───冒険の書273/雷神シド───
【ケース698:岡田省吾/ではじめ三歩】 ジャがジャじゃんっ!じゃがじゃじゃんっ!ででげでんっ! 解説 『よぉーーーっしゃあ長らく待たせたぜてめぇら!     今から始まるは遠慮無用の大バトル!だけど殺しはご法度大バトル!     死人が出ちゃうとお客さんも引いちゃうからね!命大事に命大事に!     ん〜では早速いってみよう!グラディエーターバトル第一試合!     オカダVSアブラハムニ!!』 岡田 「イ゙ェアアアア!!」 アブラ「キョエーーーッ!!!」 離れた位置で向かい合い、互いが名前を呼ばれた時に気合いの声をあげる。 よ、よ〜し始まった。 気をしっかり持たないとな。 油断大敵油断大敵、っと…………って、あれ?油断大敵って誰のモットーだったっけ。 ───あ、そっか。記憶に引っ掛かりがある時は、提督が原因って藍田が言ってたっけ。 どうしてだろうなぁ、よく知らないヤツなのに、提督って呼ぶことに全然違和感がない。 解説 『はぁああじめぇえええいっ!!』  ンドワァッシャアアアアアアン!! 岡田 「《ぱんぱんっ!》おっしゃーーい!!」 ジョー東のように頬を叩き、気合いを入れる。 実際、頬が痛いくらいに顔を叩くと集中力が上がったりするらしいが、ほんとかな。 アブラ「ホガー!」 相手はアブラハムニさん。 武器は無し……強いて言えばメリケンサック。 体術が得意な方、と言うよりは殴るしか脳がないヤツらしい。 喋るのも得意ではなく、もうなんていうか人間版オーク、とか呼ばれてるらしい。 アブラ「ア゙ーーーイ゙!!」 そんな巨体な彼が、どっすどっすと走ってきて、おもむろに拳を振りかぶって─── な、なに……?まさかこの体勢から愚直に拳を振り下ろす気か? 技でもない、術でもなく……そんな攻撃を、この究極といっても差し支えない大会で……!  パシドバゴォンッ!! 岡田 「ぶえぁっはぁあっ!!」 つい誘惑に負けて、愚地克己の真似をして素手で攻撃を受け止めてしまった。 が、だからと言うべきなのか、護りは成立せず、 俺は思い切り自分の掌ごと顔面を殴られてしまった。 解説 『よぁああーーーっとぉおお痛烈ぅううっ!!受けが通用しないぃいいいっ!!!』 岡田 「ぶぺぺっ……!アニメ・はじめの一歩の解説みたいな叫び方すんなモービー!!」 どうしてかはじめの一歩の解説って、 “おぉっとぉ!”を“よぁあっとぉ!”って言うんだよな。 あの言い方大好きだけどさ。 そんなことを考えながら、殴り飛ばされた体を起こし、剣に手を添える。 馬鹿なことした……剣士である俺が、素手での防御を上手くやれる筈がなかった。 剣士なら剣、武道家なら篭手と具足と、得意な部分は明白に決まってくるっていうのに。 だがバカでもいい!面白いならそれで突き進むべきだ! ───と、さっきから心の奥が騒がしいのだ。 こんな高揚……初めてだ!故にやった!後悔は、ああ!してないさ! 岡田 「え、えーと……殺しはご法度だったよな。よし!」 鞘についたホックベルトを柄に絡め、ボタンで閉じる。 剣を引き抜けなくなった状態のそれを、やはりそのまま構え、武器として扱う。 殺しがダメなら抜き身はヤバイ。だからこその鞘収め。 アブラ「ホガーッ!」 再びどっすどっすと走ってきたアブラスマシ─── じゃなかった、ハムニさんが両腕を上げる! どうやらスレッジハンマー(適当命名:固めた両手の底で叩く)で攻撃をするらしい。 シスターが祈るように固められた両手が振り上げられ、 俺目掛けて容赦なしに振り下ろされる! 俺はその両手に合わせて剣(の鞘)を振るい、 俺の頭を殴りつける筈だったソレを、ビッシィイン!と止めてみせた。 アブラ「ホガッ!?」 岡田 「目じゃないぜ(ユーアーノットマイマッチ)」 驚愕した瞬間が隙が生まれる瞬間さ。 素早く戻した剣を、その鞘ごと手首のスナップのみで振るい、 シワの寄った眉間へと連ねること三発。 パガパガパガァン!と響く渇いた音とともに、アブラハムニさんは大地に沈んだ。 ……男塾のJの真似してみたけど、訳ってほんとにこれであってるのかな。  がしぃっ!! 岡田 「ホワッ!?」 突然の足への違和感! 見下ろしてみれば、アブラスマシさんが俺の足を掴んでいやがりました! アブラ「ホガー!!」 