───馬鹿者どもへのジャッジメント/武器好きの雑魚───
【ケース647:穂岸遥一郎/野に咲く花のように……人に踏まれる。風?知らんよ】 昼もいい頃合……昼飯時だと賑わう人垣の中で、俺達は飽きもせず人を尾行していた。 最初に言っておきたいことだが、俺は飽き飽きしている。 いや、むしろ解放されたい。 それを許可してくれない三人の存在が、どうあっても俺を縛り付けていた。 これが思い切りのいいやつらだったらさっさと振り払って逃げたりもするんだろうが…… ああ、そういうことが出来ない自分が嘆かわしい。 そもそもこんな回りくどいことをしないで真正面から訊いてみればいいんだ。 tell:霧波川凍弥、と……ナルルルル…… 椛  「───あ、動きがありました」 閏璃 「なにぃ……ほんとだ。きっと浮気相手からのtellだ」 鷹志 「お前、元気な……」 閏璃 「任せろ」 目線のことに夢中で、俺の行動には気づいてない奴らを横目に話を進める。 するとどうだろう、帰ってきた答えはひどくあっさりしたもので、 浮気もなにも全てが誤解。 頭を痛めた俺には拘束を振り切る勇気が沸いてくる始末だ。 付き合ってられん。 遥一郎「……スパークウェーブ」  ヂガガガバリバリバリィイイイッ!!! 全員 『らいらぁあああああああっ!!?』 電柱に恋する全員に電撃系魔法をくらわせ、のんびり退場。 まったく、いっつもそうだ。 いらん誤解で人を巻き込むのは勘弁しろ。 椛  「ななななにをするんですかいきなり!」 遥一郎「なにをするんだはこっちの台詞だっ!     ていうか凍弥が気になるなら俺を追いかけてくる必要なんてないだろ!     そもそもお前はいっつもヘンな方向に猪突猛進すぎるんだ!     もっと真正面から猪突猛進でいけ!     どうして真っ先に尾行する方向で突っ走るんだ!」 椛  「そ、それは凍弥さんがっ……!」 閏璃 「え?俺?」 鷹志 「違うって」 遥一郎「いいからもうコソコソしてないで凍弥にぶつかってこい!     全部誤解だったって解るから!ほら行け!」 椛  「う……で、ですが……」 閏璃 「よし!コンタクトなら任せておけ!」 鷹志 「どうするんだ?」 閏璃 「アポを取ってくる!直々に!」 柿崎 「それアポって言うのか!?」 遥一郎「ぃゃっ───ちょ───」 止めるより速く駆け出したサモンザ厄介事男。 俺は再び巻き起こるであろう事態を前に、もういっそ眩暈で倒れてしまいたかった。
【Side───ムナミャギャウィャトゥーヤ】 タッタッタッタッタ…… 声  「もし、そこの方」 凍弥 「うん?」 閏璃 「そいやぁああーーーーっ!!」 凍弥 「《ドガァッ!!》うおおおああ《ゴダァッ!》いっづ……!?」 い、いきなりなにッ……!? 声かけられたと思ったらタックルされて倒されグキィッ!! 閏璃 「ふぅうううんぬぁああああっ!!!!」 凍弥 「《グギギギギ!!》うごがごわぁああああっ!!!」 しかもその上、さらに背中に乗ってきてキャメルクラッチまでやってくる始末! ほ、ほんっとこの男の行動は読めん! 親父はよくこんなヤツを尊敬できたもんだな! 閏璃 「貴様と話をしたい!アポを取りたいんだがいいか!?」 凍弥 「どんな取り方だぁあーーーーっ!!     ア、アポなんて必要ないから普通に話せよ普通にぃっ!!」 閏璃 「おお!大丈夫だそうだーーーっ!!」 凍弥 「大丈夫はいいから離せぇええええっ!!」 離れた位置からぞろぞろとやってくる見覚えのある面々を前にしても、 とにかくキャメルクラッチから解放されたい一心で暴れまわった。 ……結局徒労に終わったが。 【Side───End】
