───冒険の書292/ノヴァルシオ攻略作戦───
【ケース733:晦悠介/時は少しを遡ります】 ───ビジュンッ! 彰利 「愛……」 悠介 「どうしてお前は転移となるとヘンなポーズ取るんだよ」 彰利 「愛を表現したいの。そして愛を表現するからには美しいポーズを取らなければ。     ちなみにその際、他人の批評なぞ知りません。     アタイが美しいと思えばそれでいいのだイケルなり〜」 以前に来たことがあるのか、月空力での転移で辿り着いたそこは、 丁度帝国が一望できる高台のような丘だった。 帝国を眺めるでなくても、景色を見るだけでもとてもいい場所だな、 と思うわず思えるような場所だ。 といっても、恐らく自然に溢れた今の景色だからこそそう映るのだろう。 自然が蘇る前では、ただ寂れた荒野を眺めるだけに終わっていたに違いないのだから。 彰利 「あ、YOUスケYOUスケ!あそこ!ね!?あそこ!     アタイあそこの中途半端な洞窟からこの世界に降り立った…………っ!」 悠介 「どうして最後のとこだけ妙な気合い込めて言うんだよ」 彰利 「無頼伝涯って、あれはあれで悪くなかったよね」 悠介 「ところで……なぁ彰利。俺を呼ぶお前の発音がヤケに流暢だったというか……」 彰利 「中井出の犠牲を無駄にするためにものんびりいこうか」 悠介 「ちったぁ急げたわけ!!」 彰利 「じゃあ今の質問ナシね!?ハイ行こうやれ行こう!!」 悠介 「いや…………いいんだけどな……?」 細かいことはナシにしよう。 ルナも今は悠黄奈の首に抱きついて遊んでるみたいだし。 ……ルナが言うには、俺に似た、だけどどこか柔らかい匂いがしていいんだとかなんとか。 元が俺なんだから当然なのかもだが。 彰利 「そィで?どうするん?正面突破?」 悠介 「男ならそれだろ」 悠黄奈「……変わりましたねぇ……悠介さん」 彰利 「わあ、悠黄奈さんが言うとモノスゲェ説得力」 ルナ 「元がゆーすけなんだから当然なのかもだけど」 悠介 「いや、こう……なあ?提督に後ろを任せてきたんだから、     少しはやってやろうって気になるだろ?」 彰利 「ヒロミチュード!───ストック!破棄!     ヒロミチュード!───ストック!破棄!」 悠介 「おーい、聞いてるのかトンガリコーン」 彰利 「コーンつけんなコノヤラー!!」 トンガリはいいらしい。 とんだ尖浩二だ。 彰利 「いやね?なんとかしてオールエジェクトギミックをまた使えるようにと、     ヒロミチュードを回していってるんだけどね……。     “体”で発動させたら666体の解放になったんなら、     武器……レヴァルグリードで発動させたら、     鎌の解放も出来るんじゃねーかなーと」 悠介 「………………お前さ、全部の鎌解放状態で融合させたんだろ?     今更解放とかって、なんの意味があるんだ?」 彰利 「いやいやァア、能力解放状態の鎌の“強さ”を融合させたんよ。     さすがに能力までは融合できなかったみてーで。     だからほれ。その“強さ”があるお陰で、     デスティニーブレイカーの能力が随分上がっとるっしょ?」 悠介 「ああ、あれには驚かされてる。     決まりごとの破壊の条件が随分無くなってきてるな」 ルナ 「…………ね、ね、ホモっちホモっち」 彰利 「え?なに?」 ルナ 「えーっと……次のヒロミチュードで、     オールエジェクトギミックが出ないなんて、嘘だ、ってやってみて」 彰利 「フッ……そげなこと、既にやったわ」 ルナ 「あれ?そーなの?」 彰利 「クォックォックォッ……アタイをどなたと心得る。     ええ、エロっちでしょうね。わかります。     だがこのアタイは中井出を原中の提督として勧誘した猛者ぞ?     いわゆる企画発起人。いわゆるプロジューサーとかゆーやつYO」 ひたすらジュースを作り続けるのだろうか。 俺がそう思っていることに気づいたのか、それとも同じことを考えたのか。 悠黄奈も俺を見ながらクスクスと笑っていた。 彰利 「故にアタイのことはF組の深田航平と呼んでくれ」 悠介 「ク……クワッ!とかいって口を開くのか」 彰利 「それフカダ違いだから」 ルナ 「……フカヒレ?」 彰利 「違うからね?」 悠黄奈「あの……そろそろ行動したほうがいいと思うんですが」 ルナ 「だいじょぶじゃない?エロち、つおいし」 悠黄奈「いいえ。忘れないでください、どれだけ強くなろうと、あの人は一般人です。     強くあれるのはゲームだからであって、本物の死の前ではきっと弱い筈です。     加えて、要塞や浮遊島を守りながら戦わなければいけない責任の重さ。     ……あの人は、いろいろ背負うには小さすぎるんです。     勝手な信頼はしないであげるくらいが、きっと丁度いいんだと思います」 悠介 「む……」 彰利 「……せやね。ちとふざけすぎたか。OK、向かおう」 いやむしろ俺は先に進む派だった筈なんだが……むう。 どうにもペースを崩されっぱなしなまま、 俺は彰利やルナや悠黄奈とともに、帝国へと───正面突破で突入した。 ───……。 ……。 ……んだが、おかしなもので、出てくる機械兵は俺達を見ても無視して飛んでゆき、 城下に至っては人っ子一人居なかった。 彰利 「どうなってんのコレェ!お前の所為だよコレェエエ!!」 メカ 『───』  ゴシャー───………… 行ってしまった。 彰利 「……イチャモンつけてもCOOLに無視か。ううむ」 やはりメカは俺達になんの興味もないようで、 地図を見るに───ああ、提督が居るであろう方向へと飛んでいっている。 