うわぁ気絶してねぇ!それどころか嬉しそうな顔で俺の足掴んでるよ! こ、こいつ……ものすげぇタフネスだ! こいつオークじゃないって!トロルのほうが似合ってるって! アブラ「ホガー!」 岡田 「《ブワァッ!》うおわっ!?おわぁあーーーーっ!!」 アブラスマシが倒れていた体を起こすと、 足を掴まれたままの俺は自動的にバランスを崩し、逆さ宙吊り状態になってしまう。 その最中も鞘で攻撃を当てたが───う、うえぇえ……全然怯まねぇ……! 岡田 「こ、こんにゃろ───、……っ!?」 宙吊り状態っていうのは焦るものだ。 普段やられるわけがない行動だからだろう。 俺もそんな風に焦りながら、腕をなんとかすればと腕を見た時だった。 アブラスマシ(もうこれでいいや)の腕に、赤い点々が……! これは……! 岡田 「ツッ……ツベルクリンの反応か!!」 ああ懐かしき、我らホビーズファミコンゼミナール。 じゃなくて!もしかしてヤクか!?ドーピングかこの野郎!! 岡田 「おぉい解説てめぇ!こいつヘンだぞ!ヤクでもやってるんじゃないか!?」 解説 『あぁん!?もしかしてドライブのこと言ってるのか!?     ドライブは戦闘の前だったら使用が許可されてるだろうが!     だが当然戦闘中はいかなるアイテムも使用不可能!五体と武具のみで戦え!』 岡田 「合法だったの!?」 しかしドライブとはまた懐かしい! ゼノギアス俺好きだったよ!ってそんなこと言ってる場合じゃねぇ! 痛い!掴まれてる足が痛───うおっ!? 腕が……腕だけじゃねぇ!体全体がムキムキ血管だらけに……! 筋肉が肥大化しまくってないか!? 解説 『お、おぉ……!?これは……救護班!救護班!!様子がおかしい!     これは───規定以上のドライブが投与されている!すぐに取り押さえて!!     試合中止です!アブラハムニ選手失格!───なにをしてる!早く!     様子からして一本や二本じゃない!中和剤を打って!早く!!』 な、なんだ!?なんだか知らねぇけど中止なんて冗談じゃないぞ!? 勝たなきゃ賞金貰えねぇじゃねぇか!! 勝───ベキャアッ!! 岡田 「へ……?───っ……うがぁああああああああっ!!!!」 足が砕けた───!! うそだろ!?人間の握力じゃねぇ!! こんなっ……!おもむろに掴んだ足、具足ごとへし折りやがった……!! 岡田 「はなっ……離せっ!ぎあああああ離せっ!離しやがれぇえええええっ!!!」 だがそれでも、へし折っても離さないその姿に、痛みに、気が狂いそうになる。 砕けた足は筋もぶちぶちと千切れ、 俺自身の重力の所為で皮だけがミチミチと伸び、繋がっている状態だ。 痛みが脳内に突き刺さり、 敵の腕を斬ってでも逃げるなんて考えさえ上手く働いてくれない。 アブラ「ギヒ……ギヒヒ……オデ……オマエ……タオス……!     オデ……ショウキン……ギヘヘヘヘ……!」 どれほど投与したのか。 もはや筋肉組織の異常発達のために変形しすぎてて、 誰かと訊ねられても答えられない風貌になっていた。  ダダァン!ダァンダァンッ!! アブラ「あごっ!がっごあっ!」 その背中に弾丸が打ち込まれる。 恐らく、睡眠弾か麻痺弾の類。 だが───効いた様子もなく、ゲヘゲヘと笑い、 砕けた俺の足を振り回し、俺を救護班目掛けて投げつけた。  ───拍子に、ブギリ、という嫌な音。 体の中を駆け抜けて耳に届いたその音は、 俺を凍てつくくらいの寒気の中へと放り込み───のちに、絶叫。 信じられないくらいの痛みに我を忘れ、本能のままに叫んだ。 見下ろした足には足が無く、ただ赤くただれた服の名残だけが残っていた。 なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ───! 脳内が灼熱する。 どうしてこんなことに、どうして、と。 ───だが、ふと頭になにかのとっかかりが浮かんだ時。 その痛みを、俺は二度目のことだ、そう騒ぐな、と……突然にひどく冷静に受け止めた。 ……そうだ。 あの時は確か、晦に斬られて───どうして晦と戦ってたんだっけ。 ……引き止めるため?なんのために………… 岡田 「───あ」 また、引っかかり。 そして、胸にあったかいなにかがよぎった。 どうしてだろう……なんの救いもないのに、今はそれでいいと。 