───冒険の書284/奇跡の藤堂さん───
【ケース719:晦悠介/エルメテウス復活作戦】 悠介 「うーわー……」 レイル「こーりゃひどいもんだなぁ」 ややあって、エルメテウス跡に着いた俺達は、 その朽ち具合を見て開口一番に呆れをもらした。 ああ、ちなみにサンとジャミルは木陰でぐったり中だ。 サンは普通に疲れてるだけで、ジャミルは乗り物酔いだな。 レイル「これ、直すって……どうやるんだ?」 悠介 「コアを見つけるんだ。あれだけの大地を浮かしてたんなら、     なにかしらの魔法的な仕掛けがあった筈だからな。     もしくは古代文明の名残で、機械かもしれないわけだが。     それを見つけて、複製と創造でなんとか直す。     出来るだけオリジナルに近づけるつもりだけど、     さすがに今の俺の創造じゃあ元通りとまではいかないかな……」 以前の自分だったらいけたんだが……くぅ、悔やまれる……。 だがまあそれよりもなによりも、まずはコアを探さなければ。 悠介 「んー……アルティメットアイ!!《パワ〜〜〜〜ッ》」 意味もなく技名などを口にしつつ、分析で辺りを見渡す。 ………………が、目に見える部分には反応一切無し。 どうやら完全に埋まってるか、それとも誰かに持っていかれたか、か。 悠介 「よし、じゃあ……」 レイル「掘り起こすか」 悠介 「だな」 地道な捜索活動の幕が斬って落とされた。 ───……。 ……。 でげでで〜〜〜ん! レイル「レイル は カビパン を 手に入れた!!」 カビパンを発掘したらしい。 レイル「見てくれモミー!カビて《ざぁっ……》うおお!?風化した!!?」 レイルが持っていたパン(らしいもの)が、風に乗って砂と化す。 ざあ、と流されたそれは、もはや景色と一体化してどこに行ったのかも解らなかった。 ───……。 でげでで〜〜〜ん! レイル「レイル は スパイクフレイル を 手に入れた!」 今度はモーニングスターを発掘してる。 多分、10年前に居たモンスターが所持していた武器かなんかだろう。 だって人間用にしてはデカすぎるし。 ……。 でげでで〜〜〜ん! レイル「レイル は 月の欠片 を 手に入れた!───なにぃ!?」 悠介 「なにぃ!?」 あるところにはあるものである。 ……。 でげでで〜〜〜ん! レイル「レイル は 魚の骨 を 手に入れた!」 悠介 「左之助ぇええええっ!!」 レイル「魚の骨大好きぃいいいいいいっ!!」 ……。 でげでで〜〜〜ん! レイル「レイル は 綺麗な石 を 手に入れた!」 悠介 「コアかっ!?」 レイル「ん〜……解らん、分析頼む」 悠介 「よし。ん〜…………綺麗な石だな」 レイル「見たまんまか……」 ……。 でげでで〜〜〜〜ん! レイル「レイル は 謎の書物 を 手に入れた!」 悠介 「謎の書物?どれ……《ペラバタァンッ!!》」 レイル「うおっ!?」 悠介 「燃やしてくれ」 レイル「…………あ、あー……なるほど」 赤い顔で即座に本を閉じた俺を見て、 なにかを察したらしいレイルは、頷くやすぐに本を燃やした。 ……。 でげでで〜〜〜〜ん! レイル「レイル は 秘宝いかづちのマギ を 手に入れた!───ウソだ!」 うそだった。 ……。 でげでで〜〜〜ん! レイル「レイル は 土偶 を 手に入れた!」 悠介 「よこせ!今すぐ!!」 レイル「うぉお!?な、なんだいきなりどうし───」 悠介 「黙れ!それは俺のだ!よこせ!」 レイル「ひ、ひぃ!あの人、急に人が変わったように───     って言ってる場合じゃねぇーーーっ!!」 ……。 デゲデデ〜〜〜ン! レイル「レイル は 奇妙なガラス玉 を 手に入れた!」 悠介 「………」 レイル「…………」 悠介 「………………土偶……キラキラ》」 レイル「……俺、こいつのこんな無邪気な顔、初めて見るかも……。     ていうか土偶を抱き締めてうっとりするヤツこそ初めてみた……」 ……。 でげでで〜〜〜ん! レイル「レイル は ハリガネで出来たパンダ人形 を 手に入れた!」 悠介 「ギーとか叫びそうな人形だな」 レイル「およ?土偶はもういいのか?」 悠介 「堪能した……」 レイル「そ、そうか」 ……。 ───……。 そうしてコアを探すこと数時間。 いい加減、疲れていたところに───ンゴゴゴゴゴゴという地鳴り&地震。 悠介 「……ん?地震か?」 レイル「あー……最近多いよな───ってウォオオオオオオオーーーッ!!?」 悠介 「なんだ?どうかしウオォオオオーーーーーッ!!?」 なんか来た! 遠くの……景色の果てから、なんかボーボーなのが! 樹!?あれ樹か!? いろいろ生えたなにかが、根っこを揺らしてこっちに来てる!なにあれ! しかも速い!速くて……あ、目の前で止まった。 