───冒険の書308/ホンコンびーがた───
【ケース772:中井出博光/最終兵器8】 ズシンッ……ズズゥ……!! 中井出「ほわぁっとと……!ち、ちくしょう!みんな勝手やってやがんなぁ!多分!」 シド 「確かにひどい地震だが───」 伯とともにオズの体内に残り、超矮小化で今も元気……こんにちは、中井出博光です。 月影力などの影を通さないと通用しないと以前注意されたこれも、 もう運営側が諦めたのか、僕の好きにやれ、とのお達し。 “自由がウリだからな”とは、疲れ果てた声でのノートン先生の言葉だ。 最初は“体内”になりかけてた都市内からさっさと出て、 みんなと一緒に戦おうと思った僕ですが、 どうせなら内部に残ってコアを破壊したほうがいいんじゃないすか?と伯に提案。 のちにこうして、サガ2みたいにしてオズの体内を走ってるわけで。 ええ、すっかり見透かされていたのか、きちんとダンジョン風になってるから恐ろしい。 探せば“ひほう いなづまのマギ”くらいありそうなところが心擽る。 ちくしょうやりやがるぜスタッフめ。 きっと両手両足で秘宝を手に入れないと先に進めないんだ。 で、魔力、防御、素早さ、氷、炎、毒、稲妻の計7つがこの体内には存在する!多分! 両足と左手は行き終えて、秘宝じゃあなかったけど妙な珠を手に入れた。 俺はこれを秘宝と無理矢理呼んでる。 中井出「しかし長い通路だね。いっそ超巨大化して、破壊してみようか」 シド 「やめておけ。この体内がワシらにどんなことを及ぼすのかも解らぬ以上、     無意味に接触するのは危険だ」 中井出「じゃあ腹部に集中攻撃して穴空けて、     そこから顔出してサタンクロス……!って言って、外のみんなを驚かすとか……」 シド 「やめておけ」 中井出「ウウ……」 オモシロそうだと思ったんだが。 いや、今は急ぎましょう。 なんて思った矢先に、 ウィルス『クギャーーーーーッ!!』 中井出 「キャーーーーーッ!!?」 梯子のような通路の壁から飛び出てくるウィルスマシン! といってもウィルスなのは僕らのほうで、 こいつらは俗に言うアンチウィルスプログラムだ。 名前は…………ホンコンびーがた、あたりで。 中井出「覇王翔吼拳!!」 しかし容赦の一欠けらもない僕は、出てきた途端のそれに極限流奥義をぶちかまして破壊。 ホンコンびーがたはギャー!とステキな悲鳴を上げて壊れた。 シド 「ヌシ……本当になんでもありだな」 中井出「し、失礼な!これはアトリビュートキャリバーっていって、     双剣や双拳、長剣や拳に込めた属性を融合したりそのまま放つ業でしてね!」 シド 「どちらにしろだろう、それは。ヌシが行使することに変わりはない」 中井出「…………そ、そうですね」 気にしないでGO。 ともあれ、一度来た道は全力で突っ走って、来たことのない場所は慎重に進んでゆく。 機械の中って結構怖いです。 気を抜くとこう、纏わりついてくるんですよ、ウィルスバスターたちが。 纏わりつかれると物凄い勢いでTPが吸収されたりHPが吸収されたりしてとっても大変。  ザザッ─── 中井出「お?……どなた?」 声  『お、提督さんか?俺レイル』 中井出「おやレイルさん!……あれ?戦闘してるんじゃないの?」 声  『サポートに回ってる。     吹き飛んで気絶したヤツとか、落下したヤツとか、まあいろいろ。     それより今どこだ?そろそろこっちヤバイんだが』 中井出「ああうん、僕今ジェノサイドハートの中。     核を壊しに行ってるから、もう少し堪えて」 声  『中って───だ、大丈夫なのかそれっ、大きさ的に問題があるだろっ』 中井出「大丈夫!何を隠そう、俺は矮小化の達人だぁああああっ!!!     小さくなって、伯と一緒に行動してるから心配めされるな!」 声  『そ、そうか……じゃあ俺もそろそろバトルに参加するから。     出来るだけ速く頼む!こいつ滅茶苦茶強い!』 中井出「……逃げていい?」 