……。 そんなこんなで現在、最寄の喫茶店にてケーキセットをつつきながらお話中。 一緒に居た死神、ゼノ=グランスルェイヴも一緒だ。 …………ケーキ、似合わないな。 雪音 「あぁ、おにいさーーん!モカマロンケーキひとつー!」 遥一郎「お前は少し限度ってものを知れ」 雪音 「いーじゃないのさ〜、わたしのお金なんだし」 遥一郎「………」 それぞれが思い思いにケーキをむさぼり、紅茶を嚥下する中。 俺は小さく溜め息を吐きながらテーブルの一角を見た。 凍弥 「………」 椛  「………」 凍弥と朧月嬢だ。 誤解なんだからさっさと解けーと言ったのに、まだ座ったまま動こうともしない。 せっかくの紅茶も既に湯気を失いつつあり、マスターが寂しそうにじっと見てる。 ……喫茶ホロスコア。 ここらじゃ知る人ぞ知る名店で、コーヒーも紅茶も絶品だとの噂。 しかし友の里が出来て以来、客の大半をそこに取られて閑古状態だった。 が、ここにきて友の里の主人たちが揃って事故死。 それを喜ぶわけでもないが、この喫茶店はそれなりの伸びを見せていた。 と、店舗説明はこれくらいにして。 椛  「………あの。凍弥さん」 凍弥 「ん……なんだ?」 椛  「あの……あ、あの……───っ!ど、どうして!浮気なんかするんですか!?」 凍弥 「へ?あ、ああうわ浮気!?     ちょ、ちょっと待ったなんだよそれ!俺がいつ浮気なんてしたんだ!?」 椛  「だ、だって!アクセサリを手にとって水穂さんに似合いそうだって!     しかもそれをそのまま買ったりして!それが浮気じゃなくてなんですか!     水穂さんにプレゼントするつもりだったんでしょう!?」 凍弥 「いやっ……あ、あのなぁあ……!     椛……お前、その心配性、いい加減に直してくれないか……?     思ってくれるのは嬉しいけど、なにか買うたびにこうじゃあ身がもたないぞ……」 椛  「いやです!だったら凍弥さんが誤解を招くような行動をとらなきゃいいんです!」 凍弥 「誤解ってなんだーーーっ!!誤解もなにも、俺はただアクセサリを買っただけだ!     それをお前が勝手にヘンな勘ぐりするからこんなことになったんだろ!」 椛  「わ、わたしがいけなかったっていうんですか凍弥さんはっ!」 凍弥 「だからどっちがいけないとかそういう話じゃなくて!     勘違いはしてもいいけど勘ぐりはするなって言ってるんだ!     思い込みが激しいのにも限度を持て限度を!」 椛  「う、ううっ……凍弥さんのばかーーっ!!!」 凍弥 「だっ……誰が馬鹿だっ!少なくとも現在進行形で馬鹿なのはお前だろうが!」 ああ……喧嘩が始まった。 どうしてあいつらはこう落ち着きがないんだ……。 腹を割って話し合えば解り合えるだろうことでも無理矢理捻じ曲がらせるからたまらない。 ……仕方ない。 雪音 「むぐ?ホギッちゃん何処行くの?」 遥一郎「野暮なこと訊くな」 雪音 「…………ああ、おトイレ」 遥一郎「……言いもしないように」 自分の分と凍弥と朧月嬢の分の支払いを先に済ませて、二人が座る席へと歩く。 そして喧嘩に無理矢理割って入ると、 椛  「なんですか!邪魔しないでください!」 凍弥 「どいててくれおっさん!たまにはびしっと言わなきゃ解らないんだ!」 遥一郎「すぅ……はぁ」  ゴガァンッ!! 椛&凍弥『ひぎゅうっ!!?』 拳骨一閃。 痛がった瞬間に襟を掴んで、 椅子が倒れようがテーブルの上の紅茶が倒れようが無視して引きずり、外へと放り出した。 凍弥 「いってて……!な、なにすん───」 遥一郎「黙れ」 凍弥 「ア、ハイ、ダマリマス……」 椛  「いくらあなたでもこんなことを───」 遥一郎「黙れ」 椛  「ハ、ハイ……ダマリマス……」 喫茶店の店の前に放り投げられた二人は、 言われるまでもなく正座をし、所在無げに俺を見上げる。 遥一郎「どうしてお前らはそうなんだ……あのな、俺は誤解を解けって言ったんだぞ?     それをあ〜もう飽きもせずギャーギャーギャーギャー……!」 凍弥 「やっ……けどそれは椛が……」 椛  「なっ……凍弥さん!そこは普通庇ってくれるべきところじゃ───」 遥一郎「理想像を押し付けるな。大元の原因はお前なんだ、言い訳は見苦しいぞ」 椛  「見苦しいってそんな……!」 遥一郎「ほら凍弥。アクセサリを買った理由を教えてやれ。     言わなきゃ解らないんだから、回りくどく言うよりストレートにだ」 凍弥 「う……その、俺はゼノさんの買い物に付き合っただけなんだよ……。     ゼノさんが紅さんを祝ってやりたいって言うから、     ぬいぐるみとかアクセサリがどうかな、って……。     買ったアクセサリだって、     そりゃあ手に取った時は紅さんに似合いそうだって言ったよ。     けどそれは、ゼノさんを案内してるからであって俺が贈るわけじゃなかったんだ。     