声  「私の記憶が確かなら!アーレッ!キュイジーーーヌッ!!よしワケ解らん!!」 そして聞こえる声。 滅茶苦茶にデカイソレの遥か高い位置から聞こえた声は、どっかで聞いたことのある声で。 声  「いかーん悠介ー!逃げろー!」 悠介 「へ?」 何故か聞こえてくる彰利の声にバフッ!! 悠介 「はぼう!?《コサササッ!!》」 何故か急に頭に紙袋が被せられた!! い、いったいなにがドム! 悠介 「ふぼぉっ!」 次いで、ボディーブロー。 こ、これは……!忘れもしない、“てんぎゃん-南方熊楠伝-”の真似……!! こんなことをわざわざしてくるヤツは─── 悠介 「提督か!?《ばさっ》」 紙袋を無理矢理引き剥がし、辺りを見渡すも───レイルが居るだけだ。 悠介 (……ユー?) レイル(ホワイ?ノンノン) 指と視線で語り合う。 だがレイルが仕出かしたわけでもないらしバフッ! 悠介 「ぶわっ!?《ドム!》ゲブゥ!!」 い、と確認した途端に再び後方から紙袋を被せられ、すかさず腹にボディブロー。 わざわざ回り込んだりして面倒じゃないのかこいつは! 悠介 「誰だよこのッ!《ばさバフッ!》もが!?《ドム!》ゲブゥ!!」 取った途端に新たな紙袋が!しかもしっかりとボディブロー! こ、このっ……いい加減にしろっ! 悠介 「鳩が出ます!───弾けろっ!」 ポムポムと鳩を創造する。 もちろんただの鳩ではなく、 しっかりと俺に危害を加えるヤツを襲う鳩というイメージを付加してある。 じゃなきゃ、わざわざ弾けろ、なんて付け足したりしない。 ……しないのに、何故か手元に居る鳩は行動を起こさない。ハテ? 紙袋の中という狭い視界の中から鳩を見下ろしていた俺は、 ソロソロと紙袋を取り、地面に捨てながら辺りを見渡す。 レイル「………」 悠介 「………」 そこにはレイル。 ……いや、ほんとこいつじゃないのか? こう誰も居ないと不安になるんだが。 悠介 「誰か解るか?」 レイル「いや、それが全然。気づいたらお前紙袋被ってるし、なにがなんだか」 気づいたら、って……透明人間? いや、それじゃあこの紙袋を持ってる時点でバレバレだしな。 時間でも止めないかぎり───時間? もしかして彰利───じゃないよな。 じゃあ……やっぱり提督か! 悠介 「提督!?提督だろ!時間止めてまでこんなことして遊ぶなぁああっ!!」 思ったことを素直に口に出してみた。 すると聞こえる声……! 声  「ゴヘヘハハ愚かめ……!この博光、時なぞ止められぬわ……!     時の属性を手に入れることで可能になったのは、     スロウ、ヘイストと時空剣技とエターナルブレイド、そして時間滅消だけなり!」 悠介 「愚かめ!?愚か者めじゃなくて!?───つーか時間滅消!?」 声  「時間を飛ばすことです!     でもその中で自分が動けるわけでもないのであまり多用は出来ません!     俺が時を止められるようになるのは灼闇レベルが9になって、     カルキに属性を託せるようになってからさ!だから僕に時間停止なぞ無理!     だからワシもう幻海……」  ドグシャズザザザザーーーッ!!!! 悠介 「うおおっ!?」 異変が起きてから約30秒ほどだろか。 突如目の前を横切った提督が地面を顔面で滑走し、止まると同時に動かなくなった。 悠介 「…………て、提督〜……?」 ……え?なんだこの状況。 もしかして、目にも留まらぬ速さで走りながら行動してたとか……そんなことないよな? 声  「ふははははは……それについては俺が説明しよう……!」 悠介 「今度は誰だよ……」 閏璃 「俺だ」 閏璃だった。 普通に樹の根から降りてきて、ふう、と汗を拭ってる。 閏璃 「今日も暑いなあ」 悠介 「邪悪な笑いから入っておいて、普通に世話話されても困るんだが」 閏璃 「それは失礼。では本題だ。これを複製してくれ」 悠介 「マテ、それ全然関係ないだろ」 言いつつも、差し出される物体を受け取ってしまう。 見下ろしてみれば、それはうまティーだった。 …………話が進まないだろうから、とりあえずそれを複製して渡す。 容器を一緒に複製すると無駄な体力使うから、液体だけだ。 先に創造した大き目の容器にうまティーを流したものを、どすんと渡した。 閏璃 「多謝。で、提督だけどな。     実は肉体の音速化に成功して、それで遊び心を爆発させてたんだ」 悠介 「に、肉体の……音速化?なんだそれ」 閏璃 「“範馬刃牙”だよ。つーか紛らわしいよな〜この名前。     主人公のフルネームを漫画のタイトルにしないでいただきたい。     ……ともかくそれ。郭海皇がやってた腕だけ音速拳の応用だ。     腕のイメージだけで音速拳が可能なら、全身にもそれに適用する筈だ、って。     