───冒険の書269/猫の里でのありがとう───
【ケース690:マラジン/ウラビアンヌイト4】 ザム…… マラジン『ここが亜人族が暮らすミラージュスポット猫の里か〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!』 シード 『どおれ明日は大暴れしてやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!』 案外迷うことなくストレートに、 猫の里(の絶壁の前)にこれた……こんにちは、マラジンです。 ところどころがボロっとなってしまっているが(ストームドラゴンの所為だろうけど)、 間違い無く猫の里前の絶壁だろうと解る場所へと辿り着きました。 シャル「こ、これは……!───昇れとおっしゃるのですか!?ここを!?」 一人大層混乱してらっしゃる方がございますが。 マラジン『いえ潜ります』 シャル 「え……くぐ、る……?」 そう、潜る。 ミラージュスポット、というのはどうにも、 昇ろうとしてもいつまで経っても辿り着かない魔の領域のことを言うとか言わねーとか。 じゃなくて、近づこうとしても辿り着けない、迷いの場所めいたところなのですね。 だから、上がダメなら下からさ。 かつて猫たちに金を出して教えてもらった、小さな穴がここにあります。 ここを通って内部へ行くというものですよ、今回の作戦は。 シャル 「これは、あまりにも小さすぎるんじゃありません……?」 マラジン『大丈夫!キミならできる!!』 シャル 「……それは暗に、わたくしがちんまいとか細ッこいとか、      そういうことを言っていますの……!?」 マラジン『その通りだ《ベパァン!》ボルグ!』 いや……普通だよ? 普通だと思うけど、すらりとしてるから通りやすいんじゃないかな〜とか思っただけで。 普段なに食ってりゃこんな細身でいられるんだ? 抱き締めたら壊れそうな〜とか折れそうな〜とか、 そんな言葉があったようななかったようなだけどさ。 これはもうなんていうか“サバオリしたら骨折れそう”ってレベルじゃなかろうか。 いや、そこまでいかなくていいけど。 マラジン『………』 でも胸は標準以上はありそうだ、と。 母性だなぁ……うん母性だ……。 でも今はそんなものより冒険が僕を待っているのでどうでもヨロシ。 マラジン『では僕から先に行きませう。その後にシード、シャルと来てくれ』 シード 『はい父上』 シャル 「……うう……通れとおっしゃるのですね……」 おっしゃるとも。 さあ元気出していきましょう。 この先に、久方なる者たちが居る筈なのだから───! ───……。 ……。 ………………………………………………アー…… マラジン『………』 ば、馬鹿な……ば、馬鹿な…………! シード『これは……!里どころか、草木一本生えてない……!?』 シャル「これではまるで荒野……!     山に囲まれて、人の手なんて届かない筈なのに、どうして……」 なんということ……!なんということだ……! マラジン『シード!シャル!』 シード 『はい!』 シャル 「なんですの!?」 マラジン『どっかにカラスが居る筈だ!探してくれ!』 その後わたしは二人の仲間にボコボコにされた。 ……。 シュゥウウウウ…… マラジン『……いや……だって、さぁ……カラスが……さぁ……』 辿り着いた途端に聞こえた、アー……という鳴き声を僕は忘れない。 ファンタジー世界にカラスだぞカラス。 気になるじゃないか。 シード 『父上……さすがにこういう状況では、マジメになっていただかないと……』 マラジン『マジメにふざけてます』 シード 『い、いえ、そうではなくて……』 しかし猫の里が荒野と化しているのには驚いた……これはいったいどういうことか。 いや、それよりもまさかシードが襲い掛かってくるなんて僕驚きさ。 シャル 「どうなっているのでしょう……      猫の里とは、こんなにも荒廃した場所だったのですか……?」 マラジン『そうだ』 ベパァーーーーーーン………… ……。 シュウウウ…… マラジン『あの……返事返しただけで引っ叩かれるのって、どうかと……』 シャル 「そうだとしたのなら!      わざわざ荒野までやってきたわたくしたちは骨折れ損もいいところでしょう!      荒野にわざわざやってきて、なにをしたかったのですのあなたは!」 叩かれた上に怒られてしまった。 いやぁははは、相変わらず威厳のない魔王(他称)でごめんなさい。 じゃあそろそろ考えましょう。 えぇと、ここが猫の里なのは間違い無い筈だ。 なのにこんな寂れた状況……もしや別の場所に行ってしまった? ……否!感じる……このマラジンは誤魔化せぬぞ! 感じる……!微かに鼻腔をくすぐる錬鉄の香り! 感じる……!微かに香る然のマナの香り……! 感じる……!微かにそよぐ鳥臭さ……! マラジン『…………』 居る。 ぜってー居る。 どういう原理か解らんが、絶対に。 そんな意味も込めて、シードとシャルに向き直ってコクリと頷くと マラジン『アレ?』 ……シードが居なかった。 忽然と、あっさりと姿を消してしまったかのように。 マラジン『…………』 さて問題です。 ここは猫の里です。 自然要塞から逃れた亜人族たちが、ごっさり居ると聞きました。 