だから、それとはべつに、たまには椛にプレゼントでも、って……」 椛  「え…………そ、それじゃあ……」 凍弥 「勘違いなんだよ、なにもかも……。     この……このアクセサリは、元々椛のために……って」 椛  「そう……だったんですか……?わ、わたしてっきり……」 照れながらも、アクセサリを椛に渡す凍弥。 面倒なことがあったにも係わらず、ちゃんとあげるものはあげるのは凍弥のいいところだ。 ───が。 遥一郎「───よし。話も纏まったところで───」 凍弥 「あ……わ、悪かったなおっさん、いろいろ面倒ごとに巻き込ん───おっさん?」 遥一郎「殴った程度じゃおさまらん。いっぺん三途見てこい」 椛  「ええっ!?そんなっ!こんな天下の往来で魔法は───!!」 遥一郎「やかましいっ!まったくお前らはいつもいつもいつもいつも人を巻き込んで!!     一度痛い目見なけりゃ解らないんだろ!     他人の苦労の重さを味わえ馬鹿どもぉおおっ!!」 凍弥 「待ったおっさん待ったぁあああっ!!あぁあああああっ!!!」 椛  「きゃあああああああっ!!!」 ……その日、昂風街の一角に巨大な剣が落下し、景色の一つが吹き飛んだとさ。 【ケース648:ルミエール=D=カーナ/旅行くギルガメッシュ】 ぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇ……!! ルミエ「げっふぁ……ごはっ……!おもっ……おもい……!」 元気に飛び出していったまではよかったんだけど、所詮VITマックス野郎。もとい女郎。 途中で力尽き、肩で息をしまくっていた。 ナギー『どうしたのじゃヒロミツ!早く走るのじゃー!』 ルミエ「無茶言うでないわバカモーーーン!     ア、アタシとてヒューマン!体力限界くらいあります!     だから降りて!降りてぇえええっ!!」 麻衣香が背中に、紀裡が麻衣香の腕の中に、シードが背中にナギーが肩に! こんな状態で、乙女のヤワな筋力でここまで走ってきた僕を褒めてください! 褒めたところでもう走らんがなー!! ルミエ「誓いブレイク!STRとVITとAGIにステータスを振り分けてダッシュ!」 麻衣香「わっ!いきなり誓い破った!」 ルミエ「ワハハハハ!!約束や誓いなぞ破るためにあるんじゃい!!」 必要なのは芯!信じる念と書く信念ではなく、芯の念!芯念を持つのだ! アタシは面白おかしくすごせればどうでもいいのさ! ……ていうかジークフリードに乗れば物凄く早かったね。 でもいいのさ、これはピクニックだ。 己の足で動いてこそのピクニックだと適当に思っておこう。 ルミエ「よぅし!ではまずはドワーフの里!こっからだと…………思いっきり東!     途中にロジアーテ鍾乳洞あるけどどうする?」 麻衣香「用無いし、いいんじゃないかな」 ルミエ「OK!」 さあ大地を駆けよう! 疲れたらジークフリードに乗ろう! ピクニックとは楽しむためのもの! 疲れても無理矢理走っていては面白くない! 地を駆けるアタシ、未来へGO! ナギー『───ムッ!?ヒロミツ!ヘンテコなヤツが現れたのじゃ!』 ルミエ「ぬう!?あ、あれは───」 麻衣香「ゴッ……ゴブリン!ゴブリンだよヒロちゃん!」 ルミエ「おお!ナマで見るのは初めて───だったっけ!?まあいいや!     今は貴様と係わってる暇はない!サラバ!」 ゴブリンの横を素通りし、とにかく走る走る走る! ───するとどうだろう、後方からなにやら奇妙な音が…… ゴブリン『ギギギー!!《ズドドドドドド!!!》』 総員  『うえぇええーーーーっ!!!?』 ゴブリンでした。 物凄い速度で疾走するゴブリンが、手の上でボスボスと棍棒を弾ませながら追ってきてる! 追ってきて……追って……え、えぇえええええっ!!? ちょ……ええ!?どんな速さ!? ルミエ「うおおおおおすげぇ!すげぇよこいつ!麻衣香麻衣香!このゴブリンすげぇ!」 麻衣香「あははははははは!!あはっ!あぁああっはははははははは!!!     ヒロちゃんヒロちゃん!ゴブッ……ゴブリンの足!足!!     物凄い速さでバタバタバタバタってあはははははははは!!!」 ルミエ「AGI上げてみよう!STRを削って……ふんぬぉおおおおおおっ!!!」 