それこそ、絶え間なく、それどころか周期的にゴツくなったりスリムになったりして。 恐らくエメオ=ノヴァルズと同じく、 倒されると強化するノヴァルシオシステムは変わっていないのだろう。 ……そうなると、あの提督相手にどこまで強化されるのか。 或いは、提督の力を越すことになるのか。 それを考えると、本気で急いだほうがよさそうだと確信した。 悠介 「みんな、急ぐぞ!このままじゃ機械兵だけで世界が征服される!」 彰利 「あ、やっぱ同じこと考えてた?」 ルナ 「物凄い勢いで生産されてるし……     これってエロちが物凄い速度で破壊してるってことなのよね?」 悠黄奈「ええ、そうでしょうね」 彰利 「で……それだけの速度で敵もパワーアップしとるってことっしょ?」 悠介 「…………やっぱり急ぐぞ!」 彰利 「オ、オーライ!!」 提督のことだ、多分面白がって何処まで成長するのかとか試すに決まってる! 急がないと本気でやばいぞ!? もしサウザンドドラゴン級の耐久力を持ったメカゴーレムでも作られたら……! ルナ 「ど、どっち!?どっち行けばいいの!?」 悠黄奈「まず手分けしてこの場から上までを散策しましょう!     レイナートが居たら、各自tellで伝え合う、ということで!」 悠介 「よし!では散ッ!!」 彰利 「満月の夜にまた会いましょう!チェリオー!!」 ルナ 「………《ぐいっ!》いたっ!?」 悠黄奈「ル〜ナ〜さ〜ん?向かう先はそっちではありませんよ〜?」 ルナ 「う、うう……ゆ〜すけ〜……」 悠介 「いいからレイナート探すのに専念してくれ。     幸いなことに四方向に行き道があるから」 ルナ 「……三方向だったらよかったのに」 悠黄奈「それではわたしはこちらの階段から。……ルナさんはそっちの階段ですよ?」 ルナ 「むー、わかったわよぅー……」 しぶしぶと、歩くのではなくふよ〜と飛んで、階段を……上る、っていうのか?あれは。 まあいい。 ふと視線が絡んだ悠黄奈に向けて頷いてみせると、 悠黄奈も同時に頷き、背を向けて駆け出した。 目指すはレイナート……もしくはメカ製造所。 製造元さえ壊してしまえば、それらが強くなることなんてない筈だ。 メカが出てきている場所を辿ろうとも思ったが、そこには結界めいたものが張られていて、 メカしか通れないようになっていた。 試しに触れてみたが、完全な壁になっているのだ。 イメージを弾けさせて、 適応しているだろう創造物をぶつけてみても、なんの効果ももたらさない。 恐らく魔術的、魔法的なものを一切寄せ付けない結界だ。 それは回路であったりしてもダメ、という意味であり、 地界以外の回路を持った者は絶対に通れそうにもなかった。 ……ようするに、通れるとしたら村人か提督か、だ。 俺達の中では提督だけってことになる。 悠介 「…………」 一つ一つ、部屋を見ていく。 当然、隠し部屋が無いかも調べ、それが済むと次へ。 提督なら間違い無く破壊しながら探すんだろうが、 それだとなんの罪もない使用人などを巻き込む危険性もある。 だから、妙に部屋の範囲が狭いくせに壁が厚い場所などは、 仕掛けを探しては解き明かし、それらを開いて調べてゆく。  デゲデデ〜ン♪《アルベイン流魔神双破斬の奥義書を発見した!》 悠介 「……アルベイン流!?」 時にはこんなものも発見したりと、 この帝国はいったい裏でなにをしてたのか、とか、しみじみと思ったりもした。 ……とりあえず読破、と。  ◆魔神双破斬───まじんそうはざん  斬撃にドッペルブレードがつく。  剣気を飛ばす魔神剣が無消費で放てるようにもなり、大変嬉しい剣術奥義。  体術奥義でいう徹しと同じく、双刃効果自体にTPは使わない。 ……。 悠介 「……いいな、これ」 いいもの拾った。 誰だか知らないが、奥義書を隠してくれてありがとう。 ───なんて思ってたんだが。  ごしゃーん! 悠介 「オウ?」 ……突如、入ってきたドアが格子で閉ざされた。 近づいて持ち上げようとしても、予想通りビクともしない。 というかメカの通路に使ってたのと同様の結界が張られてて、しっかりと掴めやしない。  ブシュウウウウウウウウウ!!!! そしてなんかもう予想通りの毒ガス攻撃!! ああ!水かガスだろうなあとは思ってたけど、ここまでお約束を守ってくれると悲しい! もっと楽しいのは考えられなかったんだろうか。 ……拷問的に楽しいのはナシか。 提督が管理者なら、大量のカメムシとか送り込んできそうだが。 えーーーーーーーと………………どうしよう……。 【ケース734:弦月彰利/アンジョー】 彰利 「あの子は太陽のっ小町っエェエンジェェエエーーーーーーーッ!!!!」 やあ僕彰利。 今日はそう、手拍子でリズムを取りながら、 部屋を虱潰しに破壊してレイナートを探してるんさ。 え?手拍子してるのにどうやって破壊してるかって? ハッハ、そんなのメーザーアイで、に決まってるじゃなイカ。 こう、ね?キスティス先生みたいに目からレーザー出すんでゲソ。 アタイほどの月操者にもなれば、目からアンリミテッドストリームなぞ簡単なものYO? ……ミッキーロジャースってどうして“なぞ”とか言ってたんだろうね。 あれ?ミッキーロジャースでよかったんだっけ。ウヌヌ、昔過ぎて思い出せん。 ともかくアタイは、気配的に誰もいねーことを確信してるからこそ、 大声で歌を歌いつつ、気配を消してる可能性も考えて虱を潰してます。 そんな折─── 彰利 「エェンジェエーーーーーー───」 ゼノ 「……」 彰利 「…………」 何故か優雅にお茶を飲んでいるゼノを発見しました。 