でもよっぽど集中しないと動体視力がついてこれないってんで、     実行可能時間は集中領域展開中の30秒だけだそうで」 悠介 「………」 ま〜た無茶苦茶な能力編み出したもんだ……。 けど実際にこの場で使われたんじゃ、無茶も信じられるってもんだ。 に、肉体の音速化か……これはまいった。 人器ってすごいんだな……。 俺も“光”を使えば高速行動は可能だが……ううむ。 これで時間停止まで使ったらどれほどのバケモンになるんだろうか、この人は。 でもそれとこれとは別なので、痙攣して動かない提督をみんなでボコボコにした。 ───……。 ……。 ぺぺらぺっぺぺ〜♪ピピンッ♪《レベルが上がった!》 総員 『……風が……気持ちいいな……』 そうして提督を屠ること数分。 俺達は再び上がったレベルに笑みをこぼしながら、 夏の日に吹く風に溜め息ひとつ吐いていた。 レイル「いっそ提督さんに協力してもらって、レベル稼ぎでもしないか?」 総員 『バルバトスが出るからダメだ』 レイル「そ、そうか」 同じ箇所で延々レベル上げなんていう下劣な行為をすれば、きっとヤツは現れるだろう。 彰利 「ふう、やっぱり無抵抗の中井出を屠るのは最高の気分だぜ」 悠介 「お前普通に最低な……」 藍田 「協力した晦が言っても説得力ないって」 閏璃 「そもそも提督さんがすんでで止めてくれなかったら、     今も俺達を睨む亜人族たちと全面戦争になってたかもなんだ」 彰利 「話の流れからいきなり外れたけどその通りさ」 確かにその通りで、止めている提督を後ろから襲ったのは彰利だ。 うん、あれは普通に外道だった。 なぜ提督からの反撃がなかったのかといえば、 全身音速化は必要以上に体に負担がかかるらしく、 エンペラータイム2分30秒の時間を残した提督は、 ほぼぐったりモードで動かなかった故だ。 だが人間は順応の生き物。 回路・順応を以ってして、人器まで解放してれば順応も相当早いに違いない。 いつか、30秒経っても平気で襲い掛かってきそうで怖い。 中井出「やあ」 そして、コロがされたっていうのにえらく普通に現れる提督がひとり。 ……ほんと、この人はどこまでもマイペースだ。 閏璃 「よし、じゃあ俺、ドリ姉さんにこれ飲ませてくる。     ───と、その前に。これと同じのもう二、三個いいか?」 悠介 「……うわばみでも居るのか?」 閏璃 「まあまあ、ささ、どざーっと」 いや、いいんだけどさ。 ……。 そして、閏璃が要塞に戻ってしばらく。 俺とレイルは提督たちと座りながらの談笑をしていた。 悠介 「それで、結局どうしたんだ?こんなところまで」 彰利 「悠介のステータスを一本に絞りましょう大会」 悠介 「……?なんだ?それ」 藍田 「ドリアードが居るんだ。過去の時代の、初代ドリアードな?     そいつがさ、経験した物事……熟練度だな。を、振り分けてくれるんだ。     ちなみに俺は全ての熟練度を足と錬気に移動してもらった」 彰利 「アタイは拳と錬気YO」 中井出「そして俺が人器に全て」 藍田 「さあ……」 彰利 「今夜のご注文は……」 中井出「どっち!?」 どっちとかそういう問題でもない気がするが。 けど……そっか。 それなら俺は剣術だな。 彰利 「やっぱ槍と剣と体術と弓と、ってそげな感じ?」 悠介 「いや、剣一本に絞る。創造は月の欠片がないと上達しないから度外視だし、     弓はメガレールがあるから平気だ」 彰利 「おおナルホロ」 悠介 「というわけで提督。猫たちに武器のことを頼みたいんだけど……仲介、いいか?」 中井出「うむ。武具を愛する人は心強き人。お任せあれ」 うむと頷く提督に、抜き出したラグと有り金全部を渡す。 提督はそれを受け取ると立ち上がり、確認するように言ってきた。 中井出「他のギミックを全部封印して、その分の力を剣モードに回せばいいんだな?     剣とブレードオープンだけ残して」 悠介 「さすが提督、解ってるな」 中井出「任せてくれたまえ」 そうして要塞へと歩いてゆく提督を見送る……と、 入れ違いに幸せ顔の精霊と、それを連れた閏璃が現れた。 閏璃 「お待たせだ。さあ、貴様はなにを伸ばしたい!」 そして、自分が偉いわけでもないのに我が物顔でそう語る閏璃。 ……なるほど、確かに彼は入る中学を違えたのかもしれない。 こいつが原中に居たら、さぞかし意気投合できただろうに。 悠介 「他の熟練度を削って、剣術だけ伸ばしてくれ」 精霊 『はいは〜〜い……お安い御用ですよ〜……』 幸せすぎて声がとろけてらっしゃった。 しかし能力は本物らしく、俺の経験の全てが剣術へと回されるのを感じた───! 悠介 「……こ、これは……すごいな……」 彰利 「や、つーかキミいいの?     てっきりアタイ、射撃術とかも上げてもらうと思っとったのに」 悠介 「なに言ってんだ、一つを極めるって決めたのにいきなり浮気してどうする。     