───冒険の書259/ケロッグコーンキモスト───
【ケース670:岡田省吾/パスポートは夢だけさ!】 ドシャァア〜〜〜〜ンッ!!! 声  『皆様此度もよくぞいらっしゃいました!解説のウォドンゴさんです!     今日新たにグラディエーターを志願する命知らずを紹介するぞぉっ!!     辺境よりご来訪!オカダ=ショーゴだぁーーーーっ!!』 岡田 「ウォー!」 ………………。 沸かなかった。 声  『はっはっは!選手のやる気だけが空回りしてるぜ!     さぁ相手だ!相手は毎度のルールとしてガメッシュオーナーが選ぶ敵!     今回はモンスターよりこいつ!ブルオーガの登場だぁーーーっ!!』 歓声 『ウォーーーーーッ!!』 岡田 「うえぇ!?俺ってモンスター以下!?」 声  『さーあさっさといくぜぇ!特別試合!グラディエーター試験!バトル開始!!』  ワシャァアーーーーンッ!! 俺の心情も無視して、開幕のドラが今鳴った! ブルオーガと呼ばれた巨人のようなそうでないようなモンスターは、 何処にも向かわず真っ直ぐ俺へと駆けてくる。 俺はそれを見て、慌てず、しっかりと剣に手を当て───! 岡田 「早撃ち!ブレードパルサー!!」  キッ───フィバァンッ!! ブルオーガ『……ガ?《ズ……ブシャアッ!》ガァアアアッ!!』 振り切った剣が衝撃波を放ち、離れた位置に居たブルオーガを抹殺してみせた。 それで終わり。 抜いたばかりの剣を鞘に収めると、はふぅと息を吐いた。 声  『おっ……おぁーーーーっとぉ!?これは瞬殺ァーーーーーッ!!     近頃の新参者はどぉなってやがんだと言いたいくらいに瞬殺だぁーーーっ!!』 岡田 「おっしゃあーーーぃっ!」 ノリよく腕を上げてみる……が、誰も沸かない。 まいったな……梃子摺ってみせたほうがよかったのか? ……。 グラディエーターの称号を受け取り、 沸かない観客席を見渡しながらトボトボと自室に戻ると、そこでゴドーが待っていた。 ゴドー「……へ、へっ……なかなかやるじゃねぇか。     これでおめぇさんは俺の専属だ……励みやがれよ俺のために」 岡田 「………」 とても動揺していらっしゃった。 シロン「強いですね、えーと」 岡田 「岡田な、岡田省吾」 シロン「オカダさん、ですね。あはは、そういえばきちんと自己紹介してませんでした」 岡田 「ははは、まったくだ」 …………。 待て。誰だよ今のサワヤカ青年。 あれ?俺ってこんなだったか? なんかヘンだ……どういうわけか知らないけど、今の自分に物凄い違和感を感じる。 口調にも、人となりにも。 俺は……《ザザッ》………………ノイズが走った。 すると頭の中がやけにすっきりした気がして───…… だけど違和感だけはしっかりと残っている。 それを忘れてしまったら、お前は“俺として”失格する、とでも言われてるような……。 俺……俺の過去ってどんなだった? 確か……真面目にガッコ行って、中学でも真面目で、 弦月のハジケっぷりに巻き込まれて少しずつズレてって……ズレた? ……………………そう、だよな。 ズレた筈なんだ。なのになんなんだ、この“俺は真面目だった筈”って違和感。 岡田 「…………」 解らない。 解らないけど……この違和感にはなにかの意味がある気がした。 だけどやっぱり解らないから、俺は頭を振るうとゴドーとシロンに言葉を投げた。 岡田 「えっとさ、アルビノは?一度話してみたいんだけど」 ゴドー「あん?なんだ、これから早速試合組んでやろうとしたのに」 岡田 「いや、今日はまだいいや、気分がノらない。それより───」 シロン「アルビノなら休憩中です。機械使うのが疲れるのか、     戦い自体で疲れたのか解らないんですけど、試合が終わると大体寝ちゃうんです」 岡田 「ほえー……」 なにやらいろいろ大変らしい。 ゴドー「ところでおめぇよ、まさか機械使いってこたぁねぇよな?」 岡田 「……?いや、そんなこたぁないんだが……なんでだ?」 ゴドー「攻撃が速くて見えないヤツが大半だったんだよ。     み〜んな、また機械使いなんじゃないかって思ってる。     ホレ、こっちにゃアルビノって前例があるからな」 岡田 「ア〜……」 だから沸かなかったと。 くそ、俺としては盛大にワァッと沸いてほしかったのに。 こう、なぁ?みんなで大きく叫ぶように───………… 岡田 「《ズキィッ!!》いがぁああああああっ!!」 ゴドー「うおっ!?」 シロン「えっ……オカダさん!?」 岡田 「い、っづ……!っ……なんだよ、これっ……!」 過去を深く思い出そうとすると頭が痛みやがる……! 特に中学……!なんだ……!? ゲームや漫画じゃあるまいし、忘れっぱなしでいたい過去でもあるってのか!? だったら大体、なにがあったってんだよ中学時代に……! ただガッコ行って、今のヒロラインメンバーと会っただけじゃねぇか……! 三年連続で全員が同じクラスだったから、それで意気投合して……! 岡田 (………) 三年連続同じクラス? 待て、違う。 同じクラスになったのは三年の時だけの筈だ。 ……それだけで意気投合? 言っちゃなんだが、あの年頃のガキってのは、 たった一年で意気投合できるほど素直な心なんざ持ち合わせちゃいない筈だ。 ひねくれ者同士だぞ……そんなやつらが、寄りかかる場所も無しに意気投合……? よしんば多少仲良くなったとしても、同窓会が終わればもう用済みで終わる筈だ。 なのにどうして俺達はこうして集まった? どうして……39人だったクラスメイトが、40人だった筈、なんて思うんだ? あれ……?クラス委員って誰だったっけ……? クラス委員……  『俺……あるぜ?三年連続クラス委員だ。……頭が高ェんだよヒラ生徒風情が』 岡田 「───あ……」  ズキィッ!! 岡田 「あっ……あがぁあああああああああっ!!!!」 砂嵐があった。 過去の記憶の中に、人の形をした砂嵐が存在する。 教師に認められるために真面目に仕事をし、教師の信用を得ては影で笑っていた一人の男。 だけどそいつは、どれだけ思い出そうとしても砂嵐のままで、 カタチを鮮明にはしてくれない。 ゴドー「───!?───!」 シロン「───、───!」 ゴドーとシロンが俺に向かってなにかを叫び続けている。 ……今は静かにしてほしい。 