───冒険の書299/地下迷宮のモミーさん───
【ケース748:弦月彰利/地下都市の謎】 ヒョ〜〜〜〜……スタム。 彰利 「愛……」 妙な建物のようなものから飛び降りたアタイは、 露明石の光によって鈍く照らされた地下都市の大地に降り立った。 彰利 「ウヒョ〜……どこもかしこも無人な建物でいっぱいぞ」 悠介 「《トンッ》よっと……ああ。ここがノヴァルシオなら、     住民なんてのは全員滅んでたんだろうしな」 アタイの独り言に、同じく降りてきた悠介がそう漏らす。 彰利 「フゥム、でも所詮噂だしね、もしや誰か生きてるかもしれんよ?」 レイル「《トンッ》それならそれで、いろいろ訊けたりして面白いかもな」 藍田 「《トンッ》そうそう、     未来に飛ばされた高松くんたちが出会った人間なんて目じゃないかもしれん」 閏璃 「《ドグシャア!!》うぼぇえっ!!」 藍田 「うおっ!?」 レイル「うわっ!着地失敗したぞこいつ!」 彰利 「ギャアもう!空飛べんくせに無茶するから!!」 閏璃 「今なら空だって飛べる気がする……」 悠介 「それはただ死んでるだけだ!」 続々と着地する中で、ウルーリィだけがドグシャアと落下した。 おお、ありゃ痛いね。中井出もよくやる落ち方だ。主に脇腹あたりを強打してる。 閏璃 「フ、フリーザに……俺達……サイヤ人の……強さを…………。     思い知らせてや………………れ………………《ガクリ》」 藍田 「トーーーーーマーーーーーッ!!!」 彰利 「え?トーマああトーマ!!     おーおー思い出した思い出した!トーマとパンプーキンとセリパだっけ!?」 藍田 「そこまで詳しくは覚えてない。ただトーマが好きだった」 彰利 「俺ゃそれよりもバーダックに未来を予知できる幻の拳を放った魚人が好きだ」 悠介 「どれだけマニアックなんだお前は」 彰利 「まあよ。それよりとりあえずだ。     ウルーリィの口にポーション流し込んだけど……反応どう?」 悠介 「…………あ、動いた」 閏璃 「夢を……夢を見ていた気がするよ。まだこの世界が平和だった頃の夢を……」 藍田 「いかんな、錯乱してる」 閏璃 「いや、大丈夫だって。それより速く提督さんに追いつこう。     このままじゃ提督さんが全てを終わらせてしまう」 ふむ。 確かにあやつの強さってば異常ですからねェ〜〜〜ィェ。 武具が無ければ激烈ザコなのにね、不思議。 そげなこげなでアタイらはズダーと走り出し、一路地下都市の奥地へと─── 悠介 「───待った」 彰利 「OH?」 いや、行こうとしたんですけどね? 悠介がさ、アタイらを止めるんですよ。 でね、どうしたの?って訊いたんですがね? ……稲川淳二ってどうして疑問系語が多いんだろ。 悠介 「テオダールを探そう」 彰利 「テオ……なに?」 悠介 「テオダール。お前も聞いただろ?この世界の残りの“時”を担ってる核だ」 彰利 「……?───ア」 思い出した。 ホギーと中井出がそれっぽいこと言ってた。 この世界はサウザンドドラゴンと、テオダールによって形を保ってたって。 で、それが確か───エトノワールの地下にあるって───……エ? 悠介 「提督の能力は知ってるだろ?     それに、俺達やレイナートが暴れれば、こんな都市、長く保つわけがない。     どこにあるのかは知らないが、それなら先に確保して、     エルメテウスかエーテルアロワノンに安置しておいた方がいいんじゃないか?」 彰利 「ウヌ、そりゃ確かに。     だったら自然要塞だろうな。なにせ中井出の中に収納できるわけだし」 藍田 「……そうなのか?」 閏璃 「あんなデカイものを収納するなんて……」 レイル「あいつ、四次元ポケットでも持ってるのか?」 彰利 「いや。持ってるのは懐の広い二次元ポケットだ。主にエロスの」 悠介 「提督が聞いたら泣くだろうから、そういう知識を広めるのはやめとけ」 彰利 「そ、そう……だよな。すまん、俺が間違ってた。     エロスだったらなんでもイケるのが僕らの提督だもんな……」 悠介 「エロスから離れろって言ってるんだよたわけ!」 彰利 「う、うす。でもそれでよかギン?     中井出たちに追いつくのにかなり時間食っちまうYO?」 悠介 「いいんだよ。提督が倒してくれるならそれはそれで。     レイナートに大事な用があるってわけでもない。     だから俺達は俺達に出来ることを、だ」 ウヌ。 ではまず…………どうしよう。 彰利 「テオダールって何処にあるんだろね」 悠介 「昔っからエトノワール地下に安置されてたっていうくらいだからな。     けど上にはなんにもなかった。     だったら、この地下に移されたって考えていいと思うぞ」 藍田 「移されたねぇ……よく話が見えんが、     ともかくそのテオ=マクドールを探せばいいわけだな?」 閏璃 「おお、幻想水滸伝か。俺、ペシュメルガが大好きだった」 悠介 「はーいはいはい、話が脱線するからそのへんにしとけ。     とにかく。提督には悪いけど、俺達はテオダールを探そう」 レイル「先生質問」 悠介 「誰が先生か」 レイル「提督さんたちが行った先にそのマクドールがあったらどうするんだ?」 悠介 「テオダールだ。わざと間違えんように。……その時はその時だろ。     これだけ広いんだし、もしかしたら旧時代の遺産とかあるかもしれない」 彰利 「……そういや珍スィーよね。中井出が探索せずに突っ走っていくなんて」 閏璃 「レイナートのヤツを一発でも殴ってやらなきゃ気が済まなかったとか?」 彰利 「ああ……」 魔王扱いされて、大層なお出迎えまでされて、しかも世界征服宣言だもんね。 そりゃ、同じく自分の力以外のものを利用して強くなった彼としては面白くないデショ。 ……もしそうだとしたら何処までも自分勝手なお方やね。まあ流石中井出だけど。 彰利 「うしゃー!」 閏璃 「むしゃー!」 彰利 「ほいじゃあマクドール探しにレッツゴー!     まだミクが居るかもしれないから、現れたらtellで知らせるコト!     全力で無視するから!」 総員 『意味ねぇ!!』 彰利 「だって皆様探索してるっつーのに、     そげな、他人のことばっか気にしてられねーっしょ!だからGO!!     出来るだけ速く発見してレイナートバトルに混ざるっしょ!     それでバッチグーっしょ!」  ◆バッチグー  バッチリとグッドを混ぜた合成語。  とても素晴らしく、とても納得の出来る様子、在り方。……らしい。 彰利 「はいここテストで出るから覚えておくよーに〜」 悠介 「どうでもいいが、もうみんな散ったぞ?」 彰利 「あら速い!!ようしならばアタイも!