───冒険の書272/日常の一端、皆様の近況───
【ケース695:弦月彰利/フルレザーランポスーツ】 じゃがじゃああああん!! 解説 『さーあお待たせしたぜ野郎ども!トトカルティックの準備はOK!     グラディエーターバトルがいよいよ始まるぜ!     ただいまの賭け数はこんな感じになってるぜぇーーーっ!!』   アルビノ…………239   オカダ……………120   ユミハリ…………13   アイダ……………201   オルランドゥ……421   アグラハムニ……119 解説 『倍率は追って説明!今は誰が勝つかが一番重要!』 ……。 …………エ? エト……ジュウ……エ?ジュウ……サン?エ……? 彰利 「………《ポム》……エ?」 藍田 「ゴースト!」 岡田 「よっ!ゴースト!」 彰利 「うるせーーーっ!!13だからってゴースト言うなこの野郎!!」 ボーゼンとしてたら肩を叩かれた。 で、振り向いたらゴースト……泣いていいですか? 藍田 「謙遜すんなよゴースト……あ、死神13のほうが嬉しいか?ゴースト」 彰利 「ゴーストじゃねー!つーかなんなの!?なして13!?ひどくない!?」 岡田 「俺なんて先に入ったのに藍田に負けてるんだぞ……?     ショックだぁ〜……ゴーストには負けるけど」 藍田 「つーかさ、オルランドゥ伯、人気ありすぎじゃないか?     てっきり機械使いのアルビノが一番高いと思ってたのに。     まあゴーストには負けるけど」 彰利 「ゴースト言うなタコ!13だぞ13!13って……!     チョッパーの懸賞金より数字的に少ねぇじゃん……!」 涙が出ちゃう……ブレイバーだもん。 岡田 「強いのにな、どうしてだ?」 藍田 「きっと髪型がキモかったんだ」 彰利 「ウニヘッドに言われたくねぇよ!!」 藍田 「なんだとトンガリーニョ!この尖浩二めが!!」 彰利 「ななななんだとコノヤロォオーーーーッ!!!     あんなヘンな口をしたヤツと一緒にすんじゃねィェエーーーッ!!!」 頭をトンガリ言われるのはまだよし!だが尖浩二と呼ばれるのはこれ心外!! アタイの抗議喉から放たれ、やがて、わーーっと叫びながらのボコスカバトルに───! 岡田 「おいおい、ほら、そろそろバトル始めるみたいだし───」 じゃけんどもあっさり止められ───るわけがなかった。 彰利 「うるせぇこの岡田めが!岡田野郎!」 藍田 「すっこんでろ岡田が!この岡田野郎が!!」 岡田 「なんで苗字が罵倒文句になってんだよ!!     てめぇら俺の苗字になんの恨みがあるんだオラァーーーーッ!!!」 彰利 「そうだ失礼だろうがこのウニ!」 藍田 「そうだ失礼だろうがこのトンガリ!」 彰利 「いいやてめぇの方が失礼だね!」 藍田 「いやいや順番は護ってもらわんと!」 解説 『はいそこうるせぇーーーーーっ!!     今から第一試合始めるんだから黙ってろクズども!』 彰利 「なんだと解説てめぇやんのかこら解説この野郎!!」 藍田 「そんな高いところでなに偉そうにしてんだ解説てめぇ!!」 岡田 「文句があるなら降りてこいや解説てめぇ!!」 解説 『だからわざわざてめぇつけんなって言ってんだろうが!失格にするぞてめぇら!』 彰利 「なんだと解説てめぇ!卑怯だぞコラモービー!!」 藍田 「何様だ解説てめぇ!降りてこいコラモービー!!」 岡田 「マイクで怒鳴るな解説てめぇ!己の声で叫べやモービー!!」 解説 『てめぇてめぇ言うな黙ってろクズども!!』 彰利 「うるせぇって言ってんだろうがモービー!」 藍田 「そんな高いところで何様だてめぇモービー!」 岡田 「卑怯だぞコラ降りてこいコラモービー!!」 解説 『だから誰だよモービーって!!』 解説さんが裂帛の気合でガオーと怒るがそげなことは関係ねー! 解説 『え、えー……失礼しました。     それでは第一試合のしぇんしゅっ……っとと、失礼。選手の───』 彰利 「なに噛んでんだコラモービー!」 藍田 「解説が噛んでんじゃねーコラモービー!」 岡田 「いいからちょっと降りてこいコラモービー!!」 解説 『解説だって人の子なんだよ!!』 彰利 「なんだとてめぇコラモービー!!」 藍田 「盛り上げる戦士に向かってなんだそりゃモービー!!」 岡田 「降りてこいコラモービー!!」 解説 『ギィイイイうるせぇえええええっ!!!』 もうすっかりモービー扱いです。 やっぱ高いところに居るヤツへの罵倒っていったらモービーでしょう。 彰利 「じゃけんどYO、この試合ってアタイらが買ってもあんまり特にならねーよね。     勝てば勝つほど賞金が貰えるっつーとったけど、     結局は賭けで誰が勝つかによるし。     