───冒険の書03/骨の王様=アイツ───
【ケース66:弦月彰利(怒号再)/柾樹くんの謎】 町人 「ヒィイ!!」 町人 「キャーーーッ!!」 町人 「た、助けてくれぇっ!!」 人々が恐れ慄き逃げ出してゆく。 町に蔓延るはモンスターども……そして、その慌ただしい景色を眺める僕ら。 ───それは突然のことでした。 そう……この町にバケモノの集団が来たのです。 つーても慣れ親しんだ姿に驚くこともなかったわけですが。 なにせ……訪れたモンスターってのがアンデッドモンスターだったのですから。 骨、ゾンビ、グール、レブナント、タクシム……まあその他もろもろ。 その後ろに巨大な骨のバケモノがおります。 あれがボスってことでしょう。 つーか…… 総員 『でっ……でっけぇええええええええっ!!!!!』 他のアンデッドが普通の人の大きさだとするなら、アレは確実に巨人族の骨だ。 しかも王冠みたいなの被ってる。 丘野 「おッ……おぉおお……!斉王!?斉王でござるか!?」 彰利 「にしてはデカすぎだって!!」 丘野 「でも草薙の剣を持っているでござるよ!?やっぱり斉王でござるよ!」 じゃあこのアンデッド軍団はさながら斉王のミリオンストライク? ……シャレになってませんよこの数!! 鷹志 「このイベント考えたの、絶対にイドだろうなぁ……」 中井出「俺も同感だ、鷹志」 深冬 「と、とにかく助けないと……!」 柾樹 「………」 深冬 「柾樹さん……?は、早くっ!」 柾樹 「あ……ん、ん……」 彰利 「……?」 深冬ちゃんに促されてようやく気づいたかのように柾っちが頷く。 ……前から思ってたけど、柾っちってたまにこういうことがあるんだよね。 なんなのかしらねぇ。 しかも『人を助けること』にあまり乗り気って感じがしない。 促されたから仕方なくって感じだ。 豆村 「ぬおっ!こいつら結構強いぞ!?」 柾樹 「───!?豆村っ!今手伝う!!」 深冬 「えっ……?」 でも知り合い……特に友達、親友ともなると意地でも守ろうって感を見せる。 これってなんなんデショ? 彰利 「……クルーミング大佐?あれってどうなってるの?     前々から訊きたかったんじゃけど、なんだって柾っちって感情死んでるん?」 来流美「……………」 皆様がアンデッド軍団に向かい駆け出す中、 ひとり柾っちを辛そうな目で見ていたクルーミング大佐に語りかける。 や、べつに大佐って言っても原中の位とは関係ありませんよ? 来流美「気にしないで、って言っても無理よね?」 彰利 「オウヨ?……オウヨ!!」 原中の猛者どもを始めとする皆様がアンデッドと抗戦を始める。 俺はそんな景色を余所にクルーミング大佐が逃げんように腕を掴んだ状態で深く頷いた。 来流美「ずっと昔……そうね。あのコがまだほんのクソガキャアだった頃の話よ」 彰利 「クソガキャアって……」 来流美「昂風街にね、ひとりの馬鹿野郎が来たの。相模啓介っていうクズ。     いい人ヅラで街に来た、心の中はドス黒い最低の男がね」 彰利 「……ふむ」 来流美「そいつがね、悠季美ちゃんの心を散々弄んだことがあるの。     ああ、もちろん肉体関係がどうとかは無いわ。まだほんの子供だもの。     でも……子供だからこそ心にずっと刻まれる傷ってのがある。     解るわよね、あなたなら」 彰利 「まあ……そりゃね」 来流美「その頃は柾樹も今みたいに冷静淡々なコじゃなくてさ。     なんにでも興味示して、怒る時は怒るし笑う時は素直に笑うコだった。     だからね、悠季美ちゃんの心を弄んだそいつが許せなくてね?     まだほんのちっこいガキだってのに、     これから大学になるっていう大人にたったひとりで挑んだの」 彰利 「ほほう……それは豪気な」 来流美「まあ……結果は言うまでもなくボッコボコの惨敗。     相手に傷のひとつも負わせられないままに地面に倒されたらしいわ。     でもね、それでもあいつは諦めなかった。     