───冒険の書04/死人の森───
【ケース71:弦月彰利(再)/あるゥ日♪森のォ中♪……ゾンビに出会いました】 中井出「でっ……!!     なんだってまたアンデッド生息地帯を突っ切らなけりゃならんかなぁ!!」 彰利 「死が関連するイベントの文句はイドに言えイドに!!     俺だって腐ったヒトとか動く骨なんて見たくねぇよ!!」 南無 『呼んだほね?』 総員 『骨は間に合ってるから出てくんなっ!!』 南無 『うわヒッデェほね!!』 前略親友様……いきなりでありますが、今僕らは死人の森に居ます。 『しにん』ではなく『しびと』です。 ここに入る前に居た冒険者NPCの話じゃ、 なんでも最近ここらでアンデッドの数が増えてしもうてるんだとか。 だからこそエーテルアロワノンがアンデッド族に襲われたり、 普通の森が瘴気に当てられて死人の森になったりしちまってるんだとか。 その原因がどこぞの『ごうつく王』の所為って噂もあるそうです。 太古の古墳って場所を漁って、眠れる太古の王を起こしちまったんだとか。 で……多分、それがあの斉王なんだと思います。 王の怒りって人間の王を度外するとなんでも怖い気がしますね。 ちゃんと実力伴ってる王だし。 彰利 「んでシグマっちは!?」 丘野 「見失ったでござる!あの者、口だけかと思いきや腕も立つでござる!!     アンデッドどもを一撃で軽く退けていたでござるよ!!」 凍弥 「傭兵の名も伊達じゃないってことか。よし、だったらこっちもだ!     いけパーシモン!!相手が人型なら対人用攻撃が通用するってことだ!」 柿崎 「いけじゃなくて自分もやろうとか思わないのかお前は!!」 凍弥 「ぬおお、持病の癪が……!!というわけで任せた」 柿崎 「お前なぁ……!!」 豆村 「つーかおい刹那!あのオリバって言われてた人、強ぇえぞ!?」 刹那 「なにぃ!?───ってうわぁマジだ!!」 言葉に誘われてチラリと見れば、 まるで舞うようにして次々とアンデッドどもを吹き飛ばす藍田というかオリバの姿。 そのすぐ近くには木村夏子がおり、 彼女を主人として認めた執事としての彼の能力はやはり並々ならぬものがあった。 それは精霊野郎を主人として認めているノアさんと、 穏やかほんわか少年澄音っちを主人として認めているレイラ殿も同様である。 が、やはり男と女としての基本STRなどの差とオリバ効果には敵わない。 って……そうだよそう、俺まだ自分の変身後の能力を全然使ってなかった。 確かシステムナビ開いて、変身能力のオン/オフ設定で切り替えられたんよね? ではオン、と。 彰利 「よっしゃ!これでプロレス技で有利に───」 ゾンビ『ウゥウウウ〜〜〜ゥウウウ〜〜〜……』 彰利 「有利に……」 グール『ルェエエゥウウウ……』 彰利 「有……」 ……無理です。 俺、素手であんなやつら触りたくない。 かくなる上は!! 彰利 「夜華さん!システムナビで変身後能力セットイン!!」 夜華 「な、なに!?しすてな!?なんだそれは!!」 彰利 「システムナビですよ!!     それを設定すればペィングィン様の特殊能力が使えるのです!!」 夜華 「なっ───嫌だぞわたしは!口から『ぶりざど』とかいうのを吐くのは!!     大体わたしは『きかい』の操作など解らん!!     『すてたす』の割り振りは教えてもらったからなんとか出来る程度だ!!」 彰利 「えーがらえーがら!!よいですか?まずステータス画面を開きます。     するとその画面の一番右上に『SYS』って英語があるからそこに意識を集中」 夜華 「……?こ、これか?」 彰利 「そしたら文字列の一番下にある『変身後能力のオン/オフ』ってのをオンにする」 夜華 「………………〜〜〜〜……」 難しそうな顔をしつつ意識を集中。 すると夜華さんの頭の上に『変身/オン』という文字が現れた!! 彰利 「さあ夜華さん!レッツブリザードブレス!!」 夜華 「は、吐き方なんて知らない!!いきなり言われたって知るもんか!!」 真穂 「って、篠瀬さんに弦月くん?     篠瀬さんだったらブリザード吐くなんてこと出来ないよ?」 彰利 「なんで!?」 真穂 「だってほら、篠瀬さんってみんなで集まる前にペンギンやめたんでしょ?     新しく風来のシレン外伝のアスカになってた気がしたけど、違うの?」 彰利 「あ」 ウゲェ……忘れとった。 そいじゃあなに?