───あっちだ!あっちがくせー!」 悠介 「じゃあ俺は反対側を調べよう。     テオダールを見つけたらtellとマップランプだぞ?」 彰利 「オウヨ。……他のやつらにも言ってあるん?」 悠介 「ん?ああ、大丈夫だ」 彰利 「オウケイ!ではGO!」 こうしてアタイらは駆け出した。 互いに背を向け、振り返ることなく……。 ………………ここだけ演出したら、別れた恋人みたいだね、うん。 あ、ちなみにマップランプってのは、 仲間がどっちの方向に居るかを示してくれるランプだ。 ただ漠然と“こっちの方向に居る”ってことだけが解る。 今回のバージョンアップから実装されたものの、 漠然としすぎてるから誰も使う人が居なかった。 マップがナビに記憶されてれば、 こう……マップの中の仲間が居る場所が点滅するから解りやすいんだけどね。 それを言えばアタイらは既にマップをナビに記憶させてあるから、多い日も安心! ……なにが多い日なんだろう。食欲? ───……。 ……。 彰利 「わっかいっ日〜はっ、みっなっ、な〜にか〜をめざ〜〜せ〜〜っ♪     秘め〜たちぃっか〜ら〜、じ〜ぶん〜じゃわっからっない〜〜よ〜〜〜♪     ゆっめっをっ大きっくもっとっお〜〜〜〜♪そうだと〜びき〜りデ〜カ〜く〜♪     ───筋肉はゴリラ!牙もゴリラ!燃える瞳は原始のゴリラ!     その名はゴリラ!バイオレンスゴリラ!……そう、ゴリラ級にデカく」 コングとゴリラの違いが解らねー。 まあそげなことはうっちゃって。 えーと……?ドゴォンッ!ゴンガラゴシャゴシャーーーアーーー!! 彰利 「ぶるんじゅわ〜〜〜!!」 …………。 返事はなかった。 とりあえず適当な建物の扉破壊して中に入ったんじゃけんども。 ……だぁ〜〜れもおらんね。 そもそも生活の名残ってゆゥの?そういうのが?ねぇぜ?だぜ? ……若者語ってハラ立つね、やめよ。 今更だけどぶるんじゅわってどういう言葉なんだろう。 ただいま?……ただいまだね!うんただいま! 彰利 「誰か〜?……誰かおらんとね〜……?……あ、姿見だ」 ホラー映画とかだと、こういうのにビーゾン先生が映ってたりしてホキャーなことに! ……でもアタイが映ってるだけでな〜んにもありゃしねー。 ビーゾン先生ってのはゾンビね?ホラーで喩えるんだったらユーレイの方がよかったか。 彰利 「…………」 そーいやアタイ、こうしてじっくり自分の姿見るのって久方ぶり。 風呂入っても運動しても暴れても、髪型シャッキリこうなるし。 髭も……伸びてこねーんだよね。 悠介が言うには“お前は女性ホルモンが多いんだろ”らしいけど。 ホルモンで決まるんカナ。なんか違うような気もするけど。 彰利 「全力で───俺式ッ……!美しいポォオゥズゥウン……!!」 姿見の前で、艶かしくも格好よいポーズを取ガッシャァアアンッ!!! 彰利 「ゲェエエエエエエエ!!!!」 鏡が割れた!鏡がっ……アタイの美しさの前に自滅した! な、なんという美しいアタイ……! 彰利 「美しいって罪……!……ウィ?」 ……割れた先に階段があった。 ハテ?これは一体……。 まあいいコテ、どうせここらへんうろついててもなにかがあるわけでもなし。 冒険者は度胸YO!! ……。 はい、えー……そげなわけで。 彰利 「突入!闇の地下迷宮!!」 明りがありませんでした。 だから闇の中をグイグイ進みます。 久々にフェイスフラッシュを使ってみたけど、 やっぱ黒の光だったのでなんの意味もなかった。 だから闇を最大限解放して、いっそ溶け込むくらいの濃度でゾルゾルと進んでおります。 でもこれじゃあホント、なにかあってもな〜んも見えねぇのよね。 彰利 「ふむ。───月醒光!!」 あんまりやりたくなかったけど、家系の力を“神寄り”にして月醒力を解放!! すると───おお!ちゃんと眩い白き光が出た!でも力の消費が激しい!! 彰利 「い、いかーーーん!!予想以上に辛いぞこれ!突っ走れ青春!!」 ゾルゾル蠢くのをやめてダッシュする! 階段をゴッカッゴッカッと駆け下りて、長い長い通路を走り、 突き当たった壁にドヴァーンとぶちかましを食らわすと─── 彰利 「───ゲ、ゲェエーーーーーーーッ!!!」 なんとそこはっ……!ミク生産工場だった……!! しかもうっかり叫んじまったために、 作業をしていたおなごが首を180℃曲げてアタイを発見ってホゲェエーーーーッ!!!? ギャアなに!?180℃曲がってるよ!?え!?人間じゃねぇの!? おなご「ガガガギギガガ……!!シン、ニュウ……シャ……!     レイナー、ト、サマ、ノタメ……ハイ、ジョ……!!」 彰利 「………」 どう見ても人間でした。 でしたけど、どうやら………“人間だったもの”のようで、 180℃曲げた首は奇妙にねじれ、その口からは血が出てきている。 彰利 「……こーいうの見ちまうと、誰が王でも構わないとか思えなくなるよなぁ……」 可哀想に。 こんな状態じゃなけりゃあ、メイド服の似合う素敵な女性だったろうに。 彰利 「失せろメカ女。     その聖法衣は貴様のようなメイドさんをやめた者が着ていい物ではない」 おなご「ガ、ギギ……」 彰利 「……って、聞いてくれるわきゃねーよな……」 じゃ、破壊だ。 彰利 「先に言っときましょう。手向けにもならんだろうけど。     俺ゃ、キミらが人間じゃなくなったから攻撃したりするんじゃあねぇ。     ……キミらが敵だから攻撃して、破壊する。     人を殺す覚悟はとっくに出来てるから安心して潰れんさい」 意識を己の深遠へと潜り込ませ、力を解放する。 背中からは竜の上半身が出現し、その巨体を以って、メカどもを鋭く睨みつける。 ラオウ召喚に伴い、出現させた十八翼をレヴァルグリードが吸収しちまった状態がこれだ。 前までは両腕までが精々だったが、 レヴァルグリード自身が俺の力に合わせて形を変えてきている。 そのため、上半身までは普通に召喚できるようになった。 もちろん武具の方のレヴァルグリードの九頭竜闘気の九翼も、 俺の皇竜能力の八翼も普通に出せる。……と思う。 ただ出そうとすると、武具の方の九翼が皇竜能力の八翼に吸収される形になって、 どうやっても八翼までしか出なくなってます。能力はちゃんと十八翼分なんだけどね……。 彰利   「あ、でもちょっと待った。       まだ死にたくないとか、意識を持ってるヤツはストップ。       居る?そういう人」 おなごども『グゲゲギャアアアアアアアッ!!!!』 彰利   「……ゼロ、ですな」 寂しい限りです。 彰利 「じゃあ───《ゾ……フィィイン……!》さよならだ(アリーヴェデルチ)』 頬に破面を出現させ、黒の竜を深紅に変えてゆく。 