───冒険の書290/ブローノ愚痴ャラティ───
【ケース730:弦月彰利/ポックリ大魔王に愛の手を。こう、風紀的に】  ゾボガガガガガガキュンキュンキュン!!! 彰利 『ウェーッハッハッハ!!つええー!つよすぎんぜこいつはー!』 エルメテウスの大地の上でバレットウェポンズを駆使してロボの排除! エンペラータイムの素晴らしさに、思わず涎を垂らしながら歓喜乱舞! キャアもうどうしてくれましょうこの能力!アタイも欲しい! 彰利 『ところでねぇミク!?人を駒のようにしか思ってないヤツが、     たった1、2回裏切られただけで     “裏切ったなスザクゥウウウ!”とか叫ぶのってどうなの!?』 ミク 『質問の意図が理解しかねますが』 彰利 『や、過去にあったコードギアスってアニメの話なんだけどね!?     一人のキャラに執心すると絶対に曲がった目でしか見れなくなるステキアニメさ!     好きなキャラなど作らず、静かにストーリーだけを楽しむことを強く推奨!     じゃなきゃコメントするその人までもがほんとにウザくなるアニメさ!     ちなみに俺は、奇跡の藤堂さんさえ居ればなにも要らなかった原中代表です』 何故ああまで気に入ってたのか今では謎だが、それでも好きだった。 好きだからって贔屓したことは一度としてないんだが。 ルルーシュもスザクもカレンもジェレミアも要らん!ティーセンもいらん! ただっ……ただ奇跡の藤堂さんさえ居ればそれでよかった!……物語になんねーけどね。 ウザいヤツは素直にウザいと認めて、 ほんと素直にストーリーだけ楽しむべきアニメの代表だと思うねあれ。 ミク 『ウザ……?それはどういったウザさだったんですか?』 彰利 『ブリタニア人を匿ってたくせに、     ゼロはペテン師だったと断言した扇さんの外道っぷりがウザかった。     今までを指揮してくれたヤツを売り払って、     自分は日本と彼女とリーダーっぽさをゲットでウハウハっすよウヒャハハハ!!』 かつてあの回が放送された日、俺は本気で扇に殺意を抱きました。 ルルーシュからの誘いが無ければ、 あそこまで大掛かりな反ブリタニア運動なんて出来なかっただろうに。 けどまあ今となっては善き思い出。 扇さんはああいう立ち位置だった、と理解できれば、 そういうストーリーの世界だったんだから当たり前だって頷ける。 ゲームや漫画や小説が作られる過程ってのは、なんでも誰かの思考から出るもんさ。 それを自分の思い描いたように上手くいかないからって、 全部を嫌いになるのはもったいない。 よって、よ〜するに全部好きになっちまえばいいのだ。 嫌なキャラも、この嫌っぷりがステキだ!みたいに。 たとえばいずれ自分が監督かなんかになったとして、 自分が考えたストーリーを“視聴者だから”って理由で、 頭ごなしに否定される様を思い描いてみれば……うん、 その時の自分の心境なんて簡単に見える。 自分だけが特別、なんて意識は持ってたところでつまらねーしね。 じゃあお前が考えてみろ〜とか言われたら、それこそ無茶だ。 プロなんだからなんとかしてみせるべきだろ〜とか言ったって、 結局は同じニンゲンなわけだ。 数ある漫画やアニメや小説やゲームは、誰かの頭の中のストーリーなわけで。 それひとつひとつに自分の願望ばっか押し付けて文句飛ばしたって、 そりゃいつまで見ようがいつまで読もうが好きになれる筈もなく。 そんなやつがこれは傑作だ〜とか言って作ったなにかが編集者にボツ食らえば怒るわけで。 そんな時にそいつが、 “こんな世界で先人は漫画とか完成させてたんだな〜”とか思ってくれれば、 俺はなんとなく嬉しいわけですよ。 自分が頑張って考えて暖めて作ったものが否定されるの、気分悪いよね。 でも見てもらってる限りは批判だって酷評だって付き物のわけで。 それを覚悟して出してるのがプロなわけで。 けどまあ、それでも否定ばっかしてやるのはもったいないと思うわけだ、僕らは。 だから嫌いになりそうだったら、キャラではなくストーリーを見つめてみよう。 ストーリーがダメならキャラを見つめてみよう。 どっちもダメならいちいち触れるな!!それが男だ任侠だ! 彰利 『さあ!この思いを力に変えて!いくぜ奥義!滅びの劫火!エグゾートフレイム!』 運命常識ブレイクモードで黒から出現させたエクゾディア(レヴァルグリード)が、 しっかりと黒いエクゾディアとなって出現! 運命常識破壊を以ってしてようやく上半身だけなんだけど、 それでもここまで具現出来るところまで行ったぜ〜〜〜〜っ!! 彰利 『うぉうりゃファイアァッ!!』  ヴォンガガガガガチュゥウウウン!!! 突き出されたエクゾディアの掌から巨大な範囲レーザーめいたものが放たれる! なんのことはありますが、我が全力を込めて放つデュンケルヘイト・セロでございます。 …………でも効いてません!どうしましょう! 彰利 『あれ?アタイの全力がきかねー』 いや……ほんとどうしま───はうあ! そ、そういや悠介がレーザーと物理攻撃にはやたらと耐性があるとか言ってやがった! やべー!すっかり忘れてた! しっかり見てみれば、さっきまで攻撃しまくってた敵も無傷じゃねーか! モクモクが邪魔で見えなかった! 彰利 『ま、まさか一体も倒せてなかったとか、     そんなこと言うんじゃねーだろーな……。《ドキドキ……》     そ、そんなわけねーよな。たまたま敵の耐久力が高かったんだきっと』 とりあえず涎をたらしながらスマイルしておいた。 と、ポックリ大魔王チックはこのくらいにしておいてと。 とにかくレーザーと物理攻撃はダメだ。 それと熱に相当な耐性があると見ていい。 だったらどうするか?……やっぱ額の宝石破壊しかあるめーよ。 彰利 『だったらコレだね。オールエジェクトギミック!』 知りなさい!我が武器は肉体! 体術とは己の五体を武器とするもの! だからこの場合、エジェクトされるのは……あれ?アタイの体? なんてことはなく、予想に反して我が肉体から666体の魔物が解き放たれていった! 彰利 「お、おお!こいつぁあいい!……あれ?破面が消えてる」 南無 『ほねほねほね……!     オールエジェクトっていうことはこの南無もエジェクトされるということほね!     久しぶりの外の景色ほね!しっかり目に焼き付けるほねー!     ───目はないんですがね!ヨーーーホホホホホホ!!!ほね!』 レオ 『当然俺もだ。フッハッハッハッハ……己の肉体などどれほどぶりだ……!』 物凄い勢いで我が体から出てゆく者の中で、レオとか南無が出てきたのは驚きでした。 そんな中───スポーン♪ ダニエル『ハーイ♪』 彰利  「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?」 ムキムキの外国人男性、 ダニエルが出てきた時は本気の本気で心の底から悲鳴をあげました。 やっべぇえええええええっ!!ね、寝なくてよかったぁああああああ!! 今回は俺のところに居たのかダニエルの野郎!! ダニエル『ヘーイ、トンガリボーイ!マタ会エテ嬉シイネーイ!!』 彰利  「お、お前なんか僕の一部じゃないやい!      なんで出てくるんだよう!どっか行けよう!」 解るでしょうか。 吸収した覚えもない筋肉さんが外人が、自分の奥底から湧き出してくる恐怖! この時の僕のキョーフといったらもう! ……今日、麩の味噌汁。とか言ってしまうくらいのキョーフだったんだぜェエーーー!? ワーオほんとなのゥ!?マイケァォゥ!!……などと通販番組みたいなことやってないで。 OK、黒の中身を吐き出した俺は、いわば弦月彰利そのもの。 さて、そんな俺になにが出来る? 月操力の使用条件である死神と神の力も、レオが出たことで霧散している。 月の家系としての身体能力も、鎌も、なにもない。 それは─── 彰利 「…………まいったな。中井出ってほんとスゲェわ」 答えは、中井出を思い出したらあっさりと出た。 全てを吐き出した今、結局のところ俺は人間なのだ。 回路はないが、地界人と同じ。 レベルだけが高い、ただの人間だ。 だったら、出来ることなど一つなのだ。 彰利 「地界の回路がないから完全には引き出せないだろうけど───いくぜ。     人器、解放───!!」 システム・ツェルストクラングから人器をダウンロード。 意識を内側に向け、自分の中に眠る人としての機能を無理矢理目覚めさせる!! だが、そこに“器”がない。 最低限、人の器を働かせるための“地界の回路”がないのだ。 いや、あるにはある。……あった、と言うべきなのかもしれない。 とっくに死神側に染まり、地界のものとは色が変わってしまった回路が。 だから、半分も解放できない。 それがこの時の俺にはすごく辛くて……───辛いのに。 彰利 「───!?」 半分にも至っていないのに。 辛い筈なのに、その力は呆れるくらいに強かったのだ。 彰利 「…………」 もう解っていた。 人は人であるからこそ限界を突破できる。 死神だの神だの、最初から人より優れているものになど、限界の文字など見えはしない。 限界が見える存在だからこそ、それを乗り越えようと努力できるのだ。 神や死神が限界を超える、なんてイメージが出来るだろうか。 たとえば死神なら、死神としてなにを目標に限界を超える? 鎌の力か?身体能力か? ……いや。ただ掻き集めた力を合わせて、限界を超えたように錯覚するだけだ。 人にはその掻き集める力すらないのだ。 だから既にその時点で限界めいた壁を見せつけられている。 そこで諦めるやつらが大半で、先に進めるヤツなんて一握り。 そこを越えられたところで、すぐに壁があるのだから。 一生のうちでどれほど壁が破壊出来るだろう。 老いと戦わなければいけない人体では、寿命こそが限界突破を邪魔する。 神や死神のような長寿でもなければ、不老不死でもないのだから。 彰利 「………《ぐっ》」 見下ろした手を握り締めた。 体に力が沸いてくる。 半分にも満たないのに、100%にはほど遠いのに。 俺の奥底にあった筈の、過去の俺が立ち上がってくれていた。 ガキのくせに。散々と心を砕かれて塞がっていたくせに。 ただいつか、一人の親友のために、 何度自分が死のうがあいつの未来だけはと粋がっていた頃のように、 心は曲がってでも真っ直ぐに。 彰利 「……童心は強いな、中井出」 不意に流れた涙はなにを望んで出たものだろう。 そんなことを心に確認することもなく、俺は行動を起こしていた。 目の前に降りてきたロボ(モッドナイトとかいうらしい)目掛け、大地を蹴って疾駆。 するとその一歩が烈風となり、俺を一瞬にして敵の懐へと飛ばしてくれた。 ……すげぇ。 人体ってのはこんなにも奥深さを秘めているのか。 そう思うと同時に、 そんな呼吸法が自然と出来る人器ってやつの深さにこそ、一番驚いていた。 MN 『ギ───!』 モッドナイトが槍を構える。 それは確実に、速度から言えば俺の頭を貫く速さで振るわれた。 今更俺が構え、殴りかかったって弾こうとしたって間に合わない速さ。 それがバガパパパパパァンッ!!!! MN 『ギガッ───!?』 速度を追い越して反撃する、どころの騒ぎじゃない。 一撃どころか連撃を食らわせる速度を俺の腕が弾き出し、 光速回転する槍はナイトの手を離れると大地の上に重苦しい音を立てて落下した。 のちに、宝石を破壊されたナイトが崩れ落ちるのを、 俺はただひどく静かな思考の中で見下ろしていた。 彰利 「これが疾風……」 超速剣疾風斬。 音速には劣るのだろうが、一息で四連を可能にするそれが人器でブーストされた時、 その連撃は音速をあっさりと超えてみせた。 音速拳のイメージが俺の中にあったのも手伝ったんだろうが、 そもそも解放できる肉体稼動イメージのケタが違う。 以前は、動かない部分は無理矢理動かしてなんとかしよう、というイメージだった。 黒は、死神の体は、自分が思っているよりもそう上手くは動いてはくれない。 だっていうのに、今の弦月彰利としての体は、こんなにも自在に動いてくれる。 50%にも満たない解放で、黒を抱えていた自分よりもあっさりと敵を倒してみせた。 彰利 (ああ……俺は……) 俺は、いったい死神の体で、月の家系の体でなにを学んできたんだろう。 ただ能力ばかりを伸ばすことに必死で、空手の真似事だとか拳を極めるだとか、 そんな口ばかりを叫んでなにを粋がっていたのか。 ……学ぼう。 今の自分なら、きっと素直に受け取れる。 100%まで引き出せないのは、なにも回路だけの所為じゃない。 俺が人として、人体というものを下に見ていたからだ。 彰利 「すぅ……はぁっ───…………うん!」 