───冒険の書293/超自然野郎博光───
【ケース736:中井出博光/ルネッサンス】 スイッチひとつで街が動く世界をなんかアニメで見たことある……こんにちは、博光です。 第三芦ノ湖がどーとか言ってたけどうん、それはどうでもいい。 結局内容がまったくちんぷんかんぷんで、なにか知らんがおめでたかったらしいアレなど、 僕にとってはやっぱりよく解らん物語だったので。 内容が解らなくても途中でダレても、サワヤカスムァ〜〜イルと拍手とおめでとうがあれば 全てが許される時代はとうに終わったのだ。 ……いや……でも結局なにがやりたかったんだろうなぁ、ガイ○ックス。 続く彼氏彼女の事情もなんというか、 流石ガイ○ックスだぜ!ってくらい終わりがグダグダだし。 懐かしいなぁ。 そういえばグレンラガンとかゆーアニメがのちにやったらしいけど、 ガイ○ックスって時点で既に終わりはグダグダだろうと思ってた僕はダメなやつですか? 見てないというか時代が時代だっただけに見れなかっただけなんですけど。 うーむ……やっぱり無理してでも地界に住んでおくべきだったのかなぁ。 見てみたかったかって?うん、見てみたかった。 だってそれが楽しいかどうかなんて、自分で見なきゃ判断できないし。  ……と、いうわけで。 ゼノ 「………」 中井出「やあ」 何故か空中に漂っていたゼノ氏を前に、 苦しみの原因であるシャボンみたいなのを水キャリバーで流してあげた。 そして地上に降りた僕らが、今まさに……なんだろ。 ゼノ   「礼は言わんぞ」 中井出  「言わなくていいから有り金全部、置いていけ」 ゼノ   「なに!?何故我が貴様なぞに!」 中井出  「礼、言いたくないんでしょ?だからモノで示せ。な?ホラ」 ナーヴェル『お前ほんと最悪な……』 中井出  「え……あれ?こ、言葉が嫌ならモノじゃない?」 ナーヴェル『無自覚な外道って珍しいなおい』 中井出  「おお、外道って言葉は結構好きだよ僕。正義なんかよりよっぽど好きだ。       けどまあ僕が架してる外道なんて言葉は、       ホンモノの外道に比べればかなり底辺なんだろうけど」 ナーヴェル『へーえ?ホンモノってのは例えば?』 中井出  「外面よくして様々な女をとっかえひっかえで抱いたりとか、       自分を信じてくれる大事な存在を本気で売ったりとか、まあいろいろ」 外道が望む永遠……じゃなかった、 君が望む永遠が素晴らしいものだと思っている人ってどのくらい居るんだろ。 とりあえずアニメの“わーい僕自由だー!”は大変好きですが。 ま〜……かつてのエロマニアな僕から言わせてもらえば、君が望む永遠は凄まじかった。 主人公がもうひどいのなんの。 ……いろいろ思い出したくもないストーリーもあったけどね? 中井出  「ところでグランセェ〜ィリアさんは何故ここに?」 ゼノ   「グランスルェイヴだ。二度と間違えるな」 中井出  「断る で、何故ここに?」 ゼノ   「ことっ……!……ああ、もういい、時間の無駄だ。       我は己こそ最強と謳うレイナートという男を破壊しに来ただけだ。       貴様に用なぞ…………ぐっ…………な、い……!」 中井出  「……?ええと、何故そこで苦しそうに言うのかは知らんけど。       べつに最強を謳うくらいべつにいいじゃない。言うだけならタダなんだし」 ゼノ   「モノに頼ったままの分際で最強を謳うのが許せんだけだ。       ならば最強はヤツではなく、利用された“モノ”だろう」 中井出  「屁理屈っぽく聞こえるけどうん僕賛成。       そして僕は武具が最強ならそれでいい。つまりキミは、       自分が気に入らないというただそれだけの理由で国家を潰しにきたと」 ナーヴェル『言葉にすると物凄くてめぇ勝手な話だな……。ちなみにてめぇは?』 中井出  「え?俺?」 俺……俺は…… 中井出  「えーと。ほら、なんかあの映像の中で僕、名指しで呼ばれてたし。       なんか行かないと悪いかな〜って」 ナーヴェル『そんな近所付き合いの感覚でなのかよ……』 中井出  「か、菓子折り持っていったほうがいいかなぁ!(毒入りの)       それともハムの詰め合わせ(毒入り)を持って───それだとお中元か?       よしこうしよう!とりあえずデカい箱を用意するんだ!       そしてその中にゼノ太さん(毒入り)を封入!そして───」 ナーヴェル『毒入りに対するそのこだわりはなんなんだ?』 中井出  「一流でも三流でも、なにかに対するこだわりを見せてこそ、       贈られた相手への誠意になると信じてる!一方的に!!」 ナーヴェル『そりゃただの嫌がらせっつーんだよ!!』 中井出  「素人がなにか一工夫したくて失敗するのが代表例となります。       失敗するまでもなく、俺ならその工夫に堂々と毒を盛る。       それが……スマートッテモノサ」 頑張って作った料理が恐ろしいものに仕上がる、などというドジッ子的なものではない。 むしろ敢えて入れることこそ真実の愛の悲鳴。 ……ていうか俺達は何故地下への入り口を前に、こんなこと話し合ってるんだろう。 中井出  「えーと、それじゃあ降りるけど。忘れ物はない?       ハンケチーフは?ちり紙は?うまい棒は?」 ナーヴェル『よく解らんが、       それらがここに降りるために必要じゃないのはなんとなく解った』 解られてしまった。 ナーヴェル『んで?降りるのか?お前らが行かなくても俺は行くが』 中井出  「へへっ……流し忘れて放置された風呂場の水臭いこと言うなよ。       先に行って全てを滅ぼして、見つけた宝だけ全部俺にください」 ナーヴェル『うーーーーっひゃーーーーっ!!水臭ぇえええーーーーーーーっ!!!!』 中井出  「知りなさい……暴力だけではジャイアン帝国しか生まれませんよ……。       そこに強奪があってこそ、真ジャイアン帝国が生まれるのです……」 ナーヴェル『ただ単純に考えて悪化してるだけじゃねぇか世間的に!』 中井出  「えー……?だって僕帝国のヤツがどうなったってどうでもいいし……」 ナーヴェル『ほんっっっとに見事なまでに自己中心的だなお前っ……!       ここまでくるといっそ清々しいぞ……!?』 中井出  「え?じゃあ貴様は帝国のやつらの心配、するの?僕はしないけど。       僕は日々、自分のことでいっぱいいっぱいさ。       だから自分も救えて誰かも救えるなんてワンダホーでビューティホーでエクサ       イティンな行動なんてとてもとても。       