───冒険の書381/呪いと封印破壊作戦───
【ケース715:晦悠介/モルゲン】 チュンチュン……チ、チチ…… 『……少年は気づいた。朝目が覚めると、なんと自分が……カステラになっていたのを!』 悠介 「……地味に嫌なことを耳元で囁くのはやめてくれないか」 レイル「おはやう」 簡易テントの中、三人川の字になって寝ていた俺とレイルとジャミルは、 ひとまず静かな朝を迎えた。 目の前でまだ完全に目が覚めていないのか、 目をこすっている男のことはこの際ツッコミどころが満載でもいいとしよう。 それより…… レイル「うわー、ジャミちゃん寝相悪いなぁ」 真っ直ぐ川の字に寝ていた筈なのに、 どうして頭の位置が足の位置と逆になって朝を迎えられるのか知りたい。 もう寝相がどうとかのレベルじゃないだろ、これ。 レイル「よし、まずは額に“中”だな」 悠介 「そしてなんのためらいもなく、     好きになったヤツに悪戯書きをしようとしないでくれ」 レイル「いい言葉をお前に!……ソレハソレ、コレハコレ」 悠介 「………」 つまりそういうヤツなんだろう。 俺はもう気にしない方向で進めることにした。 ……いや、悪戯書きは止めたぞ?当然のことながら。 ───。 ……止めた、つもりだったんだが。 ジャミル『王!あなたは王としての自覚があるのですか!』 悠介  「ヒゲがとってもステキだ!」 ジャミル『そういうことを言っているのではなく!』 レイル 「額の天と中が合わさって、読み方だけなら天誅って読めてステキだ!」 ジャミル『黙っていろ貴様は!』 気づけば自分も悪戯書きの誘惑に誘われ、まあ、なんだ……書いてしまっていた。 お陰で現在、テントの外で正座中である。 仕方なかったんだ、悠介(とおたす)くんがやれって……! 俺に、やってしまえって語りかけてくるから……! 悠介  「じゃ、行くか」 レイル 「メシの調達も結構大変だよな〜」 ジャミル『王!まだ話が《きゅるぐ〜……》よし朝食にしよう』 空腹には勝てないようだった。 そんなこんなで自然が復活したこともあり、植物などを分析、 食べられるものとそうでないものを頭に叩き込んで朝食開始。 山菜汁(のようなもの)を作るとそれを四人で食し、軽く運動してからの出発。 太陽  「ではいきますか」 レイル 「……こいつ、どうしてリアカーで性格変えられるんだろうな」 悠介  「さあなあ……」 ジャミル『気にするほどのことでもないと思います、王』 俺としては、どうしてここまでマッスルなのかが気になるが。 ……。 リアカーでの移動が続く。 目的地はそう遠いものでもなく、昼になる前には辿り着けるだろうとのことだった。 昼を待つよりももっと早く着きそうだとも、笑いながら言われた。 レイル「ん、んー……んー……はぁ………………んー……」 悠介 「なにやってるんだ?さっきから」 そのさなか、うんうん唸っているレイルに声をかけて時間を潰す。 おかしな話だが、こうしてなにもせずに景色の流れを見るだけってのも風情があるが、 やっぱりどうしても時間が経たないわけで。 話をしては間を繋ぐって方法もこれはこれでいいんだが、 話がヘタなヤツとではそう進まないものだ。 俺もそうそう話のタネがあるわけでもなし、 昨日も時間潰しと称してそういうのが得意そうなレイルに話を振っては、 時間を潰していたわけで。 レイル「ん?んー……カオスコントロール。     体の中のカオスを上手く操ることをそう言うんだけどな。     あ、地界のゲームは関係ないぞ?     それが出るよりもっと前に、この名前は決まってた」 悠介 「あんたが地界のゲームに詳しいことはもう解ってるからツッコまないけど。     カオスコントロールか……難しいのか?それ」 レイル「正気を保つのが難しい。解放自体は容易いもんだぞ?     けど暴走すると手に負えないからな、困りものなのだ」 言われて気づく。 少し深いところまでやると、レイルの体から喩えようの無い、 混沌、と称するのが一番といえる黒と紫を混ぜたようなもやが出る。 けどそれもレイルが溜め息を吐くと同時に引っ込み、出されては引っ込み、と繰り返す。 レイル「こうやってな、少しずつ幅を広げるんだ。     俺が前まで扱えてた絶対量が軽く更新されてるから、     それはそれで完全に操るまでが長すぎるんだが」 悠介 「カオスって、魔王カオスエグゼプターのもの、だよな」 レイル「そ。“始りの神々”の中の一人だな。     天地空間で言う神界は、正規の神界とはまた別の神界だ。     始まりの神々が居たっていう世界は正規の神界とはまた違う。     そこにゃあ神王なんて存在も居なかったし、     ただただだだっぴろい自然が広がってるだけだった。     咲桜とかが居るのはそっちじゃないほうだな。正規の神界のほうだ。     俺達が数える天地空間の神界は別にある」 悠介 「へえ……」 そうなのか。 えらく簡単に干渉してくるから、そうかと思ってたのに。 レイル「お前らが言う神界は咲桜とかが干渉してくる神界だな。     俺達が言う神界……天地空間側の神界は、始まりの神々が居た神界。     創造神ソードが降りた側だな。     そっちの話とこっちの話とが混ざり合って出来たのが、     今の世に知れ渡ってる間違った神界情報だな」 知れ渡ってないと思うが。 レイル「断片的だけどな、こういう“繋がりのある目”を持ってると、     時々能力を通して見えるものがある。     だからこそ今更言うんだけどさ、とりあえず、うん。     天地空間として唱える神界と、咲桜とかが居る神界とは違う。     始まりの神が居た世界はな、ほんっと〜にその神たちしか居なかったんだ。     そりゃ動物とかは居る。鳥だって飛んでるし、空気だって神聖なものだ。     “目”を通して見えるだけだけどな、ありゃあいいもんだ。     言っちゃ悪いが、“余分なもの”がないんだ、本当に。     つまらないって思うかもしれないが、一度見てみるといい」 悠介 「や、見れないだろ」 レイル「…………次元間移動とか出来ないか?あ、航時機を創造するとか」 悠介 「それ、時間移動だろ」 レイル「おお、そうだった」 ……始りの神々か。 今はボロクズ並みの力となって俺の中に眠ってるそれ。 それを通して、記憶を探ることが出来るだろうか。 そんなことを考えてみて、 それをするにはまだまだイメージが復活できてないな、と苦笑する。 ……ノートが俺にこれを託したのは、恐らく力の復元。 未熟な状態のうちに俺にこれを埋め込んで、ともに成長していくことで力を知り、 カタチを知ることで分析できるようになれ、と言いたいのだろう。 分析できて、力が伴えば復元も出来るだろう。 100%とまではいかないまでも、始まりの神々の力を引き出すことが出来る。 ……もっとも、引き出せたところでそれは一時的なものだろうけど。 どれだけ鍛えたって、俺は地界人、月の家系の体のままなのだ。 神側の死神の力も宿ってはいるが、それは受け皿の意味を持ったただの器にすぎない。 悠介 「………」 レイル「………」 二人 『……んー、んー……んー……はぁ……んー……』 そうして、二人並んでうんうん唸り始めた。 レイルはカオスを、俺は神々の分析を。 分析とまではいかないまでも、自分の奥底に埋め込まれた神々の存在に触れるところまで、 意識を落としていったりとかをした。 ……それは、埋め込まれた時よりは少しは手に届く範疇にまできていた。 悠介 (……提督のお陰だな) 台座に嵌め込まれた月の欠片を思い浮かべ、くすぐったそうにして笑う。 すると、するりと手が届いたかのように……俺の意識は神々のもとへと到達した。 悠介 「………」 そこで見たものはなんだろう。 希望?或いは絶望? ……そのどちらでもない。 ただただ広がる黄昏の景色の先で、空を飛ぶ鳥を見上げるソードを見た気がした。 希望も絶望もない、ただこの世界で生きて、 必ず汝に会いに行こう、と……そう心に決め、静かに微笑む一人の精霊の姿を。 未来を目指すことを希望というのなら、それを希望と唱えよう。 漠然としたなにか、届くかも解らないものに手を伸ばし続けることを絶望というのなら、 それを絶望とも唱えよう。 けど、彼がしたことは手を伸ばすことでもなく目指すことでもなく、 ただその世界で静かに日々を歩み続けることだった。  空を飛ぶ鳥のように。 或いはそれは自由でもなんでもないのかもしれない。 人から見てみれば、ただ飛んで鳴いて、腹が減れば餌を取ってまた空を飛ぶ。 人にとっての走るか座るか、歌うか食べるかの違いなんだと思う。 なにが偉くてなにが偉くないか、自主族が一番で他は二番か、 そんなことを考える必要のない世界で、彼はただひたすらな自由を得た。 空をゆく鳥を見てなにを思ったのか、なんてのは解らない。 けれどもそれは、このクズのように風化してしまった力と同じように、 彼が俺の死神であった頃の面影とともに、俺の中で眠っているのかもしれない。 いつかそれを知ることが出来たのなら……俺も、黄昏を見上げ、微笑もう。 悠介 「………」 触れてゆく。 そして、今の足りない想像と創造、分析と複製とで、 つたなくても“そうありたい形”を創りあげてゆく。 それはとても不恰好な形だったけれど……神々はどうやら、笑ってくれているようだった。  パギィンッ!《───世界創造(未完成)が使用可能になった!》 ……。 いや、ここはツッコんでいい場所か? 人がせっかく過去の歴史に浸ってたのに。  ◆エクリプス  低級創造。  といっても世界創造自体が創造の果ての能力であるために、とんでもないこと。  手の平に世界を創造、その“輪”からイメージしたものを取り出せる。  世界と呼べるほど景色に影響は出ないが、能力として確定された分、  創造することがそう難しいものではなくなった。  成長させれば“月夜の黄昏(ラグナ・エクリプス)”へと至る、異端創造。 ……。 悠介 「ヴァー……」 世界創造が可能になった。 使用コストはTP全部。 た……体力じゃないだけマシかもだが、これはこれで疲れそうだ。 悠介 「───えっと……エクリプス」 早速試してみる。 と、キィン、とガラスとガラスが合わさるような音とともに、 俺の手の平の虚空に小さな円球が出現する。 それはそこだけが“夜”である奇妙な空間で…… 悠介 「……っとと、イメージイメージ」  ───どがたたたっ!! 悠介 「うおっ!?」 レイル「なうわっ!?なんだよこりゃあ!」 ……驚いた。 イメージした先からアイテムがわんさかと…… それは短剣だったり棍棒だったり、薬だったり草だったりと、要領をえない。 ……どうにも適当にイメージしたのがマズかったが、どれも俺がイメージしたものだった。 なるほど……ゲームだから、設定に忠実ってわけか。 現実世界じゃあこんなにも簡単にはいかない。 悠介 「───……イメージ、超越、凌駕にて《バキィンッ!》いっがぁあああっ!!!」 レイル「うひょおっ!?」 試しに超越と凌駕をイメージしてみたが、頭が割れるかってくらいの激痛に襲われて頓挫。 痛む頭に涙しながら、早急に届けられたメールに溜め息を漏らす。  ◆たわけ!今の汝には超越も凌駕も無茶が過ぎる!自重しろ馬鹿者め! それは、件名もなにもない、ただただ俺を心配した罵倒の一文だった。 ……しゃーないだろ、やってみたかったんだから。 かつて出来たものが出来ない悲しみがお前に解るかあぁ、ノートぉお……。 悠介 「……じゃあ、光の武具を《ずきぃっ!!》あいぃいいーーーーーーっ!!!」 レイル「うぉおっ!?な、なんなんだよさっきから!」  ◆さらにたわけ!光の武具は使えんと言っておいただろう!! 悠介 「速いわ!ていうかだな!イメージして打ち出すものがどうして使えないんだよ!     イメージだろ!?創造だろ!オィイイイッ!!」  ◆一言で言えば私が汝の中に居たからだ。 悠介 「解りやすいなちくしょう!!ようするにあれか!?     初めて三十矢の地槍を使った時もロンギヌス出した時も、     お前が俺の中に死神として存在してたからか!?」  ◆そうでもなければイメージだけであれほどのものが撃てるはずがあるまい。 ……ああそうだろうよ……。  ◆名残として、死神・ルドラの力は汝の中にあるにはあるがな。   だがそれも創造を助ける程度のものであり、光の武具創造までには追いつかん。   私が汝から出たのちは、汝の反発反動力がそれを可能にしていたが、   今や神魔霊竜人をやめた汝にはそれだけの反発反動力がないのでな。無理だ。 悠介 「……はぁ───って待て。じゃあワールドオブノスタルジアを初めて使った時、     あの時はもう俺の中にお前は居なかったよな?なのにどうして───」  ◆過去が手助けしたにすぎん。朋燐と月永だな。   