───冒険の書304/掌の上の攻防───
【ケース757:晦悠介/HQ:1】 カンッカンッカンッカンッカンッ───ダンッ!! 長い通路の先の鉄板型の階段を何段か飛ばしで降り、地下都市への入り口へと辿り着くと、 その先がどんな状況なのかも確認せずに飛び降りた。 浮遊階段がなくなっていたとかやけに広くなっている気がするとか、 そんなことに気づいたのは飛び降りてからだ。 彰利 「悠介!」 悠介 「ああ!解ってる!───ディル!」 落下中にディルゼイルを竜玉から召喚し、その背に乗ってこの広い空間の中心へと向かう。 そうしている間にもなにかとぶつかりそうになる、謎の映像が気になった。 彰利 「……、こりゃ……」 すぐ後ろで俺に掴まってディルゼイルに乗っている彰利が、ゴクリと喉を鳴らす。 その様子から、これがなんなのか薄々感じているのかもしれない。 いや、そもそもおかしいことに気づく。 入ってからずっと感じている違和感。 近づいているはずなのに中心に近づけず、 それどころか俺達が見ていた筈の景色が上書きされていっているように、 徐々に変わって─── 彰利 「まじぃっ!!悠介!ディルゼイルに戻ってもらえ!」 悠介 「───!ディル!」 彰利の声調からしてそれがただ事ではないと感じた俺は、 どうしてだとも問わず、ディルを竜玉に戻し、落下を始めた。 だがやがてくる筈の着地の衝撃はいつまでも来ず、 いつの間にか立っているような感覚ののち、俺達は……砂漠に居た。 悠介 「砂漠……?《ジリ……》っ……暑いな……ホンモノの砂漠か……?」 彰利 「機械王、機械技術……ゲーム。予想しなかったわけじゃねぇけど……。     ……来るぞ悠介。戦闘開始だ」 悠介 「来る?なにが───、……!!」 砂漠の中心に、光の柱が出現した。 ソレは巨大な金属と金属が鋭くぶつかり合ったような音を高鳴らせて、 やがて消えると、その場にひとつの物体を残した。 いや、物体と唱えていいのかも解らない、曖昧な存在だった。 彰利 「───、うえっ……!最悪だ悠介!予想が当たっちまった!」 悠介 「最悪……?彰利、いったい───」 彰利 「ジェノサイドハートだ!サガフロンティアのT260Gストーリーのラスボス!」 悠介 「───」 瞬間、頭によぎるのは、いろいろな噂。 思い出したくないことばかりが並べられ、 特に危険なのがカーネイジという、貴様に未来はありませんよとばかりに “NO FUTURE”の文字を見せ付けるプログラムレーザー。 そこまでゲームに詳しくない俺でもその噂は知っていた。 悠介 「どっ……どうすればいい……。これに関しちゃ、お前の方が詳しそうだ……」 彰利 「逃げたい……ところだけどね。もうバーチャルシフトの波に飲まれちまった。     こりゃ、逃げ出してもループして戻ってくることになりそうだ」 悠介 「そうなのか……?」 彰利 「となれば、やることなんて一つしかねぇだろ?」 悠介 「───だな」 背にしていたラグを抜き取り、構える。 彰利も同様に篭手と具足を構え、目つきを鋭くさせてゆく。 ……その途端!!  ゴフィィイイイーーー……ガォオオオオオオンッ!!!! 悠介 「───!?ぐあぁあああああがぁああああああっ!!!」 彰利 「がっ……ぎっ!!ぎあぁああああああああっ!!!!」 ジェノサイドハートの背面から物凄い熱が突風とともに走り抜けた。 ヒートウェイヴだ───熱の環境に合った攻撃だ。 突風はそれこそ一瞬だったが、螺旋を描くように吹き荒んだそれは俺達の体を焼いてゆき、 ひどい火傷ダメージを残していった。 悠介 「ぐはっ……くそ《ヂガァォンッ!!》げはぁっ!?」 彰利 「悠介!?」 焼けた体を庇いながら体勢を立て直した途端、 極度の雷を孕んだなにかが俺の左肩を砕いた。 この反応は……自分もよく知っているものだ。 悠介 「っ……レールガン!?こんなものまで……!     だったらお返しだ!伎装砲術(レンジ/アロー)!メガレール───……!?」 ラグを突き出し、ブレードオープンさせた───その途端、 雷の反応が鈍くなり、やがて異常をきたす。 なにかおかしいと注視すると、砂漠の砂がおかしな流れ方をしていた。 風が吹いているのはさっきから感じていたが、 それがどうにもジェノサイドハートを軸に動いているようで─── 彰利 「───!悠介!雷治めろ!磁気嵐だ!!」 悠介 「なっ───なんでもありかよこいつは!!」 叫んだ途端だった。 緩やかな風の流れは突風となり、暴風となり、やがては磁気を孕んだ嵐に至る。 火傷した肌を磁気の波が弾くように走り、 頭に突き刺さるような鋭い痛みが砂の嵐とともに俺達を襲う。 それに吸い込まれないように踏ん張っていると、 さらにその磁気の嵐を勢いづかせるかのように、嵐の中心に発生する竜巻。 