───ロマンスグレイ/炎のオールヌーダーとの邂逅───
【ケース649:ルミエール=D=カーナ/ルブランドラえもんヴァリエール】 ドヴァーーーン!! ルミエ「宇宙人(グレイ)とロマンチックに出会いたい……ルミエールです《ぬぎっ》」 ナギー『戻ったのじゃー!これ!茶じゃ!茶を用意せよ!』 …………。 ルミエ「あれ?誰もいねー……」 ナギー『……はて?』 レバイアタン……もとい、リヴァイアさんに通行許可証を用意していただくために、 地界の晦ルームに戻った僕ら。 だけどそこには誰も居ませんでした。 む……妙ぞ。こはいかなることか……? ハッ!も、もしや神隠し!?屋敷のみんなが神隠しに!? ルミエ「……、……あ、もしもしリヴァイアさん?僕博光」 声  『さんづけで呼ぶなっ!!』 思考とはべつにtellをかけてみたらあっさり繋がりました。 神隠し説は無しです。 声  『───待て、中井出?それにしては声が───』 ルミエ「ほら、こういうのって遠いと音声が伝わりにくいから」 声  『む……そうかもしれないが。まあいい、用件があるなら言え。     地界も久しぶりだからな、もっと見ておきたい。     今、レイルを連れて歩き回ってるところだ。     用件がないなら集中の邪魔になるから切るぞ』 ルミエ「“訊いてもいないところまでの説明をありがとう”をあなたに。     実は空界のほうでいろいろあって、     エルフの里に行かなければならなくなりまして。     そのための通行許可証を作ってもらいたいのですよ」 声  『…………お前は。人がせっかくいい気分になっているところに水を差すな』 ルミエ「油だから大丈夫。潤滑油になるぜ?」 ……呆れた溜め息がtell越しに届きました。 ルミエ「そんなわけだから許可証ちょーだい?」 声  『それは。すぐに必要なものなのか?』 ルミエ「今すぐにでも」 声  『解った、待っていろ』 ピッ、と回線が切れる。 と思ったら、虚空に転移式が浮かび上がり、そこから出てくるリヴァイアさん。 ルミエ「ウワァゥ」 リヴァ「おかしな声を出すな。……で、誰なんだお前は」 ルミエ「ルミエール!《ビッシィイッ!!》」 ナギー『ヒロミツなのじゃ』 リヴァ「中井出?………ああ、まあいい。この世界じゃこんなこと、茶飯事なのだろうさ」 あ……納得しちゃうんだ……。 ルミエ「けどよかったのかいホイホイ転移してきて。     楽しんでいた最中だったんだろう?」 リヴァ「面白味のない空界暮らしには飽き飽きしていたがな。     わたしは王としての責務を放棄したつもりはない。     仕事がないのはつまらないが、そういうことなら任せておけ。     エルフの里への通行許可証だったな。すぐに用意するから少し待て」 ルミエ「………」 なんというか、嬉しそうな顔だった。 この人、これで結構王の仕事好きなのかな。 ……。 さて、空界・レファルド皇国王室大広間。 その先にあるプライベートルームまで案内された僕は、 ナギーを肩車した状態でトーテムポールをしていた。 リヴァ「なにをやってるんだお前らは……」 そこへ、妙なプレートに変わった装飾のペンで名前を書いたものを、 僕に渡すリヴァイアさんが来訪。 といってもまあ同じ部屋に居たわけだけど。 リヴァ「それをエルフの里の門番に見せるといい。     ルールを守った上でなら通してくれるだろう」 ルミエ「ルール?」 リヴァ「武器を取り出さないこと。暴力を振るわないこと。     ともかく攻撃的なことはダメだ」 ルミエ「任せとけ!こう見えても俺は!平和主義の達人!」 リヴァ「もちろん、軽い冗談やからかいも厳禁だ」 ルミエ「え、えぇええ……?」 リヴァ「どうしてそこで心底残念そうな顔をする」 だって……エルフをからかえるなんて、 世に生を受けてから死に至るまで、何回できるか…… でもそのために空界大戦争を勃発させるわけにもさすがにいかない。 俺だけならまだしも、誰かを巻き込むのはなぁ。 それが原中だったら全然平気なんだけど。 手渡された緑と銀が混ざった綺麗なプレートを見下ろし、そんなことを考えてみる。 ……っと、急がないとな。 ルミエ「謝謝!謝謝リヴァな人!僕、これで時空剣技覚えられそうだよ!」 リヴァ「リ……リヴァな人?」 