丁度ノリノリになって、出す声もかなり元気になっていた時のことぉ……じゃったぁ……。 彰利 「ア、アノー……ツカヌコトヲオキキシマスガ……」 ゼノ 「……なんだ」 彰利 「ド、ドーシテココニ……」 ゼノ 「人間がくだらん戯言を吐いた故だ。───人が頂点に立つ?     なるほど、大きく出たものだな。     だが、だからといってそれが真実、叶うと思うか?……クク、無理だな。     ヤツらがどれだけ過去にすがろうが、我らに勝つことなど不可能だろうよ」 彰利 「じゃ、オイラ急ぐから」 チャオ、と手を軽く挙げて走り去─── ゼノ 「待て」 彰利 「キャア!?」 向き直り、走った先にゼノ郎くん! 瞬間移動だ!すげぇ! ゼノ 「そういう貴様も図に乗った人間を───」 彰利 「ぬぃやぁああ〜〜〜?俺はただこらしめに来ただけさ。     気に入らんから殺すとか、そげなつまらんことはしねー。     俺が殺す時はね、ゼノよ。相手が心底下衆野郎であるか、     それともアタイを殺しに来てるヤツかのどっちかだ」 ゼノ 「さてな。本当にそれで納得出来ているのか?     我には貴様がそういう男であるようには見えんが」 彰利 「ぬう」 本能的に言えば、どうなるかなぞそのときにならなきゃ解らん。 いっつも戦闘前じゃなく、戦闘中に覚悟を決める中井出みたいに、 最初から決めている“そうでありたい前提”と“覚悟”は違う。 でも今は関係ないから先に進むことにしました。 …………で、ついてくるゼノ郎くん。 彰利 「ぬーやがー!なしてついてくるっとね!」 ゼノ 「なに。最近魔物を見なくなってな。力を磨くどころか戦えもしない。     ───言いたいことは解るな?」 彰利 「テメーの頭にゃアタイとのバトルしかねーの!?あなたっていつもそう!     わたしをバトルの対象としてしか見ていないのYO!」 ゼノ 「そうだ」 彰利 「キャア即答!潔し!───フフフ、いいだろう。     でもその前にレイナート探しますよ?     目的未遂行のまま別のことするの、結構好きだけど───     ちぃと中井出が頑張りすぎてるんで急ぐ理由があるんだわ」 ゼノ 「……ならば影でも使い、城全体を調べればいいだろう」 彰利 「バッキャローマン!なんかこうして足で探したほうがゲームっぽいじゃない!     ゲーム中ならゲームっぽくやるのも楽しみ方のひとつさね!     その所為でいろいろヤバい状況になったとしても、     アタイらきっとその先で楽しめるワ!だって……漢じゃけぇのぅ……!」 そげなわけで再びダッシュ。 隣の部屋までいくと、何故か隣の部屋との面積を考えると狭ッ苦しいことに確信を得て、 ……仕掛けを探しました。こう、風紀的に。 やっぱ仕掛け部屋で仕掛け探さねーのはウソっしょ! た、たとえばこの本棚の中のどれかをずらして、 奥にあるスイッチを……あれ?スイッチがねー。 バサバサと本を全部とっぱらってみたが、スイッチはなかった。 ……じゃあ次!なにか銅像めいたものを動かして───銅像がねー。 ゲゲエいきなり詰まった! いや、よく考えるんだ!ベッドの下とかになにか───ドラムセットを発見した。 何故!? ゼノ 「探し物があるなら破壊すればいいだろう、いちいち一つ一つを調べるつもりか?」 彰利 「ノー!キミはゲーム好きの心解ってない!謎解きってのは浪漫だ!     ゲーム初心者に神々のトライフォースやらせる親心くらいの浪漫!!     もしくはガイア幻想紀で赤い宝石全部集めさせるくらいの浪漫!」 ゼノ 「言っている意味が解らないが」 彰利 「謎解きは地道にやりたいじゃない?これでいーのよ。     手違いで誰かコロがしても後味悪いし」 ゼノ 「…………」 彰利 「もしキミが殺してみせたら、アタイが異翔転移で水穂ちゃんを転移させて」 ゼノ 「行くぞ、なにをしている」 彰利 「ゲェ切り替え速ェエ!!     なに!?そこまで水穂ノ助に自分の悪なとこ見せんのヤなの!?」 ゼノ 「黙れ」 彰利 「うう……そう思うんならついてくんなよこの野郎……。     俺、最近黙れとかそういう、冷静で偉そうな口調のヤツ、嫌いなんだから……」 ゼノ 「貴様も黙れだのクズだのは平気で言っているだろう」 彰利 「冷静にじゃなけりゃいいのよ。偉そうでもそれが笑いに繋がるなら文句はねー。     でも愛の無い夫婦生活が冷めてるように、     笑いのない偉人っぷりは人を冷めさせます。     ……俺ゃね、面白おかしく生きていきたい。     もう、多分原中はダメだろうって解っちまったから、余計に。     俺と、悠介と、中井出ででさ。     “友達は一人でいい”、なんて思いを捨ててでも、     友達で居たいヤツと出会っちまったんだ。     だから、ずっとそいつらとバカやりたいんだ」 ゼノ 「……?中井出、というのはあの殺人人間のことか」 彰利 「そ。中井出博光。中学の頃の同級生で、     悠介以外では一番に心を許してる相手だって確信してる」 まあ、結局俺も人外なのだ。 ああいう常識外れの馬鹿は、無駄に背伸びをしている“人間ども”より好ましく思える。 人外があいつを好きになる理由なんて、きっとかなり単純だ。 難しいことなんて考えないからだろう。 一緒に居て居心地が悪くなる、というのがないのだ。 ヘンに遠慮がないくせに情けなくて、そのくせいざとなったら結構頼り甲斐がある。 そういうところを、人間は案外嫌ってしまって、逆に人外の方は認める。 ……だよな。 