目の前で悠季美ちゃんが啓介に宛てて書いたラブレターが引き裂かれるのを見て、     そいつの足にしがみついて噛み付いたの」 彰利 「………」 来流美「それで相手は逆上しちゃってね。     もう散々叩きのめしたっていうのに、さらに殴った。     そして……その内、心の中で歯止めが利かなくなったんでしょうね。     啓介は柾樹の頭を掴んで、     小川近く……ああ、決闘申し込んだって場所がそこだったんだけどね。     そこにあった橋の支柱に柾樹の頭を叩きつけたらしいの」 彰利 「む……」 まさかそのショックで感情が? 来流美「……多分、考えてる結論とは違うわよ。     まあもっとも、わたしが知ってるのも啓介の知人が話したことだけど。     で……それでね。ぐったりと動かなくなった柾樹を見て流石に動転したんだって。     思い出すだけでむかつくことだけどさ。     動転するくらいなら最初からやるな、ってね。     でも……その時。景色が妙に歪んだと思ったら、     柾樹の中に妙な光が入ったんだってさ。     聞いててアホらしくなったけど、その時からなの。     柾樹の感情が死んじゃったのって」 彰利 「………」 感情の死、か……。 その光ってのがなんなのかは知らんけど、それが原因で間違いなさそうだ。 彰利 「んで……その啓介とやらは?」 来流美「……柾樹に百倍返しされて意識不明の重体。     治ってからはもう逃げるようにこの街から去ったわ」 彰利 「百倍返しって……不可能では?ボッコボコだったんでしょ?」 来流美「キレた、とは違うんだと思うけど。     でもね、光が身体の中に入ったあとの柾樹、まるで別人みたいだったんだってさ。     容赦の一切なんて無い。     本当に、本気で『殺すつもり』で啓介を殴り続けたんだって。     一部始終を見てた啓介の知人がそう言ってたわ。     まあもちろん、子供がそんなこと出来るわけがないって言って、     警察はもちろん周りの人誰もが信じなかった」 彰利 「……それって」 妙な話だ。 でも嫌になるくらい気になる。 来流美「ボッコボコに殴られたってこともあって、柾樹は一応病院で見てもらったの。     でもどこにも異常はなくて……     ただ、感情表現をしようとしなくなったってことしか解らなかった。     でもね……今だから言えるけど、     今の柾樹って……なんだか妙に晦くんにダブるのよ。     部分的に徹底してるってのもあるんだけど、     『守りたいものを守る』じゃなくて『守りたいものだけ守る』って感じで。     ……見たでしょ?さっきの。人がモンスターに襲われてるっていうのに、     あいつ……凄く冷たい目でそれを傍観してた。     だっていうのに豆村くんがモンスターに襲われた時は必至になって……」 彰利 「……んむ。確かに妙な違和感は感じた」 来流美「恋愛感情も『必要ないから持たない』って感じでさ。     もう……なんて言ったらいいのかな。     自分はもう友達……それも『親友』しか守りたくないって感じなのね……。     時々怖くなるのよ。ずっと前にあんなことがあって、     守りたいものがあったからこそ変わっちゃった柾樹がさ。     『守りたい』、なんて……思わないほうが良かったのかなって……時々思うの」 彰利 「───それってさ。つまり……もし偶然にも柾っちが、     深冬ちゃんか紗弥香っちかユキミドラを好きになったとしたら、     その時点でもう好きになった相手を守ろうとは思わなくなるってことかね?」 来流美「確信なんて無い……無いけど、そう思わせるなにかを持ってるのよ。     だからこそ、その『光るなにか』を受け入れた時点で、     『恋愛感情』っていうのを自分で殺したんじゃないか、って……そう思うの。     ずっと前に言ってたでしょ?『力』を得るには『代償』が要るって。     