見知らぬ誰かの心配まではさすがに出来ないね、うん。断言する」 だって僕、自分が可愛いもの。 ……かなりダメ人間代表的言葉だろうけど、それは一般的な集団思考ってやつさ。 ナーヴェル『見知らなかったらダレでもどうなってもいいって、       そういうもんでもねーだろ』 中井出  「ぬー…………いや、悪いがそれは無理だ。       帝国にお住まいの“なになにさん”たらステキなのよぅお〜!       とか言われたってさ、その人がある日病気にかかりました!とか言われて、       貴様はそれは一大事だ〜とか言ってピャーと駆けつけられる?うん僕無理。       出来ることと出来ないことを見極めるのも、       面倒だと思うこととあいつのためなら面倒でもないと思えるようになるのも、       そりゃかなりの付き合いがあってこそでしょう。       救える力があるから救うなど、色目もいいところじゃないか?       それで救いまくって、救いまくってた所為で時間がとれなくて、       別の場所で救えなかった人が居たら自己嫌悪とかするの?       やめてよねもう、全てを救うなんて自己への過信も甚だしい。       いーかこの野郎。人が救える人の数なんて、       そりゃまあ立場や地位にもよるだろうけど、限りがあるものなのさ。       や、救えてるつもりでも救えてねーのかもしれねー。       たとえ感謝されても、言わなきゃ救われた方の世間体が悪いから、       ただ言ってるだけなのかもしれねー。言葉だけで中身がねーのかもしれねー。       ひとつ訊くけどさ、ただ助けたいだけ?助けてなにがしたいんだ?       感謝されたいだけ?力があるんだぞーって言いたいだけ?」 ナーヴェル『……いや、感謝はべつにいらねーし、力もべつに関係ねーな』 オガーと一気に長ったらしく喋ると、 ナーヴェルさんは呆れたように頬を掻いて、そうおっしゃった。 中井出  「見知らなかったら誰でもどうなっていいなんてこと、       多分いろいろなヤツが考えてるよ?       事故が起こっても自分だけは絶対に大丈夫、       なんて思うのがヒューメンなんだから」 ナーヴェル『じゃあおめーは事故が起こって助かった先で、       他に苦しんでいるヤツが居たら助けないのか?       絶対に大丈夫、って理想が叶った先で、お前はどうする』 中井出  「ザ・その時の気分!絶対に助けるなんてそんな理想論はどうでもヨロシ。       たとえば今にも崩れ落ちそうな建物や、火事で燃え盛る建物!       中にはまだ子供が残されて……!       さあ、この危険な状況!あなたならどうする!       ……助ける、って言った人は半端勇者だね。       火事ってもんをその眼で見てから言ってもらいたい。       傍観者で居るのは人間的だと思うよ、うん。       正解なんて個人差だろうし、どうして助けに行かないんだ〜とか言われても、       そりゃお前、死ぬのが怖いって自覚できてるからに決まってる。       それを注意するのはかなりひどいことだと思うよ」 人には個々があって、あなたとは違う。 “まだ中に子供がー”と叫ぶ親は、何故子を連れて逃げなかったのか。 そりゃお前、誰だって自分が一番かわいいのさ。あんただってそうだろ? で、逃げた先で親であることを思い出す。 それは、その人が“人”として自分の命を優先したからだ。 “親”として行動したんじゃないなら、それは仕方のないことさ。 命の危険がある瞬間に、人であること親であることのスイッチを切り替えられるなら、 多分その人は世間的に立派な人なんだろう。 俺だとどうかな……なんか自分の命優先しそうな気も。 ……なんて言ってるくせに、多分助けに入っちまうんだ。 だって、そうしないとばーさんが報われない。 ……ウヌ……これって偽善だなオイ。 ばーさんのこと理由にしてるだけじゃないか。 じゃあばーさんのこと抜きにすると…………わー、相手選んでる僕が居る。 あいつなら見捨てよう、あいつなら助けよう、とかって。サイテー!僕サイテー! でも多分みんなそうなんだと思う。本能的に。 その時になってみないと“絶対”なんて言い切れないんだろうけど、 たとえば彰利が危険だーって時。 多分僕、彼には能力があるから〜とか咄嗟に思ってしまう。 じゃあ彼に能力がなかったとしたら? ……見捨てるのは後味が悪い。けど自分がカワイイのでいきたくねー。 わあ、最低だ僕。世間的に。人としては自分優先野郎として見事かもしれないけど。 中井出  「うむ!いろいろ考えたけど僕やっぱり自分がかわいい!!」 ナーヴェル『……なんか今、お前に魔王の座を滅茶苦茶譲りたくなった俺が居た』 中井出  「王に興味がないのでそんな称号は要らん」 でもなぁ……理想を思えなきゃ人として夢を見ることさえ出来ないとはいえ、 スーパーマンでもない自分は自分のことで手一杯です。 あなたの手は誰かを救うためにありますか? それとも愛する人と、自分の人生を支えることでいっぱいいっぱいの小さな手ですか? ……僕は、後者であって、しかも愛する者を失いました。 自分の人生でいっぱいいっぱいです。 いろいろ失ってみて解ることって結構あるね。 救えるつもりでいても、 周りが、環境が、状況がそうさせてくれないことなんてヤマほどある。 それでも救えなかった事実は、罪として世間からも自分からも舞い降りる。 なんだそりゃ、ってなものだけど、それがルールらしい。 救えないのは世間的に罪なんだ。 だから、俺はあまり地界のルールは好きじゃない。 ……まあ、このルールはどの世界でも似たようなものだろうけど。 中井出  「誰かを救う〜なんてのはさ、       救いたいヤツに任せとけばいいと思うよ、俺は。       必ず救う。絶対に救う、なんて勇者論を翳してる正義の味方に。       ……ただし、言うからには、正義を振りかざすからには救えないのはウソだ。       救うって言ってたのに救えない。それがウソじゃなくてなんだ。       責任の押し付けとかそんなことを言うんじゃない。“救う”って言った。       その時点で、そいつは正義の味方として救わなきゃいけない。       だから、期待させるだけさせといて、       救えなかったことに涙する勇者が俺は嫌いだ。       