───冒険の書309/VSジェノサイドクロウ&オメガ───
【ケース773:双月朧弦/最終兵器9】 ギンギャリンギャリンギャリン!ガッ!ゴッ!ゴギィンッ!! 朧弦 『つっ……!相変わらず鉄板だなくそっ……!』 ラグで斬る分には平気だが、間合いを完全に詰められた時には体術で応戦している。 とはいえこの硬さ……具足越しや手甲越しでも十分痺れる強度に、さすがに呆れが入る。 レイル『たっはぁあっ……!!くそ!手甲越しなのに拳から血が出てきやがった!!     どうかしてるぞこいつの硬さ!しっかりしろカオス!お前の力はその程度か!』 気絶中のやつらの介抱を適当に済ませ、 途中参加してきたレイルの口からも愚痴がこぼれる。 無理もない。 こいつの硬さには正直お手上げしたくなる。 それでも同じ箇所を出来るだけ集中して狙い、 今では胸部の裂け目を少し広げられた……程度の有様だ。 本気で硬い。 こんなヤツの胸部を切り裂いてみせたんだ。 フレイアの一撃の威力を想像して、少しゾッとした。 朧弦 『とはいえ───うおっ!?』 ギャリィンッ!!と綺麗な音を立てて、オズの両腕の脇側からブレードが現れる。 まるで弾き出されるように勢いよく飛び出たブレードは、 アルビノがつけている手甲のブレードによく似ていた。 アルビノ「クラウソナス……!?───そうか!だから……!」 オズ  『キィイイヤァッ!!』 深く沈むように構えたオズが、地面スレスレから掬い上げるようにしてブレードを振るう。 すると、どうやら高速回転しているらしいブレードの刃から─── あろうことかカーネイジの光が放たれ、 眩い剣閃となって馬鹿みたいな速度でヂャガァアアガガガォン!! レイル『ぐがぁああああああああっ!!!?』 ……襲い掛かってきた。 冗談じゃない……!あんなもの、放たれてから避けようとしたって間に合わない……!  ビヂャアッ!! レイル『げぇっは……っ!!』 まともにくらったレイルが威力のあまりにマシンフィールドの端まで吹き飛ばされた。 見えない壁に激突し、虚空に血痕を残したままずるずると崩れ落ちてゆく。 アルビノ「お、おい……!おい!お前!」 朧弦  『───っ、なんだ!』 アルビノ「お前のありったけ、今の攻撃に合わせられるか……?」 朧弦  『なに……?』 アルビノ「悔しいけど俺じゃあ傷なんてつけることが出来ない。      だから、お前に頼みたい。      次にブレードストラッシュが来たら、俺が押さえるから───」 朧弦  『あれを押さえる……!?出来るのかお前に……!』 アルビノ「出来るさ。……あの武器は、俺が持っているこれと同じものなんだから」 ガシャン、と収納されていたブレードを弾き出して、喉を鳴らしながら俺を見た。 アルビノ「この武器は、アイルーって種族が中井出博光のために作ったものだ。      機械の技術と猫たちの鍛冶技術を合わせて。……そう、機械技術が混ざってた。      それをきっと都市の意識が読み取ってたんだ。そして……複製された。      じゃなきゃ、あれが二つある事実が曲がってる」 朧弦  『………』 アルビノ「これは、俺やあんなやつが持ってていいものじゃない。      いろんな思いが詰まってるんだ。      俺の半端な人器じゃあそれを受け取ってやることは出来ないし、      あいつだってそうだ。機械だから、人器があるからって理由で操りきれるほど、      この武器のプロテクトは甘いものじゃない。      人器と……そうだ。器詠の理力があって、初めて完成する」 朧弦  『器詠……?』 アルビノ「なんだろうな。急に頭に浮かんできた言葉だけど、間違いはないと思う。      それより───」 朧弦  『……ああ』 オズはパワーチャージ中だ……うだうだ悩んでる暇なんてない。 朧弦  『……解った。次にいつ撃ってくるかなんて解らないんだ。      いつでも撃てるように構えててくれ』 アルビノ「解ってる。……撃てるのは一発だけだから、確実に当ててくれ」 朧弦  『ああ』 見るからに、アルビノの目には怯えが混ざっていた。 