亜人族はアイルー種、ドワーフ種、天使族や妖精などなどです。 ……さて、天使たちの得意能力とはなんだったでしょう。 マラジン『アイルー種が長、長老猫ことアイルーはおるか!!こんな姿で失礼する!      ……えーと、中井出博光ですがお話をしたいのでツラ見せなさい。      そしてシードを解放しなさい。じゃないな、えーと……。      シードは招き入れて僕らがダメだなんてあんまりじゃないか!      僕らも招き入れなさい!』 …………。 ただの屍だった。 いいだろう!確かにこんな姿の僕を信用しろと言われても困るのみ! 人間どもに散々と恐怖に陥れられたに違いない彼ら彼女らにしてみれば当然! ならばこの……天使族の幻影能力、ブチ壊してくれる!  注:幻影能力とは、天使族が使う光の屈折を利用した術。    グラウベフェイトー山付近の天使族の村はそれを利用して、    他者が入れないようになってましたね。 天使だか翼人族だか忘れたがもう辛抱たまらん! 霊章輪解放!吠え猛めされい灼闇の炎ォオオオオッ!!!  ガンバババババババォオオンッ!!! シャル 「きゃあっ!?なっ……マラジン!?」 マラジン『緊張感なくなるからこういう状況でマラジン呼ぶのやめません!?』 や、面白いからいいけどさぁ! ともかく灼闇を発現させて、それらを竜巻のように高速回転! マラジン『波夷羅一伝無双流奥義!!───真!昇竜裂天衝ォオーーーーーッ!!!』 我が頭上へとゴシャー!と吹き飛ばしてゆき、  ───ザァアッ…… シャル「っ!……あ……」 ここら一体を包んでいた、然のマナごと星にする。 ……と、荒野だったソコが緑溢れる森林に……!! シャル「え!?え、ええっ!?」 なんとも予想通り。 荒野の景色はニセモノの幻影だったのです。 幻影が吹き飛んでみれば、たちまち現れる猫、猫、猫……!と、シード。 亜人族はみんな警戒態勢を取っていて、ふかー!と毛を逆立ててるヤツまで居る始末。 そんな彼らに マラジン『やあ』 火闇を仕舞いながら、爽やかに挨拶をしてみました。 猫総員『旦那さんニャーーーーッ!!』 ……そしたら一発で信用されてしまいました……。 あの……僕ってそんなに、やあって挨拶してる……? イッケク『旦那さんニャー!』 マラジン『や、あの……』 サクパケ『旦那さんニャー!』 マラジン『あの、ね……?』 ケマル 『旦那さんニャー!』 マラジン『聞いてぇえええええええええっ!!!』 猫たちが叫ぶ叫ぶ叫ぶ! 僕の小さくなった体を引っ張りまわし、胴上げし、落下させ、拾い上げ、 嘗め回し、甘噛みし、まとわりつき、ゴロニャーと叫んでギャアーーーーーーーーッ!!! シャル「な、なんですの、この懐き様は……」 シード『知らないのか?父上は亜人族からの信頼を、     このフェルダールで一番得ているお方だ。そして、人間は逆に敵でしかない。     けれど父上は違う。同じ人間でも、魔王と呼ばれる存在だ』 シャル「……それは、ただの呼称では───」 シード『呼称?違うな。父上は亜人族とともに戦い、刻震竜を打倒してみせたお方だ。     人の身でありながら、あのサウザンドドラゴンをだ。     魔王という呼称は確かにお前らが勝手につけたものだが、     父上はそれでもいいと頷いて、敵役を受け入れている。     敵なのにお前ら人間を刻震竜の進撃から助けたんだ。     そんな、フェルダールにとってもエトノワールにとっても恩人である父上を、     お前らエトノワールは魔王として封印したんだ。亜人族がそれを許すと思うか?』 シャル「………」 あっ!だめ!そこはだめ!くすぐった───ぶわぁああはははははは!! シード『帝国は敵だ。けど、父上は皇帝になった。     その事実は消えてくれないし、父上は面白そうだからって受け入れるだろう。     ……僕もそれでいいと思っている。     父上が皇帝である限り、亜人族には被害が降りないと思うからだ』 シャル「それは……」 いででいだだだうぁだだだだあぁあああっ!! 噛まないで引っ掻かないでゴロゴロしないでぇえええええっ!! シード『歴史の名前がレゾンデートルになろうが、     僕らはフェルダール暦からこの世界を生きる者だ。     新参者たちがどれだけ技術を得て、     歴史の名を変えても、この世界はフェルダールで、僕たちの意思は折れない。     先住民を潰した場所に歴史を作るなんて馬鹿なこと、父上がさせるもんか』 シャル「え、と……」 やめてぇえええええ!!首噛んだまま振り回さないでぇええええええっ!! シード『……僕は人間が嫌いだ。父上も人間が嫌いだ。     だけど父上は人間のままで居たいと常に願っている。     いっそ魔族になってくれればと思うけど、僕は父上が父上だからこそ好きなんだ。     父上が皇帝になろうが、その心は変わらない。───……だからお前も選べ』 シャル「え?」 お、おぇえええ……!目が……目が回………… シード『父上はきっと容赦しない。機械を以って仲間を潰そうとするやつらを。     だから選べって言ってるんだ。“力を持った人間”は和解なんて求めない。     力を振るい、敵を屈服させることしか考えられないんだ。     そんなやつらと父上は戦うっていってるんだ。     ……じゃあ“そっち側”のお前はどうする。     父上につくのか、そっち側で居続けるのか』 シャル「あ───!」 ……ドシャアアアア…… あ……も、だめ……。 不死身だろうが目が回る気持ち悪さとかには勝てないっす……。 ……ア。 今度は騒ぎを聞きつけたドワーフや天使や妖精が……!! な、なにぃ!?貴様はロド!?ロドリゲスじゃ───いやぁあああああああああっ!!! ……。 ……ボロッ…… マラジン『えぇと……みんな……久しぶり、で……いいのかな……』 アイルー『お久しぶりニャ!旦那さん!……なんでそんなにボロボロニャ?』 マラジン『いや……あんたらにボコボコにされたんだけど……?』 猫の里の奥、泉の傍で顔(鬼面)を洗いながら言う。 猫の唾液だとか毛とか、天使の羽とかがいろいろへばりついているのです。 もちろん素顔を見せるわけにはいかないから、鬼面はつけたままで洗っております。 ちょっとした快感シャンプー体験です。 アイルー『けど流石は旦那さんニャ。そんな姿だからまるで解らなかったニャ』 マラジン『僕はその“流石”にどれだけの意味が込められているのかを知りたい』 当然的な目で見られてない?ねぇ。 アイルー『けどよく来てくれたニャ!また旦那さんに会えて嬉しいニャ!      今や旦那さんはボクらの希望ニャ!』 ジョニー『そうニャ!』 ジニー 『その通りニャ!』 イッケク『よく言ったニャ!』 マラジン『うむ!で……猫よ!貴様にお願いがある!』 アイルー『なにニャ!?旦那さんのお願いならなんでも聞いてあげるニャ!……有料で!』 マラジン『ぬうう!ちゃっかりしているところは相変わらずよ!さすがである!      だが構わぬ!───ちなみに猫よ。貴様の今の通貨は?』 アイルー『フェルダール硬貨は危なくて使えないニャ。      だからオロ通貨ということになるけど、      そのオロが死んだらしいから、今はマラジン硬貨ニャ』 マラジン『……!《かぁああっ……》』 何故だか無性に恥ずかしかったです。 鬼面族なのにね?こう、顔が赤くなる感覚が浮上してくるっていうかね? だってさ、お会計とかの時に“37564マラジンのお買い上げで〜す”とか言うんだよ? お釣りの時だって10マラジンのお返しで〜すとかってボフォシュウ!! マラジン『ブハッ……!ボッハ……!ゴハハハ……!!』 アイルー『ど、どうしたニャ旦那さん!』 耐え切れなくなって噴き出した。 マラジン『ダメ、ダメですマラジン硬貨……!お願いだからやめて……!      マラ、マブフォォッホ!ボハハハハハハ!!』 アイルー『………』 やがて笑い転げ始める僕を、アイルーは困った顔で見下ろしてました。 その隣にはロドリゲスが居て、こちらも困った顔で見下ろしております。 マラジン『はー、はー……い、いやしかしロドリゲスよ……貴様が無事で安心したぞ。      その説は、構ってやることが出来なくてすまなんだ』 ロド  『ゴエ、ゴエゴーエ』 マラジン『…………なんと?』 アイルー『気にしてないから気にするなと言っているニャ。      旦那さん、ファフニールはどうしたニャ?あれがあれば会話できる筈ニャ』 マラジン『や、それが話せば長くなるのだが……      だから短くなるよう努力しよう。実は───』 それから僕は、身振り手振りで懸命なる説明を開始した。 僕の体がクリスタル漬けなままのこととか、武具もそっちにあることとか、 霊章輪だけはついてきたこととか、いろいろ。 もちろんシャルロットさんのこともきっちりと。 ……ちなみに彼女は今、危険人物として宿屋に幽閉されてメシを食わされている。 ようするに、ええ、おもてなしをされてます。僕の仲間ってだけで。 アイルー『なるほどニャ……あの娘さん、エトノワール王妃だったのかニャ。      しかも旦那さんは帝国の皇帝になったニャ?』 マラジン『うむ……あっという間の出来事であった』 アイルー『旦那さんはそれでいいニャ?僕らは正直、帝国は好かないニャ。      ニャニャ、違うのニャ。むしろ人間が信じられなくなってしまったニャ。      それでも人の上に立つというのニャ?』 マラジン『答えはNO!!このマラジン、人の上に立つ器ではないわ!      だがしかしこの皇帝の名を最大に利用して遊びまくるつもりではある!!      た、たとえば皇帝権限で世界中の市販武器を集めて合成させてグエヘヘヘ!!』 アイルー『落ち着くニャ旦那さん!涎が!涎が垂れてるニャ!!』 マラジン『ハッ!?こ、これは失敬……!』 ふう、やべぇぜ僕。 COOLにならねば…… マラジン『とにかく今の僕には帝国とか皇帝とかは関係ありません。      むしろ一度潰れてみるのがいいかと。      でもね?潰れるべきは帝国じゃない。ノヴァルシオと古代技術だ』 アイルー『ム。さすが旦那さんニャ。そこに気づいてるならもう言うことなしニャ。      ボクらアイルー種、旦那さんにだけ喜んで力を貸すニャ!』 マラジン『多謝(トーチェ)!!』 手をガッシィ!と握り合って絆を取り戻す! いい!やはり亜人種はやさしいやつらばかりさ! シェーラ『……わたしは信じませんわ。あなたがあの男である証拠云々よりも、      あなたに帝国を、機械技術をなんとか出来る力がありまして?』 