汝、黄昏の超越を完了させる時、己の前世を見ただろう?   思いの力とは、これでなかなか強いものだ。   それを“詩”として放つことで、朋燐と月永の力を最大に引き出すことができた。   汝だけの力ではなかったということだ。 悠介 「……そのあとは俺と未来の俺が融合して、ルドラが宿ったから、か」  ◆そういうことだな。 悠介 「そっか」 そういえば、以前にもこういうことを考えたことがあったな。 その時とはもう、考え方も歩き方も変わってしまった自分だけど───どうしてかな。 全然、後悔とかしてない。 手放してしまったものも、失くしたものも、全部。 それらがあったから今の自分があって、今の自分は笑えているのだ。 当時、泣きたくて仕方がなかったものが、いつしか笑いながら話せるように…… 俺は今を、確かに生きているんだって実感できている。 悠介 「………」 自分の手の平を見る。 小さな月夜は消えていて、ただ自分の手がそこにあった。 この手でどれほどのものを創造し、どれほどのものを掴み、離してきただろう。 紡いだ暖かさも、手放した悲しみも、記憶も、経験も。 悠介 「……ん、んー〜〜〜……くあ……あ〜あ……」 自分の手の平に苦笑を送って、大きく伸びをした。 今更悩むことなんて必要じゃない。 だから俺はハトを創造して、空に飛ばした。 どうか今日が、いい一日になりますよう───に、って…… デスゲイズ『ルゲェォギャアァッ!!!』 総員   『キャーーーーーーッ!!?』 ……その日俺達は。 ハトでデスゲイズが釣れることを、初めて知った。 【ケース716:岡田省吾/ゴールデンメモリーズ】 ……朝を待って出発。 結局なにがしたかったのか、気づけばみんな居なくなっていた俺達のパーティーは、 俺、アルビノ、セレスさん、伯の四人で構成されていた。 岡田  「点呼ォー!───1!」 アルビノ「2」 セレス 「3……」 マラジン『ダァーーーーッ!!!!』 …………。 マラジン『やあ』 岡田  「いや、やあじゃなくて……て、提督さん?どっか行ってたんじゃ……」 マラジン『キミがキミとしてここに居る。そして太郎がここに居る』 岡田  「人の話を聞きなさい」 マラジン『人攫いが出たのだ!面白そうだからそいつブチノメしに行くの』 セレス 「人攫い……穏やかではありませんね」 マラジン『そう……実は僕、スーパー野菜人だったんだ……』 岡田  「その穏やかとは関係ないから」 マラジン『え?穏やかな心を持ちつつ〜とかいう、超野菜人の解説じゃなかったの?』 岡田  「違うから……」 マラジン『じゃあいいよもう!!太郎なんて嫌いだ馬鹿!』 岡田  「太郎!?誰!?」 言うや、提督は連れの人───レイチェル、っていったっけ、とともに駆け出した。 どこに───と呼び止めるより先に、黒い魔人になって物凄い速度で走り去ってしまった。 …………。 行っちゃった。 セレス「慌しいですね」 シド 「なにぞ気になることでもあるのだろうよ。……さ、ワシらも行くとしよう」 岡田 「え?何処へ?」 シド 『マジックキングダム、カポリトカステへ』 カポ……ってそこ、10年前まではただの魔法都市じゃなかったっけ……? 10年もあれば変わるもんだなぁ……世界。 岡田 「よしっ!じゃあちゃちゃっと行ってみるかぁ!」 そこでなにをするかなんて質問は……トリッシュ、二度としないでください。 ファンタジーってのは周りの人の助言を当てに進むものさ。 大して目的がないのなら、まずはそれでいい。 提督のことはそのあとで考えよう。 今のところ、楽しんでるようだし。 【ケース717:マラジン/ノロージョ姉の呪い】 ザムゥ〜〜〜…… マラジン『…………!』 気が付けば……オレは地の獄……! どこかわからぬ地中の底の底……亡者巣食う強制労働施設にいたっ……!!! マラジン『嗚呼っ…………それにしても金が欲しい………………!』 彰利  「なに言っとんの?」 マラジン『うん……なんだろう……』 散々っぱら走りまわった挙句、地図も見なかった僕は…… どうしてかガイアフォレスティアの前に立っておりました。 辿り着いてみれば、先に来て、ここで朝を迎えたらしい彰利と藍田くんと閏璃。 彰利   「おやおや、レイチェルじゃあねぇでがや。       どぎゃんしたとよオメ、中井出と一緒なんて」 レイチェル「中井出?……」 閏璃   「よし殴ろう」 彰利   「あいや落ち着きめされい!なに言っとんの急に!」 閏璃   「や、だってな……いい加減うんざりだぞ?       相手が提督さんだって知った途端の目、見ただろ?       誰かの仇だとか空界人を殺したヤツだとか、それは解るよ。       実際に起こっちまったことだから、仕方ないって思える。       けどそれが、この人となんの関係がある?       あんたと空界人との接点があるなら教えてくれよ。       もしそれが“知ってるだけ”とか“殺人鬼だから”って理由なら、       俺、本気であんたのことや他のやつらのこと、軽蔑する」 藍田   「お前……」 彰利   「ウルーリィ……」 マラジン 『え?え?なに?なんなのこの空気』 来た途端にとても重苦しいんだけど……あれ?もしかして僕、来ちゃいけなかった? 閏璃 「俺はな、提督さんのこと、すごく気に入ってる。     鷹志の親戚って接点しか最初はなかったけど、     話してるうちに面白いやつだって解った。     壁を作らないで、面白ければ誰とだって仲良くする馬鹿野郎なんだって。     ……そりゃ人殺しはとんでもないことだよ。     けどな、〜〜〜……やめた、馬鹿らしい」 彰利 「そうしときんさい。     どんだけ熱弁したって、相手に聞く気がないなら意味がねーべさ」 藍田 「……悪い。俺もそうだったってことだよな。ムカつかせた。謝るよ……」 彰利 「えーのよ、中井出も気にしちゃいねー」 閏璃 「なにせ提督さんだしな」 あれ?そして僕の知らないところで勝手に解決? な、なにごと? 閏璃  「はぁ……いやだな……仲間がみんな離れていく……。      鷹志も柿崎も御手洗も、由未絵も来流美も……。      話しても解ってくれないやつらに、どうやって解らせろっていうんだよ……」 彰利  「諦めなさい《どーーーん!!》」 閏璃  「や……あの、俺そいつらのことものすご〜く大事なんだけど。      