耐えようがどうしようが、こんな至近距離で発生した竜巻に人一人が耐えられる筈もなく、 やがて体が吹き飛ばされ、飲まれてゆく……! 悠介 「こンのっ……あまりナメるな!風を吸い込むブラックホールが出ます!弾けろ!」 だが思考の回転ならこっちだって負けてない。 嵐を鎮めるとかは考えず、ただ風だけを吸い込むことに特化したブラックホールを創造。 風の全てを吸い込ませ、磁気や砂だけを残して場が納まる頃。 着地と同時に疾駆し、伎装剣術で元に戻したラグで一気に斬りかかる!! 悠介 「斬り砕け!雷神牙!!」 雷属性を最大出力でエンチャントし、渾身を以って剣を落とす!! いや、落とした筈だった。 しかし突然腕は動かなくなり、それどころか足までもが動かなくなり…… 悠介 「───!?か、っ……体が……!?石に───!?」 体が石になってゆく。 雷を孕んでいたラグも例外ではなく、俺の全てがカキコキと固まってゆく。 説明されるまでもない、肌で感じていた。 時間蝕ってやつだ───彰利が使うような月操力の類のものとは違う、 化石化させるほど一気に時間を吹き飛ばす能力。 効果はそう長く続かないだろうが、こんな相手を前に石化なんてしてみろ。 レールガンで砕かれて、一発で終わりだ───!! 悠介 「く、はっ……!き、金、の……針、が、はっ……あ……!出───……!」 肺が、喉が石になってゆく。 辛うじて振り絞ったイメージもやがては石化し、 最後に目の前に金の針が創造されるのを見てから、俺の意識も石化した。 【ケース758:中井出博光/HQ:2】 ゾガシャシャシャシャシャシャズバシャシャギフィドガァォンッ!!! 中井出「うおぉおおおおおお!!さっみぃいいいいいいいっ!!」 やりたいことがあって、都市の中を探索してたまではよかった。 うん、よかった。 やりたいことを終えた途端、都市が沈んでからは何事ォオオ!の嵐!! 気づけば僕は雪山に居て、その中心でジェノサイドハートと対峙していた。 ジェノサイドハート自身はそう動かないために、 速度で近づいて切り刻んで退避を繰り返せばなんとかなりそうだ。 ……なりそうなんだけど……こいつ攻撃力高すぎ! しかもプログラムモンスターを次から次へと出してきて、 そいつに気ィ取られてたら容赦なくプログラムアタックしてくるし! く、くそう!こんな時に悠黄奈さんでも居てくれたら! こんな吹雪くらい、きっと相殺してくれるのに! ていうか僕のこと覚えててくれてるかな。勝手に記憶無くさせといてなんだけど。 中井出「でも僕は負けないよ!     たった一人になっても、この世界とこの夏と戦うって決めたんだ!     さあ気合い入れていけよ俺!このひと夏の軸を、俺の手で変えてみせる!!     それが俺の───“博光の野望”だ!!     もう戻れねぇぜ……やろうじゃねぇ!やりきるって決めた!!     いくぜ相棒!武器はしっかり二刀流!!《ギョフィィンッ!!》」 双剣を頭上高くに振り上げ、マグニファイを発動! 体を包む鬼人化の赤が、僕に一握りの勇気をくれる! 一人っきりってのは怖いけど、俺にはまだジークが、みんなの意思が、ともにある。 この世界だけは俺のことを忘れないし、 この世界にだけでも“俺が生きた証”があるのなら、俺はまだまだ頑張れる! だからこそ突っ走る! 突っ走って壁にぶつかって、全身全霊をかけて壁をぶッ壊して、 その先にある未来を我らに!我らの手に!それ以上なんて望まねぇ! 中井出「ルドラぁああ!!お前がどうして俺を連れていこうとしなかったのかは知らねぇ!     記憶を消去したんなら、あとは俺を連れていけばお前の望みは叶っただろうに、     どうしてそうしなかったのかなんて、俺にはまったく解らねぇ!!     でも、もしお前が俺自身の意思で、足で、     お前のところに来てほしかったっていうなら、その願いは絶対に叶わねぇよ!     だって俺は!俺が生きてきたこの歴史が好きだ!     どんな結末を迎えて、後悔して、泣き叫びながら死んでも、     それでも俺はこの時間軸と、一緒に生きてきたみんなが好きだ!     だから覚悟しとけよ!俺はお前には全然敵わないだろうけど!     俺はもう誰の手も借りれないくらい孤独かもしれないけど!!     絶対に───どんなことをしてでも、この夏の先に立ってみせる!!」 どんな軸があって、ここまで辿り着いてしまったのか。 どんな軸があって、それに逆らえたからここに辿り着けたのか。 やっぱり俺はなにも解らない人間だけど、 解らないなら解らないなりに足掻くことは出来る。 なにを思い、なにに対して抗うのかも鮮明ではないけれど、 だったらせめて、目指す未来を自分の中でだけでも勝手に、だけど鮮明に描いて、 その未来だけを目指して突っ走ろう。 