リヴァイアさんの戸惑いを見るのもほどほどに走りだす。 ジークフリードがあればジェットでズギャッと速かったんだが、 生憎とドワーフたちに渡したままだ。 だから───しまった!考えてみりゃ皇帝竜の槌じゃなきゃアレ鍛てないよ! ど、どうする!?霊章転移で───い、いや、空界の技師の技術を信じよう! きっと大丈夫だと勝手に信じておこう! さあ!次はロプロスト砂漠!orイーディンジルド氷河! ルミエ「ナギー?熱いのと冷たいの、どっちが先がいい?」 ナギー『熱いほうなのじゃ!』 ルミエ「貴様の幽鬼に乾杯!」 ナギー『待つのじゃヒロミツ!“ゆうき”にアヤカシ的な雰囲気を感じたのじゃー!』 細かいことは気にしません! 今日という日を無駄にしないためにもまっすぐGO! でもさすがに息切れてきました! ヒロラインパワーって偉大だねほんと!疲れないってのがこうまでありがたかったとは! うおお唸れあたしの足!スタミナなんてクソ食らえだ! ……。 ヂリヂリヂリヂリ…………!! ルミエ「やぶはっ……ぶっは……がはっ……はがぁーー!!はがぁーーっ!!」 無理!いや無理……無理、無理っ……無理……! なんかもう砂漠地帯に着く前からギリギリのスタミナ状況だったけど、もういい加減無理! ここまでスロースターター気取って、 この場所から目的地までを全力疾走すりゃよかった……! こんな灼熱地獄の中でスタミナ切れって……シャレにならない……! 若人的に言うと“ありえぬぅえええ〜〜〜?”って感じ? ……若人ってあんなんでいいんかなぁ。 ルミエ「どぅぃゃ〜〜〜ははは〜〜〜?ありえぬぇええ〜〜〜っ!     マァジヤバくぬぇえ〜〜〜?この暑さぁあああ〜〜〜〜ンヌ」 ナギー『ヒロミツ、殴ってもいいかの?』 ルミエ「脈絡無しになんですかいきなり!《バゴォ!》ヘギュ!!」 とりあえず殴られました。 などという悶着も、仕返しもせずに終わる。 何故って、ほんともうスタミナが大変なことになってるから。 こういうのってVITでなんとかならないかな……ほら、バイタリティだし。 ……関係ない?いや!実行の価値あり! ルミエ「たくさん飲ませるとぐんぐん育つ!リポビタンッ!デー!」 VITマックス発動!! さあどうだ俺のスタミナよ!ごめんなさい全然ダメですほんとすいません……。 ルミエ「───ハッ!そうだ!私にはアレがあった!」 火闇霊章───発動! 我が全身を霊章で埋め尽くし、そこから火闇を溢れ出させる! もちろんパーティー編成中であり、敵と見做していないナギーは燃えたりしません。 するとどうだろう。 刻震竜バトルでマグマに対してそうであったように、 俺の周りから暑さが消えていくじゃないか! ……代わりにナギーが滅茶苦茶熱そうだけど。 じゃあこういう時は───しまった!“バリアチェンジ/氷”をしたくても武器が無い! だったら“粉塵/氷”を───しまった!武器がない! ルミエ「…………俺って……」 つくづく武具がなけりゃなんにも出来ない自分が悲しくなってきました……。 え、えーと、じゃあ霊章/シューターで、 どっかの出っ張りにベルセルクハンド引っ掛けて一気に………… 砂漠にそんなもんあるもんかね。 ああっ……ああっ、もうっ!俺ってやつは俺ってやつはぁあーーーーっ!! いや待て俺!じゃなくてあたし! なにもないから人間なんだ!僕はこの道に誇りじゃなくて埃を積んでる筈だろう!? 塵も積もれば大和撫子!じゃなくて山となる! うんそれはいい!それはいいよ!?いいんだけどさぁあ!! ルミエ「フレアブランドって何処にあるのさぁああああああっ!!!」 ナギー『わしが知るわけなかろうがーーーーっ!!』 やっぱり馬鹿でした! きっちり場所を訊いておけばよかった! 漠然とロプロスト砂漠にあるって知ってたところで、 この広さの中で一つの剣を探すのって馬鹿ですよ馬鹿! 骨だらけのピラミッドで黄金の爪探すより馬鹿だよ! だが探す!武器を求める男のロマンはドリルに魂を焦がす男のロマンにも負けん!! ていうか熱い!暑いじゃなくて熱い!足焼けるよこれ! ドンナーが熱を持ち始めました! あ、足に霊章集中!発火!───…………ふう、危なかったぜ……! ルミエ「ムンム〜〜〜ン♪ム〜レム〜レわっきのっした〜〜〜♪     ムンムンム〜レム〜レ胸の谷〜♪《ぼかっ!》OUCH!」 