それを思うに、きっとこのままじゃ失敗するとも思ったが─── だからといって出し惜しみをして勝てる相手じゃないのは、解りきったことだった。 朧弦 『疾ッ───!』 疾駆する。 チャージが終わる前に全力でぶちかましをして、 あまりの硬さに肩を痛めようが無視して押し切る。 その甲斐あってバランスを崩した体へとラグを振るい、斬り弾く。 ギャリン───金属を金属で弾く音が鳴りオズが倒れかけるが、 背中のブレードウィングから光のような風を噴射。 強引に体勢を立て直すや、襲い掛かってきた。 朧弦 (チィ、なるほど───人には出来ない動きをしやがる……!!) 飛行が出来ればそうでもないんだろうが、 武空術的な飛行じゃあこんな強引な立て直しは不可能だ。  ───正面からラグでブレードを受け止め、斬り弾く。 そうしてみて気づいたが、防御力は高いが腕力面はそう高いほうではないらしい。 ブレード能力とカーネイジには気をつけなきゃいけないが、 他は深く気をつける必要はなさそうだ。 ……あくまで、深く気をつける必要は、だが。 朧弦 『詰める!』 気をつけなければいけないのは遠距離攻撃。 ならば離れるつもりを無くして、執拗に接近戦に持ち込む───!! 朧弦 『おぉおおおおおあぁあああっ!!!』 オズ 『ギィイイイイッ!!』  ギィンガンギャィンガリィンガイィンギヒィンッ!!! ブレードとラグが火花を散らす。 よほどの高速で回転をしているのか、 オズのブレードがラグと衝突するたびに火花を立てる。 身体行動の速度で言えば、こいつの速度は黒竜王時代のゼットよりも遙かに劣る。 つまり───気をつけなければいけないのはブレードウィングのカタパルトダッシュと、 やはり遠距離攻撃に絞られている。 あくまで今の段階ではだ。油断は出来ない。 朧弦 『シィッ───』 素早くラグを納め、篭手と具足に力を込めて、詰めていた間合いをさらに詰める! 相手の武器は腕を曲げるか突き出すかしなければ当たらないものだ。 だったら超接近戦のほうがよほどにマシ───!! 朧弦 『はっふっせいっ!だぁっふぅっぜぇやぁああああっ!!!!』  ガンゴンゴンガギィンッギィンバガァン!!! 殴り、蹴り、躱し、弾き極力攻撃は食らわないように攻撃を当て、押してゆく。 だがやはりダメージらしいダメージは徹っていないようで、もどかしさに歯を噛み締めた。 そして俺は心の中で焦りを感じていた。 怯えを持つアルビノ信じていいのかどうか。 最大のチャンスを作れる可能性は確かにある。 だが、それならむしろ、 オズがブレードを構えた瞬間にこそ、俺自身がぶちかませばいいことなのでは、と───
【Side───アルビノ】 すぅ……はぁ…… アルビノ「………」 意識を鋭く保ったままに、深呼吸を繰り返す。 ブレードには俺のありったけが既に込められている。 だがこれじゃあ足りない。 足りないと解っているのに、これ以上どうしようもない。 半分にも満たない人器と、存在もしない器詠の理力。 オリジナルが近くに居るからだろうか……今なら解ることがある。 あいつは武具の意思を受け取れるからこそ武具を扱える。 ただ振るうだけじゃなく、武具に宿る意思とともに戦うから強くあれる。 そして、それをするには器詠の理力ってやつが必要で……俺にはそれが存在してなかった。 中井出博光に宿る唯一無二の、欠けた才能……それが器詠の理力。 俺の才と呼べるものは、全てこのクラウソナスを扱う方向へと向けられていて…… そこには器詠の理力なんていうものは存在してくれなかった。 アルビノ「すぅ……はぁ……」 欠けた才能。 そう呼んだのは、彼のその才能が彼だけの力じゃなんの意味も成さないものだからだ。 武具の意思を受け取れる。 けど、武具が意思を飛ばしてくれなきゃそんなものは意味がない。 アルビノ「…………俺は……」 俺は、武具に祝福されていない。 家族も居なければ、その家族が冥界で鎌にされた、なんて過去もない。 そんな俺がなにを誇りに前を向けばいいのか。 ……そんなもの、決まってる。 この生を、命を誇りに。 アルビノ「───覚悟、完了……」 不思議な感覚だった。 クローンっていうのは、オリジナルと繋がってるものなんだろうか。 今まで胸の中にあった孤独感が、今は不思議と薄れてる。 それとも─── 声   『前を向け、アルビノ』 アルビノ「っ!?だ、───」 声   『今、“機械”を通じてお前に語りかけている。      お前の言うオリジナル、中井出博光の武具の中の意思で、名をレオンという』 アルビノ「レオン……」 声   『中井出博光が武具に機械を合成させていたのが上手くことを運んだ。      機械を通じてこうして意思を飛ばすことが出来た』 アルビノ「……意思を飛ばすって……俺、器詠の理力なんて持ってないのに───」 声   『ああ。だから少々無理をした。      中井出博光と我らは、霊章を通じてほぼ一心同体だ。      一心同体だとしても我らの強さがそのまま彼のものになるわけではない。      だから“ほぼ”なのだが───ああそれはいい。      今、霊章を通して彼の中から器詠の理力を引っ張ってきている。      中井出博光にとっては激痛を伴うことだが……      必要なことだと言ったら有無も言わずに頷いてくれた』 アルビノ「そんな……」 オリジナル……あいつは俺のことを、やっぱり見てくれている。 急に殴られたりもしたけど、遠慮してちゃああんなことは出来ない。 声   『これはお前と会話するための能力にすぎん。      だから今は───我らの想いを、意思を、そのクラウソナスに託そう。      ……目覚めろ、アガートラーム。惰眠の時間は終わった』 アルビノ「うっ……!?」 レオンと名乗る意思がそう呟くと、クラウソナスが急に輝きだす。 途端、両腕がくっつくみたいに引き寄せられて、双方の篭手がガギィンとぶつかると───  シャァアアア……ァァ……ン……!! アルビノ「…………、……」 見るも美しい、光り輝くブレードに変異した。 剣と呼ぶには細く、レイピアと呼ぶにはカタチが異質。 鋭く細く、曲刀のように曲がっていて、 だが喩えるなら竜の翼とその翼膜のような形の武器が俺の右腕に存在していた。 声   『さあ、やってやれ。      そのブレードに、我ら武具に宿る意思と、      霊章に存在するエーテルアロワノン全ての想いが込められている。      その武器の特性だ。万物の願いや想いを力とする光の刃。      それが、アガートラームという武器の真意だ。      ───ああそれと、中井出博光からの伝言だ。      貴様は貴様のために、自分の未来を目指せ、だそうだ。      誰かのためなんかに力を振るわず、      自分のためだからこそ自分の命を賭して戦えと』 アルビノ「───」 口の端が自然と持ち上がった。 ……笑っているのだろうか俺は……こんな状況で。 笑っている、じゃないな。笑えているんだ、こんな状況なのに。 アルビノ「オリジナルに伝えてくれ。俺、多分あんたと同じ考えをしてると思う。      脇役ってのは大儀を為す時、尽力して滅ぶ。      あんたもきっと、いつかその結論に辿り着く……いや、とっくに辿り着いてる。      でも、もし大丈夫だったら───一度だけ、一緒にメシでも食おう。      俺はクローンだから長くなんか生きれない。      いつ死ぬかさえも解らないから、ミクのことを守り続けることが出来ない。      だからもし俺が死んだら、ミクを───………………いや。      死人にクチナシだ。死ぬ奴は今を生きるヤツに言葉なんか残すべきじゃない。      俺は俺のために生きて、あんただってあんたのために生きてる。      そこに遺言なんてものが混ざったら、生き方に濁りが出来るもんな───」 だったら、届ける言葉なんてひとつ。 アルビノ「ありがとう。俺、あんたのクローンに生まれられてよかった」 せめて、楽しいことを探す、という意思を強く持つ生命として生まれたことを感謝しよう。 俺は多分、あんたと笑顔を交わすことは出来ないだろうけど─── でも、約束しよう。 この刃に込められた意思と想いにかけて───! アルビノ「───!」 あんたが目指す未来への架け橋にでもなんにでもなってやる!! いつ消えるかも解らないこの命! あんたの意思とは関係なしに生まれた命を、俺は俺の勝手で使わせてもらう! 俺が守るのはあんたじゃない。 俺が守るのは、この胸に描いた小さな未来だ───!! 【Side───End】