後悔だらけの未来に涙しても、せめて─── これまでの人生、なによりもあいつらに出会えたことだけは誇れるように─── 【ケース759:セレスウィル=シュトゥルムハーツ/HQ:3】 見渡す限りの廃れた大地。 廃土、と呼ぶべき場所に、わたしたちは立っていた。 ゼノ 「チッ……また随分と面倒そうなものが仕掛けられていたものだ」 悠黄奈「いえあの……それよりもどうして二人とも、こんな場所に……」 セレス「それはこちらのセリフでもありますけどね」 既に攻撃は始まっていた。 機械のガラクタを飛ばした攻撃を潜り抜け、 接近するや開始するプログラムアタックの数々。 けれどこの場所は、なにも敵にとってのみ強みになるわけでもない。 吸血鬼であるわたしと、死神であるゼノには、 むしろこの大地の負のエネルギーは力になった。 ゼノ 「《ドシュンッ!》女、足手まといになってくれるなよ』 こちらを見ず、鎌を解放し、姿勢を低くしたゼノが言う。 ……あまり馬鹿にしないで欲しい。 けれど相手がそう思っていられるのなら、 わたしの足手まといにもならないという意味で受け取ろう。 さて、どこまで引き出せますかね……。 セレス「すぅ……《カ、チリ───》───……ふぅ……』 エドガーを自分の中から引き出し、力に変えてゆく。 それはスイッチを切り替える寸前、 ほんの少しの微調整で引き出せる、わたしの“基礎”たる吸血鬼の力。 金敷深紅を引き出し、全身に行き渡らせる。 ……うん、いい感触です。 “敵”を前に、どうやらエドガーも協力的のようです。 悠黄奈「ああもう……博光さんを探さなければいけないのに……!《シャフィィンッ!》』 悠黄奈も能力を余すことなく解放して、悠黄奈、というよりは精霊セルシウスの姿に至る。 元々そういう容姿だったらしいですが、髪の色や体を包む冷気が明らかに変わった。 傍らにはフェンリルが召喚されて、感じる冷気の密度が一気に上がるのを感じた。 さて……問題はこの即席パーティがどこまでやれるかですが。 既に爪閃攻撃を当ててみたのですが、 悔しいことに効果があまり得られず困っているところです。 能力解放でどれほどわたしたちが強化されたか……それが勝利の鍵でしょうね。 セルシウス『ガラクタの排除はフェンリルに任せます!       二人とも、力の限り攻めてください!』 ゼノ   『指図をするな、女───!』 セレス  『……やれやれですね』 協調性という言葉とは無縁のパーティな予感がした。 それは恐らく、ゼノが調和を乱すからでしょうね。 そこのところはわたしと悠黄奈で調節しないと……すぐ負けるでしょうね、ええ。 【ケース760:アルビノ/HQ:4】 ザァッパァーーーーン!!! アルビノ「うへーえ」 じっと待ってるなんて性に合わない、ということで突っ走ってきた俺だったが。 どうにも来なければよかったな〜とか思ってたりする。 荒ぶる波を眺めるに至り、 どうして俺は海の男たちがバックにしたら格好よさそうな海の前に立っているのか。 ミクにはモンスターユニオンってところで待機してもらってるから危険はない。 ないが─── ミク  『………』 アルビノ「………」 何故かここにはボーカロイドの方のミクが居た。 ミク  『これはなんたる僥倖でしょう!      光を求めて地上に出ようとしたのにレイナートに捕まって、      そんなところにとんだ協力者が!      というわけであの、ジェノサイドハートを破壊するの、手伝ってくれません?』 アルビノ「うわ〜、説明的〜」 けど正直俺だけじゃどうにか出来そうにない。 俺はただ魔王のヤツにこの武器を返しに来ただけだったんだが───いや、いい。 今はもう少しだけ借りるとしよう。 どこまでやれるからは解らないが、仮にも魔王のクローンだ。 潜在的な能力の評価だけは高かった。 アルビノ「けどいいのか?あいつをぶっ壊すってことは、機械文明への反逆になるだろ」 ミク  『それはあなたもですよ?      わたしはいいんです、空の下に出て、歌を歌い続けると決めましたから』 アルビノ「だったら俺もいい。ミクをずっと守るって決めたからな」 ミク  『───告白ですか?』 アルビノ「ちがわいっ!俺が言ってるのはツェルストクラングのほうだ!」 ミク  『そうですか。それならよかったです。あなたの容姿は嫌いではないですけど、      断然魔王の方が心にズキュンと来ますから』 アルビノ「……それ、クローンとしては物凄くイタイんだが」 ミク  『御託はいいですから戦ってくださいね。      ソウルリリック!“思い出はおっくせんまん”!!』 アルビノ「へ?《モンシャンシャンシャアアアアン!!》お、おおおおっ!?」 