メガレールもそりゃあ射撃だろうけど、そんなの集中でなんとかなる。     当たらなくても余波がぶつかれば、それで十分だ」 彰利 「そうよねィェ、やるって言ったらとことんさ。寝ても覚めても体術体術!     他のことになぞうつつを抜かすは体術家の恥YO!     そんでね?いつか指弾を撃てるようになるの。戸愚呂みたいに。     そうすれば体術で遠距離をカバー!     ガトリング並みの指捌きで敵を仰天させるのさ!     月操力も体術扱いになってからは、     月パワーが原動力じゃなくて、気が原動力になったし。     まさに体術を極めんとする者を暖かくさせる状況がやってきたの」 そうなのか、と、俺も数少ない月操力である月蝕力を見てみると、 何故か剣術スキル扱いになっていた。消費するものは剣気……らしい。 ……どうしろと? あ、あー……剣気、は……敵を剣で切りつけることで上がっていくもの?……らしい。 説明書きがしっかりとあったが、そんなものだそうだ。 創造月操力なんかも、しっかりと剣術スキルだ……。 月鳴力なんかはブレードオープンモードの時に助かるから嬉しいが。 中井出「やあ」 総員 『速ッ!?』 なんてことを考えてると、ラグを手にして戻ってくる提督。 いや……速すぎやしないか? と目で語ったら、あっさり終わったとコンタクトしてくる提督。 中井出「というわけでこれが約束のブツさ」 悠介 「あ、ああ……」 ごしゃんっ、と受け取ると、 それはひどく今の自分にしっくりときて、持つだけで安心できた。 悠介 「………」 早速ギミックに意識を向けてみるも、弓化も槍化も発動せず、 ブレードオープンだけが……あ、あれ?発動しない。 中井出「ブレードオープンは伎装砲術(レンジ/アロー)だ。     こう……こう書くアレな?弓じゃなくて砲だ」 悠介 「そ、そか……伎装砲術(レンジ/アロー)」  ゴシャンッ! 唱えるや、剣の中心が割れ、浮き上がるように平行に柄の装飾に嵌る。 そうすることで刃と刃が固定され、定規を二つ並べたような平行なカタパルトが完成。 意識すると、その隙間に高圧縮の電磁波が出現。 放つイメージを解放するや、柄と刃身の狭間に埋め込まれた宝玉が光り、 刃の間に蓄積された雷をレーザーとして解き放つ。 ……それは空を裂き、雲を螺旋状に引き裂いて、やがて見えなくなった。 悠介 「………」 彰利 「威力……上がった?」 悠介 「上がってる……な」 ギミックを削ったからだろうか。 威力は確かに向上していて、 見てて気持ちがいいくらい真っ直ぐに、雲を引き裂いてくれた。 見ればラグの形状が変わっていて、 今更だけど前まではなかった宝玉がひょっこりと存在していた。 雷の宝玉、って感じで、綺麗な透明の球の中に、荒れ狂う雷があったりする。 時折ピシャゴロロォ!と唸りを上げてる。 ううむ、まるで雷獣でも封じ込めたかのような轟き方だ。 ……まいったな、ほんと猫たちの技術には脱帽だ。 いったいどんなことをすればこんなことが出来るのかは知らないが─── 中井出「あ、ちなみに渡された金全てを以って、その強化が成されたからおつりは無しだ」 悠介 「そ、そうか。全部全部!?」 中井出「うん全部」 悠介 「ままま待て提督!     あれはギミック解除にいくらかかるか解らないから渡しただけであって、     なにも全部使って強化しろだなんて……!」 中井出「馬鹿者!武具に金を使わずしてなにが冒険家か!     というか僕に渡した時点で全て使われるって予想が出来なかった貴様の負けだ」 彰利 「負けじゃね」 閏璃 「負けだよなぁ」 藍田 「負けだな」 レイル「負け確定だな」 悠介 「………」 …………思わぬところで旅費が尽きた。 あぁああ……俺の馬鹿俺の馬鹿ぁあ……どうするんだこれからぁあああ……!! 悠介 「ぐあああ……おかしいと思ったんだ、なんかやたらと強化されてるし……!」 中井出「やったな!」 悠介 「やかましい!!」 ど、どうしよう。 どうすれば─── 中井出「グエヘヘヘ今こそモンスターキングの本領発揮だ晦グオッフォッフォッ……!!     人里を襲って金を巻き上げるのだ……!     なぁにチョロイもんよ貴様の力ならなブヘヘハハハハ……!!」 悠介 「囁く悪魔みたいに言うなぁあっ!!」 彰利 「キミなら創造でいろいろ出来るっしょ?金なんて気にすることねーべよ」 悠介 「…………それもそうか」 彰利 「うおう、てっきりアタイと同じく、能力に頼るのは〜とか言うと思ったのに」 悠介 「そういうの気にしないことにしたんだ。やりたいようにやるさ」 言って、握り飯を創造するとそれを口に頬張り、咀嚼して飲み込む。 