夜華さんの変身後の能力って……刀剣技力アップ? 春菜 「アッくん!問答はいいから手伝って!     アンデッドって打撃の方が効くみたいだからモンクの力が必要なの!」 彰利 「アイアイサー!!では夜華さん!健闘を祈る!!」 夜華 「なっ……待て!人に物事をやらせるだけやらせておいて逃げるな!!」 走り出したオイラを夜華さんが追う。 で、俺が向かった先にはアンデッドどもがわらわらと。 紗弥香「きゃやややややああああああっ!!!!!     こここ来ないで来ないで来ないでぇえええええっ!!!!」 柾樹 「ごあぐげががががっ……!!さやっ……さやがざっ……!!首っ……!!     首が絞まってゴアアアア……!!!」 豆村 「おお友よ!顔が紫に変色していってるぞ!!」 刹那 「綺麗でステキ!私みたい!」 柾樹 「ギブ……ギブゥ……!!」 一部の人々がスプラッタな状況に泣き叫びまくってはいるが、 あれで案外上手くやってるのが不思議なもんでした。 ともあれ─── 彰利 「ほりゃあ!!」  ゴバァン!! スケルトン『ゲアッ!?』 スケルトンの顔面をナックルの一撃でブチ砕く。 すると身体はカラコロとステキな音を鳴らしつつ崩れさる。 やっぱ弱点は頭か。 そうと決まればドロップキック!!  バゴォオーーーーンッ!!!!───ギシャーン♪ 勢いのついたドロップキックを、横から仁美さんを狙っていたスケルトンに贈呈。 スケルトンの頭は綺麗なドロップキックを受けると景色の彼方まで吹っ飛んでった。 ……ふう、爽快。 丘野 「しかしやはりキリがないでござるよ!!     ここはさっさと抜けた方が賢明のようでござる!!」 遥一郎「同感だ!!さっきから何体倒しても土から現れてくる!!」 俊也 「しかもこいつらほとほとザコだ!経験値が物凄く少ない!!」 彰利 「グ、グゥウウウ〜〜〜〜ッ」 そういや確かに経験値は入るには入るけど、レベルアップまですぐってわけでもない。 そうこうやってるうちにとうとうドシュウと腕を齧られたりする誰かさん。 柿崎 「い、痛ぇえーーーーーっ!!!」 鷹志 「パ、パーシモンが噛まれたぁーーーーっ!!!」 凍弥 「相手はゾンビ……ぬおお、     これではおはようからおやすみまで暮らしを見つめることも出来ん」 柿崎 「訳解らないこと言ってないで助けろよ!!」 凍弥 「いや、つまり腐肉が服についたら洗うこともままならんからさようならラ○オン。     もはや暮らしに夢を彩ることすらままならない……解るな?」 柿崎 「革の鎧が汚れることと友の命を天秤に掛けんなぁああーーーっ!!!」 来流美「ていうかもう走り抜けたほうが良くない!?キリが無いわ!!」 清水 「こんな時にステキな助っ人とかお助けNPCとか居ないのか!?」 彰利 「ウルトラマンとか?」 清水 「あんな登場シーンがニューヨークで火と本持って立ってる邪神教の御本尊みたいな     正義のヒーローなんざ知らん!!」 ヒドイ言われようだった。 しかも自由の女神は邪神教とは関係無いと思う。 とりあえずパーシモンの腕に噛み付いてるゾンビはモゴシャアと蹴り飛ばすとして。 彰利 「とにかく皆様!剣士とモンクが盾になるから、一気に駆け抜けて抜けますよ!!     よいかね!?絶対に逸れるんじゃあねぇぜ!?」 春菜 「う、うん解った!!」 中井出「では総員!一斉に10分アビリティを解放せよ!60秒でケリをつけるぞ!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「なお忍者の丘野二等兵はもしものためにアビリティを温存しておくように!」 丘野 「サーイェッサー!!」 中井出「ではアビリティを使用次第───突貫ンンンーーーーーーーッ!!!!!」 ザザッ!!! 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 総員が一斉に10分アビリティを使用!! それとともにアコライトたちの『漢神の祝福』も発動し、 HPMP完全回復&アコライトの数だけ25%力がアップ!! アーチャーは弓で攻撃した場合の攻撃力と命中率が大幅にアップし、 刀士は刀攻撃のみの場合攻撃速度が上昇し、連ね斬りと一閃が使用可能に。 シーフは回避能力アップと『ローバーアイテム』を確実に成功させるようになり、 魔物使いは───なんと『仲間にする』とかじゃなくて敵を壷に吸い込んだ。 