それだけで心が救われた気がして、ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、 頑張ってみようって……見栄を張ってみようって思えた。 それがやせ我慢でもいい。 立って立ち向かえることが、確かな意地となるのならと。  ───ザガキャァッ!! 岡田 「っ……!」 ベルトホックをパチンと外し、抜き取った剣を地面に突き立て、片足で着地した。 勢いまでは殺しきれず、駆けつけた救護班の前でようやく止まれたってくらいだが─── 救護班1「大丈夫かオマエ!」 救護班2「下がっていなさい!その足では───」 痛みはひとまずいい。 頭に突き刺さる痛みよりも、この胸に湧き上がる高揚を手放してしまうほうが悲しい。     剣を構えろ だから     そう 不恰好でもいい 片足で、無様でもいいから立って───     格好なんて気にするな 格好悪くったって─── ピグピグと震えながら、それでも俺目掛けて走ってくる男目掛けて……     ───最後に立ってたヤツの、勝ちなんだからな───!! 岡田 「っ……()ぅう(ひょ)(けん)!!」  ギファァッキィインッ!!! …………。 救護班1「えっ……な……が……!?」 救護班2「こ、こんなことが……」 剣を構え、スナップとともに霧氷剣を放った。 凍てつく剣閃は地を這い、迫り来るアブラハムニを斬りつけ─── ……この暑い日にはバカみたいに不釣合いな、氷像へと作り変えた。 走ってる格好のまま、 見事にコキーンと停止している彼の眼は、果たして機能してるのかどうか。 なんにせよ─── 岡田 「おーい……解説〜……」 解説 『はっ!?あ、あー……だ、打倒ォオオオオオッ!!打倒!打倒です!!     なんとドライブで暴走したグラディエーターを止めてしまったぁあああっ!!』 ……疲れた。 ジワジワと蘇ってきた足の痛さに耐えかねて、勝ち鬨とともに地面へとヘタリ込むと、 痛さのあまりに涙しながら剣を納めた。 あぁもう本当に予想外の痛み……勝つためだからってなんでもやりすぎじゃないか? なぁ、アブラスマシさんよぅ……。 【ケース699:藍田亮/風のアルビノン】 ハワァアーーーーッ!!! 解説  『えー、大変ご迷惑をおかけしました。      オカダ選手はただいま医務室で治療をうけています。      後味の悪い状況になってしまいましたが時間は待ってはくれません!      第二試合目ェエエ!!!アルビノ選手VSアイダ選手!!』 藍田  「ウオー」 アルビノ「………《ペコリ》……よろしくお願いします」 岡田の惨劇ののち、闘技場に来た俺は、 パッと見てアレン=ウォーカーみたいなやつと対面していた。 俺は俺で名前を呼ばれると同時にガーディアンヒーローズの王国兵士の真似をして、 勝利したわけでもないのに勝利ポーズをキメていた。 解説 『はぁあじめぇえええええええいっ!!!!』 そんな愛もそこそこに、 開幕のドラが鳴り響く───と同時に、地を這うような疾駆が眼下に迫る! うぅお速っ!!だが下からは不利だぜ! 藍田 「覇気脚!!」  ドゴォンッ!!バシュッ─── 藍田 「ぬ!?」 疾駆に合わせて超踏みつけ攻撃をしたが、それが合わさるより先に敵は跳躍。 俺の頭の上を綺麗に飛んでゆき、 藍田 「《パク……》いっつ!?」 同時に攻撃を加えたのか、俺の頬に切り傷が出来ていた。 痛みに気づいて手を当てれば、べっとりと付く血。 そんなことを気にしているうちに、背後では着地の音───と同時に地面を蹴り弾く音。 忙しいやつだなくそっ! 藍田  「腰肉(ロンジュ)!!」 アルビノ「───フッ!」  ギャギィンッ!!ヂギィイイギギギギギギギィッ!!! 振り向きザマの腰への蹴りが、上手く合わされた機械の刃で受け止められる。 それは高速回転でもしているのか、合わさっただけなのに物凄い音をけたたましく鳴らす。 アルビノ「まだだっ!」 次! 左腕のブレードで牽制の蹴りを受け止めたアルビノは、 空いている右手のブレードで俺の腹を狙ってくる。 それに合わせる───のではなく、顔面をザクロにすべく、 藍田  「頬肉(ジュー)!!」 アルビノ「───!《ゴギィンッ!!》っ……く……!」 ───振るった蹴りは、軌道を変えたブレードによって抑えられた───が。 藍田 「ナぁあメんなコラァアアッ!!《ゴフィィンッ!!》』 蹴りの勢いが終わらないうちにヴィクター化&グラーフ化発動!! アルビノ「《ゴギャギリリリギィンッ!!》くぅっ!?う、あ───!」 力任せに片腕で耐える相手を押しやり、紅蓮に燃えるランペルージュで一気にぃい……! アルビノ「ぐぅっ───はっ!《ギャリィンッ!》」 藍田  『オッ!?』 片腕で抑えていた攻撃を両腕でいなし、空振りさせてくる。 その隙に身を捻るアルビノが、回し蹴りで俺の頭部を蹴り下ろしギャリドガァン!! アルビノ「ぐぶわぁっ!?───《タンッ》くぅっ!!」 それを、幼年期刃牙流クラックカウンター(回転踵落とし)で地面に叩き落した。 だが追撃の踏みつけもすぐさまに避けられ、 アルビノは軽い身のこなしで俺から距離を取ってゆく。 アルビノ「は、はあ……強いですね、あなたは……」 藍田  『ははははは、今言われても嬉しくないわそれ。      俺が自分に自信が持てるようになったら改めて言ってくれ、是非に』 アルビノ「自信ですか……僕も、持ってみたいものです───!」 言葉の終わりに疾駆。 両腕の篭手から生えるブレードを構え、一直線に突っ込んでくる。 その突貫性、まるでギルティギアのチップ=ザナフが如し。 武器もブレードみたいだし。 ところで俺はチップの構えはギルティギア無印のが好きだったんだが、みんなはどうだい? なんて脳内の自分に語りかけてみても返事なぞ来るわけもない。 肉迫する直前に振るわれたブレードを足で蹴り弾き、その反動で後方に下がりながら─── さらにさらにと追いすがり、撃を連ねるアルビノへと、こちらも連撃を返してゆく。 っていっても全部蹴りだから、移動+攻撃じゃあちと分が悪いんだけど。 だがそれも伏線よ! ヤツが俺の足のみに釘付けになったその時こそ、全力でブチノメしてくれる! 藍田  『幻影脚!!』 アルビノ「《ゴガパパパパパギィン!!》ぐっ……!      力を込めない連撃なのに、なんて重みだ……!けどっ!」 藍田  『おおっ!?』 片足を上げ、蹴りの弾幕をお見舞いしていると、アルビノがアクションをとる。 今までブレードしか使わなかったのに、鋭い蹴りを仕掛けてきたのだ。 藍田 (狙いは───この野郎め!地面に立たせてる俺の左足か!) 別の攻撃でのタイミングを見計らっていたのは、どうやらお互い様だったらしい。 いわゆる水面蹴りをするみたいに体を屈ませ、 蹴りの弾幕から逃げると同時に俺の足を払いにくる。 が、それが俺の足を払うより先に、立たせていた左足で軽く地面を蹴ってそれを避ける。 アルビノ「───もらった!」 だがそれは予測の範疇どころか、望むところだったらしい。 勢いよく振るわれた水面蹴りの反動を以って体を回転させたアルビノは、 その足で強く地面を蹴り、多少の中空に居る俺目掛けてブレードを突き出してくる! が。 藍田  『《コキーン♪》無影疾風重段脚!!』 アルビノ「───!?」 まさにそれを待っていた俺は、脚にばかり気を取られ、 徐に飛び込んできたアルビノ目掛けて全力での蹴り弾幕を繰り出す!!  オンドゴゴゴゴゴゴゴゴゴギギャァンッ!!! アルビノ「くあぁあうぅっ───!!!」 藍田  『ゲェエエエエ!!全部弾きやがった!!』 けどさすがに衝撃が強かったのか、後方へと追いやられ、 地面を滑りながらその地面に手をつき、体勢を崩すアルビ 藍田  『魔人破天弾!!』 アルビノ「うわぁ!?」 ノ、と頭で考え終えるより先に、地面に降り立つ前に脚から暗黒闘気の波動を放つ! だが紙一重!それさえ紙一重で避けられ、決定打になりゃしない! 藍田 『コ、コノヤローーーッ!!』 ならばと、着地と同時に疾駆! 間合いを詰め、体勢を崩してなお無理矢理な避け方をしたために完全無防備なその体へと! 藍田 『ダンターク流奥義ぶちかまし!!』 密着の瞬間、疾風の如くにて弾かせた体を思い切りぶつけ、 アルビノのほっそりした体を闘技場の壁まで一気に吹き飛ばす!!  ダァンッ!! アルビノ「えはっ……!ぐ……!」 背中から強く打ちつけられたアルビノは、 衝撃に息を吐き出すと同時に表情を曇らせた。 呼吸困難にでもなったのか、崩れ落ちそうになる体を支えるのがやっとという風情で、 さらに迫る俺を見ていた。 