ナギー『妙な歌を歌うでないのじゃ!』 ルミエ「妙かなぁ!?胸の谷ってだけで、     敏感に反応する方が多感なお年頃ってだけだと思うけどなぁ!」 大体今女の僕が歌って支障がありますか!?ええありますねごめんなさい。 ともかくこの広大な外宇宙……ではなく砂漠から一本の剣を探す。 これは……(ヘヴィ)だぜ? だが探す。 とりあえず目星は───炎の精霊の石碑だな。 あれの近くにあるに違いねー。 よし!そうと決まれば悪こそ急げ! 剣への手がかりがようやく掴めたぜ〜〜〜〜〜〜っ!! ルミエ「…………」 ナギー『?』 で…………その石碑って……何処にあるんだろうな…………。 ───……。 ……。 ルミエ「自然よ───僕に道を教えておくれ!?」 ナギー『草木の一本もないのじゃ……』 ……。 ルミエ「秘奥義当てずっぽう!ムムムム〜〜〜ムムム……ハイ!目的地は南東だ!」 ナギー『南東はさっき走ってきた場所であろ!』 ……。 ルミエ「ミミズモンスターゲェーーーーーーーット!!!     テメェエエエエエ!!フレアブランドが何処にあるかをイ゙ェアアアア!!」 ナギー『ヒロミツ!言葉になっておらぬのじゃ!』 ルミエ「これは博光うっかり!何処にあるかを言えやぁああと言う筈が!」 ミミズ『フレアブランドならば炎の石碑の下に埋まっておるよ。     それでは失礼。私はこれでも忙しいのでね。フオオハハハハ……!!』 やたらと紳士的な巨大ミミズが、俺の手を離れてうぞうぞと砂漠に消えてゆく。 ルミエ「…………ギルティギアのスレイヤーみたいな声のミミズだった……」 ナギー『なにか聞いたのかの?』 ルミエ「うん」 ファフニールスキルが僕にミミズの言葉を教えてくれました。 さて……って結局石碑の場所聞いてないよ俺!じゃなくてあたし! ……。 ルミエ「…………喉渇いた」 ナギー『わしもなのじゃー……』 ……。 ルミエ「広大な外宇宙は、百億もの人間と、様々な夢を受け止め……     その上で……さらに、無限の輝きを見せ付けている。     セクター……ガ、ガガガンママママ……」 ナギー『おあしすじゃー!おあしすがみえるのじゃー!』 ……。 ルミエ「……僕、宇宙人だったんだ……」 ナギー『ポピーじゃ!ポピーが空を泳いでおるのじゃー!』 ……。 ルミエ「あ、あれ……?きみはおうムル?おうムルだよね!?ねぇ!!」 ナギー『な、なんじゃとぉお……エアインチョコとはそんなにも……』 ……。 ルミエ「…………」 ナギー『…………』 ……。 …………。 ───…………見つからねぇ……。 ていうかね……もうね……頭とか体とか限界で……。 あの……ジークフリード戻していい……? それでね、それでね、ランドグリーズ解放してね、ジークフリートに身を包んでね、 男爵さまになってこの砂漠を見渡すの。 そしたらほら、石碑なんて一発で見つかってOWEEEE(オヴェエエエ)…… ルミエ「う、うぁああぅ……まずい、かな……脱水症状かも……」 ナギー『ヒロミツ……ヒロミツ……苦しいのじゃああ……』 ぬ、ぬう……ナギーが……ナギーが苦しんでおるわ……! いかんぞこれは……このままでは俺達が危ない……主に俺が。 動けるか我が体!踏ん張り、進み、剣を回収してなお動けるか俺の体!   うん、それ無理 ひどくあっさりした返答でした。 うん、そうだよね。僕も無理だって思うよ。 でもね、無理だと死んじゃうの。 今だけ英雄になってくれませんか僕の身体。 いや無理、もう歩けません。 立ち上がるという行為はもっと楽だと……そう思ってた時期が……俺にもありました。 英雄って立派だ……こんな状況でも立ち上がるんだろ……? 足に力入れても、震えるだけで立てやしないよ。 身体の中から動くためのなにかが枯れていくのを感じる……ああやばいねこれ。 ルミエ「……ジ、ジ〜〜〜ク……」 もう贅沢言ってられません。 なにを指して贅沢って喩えるのかは自分でも解らないけど。 霊章転移でジークを霊章に届けさせ、取り出すと即座に巨大化&その状態で水キャリバー! 溺れるくらいの水を噴射し、 砂漠の大地を潤してしまいましょうってくらいに粒の大きい雨を降らせた。 もちろんそうしてからは普通サイズに戻り、雨を身に浴びる。 