そして次に壷から出した時、敵だった魔物が一時的に仲間に!! 田辺 「いけ矢島!じゅうまんボルトだ!!」 グール『ルェエエエエエエォオオ!!!!』 田辺が壷から出したグールを敵に向けて放った! するとそのグールはあっという間もなく骨やゾンビに囲まれてボッコボコ。 10と経たずに地に還った。 総員 『弱えぇえええええええっ!!!!』 盾にもならん弱さでした。 これならば普通に攻撃した方が遙かに強い。 なんたってアコライトの人数分パワーアップしてますし。 彰利 「邪魔するヤーツは指先ひとーつでー♪ダウンさー♪」 ペシンッ♪ボゴッチュウウウウン!!!! スケルトン『ギャアア!!!』 彰利   「キャーーーッ!!!?」 面白半分でデコピンしてみたら、スケルトンの額があっさり砕け散りました。 ……すげぇ、すげぇよ漢神の祝福……。 思わずデコピンしたこっちが驚いちまった……。 彰利 「真穂さーーーん!漢神の祝福の効果時間ってどれくらいだったっけーーーっ!?」 真穂 「えと───修正されたみたいーーっ!!     STRアップ効果は1分だけで、次に効果があるのが30分後だってーーっ!!     10分経てば使えるには使えるけど、     その場合STRアップ効果は無いってーーーっ!!」 彰利 「なんと!?」 森を駆けながら話す───が、何気にショックだった。 この漢神の祝福、かなり面白いんだが……。 しかもこの圧倒的っぷりを見て、案外悠介が修正入れるやもしれん。 つーか普通にこうやって上乗せ出来たのが不思議なくらいだ。 やっぱジョブ特性の方は最初設定したまま点検してなかったんかな。 まあいい、今はこの一分間を大事にしましょう!! 丘野 「ふははははは!!強い!強いでござるよぉおおおーーーーっ!!!!」 と、ウムと頷いたその遙か先では丘野くんがアンデッドどもをひとりで蹴散らしていた。 忍者特有の速度と疾風のスカーフの付加能力と漢神の祝福あってこその暴走だった。 ええのう、あのスカーフ。 ペペラペッペペ〜♪ 丘野 「おお!レベルが上がったでござる!」 ペペラペッペペ〜♪ 藍田 「お───こっちもだ!」 彰利 「なんと!?」 凍弥 「よし、こっちも負けてられないな!さあ行けパーシモン!!」     今こそ独身男性の力を見せてやれ!!」 柿崎 「大きなお世話じゃあっ!!」 遥一郎「遊ばれてるなぁ……とはいえ」 ノア 「マスター、下がってください。道はわたしが開きます」 遥一郎「あ、あのなぁノア?そうやって来る者来る者破壊されてると、     俺のレベルが一向に上がらないんだが……」 ノア 「マスターの手を汚すわけにはいきませんから」 遥一郎「箒とかなら汚してもいいのか……」 ノアっちが振るう武器は女中さんらしく箒とおたまと包丁などでございます。 防具は和服に割烹着という女中さんスタイル。 金髪のコに和服ってのは悠介的に嫌だろうが、 こればっかりはしょうがないと踏んだらしい。 彰利 「よっしゃ突っ切りますぞ!」 総員 『おうさーーーっ!!!』 ゼット「チィ……!なんという無様か……!この黒竜王が敵前逃亡とは……!」 彰利 「そうは言ってもキミ、     空界での悠介との闘いの時、みさお食うために逃亡したじゃん」 ゼット「今すぐ忘れろ!!」 彰利 「逃げたこと?みさおを食ったこと?どっち?」 ゼット「どっちもだ!!」 彰利 「ぎょ、御意」 物凄い迫力で怒られました。 とはいえ…… 彰利 「あのー、夜華さん?なにやらアンデッドの皆様が、     ギャーギャー叫びながら追ってくるんですけど」 夜華 「わたしに言われても知るかっ!!」 彰利 「グ、グゥウウ……」 皆さんこの状況に少々参ってるらしい。 そりゃね、アンデッドの皆様と戦い続けてりゃ精神的に疲れるのは解るけど。 しかも悠介や精霊さんたちの協力の下に作られてるから、 なにからなにまでリアルなんすよこれ。 だから……ねぇ?解るでしょ?ゾンビとかってハッキリ言って目も当てられんわけですよ。 彰利 「な、なぁ悠介ーーーっ!?     なにか元から持ってた能力とかってコンバート出来ないのデスカーーーッ!!?     つーかここアンデッド多すぎ!イドてめぇ!ちったぁ加減しろタコ!!」 ピピンッ♪ 真穂 「あ、あれ?システムナビにメッセージが……」 彰利 「真穂さん読んで!」 真穂 「う、うん。えっと……コンバートって言えるほどのものは無いって。     