なにか、失ってしまった大切なものが取り戻せそうな…… これだけは捨てられないって、心の奥が懸命に掴んでいてくれたものが、 今、手繰り寄せられそうな気がするから。 そうだ……俺、大切なこと忘れてる。 なにかが足りない所為でいろいろなものに違和感を感じるけど、 その違和感は周りから来るものじゃなくて自分自身からだ。 俺……こんなに真面目なヤツじゃなかった。 もっと素直に笑って燥いで、誰かと面白さを共有することを第一に望んでた筈だ。 中学時代にそれのきっかけに……寄りかかる場所になってくれた馬鹿が居て、 俺はそいつのことこそを忘れ《ザザッ……》っ……まただ……! ノイズが走る度にそいつの砂嵐が消えてゆく……! 岡田 「っ……」 解らないなりに、なんとなくピンとくるものがあった。 忘れてる……ああ、それは確実だ。 そして、思い出そうとするたびにそれを邪魔する誰かが居る。 そいつのことを忘れていれば好都合ってヤツがどっかに居る。 ……忘れられるヤツの気持ちも考えないままでだ! 岡田 「…………」 頭にきた。 人の記憶を勝手にいじくりやがって……! なんで誰とも知らない、 知っていようが他人の誰かに俺の思い出を改竄されなきゃいけないんだよ……! 岡田 「《ザザッ……》ぐっ……く……!」 でも───消える……!消えちまう! せっかく頭痛に耐えてでも深いところを覗こうとしてるのに、消えちまう……! 思い出せ───いいや、当て嵌めろ! 思い出すことが頭痛と消去のキーになってるなら、 なにかを、誰かをそこに当て嵌めて記憶を完成させろ! 違和感の正体を……───違和感? 岡田 「あ……」 思い浮かんだのは一人の男。 いつの間にか俺達の輪の中に入ってやがって、 ヒロラインで魔王をやってるとか言ってた地界人。 空界人を皆殺しにしたとか言って、ギャーギャー騒いでたあの男。 岡田 「っ……」 解らない。 あいつでいいか、なんて解らない。 でも晦や弦月が知ってて、俺達が知らないあいつが居る。 おかしな話だ……俺達は晦や弦月の記憶の映像を見せてもらった筈だ。 なのにあいつらが“俺達よりもあいつを選ぶ”って言うくらいの知り合いを、 俺達は全然まったく知らないのだ。 それはつまり───《ザザァッ》……ぐっ……! 岡田 「うる、せぇ……!黙ってろ、くそが、ぁあ……!!」 ッ……自分の口調に寒気を感じたのは初めてだった。 違和感……そう、違和感だ。 いかにも“不良みたいに成長しましたよ”って設定を押し付けられたみたいな違和感が、 真面目な性格とぶつかって気色が悪いったらない。 でも、多分次のノイズで全部飛ばされる。 違和感も、既視感めいたこの感情も記憶も、全部。 だからノイズの波が再び来る前に俺はメールに走り書きを打ち、 送信するとともに自分のメールボックスにもそれを残した。 ───会いに行こう、あの男に。 本当に初見かもしれないしそうでもないかもしれないあいつに。 知らないからって理由でつっぱねる理由なんか、少なくとも俺にはなかった。 空界人の仇なんて俺には関係ないし、人を殺したって理由でつっぱねるのも、 俺がそいつの人となりを見てからでも十分だった筈なのだ。 無くした記憶があるかもしれない。 失ってしまった大切なものがあるかもしれない。 でも、だとするならまた知ればいい。 岡田 (……なぁ、記憶操作してるヤツ……     あんまり、人の絆ってのを……ナメるなよ───) 最後にそう思った途端、人って言葉がキーワードだったかのように砂嵐が晴れた。 瞬間、過去の景色に立っていたそいつは俺に向き直り、 勇気が沸いてくるような……元気が出て、 そう……コロシアムが沸くようなくらいの大きな声を俺の口から出させてくれる、 元気で面白くて、そして懐かしい……“号令”をかけてくれた。  ……どうしてか知らないけど。  俺はそれに、自然と……サーイェッサーと、震える声で返して…………  ……涙を流しながら、全部を……忘れた。 …………。 岡田 「…………お?」 ゴドー「………」 シロン「………」 なにやら目に違和感。 何故だか涙を流していたらしい俺は、 これまたどうしてか敬礼のポーズをとっていた右手でそれを拭った。 ゴドー「……おめぇ、ほんっと〜〜〜に帝国のモンじゃねぇんだな?」 岡田 「い、いや悪い……どうして泣いてるのかも敬礼してるのかも解らん」 シロン「びっくりしましたよ……急に頭を抱えたと思ったら、うんうん唸って……     そしたら今度は涙流しながらサーイェッサーって言って敬礼を……」 岡田 「……?」 うん、頭が痛かった筈。 痛かった筈なんだけど……痛くてどうして敬礼すんだ?  ピピンッ♪《メールが届きました》 岡田 「お?」 心内でわたわたと慌ててた俺に、メール受信のメッセージ。 ハテ、と思いつつ送り主をみると、藍田だった。 岡田 「珍しいな、あいつからメールなんて」 なんというかあいつとはあまりソリがあってなかったような気がしないでもないんだが。 件名は“Re:魔王を知れ”だった。 魔王を知れ?……あ、そういやメール飛ばしたんだったよな。 どうしてか時間が無いって感じて、とりあえず一番てっぺんの送信相手にドシュウって。 それが藍田だったか。 岡田 「え〜……?」  ◆Re:魔王を知れ  なんか知らないけどメール見てたら敬礼したまま泣いてた。  で……解らないなりに訊きたいんだけどよ、  魔王ってあの、空界人皆殺し伝説の魔王だよな?  あいつを知れってどういう意味だ?よく解らねぇから説明求む。 ……。 岡田 「いや……どういう意味だ、って……」 俺にもさっぱりだ。 大体どうしてこんなメール飛ばしたんだ? よりにもよって藍田に。 ん〜〜……まあいいや。 岡田 「あ〜……っと」  ◆Re:Re:魔王を知れ  悪い、記憶がトんだみたいにぼ〜っとしてる。あと俺も涙流しながら敬礼してた。  なんかさ、ヘンじゃないか?  最近記憶が飛ぶようなこととか違和感みたいなのが多い気がする。  多分これ、記憶がトぶ前とか敬礼する前に飛ばしたメールだ。  なにか意味があるのかもしれないから、一度魔王とじっくり話してみないか?  あ、俺は今デルフェルっていう場所のコロシアムに居る。 ……送信、と。 …………。  ピピンッ♪《メールが───》 岡田 「早ッ!」 ゴドー「……?な〜にやってるんだよ、さっきからうろうろと目ェだけ動かして」 岡田 「あ、悪い。