専属が自分のグラディエーターに賭けた場合だけ、     多少倍率が変わるくらいらしいし」 藍田 「バンパイアさん、ちゃんと俺達に賭けてくれてるかな」 岡田 「さあ。それより俺はゴドーのことが心配だよ……。     あいつの方が強そうだ〜とか言って、適当なヤツに賭けてる可能性が……」 声  「いいかぁーーーオカダァアーーーッ!!負けろよてめぇえーーーっ!!」 岡田 「…………ね?」 予想通りだったらしいッス。 どっからか聞こえてきた声は、確かにゴドーのあんちゃんの声だった。 対戦カードもまだ発表されてないのに、随分と薄情な専属さんだ。 解説 『ではいよいよ対戦カードだ!     対戦カードはガメッシュオーナーがアミダで適当に決めた故に公平であります!     誰が誰と当たるかを公表する前に決めていただいたのは、     そのグラディエーターをどれほど信頼するか、     または賭けたかったかを見たかった故です!     では発表します!第一試合!!オカダVSアグラハムニ!!』 ハワァーーーーッ!! ほほう……第一対戦カードは岡田くんと七人の子か。 岡田 「アグラハムニって聞くと、どうしてか羊を思い出す……」 彰利 「アッグラハッムに〜は〜しっちにんの子っ♪」 藍田 「それが、アグラハムニは羊の子って聞こえてたからだろ」 岡田 「幼稚園の食事の時、結構流れてたよその歌」 藍田 「俺が聞いたのは小学の時かな」 どちらにしても、アタイにとっちゃあモノスゲー過去のこと。 懐かしいかぎりだねぇ……あの頃はアタイも若かった。 野望に、希望に満ち溢れておったよ……グフフフ、そして今、この時も。 解説 『おっと言い忘れていたが、     今回はグラディエーターにも賞品があるから全力で戦えっ!     3位までなら豪華賞品が!それ以下にはうまい棒が与えられる!』 彰利 「なしてうまい棒!?」 解説 『ちなみに賞品は!     1位に太陽の紋章!2位には月の欠片!3位には肉焼きセットが贈られる!!』 彰利 「なんと!?」 太陽の紋章!?太陽の紋章って───!……なんだっけ? 彰利 「なに?」 岡田 「や、いきなりなに、って訊かれても」 藍田 「太陽の紋章だろ?ほら、ウラシマまりんが出現させるっていう、     ザ・モモタリャ〜伝統のアレじゃないか?」 彰利 「ぬう……そういやそげなものもあったような……。     アタイとしては強者のエキスが欲しいんだけど。ラシアンクロー大好きだから」 岡田 「1位以外はあまり欲しいって感じがしないなぁ……     それだけ頑張れってことだろうけど。     肉焼きセットなんて誰が欲しがるんだ?」 彰利 「え?アタイ欲しいけど」 岡田 「欲しいの!?」 だって肉焼きセットですよ肉焼きセット! ジリジリ焼いて、ハァッ!と上げればゴゲェッ!とコゲ肉が……マア素敵!! 彰利 「ともかくアタイは1位か3位を目指すぜ〜〜〜っ!」 岡田 「俺達が月の欠片手に入れても仕方ないもんなぁ」 藍田 「いや。ここはあえて月の欠片を手に入れて、     晦を脅迫───かけあって、なにかレアアイテムを……!!」 彰利 「………原中だねぇ」 いや、そもそも普通に黒いのか? なんにせよいい兆候です。 思ったこと、面白そうなことを進んでやるようになってるからとっつきやすい。 彰利 「岡田くんはなに狙い?」 岡田 「太陽の紋章だな。腕に出せれば、早撃ちの精度が上がるかもしれないし」 彰利 「なるホロ」 グゥ〜ム、これはなかなか楽しみなことになってきました。 悠介にゃあ悪いが、月の欠片は後回しよ。 太陽の紋章か肉焼きセット……それを手に入れてアタイハッピー! …………アレ?でも待てよ? 黒のアタイに、太陽の紋章って……───だ、大丈夫なんかね。 解説 『では第二試合の対戦カードだ!第二試合!アルビノVSアイダ!!』 藍田 「うえっ……よりにもよって風のアルビノンか……」 岡田 「アルビオンだろ、それ言うなら」 藍田 「似てるんだからいいじゃないか」 彰利 「ほうほう……っつーことは───」 解説 『第三試合!ユミハリVSオルランドゥ!!』 やっぱそうなるのね……オルランドゥ伯が相手か。 ヤツの戦いは見てたけど、ちぃとばかし手強そうだぜ……? 解説 『この対戦ののち、残った三名にはこの場で自由に戦ってもらい、     最後まで立っていた者を勝者とします!     もちろん、行動不能になった順に順位を決めるので、     全員心してかかってほしい!!』 彰利 「てめぇに言われるまでもねぇさー!モービー!!」 藍田 「なに偉そうに言ってんだコラモービー!」 岡田 「てめぇちょっと降りてこいコラモービー!!」 解説 『いい加減にしろてめぇら!!     いいからとっとと失せろ!これから第一試合始めるんだから!』 