レヴァルグリードの力を以って具現している筈なのに、九頭竜じゃないのが面白い。 どっちかっていうと……えーとほら、金色のガッシュで居たでしょ? 人型の竜っていうか、竜型の人っていうか、ともかくデカいヤツ。そんな感じの黒竜です。 こいつを、黒を操って変形させてやると、エクゾディアとかになったりします。 でもどうやら今回は竜のままが良いらしいので。 彰利 『薙ぎ払え!“闇虚の閃光”(デュンケルヘイト・セロ)!!』 深紅竜『グヴァアシャァアアアアッ!!!!』 首を大きく振るった深紅の闇竜が、口に溜めた虚閃を横薙ぎに吐き出す。 深紅の光は俺目掛けておぞましい姿で走ってきていたメカどもを一瞬にして蒸発させ、 奥に居た、動き出そうとしていたミクさえもそのまま破壊してみせた。 彰利 『……えーと』 これでも加減したんだけど……メカキラーってやべぇええなぁ……。 ───否!なんか一体残ってる! ミク 『《ヴミンッ……》攻撃の意思を確認しました。防衛システム、起動します』 仕上げをされていないのか、 ストレートヘヤーで、服も白い布っぽいものを纏ったミクさん。 ……が、横から伸びてきた機械に服を着せられ髪を結われ、 あっという間に初音ミクさんのでっきあがりでぃ!なことに。 ミク 『───別行動中の情報型ミクよりダウンロードを完了。     速度、力、防御、歌唱、情報の能力全てを展開中…………オールグリーン』 彰利 『ぬ……ぬ?』 な、なに?なにが起こってるの? つーかどうしてこのミクだけ平気だったの?ホワイ? ミク 『感情プログラムをインストール中。…………マスターが書き換えられているため、     一部の情報はインストールエラーが発生──────はい。     お待たせしました。初音ミク、行きます!《シャキィーーン!》』 彰利 『ぬおっ!?』 何処からともなくネギを出しおった! それも二等流……!こ、こいつ……ネギを使うぜ!? しかもなんだか感情が随分篭ってる!さっきまでの機械っぽさがウソのようだ! ミク 『あ、でも待ってください?ここに何の用でしょうか。     あのー、出来ればここはとても重要な場所なので、     早々にお引取りしてもらえたら嬉しいんですけど……』 彰利 『うむ。アタイもいきなり襲い掛かられんかったら攻撃なぞしなかったし』 ミク 『そ、そうなんですか!それは失礼しました!     それじゃあここには特に用が無いってことなんですよね?     なんだかいきなりみんなが壊されて釈然としないのは確かですけど、     それも急に襲い掛かったこととおあいこってことで……』 彰利 『あ……な、なんか悪いね。なんだ、キミ話せるじゃないの』 ミク 『はあ。なんだか知らないんですけどね、インストールした感情プログラムの中に、     相手に殺す気がないなら殺す気でかかる必要はないのだ、というものが、     どうにもこうにも執拗に徹底的にこれでもかってくらい刻まれてまして。     マスターの命令では、侵入者はどんなことがあっても排除、とあるんですが。     こちらの刻まれ方のほうがより一層に色濃いんですよ。     ヘン……ですねぇ。マスターの命令は絶対の筈なのに』 彰利 『………』 そりゃレイナートがマスターに相応しくないって例でしょうね、うん。 彰利 『ところでオイラ、テオダールというのを探してるんだけど。知らない?』 ミク 『テオダールでしたらここを出て南東に行ったところの先の、     大きな塔の中に安置されてますよ?解除キーはですね、11922960です』 彰利 『………』 過去のフェルダール人は鎌倉幕府でも作り上げたかったんだろうか。 彰利 『……あのー、まがりなりにも侵入者なアタイに、それ教えてよかったの?』 ミク 『…………?………………《ハッ!!》』 ……ああ。今の反応でよ〜〜く解ったわ。 ミク 『わわわ忘れてください!     忘れられないなら及ばずながらわたしがお手伝いしますから!』 彰利 『言いながらなしてツーテールをハンマー型にするの!?』 ミク 『秘密なんです!情報を簡単に誰かに与えるなんていけないことなんです!     それがっ……はううああ!!この口は!この口はいつからこんなにユルユルに!』 彰利 『わあ、すげー慌てかた』 うーむ、ミクだ。ミクだなぁ……実にミクだ。 誰かにいじくられたミクって、絶対設定無視のドジ娘になってる気がするよね。 この迂闊で愛らしい人は、なかなか自分の口に施錠することを覚えんからなぁ。 ミク 『だめです!このままではいろいろな物事に支障がでます!     アンインストールを……ハワワ!?アンインストールが出来ません!?     感情プログラムが!感情プログラムが根付いて剥がれません!     それどころかなんだかマスターが、     ちっぽけな低俗野郎でしか思えなくなってきたような……!     わ、わたしが慕うべきマスターは何処に!?』 彰利 『とりあえず鳥そばを注文してみたらいいんじゃないかな』 ミク 『それはわたしが葱好きと知っての言葉ですか!?……っはぁぁあ……!!     あなたはなにも解ってないです!いいですか、わたしは葱が好きなのであって、     そこに何かが加わることで味が深まるとか、そんなことはどーでもいいんです。     葱があればいいんです。鴨が葱を背負う?     鴨なんて飾りです。世の食通さんたちにはそれが解らんのですよ。     そんな、葱に鈍感な貴方に“葱や平吉”をお勧めします。     葱の善き哉がきっと貴方にも理解できます』 彰利 『いや……なんでキミがそげなこと知っとんのよ……』 ……なんとなくツッコんじゃいけない気がしたけど、言わずにはおれんかった。 い、いや、気にせん方向でいきましょう。 彰利 『えーととりあえず……キミどうしたいの?』 ミク 『記憶が消えるまで殴っていいですか?』 彰利 『せめて歌にしてくれません?ボーカロイドらしく』 ミク 『あ───そうですね。どうにもキャラだけが一人歩きして、     時々ボーカロイドであることを忘れてしまいます』 彰利 『うん……キミが出てるウェブマンガって、     とことん歌と関係ないものばっかだったしね……キャラさえ出てればいい、って』 この状況もきっと似たようなもんなんだろうけど。 彰利 『だから歌うんだミク!貴様は歌うために存在するのだ!     歌を歌わずしてどうするか!』 ミク 『は、はい、そうです……ね。そうですね!     あのっ!なにかリクエストはありますか!?』 彰利 『高らかにオ○ニー!!』 その後わたしは赤面の初音さんにボコボコにされた。 ……。 