───冒険の書08/砂漠と草原の輪舞旋風───
【ケース85:中井出博光(再)/砂漠の村アメイダ】 中井出「ほへ〜〜〜っ!!中々活気のある村だなぁ!!」 アメイダの村に辿り着いた俺達は、その活気の良さにホウと息を吐いた。 何故ってそりゃ、地界じゃこうはいかないから───だろうな。 こんな景気のいい人々なんて、どこぞの商店街とか行かなきゃ見れたもんじゃない。 ごらんなさい?若い衆までもが笑顔で商売やってるよ?こんなの地界じゃ見れません。 男  「えー、卵!卵が安いよー!新鮮産みたて!鮮度抜群だよー!     砂漠の砂に埋めておけば5分でゆで卵!     殻が上手く剥けないって人は片栗粉を混ぜた岩塩で卵を包んでから     卵を砂漠に埋めて8分!!これで殻も楽に剥がせるよー!!」 藍田 「……なぁ。あの卵売りのにーちゃん、天界のレイルって人に似てないか?」 中井出「んあ?どらどら?───ってうおう、ほんとだ」 確かに似てる。 本人───ではなさそうだ。 “調べる”を実行したらNPCって出てきた。 ということはモデルにされただけってことか。 男  「えー、我が竜印食堂自慢の卵!今なら10個で10B$だーっ!!」 藍田 「10B$って?」 中井出「地界通貨で100円だな、早い話。1P$って言えばいいのに」 藍田 「どちらにしても解りづらいって。俺としてはA$単位で統一してもらいたい。     それだったら100円なら100A$、     一万円なら10000A$って区別できるだろ。……語呂悪いけど」 うん、確かに語呂悪い。 中井出「けど慣れておいた方がいいぞ?     空界にいるといろいろと金勘定のことは大事になってくる」 と、経験者は語る。 まあ俺だが。 藍田 「金勘定ね……そうだよな、空界行ったらなにをするか決めておくのも手だよな」 中井出「俺は伝説を伝え歩く吟遊詩人にでもなろうかと思ってる」 麻衣香「映像で?」 中井出「だって俺音楽1だもん」 俺には音楽の才が微塵にも無かった。 それは周知の事実である。 まあ努力してそれなりのところまでは昇りつめはしたけどさ。 それでも人様に聞かせるほどの詩は持ってない。 だから─── 中井出「吟遊映像人?」 殊戸瀬「なにそれ」 中井出「詩じゃなくて映像で伝説を伝え歩くナイスガイ」 ……なんか自分で言っててダメそうだった。 しかも思考回路がまるで中学時代の彰利だ。 中井出「ま、ともかく。まずはやっぱ武器防具の店だろ。     武器は───俺はガザミがあるからいいけど、オリバと丘野は初期装備だもんな」 夏子 「あのー、提督さん?わたしたちも初期装備だっていうこと忘れないでね?」 中井出「うむ。木村夏子二等には最強装備で行ってもらう。     なにせ貴様が神父送りにされては我らの全滅は身近になりすぎてしまう」 麻衣香「そうねー。オリバくん、     脅威的な強さだけど夏子が神父送りにされたら弱体化するらしいし」 藍田 「つーわけで夏子!ガザミどもから剥ぎ取った素材を売っ払って、     一番高い防具一式買ってきたぞ!!」 総員 『早ッ!!』 気づけば俺の隣でフルプレートを手にしている藍田が。 しかもそれは、とてもアコライトが着るようなものじゃあなかった。 機動性とか完全無視の防御重視装備だ。 夏子 「え……っと……こ、これ着て歩くの?───わたしが!?」 藍田 「大丈夫だ!夏子は必ず俺が守るから!     けどどうしようもない時ってやっぱりある。     晦や弦月にだってそういうことがあったんだ、     俺なんかじゃ間に合わない時ってきっとある。     だからその時のためにお前を守ってくれるのが───このフルプレートだ!!」 藍田が西洋甲冑のようなものをゴシャーン!と掲げる。 それは、砂漠を照らす陽光を受けてギシャアと輝いていた。 夏子 「やっ……でもっ……この暑いのに……」 藍田 「それも大丈夫!!武器防具にはスロットってやつがあるらしくて、     アイテムとかを嵌め込めばその能力が備わるんだってさ!     だからしっかりクーラードリンク付属!!」 どうだー!と再びフルプレートを掲げる藍田。 何気に楽しそうに見えるのは俺だけ───じゃないな、うん。 藍田 「まあまあとにかく身に着けてごろうじろ!」 