ルミエ「恵みの雨だちょーーーーっ!!」 ナギー『人民の夜明けなのじゃーーーっ!!』 粒の大きな雨を、大口空けて迎え入れる。 だが悲しいかな、あたしたちは脱水症状かもしれない状態。 摂ったばかりの水分を身体が受付やがらねぇそれは、 あたしたちに嘔吐子供ソフトの道を歩ませんと、胃と食道の躍動を開始する! だが耐える! ここで耐えずに戻せば、胃がしっかりと水を吸収してくれないのだ。 ルミエ「うぐっ……ナ、ナギー……絶対に戻すなよ……!     胃が苦しがるだろうが、これは今まで水分を摂ってやらなかった……そう!     いわば胃の反抗期!これを乗り切らずして、真の肉体の宿主とは呼べぬ!     五体全て是掌握せり!そんな猛者であれ!」 ナギー『う、うげぇぅう……!わ、わかった、の、じゃ……あ……』 かなり苦しそうなナギーを見ると、さすがに心がチクリと痛みます。 もっと早くジークフリードに頼ればよかったのにと。 だから苦しそうにするナギーを後ろからきゅっと抱き締め、その状態で集気法を。 大気を流れるマナがあたしたちの中に流れてくるのを感じる。 するとどうだろう、気だるさも気持ち悪さも薄れてゆき、 あとにはびしょぬれになったあたしとナギーだけが残された。 ナギーは、自分の身体に回されたあたしの腕に自分の手を重ね、 あたしはあたしで大きく息を吸って、吐いて、最後の気だるさを吐息にして捨てた。 ナギー『……うむ。やはりヒロミツはわしが苦しい時には助けてくれるのじゃー』 ルミエ「そんな……立派なもんじゃないんだけどな」 頭を引っ掻く。 それでナギーを抱き締めていた腕は解放され、もう片方の手で俺は溜め息をかみ殺した。 “助け”を求められるのは好きじゃない。 いざって時に助けられないのが辛いからだ。 …………。 思い浮かぶ光景が目に焼きついて離れない。 ……俺は、いったい何処に向かってるんだろうな……ルドラ。 運命は俺みたいな人間の手で曲げれるものだろうか。 それとも、たった一人の人間がどう足掻いたところで、 なにも変えることの出来ない磐石なものなのだろうか。 あの夢が俺の未来の終着で、変えられないものなのだとしたら───俺は…… ルミエ「……なぁナギー」 ナギー『む?なんじゃ?ヒロミツ』 俺を見上げる瞳と俺の視線がぶつかる。 笑みのままの表情はまるっきり俺を信用した風情で、 多少のことがあっても文句は言うけど嫌ったりはしない───そう、信頼が存在していた。 こいつは……いつか俺が居なくなるって知ったら、どんな顔をするんだろう。 一緒に居られなくなるって知ったら、どんな言葉を口にするんだろう。 娘の紀裡のことでさえ気にならなかったことが次々と浮かんでくる。 結局俺は───なんのかんのと冒険をともにしていくうちに、 このちっこい精霊さんのことが気にかかってしょうがなかったのだ。 もちろん、娘的な意味で。 ……まあ、はは、なにせ実の娘よりもかまってやった存在だったわけだ。 実の娘よりもよっぽど一緒に居た気さえする。 一緒に笑って一緒に叫んで……ヒロラインでの思い出の大半に、ナギーとの思い出がある。 ルミエ「もしさ、一緒に居られなくなったらどうする?」 ナギー『ふむ?突然おかしなことを言い出すの、ヒロミツは。     居られなくなったのなら居ればいいのじゃ。常識破壊こそが常なのじゃからの』 ルミエ「いや。その常識破壊も通用しないくらいの……そう。     一人の人間の我が儘程度じゃ通らない問題に直面したらさ」 ナギー『…………』 雨が降る。 まるで、あの景色のように。 世界は狭まっていないけれど、雨にはあまり打たれたくはない。 そんな思いが通じたのか、キャリバーの雨はすぐにやみ─── だけど、濡れた身体を照らしつける光が熱を持ってもなお、 ナギーは俺を見上げたまま動かない。 …………やがて、その小さな手が俺の服を掴むまで。 ナギー『い……居なくなる、のかの……?』 さっきまでとは打って変わった、とても心細そうな声だった。 ああそうだ、居なくなる。 ずっと一緒に居ると言ったところで、それはウソになる。 ルミエ「うむ……じ、実はこのルミエールは月からの使者でな。     一定時期を越えると月に帰らなくてはならなく───」 ナギー『死んでおるのか!?』 