───冒険の書06/突っ走れ!ワービーストロード!───
【ケース80:中井出博光/小林先生でコバセン。キバヤシ先生でキバセンの法則】 気づけば俺は、闇よりも深い地の底の底の獄、地下労働施設に居たっ……!! 中井出「ああっ……それにしても金が欲しいっ……!!」 丘野 「強制労働施設にでも行きたくなったでござるか?」 中井出「いや全然」 冗談はさておき、気づけば俺達は木漏れ日が降りる綺麗な森の中に居た。 その景色はあまりに神秘的であり、最初の頃なんか呆然としたものだ。 中井出「そろそろ現状を確認する!とりあえずあの魔法使いが使ったのは転移の魔法で、     それぞれをバラバラに飛ばす能力があった!     ここに飛ばされたのは俺、藍田、丘野、麻衣香、木村、殊戸瀬の六人ッッ!!     ここまでは間違いないな!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「うむ!他の猛者どもや知り合い仲がどうなったのかは今のところ解らん!     そういうことでこれからの行動を決めてみようと思う!いいな!?」 総員 「サーイェッサー!!」 中井出「うむいい返事だ!では各員提案をし合って事を纏めていく!     なお今回の行動はマップを見ながら進めるものとする!     危険そうな場所へ近づく経路は一切断て!!     安全を第一にするように!!では相談開始!!」 ザザッ!! 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 そうして始まる会議もどき。 俺達は木漏れ日の下の綺麗な草の上に腰を下ろし、のんびりとこのあとの事を語り合った。 とはいっても……未知の部分が多すぎるため、 目標がどうたらなど決められるもんじゃあなかったんだが。 当然のことながらどんどんと話はズレていった。 藍田 「そういえば最近ハンバーガー食ってないな」 丘野 「拙者は断然てりやきマックでござるな」 中井出「ドナ様を崇拝する我らにとって、マクドナルドはパラダイスだというのに」 殊戸瀬「あのさ。話が脱線してることに気づいてる?」 夏子 「本人たちがそれでいいならいいんじゃない?」 麻衣香「ノリだけで、考えることの少ないのが原中だし」 中井出「ようは楽しめればそれで良し」 それが原中魂。 とはいえ、折角ゲームをやっているのに談笑だけで済ませるのはもったいない。 中井出「ここで提案だが───とりあえずこの森を出て、近場の村か町を目指さんか?」 藍田 「サー、賛成であります」 丘野 「依存無しでござるよ」 中井出「女子群もそれでいいか?」 麻衣香「ていうかそうするしかどの道進まないでしょ?」 夏子 「そうそう」 殊戸瀬「一応この森を探検してからって手もあるけど」 中井出「っと、それもそうか」 見た限りじゃ敵は居なさそうだ。 だったらのんびりと探検するのもいいかもしれない。 よし行動決まり! 中井出「それじゃあ探検してから外に出よう。なにかアイテムとかあるかもしれない」 総員 『ラーサー!』 中井出「ウムゥ!探検開始!!」 こうして探検が始まった。 とはいってもあまり広い森ではないらしく、 木箱が二つに木の実が幾つか取れた程度だった。 中井出「ふぅむ……どんなものが素材になったり役に立ったりするか解らん」 丘野 「木の実は空腹回復にも役立つとナビに書いてあるでござる」 夏子 「料理用にも使えるんだって。あとは……」 殊戸瀬「調理ギルドに売ることが出来るそうよ」 総員 『よし、取れるだけ持っていこう』 我らはとっても欲深かった。 だが先立つものが無ければ何も出来ないのもゲームの事実。 ということで木の実が実っている木を丸裸にする勢いで取って取って取りまくった。 だがどうやらこのバックパック、持ち物は相当数入るようで─── 俺のバックパックに入れるだけでも木の実は枯渇し、 尚且つまだまだアイテムは入りそうだった。 すげぇ……さすがは我らが原中が誇る伝説のモミアゲ超人だ。 まさかここまで徹底してくれるとは。 中井出「さて……アイテムも収集したことだし、行くか?」 藍田 「だな」 丘野 「とりあえずここからだと───」 夏子 「アメイダ村が近いんじゃない?」 藍田 「そうなのか?」 麻衣香「そう───ね。ここからだとそこが一番近いみたい」 殊戸瀬「ちなみにここオアシスだったみたい。だから外に出たらかなり熱いわよ」 総員 『……マジすか?』 我らの旅は前途多難だった。 ───……。 ……。 ジリジリジリジリ…… 総員 『あっちぃいいいいいいーーーーーーーーーっ!!!!!』 叫んだ。 そう───叫ばずには居られない暑さだった。 中井出「確定確定!ここ絶対にサラマンダーが製作した場所だ!!」 藍田 「熱ぃって!これもう『暑い』じゃねぇよ!!     汗が物凄い勢いで噴き出してくるし、しかもすぐに蒸発!!     これはたまらん!気がおかしくなるぞ!?」 夏子 「………」 麻衣香「………」 殊戸瀬「………」 丘野 「………」 中井出「って女子群と丘野二等!なんでお前らそんなに涼しい顔してんだ!?」 