ついでに創造した“アアアアェイ゙お茶”を飲んで一息。 彰利 「キャアなにそのお茶!新しい銘柄!?」 悠介 「いや。空界で栽培した茶葉だ。名前もない茶葉だから、勝手に名前つけた」 彰利 「なになに?え〜……アアアアェイ゙お茶!?なにこれ!     ……《ぐびり》……うわ……なにこの敗北感……無駄に美味ぇ……」 悠介 「なにに負けたんだよお前は」 藍田 「どれどれ……《ぐびり》……うわ……なにこの敗北感……」 閏璃 「なにぃ、飲んだだけで敗北を知れるだと?     そんな馬鹿な話が《ぐびり》……うわ……なにこの敗北感……」 中井出「あ、僕にも。《ぐびり》……すんません調子こいてました僕の負けです……」 悠介 「なんなんだよお前らは!」 レイル「なにか悪いイメージでも乗っけたんじゃないか?《ぐびり》……すまん」 悠介 「だからどぉおおして謝るんだよ……!」 ヘンなイメージなんて混ぜた覚えもない。 ないのにいったい何事なんだ、これは。 中井出「……とりあえずドリ姉さん。これをどうぞ」 と、創造したイメージを思い出していた頃、 視界の隅で提督がアアアアェイ゙お茶を精霊(どうやらドリアードらしい)に飲ませてた。 ドリアード『……おっ……お茶……!?これがお茶……!?まさか……!       緑茶が、緑茶がこんな味を出すなんて……!』 中井出  「うまティーとどっちが美味しい?」 ドリアード『うまティーです《きっぱり》』 中井出  「イエーーーッ!!」 彰利   「うまティーイエーーーッ!!」 藍田   「どーだ見たかワリャワリャー!!」 閏璃   「勝利だ!うまティーの勝利だ!」 中井出  「今まさに僕らの敗北感が払拭された!真の勝者はうまティーだ!」 レイル  「負けたのは事実だけどな……」 中井出  「あ……うん……そうだね……」 彰利   「そうね……」 藍田&閏璃『ほんとそう……』 アアアアェイ゙お茶はよく解らんが勝ったらしい。 ……どういう問答だったのか、騒ぐだけ騒いだ提督たちは、明るさもどこへやら。 すっかり意気消沈状態になってしまっていた。 中井出「えー、というわけでちゃっちゃと進めましょうね。     晦一等兵!貴様はここで、エルメテウスのコアを探していると見た!OK!?」 悠介 「い、いきなりだがOK!」 中井出「うむよし!では───《ジャキガシャンッ!ザコォンッ!》」 霊章から双剣を取り出し、長剣にし、地面に突き立てる提督。 それから目を閉じて意識を集中させると、突然クワッと目を見開いて……レイルを見た。 中井出「コア、彼が持ってます」 悠介 「なにぃ!?」 閏璃 「貴様いつの間に!」 レイル「へ?コ、コア?……って、もしかしてこれか?」 コシャッ、とガラス玉を渡してくるレイル。 そういえば俺が土偶と戯れてる時、それっぽいものを発見してたような…… そう思いながら分析をしてみると、確かに“エルメテウスのコア”と出た。 ……ただしところどころに破損が見られ、今の俺の複製・創造では復元は不可能とくる。 中井出   「それがコアか。よし、直そう」 悠介    「いや、それがちょっと無理そうで───」 中井出   「彰利〜」 彰利    「オウヨ!!」 悠介    「……へ?あ、彰利?提督……?なにを……」 中井出   「大丈夫!」 彰利    「俺たち三人が一緒なら!」 中井出&彰利『壊せぬものなどなにもない!!』 悠介    「………」 マテ、なにをするつもりだ。 そう言うつもりが、心の中に熱い何かが燃え上がるのを感じた。 それは……高揚、だろうか。 子供心に火がついた、みたいなものとは似ているようで違う。 そんななにかが今、確かに─── 悠介 「………」 目の前の二人が、手を差し伸べる。 俺はそれを……ガラス玉を宙にほうってから、空いた手と手で掴み取った。 どんなことをするのか、どんなことが起こるのかなんてどうでもいい。 ただ、こうすれば───そう。 なんでも出来るような気がしたんだ。 たとえばそう、幼い頃……自分たちはきっと無敵なんだ、 なんて……無駄に自分を美化して笑った無邪気な少年のように。 俺が片手ずつ、提督と彰利の手を取ると、提督と彰利もまた、手を伸ばして繋ぎ合った。 そして、 彰利 「月影力発動!影を通して我らに等しき愛を!」 中井出「連結確認!人器解放100%&マグニファイ&エンペラータイム!!」 彰利 「オーライ影を通しての力の受け渡し完了!     続いてオイラのターン!デスティニーブレイカー!     今の悠介の想像と創造、分析と複製の限界値を破壊しろ!!」 悠介 「───ってまさか!」 中井出「うむ!」 彰利 「そのまさかよっ!!───やれ悠介!     くだらねぇ運命も常識も、俺と中井出が砕いてやる!」 