ルミエ「違うよ!死者じゃないよ!ちょ───なに言ってるのいきなり!     ああっ!待って!行かないでシリアス空間!先に壊したのあたしだけど!」 漫画の表現でなら確実に点描が逃げてゆくシーンだった。 ……まあ、そのほうが“らしい”か。 ルミエ「ナギーよ……貴様に言っておくことがある」 ナギー『な、なんじゃ?もしややはりヒロミツは指先でつつかれると』 ルミエ「腐らないよ!いいからお聞き!……これよりしばらくしたのち、     我がアドミラルスパワーは底を尽きる。     それはつまり、死んでしまえば一貫の終わりという時代が来るのだ」 ナギー『な……なんじゃと!?』 ルミエ「だから、これは命令や号令じゃない……願いだ。     どうか、どんな局面に立とうとも、己の命を諦めないでくれ」 ナギー『ヒロミツ……』 ルミエ「俺はその時、貴様を助けてやれるかが解らん。     故に、常に護身を心がけるのだ。     貴様はこの博光があの世界で出会った数少なき猛者……     いや、それを抜きにしても、貴様が死ぬ場面なぞ見たくないのだ」 ナギー『…………』 ルミエ「もちろん、貴様が危機の時に……俺が既に居なくなっている可能性もある。     だから……強くなれ、ナギーよ。己の未来を築けるほどの猛者となれ!     この博光は貴様が思うほど強くなどないのだ……故に己の身は己で守れるように!     これは願いである!貴様の未来に夢と希望と栄えがあらんことを願うもの!     だから指先一つで天地崩壊できるほど強くなってください」 ナギー『無茶を言うでないのじゃー!!』 ルミエ「無茶かなぁ!?     限界だと思ってる物事の先に行けたら出来るんじゃないかなぁ!?」 ちょっとしんみりし始めた空気をあえてブチ破りました。 言いたいことは言った。 理解はしてほしいけど、無理に押し付けようとはしなかった。 死……かぁ。 どんなんなんだろうなぁ……死ぬって。 幽霊になれるんだろうか。 それとも、ヒロラインの中で魂が消滅する俺は、幽霊にすら───……きっと、なれない。 あ〜あ……晦には愚痴はこぼさないようにしようって言っておきながら、 頭ン中愚痴だらけだよ俺。 ではそんな思考を頭から消し去りましょう。 あ、ワン・トゥ・スゥリャッ!! ルミエ「よし!ではこの話はここまで!無茶だと思うならそれでもいい!     だが強くなる努力だけは忘れるな!」 ナギー『ヒロミツはどうなのじゃ?修行なぞしてもおらぬじゃろ』 ルミエ「え?俺?……じゃなくて、あたしはいいのさ。     何故って、レベルと武器だけで世界を救う村人を目指してるんだから!」 昔のゲームはそりゃあ最強でした。 だって強い武器を手にモンスターと戦うだけで、魔王と戦う力を得れるんですから。 あ、でもこれでもし、 敵さんが努力家の魔王だったら一生かかってもきっと追いつけなかったね。 ナギー『それでは……ヒロミツこそが死んでしまうのじゃ』 ルミエ「そうなんだよなぁ〜……決まってる死ってのは怖いもんでさ。     一日経つたび、心臓がこう……なぁ?初めて働き口探した時もこんな感じだった。     もちろん俺は嬉しかったんだけどさ。……やっとじーさんに恩返しできる、って。     でも今回のはただ死に向かうだけで……ああいや違うか。     抗うって決めたんだから、俺が向かう道は希望が溢れる未来だぜ!」 ナギー『……勝手に死ぬことは許さんのじゃ。     ヒロミツは、ヒロミツはずっとわしの傍におればよいのじゃ』 ルミエ「フン断る」 ナギー『《ズガァア〜〜〜〜〜ン!!》……!……!!』 なんとなく断ってみたら物凄い顔された。 だがフリーマンを自称したい僕にとって、ずっと誰かの傍に〜っていうのはつまらんのだ。 だから約束なぞしてやらん。したとしてもすぐに反故して逃げ出してくれる。 ルミエ「このルミエールは誰かに縛られたまま生きることを望まぬ。     傍に居ればいいと言われて頷くこのあたしか。     一緒に馬鹿やって楽しむのはいいが、傍に居るというイントネーションはどうも、     一つの場所に留まるという意味を受け取ってしまう。だから断る」 ナギー『な、ならばわしがヒロミツの傍に居るのじゃ!それならよかろ!?』 