キッと前を見た。 後、疾駆。 続々と迫るナイトどもの軍勢を前に、一歩も引くことなく走ってゆく。 即座に槍を振るわれるが、 それを回転方向と同じ力でいなし、同時に鋭く敵を見て“箇所”を探す。 どれだけ精巧に作られようが、それが人工であるからには完璧は在り得ない。 故に、───コンッ。がしゃあんっ! MN 『ギ……!?損傷、損傷……!右腕ガ《ゴギィンッ!》……ギ……』 腕の関節部分に中指の第二関節をぶつけ、徹しを通すことで接続箇所を遮断。 切断するとともに、そこに意識がいったナイトの額を徹しで内側から破壊してやった。 彰利 「すぅ……はぁ……!《キッ!》───来い、機械ども。     人間の“業”ってのを、てめぇらに教えてやるよ」 簡単に破壊された事実に情報を要し、混乱しているナイトどもを軽く睨み、言ってやる。 不思議と負ける気はしない。 しないが、ヤバくなったら逃げるつもりではある。 復活するからって今の命を大切にしないヤツは、きっとこの先、生きていけないから。 MN 『───反応、人間。ダガ脅威的ナ能力ヲ備エテイル。     コノ対象ノ消滅ヲ優先スル』 ガガシャンガシャガシャガシャンッ!! 彰利 「っ───チィ!」 一体の赤いモッドナイトがなにかを確認した途端、 白のモッドナイトどもが俺を囲むようにして地面に降り立った。 くっそレオと南無の野郎、もうちょいなんとか出来ねぇのかねぇ! ……って、あっちはあっちで物凄いことになっとりますがね……。 レオ 『安物の宝石で繰ること自体が既に間違いだ。     ……砕け、運命破壊せし漆黒の鎌。     このゴミどもの宝石が形を成している事実を』 そう口にし、レオが振り上げるはデスティニーブレイカー。 そこから放たれる黒き光を浴びた途端、 その周囲に居たモッドナイトどもの額の宝石が砕け、砕けた先から崩れてゆく。 南無 『ほ〜〜〜ねほねほねほね!俺の雄姿も見るがいいほね!     ハデスディザスター!死神王の鎌をコピーして再現するほね!』 骨野郎はそう叫ぶや否や、 鎌をキングクリムゾンにしてモッドナイトの存在自体を削り殺しにかかった。 ……おおう、彼ら鬼よ。悪魔よ。……ああいや、死神だ。 彼らがそうしている間にも、 他の666体の魔物どもがナイツどもを集団がかりでコロがしにかかっている。 一対一じゃダメでも、 多対一なら敵わないまでも宝石を削ることくらいは出来るってわけだ。 だったら、アタイはアタイの役割をきちんとこなせばいいだけのことYOね。 そんなことを考えながらナイツどもと戦っていると、 フと中井出になんぞか感謝の言葉でもなんでもかけたくなって、tellを飛ばした。 したっけ─── 声  『はい。こちら土木工事源子(どぼくこうじみなこ)ですわ』 彰利 「なにその聞くとお嬢様っぽい苗字のくせに、     漢字にすると思いっきり大工の源さんな名前!!」 声  『やはは、いやー、今ちょっとルミエールなもので、お嬢っぽくしてみましたの。     なんたらこうじ、ってついてるとお金持ちっぽいですわよね。だから』 彰利 「それで土木工事ってどうなんよ……」 普通、綾小路とかそっちのほうに行くと思うんだが。 それか、なんたら院とか。 声  『あ、じゃあ改めて。……コホン。ごきげんよう、玉泉院瀬瑠藻(ぎょくせんいんセルモ)ですわ』 彰利 「院がついてりゃいいってモンじゃねーべよ!!なにその葬式屋みたいな名前!」 声  『知らねーーよーーーっ!!』 キャア!?な、なんちゅうやっちゃ!逆ギレしよった! 声  『というのは冗談で、僕は、じゃなくてわたしは、でもなくてえーと。     あ、あたしは葬儀中にヘラヘラ笑う葬儀屋なんて大嫌いなんだからねっ!?』 彰利 「ツンデレっぽいのにマジで言ってるところが流石やね」 つーか敵に囲まれながらこんな話してるアタイもどうかしとりますね。 うん、でも体はひどく軽く動くので、そう苦にはなっていない。 彰利 「つーわけでセンキュー!システム・ミク、ありがたく使わせてもらってるぜ〜!」 声  『……その三日後、彼はゴミ捨て場で変わり果てた姿で』 彰利 「見つからんよ!?え!?なに!?この能力って使うと死ぬの!?     三日後ってなんでそげに具体的なん!?」 声  『質問は一つに絞りなさい!失敬な!』 彰利 「えぇ!?……あの……はい……」 なしてアタイが怒られてるんでしょう。 声  『システム・ミクはちと特殊でして。     ミクのエネルギーが尽きるまで解放状態にあるけど、     切れるととっても痛いから覚悟なさい?たとえ敵をコロがしても確実に痛いから』 彰利 「……なんですって!?」 声  『調子に乗って、人じゃないのに人器とか解放したら大変なことに!     ……あ、エンペラータイムとドラゴンインストールとかも言うまでもないからね?     個別にとっても痛いので』 彰利 「ぬ、ぬう!避ける方法は!?」 声  『まず骨法の構え!』 彰利 「!───むう!《ビシィ!》」 声  『そして向かってきた敵の攻撃を、左手を軽く添えるようにして───いなす!』 彰利 「ほりゃあっ!《スッ》」 丁度その時、敵が突き出してきた槍を、流れるような動作で軽くいなす。 声  『やったな!避けられたぞ!!』 彰利 「その避けるじゃねーよ!!つーかどこ!?何処で見てやがるてめぇ!!     でっ……出てこいセバスチャァアーーーン!!」 声  『わたしほどの常識破壊エージェントにもなれば、     貴方が今なにをしているかなど電波で解るのです。こう、風紀的に』 彰利 「ただの毒電波だから捨ててしまいなさいそんな知識」 声  『エージェントへのツッコミは無しですか。この最強トンガリコーン』 彰利 「最近トンガリとか言われてるからつい反応しそうになったけど、     髪型に関係ありそうで全く関係ねーよねそれ!」 声  『なんですか、もう』 彰利 「アタイが悪いみたいに溜め息吐くなコンニャロー!!」 誰からどんな電波受け取ってこげなことやってるのか知らねーが、 いろいろ慌ててるのは確かのようで。 いや、慌ててんのにフツーにからかってくる時点で既にフツーじゃねーわけだが。 彰利 「んでなに!!なんぞ冷静じゃいられない事態にでも巻き込まれとるん!?」 