多分、お前が晦を親友って呼ぶのと同じくらいに」 彰利  「親友だろうがなんだろうが、信じ続けるだけが脳じゃないっしょ。      どれだけ仲間だ友達だって思ってたって、裏切りはあるし別れもある。      意思を持つ者だもの、完全な理解なんざ出来やしねーって。      ……そもそも、中井出の仲間への信頼だって一方通行もいいところだ。      それを裏切るのも信じるのも、相手の都合なんだよ。……な?中井出」 マラジン『そうだ《どーーーん!!》』 藍田  「…………」 無駄に胸を張って言ってみせたら、 藍田くんと閏璃がポカンと口を開けたまま固まっておがったとしぇ。 藍田  「な、んだよそれ……一方通行?はは……それって勝手に信頼寄せて、      裏切られても笑って済ますとか……そういうことか?」 マラジン『相手にとっての俺の信頼なんて、その程度のものだったってことだろ?      いいじゃん、俺は信じる。      でも、相手にとってのソレが重荷にしかならないんだったら裏切るべきだ。      俺だってそう思うんだ、相手がそう思わないわけがない』 閏璃  「……それで、提督さんは楽しめてるのか?」 マラジン『え?だって……ほら。お前ら、一緒に居てくれてるだろ?』 藍田  「───!」 閏璃  「っ……!」 マラジン『押し売りでも押し付けでも構わない。      俺の勝手なものを受け取った上でこうして集まってさ。      それで、つまらないことでも笑い合えるみたいな集まり。      ほら……それって仲間だろ?───信じてくれなくてもいい。      殺人鬼って言われたって、うん……そりゃ痛くないわけないけどさ。      でも、解ってくれる人が少しでも居るなら…………俺はそれで十分だよ』 彰利  「───……ああ。そうだよな」 俺の言葉に、自分の過去を思い出してだろうか───彰利が胸に手を当て、 今までに見たこともないような優しい笑みを浮かべた。 そして言うのだ。 やっぱり、お前の仲間のままで居てよかった、と。 マラジン『というわけでちょっとドリアードに挨拶してくるね?      ───マギエルモードで』 彰利  「やめろ殺す気かてめぇ!」 閏璃  「ショック死する!やめたまえ!」 藍田  「精霊殺しめ!」 マラジン『えぇ!?会っただけで死ぬの!?』 それは大変興味深い! 是非ともこの眼で確かめてみたいけど、実際に起こったら精霊殺しだ僕! だが構わん!もはや恐れるものなどありすぎて困る!! マラジン『3分クッキング!僕マギエルモードで突っ込むけど、僕の正体はご内密に!』 閏璃  「おお!潜入捜査だな!?捜査じゃないけど!」 藍田  「任せてくれ!悪戯チックなことは大好きだ!」 彰利  「名づけよう!貴様の名前は───中井出プラチナ!!」 マラジン『それじゃあ僕がとても硬いみたいですよ!?      なにアヴドゥルがスタンド名を名づけるみたいに決めてんの!?      やめてよ!そんな羨望の眼差しで見られたって指とか伸びないから!』 彰利  「……モンスターザクロパス!!」 閏璃  「それだ!」 マラジン『どこからそんな名前が飛んできてるの!?ええい埒があかねー!      俺のことはこれから魔竜皇帝ガオレンズホオビーと呼んでくれ!』 藍田  「ガレオンじゃないのか?」 ガオレン『普通じゃつまらないし』 彰利  「どこらへんが魔竜なん?」 ガオレン『……………………………………別の名前、考えるか』 総員  『サーイェッサー!!』 名前つけ大会が始まりました。 ハッキリ言いまして、レイチェルさん蚊帳の外。 僕は無視されようがどうしようが、それでも話し掛けたけど、結果は嫌悪と拒絶。 やっぱね、“普通”は人殺しと一緒に居たいだなんて思わないものだね。 ハッと気づけばレイチェルさんの姿はなく、 自分の信頼はまた拒絶されたんだなぁと、少しだけ落ち込んだ。 ───……。 ……。 ズシャーーーリ!! 彰利  「いいかぁ愚民(クズ)共ォォォォ!!」 閏璃  「このお方があの伝説の破壊人、キモエル様だァァァァ!!」 藍田  「貴様らが生きていられるのもキモエル様のお蔭!      つまり仲間たるこの俺達のお蔭なのだァァァァ!!」 キモエル『………』 なし崩しにキモエル。 八頭身状態になった僕は、急造の神輿みたいなものに乗せられ、 三人に担がれながらの入場を果たした。 そんな僕らの前には巨木の前に立つドリアードとナギー。 ドリアード『何事です……!ここが精霊の領域だと知ってのことですか……!』 彰利   「当たり前だこのカスが!」 藍田   「当たり前だこの緑が!」 閏璃   「当たり前だこの緑黄色野菜が!」 ドリアード『緑黄色野菜!?』 ナギー  『お、おぬしら……こんなところに何用なのじゃ!       そこなおぬし!きもえるとかいったの!何用じゃ!』 キモエル 『世界を救済しに来ました。一言で言うと僕の呪いをといてください』 ナギー  『うそなのじゃ!救済者はこんな登場なぞしないのじゃー!』 キモエル 『ゲェエそんなあっさり……』 きっぱりウソだと言われてしまった……。 うん、でもまあ世界救済などウソです。 キモエル 『実は僕は亡国の王様なのです。       悪い魔法使いに呪いをかけられて、こんな姿に……!』 ナギー  『なんじゃと!?呪いとな!?』 藍田   (……亡国だと滅んでないか?) 閏璃   (そこがツボなんだろ、提督さんなりの) ドリアード『そのためにここへ訪れたというのですか。こんなに騒々しく』 キモエル 『時間がないのですぐにお願いします!僕の活動時間は3分なのです!』 ドリアード『…………はぁ。お断りします。いくら呪いにかかっているとはいえ、       高位精霊の領域に無断で立ち入り、無礼雑言の数々。       さすがのわたしも気分を悪く───』 閏璃   「うまティーをあげましょう」 ドリアード『是非やりましょう』 総員   『うまティーで落ちたァアアーーーッ!!!』 随分と軽い“さすがのわたし”に出会った瞬間だった。 ドリアード『けれど困りました……《じゅるり》……ん、っく……。       呪いを解くだけでは……《じゅるり》……んっく……等価ではありません』 総員   『…………』 すげぇ勢いで涎飲んでる。 どれほどうまティー好きなんだろうかこの緑黄色野菜は。 ドリアード『解りました』 総員   (え……?