ガッ───ギャリィンッ!! 朧弦 『ぐあぁっつぅ───!!』 剣を合わせるごとに、おかしなことが起こっていた。 乱舞を繰り返す双刃と、徐々に現れ始める体の残像。 最初は灰色で、それがゆっくりと赤色に染まっていくと、 濃くなるごとにオズの速度が増していった。 いや、増したのは速度だけじゃない。 攻撃の強さ……腕力までもがあがり、 いつしかぶつかればこちらが弾き飛ばされるようになり…… オズ 『ギリィイアァアアアッ!!!《キッ───ガ、シャンッ!》』 やがて、その時は来た。 深く姿勢を沈めたオズが、 飛び出ていたブレードをさらに開き、そこにカーネイジの光を溜める。 落とされた姿勢が捻られてゆき、やがて─── 朧弦 (───どうする!) 1:この隙に全力を解放、仕留める 2:アルビノを信じる 3:まだ知らぬ第三の力を求める 結論:───…… ……答えは、たった今決まった。 俺は全力を出すべく自分の深淵を持ち上げ、力の全てを解放してゆく。 無防備になったって構わない。 ……信じるって、たった今決めた。 この、背中に感じる強い気迫を糧に。 声  「……頼んだぞ!未来を───俺達に、あいつに、未来を───!!」 それはまるで断末魔だった。 自分はもう戦えないから、俺に全てを託すかのような─── 声  「限界なんて知らねぇ……俺の中にある全ての力!人器!     ここで底とてっぺんを見せられなきゃ……越せなきゃあ男じゃねぇぜ!!     エネルギー……全ッ開ぁあああああああああああい!!!!」 空気が弾けている。 後ろを見るまでもない…… ここら一帯に残っている草や木、大地や水が、まるで叫んでいるような空気がここにある。 オズ 『ギガァッ!!』 ブレードが振るわれる! 直後、俺の解放も終わり、飛び出そうとするが───まだだ! あれはアルビノが破壊する!信じろ!俺はその先に待つ隙を穿つことだけ考えればいい!! 声  「いくぜアガートラーム!!     っ……うぉおおおおおおおおおおおっ!!!!」  ゴガァアアッキィイインッ!!!!  そうして、訪れた機会はぶつかり合った剣閃によって現実のものとなる。 俺のすぐ横を文字通り光の速さとでも呼ぶべきくらいの速度で閃いたソレは、 一瞬にしてオズが放った剣閃へ衝突し───いや、これは……! 声  「へへっ……機械が一番偉いっていうんなら……教えてやるよ、鉄板野郎……!」 オズ 『《パキンッ……》ギ───!?』 声  「───人の、生き物の“想いの力”を……ナメンじゃねぇええっ!!」 アルビノが放った剣閃が、オズの剣閃を破壊する! しかも続けザマ、後を追うように剣閃が放たれ───ゴバシャアッ! オズ 『ガ、ギ……!?』 オズの、負傷していた左腕を吹き飛ばす───!! 声  「っ───いけぇええええっ!!お前ぇえええっ!!     道は開いたぞぉおおおおおおっ!!!」 朧弦 『応ッ!!』 もはや踏みとどまる理由無し!! 溢れ出る黒い雷の十七頭竜を背に、同じく黒の雷を放つラグを構えて突撃する!! ───その瞬間、視界の隅でなにかが光を反射させた気がした。 だが今更止まれないし、止まる気もなかった。 朧弦 『う───おぉおおおおおおおおっ!!!』 十七枚の飛翼からなる皇竜の力を翼から体へ、体から篭手へ、篭手からラグへ───!! より一層の黒の雷を纏ったラグを手に、いざ、と───その瞬間!! オズの右腕のブレードが振り上げられ、そこから剣閃が放たれる! ヤバイ!