声  『…………あ、ああ……なん、だろな……実は、さ……グレイドラゴンが……』 彰利 「───」 気落ちした言葉回しに、ピンと来てしまった。 ようするに、上の方ではグレイドラゴンが既に─── 声  『シャモンを前にとろけるような顔で緩みきってます』 彰利 「死んでるんじゃないの!?なんなのキミはまったくもう!!     思わせぶりな声で語ってんじゃねィェーーーーッ!!」 声  『いやいやエビスもびっくりなくらい目尻が緩みきっててさ。     これ見ればほんと呆れるし動揺するって。     あ、ところで世界一のツンデレって誰だと思う?』 彰利 「海原雄山っしょ」 声  『その通りだと言わざるをえん』 馬鹿な話をしながらも一体一体確実にモッドナイトを潰してゆく。 面倒なことだが、だからって潰さないと大陸やモンスターが潰される。 彰利 「ほんで!?なして女になっとんのてめぇ!《ジョリィッ!》ヒィ危なや!!     グッ……グレイジャーゴンと女化となんの関係があんの!?」 喋ってる時に、ナイトの槍が我が頬を掠っていった! あ、危ねぇ……!もう少し踏み込んでたら頭がボッカリと……! 声  『いや、関係ないんだけど……あのね?ちょっと思い出しちゃって。     僕、イドの所為で女化が解けただけで、     ノートン先生とかに女化状態を解いてもらったわけじゃないんだよね……。     なもんだからちょっとスキル覗いてみれば、ちゃっかりありやがる女化能力。     ええ、つまり使ってみただけです。こう、衝動的に』 彰利 「ただ使ってみただけ!?遊んでんなら戻って来ォこのクソホッコォ!!」 ルミエ「これこれ、男子が斯様な汚い言葉を口にするものではござらん」 彰利 「だってアルェエ!?なにやってんのキミロボなんぞに化けて!」 ルミエ「え?いや……驚くかなーって」 散々殴り散らし、目の前から排除したロボたちの中、 一体だけてんで向かってこないヤツが居るからヘンだなーとか思っとったんじゃけど。 何故か得意顔で甲冑を脱ぐと、ニコリと笑うおなご中井出がおがったとしぇ。 ヘッドアーマーに納められていた長い髪をふぁさりと揺らし、 即座にポニーにするこいつは相当のポニー好きです。 ルミエ「ポニーテールが似合う女子は国家財産だ。俺の中で《バゴシュ》ぼどぅ!」 そして真顔でそう言った。 ああいや、照れてる。 照れはあるらしい。 その顔が無駄に可愛いからとりあえず殴っといた。 彰利 「きさーーん!!遊んでる暇あったらさっさとロボ壊しなさいアホンダラ!」 ルミエ「あ、ちなみにここで見てました。素晴らしい避け方だったのを覚えてます」 彰利 「今更さっきの疑問に答えてんじゃねィェーーーーッ!!って来たぁあああっ!!」 言ってる傍からロボの大群! どれほど量産しとるんでしょうねあのオーサマったら! 彰利 「どーすんのよこれじゃあ埒明かんぜ!?」 ルミエ「帝国行ってレイナート潰すしかないんじゃないかなぁ。     オッレーのパンチーはー!だいなまいとぉーーーーーっ!!!」  ぼがぁっぱぁああんっ!!! MN 『ゴガァアアアアアッ!!!』 彰利 「ゲゲェエエエーーーーーーッ!!!!」 人がっ……人が苦労して倒してる敵をっ……! 宝石破壊じゃなくて普通に破壊して壊しおった……! しかも拳一発で……! 彰利 「あ、あの……キミ何者?あげな硬い敵を……」 ルミエ「こう……ね?徹しで衝撃を内部に放つでしょ?     その放たれた衝撃にね?火属性とボマーを付加させるの」 彰利 「あ───あー……」 “衝撃”に属性付加なんて考えもしませんでしたが……。 ウ、ウヌウ!なんか悔しい! 彰利 「……ところでさあ中井出」 ルミエ「今はルミエールだが」 彰利 「そげなこたぁどうでもヨロシ。キミ見た時から言おー言おー思ってたんだけど」 ルミエ「え?なに?」 彰利 「……キョン子って呼んでいい?」 ルミエ「………………キョ……ン……?なにそれ」 思い切り疑問顔で見られてしまった。 いや、けどねぇ……背ェ低くなってちょっとダルそうで、ポニーテールで顔は可愛い。 涼宮ハルヒの憂鬱は知ってても、涼宮ハルヒコの憂鬱は知らんか。 ……そらそうか、中井出が空界に居た頃に賑わったものだし、 それとは別にかな〜〜〜り特殊なモノだし。 彰利 「襲い掛かってきたナイツどもを破壊しつつ話しませう。コツが掴めた」 ルミエ「オールライト」 中井出とともにナイツどもを滅ぼしまくってゆく。 いや、コツが解っちまえば案外どうということもなく、 ナイツどもは内側から破壊されて次々と停止していった。 と言いつつも、中井出の影に隠れつつコロがしまくってもらってんだが。 彰利 「説明しましょう。キョン子というのは、涼宮ハルヒコの憂鬱の中の人物。     涼宮ハルヒの憂鬱のキャラを全員性転換させたブツのことです」 ルミエ「……なにぃ、つまりキョン子ってのはキョン君の」 彰利 「そう、女になった姿です。丁度今の中井出と同じ容姿だねぇ」 ルミエ「わあ」 とは言うものの、嫌そうな顔は特にしなかった。 彰利 「おや?嫌な顔とかせんのね」 ルミエ「それが楽しいなら楽しむのが原ソウル。いろんな物事を体験、     または自分の勝手な嫌悪感とかで否定するのはつまらないからなぁ。     で、それは面白いの?」 彰利 「あたしゃ嫌いじゃないけどね。     ホレ、イモコに同じく、スマイル動画という場所で賑わいを見せたブツなのだが」 ルミエ「ほうほう」 喋りながら、中井出がブレードチャクラムを出してナイツを根こそぎ爆破させてゆく。 キャア!汚ぇ花火だぜ! 彰利 「しかし性転換モノっつーのは万人受けしねーもんで、     それに嫌悪感覚えるヤツらなんざごまんと居るわけですよ。     ええまあ、嫌ならわざわざコメント残さずとっとと失せろってなもんですが」 ルミエ「う、ううん、そのスマイル動画っていうのはよく解らないから割愛してくれると」 彰利 「おお、せやね。結論から言いますと、うん。題して性転換ハルヒだ」 ルミエ「なるほど。よーするに今のあたしの容姿はそのキョン子に似ている、と」 彰利 「ポニーテール好きなところもバッチリだ!     つーわけでキョン子呼ばわりしていい?」 ルミエ「別にいいけど、周りの偏見持ちがやかましいんじゃないか?」 彰利 「否定する心しかハナから持っとらんヤツらはそうじゃろうねぇ……。     