夏子 「う、うん……亮がそこまで言うなら……」 と、フルプレート一式を受け取って、システム画面で装備変更をする木村夏子。 するとここに、ホラーものの洋館とかで出てきそうな動く甲冑魔導士が誕生した。 夏子 「あ……涼しいこれ」 藍田 「だろ?そうだろ?よし!これで夏子の無事は確定したも同然だ!」 中井出「確かに物理攻撃には強くなったろうけどさ。魔法攻撃はどうすんだ?」 藍田 「そのためにキミが居る」 中井出「人体リバースドールかよ!!お、俺たちに魔法の盾になれってか!     なんという上官思いな思考!死ね!!」 俺の肩にポムと手を置き、輝かしい笑顔で言うオリバに反論進呈。 まあ木村夏子のことで頭がいっぱいなこいつには何を言っても届かないだろうが。 ああ、一途ってとこを抜かせばこいつも女にだらしないサンジチックなのかもしれない。 丘野 「それで提督殿、これからどうするでござる?」 藍田 「あ、防具買うために寄った素材屋とかに行ったんだけどさ。     小さな村ながら、結構いろんなもの揃ってたぞ?それ、まず見てみないか?」 麻衣香「さんせー」 殊戸瀬「調合ギルドって無いのかしら……」 夏子 「ままま、とりあえずは見て回ろうよ。みんな一緒に、ね?」 中井出「あ、ああ……まあ、そうだな」 ガションガションと歩く木村夏子。 その姿はもはやかつての木村夏子ではなかった。 言うなれば───機動歩兵夏子? 素直に怖い。 丘野 「ブレイバーギルドとかはあったでござるか?」 藍田 「いや、残念だけど無かったなぁ。     俺もなにかしらの職人技とか覚えたかったんだけど」 麻衣香「ブレイバーって職人なの?」 藍田 「……違ったとしたらどういう部類なのか解らんだろ?」 夏子 「まあ……たしかに」 殊戸瀬「空界では勇者ってことになってるんでしょう?それならそれが呼び名じゃない」 藍田 「あ、そういやそうだ。じゃあ勇者技?まあそれ、覚えたかったなぁ。     ギルドっつったらアレだろ?FF11みたいに職人たちがいっぱい居て、     合成材料とか教えてくれる場所だろ?     だったらブレイバーギルドで教えてくれるのはきっと技だ。     そうだ、そうに違いない。それを覚えれば俺はもっと夏子を守れる!!」 中井出「ラブラブですな」 藍田 「解るかね」 つーかお前はギルドで技を教わらんでもキックコースがあれば十分だろ。 なんてったってオリバだし。 中井出「よし、オリバのことは放っといて買い物だ。     ポーションなんぞ既に売っちまったから緊急回復アイテムも無い。     このままではもしもの時にパーティーは全滅だ」 丘野 「にんともかんとも」 夏子 「初心者修練場から町に降り立った途端に回復アイテム売るなんて、     さすが提督さんだよね……」 中井出「うむ、褒められてる気が全然しない」 そもそも褒められてもいない気もするが、 それは丘野二等も同じなんだぞぅ、木村夏子二等。 中井出「モンスターの素材は素材屋じゃなけりゃ売れないんだろうか」 藍田 「おー。ハッキリそう言われたぞー」 中井出「そうか」 放っておくつもりだったが、 木村夏子から意識を逸らした……というか帰ってきたオリバが言う。 けどこれって案外面倒だな。 そりゃ道具屋とか武器屋に魔物素材を渡しても相手が困るだけだろうけどさ。 えーと?剥ぎ取ったアイテムは結構ある……な。 うん、自分用の防具くらいは買える。 麻衣香や殊戸瀬、丘野や木村夏子もそれは変わらないだろう。 ……といっても、オリバは自分の分の金を全て木村夏子に費やしたわけだが。 しかしそこはそれ、執事の装備は永劫変わることなど無く、 レベルアップとともに服までも強化されるらしいからな。 武器は自由らしいがオリバは足でいってるし。 中井出「………」 けどよ。 ノートリアスモンスターが落とすレア武器より強い素手っつーか足ってなんだろな。 これもあのマッスルの……オリバの為せる技なのか。 中井出「ちなみにオリバよ。貴様はなにか武器を買ったか?」 藍田 「オリバって言うな。───一応、足の装備でアイアンシューズを買ったぞ。     これで硬い相手でもさらに大丈夫だ。     手にはホワイトグローブス。コレをつけてこそ紳士って感じだ。     あとは執事の服だけで固められるから変えることは出来ないな。     