きっとそれと同じなのよ。啓介に一方的にやられる中で、     柾樹はきっと『強くなりたい』って一番に考えたと思う。     ……うん、もちろんそんなんで強くなれれば苦労なんてしないわよ。     でも……あんたたちと付き合ってると、そんなことも当然に思えてきてね……」 彰利 「ふむ……」 何気なく柾っちを見る。 町の人がどうなろうが無視し、知り合い、友達、親友が危なくなると懸命になるその姿を。 それはまるで、守るものを限定した機械のようだった。 彰利 「……訊くまでもないと思うけど。刹那とみずきはこのこと───」 来流美「───知ってるわ。柾樹が友達として紹介しに来た時、真っ先に教えた。     じゃなきゃ感情のコワレた人間と友達やってられるわけないわよ……。     なるべく感情が戻るように、     ちょっとずつでも恋愛面のほうでお節介してくれって頼んでもある。     ……我ながら、なんて人任せな親だって思うけどね」 彰利 「……そか。それ聞いて安心した。     ウチの愚息にもちゃんと親友への思いってのがあったわけだ。     だったら文句なんて微塵も無し。これからも、ウチの愚息を頼ンまぁ」 来流美「こっちの台詞よ。感謝してもしきれないわ」 ……これで、クルーミング大佐も辛い思いをしてきたのかもしれない。 でもそんなんしょうがない。 原因不明の感情死滅なんて、普通の親だったら自分の精神こそを削るだろう。 彰利 「ともかく。感情がどうたらならスッピーやら悠介やらがなんとか出来るやもだ。     今は湿っぽいのを払拭するためにアンデッドマンをコロがしましょう。     心の準備は十分ですかな?クルーミング大佐」 来流美「……とりあえずそのクルーミング大佐ってのやめて」 呆れたような顔をして返すクルーミング大佐。 そんな顔を見て俺は満足して頷くと、彼女を促して駆け出した! 中井出「遅いぞ弦月一等兵!貴ッ様なにをしていた!!」 彰利 「作戦を立てていましたサー!!発言許可を願います!サー!!」 中井出「なにぃ、ならばその作戦とやらを言ってみろ!」 彰利 「サンキューサー!!まず提督を生贄に捧げます!!」 中井出「うむそれで、って却下ァッ!!」 彰利 「なっ!?何故でありますか!?これほどステキな作戦は他には───」 凍弥 「よし、それじゃあ柿崎を代わりに贄にしよう」 柿崎 「友キサマ!!普通っぽい会話で人を生贄にすんな!!」 凍弥 「生贄じゃないぞ?贄だ」 柿崎 「生きてないのかよ!!」 ともあれ皆様全力バトルです。 それはもうステータス割り振りを器用にこなし、殴っては避け斬っては退きの連続。 しかしアンデッドどものしぶとさは最初っから解りきったことでして、 時間が経てば経つほど劣勢になってきます。 中井出「アコライトたちは『祈り』に専念せよ!!     剣士たちは『斬る』という概念から『打つ』に変えろ!シーフや刀士も同様だ!!     モンクたちはアンデッドどもの腕を落とせ!!可能ならば頭を砕け!!     アーチャーはゾンビなどの頭を穿て!!骨は一切無視するように!!     魔物使いは鞭での遠距離攻撃で間合いを稼げ!!」 丘野 「提督殿!忍者は!?忍者はなにをするでござる!?     ていうかなんで忍者って拙者だけなのでござるか!?」 ノア 「女中はわたしとレイラさまだけですが?」 藍田 「執事は……俺だけだなぁ」 夏子 「オリバ効果でSTRとVITにボーナス入ってるから、     居てくれると助かるけどね。ありがと、亮くん」 藍田 「あ、やっ……あはははは!!」 照れとる場合じゃないんですがね。 でも確かに藍田というかオリバ強いです。 ムキムキマッチョなわけではないが、確かに木村さんの近くでは鬼神の如き強さです。 こ、これが主人を守ろうとする執事の強さか……ハヤテくんもびっくりだ。 清水 「つーか───なあ!アンデッドどもがあとからあとから沸いてくるぞ!?     これって勝利が有り得るのか!?」 