正義の味方は、“救うこと”に対してだけはウソをついちゃいけない。       魔王が倒せなくてもいい。悪い龍を倒せなくたって構わない。       けど、守ると言ったからには守れなきゃ、そいつはただの嘘つきだ」 ナーヴェル『…………厳しいな、お前。正義に嫌な思い出でもあるのか?』 中井出  「え?ないけど……なんで?」 ナーヴェル『ねぇのかよ!!なんなんだよお前偉そうに説教ぶっといて!』 中井出  「説教って感じるのは、兄さんにやましい心があるからだよ」 ナーヴェル『うーーーるせぇええええ!!!』 中井出  「《ベンパンベンパン!!》ギャッ!ギャッ!!」 魔王往復ビンタをくらいました。 中井出  「い、いーじゃんかよ〜〜!       ちょっと魔王に偉そうなこと言ってみたかったんだもんよ〜〜!!」 ナーヴェル『これだけほざいといてただ言ってみただけなのかぁあああああっ!!!』 中井出  「《バゴドゴベパゴバ!!!》AHEEEEEYYYYY!!!!」 その後わたしは魔王のナーヴェルさんにボコボコにされた。 ……ちなみにゼノ吉さんは、その様を興味深そうに……いや、 さっき僕が言った言葉を興味深そうに反芻してらっしゃったみたいです。 そして、反芻してからこそ止めようとも思わなかったのかもしれませんハイ。 というわけでだんだん容赦なくなってきた攻撃に、僕が誠意を以って応えた時。 その場はまさに戦場と化し、辺り一帯が消し飛んだことも、今ではいい思い出です。 そのことを僕は、神父の説教を受けながらしみじみと噛み締めておりました。 ───……。 ……。 ゴッカッゴッカッ…… というわけで地下へと降りてゆく僕ら。 というわけでもなにも、どういうわけなのかゼノ三さんまでついてくる始末。 ……あれぇ……?どうして彼が……? 中井出「あのー、ゼノ左衛門さま?何故僕らについてくるんでしょうか」 ゼノ 「そこに弦月彰利が居るからだ」 冒険者が冒険をする理屈みたいなのを唱えられた。 …………え?それで理解しろと? だが理解した!そうだよね!そこに楽しみがあるから、我ら原中は突き進むのだ! ……その原中自体が壊滅しちゃったけどね。 俺自身が解散だ〜というか脱退しちゃった今、 ほんと今更原中がどーとか言うのは虚しいだけなんだけど。 中井出  「階段が続くなぁ……」 ナーヴェル『機械技術を謳ってるなら、もっとこう、なぁ?       転移魔法みたいな機械ってのはねぇのかよ』 中井出  「機械で転移するのって、一種の魔法じゃないのかなぁと思う僕が一人。       機械技術だ〜とか言ってもさ、       “おお……!まるで魔法みたいじゃ……!”とか言ったらさ、       それって技術云々じゃなくて魔法なんじゃないかなぁとか」 ナーヴェル『機械技術にゃ魔力消費なんてねーだろ』 中井出  「うん、続けて言おうとしてたことを言ってくれて地獄に落ちろクズ野郎」 ナーヴェル『そこは素直にありがとうって言っとけよ……』 中井出  「だっ、誰がっ!なんでアンタ相手に素直にならなきゃいけないのよっ!       で、でもそうね、こんな時くら《パゴォン!》チャオジー!!」 ナーヴェル『あ……すまん。あまりの気持ち悪さに手が出た』 中井出  「そこまで気持ち悪いの!?ちょっ……どんな顔してんの僕!       それともなに!?言葉だけで殴りたくなるほど気持ち悪いの!?ねぇ!!」 食い下がってみても、彼は微妙な顔で眼を逸らすだけだった。 ゼノ次郎さんに訊いてみても、小さく頬に汗を一筋流し、 無言で通すという物凄い沈黙のされ方をしてしまった。 すげぇ……汗を一筋垂らすという芸当を、初めて目の当たりにした。 なにか物凄く気になる部分に着手というか着目というか、とにかくなんていうかそのー、 それっぽいのをした気がしたので追求しようとした───のだが。 中井出「ぬ?」 階段がいつの間にか終わり、気づけば……ヘンテコな場所に降り立っていた。 まるでミサイルの発射口に網目状の橋をいくつも繋ぎ、 部屋と部屋だけを行き来できるようにしたのを、 見下ろすことの出来る最下にあるマグマが煮えたような場所まで設置してあるかのような、 ともかく比喩的にしか語れないような場所だった。 少なくとも“研究所”とかそういう風情はまるでない、のは確かかと。 中井出「……ゼノ宗さん、彰利の気配とか、感じる?」 ゼノ 「───………………相当下の方にな。ここらには居ない」 中井出「わあ」 言ってみただけなのに、まともに返事が返ってくるとは。 しかも気配が解るって、どれだけ彰利ストーキンなんですかアナタ。 中井出  「じゃあ手っ取り早く飛び降りようか」 ナーヴェル『おっ、賛成だ。こんな場所チマチマ降りてたって仕方ねぇしな』 ゼノ   「フン?いいのか殺人鬼。貴様は結構な武具マニアだと聞いたが。       各部屋を探す必要があるんじゃないのか?」 中井出  「彰利が一緒なら、多分どの部屋にもアイテムなんざ残ってやしないって。       それなら───あ」 空洞の中心に、なんか管みたいなのがあった。 それは下に見えるマグマっぽい炉のような場所から天井まで続いており、 なにやらそこを通ってバカデカいモノがゆっくりと昇ってきてるような─── 中井出  「んん〜〜〜?───キャアーーーーーーッ!!?」 ナーヴェル『うおおっ!?な、なんだどした!?』 それがロボであることに気づいた僕は、思わず悲鳴を上げてしまった。 だってなんかゴツイし武装がすごいんです! これは驚くなというほうが度台無理な話なのです!本当です! 中井出「紅蓮に元素!蒼碧に雷!連ねて一つの力と成す!義聖剣!!」 だから早々にギガブレイクを発動させ、その管をブッた斬りました。 するとゴギィン!とあっさり斬れる管。 ……わあ、機械との合成の所為か、切れ味がスゲー増してる。 認めざるを得んのか……機会文明の凄さを。 まあこれも立派なファンタジーか、くそう。 ……ところで、次いで走った雷撃が管を大きく溶かして爆発させたんですが。 その際に空いた穴から山吹色の液体がゴビャーと飛び出て、なにやら大変なことに。 ………………おそるおそる、ちょんと触れてみると、 ソレは俺の指の上で硬くなって、石みたいになってしまった。 ………………おお! 中井出「えーと確か……あったあった」 リキュールボトル(一時的に状態異常効果無効薬)を取り出して、グイッと一息。 そうして空になったビンに液体をトクトクと注ぐと、液体の波の中で栓をする。 じゃないと空気に触れて固まってしまうと思ったからだ。 