楽しもうと思えば楽しめるものって、結構多いと思うのにね」 ルミエ「それこそ最初っから否定してなにが楽しいやら……     それってつまり、極論みたいになるけど、     誰かにゲームって面白いんだぜーとか言われても、     誰がそんな低俗なもんやるか、って言って断るようなもんだろ?     そういうものをハナから否定するってことは、     それがくだらないものだ〜って思ってるわけだし」 彰利 「おーおそうそう。一部の人にしか理解されないって意味では、     その例えはよい仕事ですルミエール嬢」 ルミエ「嬢だとも」 まあ、じゃあ極論返しで“ホモ漫画は楽しめるのか”って言われたら─── ………………なんだろね。 楽しめるかどうかは別にして、今の中井出ならまず読んでみるんじゃないかって思った。 ……さて。そろそろ話を終わりにして、バトルに集中すっかね。 彰利 「すぅっ───焚ッ!!」 疾駆と同時に壁拳! 踵を返して疾駆し、崩拳! 疾駆の勢いを殺さぬままに、 近づくロボへと徹しとシステムミクからのボマーとを放ち、破壊してゆく。 それはまさにメリーゴーラウンドオルセンバトルで加藤鳴海がやった乱舞の如く、 周りにいたナイツどもを悉く破壊していった。 ルミエ「おお格好いい!よ、よし、あたしも!」 次いで中井出が疾駆する! さあ……ヤツは一体どんな乱舞を見せてくれるのか! …………と期待したんじゃけんども……。  スッ、スッ、バッ、バッ、バッ、ピタ…… …………何故か覇王Y愛人の謎カンフーの真似をする中井出。 そののちにナイツどもにボコボコにされ、AHEEEEYYYY!!と叫んでいた。 ……うん、いくらめんこくても中身は中井出だ。 ルミエ「彰利!彰利ーーーっ!!助けてぇええええ!!」 彰利 「強いんじゃから真面目に立ち上がれコノヤロー!!     そげなやつらなぞ指先一つでなんとかなるんだろー!えーーーっ!?」 ルミエ「なるわけねーだろうがコノヤロー!」 彰利 「じゃあアレだ。中途半端だから服を北高生のものにしてみてくれ。     ホレ、涼宮ハルヒの憂鬱の制服みたいに」 ルミエ「関係ないよねそれ!!でもオーライ!ノリと思い切りの良さは人類の至宝!!     チェーーーンジッ!コマンドー!《ゴシャーーン!》」 アタイの提案にノリノリで応えて、ブリュンヒルデさんに頼んで服を変える中井出。 ボコボコにされながらでも挫けないその熱いハートを、 いつか生声で褒め称えたいと思います。 そして変わった先の姿は───おお!まさにキョン子さん! 言ってもいないのにカーディガン着用とは!まったくやってくれおるわ! ルミエ「ワハハハハ!北高女子といえばカーディガン!     そのキョン子とやらがカーディガンを着る派か着ない派かは知らんが、     あたしの中で北高女子といえばカーディガン!」 でもやたらと元気なキョン子だった。 うん、容姿だけだねマジで。まあ……なにせ中井出だし。 彰利 「フム……ところどころで服に違和感を感じるのは、キミのそれが小説版だから?」 ルミエ「仕方ないだろ、あたしはアニメの涼宮ハルヒの憂鬱なんて知らないんだ」 正論でした。 その割りに無駄に知識が広いのは、 こいつがいろんなところから情報を引っ張り込むからでしょうね。 なんてことをボコボコにされながら胸を張って話す中井出を見て思いました。 や、つーか…… 彰利 「……あ、あのさー中井出?痛くない?」 ルミエ「VITマックスなのでてんで」 彰利 「わあ」 なるほど、元々竜相手に特化した敵だものね。 集中して防御力上げれば、大したことないのやもしれぬ。 中井出の防具とレベルがあってこそだろうけど。 ……でも、やつらは成長する機械どもだ。 こうしてる間にも様々な知識を得て、 これから製造されるヤツや自分に様々な知識と能力を加えてゆく。 そうなったらゴバシャォゥンッ!! 彰利 「……ホワ?」 突如、中井出をボコってた全てのナイツが消し飛ぶ。 何事!?と思───ったが、それより先に動く影があり、 ソレは離れた位置で待機をしていたナイツどもまでを破壊してゆく。 ルミエ「……うん、決めた。     やっぱり敵のパワーアップを待つってワンパターンは撲滅すべきだ!     よーし!じゃあ帝国に乗り込んでレイナートをボコってやろう!」 彰利 「オオッ!?大きくでたのう!」 し、しかしなんだか嫌な予感がするのう。 などと男塾の松尾くんの真似をするのはよしこさんで。 彰利 「で……その格好で?」 ルミエ「この格好で!……観光客ですって(うそぶ)いてボコるんだ!」 この世界で北高生の服着て、観光もないと思うのですよアタイ。 でもノリノリなのでほうっておいてみることにした。 彰利 「いンやァ……しかしナイトどもがこげに弱しとは……。     必死こいて戦ったアタイがなんだかとっても恥ずかT」 ルミエ「でも……得るものはあっただろ……?」 彰利 「ゲェ!綺麗な言葉で片付けようとしてやがる!     ……や、そりゃ《ズキィーーーーン!!》ヤナヴァァアーーーーーーーッ!!!」 羽撃(はばた)きなさい“劈鳥”(つんざきがらす)!! ギャア関係ねーけど体痛い!体を引き裂くっつーか痛みが劈いてるっつーか! 何!?なにこの堪えようのない痛み!うおお視界がスパークする! 星がっ……星が見えるスター! ルミエ「……どうやらミクバッテリーが尽きたようだね」 バッテリ……っつーとこれペナルティ筋肉痛!? って……きっ……筋肉痛!?これが!? なんかもう筋肉とかそんなレベルじゃねーよ!? 神経が悲鳴上げて、 立ってられなくて倒れたら地面の硬さが体に激痛走らせてギャアアアア!!! ルミエ「ミクバッテリーの使用が長ければ長いほど、     筋肉の悲鳴を無視して能力使ってるわけだからさ……ほら。     崩壊してる筋肉を無理矢理使って戦ってるようなもんでしょ?そりゃ痛いよ」 彰利 「ガガガガガガ……!!コ、コノヤラ……!     ナンテモン……ストックサセヤガル……!」 ルミエ「あれぇ!?あたしの所為なの!?」 ……ア、ダメ。 喋るだけでもとっても痛い。 ……うん、ここは素直にオチとこう。 多分悠介も今頃大変なことになってるんじゃないかなあ、とか思いながら、 アタイは自分の意思で自分のブレーカーをバツリと切りました。 