彰利 「大丈夫!きちんと経験値入っております!!」 清水 「でもこいつら新たに出現すると能力が格段に上がってるぞ!?」 丘野 「なんの!こちらとて人数では負けていないでござる!     足りないというのなら───忍法、“生分身”の術!&総員分身魔球!!」 丘野くんの生分身&分身魔球!! 全て実体の26人の丘野くんが一斉に石を分裂させて投げる!! それらは見事にアンデッドどもにぶつかり、だが大したダメージにはならなかった!! 丘野 「なんと防御力も上がってるでござるよ!!こ、このままでは───!!」 遥一郎「っ……おい!まずいぞ!!斉王が動き始めた!!」 総員 『なんですってーーーーーーっ!!!?』 って、うわぁマジだ!! 遠くから見てもデカい巨体が、物凄い勢いでこっちに一直線!! なんて時でした!! 声  『町の人達の非難は済みました!!みなさんも早く逃げてください!!』 という、明らかなイベントボイスが耳に届いたのです!! 彰利 「えっと……これってもしかして?」 丘野 「町の人々を全員逃がしてから自分も逃げるというバトルイベントでござるか?」 中井出「考えてる暇は無い!総員退避ィイイーーーーッ!!!」 総員 『サーイェッサー!!』 止まってなどおられません!! 僕らはそれはもう全力で走りました!ステータスを全て速度に注ぎ込んで!! ……だってのに、やっぱりありました。このイベントでよくありのアレが。 町人 「ど、どうかお助けを!!ウチの子供が居ないんです!     た、多分まだ町の外れにある公園に居るのでは……!!」 総員 『ちゃんと連れてこいたわけぇーーーーーっ!!!』 気分は悠介でした。 そうこうしてる間にも斉王とアンデッドどもが走ってくる……!! 南無 『ここは俺に任せるほね!!』 彰利 「なにぃ!?……南無貴様」 南無 『同じ骨ならきっと解りあえるほね!     キミたちはそこでのんびり茶ァ啜ってるといいほね!!』 彰利 「あ、いや、でもね?あのちょっと南無さん!?」 南無 『ほねぇええええぃやぁあああああああっ!!!!!』 カッショカッショカッショカッショ……!! 南無が走っていった───骨とゾンビの海に。 しかし何故か攻撃されることもなく斉王のところまで行くと、 身振り手振りで説明してみせメシャア!! 南無 『ほねぇえええーーーーーーーーっ!!!!』 巨大な骨足で潰された。 総員 『………』 クソの役にも立ちゃしねぇ……。 彰利 「もはや問答は埒も無し!───丘野くん!行ってくれるか!?」 丘野 「任せておくでござるよ!!こういう時のための全ジョブ中最速の忍者でござる!     その上拙者には25の精鋭が居るでござる!     斉王の攻撃などのらりくらりと受け流すでござるよ!……分身が」 丘野B「イヤでござる!キサマが死ねでござる!!」 丘野C「拙者たちはキサマの捨て駒じゃないでござるよ!?」 丘野 「分身たちも猛っているでござる!大船に乗ったつもりで待ってるでござるよ!!」 総員 (比類無く心配だ……) だがこの場は丘野くんに任せ、僕らは駆け出しました。 斉王は丘野くんが僕らとは逆の方向へ走るのを見るとそれを追い、 アンデッドどももそれを追おうとしたが─── 真穂 「祈りよ、届いて───!!」 真穂さん率いるアコライト集団の『祈り』がアンデッドどもに実行されると、 回復することもなくダメージを負ったアンデッドどもがこちらへ疾駆してきた。 真穂 「みんな、走って!!町の外まで!早く!!」 彰利 「よっしゃあ!!逃げンぞみんなぁっ!!」 中井出「全速前進ンンンーーーーーーッ!!!!」 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 僕らはもう振り向きませんでした。 丘野くんならばきっとやってくれると信じているからです。 普段こそステキにおちゃらけている丘野くんだが、信頼にはきちんと応える漢なり。 だからこそ信じよう!