謎の物体は猫たちに調べてもらうに限るさ! と、そんなわけで。  ガゴンッ!バゴッ!ゴゴゴ……!! 穴が空いてる部分で浮力が停止し、 空気に触れることで目覚めたロボさんを前に、どうしたもんかなぁと捻った。 やっぱり戦うことになるのかなぁと思う中、 管の所為で上手く身動きがとれないロボさんの胸に例を宝石を見る。 …………どうするか、なんて決まってますね、わかります。 中井出「爆砕点穴!」 ごしゃーん!───……徹った。 MG 『ゴオオオオオオオッ!!!』 中井出「あ、あれっ!?」 宝石……壊しました。 だけどソイツは、まるでそれを合図にしたかのようにゴキーンと眼を輝かせ、 ズゴゴゴゴと動き始めたのだ!! 中井出  「な、なにぃまさか!」 ナーヴェル『どうやら宝石破壊が一種のブーストみたいになってたみてぇだな。       てめぇ、どうやら遊ばれてるみてぇだぜ』 中井出  「ヌ、ヌヌーーーッ!!」 まさか!この博光が裏をかかれるとは! いいだろう文明め!これはこの博光への挑戦と受け取った! まずはこのモッドゴーレムさまをぶち壊して、それから───キュウウ……ウゥ、ン……。 中井出「……あれ?」 ゼノ 「……む?」 動き出したロボ男さんが停止した。 何事かと思ったなら、吹き零れてた液体がこいつの体で妙に塞き止められていて、 さらにそれが固まったために動けなくなったらしい。 ナーヴェル『…………あー……』 中井出  「こりゃあ……」 ゼノ   「むう……」 コキューイ、コキューイ、と眼のレンズだけを動かすそいつは、なんというか哀れでした。 でもまあ驚かせたのは変わりはないので。 中井出  「コノヤローーーッ!!驚かせやがってーーーッ!!」 ナーヴェル『そんな無様な姿で俺様とやりあおうなんて十年早いぜーーーっ!!』 ゼノ   「ガラクタと化して固まっていろ!」 あとに待つのは集団リンチでした。 点穴への耐性をつけたのか、強固レベルが上がっていたそれを、 新調した武器とナーヴェルさんの腕力で抉ってゆく。 ゼノ介さんも攻撃に加わったが、 さすがに相手が硬すぎるためか、武装である爪を傷めていた。 とはいっても死神の鎌だ、刃こぼれしようが再生し、相手の強さの所為なのか、 物凄い勢いで熟練度があがっていっていた。 そんな事実が面白くて、ゼノ経さんの連撃をしばらくナーヴェルさんとともに眺め─── AGIマックスでどうぞとの提案を快く受け取ってくれたゼノ信さんの高速連撃により、 彼の鎌の熟練が現在のレベルの最高値までいくのを見届けると、 僕とナーヴェルさんはゴーレムの破壊を完了させた。  ぺぇええええぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺらぺっぺぺー!じゃんっ! ゼノ 「ぬ……む……」 そして鳴り響く、レベルアップ音。 耳が痛くなるほどに連続して鳴ったそれは、 彼のログをレベルアップ報告で埋め尽くしていることだろう。 ゼノ 「ぬうう……複雑な気分だ……!」 でも自分の実力で強くなれなかったことが悔しいのか、唇を噛んでいる彼が居た。 ゼノ 「《ポム》うん?」 中井出「ザコが」 肩を叩き、振り向いた彼にそう言ったその後。 わたしは怒り心頭のゼノ(ぐす)さんにボコボコにされた。 ───……。 ……で、その後。 ナーヴェル『…………よお、養父よ』 中井出  「うん、僕も同じ考え」 ゼノ   「ぬ?」 傷もさっさと癒えた頃、きょとんとするゼノ朝さんを余所にして、 僕とナーヴェルさんは爆発して塵と化した機械を見送ると、 残ったパーツを集めてゼノ晴さんに押し付けた。 ゼノ 「……なんの真似だ」 中井出「彰利と早くバトルための足がかりにどうぞ。     これがあれば……キミの武器はまだまだ強くなる!」 ゼノ 「断───」 中井出「戦いに手段を選んでるようじゃアンタァ……ただの負け犬だぜ?」 ゼノ 「受け取ろう」 随分とあっさりしていた。 同じ考えが確かにあったのだろうか───ってそうだよな。 かつては強くなるために人間の魂を食ってた死神さんなんだもの。 ゼノ   「これをどうすればいい」 中井出  「猫たちを紹介しましょう。金はある?」 ゼノ   「使い道がないからな。無駄に残っている」 中井出  「OK!ならば一度要塞に戻りましょう。       また機械が製造されても、どうせここで詰まるだろうし」 ナーヴェル『その素材でどれくらい武器作れるんだ?余ったら俺にもよこせ、面白そうだ』 中井出  「面白さの味方に幸あれ」 ナーヴェル『話が解るじゃねぇか』 ゴツッと腕をぶつけ合い、肩を組んでガッハッハと笑い合った。 ううむ、これは新しい感触だ。 まさか老人になるとポックリ大魔王なこいつが、 若りし頃はこんなにノリのいいヤツだったとは。 ───……。 ……。 ドジャーーーン!! 中井出「完成だーーーーっ!!」 猫たち『ニャーーーーーッ!!』 そんなわけで完成しました!卍解・魔人漆黒鎌の強化鎌、凶漆月爪。 マガウルヅキノツメ、と読むそうだ。キョウシツゲッソウでも結構。 彼が纏う漆黒外套と同じ名前だそうで、鮮やかな漆黒、と言えばいいのかな。 いや、綺麗なんだワこれが。うん、かなり。 黒に対して綺麗って思うのもどうなんだ〜とか言われそうだけど、いやほんとに。 綺麗な黒髪〜とかいうけど、こう……ツヤの時点でヤバイんです。 光沢が眩しい。一言で言うと欲しいです。 さらに外套も強化してもらって、結構なプラスがついている模様。 どれも彼の回路に合わせて作られており、 上がった力はそのまま彼の力として彼の中に沈んでいった。 中井出「ゼノ夫さん!目ェ開いてみて目ェ!!」 ゼノ 「……《ギパァッ》───これでいいか」 中井出「……ハイ」 ぬおお……!も、ものすげぇ威圧感だ……!オラの数百倍はありそうだ……!! と、それは置いといて。 ……わーあ。 目ェ開いた途端、目の深紅(あか)さから流れていくみたいに、 ゼノ峰さんの武具に赤い筋が走っていく。 本当に回路が走ってるみたいな風情だ……なんかカッコイイ。 ゼノ 「……なるほど。武具を通して、回路が全身に走った感覚だ。     機械とはなかなか、侮れないものだ」 中井出「……OH」 そうかそうか、そうだよな。 今じゃ回路って言葉だとどうしても、世界ずつにある能力的回路を思い出しがちだけど。 以前の俺だったら、回路っていったら機械的なことを思い出してた筈だ。 で、実際回路とかは機械的な名称でも……あるよね? きっとロボどものパーツが、彼の回路の手助けをしたに違いねー。 