今ちょっと忙しいんだ。後にしてくれ」 ゴドー「かっ、なにやってるってんだ、ただ散眼やってるだけじゃねぇか」 岡田 「頼むよ」 ゴドー「………」 シロン「ほら、お兄ちゃん」 ゴドー「…………わぁったよ、ったく……。     忙しくなくなったら研究所の方に戻ってこい、メシくらい食わせてやる」 岡田 「了解」 ゴドーたちが転移装置を踏んで研究所に戻るのを見送ってから、メールを開いた。  ◆Re:Re:Re:魔王を知れ  オーケイ解った。お前とってのがあまり気に食わねぇけど、  その気に食わない理由も見えてこないんじゃあ対立する理由にならねぇし。  ……な〜んか口調に違和感感じてしかたねンだよな。俺こんな口調だったか?  ん、まあいいや。そんじゃあ行けたらそっち行くからよ。金でも稼いどいてくれや。  ………………違和感が先走るから言葉遣い変えるわ。少しまともにしてみようと思う。  なんだったら敬語もいいかもしれないな。 ……。 どうやら向こうから来てくれるらしい……ありがたい。 じゃあ俺は……どうしよう。 今日はもう試合やらないって決めちゃったしな……。 ………………帰ってメシをごっそになるか。 うん、それがいい。 【ケース671:鬼面族チャチャブー/蠢く鬼面の者】 モゾ……モゾゾゾゾ!!ゴバァンッ! チャチャブー『ミギー!』 地面に潜らせてた体を、ボゴォンと飛び出ることで解放する。 チャチャブーになってしまったなら仕方なしと、 地面の中を移動しつつ帝国内部を探索している……こんにちは、鬼面族です。 チャチャブーになってしまった僕は悲しいかな、レベル1。 レベルはないらしく、ステータスは固定。 死ぬことは無いらしく、HPがインフィニティ。 武器はギガノタウロスの斧だけど、 意識しない限りは小さな棍棒みたいなカタチに収まっております。 ……意識するとギガノタウロスの斧になるけどね? チャチャブー『ミギ?ミギ……ミギャ〜〜〜ィイイ!!』 キョロキョロと辺りを見渡して、兵士が居ないかを確認………………居ないね。 といっても自然要塞から少し歩いた程度の場所だ、 見回り兵士が居れば十分ってこともあって、警備はそう濃いもんじゃない。 だから僕は自然要塞の大樹、 クリスタルキモスティン(命名:俺)の前に立っているナギーに合図を送る。 ちなみに今の僕のスキルだが、全部をキモストボディに置いてきてしまったために皆無。 中井出博光としての能力はもちろん、ジークたちの能力もてんで使えない。 チャチャブー『ミギー……』 ……まあ中井出博光としての能力なんて言っても、なんにもないわけですが。 使えるスキルは爆弾投げと睡眠爆弾投げと落し物爆弾、落し物睡眠弾などなど。 もちろんギガノタウロスの斧の痛恨の一撃もあります。 だがしかしこの不死身ってのは素晴らしい。 爆弾も無限に出せるし、悪いことばかりじゃない。 ただね……扱いがオトモチャチャブーなもんだから、 基本的にナギーの傍からは離れられないんだよね……。 どういうわけかご主人がナギーになってる。 チャチャブー『ミギィ〜〜〜ッ!!』 ナギーが“誰かに譲る”という意思を持てば主人変更が出来るらしいが、 なんとなく相手がナギーじゃ絶対にやらない気がする。 ……それはそれとして、チャチャブー状態になってしまったものは仕方なしと、 ノートン先生が面白いことをしてくれたよ? この世界の何処かにある“肉焼きセット”を手に入れて、 頭の上に乗せればクラスチェンジが出来るらしい。 普通の肉焼きセットだとキングチャチャブーに、 高級肉焼きセットだとエンペラーチャチャブーになれるのだ! そうすることでなにが変わるのかというと、攻撃力と爆弾の威力が変わって、 頭に乗せた肉焼きセットの炎から、なんとチャチャブーファイヤが放てるようになります。 チャチャブー『ミギッ、ミッミギ〜♪』 兵士    「なんだ貴様!そこでなにをしている!」 チャチャブー『ゲェエーーーーーーーーッ!!!!』 チャチャブーダンスをしていたら、転移装置から出てきた兵士に見つかった!! 本気でびっくりしたもんだから、ミギーとかじゃなくて本気でゲェーって叫んでしまった! ……い、いや、それが普通の叫びってどうなんだ俺! チャチャブー『だがようこそキモスティン!今からキミをキモスト教にいざなおう!』 兵士    「なにをわけのわからんことを!───伝令!魔王の要塞にて侵入者発見!        奇妙な生物だ!もしや魔王の手先かもしれん!」 チャチャブー『ミギャ!?ミッ……ミギャァア〜〜〜イ!!』 なにやら腰にあったトランシーヴァーのようなもので連絡を取る兵士! ヌウウ!このチャチャブー、辛抱たまらん! 本能的なんだろうけどファンタジーが機械ごっちゃりワールドなのってちょっとやだ! せっかくファンタジーに来てるんだから、地界でもあるような技術じゃなくて、 もっとこう……自然に溢れたワールドを見たい! でも総合的に言えば楽しければいいから、思う存分楽しませてもらいますが! チャチャブー『ミギャア!』 兵士    「なにっ!?お、うおわぁあーーーーーっ!!」 伝達に必死で隙だらけの兵士さんに、鬼面族睡眠弾を投擲! 弧を描いて飛んだソレは兵士の左胸にトンとぶつかると、 ブシャアアと白煙を巻き起こらせる! 兵士 「ぶわっふぁ!な、なんだこれは───…………《ドシャア》」 突然のことに驚いた兵士だったが、煙を少し浴びただけであっさりと眠りに落ちた。 すげぇ……こんなところでしっかりとモンハンの力を受け継いでる。 まさか煙を吸うまでもなく、当たっただけで眠るとは……。 チャチャブー『これはいい……ヤバくなったら是非使おう』 ボス的存在には効かなそうだけどね。 さて、あとは眠ったこいつをクリスタルキモスティンまで運んで、 そこで小突いて起こすだけで十分さ。 あとは僕のボデ〜が誘惑してくれる。 チャチャブー『ミギャ〜〜〜ィィ』 鬼面をガタガタと揺らしながら背伸びの運動。 それが終わると兵士を持ち上げて、自然要塞目指して駆け出し─── 兵士大勢  『いたぞっ!あそこだ!』 チャチャブー『キャーーーッ!!?』 駆けつけた兵士に見つかった! そんなドッキリハプニングにビックリしたこの鬼面族は思わず振り向き、 その拍子に眠っている兵士の頭がゴドンゴと建物の支柱にヒット! 