声  『そりゃこっちのセリフだ!』 ブツッ───……ツーツー…… 中井出「う、うーむ」 シド 「どうした?」 中井出「仲間からの連絡。ジェノサイドハートが強くて困ってるって。     だから速く核を破壊して欲しいってさ」 シド 「むう……急がねばな。ヌシ、もっと速く走れるか?」 中井出「トラップが怖い」 シド 「ぬかしとる場合かっ!さっさといけ!」 中井出「なっ、なんだよ〜〜〜っ!怖いものは仕方ないだろ〜〜〜っ!?《グイッ!》     な〜〜〜ん〜〜〜だ〜〜〜よ〜〜〜〜!や〜〜〜め〜〜〜ろ〜〜〜よ〜〜〜っ!」 シド 「ええい!押したくらいでごねるな!いいから先にゆけ!」 中井出「いかん!その言葉は何気に死亡フラグだ!     誰かになにかを託して先に行かせると死ぬんだぞ!」 シド 「勝手に人の死ぬ時期を決めるな!いいから行け!」 中井出「わ、解ったよう!───GO!」 こうして僕は走りだした。 誰かにとってはなんでもない一歩……! だがこれは、僕の命運を決める一歩に違いなかっ───ズボリ。 中井出「…………ズボリ?」 脚が膝まで埋まった。 ハテ、と思った瞬間、 四方八方からホンコンびーがたやらなぞのびょうきやらが襲い掛かり、 僕に纏わりついてゆく! 中井出「ギャアーーーーーーウ!!!!」 奇妙な悲鳴が勝手に漏れた。 火闇霊章で燃やし尽くしてやろうと思ったが、 霊章にきょだいウィルスとサイバーウィルスが滲み込むと、火闇が出なくなった。 中井出「うえっ!?いやちょ───待ギャーーーーーーーッ!!!」 驚いているうちにいろいろなところからウィルスが滲み込んでゆく。 すぐに伯が剣閃で刻み消してくれたが…… 中井出「ア、アワワ〜〜〜〜ッ」 気づけば、使える能力など僅かになっていた。 なんということ……!また……!?またなの僕……! シド 「平気か?」 中井出「兵器です」 シド 「いや、そうでなくてだな」 なんという……!なななんという……!北斗神拳。 じゃなくて、なんということだ! ほんとに命運を決める第一歩になっちゃったよ! こ、この大事な時に……! 中井出「わっははははは!なっちゃったものは仕方ないちょーーーーっ!!」 でも気にしないことにした。 今使えるのは……うわぁ、見事にほとんどない。近接系の能力ばっかりだ。 ブレイブポットとアトリビュートキャリバーが使えるのが救い……ゲエッ! こっちも近接系能力ばっかだ!遠距離の剣閃とかレーザーとかが使えなくなってる! 時空剣技は!?……ゲエだめだ! 冥空斬翔剣、六閃化までもが使えなくなってる 中井出「俺はぁああーーーーーーーーーっ!!俺はよぉおおーーーーーーーっ!!!」 せっかく封印が解けたのにこれですか! 泣きたい!いっそ泣きたい僕! ……あ、でもランドグリーズ能力は消えてない。 鞘に納めれば滅竜エンチャント出来るのは変わってないみたいだ。 いやぁ……それにしても見事なまでに近接能力だけになった。 強化能力も攻撃力UPと防御力UPしかないし。 回復能力は……あ、一応あってくれてる。 ……っていや待て!アトリビュートキャリバーが……わあ、初期型に戻ってる。 十二回攻撃しないと溜まってくれない。 しかも剣閃が出ないから、物理攻撃でいかないと属性が溜まらないとくる。 霊章にウィルスが滲んだ所為で、自然要塞からの属性バックアップは無し。 ……じゃあ人器!人器は!? …………おおあった!無事だ!謝謝!謝謝楊海王!! 中井出「………」 シド 「?」 ……とにかく、遠距離攻撃の悉くが封印されました。 連閃奥義もなくなって、ホズのボウガン能力も封印。 どういう冗談ですかカミサマ……。 これは試練ですか? 中井出「気にしていても埒もなし!行こう伯!もう怖いものはない!」 シド 「む?お、おお」 烈風脚を行使して地面を蹴る! 伯には先に行けと言われてたから、伯を置いて。 …………。 シド 「……やれやれ。先を促さんと勝手に行ってもくれんか。     だがこれでいい。