なにが……?) ドリアード『ではこうしましょう。あなたがたの経験を別のところへ置き換えます。       望みのままに、望みの力への変換を手伝いましょう。       剣術の経験を伸ばしたいなら、       体術の経験を削いで剣術に回す、といったものです』 彰利   「なんと!?いきなりな話だがそれは是非やってもらいたい!       あ、オイラ全ての経験を体術に回して欲しいッス。拳と錬気ですな」 藍田   「じゃ、じゃあ俺は全ての経験を蹴りと錬気に!」 閏璃   「ならば俺は全ての熟練度を銃器に!」 ドリアード『ただし、実行しますと本当に削いだ部分の熟練度は1になりますよ?』 彰利   「わたしは一向に構わんッッ!!」 閏璃   「一点を極めると決めたなら!」 藍田   「貫き通すが漢の花道!!」 彰利   「他のものに裂く時間なぞねー!寝ても覚めても体術じゃい!」 ドリアード『解りました。では───』 ドリアードが目を閉じると、その体から緑色の光の粒子が漂う。 それらが三人の体に付着すると、様々な色に変色したのち、体の中に沈んでゆく。 すると─── 彰利   「オッ……オッ!オォオオッ!!拳に!拳に素晴らしき力が!」 藍田   「す、すげぇ……こりゃすげぇ!足が……自分の足が頼もしい!」 閏璃   「…………あの、すんません。       せっかくですので俺の斧と防具の呪いも解いてください。       このままじゃ銃持てないよ俺……」 ドリアード『ええ、構いませんよ……《じゅるり》……ん、っく……』 その前に涎をなんとかしてください。 と、そんなことを思っていると、ドリアードが僕を見つめてくる。 ドリアード『さて、あなたは───』 キモエル 『むう……』 イラッときた。 それは、僕がずっと胸の中に秘めているものであり、 気に食わないひとつのことが原因であり…… ドリアード『───………………うわぁ……』 キモエル 『え……?な、なにその反応!』 物凄く微妙な表情でうわあと言われた!? ドリアード『こほんっ……し、失礼しました。あまりに偏った経験だったので……』 彰利   「どげな感じなん?」 ドリアード『剣術1、体術1、魔術1、斧術1、槍術1、弓術1、棒術1……ほぼ1です。       ただし……遊び心だけが18078と、ずば抜けていて……』 総員   『アンタすげぇよ!!』 キモエル 『嬉しくねぇえーーーーーーっ!!!』 ドリアード『他には……他の方にはなかった人器というものが92ほどです』 キモエル 『あ、じゃあ僕それに全てを注ぎ込んでほしい。       どうせどうやったって伸びないって伯に言われた僕だし。       これから増えるであろう遊び心の熟練度も、       全部そっちに行くように設定して?』 ドリアード『解りました。では───』 再び粒子が現れ、今度は僕だけに付着し、沈んでゆく。 するとマギャァアン!! キモエル『おぉおっ!?』  ピピンッ♪《武具とのシンクロ率が限界値を軽く超えた!》 マキィン♪という音が思い切り重なったような音とともに届く文面。 俺はなにやら体が軽くなるような錯覚を覚えつつも、 なにか暖かいものに包まれている気分に浸っていた。 彰利   「……キミさ、武具とか散々振るってるのに、どぎゃんして熟練度1なん?」 キモエル 『や、だって僕、武具とかは適当に振るってるだけだし……。       それ以外は武具が教えてくれる通りに動いてるだけだから、       僕自身の熟練度なんて溜まらなくて当然じゃないか』 彰利   「うわーあ」 キモエル 『それに多分、俺の経験はドワーフの遺跡で“人”であることを選んだ時、       一度武具に関する熟練度がリセットされてたんじゃないかな。       それまでは頑張って武具振るってたわけだし』 彰利   「そんなもんなんかねぇ……あ、そうだドリ姉さん」 ドリアード『ドリ姉っ……!?───こほん、な、なんですか?』 彰利   「オイラの親友に熟練移動させてやりてぇんだけど。       その粒子、少し貰えない?」 ドリアード『無茶言わないでください!』 当然の返答だった。 ───……。 ……。 で…… ドリアード『無理ですね』 キモエル 『なんだってぇえーーーーーっ!!?』 呪い消しを実行してもらったんだけど、ダメでした。 何故……閏璃は出来たのに、どうして……。 彰利   「おいおいどういうこった精霊てめぇ」 閏璃   「俺達ゃここに来れば治せるって聞いて来たんだぞ精霊てめぇ」 藍田   「それが治せないなんてどういうこった精霊てめぇ」 ナギー  『ほんに容赦のないやつらよの……じゃがどういうことなのじゃ精霊てめぇ』 ドリアード『ナ、ナギー……あなたも同じ、然の精霊でしょう……。       ……ひとつ訊ねますが、その体はあなたの本体ではありませんね?』 キモエル 『そう。俺は南葉高校が誇る期待の超新星、ケンドー部の田中だ』 ドリアード『よく解りませんが……あなたの呪いを解くには、       あなたの本体に直接働きかけなければいけません』 僕の体に直接? ゲゲェ……それってクリスタル破壊しなきゃ無理じゃん……。 ドリアード『…………』 ドリちゃんが再び僕を見る。 その目は僕の内側……魂を覗いてるようでバサァッ!! ドリアード『はぶぅ!?』 総員   『ゲゲェエエエーーーーーッ!!!!』 彰利   「よっ……よぁああーーっとぉっ!!砂かけだぁああーーーっ!!」 藍田   「さ、さっすが天下のキモエルさんだ!」 閏璃   「高位精霊に砂かけ!!このタイミングで!!」 キモエル 『いい加減にしてもらおう!なんだね貴様らお偉いさんがたは!       少し思うことがあれば、人の中身をジロジロジロジロ!!       このキモエル、相手がどんなことを働こうが、       大抵のことは逆手にとって嘲笑おう!       だがそうして相手が気づいてないと思って中身を見る目!       それだけは───どうしても許せんのだぁあーーーーーーーっ!!!』 ドリアード『《ガバァッ!》ひあっ!?な、なななにを───下ろしなさい!下ろ───』 キモエル 『その賢いオツムを完璧に破壊してやる!!       うおぉおらぁああーーーーーーーっ!!!!』 ドリアード『《ブンッ!》ひあああっ!?』 砂かけに体勢を崩していたドリアードを担ぎ上げ、真上の空中へと放る! 