ズシィッと来る重みに歯を食いしばりながら、足をさらに速めてゆく! するとゴブリンもさらに速くアタシの跡を追って───!! ナギー『おおおおお!!すごいのじゃすごいのじゃー!!足に残像が出ておるぞよ!』 シード『こ、この生き物、足は痛くないのか!?』 ルミエ「よ、よし!それなら───すぅっ───烈風脚!!《バガァッ───!!》」 呼吸法とともに大地を蹴る烈風脚で、一気に距離を取る!! するとどうだろう! ゴブリンはそんな小細工は一切せずに普通に走りで追いついてえぇええっ!!? と、とーさんかーさんじーさんばーさん! 空界は……空界はやっぱり素晴らしいところだったよ! 負けてねぇ!ヒロラインに負けてねぇよ! 麻衣香「ひひゃっ……ひゃっ……ひゃああっ……くくっ……!」 そのあまりの素晴らしさに、腕の中の麻衣香が笑いすぎで窒息寸前です。 足の動きが残像どころの騒ぎじゃない。 ゴブリン『ホガー!!』 シード 『《ボガッ!》はぐっ!?な、なにをするお前!』 しかもこんな速さの中でしっかりと攻撃してきて、バランスも崩さない恐ろしさ! こいつ……できる! 晦たちの記憶で“速い”ってのは知ってたけど、正直ここまでとは思ってもみなかった。 ルミエ「こ、この体力燃え尽きるまで!麻衣香!速度アップの魔法とか頼む!」 麻衣香「ナギちゃん!」 ナギー『シード!』 シード『父上!三人掛けでいきます!どうか思う存分───!』 三人が速度上昇&STR上昇の魔法を我が身にもたらす! それとともにさらに足に力を込める俺よ!彗星となれ! ルミエ 「うおぉおおおおおおおおおおおっ!!!」 ゴブリン『ホガァーーーーッ!!!』 ルミエ 「はっ…………速ぇえええええーーーーーーーーーーっ!!!!」 もはや彼の足は音速を超えている!? 足が大変なことになってる!音!とにかく音がすごい! バオバオ鳴ってる!風切りまくってるよ! みっ……見てみたい!こいつがどれほどまでの速さをこの足で出せるのかッッ!! ルミエ「ジーク!」 跳躍と同時に霊章の中のジークに意思を通し、解放とともに融合してもらう。 そしてそのままジークフリードの上に着地し、ジェット噴射で一気にかっ飛ばす! さあどうだ!?やつは─── ゴブリン『ホガァアーーーッ!!オガァーーーッ!!』 総員  『速ァアアーーーーーッ!!!?』 さすがに息は切らし始めてるが、やっぱりついてきてる! すげぇよゴブリン!こいつの速度はゲームの枠を超えんとする速さだ! ルミエ「…………!」 震えた。 感動的なまでの速さだ……これが大自然が育んだザコモンスターの速度……。 かつての晦、ゼノさんをも近寄らせない究極ともいえる足の速さ、 そして自分よりランクが低いやつには執拗なまでに強気になる低俗っぽさ……。 太った姿からは想像できない華麗な足裁きに、俺達は爆笑を禁じえなかった───!  ゴスバキベキゴシャグシャゴロゴロドシャー!! ゴブリン『ギャァアアアアアア……!!!』 総員  『あ』 コケた。 石かなんかにつまづいたらしく、哀れなくらいの回転をその身に込めて、 雄大な大地を惜しげもなくガドゴドと。 やがて遠ざかってゆく景色の中───その姿が見えなくなるまで、 倒れたままの彼が動くことはなかった。 ───……。 ……。 拝啓、地界で楽しくすごしているであろう皆々様方。 お元気ですか?元気だよね?元気に違いない。 僕は今、露明石が輝く地下洞窟をのんびりと───歩けてない状況です! ナギー『ヒロミツヒロミツ!来たのじゃ来たのじゃ来たのじゃあーーーーっ!!!』 ルミエ「解ってる!解ってるけど足場が悪くて思うように走れないのだぁーーーーっ!!」 ご存知、トラップ名物転がる巨岩に追われ、坂を駆ける俺!じゃなくてアタシ! 細かなトラップを掻い潜り(全て命中した上で)、ついにたどり着いた長ったらしい坂! もうこんな洞窟に坂がある時点で“ああ……”とか思うけど、そこはそれ! このトラップがあるのなら、走らなきゃウソだぜ!? シード『父上!ここはもうあの岩を壊すしか!』 ナギー『なにを言っておるのじゃシード!ここはこの緊張感を楽しむべき場面であろ!』 麻衣香「それって自然の精霊の言葉じゃあ絶対ないよ!?」 ナギー『常識なぞ打ち破るためにあるのじゃ』 ルミエ「よく言いましたナギー!」 