ミクが短く歌うと、俺の体の奥で熱いなにかが弾けた気がした。 それとともに体に漲る力───これがミクの歌の力か! ミク  『2分少々しか効果はありません。      やられないように気をつけて戦ってくださいね』 アルビノ「お前は?」 ミク  『もちろんわたしも戦いますよ』 言うや、ミクが自分の前面にシールドを展開し、両手にネギを持って疾駆する。 その速さたるや、その通りなんだけど人間の速さじゃあなかった。 ……俺の体の中にもなにか、そういうのはないんだろうか。 そう考えて、自分の中に意識を落として探ってみた。 すると……微かだけど、なにか小さな煌きのようなものを発見して、それを握ってみる。 と───ギシリ、と体が軋む音とともに、 なにか───物凄い力が自分の中で弾けたのを感じた。 アルビノ「え、え……?な、んだ……これ───」 ミク  『……?《チチッ……》───魔王の潜在能力的なものです!      人器、というものらしいです!恐れず、思う様にふるってみてください!      50%にも満たない劣化能力ですけど、ないよりマシです!』 アルビノ「お前口悪いなぁ!!」 ミク  『対等のつもりですよっ!』 もうジェノサイドハートに肉迫していたミクがネギブレードを落とす。 それはプログラム文字の集合体のようなカタチのジェノサイドハートを斬りつけ、 だが、崩れたと思ったソレはすぐに元の形へと戻ってゆく。 当然その場でじっとしているだけの筈もなく、 ジェノサイドハートは姿をかき消すようにして別の場所に移動すると、 ヂガガガァアアンッ!!! ミク  『あぅううあぁあああああっ!!!?』 アルビノ「うおぉああっ!?」 落雷───落雷を落としやがった! ミクに直撃だ……離れた場所に立ってる俺にまで余波が来るくらいの威力……! あれじゃあミクが─── ミク  『っ……こちらの心配はいいですからっ!敵をもっとしっかり見てください!』 アルビノ「あ……ああ!」 辛うじてシールド展開が間に合ったのか、ミクは大丈夫そうだった。 それでもダメージはあったのだろう。 少し眉をひそめた彼女はネギを右手だけに持つと、左手にはシールドを展開した。 アルビノ「……よしっ」 人器ってやつを解放して以降、クラウソナスとのシンクロ率がさらに向上した。 飛び出たブレードはかつての倍以上の速度と鋭さを見せながら回転し、 帯びていた光りさえ、輝度を増している気がした。 アルビノ「……しっ!」 地面を蹴る。 ───と、今までとはまるで違うダッシュ力に驚いた。 驚いて、コケそうになるが─── 同じく向上していた動体視力と反射神経がそれを許さなかった。 視線の下に一気に伸びてきた足が大地を捉え、弾き、 ジェノサイドハートまでの距離を一気に詰めてゆく───! どんな攻撃をしてくるのか、まだ全然把握なんて出来ちゃいないが─── 待ってたって、解るより先に殺されるに違いない。 だったら攻めて攻めて攻めまくるのみだ! 【ケース761:岡田省吾/HQ:5】 フィンッ───ギギャリギャギャリギャリギガガガガガガンッ!!!! 岡田 「つはっ……かってぇええなオイ!!     プログラム文字の集合体みたいなのになんて硬さだよ!」 戦い方は解った。 ようはこいつを形成しているプログラム文字を全て破壊してやればいいだけのこと。 ……だけのことなんだが、文字のひとつひとつが硬いくせに、迎撃システムが厄介すぎる。 こうやって攻撃を当てるのも一苦労ってくらいのチョコマカ動くし、 当てられてもダメージが通ってるのかが怪しいくらいだ。 それに……問題点として、 藍田とフレイアさんがバーチャルシフトの波に飲みこまれて、 消えてしまったことがダメージになっていた。 ……いや、それはまだいい。 予想外なことに、閏璃が乗っているマガス・マッガーナは異常なくらい強い。 強いんだが、小回りが利かないのが難点だった。 じゃあ問題ってのがなんなのかっていえば、事実上近接戦闘者が俺だけだってことだ。 サポートに回るには、マガス・マッガーナはデカすぎる。  ビムンッ!! 岡田 「また移動か───そこ!!」 けれど俺だって振り回されっぱなしじゃない。 大体パターンを見切ってきたからには、 びくびくして敵の行動を待つことなんてするわけもない。 岡田 「切り刻む!レイザーシルエット!!」 予測した出現に向かって連撃剣閃型の早撃ちを解放!! 結果として予測は的中し、 放たれた剣閃の数々がジェノサイドハートの体を切り刻んでゆく! だが───くそ、手応えがないにもほどがある。 もっと物体としてのカタチをもっていれば、と思ってしまう。 いや……なんだ。思って、しまった。 音声 『イメージヲ抽出……我ガ肉体トスル』 聞こえた声にハッとしても、もう遅い。 