と、そんな時にヌゥっと現れたのはシェーラシェーラ。 ……口調がですわ語に戻ってる。 マラジン『機械技術なら、貴族ごとブッ潰してきました。───シーーーード!!』 シード 『《ズシャア!》───ここに』 シェーラ『ひゃあっ!?い、いいいーきなり出てきてこないでくださいます!?』 マラジン『うるせー!今証拠見せようってんだから黙ってろこのキャプテン翼!!』 シェーラ『キャプッ……!?』 案ずるより産むが安し!じゃなくて百聞は一見に如かず! このマラジンはシードのバックパックより、 貴族どもから奪った機械の全てをゴシャアとぶちまけてみせた! シェーラ『こっ……これは……!』 アイルー『す、すごいニャ!機械だらけニャ!』 マラジン『ゴエフェフェフェ……!この博光が不死身という状況を利用せず、      なにもしないでここへ来ると思うてかグオッフォフォ……!!』 これでナギーが持つ機械王の鎧とビットシステム、 ビームサーベルとかいろいろなブツも合わさればかなり最強なんだが。 マラジン『というわけで猫よ!』 アイルー『オーライニャー!でも旦那さん、オロ硬貨持ってるニャ?』 マラジン『大丈夫!なにを隠そう、俺は泥棒の達人だぁああーーーーーっ!!!      今すぐ貴族の家から金をかっぱらってきます』 シェーラ『……相変わらずの外道っぷりで、なによりであるな』 マラジン『キミの猫かぶりも相変わらずですね』 シェーラ『うるさいわ』 マラジン『ところでシェーラシェーラ、エィネ、知らない?』 シェーラ『エィネ?ああ、あの妖精か。やつならば───ほら、あそこにおるであろう』 マラジン『ぬ?』 指差された方向を見ると、いつからそこに居たのか。 小さな木の枝の上で、くたりと寝転がってすいよすいよと眠っているエィネが! マラジン『エィネ!おぉーーいエィネェーーーッ!!』 …………。 エィネ『んぅう……』 ……寝てる。 マラジン『ショァアーーーッ!!!《バシュウッ!!》』 エィネ 『《ギュルガシィッ!》ふわ……?あちゃちゃっ!?うゎああちゃぁあっ!?』 呼びかけても起きない彼女をジャバウォック/シューターでキャッチ! 手元に引き寄せ、普通に手で受け止めた。 エィネ 『あちゃっ……あちゃちゃっ……うえぇえ……なんですかもう……!』 マラジン『やあ』 エィネ 『もぎゃぁあああおぉおおーーーーっ!!!      おぉおーーーーーっ!!ヴオオォオーーーッ!!!      おぉおぉおおオォオオオッ!!おーーーーお゙!!!』 マラジン『キャーーーーーッ!!?』 で、目が合った途端にエィネとは思えないくらいの絶叫と声とで驚かれました。 エィネ 『いやぁあーーーーっ!!いやぁーーっ!!おばけぇええーーーーーっ!!』 マラジン『おばっ!おばけってアータ!おば……えぇ!?おばけ!?』 すげぇ……原中でもないヤツの口から、今時おばけー!って聞けるなんてッツ! マラジン『落ち着くんだエィネ!───俺だ!瀬戸内だ!』 エィネ 『知りませんよ誰ですか!』 マラジン『中井出博光』 エィネ 『あぁ博光さんですか……』 マラジン『え……?え、えと……うん……』 名乗った途端に、物凄い納得顔をプレゼントされたんだけど……。 あの……俺ほんと、普段からどういう目で見られてるんだろう……。 マラジン『あの、ちょっと調べてほしいことがあるんだけど。      ナギーのね、気配を探知してほしいんだ』 エィネ 『むー……』 マラジン『ね?お願い。やってくれないとこのまま、      ビッグアップルドライバーをやってしまいそうだ』 エィネ 『よく解らないですけど悪寒が走るのでやらせていただきます!!』 マラジン『おお!』 僕の心が届いてくれたらしい! まさかこんなに簡単に頷いてくれるとは……! ……普通にビッグアップルドライバーが、女向けドライバーじゃないからだろうけど。 エィネ 『ん……《キィイイ───ィンッ》───すぐ、近く───いえ、来ます!』 マラジン『なんですって!?』 ザッと景色を見渡す。 が、何処にも───否!! ピンと来た僕は、思いついた場所へと全力で駆け出した! ……まあその!エィネを持ったまま!! エィネ 『わひゃっ!?ちょ、離してください!』 マラジン『あれはまだ僕が名も無き妖精の頃のことだった───!』 エィネ 『その“はなして”ではなくて!そもそも妖精じゃないでしょう!!』 マラジン『えぇっ!?エィネって妖精じゃあなかったの!?───もしやアオミドロ!?』 エィネ 『違います!!』 マラジン『ヒィッ!?ご、ごめんなさい……』 本気で全力で全身全霊で否定されてしまった……。 そのあまりの迫力っぷりを前に、素直に謝ってしまう自分が愛しい。 じゃなくて悲しい。 エィネ 『それで……今度はなにを企んでいるんですか……?』 マラジン『人聞き悪いよエィネちゃん!僕がそんなことするマラジンに見えるかい!?』 エィネ 『中身が博光さんって時点で』 マラジン『あ……マラジンの存在は完全無視なんだ……』 当然なんだけど、寂しいなぁ。 と、喋りながらもザシャーと辿り着いたそこは……穴。 僕らが通ってきたところと同じ場所だ。 そこから、モゾモゾと現われたる影が!! ナギー『むはー!まったく狭い穴じゃの!もっと広く出来ぬのかの!』 