脳も鍛えると信号伝達能力が上がるっていいます。 つまり、脳にある回路が武具という点に向けて線を流そうとした結果、 回路が体中に細いながらも作成されていっている、と。そんな感じなのでしょう。 ……あれ?だったら僕も出来たりとか……………………わあ、全然発動できないや。 手助けされても所詮人間ですね、広がるほど回路がありゃしねー。ありがとうございます。 中井出 「えーと……ミク?ミク。出ておいで」 ミク  『《ポムッ》はははいっ!お呼びですかマスター!      ご用ですか!?ご用ですよね!?』 中井出 「……呼び出されといてその犬みたいな反応はどうなんだろう」 シャモン『キュウ』 ピコピコと跳ねるツーテールが魅力的だ。……じゃなくて。 中井出 「えーとマテ」 シャモン『キュ?』 ミク  『キュ?』 中井出 「小さいからって真似せんでよろしい」 右肩にミニミクを、左肩にシャモンを乗せた状態で停止した。 ……お待ちなさい?今、シャモンさん……どっから出てきました? 中井出「あ、あのー、つかぬことをお訊きしやがりますが。キミを武具と合成させる時、     シャモンたらいったいどこに……」 ミク 『あ、聞いてくださいマスター!このコ凄いんです!     ミニになったわたしの大きさに合わせて、小さくなることが出来たんですよ!』 瞬間、脳裏に浮かんだのは激怒顔のグレイジャーゴンだった。 小さく喉の奥でヒィ、と声が出たのは秘密です。 中井出 「え、えーとそれじゃああのー……もしかして……?」 ミク  『……?はい、マスターの思惑通り、わたしもシャモンも、      やられてもマスターの霊章に飛ばされるようになりましたけど。      これ、マスターと一心同体ってことですよねっ!      なんだか恥ずかしいけど面白いです!』 シャモン『キュ〜!』 中井出 「───」 やべえ……やっちまいました。 一心同体……?僕とシャモンが……? そんなことがあのジャーゴン先生に知られたら…… “一心同体!?きぃーーーききき貴様この私を差し置いてぇえええええ!!!  殺す!もはや体裁などどうでもいい!殺す!塵と化してくれるは腐れ外道がぁああ!!” とか言ってなんだか大変なことに!! ひぃいいい!!だから体格考えてってばジャーゴン先生! あんたの体格でこのちっこいのと結ばれるって無茶でしょう!? つーかロリコン!?アンタやっぱロリコンですか!? 中井出「…………?」 あれ?でも待てよ? この合成能力があれば、悠黄奈さんのこと─── 中井出「……んにゃ」 それは俺が決めることじゃないや。 あの人が“もっと生きたい”って思って、この考えに至ったら検討する方向で。 救えるから救うなんて、そんなことはしたくないし。 ミクのことは救うとかそんなこと関係なく、そうしたら面白そうだって意識だったし。 ……ああ!合成できるに違いないとか、そういう外道的思考しか頭になかったのかぁ! どこまでもクズな俺でごめんなさい……。 中井出「………」 いっそのこと亜人族全員、武具に合成してしまおうかとか外道なことを考えた。 が、やめとくことにする。 皆様がまず納得しないだろうし、猫たちや妖精たちはいいにしても、 ドワーフや翼人は流石にペリカンの口には入りそうもない。 中井出  「おーい亜人族のみなさーん!」 ジョニー 『ニャニャッ?いったいなにごとニャ?』 シェーラ 『皆さんということは、わらわもか』 ダルトロス『何用かな、若いの』 レアズ  『そう無茶なことではない限り、聞こうとは思うが』 中井出  「えーとですね。……今回の合成で、       生き物でも武具に合成できることが判明しました。       そこでですね、えーと。皆様、僕の武具と合成してみる気、ない?」 亜人種  『よしノった!!(ニャ!)』 中井出  「そんなあっさりと!?」 ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……! 想定外…………っ!断る……必ず断ると思っていたのに…………! 中井出 「で、でもえーとそのー!      ペリカンの口じゃあ流石に翼人とかドワーフは飲めないかと……!」 アイルー『そこで活躍するのが旦那さんの武具ニャ!』 中井出 「なるほど巨大化か!」 アイルー『ニャニャー!?アタリをつけるのが速いニャ!』 中井出 「面白そうなことには鼻が利く男……博光です」
【Side───その頃の精霊さんたち】 オリジン『スピリットオブノート。      また、……ああ、まただな。中井出博光が悪巧みを始めたが』 ノート 『解っている。こう何度も捻じ曲げられてはたまらん。      ……月の家系や死神や神と影で繋がっている時以外は───、      ヤツの能力は中井出博光にしか効果を成さない、と。      こう設定しておけばどうとでもなるだろう』 オリジン『なるほど?フフ、慌てふためく顔が目に浮かぶ』 ノート 『嬉しそうだな、オリジン』 オリジン『お前ほどではない』 【Side───End】
…………あれ?なんか重要注意事項とかが増えてる。 影で繋がってる時以外は、中井出博光以外には我が武具の能力は通用しない、って。 ほっほっほ、これはしてやられましたな。 アイルー 『どうしたニャ?旦那さん』 中井出  「いや、なんでも。ペリーコロさんは?」 ロイド  『つれてきた』 ペリーコロ『ま、またてめぇか……今度はなんだ、なにをする気だ』 中井出  「一瞬で済ませる。動かないでね?ほんと、その一瞬が命取りになるから。       みんなも僕が合図したらすぐに口の中に潜り込んでね?」 亜人種  『サーイェッサー!!』 中井出  「ほへ?…………は、あっははははは……!」 返ってきた言葉に思わず笑い、だけど覚悟を胸に、構えた。 守らなきゃいけないものなぞ今はいい。背負うものなどなにもない。 誰かの命を背負うなんて面倒なことはごめんだし、 背負うんじゃなくて同じ目の高さでいろいろ馬鹿やっていきたい。 だから、こうするのは救いのためなんかじゃなく、やっぱり自己満足のためだった。 ……ククク、ノートン先生……これで俺を止められると思ったら大間違いだぜ? アンタはやり方を誤った。 中井出「リネーム!ペリーコロの名前を“中井出博光”に変更!そして即座に巨大化!」 ペリカンの名前を中井出博光に変更してすかさず巨大化! 狙い通り大きくなった元ペリーコロと僕!───ていうか思わぬところで超巨大化発動!? あ、ああ……ええと……!?ええいママンよ!じゃなくてままよ! 僕は即座に、デカくなりすぎたペリカンを見やると───なんかもう面倒だから、 大地に降りている要塞ごと皆様をどっこいしょ! ヒイッ!?と怯むペリーコロさんの口に目掛け、 まずは武具だけを小さくして放り込み、 その影響で小さくなっていく僕と元ペリーコロさんの体が元サイズに戻るより速く、 要塞ごと皆様を元ペリーコロさんの口の中へとぶち込んだ!!  ───それで……全てが終わった。