兵士1   「ぐわっ!?……ハッ!?お、俺はいったい!?」 チャチャブー『ミゲェエーーーーーーッ!!!?』 驚きの連続でした。 ていうかね!この体小さすぎ! 怪力なのはいいんだけど小さすぎ! これでどうやって安全に持っていけっていうんですか!? だがチャチャブーよ!ここは根性だぜ! ククク、この状況でこのチャチャブーがやる行動といったら───なんだろう。 いやいやとりあえず混乱してる場合じゃあ……ねぇぜ! チャチャブー『くらえ悪意の必殺!ゴールデンキャノンボォーーーーーーーール!!!』 兵士1   「《ルオブフォォオンッ!!》うわぁああーーーーーーっ!!」 そう!まずは兵士を兵士たちに投げつけて時間稼ぎだ! そして逃げる!この人数相手に馬鹿正直に戦ってられるものですか! チャチャブー『ミギャアアアアイ!!ミギャアアアアアアイ!!!』 パタパタと走る!全速力で走る!走……遅ぇ!! 解っちゃいたけど滅茶苦茶遅い!! 兵士2「なんだこの奇妙な物体は……」 兵士3「始末すればオロ様も文句はないだろう」 兵士4「そうだな」 エェッ!?なんだかとっても怪しい雲行き! 走……走ってぇえええっ!!もっと早く!もっと速く!! 兵士大勢  『くたばれぇーーーーっ!!』 チャチャブー『ア、アオア〜〜〜〜〜ッ!!』 一生懸命走ったけど無駄でした。 兵士たちにあっと言う間に追いつかれた僕は、 機械兵器を手にした兵士たちにボコボコにされた。 ───……。 ……。 そんなこんなで…… チャチャブー『グフフヘヘハハハハ……!俺はなんにも喋らねぇぜ……!        見た目はこんなにプリチーだが、        中は…………筋金入りさぁ!!《ベパァン!!》ニーチェ!』 妙な機械から吊るされたロープでグルグル巻きにされ、 王様の前に連れてこられたこの鬼面族が、 ロシア猫の真似をした途端に兵士にビンタをされたのが現在の状況。 どれだけ攻撃しても死なない僕に不安を抱いた兵士たちが、僕を拘束しやがったのです。 オロ 「…………おかしな生物だな。こんな生き物は初めて見る」 で、さっきも言ったとおり目の前にはオロキング。 玉座にどっかりと座って、片膝組んで顔の横に玉座に立てた手を当てている。 よくありの皇帝ポーズだ。 オロ    「お前、名をなんと言う?」 チャチャブー『無礼者!ここにおわすお方をどなたと心得る!』 オロ    「なに……?」 チャチャブー『恐れ多くも…………誰?』 兵士    「な、何故俺の紹介をしようとしている!?」 チャチャブー『いや、ノリで一般兵士の素晴らしさを        説こうかと思ったんだけ《ベパァン!》ニーチェ!』 またビンタされてしまった。 しかもその反動で、吊るされた体がグルグルと回転します。 オロ    「それで、名前は、と訊いている」 チャチャブー『俺はクゥ!人間にもらった名前だ!』 オロ    「クゥか。……さて、クゥよ」 チャチャブー『引っかかったなダボが!!この俺の名前はクゥではないわ!        やーいやーいだ〜まさ〜れた〜!!《バゴシャア!》ゲヴァーーーッ!!』 今度は思い切り殴られてしまった……。 チャチャブー『カカカカカカカ……!!《ピクピク……》』 死なないとはいえしっかり痛いです。 殴られた反動でゆらゆらと揺られながら、 鬼面の口からゲヴォゲヴォと血を吐いてぐったり夢気分。 あ、一応血は赤いようです。 オロ    「……これで最後だ。名はなんという」 チャチャブー『俺は呂布。字は奉先』  ドカドカバキゴドスガスゴス!! チャチャブー『ギャアーーーーーーーッ!!!』 どうしてか問答無用でボコボコにされました。 チャチャブー『な、なにをしやがる兵士〜〜〜〜っ!』 兵士    「最後だという言葉を聞いていなかったのか!貴様はもう終わりだ!」 チャチャブー『即答でウソ決定ですか!?いやまぁウソだけど!』 それにしたって拳でくるとは! 普通こういう時って問答無用で剣とかで……ねぇ? だがその意気やよし!ならば私も───誠意を以って応えねばならんな!! チャチャブー『《モキモキモキ……!》ぬおぉおおおおおっ!!!《ブチャチャァ!!》』 兵士    「なにっ!?工房特殊性のロープが!?」 鬼面族の怪力にて、強引にロープを千切る! そうしてシュタッと大地に降り立つと、大きく腕を伸ばして背伸びの運動! ……チャチャブーってどうして敵見つけると背伸びの運動するんだろうね? あのポーズ大好きだけどさ。 チャチャブー『ミギッ!ミギッ!ミィイイ〜〜〜ッ!!        ミギャアア〜〜〜〜〜〜イ!!!』 運動が終わればあとは実行あるのみ! なにを実行するかって!?もちろんいきなりラスボス殺人伝説! ボスを目の前にして素直に引き下がるほど、素直なストーリー守秘な性格なぞしてません! 鬼面族の棍棒(ギガノ封入)を手に、ミギャ〜と地面を走ってオロへと向かってゆく! ……遅い!やっぱり遅いよこれ! オロ 「……まあいい。名前など訊かずとも、どうとでもなるだろう」 僕が自分の遅さに涙しそうになっていると、 オロが玉座から立ち上がり、この鬼面族をねめつける。 すると、みるみるうちに彼を覆う高価な鎧がカタチを変え、 銃だの剣だのの武器に……なんですって!? オロ 「私の武器はこの機械鎧そのものだ。     丸腰だと思って向かってきたのだったら、不運だったな」 ……うん、こいつのあだ名、機械王ダイダロスに決定。 チャチャブー『死ねぇええーーーーーーーっ!!!』 だからってどうということもないけど、遅い助走を糧に一気に跳躍&アタック! ……した途端、機械銃からはガトリングばりの弾丸連射! 剣からはライトセーバーの剣閃めいたものがビムンビムンと発射され─── チャチャブー『な、なんだとぐわぁあーーーーーっ!!!!』 空中で蜂の巣&八つ裂きにされた僕は、無残な姿で床へとゴトリ。 な、なんたること……よもや、よもやこのようなことが……。 オロ 「……時間の無駄だったな。もういい、そいつを片付けておけ」 兵士 「ハッ!《ドゴォオン!!》ぐわぁーーーーっ!!」 オロ 「───!?何事だ!」 近づいてきた兵士に爆弾を進呈して爆発させ、立ち上がる。 チャチャブー『クフフゥ……!時間の無駄?もういい?馬鹿を言ってはいけません……』 鬼面の隙間から目を輝かせたい気分でゆっくりと立ち上がり、歩く。 