アルビノ「っ……は、はぁ……!」 藍田  『悪いがキメさせてもらうぜ!───(フフッ!勝った!)』 勝利を口にすると同時に心の中で勝ちを確信! おう!漫画やアニメでは絶対にどんでん返しされるパターンを自ら作り上げる! アルビノ「……、レイド、解放───」 しかしあと少しで間合いに! 敵は頭が痛いのか、左手で頭を抑えて辛そうな顔をしつつなにかを呟いているが─── ああどうしよう!きっとなにか来ると思うのに、 このままキメられたらなんとなく格好いいかなぁって思ってる俺が居る! どうしよう!キメたい!キメてしまいたい!こんな切ない思い……───! アルビノ「《ガキィンッ!》───シィッ!!」 藍田  『甘いわぁああーーーっ!!』 でもやっぱりアクションを起こしてきたアルビノの攻撃を、跳躍することで躱す! すぐに宙の俺を見上げ、ブレードを突き出してくるが、 壁を蹴ってさらに躱し、アクションの隙を穿った破天弾を宙から放つ! アルビノ「はぁあああっ!!《ゾフィィインッ───!!》」 藍田  『うえぇっ!?』 いや、放ったんだが、なにやら光輝くブレードに八つ裂きにされて、霧散してしまった。 やばいぞ……なに解放したのか知らないけど、ブレードが滅茶苦茶強くなってる。 なんだか大きくなった気もするし、回転力も上がってるような……! ってえ!体勢立て直すのももどかしいのか、切り刻んだ無茶な体勢のまま地面を蹴って、 俺の着地地点目掛けて走ってきましたが!? このタイミング……困ったことに、着地と合わされたら反撃が出来そうにない。 着地と同時にバックステップ……いいかもしれないが、 その後にさらに追撃されたら避けられる自信がない。 着地する前に攻撃を……といきたいところだが、 こちらの攻撃が届かないくせに、着地してすぐに攻撃がしかけられるよう、 本当に嫌なくらいの距離で詰めてきてる。 ど、どうする玄奘(げんじょう)!やばいぞ玄奘! 藍田  『……───ぬぅうううん!!《ゴファアアアッ!!》』 アルビノ「───えあぁっ!?」 暗黒闘気を極限まで放出し、その反動で飛びました。 知ってるか?グラーフはな、闘気で空が飛べるんだぜ? バトルオーラもびっくりだ。 でもそんなものが長続きするわけもなく。 戸惑い、立ち止まって俺を見上げたアルビノをよそに、ズシャアとさっさと着地した。 藍田  『さあ。どこからでもかかってきなさい』 アルビノ「……闘気……ですか、それは。それも随分と特殊なも───」 藍田  『死ねぇえええーーーーーっ!!!』 アルビノ「えうわ《ドボォッ!!》ぶえはぁあっ!!」 かかってきなさいと言ったのに疑問をぶつけてきたアルビノに、 疾風の如く&スラッシュキックを。 再び勢いのままに壁に叩きつけられるアルビノへと再び疾駆し、 反撃しようとする腕をまず蹴りの二連で潰す! アルビノ「《ドガドゴォンッ!!》あぐっ……!!」 腕の付け根より少し先の下方に強い蹴りを当て、瞬間的に痺れさせた。 本当に効果があるかも解らない行動だが、いちいち確かめてる暇もないのでこのまま行く! 藍田 『暗黒闘気解放ォオオオッ!!“鬼神黒掌”!!』 そこから始まるは黒の闘気を纏った拳の連撃!! 闘気でブーストされた一撃一撃は、 べつにAGIに振り分けてあるわけでもない攻撃を加速化させ、 壁に磔にされたアルビノの体をドンドガと減り込ませてゆく!! が、それがさらに続き、トドメの双掌打に移行するより先に、 解説 『決着!けっちゃぁあああく!!     アイダ選手!速やかにアルビノ選手から離れてください!』 藍田 『なんだってぇええーーーっ!?』 解説の野郎に、ストップをかけられた。 そんな……あのトドメがあるからこそ、機神黒掌(正式名称)は輝くのに……。 これじゃあただの暗黒闘気の拳連打だ……掌がなければ名前が輝かないじゃないか……。 だがしかし、アルビノは俺が離れるのとほぼ同じく前のめりに倒れ、 弱々しく息を吐くや、動かなくなった。 ……さすがに生身の人間にやる技じゃなかったらしい。 蹴り技を抜かせば、俺の中じゃほぼ最強の技だし。 うう、だが、だとしても不完全燃焼だ……こう、スカッとしないっていうか…… 解説 『オラてめぇさっさと出てけ!次が待ってんだよクソが!』 