彼が再び僕らの前に現れるのを!! そして願おう!どうかそれが、神父を経由してのものじゃないことを!! 【ケース67:丘野眞人/丘野くんと愉快な死人たち】 シュタタタタタタタタ───!!! 斉王 『ゴォオオオオオンッッ!!!』 丘野 「〜〜〜っ……!!しつこいでござるな!!」 エーテルアロワノンの町を駆け抜ける。 既に火をつけられ、燃えてゆくこの町の中を。 当然斉王との一歩の差はとんでもないもので、 馬鹿正直に一方に走っていてはすぐに追いつかれるでござる。 故にわざわざ建物の影を駆け抜けたり障害物の下を通ったりを繰り返しながら走った。 とんだ誤算だったのが、武器防具、それと道具の店。 誤算と言っても嬉しい方の誤算でござるが。 慌てて逃げたために、高価なもの以外はそのまま残してあったのでござる。 拙者はそれらを着こなし、今現在で出来る最強装備で身を固めると再び駆け出した。 もちろんアイテムの類は詰め込めるだけバックパックに詰め込んだでござる!! これぞ原中大原則!捨てられたものでも使えそうなら活用せよ!! 誰かがゴミと断じたものでも人によっては宝となるのでござるよ! 丘野 「重さの所為で少々速度が下がってしまったでござるが、     そこはこのスピードリングでカバーでござる!!」 そう言って走り出そうとした───途端!!  ゴバァッガァアアアアンッ!!!! 丘野 「───!?何事!?」 突然天井が崩れた! その先に見えたのは空ではなく、天井を草薙の剣で破壊した斉王でござった───!! 丘野 「チィ───!!しつこいでござるよ!!?」 だが子供を見捨ててなどおけぬでござる!! それゆえに拙者は足を弾かせ、斉王の股下をくぐるようにして再び駆け出した! その際、分身が二体ほどコロがされたでござるが立ち止まってなどいられんでござる!! 走れ、走れ、走れ───!! 課せられた任務の失敗は忍の恥! さらにこれはクラスメイツに託された願いでござる!失敗するわけにはいかんでござる!! そう───拙者の命に代えても!! 丘野 「装備変更───ジャンピングブーツ!!」 装備を変更するとともに壁と壁を蹴り弾き、建物の屋根へと昇る。 さらには屋根から屋根へと跳躍しつつ、 建物に阻まれて思うように動けない斉王から距離を稼ぐ。 考えてみれば公園が何処にあるのかも解らない状況。 それなら高いところから見渡した方がいいという考えの果ての行動でござった。 丘野 「公園───公園は───、……!!あったでござる!!」 見つけたでござる! 子供もきちんと居るでござるな!? だったら─── 斉王 『逃すか───!!』 丘野 「───!?」 そう。それは油断でござった。 鋭く引き抜かれた草薙の剣。 それが、建物ごと拙者を斬り裂こうと振るわれたのでござる。 薄緑に発光する剣からは光の剣閃が放たれ、それこそイヤになるほどあった建物を、 まるで豆腐でも斬るかのように斬り壊しながら───跳躍していた拙者目掛けて飛翔した。 丘野 「しま───っ……」 しまった、という言葉すら間に合わない。 跳躍していたために何処へも逃げられなかった拙者は、 抗うことも出来ず、あまりに巨大な剣閃に飲み込まれ─── 【ケース68:弦月彰利/原中魂に込めた思い】 ───……。 ……そうして、やがてエーテルアロワノンはアンデッドモンスターに落とされた。 目に見える景色には既にアンデッドが蔓延っていて、 もはや花舞う町という面影は微塵にも無い。 ただ死気ばかりが立ち込めていて、近寄りがたいだけの町と化していた。 深冬 「……丘野さん……」 そうして思い返されるのは、 ただひとりその魔物の巣窟の中へと駆け出していった原中の猛者。 忍者以前に“ラフレシア”の二つ名を持っていた、あの男のことだった。 豆村 「あの丘野って人……やっぱ死んじまったのかな」 刹那 「ああ……いくらなんでも戻るのが遅すぎるだろ……」 柾樹 「………」 皆が一様に不安を浮かべさせる。 