起きた先が筋肉痛地獄じゃなければいいなぁとか思いながら。 【ケース731:ルミエール=D=カーナ/ポニテセプテンバーラヴ】 諸君。あたしはポニーテールが大好きだ。 諸君。あたしはポニー……長くなるのでやめよう。 いつものように欲しいと思った情報をノートン先生から受け取り、 ヒロミ通信として届いたソレに軽く目を通すに至り…… “キョン子”というものの人物像を確認。 一言で言うとよく解らん。 彰利の記憶を主軸に掻き集めた情報なるも、 どうにもこう……キャラが完全に固まっているわけでもない……らしい。 キョンくんをそのまま女性にしたような感じ、らしいのだが……ううむ。 つまりキョンくんのように振舞えばいいのか? 物真似はそう嫌いじゃないし、ポニーテール好きに悪いヤツは居ない。と思いたい。 というか、なんだ。 戦場の真っ只中でなにを考えているんだろうなぁあたしは。 ルミエ「………」 自分の姿を見下ろしてみると、こう、起伏のない平坦な胸が目に入る。 彰利が言うように、容姿はそのままキョン子らしい。 言い様のないむず痒さと言えばいいのだろうか、 ともかくそんな感じのものを体感している。現在進行形だ。 試しに狙ってやったのかとノートン先生にメールを送ってみれば、 汝の在り方をただ女に変えただけだと返ってくる始末。 ようするにあたしは、女になった時点でこの容姿になることがさだめられていたらしい。 可愛い顔に喜ぶべきなのか、平坦な胸に嘆くべきなのか判断に悩む。 しかし前にも言ったが、女である時は女の意識であるべしと心に決めたあたしだ。 女としての楽しみがあるのなら、何処までもそれを求めるだけだろう。 ええと、なんだ。 とどのつまり、あたしはそのキョン子とやらに似ているそうであり…… 姿が似ているなら、在り方を真似てみるのもいいかな、 と無駄に思考を頼りにしてみているわけだが。 キョンくんといえば脳内語りの達人として、広くその名を轟かせている人物。 彼の一人称で進んでゆく小説はこう、ひどくまったりとしたものがあるわけだ。 そのまったり感はむしろ好きなものの一つであり、 彼の持つ独特の雰囲気とペースもまた、好きなものの一つだ。 いや、語り始めるとキリがないからここらにしよう。 姿が似てようがどうしようが、自分がこうありたいと思うものを貫けばいいわけだ。 真似をするにしてもほんの一時期。 それ以上は野暮ったいだけだ。 というわけで。 ルミエ「俺は!海賊王になる!」 真似の方向は気が向いたらで。 今までの思考とはまるで別のものを引っ張り出すことで気分をスッキリさせ、 あたしは走り出した。……まあその、北高の制服姿のままで。 ───……。 貴様に余計な援護をされずとも、機械兵程度、どうということもない。 そんな言葉をグレイドラゴンから聞いてからしばらくのある時。 空飛ぶキョン子さんになっていたあたしは、首にぶら下がっている竜玉を見下ろした。 一応、グレイドラゴン直々の珍しい頼みごとの果て、この中にはシャモンが入っている。 狙われている状況で大事なものをあたしに託す、 なんてよりにもよってな行動に顔をしかめたものの、 あたしは案外あっさりとそれを受け入れた。 ロボどものレーザー耐性や竜耐性は確かに強いものの、 あんな装甲で守護竜の、それも上位守護竜の攻撃を耐えるなんてことが出来る筈もない。 K子 「まああれだ」 そんな勝手な安心を胸に、 似た格好なのにルミエールなままなのもどうかと思ったあたしは、 自分に対する認識をK子にしてみた。 自分でもこれはどうだろうと思ったが、そこはそれだ。 どこぞの物語の中の脇役のような響きもあって、 これはこれで悪くないんじゃなかろうかと思い始めているところだ。 実際に恵子さんとか啓子さんなんて名前はざらにあるわけだしな。 ただその場合、自分がK子なのか啓子さんなのか解らんという欠点もあるわけで。 ……まあいい、ちょっとだけだぞ。 キョン子「………」 ……。 だめだ。認識を変えただけなのにえらい恥ずかしい。 やってはいけないことをしているような気分になって、 今すぐいろいろなものを投げ出したくなる。 落ち着けあたし。あたしはルミエールであってキョン子じゃないんだ。 そもそもこれは戦場で考えることなのか? いや、思考は僕らの自由なんだから、考えることでもいい筈だが。 ま、まああれだ。 ふざけて誰かの真似をする、みたいなノリでいいんだと思う。 もんがーの真似をするみたいなノリで行ってみるんだ、あたし。 キョン子「…………あー……うああっ!だめだ!顔が灼熱するっ!」 やっぱりその一線は越えてはいけないような気がした。 原ソウル的には是非とも越えたいのだが、こう、許せんものは存在するわけで。 あたしはあたしの知識内のことで、でしか胸を張って行動したくないのだ。 いくら彰利にキョン子という人物に似てると言われようが、 それはあたしの知らない人物のこと。 素直に真似が出来ないのは、きっとその所為なのだろう。 そう考えると随分と恥ずかしいことをしようとしていた。 フロイト先生も爆笑だっぜぃ。 とはいえ、ノートン先生から情報を得た今では、 “知らない人物”と言ってしまうのは寂しいものだが…… 表現の自由はあるものの、周りがそれを受け入れるかは周り次第なわけだ。 キョン子「知っているのがキョン子さんの情報だけって時点でアウトだが」 というわけで却下だ。 一部的なことしか知らない知識をネタにするのはどうにも性に合わない。 やってみると案外楽しいんだが、これまた知識の深い人の反感を食いやすいのだ。 あたしはそういう人と出来るだけぶつからない程度の真似ごとを慈しみたい。 彰利にメイドさんのことを語らせると長すぎるのと同じだ。 なにかを好きになるのはいいけど、 自分の知識だけを押し付けすぎるのはマイナスだからな。 ロングスカート以外はメイド服じゃない、という点では、 まああたしも頷く他ないのは事実なわけだが。 というわけでいろいろある世の中だ。 Kと名乗っておこう。 K  「怪奇!口先の魔術師!《バァアーーーーッ!!》」 手を広げて叫んでみるも、キョン子さんの姿では物凄くキマらなかった。 もっとこう、ねぇ?動き易い服でオトコノコだったら口先の魔術師チックではあったのに。 …………いいやもうキョン子で。 