藍田 「ちょっと待てモービーてめぇ!     なんでそこまでトゲ満載に注意されなきゃなんねーんだ!」 解説 『うるせー!自分の胸に訊いてみろタコ!』 藍田 「───……無実!」 解説 『うぉおおおい!?随分てめぇ勝手な胸だなこの野郎!!     いいから失せろ!はい第三試合!ユミハリVSオルランドゥ!     二人以外はさっさと闘技場から失せてください目障りです!!』 藍田 「てめぇええええええええ!!!」 文句は飛ばすものの、 担架で運ばれていくアルビノがさすがに気になって、ついていくことにした。 くそ、覚えてろよモービーめ……! 【ケース700:弦月彰利/カラミティー・オブ・ムギ】 コリコリ…… 彰利 「うん美味い」 このお新香は正解だった。 肉だらけの中で─── 声  『第三試合が始まります。グラディエーター/ユミハリ、     グラディエーター/オルランドゥは速やかに闘技場へと来てください』 ……あら? もう終わったん? グウウ〜〜〜、せっかく腹を満たしてから行こうと思ったのに。 彰利 「やれやれ、ゆっくり食事も出来んとよ」 声  「まったくだ」 彰利 「ヌ?」 口の中にメシを詰め込めるだけ詰め込むと立ち上がり───いざ移動しようとした時、 離れた席を立ち上がる老人を発見。 ……おお、オルランドゥ伯だ。 でもそれとこれとは関係ねーので、 話し掛けることもせずにとっとと闘技場に向かうことにした。 え?普通話し掛けるところだろって? クォックォックォッ、そんなものは闘技場の上で拳で語り合えばいいのよ。 ───……。 ドわぁあっしゃぁああああんっ!!! 解説 『おぉおおお待たせしましたぁああ!!今日ここで行われるは三回戦!     そのシメとなる第三試合はこの二人!     つまらねぇ試合にしてくれるなよ!ユミハリVSオルランドゥだぁーーーっ!!』 観客 『ハワァアアアアーーーーッ!!!!』 解説 『てめえら!このコロシアムの最強を知りたいかぁーーーーっ!!』 観客 『オォオオーーーーーッ!!!』 解説 (ワシもじゃ……ワシもじゃみんな!) 闘技場のゲートをくぐるや、解説が徳川のじっちゃんみたいなスマイルで笑っていた。 参考はグラップラー刃牙・最大トーナメント編をどうぞ。 確かそれでよかった筈。 解説 『それでは早速いってみよう!両者準備はいいな!?     第三試合!ユミハリVSオルランドゥ!───はぁあじめぇえええぃっ!!!』  ンドワァッシャアアアアンッ!!!! 彰利 「限界まで……《ギッ、ギリッ……》───飛ばすぜ!《ゾフィンッ!!》』 両拳を握り締め、破面を出現させて戦闘準備完了!! 対するオルランドゥ伯は、大剣をズシャアアアアと鞘から引き抜くと、 突き出すでもなくただ手に取り、 地面に付かない程度に持ち上げているような体勢で俺を見ていた。 おお……あれこそ、かの有名な宮本武蔵の消力のポーズ! OK!ならば俺は力の限りに行かせてもらおう!───あくまで体術で! 彰利 『ふぅうう……』 左手を地面と平行に突き出し、体勢は少し重心を落として下半身を固定。 引き絞るは右腕───弓でも構えるような姿勢で、 広げた左手の人差し指と親指の間に敵の姿を固定。 ゴム人間でもあるまいし、こんな距離から攻撃が届く筈もないが、 人体ってのはこれで、突き詰めると小さな“不可能じゃないか?”が可能になったりする。 それがこの“遠当て”だ。 彰利    『シッ!!』 オルランドゥ「《ツッ───パァン!!》むぅ!?」 いわゆる気を空気の塊にして当てる方法……とはまた違うんだが、 説明が面倒くせーので割愛。 でも威力がものすげー少ないのが難点。 鞭を撓らせるわけでもなく、ただパンッと当てるだけなのだ。 速さと距離だけを稼ぐ技なもんだから重みを乗せられない。 彰利 『……ウヌ?』 近づいてきたらとにかく殴りまくってやろうと、遠当ての構えのままに待機していると、 オルランドゥ伯が静かに大剣を持ち上げ、どすんっ!と地面に突き刺バヂィッ!! 彰利 『いっでぇっ!!?』 な、んだこりゃ───!遠当て!? んなアホな、剣を突き刺した衝撃波で遠当てって……アータ安慈和尚!? このままではいかん!反撃───を?お、おぉおおおおおっ!!? うわっ!マジか!?