【Side───で、その時の彼ら】 ノート  『ぬぐあぁあああああああっ!!やられたぁああああ!!』 オリジン 『ぎぃいいいいい……!!こっ……この男はどこまで屁理屈を並べれば……!!       スピリットオブノート!何故もっと思考を凝らさなかった!       名前を変えただけで能力が通るだと!?どうなっているんだこの世界は!!』 ノート  『誰がこんなことを予想するか!く、くううう……!!この私が……!』 ドリアード『たまには吠え面かいたほうが、あなたたちのためですよ。       オリジン、スピリットオブノート』 オリジン 『ぐっ……』 ノート  『む、ぬ……!』 ドリアード『うふふ、くふふふふっ……それにしても、本当にとんでもない人……。       この二人を手玉にとるなんて、よほどのことがなければ無理だというのに』 アルセイド『…………』 ドリアード『《くいくい》……?どうしましたか?アルセイド』 アルセイド『……わたし、あの人と契約したい』 ドリアード『うーん……ふふ、アルセイド?魅力的な提案ですけど、       わたしたちはマスターと契約しているでしょう……?       ですからそんなワガママをいってはいけませ───ア、アルセイド?』 ノート  『……?』 視界の隅でアルセイドがとほとほと歩いてゆくのが見えた。 だが今は中井出博光の暴挙をなんとかしようと、 次こそ打ち下してみせようと、いろいろと考えているところである。 余計な思考は一切入れず、ただヤツを打倒することのみに集中する……! アルセイド『……我、指輪の盟約により汝に従いし者の一人……なの。       我、我自身の願いによりて契約を破棄する……から。       故に、彼の者が身に着けし然の円冠を我がもとへと戻したまえー……』 ドリアード『きゃああああっ!?アアアアルセイドォオオオッ!!?』 ノート  『───!?なんだ!なにごっ───ぬおおおおっ!!?』 珍しいドリアードの悲鳴を聞き、バッと視界を部屋の方へと戻す。 と、アルセイドがマスターの右薬指から然の指輪を取り、 契約の言葉を呟くとともに、隣で寝ていた中井出博光の左薬指に───!! ノート  『ぬおお待てアルセイド!それは───』 アルセイド『……御託なんて、知らない』 スポリ。 ───バアアアアアアアアッ!!!! ノート  『ぬわあああーーーーっ!!』 ドリアード『あっ……あぁあああーーーーーーーっ!!!』 然の契約の指輪が中井出博光の指へと納まった。 と同時に、ドリアードたちニンフが受けていたであろうマスターの中にあるマナの恩恵が、 ぷつりと途切れ───…………ない? ドリアード『……!?え……なぜ……?』 アルセイド『……?なに……?』 ノート  『……そうか』 中井出博光の中にはマナなどない。 空界の回路がないのだ、当然だ。 だがそれに代わって余りある然の加護がある。 外気としてマナを吸収出来る上、ニーヴィレイとの契約もあり、ゲーム世界でとはいえ、 恐らく然の集気法のみならばマスターよりも上を行く存在とも言える。 ドリアード『もう、アルセイド……急にこんなことをして……。いけませんよ、めっ』 アルセイド『……?ドリアード、ヒロミツのこと、気に入ってる。       わたしも、好き。なにが悪かったの……?』 ドリアード『段階の問題ですっ。こんな、マスターを裏切るような行為を……』 ネレイド 『べつに裏切りではないでしょう?』 ナパイア 『……ほら。マスターも“提督の力になってやってくれ”と言っていますよ?』 オレアード『決定、ですね』 ドリアード『で、ですが』 アルセイド『ヒロミツのこと、きらい……?       いつもナギーと一緒のヒロミツ見て、にこにこしてたのに……』 ドリアード『ひぃっ!?ななななにを……!       あれは……あれはただ、ニーヴィレイの成長が嬉しくて……!』 ノート  『あー、そこ。マスターからの許可が出ているのならさっさと決めてしまえ。       今の中井出博光ならば、契約は可能だ。……というかドリアード。       汝はなにを顔を赤らめているのだ。平穏が人の形をしているような汝が……』 ドリアード『あなたには関係ありませんっ!』 ノート  『……ご、ごめんなさい』 ……何故私が謝っているのだろうな。 今日は随分と、珍しいものを見る日だ……自分も含めてだが。 ああいい、解っている……とりあえず笑うなオリジン。 【Side───End】
ドジュウウウウウ!!!! 中井出「ギャアアアアアアアアアアム!!!!」 ゼノ 「ぬっ……!?なんだ!」 ペリーコロさんからランドグリーズごと、 差し込まれたジークフリードを回収……した途端、左手の薬指に謎の熱が! あ、あれ!?なに!?指輪!?なんで指輪が───ぁあああああ待って待って!! 融合させないでそんな得体の知れない指……わぁあああああっ!!!  きゅぽんっ…… 中井出「が、がが……!」 ……ニーヴェルンゲンさんが、しっかりと指輪を吸収、融合してしまったがよ……。 いや……なに?なんの指輪だったのあれ……急にでてきたけど……。  ギピィンッ!《大樹の円冠【草紡】を手に入れた!》  ギピィンッ!《然属性が極大上昇!然の加護が極大上昇!》  ギピィンッ!《外気法【極】を会得!大気に漂う気や魔力など、         様々なものをマナに変換できるようになった!》  ギピィンッ!《然に関する武具が強化!能力が上昇!》 …………。 あれぇ……? なにかよく解らないうちにとんでもなく至れり尽くせりな状況が……。 ど、どうなってんのコレェ!お前の所為だよコレェエエ!!……お前って誰だろう。  ピピンッ♪《メールが届きました》 中井出「ヒィ!?な、なに!?」 い、生きた心地がしませぬ! きっとこれだけ急にいいことだらけの状況……! なにか僕にだけよからぬことが怒る……じゃなかった、起こるに決まってる! ど、どうしましょう……メールを見るのが怖いわ……! きっとこれはラヴレターとかではなく、あたしへの挑戦状で─── 声  『さっさと読まんか馬鹿者!!』 