執事は頭にモノを被らないらしくて、頭装備一切無しだし」 中井出「そうなのか。……つーかアイアンシューズって動きづらくないか?」 藍田 「稼動部分はちゃんと曲るようになってるって」 中井出「ふむふむ」 丘野 「ところで防具にも攻撃力はあるのでござるか?     一応、ここはゲームの世界でござるよ?     武器は武器、防具は防具と分けられているかもしれないでござる」 藍田 「いやそれがさ。     システム画面開いて防具のところの詳細見るとさ、きちんと書いてあるわけよ。     防具の攻撃力は防具の防御力×3だって」 中井出「え───そうなのか!?」 それってヘタすりゃ適当な武器よりも強いんじゃないか……? 藍田 「思ってることは俺が最初にしたことと同じだと思うけど、     残念ながら防具ってのは一式揃えてようやく防御力が安定するもんだろ?     だから殴る際に篭手で殴るとか、蹴る際に具足で蹴るとか、     そうした攻撃繰り出すとその部位の防御力のみが三倍にされるわけよ。     つまり俺が今履いてるアイアンシューズの防御力は5だから、     それの三倍っつーと15だろ?ほら、あんまり強くねぇのよ」 中井出「なるほど……確かにそれならまだ初期装備の方が安定があるなぁ」 藍田 「で、だ。そこで活躍するのが『フルアーマー』系の防具ってわけだ。     あれは全身系防具だから防御力が統計されるだろ?     だから篭手部分で殴ろうが具足部分で殴ろうが攻撃力は一緒。     モンクはヘタにナックル買うよりも全身系の防具を買ったほうがよさそうだぞ」 夏子 「……ちなみにこのフルプレートの防御力は?」 藍田 「35」 夏子 「ていうことは……攻撃力105!?」 そういうことらしい。 こりゃ強いわ。 藍田 「ただし動作が極端に鈍くなるから、攻撃当てること自体が大変なわけだが」 総員 『ああ……なるほど』 納得いった。 相当に動きの鈍い相手じゃなけりゃ攻撃が当てられないわけね。 夏子 「……ねぇ。思ったんだけど、そんな状態のままで旅続けられるの?」 藍田 「大丈夫だ夏子。『重さ』ってのは戦闘が始まるまでは全然無いらしいから。     だから敵と遭遇しない限りは普通に動けるし、走ることも可能らしい」 夏子 「それはそれで違和感よね……」 殊戸瀬「そこはゲームだからでしょ」 丘野 「───む?提督殿、あれはなんでござるか?」 中井出「む?なにって───」 ふと、丘野二等が促した方向をちょいと眺めた。 すると───妙な姿の動物が居て、その前に妙なおっさんが立っていた。 丘野  「ふむ。ちと気になるでござるな。頼もう」 おっさん「お?らっしゃい───っと、あんた初めてのお客さんだな?      ルルカパスを持ってない」 中井出 「ルルカ?」 俺はおっさんの言葉に、ちらりと謎の生物を見た。 ……こいつのことだろうか。 おっさん「ルルカパスってのはな。この動物、ルルカに乗れるパスポートだ。      徒歩なんぞよりよっぽど速い、砂漠や草原のお供だな。      まあ作る前に確認しておかなきゃならんこともあるんだが。      ───お前さん、今冒険者レベルいくつだい?」 丘野  「17でござる」 中井出 「俺は18」 夏子  「わたしは16……」 麻衣香 「わたしも16で───」 殊戸瀬 「21」 藍田  「20」 おっさん「あぁ、悪ぃなぁ。      ルルカパスは20レベル以上の冒険者にしか発行出来ない決まりなんだよ。      そのくらいレベルがねぇと、      誤って魔物の巣窟とかにルルカを走らせちまいかねねぇ。      もうちょっと経験積んでから来るんだな。      レベルも高けりゃ世界のことにも詳しくなれるだろ」 丘野  「なんと……」 ルルカパスか。 確かにこの妙ちくりんな動物に乗れば移動は随分と早いだろう。 第一の目的地である王国にもすぐに辿り着ける。 が───レベル20か。 俺やオリバや殊戸瀬みたいにひとりでガザミどもを倒せるやつらは別として、 打倒ボーナスが貰えないプレイヤーは結構辛い。 とはいえここで立ち往生するわけにも……いかないよなぁ。 中井出「よし、じゃあとりあえずこの砂漠地帯でレベル20目指すか」 丘野 「そうでござるな」 藍田 「ああ、俺もそうした方がいいと思う。     