体がシビレて動かねぇ!! ……ま、待て。待ちなさい!?体動かねぇんだって!おい!おやめ─── オルランドゥ「命脈は無常にて惜しむるべからず……葬る!不動無明剣!」  ゾゴォッフィィインッ!!! 彰利 『───、……ギッ……!』 地面から巨大な剣が出現する。 それは俺の左足を裂き、胸を裂き、鼻先を掠めて砕ける。 同時に動けるようになるが、それはほんの一瞬程度で、すぐまた動けなくなった。 彰利 (なんですかこりゃあ!どうなってやがりますの!?) と、視界の隅を見てみると、ステータスに麻痺の文字。 ……ヌ、ヌゥオオオオッ!! オルランドゥ「………」 伯が静かに歩んでくる!その過程で幾重にも剣から剣閃を放ちながら! つーかね!この剣閃ヤバイ!思いっきり光属性だよ! こ、の……!動け!動け動け動けってのぉおおおっ!! 彰利 『《ザンゾシャバシャズバァ!!》がっぐっ!〜〜〜っ……ン、のぉお……!!!』 光の剣閃が体を切ってゆく。 だが体は麻痺したままで、行動しようにもゲームというシステムがそれを許さない。 許さないが、だったら─── 彰利    『ブレイク!《パギィンッ!!》───ナァアメんなコラァアアアッ!!!』 オルランドゥ「ヌ───?」 既存破壊で麻痺のルールをブチ壊す!と同時に疾駆!! レヴァルグリードに黒を込め、背には八翼を! 一気にキメる───!唸れ!俺の闘技!! オルランドゥ「───鎮まれぃ!」  ドッカァアンッ!! 彰利 『《ガッシャァアンッ!!》オ、ア───!?」 眼前まで迫り、あとは殴るだけという瞬間。 伯の口から、体から放たれた一喝と闘気が、俺の特殊効果の全てを破壊した。 破面が砕け、飛翼も消え去り、ルールブレイクさえ破壊され、体には再び痺れが……! オルランドゥ「荒々しいことよ。若者なりの勇敢さだろうが、        いささか目に余る騒がしさよ」 彰利    「てっ……テンメッ……なに、しやがった……!」 オルランドゥ「ヌシの体に流れる闘気に私の闘気を同量、ぶつけてやったまでのこと。        闘気相殺法というものだ。闘気を同調させ、ぶつけてやれば、        数瞬だろうが相手をコントロールすることが出来る」 彰利    「な……なんとまあ…………マジすか」 学生時代、試してみたことがあるけど、 俺の闘気ってのはどうにも血気盛んすぎて調整が効かなかったっつーのに。 ええウソです、闘気なんて放つだけで精一杯だったし、コントロールなんてとてもとても。 気を塊にして放つことが出来るようになったのは、 月操力が大分扱えるようになってからだしね、オイラ。 でもそれとこれとはいろいろ関係ないのでバトりましょう。はいブレイク。 彰利    「う、ぐ、ぐぅう……お、俺をどうする気だ〜〜〜〜っ!」 オルランドゥ「参ったと言ってくれればそれでいい。        出来れば痛めつけることなど《ガッシィ!》なにっ!?」 麻痺を再びブレイクし、だが痺れたフリをして、伯が近寄るのを待っていた。 そしてまんまと近寄ってきたその時! 剣を持つ腕を素早く掴み取り、その腕に自分を絡めるように素早く懐に潜り込む! んーでもってぇえええええええっ!!! 彰利 「撃壁背水掌(げきへきはいすいしょう)!!」 右手で伯の右手を捕らえ、背中を預けるように体を絡ませた状態のまま、 左手に込めた闘気を素早く伯の左脇腹へと叩き込む!!  ツドォンッ!! オルランドゥ「ぬぅぐ!!っ……ヌシのような若さで気を扱えるか……!」 彰利    「アルェエ!?効いてない!?」 結構な音が鳴ったものの、少し体勢を崩した程度で、 伯は大してダメージを受けちゃいなかった! お、おかしい……!まさかこやつ、勁や気の波動が効かない人!? オルランドゥ「だが扱い切れておらん。いや、忘れているのか」 彰利    「《どんっ!》オワッ!?」 左手で背中をドンと押され、たたらを踏みながら慌てて向き直る。 そこには悠然と立つ、雄々しき獅子戦士の姿が……! こ、これがシドルファス=オルランドゥ……!雷神シドと呼ばれた男かッツ!! オルランドゥ「戦い方も無鉄砲。力任せで、筋はあるが我流に染まりきっていない。        誰ぞ師を仰いだか?妙な型嵌まりの所為か、        我流のままならば完成していたであろう型が崩れている」 彰利    「う、うるせ〜〜〜〜っ!