紀裡 「ナギちゃんって……」 ともあれAGIマックスで走ればそれはそれで逃げられるかもだが、 言った通り足場が悪い! なにせデコボコ洞窟だから、躓きでもしたら確実にペシャンコだ! STRマックスで受け止めるって方法もあるが、やはりここは逃げるべき! 下の奥にある突き当たりまで、真っ直ぐに! ナギー『ヒロミツ!行き止まりなのじゃ!このままでは潰れるぞよ!?』 ルミエ「大丈夫!なにを隠そう、アタシはトラップブレイクの達人だぁああああっ!!」 とはいっても、晦の記憶のお陰で道を開くスイッチの場所を知ってるってだけだけど。 はいカチっと。  ………………。 ルミエ「あれぇ!?開かない!?ちょ、あれ!?ここだよね!?ここだったよね!?     もしかしてトラップローテーション!?何処の暇人なのここ作った人!!     ───ヒィ!岩が!ヒィ!開かない!!どどどどうすれば助けてぇえええっ!!」 押しても押しても開きやしない! それでも押しましょノックンロール!! でも開かないものは開かな《ベキョッ》ぐおぉああスイッチが壊れたぁああああっ!!! ようこそ力みすぎファイター!スイッチ壊すほど力んでましたか俺! 麻衣香「あ……そうだ!もしかしてあっちの壁のスイッチも押さないと開かないんじゃ!」 ルミエ「あっちって!?ああ!あのヤムベリング氏が押して死に掛けた、     突き出す岩のトラップ!?それとも蛇が落ちてくるロープ!?」 麻衣香「壁のスイッチって言ったでしょ!落ち着いてヒロちゃん!」 ルミエ「だってどうせ間に合わないし!     あっち行ってスイッチ押して戻るなんてことが間に合うもんかー!」 麻衣香「言ってるうちに押して戻れば間に合ったってばぁっ!!ばかぁーーーーっ!!」  ズゴゴゴゴドォッガァアアアンッ!!! 激しい衝突音。 散々と騒ぎ、楽しんだが、結局はトラップ看破には至らず─── 俺達は隅っこにしゃがみこみながら、長い長い安堵の息を吐いた。 ナギー『こっ……こ、こここ……怖くなどなかったぞ……?わわわわしははは……』 ルミエ「ちびるかと思った……」 麻衣香「女の子がそんなこと言わないの!」 紀裡 「なんだかもう……驚きの連続で、どう驚いていいのか解らないよぅ……」 シード『腰が抜けるかと……。壊せば一瞬で終わったのに……』 度重なる衝突の結果なんだろうか。 崩れていた壁の隅で小さく屈めば、なんとかしのげるくらいの領域が存在していた。 はたまた、これに気づかずドタバタすれば死にますよ的なトラップ回避法だったのか。 そればっかりは謎だけど、とりあえず今は助かったことに安堵の息を─── 岩  『安堵する者に告ぐ。この岩は自動的に消滅する。主に爆発で』 総員 『うおぉおおおおおおーーーーーっ!!?』 ───吐く暇もねぇ!! きっちり自爆宣言みたいなことぬかしやがったよこのお岩さん! ルミエ「やばい!かつてない状況だ!僕の胸が高鳴っている!」 麻衣香「瞳を輝かせてないで、するべきことをしようってば!     ヒロちゃん!他にスイッチとかないの!?」 ルミエ「無い!既に探した!     そして向こう側の壁に行こうにも、この岩が邪魔して行けぬわ!」 麻衣香「あ、う……あ、でもちょっと待って。     壁と岩の下の部分からなら、子供くらいなら入れそう」 促されて見てみると、確かに子供一人がくぐれる程度の隙間があった。 岩が丸くて壁が平ら(まあ洞窟だからデコボコだが)なんだから、それも当然だが。 ルミエ「ではナギー!GO!」 ナギー『断るのじゃ!何故ならわしは───大人じゃからの!!』 ルミエ「うおおこんな時にまで意地を張るとはなんという蛮勇さよ!     ならばシード!生まれて一年も経っていない、僕の可愛いシード!」 シード『……お言葉ですが父上、僕はもう10年を生きました。     魔族としては既に成人です』 ルミエ「そうなの!?」 博光びっくり!なに!?魔族っていつからが成人なの!? そりゃ成人の云々なんて種族によって違うんだろうけど、10歳で成人……! いや待ちましょう、考えてもみるんだ僕。 竜族なんかは生まれた瞬間から成人っぽいから、そこにあれこれ言ってもしょうがない。 ていうかなんだかみんな断る理由が凄く低いんだけど!? ルミエ「───ならば紀裡!死にたくなければ行くがいい!」 