麻衣香「え?だって、それはホラ」 殊戸瀬「見つけた木箱の中のひとつに『調合書』ってのが入ってたの。     それにクーラードリンクの作り方が描いてあったから」 丘野 「拙者は夫ということで快くドリンクを頂いたでござるよ」 男衆 『な、なんだってぇええーーーーーーっ!!!?』 驚愕的事実!! だがさすがは普段は目立たないが用意周到と噂の殊戸瀬二等兵! やることが先のためになっている!! 中井出   「くれ!今すぐ!」 殊戸瀬   「じゃあさっきの木の実を頂戴。それとオアシスの水で調合できるから」 中井出   「ほらこれ!早く作ってくれ!!」 藍田    「ギャアア!汗が目の中に!!」 中井出   「ぐああああ!!服が汗でビショビショに!!」 殊戸瀬   「……水浴びにオアシスに戻る?」 中井出&藍田『依存無しッッ!!』 もう耐えられなかった。 今こそ身を以って、 かつて空界のロプロスト砂漠に普通の靴で降り立った彰利の気持ちが解った。 本気で熱い。暑いじゃなくて熱い。 数歩で旅を中断せざるをえなくなった俺達は全速力でオアシスへと走り、 装備をそのままにオアシスの中へとダイヴしたのであった。 ……まだまだ、俺達が想像するよりも空界という世界は危険らしい。 好き好んで砂漠に行ったりゃせんが、慣れておくに越したことはないのだ。 【ケース81:晦悠介/アポクリファ】 さて───急遽このゲームに強制参加させられた俺だが─── 彰利 「ねぇダーリン!?次あっち行こあっち!!」 その突拍子もない事態よりも、目の前のたわけのことで盛大に疲れていた。 悠介 「あのなぁ……何度言えば解るたわけなんだお前は……」 彰利 「解らん!!」 悠介 「即答するなばかっ!」 彰利 「バカとはなんだこの野郎!!」 悠介 「じゃあアホゥだこのアホ!!」 彰利 「アホで結構!返す言葉もねぇや!」 悠介 「や、そこは無理矢理にでも否定するところじゃないか?」 彰利 「だって俺天才じゃないし」 それでいいらしい。 彰利 「まあとにかくさ。まずはあの森のことで国の王様に意見を物申したい。     それにはこの美しくて艶かしいボデーを磨きに磨いて王様を悩殺する必要が」 悠介 「あるかっ!!普通に話すって気はないのかお前は!」 彰利 「それがアタイの生きる道ィーーッ!!」 悠介 「帰れ!」 彰利 「えぇっ!?何処に!?」 ともかく現在はボルデミラ。 この創造空間、ヒロラインに数ある村のひとつである。 人口は少なく村も小さい。 だが活気だけは無くさないように人々が頑張っている村だ。 ここだけの話だが、俺は村や町や景色作りではなく、 アイテムなどの創造担当だったために……こういう場所の構造などまるで知らない。 ストーリーなども精霊達が考えてるものだけあって、 放り込まれた俺も案外右も左も解らなかったりする。 悠介 「………」 彰利 「ウィ?アタイに何か用なのダーリン。今、確かに熱い視線を感じたぜ?」 加えて旅の道連れが変態オカマホモコンである。 あまりにあんまりすぎる事態に、俺はなんかもう泣けそうだった。 悠介 「お前さ……そのオカマホモコンやめない……?     変態なのはいつものことだから我慢できるが……」 彰利 「うわヒッデェ!!躊躇も無く変態って言い切ったよこの親友!     でもそんなアナタにフォーリンラブ!!抱き締めてモナムゥーーーーッ!!!!」 悠介 「トチ狂うなって言ってんだ馬鹿たれぇええーーーーーーーっ!!!!!!」 マゴロシャアアアアーーーーーッ!!!!!! 彰利 「オグラグッディメェエーーーーーーーン!!!!」 両手を広げて飛びついてきた親友の顔面を容赦の無い拳が打ち抜いた。 だが所詮は初心者修練場の訓練も受けていないザコな俺。 カウンターのダメージはあったが、俺の拳自体のダメージはカス程度だった。 彰利 「ムヒョヒョヒョヒョ……じょ、嬢の身体にもうとんでもないことしたるわ!     すぐによくなるし、大声をあげてもあのー……誰も来やしねぇのじゃよ?」 悠介 「………」 ああくそ、随分と懐かしい気分だ今の心境。 言っておくが『懐かしい』といっても『良いほう』の気分じゃないぞ? まあでもとりあえず。 彰利 「お?やる気かね?レベル1のダーリンが百戦錬磨のアタイとやろ〜ってのか?」 悠介 「なにが百戦錬磨だ。木人にしっかりと殺されてたくせに」 彰利 「う、うっさいやい!!とにかく!勝負は見えている!やめておきたまえー!!」 悠介 「……それもそうだな。じゃ、さっさと先行くか」 彰利 「……あれ?」 溜め息を吐きつつ歩き出す。 それもそうだ、ここで仲間同士でもたついてても意味が無い。 彰利 「ゆ、悠介ー?かかってこんのー?     今こそアタイの強さを見せつけちゃおうと思ったのにー。     そしてあわよくば抱き締めて延々と熱き抱擁を……」 悠介 「あー、とりあえずそこのホモ」 彰利 「ホモとな!?」 悠介 「次はこっちのルートからストローレインコート山を通って、     エトノワール王国目指そうと思うんだが、いいか?」 