彰利 「なんだとっ…………!」 藍田 「死ねっ…………!」 解説 『なんだとも死ねもこっちのセリフだこの野郎!!』 岡田 「黙れクズが!!」 三人 『死ね!!』 解説 『ごぎりぎぎぎぎぎぃいいいい……!!!《ミチミチミチミチ……!!!》』 おお、解説の顔が青筋だらけに。 でも失せろって言われたから失せようね。 彰利 「ほいじゃ、頑張れよ〜」 藍田 「俺達3人で賞品を手に入れるんだ」 岡田 「それはいいんだけどさ。オルランドゥもアルビノも強すぎないか?」 彰利 「いざとなりゃあビッグバンかめはめ波で塵に───」 岡田 「いやっ!それ失格!!失格だから!殺しご法度って言われてたろうが!」 彰利 「おお、これはテンテンうっかり」 藍田 「俺の方は……まあなんとかなるだろ」 彰利 「……なんでしょうね。キミのその言葉に、言い様の無い不安を感じる」 岡田 「俺も……」 藍田 「な、なんだよそりゃ……だ〜いじょうぶだって、負けないから」 いや……そういう意味じゃあ……ないんだけどなぁ。 まあいいコテ、今は試合に向けての準備でもしとこう。 アタイと藍田くんは岡田くんに軽く手を振って、控え室へと戻った。 さて……いっちょ準備運動でも始めますかね。 【ケース696:閏璃凍弥/ガンナー】 カキンッ、スコッ、コシャンッ! 修錬場でもらった初心者用狩猟銃に弾を込めて一息。 うむ、やはり弾を込める時はモンハンチックにやらなくては。 ボウガンじゃなく、弓のビン詰めのように。 閏璃 「FUUUM……今日も朕は輝いておるでおじゃる」 朝露こぼれるとある森林。 何処とも知れぬその場で一夜を明かした俺は、 覚えたばかりの弾の調合を試し、成功させては万歳していた。 昨日は結局何処にどう進めばいいかも解らないままに、森の中でサバイバル。 実はまだジョブ自体は聖王なままの俺は、聖王のくせに銃を構えてニコリと笑った。 それから意味もなく、銃を手に木に背中を預けたり、 トランシーバーで連絡を取り合うポーズを取ったりと、 本当に意味もなくスリリングチックな気持ちを味わっていた。 敵なんて居ないんだが。 閏璃 「まあアレだ。とりあえず猫を探そう」 昨日決めたプランを口にする。 理由はバックパックに詰められていて、これさえあれば、 駆け出しガンナーな俺も少しは見れるようになればいいなぁとの思惑。 なにがあるのかといえば、ポケットの中には秘密がいっぱい。 つまりは、先の刻震竜戦の時に提督が出したバレットウェポンズを回収してあるってだけ。 消えてしまうより先に回収したから、まだ実物がゴソリと収納済みだ。 “消えない理由は弾が残ってるからかもしれないが、  どちらにしろ合成してもらい、  武器が完成すれば、それは一つの武器としてこの世界に舞い降りるであろう作戦”。 略してKDB。 名前に意味はない。 一応、ハイペリオンミサイルランチャーもあるから、 これを使えるようになれば……ウフフ。 閏璃 「とはいえ……ここは何処なんだろうなぁ」 見渡す限りの木々。 もしかして迷いの森とかいうやつだろうか。 魔王ナーヴェルブラングが封印されたという場所? ああ、あそこは死人の森だったか。 にしては、死臭というか、あの強烈な香りがないんだが。 ………………あ、そっか。 一応過去と現在がくっついたような状況なんだから、 景色的には過去の姿が反映されてる部分があってもおかしくないってことか。 ……てことは、もしかするとナーヴェルブラングも居たりとか……するかも。 おお、これは冒険心がくすぐられる! あれ?でもじゃあ、今までなんにもせずに人間どもにいい顔させてるのは何故? やっぱり居ないのか? 閏璃 「死臭がしないってことは、     まだここには魔王は封印されてないとか……そういう理由だろうし」 …………解らん。 自慢じゃないが、頭はよろしいほうではない。 だったらなにか手がかりになるようなものがあれば─── なんて思い、ガサッと茂みを掻き分けて歩いた時のことだった。 閏璃 「ア」 視界を塞いでいた枝や草を掻き分けた先に球体。 なにやら凶々しいオーラを放っているソレは、なんというか…… いやちょっと待て、あの中心に貼られてる札みたいなの、なんだ? え?あれ?もしかしてもしか……する? 球体 『誰だ……誰でもいい……俺をここから出せ……』 ……玉が喋った。 球体 『我が名はナーヴェルブラング……この世界の魔王である……。     ここから解放するならば、貴様の願いをひとつ叶えてやってもいい……』 ビンゴだった。 どうやら本当にナーヴェルさんらしい……驚きの限りだが。 閏璃 「そうか。じゃあ今すぐ助けるから、出られたら白骨化して死んでくれ」 球体 『助けられた意味がないだろうそれは……』 閏璃 「なんだよ嘘つきめ!