中井出「だからお前は───創造原理をぶち壊せ!」 悠介 「───!」 とくん、と。 心の中の最後の氷が、溶けた気がした。 ああ、そうだ。 少数だけでもいい。 裏切られたって構わない。 心を、本当に心を許せるヤツが居るのなら、どれだけ悲しみを背負ったって前を向ける。 それはとても怖いことだけど、同時に暖かいことでもあるのだ。 相反するものがあるのなら、きっと歩けるだろう。 挫けることなく、前へ。  ……行こう。  俺達三人が居れば、どんな困難だって越えていける───! ……覚悟、完了!! 悠介 「想像開始!イメージ蓄積!分析開始!     想像より創造へ至り、分析より複製へと至る!     我が意思は無限の自由!我が思考は創造への標!     出来ないことなど皆無と知れ───想像に勝る自由などない!     故に想像から創造へ至ることさえ自由とする!     ───創造!超越・凌駕にて解放!!」 ビキィッ!と視界が軋む。 だが構うもんかと吐き捨て、 破壊された既存とルールの中で、創造を確かなものへと構築していく。 オリジナルに近づけるつもり?元通りとまではいかない?超越も凌駕も使えない? だったら───そんな原理も運命も常識も、全部俺達の手で破壊してやる!! 悠介 「“創造の理力”(フォースオブクリエイション)!!」 頭の中に散々と蓄積されたイメージを、吐き出した言葉とともに全て解放する! 無理なんてことは知ったことじゃない! いや!知った上で無視して突き進む! 中井出「えーと……狂系脈!!」 悠介 「《ドッコン……!》ぬおっ!?な、なんだ!?感覚が研ぎ澄まされて───」 中井出「ゆけ!晦一等兵!イメージが纏まらんのなら、無理矢理纏めろ原ソウル!     足りぬものなど支え合えばよいのだ!」 彰利 「キョホホ!その通りよ〜〜〜っ!だからやっちまえ!     つーかそろそろ既存破壊しっぱなしが辛い!早くして親友!」 悠介 「───」 集中だ、集中しろ。 この感覚を糧に、もっと集中を─── 中井出「えーと……集中領域!!」 悠介 「《ゴキィイイーー……───ィイ……ン……》───へあっ!?」 何事!?いったいなにが……うわなんだこれ! 物凄く冷静に、負担もなしに頭の中が整理できる! 中井出「30秒間のみの奥義、集中領域である!さあいけ!」 彰利 「大丈夫!キミなら出来る!!」 悠介 「提督……彰利……」 余計な音が無くなった世界。 落下してくるガラス玉のコアが止まって見えるくらいの景色の中で、 俺はそのコアをくまなく明確に分析し、頭の中に叩き込む。 そうしてから超越、凌駕のイメージを上乗せし、より強靭に文字列を書き換え、 そして───そしてぇえっ!! 悠介 「う……おぉおおおおおりゃぁあああああああっ!!!!」 それらのイメージを爆発させるように解放! すると集中領域とやらは30秒経たずに効果を終え、 落下してきていたコアは空中で停止───後、 地面にばら撒かれていたボ・タの残骸を吸収し始め、カタチを作ってゆく! 中井出「おっ……おぉおおおお!?」 彰利 「成功!?成功かね!」 閏璃 「さ、さあ!説明してくれたまえ山岡くん!」 悠介 「誰が山岡だたわけ!」 閏璃 「たわっ……!?」 見上げる空が大陸で覆われてゆく。 砕けていたものがコア───“浮遊石”の力によって掻き集められ、 10年の時を越え、今再び大陸のカタチへと戻ってゆくのだ。 気分悪そうにぐったりしていたジャミルも、 それを見たらジッとなんてしていられなかった。 飛び上がるようにこちらへ駆けてきて、 レイル「飛び込んでこーーーい!!《マゴシャア!!》ハルペェーーーッ!!!?」 両手を広げて待ち構えたレイルの顔面にジャンピングニーパッドをキメた。 ジャミル『王!聖地が───エルメテウスが蘇ったのですね!?』 悠介  「あ、ああ……ていうかレイル大丈夫か……?」 彰利  「長門式膝シュートを食らったキョンくん以上に顔が歪んどったよ……?」 顎が外れたみたいな顔で、地面に転がる男を見る。 ……うん、多分大丈夫だろう。 確信もてないからほっとこう。 ……。 ……形作られてゆく聖地を見ながら、筋肉痛に襲われる時間が過ぎてゆく。 なんのことはなく、コロがす相手も居なかったための地獄の時間である。 それもそろそろ終わるって頃なんだが、 なんの悪戯なのか、治りかけの頃が一番痛かったりするのは管理者たちの遊び心なのか? 悠介 「《メキメキメキメキ》いばぁがががががが……」 うん、今までこんな筋肉痛は、サウザンドドラゴンの時以外味わったことがない。 まず動けないな、うん。 中井出「ふっ……ふふふふ……ふうふふふ……」 閏璃 「おお!仁王立ちしながら涙を流して笑ってる!なにがしたいんだ提督さん!」 彰利 「おがが……痛すぎて動けねぇのよ……!     