ここほど俺たちに丁度いい場所って無いだろ」 ひとつ解ったことがあるが、このヒロ……ああもういい、ヒロラインは、 相手がどれだけザコになろうが経験値は減ったりしない。 ザコから学べることもあるという晦の意識の現われなのかもしれないが、 これはプレイヤーにとって嬉しい限りだ。 だからレベル20までくらいなら、 ダイミョウガザミやガザミを転がしまくってれば自然に辿り着くだろう。 というわけで─── 藍田 「よっしゃ!ガザミどもの乱殺決定!!」 丘野 「拙者、早速新たな武器防具を買ってくるでござる!」 中井出「俺は防具だな。ガザミども、ちと攻撃力高すぎるし」 麻衣香「あ、わたしもせめて防具くらいは───」 殊戸瀬「……鈍器がいいわ。全てを砕く鈍器が」 総員 『………』 中井出「……丘野二等。貴様の連れ合いは、なかなかに豪気だな」 丘野 「何故だか知らんでござるが、睦月は鈍器好きなんでござるよ……」 丘野二等にだけ聞こえるように発した言葉が、 同じく俺にだけ聞こえるように発せられて返ってくる。 その言葉に俺はやはり『まあ……原中だしな』と思うしかなかった。 ……ちなみに。 武器屋に直行した殊戸瀬が真っ先に手にしたのは、 棘付きフレイル……いわゆるモーニングスターだった。 ───……。 ……。 ───それは。 素材の売却と武器防具と道具の購入が済み、 いざフィールドへ出ようとしていた時のことだった。 女性 「ああ困ったわ、どうしましょう……」 ひとりでぶつくさ言っている女性を発見したのだ。 それに一早く気づいた麻衣香がすぐに話し掛けると─── なにやらイベントが始まってしまったのだった。 女性 「……あなた、冒険者?ああ、丁度良かった!     ごめんなさい、実はとても困っていて……。     今日、主人の出世を祝った宴会をやることになっているんですが、     主人の大好物の『ガザミのミソ』がどうしても手に入らないんです。     そこでものは相談なんですが……     よろしければ『ガザミのミソ』を手に入れてきてくれないでしょうか。     もちろんお礼は必ずします。そうですね……3個あれば主人も喜びます」 麻衣香「ガ、ガザミのミソ……?」 丘野 「うあ……あまりにいい値段だったので売ってしまったでござるよ……?」 中井出「俺も……」 藍田 「俺も……」 殊戸瀬「……そうなの?じゃあしょうがないわね。わたしのでよかったら3つあるわ」 中井出「なにぃ!?」 言って、バックパックからガザミのミソ3個を出して女性に渡す殊戸瀬二等。 おお……さすがは普段は目立たないが用意周到と噂の殊戸瀬。 いきなり頼まれごとをクリアしてしまった。 女性 「ああ、これこれ!ありがとうございます!     それじゃあどうぞ、これを受け取ってください」 でげでで〜ん♪───殊戸瀬二等は抗菌手袋を受け取った!! 殊戸瀬「……抗菌手袋?───ああ、調合とかの成功率アップ装備ね」 中井出「手に取っただけで解るのか」 殊戸瀬「スターオーシャン2ndでそういう装備アイテムがあったでしょ。     もっとも、あっちは滅菌手袋だったけど」 中井出「おおなるほど」 そういえばそんなアイテムもあったな。 かつてはクロードくんのみでクリアするためにやんちゃしたもんだ。 もちろん偽造勲章はしっかりと作ったぞ? いやぁ、なによりもミカエルが強かったのが懐かしい。 彼の連続スピキュールは悪夢だった。  ◆スピキュール───すぴきゅーる  スターオーシャン2ndストーリーにて、  ある意味最恐の名を(管理人的に)欲しいままにしていたミカエルの技。  拳に紅蓮の炎を込め、天に向かって跳躍。  そのまま落下とともに炎を最大に燃やし、  地面に衝突すると同時にエクスプロード並の大爆発を起こす。  その割に詠唱時間と言えるようなものはほぼ皆無に等しく、  これを連続でやられると如何に高レベルのクロードくんたちでも瞬殺である。  『スピキューーーゥル!!うおぉーーーっ!!あっちぃいいーーーーっ!!!』  の言葉は、スターオーシャン2ndをプレイした人の中で知らない人は居ないだろう。  そしてその誰もが『自分で熱いとか言うなら使うな』と思ったことだろう。  