じゃあもういいよ!そこで年老いて死ねばいいんだ!」 球体 『ま、待て……俺が死ぬ願いはだめだ……     他の願いなら、出来るかぎりのことをしてやる……』 閏璃 「じゃあ俺に貴様を一撃で殺せる武器をくれ」 球体 『こ……殺す気満々だな……だが残念ながら俺は不死身だ』 閏璃 「じゃあ不死効果ごと貴様を殺せる武器をくれ」 球体 『俺が死ぬ願いはダメだと言ってるんだが……』 閏璃 「じゃあいいや」 球体 『鬼ひでぇ!!』 こうして俺の旅は始まっ─── 球体 『ま、待て!願いだぞ願い!願いを叶えてやると言っているのに!』 閏璃 「むむ……確かに惜しい。じゃあ俺を強くしてくれ」 球体 『ふっ……やっと願いらしい願いがきたな。     どれくらいの力が欲しい?人を支配できるほどか?竜を殺せるほどか?』 閏璃 「貴様を球体ごとコロがせるくらいの強さを」 球体 『うおぉおおい!?それ死ぬよね!?俺死んじゃうよねぇ!?』 閏璃 「む。確かにこれは残酷だな。じゃあ貴様の力を一切無くす力をくれ。     そしたらその後にじっくり───」 球体 『殺すなぁ!!も、もういい!お前帰れ!誰か他のやつ待つから帰れよぅ!!』 閏璃 「おおなんだ、魔王とかいうからもっと取っ付きにくいかと思ってたのに。     結構話せるヤツじゃないか。偉そうなヤツを想像してたのに」 球体 『俺は元々、不死身ってだけでバケモノ呼ばわりされただけだ!     人間どもが勝手に魔王魔王言ってこんな場所に封印しやがって!     それをなんだてめぇらは!俺を見るたび殺す殺せって!     ハ!どっちが魔王だか教えて欲しいくらいだ!』 閏璃 「なに言ってんだ、魔王はお前だろ」 球体 『……そうでした』 なにやら落ち込んでしまったようだった。 おおどうしよう、こいつ結構面白いぞ。 あの息子にしてこの親ありって感じで。 閏璃 「じゃあさ、貴様の武具をくれ。魔王なんだからなんかあるだろ」 球体 『……魔王の斧と魔王の鎧がある。盾は……奪われた。     封印を解いてくれるなら、全てくれてやってもいい』 閏璃 「ところでお前って強い?」 球体 『誰にものを言っている。俺は魔王ナーヴェルブラングだぞ。     本気を出せばあんな勇者どもになど遅れをとらなかった』 閏璃 「油断して負けたんなら一緒じゃないか?」 球体 『う、うるさい』 図星だったらしい。ツッコミに覇気が無いし。 閏璃 「ちなみに俺は、サウザンドドラゴンを討伐した一味だ」 球体 『なんだとぉ!?サウッ……なにぃ!?』 閏璃 「確かに以前まで貴様は魔王だったかもしれないがな。     今の魔王はほぼ一人でサウザンドドラゴンを倒した存在だ。     そんな彼に歯向かえば、いかに不死身の貴様とて生き地獄を味わうことになる」 球体 『…………《ゴクリ》』 ほんとはみんなの力を合わせて勝ったんだが、 こういう場合は一人が滅法強いと思わせておいたほうがショックがデカそうだ。 そんな意を込めて、じっくりと話、たっぷりと待ったあとに一言。 閏璃 「……出たい?」 球体 『……しばらく考え事がしたい。ほうっておいてくれ』 予想通りの答えだった。 おお、さすが提督パワー。 実際どうなるかなんて解らないのに、一体の魔王をHIKIKOMORIにさせた。 閏璃 「そうか。……じゃあ魔王の斧と鎧、見せてくれないか?     どんなものなのか見てみたい」 球体 『疑いか。フフ、いいだろう。この封印は俺を封印するためのもの。     それ以外は容易く通り抜けさせることが出来る』 言って、ナーヴェルさんは球体からズチャリと禍々しい斧と鎧とを出してきた。 一応調べるを発動させてみたが……おお、本物だ。 球体 『どうだ。間違いなく本物───』 閏璃 「とんずらぁああーーーーーっ!!!」 球体 『なにっ!?なんだ!何事だ!』 武具が手に入れば、わざわざ不死の者を解放する意味などなし! 俺は斧と鎧を手に取ると、そのまま踵を返して走り出した!! ……ってくっさぁっ!!くさっ!くさいぞこれ!!なんだこれ!! だが構わない!俺は賭けに勝ったんだ!! 声  『気配が遠のいてゆく……!?待て!待てぇえーーーーーっ!!』 呼び止める声も聞きませんでした。 ようこそ魔王の遺産!そしてさらばだ魔王よ! 俺、強く生きるよ! 【ケース697:穂岸遥一郎/グランドニュ〜モルゲン】 さくさくさくさくとことことことこ…… 遥一郎「………」 空を見上げてみると、一羽の鳥が飛んでいた。 ───とある朝のことだ。 街にも辿り着けず、結局野宿をすることになった俺は朝、目が覚めると…… ノア 「………」 遥一郎「………」 二人旅になっていた。 いつの間に潜り込んだのか、携帯テントの中に一人、混ざっていたのだ。 