最初の頃だって、中井出をイインチョッフにしようとした時、 クラスメイツたちからの反応は拒絶だった。 特に藍田の反発は結構なもんだった。 つい最近までこそ随分と慣れ親しんだものだったが、今ではもう…… 彰利 「……あーあ」 漏れた溜め息に苛立ちが募った。 そう、偉そうなヤツは嫌いだ。 冷静に偉そうに、人の記憶を操作しちまう野郎たちなんて。 偉いから、能力があるからなんだってんだ。 そんな能力の所為で、こっちがどれだけつまらない思いをしてるって思ってやがる。 そんな風に思うと、てめぇ勝手な偉そうなヤツを、嫌いにならずにはいられなかったのだ。 ゼノ 「ふむ?ではどう話せという。     問答無用で攻撃すれば貴様は反撃するだろうが、それで仕留めてもつまらん」 彰利 「いや……やめてね?不意打ちでキミに攻撃されたらアタイ、かなりヤバイから」 アタイにとって、ゼノは天敵だ。 コヤツ相手じゃあデスティニーブレイカーの野郎は効果を見せないし、 こいつの漆黒鎌はアタイの黒を殺す。 いやもう……これでほんと余計な力持っちゃったら、 それこそ天敵以上の相手になっちまう。 彰利 「変わらないキミのままでいてください」 ゼノ 「フン断る」 彰利 「即答!?」 しかも、断るや黒のマントを揺らし、そこから───ってやべっ!! ゼノ 「断ち切れ!“凶漆月の外套”(まがうるづきのがいとう)!!」 揺れたマントから漆黒が放たれる。 ダークネスフラッシャーのような、だがそれとは明らかに威力が違った闇の刃。 それは、本当にとんでもない速度でマントから放たれ、 こう……シュウッ……キィン!って感じに、剣閃のようなものがゆっくりと出て見えた、 と思った瞬間にはほんの一瞬で飛び消え、城を水平に切り刻んでいた。 ゼノ 「さて?あとはちょいと小突いてやるだけで倒壊するが」 彰利 「ククク、やってみるといい。     そうした瞬間、アタイはなんの恨みもない城をゼノがぶち壊したって、     水穂ちゃんに告げ口する」 ゼノ 「ならばその舌!引っこ抜いてくれる!!」 彰利 「なんで!?」 ゼノが襲い掛かってきた!コマンドどうする!? 1:たたかう 2:サミング 3:水穂ちゃんへtell 4:敷布 5:今夜はマ〜ボ〜♪ ───4と5なに!?ええい1だ!!やってやるぜコンナラァ!! ギャアもうこげなところで時間くってる場合じゃねーのに!! 【ケース735:昏黄悠黄奈/城にモンスターがゴロゴロ居るゲームってどうなんだろう】 ゴッカッゴッカッ…… 悠黄奈「………」 階段を、奇妙な音とともに降ります。 まるでゲームみたいな音がなるなぁ、 なんて思いながら、一度通った道を登るのではなく降りてゆく。 階上の方にはとくにこれ、といったものはなく、だからこそ下に降りているわけですが。 悠黄奈  「…………フェンリル」 フェンリル『……グル?』 召喚しておいたフェンリルに話し掛ける。 わたしより少し先を歩いていた彼は、 わたしの言葉にピクンと耳を動かすと、ゆっくりとわたしへ振り返った。 悠黄奈  「この城に人の気配は?」 フェンリル『……主。それくらい己で探れないのか』 悠黄奈  「気配探知くらいは出来ますけど。あまり高性能ではないので。       フェンリルは鼻が利くでしょう?」 フェンリル『………』 どことなく困ったような顔をして、フェンリルが鼻をヒクヒクと動かす。 なんとなくわたしも真似してみますが、 城独特の……なんというんでしょう、あまり得意ではない匂いがしました。 フェンリル『“人”の気配はしない。だが、嫌な気配ならいくつかある』 悠黄奈  「機械、ですか?」 フェンリル『……喩える言葉が見つからない』 悠黄奈  「?」 喩える言葉が見つからない、とは……また変わった答えが飛び出しました。 思えば人が居るにしてはあまりにも静か過ぎる城。 機械のナイトはひっきりなしに製造されていますが、それ以外は───……? ……ナイトが、ひっきりなしに……? 悠黄奈「……まさか、ですよね」 思えば、どうしてノヴァルシオは滅ぶことになったのでしょう。 これだけの製造技術を持ちながら、何故発見された時には既に無人だったのか。 その疑問が、どうしてかチリッ……と思考によぎりました。 大きすぎる技術は人の手には余る。 とはいえ、あれだけ完成した技術は人の手に余ったところで、自律で運動出来る筈。 わざわざ人の手など借りる必要は───…………必要が、ない? 悠黄奈「あ……」 自分で考えてみた言葉が、まるで答えでもあるかのようにすとんと落ちた。 それはひどく残酷なことだけど、何処か当然とも思える答えで…… 確信は、それはもちろんないけれど、それなりの説得力を持っていた。 ノヴァルシオ、というとんでもない機械文明があったにも係わらず、 現代側のフェルダールには機械文明は存在していなかった。 探そうと思えば、見つけようと思えば過去の人たちにだってそれは発見できたはず。 なのに、それは存在しなかった。 それはどうしてなのか。 悠黄奈  「力に溺れる、というのは……」 フェンリル『醜いものだな。……主、客のようだ』 悠黄奈  「はい、解ってます」 ぎしり、と。 遠く続く通路の先に、一人の使用人らしき服装の人を見つける。 けど、フェンリルが言ったように、この城には“人の気配”はしないのだ。 つまり、あれは─── 女性 「しん、にゅうしゃ……侵入者……レイ、ナートさマのため、に……排除……」 ぎしり、ぎしりと動くソレは、もう人間じゃあなかった。 体のところどころからボルトが突き出ていて、動くたびにソレがギリギリと回転してゆく。 大きすぎる力は周りを巻き込む。 