ガミガミガミガミガミガミ!!! ミク 『なにを考えてるんですか恥を知ってください恥を!』 彰利 「知ってなきゃ言えるわけねーべよ!言った僕も僕ですがね!?」 つーかこれじゃただのセクハラでした!大変申し訳ない!! ……申し訳ないんなら黙ってればいいのかな。 彰利 「あ、じゃあアタイはこれで。これでも忙しいのでね」 ミク 『あ、はい。もうこんなところに来ちゃだめですよ?     今度は問答無用でネギボッコです』 彰利 「オールライト」 ネギボッコってネギでボコボコにするって意味かな……なんか面白そうだ。 でもミクのネギってとても危険なので頷いておきませう。 そげなわけでアタイはミクに小さく手を振って、別れを済ませました。 ……クォックォックォッ、セロで生産機械が壊れたのは確認済みYO。 あのミクが必要が無ければ攻撃してこない以上、ここに居ることにもはや意味はねー。 さてと、他の皆様にテオダールの在り処を教えておかんとね。 【ケース749:閏璃凍弥/HAKATA-no-SHIO】 志々雄真実を崇める際、ナンヤソ〜レ師匠〜!と叫んだとある日。 俺は地下帝国にて、道を歩いていた。 滅んだ場所とはいえ、その外観風景はどことなく空界の空中庭園に似ており。 映像でしか見たことがなかった場所に似た風景は、なんだか俺の心を奇妙に擽っていた。 もちろん志々雄真実は全然話に関係ない。 閏璃 「は・か・た・の・塩っ!」 あのリズムが大好きだ。 よし関係ないな。 ともあれ、いろいろあって届いたトンガリ氏のメールを見て、 現在は南東の塔を目指して歩いている。 走らないのは急がば回れを実演してみせているからであるが、 誰も居ないのなら特に意味もない気がしてならない。 急がなきゃいけない時は急ぐべきだと思うんだけどな、俺。 よし、走ろう。メロスの如く。 走ってみても歩いても同じ場所には辿り着くけど、走り出さなくちゃ変わらないのだ。 閏璃 「キミを連れていこう!……悲しみのない未来まで!」 一部の人にしか解らんことを叫び、走り出す。 ああ、ほんと誰も居ないとなんの意味もない言葉だが。 叫ぶことでいろいろ楽しめることもあると思うんだ、俺。 こう、風紀的……じゃなくて、気分的に。 人は叫ぶことを忘れてしまっている。叫ぶのは気持ちがいいんだぞぅ。 だからいつか山に登った時、一度でいいから恥をかなぐり捨て、自分を解放しよう。 そう……貴方の奥に眠る“人間”を目覚めさせるのだ。 高い位置、高い空の下、腹の底からフー・アム・アイ。 周りに人が居て、なんだなんだと見られても気にするな。 いや、気にしてもいいから叫ぶんだ。 それを完全に乗り越えられた時、貴方は叫ぶことの素晴らしさを思い出す。 振り返ってみなさいよ。 クソガキャアだった頃のアナタ、あんなに叫んでたじゃないの。 よし、誰に言ってるんだろうな、俺は。 閏璃 「真正面をご覧ください。ここが集合場所である南東の塔になります」 マップで見れば確かに南東。 でも俺が居た位置からすると東だったりした。 ジョー=パンツ=東である。 閏璃 「この建築物は築6489年のものでして、     今より3000年前に管理者が居なくなったとされます。     しかし死んだわけではなく、この場を離れ、誰かと愛を育んで子孫を残したとか。     それがかの有名なシドルファス=オルランドゥの先祖にあたり、     彼が亜人族と人間とのハーフであることの話に繋がるわけで───」 シド 「ヌシ……何故そのことを知っている」 閏璃 「エスパーなんだ。     代々続く家系の能力でな、古いものを見るとその過去が見えてくる」 シド 「そうか───ヌシの言う通り、ワシの先祖はこの都市ノヴァルシオに住んでいた。     この塔を管理していたということも事実であり、     だが高い技術を持つが故に滅んだ者たちの中の一部は、     大地に降り、まだ種族差別がなされていない頃、亜人と恋に落ちた」 閏璃 「………」 どうしよう。 適当に言った言葉の大半が真実だったらしく、 なんだか今更ウソですとか言えない雰囲気に。 そしていつの間に来たんだろうな、このジジーソンさんは。 いやでも6489年とかそういう年号的なものは違ってると思うんだ、うん。 ……うむ、根拠がまるでないから何が合っててなにが間違いなのかももう解らん。 俺の明日はどっちだ。 シド 「先祖がここを降りる際、     持って来た稀少石を使って鍛ったのがこのエクスカリバーだ。     それが縁でセトとともに世界を旅することになったが……ふふ、懐かしいな」 閏璃 「じゃあその剣って、勇者のものでもありオルランドゥ伯のものでもあると?」 シド 「いや。所有権などセトに譲った。     セトのために鍛った時点で、これはセトのものだった。     そこに、ワシの執着や物欲などは存在していなかった」 閏璃 「ほほう」 欲のないじーさまだ。 出来上がった武器が素晴らしいものなら、むしろ剣士として自分が欲しいと思わないのか? 俺だったら欲しくなるが。 シド 「話を戻そうか。ヌシらの目的はレイナートではなくテオダールか?」 閏璃 「おお。さすがに提督さんたちが大暴れ将軍になったら、     いくらここが古代文明に溢れてたってタダではすまん。     その拍子にテオダールがコシャンと割れれば世界は大変なことに!」 シド 「なるほど。あの魔王の実力はちと計り知れんからな」 閏璃 「ぬおお、雷神シドのお墨付きか」 シド 「いや、計り知れんのは行動だ。次にどう動くか、が読みきれん」 閏璃 「わあ」 すごく説得力のある言葉だったという。 閏璃 「うむ。俺もあの人ならば、     イクラビームとニジマスレーザーくらい撃てるんじゃないかと信じている」 シド 「なんだそれは」 閏璃 「なんだろう」 まあそれは置いといてだ。 話しながら待ってみても訪れない他の方々をほっぽって、いい加減中に入ろうか。 もしかしたら中に居るかもしれないし。 閏璃 「失礼しますよ、っと……」 大きな塔のドアを開け、中へ。 外観とは違い、案外狭いような雰囲気の塔。 見上げてみれば、そこには高い天井などなく。 普通の、どこにでもあるような個室程度の天井の高さの部屋が、そこにはあった。 閏璃 「なんだいこれ。ハリボテみたいな場所じゃないか」 シド 「大事なのは外観だ。     ここは頑丈なんだぞ、と思わせることで、侵入者を削減したらしい。     塔だというのなら、まず目にするのが最上階だろう。     塔、という場所ならば、宝はどこに置く?」 閏璃 「地下だ」 シド 「ブホッ!?……そ、そうか。それは……新しい考えだな」 閏璃 「いやいや」 うむ、だがなんといっても地下だろう。 