それが、半歩後ろをしずしずと歩くノア=エメラルド=ルイードその人である。 金髪碧眼にメイド服、 頭にきっちりとつけたヘッドドレス(ホワイトプリム)が風にひらひらと揺れ、 その頭の後ろの宙ではノアの魔具、アークがふよふよと浮いていた。 前方で重ねられた手にはなんの武器もなく、 サウザンドドラゴン戦の前、持っていた武器全てをアークと合成した結果、 彼女の手にはなにもなくなっていた。 つまりあの、ヘルメットにもマシンガンにもなる魔器が彼女の武器なわけで。 自爆能力もあるし状態異常無効化能力もあるし治癒能力もあるしで、 とても万能なヘルメットなわけだ……おまけに意思もあるし。 遥一郎「なぁノア……いつの間に潜り込んできてたんだ?」 ノア 「マスターがお休みになられた後です」 遥一郎「そ、それってつまり、後をつけてきてたってことか……?」 ノア 「いえ、発見したのは本当に偶然です。     食料がなかったので、     旅人であるなら少々分けてもらおうかと訊ねたらマスターでしたので」 遥一郎「そ、そか……」 つまり俺の運がツイてなかっただけなんだな……。 ああ、さようなら一人旅……───いや、でも待てよ? 遥一郎「………」 考えてみればここにはサクラも観咲も居ない。 それってつまり、いつものようなギャースカ騒ぎがないっていうことで…… 遥一郎「……OH」 弦月みたいな呟きが口から漏れた。 二人には悪いが、これはそう悪くない状況だ。 別に嫌ってるわけじゃないし、むしろ傍に居てくれるなら嬉しいくらいだ。 ギャースカ騒ぎに巻き込まれるのが嫌なだけなのだから。 三人とも静かに、仲良くしてくれるのが一番なんだけどな。 そんなことを頭の中で呟くと、 半歩下がって、「マスター?」と首を傾げるノアの頭を撫でた。 ノア 「え、あ、あの……ま、ますた……?」 遥一郎「半歩なんて下がらなくていいから。ほら、隣歩いてくれ」 ノア 「お断りしますマスター。もはやこれはメイドさんとしての誓い。     弦月彰利著、メイドさん秘術書(写本)に記された全てを以って、     わたしはマスターに誠心誠意尽くすと決めたのです」 遥一郎「……え……や、あのな……」 ノア 「マスターは誰ともお付き合い、または添い遂げる気がないのですよね?     ええ、わたしももうそれを受け入れることにしたのです。     あんまりに責めすぎるのは、マスターにとって迷惑にしかならないと思いました」 遥一郎「うぐ……いや、それは……」 ノア 「ですが、最後にもう一度だけ確認させてください。     マスターは……誰とも付き合う気がありませんか?」 真っ直ぐな目だった。 期待と不安を混ぜたような、外見の歳相応の、弱弱しい少女の。 だから俺は真っ直ぐにその目を……いつか凍弥に教えたように、 真っ直ぐに、逸らさずに目を見て、言った。 遥一郎「……ああ。俺は、誰とも付き合わないし結婚もしない」 はっきりと、心の奥に届くように。 そうするとノアは、俺の言葉を体の奥で受け止めるかのように、 目を閉じながら大きく、けれどゆっくりと息を吸って───……やがて、吐いた。 ノア 「……はい。それではマスター、     わたしがマスターの傍に居ることを許可してくれますか?     これはわたしの我が儘です。もし、マスターがそれを拒むのであれば───」 遥一郎「いや。これも身勝手な話だけど、居なくなられるのは嫌だ。     ノアも、サクラも、蒼木も観咲もレイチェルさんも、みんな一緒がいい」 ノア 「…………───はい」 ノアは俺の言葉を聞いて、もう一度深く深呼吸すると─── 眩しいくらいのやわらかい笑顔で、はい、と頷いた。 ……なんとなく目を逸らして、頬を掻いてしまったのは…… その顔がかわいい、とか思ってしまったからだろう。 それでもやっぱり恋愛感情とは違う。 ノア 「ええ、マスターは勝手です。     普通、これだけ思ってくれる女性など居ないというのに」 遥一郎「……ん。ごめんな」 ノア 「構いません。そういったものを含めての感情なのですから。     それくらいで冷めるのでしたら、とっくの昔に冷めています。     ……まあ、想像なんてできませんが」 遥一郎「そっか」 そういうものなのか。 女心っていうのはいつまで経っても解らない俺だ、 多分俺が思っている以上に悩ませたりしたんだろう。 悪いとは思うけど、軽い話を振って蒸し返すのも癪ってものだ。 だから、俺は歩くことにした。 当てもない旅路を、のんびりと。 ノア 「マスター、これからどちらへ?」 遥一郎「マナ解放のために、機械文明をぶち壊しに。……一緒に、来てくれるか?」 ノア 「───……はい、マスター。どこまでも」 自分の胸に小さく手を添えて、彼女は微笑んだ。 その姿を見て、なるほど、なんて……ひどく穏やかな気持ちで思ってしまった俺は、 案外結構ヤバイのかもしれない。 まいった……弦月がメイドさんは清楚たれ、とか言ってる意味が少し解ってしまった。