文字列は急に密度を上げ、蠢くと、俺が思い描いた通りの───巨人の姿へと変わった。 巨人といっても完全な人型ではなく、サガフロンティアで言うところの機械神バロール。 マガス・マッガーナをスリムにしたような機械モンスターだった。 岡田 (たああーーーっ!!シマターーーーッ!!) そうだ……ここは、この都市自体が、もうジェノサイドハート自身なのだ。 当然その場に、というよりは体内に居るような状態の俺達が、 頭の中にイメージした映像を吸い取るなんて無茶も可能。 多分こいつは相手があまり戦いたくない存在のイメージを糧に、姿を変えるのだろう。 バロール『クゴォオオオオオオオッ!!!!』 けど性能がそう変わるわけでもない、と信じたい。 磁気嵐だけは今やられると、マガス・マッガーナが壊れる可能性があるからだ。 閏璃 『きょっ……巨大マシンバトル!なんというロマン!』 レイル『よし!いくぜ閏璃!移動は任せろ!』 閏璃 『うむ任せた!』 言うや、瞬間移動システムで一瞬にしてバロールの背後に転移し、 左腕のフォトンブレードを輝かせる閏璃! っと、俺も見てるだけでなんていられない…… 出来る限りモロそうなところを攻撃していく!
【Side───その頃の彼】 ……うん。 相手のイメージを吸い取ってカタチを取る、ってのはよ〜く解った。 ウン、実感してる。 ゼプシオン『ルゥウォオオオオオオオオッ!!!!』 中井出  「俺の馬鹿俺の馬鹿俺の馬鹿ァアアアアア!!!!」 で……どうして調子に乗って、よりにもよって彼を思い描いてしまうかなぁ……。 最初にマムル(風来のシレン)を描いたまではよかった。 ウホッ、めんこい……!とか普通に思ってたし。 それで調子に乗っていろいろイメージしたのがマズかった。 想像ってのは、晦くらい鍛錬しないと“自由”って武器に出来ない。 これは想像しないでおこうって思ったものほど鮮明になってしまい、その挙句がコレだよ。 なんの因果か、よほどにこの英雄王に縁があるのか。 僕はまた、彼との対巨人バトルを迎えていた。 【Side───End】
ガラタタタタタズフィンゾフィンドガァン!!! 岡田 「おぉおおおおあぁあああああああっ!!!?」 キッパリ言いまして、マガス・マッガーナはマジで破壊兵器だった。 フォトンブレードが振るわれる度にバロールの体は削られ、 移動する敵を追いかけて放たれるホーミングミサイルの威力は尋常ではなく、 向かってくる敵に放たれるガトリングフォトンブラストは嫌味なくらいの連射力だ。 攻撃されそうになると全身を覆い隠すほどの高密度フォトンシールドを展開し、 全てを無効にしている。 一応俺も攻撃に加わっているんだが、正直火力が違う。 ウェポン、と呼ばれるだけあって、本当の意味で“武器”なのだ。 破壊兵器と名づけられるだけのこともある。 こと、破壊に関しては一級以上をつけられる。 バロールが放つ攻撃も、シフトが教会……というか聖堂なためか、攻撃的なものがない。 そのため、単純な肉弾戦めいた戦いになり、 目の前で巨大メカバトルが繰り広げられている始末だ。 ていうかね!?風圧で近寄れねぇよこれ!! けどこの様子ならこのままゴリ押しで勝てるか───!?  ……いや。それは、遙かに甘い考えだった。 一定時間過ぎたからか、ダメージを与えまくったからか。 バーチャルシフトが自動で起こり、聖堂は消え去った。 変わりにバーチャルルームのような、さっきまで居た地下都市としてのカタチじゃなく、 そう……ジェノサイドハートのメインルーム、 まさにそのものの場所に、俺達は立っていた。 そこにあるものは、俺達を囲むように展開された映像、映像、映像……! 映像の中では他のやつらがそれぞれ、砂漠や海洋、廃土や雪山で戦っていた。 雪山のヤツに見覚えはないが、どうしてかゼプシオンと戦っている。 だがそんなことよりも頭を占めてやまないのが、 このメインルームでジェノサイドハートと対峙する、という恐怖。 閏璃 『っ……レェエエエエエエイル!!攻撃!攻撃しまくれぇえええっ!!』 レイル『お、おおう!?何事!?』 閏璃もその恐怖を知っているのだろう。 レイル氏を促し、全武器をフル稼動させての総攻撃を開始する! 俺も今こそ、とストックを解除して攻撃に移ろうとするが───  キィンッ…… 軽い電子音ののち、見える映像全てに出現する、赤い“NO FUTURE”の文字。 バロールの姿からジェノサイドハートに戻っていたソイツの体に高圧縮の光が集い、 やがて、ひどく綺麗な“キィンッ”という音とともに、その閃光は放たれた。 岡田 「や───」 ばい、と唱え、ソレが映像に届く前に破壊しようとレイザーシルエットを放つが、 剣閃をいとも簡単に破壊したソレは、虚空に浮かぶ映像にぶつかり、 跳ね返るとともに三つの閃光に分かれ、 それらがまた別の映像へとぶつかり、跳ね返りを繰り返す。  