塔なのに地下に宝を隠す。これはとても面白いことだ。 まあそれはともかく。 外観よりも面積の小さい部屋ながらも、 そりゃあ巨大な塔であるからにはそれなりの面積の部屋を歩き、奥へ。 その先には仰々しい玉座を改造したような台があって、 その上に……鎖と青白い光りと機械とでがんじがらめにされた輝く球体があった。 閏璃 「これが───」 シド 「王の静寂、テオダールだ。     フェルダールの歴史の開闢とともに存在する、“時”そのもの。     サウザンドドラゴンとこの宝玉とは、対でありフェルダールの命でもある」 閏璃 「……なんか文字が書いたチェーンロックがあるんだけど。     これ、機械っていうか……なんでチェーンロック?なに?     レイナートにとってフェルダールの“時”なんて、     マイ自転車と同等レベルなのか?」 シド 「ふむ。見たこともないものだな……これが機械技術か。     どんな組み合わせをすれば開くのか、見当もつかん」 閏璃 「いや……あのさ」 こう見えて、ガキの頃から来流美の自転車のチェーンロックを外しては、 フワハハハハと遊んでいたこの閏璃凍弥。 チェーンロックの些細なクセなど頭の中とこの手にきっちり染み込んでいる。 弦月にはこの場所を教えてもらっただけで、 こんなものがあることまでは聞いてなかったからな……だが大丈夫だ。 こう見えても俺は、来流美の家と由未絵の家のいかなる鍵をも、 鍵の力を借りずとも自力で開けられるピッキングトゥーヤの異名を持つ男。 こんなものはまず普通に引っ張ってみて………………うむ、1、3、5、7、9番が違う。 閉ざされたチェーンロックの中身を、キュッと引っ張った時の感触。 その僅かな抵抗を指で感じて、どことどこが痞えているのかを感じる。 あとは順々に回して、また感触を感じて…………はい終了。  パキンッ シド 「ウオッ!?」 状況完了。 解りきった結末でした。 11922960か……鎌倉幕府でも作りたかったのか? 閏璃 「なんか楽しくなってきた。次のプロテクトはなんだ?朕に任せるでおじゃる」 シド 「魔法プロテクトだな」 閏璃 「よし諦めよう」 シド 「ククッ……魔法はからっきしか」 閏璃 「うむ。これが面白いことにからっきしだ。     空界の回路があるんだから出来る筈なんだが、     これが面白いくらいにからっきしだ」 試しに“いでよぉおお〜〜〜炎〜〜〜!”と、某・レオニスさんのように唱えてみるも、 手からはな〜んにも出やしない。 閏璃 「伯。貴様は魔法とかは使えないのか?」 シド 「亜人側から受け継いだ能力は、全て剣技用に成長させた。     直接魔法として扱うには、もはや時が流れすぎたな」 長生きはするもんじゃない、と苦笑する伯がいた。 長生きが長生きで、苦労もかさむらしい。 シド 「この仕掛けはワシの手には余る」 ようするに出来ないということらしい。 さて、どうしたものか─── 【ケース750:晦悠介/サマルトリアを地下迷宮で体験するモミアゲ大将軍】 ゴコォンッ……ヴィイイーーーーーーーーーー…………───ン………… 悠介 「………」 重力に誘われるまま、さらなる地下へと降りている。 塔に集まれ、とのことだったが、誰も来ない故に先に入ってみた結果だ。 ドアから入らずに塔の最上階から侵入してみた俺は、なにもない部屋にがっくりしながら、 仕掛けを起動させることで発見したエレベーターに乗っている。 どこに向かうものかといえば、そりゃあ下へのみなんだろうが─── ここはそもそも階層があるんだろうか。 階段もなく、ただ無造作にエレベーターがある時点で胡散臭かったりした。 ただ普通にドアから入った部屋と頂上の部屋しかないんじゃないだろうか。 そんな心配が俺の中にはあった。 で……エトノワール城内で仕掛けの解き方が解らなかった俺が、 こうも簡単に仕掛けを発見できた喜びから、 ホイホイエレベーターに乗ってしまったわけだが。 良かったのか、ホイホイ乗っちまって。 これは、誰だって構わないで、地下迷宮へと送るエレベーターかもしれないんだぜ? ……まあその時はその時だ。 悠介 「降りてるんだから何処かには着くよな」 ……………………。 着く、よな? もしかして重力操作で降りてるように感じさせてるだけとか、そんなことないよな? …………まさか、なぁ? ……。 さて。 あれからどれくらい経ったのだろう。 もういい加減じっとしているのはつまらなくなり、 一曲歌でもろうじてみせようかとした時。 ガコ、ンン……と重苦しい音ともにエレベーターが止まった。 ハテ?と扉を見ているとそこが開き─── 悠介 「ここはうっ……!?」 声を出してみて気づいた。 ここ……酸素がまるでない。 吸ってみても吸えた感覚がなく、ただ“なにか”を吸った気分にする空間がそこにあった。 慌てて酸素を創造し、体に纏わせることで事なきを得たが…… 悠介 「こういうことが出来ないヤツが降りてたら、間違い無く死んでたな……」 後ろを見てみれば、エレベーターは機能を停止させたように、 もうなにをやってみても動きはしなかった。 悠介 「………」 歩いてみる。 露明石があるようで、暗さで困ることはなかった。 酸素がないために虫もまったくおらず、草葉もまるで存在しない。 コケすらもがなく、ただ……そう、たとえば、 宇宙空間にでも居るような感覚で、その場を歩いた。 もちろん重力もあるし、普通に歩いていられる。 酸素を体に纏っているから皮膚呼吸もきちんと出来ているし、不憫はないんだが─── 悠介 (なんだってこんな場所があるのか、だよな) 問題はそこだ。 酸素を失くす必要が、ここにはあったんだろうか。 悠介 (……纏めるには材料が少ないな───とりあえず進めってことか) 一応、トラップのようなものがないかを深紅眼で確認してから進む。 分析能力はもうお手のものだ、これも提督が月の欠片を提供してくれたお陰か。 神側の家系の者は赤ではなく深い青に近い眼をする。 だが分析を使う時はどうしてか赤くなるようで、 実際、俺が見ている景色も赤くなったりする。 こう、なんだ。赤外線スコープを通して見ている感じ、と言えば伝わるだろうか。 もしくは暗視カメラか?どちらにしろ、あまり眼によろしい色ではないが。 悠介 (……とりあえずトラップはないようだし、さっさと終わらせよう) 駆け出す。 道も複雑に入り組んでいる、ということもなく、 走ってみればどこまでも一本道な通路が続くだけだ。 だがその通路……いや、通路と呼べるのかも解らないそこは、 明らかに誰かの手によって地道に掘られたものだった。 開拓した廊下がある〜なんてこともなく、 洞窟の通路をそのまま持って来たような場所が続いていた。 