【Side───ランポス】 彰利 「じゃぁっしゃああーーーーーーっ!!!」 セレス「きあーーーーっ!!?」 自分の出番が来るまで暇な今日この頃。 なんとなくセレっちに会いにきてたアタイは、突然のくしゃみに襲われ、 遠慮無用にセレっち目掛けて砲門を解放しておがったとしぇ。 セレス「なぁーーーにをするんですかぁああーーーっ!!!」 彰利 「《ゾボッシュ!》ゴーーーギャーーーーーン!!!」 そのお返しとして激烈目潰しをされました。 こう、ね?指の根元までザックリ目潰し。 バキの加藤さんだったら雄ォオオオとか叫びたいお年頃状況です。年頃関係ねーけど。 でも月生力でしっとりツヤツヤ元通り。一家に一人、彰衛門。 彰利 「グ、グゥウウ〜〜〜ッ!な、なにも目潰しまでせずとも〜〜〜〜っ!」 セレス「やかましいです黙りやがりなさいホモ黒ッカス」 彰利 「ホモ黒ッカス!?」 モノクロッカスみたいなあだ名を追加されてしまった……。 懐かしいなぁモンスターファーム。 モノリスって、アレでモンスターってんだからスゲェよね? 彰利 「なんだよぉ〜、くしゃみくらいで大げさな。     きっと誰かがアタイのこと噂してたんだッゼィ?」 セレス「どうせろくな噂ではないでしょう。     ホモとメイド以外のことで噂されるかどうかも怪しい人ですから」 彰利 「……とっても悔しいのに言い返せない俺の人間性ってなんでしょうね……。     でもとりあえずメイドじゃなくてメイドさん言いなさい」 セレス「解りました解りました。それで、試合はまだ始まらないんですか?」 彰利 「オウヨ。あともうちょいの筈。そんでセレっちはさ、今なにか目標とかあんの?」 セレス「なんですか藪から棒に」 彰利 「いえ、ちょほいと気になったもんで」 アタイらは一応目標がござんす。 アタイは皇竜の制御、藍田は中井出との絆の復活、岡田は銀の腕入手。 悠介はモンスターユニオン復興と、月の欠片の入手。 なんだかんだでちびちびと野望に向かって邁進してらっしゃるから、 セレっちもどうかな〜って感じで訊いてみたんだが。 セレス「そうですね……今やっていることは、     意識をわたしのままで、エドガーの力を解放する訓練です。     これでなかなか難しくて、少々梃子摺ってますが」 彰利 「エドガーって……ああ、セレっちの本体の意識?」 セレス「元わたしですね。どちらかといえばわたしの意識の方があとのものですし」 彰利 「……やっぱ強ぇええの?」 セレス「わたしとは比べ物にならないくらいに、闇側の力が強いですね。     プレイヤーとしてのレベルはそこそこに上がりましたけど、     “バンパイア”としての力は全然です。ですからそれが解放できるようになれば、     まだまだ鍛えることもできるんですけどね」 彰利 「ほへー……いろいろ考えとるのねぇ」 セレス「弱いままでなんていられませんから。     特に、あの能天気死神に負けるのだけは我慢がなりません」 彰利 「あ……やっぱそこなんだ……」 なんとなく予想ついとったけど、マジでそうだとは。 道理で強くなることに前向きなわけだ。 アタイもね、ゼノに追いつかれんように日々努力することに懸命なお年頃ですよ? かつての自分を思い出したアタイは、努力を惜しまぬステキなアタイ。 こうしてただ立っている間にも、 体の中ではレヴァルグリードの力の解放の幅をほんのちょっとずつ広げてるところさ。 ……一ミリも広がっちゃいねーんだけどね。  …………ハワァアーーーーーッ………… 彰利 「……っと、そろそろ始まるみたいじゃね」 セレス「どうせひと試合が長引くことなんてないんですし、そろそろ行ってはどうですか」 彰利 「そうだね」 フムと頷いて歩き出す。 第一試合はアグラハムニさん対岡田くん。 どうなるのかね……アグラハムニさんの力は未知数だから、 岡田くんが勝つとは断言できねーし。 【Side───End】