次いでそれを跳躍で追い、足を掴むとボー・アンドアローの形に固めてゆく! 彰利 「あぁーーーっとぉ!なにかのかたちにかためてゆくーーーーっ!!」 それを見た彰利がわざとらしい声で解説してくれる。 謝謝、やっぱりこれにはその声がないと。 キモエル 『トドメを刺してやる!───いぃけぇええーーーーーっ!!』 ドリアード『《メゴキャア!!》ふきゅあぁああーーーーーっ!!』 ボー・アンドアロー状態の彼女の体を、さらに力を込めて締め上げ、 背骨に強烈な圧迫感を送る。 その際、属性/火を操って周囲三方向に炎を散らすのも忘れない。 さすがに血は出ないからね。 彰利 「オ〜〜〜〜ッ!み、見事なカナダの国旗マークが〜〜〜っ!」 閏璃 「ま、まるで炎がメープルリーフを象っているかのようだ〜〜〜〜〜っ!!」 けふっ、と息を詰まらせたドリアードをさらに抱えなおし、 キン肉ドライバーの格好へ移行! 当然そんな状態にされたドリアードの羞恥心はハンパではなかったらしく暴れ出すが─── 知りなさい。このビッグボディのドライバーは、ただのドライバーじゃねえんだぜ。 ドリアード『は、離しなさい!はな───』 キモエル 『あの世へ送ってやるのよォ!!』  ヴミンキュボドガァンッ!!! ドリアード『けひゅぅううううっ!!?』 重力100倍(セーブモード)を発動させ、 フロートで浮かせていた体をドリアードごと地面に落とす。 その際、ドライバー状態からパワーボムのような体勢に変え、 己の体重と体を曲げる反動、すべてを脳天へのインパクトに変える。 これぞビッグボディ流メープルリーフクラッチよ! キモエル 『それが人の中身を勝手に知ろうとした報いです。       思い知ったのなら、これからはそんなことをしてはいけませんよ?』 ドリアード『はい……すいません……』 ピクピクと痙攣して倒れる高位精霊なんてレアなものを見たが、それはそれ。 精霊だからと心を盗み見るヤツなど滅んでしまえ。 ゲームとかやってるとき、よく思ってたんだよな……。 どうして冒険者たちは、 自分の考えてることを言い当てられて不快にならないのかな〜って。 だからそんな彼らの心の奥底にあるであろう心を爆発させてみたのが今日です。 っていかん!そろそろ3分だ! キモエル 『で!?つまりは貴様を我が本体へと連れていけばいいわけだな!?』 ドリアード『い、いえ……わたしには自然の管理があるので……       ここから、動くわけには《がばぁっ!》ひああっ!?』 キモエル 『そんなものは知らん』 ドリアード『えぇっ!?ちょ……下ろしてください!下ろしなさい!       わたしにはこの世界の自然を見守る使命が《ゴキュリャア!》はきゅう!?』 総員   『ぎゃああ首折ったぁあーーーっ!!』 キモエル 『し、失礼な!捻じ曲げただけだって!ほら気絶気絶!』 なにやら口からコポコポと妙な汁を吐いてるけど気にしない気にしない! きっと樹液かなにかだ!自然を見守るあまり、きっと体が樹になったとかそんなのなの! キモエル『彰利一等兵!』 彰利  「《ザザァッ!》イェッサァッ!」 キモエル『これよりこの緑の日々を猫の里へと運ぶものとする!      貴様の霧装ニーベルマントルに収納を依頼するが構わぬか!』 彰利  「サーイェッサー!!」 キモエル『よろしい!では───』 ぞぶり……ぞぶぞぶ、ずちゅるるるる…… ぐったりしてるドリアードを、彰利の黒マントに収納してゆく。 ナギー 『な、なにをしておるのじゃー!そんなことをすれば───』 キモエル『ナギー新兵!!』 ナギー 『!《ビッシィ!》サーイェッサー!!……ヒロミツ!?ヒロミツかや!?』 キモエル『いや。俺は南葉高校が誇る期待の超新星、ケンドー部の田中だ』 ナギー 『た、たなかというのか?そのたなかがなんの用じゃ。      そもそもわしに命令していいのはヒロミツだけじゃ、      気安く新兵などと呼ぶでない』 キモエル『そのヒロミツから伝言です。今日一日だけでいいから、自然を護ってくれ、と』 ナギー 『なんじゃと!?そ、それはまことか!?』 キモエル『まことだ!さすればヒロミツも復活出来よう!      全てはそう……貴様の頑張りにかかっているのだ!と伝えてくれと』 ナギー 『お、おおおお……!ヒロミツが……ヒロミツがわしを頼りに……!      任せるのじゃ!なにを隠そう、わしは自然保護の達人じゃぁあああっ!!!』 ナギーが自分の胸に手を当て、クワッと迫力のある顔で叫んだ。 次いで巨木に手を当てると、ふおおおおお!!と叫びながら力を加えて───って!!  めごもごもしゃめしゃごふぁふぁふぁふぁぁっ!!! 総員 『キャーーーッ!!?』 思わず出る、怪虫に襲われそうになった仲田くんのような悲鳴!! 自然が!植物が物凄い勢いで生えてゆく!! 今までもボーボーだったのが、より一層に!! 彰利 「キャアおやめなさいドリッ子ナギナギ!!これ以上はいろいろとやべー!」 ナギー『ウェハハハハハ……!こんな機械臭い世界なぞ、     自然に埋もれてしまえばよいのじゃグオッフォフォ……!!』 彰利 「ねぇ。これで血が繋がってないなんて、なにか間違ってない?」 閏璃 「俺もそう思ってたところだよ……」 藍田 「むう……会話に入れないもどかしさが辛い……。     な、なぁ弦月、俺にさ、過去を見せてくれないか?     お前の記憶の過去でもいい、俺がどうやって提督に接してたか……」 彰利 「あ、それダメ」 藍田 「あ、あれ?なんで?」 彰利 「えーからえーから。あのね?藍田くん。     過去の映像を見たことで急に親しく接する相手になんて、     中井出は信頼を寄せないよ。あいつは自然体が好きなんだ。     だから拒絶するヤツはそれでいいって思うし、     自然に親しくなっていったヤツには信頼を寄せる」 藍田 「むうう……」 彰利 「簡単なことなんだよ……あいつは子供だ。子供は簡単なウソにも騙されて、     小さな約束を信じて、帰らない親に泣くんだ。     キャッチボールがしたかったとか、一緒にゲームをしたかったとか、     そんな、待てばいつか出来るようなことに、真剣になって泣く。     だからな、俺に見せられた記憶を頼りに自分を偽ったら、あいつは泣いちまうよ。     泣いた上で、お前がそう思ったんならそれでいい、なんて言っちまうんだ。     ───だから俺は見せないし、お前も見ようだなんて思うな」 藍田 「………」 閏璃 「おーい、いいこと言ってるところ悪いんだけどさ。     提督さん、3分過ぎて筋肉痛に苦しんでるぞ?」 二人 『ゲエェエエエーーーーーッ!!!』 彰利 「なンか静かだナーとか思ったら!ええいこのタコめ!」 藍田 「しっかりしろ提督!ここか!?ここが痛いのか!?えぇーーーっ!!?」 藍田くんが超筋肉痛の僕の体をツンツンと触る!! その度にズギャアアととんでもない痛みが僕の中に! 痛っ!痛い!やめてやめてぇえええ!! でも騒ぐとナギーに気づかれるので我慢!僕、強いコ!! 強いっ……つよっ……やめてやめてぇええ!!ここぞとばかりにつつかないでぇええっ!! ちょっ……彰利!?キミ僕の心情に気づいててやってるでしょ! 顔が思いっきりニヤケてるよ!?やめてよ!痛いんだってば本当に! やめっ……ヴァーーーーーーーッ!!!! 【ケース717:マラジン(再)/キャッ糖人伝べらんめぇ】 しくしくしくしく…… マラジン『ぐすっ……ひっく……うぇえ……』 彰利  「死ね!」 マラジン『泣いてるヤツに死ねと!?』 新たな展開だった。じゃなくて。 ───筋肉痛も治まる頃、僕たちは猫の里に居た。 亜人族は俺以外の来訪に警戒してたけど、 相手が彰利たちだと知ると、少しは緩まってくれた。 そんなこんなで藍田くんが樹によりかかりながら具足の手入れを、 閏璃が地面に座りながら銃の手入れをしていた。 彰利は……俺と一緒に猫たちと家の中で話し込んでいる。 マラジン『エィネー!エィネやー!エィネー!?』 エィネ 『ヘンな呼び方しないでください!……なんですか、もう』 マラジン『やあエィネ。今日はちょっと貴様にお願いがあって来たんだけど』 エィネ 『はあ……なんですか?』 マラジン『妖精界へのゲート、開ける?』 狙いはそれ。 直接体に叩き込まなければ封印が解けないのであれば、 妖精界にある僕の半身(背中)に直接叩き込めばいいのさ。 エィネ 『ゲートですか……開きたいところなんですが、      こう自然が少なくなってしまった今では……』 マラジン『───あれ?』 言われてみて気づく。 ここは……自然が増えてない。 何故?外はもうボーボーなのに……と考えてピンとくる。 マラジン『シェーラ、ちょっといい?』 シェーラ『うん?なんだ』 マラジン『ちょっとさ、ここに張ってある幻惑結界、解いてみて』 シェーラ『……そんなことをしたらどうなるか、』 マラジン『いいからいいから、ほんのちょっとだけ、ね?』 シェーラ『むう……少しだけだからな』 言って、シェーラシェーラが結界を解いた───途端!!  ゴファァンッ!! 総員 『きあーーーーーっ!!?』 視界が、自然だらけになりました。 家にまで侵入してきた自然たちはそれはもう見事な枝っぷりで、 声  「はごおあぁああーーーーーっ!!!!」 声  「うおわあーーーーっ!!閏璃がタケノコの猛襲になす術もなくーーーっ!!!」 出口が入り口にでもなったのか、 チラリと見た外の景色では、閏璃がケツを押さえて痙攣していた。 座ってたのがアダとなったらしい。 ……やっぱりあるのね、タケノコ。 倭人が隠れ里に住んでるくらいだから、あるんだろうなぁとは思ってたけど。 エィネ 『え、ぇえとこれはいったい……』 マラジン『今、外ではいろいろ大変なことが起きているのですよ。      ドリアードがナーヴェルブラングと協力して自然を復活させたりとか』 エェネ 『えぇ!?ど、どうしたらそんな状況が完成するんですか!?      い、いえ、それより魔王は復活したんですか!?』 マラジン『時間軸の融合と一緒にね。だから過去のナーヴェルさんです。      というわけで開始四日目から早くも復活のチャンスなんだ!      なんとかゲートを開いてくれ!じゃないと認識をエェネのままにするぞ!』 エェネ 『なんですかそれ!わたしエェネって認識されてたんですか!?』 マラジン『ああ……!一息前からな……!』 エェネ 『やめてくださいよ……やりますから』 本当に物凄く嫌そうな顔をして、エィネはゲート開放の行動に移る。 その横で、 彰利 「がんばれーーーーっ!!まっなっ《ぶっ》」 彰利が板垣流の応援を エィネ『やめてください気が散ります!!』 彰利 「ご、ごめんなさい」 ……した途端に怒られ、本気で謝ってた。 ともあれ、ゲート完成……! 僕と彰利は早速その中へと進み、妖精界へと降り立った………………! ───……。 ……。 サァア……ごふぁあああああああ!!!! マラジン&彰利『ゲェエエエーーーーーーーッ!!!!』 サア、と花畑に風が吹いた……と思った途端、 然の力に当てられたのか、妖精界の花畑が大変なことに!! エィネ『あわ、わわわ……と、閉じてくださいゲート!閉じっ……閉じてぇええっ!!』 見渡す限りの花!花!花!! タンポポだとか小さな花だとかが有り得ないくらいの大きさになっていて、 見れば、彰利の背よりもあるんじゃないかって花まで存在していた。 彰利 「こっ……これは───     どぉこぉおおおおおおおにだぁってぇええゆぅけぇるぅうううううっ!!!」 そんな景色を前に、彰利が突然花畑を駆け出した! 何故か女性チックな走り方だ! 腕を上下に振るう感じじゃなくて、手を小さく握って横に振るうような、なんかそんなの! 何処!?彼は何処に行く気なの!? ………………あ、戻ってきた。 彰利  「とりあえず女の子に“うしお”はねーと思うんだワ、俺」 マラジン『キミがなにを言いたいのか、僕には解らない』 彰利  「キミもずっと地界に居りゃよかったのになぁ」 ケラケラと笑いながら、今度は俺の手を取って駆け出す。 例によって、何処にだってゆけると叫びながら。 あとで聞いたんだが、テレビアニメCRANNADの真似なんだそうな。 まあそんなことは置いておくとして、だ。  ざぁああっ…… 何処から吹いているのか。 風が花々を揺らす景色の中で、俺と彰利とエィネは途方に暮れていた。 や、何故って……いろいろ思い出したからだ。 そうだよそう───俺、刻震竜の宝玉やらなにやら剥ぎ取ったあと、 ただ戻るのではつまらん!って、空中で銀水晶使ってゲート作ったんだっけ。 だからあんな高い位置の虚空に僕の背中が…… 彰利  「……馬鹿だろお前」 マラジン『え?あれぇ!?なんかすげぇ真剣に馬鹿って言われてない!?』 