…………さて。あるとするなら心臓部か頭部か。     どうせ死ぬなら先祖の故郷でと決めていた。     だがその前に……レイナート、この騒ぎの責任は取らせてもらおう───」 ───……。 ……。 中井出「アッブラハッムにぃ〜はぁ〜〜しっちにんの───子ォオオオオオオオッ!!!」  ゾバァッフィィンッ!! ウィルス『ギャアアアム!!』 やってぇん来ました右手の里! あとからあとから沸いて出るウィルスどもを切り刻んで、強引に突き進んでゆく! 目指すはウィルスどもの海の中に光る珠!ひほう こおりのマギだ! あれ?右手がこおりのマギでよかったんだっけ?───忘れたからいいや! 中井出「よーしよしよし!武器の切れ味が悪くなってるわけでもない!     ギミックも健在!遠距離攻撃がなくなったのは不安全開で怖いけど、     なんとかしようホトトギス!あそーれ7!8!9!10!11!12!     属性解放!紅蓮に月!蒼碧に闇!連ねて一つの力と為す!義聖剣!!」 闇と月の融合、闇月鱗を発動させて、TP全てを消費する代わりに攻撃力極大上昇!! そのままウィルスの海に突っ込み、疾風奥義で敵を蹴散らしながら進んで、 中井出「10!11!12ぃっ!!紅蓮に災!蒼碧に然!───義聖剣!」 次いで災の恩恵を発動!TPが回復しなくなる代わりに攻撃力極大上昇!! こうなりゃヤケだぁあコノヤロー!! 近接攻撃の鬼になってやる!貴様ら全員ンン……微塵切りにしてやるぜぇぃ!! 中井出「スゥッ───超速剣疾風斬!!&超連歩烈風脚!!」 両手で高速剣戟を繰り出し、その状態のまま敵陣へと突っ込む! 斬り方もなにも滅茶苦茶だが、ヤバイ時は武具が戦い方を教えてくれる。 いやしかし……剣閃でも放てればかなりあっという間に終わる戦いなのに、 直接攻撃だとこうも……! 中井出「ええい構わん!長剣化!アァーーンドッ……“無造作に暴れまわる”!!」 攻撃力ばかりを馬鹿みたいに上げ、 あとは巨大長剣を生かしたガッツばりの乱舞。 自分の身長よりも明らかに長いそれを思う様振り回し、 敵さんをざっくざっくと斬り滅ぼしてゆく。 中井出「精霊斬!───エネルギー……全開!!     ジュースティングッ!スラッシャァアアアアーーーーーーッ!!!」 十二回斬ったのちには、今度は義聖剣ではなく精霊斬。 双剣か長剣かの違いだが、双剣から長剣に変える時間が無いためにすぐに発動できる。  ゾボガガガガガガガファァアアアッ!!!! 山吹色の輝きを纏った巨大長剣を突きの型に構え、烈風脚にて突撃!! 直線状に居たウィルス全てを滅ぼして、擦れ違いザマに珠を手に取る。 中井出「うっしゃーーーい!もうこんなところに用はねー!!」 珠を取ったならもはや用済み。 フロートを発動させて───ゲェーーーッ!フ、フロートが使えーーーん!! 中井出「…………《ゴクリ》……う、うわーーーーーっ!!」 こうして僕は、再び溢れかえるウィルスの波へと突っ込んでいったのでした。 中井出「うぉうら!おぉら!せぃっ!ぜやぁっ!うぅうんぬりゃぁああっ!!!」 振るうエモノは巨大長剣。 樹の棒を振るうように軽々と振り回し、ウィルスを斬り滅ぼしてゆく。 ……ジークフリードには通用するのに、どうして僕には通用しないのフロートさん。 ウィルス『ジジーーーーッ!!!』 中井出 「《ビシッ!》ぬおっ!?」 ウィルスの攻撃!ウィルスは僕にくっついて滲み始めた!! それも、後から後から……! 中井出「や、やめてやめてぇええええっ!!これ以上能力封印しないでぇえええっ!!!     やめっ……ええいやめろと言っとるだろーーーがーーーーーっ!!!!」  ヴォンガガガガガガォオオオンッ!!! ウィルスども『ピギャーーーーーーッ!!!』 双剣化、義聖剣、長剣化を過去最高記録の速度でやってのけ、 既に溜まっていた属性を元素の炎として解放! ひっついているウィルスどもを焼き滅ぼし、 さらに周りに居るウィルスどもも巻き込んでぇえええ……っ!!!! 