グワハハハハ……不死身!不老不死!スタンドパワー!(立つ力的意味合いで) 貴様がいくら攻撃しようが、この俺が不死身な限りは俺のバトルフェイズは終わらないぜ! オロ    「ばっ……化け物かこいつ!」 チャチャブー『グエフェフェフェ……口調に余裕が無くなったなぁあ……!!        そうよ!この俺こそが魔王様第一の部下!鬼面族チャチャブー!        ……あ、苗字が鬼面族ね?チャチャブーは茶々武浮と書きます』 オロ    「───フン!だからどうした!私の機械王としての力さえあれば、        どんな化け物も私に太刀打ちなど出来ぬ!」 チャチャブー『ちなみに魔王様の封印は解いたから、        そろそろここに魔王様がいらっしゃる』 オロ    「なんだと!?それは」 チャチャブー『死ねぇええーーーーーーーっ!!!』 オロ    「なっ!?くあ《ギゴシャォウンッ!!》がはぁっ!?」 僕のデマカセにハッとして、出入り口を見た彼に奇襲! 棍棒が当たる瞬間にエモノをギガノタウロスの斧に戻し、 ビームサーベルの柄へと一撃を加えてへし折る! オロ    「き、貴様ぁああ……!」 チャチャブー『ゲェエエフェフェフェフェ……!!愚かよ愚か……!        戦闘の最中に余所見をするなど、        攻撃してくださいと言っているようなもの……!        ───さあ魔王様!今です!こいつをブチノメしてください!』 オロ    「───っ!」 ダイダロスではなく、その後ろを見て高らかに! すると予想通りダイダロスは後ろへと振り返り チャチャブー『死ねぇええーーーーーーっ!!!』 オロ    「はっ!?《ザゴゴキャアンッ!!》ぐわぁああああああっ!!!」 隙だらけの背中に痛恨の一撃! 鎧はへしゃげ、パーツはバラバラになり、 皇帝服を着ただけのダイダロスがここに誕生した……! オロ    「はっ……ひっ……!」 チャチャブー『所詮貴様も人の子よ……武具がなければなにも出来やしない。        人の言葉に惑わされ、隙を出し、武具が無くなれば雑魚同然……        知るがいい人の子よ。どれだけ武具の力で権力を握ろうとも、        その権力を自分のみの力だと思うようではクズ以下よ』 オロ    「ひ、ぃ……!」 武具が無くなった途端に、こんな小さな存在の前で震え上がるダイダロス……かっこ悪い。 さっきまでの余裕が微塵にも感じられん……こんなのが王でいいのか? などと思っていたらダイダロスはひざまずき、なんと─── オロ 「た、たすけっ……助けてくれぇえっ!!」 なんと許しを!命乞いをしてきたのだ! 思わず唖然!───するわけがなかった。 チャチャブー『だが断る』 オロ    「へひっ?」 栓を抜いた鬼面族爆弾を無造作に、ひょいと投げる。 王の命乞いごときで動揺するこの鬼面族か! ワハハハハ!俺は人種差別なぞせん! 王だろうが人である限りは、敵と決めたら敵だ馬鹿め!! オロ 「ぐっ!」  ゾフィンッ!───パゴォオンッ!! チャチャブー『ぬう!』 だが、投げた爆弾は空中で切断、分解して爆発! 原因は、ダイダロスが振るった超震動波ブレードの所為だろう…… やはり武器を隠しておったわグオッフォフォ……! 人をあざむき裏をかくという所業で、この博光を出し抜けると思うたら大間違いだ……! オロ    「……フンッ、近づいてきたところを切り刻んでやろうと」 チャチャブー『死ねぇえええーーーーーーっ!!』 オロ    「なにうわ待てぇえーーーーーーっ!!!」 わざわざの御託をありがとう! 愚かにも会話モードになっていた彼目掛け、 ギガノアックスを振りかぶりながら飛び掛かる! が───ギャギィイイイインッ!! チャチャブー『なにぃ!?』 咄嗟に振るわれた超震動波ブレードが、我がアックスインパクトを防ぎおった! しかもその途端に斧に物凄い震動が伝わって、……うぬう!斧が軋んでおるわ! このままでは───! チャチャブー『柳……お茶……』 オロ    「なに!?《ドゴォオオオオンッ!!》ぐおわぁああああああああっ!!!」 砕かれそうなら不意を突けばいいんだよ。 それが出来ないのは兄さんが満たされているからに違いねー。そういうことにしとこー。 というわけで、斧を圧迫してニヤニヤしていたダイダロスに爆弾を投げ、 ゴロゴロズシャーと吹き飛ばしました。 その拍子に落としたブレードを僕は見逃さない! すぐにそれを拾うと、機械鎧もしっかり回収! なにをするっ!と怒号を上げて起き上がったダイダロスを無視して、 床をザンザカと掘ったのちにその中へダイヴ! ワハハハハ!チャチャブーはそこがどんな場所であろうが、 無理矢理穴を掘って逃げることが出来るのさ! 代わりに鬼面を置いていきますが。 さて、これをナギーのバックパックに便利に収納してもらったのち、 ダイダロスを仕留めにいきましょうか。 そうすればこの帝国は俺のものっ…………! 完成する…………!野望の帝国………………! ……。 ゴゾゾゾゾゾ!!ゴバァンッ!! チャチャブー『ミギィーーーッ!!』 そんなわけで自然要塞前。 硬い床を掘り進み、やってきたそこを登ってナギーの袂へ。 ………………ていうか……あれ? なにやら信者が随分と増えているような……。 チャチャブー『誰ぞ!誰ぞある!』 ナギー   『《ズザァッ!》ここに』 発言より3秒以内に、文字通り飛んできたナギーが僕の前にひざまずく。 ぬう、なんという速さよ……!今はその速さが羨ましいです。 チャチャブー『確認してきたが、どうやら誰かに攫われる場合は        貴様から離れても行動できるようだ!        そしてあのー、なんですかあの兵士の海』 ナギー   『……キモスト信者なのじゃ』 チャチャブー『うん…………それはその……なんとなく解るんだけど……』 ナギー   『兵士どもがの、        今のヒロミツがクリスタルから出てきたのをどうしてか知ってての。        それを調べるために来たのじゃが……』 ……光あれ、で洗脳されてしまったと。 すごいぜ僕らのキモスティン。 耳を傾ければ、キモスト様〜キモスト様〜と、 まるで念仏のような高低中間キーで聞こえてくる信者の声。 ……近づきたくても近寄れない雰囲気の完成である。 ナギー   『これからどうするのじゃ?ヒロミツ』 チャチャブー『うむ。とりあえずこれをバックパックに入れてくれ』 ナギー   『?……なんなのじゃ?これは』 チャチャブー『帝王オロの装備だ。破壊してかっぱらってきた』 ナギー   『お、おおお……さすがヒロミツよの……!        目覚めたばかりで急にそこまでの無茶をしてくるとはの……!』 チャチャブー『これからトドメ刺しに行こうと思うんだ。        そして帝国を大キモスト帝国にする』 ナギー   『……大ヒロミツ帝国にせぬか?        どうにもキモストは崇めていたくないのじゃ』 チャチャブー『うん……正直僕も……』 でも自分の名前が帝国の名前に使われるのはごめんだなぁ。 チャチャブー『ところで今の僕って人間やめてるよね?』 ナギー   『どこをどう見ても人形なのじゃ』 チャチャブー『…………これからは僕のことをカルコブリーナと呼んでくれ!』 ナギー   『嫌じゃ』 即答でした。 しっかりと、ヒロミツはヒロミツなのじゃと付け加えられて。 グゥウ〜〜、しかしこのままでは名前が長ったらしくて……。 チャチャだと某プロレスリングの隠しレフェリーみたいだし……じゃあブー? どこぞのピンク色の魔人みたいでいやだ。 魔人ってところはステキだけど、 俺が欲しい魔人の称号はそういった特殊なものじゃないんだ。 魔的存在の人間を目指しているのだ俺は。勇者をブッ潰す悪役、それが魔人。 ……勇気の対象言語ってなんだろ。 正義なら悪、優しさなら厳しさ。さて、勇気の対象は?……臆病!! 臆病な者!人はソレを臆者(ヨクジャ)と呼ぶ! またはオクシャとかヨクシャとかムネジャとか。 “月の意”と書いて“臆”……月光竜のパパとして相応しい名じゃないか。 チャチャブー『俺、決めたよ!これからは北斗の犬と呼んでくれ!』 ナギー   『断るのじゃ!……でも何故じゃ?』 チャチャブー『しっかりと断ってからの意見、痛み入ります。そして意味などありません』 ナギー   『なるほどの』 納得してくれたこの子は本当によい子に捻じ曲がってくれました。 チャチャブー『ではナギーよ、        このチャチャブーをダイダロスのもとへと運んではくれまいか』 ナギー   『無理じゃの。わしはこの空洞から出られんようになっておるのじゃ。        ところでダイダロスとは誰じゃ?』 チャチャブー『機械王……オロの本名だ!』 ナギー   『なんじゃと!?ヤツの本名はダイダラボッチというのか!』 チャチャブー『え?……うむ!!』 さっきダイダロスって訊き返したくせに、 いきなり名前を間違ってるナギーにその通りと頷いてみせた。 ぬ〜べ〜もきっと喜んでくれるさ。 ナギー   『なるほどの……名を隠しておるとは中々に姑息なやつよ』 チャチャブー『姑息ではまだ足りん。        状況に応じて外道にならねばこの乱世、敗北など目に見えておるわ』 命乞いをまともに受け止めるんじゃない。 命乞いを聞いてなお、だめだと唱えられる修羅であれ。 つまりケンシロウのような男でありなさいと。 しかしまいったなぁ……ナギーはここから出られないのか。 じゃあ機械王がこっちに来るまで待つしかないってこと? しまったなぁ、トドメ、刺しておくんだった……このチャチャブーとしたことが。 チャチャブー『じゃあしょうがない、ここで地道に…………地面掘って逃げ出すか』 ナギー   『なるほどの!』 やることが決まった!機械ってのはホラアレだよ。 機械と機械同士がくっついてて、初めて効力を表すのだ。 だからね?ここに張られた精霊封殺結界も、 床の下とか地面の中とかを掘り進めば逃げられるわけです。 そして幸いにも僕はチャチャヴー。地面掘りなら任せてもらおう! ……あ、ちなみにダイダロスの部屋に置いてきた鬼面は今頃消えていることでしょう。 そして地面から出てきた時点で、僕の顔にはニュー鬼面が。 どういう原理かは知らないが、そうなるようなので。 チャチャブー『では外に出るために、まずは穴を掘ってくる!        貴様とシードが辛うじて通れる程度の大きさがよかろう!        えーと……結界が張られてるのは主に出入り口とかであるか!?』 ナギー   『サーイェッサー!!』 チャチャブー『うむそうか!ならばいっそ壁のすぐ下を掘るとしよう!        そうした方が労力が少なくて済むからな!』 そうと決まればレッツビギン! 俺はミギィ〜と叫びながら空洞の壁までを走り、そこの地面をザリョザリョと掘り始める。 ……不思議だよな〜、こんなオモチャみたいな手で床が掘れるんだゼ? ───……や、ゼじゃないね。 えーと、ここをこうして……ナギーの体の大きさを想定して……と。 チャチャブー『ナギーよ!』 ナギー   『なんなのじゃー!?』 チャチャブー『貴様!肩幅はいかほどか!』 ナギー   『測ったことなどないから解らんのじゃー!』 チャチャブー『ぬうそれは迂闊!        このチャチャブーも自分のサイズなどそういえば知らん!』 そもそもガッコ卒業したら、大体測らないよな。 社内測定でしたのが最後だったか?まあいいけど。今チャチャブーだし。 チャチャブー『よし掘れたぜ〜〜〜っ!!ナ、ナギ〜〜〜ッ!通ってみるのだ〜〜〜っ!』 ナギー   『わ、解ったのじゃ〜〜〜〜っ!!』 無意味に肉語を駆使して、ナギーと僕は穴をくぐります。 するとナギーが穴の途中……丁度壁があるところで進めなくなってしまう。 ナギー   『…………通れないのじゃ』 チャチャブー『よし!ダイエットだ!』 ナギー   『なななにを言い出すのじゃヒロミツ!        べつにわしが太っているから通れないわけではないのじゃ!』 チャチャブー『ナギー……太っていることは恥ではないよ。このデヴ』 ナギー   『ちっ……違うのじゃー!!壁なのじゃ!見えない壁があるのじゃー!!        断じてわしが太っているからではないぃいっ!!』 チャチャブー『なっ……なんだってーーーーーーっ!!?        うそつくなてめぇ!見よ!このチャチャブーは自由に行き来できるぞ!?』 ナギー   『それはヒロミツが精霊ではないからじゃ!うそではないのじゃー!!』 チャチャブー『うむ僕精霊じゃない!