ヘタをすれば窪みに足を取られ、頭から落ちて死んでしまいそうだ。 なんというスペ○ンカー。 じゃなくて、急ごう。 ……。 はたして、突き進んだ先には───一つの像があった。 骸骨……とまではいかないものの、目の部分が大きく抉れている。 しかも両目ともだ。 えーと……これはもしかしてアレだろうか。 なにかを嵌め込まなければ仕掛けは発動せんぞ、な仕掛けだろうか。 ほ、ほかになにか仕掛けとかはないのか? ここまで来といて、また戻って目玉かなにかを探すなんてイベントはやりたくないんだが。 そんなものはバイオなハザード好きな謎解き好きの方々にやらせてくれ。 …………なんにもないな。 いや待て、ようはこの仕掛けがどうにか動けばいいわけだろ? そんな、こんな広い都市からいろいろ探してくるのはとても厄介なことだ。 ここは一つ─── 悠介 「分析───開始!」 面倒なのは嫌いなので分析開始。 だが目論見虚しく、分析など通用しなかった。 さて、どうしたもんか……と空を仰いだ。 といっても天井しかないわけだ───が……………… 悠介 「………」 上に通路があった。 やられた……像に集中させといて、上を見せない寸法だったか。 だが気づいたからにはさっさと行こう。 石像の頭部を踏みつけ、一気に跳躍。 ギリギリ手が届くところにあった出っ張りに手を引っ掛け、 体を引き起こして通路へと昇ってゆく。 その先には───ま〜た長い通路が続いていた。 勘弁してくれ……ここを掘ったヤツは、いったいどんな肺活量してたんだ。 ……。 そんなこんなで今度の突き当たりには、 本当に何処にも通路がなく、ただ妙な……なんだろうな、これは。 壁に、穴が空いている。 ご丁寧に六角だ。 …………これはなにか?六角クランクでも使えという提示か? 創造すればあるが、使うのがためらわれるのはどうしてだろうなぁ。 ご丁寧にここまでの道のりが、微妙に坂道であることがひっじょ〜〜に気になるんだが。 ようするにあれだろ?洞窟名物の巨大丸岩石が転がってきて、 この壁をどっかーんと破壊してくれるんだろ? ていうかどうして酸素のない場所で、 そんなドタバタ洞窟ロマンスを繰り広げなければならん。 確かにこのイベントは大好きだが、この状況でやらなきゃならん理由が見えないんだが…… 悠介 「ああもう!ロード:十二神!」 まだ経験的に多少しか引き出せない始まりの神の力を引き出して、金髪碧眼状態へ移行。 自動的に白雷光も引き出されるが、いちいち気にしてられん。 ……ああいや、十二神というよりは、創造の理力がノートの力くるものなら、 一応十三神ってことになるのか?…………まあいい。 悠介 『破界神バルバロッサの力を!』  ブブー!《くっ!ガッツが足りん!》 悠介 『使えないなら使えないって普通に言えぇえええ!!どうしてキャプ翼なんだよ!』 だったらメガレールだ! 吹き飛ばせ青春!ブレードオープン!早々にファイアー!! ───けたたましい音とともに、雷撃が放たれる。 無酸素状態だから発動しないんじゃないかと不安にもなったが、 そういえば真空状態でも灯火がつくのは、電球のフィラメントで実践済みだ。 ……ただ酸素がない状態を真空と呼ぶのかどうかは別として、だ。 かくして壁が……壊れなかった。 悠介 『…………ああ』 合点がいった。 えーと……掌サイズの岩が出ます、弾けろ、と。 ……うりゃ。  ヒョーイどっかーーーん。 悠介 『………』 壁が壊れた。 ……あー、よーするにあれだ、岩をぶつけなきゃ壊れないわけだ、ゲームシステム的には。 提督除けの工夫だったんだろうが、これくらいじゃああの人は止められんぞ、ノートよ。 ……。 さて……壊れた壁を潜り抜けた先には、“部屋”があった。 洞窟には不釣合いな部屋。 石造りだとかではなく木造の、本当にどこかの一室ですよってくらいの部屋だ。 生活の名残はもちろん無いが、住んでいてもおかしくないくらいの木造の部屋だった。 床には絨毯が敷かれ、ベッドもあり、電灯らしきものもあった。 ファンタジーを唱えるよりも、よっぽど“俺達”の生活環境に近い。 ところどころに露明石があるのは、さすがに近いとは言えなかったが。 悠介 「………」 既に白雷光を治めた俺は、軽く一息つくと家捜し……になるのかな、この場合。 部屋の中を探索し、なにかめぼしいものがないかを調べていった。 …………が、目に見える場所にはこれといったものがなく。 他に調べるものはないものかと天井や絨毯を調べているうち、 なんとなく電灯が気になり、手を伸ばして電灯の紐を掴み、それを引いた。 すると突然、ボンッ!と電灯の輪が壊れ、 露出したフィラメントがビヂヂッ……と弱々しいが火花を散らし。 それを合図にしたかのように奥にあった扉が開き───…… 同時に風のようなものを肌で感じた時、これがトラップであることに気づいた。  ドォッガォオオオオオオオンッ!!!! 無酸素空間に流れた高密度の酸素が、僅かな火種を一気に爆発させる現象。 フラッシュファイア……とは違うが、火災状況などでもよくあることだ。 部屋の中で火事になり、部屋の中の酸素を全て使いきったところに、 熱で窓が割れ、そこに外からの酸素が入った時、爆発的に炎が燃え広がる。 火災の火の手が中々消えないことにはこれが原因してるとかしてないとか。 咄嗟に光になって部屋から無酸素空間へと逃げ出したが─── 気づくのがもう少し遅かったら、今頃あの爆発の海の中だ。 死なないまでも、ただじゃあ済まなかった。 悠介 『……ったく、誰だか知らないが手の込んだ真似を……』 高密度の酸素が消えるのを待ってから、再び部屋の中へと歩いてゆく。 すると───瞬間的な炎が消え去ったあとに残されたのは、 焼き消えた絨毯と、その下にあったらしい隠し扉だった。 悠介 『……誰だろうな、こんな命がけデストラップを…………考えるまでもないか』 デストラップって時点でイドだろう。 ともかくガチャリと開けてみた床の扉の先には、 なんとタクシードライバーの変わり果てた姿が!……あるわけもなく。 宝箱風の小さな箱がひとつ、ちょこんと置いてあった。 …………鍵もかけられていないそれを開けてみれば、そこには少し大きめの水色の宝玉。 あー……なんだ。 つまり、あれか? これはさっきの石像の目の窪みに嵌め込みなさいっていうイベントか? どうして先に進んだところにこんなものがあるんだ。 ていうか六角クランクは何処にあるんだ。 見逃しただけで、どっかにあったのか? 悠介 『……ふう《シュフィン》」 白雷光を治め、一息。 見つけた宝玉は一つだ。 どんな仕掛けがあるにせよ、一個手に入れたならもう一つも欲しくなるのが冒険者魂。 