あの彰利がてめぇとか貴様とかじゃなくて“お前”って! マラジン『まあいいや、GO彰利』 彰利  「や……いいけどさ」 彰利が宙に浮き、“僕”の背中へと近づく。 そこでマントルからドリアードを召喚すると、───まだ気絶中だった。 彰利  「中井出ー!まだ気絶してるんじゃけどー!?」 マラジン『脇腹を狙え』 彰利  「ラーサー!!」  どぼぉっ!! ドリアード『けひゅうっ!?げほっ!けっほごほっ!』 彰利   「あ、起きた」 ドリアード『な、なななな……!あなたたち、いい加減に……!』 彰利   「さあ、これが呪いを解いて欲しい本体だ」 ドリアード『聞いていませんね……はぁ、もういいです、すぐ終わらせて帰ります……』 チラリと、マントの中から僕の背中に触れるドリアード。 やがて目を閉じると、ゆっくりと力を解放し───ズズッ。 マラジン『おおっ?』 な、なんだ……体が引っ張られる……!? 馬鹿な!このマラジンが……!て、抵抗が効かん!まさかこれが世に言う魔封波……!? とか思っているうちに足が地面から離れ、俺は虚空へと吸い込まれてゆく!! こ、これが竜巻に飲み込まれる家畜の気持ちか!? 怖い!これすげぇ怖いんですけど!! マラジン『そ、孫ーーーーん!!あとは任せたぁああーーーーーっ!!!』 だがしかし!いつでも心にトキメケを! 俺はキュゴゴゴゴ!と吸い込まれてゆく俺に驚いている彰利に向かい、そう叫んで─── 吸い込まれた体とともに、“向こう側”へと落ちていった。 そう。気づけば俺は……気が付けば……オレは地の獄……! どこかわからぬ地中の底の底……亡者巣食う強制労働施設にいたっ……!!! じゃなくて、砕けたクリスタルの先で、ちゃんと中井出博光として座り込んだ状態で…… エトノワール中心部のエーテルアロワノンに存在していた……! ……あ、でも猫化がチャチャブー化になってる。 なんて冷静に言ってる場合じゃないって!なんかみんな崇めてる! 僕のことモノスゲェ勢いで崇めてらっしゃる! こ、これは───逃げる!! 中井出「さわやかな風をプレゼントしよう!」 ひとまず両手に持った戒めの時宝玉やら時の竜宝玉やらをバックパックに入れて、 霊章から出現させたジークリンデから呆れるほどの風を発生! それをアガメムノンたちにお見舞いし、エーテルアロワノンから叩き落す! それからすかさず落下で死なないように風を扱い、フワリと地面に下ろしてから─── うん!誰も居ないね!?乗ってないね!?と確認をしていざレッツラゴー! ジークムントとジークリンデをジークフリードに変換し、 エーテルアロワノンの中心に突き立てて意識を自然に委ねる! するとどうでしょう───剣と、立たせている二本の足、 それらを通し、朽ちかけていたエーテルアロワノンが目を覚ますかのように……! 中井出「───10年間、よく頑張ってくれた。     さあ行こう……我らはこんなところで燻っていられるほど暇ではない!!」  ─── 俺の言葉に、要塞が頷いた気がした。 もちろんそんな気がしただけだが───要塞はゆっくりと浮き上がり、 近寄ろうとする人間たちを風圧で吹き飛ばしてゆく。 ……おっと、飛ぶにしてもここがこんな状態じゃあ逃げ出せないか。 じゃあ───っと。 烈風脚を思うさまに使い、てっぺんの砲台広場まで上がる。 すると待っていたかのように木々の天井が開いてゆき、 この空間の場の機械だらけの天井が姿を見せる。 中井出「準備はいいか、エーテルアロワノン。10年間も縛り付けられていた世界だ。     今、そこから貴様を解き放ってやる。───覚悟を決めろ!     前向きだろうが後ろ向きだろうが、とにかく生きるための覚悟を!     死するは敗北と知れ!逃げることを恥と知るな!     どれだけ無様だろうが卑劣だろうが生きることこそ第一よ!     死んだ時点で全てが終わるのが生命ならば、生きることこそ生命そのものよ!     謳歌せよ青春!駆け抜けろ人生!     たとえ誰に罵倒されようが、個の魂は個のものと叫ばん!!     一点集中!レェエジングッ───ロアァアアーーーーーーーーッ!!!」  ギガァアッチュゥウウウウンッ!!!! ギガフレアではなく、あえてロアで。 放った光は天井を容易くブチ破り、 それだけでは飽き足らずに周囲の機械を溶かしていった。 そう……機械ごときにファンタジーの力が負けてたまるか。 そりゃあ機械だってファンタジーに部類するだろうが─── 機械はまるで痰を吐くようにファイアブレスなんて吐けないし、 羽ばたくだけで空を飛んだりはできない。 生物にして最強種が居る世界……科学ではなく持ち前の力が存在する、 ゴテゴテしくない世界……まさにファンタジー。 どっちも認められる世界だが、俺は機械に頼らない自然丸出しファンタジーが好きだ。  ごお、と天井を突き抜ける。 空は赤いままだった。 青の下にお前を連れ出してやりたかったけど……ごめん。 自然と頭が謝罪に向いていることに気づいて苦笑するけど、本心だった。 ……ていうかあのー、エーテルアロワノンが然の力を浴びて、 物凄くメキメキと大きくなっていってらっしゃるんですが? 中井出「…………」 そんな要塞の声に耳を傾けてみると───要塞は喜んでいた。 10年前とは確かに違う。 だけど、こんなにも自然に溢れた世界をもう一度見れて嬉しい、と。 変わったものもあるだろう。 草花が、木々が増えたとはいえ、それはつい先日のこと。 機械の臭いや油臭さは残ってるし、それはあまりいい臭いとはいえない。 それでも嬉しいのだと、自然の塊は喜んでくれた。 中井出「うん……───うん!」 思い切り頷いて、俺は笑った。 じゃあ行こうか。 このクソッタレな世界をブチ壊すために! え?他のやつにとっては幸福かもしれない?知ったことか!! 勇者が善と信じて周りを気にしないで行動するのと同じように! 悪とて己の道を誇って突き進んでいるのさ! 有象無象のことなぞいちいち考えてられっか! 臨機応変!気が変わったら行動を変える!そんなもんさ我が人生!!  ───トトンッ。 ……あれ? 中井出「………」 竜玉をトトンッとつついてみても、シャモンが現れない。 ───……って、そうだった。 こっちの世界ではシャモンはグレイドラゴンに預けてあるんだっけ。 まずは迎えにいかないと、だな。 ……っとと、あんまりのんびりしてるとデスゲイズに見つかるな。 よし、猫の里に行こうか。 Next Menu back