だがそんな中で、原中の猛者どもだけは動じることなく待っていた。 そう……ヤツはやる時はやる男なのだ。 そして、託された物事で失敗したことなどただの一度も無し。 その丘野くんがアンデッドの前に屈服するなど───在り得はせんのだ!! 【ケース69:丘野眞人/疾風怒涛】 ザファアッ───ドッカァッ!! 丘野 「ッ───チィイッ!!!」 爆煙とともに遠くの建物の屋根へと舞い降りた。 念のためを思って首にかけておいたリバースドールは砕け、 だがそのお蔭で死ぬこともなくこうして生きている。 たった一度の身代わり地蔵───お蔭で次に喰らえば自分は木っ端微塵。 その前に子供を助けるでござる───!! 斉王 『───!?小癪!!』 拙者が生きていると知った故でござろう。 斉王は苛立った声を放つとともに建物を破壊しながら疾駆してきた。 分身は今の一撃で全員消滅したでござる───もはや些細なミスとて許されん。 ───しからば!! 丘野 「───、よし!ここでござる!!」 拙者は調理ギルドを発見するとその中に入り、必要なもの全てを揃えた。 次の瞬間天井が砕け、斉王が拙者を覗き見るなり噛み砕こうと顎を下ろしてくる───! 丘野 「愚か───!家庭で出来る簡単忍術を受けてみるでござる!!」 拙者はメリケン粉と思われる粉を斉王に袋ごと分身魔球で投擲。 さらにそれに包丁を分身魔球で投擲して破裂させると、 次に火のついたアルコールランプを用意し、やはり分身魔球で投擲!! それが斉王に噛み砕かれる前に拙者はギルドの外へと飛び出て伏せた───刹那!!!  ボガガドッパァアアアアアアアンッ!!!!! 斉王 『グァアアアアアアアッ!!!!?』 その場で起きる大爆発。 これぞ家庭で出来る忍術、粉塵爆破(ふんじんばっぱ)
の術でござる……! 斉王 『おのれ小賢しい……!!何処へ行った……!!』 って全然効いてないでござるーーーーーーーっ!!! それどころか顔面を煤だらけにしたことで、かえって怒らせてしまったでござるよ!! 丘野 (子供の居る場所まではあと少し───あとはもう一か八かだけでござる!!) 靴の装備変更───レプリカエルメスシューズ!! 行動速度を1.5倍にしてくれるらしいでござる!! ただし使用可能時間はたったの1分! せぇのぉ……───シィッ!!  ───ドンッ!! 斉王 『ヌウ……!?そこか!!』 一瞬にして気づかれたでござるーーっ!!! だがもはや止まらんでござる!! 次々と破壊される町並みを完全に無視し、一気に公園へ!! 子供 「ひっ!?だ、誰───」 丘野 「レンタベイビーーーーッ!!でござる!!」 止まることなく、泣いていた子供を小脇にかかって尚疾駆!! だがこの先に進んでも壁があるのみ───しかしそんなものは忍者の常識には無いも同然! 丘野 「ジャンピングブーツ!!」 再び装備を変えると、高い壁をタンタンと器用に駆け上り、一気に町の外へ!! だがその拙者の軌道に向けて放たれたらしき草薙の剣がすぐ後ろまで迫って───!! 【ケース70:弦月彰利/アトモノコス】 シュキィンッ♪ドシャアッ!! 丘野 「ほぎゃっ!!」 子供 「うわっ!」 それは突然のことでした。 燃え盛るエーテルアロワノンから、ひとりの男がドゴシャアと地面に落下したのです。 確認するまでもない───それは危険なイベントをひとりで遣り遂げた男の姿だった。 丘野 「う、むむ……ヒイ!?ミスリルプレートの背中がえぐれてるでござる!!     う、うおお……危なかったでござるよ……!     エリアチェンジがあと0.1秒遅かったら草薙の剣の餌食だったでござる……!」 殊戸瀬「眞人っ!!」 そんな丘野くんへ、内心相当心配していたであろう殊戸瀬が駆け出した。 うう、ステキな恋愛ドラマよのう……。 丘野 「お、おお睦月。どうでござるか?無事生還したでござる。     子供もこれこの通り、無事でござるよ」 殊戸瀬「ば、ばかぁっ!!無茶ばっかりしてっ!!     そんなことして死んじゃったらどうするのっ!?」 