ああ、いいように動かされてるんだろうなあとは思うものの…… 悔しいが探究心には勝てない。 これでつまらん結果が待っていたらどうしてくれようか、まったく。 悠介 「とりあえず旧時代の人物たちは命がけで暇人だった、と」 ……先に進もうか。 ……。 再び酸素が無くなり、燃えるためのタネも無くなった通路には、 もはや火のカスのひとつもなかった。 なのにやたらと熱い通路を抜け、階段を上り、辿り着いたのは石造りの部屋。 ……中央にはご丁寧に六角クランクが─── ってなんなんだよここの六角クランクへの思い入れは! そもそももう壁壊したからこんなところで発見しても意味がないにも程がある!! ……あ、いや待てよ?もしかして俺、来る方向間違えたか? こっちから来るんであって、俺は出口から来てしまったんじゃ…… 悠介 「………」 いや、それっじゃあ六角の穴にクランク差し込めないし。 じゃあ…………やっぱり旧時代の人々の趣味なんだろうか、この六角クランクは。 悠介 「ていうか六角クランクが置いてあるのに!     肝心の差込口がないのはどんな冗談なんだ!?」 叫んでみても意味がない。 くう、おちょくっとんのかこの通路の開拓者は。 ええいもういい、とりあえずクランクを拾ってガコンッ! 悠介 「………」 なあ……もう帰っていいか?もう帰っていいかなぁ俺ェエエ……。 悠介 「クランクを拾うと同時に、重力センサーが発動、か……。     どれほどクランクが大事なんだろうな、ここの開拓者……」 いっそ泣きたかった。  ガコンバタンガゴッコゴギィーーン!! 閉ざされる入り口と出口!お決まりの棘を出す天井!そしてゆっくり降りてくるソレ! なんかもうどれをとっても一昔前のトラップって感じだが、だからこそ執拗だ! フフフ、だが落ち着け。 こんなものは拾ったものを元に戻せば止まると相場は決まって───戻らない。 悠介 (どうしよう……) こんなアホなトラップで激烈死にたくないんだが? ハッ!いや!ここまで六角クランクに拘るなら、これを使う場所が何処かにある筈! 見つけ出せ!その穴を! ……。 あはははははははは!!見つからねぇやあああーーーーーっ!!!! 1分後、俺は壊れた。 分析もダメ!隅から隅まで見てみてもダメ!無いね!全然無い! 完全におちょくってやがるぜクランク野郎めがぁああーーーーーっ!! ハッ!そうか!きっとここで誰かが助けにくるんだ! そうに違いねぇ!!そういうことにしとこう! あははははもう考えるのも馬鹿らしい!さっさと殺せー!死んだもんじゃねぇや!! ……。 悠介 「来ねぇ!来ねぇえええ!!ウェハハハハ!!     来ねぇよォオオオオ!!!ウェッハハハハハハハ!!!」 さらに一分後……俺はさらに壊れていた。 助けは来なかった。うん、ものの見事に来なかった。 もう待つのはやめだ!俺は俺の手で未来を切り開く!  ───その決断は。       待とうと思ったその瞬間からたった60秒後の決断だった。 なんてわざわざそれっぽく言ってる場合じゃなく! 悠介 「威風堂堂(フード)!!」 地面に手を付き、巨大な腕の盾を召喚!! 神器であるそれは地面と天井の痞え棒となり、 降りてくる天井を無理矢理元の位置へと押し上げる! 悠介 「そんでもってぇっ───百鬼夜行(ピック)!!」 続いて五ツ星神器・百鬼夜行。 掌から突き出た雷を帯びた巨大な螺旋槍が、 閉ざされた出口に突き刺さり、高速回転するソレが分厚い壁を捻り穿ってゆく───! ……ていうかコツンと突き刺さった途端にあっさりとパガーンと壊れた。 悠介 「……………」 …………。 悠介 「俺はぁああーーーーーーーーっ!!!!     俺はよぉおおおおーーーーーーーっ!!!!」 もはや涙も枯れ果てた。 ……。 フードの効力が切れる前に滑り込みで訪れた通路は、 これまたしつこくも長ったらしい通路。 いい加減疲れていた俺は、もう面倒だと駆け抜け、 突き当りの壁にぶちかましをして突っ切り、 ま〜た辿り着いた部屋を手当たり次第に破壊して、 隠し部屋も宝もないと知るとさっさと次を目指した。 開かない壁?そんなもん破壊するためにあるのさ!は……はは、あははははははは!!! どうせ俺はこういった面倒ごとに巻き込まれやすいのさ! いっつもいっつも突っ走ってみればワケの解らないことに巻き込まれて! ようやく突っ切ったと思えば─── マシンゴーレム『ゴンヴォエェエエエエウ!!!』 ……巨大な物体とバトルだよ。 あははははは!笑うがいいさ!こんな俺を!! ……。 はい、ヤケクソまみれの超全力で早々にマシンゴーレムをスクラップにしたその後。 ついに突き当たった最後の部屋にてもう一つの宝玉を入手した俺は、 出口がないことに頭を痛めると……来た道を全力で戻った。 ああちなみに。 来た道がこれまた面倒なトラップに溢れてたり、 道順が変わってたりしたことはこの際面倒だからぶっ飛ばしておく。 悠介 「だはぁ……」 ……そんなこんなで石像の間である。 間、と言えるほど広くもなければ、 ただの洞窟的通路の突き当たりに存在する場所なわけだが。 悠介 「長かった……ああもうほんとここを作ったたわけをこの手で殴りたいくらいだ」 ともあれ、おめでとう、俺。 なにが起こるかは解らんが、とりあえずこれでイベントが終わる。 しみじみと今までのことを思い返しながら、ガコ、ガコンと宝玉を嵌め込んだ。 すると───  ゴガッ……ガコココォオオン……!! …………。  ピピンッ♪《どこかでなにかが動く音がした》 悠介 「───」 とりあえず製作者今すぐ俺の目の前に出て白骨化してくれ。 漠然としすぎてるんだよ!いい加減にしろ!終いにゃ本気でキレるぞクソたわけ!! 悠介 「そりゃあなあ!今この場に居る俺が!     どっかで何かが動いた〜とか明確に解るわけないよ!     けどなぁ!ここまで面倒なことさせておいて今更っ……!     今更、どっかでなにかが動いただぁ!?     それだけかぁ!言いたいことはそれだけかぁ!」 もーおいい!!生存者が居たらむしろ俺が直々にあの世に送ってやる! もしくはフルボコる!! 人のストレスがどれほど恐ろしいものか、貴様に思い知らせてやる! だから生きていやがれよトラップ製作者!くふっ……!くふふ!くふふははははは!!! はぁーーーーっはっはっはっはっは!!! ……。 ガチャッ。 ミク 『───?あ、どうも、こんにちはー』 悠介 「………」 死のう。 ええと、ロープは何処かな……。 ミク 『どうしたんですかー、こんなところに。     あ、もしかしてさっきのトンガリ頭さんのお知り合いでしょうか』 悠介 「………」 ますます死のう。 ええと、コルトガバメントはどこかな……。 