と背筋が凍ったが、目測を誤ったのかそれは俺の横を通り過ぎ。 そこで思い至り、 朧弦 (まさかアルビノが狙い───!?) と、思わず一瞬だけ首を捻って後方を見た瞬間。 ぐ、と息が詰まり、背筋が凍るような感触を味わった。 ……映像だ。 剣閃が向かった先に、いつ出したのか……“映像”があったのだ。 それはカーネイジの剣閃であるそれを跳ね返し、 勢いをつけ、俺の背中目掛けて飛んで───!! やばい……!体がもう攻撃態勢に……!避け───られねぇ!! 【ケース774:中井出博光/最終兵器10】 夢が覚める日ってのはいつだろう。 簡単だ、目が覚めた瞬間だ。 これが夢だったって気づいて、 それが夢だったって気づいて、目覚めてしまった自分に失望する。 いつまでも見ていたい夢ってのはやっぱりあって、 俺にとってのこの日常は本当に夢のようだった。 ……目覚めるのはまだ早い。 早いから、目覚めるわけにはいかなかった。 中井出「うぅうあぁあああっ!!!」 ───未来に至った時、俺はどうなるんだろう。 やはり死ぬのか、生きていられるのか。 もう何度も自身に訊いた言葉を頭の中で繰り返す。 剣を振るいながら、拳を振るいながら。 目の前の機械は結構な速度で襲い掛かってきているが、 なんとか追いつき、攻撃を弾く。 捌ききれないときは殴られて壁に激突したりもしているが、戦いってのはそういうものだ。 無傷で勝とうなんて、甘さでしかない。 中井出「───」 ふっ……と、笑みがこぼれた。 未来の俺は死ぬ……ああ、死ぬだろう。 でもそれを絶望と思えない自分が確かにここに居る。 死ぬのは怖い。怖いのは、死を知らないからだ。 他人の死なら知っているし、たくさん殺しもした。 でも自分の死を知らない自分は、死というものが怖くてたまらない。 このまま突き進んでも、待っているのはその怖くてたまらない死なのだ。 なのにどうして笑むことができたのか───それはとても単純なことだった。 大事なのは死ぬって未来じゃなく、それまでになにが出来るのか、どう抗えるのかだ。 価値観なんて人それぞれであって、俺は死ぬ瞬間まで自分が死ぬことを信じていたくない。 死ぬだろうことは解ってるが、 生きれる可能性がなくても頑張ってみせるのが死に際の人間ってもんだ。 生憎人間ってのは……生き汚ぇのよ……! でもね、うん。人間をやめることだけは絶対にしない。 それは、俺が心に刻んだ絶対に曲がらない芯だ。 というわけで───がしぃっ! 中井出「消し飛びなぁあっ!!」  バンッッガァアッ!!! 中井出「キくぜぇえ……!!」 機械モンスターの頭を両手で掴み、懐かしの爆弾パチキをかます。 ていうかね、爆発にギガボマー効果も混ざってたために衝撃が尋常じゃないです。 本気でキきます。 思わず顎を的確に殴られた格闘家のようにふらつき、ドシャアと尻餅をついてしまった。 シド 「なにをやっとるか!」 中井出「え、えぇ!?戦ってるんじゃないの!?」 シド 「真面目に戦え真面目に!!」 また怒られてしまった。 これでも真面目なんだが……心の持ちようじゃないのかなぁ、そこのところは。 ほ、ほら、誰かが頑張ってても、 誰かにとっては頑張ってるように見えないとか、なんかそーゆーの。 マシンモンスター『キギエルアァアアアアアアッ!!!』 中井出     「ヒ、ヒエーーーッ!!!」 ていうかね、うん、爆弾パチキあんまり効いてないみたい。 尻餅ついてる僕に対して敵さんは元気がモ〜リモリッ♪って感じで起き上がってるし。 あ、ちなみにこいつの造形は一言で言えばゼムス。FF4のラスボスですね。 変身前の姿だから、なんか細ッこくて胡散臭い魔導師みたいな姿だ。 それでも身長は俺の二倍はあるんだからやりづらい。 頭を掴むのだって結構一苦労だったのに。 いや……それにしても伯強い。 英雄ってのはやっぱり強いものなんだなぁとしみじみ実感。 ってのんびり隣の戦い見てる場合じゃバゴチャア!! 中井出「ギサルメ!」 普通に頬を殴られた。 こう、チョッピングライトで。 中井出「な、殴ったな!?