紀裡 「お父さぁん……もうちょっとやさしい言い方とかしてもいいと思うんだけど……」 ルミエ「紀裡……貴様のそのほそっこくも小さい身体を以って、     この隙間を潜り抜けて生にしがみ付く幽鬼の如くもがきながらスイッチを押せ」 紀裡 「言い方がやさしくなっただけで言葉が悪化してるよ!?」 ルミエ「ええい言ってる場合ではないわ!」 麻衣香「それはさっきのヒロちゃんにも言えたことでしょ!?」 ルミエ「解っててやりました!     危機的状況でベラベラ喋りまくっても間に合う漫画に対抗してみたかったんだ!     とか話してるうちにも岩がなんだか真っ赤に!早くして!早くぅううぅっ!!」 紀裡 「や、やだよぅ!通ってる間に爆発したらわたし死んじゃうよ!?」 ルミエ「じゃあ壁壊そう」 麻衣香「壊せるなら最初からしようよ!!」 ルミエ「馬鹿!僕らがいくら常識破壊の猛者だからといっても、     まずは正攻法でぶつかってみることも忘れちゃならないんだ!     じゃなきゃ、なにかが起こったときに臨機応変に対処できないからね!」 さあ弾けろファフニール! キミのボマーが今、輝くとき! ルミエ「おぉりゃぁああああっ!!!」  ごぎぃいいいいんっ!! ルミエ「………」 振り切った右腕に伝う、ビィイインと痺れる感覚。 …………あの。なにやら金属チックな音が鳴りやがりましたが? ルミエ「なんだこりゃ砕けた岩の下からなにかがダマスクスじゃねぇか!!」  ◆ダマスクス  弾力と耐久力に富む黒い金属と噂のアレ。弾力があるくせに、ちゃんと硬い。  *神冥書房刊:『重ねたゴムや分厚いゴムは硬いという法則』より ルミエ「なんで!?なんでこんな手の込んだ壁作ってるのドワーフ様たちったら!     だ、だがこれも素材!上手く壁を作ったつもりだろうが俺にとっては宝の壁よ!     さあジークフリード!キミに弾力を含ませるための鉱石を僕らの手で!」 岩  『残念、タイムオーバーじゃ』  シュカァッ───!! 総員 『いやぁあああああーーーーーーっ!!!!』 どっかぁーーーーーーん………… ───……。 ……。 シュゥウウ…… ルミエ 「やあ」 ドワーフ『おお客人か、久しぬおっ!?どうしたのだおぬし!      身体から煙など巻き上げて!』 麻衣香 「殴っていい……?ねぇ、殴っていい……?」 爆発ともに空いた空洞を通って少し。 見えてきたドワーフの里に溜め息……とともに煙を吐き出し、とりあえずは挨拶を。 まあね、あんなトラップ仕掛けといて“どうした”もなにもない。 殴りたい気持ち、解るよ僕のハニー。 ……ところでどうしてハニーって言うんだろ。トニーじゃだめなのかな。 いや、さておき。 爆発のために吹き飛んだ僕らは、 既に肩車だの負んぶだの抱っこだのをやめ、普通に歩いていた。 紀裡?もちろん守りましたさ。主に麻衣香が。 ルミエ 「やあ僕ヒューマン!今日はおじいさんにお願いがあってきたんだ!」 ドワーフ「わしにか?ほうほうほっほっほ、なんじゃ、外からの訪問は久しい。      わしに出来ることがあるのならやってみても構わんが。暇だしのう」 ルミエ 「それはよかった!えーと…………この素材で武器を作ってください!」 ごしゃごしゃと、バックパックから次々に素材を出してゆく。 もちろん、刻震竜の素材である。 ドワーフの里に来たのはなんとなく。 けど、思い出したんなら頼んでみるのも悪くない。 ドワーフ「ほっほ……こりゃあ見事な素材じゃのう。これは……ほほう、こりゃあ……!      お、おーいお前らぁ!客人が面白いものを持ってきてくれたぞーい!!」 ニヤリと笑んだドワーフが、里の奥へと声を投げかける。 大きく掘り出された空洞に声が響き渡り、大声を出せば何処に居ようが届くような場所。 それがドワーフの里。 現に、いろいろなところからぞろぞろとドワーフが溢れだし、俺達の前へと集う始末。 さらには刻震竜素材や、使用されなかった他の生物素材やらも見て、目を輝かせている。 ……おまけで、さっき手に入れたダマスクスも。 ドワーフ「これはいい武具が作れそうじゃわい。      それでおぬし、これでなにを作ってほしいんじゃ?剣か、斧か、槍か、篭手か」 ルミエ 「えーーーと《ガシャッ、ゴキンッ!》……この剣に溶け込ませるような武器を。      