そう思ったあたしはジークフリードを取り出すと、 その刃に映る自分の目を見てブツブツと呟き始める。 得ている情報の全てを以って、あたしはキョン子、あたしはキョン子と、 自己催眠をキュミミミミィイイ〜〜〜ンと……!  ………………うん、それ無理。 どこかで声が聞こえた気がしました。 それとともにあたしは俺に戻り、村人の服に躯骸王除けの髪飾りを差した姿へと大変身! ……変身っていうよりは、やっぱり戻った、だよなぁ。 うん、きっと俺の中の潜在意識が、よく知りもしないことを真似るなと言ったに違いない。 知識の深い人はそういう人には容赦なく、僕はそういう人が苦手なのだ。 知識が深くても共有しようとしてくれるならまだしも、 ああじゃないこうじゃないと意見を押し付けるだけしかしない人はどうにも。 我ら原中はそうしていてもあっさりと押し付け返されてたからよかったけど、 普通に考えたらそういったものが嫌いになりそうな勢いである。 中井出「よぅし!目指すは帝国!レイナートが巣食う地下迷宮よ!」 迷宮なのかは解らないけどね。 だがそのまま突っ走るのは無鉄砲さんでキザヤローのすること。 やっぱりここは仲間を集めてナンボでしょう。 そのための一歩として、まずは─── …………。 悠介 「ぎゃあああああいだだだだだだだ!!!!」 彰利 「いぎゃああああらだだだだうぁだだだだだ!!!いででいででやめれー!!」 超筋肉痛で苦しんでた僕の仲間を引ッぱり出してきました。 触られるだけで大激痛のこの痛み……まさに国宝級である。 服ではなく、敢えて腕を掴んで空をゆく僕は外道です。 そんなわけで晦と彰利は回収、と。 666体の魔物も、エンペラー解除とともに戻ったみたいだし、 あとはこの筋肉痛さえなんとかなれば戦えるさ。 んで、と。 誰連れていこうかな……と思いつつ、大地に下りている要塞の傍へと着地。 さすがに三人じゃ心許ない。 ウーヌ……藍田くんも閏璃も旅に出ちゃってるしなぁ。 ……ルナ子さんはナチュラルについてきてるから、いまさらお願いするまでもないけど。 中井出「えーと……悠黄奈さん!一緒に行こう!」 だから要塞の方で猫たちとともに大砲を撃ち、 ロボ破壊に勤しんでいる悠黄奈さんに届け我がボイス! ……あ、ニコリとスマイルくれた。どうやらOKらしい……どんな聴覚してるんだか。 と思ってたら、その隣でミクもブンブン手を振っているのに気づく。 ……そんな彼女を盛大に無視してやると、 ミク 『マスター!?マスター!うあああんますたぁあーーーーっ!!』 涙目になって叫びながら手を振り続けた。 ううむ、無視されるのはかなり苦手のようだ。 本人にとっては不名誉なことかもだが、どうしてだろうなぁ……。 ミクって涙目がやけに似合ってるような気がしてならない。 ……そんなわけで、要塞から降りてきて駆けつけた、 悠黄奈さんとミクがパーティーに加わった。 うん……なんかもういいや……この6人でケリをつけよう……。 ……ちなみに上空ではまだロボたちとモンスターたちが戦ってたりする。 中井出「点呼ォ!───1!」 彰利 「2!《ズキーン!》ギャー!」 悠介 「3!《ズキーン!》ギャー!」 ルナ 「4!」 悠黄奈「5!」 ミク 『6!』 中井出「よし素晴らしい!ではこれよりエトノワール帝国へ行って、     レイナートに“尾死浬篇邊(おしりぺんぺん)”をする!!」 彰利 「《ゴ、ゴクリッ……!》お……尾死浬篇邊……!」 悠介 「し、知っているのか雷電……!」 彰利 「う、うむ……尾死浬篇邊……子供のみへのお仕置きとばかり思っていたが……」  ◆尾死浬篇邊───おしりぺんぺん  聞き分けの無い悪ガキに親がする恥奥義。  腰を掴んで持ち上げ、突き出されたヒップに平手を繰り出すのがスタンダートスタイル。  外見的にも精神的にも肉体的にもとても痛い。  ザ・グレートベンケーにこれをやられた牛バカはとても痛かったに違いない。  なにせ相手が相手だし。  *神冥書房刊:『編み出した人物って誰なんだろうね』より ……。 悠介 「す……《ごくり……》すげぇ……《ズキィーーーン!!》あがぁあーーーっ!!」 彰利 「王族相手にオシリペンペン……!     その発想がトんで《ズキィーーン!!》アオアーーーーーッ!!」 ルナ 「筋肉痛なのに驚くことだけはやめないのね、ゆーすけたち」 彰利 「ぐっ……ふふっ……こ、これが悪魔の底力よ……!」 悠介 「たとえ体が痛くとも、楽しむことは楽しむのが原ソウル……!」 中井出「見事っ……!見事だ二人とも!じゃあ行こう」 ミク 『わっ、えらくあっさり捨て置きました』 悠黄奈「博光さんですからね」 中井出「あの……その理解のされかたってどうなの……?」 まあいいや、なんかいろいろあったけど、これでようやくドゴーン!! 中井出「……あれ?」 目の前に巨大な物体。 なに?と見上げてみると…………そこに巨大なマシンモンスターが!! 中井出「ななななななんじゃこりゃああああーーーーーーーっ!!!」 彰利 「え?なにほぎゃ《ズキィーーン!》ギャオアーーーッ!!」 中井出「器用な驚き方するねお前!」 彰利 「あががいででで!!驚いた途端に痛んだんですよ仕方ないじゃないもう!」 見上げる相手は巨人ほどの体躯で、 空を飛ぶロボどもをそのまま巨大化させたような姿でございます。 でも武器が大剣になってるあたり、 貫くより薙ぎ払って終わりにさせようとしている魂胆が見え見えでした。 巨大ロボ『ギガゴォオーーーーッ!!!』 巨大ロボが叫ぶ! と同時に、見上げる視界の外からはどんどんと巨大ロボが飛来してきて─── 悠介 「……空界でノヴァルシオに行った時のこと、思い出したんだが」 彰利 「アー……空中大庭園バトルね」 中井出「エメオ=ノヴァルズだっけ」 破壊するたびに強化されていく物体……ああ確かに。 中井出   「そういえばこのロボもノヴァルシオの技術で作られてるわけだから……」 彰利    「……アア、ナルホドー」 悠介    「面倒だなぁ……」 中井出&彰利『キミが言うと物凄い説得力だ』 ともあれ、相手がこの数だ。 ちっこいのはもう大分少ないし、 モンスターどもも猫たちと協力して大砲の性質を変えてるから、 あっちはもうあっちに任せておいて大丈夫そうだ。 ダメでもモンスターたちはボ・タがあれば強化されて蘇るし。 …………あれ?