ただ、ある条件を満たせば『変身』が可能になるんだって」 彰利 「変身!?変身って……ロビンとか?」 真穂 「……そうみたい。ナビで変身後の能力をちょっと引き出すんじゃなくて、     もうそのまんま変身できて、能力も100%引き出せるって……」 彰利 「なんと!?……と、いうことは……」 総員 『………』 藍田 「へっ!?あ、いやっ……な、なんで一斉に俺を見るんだよ!!」 岡田 「オリバ……」 田辺 「オリバだ……」 清水 「オリバが居れば、こんな状況なんて簡単に……」 藍田 「ちょっと待て!いくらオリバが強いったって、この人数相手に立ち回れるか!     少しは相手の数をよく考えろ!!」 丘野 「いやぁ……大丈夫でござろう。なんといってもオリバでござるし」 藍田 「訳解んねぇよ!!」 総員 『否!解る!!』 藍田 「なんで!?」 総員 『オリバだからだ』 藍田 「………」 あ。 藍田くんが頭抱えた。 でも後方はしっかり守ってるのは流石っつーかなんつーか。 などと思っていた時でした。  ───マジュンッ!! 彰利 「おやっ!?ち、力が抜けてゆく!?」 岡田 「馬鹿なッッ!!」 突如として力が抜けた僕ら! そして下がってしまったステータス!これは一体……!? なんて考えるまでもなく、漢神の祝福が切れたのでしょう。 彰利 「い、いかーーん!!走れッッ!!走るンだッッ!!」 中井出「アビリティの効果が切れたッッ!!捕まったらアウトだッッ!!」 遥一郎「それは解るがなんだって顔を揺らしながら叫んでるんだ?」 彰利 「バキ効果です」 もちろん意味はまるで無し。 ともあれなにやら光の差す場所が見えてまいりました!! あとちょっと!あとちょっとです!! 彰利 「光の差す場所がありますぞ!!走れッッ!ともかくあそこまで走るんだ!!」 豆村 「ていうかさ!なんか疲れないか!?疲れることなんて無い筈なのに!」 真穂 「小さな修正が為されて、『敵から逃げる時』だけは息切れとかがあるって」 豆村 「ぐああ!なんとも要らない機能が追加された!!」 鷹志 「まあ、緊張感は楽しめるだろ」 凍弥 「とか言ってる間にゴール!」 閏璃凍弥が誰より早く光の差す場所へ辿り着く。 それに続くように我らも太陽の光を浴び─── その領域には入り込んでこないアンデッドどもに安堵した。 そして困ったことに、ここは死人の森の外じゃあなかった。 刹那 「うあ……FFとかで言うところのセーブしたりとかコテージとか使う聖域……?」 豆村 「みたいだなぁ……」 まさしくビンゴっぽかった。 中井出「おお見ろ!物凄い勢いでHPが回復していくぞ!」 彰利 「なんと!?おおマジだ!!」 常に自分の視界の中にあるステータスのゲージがみるみるうちに回復してゆく。 これは……なんつーか面白いですな。 中井出「さて……完全回復したな」 彰利 「低レベルのHPなんてタカが知れてるもんなぁ」 まぁモンクはジョブ特性に『HPMAX上昇修正』があるようですが。 それでもその分もさっさと回復してしまいました。 彰利 「よし、先を急ごう」 みさお「なんだか休んだって気がしませんよね……」 まったくだった。 ───……。 ……。 スケルトン『ケキョキョキョキョ!!!ケァアッ!!』 キリキリ───シュパァン!! 総員 『おわぁあああーーーーーーーっ!!!!』 で───再び森を走る僕ら。 今は何故か弓使いの骨に追われています。 でもなんの心配もありません。 何故なら彼もまた───特別な存在だからです。 スケルトン『ケァァッ!!!』 キリキリ───シュパァン!! 骨が僕らを追って走りながら、弓での攻撃を繰り返す。 でもね、ほんと心配いりません。 何故なら彼もまた───ってそれはいいんだけど。 何故ならスケルトンが放ってる『矢』ってのが骨の矢だからだ。 もちろん自分の骨をもぎ取って、それを放ってる感じ。 そろそろ肋骨部分が無くなるから、弓での攻撃が出来なくゴワシャッ!! カラカラ…… 真穂 「あ……」 彰利 「ゲ、ゲェエエエーーーーーーッ!!!!」 なんとも驚くことが起きました。 スケルトンさんが肋骨を使い果たした時、 なにを思ったのか自分の足骨をもぎ取ったのです。 だってのに走ろうとして転倒。 支えるものが無くなった骨はカラコロと崩れて死人の森の大地に崩れました……。 総員 (……もし死人になっても、ああはなりたくないな……) 今、きっと僕らの心はひとつでした。 