悠黄奈「無理矢理に通ろうとするからですよ」 その影とはナギー!と、なんと悠黄奈さんだった! ……しかし二人とも、辺りをキョロキョロ見渡して困惑するばかり。 ナギー『…………荒野なのじゃ』 悠黄奈「荒野……ですね」 ……アレ? もしかして見えてない? じゃあなんだ、つまり僕らが来たときも亜人たちにしてみればこんな感じだったと? そうと決まれば遊ばない手はねぇぜグオッフォフォ……!! ナギー『《ピキーン!》───気をつけるのじゃ悠黄奈!ここにはなにかがおるのじゃ!』 悠黄奈「え───?」 なにぃ!?馬鹿な!一瞬にしてバレた!? ナギー 『感じたのじゃ確かに……!      ヒロミツが悪巧みを考える時に感じる、寒気めいたなにかを……!      きっとわしらを監視しつつ、なにかを狙っているのじゃ……!』 マラジン『………』 わあ、スゲーやナギー。 よもやこの博光の悪巧みを肌で感じるほどに成長しておったとは。 エィネ (……あんなこと言われてますよ、然の精霊に……) マラジン(うん……言われてるね……) ただただ遠い目をするばかりです。 自分がどういうことをしてきたのかって、 こういう何気ないところで自覚できるものなんだなぁという事実が、静かに胸にすとんと。 でも懲りるくらいなら楽しむ僕は、それくらいではヘコたれるけど諦めない! マラジン『飛びつきスイング式DDT!!』 キョロキョロと辺りを見渡すナギーへ向けて跳躍! 今こそ滑らかに大地に沈めて─── ナギー 『《ピキュリリィイインッ!!》ハッ!───ここなのじゃーーーっ!!』 マラジン『《ガッシィッ!!》なにぃいーーーーーーーっ!!?』 馬鹿な!捕まった!? この……このマラジンが……! このマラジンがネックロックでいとも簡単に囚われるだとぉ!? でも丁度いいので マラジン『高角度ジャーマンスープレックスゥーーーーッ!!』 ナギー 『《ドゴォンッ!!》ふぎゃああああーーーーーっ!!!』 空中で捕らえられ、地面に足が届かなかった僕は、火闇で地面を殴りつけて跳躍! かなりの高角度で頭からナギーを落とし、顎を拭いながら立ち上がった。 マラジン『若すぎる……遅すぎる……そしてなんと弱い……』 そしてトドメにマホメド・アライ。 いや、ほら……倒れた相手にはなんていうかそのー、やりたくなるじゃない? なんてことをやってると、サァッと引いてゆくマナの気配。 ……と同時に、僕のことを睨む、潤んだ瞳が恐ろしい。 ナギー 『〜〜〜〜っ……おぬしはぁあああーーーーーーーっ!!!!』 マラジン『キャーーーーーーッ!!?』 ───……。 ……。 その後わたしは怒気を孕んだナギーにボコボコにされた。 マラジン『ちくしょ〜〜……』 ええもうこれでもかってくらいボロボロです。 鬼面の形が変形するまでオンスロートで殴られまくったくらいだし。 悠黄奈 「うわあ……自業自得とはいえ、物凄い顔ですよ、博光さん」 マラジン『《ビシィ!》ご夫人方にまたモテそうだ』 悠黄奈 「モテたいんですか?」 マラジン『いえ全然……』 悠黄奈さんは僕のことを覚えていてくれました。 或いは、ゲームの中だけの存在だからかもしれませんが、僕は嬉しいです。 本音を言えば猫たちにさえ忘れられてたら泣いてた思う僕だから、 もう心が温まるどころの騒ぎじゃない。 マラジン『だがしかし!よくぞ来てくれたナギーよ!このマラジンは嬉しいぞ!』 ナギー 『………』 マラジン『あ、あれ?ナギー?』 ナギーが……打てば響くドラのようなナギーが、返してくれない! 何故!?ホワイ!? ナギー『ヒロミツは……ヒロミツは自力で帝国から抜け出せるくせに、     わしを殺してまでシードと旅をしたかったのじゃな……』 アレェ!?なんだか物凄い勘違いされてる!? ナギー 『しかも皇帝になったとか言っていたのじゃ……!      それで王妃まで連れまわしてお楽しみだったのじゃなーーーっ!?』 マラジン『そうだ《ギョバキャアッ!!》ギョォアアアーーーーッ!!!』 再びオンスロートで殴られました。 だが面白そうなことには飛び込みましょう! それが私の原ソウル! ……でもさすがにこうもボコボコにされてると挫けてしまいそうですハイ……。 ともあれ、ゴシャーリと並べられた機械装備を前に、猫たちへの説明を開始する。 これはあーだあれはこーだと。 そうしているとドワーフたちもやってきて、 天使たちも集まってきて、やっぱり居たのか棒人間たちも集まってきて、 その場は結構な賑やかさをばら撒き始めていった。 ドワーフ『しかし機械ね……あまり人間どもの技術を使いたくはないんだが……』 マラジン『なにを言うか!ノヴァルシオの技術は、      どちらかといえば元々貴様らのものだった筈!      巨人族が亜人族に数えられるかとかそういうのはこの際どうでもヨロシ!      考えてもみるのですドワーフさん。やつらは知りもしなかった、      伝説としてしか知らなかった古代技術をたまたま得て有頂天になっているだけ。      だがしかし僕らにはキミたちドワーフ族や、      古代の頃から今を生きる長老猫アイルーが居るではないか!』 ドワーフ『《ハッ……!》そ、そうか!やつらの手探り技術などメじゃないわけだな!』 マラジン『そう!ダルトロス老やロイド氏、そしてアイルーが僕らとともにある限り!      