死ぬのが早すぎた所為で親にも殴られたことなかったのに!」 …………。 そういやじーさんにもばーさんにも殴られたことなかったよな、俺。 ああ……もっと家庭愛が欲しかった。 そうしみじみ思うも、敵さんは待ってくれない。 中井出「飛竜の拳ガード!《ザブシャア!!》ギャアーーーーーーーーーッ!!」 蹴り脚鋏み殺しのポーズでガードするも、 ゼムスマシーンったら爪で攻撃してきたから意味がなかった。 いや……これ痛い!ほんとふざけるのも大概にしないと、いらんダメージくらいます! ふざけながらも結構真面目だったんだけどね!? 中井出「すぅ……はぁ───うむ!ゼムスマシンよ……臆さぬならば、かかってこい!!」 覚悟───完了!! まずはジークフリードをジークムントとジークリンデに分け、 片手ずつに持つと烈風脚で地面を蹴り弾き、ゼムスの反応の外から一気に懐へと潜り込む。 速度を殺さないままに双剣を突き出し、そのまま突き刺すようにぶちかまし。 機械を引きちぎる音と震動が剣を通して伝わってくるが、 構わずにボマーと鎌鼬を内部で炸裂させる!  ボガゾバァンッ!! ゼムス『ルロロロロォ……!!』 いまいち苦しんでるのか解らない悲鳴だったが、 ゼムスは体を折り、俺の背中を見つめるようにして前かがみになる。 すぐに両手が俺へと伸びてきたが、 中井出「ぬっ……んんがぁああああああっ!!!」 強引に剣を左右に斬り払うことでゼムスの体を下半身から切り離し、無理矢理倒れさせた。 ゼムス『ルロ……!?』 突然浮遊感に襲われたであろう上半身はそのまま地面に倒れ、残った下半身を掴んだ俺は、 彷徨ったゼムスの両手にジャイアントスウィングの要領でそれを投げつける。 ……よし、斬れなくもないし、投げられなくもない。 否!そんなことはどうでもヨロシ!全力あるのみ! ゼムス『───!《ギンッ!》』 中井出「《ビタァッ!》───うろっ!?……うろ!?」 急なことで変な声が出た!じゃなくて、睨まれた途端に脚が動かなくなった! あ、あらやだなにこれ……!もしかして……お、恐れている……だと!?この俺が……!? ええ怖いです、覚悟決めようがどうしようが、 傷つく可能性があることをやるってのは怖い。 だ、だがこれは恐怖で足が竦むとかそんなのじゃない気が……もしや石化凝視!? かの有名なメドユーサ(笑)が使うという、ガン飛ばしで敵を石化させるという……! ……でも石化してないや。……あれ?じゃあ普通に僕の体が怖がってるだけ? ゼムス『グブブブブブブ……!!』 中井出「ぬ、ぐ、う……!」 ゼムスが起き上がる。 もともと浮遊できるタイプだったのか、 はたまたここが敵の領地みたいなものだからだろうか。 下半身がなくても、幽霊みたいにゆらりと浮き上がり、動けない俺へと近づいてくる。 や、やばい!いかん!ふざけたテンションからかなりのピンチに! だが───諦めない!それが俺達に出来る唯一の戦い方だ! 中井出「見るがいいゼムスよ!これが───貴様らにはない魅力という名の武器!     CHRマックス!ジョブ秘奥義“愛……果てしなく”……!!」  マキュリリリィイインッY ───ミス!機械には効果がない! 中井出「迂闊ーーーーーーーーッ!!!」  ゾンッ……! 中井出「、あがっ……」 息が詰まった。 左腕に、頭を焼くほどの激痛。 気づけば左腕が肩から取れていて、血が噴き出ていた。 腕の痛みよりも、頭に走る痛みの方が先だった。 咄嗟にVITをマックスにしたが、千切れた腕が戻ってくるわけでもない。 一撃食らえば直るのか、 いつの間にか解けていた金縛りから逃れるように走り出し、落ちていた左腕を拾った。 敵に背を見せながら逃げるのは無様だとか言うが、 生きようって思うなら速いほうを選ぶのは当然だ。 バックステップなんかで大きく距離を取れる方がどうかしてる。 中井出「はっ……かぐっ……!」 グミとポーションを口に含んでから、鉛みたいに重い自分の腕を肩口につけ、飲み下す。 それで腕は繋がってくれたが、ゼムスがただ回復を待ってくれる筈もない。 