ギンッガカカカカカカカンッ!!!! そうしているうちにそれぞれの映像の中に内包されているシフトの属性能力を付加し、 さらに速度を上げ、色を変化させ───!! 岡田 (……っ……どこ、から───!) 避けなければヤバい。 確実にそう思わせる光の反射が、もはや目では追いきれなくなるほどに速くなっていた。 映像の数だけ弾かれ続けるそれは、 まるで夜空の星々を間近で眺めているような輝きで視界を潰してゆき、 光が一際ギボシャゴォンッ!!! 岡田 「ぎあぁああああああああっ!!!!」 ───一際、輝いたと気づいた時には、光は既に俺の右胸を貫いていた。 光の速度のままに、重力の法則と限界速度を無視した勢いで地面に叩きつけられた俺は、 地面までほんの少ししか距離がないっていうのに、 大空から落下した以上って思えるくらいの衝撃を受け、 鉄板めいた地面に巨大なクレーターを作った。 岡田 「が、あ、げはっ……あ、あああああ!!が、あああ……!!!」 痛い。 痛い、痛い痛い、痛い……!! 生きていられるのが不思議なくらいに痛い……! 無理だ……!あんなの避けれるわけがねぇ……!! 岡田 「か、う……、は……っ……かぐっ……、ぐ……!」 反動に持っていかれ、俺の体の下敷きになった右腕は、 ぐしゃぐしゃに潰れて動かなくなっていた。 辛うじて動く左腕を動かしてバックパックからグミを取ると、 それを噛んで……なんとか持ち直す。 そうしてからヨロヨロと起き上がった俺が見たものは─── とても、信じられないものだった。 岡田 「……、うそ……だろ……?」 今までバロールの攻撃の全てを無効化してきたフォトンシールド。 その、巨大な絶対防御の盾が、たったふた筋の光によって破壊され、 搭乗していた閏璃とレイル氏ごと、マガス・マッガーナを破壊していた。 爆発するSUVウェポンと、弾き飛ばされる二人。 こうなることが予想できていたのか、 既にグミを噛んでいたらしい二人はすぐに起き上がったが、 さすがに動揺は隠し切れないようだった。 閏璃 「……T260G……そしてゲンさん……あなたたちに謝らなければならない……。     ゲームの中だからって軽く考えて、ごめんなさい……。     これ……二度とくらいたくないくらい、痛ぇ……!     即死効果がある理由が、くらって見て初めて解った気がした……」 岡田 「………」 考えていたことは同じだった。 痛すぎるのだ。HPが残っていたとしても、痛さのあまりに死を選びたくなるくらい。 地雷処理を頼まれて、爆発してしまって、半身が吹き飛んだのに自分は生きている─── 体を焼き尽くすような痛みと、脳に直接叩き込まれるような痛み。 そんな状況になったら、痛みのあまりにショック死してしまうことだってあるだろう。 イメージすることしか出来ないが、 少なくとも今体験した痛みはイメージなんかじゃあなかったのだ。 カーネイジだけは、もう撃たせるわけにはいかない。 くらってしまったら、次も生きていられると限らない。 閏璃 「デュラハンの盾とか持ってないのか!?」 岡田 「あるかぁ!そんなの!!」 閏璃 「ぬうごもっとも!」 レイル「マジックキャンセラーじゃどうにも出来なかったしなぁ!!」 レイル氏が、左手につけたグローブみたいなのを見下ろして叫ぶ。 なにかしらの能力があるようだが、効果はなかったらしい。 岡田 「くぅ……!今すぐ帰りてぇ……!」 閏璃 「死ねば帰れるぞ?」 岡田 「命を粗末にしたくないんだよ!」 閏璃 「とても同じ意見です」 レイル「とにかくもう、戦って壊すしかない、って……ことだよな」 岡田 「閏璃、マッガーナは?」 閏璃 「すまん、破壊されると50分は出現できないらしい。     他のSUVウェポンなら、ストック解除で5回まで解放出来るが」 レイル「って相談してる場合じゃねぇ!溜めてる溜めてる!」 岡田 「しひぃっ!?」 うわっ!恐怖のあまりヘンな声出た! けど見てみれば確かに光を溜めて───って違う!これは違う! レイル「こりゃこのままじゃやばい!カオスコントロール!!《メギャアン!!》』  キュドヂガァンッ!!! レイル『うぅおおっ!!?』 レイル氏がカオスを解放するのとほぼ同時に、レールガンが放たれた。 レイル氏は上手く武器でそれを受け止めると、 感電こそしたものの、直撃ではなかっただけダメージは少なかった。 レイル『いぢぢぢぢ……!!ちょ、ちょっと待てぇ!!     いくらなんでも一気にパワーアップしすぎだろこいつ!     これの前までの弱さはなんだったんだ!?』 岡田 「いや……違うよレイル氏……」 閏璃 「そう……違うんだレイル……。