うおーあっちぃーの他に『寒くねぇか?貴様ら』という言葉と  『この俺様は強ぇえだろうが』という言葉がある。ええ、マジで強かったッス。  話は変わるが、クロードひとりでクリアする場合は  最初のボス戦の時にレナをしっかり殺しましょう。  じゃないとレベル2になってしまうので。  そしてエターナルスフィアを作成するために必要な才能は、  あらかじめ『最初から始める』を繰り返して持たせておきましょう。  クックック……もちろんピックポケットで某おなごから  ミスチーフを奪うのを忘れちゃならねぇぜ?  *神冥書房刊:『悪魔辞典第三章/ひとりでクリアするとラストムービーがステキ』より 中井出「なんとなく調合好きそうだし、丁度よかったんだじゃないか?」 殊戸瀬「まあ……そうね。あって困るってものじゃないなら貰っておくわ」 別に嬉しそうにするでもなく、抗菌手袋をバックパックに入れる殊戸瀬二等。 うーむ、殊戸瀬二等はどうにも丘野二等以外のことにはなんというかこう、 ぶっきらぼうなところがある気がする。 気が、じゃないな。思いっきりそうだ。 だが別段、気にするほどでもないのでこちらは気になどせんが。 そもそもなんていうんだ?それでこそ殊戸瀬って感は既に染み付いているのだ。 今さらあーだこーだ言うつもりは無いし、 言うようなヤツだったら恐らく原中の猛者は名乗れんだろう。 個人の意思は自由自在にして本人の意志を尊重。 だが誰もが遠慮するでもなくツッコム時はツッコム。 これぞ原中魂。略して原ソウル。うむハラショーみたいだ。 話は変わるがサクラ大戦のミニゲーム、 『料理でハラショー』のマリア=タチバナの声はあまりにも美味しそうに聞こえない。 『ハラショ〜、とても美味しいわ』───ってウソつけ!という感じだ。 ところで何故俺はこんなことを考えてるんだろうな。 藍田 「顔色がすぐれんようだが」 中井出「い、いや、なんでもない」 訳解らん思考はとりあえずうっちゃろう。 少なくともこんなところで2000万パワーズをやってる場合じゃないだろ、うん。 中井出「では皆の衆!ささやかな頼まれごとも終わったことだし     フィールドに出て20レベルを目指すぞ!!」 総員 『サー!イェッサー!!』 そうと決まればあとは早かった。 我らは一丸となってフィールドへと繰り出し、その広大な砂漠のフィールドで─── 総員 『あっちぃいいいいーーーーーーーーーっ!!!!!』 いつの間にかクーラードリンクの効果が切れていたことに気づくと、 天をも貫かんほどの勢いで絶叫したのであった。 【ケース86:桐生真穂/サンドロットバトラーズ】 夜華 「飛燕龍───!!」  ヒュオパガァンッ!! ウサギ『ピギュウッ!!』 夜華 「……-凪-」 篠瀬さんの刀技がウサギ───マイティラビット(巨大な兎)の額を強打する。 するとウサギは眼を回し、しばらく行動できないような状態になった。 粉雪 「───臥竜空破!!」 そこにすかさずモンクの粉雪が踏み込んで、 屈んだ状態から立ち上がりの反動を加えた拳を見舞う。 そして─── 春菜 「───狙い打ち!!」 宙に舞うマイティラビットをキッと見つめ、弓を引き絞りやがて放つ春菜先輩。 その矢は寸分の狂いもなくマイティラビットを刺し穿つ。 ルナ 「世界の王さん、だっけ?わたしに力貸しなさいね。     ッ───ホォオオオオオムランッ!!!!」  ボゲルシャァアアアンッ!!!! ウサギ『ギャピィイイイイッ!!!!』 その勢いに身体を持っていかれたウサギを、 今度は待ち構えていたルナさんが釘バットで弾き飛ばす。 ……なんていうか、傍から見ると動物虐待の図にしか見えないのが恐ろしい。 仁美 「ぶーめらん!!」 そしてルナさんによって吹き飛ばされたウサギを、 お母さんが魔物使いの鞭で的確に捉え、空中で縛ったのちに後方へと吹き飛ばす。 これって確かKOFの『ウィップ』の技だったよね。 ……なんでお母さんが知ってるのかは、あまり考えないほうがいいんだと思う。 仁美 「真穂ー、いったよー!」 真穂 「うんっ!───はぁああああっ!!!!」 なんだかんだで最後はわたし。 吹き飛んできたウサギさんを構えたフライパンでゴワシャアと打ち砕いて滅殺した。 