ゼムスはなにかしらのエネルギーを両手に溜め、 それを一つに合わせると天井に向けて掲げた。 すると───、……!? 中井出「なっ……なんだこりゃぁああっ!!!」 天井がそれに呼応するように闇の空へと変わり、その先からは幾つもの隕石が───! ってメテオ!?これメテオか!? 中井出「魔法ならエターナルディザスターで───」 ってダメだ!これ魔法じゃねぇ! マナの流れが全然感じられなかったし! 中井出「う、うおぉおおおおおおおおっ!!!」  ガンゴゴゴゴゴゴゴゴギィンッ!! 降り注ぐ小さめの隕石を弾く弾く弾く!! 双剣を振るい、ステータスはVITとSTRとAGIに分けて、弾き落とす! っ……うわダメ!これ物凄く重い! ってそりゃそうだ!擬似空間とはいえ、大気圏外から降ってきてるんだから! くそっ!こんな時に藍田くんが居れば、アルメドレールで弾いてくれるのに! 中井出「すぅっ───はぁっ!すぅっ───はぁ!!」 疾風奥義を解放、一度に四連斬を繰り出し、重い一発一発を斬り弾いてゆく。 これも機械のかたまりなんだろうか───破壊できないくらいに硬い。 が─── 中井出「見ィイイ切ったァアッ!!」 ならばと、メカキラー全開! 降り注ぐ隕石目掛けて再び双剣を振るうと、ソレはバターのようにあっさりと切れた。 おお……やはりマシン! 中までたっぷりマシンだ! ……がんもどきを箸で割ったような心境だ。なんとも言えん。 中井出「っしゃあっ!反撃いくぜ!紅蓮に炎!蒼碧に地!義聖剣!メテオレイン!!」 地面から空に向けてのメテオ! これで敵さんのメテオを相殺───ブブー!《飛び道具は使用不可です》 中井出「格好つけさせてぇええええええええっ!!!!」 しかも一応振るった所為でアトリビュートキャリバー用に蓄積された属性が霧散! また12回攻撃しないと発動できない状態に! ち、ちくしょうノートン先生め! 俺になにか恨みでも───あるんだろうなぁ……。 中井出「う、うおおおおおおおおおっ!!!」 弾く弾く弾く弾く! 双剣で思う様に弾き、ていうかあの!?なにやら勢い増してません!? ……ってゼムスさん!?なに重ね掛けしてるの!? ちょっ……やめてよ!こっちこれでも苦労してるのに! やめ───ええいやめろというのに!!ゴシャーーーーン♪ 甲冑男爵『全身甲冑(フルプレートアーマー)の武装錬金!破壊男爵(バスターバロン)!!』 ならばとVITマックスで男爵さまモード!! 降り注ぐ隕石をガインゴインと素で弾き、のっしのっしとゼムス目指して歩いてゆく!! ゼムス『ルロ!?』 それを見たゼムスは流石に驚愕! 少し後退ったが───だが逃がさん! 貴様にもメテオの恐ろしさというものを味わわせてやる! 甲冑男爵『すぅっ───烈風脚!!』 地面を蹴り弾いて一気に肉迫! ゼムスを掴むと、未だ降り注ぐメテオの雨の中へと舞い戻る!! ゼムス『ゴ───ゴギャアアアアアアアアアッ!!!!』 そしてロンドン名物タワーブリッジをすると、 ゼムスを盾にするようにわざとメテオに当たりに行く!  ドンガガガガガガゴシャアーーーーーッ!!! …………ゴゴッ……パラパラ………… 甲冑男爵『お前は強かったよ……だが間違った強さだった』 メテオが終わってみれば、ゴシャメシャのミンチになったゼムスマシン。 やっぱりメテオをくらってゼロムスに変身することは出来なかったらしく、 プスプスと煙を吐いている。 終わった戦いに溜め息を吐きながら横をみれば、 とっくに終わっていたらしい伯がこちらを困惑顔で見ていた。 伯側の機械もゴシャメシャ状態……どんな攻撃をしたのかしら。 と───おや?潰れたゼムスたちが集まって───ゴシャーン!! T260G/オメガボディに変身した!! 甲冑男爵『オィイイイイイイイ!!!      あの大きさでこの大きさになるのは変だろォオオオ!!』 俺の身長の二倍のやつが二体合わさって、俺達と同じ大きさ!? あ、い、いや、深くは考えまい! 僕らはゲームにツッコミは入れども、否定はしない修羅でありたいと願う猛者! もう原中とは関係ないけどね僕! 