合成できるならそれが一番いいんだけど───」 ドワーフ「ほぉっ、これは見事な剣じゃなぁ……!これは面白そうじゃわい!      ……と、すまんがおぬし。      サウザーントレントに行って、一人ドワーフを連れてきてくれんか。      長老で通っとるドワーフが一人おるでの。      剣を鍛つならば、やつは欠かせん。暗い場所は性に合わんと、      サウザーントレントの掘っ立て小屋に帰ってしもうたんでなぁ」 ルミエ 「長老……あ〜あ、あの人か」 確か……晦の屠竜剣を鍛えたドワーフだよな。 名前知らんけど。 ドワーフ「これを鍛えるのはなかなか骨が折れそうじゃがな、楽しみではある。      合成することはさすがに出来んが……方法がないわけでもない。      まあ今はともかく、長老を連れてきてくれ」 ルミエ 「OK!では行ってくる!貴様らはここの見学でもしていてくれ!」 ナギー 『甘いのじゃ!わしももちろん行くのじゃー!そう約束したからの!』 ルミエ 「ぬう!契約に縛られるとはこのことか!だが構わんついてまいれ!」 ナギー 『サーイェッサー!!』 再びドッキングしてGO! ……の前に、ドワーフに“勝手口かなんかありませんか?”と訊ね、 ものすげぇ簡単な出入り口を教えてもらうに至り…… 全速力でサウザーントレントを目指しながら、僕の瞳にはホロリと涙が……ち、違うよ!? 泣いてなんかないわよ!べべべつに気にしてなんかないんだからっ! 最初からこっちに行けばよかったとか、 もっとよく道を探せばよかっただなんて思ってないんだから! ……。 ザガガガガガガガガッ─── ルミエ「ほはっ……はっ……はあっ……!」 ナギー『……ゴブリン、居なくなっておったの……』 ルミエ「うん……」 息を切らしながら北西へと走り……ようやくサウザーントレントへ到着。 途中で探してみたが、ゴブリンの姿は無く…… きっとまたどこかを元気に走っているのだろう、というカタチで一応の決着を迎えた。 そんなわけでサウザーントレント。 集落がある場所は解ってるから、こうして話しながらも走ってるうちにすぐ着ける。 つーか、もう見えてきた。 ルミエ「はっ……は、は───たのもう!」 叫びながらも光の速さで疾駆疾駆疾ィイイイイッ駆!! 鍛冶工房らしき場所に乗り込み、なんじゃい……と顔を出した長老をレンタベイビー! 長老 「ぬおお!?なんじゃおぬしはぁっ!!」 ルミエ「正義の味方です。この世の善を破壊しに来ました」 長老 「それはつまり悪じゃろ!?」 ルミエ「違う!正義って名前の存在が悪の大幹部なんだ!で、僕そいつの味方!     つまり正義の味方!ちなみに正義くんの存在はフィクションでありもしかしたら実     在する個人団体事件などなどとはなんらいっさいなにが起きようとも関係ありませ     んのであしからず!敬具!俺!そして今貴様が必要とされているんだ!」 長老 「ワシになんの用があるという!」 ルミエ「武器を鍛ってください!     それを頼んだらドワーフの里のみんなが貴様を連れてこいと!     だから必要な鍛冶の道具があったら持ってきてください」 長老 「…………なんじゃい、つまり鍛冶の依頼か」 ルミエ「はい。頼まれてくれます?」 ナギー『是非やるのじゃ。きっと楽しいのじゃ〜』 小脇にドワーフ、肩にナギーな状態で返答を持つ僕。 しかし長老さんは考えるそぶりのままに動こうとしない。 長老 「作る武器は?」 ルミエ「剣」 長老 「素材は?」 ルミエ「次元竜素材。時を操る竜だ」 長老 「ふむ……ふむふむ。して、どういった能力の武器を求める」 ルミエ「武器だけの力で時空転移できるようなのがいいです」 長老 「ほほう……それはまた、フフフ……腕が鳴りそうな話じゃて」 ルミエ「じゃあ頼まれてくれる!?」 長老 「ごめんじゃな。そもそも材料がどれほどあるのかも、     どういった状態なのかも解らん。それを確かめるまではな」 ぬ、ぬうう……さすがにそう簡単には頷いてはくれんか。 ならばいい!連れていくまでよ!! ルミエ「じゃあ鍛えるとして!持っていくものはないか!?」 長老 「ふむ……いや待て、一つある。手に馴染んだ槌でないと、どうもな」 ルミエ「ならばGO!!」 長老 「むおおおおお!!?」 