その結果がそこに存在している。 恐らく、かつてのノヴァルシオの住人がそうであったように、機械にこそ体を奪われて。 “機械”に人間の暮らしが出来る筈もなく、 けれど体は人間だから、必要なものを摂取しなければ死んでゆく。 ……文明が高すぎたんだ。 人が機械に食われてしまうほど、あまりにも。 自律を覚えた機械は己より劣る人間を手駒にして、 機械として生き、人の限界の果てに死んだ。 つまり─── フェンリル『レイナートも支配されている確率が高いか』 悠黄奈  「ええ、恐らく。皆さんの話を聞くに、       こんな暴挙を働くような方ではないと思いますし」 言いながら、武装である槍を手にする。 氷結槍剣、と言う名前であった精霊武具は、 亜人種のみなさんの手で完全に槍へと変化していた。 弓に変化するとか剣に変化するとか、ラグナロクのようなギミックは当然ありません。 ですが阿武祖龍弩(アブソリュード)という名前の氷結弾を、槍の先から撃てたりします。 ……なんでしょうね、この名前。 女性 『ア、ア……ギ……』 めきめき、と音を立てて女性の体が機械に溢れてゆく。 その過程、ぶちぶちと肉を裂く音と、 人としての痛みにあげられる悲鳴が、いやに耳に残る。 痛いなら変異しなければいいのに……とツッコミを入れてしまうのは、 なんだかんだでわたしがいろいろな方々と長く一緒に居た所為でしょう。 影響的に言えば、彰利さんと博光さんの影響が物凄いんでしょうけど。 女性 『ギアァアアアアアアアム!!!!』 全身のほぼを露出した機械で埋めた女性が、四つん這いになって駆けてくる。 ……その姿を見て、ポッチンという名前が頭に浮かんだのは、 きっとわたしだけじゃない筈です。 オーッギョッギョッギョとか言ってくれないでしょうか。 悠黄奈「《キンッ───》昏黄悠黄奈、参ります」 でもおふざけはここまで。 わたしは自分の中でスイッチを切り替えると、蒼色の髪を揺らし、疾駆した。 悠黄奈「“捻り穿つ”(スパイラルディガー)!!」 イメージは螺旋。 槍を捻るのではなく、槍に纏う冷気を光速回転させ、 それをするどい槍のように扱い、機械の眉間へと突き出す───! けれど、そんな“点”への打突を機械はなんなく首を逸らすことで躱し、 悠黄奈  「はい、ご苦労さまです」 女性   『ギ?』 フェンリル『フゥウウォオオオオオオンッ!!!』  コシャアフィガガガガァアアアッ!!! 後ろで待機していたフェンリルが放つ、 圧縮氷結レーザーをまともにくらい、壁へと吹き飛ばされる。 わたしはそれを確認すると跳躍して、中空からソレを見下ろす状態で両手を前に突き出し、 悠黄奈「逝きなさい」 フェンリルと同じく、氷の精霊としての力を存分に放ち、 レーザーとなって出た氷結魔法で機械を完全に凍らせ、破壊した。 悠黄奈  「……ふう。お疲れさまです、フェンリル」 フェンリル『たまには暴れないと、退屈さに負けてしまいそうだ』 コルルル、と唸り、 ペッと氷を吐き出す彼の額をメッ、とぺしりと叩くと、彼はしゅんとする。 でも確かに、暴れさせないと鬱憤がたまるのは仕方の無いことだと思います。 わたしもこの世界でのみの存在。 いつか時がきたら、みなさんにも忘れられてしまうような……うう、ダメですね、わたし。 やっぱりちょっと寂しいです。 ……その時が来たら、わたしもみっともなく泣いたりするんでしょうか。 そんなことを思いながら、フェンリルとともに歩いてゆく。 抗いようの無い未来に、小さな怯えを感じながら。 悠黄奈「…………彰利さんのブレイカーでなんとかなったりは───しませんよね。     壊せたとしても一時的なものでしょうから」 未練がましいのは自分でも解ってますが、それでも願わずにはいられない日常がある。 彼らと一緒に居るのはとてもとても楽しいから、 それが終わってしまうことが悲しいのも当然なのだ。 悠黄奈「じゃあ、悠介さんの創造で新たな命を……ダメですね」 それは“命”をあまりにも軽んじた考えだ。 自分だけが助かろうなんて、本当に都合のいい自己満足な考え。 これは却下だ。わたし自身が許せません。 ……じゃあ。 悠黄奈「…………博光さんの常識破壊?」 といっても、基本が人間の彼に、命や意思をどうにかできる力があるとは思えません。 その、言っては悪いとは思いますが、やはり人間なのですから。 【ケース736:ルナ=フラットゼファー/ニードルフレイルをモーニングスターと呼ぶ】 …………ふよふよ…… ルナ 「………」 ふよ…… ルナ 「…………むー」 どこもかしこも異常なし。 部屋を順々に見て回るけど、レイナートのレの字もなかった。 たまに使用人みたいなのがガクガクとヘンな動きで歩いてたりしたけど、 今は姿を消してるから見つかることもなかった。 ルナ 「…………」  シュッ!ゴビンッ!! 使用人「ゴガッ!?」 試しにマツボックリを投げてみた。 すると、女とは思えない声をあげたのち、首を180℃回転させて振り向いてくる。 ……でも姿を消してるから見つかる筈もない。 使用人は首を戻すと、またガタガタと妙な動きで歩いていった。 えと。なんていったっけ。うーんと………………あ、そう。ギルチックだ。 ホモっちがマメマメ(みずき)のゲームを奪ってやってたので出てた機械。 アレの動きにそっくりなんだ。 うーん……どうやら最近の人間は、首を180℃回転できるらしい。 面白いものを見た気分だった。 ルナ 「………」 バックパックに入ってるマツボックリは、自然要塞の中で悠介が創造したものだ。 松の木が見たい!と発作的に創造したのがそもそもで、 その時の悠介の顔っていったらなかった。 