あれはな?藍田くんの蹴りが強すぎただけなんだ」 レイル『そこまでいくともう蹴りとかそういう次元じゃない気がするな。     ただの蹴りなのに』 まったくだった。 っと、集中集中! 岡田 「とにかく、なんとか倒さないとマズイ。ほら、映像見てみろ」 閏璃 「なにぃ、……うおぉおぅ」 ヘンな声で驚かれたが、どうやら映像の数だけジェノサイドハートが存在するらしく、 その映像の中ではやっぱりみんなが苦戦しながら戦っていた。 俺達のは聖堂で、本当によかった。 レイル『ていうか……なぁ閏璃よ。     あの、雪原でゼプシオンと戦ってるの、提督さんだよな』 閏璃 「お?……おお、本当だ。おっ、でも討ち下した。     やっぱ人器とか武器強化とかの差か。     それともこの都市が知ってたのは、初戦時のゼプシオンの能力だったのか」 レイル『多分ソレだろ……あ。ヤバイ。提督さんの映像がメインルームに戻ったぞ……?』 み、見てる暇なんてないのに、やたら気になるな……。 あいつが提督ってやつなのか……。 ゼプシオンに勝っちまうなんて、よほどの強さだ。 けどここで───やっぱり来た、カーネイジだ。 光が乱反射して、速度と威力を高めていって、 やがて光がフラッシュのように光り輝き───消えた!? 閏璃 「提督さんが消えた!?」 レイル『い、いや見ろ!ジェノサイドハートの後ろだ!』 岡田 「ジェノサイドハートを後ろから無理矢理掴んで───ってまさか!」 声  『や、やれーーーーっ!ピッコローーーーッ!!』 そんな声が聞こえた途端、別の映像から跳ね返ってきたカーネイジの閃光が───  ゴシャァアアアン!!!……キラキラ……♪ ジェノサイドハートごと、提督さんを貫いてらっしゃった。 それによりジェノサイドハートの硬いプログラムの羅列は砕け、爆発し、霧散した。 かたや吹き飛ばされた提督さんはムクリと起き上がると、 風穴の空いた腹を自然治癒でウジュルウジュルと回復させ─── それで、その映像は消えた。 三人 『…………』 素直な感想を。 岡田 「無茶苦茶だな、あいつ」 閏璃 「あの状況で対ラディッツ最終奥義を使うか?普通……」 レイル『よほどの集中力と動体視力がなけりゃ、避けるどころか反応できないってのに』 閏璃 「集中領域と空間翔転移だろうなぁ、きっと───あ、別の映像にまた映ってる」 岡田 「……って、そういやそうだよ!     この都市に何体居るんだ!?ジェノサイドハートって!」 閏璃 「そりゃお前……え、映像の数だけ、じゃないか……?」 …………。 ざ、と眺めるだけでも眩暈がした。 ……頑張ってもらおう、あの魔王に。 そして俺達も頑張ろう。先は、まだまだ長そうだ。 このジェノサイドハート単体は、そう耐久力がないことが解っただけでもめっけもんだ。 つまり、カーネイジにのみ究極に気をつければ、そうやすやすと死ぬことはない筈……! と考えていると、いつの間にか映像の数々は消え、俺達は海洋に立っていた。 ……最悪だ。 どうやらバーチャルシフト中だったから目立った攻撃がなかったようだが……最悪だ。 せめて、“塔”をやられないことだけを祈ろう。 【ケース762:晦悠介/HQ:6】  ツ───キィンッ!! 悠介 「ぶはぁっ!!は、はあっ───!!悪い、彰利!」 彰利 『オウヨ!!』 なんとか、彰利が手に持つ金の針のお陰で石化状態を解除できた。 創造したまではよかったが、使えないままじゃ意味がない。 石化しても視界だけはちゃんと映るんだから笑えない。 壊されそうになったのを彰利が異翔転移で飛ばしてくれなきゃヤバかった。 同じく転移された金の針で、こうして救助されたが─── そこに至るまで、敵さんはレールガンの連射をとことん放ち、 彰利はそれを避けるのでいっぱいいっぱいだった。 ようやく訪れたエネルギーチャージの時を見計らっての救助だったが…… 砂漠の景色は乱射されたレールガンによって、そのほとんどが変形していた。 悠介 「様子見が出来る相手じゃないってのはよおく解った……あいつ滅茶苦茶だ」 彰利 『オウヨ。だからキミももう白雷光発動させときんさい。     使いどころを間違うと、じゃあねぇぜ?使ってなきゃ負ける、だ』 悠介 「ああ……《ゾフィンッ》解ってる』 白を発動させ、意識を整える。 彰利 『近づけば石化、離れてりゃ熱風とかレールガンか。たまんねぇなこりゃ』 悠介 『………』 彰利 『いや……たまんねーとか言ってるからって涎垂らしませんよ?     そげに見つめられたらアタイ照れちゃう』 悠介 『照れてる場合かっ!』 彰利 『まったくだ!つーわけで悠介!創造月操力ON!望月だ!』 悠介 『望月───融合か!』 彰利 『オウヨ!