そういう意味ではこっちも相手にそうそう負けてない? 中井出「うむよし!では普通サイズのロボはモンスターや亜人族たちに任せるものとする!     我々はこれよりこの巨大ロボたちを破壊し、素材を剥ぎ取ろう」 悠黄奈「提督の目から子供の目になりましたね、急に」 ルナ 「エロちってほんと、素材集めが好きよねー……」 ミク 『こ、壊すんですか?うう……研究所で作られたっていうことは、     わたしの弟みたいなものなんですけど……』 中井出「大丈夫!お前の弟は……僕の武具の中で生き続けるのさ」 ミク 『マ……マスター……!』 彰利 「わあ、さすが歌うロボさん」 悠介 「キザというか、ありきたりな言葉に弱いな」 中井出「キザでもなんでも剥ぎ取ることには代わりはねーがな!!」 彰利 「まさに外道!!」 暢気に話している間も、ずっと待っててくれたロボを再度見上げる。 ううむ、いいやつなのかもしれんが、───って 悠介 「気をつけろ提督……そいつ、     動かなかったんじゃなくて状況を確認してただけだ……」 悠黄奈「思い切りレンズをぐりぐり動かして、周りをねめまわしてますからね」 やっぱりですか。そうじゃないかな〜とは思ってた。うん、思ってた。 中井出「ミク!」 ミク 『え?あ、はいマスター!』 中井出「……やっちまえ《ニコリ》」 ミク 『えぇええええええっ!!?そそそんな無茶ですよぅ!     わたしは情報収集能力に長けているだけであって、     戦闘機能はそこまで高くないんですから!』 彰利 「弟だって言ったばっかりの相手に任せるなんて……」 悠介 「外道だな、普通に……」 中井出「うるさいよもう!」 ともあれ、もう待っててくれそうもなかった。 まずはこいつをブッコロがしてから…… これ以上敵が強化されないうちに帝国に向かうしかない……んだろうなぁ。 中井出「おお!こうしよう!     この場で誰か一人が残って、あと他のやつらは帝国に向かうのだ!     この責任重大な任務……誰ぞ!誰ぞあるか!勇敢な者よ!     ……………………あのー、なんでみんな、僕のこと見てるの?」 悠介 「だって……なぁ?」 彰利 「強さでいったらテメーが一番適任に違いねー」 悠黄奈「適任……ですね。そうですね」 ルナ 「エロち、がんば」 あ……あれ……?おかしいなっ…………あれっ…………?あれ…………? こ、こんな筈じゃ…………あれっ…………? ───でも面白そうなので請け負うことにした。 中井出「へっちゃらさーーーーっ!!」 彰利 「おーしゃー!こっちも筋肉痛治まってきたし、行ってくるぜ〜〜〜〜っ!」 悠介 「痛さが尋常じゃない分、そう長くはないってことか。     よし、じゃあ頼んだぜ、提督!」 ルナ 「死んでもいいけどこっちに被害がとんでこないようにしてね、エロち」 悠黄奈「要塞を守ってあげてくださいね。わたしたちと違って、     あのコたちは死んでしまったらおしまいですから」 中井出「わ〜〜〜っ!だぁれも僕のこと心配してないや〜〜〜っ!」 いっそ涙が出てきました。 でもそんな中で、ミクだけが僕の傍らへと残りました。 中井出「うう……ミク……貴様も貴様の思うように行動して……よいのですよ?」 彰利 「許可は得た!そこだミク!自爆だ!」 中井出「ヒィ!?」 ミク 『しませんよ!?た、ただマスターとともにここに留まろうと思っただけですよ!?     物騒なこと言わないでください!』 ロボ 『ゴガァアーーーーーッ!!』 総員 『キャーーーッ!!?』 いよいよ以って、ロボが行動を開始した! ならばと僕は構え、他の皆様にアイコンタクト! 彰利 「……OK中井出!吉報をお待ち!」 悠介 「帝国の方はなんとかしてくる!」 悠黄奈「全部任せてしまってごめんなさい」 ルナ 「死んだらちゃんと冥府に送ってあげるからね〜」 中井出「やめてよ!!そこまでされたら本当に死んじゃうよ!!」 ルナ 「うん、冗談冗談」 にこ〜、と笑うルナ子さん。 その顔に砂をかけて、 怯んだ隙にトルネードフィッシャーマンズスープレックスをかけたい衝動にかられるが、 ロボが大剣を振り上げるのを見てしまったら、それはもう無理そうだった。 中井出「ち、ちっくしょーーーっ!!     行けてめぇら!さっさと……さっさと行けぇえーーーーっ!!」  ルフォゴギィインッ!! 中井出「ムグオオ!!」 振るわれた大剣を、俺も大剣……ジークフリードで受け止める。 フッ……誰かに先を促して自分は敵を食い止める……。 何度やっても嫌な後味しか残らないし、未来のことがどうしてもよぎるから嫌なんだが。 でも死ぬつもりはねーのでこれはこれで面白いから、OKなことにした。 さあみんな!なんかこう、ためらいながらも駆け出してあれ居ねぇ!! 中井出「あ、あれ!?みんなは!?」 ミク 『え?あの、剣が振るわれると同時に消えてしまいましたよ?     転移魔法ですかね……こう、パッと』 中井出「彰利ぃいいいいいいいいっ!!!てめぇえええええええええっ!!!」 恐らく彰利だろう。 帝国かどっかの近場にビジュンと転移したに違いない。 うおおお恥ずかしい! なんか“俺、カコイイ”とか何故かカタコトで思ってた自分が恥ずかしい! だって仕方ないじゃない!男の子だもの! そんな瞬間に少しは憧れがあるのは当然でしょ!? ロボ 『ルガッ!ゴガァアアッ!!』 中井出「う、うあーーーーん!!お前の所為で恥かいたんだぞ!?帰れ!!」 まるで見当違いの八つ当たりの実行とともに、押さえている大剣をゴギィンと払う。 相手側はそうされることなどデータになかったのだろう。 戸惑うようによろめくと、俺をギラリと見下ろしてきた。 中井出「もういいよ!なんだよもう!こうなったら貴様ら全員破壊したあと、     堂々と帝国に乗り込んでやるんだからねっ!?《ポッ》」 ミク 『どうしてここで頬を赤らめるんですか!?』 中井出「どんな時でも楽しみたいからさ!じゃあ行くぞミク!と、シャモン!」 ココンッと竜玉を突付いてシャモンを召喚! ミクの傍に降りさせると、一緒になって巨大ロボを見上げる。 中井出「戦争だぁあーーーーーーっ!!」 ミク 『Yah(ヤー)ーーーーーッ!!!』 こうして。 僕ら対帝国は、いよいよもって始まったのでございました。 Next Menu back