工房技術も機械技術も負けるものか!      さあみんな!気合いを入れていこう!月夜の晩にィ!!』 亜人種 『ヤイサホーーーーッ!!』 マラジン『錨を上げろォ!!』 亜人種 『ヤイサホーーーーッ!!』 マラジン『嵐の夜にィ!!』 亜人種 『ヤイサホーーーーッ!!』 マラジン『帆を上げろォ!!』 亜人種 『ヤイサホーーーーッ!!』 マラジン『星を標にィ!!』 亜人種 『ヤイサホーーーーッ!!』 マラジン『宝に向かえェ!!』 亜人種 『ヤイサホーーーーッ!!』 マラジン『ラム酒はおあずけェ〜〜〜♪』 亜人種 『ヤイサホォ〜〜〜〜〜ッ♪』 マラジン『鉄を焼けぇええええっ!!!』 亜人種 『ヤイサホォオオオッ!!!!』 マラジン『慎み深くをハネ返し!!』 亜人種 『耐えて忍を退けろ!!』 マラジン『満ち足りることに屈するな!』 亜人種 『満ち足りないと!なおも言え!!』 …………。 パチ……パチパチ…… 亜人種『ハワァアアーーーーーーーッ!!!』 パチパチパチパチバラシャシャシャシャシャ!!!! 何故か始まる大喝采に、僕らは声をあげて抱き合い喜び合った。 アイルー『魂ニャ!魂レベルの共鳴を感じたニャ!』 ジョニー『まったく知らないシャウトだったけど、      何故かどう叫べばいいかが解ったニャ!』 ジニー 『これは魂ニャ!魂の共鳴に違いないのニャー!!』 皆様実に騒がしい。 そう思う僕も、真っ先にミギーと奇声をあげながら、 亜人族の中心で大きく手を挙げて背伸びの運動をしているわけですが。 シャル「……すごいですわね……」 そんな喧噪の隅っこで、ポカンとするのはシャルロット。 ここまで壮絶な騒ぎなど見たことがないのだろう、本当にポカンとしている。 シード『父上の信頼は目を見張るものがあるからなっ!』 ナギー『ヒロミツの仲間からの信頼度はとても凄いものなのじゃー!』 シード『……忘れられたけどな……その仲間に……』 ナギー『それを……言うでない……』 なんだか祭り騒ぎの最中みたいな状況で、一部物凄く暗くなってる場所が……。 だが僕らはもはや一心同体! 僕までもが亜人っぽい姿ならば、なにを遠慮することがありましょう! ───亜人っぽくなくても遠慮なんてしねーけどな!! マラジン『やぁっておしまい!』 亜人種 『ヤイサホーーーッ!!』 シード 『えっ!?うわ、うわぁっ!!?な、なにをするだァーーーーッ!!』 ナギー 『ふわっ!?や、やめよっ!持ち上げるでな───ふきゃーーーっ!?』 あっという間に亜人たちに持ち上げられたシードとナギーが、 亜人の波に飲まれてもみくちゃにされてゆく。 そうする中で、次第に戸惑いの声はくすぐったそうな笑いに変わり、 この場はひと時の幸せに包まれてゆきました。 ───……。 ……。 ゴンギンガンゴンギンガン!!ゴンギンガンゴンギンガン!! ドワーフ 『老!ここはどのように!?』 ダルトロス『そこはその駆動部分をだな───!』 ジョニー 『お師匠さん、ここはどうするのニャー!?』 アイルー 『アグレッシヴに責めるニャ!』 ジニー  『解りやすく説明するニャ!』 それからしばらく。 亜人族総出で始まった機械技術の合成や錬械は数時間に及び、 その合間を縫っては機械のなんたるかを弟子たちに教えてゆく猫やドワーフは、 なんというかとっても生き生きしていた。活き活きとも言うのか? だが流石は猫の里。 工房も整っていて、いや、整うどころかかなり大きく、 こんな世界だっていうのにちっとも鉄臭くなく、 むしろ自然と一体になって鍛冶をするような、そんな空間がここにあった。 鍛冶をする者や見守る者の目も温かく、 みんながとても楽しみながら鍛冶をしていることが、えーと……うん、心に暖かい。 ……さて。 それはそれとして、今はなにを作ってもらっているかというと。 伸縮自在の機械鎧を作れはしませんか?と訊ねたところ、 やれるだけやってみるニャと言われて数時間。 どうしてか嬉しくて仕方ないみたいな亜人族が狂ったように槌を手にし、 ゴンギンガンゴンギンガンと機械装備らを鍛ちまくっている。 と、そんな彼らを見ていた僕が首を傾げていると、 くすくすという微笑を耳で感知し、振り向く。 ……と、そこには悠黄奈さん。 マラジン『やあ』 悠黄奈 「はい」 笑みながらのお辞儀だった。 悠黄奈 「……?ああいえ、みなさん嬉しかったんだろうなと思ったら、自然と……」 笑みっぱなしの顔を僕が見ていたからでしょう。 頬を小さく掻きながら、悠黄奈さんはそうおっしゃった。 マラジン『嬉しいって……機械をいじくれるのが?』 悠黄奈 「いいえ。“博光さんの”、武具のための鍛冶が出来ることが、ですよ」 マラジン『……?そうなん?』 悠黄奈 「そうなん」 言ってから、今度は声を出して笑う悠黄奈さん。 ううむ、僕はそんなに彼らに好かれているのでしょうか。 実感沸きませんが。 でも、そうだとしたら嬉しいです。 だから代金をマケてくれたらもっと歓喜乱舞してしまいます。 そんな念をアイルーに送ってみたら、ニヒルな笑みで返された。 ……ダメだそうです。さすがだ僕らのアイルー種。 ───……。 ……。 ややあって。 ゴシャーンと完成した鎧は、なんとフルプレートアーマー。 