ルミエ「ククク……付いてこれるかな?     このルミエールは付いて来れぬ者は容赦なく捨ててゆくぜ?」 ナギー『望むところなのじゃ!』 ルミエ「………《スッ》」 ナギー『───《ぐっ》』 差し出した手をグッと掴んでくる。 そんなナギーを空中に投げ捨ててナッパさんにしようかとか思ったが、却下した。 じゃ、そろそろ行きましょ。いい加減熱さがぶり返してきた。 ルミエ「あ、そうだ。超巨大化発動!《マキィンッ♪どごぉおおんっ!!》」 いいことを考えた。 まず超巨大化で天を衝くほど巨大に!……ただの希望的な言葉だけど。 そんでもってその状態でテオスラッシャーで氷の粉塵を撒くのです。 デカいだけ無駄に規模が大きくなるけど、そこが狙い目さ。 ルミエ「()(ヒョオ)ォオオオオオオオオオオイ!!!」 途端、広大な砂漠から暑さというものが一気に陰を潜める。 お陰で涼しいという位をあっさりすっ飛ばし、 寒いという段階……まで通り、寒すぎる状態に。 ルミエ「《ガタガタガタガタガタ……!!》寒いサム……イ……!」 声  『なにをしているのじゃーーーっ!!寒すぎて動く気にもなれんのじゃーーーっ!』 はうあ!?何処からかナギーの声が聞こえる! 何処!?彼女は何処!?巨大になりすぎて自分以外がよく見えるけど見えない! ど、どこだぁあセバスチャァアアーーーン!! ……小さくなればいいね、うん。 ルミエ「《ゴワゴワゴワ……》キノコを食べずとも巨大化できる……ルミエールです」 ナギー『妙なポーズを取ってないでなんとかするのじゃ!     寒いにもほどがあるのじゃ、じゃじゃじゃ……!!』 ルミエ「大丈夫!何を隠そう俺はダッシュの達人だぁああああああっ!!!     寒いなら動くんだナギー!そしたら滲み出た汗が僕らを凍てつかせてくれます」 ナギー『それは問題の解決になっておらんのじゃー!!』 ルミエ「ええい構わん!さあ行くぞナギー!」 当ても解らずレッツ&ゴー!! あっちに違いねーと思った方向へとダッシュし、遅ればせながら走り出すナギーとともに、 僕は新たなる青春と空想の夕日へと向かい始めたのだった……! ……。 それからほどなくして─── ルミエ「ア、アア〜〜ッ!」 ナギー『こ、これは〜〜〜〜っ!』 このクソ寒い中で、今尚熱気を放ち続けている場所を発見した。 人の本能というものです。 自然とヌクい場所を目指して走っていたらしい僕らの体は、 自分の意思とは関係なしにここへと辿り着いていたのだっ……! で、目の前には赤いオーラを放っている石碑……サラマンダーの石碑です。 ルミエ「……ゴクッ!」 ナギー『ヒ、ヒロミツ?ここに目的のものがあるのかの』 ルミエ「きっとそうさ!じゃあひとまずこの石碑をブッ壊して───」 声  『───おやめなさい!』 ルミエ「断る!!」 声  『えぇえええっ!!?』 ジークフリードを振りかざした途端に聞こえた声に即答で返してみた。 しこたま驚かれたらしい…… 次の瞬間には戸惑いを顔に浮かべた火で人型象られた裸のねーちゃんが……! 炎女 『私の名はレイ《ベパァン!!》はぶぅい!?』 ルミエ「恥をお知りなさいこの痴女が!!」 もちろん速攻ビンタ! 同じ女としてこんな格好は許しません! なんという恥知らず!どうして精霊とか妖精ってこうなんでしょう! まず名乗り出たのは素晴らしいが、炎で象ろうが雪や氷で象ろうが裸は裸! 人の勝手な主観だと罵られようがとりあえずビンタ! ええもうビンタ!かかってこいオラァ!! ナギー『わぁあ!なにをしておるのじゃヒロミツ!』 ルミエ「The・ビンタ!この炎のオールヌーダーめ!こんなところでなにをしている!」 炎女 『ほ、ほのおのおーるぬーだー……!?言うにことかいてなんてことを……!     そんなものは人間の勝手な主観であって我々妖精族には関係がありません!』 ルミエ「おーーっ!?本当だなこのヤロー!     だったらこのキャメラで貴様のヌードを激写してやる!     そして道行く人に見せびらかしてくれるわ!     それでも恥ずかしくもなくこっちの勝手な主観だというのなら、     このルミエールも素直に謝り殴られてくれるわぁーーーーっ!!」 炎女 『な、なんですって!?《カシュンカシュン!》ちょ───やめなさい!     