中井出「ひぃいい!!ご、ごめんなさい!!」 ゼノ 「……?」 誰かが急に怒った! この声は……ノートン先生!? ……あれ?でもゼノ太夫さんには聞こえてない様子。 僕だけ?……何故僕だけが怒られて……? と、とにかく読まなきゃいけないらしい。 らしいんだけど……なにをそんなに怒ってらっしゃるのでしょうか無の精霊さまは。  ◆契約書───けいやくしょ  この度あなたさまは然の精霊(ニンフ)と契約しました。  よって指定の講座に金を振り込んでください。  振り込まない場合、そちらへ黒服でゴツい、いい男たちが向かいます。  それでも振り込まない場合はツナギを着たいい男を送り込みます。  そうされたくなかったら……ぬおっ!?なにをするドリアード!待て!話せば解る!  冗談だ!ちょっとした冗だ───ぬわーーーーっ!! …………なにこれ。  ピピンッ♪《メールが届きました》 中井出「ひぃっ!?だ、だからなんなんだよもう!」 周りにゼノ丸さんしか居ない状況の中、僕はさっきからドキドキしっぱなし……あれ? ……ナーヴェルさん?ブラングさん?……あれ? ……………………あれぇええええっ!!? え!?ちょっと待って!?あれ!?ナーヴェルさん!?あれぇ!? …………………………やべぇ……どうしよう……。 そういやゼノ五郎さんはとっさに逃げてくれたけど、 ナーヴェルさんが要塞から逃げた様子は一切なく……ゲエッ! ということは、シャルまで……!? 中井出「てっ……て、手紙読まなきゃネ!?」 どうやらまたやっちまったらしい僕は、慌ててメールを開く。 そこには契約書、なんて文字はなく、ただ……ニンフたちからの手紙があった。  ◆拝啓、ヒロミツへ  …………けーやくした。よろしく。 ……あれぇこれだけ!? 誰!?いたずら!?これいたずら!? ……あ、次のページがある。  ◆P2  本日はお日柄も良く、いかがお過ごしでしょうか。  そのええと、そう、契約のことですね。  申し訳ありません、博光さん。  アルセイドが勝手にあなたと契約をしてしまって。  急なことで驚いていらっしゃるかと思います。  けれどこれは紛れも無い現実で、  あなたは今、わたしたちニンフと契約をした状態にあります。  わたしも驚きましたが、全て真実です。  ◆P3  ですが安心してください。  それによりあなたに危害が及ぶことはありません。  あなたには確かに空界の回路がなく、マナの体内精製も可能ではありません。  けれどこのゲームの中であなたが得たものは、それを補うに足りる能力と言えます。  ですから、あなたさえ頷いてくれるのなら、完全な契約を結ぼうかと思います。  もちろん、お嫌でしたら…………………… ……わあ。 最後の方がとても歪になってる。 お嫌でしたら、の後が読めないくらい曲がってる。 でもなあ、僕もうナギーと契約しちゃってるし。 ……あれ?でも同じドリアードだからOKなのか? ニンフだって6人姉妹なわけだし。 中井出「…………ニーヴェルンゲン」 ふと思い立った僕は、ニーヴェルンゲンに語りかけ、霊章輪を取り出した。 そしてそこから然の契約の指輪である大樹の円冠を取り出すと、調べるを実行。 ………………わあ、とっても本物だ。どうしましょう。 なんて考えることもなく、 中井出「自然と婚約する」 レベルEの馬鹿王子がそうしたような風情で、 コパァアアと光る緑の指輪を左手の薬指に嵌めた。 何故って?その方が面白いからさ!! やりもしないで、相手の偉大さに負けて逃げるのはつまらないからね!  ピピンッ♪《本契約が完了した!》  ピピンッ♪《然に関係する能力値がさらに上昇した!》  ピピンッ♪《精霊武具/神樹霊装ミストルテインがグレードアップ!》  ピピンッ♪《ドリアードが顔を真っ赤にして湯気を撒き散らしながら気絶した!》 気絶!? あれちょっ……気絶!?なんで!? ていうかアルセイドさんもなんで僕と契約したいって思ったの!? そもそもいろいろツッコミどころがありすぎてなにがなにやら! 面白さを優先して突っ走りすぎた!そこらのフォローはナシですか!? 声  『そのことに関しては私から説明しよう』 中井出「断る」 声  『断るな!!』 聞こえてきたノートン先生の声に、つい反射的に返してしまった。 声  『いいか中井出博光。汝にはさっぱり状況が掴めていない……ああそうだな、     掴めていないだろうな。掴めていないんだ。     だから私がゆっくりと説明をしてだな』 中井出「要約するとナギーとニンフたちはどこかで繋がってて、     そういう感情面でも僕に通じるものがあると」 声  『まだなにも言っていないぞ!?』 中井出「ゲエフェフェフェ……!     こんな状況で予測出来るのはどうせその程度のことだろうよ……!     あれだけ感情豊かに行動するナギーよ……!     きっとそうではないかと思っておったわ……!     そしてその影響を一番受けているのはアルセイドであり、     恐らくナギーはアルセイドとドリアードを足して割ったような存在……!」 声  『ぬっ……!ぬぐぐ……!き、貴様……なぜそこまで……!』 中井出「貴様!?汝じゃないの!?」 あ、あれぇ……?なんか僕ノートン先生に嫌われてる……? いったいなにが原因で……? 声  『い、いや。だがそれだけではない。     予想ついての通り、ニーヴィレイはニンフたちの分身とも言える存在だ。     その感情は、彼女らに直接降りかかるものもあれば、影響するものもある。     だがそれが彼女らを強く動かすか、といったらそれは否だ。     ニンフたちは自らの意思でしか動こうとは思わん』 中井出「ゼノ(ムル)さーん、マント見せてマントー」 声  『聞け!!』 中井出「だって長そうだったんだもん……結論だけズバッと言えませんか?」 声  『…………はぁ。ニンフたちは汝をえらくお気に入りだ。     特にアルセイドとドリアードがだ。     彼女らがマスターと契約していたのは、     大樹復活の感謝からだったが、汝の場合は違う。     彼女らが考え、彼女らが自然と汝と契約したいと思った故だ。     慕われ具合のみを言えば、マスターとは天と地だろうな』 中井出「……おお!僕の場合は友達感覚というわけですね!?」 声  『逆だ馬鹿者』 中井出「なんだとこの馬鹿!!」 声  『誰が馬鹿だっ!!汝は真実遠慮がないな!私を誰だと思っている!』 