続いて南無を見ると、南無もまた微妙な雰囲気を出しつつ落ち込んでいるのでした。 彰利 「その時南無は思った……。     『出会い方が違っていたら、きっと友になれたのに』と」 南無 『微塵にも思ってねぇほねよ……』 それはそれは、大層悲しそうな声だったそうじゃあ……。 【ケース72:弦月彰利(再々)/死中に……活無し!!】 ───それは。 ようやく出口が見えたって時に起こった。  ズズンッ……!! 彰利 「……んあ?地震?」 最初は誰もがただの地震だと思った。 既にアンデッドどもを撒いた今、 のんびりと森の中を歩く俺達は、ただただ安心しきっていた。  ……ォオオオオン……!! 中井出「いや……これ、何かが爆発してる音だろ……」 そう。 俺達は失念していた。 これがゲームの世界ならば、恐らくはアレがある筈なのだ。 序盤の洞窟やダンジョンといった場所では絶対にあるもの。 『強敵』を出して、プレイヤーをゲームに引き込むというアレが。 つーか斉王だけじゃ足りないんかね。 中井出「どうする?なんかイベントっぽいが」 彰利 「無視しよう」 藍田 「うわっ!めっちゃいい顔っ!!」 彰利 「ホラ、男ならば一度はやってみたいじゃない?強制イベント無視って」 総員 『面白そうだ、是非やろう』 一瞬で満場一致だった。 というわけで早速俺達は爆裂音や地響きが聞こえる場所とは反対側へと駆け出し、 一気に───ぐあ……。 彰利 「OH……なんか出口っぽいところが植物に覆われてて進めないんだけど……」 中井出「よし斬ろう」 真穂 「これってイベントをこなせって意味なんじゃないのかなぁ……。     面白いから手伝うけど」 なんと言おうが結局は真穂さんも原中だった。 とまあそげなわけで提督が剣を振るい───ガッ!!ザゴッ!! 中井出「ア〜……やっぱゲームとかみたいにスパスパ斬れたりゃせんか」 あまりに現実に近すぎるヒロラインの枝の硬さに溜め息を吐いた。 だってね、これマジで硬いよ。 殴ってもビクともせん。 彰利 「では……真穂さん」 真穂 「うん。えーと……熱いよ熱いよメラメラ熱いよ……メラメーラ!!」 ポシュンッ!!───真穂さんのメラメーラが発動!! ……しかし枝はビクともしない。 真穂 「うあ……だめかもこれ。     死人の森自体に充満する湿気の所為で、木とかが湿っちゃってる」 彰利 「よし、じゃあ木を昇ろう」 遥一郎「意地でもイベント無視する気なんだな……」 彰利 「この程度で我らを止められると思ったら大間違いぞ!!     つーわけで昇ろ?えっちらおっちらと」 グサッ!! 彰利 「ギャア!!」 木に手を伸ばし、触れた途端になにか刺さった。 で、手を見てみると……なにやら小さな虫のようなモンスターが。 彰利 「キャッ……キャーーーーッ!!!」 中井出「ワ、ワーーーッ!!か、怪虫の子供だっ!!」 彰利 「い、痛い!凄く痛い!!」 なんてこと!よく見てみればこの木、小さな虫モンスターがぎっしりひっついてる!!! だ、だめだ!これではとても昇れない!! 彰利 「おのれイドあの野郎……!なにもこげに用意周到なトラップ作らんでも……!」 中井出「つーかしっかり怪虫のカタチしてるのがすげぇな……仲田くんの呪いか?」 彰利 「そげなこと俺に言われても」 真穂 「これじゃあしょうがないよ。戻ってイベントこなそ?」 彰利 「くっ……提督殿……我らの意思と野望はどうやらここまでのようです……!」 中井出「悔やむな彰利二等兵……この悲しみもいつかは野望に変わる……」 彰利 「提督殿……!!」 僕は提督殿の励ましの言葉に感動を受け─── 仁美 「アキちゃーん、置いてくよー?」 彰利 「………」 中井出「………」 既に誰もがさっさとイベント方面へ歩いていることに気づくと悲しくなった。 中井出「…………こういうことやって無視されるのって案外悲しいな」 彰利 「俺なんてもう慣れてるつもりだったけど、     ゲームの中でまでやられるとショック……」 まあしゃあないって言えばしゃあないんですがね? 彰利 「よっしゃあ!だったらこの悲しみをイベント野郎にぶつけようぞ!     勝機は我らにこそあり!     斉王の時は逃げるしかなかったが、今度はそうはいかん!」 中井出「でもなぁ、晦が創造した世界だぞ?     絶対イベント関連の敵はデカいモンスターだと思う」 彰利 「あ……やっぱり?」 