といっても普段は腕につけられる程度の小ささで、 コマンド入力で鎧になったり盾になったりと、 またしてもギミック系のものが完成したらしい。 しかも!しかもですよ奥さん!しっかりとビットシステム搭載なんです! レーザーとか銃だとか撃ち放題……でもないんですが。 EPって項目があたらしく増えてて、それがゼロになると撃てなくなります。 エネルギーですね、つまり。 銃の弾丸もビームサーベルも、全てがこのEPでカバーされております。 EPの上限はエネルギーポッドと呼ばれる物体の容量で決まるらしく、 そこはそれ、貴族どもやら機械王からかっぱらった、 数々の機械に搭載されていたポッドを合成させればアラ不思議! 結構な容量のポッドのでっきあがりでい!! そんなわけで装着!  ジャキィンッ!! マラジン『───エキサイティン』 言葉に意味はありません。 僕の小さな右腕に機械が見目麗しゅうございます。 で、これをピポパといじくって愛を唱えれば─── マラジン『変身!』  カチャコッ!ピピンッ♪ 声色 『スタンドヴァ〜イ♪』  コォオッ───ジャキィンッ!! 腕の機械が肥大化するみたいに広がって、鎧となって僕を包んでくれるわけですよ! ……ちなみにスタンドヴァ〜イの声は僕が言っただけで、 そんなボイスサービスはございません。 マラジン『…………でもチャチャブー状態で変身しても、なんというかちんまいままだ』 アイルー『ソレは仕方ないのニャ』 ええまったく。 だが僕はいいことを思いついていたのだ。 マラジン『火闇霊章発動!魔人カルキモードを発動し、僕の体を通常頭身に戻したまえ!』 思い出したのはダイの大冒険。 フレイザードがさ、ほら。 炎と氷のバケモンのくせに鎧を着てたじゃない? それを思い出したわけですよ。 今思えばあの漫画って結構パワーバランスよかったほうだったのかな。  ガンババババババォオオンッ!! ともあれ発動! 人間の頃と同じ頭身に戻った火闇魔人な僕は、 それらを既に包んでくれている鎧に多謝を送る。 シード(……ステキだ!) そんな中で、シードが目を輝かせながら僕を見ていた。 まるで変身ヒーローに憧れる少年のような目でした。ハイ。 フレイザード『おお……なんとスバラシイ……。まさかこれが出来るとは……』 腕とか足とかを見る感じ、どうやらカタチはフレイザードアーマーと同じらしいし。 ……でも欠点が一つだけ。 火闇魔人状態を保っていなきゃいけないってことは……ほら、ね? 筋肉痛が……さぁ。 フレイザード『ところで猫よ。このEPってどうすれば回復するの?』 アイルー  『妖精と天使とで協力して、微量のマナで回復するように調整してあるニャ。        でも戦闘中じゃあその調整がうまくいってないから、        戦闘が終わらないと無理ニャ。えぇとつまりだニャ……。        EPを回復させたいニャら、全ての機能をオフにして篭手状態に戻すニャ。        そうすることで、マナを吸収し始めて、蓄積されていくのニャ。        機能がオフになっていないとEPの回復は無理ニャ』 フレイザード『む。つまり戦闘中だろうが、篭手に戻せばEPは回復すると?』 アイルー  『そういうことニャ』 なるほど、そういうシステムか。 じゃあもしもジークに組み込んだ時は、 ギミック中とかにはEPの回復は不可能ってことか。 長剣状態じゃなければ、もしくは霊章に納めた状態じゃなければ回復しない……とか? うむむ、これはなかなかに難しそうだ。 アイルー  『ところで旦那さん、代金のほうだけどニャ』 フレイザード『……フェルダール硬貨でなんとかなりません?』 アイルー  『持ってるのかニャ!?だったらそれで構わないニャ!        通貨は確かにオロ硬貨だけど、それじゃなきゃダメってことはないニャ!        フェルダール硬貨は今じゃ希少価値が高くて、        オロ硬貨よりもよっぽど価値が高いニャ!        通すところに通せば、数百、数千万オロはくだらないニャ……!        グニャッハッハッハ……!!』 先生、なんだか目の前に物凄く邪悪な笑みをこぼす太古の猫が居るんですが。 アイルー『残念ながら、ボクらが貯めてたフェルダール硬貨は全て砕けてしまったニャ。      だからもしくれるんだったら、これほど嬉しいことはないニャ。      ボクらは時代がどうなろうとフェルダールを生きたキャットたちニャ。      人間たちがレゾンデートルがどうとか言っても、      ボクらは命の静寂(フェルダール)の中を歩んできたニャ。      ニャフフ……人間どもに先人の力というヤツを思い知らせてくれるニャ!』 ロイド 『そうだ!』 シェーラ『そうだとも!』 ジークン『よく言った!』 ウワー……よっぽど人間のこと嫌いになったんだなぁ。 まあしょうがないよな。 散々マナを使いまくって世界の空気悪くして、 古代技術を自らの技術と主って慢心してるやつらが相手じゃあなぁ。 その所為で亜人種がここに集まることになってしまったんだ、恨まれても仕方ない。 ただ集まるだけならいい。 でも、滅多なことじゃここから動けなくなってしまった。 外に出れば研究だの実験だのと、亜人種を捕らえようとするに決まってるんだ。 アイルー『───そうニャ!      