ドチュチュチュチュチュチュチュガォンガォンズガァアアアアッ!!! キュフィイイイン───ドッガァアンッ!! ガラタタタタタタ!!! 獣人 『ギャアーーーーーーーーッ!!!!』 山や丘の影響もあり、ようやく景色が狭まってきた頃。 突然襲い掛かってきた獣人が、ノアのアークによって蜂の巣にされていた。 ガトリングブラスト、エナジーバズーカ、サイクロプスブラスター、 チャージバズーカ、エナジーマシンガンの順に散々と撃たれ、 実弾の無いエナジーバレットの雨の中で獣人は塵と化し、 ノアはノアで指先でスカートを小さくつまみ、 優雅にお辞儀をして戦闘終了の息を吐いていた。 遥一郎「……なぁノア……そのアークってどうなってるんだ……?     実弾がないのに弾が撃てまくるなんて……」 ノア 「TP、または大気中のマナを弾丸として放ちます。     太陽光が電気に変換されるような感じを想像していただければ、     解らないまでも多少の納得は出来るかと」 遥一郎「ま、まあ……多少のな……。ていうか、な。俺も戦いたいんだが……」 ノア 「マスターは肉弾戦には向きません。いえ、知っているので言わなくて結構です。     マスターはミスティシンボルを得た代わりに、     直接戦闘全般が苦手になっていますね?ほぼ不可能といっても過言ではないほど」 遥一郎「うっ……」 ……そうなのだ。 魔法だけはやたらと強くなれたが、それ以外はからっきし。 体捌きもてんでだし、直接攻撃なんて以ての外。 中井出が武具を持たない時のごとく、 あいつが武具を強さにするのなら、俺は魔法を強さにしてる。 だからそれ以外はてんでダメなわけであって……はぁ。 元々運動全般は苦手で、学生の頃から頭でっかちだった俺だ。 今更こうなったことを後悔するでもなく、一つだけ極められるんだったらそれでいい。 他のヤツに言わせれば、いくらなんでも魔法以外がダメダメすぎ、らしいが。 いや、自覚してる分余計にか? ノア 「マスター……お言葉ですが、少しは肉体も鍛えたほうが……」 遥一郎「いいや、俺は魔法一本の道を極めるって決めてるんだ。     魔法嫌いが武術を極めようとするみたいに、この気持ちは磐石だ。     俺は体術が苦手だ。だから魔法を極めたい。     肉体労働が出来ない者の辛さ、悲しみ……!     格闘が出来るヤツが、運動が出来るヤツがそんなに偉いか……っ!     とある日に突然、観咲にルルーシュってあだ名をつけられた俺の気持ちが解るか!     調べてみれば頭はいいけど運動がまるでダメなキャラクター!     “ああ俺だ”って思ってしまった自分をどれほど笑ったか!     体育で3以上を取ったことがないのが俺の密かなコンプレックス……!     さ……逆上がりが出来るのがそんなに偉いのかよ畜生ッ……!」 ノア 「マ、マスター、落ち着いてください……」 遥一郎「だったら鍛えればいいか!?いいや違う!魔法を極めればいいんだ!     だってそうだろう!?ひとつを極めるってそういうことさ!     その先で、運動不足がたたって負けてもむしろ本望笑って死のう!!     だが少しでも体を鍛えるなんて半端な先に、     魔法使いとして死ぬのは半端すぎて笑えもしない!     魔法使いは魔法さえ使えればいいんだ!頭でっかちの意地───見せてやる!     どいつもこいつも大魔法連発してるからって、     簡単に魔法覚えてるとか思いやがって……!     魔法一つ覚えるのにどれだけ苦労してると思ってやがる!     どれほど勉強して、どれほど暗記して発動させてると思ってやがる!     それを、主にあの根性が捻じ曲がっちまった元原中たちに思い知らせてやる!」 魔法ってのは詠唱が全てだ。 詠唱とTP、これがあって初めて成功する。 無詠唱魔法は頭の中で詠唱を組み立てて放つから、口にしないで済むだけだ。 長い詠唱を必要とする魔法には、無詠唱だろうが時間がかかるし、 詠唱を間違えれば当然発動しない。 詠唱中は当然隙だらけになるし、TPがなければ詠唱できたところで魔法は発動しない。 頑張って覚えた魔法だって、敵の属性を考えて撃たないと回復してしまう場合もあるし、 跳ね返される場合も、無効化される場合だってある。 馬鹿みたいにドカドカ撃ってればいいってわけじゃないだ。 それを、あの元原中のやつらはぁあ……!! ノア 「……マスター?なにかあったのですか?」 遥一郎「……昨日、ちょっとな」 一人旅の最中だった。 偶然道端で出会った元原中の……誰だったか。 佐東と島田と灯村あたりだっただろうか。 遠巻きに俺を見て、ぐちぐちと嫌味をこぼしていったのだ。 “見ろよ、魔法使いサマだぜ”とか、 “いいよな〜、離れて魔法撃ってるだけでいいやつは”とか、 “おいおい、素早く動けねぇんだから魔法に頼るしかないんだって”とか。 随分と好き勝手に言ってくれた。 それで体を鍛えて素早く動いたら動いたで、魔法使いのくせにとか言うんだろうに。 ああくそ、腹が立つ。 なにに腹が立つって、あの愉快の象徴だった原中が、 本当の意味でクズ集団になってしまったことにだ。 今までだって嫌味の一つは言ってきたが、 アレには敵意はなく、場を盛り上げるためにわざと言ってるフシがあった。 だっていうのに、今のあいつらは敵意丸出し、嫌味丸出しの腹が立つ言い方だ。 だからだ。 