なんとなくそうなんじゃないかって予感はあった。 やっぱりこれは彼の空界での生き様による印象ってやつでしょう。 そしてそげなヤツ相手じゃあ我らでは勝てそうにない。 つくづく悠介って無茶の塊だったねぇ。 シュバルドラインの時も、“詩”が意識に流れてこなかったらどうするつもりだったのか。 いやまあ……死んでたんでしょうけど。 【ケース73:穂岸遥一郎/不死の騎士】 柿崎ってヤツを先頭に道を歩く中、地震と轟音はどんどんと近くなっていった。 どうして柿崎が先頭なのかといえば……まあ、いつもの通り閏璃の差し金なわけだが。 柿崎 「な、なぁ、べつに揃って横に歩けばいいんじゃないか?」 凍弥 「なにを言ってるんだこの柿は……」 柿崎 「意見言ってんだが」 鷹志 「柿よ。この森を見ろ。とてもじゃないが横一列になるなど無理だ。     それにRPGの基本は縦一列だろ。ドラクエの如く」 凍弥 「そうだぞ。大体横一列に並んで歩いてると通行の邪魔になるだろ。     お前にもあるだろ?自転車とかに乗って道を進んでると、     横に並んでちんたら歩いてたりしてギャハハハハ笑ってる馬鹿野郎が居て、     その所為で前に進めなかったことが」 鷹志 「しかもベルをチリンチリンと鳴らすと鬱陶しそうに振り向くんだ。     だからベルを鳴らさないと大体誰かが気づいて後ろ向いたあと、     ニヤニヤしながら隣のヤツに話し掛ける」 凍弥 「うむ、あれはいただけない」 柿崎 「じゃあべつに俺が先頭じゃなくてもいいんじゃないか?」 凍弥 「なにぃ、貴様自分が独身だからって既婚者への妬みだけで我らを先頭にすると?」 柿崎 「妬んでねぇしそもそも独身独身言うなよ!!」 凍弥 「落ち着くんだパーシモン。貴様なら出来る」 柿崎 「俺になに期待してんだキサマ……」 凍弥 「……スケープゴート?」 柿崎 「お前先頭になれ!!」 凍弥 「なにぃ!?キサマそれでも軍人か!」 柿崎 「こちとらただの教師だこの野郎!!」 ……なんだかいろんな意味でこのパーティはダメそうだった。 遥一郎「しかし、よく騒ぐな」 雪音 「人生楽しく生きる。これ、人間の知恵」 遥一郎「静かに生きたいって人の気持ちを完全に度外してるな……」 雪音 「度外じゃなくて区別だよ。     だってわたし、静かに生きたいって人の気持ち解らないもん」 遥一郎「ああ、まあそれは周知の事実だが」 雪音 「なっ……な、なにかな!?なにかなぁそれ!!それってどういうこと!?」 遥一郎「お前が騒ぐだけの馬鹿だってことは周知だってことだ。     あぁ、ついでに言えばお前には一生、静かに生きるって感性は生まれんと思う」 雪音 「ガ、ガッデムーーーーーッ!!!そんなことないよー!?     わ、わたしだっておばあちゃんとかになったら、     孫とかが走り回る姿見て日々を静かに懐かしむんだよー!?」 遥一郎「孫と一緒になって騒ぎまくると思う人」 総員 『………』 遥一郎「そもそも結婚出来ないで、孫どころか子供すら出来ないと思う人」 総員 『ハイィイーーーーッ!!!』 遥一郎「……よかったなぁ観咲!満場一致だぞ!!」 雪音 「う、うぎぃいいいーーーーーーーーっ!!!!     そんなことないってば!わ、わたしだって結婚くらいできるよー!!」 凍弥 「そんなあなたにパーシモン」 雪音 「要らない!!」(キッパリ) 柿崎 「そ、即答でなんてヒドイ!!」 柿崎くんが悲しそうな顔でぐったりと項垂れた。 さすがに即答で『要らない』はこたえたらしい。 遥一郎「じゃあお前はいったい誰と結婚するつもりだったんだ?」 雪音 「えぇっ!?え、っと……ホギッちゃん?」 ノア 「!!」(ギンッ!!) 雪音 「ひえぇっ!!?う、うそ!うそだよノアちゃん!     えと、その、わたしは……うぅうう……まゆちゃ〜〜〜ん、たすけてぇえ……」 凍弥 「その様はまるで、     『ディョ〜ゥルァェムォ〜ン』と泣き叫ぶのび太くんのようだった」 雪音 「なにそれ違うもん!!」 凍弥 「お前は既にパー子だよ」 雪音 「それも違うぅ!!」 鷹志 「あー、あー、そこゆくゆきちゃん?     こいつにそういう反応見せるといつまで経ってもからかわれるだけだぞ?」 柿崎 「そうそう。人をからかうことと支左見谷のことしか頭に無いんだからこいつは」 御手洗「こんな景色の中でこういう会話する僕らも相当だと思うけど」 それはそうなんだが。 