中井出「奥義!業魔ァッ!!灰燼剣!!!」 最大級の火炎奥義を放つ!! 剣閃として放つのではなく、 地面に叩きつけることで巻き起こる炎を地を這う業火として解放! びっしりと居たウィルスどもは一瞬にして焼け滅び、 後に残ったのは焼き焦げた右手の内部だけだった。 中井出「はぁっ!ざっとこんなもんっ!!」  ピピンッ♪《灼紅蒼藍剣が封印されました》 中井出「キャーーーーッ!!?」 オウマイガァ!(おかしすぎるわよ!) ちょっとくっつかれただけなのに!なんということ! こ、これは……い、いや!なんとかなる!と信じる! 中井出「ち、ちくしょー!次だー!!」 もう捕まらん! おまんら……許さんぜよ! ───……。 ……。 ボガガガガガガォオオオオオンッ!!!! ウィルスども『ゴギャーーーアーーーッ!!!!』 中井出   「じゃっしゃーーーーーーーっ!!!」 業魔灰燼剣で群がるウィルスどもを燃やしつくしつつ、 胃と腸より“すばやさのマギ”、心臓から“ぼうぎょのマギ”を回収! 途中で伯に会ったけど、構わず行けと促されたから走っています! 中井出「次!次は……頭だ!全ての秘宝が揃いし時!     中ボス・マクロファージとの戦いがキミを待つ!だがその前に!」 ギラリと、そこら中に浮いているウィルスどもを12回切り刻んで義聖剣、 または精霊斬を解放───それをすぐにストック! それを繰り返し、ストックがいっぱいになると最後にもう一度12回切り刻んでGO! 属性を満たした状態で、頭へ向けて駆け出した! しっかし広いなぁここ!もっと狭くてもいいと思うんだが!? 中井出「広い!広すぎる!いや……俺が小さすぎるのか」 などとボージャック風に言いたくなるくらいだ。 詳しくはドラゴンボールZ超武闘伝2をどうぞ。 まあよし!広くても絶対に辿り着けないってわけでもないんだし! どおれ頭に辿り着いてこの機械王を打っ潰してやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!! ───……。 ……。 声  「ショック!」  キフィィインドガァアアアッ!!! …………。 中井出「…………」 そして僕は見てしまった。 ようやく辿り着いた頭の部分で、 伯がマクロファージならぬ謎の機械マンを一撃で破壊するのを。 中井出「………」 シド 「む……ヌシか。……?どうした、ホウケた顔なぞして」 中井出「いや……ええと、グムー」 なんと言えばいいのか。 進めてたゲームを勝手にやられて、 ボスを倒されて上書きセーブされてたみたいな心境……かな。 俺だけが行動してたんじゃないんだから、勝手な思い込みも甚だしいことなんですが。 まあやられちゃったものは仕方ないチェン。 中井出「さあ行こう!僕らの戦いは……始まったばかりだ!」 シド 「これが始まりなら、随分と面倒な前座だったな……」 中井出「伯が言わないでよ!途中で戦いもしなくなったくせに!     それでオイシイとこだけ頂きやがってちくしょう羨ましい!」 シド 「む……な、なんだ……?もしやここに居た機械と戦いたかったのか……?」 中井出「ちがっ……違うわよっ!!     勘違いしないでよね!?ぜっ……全然そんなんじゃないんだからっ!《ポッ》」 シド 「頬を赤らめるな気色の悪い!」 中井出「ゲェ伯にまで!?」 俺……そんなに気持ち悪いのかな……。 やっぱやめようかな……ツンデレ怒り……。 と、そんな悲しみはうっちゃり───ともあれ、頭である。 中井出「頭ともなると、随分と内装も豪華というか……ここ何処?玉座があるんだけど」 シド 「頭脳となる場所───ノヴァルシオの王族の間といったところだろう」 中井出「へえここが……っと、あそこに居るのって……あれ?」 玉座に目を向けると、そこに座ってる影に今更気がついた。 だって仕方ないじゃない?ちょっと薄暗いんだもの。 中井出「あれって……レイナート?」 シド 「うむ。