……つーかどういう種族になるの僕!        鬼面族!うむそれは間違いない!        だが種は!?亜人!?奇人!?変人って言ったらグーで殴る!』 ナギー   『ヒロミツ!それは種ではないのじゃ!落ち着くのじゃ!』 落ち着いております! 落ち着きながら元気なのです!そうさ、それだけさ! なんて思っていたとき、 兵士 「ヌ……なにか声が───!?お前ェエ!!そこでなにをしているゥ!!」 見回り交代の時間なのか、 ビジュンと転移してきた兵士が僕らの声に反応して襲い掛かってきたのだ! チャチャブー『ヤベェエエエエエエッ!!        デケェ声出しすぎたァアアッ!!』 ナギー   『その声がデカいのじゃ!        この声もデカいのじゃーーーっ!!』 そんなわけであっさり見つかりました! だが恐れることなかれ! 詰まってるナギーを押して無理矢理穴から出ると、ナギーの頭の上へとセットイン! チャチャブー『さぁずらかるぞナギー!目標!クリスタルキモスティン!』 ナギー   『ラーサーなのじゃー!!』 こうなれば次に取る行動など決まっている! 兵士をキモスティンまで誘導し、輝きの前に信者にするのだ! ……いやもうどんな邪教なんでしょうね、ここ。  キミも今日からキモスト教!  クリスタルに包まれたイエス・キモスト様が貴方を導きます!  イエスっていうかノーと言いたくなるけど御容赦を!  入会金年会費一切無用!その代わり夢と希望を僕にください。  さあ!あなたもキモスト信者に!  今なら見学するだけでもお菓子が配布されます!  ケロッグ・コーン・キモストで今日からキミも神オムツだ!  キモスト教信者のみなさまからはこんなお便りが寄せられています。  キモスト教に入会してから毎晩うなされるようになりました  キモスト教に入会してから午後三時になると腹痛に襲われます  キモスト教に入会してから無償に裸になりたくなりました  キモスト教に入会してからポリスのお世話になりまくりです。モテ効果抜群ですね! …………。 チャチャブー『……なんてキャッチフレーズはどうだろう』 ナギー   『それでいったいなにがキャッチ出来るのかを知りたいのじゃ……』 チャチャブー『もちろん不評である!』 ナギー   『なるほどの!!』 兵士    「待て貴様ら!床を滅茶苦茶にしやがって!」 兵士の猛攻から逃げながら、それでも僕らはいつも通り楽しんでおりました。 ナギーの頭から生えた日本のテールさんをキュッと掴んで、 兵士の行動に合わせてソレをクイクイと軽く刺激し、 そっちだあっちだとナーギーズコントロール! ナギーとて力が封印されてるわけでもないから、 兵士の猛攻などひょいひょいと避けられる。 ……問題があるとすればあのスタンロッドだ。 あれを当てられたら、いかに精霊といえどアウトだ。 鬼面族も状態異常には滅法弱いから、多分一撃でも喰らえばアウトだろう。 兵士    「くっ!すばしっこいやつめ!」 チャチャブー『すばしっこい?てめぇが遅いんだよクズが』 兵士    「ギィイイイイイイッ!!!!        お、俺はこれでも昔ッからかけっこで負けたことなどないんだ!」 チャチャブー『そうか。そりゃよかったな。だが……世界じゃ二番目だ』 兵士    「ぐおおおおおおお殺す!こいつ絶対殺してやる!!        こんなカタカタ頭のヤツにカッコイイ諭され方されたってだけで屈辱だ!」 そんな問答をしつつ、ひらりひらりと魔手を躱し、自然要塞まで辿り着く。 そのままの速度で止まらず、自然の螺旋階段を軽快に上るナギーは、 もはやこの場所で過ごすのは飽きたといわんばかりの慣れっぷりだ。 目を瞑ってても登れると言いそうなくらい、軽快だったから。 兵士ももちろんついてきているんだが、 急ぐあまりに樹に足を取られては倒れそうになっている。 グホホ、愚かよ。 この道は自然に身を委ねつつ走らなければ、到底速くは走れぬわ……あ、コケた。 チャチャブー『ジョー起きて!ジョー!!』 兵士    「〜〜〜っ……ぐあぁああああああっ!!」 もはやこのチャチャブーの声を聞くのも嫌なのか、 ガバッと起き上がった兵士は血走った目で僕らを追いかけ始めた! そんな彼に、途中でブチブチともぎり取った木の実をデシデシと投げてゆく。 チャチャブー『悟空、修行じゃ』 兵士    「《ドゴドスベシデシ!!》いでででうぁでで!!き、貴様あぁああっ!!」 チャチャブー『兵士よ……上がってこい。        貴様ならきっとそれが出来る……できなくても責任取らないけど』 兵士    「殴るっ……!絶対に一発だけでも殴ってやる……!」 もはや涙目でございます。 それでも追いすがってくる必死の眼差しに、僕は─── チャチャブー『悟空、修行じゃ』 兵士    「《ベシデシゴスガス!!》あでででで!!」 やっぱり木の実を投げました。 同情?そんなの、した上で投げるぜ俺は。グオッフォフォ……!! ナギー   『ヒロミツ!着いたのじゃ!』 チャチャブー『ぬう!?』 なんといつの間に! 兵士にドングリとか投げるのに夢中でこのチャチャブー、気づかなかったわ! これはチャチャブーうっかり! ……テユーカ……ウワァ、改めてここに辿り着いてみると……信者の数が異常だ……。 深くにもこのチャチャブー、キモストの慕われっぷりに嫉妬してしまいそう……! 兵士 「はぁっ……ぐはぁっ……!お、追い詰めたぞ……!     よくも……よくもこの俺に向かって……───なんだこの光わぁっ!?     な、なんだこれは!魔王が輝いて……うぐっ!?     なんだ……!?目が……っ!目が離せな……ぐあぁああああっ!!」 そして僕らが何をするでもなく、兵士がケロッグコーンキモスト。 網膜にこびりついて忘れられない輝きを前に、目を逸らすことも出来ずに入会した。 ……そして光に気づいてからきっかり10秒後。 そこにはキモストを崇め、跪く兵士の姿がありました……。 チャチャブー『…………』 僕もこんな風に崇められてみたかったなぁ……。 なんて、少しだけ思いながら、ナギーとともにその場を離れた。 えーと……結局、なんだ。 僕らは誰かがここに来て、結界発生装置を破壊してくれなければ出来ないわけで。 しばらくここで時間を潰すしかないわけだ。 