中井出「なにを言っとるんだこの男は……」 声  『何故そこで疲れ果てたような顔をする……』 中井出「だってさ、相手がどれだけ偉かろうが、無の精霊は無の精霊でしょ?     解ってるよ?解ってる。畏怖や尊敬の念は人によって違っても、     相手が無の精霊だってことには変わりはないじゃないか」 声  『いや、そうなのだがな……』 中井出「私を誰だと思っているなんて言葉はなー!     自分を崇めろとか自分は偉いんだとか言いたいヤツの言葉なんだ!     では訊くがノートン先生!この俺様を誰だと思っていやがる!!」 声  『中井出博光だ。凡人だ。武具が無ければただの人間の』 中井出「うむ!その通り!」 …………。 声  『……それだけか?』 中井出「え?だって僕じゃん」 声  『い、いや、もっとこう、そうじゃない、俺はこんなだ、とかだな……』 中井出「中井出博光。ただの人間である。それだけでいいじゃん。     それともわざわざ“無の精霊さまだ〜!”とか言われたいの?     だったら僕遠慮なく称え崇め奉りましょうぞ!」 声  『………………よせ。汝にそれをやられる場面を想像したら吐き気がした』 中井出「なんで!?」 声  『そうだな、そのままがいい。私は無の精霊だ。それ以上でもそれ以下でもない。     まったく、なんという日だ。人間に説教され、しかも納得する日がくるとは』 中井出「まだ言ってるよ、この器の小さいクズめ」 声  『やかましい。それだけ精霊が諭されることが珍しいということだ』 まあ……なにせ全ての始りにして終わりなる者、だもんなぁ。 全知全能。 不可能を可能にする力まで持ってる彼だ。 人間に諭されて納得するなんてよっぽどのことでしょう。 中井出「でも全知全能ってさ、これから知ることには効果が無いんだから、     未来に対しては全知とはいえないよね」 声  『………………』 中井出「先生?」 声  『ああ、いや……新しい考え方だな。そうか、ふむ……なるほど』 中井出「まあいろいろ解ったこともあるから、これで切るね?     別に僕の体に回路が作られる〜とかはないんだよね?」 声  『普通なら作られるんだがな。汝の体は既に地界以外の回路を受け付けない。     ドワーフの遺跡で“人であること”を選んだ故だ。汝は永劫、人として生きる』 中井出「おお素晴らしい!望むところじゃああ!!     ……ところで話は変わるんだけどさ。     なにやらナーヴェルさんの姿が見えないの。もしかして俺、やっちゃいました?」 声  『ああそのことか。しっかりと要塞ごと、     ナーヴェルブラングもペリカンの口に放り込んでいただろう』 中井出「やっちゃってましたか!?」 なななんという……!なんという……!北斗神拳。 じゃなくて、なんという状況でしょう。 精霊と契約した上にナーヴェルさんを武具に封入してしまうなんて……! ……武器に悪魔を憑依させる〜とかって何かで……こう、なかったっけ? 中井出「姿を現せ(ツァイゲディヒ)!ナーヴェル!」 口にすると同時にドール召喚を!……すると、霊章からゴシャーンとナーヴェルさんが! ナーヴェル『我ガ名ハ魔王ナーヴェルブラング……今後トモ、ヨロシク……』 中井出  「なんかとっても悪魔っぽいぃいいーーーーーーーっ!!!」 ……でも誰々を出したい、と願うとその通りの人物、または亜人さんを出せるようだ。 中井出「なるほどなるほど!これは面白い!姿を現せ(ツァイゲディヒ)!エィネ!」  ポムッ。 エィネ『ふわっと!?は、はうう……結構びっくりしますね、これ……』 中井出「あのー、ひとつ訊きたいんですけど。武具の中に居るのってどんな気分?」 エィネ『え?あ、はい。そうですね……武具、というよりは霊章の中に居ます。     その中はなんといいますか妖精界みたいな景色でしてね、     こう……こう、ですね、そこに大樹があるんです。     ユグドラシルって名前の大樹ですね。     それがマナと癒しを外からひゅごーって集めて、     わたしたちを満たしてくれてます。もちろんそこには自然要塞もありまして。     こう、望んだものをいろいろくれる場所でもありますはい』 中井出「ぬ?では?」 エィネ『はい。ドワーフさんやアイルーさんたちが望んだように、     中のほうが大変なことになってますよ?しっかりと鍛冶道具一式があるんですよ』 中井出「どうなってんだろね、僕の中……」 自然要塞ごと突っ込んだのがヤバかったんでしょうか。 と思いつつ、霊章が描かれている腕を見てみた。 既に同調率が上がりすぎて、火闇霊章を発動させなくても肩まで伸びている霊章。 火闇霊章を発動させるとこう、霊章が背中の肩甲骨まで伸びてね? そこから出る炎が翼みたいでカッチョエエんです。 そこのところは流石、真龍王の能力だな〜と思うわけですよ。 ……ちなみに。 恐らく出来るだろうって段階だけど、一つだけやりたいことがあったりします。 古の勇者の意思を浮上させることには成功した。 だったらあとは……ねぇ?グオッフォフォ……!! エィネ『ああ、それとご安心を。     シャルロット姫なら、今はエルメテウスの方に居ますから』 中井出「そうなの!?…………は、はぁ……よかったようなよくなかったような……」 取り込んでたら、それはそれで面白そうだけどね……。 武具との合成の確認をとった時、シャルはその場に居なかったから、 そのまま融合させてたら嫌な気分を味わっていたところだ。 そこは喜んでおきましょう。 中井出「……てゆゥかさ。エルメテウスでいったいなにを?」 エィネ『いえ。どうということもなく……人間ですからね。     魔物が住んでいる聖地というものを、じっくりと見てみたかったんだそうです。     ほら、こんな同盟関係状態でなければ、見る機会なんかないじゃないですか』 中井出「あ、それ解るかも」 うん、確かに同盟状態じゃなければ、“じっくりと”なんてのは無理だ。 無理矢理やるにしても、多少の力がなければ余計に。 中井出「よし。ではこれよりみんなでレイナートの野郎をこらしめに行くものとする!     覚悟は出来たかぁああっ!!───よしっ!特攻だぁーーーーっ!!」 エィネ『Yah(ヤー)ーーーーッ!!』 こうして……。 ただゼノ乃助さんの武具を強化するために戻った筈の僕は、 超・自然を我が物にしてしまうという大変な出来事とともに、 新たな一歩を踏み出した……! ……ていうかどうしてドリアードって気絶したんだろうね?不思議です。 あ、そうだ。ペリーコロさんの名前、元に戻しとこうね。 Next Menu back