機械の力に飲まれていない頃のレイナートの人格だろう。     ワシはこやつと話がしたかったために付き合った」 中井出「なんですって!?」 言いながら、伯が歩いてゆく。 玉座の前、本当に真ん前まで。 機械の玉座にがんじがらめにされながら、ぐったりとしているレイナートを見下ろす。 シド   「意識はあるか、レイナートよ」 レイナート「……、う……」 シド   「……どうやら無事のよう───」 中井出  「ヨオォ!!しっかりしてくれよォオ!!」 レイナート「《ベパァン!》ジェルァアーーーッ!!?」 シド   「だぁぉおーーーっ!!?」 意識朦朧状態の彼にキツケのビンタを一発! ……彼はがくりと項垂れ、動かなくなってしまった。 中井出「《ごくり……》ひ、人一人がここまで衰弱するなんて……!     古代文明……なんて恐ろしい……!!」 シド 「ヌ……ヌシなぁああ……!!」 中井出「ねぇ伯、こいつ起きな───あ、あれ?なんで怒ってるの?」 シド 「自分の胸に訊いてみろ!なにをやっとるんだヌシは!」 中井出「自分の胸!?」 ……荒神様荒神様……! 人がてめぇ勝手に思い描く都合のいい我らがゴッド様……! なんか知らないけど胸に訊けって言われたんで訊いてみます……! 彼は何故怒ってるのですか……!? 荒神様『あの日だからさ』 なんと!! そ、それは真実なのですか!? 荒神様『いいや違うな』 なんですって!? それでは……真実はいったい!? 荒神様『いいかい、貴様は貴様の信じる貴様を探しにいくんだ。     そこに答えはきっとある』 探しに行くって、何処に向かって!? 荒神様『俺に訊かれてもなぁ〜……』 あぁ!待って!待ってよ!そんな、どっかのおとうさんみたいな去り方せんでも! ……。 中井出「おとうさん……おとうさん!!あなたが僕のおとうさん!!」 シド 「胸になにを訊いた」 妥当な質問だったと思う。 中井出「ええとですね、…………なんだろ」 怒った理由を訊いた筈なのに、 何故か僕は、僕が信じる僕を信じる僕を探さなければいけないことに。 ややこしいけど……ややこしい。ワケが解らんくらいややこしい。 中井出「とりあえずこいつを起こそう」 シド 「見事に気絶しているが?」 中井出「がんじがらめ状態の機械を破壊しよう。えーと……ふん」  メギョッシャベキバキボギャギャギャギャア!!! シド 「ぬおっ!?」 腕力に任せて機械を引きちぎってゆく。 ナノマシンでも搭載されてるのか、 すぐに再生しようとするが……それは引っこ抜いて投げ捨てた。 中井出「よーし助けたぜ〜〜〜〜〜〜っ!!───キツケ!」 気絶したままの彼をドシャアと地面に寝かせ、勢いのままに腹へと拳を落とす! レイナート「《ホゴォンッ!》ホゴォッ!?」 シド   「オォオオーーーーーッ!!?」 中井出  「ゲェエエーーーーーッ!!!」 腹に拳を落とすつもりだったのに、妙に勢いづいてたのと、 背中を打った拍子にレイナートが体を丸めたのが災いとなった。 腹を打つ筈だった拳がものの見事にオウゴーーンに……!! レイナート「カカカカカカカ…………!!!」 中井出  「み、見ろ!王の目覚めだ!……なんかアシュラマン的な笑い方してる!」 シド   「どう見ても苦しんでるだろう!」 中井出  「ち、違うんだ〜〜〜っ!こ、こんな筈では〜〜〜〜っ!!」 なんていうこと……キツケがゴールデンスマッシュになるなんて。 い、いや!とにかく起きたんだから結果オーライ! 中井出「痛い!?ね、痛い!?ねぇ痛いの!?ねぇ!     どこが痛いの!?言ってみなさいホラ!     今押さえてる痛い場所を詳しく言ってみなさいオウサ《バゴォ!》ピリポ!!」 シド 「ヌシは黙っとれ……!」 中井出「……《こくり……ズキズキズキズキズキズキ……!!!》」 電光石火で殴られました。 おお……頬が痛い……。 でも黙るからには徹底に黙る。それが僕の愛です。 シド   「レイナート。