私は───や、やめっ……いやぁああーーーーーーっ!!』 ……。 で…… 炎女 『ひぐっ……うっく……うぇええ……!     ごめんなさい……やめて……人に見せたりしないでぇええ……!』 今では炎で布を象って自分の裸体を隠している彼女は、 バレーでくじけた少女のような座り方(?)をしながら、見事に泣いてしまわれた……。 ルミエ「泣くくらいなら最初からその姿をしてりゃあいいんだよクズが」 ナギー『ほんに鬼じゃの……』 こちらの主観を一方的にぶつけまくるのはひでぇとは思うけど、 そういうこともしなけりゃ話にならないし。 だから言いましょう。裸はいけません裸は。 妖精たちにはそれが当然でも、人の感性からすればそれはポッと赤らむ裸体なわけで。 だから本当に恥ずかしくないのかを試させていただきました。素直にごめんなさい。 ルミエ「それで、貴様はこんなところで真っ裸でなにをしていたの?」 ナギー『裸という概念が無かったのじゃからそっとしておくのじゃ……』 炎女 『い、いえ……もう大丈夫です……。では気を取り直して。     私はこの炎の石碑を守護する妖精。     妖精だからといってフェアリーだけをイメージするのは勘弁してくださいましね』 おお……なるほど、女神転生とかの悪魔たちと似たようなもんか。 ルミエ「うむ、つまり貴様は     この石碑をサラマンドラさんの言いつけで守ってたわけか。裸で」 炎女 『ううっ……』 ナギー『裸から離れるのじゃっ!』 ルミエ「し、しかし考えてもみろナギーよ……!     こんな砂漠のド真ん中で、裸のままずっと石碑の傍に居るんだぞ……!?     恥ずかしいって自覚があるのにそのままなんて、正気の沙汰じゃあ……ねぇぜ!」 ナギー『自覚はヒロミツに言われてから沸きだしてきたのであろ。     それ以上突っ込んでやるべきではないのじゃ』 ルミエ「ぬう……でもここ守っててなにか意味あるの?」 疑問点いち。 他に疑問があるかどうかは解らんが、とりあえずは。 炎女 『石碑は精霊の力の象徴。これがきちんとカタチを成しているということは、     精霊の力が安定しているという意味にもなっていて───     たとえばこの場にサラマンダー様が居なくとも、     この世界に火の加護が存在するのはこの石碑があるからだと考えてください』 ルミエ「そうか。よく解った。解りやすい回答をありがとう」 炎女 『いえ、これくらいはお安い御用です』 ルミエ「感謝ついでにフレアブランドください」 炎女 『あげませんよ!なんですかいきなり!』 ルミエ「いきなりではダメなのか!     ならば段階を追って話そう!そしたら寄越せよテメー!」 炎女 『あげないと言っているんです!』 ルミエ「なんで!?いいじゃないかよぅ!減るもんだし!」 炎女 『減るからいけないと言っているんです!人の話を聞きなさい!』 ルミエ「聞いたらくれる?」 炎女 『あげません!!』 断固として拒否されてしまった……。 だったら─── ルミエ「じゃあ殺して奪う」 炎女 『なにをする貴様ーーーーーっ!!』 ならば強行手段!と腕まくりをした!半袖だからまくる袖もねーけど! するとどうでしょう!なんとナギーが我が服を引っ張って止めるではありませんか! ルミエ「な、なにをなさるの?」 ナギー『ヒロミツ、ここは暴力に訴える場面ではないのじゃ。     精霊の聖域とは、それはもう神聖な場所であってじゃの』 あの……その神聖な場所で、精霊さんたちったら大体、 貴様の力を示せ〜とか言って襲い掛かってくるんですけど? うぬう……しかしこう止められてしまうと勢いというものが……。 どうしたものかかまわん突っ切る!! ルミエ「死ねぇえええーーーーーーっ!!!」 ナギー『わぁあ待つのじゃぁーーーーっ!!』 こうして僕は、服を掴むナギーごと精霊さんへと襲い掛かったのだった───! ……。 そしてボッコボコにされました。 ルミエ「ちくしょ〜〜〜……」 炎女 『粋がっていたわりになんと弱い……』 ルミエ「ほ、ほっときなさいよ!     べつにアンタのために武器使わなかったんじゃないんだからね!?《ポッ》」 炎女 『……でもやたらと腹が立ちますね……』 ナギー『うむ、なにせヒロミツじゃからの』 ……その理解のされ方ってどうなんだろう……。 