彰利 「ホモ……直球でホモって言われた……」 悠介 「ショック受けるくらいなら変態オカマホモコンを今すぐ解除してくれ頼むから」 彰利 「うわぁ一息だよこの人ったら」 嫌な意味でトラウマになってる気がする。 よくもまあ昔はこれで通してたもんだ。 彰利 「でもさ、なんつーか俺もホラ、     たまには“男”を解放してやらなきゃ暴走するわけよ」 悠介 「───!」(ズザザザザッ!!) 彰利 「いや最後まで聞きましょうね人の話!!     身体ステータス無視した速度で距離取らんように!!!」 悠介 「な、なんだ……?誤解が解けるまで2m以上近づくんじゃないぞ……?」 彰利 「リゾット=ネェロですかアンタは……あのね、こりゃ代償行動ってやつだよ。     よくあるザマショウ?やりたいことが出来ない時、もしくはしてはならん時に、     その代わりとなる行動をすることで欲を抑えるアレ。     キミが言ってるようにこれってば完全なる誤解だから、ネ?安心して───」 悠介 「動くんじゃないッッ!!位置は俺が上、貴様が下だァーーーッ!!!」 彰利 「…………」 悠介 「…………」 彰利 「とりあえずさ、赤面するくらいなら無理に真似せんほうがいいと思うよ?」 悠介 「や、やかましいっ!!しゃあないだろっ!?     『この機会に感情ももっと成長させてやれ』ってノートに言われてんだから!!」 彰利 「それで素直に決行?ンもう、ウヴなんだから」 悠介 「ウヴ言うな!!」 彰利 「まーまー、でもその調子で普段やらんこととかやってきゃあ、     いつかは感情もまともになるさね。俺もそうやって感情コンプリートしたし」 ……よく解らん言葉が出た。 感情コンプリートってなんだ? 悠介 「けどさ、お前の場合は感情欠落状態の時が変態だったわけだから───」 彰利 「や、そこで平然と変態変態言われるのって結構イタイんだけど」 悠介 「自業自得だばかたれ」 彰利 「それって馬鹿に付ける薬は無ェが、『たれ』ならあるって意味らしいぜ?」 悠介 「うそつけ」 彰利 「うそでね!これは古代インドネシアに栄えた落陽の民マステカの文明に生きた御仁     フグゥトァ=マースォさんが後世に残したありがたい言葉なんだぞ!!」 悠介 「古代インドネシアにどんな『たれ』があったってんだばか」 彰利 「ばかたれ」 悠介 「よし先を急ごう」 彰利 「ぬおっ!?な、なにかなその『最後まで聞いた俺が馬鹿だった』って顔!!     いーじゃないのさ久しぶりに嘘八百に走っても!!     そりゃウソップだってゼッケン付けたら800の文字が刻まれてるさ!!」 よし訳が解らん先を急ごう。 彰利 「ま、待ってー!待って悠介ーーーっ!!これってばアタイたちの冒険!!     アタイたちの冒険なのよーーーっ!!?アタイ『たち』!!ここが重要!!     ね!?解るでしょ!?ね!?はい!ね!?」 悠介 「………」(スタスタスタスタ……) 彰利 「悠介ー!?悠介ー!!聞こえてないのー!?ねー!ちょっとー!?」 悠介 「………」(スタスタスタスタ……) 彰利 「……ダーリン(ボソリ……)」 悠介 「ダーリン言うな!!」 彰利 「聞こえてんじゃねぇか!!」 悠介 「お前の孤独な暴走に巻き込まれた中で話が進んだ試しがあったか馬鹿者!!     どうせ話続けてても脱線するんだから先に進むぞ!!もしくは歩きながら話せ!     なんだってお前は立ち止まりながらじゃなきゃ暴走出来ないんだ!!」 彰利 「それが俺のポリスーだからさっ……」 悠介 「よし行こう」 彰利 「うおっ!あっさり流された!」 ともかく歩いた。 村で装備を整える、なんて手もあったにはあったが、生憎と金が無い。 だからともかく今の初期装備で進めるところまで進むしかないのだ。 彰利 「まあダーリン?     アナタなんで初心者修練場に行かなかったのにステイトネックレス持ってるの?     その秘密をアタイだけに教えて?キャプテンガントレットの如く」 悠介 「時間短縮のためだとさ。そもそもこの首飾りは俺のイメージから出来たものだろ。     自分の分くらい用意出来ないんじゃあさすがに情けない」 彰利 「似合ってるぜハニー……キミにぴったりだ」 悠介 「あーそーかいそりゃ良かったな」 彰利 「ぐっ……この対応にこの態度……!     まるで不良時代を思い返させられたかのようっ……!!     ってそうか。悠介、キミこの世界に居る間は不良になりんさい」 悠介 「対象者はお前だけでいいか?」 彰利 「な、なんてやさしくない!!全員!対象者全員でお願いします!!」 悠介 「(……なんで丁寧語なんだ?)どっちにしたって不良ぶる必要なんて無いだろ。     不良っぽく振る舞えば感情が戻るっていうなら、高校の時にもう戻ってた」 彰利 「そったらことね!」 悠介 「何故ナマる」 彰利 「お黙り!ともかくダーリン!アナタは不良!俺はオカマホモコン!OK!?」 悠介 「素でやるならまだしも、演じちゃ意味無いだろ」 彰利 「じきに慣れるさ!」 悠介 「………」 慣れさせて、俺に何をさせたいんだこいつは。 しかし……不良ね。 懐かしいな、高校時代。 