そのままでいいから聞け」 レイナート「ふ、ぐっ……!……!?オ、ルランドゥ伯……!?な、なぜ貴方が……!」 シド   「記憶にないのか……?今、ヌシの体が大変なことになっている。       機械文明に取り付いていたウィルスに取り付かれた状態だ」 レイナート「機械文明……?そ、そうだ……私はノヴァルシオを発見して───       それから…………それから、どうなった……?なにも思い出せない……」 シド   「力任せに世界を征服しようとしているのだ。それも覚えていないのか」 レイナート「申し訳ない、伯……。本当に、なにも……」 シド   「……まあいい。訊きたいことにそれは関係していない。       レイナートよ。最初にノヴァルシオを発見した際、妖精を見なかったか」 レイナート「妖……精……?───あ……見た……確かに……。マールという名の……」 マール?ルッカは?……うん、関係ないね。 シド   「その妖精はどうした?ノヴァルシオを守っていた筈だが」 レイナート「兵士が捕らえ……それっきりに……」 シド   「───やはりか。その精霊がどうなっているか、解るか」 レイナート「王国で管理できる生物でもなく、その筋に譲ったと……」 シド   「───!なんてことを!───ヌシ!確か然の精霊と契約していたな!」 中井出  「…………《フンフンサッサッ》」 シド   「……………………喋っても、いいぞ……」 中井出  「あ、そ、そう?」 ゼスチャーしてたんだけど、あっさりと喋れと言われました。 もちろん答えはイエスだ。 だが今ここには居ないからどうしようもない。 その旨を、はっきりと伝えた。 すると伯はグゥウと唸り、焦りをハッキリと見せていた。 中井出「なんなの?そのなんたら王国の人形姫って」 シド 「マールだ。古の頃よりノヴァルシオを守っていた妖精だ。     元々から守護していたわけではない。     私が出会うより先にセトにくっついて回っていた妖精なのだ。     どういう理由で一緒だったのかまでは知らん。     が、ノヴァルシオを守護する理由は解る」 中井出「えーと、それ今の状況と関係あるの?」 シド 「ものの見事に勝手に潰しにかかったな……」 中井出「いや、その妖精に訊いてみない限り、真相なんて解らないんだし。     だから話済ませて早くジェノサイドさんを破壊したほうがいいんじゃないかな」 シド 「……ヌシは時々、えらく正論を吐くな」 中井出「いいじゃない、たまには」 シド 「ふむ……まあいい。まだ生きているのなら、出会えた時に訊けばいいだけのこと。     では、レイナートよ。ヌシがマールの代わりを果たせ」 中井出「?」 はて……代わり? 自分で止めておいて、さっぱり真意が解らん。 シド   「人柱めいたものだ。核に意識を沈め、核の方向を決めるのだ。       今の核は、意識の大半が破壊に向かっている状態だ。       ならばどうすればいいか。……意識を集中させ、核の意識と同調し、       自分の意識ごと方向を変えてやるのだ」 中井出  「俺でも出来るかな」 シド   「…………ヌシが意識集中………………?」 中井出  「うわー、すげぇ疑いの眼差し。で、出来るよ僕!出来るもん!!」 シド   「ではレイナート。やってくれるな?」 レイナート「……承った」 中井出  「………」 わあ、華麗にスルーだ。 僕を無視ったレイナートさんは玉座に座り直して、 ヴジュルモージュルと伸びてくる機械を受け入れ、眼を閉じた。 中井出「これに意識を流すと?」 シド 「マールは……こう、言ってはなんだが天然だったのでな。     こういう意識集中には根本的に向いていた。余計なことを考えないからな」 中井出「僕だってすげぇんだぜ?」 シド 「………どう凄いと?」 中井出「え?えーと…………ぬ、脱いだら……?」 シド 「やはり黙っとれ」 中井出「………」 いや、うん……いいんだ、解ってる。 