試合中だというのにべらべらと〜〜〜っ!」 オルランドゥ「そうだな。前途ある若者を前に鞭を振るいたくなるのは老輩の癖か。        ではゆくとしよう。───ヌシはまだ、気で戦うつもりか?」 彰利    「…………すまんけど、余裕、なさそうだわ」 こいつ、マジで強い。 こんなやつがこんな場所でなにやってんですかってもんだけど、 本気の本気で強ぇよこいつ。 俺の俄か勁術じゃあまず勝てん。 じゃけんども持続アビリティ効果は喝で破壊されちまうし、 ヘタに攻撃くらうとシビレるし、光属性だし……うぅわ、相性最悪じゃねーの。 彰利 「……だからって立ち止まってなどおられん!───伯!胸をお借りする!」 ある日、本物に出会ってしまった。 俄か仕込みだけど、頑張って身に着けたものを跳ね除けられてしまった。 気の扱いなんざ俺の遥か上。 剣術だってとんでもないことくらい、立ち会ってみれば肌で感じられる。 隙があるのに、そこをついたらやられるのはこっちだって警鐘が鳴っている。 それが解る程度には俺も成長しているってことなんだろうけど、だからこそヘコむ。 だからこいつは先輩だ。 戦の先輩の胸を借り、上を目指すことになんの不思議がございましょう。 俺は、なんだか随分と久しぶりな、 自分が未熟だって確信を持ったままになにかに対峙する心を胸に、 伯を前に拳を握り締めた。 強い武器があるから、強い能力があるから、特殊な人種として生まれたから。 そんなものは、本物の前では打ち砕かれるものだ。 いずれ中井出とも戦わせてみたいって思える相手。 戦ったところで中井出は自分を鍛えようとは思わないだろうが、 経験にはなるんじゃないかって思えるから。 彰利 「フぅううおおおおおおおおっ!!!」 バカ正直に真正面。 地面を蹴り、動きはコンパクトに、必要最低限の動作で接近し、拳を繰り出す。 伯はそれを、同じく必要最低限の動作で躱すと、俺の喉に左肘を減り込ませ、 息がツマリ、一瞬動作が鈍った俺の胸に左手を添え、ドゴォン!! 彰利 「っ───〜〜〜っ……ぐえげぁはぁああああっ!!!」 俺がさっきやったのと同じ。 気を体内に流し込む掌底を放ってきた。 俺にそれを相殺するだけのコントロールなど出来る筈もなく、 直接心臓が揺さぶられたような血脈の乱れを感じた俺は、 その場に崩れ落ちて無様に嘔吐した。 ───そして。 苦しげに顔を上げた先に、陽光に光り輝く大剣。 オルランドゥ「……まだ、やるか?」 彰利    「………」 以前の俺だったらどうしてただろう。 そんな自問をしてみて、そんなのは関係ないなと苦笑した。 苦笑して、また吐いた。 吐きながら……悔しさを噛み締めながら、首を横に振った。 解説    『おぉおおおっと降参!!降参です!!        グラディエーター/ユミハリ、        やはりオルランドゥの前では手も足も出ない!!        新参者には彼と戦うのは無茶がすぎたかぁーーーーっ!?……あ、あれ?』 オルランドゥ「少々黙れ。ヌシも男ならば、若者が自ら降参をする辛さを理解しろ」 解説    『あ、あ……し、失礼しましたぁ……』 嬉しそうに喋る解説を睨みつけ、一言で黙らせた伯は、静かに立ち去ってゆく。 手を差し伸べるでもなく、やさしい言葉をかけるでもなく。 ……今はそれが心にやさしかった。 そうだ、敗者に言葉なんて必要ない。 そこで立ち上がるかどうかは、そいつ次第なんだから。 そして、俺は立ち上がる気満々だ。 伯に勝ちたいとか、そういう気分じゃなくて……ええと、なんて言ったらいいのか。 漠然としていて解りづらいですね。 彰利 「はーあ……負けちまった」 入場口でなにやってんだーとか叫んでる藍田くんと岡田くんを見る。 もう足大丈夫なのかーとかいろいろ言いたいこともあるんだけど、 今はそれに返すほどの気力もない。 本当に、あっさり負けちまったから。 竜の力を解放すればとか、時でも止めればとか、そういうことじゃなくて。 ……うん、武人として、かな。負けてしまったって思ったのだ。 敵わないなぁ……やっぱ老剣士ってスゲーワ。 そんなことを思いながら、だけどどこか晴れやかな気分で、 俺はふらつきながら控え室を目指して歩きだした。 Next Menu back