丘野 「ぬ?そりゃ……神父のところへ送られるんじゃないでござろうか?」 殊戸瀬「そういう意味で言ってるんじゃないの!!     もうっ……!あんまり心配……!させないでよっ……!!」 丘野 「ウ、ウヌ……」 丘野くんに抱きついて泣き出してしまった殊戸瀬さん。 いやはや……青春よのう。 オイラじゃああいくかどうか。 むしろ『あぁ、やっぱり。ホラ、生きてた生きてた』で済まされそうな気がする。 ……無駄に生命力だけは高いからねぇ、俺。 ともあれ丘野くんも無事で、子供も無事で親御さん感動。 あとは─── 町人 「……エーテルアロワノンが……」 町人 「堕ちてゆく……」 これからどうするかだ。 奪い返そうにも今の技量じゃ無理だし、そもそもなんの備えも無い。 これじゃあさっきと同様、あっという間に劣勢になるだけだ。 町人 「これからどうすればいいんだ……」  彰利 「どうするもなにもね!!次の町を目指すだよ!!」 中井出「そうだな。ここでこうしててもどうにもならん」 彰利 「ウムス。そんじゃあ───」 声  「よう。お困りかい?」 彰利 「むっ!?何ヤツ!?」 突如聞こえた声!その声に振り向いてみると───!! 男  「先に自己紹介をしとこう。俺は傭兵のシグマ。     近くの町に行きてぇんだったら、俺がそこまで守りながら案内してやるぜ?」 町人 「お、おお……!本当ですか……!?」 シグマ「ああ。ただし、貰うもんは貰うけどな」 町人 「構いません!ここに居たら、じきに魔物たちに殺されるだけです……!!」 シグマ「よし決まりだ!───おっと、俺は文無しには用はねぇからな。     てめぇらは勝手に旅でも続けな」 彰利 「むっ……言われんでもそうするわい。誰がキサマなんぞの手を借りるか!     このスチームクリーナーMOZMAめが!!」 シグマ「モズマ!?だ、誰がモズマだ!俺はシグマだ!!」 中井出「へー、精霊たちが製作に関わったからか?随分反応が増えてるみたいだな」 丘野 「そうでござるなー……まさかこう返してくるとは思わなかったでござる」 ルナ 「然の精霊の力でしょ。     悠介の話じゃ、『自然』って意味はいろんなものに通用するらしいから。     だから多分、『人の自然体』っていうのを世界に溢れさせたんじゃないの?」 彰利 「ナルホロ。そういうことなら納得もしませう」 シグマ「……んじゃ、早速行くぞ。金は町に着いてからでいい。     モノ売ってでも支払ってもらうからな」 でもヒソヒソ話とかは完全無視らしいです。 まあいいけど。 町人 「あぁ、ちょっとお待ちください」 シグマ「あぁ?なんだ」 町人 「……ありがとうございました。息子を無事助けていただいて……。     これは心ばかりのお礼です、どうぞ受け取ってください……」 丘野 「む?なんでござるか?」 ペッペラペ〜♪───丘野くんは疾風のスカーフを手に入れた!! 丘野 「スカーフでござるか……いいんでござるか?」 町人 「もちろんです。では、ありがとうございました……」 町人はペコリとお辞儀をするとシグマのところへと走っていった。 それを確認するとシグマもさっさと移動を開始し、その場には我らだけが残された。 彰利 「……これからどうすりゃいいんかね」 真穂 「えと───ナビによるとシグマの後を追っていけって出てるけど」 彰利 「ふむ……そか」 中井出「よし!それでは新たなる新天地を目指して!!出発ァーーーツ!!」 総員 『オォオオオーーーーーッ!!!!』 とまあそんなわけで。 なんつーか散々なスタートではありますが、ようやく冒険らしい冒険が始まったのでした。 防具屋&武器屋&道具屋『わ、忘れていたっ!             おいあんたっ!盗っていったものを返してくれっ!!』 丘野         「なんと!?」 ……まあその、 丘野くんが装備していたものや持っていたらしきものはしっかりと回収された上で。 Next Menu back