今思えばよくもまああんな風にぶっきらぼうに───…… 悠介 「………」 彰利 「……?どったのダーリン」 悠介 「いや……なぁ彰利?俺って高校時代からそう変わったか?」 彰利 「え?そりゃおめぇ……───……………………───……、………………」 悠介 「いや、いや……もういい、それだけ考え込まれりゃ十分だ」 彰利 「ヤーヤー、なんつーかクルーミング大佐の言ってたこともちょっと解ったかも。     そうなのヨねー、キミってばなんだかんだでお節介だったものねー。     ぶっきらぼうなことはぶっきらぼうなんだけど、     それが家族のこととなると『俺の家族に手を出すなーーーっ!!』って」 悠介 「俺は何処ぞの鬼の手搭載霊能教師か……?」 彰利 「生徒じゃないのがチャームポイント」 悠介 「チャームなぞせんわ」 ともあれ歩く。とにかく歩く。 こっちが歩きさえすれば彰利も止まることなどないので、 それはもう立ち止まることなく歩いた。 というか…… 悠介 「………」 彰利 「?」 気づいてないんだろうな、自分が既に村の外のフィールドを歩いてることに。 悠介 「ところでな、彰利」 彰利 「あぁんなになにダーリン!!」 悠介 「後ろ」 彰利 「へ?《ベゴシャア!!》ネーヴェ!!」 振り向けばオーク。 というか棍棒。 振り向きザマに顔面を殴られた所為か、 思いっきりカウンター気味のクリティカルヒット発生。 彰利 「なっ……殴ったわねぇーーーっ!!?     オッコトヌシ様にも殴られたことないのに!!」 悠介 「誰だよ」 彰利 「えっとね?確かね?もののけ姫のね?なんつーかね?     モンスターハンターに出るブルファンゴに似てるようなイノブタだったよ確か」 悠介 「………」 一度本気で殴られたほうがいいんじゃなかろうか。 ああいや、オッコトヌシ様にじゃなく、このオークにでも。 オーク『ごほぉふっ!!』 彰利 「なにはともあれ、我に剣を当てたこと、褒めてやる」 悠介 「剣じゃなくて棍棒みたいだぞ」 彰利 「ギャアもういちいちツッコミ入れないでよもう!!とにかく!!     貴様の人生滅します!出口など無い!ここが貴様の終着だ!!     駅長は俺!アナタの魂冥府へ案内!極楽ツアーへご招待!!     極楽っつってもまあ殺すんじゃがね?」 どうでもいいが前口上長すぎだ。 戦闘に慣れるためにも、さっさと戦闘開始しよう。 悠介 「“戦闘開始(セット)
”!行くぞ彰利!」 彰利 「行こう!ビッグカメラへ!」 悠介 「一人で行ってろたわけ!!」 彰利 「じょ、冗談YO!!」 俺に続いて彰利が構える。 なんつーかこう、両腕で自分の顔を隠すようなポーズで。 彰利 「言った筈でござる!本気でかかると!!」 悠介 「で、伝説のピーカブーブロック!!───ってお前真面目にやる気ゼロだろ!!」 彰利 「アホか!そんな気なんてこの世界に降りた瞬間に捨ててるわ!!     ダーリンだってこの世界では真面目にやる気無いんでしょ!?     さっきそう言ってたわYO!!」 悠介 「やっ……そりゃそうだがっ……」 オーク『………』 なんかさっきから律儀に話が終わるまで待ってくれてるらしいオークに申し訳ない。 ヤバイぞ、こいつ何気にいいヤツだ。 悠介 「あー……言葉、通じるか?」 オーク『……通ジル。我ラオーク種、知能低イ、無イ』 彰利 「ギャア喋った!!じ、人語を理解しているっ……!     見世物小屋に売りさばけば金になるぜ!?」 悠介 「お前はまずそのむき出しの好奇心をなんとかしろ、頼むから」 彰利 「校務仮面を被ればたちまち人が変わるキミに言われたくねぇや」 悠介 「悪かったなっ……!!」 オーク『オマエラ、忙シイ?』 悠介 「こいつの所為でな」 彰利 「どうも。忙しさの具現に認定された、笑顔がステキな色男、     アンゴルモア=キマイラブレイン=トクホンチール=シミーズ。略して彰利です」 悠介 「気にするな。ただの変態だ」 オーク『ソウカ』 彰利 「ギャア納得された!?ダダダーリンなんてことを!     獣人界に俺の珍妙な噂が流されるじゃなかとーーー!!」 悠介 「やったな!有名人だ!」 彰利 「嬉しくねぇわ!!こんな時ばっかり感情の方向性変えんでおくれよもう!!」 オーク『……笑顔ガスケベナエロ男。チョットイイカ』 彰利 「スケベ!?」 オーク『オマエ、強イカ?』 彰利 「………」 彰利、獣人にスケベと言われてヘコムの図。 なんつーかもう立っていられないくらいにショックだったらしく、 草原に座り込んで『の』の字を書き始めた。 もちろん例の如く『しくしく』泣きながら。 オーク『応エロ。強イカ?』 彰利 「フッ……犬よりはあのー……強いらしいんじゃよ……?」 オーク『ダッタラコレヤル。弱イ人間ニ強イ我カラノ贈リ物』 ゴシャッ。 彰利 「な、なにーーーっ!?こ、これはーーーっ!!」 彰利はオークに獣人ナックル+1を貰った!! オーク『我ラオーク族、コウ見エテ器用。     武器鍛エタクナッタラ【オルクヴィレッジ】ニ来イ』 彰利 「ヴィレッジ?集落ザマスか?」 オーク『ソウ。