実感なんて前からあったけど、再確認ってやつさ。 やっぱり俺は武具がないとてんでザコだ。 今回の封印騒動で随分と思い知らされた。 能力が大分増えてきたし、中にはとんでもなく強いものもあった。 それがあるから少し心が肥えてきてやがったのだ。 慢心なんていらない。 欲しくもないのに、それは自然と俺の心を食い荒らしてやがった。 中井出(おっかしいよなぁジークフリード……俺は俺のままで居たいのに、     人間の心ってのはやっぱり欲張りみたいだ) 苦笑が漏れた。 俺自身が強くなりたい、とは思ってない。 俺が強くしたいのは心の中だけで、自分自身を強くしようとは思わない。 武具を強くして、未来を築いて、 その先に立てたならただの話相手になってもらうだけでもいいって思ってる。 だって、戦いが終われば戦うための力なんて必要がない。 そのために自分は強くならないように武具に全てを注いできた。 ……俺は人間だ。 人間だって、突き詰めれば信じられない奇跡的な力を得られるかもしれない。 人器だってその奇跡的な力のひとつだと思う。 そんな風に思ってるくせに、人ってのは力を持つといろいろなものに欲張りになっていく。 人ってのは多少臆病なくらいが丁度いいと思ってるのに……上手くいかないもんだ。 シド 「ヌ?どこへいく」 中井出「え?いや……頭冷やしてこようかな〜って」 シド 「……ここに居ろ。そろそろ始まる」 中井出「なん……だと……!?」 シド 「息を飲む前になにが始まるのかくらい訊いたらどうだ……」 中井出「ハハハハァ〜〜〜ン?解ったぞお前の魂胆が〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。     そうやって結局は自分が言いたいからってわざわざ遠まわしに話を……───」 シド 「む……先にさっさと言うべきだったな。     機械どもは今、暴走状態にある。     そこに人間の意識を流し、強制終了させるということは、     なかなか機械どもに負担をかける。     超速度で走っている物体が急ブレーキを全力でかけるようなものだ。解るな?」 中井出「フル回転してる歯車に鉄の棒挟むみたいなモノ?」 シド 「そういうことだ。故に───」  ドガンドガドガゴシャシャシャシャアッ!!! 中井出「ホワァッ!?」 急に地面と天井から機械軍が落ちてきたり滲み出てきたり! 液状めいたその機械は混ざり合って、 やがて脱皮した生き物が体を乾かすみたいに硬くなって、 一体のマシンモンスターに……! シド 「故に、歯車に鉄の棒を差し込む存在をウィルスと断定、破壊に移る。     ───来るぞ!気を引き締めていけぃ!」 中井出「くっ……くくく来るなら来い!出来れば来ないで!!《ガタタタタ……!!》」 シド 「どういう震え方だ!!」 い、いや、だって……!能力封印してから初めてのボスモンスターだし……! シド 「ヌシは左を!ワシは右のマシンモンスターだ!」 中井出「よ、よし!覚悟しろレイナート!《バゴォ!》ジュボルベ!!」 シド 「ひ・だ・り・だ・と……!言っとるだろうがぁああああ……!!!」 中井出「ふぁい……ふんまへん……!」 で、でもね? マシンモンスターに挟まれた中心で玉座に座りつつ機械に包まれてる彼は、 もうオウサマっていうよりマシンヒューマンって感じで……。 マシンなら殴ってもいいかなーって。 シド 「───!来るぞ!」 中井出「ち、ちくしょーーーーっ!!」 やってやる……やってやるぞ! やって、封印された能力を解放してくれるわーーーーっ!! ……べつに封印されたままでもいいかなーとは思ったけど、 それじゃあ融合させた意味がない。 融合させた武具には意思がある。 それらまで封印されているのを我慢できるほど、 僕は半端な武具好きじゃあ───ねぇぜ!! 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