親におねだりしている子供みたいな顔でエロちに、 “創造していいか!?いいよな!?いいんだよな!?”って詰め寄ってた。 エロちは即答で“だめだ”って言ってボコられて、 AHEEEEYYY!ってヘンな声出してたけど。 度胸あるよね。 倭を求める悠介に向かってそれを拒否するなんて。 ……なんて、そんなやりとりを思い出して、思い出し笑いをした。 ルナ 「……む」 不思議だなー、と思ったのはその時だった。 わたしは、どちらかというと人見知りをするほうだ。 というか、悠介以外のことなんて結構どうでもいい。 そりゃ、深冬は大事だけど、それでも……悠介に言ったら怒るだろうけど、 わたしの中では変わらず悠介が一番なのだ。 なのに、他の誰かのことで笑えるなんて、自分にしてはとても珍しい。 そう思えて、首をかしげた。 ルナ 「んー……」 まあ、とりあえず。 見回りは終了したことだし、戻ろう。 そう思って、壁抜けをして一気に悠介の気配を追ってみると───ひとつの部屋に出た。 ルナ 「んむっ……?ゆーすけ……?」 真っ白だった。 なにかガスのようなものが出てるみたいだけど……その中心に、 たしか“うちゅーふく”とかいうものを身に纏った…………誰? チュージ=ウー『シュコー……フシュー……シュコー……         …………ぐ〜〜〜ぜん〜、夢なの〜♪シュコー……。         ……は、はは、なんてな。なにやってんだ俺───……は……』 ルナ     「………《じー……》」 チュージ=ウー『ぐああああああああああああああっ!!!!』 チュージ=ウーが叫んだ。 あなぐらむーとかいうので、宇宙人のことらしい。 えと、それはかんけーないんだけど。 とりあえず反応で解ってしまうのは付き合いの長さって考えていーんだと思うけど。 ルナ 「……なにやってるの、ゆーすけ」 悠介 『ち、違うんだなも!ぼぼぼ僕は!僕こそは!     戦国三大名将、信長・秀吉・家康を育んだ     三河湾に名を轟かす部門の名家・三河家が嫡男!三河───海!!』 ルナ 「じゃあその宇宙服切り刻んでいい?」 悠介 『死ぬわ!!解るだろ!?これ毒ガスなんだよ!』 ルナ 「むー……どうして宇宙服なんて着たの?     毒ガスを吸い込むブラックホール〜とか創造すればよかったのに」 悠介 『安易に正攻法でいくのもなと思ったんだよ。     こういう仕掛けなら、多分毒ガスをなんとかする仕掛けもある筈だ、って』 ルナ 「………」 悠介 『既にガスが充満しすぎてることにはツッコまないでやってくれ』 つまり普通に時間切れだったんだろう。 ルナ 「んむー……」 壁を破壊すればいいのに、って言っても多分頷かない。 こういう時のゆーすけはやけに頑固で困る。 ルナ 「それで、どうするの?」 悠介 『いや……そもそもな。どうしてお前は平気なんだ?』 ルナ 「?」 平気?……あ、そういえば。 ガス浴びてるのに全然平気だ。 でもさっきからなんか甘い気分というか……あれ? ルナ 「……ねーゆーすけ。これ、毒ガスじゃなくてなにかの粉みたい」 悠介 『………』 防護メットの先で、悠介の目が変異する。 多分、分析してるんだろうけど……あ、しゃがみこんだ。 なにするのかな。 地面になにか、指で書き始めたけど…………あ、のの字だ。 ……あれ?いじけてるだけ? 悠介 『……メリケン粉だった』 それだけ言うと、物凄い勢いで粉を吐き出してる部分を指差す。 ……見れば、勢いと、その下から出ている突風とでガスに見せていただけみたいで。 それに気づかないくらい、なんてゆーか状況っていうのにハマっていたらしい。 悠介 『閉じ込められてのトラップは……男の浪漫だったのに……。     メリケン粉……よりにもよってメリケン粉……』 あ。頭抱え出した。 ……うん、とりあえずもう斬っちゃおう、この部屋。 ルナ 「《ゴキィンッ!》えいやー」 封冠を少しずらして、力を解放した状態で鎌解。 全身に存在する死神の回路から流れる力が鎌に移るのを確認すると、 今度はそれを、しゃがみこむゆーすけの頭よりほんのちょっと上を払うように、 ヒンッ───と振り払う。 すると、……どういうことか、元々切れていたりしたのか、 城の一部が不自然な吹き飛び方をした。 特に……下の……下!? あ、あれー!?どーして下の方がズレるのー!? 悠介 『ギャッ!!……つ、ついに来たっ!東京大地震!!』 ルナ 「やけっぱちでヘンなこと叫ばないのー!!もー!」 宇宙服のまま、ホギャーと叫ぶゆーすけを後ろから持ち上げて、 ズレ、落ちてくる天井を壁抜けで避けて、大空の下へと飛び上がる。 ルナ 「わー……」 その下で、ズズゥン……と崩れ落ちる城の一部。 高い位置だったから他の場所にはそう影響はなかったみたいだけど、 案外ろーきゅーかとかが進んでたのかもしれない。 うん、古いんだからきっとそーだ。 …………うう、わたしの所為だよね、斬ろうと思ったのは事実だし。 でも、下のほうに影響なんてない筈なんだけど……ホモっちがなにかやったのかな。 そう思って、土煙が風で流される頃にもう一度下方を見下ろしてみる───と、 なにやらところどころで巻き起こる衝突音。 なにかな、と目を深紅に染めて見下ろしてみると、 ……ホモっちと、どうしてかゼノが戦っていた。 彰利 『貴様も大概しつこいね!なしてアタイをこう執拗に狙うのかね!ンン!?』 ゼノ 『フン!それは───』 彰利 『なにかね!!もっと大きな声で言いたまえ!』 ゼノ 『それは───』 彰利 『それはなにかね!!早くしてくれないかね!?私は忙しいのだがね!!』 