ソコニ来レバ弱イ人間ノ武器、特別ニ鍛エテヤル。     タダシ一回鍛エル毎ニ1P$貰ウ』 彰利 「プラデットって……千円!?高ェよ!!」 オーク『人間タチノ弱イ武器、最大デ99回鍛エラレル。     +99ニナッタラソレ以上ハ無理ダ。     ダガ中ニハ99ニナッテカラ真ノ力ガ解放サレル武器モアル』 彰利 「聞いちゃいねぇ……」 オーク『オマエ、アンマリニモ隙ダラケデ弱イ。ダカラ特別ニ教エテヤル。     オルクヴィレッジ、アソコノ山ノ麓ニアル』 彰利 「………」 悠介 「あっさり弱いって言われたな」 彰利 「あの……ごめんなさい。何気に気にしてるから言わないで……」 『そりゃ注意力散漫してたけどさぁ……』と再び『の』の字を書き始める彰利。 そんな彰利を横目に、オークは『必ズ来イ』と言って去っていった。 悠介 「よかったな、獣人との交流が少し進んだ」 彰利 「なんだろね……。ゲーム的には喜ぶところなんだろうけどね……。     なんかさ、ゲームやってる人に操られてるゲーム内の主人公って、     いっつもこんな悲しみを背負ってきたのかな……。     それでも文句言わないなんてすげぇYO……」 悠介 「よし行こう」 彰利 「ギャアもう!なんかもうギャアよギャア!!ちったぁ構ってYOダーリン!!     アタイがこんなに落ち込んでるのに無視ってアータ!!……愛してる!!」 悠介 「寝言は寝て言え」 彰利 「即答!?あ、や、待ってよダーリーン!!」 悠介 「だぁっ!ダーリン言うなって言ってるだろうがっ!!」 彰利 「だってよぅ、こういう世界に来たなら自分を変えなきゃもったいねぇよ?     キミだってそう思うっしょ?ゲームの中でくらい自分変えてみ?     そうすりゃ───キミの中の常識って世界が変わるぜ?」 悠介 「………」 彰利 「じゃあまず景気付けに歌でも歌ってみようか?大きな声で」 悠介 「こ、ここでか?」 彰利 「そうナリよ。歌をボソボソ歌ってるようじゃあ真には至れん。     いっちょノリよく行ってみようや。     俺の行動にツッコミ入れるだけのゲーム人生なんて嫌っしょ」 自分で言ってりゃ世話無いが。 悠介 「はぁ……わぁったよ、不良は不良らしく、     他人にはぶっきらぼうで友人間じゃ元気にってこったろ?」 彰利 「おっ?解ってんじゃん。     口調もさ、俺に向ける時くらいそれくらい砕けてたほうがいいやね。     あーんしゃんとかこんげら、昔ばいっちょん訳ン解らんかったけど、     あーんで高校さ卒業すたらそんば口調やめちめーやがったとや?」 悠介 「だから、なんでナマるんだよ」 彰利 「場のノリは人類の至宝。     で?なんで高校卒業したあたりから口調落ち着かせたん?」 悠介 「いつ頃からそうしたのかなんて覚えてないわい。     それよりほら、さっさと行くぞ。     歩き出したフィールドに立ったまま夜を迎えたいのかお前は」 彰利 「それって野宿?おお、人生サヴァイヴァル。     未来に行ってた時のこと思い出すねィェ〜。     あの時はジャンクランドとか公園とかでよく野宿したもんだ」 スタスタスタスタ 彰利 「あっ!テメコラダーリンこの野郎!!無視してひとりで進むなさぁ!?」 悠介 「あーうっさいうっさい、いーからとっとと歩けボケ」 彰利 「げぇ、ぶっきらぼうがさらにぶっきらぼうに……」 悠介 「そうしろっつったのはお前だろうが。     ああもういい、確かにいろいろ自分抑えるのも馬鹿馬鹿しい。     お前の言うとおり、ゲームの中くらい俺も枷外してみることにした」 彰利 「いやあの……望むところだけどさ。か、加減忘れちゃだめだよ?     キミ、やるとなったらとことんだから、どうなるか不安っちゃ不安ですよ……?」 悠介 「知らん」 彰利 「ア、アゥワワワ……」 こういう時くらい不良に戻るのもいいかもしれない。 とはいえ、これは八つ当たりの域だな。 自分の鬱憤を別の何かにぶつけるなんて、あまり気は進まない。 進まないが───たまにはいいだろう。 まったく、自然と干渉できるようになってからというもの、 鬱憤の発散の行方も随分しぼられたから大変だ。 木を殴る、なんてことも出来なければ 鬱憤を力にして爆発的に解放、なんてことはもちろん出来ない。 最近は無趣味になってきたから他に鬱憤晴らせるような方向が無かった。 その点で言えば───不本意ではあるが、たまには八つ当たりもいいだろう。 悠介 「よし決まりっ!俺は今から不良になる!!」 彰利 「えっ……えぇええーーーーーーっ!!!!?」 悠介 「つーかジョブも確定されてないからシーフにでもなって盗みでも働くか」 彰利 「えぇえええーーーーーっ!!!?」 悠介 「プレイヤーキラーになるって手もアリか……。     クォックォックォッ……邪神イドの名の下にこの世界に死を……!!」 彰利 「うあー、暗黒めいた笑いがここまで似合わねぇ男も珍しい」 悠介 「やかましいっ!!」 けど不思議と照れは無い。 なんだ。ようするに『境』を踏み切る一歩が足りなかったのだ。 こうして一歩を踏み出してしまえば、それもまた感情の発展に繋がることになる。 