抱えたままに鍛冶場へGO! そして手当たり次第に槌を取って、確認を取ってからさらにGO! 待ってて僕のウェポン……!今、今全てが始まる!多分! ───……。 ……。 ザザァッ! ルミエ「ただいま僕のキミタチ!」 麻衣香「わっ……速かったね」 ドワーフの里に戻ると、一番に麻衣香が迎えてくれた。 ああ、こんな何気ないところに夫婦の絆を感じる。 だからありがとうを伝えると、解ってない風情で首を傾げられました。 いいんだ、感謝することに意味があるんだから。 長老  「おうおう、なんじゃい雁首そろえて」 ドワーフ「きおったのう、長老。いい素材を見せてもらったんでな、      おぬしにも見てもらおうと思っただけのことじゃよ」 長老  「うん……?ほほう、これは───」 長老殿も素材を見るや、ニヤリと笑んでくれた。 どうやら御めがねにかなったらしい……素敵だ。 あとは腕を奮ってくれるかだが─── 長老 「おい若いの、お前さんにひとつ頼みがある」 ルミエ「え?俺?じゃなくてあたし?」 長老 「そうじゃ。ワシは手抜きが大嫌いでな。     お前さん、武器だけで時空転移が出来るものが欲しいと言ったな?     その骨組みはこの素材だけでも十分に出来るが、それだけでは弱い。     そこでじゃ。おぬしに対極の剣、     アイスブランドとフレアブランドを手に入れてきてもらいたい」 ルミエ「…………なにそれ」 フレアブランド?知らねー。 いや、知ってはいるけどこの世界にあるの? 長老 「なに、属性を多く富んだものならばなんでもいいのじゃがな。     生憎とここにそんなものはない」 ルミエ「属性!ならばこれをどうぞ」 属性と聞いてピンときたあたしは、バックパックを漁って精霊武具をドスンと解放! 全属性を極限まで含んだそれらを見て、ドワーフの皆様は言葉をなくしてました。 長老 「こ、これはたまげた……!     ここに置いてあるこの剣もじゃが、よもやこんな……」 ルミエ「引き受けてくださいますか?」 長老 「も、もちろんじゃわい!     だが───ここまでの武具ともなると、槌ではどうにもならん。     仕上げはエルフに頼むことになるだろうな。     そこでじゃ。レファルドまで行き、     リヴァイアからエルフの里への通行許可を得てきてはくれんか」 ルミエ「………」 ……あ、あれ? なんか…………あれぇ? なんか俺、あっち行ったりこっち行ったりで……あれぇ? い、いや考えるな博光!じゃなかったルミエール! 武器のためならエンヤコラ! ええと、リヴァ先生は地界のどっかに居るからレファルドに行くのは無しとして。 ルミエ「フレアブランドとアイスブランドって素晴らしい?」 長老 「いや、既にここに氷と炎の武器があるから必要ない。     持って来たところで+にはならん」 ルミエ「そ、そうですか」 残念……武器ってだけで心が弾んだ僕のハートの行き先は何処? だが……ククク、そんな武器があるのなら、たとえ意味が無くても欲しい。 エジェクトすれば普通に振れるわけだし……ねぇ? ルミエ「フレアブランドとアイスブランドって、     ロプロスト砂漠とイーディンジルド氷河にあるの?」 長老 「そうじゃが……まさか取りに行く気か?」 ルミエ「うむ!たくさんの武器を一つの武器に封じ込める……武器マニアなら当然する!     それが出来る条件が揃ってる僕はきっと幸せものなのさ!     だからどんな弱い武器でも合成させていきたいです!     なぜなら───その方が格好いいからだ!!」 リヴァ先生に報告書……じゃなくて通行許可証を作らせて、その間に武器探索! それからリヴァ先生から通行許可証を頂に戻って、ここに戻ってきて、エルフの里へ! 嗚呼!心が燃える!ありがとうファンタジー! 僕、ロマンを持って産まれることが出来て本当によかった! ルミエ「よしいくぞナギー!僕らの旅は───始まったばかりだ!」 ナギー『次回作にご期待なのじゃー!』 打ち切られた漫画の主人公のように僕は駆け出した。 相変わらずナギーが肩車状態だったけど、 もはや定番で心地のよい重みになったそれに笑みをこぼしながら。 さあいこう……未来を……この手に掴むために!  …………ほんと打ち切りっぽいな、おい。 Next Menu back