その暇つぶしってのがまあ、キモスト教……ってことになるんだろうね。 チャチャブー『………』 試しに壁全部破壊してみようかな……無駄でもいいから。 帝国側に迷惑かける行為をしてれば、きっと他の見回りのやつらが来てくれるさ。 そしたらみんなみぃんなキモスト教! ……うん、暇だしそれでいこう。 チャチャブー(……どうせならキモストじゃなくてドナ様の姿でいればよかった……) 後の祭りってやつです。 だが間違うな博光よ、ドナ様の姿を模すなど、いくらなんでも恐れ多い。 だからきっとキモストでよかったのよ。 そういうことにしとこう。 チャチャブー『さあナギー!これから忙しくなるぞぅ!』 ナギー   『うむ!……なにをするのじゃ?』 チャチャブー『うむ!まずシードを呼び、ここを覆う建物を破壊します』 ナギー   『なんじゃと!?そんなことが出来るのかヒロミツ!』 チャチャブー『ナギー……キミタチは精霊と魔王の子。        確かに通れないだろうし、魔法も無効化されるでしょう。        ですが思い出してください、        あなたにもオンスロートという接近武器があるということを。        そしてピーチパ───』 ナギー   『お……おお!なるほどの!        閉じ込められたショックで気づきもしなかったのじゃー……』 チャチャブー『………』 ナギー   『……?どうしたのじゃ?』 みんな……ピーチパイ嫌いなのかな……。 そりゃあ……俺も食ったことないけどさ……。 ナギー   『じゃがシードはキモスト信者になってしまっておるのじゃ。        どうするのじゃ?呼んでも来ないじゃろ』 チャチャブー『なんの、僕とシードの信頼関係はキモストになぞ負けません!        ……あれが俺だって時点でかなり危ないけどね?』 内心ドキドキです。 もしこれで届かなかったら泣いてしまいそう……! い、否!きっと大丈夫さ! だって今の僕チャチャブーだし、 届かない可能性の方が高いんだから、無料の博打と考えれば問題無しさ! この思い……トルネードに乗せて!! チャチャブー『シード!我が子よ!父はここであるぞ!        僕とともに果てないワンダーランドへと旅立とう!!』 シード   『はい父上!!《シャキィーーン!》……ハッ!?僕はなにを!?』 おおっ!?一発で復活した! おおシード……!僕のシード! チャチャブー『シード!博光はここである!半裸オムツに惑わされるな!        僕はこっ……うぐっ……うぅう……』 ナギー   『はわうっ!?どうしたのじゃヒロミツ!なにを泣いておるのじゃー!』 自分で自分のことを客観的に半裸オムツと呼んだのが、思いの他突き刺さった瞬間でした。 でも挫けない!半裸だっていいじゃないか! もはや恥じも外聞もいらん!突き進め俺ロード! そうやって俯かせていた顔をバッと上げると、 視線の先でシードがきょろきょろと辺りを見渡し…… こちらを、というよりナギーを見つけると走り寄ってきた。 シード   『おいドリアード!父上の声がしたんだ!        いや、正確には声はまるで違ったが、それでもあの口調は父上のもの!        もしや父上はもう封印から解かれているのか!?        いやそれよりも光輝く父上を見てからの記憶が曖昧なんだ……!』 ナギー   『忙しいやつじゃの……質問は一点に絞って明確に放つものじゃぞ?』 チャチャブー『ミギー!』 シード   『───』 チャチャブー『やあ』 シード   『父上!』 やあって挨拶だけで父と認識されてしまった!!! え……俺ってそんなにやあやあ言ってる!?…………言ってるね、うん……。 シード   『どうしたというのですかその格好は……!ハッ!?もしや!』 チャチャブー『う、うむ……そのまさかだ……。全てはジーラ……ヤツの呪いが原因よ』 ナギー   『なんじゃと!?』 シード   『や、やはり……!またしても……またしてもジーラ……!        どこまで僕らを脅かせば気が済むっていうんだジーラ……!』 チャチャブー『………』 神様、僕はこんな素直な子供たちが大好きです。 思わず微笑ましいものを見る目でシードを眺めてしまいました。 ナギーは……僕自身がナギーの頭に乗ってるので見ることが出来ません。 チャチャブー 『まあ今はジーラのことは捨ておこう!         こうして自由に出来る体も手に入ったことだし、         まずはこの帝国を潰すことから始めるものとする!』 ナギー&シード『サーイェッサー!!』 チャチャブー 『よいかナギー!シードよ!         まずは武器を手に、自然要塞を囲う機械を破壊するのだ!』 ナギー&シード『サーイェッサー!!』 チャチャブー 『魔法は恐らく効かぬだろう!故に力の限り、破壊活動にいそしむこと!         ただし大樹を傷つけてはならぬ!いいな!』 ナギー&シード『サーイェッサー!!』 チャチャブー 『うむ!そして兵士が駆けつけた場合は、         あそこで輝くシャイニングキモストで誘惑!         キモスト信者にするものとする!』 ナギー&シード『サーイェッサー!!』 チャチャブー 『ただしくれぐれも自分自身が見てしまうことがないよう気をつけろ!』 ナギー&シード『サーイェッサー!!』 チャチャブー 『うむよし!ではこれより作戦名:大帝国キモスト教化活動を開始する!         総員、力の限り楽しみつつ尽力せよ!         イェア・ゲッドラァック!ラァイク・ファイクミーッ!!』 ザザァッ!! ナギー&シード『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 久しぶりの見事な号令&敬礼を前に、なんだかぐっとくるものがあった。 あ、やばい……泣いちゃいそう……! ……ともあれ、僕らの布教活動が始まります。 布教どころか腐教な気もしないでもないけど。 大丈夫さ、邪教だろうと崇める心に偽りなし!……矯正誘惑伝説だけど。 では参りましょう……ククク、誰かが助けに来るのが先か、 はたまた帝国がキモスト大帝国に変わるのが先か……今から楽しみだぜ〜〜〜っ! 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