そも、俺は創造や超越を様にして生きた月の家系の末。 既に生きた軌跡は精霊の力として融合しちまったが、 それでもその過程はこの身体の一部なのだ。 そう思えば───自分が自分として生きた時代、 そしてその中で出会った全ての人達との過程全てが───この身体の構築要素なのだ。 枷は既に飛び越えた。 だったら、ここからが自分の感情を育てることの出来るスタート地点なのだ。 ああもちろん、きっかけとなったからには不良で通るのもアリだろう。 むしろそうした方が面白そうというのもある。 まあその、ゲームの中でだけってことになるが。 悠介 「よっしゃ彰利!次の目的地に辿り着くまで突っ走るぞ!     当然見つけたモンスターは問答無用でブチノメーション!!」 彰利 「え!?やっ、ちょ───そういうこと言うのって俺の役回りで───」 悠介 「そんなの知るか!     よし、とりあえずジョブはシーフと。よーし、暗黒シーフ目指して頑張るぞー!」 彰利 「だーーーっ!!早まっちゃならねぇーーーーっ!!!」 そののちに親友は語る。 『先に立つ後悔があればなぁ……』と。 某ゲームにおいて髭ゼロが言っていた、知る人ぞ知る名言である。 だが───教訓。 先に立つ後悔など無いのである。 とりあえず悔い改めとけ親友。 【ケース82:弦月彰利/彼と親友の事情】 クロウラー『もろもろもろもろもろ……』 ドシャアアア……クロウラーを倒した!……悠介ひとりで。 悠介 「……ふーむふむふむ、不意打ちもこれでなかなか楽しいな」 彰利 「ア、アゥワワワ……」 今の彼には精霊の時の身体能力など無い。 もちろん月の家系の身体能力もである。 しかし戦いの基礎を完全に固めた『経験』は無くならないわけで─── どう戦えば有利になるのかなど熟知している彼にとって、 クロウラーごときは敵ではなかったらしい。 現に無傷で勝っちまってます。 もっとも、暗黒シーフを目指してるだけあってその戦い方はまさに外道だが。 やー、内側に溜め込んでる人間って、蓋が壊れると怖いね。 ジョブチェンジシステムでシーフをメインに選んだ彼には、 首飾りから短剣とポーションが贈られた。 悠介は早速それを装備すると戦闘開始を唱えてバトル。 最初は不意打ちとかにも戸惑ってた彼だが、既に枷を越えちまいました。 むしろ今楽しんでます。 ゴッド……俺、多分彼に送る言葉を完全に間違えました……。 でもこういうのも楽しいからいいや。 たまにはいいよねゴッド。 彰利 「ヘイ親友、このゲームの中の将来の目的をどうぞ」 悠介 「俺は!盗賊王になる!!」 ね?これだけノリが良くなってるならいいじゃんもう。 これがきっと彼の感情の手助けになるさ。 なるよね?……お願い、なって。じゃないと責任取れねぇよ俺。 彰利 「えーと、とりあえず……【tell 豆村みずき】……っと。もしもし〜」 声  『オワッ!?な、なんだなんだ!?』 彰利 「おお、我が声が聞こえるかマイサン。つーか愚息」 声  『ヒィ!どこかから親父の声が!!心霊現象!?ついにくたばったかファーザー!』 彰利 「どこまで失礼なんだこの愚息は……」 声  『いやまあ冗談だけど。どしたんだよ親父』 彰利 「べつに、そっちはどうなってるんかねって。こっちは無事……微妙に無事だ」 声  『こっちも地味に無事』 彰利 「そうか。ところでな、息子よ。父さんこれから現実逃避することになるから」 声  『へ?な、なんだよそれ』 彰利 「なにかあったら粉雪によろしく。     今この時を以って、すべての責任を貴様に委ねる。     ……解るな?シニアの時代はもう終わったのだよ……」 声  『訳解るように説明しろよ!!なんだってんだよ親父!!』 彰利 「えーと、俺の素敵な助言のお蔭で悠介が生まれ変わったのだ。     その責任をキミに全部押し付ける。ルナっちが怒号するかもしれんから、     もし何か聞かれたら全部キミの所為にするから」 声  『なっ!ちょっ───じょじょじょ冗談じゃねぇぞこら!!     ルナさんっつったら俺の知る死神の中じゃ別格の人じゃねぇか!!     ルナさん自身とフレイアさんの鎌の分、卍解会得してる人に俺が敵うか!!』 彰利 「敵うか敵わないかじゃない……俺が無事かどうかだ。解るな?マイサン」 声  『おっ……鬼かてめえええーーーーーっ!!!!』 彰利 「では!健闘を祈らん!」 声  『こ、この野郎かわいい息子をたった一言で見捨てやがった!!     ちょ、待てこら!!俺そんなの受諾しねぇぞ!?     かわいい息子をいきなり売りやがった貴様の話など聞けぬわ!!』 彰利 「貴様が聞けなくても僕はもう決めたのだ!!     さらばだ高松くん!貴様の無念は今晴れた!!」 声  『セティかよ!!つーか死んでねぇし無念も無ぇ!!     あるとしたらこれから送られる貴様からの刺客だし     そもそもその無念自体を貴様が作ってるってこと忘れんなよ!!』 彰利 「あ、キャッチホンだ。切るぞ伊集院」 声  『あっ!待ちたまえ!!』 ブチッ。 