ゼノ 『貴様───』 彰利 『なんだというのかね!さっさと話したまえよ!それともなにかね!?ンン!?     キミは私を馬鹿にしているのかね!!』 ゼノ 『貴様なぁあああああっ!!!』 彰利 『わー!怒った怒ったオーコッター♪小さい小さい死神ち〜さ〜い♪』 ゼノ 『待て貴様今すぐその首掻っ切ってくれる!!』 彰利 『あ、水穂ちゃん』 ゼノ 『なに!?』 彰利 『砂掛けババァーーーッ!!』 ゼノ 『《バサァッ!》ぬぐっ!?貴様!!』 彰利 『ゲェしまった!綴じ目野郎だから砂掛けが意味をなさねー!』 ゼノ 『《ギパァッ……!》覚悟は、できたか……!!《ヒクヒク……!》』 彰利 『あ、あらー……あの、目ェ閉じません?     キミ、目ェ開くと力がとんでもなく上がるしさ〜……』 閉じてた目を開いたゼノが、深紅眼でホモっちを睨んでる。 ……うん、よっぽど自分を鍛えたのか、この世界に下りる前よりかなり実力が上がってる。 特に、この眼を開けた時の威圧感は相当だ。 なにか、特殊な能力でも手に入れたのかもしれない。 あー……でもダメだ。 ゼノ見てると、フレイアが暴れ出す。 コロセコロセ〜って。 だから、ずらしておいた封冠をパチンと締めると、その雑念を無理矢理押し込めた。 ルナ 「………」 で、今更なんだけれど。 どうしてゼノっていっつも眼を閉じてるのかな〜って。 閉じてるときでも結構威圧的ではあるんだけれど、 眼を開けた時の威圧感は、正直に言うと怖いくらいだ。 自分の死神としての回路が開ききったから余計にそう思うのかもだけど、 あれは……ちょっと特別なものだと思う。 ルナ 「………」 あの日、ゼノを描き、創造したのは悠介だ。 悠介ならなにか知ってるかもだけど、 気落ちしてるみたいだし話し掛けないほうがいいかな〜って…… ルナ 「…………ねぇ。いつまでそれつけてるの?」 でも言いたいことは言おう。宇宙服のままの悠介に。 悠介 『…………《ズボリ》……」 無言で防護メットを外した悠介は、次にわたしにしがみつきながらも宇宙服を脱いでゆく。 ……うう……こうゆ〜の、なんか頼られてるみたいで嬉しい……。 普段、わたしになんか頼らないゆ〜すけだから、こう……うう。 ルナ 「ゆーすけ、やっぱり空飛べないんだねー」 悠介 「花鳥風月(セイクー)使えば飛べるけどな……って、     そういうこと嬉しそうに言うのはやめなさい」 ルナ 「えへー」 顔が、にこー、ってなるのを止められない。 こういう時は、空飛べてよかったなーとか思ったりする。 あまり、死神である自分が好きじゃなかったから、そういうのは特別嬉しい。 思わず……そう、思わず、まさに無意識にゆーすけの体をぎゅうっとしてしまい、 その拍子にヘルメッツが落ちた。 それは戦っている二人のもとへと落下しドゴォンッ!! 彰利 『ギャーーーーーーッ!!』 ……ホモっちが大地に沈んだ。 そして、それに気づいたゼノがわたしたちを見上げると、 その双眼をギパァンと本気で見開いて、こっちめがけて飛んで───きたぁああっ!! ルナ 「わっ、わっ、ど、どうしよゆーすけ!」 悠介 「厄払いには昔から塩を撒く、と決まっている!───塩が出ます!」 悠介が創造で塩を出す。───……塩? ルナ 「……なにそれ」 悠介 「カップ焼きそば“俺の塩”だ」 既に完成している状態なのか、モシャアアと湯気が立ち上っていた。 ……あ、けっこういい匂いかも。 そう思った頃にはゼノはすぐそこまで来ていて、 ゼノ 「貴様ら……!我の戦いを邪魔するからには相応の覚悟が」 悠介 「そぉい!!」 ゼノ 「《ボチャア!!》ぐわぁああああああああっ!!!」 見開かれっぱなしの眼と顔面へと、その熱そうな焼きそばがぶちまけられた。 うわぁあああああ……!!熱い……あれ、見てるだけでも熱いよぅ……! 現にゼノも、焼きそばを振り落としたあとに顔を庇うようにして暴れまわってるし。 悠介 「理解しろ、ゼノ……。貴様は一杯の焼きそばにすら勝てない……」 ルナ 「扱う人にもよると思うんだけど」 悠介 「だな。提督なら絶対、熱湯を入れたままやってたに違いない」 ルナ 「うや、そういう意味じゃなくてね?」 ゼノ 「《ミキミキミキ……!》キッ……サマァアア……!!」 悠介 「ママレモンをくらえ!!」 ゼノ 「《プチュー!》ぐああああああああああっ!!!!」 悠介 「……勝った」 で、焼きそばの痛みを乗り越えた次はママレモンだった。 悠介 「じゃ、行くか」 ルナ 「そだね」 どーせゼノだし、わたしは気にすることもなく地面の方へと降りていった。 どうやって実力を上げたのか〜とかは、別にわたしが知らなくてもいいことだし。 ……と、降りていった先でみんなが揃っていることを確認した。 というよりは、ホモっちを心配して駆けつけてるような。 みんなっていっても悠黄奈とフェンリルだけだけど。 ルナ 「やーはー、ユッキー」 悠黄奈「ゆき、がついてたら誰にでもそう言いそうですね」 ルナ 「んむ。遠慮はしない性質だからね」 悠介 「しょっちゅう、勘弁してくれって場面でそういうところを露呈する妻だ」 彰利 「そしてアタイはその夫の親友です」 悠黄奈「ひあっ!?い、いつから起きてたんですか!」 彰利 「イエア!倒れた瞬間、鼻を打った痛みでお目々パッチリさ!     どうぞお手にとってごらんください」 悠介 「……目玉差し出されても困るんだが。     どうなってるんだ?お前の眼球神経って」 彰利 「ワイヤレス眼球なんだ」 悠介 「否定したいのに、お前ならありえそうだって思えるから不思議だ」 彰利 「ィヤッハッハ、やだなぁ悠介。