黒と白、弦月と朧月の融合……それは、     今は潰えた反発反動力を発動させるのに丁度いい能力YO!!     確かキミ、まだ“奇跡”だけは残っとるんよね?』 悠介 『ああ……ドワーフの遺跡で、これだけが変換できなかったからな』 彰利 『OK!ならば条件は揃ってる!いくぜ悠介!フューーー……』 悠介 『フュージョンかよ!いいからさっさと融合するなら融合するぞ!     敵はもうチャージが終わってるんだから!』 彰利 『なんですって!?ギャアマジだ!!───月癒力-融合の印-!!冥抱融合!!』 悠介 『創造月操力!月癒力解放!!』 考えてる時間なんてある筈もない。 普段なら、ただ反発し合うだけの力同士を奇跡の魔法で引き合わせ、無理矢理に融合する。 かつて神魔であった頃も、 奇跡の魔法がなければ天地空間の回路を合わせ持つなんて出来なかった。 故に───朧月と弦月の融合などは容易いものであり、ここに、融合は完成する。 朧弦 『よっしゃーーーーーっ!!』 名を朧弦(ロウゲン)。 神側と死神側の、反する家系の融合した姿である。 ……もちろん、あとで月切力を使って離れなきゃ、ずっとこのまま。 なにせ融合だからな。 朧弦 『“闇黒白影雷光”(あんこくびゃくえいらいこう)解放!!     黒と白、神と死神を合わせることで、奇跡の魔法が“反発反動力”を発生させる!     さーあいくぜ機械野郎!お前の体───微塵と砕く!』 背には神器-花鳥風月-。 それを以って、まずはラグに暗黒の雷を込めて投擲! 直後に光になるや、一気に飛翔してジェノサイドハートへと飛翔する! ジェノサイドハートのカタチは逝屠だ。 悠介も彰利も、もう二度と見たくなかった存在。 だからこそ、こいつが象られたに違いない。 けど、相手がこいつの姿だからこそ、 悠介の感情でも彰利の感情でも、一切の遠慮なく斬りかかれるのだ。 逝屠 『捌く《ガギィンッ!》』 胸部目掛けて投げられたラグを、逝屠は容易く身を翻してキャッチする。 そこへ、光になって一気に近づいた俺が追撃を加える。 朧弦 『消し飛べ!』 身を翻すことで、決して消せない隙を作った逝屠へと、 反発反動力をこれでもかというほど力に変えた拳で───殴る!!  ドゴォパァアアアンッ!!! 逝屠 『っ───ぢぃっ!!』 感覚で言うなら、KOFのK’のヒートドライブ。 拳で轢き逃げするように殴りつけ、擦れ違う際に取りこぼされたラグを手に取り、 自分の中の熟練のスイッチを切り替える。 朧弦 『オォオオオオオッ!!戦武雷迎ォッ!!ギィイイガッ!スラッシャァアアッ!!』 そして、中空に弾き飛ばされた逝屠目掛けて黒の雷の剣閃を全力で放ち、 次の瞬間には剣閃の軌道上───逝屠の斜め上あたりに転移をし、 熟練のスイッチを切り替えるや否や黒翼を出現させ、 逝屠目掛けてラグを振るってぇええっ───!! 朧弦 『九頭竜闘気!オメガレイドスクレイバァーーーーーッ!!!』 閃光と見紛うほどの光を孕んだ魔人天衝剣を放つ!! 本来ギガスラッシャーは悠介側で、光を孕んだ斬撃剣閃だ。 対象的に、魔人天衝剣は深遠を思わせる黒の剣閃。 だが今はそのどちらもが色も能力も威力も変え、逝屠のみを狙って放たれる。 当然逝屠は身を捻って逃れようとしたが、 朧弦 『てめぇがその場から逃れられるのは嘘だ───弾けろ!!』 逝屠 『《ビキィッ!!》───!?“虚言創造”だと!?キサマ───!!』 お前が抗うっていうなら、俺はどんな嘘も真実として創造しよう。 既存を砕き、虚言が成り立つ空間を創造する……それが運命破壊と創造の融合。 朧弦 『お呼びじゃないんだよ、記憶の亡霊。大人しく寝てろ』 逝屠 『グアァアアアアアアアアッ!!!!』  ギヴァアッシャォオオオンッ!!! 剣閃と剣閃がぶつかりあい、白と黒が弾ける。 防御も出来ないままに直撃をくらった逝屠は完全に消し飛び、 それとともにバーチャルシフトが発動。 メインルームに戻ると、ぐずぐずに散らばったプログラムの羅列が、 メインルームの中心に集まろうと動き始めた。 それを剣閃で跡形もなく焼き尽くすと、ひとつの映像が爆発し、砂嵐の映像となる。 朧弦 『───』 メインルームに映る大量の映像には、様々な景色があった。 その中で、壊れている映像は6つ───いや、今7つになった。 その寸前に見えたのは、先ほど悠介と彰利を屠ってみせた魔王の姿だった。 ……見た限り、無傷だった───呆れた強さだな。 ともかく解ったことは、 虚空に存在している映像の数だけ、この悪質なプログラムが存在しているであろうことだ。 朧弦 『だったら───片っ端から壊していくだけだ!』 気を引き締めていこう。 石化とカーネイジに特に気をつければ、いいところまではいける筈だ。 ……敵さんが強化しなければ、だが─── Next Menu back