どうせなら倒れて無駄な筋肉使わないようにしたいのに、     痛いからアクションを起こせない……でも立ってると足の筋肉とかが痛い……」 閏璃 「おお、それは確かにきつそうだ」 藍田 「能力使って筋肉痛……あ、そういや、     サウザンドドラゴン戦でもそれっぽいことがあったようななかったような」 彰利 「その質問の答えは4000年前に通過してるから忘れようね。     父さん耳にタコだよ」 悠介 「4000年前は関係ないけどな」 中井出「うし!峠は越えた!さあ行こう!───とその前に。晦一等兵!」 悠介 「《ビシィッ!》サーイェッサー!!」 中井出「これより我ら亜人族は貴様らモンスターユニオンと同盟を結ぶこととなるが、     それは一向に構わんかどうかを訊ねる!如何かッ!!」 悠介 「サンキューサー!異論はないであります!」 中井出「うむよし!では貴様はこれからなにをするつもりなのか!」 悠介 「イェッサー!モンスターたちを迎えに行きますサー!     のちに獣人たちと会い、そちらにも協力が得られるかを確認します!サー!」 中井出「うむそうか!」 彰利 「や……つーか大丈夫なん?獣人族っつーたら……」 彰利が困ったような顔で中井出を見る。 そう、獣人族の大半は元原中の猛者ども。 意味もなく、無駄な正義感から提督を毛嫌いしている馬鹿どもだ。 けどそれとこれとは別だ。 提督はもう受け入れてるし、気に入らないことがあれば自然な行動を取るだろう。 なにせ提督だ。 むしろ俺はそういったものを見たくて、こうして提案をしたのかもしれない。 彰利 「あー……中井出や?獣人族、キミにだけとてもやさしくないかもしれんけど。     それでもOKなん?」 中井出「やられたらやり返します」 悠介 「決まりだ」 彰利 「そうね」 藍田 「ほんとそう」 当然じゃないか。 なにせ彼は天下の原沢南中学校迷惑部が部長にして提督、中井出博光なのだから。 油断大敵をモットーにしてるくせに結構隙だらけで、 強いくせに弱いというワケの解らん地界人!それが僕らの提督だ! そんなわけで同盟を明確化するために、証明書を創造。 自分のと亜人族側の分を創り、一方をジャミルに、一方を提督に渡した。 中井出 「じゃ、まず亜人族たちに話通してくるね。ジャミちぃ、キミは同盟に反対?」 ジャミル『みょっ……妙な呼び方はやめろ!ジャミルだわたしは!      ……王がそれでいいというのなら反対はない。      ないが……本当に強いのか?貴様』 彰利  「いや。この世界でヘタすりゃ最弱」 中井出 「そうだ《どーーん!》」 ジャミル『胸を張れることなのかそれは……。      王、こんな男と同盟を結ぶ意味がどこにあるのです』 悠介  「面白いからだ!!───ってこらこらこらっ!      人が創造した同盟書を破ろうとするなっ!」 ジャミル『そんな理由の同盟など不必要!面白いだけで弱い者など要りません!』 彰利  「《テコーン♪》だったらジャミちぃ、実力行使で排除しちゃえば?」 閏璃  「《テコーン♪》それはいい考えだな!」 藍田  「《テコーン♪》是非やりなさい!」 ジャミル『……貴様ら仲間じゃなかったのか?』 三人  『仲間だとも!!』 ジャミル『………』 困惑のジャミル。 だが、それもそうだなと頷くと、手に剣を出現させて鋭い目で提督を睨む。 中井出 「あ、あれ?なに?」 ジャミル『弱いヤツなど要らない。      どうしても同盟を結ぶというのなら、わたしに勝ってからにするんだな』 中井出 「やだ」 ジャミル『フフ、では行───なにぃ!?……ま、待て。貴様今なんと言った……!』 中井出 「やだと。なんで僕の行動を貴様に制限されなきゃならんのだ。      僕はやりたいと思ったらやる男なんだ。そこには貴様の意思なぞ関係ねー」 ジャミル『んなっ……貴様協調性という言葉を知らんのか!』 中井出 「え?知ってるよ?知ってても実行するかなんて人の自由じゃないの。      なに言ってるのかねこのトルネード角女は」 ジャミル『トルッ……!?き、ききききぃいさぁああンまぁあああああっ……!!』 剣を硬く握ったジャミルがいよいよ攻撃に移ブファゴォッシャアンッ!! はい、一撃。 中井出「じゃ、僕亜人族と話つけてくるから」 総員 『おう行ってらっしゃーい』 爽やかに手を挙げた提督が、要塞の中へと戻っていった。 ……さて。 悠介 「……どうしたもんかな、この轢死しかけてる蛙みたいなジャミルさんは」 彰利 「いや〜ンあ、容赦なしだったねぇ〜ィ」 藍田 「うわっ……地面にクレーター出来てるぞ……?」 閏璃 「叩き付けナックル一発だったな……」 けど死んでないところはさすが提督か。 回復の霧が出ます、弾けろ、と。 