柿崎 「あ……なんか見えてきたぞ」 凍弥 「え?お前の婚約者?」 柿崎 「アンデッドしか居ない場所で何期待してんだお前は!!」 凍弥 「ああ……今のはあんまりにも酷すぎたと反省してる……」 柿崎 「深い悲しみをこめて言われるととんでもなく虚しくなるんだが?」 遥一郎「それはいいから。ひとまずイベント開始みたいだ。     気を引き締めたほうがいいだろ」 柿崎 「もっと言ってやってくれ、特に凍弥に」 凍弥 「なにぃ、俺は日々気を引き締めていると近所でも有名なんだぞ」 遥一郎「そういう問答はこいつの見栄だけで間に合ってるから」 言って、隣に居る観咲の頭をポムと叩く。 雪音 「みっ……見栄じゃないよー!!全部真実だよぉー!!」 遥一郎「な?」 凍弥 「なるほど」 雪音 「ガッデム!納得しちゃダメだってば!!」 凍弥 「ぬおお、この突付けば噛み付きそうな性格。まるで来流美だな」 来流美「わたしゃそこまで馬鹿じゃないわよ!」 雪音 「馬鹿って言うなーーっ!!!」 ……さて、それはそれとして。 柿崎 「え、えぇっと!?なぁ!?お前らそんな風に楽しげに話してる場合か!?」 凍弥 「違うぞ友よ。楽しんでるのは会話じゃなくてこいつの反応だ」 雪音 「ますますガッデムーーーッ!!!しょーぶ!しょーぶだぁっ!!」 凍弥 「よし、じゃあ因数分解で勝負だ」 雪音 「ごめんなさい負けました……」 凍弥 「俺の勝ちだぁっ!!」 どこぞの永久格闘家のように拳を上げる男がひとり。 というかちょっと待て。 遥一郎「で、お前は出来るのか?因数分解」 凍弥 「出来ん」 雪音 「なぁっ!?なななにそれ!!だったら引き分けだよー!!」 凍弥 「む?なにを言う。やりもしないで敗北宣言したのはユッキーではないか」 雪音 「ユッキー言うなー!!別の方法で勝負だー!!」 凍弥 「ふはははは!!望むところだ少年!!     高校三年の時に栄華を極めたこの俺の勉学の末、とくと見せてくれよう!」 雪音 「勉学以外で!!自分の得意分野でくるなんてずるいー!!」 岡田 「うお、否定しなかった……」 中村 「これは驚きだ……」 藍田 「そうじゃないかという雰囲気は確かにあったが……」 総員 『漢───だったのか───』 雪音 「なぁっ!?い、いきなりなんてこと言うの!?     わたしの何処を見てそんなこと言うのよぅーーーっ!!」 凍弥 「いや、だってお前、『望むところだ少年』って言葉を否定しなかったし」 雪音 「えっ!?あっ!ち、違うよ!?わたし女の子だよぅ!!」 岡田 「おっとっこ!!おっとっこ!!!」 総員 『おっとっこ!!おっとっこぅ!!!』 雪音 「ガ、ガッデムゥウウウーーーーーーーーーッ!!!!!」 …………あー。 一度騒ぎ出すと止まらないな、こいつら……。 なんか晦の気持ち、解るかも。 しかもこんな危機的状況でよくもまぁ。 ひとり状況に気づいてる柿崎が可哀相に見える。 柿崎 「が、がが……!!」 遥一郎「とりあえず───逃げるか?」 柿崎 「む、むむ無理、無理無理……!領域に入った途端に来た道が枝で塞がれた……!」 遥一郎「え?……あー」 見れば確かに塞がっていた、来た道。 では……どうしたものか。 ───今、目の前では妙なカタチの鎧を身に纏った存在と、 魔法使いのような男が対面していた。 吹き荒れる魔法の嵐と、それを身に受けても平然と進んでゆく鎧の戦士。 身体を魔法が襲おうが、臆することもなく剣を振るってゆく。 ……強いとかじゃない。 あれはただ、魔法攻撃を攻撃とも思っていないのと同じだろう。 魔法で飛ばされた岩が腕に当たり、その腕が砕けようとも前に進む。 ……明らかに雰囲気が違う。 今までのアンデッドモンスターとは何かが一線を画す。 魔法使い「おのれ───貴様何者か!!何故邪魔をする!!」 ????『……死の気配……消させるモノカ……』 剣が振るわれる。 魔法使いはそれを避け、すぐさまに魔法を放つ。 それは確かに相手の喉を半分引き裂いた。 だが───血が噴き出そうが無視して進んでいた。 魔法使い「やはりアンデッドか!ならば手加減はすまいぞ!!」 不死戦士『…………』 アンデッド戦士……不死戦士か。 そいつは小さく笑むと、 先ほどまでのゆっくりとした動きを払拭するように地面を蹴って駆けた。 魔法使い「───!」 不死戦士『オァアッ!!』  ヴオッ───ザコォッ!! 振るう剣が地面を裂く。 