……現物がここにあるじゃないか」 眼球 『オッス、オラ小林(こばやし)』 悠介 「…………喋ったが」 彰利 「眼球の御野次(がんきゅうのおやじ)という名前だ」 眼球 『オッスオラ小林』 悠介 「小林だって言ってるが」 彰利 「ウソだから気にせんでええよ」 ……どこに口があるのか、とか訊かないのかな。 目玉なのに……と思ってデコピンをボチュンッとしてみると、 ホギャーと叫んでホモっちが地面に転がってのた打ち回った。 ……うわー、ちゃんと繋がってるんだ、痛覚。 どうやってかは知らないけど。 彰利 「ふぅ、ふぅ……まったく無茶をなさる……。     あ、でさ、なんぞかみつけた?レイナートとかレイナートとか」 悠介 「レイナートは居なかったが、魔神双破斬の奥義書を手に入れたぞ」 彰利 「キャアマジ!?読ませて読ませて!」 悠介 「剣奥義だぞ?体術使いのお前に関係あるか?」 彰利 「ねーけど見たいじゃない?」 悠黄奈「それじゃあ、移動しながら読みましょう。……空に物騒な影が居ますから」 彰利 「ウィ?……あーあ、彼ね」 見上げれば、ハンターの一位。 イレイザーでも通用する強さだけど、多分まだフレイアの方が強い。 ……わたしはあまり、そ〜いう強さには傾いてないけど。 彰利 「ウヒヒヒヒ……たまんね〜……たまんね〜よ……」 悠介 「奥義書見ながら頬染めて、涎たらすのやめないか?」 彰利 「画太郎漫画のキャラの顔って結構好きなんよ。     こう、日々涎をたらしてるところとか」 そんなこんなで移動開始。 ユッキーが地下への階段を見つけたらしいから、彼女の案内のもと、歩いてゆく。 ゼノはママレモンに目をやられたまま、 こすればこするほど泡立つ悪循環に物凄い絶叫を轟かせている。 うん、無視しよう。 悠黄奈「ここです。先がどうなっているかまでは調べてませんけど、多分───」 悠介 「研究所か。……気、引き締めないとな」 悠黄奈「ああそれと、宝物庫があったので一応全部回収してきました」 悠介 「全部!?城の宝物庫っていったら相当なものだと思うが……!」 悠黄奈「いえ、とくにありませんでしたよ?機械文明への目覚めが、     ファンタジーチックな稀少品への興味を薄れさせたみたいです。     多分、資金作りにいろいろ売ってしまったんじゃないでしょうか……」 悠介 「ぐあ……アホゥだな、まったく……」 彰利 「あたしゃ機械なんぞよりそっちの方がほしいわい」 悠介 「どーかんだ」 呆れた風に言う悠介。 でももはや一瞬にして呆れの臨界を迎えたのか、 興味なさげにしたのちにホモっちと一緒に地下への階段を降りながら奥義書を眺め始める。 わたしも、結局は特にすることもなかったから、 ゆーすけの首に背中から抱きつく感じにして、肩越しに奥義書を眺めた。 次いで、フェンリルに乗ったユッキーがホモっちの隣から奥義書を覗く。 ……剣を使わない人にしてみればよく解らない言葉だらけの本。 だけど、奥義を覚えようとして見るわけじゃないのだから、 なんていうのかな、うん。割と面白かった。 ───……。 ……。 で、地下。 降りていくと、なんだか物凄く通路が枝分かれしいていて、がくりと来た。 うんざり、って言葉がよう合ってる気がする。 でも先が見えないってわけでもなくて、なんていうんだろ。 地下に、もうひとつ世界があるみたいな雰囲気。 通路は網目の格子のような橋みたいになっていて、それがいろいろな部屋へと続いている。 天井と呼べるものは地下と地上とを隔てる大地のみで、 下を覗いてみれば、ずぅっと続く穴の途中途中に、 今わたしたちが立っているような網目格子の橋がいっぱいある、って感じだ。 その数の所為で、どこに何があるのかわからなくて困ってるんだけど。 悠介 「うーお……これはすごいな……」 彰利 「なんつーか……ねぇ?     核ミサイルの発射口の一番下で、マグマの炉が灯ってる感じっつーの?     ……あの光ってるの、なんなんデショ。マジでマグマ?」 悠黄奈「───……いえ。恐らくノヴァルシオのコアです。     空界に存在していたコアよりも、よほど純度の高い……」 彰利 「……つーか……中心みてみ中心。なんかデケェ管みたいなのがあって、     コアんとこから機械が……なんだありゃデッケェ!!」 ホモっちの言うとおり、全網目格子橋の中心…… この大空洞の中心には、巨大な芯管みたいなものがあった。 巨大なビルに支柱がある、みたいなのだ。 けれどそれは支柱ではなく、精製された機械を運ぶ管になっているらしく、 まるでストローで吸われるみたいに、遥か下のコアから機械が昇っていってる。 彰利 「デカッ!ほんとデカッ!     中井出の野郎、どれほどの速度で敵ブチノメしてんだ!?」 悠介 「それは気にしないほうがよさそうだ。あまり、時間に余裕もなさそうだし」 彰利 「ウィ?……ゲェーーーーッ!!」 悠黄奈「わ、わーわーわー!!」 悠介の言葉にみんな首を傾げたけど、その意味が解った。 機械が地上へ吸われる速度が遅くなったカナ、と思うや、 下のほうから巨人より一回りくらい大きな機械が昇っていったのだ。 それは見るからに強そうで、エロちでも勝てるかどうかって感じだったから─── 彰利 「急ぐべ」 悠介 「んだ」 うむ、と頷く二人とともに、わたしとユッキーは駆け出した。 駆け出して、また一人一人に分かれて、一部屋ずつを虱潰しに探し回った。 ホモっちが言うには、急がねばならんときこそ虱潰しなんだって。 じゃないとレアアイテムを取りこぼすことになる、とかで。 Next Menu back