旦那さん、ボクからのプレゼントはもう手に入れてくれたかニャ!?』 マラジン『プレ……あ、ああアレか。それなんだが、まだなのだ。      多分帝国の地下研究所あたりにあるとは思うんだが……』 プレゼントっていうのは、ナギーが言ってたアガなんたらっていう武器のことだろう。 くそ、このマラジンともあろうものが失念しておったわ。 わざわざ作らせたっていうから、てっきり機械王が持ってるものかとばかり……。 アイルー『それは残念ニャ……でもいいニャ、あの武器は旦那さん用に作ったものニャ。      よっぽど相性がよくなければ扱いきれないと思うのニャー。      だから他の誰かが持ってても満足に使えないように作ったからニャ。      ゲニャハハハ……!人間どもの戸惑いが目に浮かぶようニャ……!』 悠黄奈 「………」 マラジン『あの……どうして遠い目で僕を見るの?』 悠黄奈さんだけに納まらず、何故か皆様が遠い目で僕を見る。 ええ、ええ……そうですとも。 こんな黒い笑い方をするようになったのは、 僕との付き合いが長いからだ〜とか言いたいんでしょう? でも共通の敵を見つけたのだ、こういうのがあってもまあ、いいじゃないか。 マラジン『…………』 ああ、なんでしょうね。 心の中が暖かい。 じんわりと、この場にある賑やかさが身体の中に染み込んでくるような……。 冷めてしまったような感覚さえ無意識に感じていたのか、こんな賑やかさが酷く暖かい。 ダ、ダメよマラジン!泣いたらダメよマラジン! 今は喜ぶべきところなんだからマラジン!マラッ……! マラジン『………』 なんだか違う意味で涙が出そうだった。 いつの間にか俺、自分がマラジンであることに違和感覚えなくなってたよ……。 マラジン『───亜人種のみんな!!聞いてくれ!!』 アイルー『な、なににょ!?』 マラジン『そこでギャラクシーエンジェルの真似しなくていいから!聞いてくれ!!      俺、俺……キミたちが無事でいてくれてよかった!!      今、心の底からそう思えます!ありがとう!生きていてくれてありがとう!!』 亜人種 『………』 もう何を叫んでるのか解ったもんじゃない。 ただひたすらにありがとうを、よかったを叫び、 最後にミギー!と大きく腕を上げて背伸びの運動。 ───すると、それを聞いた亜人種の皆様がズドゴシャアッ!! マラジン『ギャーーーーーーーウ!!!』 一瞬にして見える景色を詰めてきて、抱きついてきたのだ!! アイルー『旦那さんもよく無事だったニャーーーーッ!!』 ジョニー『人間はキライだけど旦那さんは大好きニャーーーーッ!!』 ロイド 『ワッハハハハハ!!嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか!』 シェーラ『べつにそなたに心配される謂れはないが、ありがとうは言っておくべきだの』 ジークン『クックック……我をどなたと心得る。我は不死身がウリのジークンぞ!』 エィネ 『けど、博光さんも無事でなによりです。      エーテルアロワノンで封印状態のあなたを見た時は、      どうなることかと思いましたが……』 ジニー 『そういえば身体は封印されたままなのかニャ?』 マラジン『そ、そう……そうだ、けど───お、降ろしてぇえーーーーーーっ!!!』 終いには持ち上げられて、五体が引き裂かれんまでに引っ張りだこな僕。 ああ、僕ってこんなに人気者!でも痛い!痛いからやめて! いたっ───はうあ!? マラジン『イヤァアアアア!!ダメ!鬼面はだめぇええええっ!!!』 シェーラ『こ、この中はどうなっているのだ!?見せよ!好奇心が抑えきれぬ!』 マラジン『いやちょほんとやめやめってイヤァたっけてぇえーーーーーーーっ!!!』 ナギー 『これおぬし!ヒロミツが嫌がっておるであろ!』 シェーラ『わらわは好奇心に正直に生きると決めたのだ。      この男が常日頃からしでかすこととなにが違う』 ナギー 『…………それもそうじゃの』 マラジン『アレーーーーーーーッ!!?      ぐっ……ナギーが!ナギーがキャプテン翼の誘惑に負けてしまった!      こうなれば───シード!シィーーーーィイイドォオーーーーッ!!!』 シード 『……!……!《フスー!フスー!!》』 マラジン『ゲェエエエ!!鼻息荒く鬼面を狙ってらっしゃるーーーーっ!!!      だ、だめだよ!?チャチャブーの鬼面の中はトップシークレットなんだ!      キャプテンガントレットの秘密よりも超秘密な場所なんだよ!?      だ、だから、ね?その……わ、悪い冗談よそうよ!ね!?      今ならまだ引き返せるから!僕、責めたりしないから!      いやちょまだ僕が話してるでしょ引っ張らないでシェーラシェーラ!!      ちょ───なんでみんなしていつの間にか鬼面掴んでるの!?      やめてよ!これはいわばチャチャブーがチャチャブーであるための証で───!      これが無くなったら僕ただの“族”になっちゃうよ!鬼面族じゃなくなるよ!      だからっ……ちょ!やめっ───ヴァーーーーッ!!!』 喜びを込めて、ありがとうとよかったを言ったとある朝。 僕は鬼面族である証の鬼面をもぎり取られ、精神的に絶命したのでした。 Next Menu back