彰利 「ふう……」 好きとか嫌いとか最初にぬかしだしたのはどなたなのでしょうね? しかしまさかマイサンがときめきメモリアルを知ってるとは思わんかった。 彰利 「さて悠介。これで俺も思いっきり貴様に付き合って───悠介?」 あれ?居ねぇ。 さっきまでそこでクロウラー乱殺してたのに。 どこ行きおった?───って、居た居た。 なんか後ろに人影連れて───って!! 悠介 「お、よー彰利ー。獣人の皆さんと友好条約結んできたぞー」 彰利 「すっかり獣人側に傾いていらっしゃるーーーっ!!!!」 ゴッドどうしましょう!なんか悠介が面白いことに! 面白ければいいにはいいが、このままじゃ本気の本気で 普段の悠介を知ってる人々が失神しかねない状況に至ってしまうのではっ!? 悠介  「ゴブリンがガーディアンヒーローズ系じゃないのは素直に感心した。      ゴブリンのガンドさんだ」 ガンド 『ヨロシク頼ムゾ、人間』 悠介  「で、こっちがオークのムルド。さっき一度会ったな」 ムルド 『マタ会ッタナ、笑顔ガスケベナエロ男』 悠介  「最後がワーウルフのギリアム」 ギリアム『人間ハ弱クテ醜イガ、初心ノウチニ我ラノ味方ニナルナラ話シハ別ダ。      獣人側デノ生キ方ヲ教エテヤル』 彰利  「アゥワワワワ……」 すまんマイサン、こりゃもう手遅れだ。 俺の親友、すっかり獣人側の住人だ。 ギリアム『獣人ハイイゾ。普通ハ代価ヲ払ワネバ買エヌモノモ奪ッテシマエル』 悠介  「おお。もちろん俺が目指しているのはまさにそれだ。      いずれは人間どもと戦乱を繰り広げて、この世を獣人支配に導くのが俺の夢だ」 ムルド 『オマエ見所アルゾ。人間ニシテオクノハモッタイナイ』 ガンド 『気ニ入ッタゾ。オマエラハ仲間ダ。      何ヲスル時ニモ通常ノ価格ノ半額デヤッテヤル』 彰利  「………」 オマエラ。そう言ったよね、このゴブリンさん。 彰利 「……空が……青いや……」 すまんマイサン。 どうやら俺ももう戻れんところまで来て……じゃない、連れてこられたらしい……。 いや、いらっしゃったのか。 もうどうでもいいしどうにでもしてくれ親友よ。 こうなりゃ俺も覚悟を決めて悪に染まろう。 彰利  「オーケーフレンド、オレタチ仲間。我ガ名ハ弦月彰利。今後トモ、ヨロシク」 ギリアム『ギリアムダ。ヨロシク頼ムゾ、彰利』 ガンド 『ガンドダ。頼ムゾ、彰利』 ムルド 『ムルドダ。ヨロシクナ、シミーズ』 彰利  「シミーズって呼ぶのは勘弁してください……」 こうして俺たちは獣人の仲間入りを果たしたのでした。 これからのファンタジーライフを思うと、楽しみすぎてもう悲しくなってきます。 だがしかし!そう、そこには幾つかの利点があるのだ!! それは『人間と戦えること』!! さらにアイテムなどはかっぱらうことが出来るということ!! なんつーか正規ギルドとかには入れそうにないけど、 獣人ギルドとかがあるなら入れそうということ!! 幸い鍛冶屋もあるようだし、闘いに関しては人間よりも獣人のほうがより実践的である! 彰利 「───なぁんだ!いいことづくめじゃん!!」 そして俺も深みにハマってゆくのだった。 いつかこの手で全てを薙ぎ払ってみせよう。 そして築くのだ!獣人の世界を!!  ピピンッ♪ 彰利 「お?」 今後の楽しみに打ち震えていると、俺と悠介の首飾りが輝いた。 すると勝手に出現するメッセージウィンドウ。 そこに───  『ただいまよりあなたは獣人勢力となります。   たとえ知り合いが人間の軍勢だとしても戦わなければなりません。   差別をして大事な人を傷つけない、   などといった行為をすると獣人からの友好度を下げる結果に繋がります。   獣人勢力は獣人のために戦いましょう。   なお、人間の勢力は大きく分けて三国あります。   戦争イベントが起きた際には三国が戦うこともありますが、   それ以外は特に人と人同士が争うことはありません。   ですが獣人勢力はいつでも人を狙うことが出来ます。   そこで$の稼ぎ方ですが、   ここは心を鬼にしてプレイヤーをコロがして手に入れましょう。   システムの通り、プレイヤーの持っている$の半分を頂戴することが出来ます』 という文字が出現した。 それを見た俺と悠介は顔を見合わせるとニヤリと笑い、拳を握った。 もうどうにでもなれってところまで来たということだ。 そして、ゲームシステムもそれを認めた。 それなら…… 彰利&悠介『男なら……【やってやれ】だ!!』 かつての級友だとしても容赦せんことをここに誓った。 おお獣人の神よ、我らに力を。 悠介 「じゃあギリアム、ガンド、ムルド、さっそく獣人の集落に案内してくれないか?」 ムルド『オ安イゴ用ダ、我ラガ同志ヨ』 ガンド『人間ノ名前、覚エヅライ。オマエラ今カラ同志ト呼ブゾ』 悠介 「……どこぞの双子の兄弟と、その友人の義孫を思い出した」 彰利 「あ、俺も今思い出してたとこ」 そういえばあいつらは何やってんのかね。 今回のこの夏祭りには、時代も違うってことで招かなかったけど。 もういい加減、椛の甘え癖も治ってるとは思うが。 それはそれで寂しいって思う俺って相当馬鹿なんだろうね。 