ジャミル『う、うう……うぐぐうぅ……』 あ、起きた。 ジャミル『───ハッ!?わ、わたしは───』 悠介  「一撃で敗北した」 ジャミル『なあっ!?い、いえそんなまさか……!!      い、一撃……!?一番弱いと言われた男に……!?』 彰利  「起きたヤツに間髪入れずに敗北宣言するなんて、キミもやるねぇ」 ジャミル『認めん!なにかの間違いだ!───王!ヤツはこの要塞の中ですね!?』 悠介  「おー」 ジャミル『っ……ぬおおおおおおおっ!!!!』 ジャミルが突貫していった。 あーあー……これからって時に、そんな血走った目で入っていったら─── …………。 声  『やめろぉおおお!うわぁああやめろぉおおおおっ!     やめっ……いやぁああやめてぇええええええっ!!!!』 少しののち。 要塞の上部からジャミルの悲鳴が聞こえてきた。 しかもいつもの威張った……といったら聞こえが悪いが、 貴族っぽい口調じゃない、歳相応の女性の悲鳴というか……そんなのが。 そんなことを考えていると、要塞からぺいっと捨てられた何かがゴシャアと落下してきて、 見ればそれはジャミル……あ、あれ?ジャミル……だよな。 どうしてかその事実を否定したくなるような…… ジャミル?『う……うぐっ……ひくっ……うぅう……!』 泣いているジャミル?を見て頭に浮かぶのは、 どうしてか“奇跡ソルジャー・ミラクルY藤堂”という名前だった。 ……何故? ミラクル藤堂『おっ……王……!ヤツは……ヤツは本当に弱いのですか……!?        それともっ……それともわたしが弱いのでしょうか……!』 彰利    「調べる発動!……奇跡ソルジャー・ミラクルY藤堂は楽な相手だ!」 藍田    「……あれ?ジャミルじゃなかったっけ」 閏璃    「えーと……奇跡ソルジャー・ミラクルY藤堂……だな」 悠介    「………」 彰利    「あ、解った」 悠介    「俺もだ……」 恐らくリネームだ。 提督がリネームのスキルを使って、ジャミルの名前を変えやがったのだ。 彰利    「ええと……ご愁傷様、奇跡の藤堂さん……」 閏璃    「提督さんに真っ向から挑むなんて……馬鹿だな、奇跡の藤堂さん……」 藍田    「ヘタなことしなければ、        こんなことにはならなかっただろうに奇跡の藤堂さん……」 ミラクル藤堂『黙れうるさいやかましい!わたしはジャミルだ!ジャミルと呼べ!』 彰利    「なんだと藤堂てめぇ!てめぇは藤堂だろうが藤堂てめぇ!」 藍田    「そうだ藤堂てめぇ!        調べるやってちゃんと藤堂なんだから藤堂だろうが藤堂てめぇ!」 閏璃    「そうだ藤堂てめぇ!てめぇは藤堂なんだから藤堂って名乗らなきゃ藤堂って        つけてくれた人に失礼だろうが藤堂てめぇ!!」 ミラクル藤堂『だっ……黙れぇえええ!!うわぁああん黙れえぇええっ!!!《ダッ!》』 彰利    「あっ!藤堂が逃げた!」 藍田    「何処に行く気だ藤堂てめぇ!」 閏璃    「まだ話は終わってねぇぞ藤堂てめぇ!!」 ミラクル藤堂『名前を戻してもらうだけだ!今に見てろ貴様ら!        すぐにわたしのことをジャミルとしか呼べなくしてやるからな!』 彰利    「卑怯だぞこら戻れこら藤堂!!」 藍田    「てめぇは藤堂なんだから戒名したら藤堂じゃなくなるだろうが藤堂!!」 閏璃    「戻ってこいコラ藤堂ーーッ!!」 ミラクル藤堂『黙れえぇえええええっ!!!』 藤堂が走ってゆく。 飛行した方が速いのに、そうしないのはよほどに焦ってたからだろう。 そして、僕らが藤堂を待っていると、 予想通りさっきと同じように高い位置から投げ捨てられる藤堂。 脇腹から落ちて、ゴフェエ!ってヘンな声出してた。 ミラクル藤堂『うっ……うっ……うぇえええ……』 ていうか泣いてる。 マジ泣きだ。 彰利 「アルティメットアイ!!《パワ〜〜〜ッ》………………ごめん……」 悠介 「へ?彰利?」 早速調べるを発動させた彰利が、顔を背けて謝った。 次いで、藍田、閏璃も首を傾げながら調べるを発動させたんだが─── やっぱり顔を背けて謝り出した。 悠介 「………」 埒も無し。 俺は覚悟を決めて、藤堂に向かって調べるを発動させた。 すると───  魔法少女ミラクルY藤堂は楽な相手だ! ………… 悠介 「すまんっ……調べたりしてっ……!知らなかったからっ……!」 謝るしかなかった。 提督……提督よぅ……これはいくらなんでも痛い……痛すぎるだろ……! 少女ってレベルじゃないよ……この容姿で魔法少女は痛すぎる……! 藤堂の涙も、彰利や藍田や閏璃の微妙な顔を理由が痛いくらいに解ってしまった…… そんな、穏やかな夏の日の出来事だった。 Next Menu back