だかこそ、今度敵として会った時は、お望み通り魔法だけで対抗する。 間合いを詰められたって、攻撃を食らったって構うもんか。 魔法使いには魔法しかないんだ、当然じゃないか。 ノア 「マスター、怒気が溢れていますよ」 遥一郎「……………………ん。ごめんな」 すぅっと息を吸って、吐く。 それだけで、心は随分と穏やかになってくれた。 よし、じゃあ行くか。 まずはマナ解放のために───……竜宝玉破壊、か? その前に、出来れば機械文明の破壊をしたいところだが、俺だけじゃまず無理だ。 中井出や晦や弦月が居ればいいんだけど、何処に居るかも解らなければ、 中井出にいたっては封印中だっていうじゃないか。 困ったな……まさか俺とノアだけでノヴァルシオに乗り込むわけにもいかないし。 遥一郎「…………いや、待てよ?」 だったら、ノヴァルシオに乗り込む方法を調べておいて、 仲間が揃ったら乗り込むのはどうだろう。 どうしてかモンスターたちは、俺と遭遇しても襲ってこないし─── それは多分、晦がモンスターキングとして命令を送ってるから、だと思うが。 だから今のところ、敵は獣人と人間、っていうことだと思う。 竜族の出方が解らない以上、ヘタに刺激するのは得策じゃない。 竜族の方は出来れば中井出に任せるとして、まずは他のやつの状況を知るべきだな。 中井出は無理として、晦、弦月、ルナ子さん、 閏璃、凍弥、柾樹、ゼット、ナギー、シード……ついでにレイル。 この12人で、とっつきやすいヤツの状況を─── 普通に考えると晦なんだが、キングとしていろいろやってるかもしれないしな。 じゃあ弦月……は度外しよう。 となると、凍弥か柾樹、あたりになるのか? 遥一郎「…………」 一応、tellを飛ばしてみる。 まずは凍弥だが……ブツッ。 声  『……隆正だ』 遥一郎「タイムスリップしてないで戻ってこい」 声  『……あれ?おっさん?───じゃなくて与一?     どうしたんだ?俺にtellなんて珍しい』 遥一郎「ああ。そっちの状況を知っておきたくてな。どんな感じだ?」 声  『どうもこうも。今地下洞窟を歩いてるところだ』 遥一郎「地下洞窟?」 声  『ああ。砂漠でアリジゴクに襲われてさ。気づいたら地下洞窟に居た』 遥一郎「そ……そうか」 面倒なことに巻き込まれているらしい。 こういうのには触らぬが吉ってやつだ。 声  『出口が解らなくて困ってたんだ、出来れば───』 遥一郎「すまん急用が出来た達者で暮らせよじゃあな!」 声  『え?あ、おい《ブツッ!》』 …………悪は去った。 しかしそうか、出口が解らなくて消耗してたから、心がタイムスリップしてたのか。 現実逃避とも言うか?……まあいい、次は柾樹だ。 ………………ブツッ。 声  『…………もしもし……?』 聞こえた声は、えらく小声だった。 遥一郎「柾樹か?遥一郎だが……どうかしたか?やけに小声で───」 声  『い、いえあの……飛空艇に乗ってみたかったんですけど、パスが無くて……。     発行してもらおうとしたらバカみたいに高くて、だから密航を……』 遥一郎「………」 すまん、てんでマトモじゃなかった。 どうしてくれようかこの男……。 遥一郎「あのな……見つかったらどうするんだ?」 声  『そんな時のためにアナゴグミが』 遥一郎「自爆する気満々じゃないか!やめろ!乗客も居るんだろ!?」 声  『金持ちしか乗れない乗り物なんて壊れてしまえばいいんだ』 遥一郎「……どうしてだろうなぁ……今俺、     ルドラに憑依されてて素直で真っ直ぐだったお前が懐かしい」 声  『過去ですからね、懐かしむのはいいことですけど、     それは俺じゃないので……ごめんなさい』 遥一郎「…………いーや、謝る必要なんてない。俺のほうこそ悪かった。     好きでああなったわけじゃないもんな」 声  『いえ、解ってもらえれば。というわけで早速見つかったのでアナゴってきます』 遥一郎「へ?あ、いや待───!!」 声  『ぶるぅううあぁあああああっ!!!』  ドゴォオオオオオオオンッ!!! 声  『ホキャーーーッ!!キャーーーッ!!きゃあああーーーーーーっ!!』 声  『う、うわあああ!蒼色の魔人だぁああーーーーーーっ!!』 声  『たすけ───ひぃいいいいいっ!!』  ガドォオオオン!!ゴゴッ!ザッ……ジジジ……ブッ─── 遥一郎「…………」 ……ふと見上げた空の先。 眩い光が空を照らし、ずっと遠くで小さな爆発音が聞こえた。 遥一郎「……いい天気だな」 ノア 「マスター、現実逃避は……」 遥一郎「何も言わないでくれ……頼む……」 平和と安寧が欲しいなぁとか、しみじみ思ってしまった。 マラジンが皇帝になったりとか飛空艇が壊されたりしない、平和と安寧が欲しいなぁ、と。 Next Menu back