そう……一見動物虐待にしか見えない恐ろしい行為だけど、 モンスターたちの顔ってなんだかそれを思わせない恐さがあるからありがたい。 まるで江戸スターオンラインの『ニャン武士』みたいだ。 参考資料は『成恵の世界(6巻)』をどうぞ。原中は丸尾くんを盛大に応援しています。 真穂 「ふぅ……ウサギ相手に6人がかりで散々な苦労……辛いね」 ルナ 「このウサギが強すぎるのがいけないのよぅ」 言いつつウサギから剥ぎ取りを実行しているルナさん。 当然わたしも、他のみんなも実行するわけだけど───あまりいい絵面じゃないと思う。 ルナ 「あーあ、悠介がヒロラインに降りたってのは解ったけど何処に居るのよぅー。     どうせならわたしのところに降りてきてくれたらよかったのに」 粉雪 「わたしとしては……彰利と一緒のところに降りたかったかな。     なにもこんな狙ったようなパーティー編成にしないで」 春菜 「フラットさん以外、みーんなアッくんの妻なんてねぇ」 うん、これにはかなりの作為を感じる。 精霊さんたちか、それとも晦くんがそうさせたのかは解らないけど─── 多分他のみんなもこんな感じで分けられてるんだと思う。 でも……そうなると弦月くんは誰と居るんだろう。 聖ちゃん……かな。それともみずきくんと聖ちゃんの親子パーティーかな。 はたまた提督さんとかとアグレッシヴパーティー組んでるのかな。 ……うーん、解らない。 でも晦くんがルナさんの隣に居ないってことは、絶対に弦月くんの隣に降りたんだと思う。 これはある意味で確信だ。 でもそうなると……あの黒竜王さんも一緒に居るんじゃないかなー、 と思うのはわたしだけだろうか。 さらにそうなるとみさおちゃんも一緒に……うん、やっぱり解らない。 真穂 「ふう……」 一通りの闘いを終えたわたしたちは草原に座って身体を休めた。 メンバーはゲームマスターが決めたんだろうけど、 それにしても回復役がわたししか居ないのは本当に大変だ。 まあ戦闘中じゃなければ座ってればすぐに回復はするんだけど、 逆を言えば強すぎる敵と遭遇したらほぼ間違いなく死亡する。 戦闘中は回復が遅くなるっていうのは本当だったから参ったものだった。 さっきルナさんが試して、ウサギに蹴られてキレてたし。 春菜 「はぁ〜……いいよね、HP回復が速いって」 夜華 「えいちぴー……体力のことだったな。そうだな、通常ではこうはいかない」 粉雪 「HP回復が長いゲームって途中で辛くなるしね」 真穂 「冒険する時間よりもHP回復する時間のほうが多い気もするしね。     それじゃあ冒険するためにゲームやってるのか、     HP回復するためにゲームやってるのか解らないよ」 粉雪 「や、真穂……そんなピンポイントな……。     開発会社にもいろいろ都合があるんだよ、多分」 そうは言うけどあれは面倒でしょうがない。 この際、パーティー組まなきゃ倒せない敵ばっかなのは眼を瞑ろう。 だから回復速度と足の速度を向上させてほしい。切実に。 ───なんて思ってた時だった。  ゴゾォ…… ルナ 「───、……?」 ふと聞こえた物音に、ルナさんが耳をピクリと動かした───って動いた!? ……最近の死神さんは耳を動かせるのかな。 犬か猫ですかあなたは。 ルナ 「あそこ───誰か居る」 仁美 「え?どこどこ?」 ルナさんが見上げる高台の上。 そこに、確かになにかの姿があった。 丁度光を背負うようなカタチで立っているためによく見えないけど、 その数はそう多いものじゃない。 夜華 「敵かっ!?」 粉雪 「みんな油断するなっ!」 春菜 「や、粉雪。そこでスターオーシャンの真似はしなくていいから」 なんだかんだでやっぱり原中な粉雪ちゃんだった。 べつに篠瀬さんは狙ってやったわけじゃないんだろうに。 それはともかくわたしも高台に居る影を見て構える。 姿は見えないけど、でもこの人数でなら勝てると思う。 ……なんて思っていた時。 影  『ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪     ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『ガーナのサッカー協会会長〜♪』 影  『ニャホー!ニャホー!タマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『医者で政治家結構偉い〜♪』 影  『ニャホー!ニャホー!タマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪     ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『ガーナに行ったら会いたい人は〜♪』 影  『ニャホー!ニャホー!タマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『みんなのアイドルそんなおいらは〜♪』 影  『ニャホー!ニャホー!タマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『ガ〜ァ〜ナで〜♪い〜ち〜ばん〜♪人気〜の〜スポーツ〜♪     ワ〜ァ〜ルド〜♪カ〜ァ〜ップに〜♪出場〜〜〜だ〜〜♪』 影  『ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪     ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『ガーナの子供がなりたいものは〜♪』 影  『ニャホー!ニャホー!タマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『ガーナの子供はみんな知ってる〜♪』 影  『ニャホー!ニャホー!タマクロ〜〜〜ッ♪』 影  『見〜た〜目は〜♪こ〜わ〜いが〜♪優し〜い〜ハ〜ァト〜♪     み〜ん〜なの〜♪た〜よ〜れる〜♪ヒーロォ〜だ〜〜♪』 影  『ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪     ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪     ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪     ニャホニャホタマクロ〜〜〜ッ♪』 …………。 総員 『………………』 えーと。 どう反応したらいいんだろう。 影(多分モンスター)は、 何故かかつてはトリビアの泉のエンディングテーマだった ニャホニャホタマクロー(人名にして実在)を歌ってる。 これは一体どういう状況なんだろう。 とか思っていたら影が高台から飛び降り、少し離れた位置に着地。 その姿は───まるでFF11のヤ○゙ードだった。 うん、伏字にする意味はまるで無い。 獣人1『オマエラ包囲シタ!逃ゲラレナイ!!』 獣人2『獣人ノナワバリニ入ルトハ愚カ!弱イ人間メ、後悔スルガイイ!!』 粉雪 「えと……それ以前になんでニャホニャホタマクロー?」 獣人1『チョット前ニ決マッタ獣人ノ歌ダ!』 総員 『………』 何処からツッコんでいいのかもう解らなかった。 春菜 「そんなのどっちだっていいよ。     ようするにわたしたちを攻撃しようっていうんでしょ?」 ルナ 「そうそう、まだるっこしいのは無し」 粉雪 「“調べる”での結果は“楽な相手”だし、     あまり大きなこと言わないほうが身のためだよ?」 獣人2『オマエラ弱イ人間デハ理解ニナド至ラナイ。レベル差ガ全テト思ッタラ大間違イ』 仁美 「うわ、この獣人さん説教してきた」 夜華 「どちらにせよ敵なら斬るのみだ。いくぞ───!!」 真穂 「うんっ!」 いいながら、わたしは辺りを素早く見渡した。 確かに周りは獣人に囲まれてる。 オークにゴブリン、鳥の獣人(ヤグー○゙)とかに。 でも戦うのは目の前の二体だけらしく、他の獣人は闘いに参加する様子はなかった。 もしかしてこれってなにかのイベントかなんかなのかな。 どちらにしろ、そう苦労せず倒せそうだった。 なにせさっきのマイティラビットが『強そうな相手』だったからだ。 それに勝てるなら、今さら楽な相手に負けるわけがない。 そんな思いを込めて、 わたし以外に回復役の居ないメンバーたちは一斉に駆け出したのでした。 ハッキリ言って低レベルの回復魔法も無い、 祈ることしか出来ないわたしじゃタカが知れてるのです。 それでも走りましたとも、ええ。 Next Menu back