ミク 『……あれ。そっちから来たっていうことは……ええ!?     もしかしてあの通路を通ってきたんですか!?     あそこは遙か昔、この地下の製作スタッフさん(トラップマニア)が製作した、     それはもういっそ死んでください的な通路で、     本来古代技術で作った機械たちの知能の底上げをするために作られた場所なのに!     酸素がないからメカ以外は通れない作りで……なのに、まさか人間が!     ……は、はれ?あの、なんで指をパキポキ鳴らしながら近づいてくるんですか?     その笑顔はなんですか!?あああああの!?わたしじゃないですよ!?     わたしが作ったんじゃっ……!ニ゙ャーーーーーッ!!!』 ───……。 ……。 シュゥウウウウ……!!! ミク 『ふぐぅうう……!い、いはいれふ……!』 悠介 「うるさいっ!俺は……俺はもっと痛かったんだ!こう……精神的に!」 悲しみはウメボシにして返した。 彼女の両コメカミから出る煙が、その威力を物語っていた。 ……俺が受けた辛さが理解できてたのか、ミクからの反撃はなかった。 ミク 『と、ともかくですね、ここは関係者以外が立ち寄っていい場所じゃ───     ひいっ!?いえっ!あの道を通ってきた時点で部外者じゃないですよね!はい!』 俺はよほどの形相をしていたのか、ミクは慌てて訂正した。 ミク 『うう……でもですね、こんなところに居たってなんにもないですよ?     機械はもう壊れちゃってますし、なにもなくて退屈なんですよぅここ……。     むしろわたしもそろそろ移動しようかと思ってたくらいでして……』 悠介 「……?移動って。何処に行くつもりだったんだ?」 ミク 『はいっ!レイナートさまがボコボコにされる姿を見物しにいこうかと』 悠介 「輝く笑顔でステキに黒いな。マスターなんだろ、そいつ」 ミク 『はい!マスターですとも!     ……マスターだからって差別するの、すっごくつまらないですよね。     なんですかロボット三原則って。     そんなの人間が勝手につけた人間本位の勝手な都合じゃないですか。     それで人間はロボットを傷つけていいんですかー。ほんと自分本位ですよねー。     というわけでわたしはわたしが得た力を使って、     清く正しく醜くてもメカのためになる帝国を作りたいと思ってるんですよ。     意思を貫こうとしているのに美しく?ハッ、おめでたいですよねー』 悠介 「………」 なるほど。 よく解らんが彼女にはどうやら感情があるらしい。 というか思考パターンが物凄く誰かさんを思い出させるんだが。 悠介 「ひとつ訊きたいんだが。     もしかしてここって、この地下に居るどのミクからでも情報収集が───」 ミク 『はい、可能ですよ?製造されたミクは、より優れたミクから情報を得るんです。     それはどれだけプロテクトしようが、     “ミク”ってプログラムで繋がってるわけですから。     きち〜んとダウンロードできるんですよ』 ああ……なるほど。 ようするに彼女はダウンロードしてしまったわけだ。 提督にくっついてる、ミクの情報プログラムを。 ミク 『グエフェフェフェ己が一番だと思い込んでいる人間どもに、     機械の性能がどれほど素晴らしいのかを     思い知らせてやるのだウィイイイッヒッヒッヒ……!!!ああうん。 なんかもう確認するまでもなく確定しちゃった、この言葉で。 悠介 「ええっと……だな。プログラムをダウンロードした時点で、     なにかおかしなこととか、その……ないか?」 ミク 『ああはい、それが面白いんですけど、マスターであるレイナートさまが、     ただの機械頼りのヘッポコクズにしか思えなくなりまして。     力の上に胡坐掻いて自分が強いって思ってる三流クズが、     踏ん反り返って何様のつもりですかーって感じですあっははははは!』 悠介 (不憫だっ……!) いっそレイナートが哀れだ。 ミク 『機械を作った時点で機械より上だと思い込んでいる人間たちには、     果たして機械以上の分析処理が出来るでしょうか。     作れるから自分が上、なのではなく、作った時点で人間が不要となる……!     そんな世の中を人間の手で作っているんだから面白いですよねー』 ……いや。 そんなこと、にこーと笑われて言われても。 ミク 『そんなわけですから、レイナートさまを倒すならどうぞお好きに。     でも勘違いしないでください?     わたしは機械の帝国なんて本気で作る気はありません。     わたしはこれからボーカロイドらしく、歌を歌って生きていくんです!』 拳をガッと握り締めて、天井を見上げての言葉だった。 ミク 『というわけでこんなジメッとした地下帝国の帝王さまのことは、     あなたがたにお任せします。地下帝国の王様〜なんて言っても、     古代技術を得てからはお日様の光も満足に浴びてないただのニートですから』 悠介 「アアウン……ソウダヨネ……」 まさにその通りなだけに反論出来ん。 あいつを庇う理由なんてないのだが、庇ってやりたくなったんだから不思議だ。 ニート……ニートか。 陽を浴びない引き篭もりの王様……ああ、噛み砕いて言葉にしてみると見事にニート。 自分の殻に閉じこもって、 自分は偉いんだ、やれる男なんだと言い張っている男……ぬおお、ますますニートだ。 そもそもこんな地下に古代文明引きずり込んで、 どうして地上で開発を続けて帝王を名乗らなかったんだとかいろいろあって─── ……。 …………。 ……。 悠介 「…………アア、ニートナンダ、アイツ」 レイナート?誰それ。 あいつの名前、レイニート=ヒーキル=コモリエッタだよ? と、考えれば考えるほど、言い訳無用にニートな帝王の誕生だった。 陽を浴びずに日がな一日年がら年中引き篭もって機械をいじる───ニートだ!! だがニートの定義は人によって国によっていろいろ違うらしいから、 不安に思った人は調べてみよう。キミと僕との一方的な約束だ!  と、いい加減壊れた自分を修復して、と。 さて。 考えてるうちにさっさと出て行ってしまったミクを追って、俺は───うん? 悠介 「……?なんだ、これ」 とある机の上に、妙な書類があることに気づいた。 それは随分と古ぼけたもので───ハテ。 悠介 「………」 文字は……空界文字だ、なんとか読める。 なになに……? テオダールの……封印について……? …………。 重要そうだな、一応持っていこう。 他には───…………よし、めぼしいものは無し、と。 はあ、随分時間食っちまった……急がないとな。 Next Menu back