ともかく歩き出した俺たちの道は、 とてもじゃないが普通のプレイヤーが進むべき道じゃあなかった。 だがそんな道だからこそいい。 かつてハンパモンを名乗ってた俺たちだからこそ、今こそあの頃に戻る必要があるのだ。 楽しくいこうや何処までも。 あ、とりあえず目的も決まったわけだし、オカマホモコンは中止ね。 行き場の無いワクワクさんをどうするか悩んでただけだし。 だがこれからはもうワクワクさんを適当なものに費やす必要などアラズ!! 死神らしく人の魂狩ろうじゃねぇかクォックォックォッ……!! 彰利   「おお、ビバ獣人ライフ」 悠介   「素晴らしく獣人世界に深く感謝を」 彰利&悠介『まさに外道!!』 そして一言。 ここまでノリのいい悠介は校務仮面以来だった。 ギリアム『チナミニ獣人ダカラトイッテ、      モンスタート戦ワナイデ済ム、トユウコトハナイゾ』 彰利  「そうなん!?」 ギリアム『ソウナン』 ギリアムくんは何気にノリが良さそうだった。 ギリアム『モンスターハ自種族以外ヲ嫌ウ傾向ガアル。      ダカラ互イニ有益ナ関係ノ存在以外トハ馴レ合ッタリシナイノダ』 彰利  「あ……なるほど」 モンスターはどこまでいってもモンスターってことか。 こういうふうに区別がハッキリしてるのはいいことだ。 そんなことを考えつつ、俺たち獣人一家は獣人の集落へと歩を進めたのでした。 しっかし大丈夫かね。 辿り着いてみたら人間は出てけー!なんて言われたらセンチメンタルよ? ───……。 ……。 で。 獣人王『ヨク来タ!!歓迎スルゾ同志タチヨ!!』 なんか滅茶苦茶歓迎されてる俺たちがそこに居た。 しかも獣人の王様自らが進んで歓迎してくれちゃったりしてますし。 彰利 「アノー、ナンデコンナニ歓迎サレテルンデショウカ……?」 悠介 「来る途中でギリアムが言ってただろ。獣人は絆を大事にするって。     それは相手が人間だろうが関係無いんだとさ。聞いてなかったのか?」 彰利 「ええ全然」 いろいろ考え事もあったしね。 そりゃ聞いてられんよ。 悠介 「ただし、だからこそ裏切り者は許さないってことらしい。     まあそれは俺も望むところだ。俺は既に闇の住人よ。     それはもう俺の中で磐石たる意思の下で決定したことだ。裏切りなんて有り得ん」 彰利 「ワァオ……って、じゃあもし敵勢力にルナっちとか居た場合は?」 悠介 「斬・殺!!」 まさに外道!! しかも一切躊躇しなさそうだ。 なにが彼をここまで……って、妙な枷を外させた俺でしょうな。 ごめんよ知り合いや家族な僕のキミたち。 俺たちに見つかったら素直に獣人に襲われたと思って諦めて……死んでくれ!! まさに外道!! 彰利 「いやぁ知らんかった。ゲームってこういう楽しみ方もあったんだなぁ」 悠介 「あ、もちろん装備は全て獣人製品だぞ?人間の武器は弱いらしいから」 彰利 「おおもちろんだ。郷に入りては郷にしたがえ、ですわ」 言いつつ、ムルドの旦那に貰った獣人ナックル+1を装着した。 通常のナックルより攻撃力が5も違うんです。最強。 さらには獣人王が用意してくれた獣人製品を装備することによって、 外見では既に俺たちとは解らない風貌になっていた。 そう……一言で言えば、どっからどう見ても獣人。 まるで獣人の姿をそのまま着ぐるみにして身に着けたかのようだ。 悠介   『驚いたな、凄く軽い』 彰利   『しかも声がくぐもって聞こえるから、       こりゃ獣人の言葉のようにきちんと聞こえる。       なんだ、これでカタコトっぽく喋れば完璧じゃん』 獣人王  『コレカラノ行動ヲ期待シテイルゾ!同志タチ!』 悠介   『もちろんだ!』 彰利   『獣人のためになることならばなんでもしよう!       その際、人間どもを神父送りにすることになろうが本望!!』 彰利&彰利『まさに外道!!』 こっからどこまでいこうがそれが我らの生きる道!! やってやろうじゃねぇかい!!ゲームの世界に革命を!! 彰利&悠介『僕達は───仲間だぁっ!!』 獣人たち 『仲間ダァッ!!』 気分はもう黒い兄弟だった。 そして完全に獣人として生きてゆくことが決定しちまった。 だが後悔は無い……ラスボスを倒すことだけがゲームの終わりじゃあねえのだ。 真のラスボスは案外身近に居るもの。 そう……例えば神父とか。 あ、そういや獣人勢力の我らが死んだらどうなるんかな。 やっぱ獣人神父のほうに飛ばされるのかね。 彰利 『悠介、ちと俺を戦闘不能状態にしてみてくれ』 悠介 『任せろ』 彰利 『即答!?』 いやそんな! いつもの彼なら『どうしたんだいきなり』とか『いきなり何を言い出すんだ』とかっ!! なんて思っているうちに俺はボコボコに殴られ、 しかも酒を飲んだのか酔っ払った獣人たちにまでボコボコにされてあっさりと昇天。 すぐ近くに立っていた獣人神父のところに転送され─── 獣人神父『大丈夫カ同志ヨ。コレカラハモット気ヲツケテ戦エ』 彰利  『───……』 悠介  『………』 そのあまりのやさしい言葉に、俺と悠介は獣人としての意思をより強く固めたのであった。 Next Menu back