え?僕って存在自体が腹立たしいの? でもOK、どう思われようが僕は僕さ。 ルミエ「くっ……今日のところはこのルミエールの負けだ……。     だが覚えていろ、このルミエールが負けても、     第二第三のルミエールがいつでもあなたのことを     草葉の陰から見守ると見せかけて命を狙っているからね?」 炎女 『二度と来ないでください』 ルミエ「うわー、ひどい言われ様」 まあ……いいか。 属性は足りてるって言われたし。 ルミエ「よし、じゃあ戻るかナギー。     貴重な時間を炎のオールヌーダーのために割くのはもうやめだ」 炎女 『だからその呼び方はやめてくださいと言っているでしょう!』 ルミエ「断る!何故なら僕は空気が読めずとも言いたいことを言うと決めているからだ!     そのためならどれだけ罵倒されようが殴られようが、楽しみ尽くしてくれるわ!」 炎女 『……この人、頭大丈夫ですか?』 ナギー「手遅れじゃから何を言っても無駄なのじゃ」 ルミエ「なんだか何気にヒドイ!」 確かになに言われても楽しみ尽くしてくれるって言ったけどさァアア!! い……いやぁあ……ナ、ナギーも本当に言うようになったなぁああ……。 ルミエ「でも挫けません。あ、そうだ。     えっとさ、これから僕、世界を崩壊へと導く伝説の殴雅(オウガ)バトルに繰り出すんだ。     殴雅バトルっていうのは“(みやび)を殴る”って意味で、     綺麗さなんて必要ありません。僕が新世界の破壊者になる!     という決意を込めた───」 炎女 『御託はいいから用件を言ってください』 ルミエ「あ……はい……すいません……」 冷たい瞳で睨まれてしまった……。 瞳も炎だけどさ……。 ルミエ「全てが終わったあと、また来るからさ。その時は僕に武器をください」 炎女 『だめです』 ルミエ「わあ即答。───ちくしょう!     こっち側の幽鬼じゃなくて勇気をちっとも理解せずに好き勝手言いやがって!     しまった僕も好き勝手言ってる!───じゃあいいや」 炎女 『…………あの……なんなんですかこの人間は……』 ナギー『ヒロミツじゃ』 ルミエ「博光です」 今はルミエールだけど。 炎女 『そういう意味ではないんですが…………いいでしょう。     名前くらいは覚えておきます。     あなたがなにに挑もうとしているのかなんて興味はありませんが』 ルミエ「お、おお!謝謝!謝謝熱い人!じゃあ次来た時は武器ちょうだいね!?」 炎女 『あげませんったら!』 ルミエ「なんだよこのケチ蔵!!いーじゃんかよぅ武器くらい!」 炎女 『誰がケチ蔵ですか!では訊きますが』 ルミエ「断る!《どーーーーん!!》」 炎女 『まっ……まだなにも言ってないでしょう!』 ルミエ「違う!僕はこれから帰還するのだ!     だから貴様の言葉を聞いている暇なぞないのだよクズが!」 炎女 『どっちがクズですか!』 ルミエ「ワハハハハ!!クズと呼びたくば呼ぶがよいわ!もう慣れたよ僕!     というわけで行こうナギー!次はエルフの里だ!」 ナギー『ラーサーなのじゃー!』 ジークフリードを虚空に寝かせ、ナギーを抱えて飛び乗ると各馬一斉にスタート!! 何か言おうとしている炎のオールヌーダーを無視して、僕らは飛び立った…………っ! 声  『このっ……!忘れませんからね!誰があなたなんかにフレアブランドを───!』 遠のいてゆく声が耳に心地よいです。 そう……覚えているがいい、そしてその悔しさをバネに……上がってこい、ここまでな。 ……いや、上がってくる意味も、自分の喉をトントンとつつく意味も全然ないけどね。 さて、それではエルフの里だな。 確か北の大地、ウェルドゥーン山の西だったよな。 よし、じゃあまず漁業の町アッサラントにでも行くか。 晦たちが筏を作って出発した場所だったよな、確か。 イーディンジルド氷河に行っても武器はもらえないだろうし。 こっちが人間ってだけで下に見るのは、精霊や妖精の中じゃあデフォルトなんだろうか。 愚かであることは物凄く認めるところだけど。 発展が欲しくて癒しを枯渇させたような馬鹿者どもだしね……。 そりゃ、精霊側から見れば邪魔で愚かな存在以外のなにものでもないわ。 Next Menu back