魔法使いは間一髪で避けたが、 その拍子に俺たちのところに飛び、そこで初めて俺達に気づいた。 魔法使い「───!?冒険者か!?こんなところでなにをしている!!」 遥一郎 「道に迷った」 魔法使い「っ……王国はなにをしているのだ……!!      この森は危険な場所だとあれほど……!!」 遥一郎 「───!危ない!!」  フオッ───ガシャァアンッ!!! 遥一郎「ぐぅっ!?」 咄嗟に剣を出して不死戦士の攻撃を受け止めた。 が───剣はあっさり砕け、少しだけ勢いを殺した剣が俺の体を小さく裂いた。 遥一郎「づっ……!!」 ノア 「マスター!?」 サクラ「与一っ!?」 柿崎 「な、なんだこいつ……!ゲーム指定の剣をこんなあっさりと……!」 遥一郎「ツッコムところはそこじゃないだろがっ!!」 柿崎 「あ、す、すまん。凍弥と居るとどうにもこういうところでヘンな病気が」 その問答はまた今度にするとしてっ……。 魔法使い「やめろ!そいつは初心冒険者が戦って勝てる相手じゃない!!」 凍弥  「し、知っているのか雷電」 遥一郎 「閏璃……頼むから黙っててくれ……」 魔法使い「話に聞いたことがある……堕ちた王都に住まう不死の戦士の話……!      幾たび殺そうが蘇り、傷を負うことをものともせぬ殺戮者……!      こいつに殺されたブレイバーの数は10ではまるで足りん!!」 柿崎  「うあ……」 遥一郎 「そりゃ……初心冒険者風情が挑める相手じゃないな……」 魔法使い「ともかく、貴様らを守りながらでは満足に戦えん!      貴様らを森の外へと飛ばすぞ!      鮮明に詠唱する暇なぞ無いから何処に飛ばされるか解らんがな!!」 彰利  「オウコラテメェ、何偉そうなこと言ってんだ?オ?俺ゃプレイヤー様だぞコラ」 遥一郎 「……いつ合流したのか解らんが、とりあえずお前も黙っててくれ……」 中井出 「いやー待たせた。そしてこれはどういう状況だ?」 遥一郎 「すまん、説明してる暇無さそうだ」 おっさんが呪文を詠唱してゆく。 それは彼が言ったように俺達を飛ばすものだろう。 だがそんなものを唱えさせるほど、不死戦士は暇しちゃいない。 豆村  「ちょっ───おっさん!!」 刹那  「つーかこれっておっさん殺られたら先に進めなくなるってことじゃないか!?      こんな場所で永久に彷徨うなんてイヤだぞ俺!!」 彰利  「このゲームにおいて、      なにもしなくてもゲームが平穏に進行するなんてこと、ないだろうねぇ」 豆村  「親父ぃ!!そう思うならあのおっさん助けるとか───」 彰利  「ィヤッハッハッハ!!断る!!死ぬなら死ね!それが男だ任侠だ!!」 豆村  「うわぁ無茶苦茶だぁああーーーーーっ!!!!」 不死戦士『ルオァアッ!!!』  ヴオッ───!! 豆村 「だ、だめだ詠唱間に合わねぇえーーーっ!!!!」 柾樹 「───!!」  フオガシャアンッ!! ───もはやここまで、といったところで俺達は光に包まれた。 あの状態では確実に詠唱を終える前に魔法使いが斬られるだろう筈だったのに。 豆村 「あ、え───?」 ただ、剣が砕けていた。 ひとり疾駆し、ひとり人垣から離れた男の剣が。 そいつの身体は俺のように裂かれ、だがそれは俺がそうされたものより深いものだった。 柾樹 「ぐっ……、づ……!!」 豆村 「柾樹!?おまっ……なにやってんだよ!!」 それは柾樹だった。 魔法使いのおっさんを守り───いや。 魔法使いが唱える、友人をこの森から飛ばしてくれる魔法こそを守ったそいつは、 満足そうにこちらを向くと笑って言った。 柾樹 「……はは、ごめん。一緒に旅、出来そうにないや」 武器もなにも無くなったそいつは、申し訳なさそうにそう言うと不死戦士を抑えつけた。 ……その姿が、ヤケに俺の知るどっかの弟のような馬鹿野郎に見えて─── 駆けつけようとしても既に身体は光に包まれていて、走ることすら出来なかった。 刹那 「ば、馬鹿野郎!!こんな時にまでこんなお節介しやがって!!     なにやってんだよお前!!ゲームの中でくらいそんなこと忘れたって───!!」 柾樹 「……じゃ、俺はここまでだ。神父の説教を聞いて蘇ったら、また何処かで会おう」 じゃあ、と手を振るう。 その途端、光は完全に景色を覆うと俺達を何処かへと飛ばした。 傷つきながらも微笑む、ひとりの少年を残したままで─── Next Menu back