ってる場合じゃないって! ど、どうするんだこれ! セ、センパイに───ってセンパイ居ないし! あぁああっとえぇええっとどどどどうしたらぁああああっ!! そ、そうだ!ここはオチットさんに相談して───! 風間  「オチットさん!オチットさぁあーーーん!!《パコォン!》へぶっ!!」 オチット「まぁああなんですかまったく、大声を出してはしたない」 風間  「オ、オチットさん……!鼻にお盆はやめて……!」 走り出した途端、いつからそこに居たのか…… お盆を持ったオチットさんに叩かれてしまった。 風間  「でも丁度よかった!あの猿どうしたら───」 オチット「…………まあ。……まあまあ大変!葉香!?葉香!いらっしゃい!」 映像を見た途端、ぱんぱんっと手を叩いて葉香さんを呼ぶオチットさん。 すると面倒臭そうにしながらも即座に現れる葉香さん。 葉香  「なんなんだ、いったい……」 オチット「葉香、ちょっと行って強い子連れてきなさい?      あんな大きなお猿さんに暴れられたら迷惑でしょう?」 葉香  「……お前が行けばいいじゃないか」 オチット「んまぁああ!この子は!この子は!」 葉香  「《べしっ!べしっ!》いたっ!いたいっ!わ、解った!解ったよ!」 オチット「改めるくらいなら最初から頷きなさい。まったく……仕方のない子」 葉香  (どっちがだ……) かくして葉香さんは転移を実行。 緑色の粒子とともに消え去り、多分……センパイたちが飛んだ時代へと飛んでいった。 風間  「連れてくるまでの間、どうしましょうか……」 オチット「すぐに戻ってきます。それまでお待ちなさい」 風間  「は、はあ……」 窓からでも見える巨大な姿を見ながら、口を開けっ放しで返事をした。 なんであんなものが突然…… もしかして飛んでいったセンパイたちとなにか関係があるんだろうか。 ……なんにせよ、久しぶりに……ここらへんが騒がしくなりそうな予感がした。 Next Menu back