甲冑男爵 『ジェノサイドハートよりもよっぽど戦いづらそうだ……       こいつ絶対にVシステム持ってるよ……。       レイナート!ちょっとレイナート!?まだなの!?気合い入れなさいよもう!       こ、このあたしが応援してあげてるんだから頑張りなさいよね!?《ポッ》』 レイナート「オエッ……!《ゴポポッ……》」 甲冑男爵 『ヒィ吐いた!?』 シド   「甲冑男に頬染められて喜ぶヤツが居たら見てみたいが」 甲冑男爵 『ああそうかも……』 とはいえ、ヘタをするとゼムスと戦ってたほうがまだマシだったかもしれない。 いや、それを考えるよりも次のことだ。 次、破壊することが出来たら粉微塵になるまで粉砕しないとダメだ。 こうして融合復活出来るなら、このままじゃあいつまで経っても終わらない。 オメガ 『───戦闘ヲ、開始シマス』 甲冑男爵『……《ごくり》』 ゲームの中だから、ということもあるが、それが利点に繋がる。 あのT260Gと戦える。 サガフロ好きでT260G好きにとって、これほどの喜びがあろうか。 ナカジマ零式でもよかったんだが、俺にとってはこっちの方が嬉しい。 戦うよりも話をしたかったっていう本音はこの際うっちゃる。  バシュンッ…… 甲冑を解除して、素のままの俺で向かい合う。 意識を高めろ、俺! こんな貴重体験、ここでしか味わえん! ……あ、一応伯には、まずは一人で戦わせてと言っておこう。 そう、こんな貴重体験はここでしか味わえないのだから。 中井出「機械に言っても無駄かもしれないけど、     貴方がジェノサイドハート戦の頃の貴方だと信じて。     芯念と書いてしんねんと読む我が意思を以って、ぶつかろう!     ───臆さぬならば!かかってこい!!」 T260Gが背中のジェットブーストで、 俺が烈風脚で地面を弾き、一呼吸ののちに低い中空で激突する。 敵の武器はメガビームソード。 ビーム出力が異常に強く、 ホンモノの硬い物質と切り結んでいるかのような質感がジークを通して伝わってくる。 ……景色は機械めいたものから一変、 バーチャルシフトによって彼の第二の故郷ともいえる“ボロ”に変わっていた。 スクラップが詰まれたガラクタ置き場─── なにも知らない人が見ればただの汚い場所だが、そこは彼にとっては大切な場所だ。 中井出「すぉおおおらららららぁあああああっ!!!!」 独特の呼吸法をしながら疾風を奔らせる。 その悉くがメガビームソードとデュラハンの盾によって弾かれるが、 一切通らないわけじゃない。 いくつかの攻撃はオメガボディにヒットし、確かな傷をつけていた。 防御力はそう高いほうじゃないらしい。 問題なのはズパァッ!! 中井出「わひっ……!?」 かっ……髪の毛っ!前髪飛んだ! やっぱりだ!剣闘マスタリーとか射撃マスタリー、絶対につけてる! って、ことはだ。 …………体当たり!神威クラッシュにだけは意地でも気をつけねば!! 中井出「ぬっ……ぬおおおおおおおおっ!!!」  ギャリンギャリンギュバィンギャリィンジョフィィンッ!! 相手がビームソードなために、剣を弾く度にヘンな音が鳴る。 しかしエネルギー出力だけで、 こんなしっかりとした手応えを実現するなんて……機械ってスゲェ!! だが負けぬ!自然系ファンタジーは近未来ファンタジーなぞには負けんのだよ!! 貴様らに足りんもの……それは野生味だ!! 中井出「くっそこのっ……!!」 敵の剣目掛けて攻撃しているわけでもないのに、パギンパギンと剣に弾かれるジーク。 おかしな話だ。 ファンタジー映画や時代劇のように申し合わせてやっているわけでもないのに、 攻撃の悉くがそうして剣を合わせるカタチになっている。 剣を避けても盾に、盾を避けても剣にと。 双剣で向かう利点は手数の多さだが、相手だってメガビームソードとデュラハンの盾。 俺の手数の分だけ“プログラム/多段斬り”を使って、こちらの疾風を悉く弾いてくる。 一言で言いましょう。 ジェノサイドハートより強い。  キュォオオオァィギバァンガァアッ!! 中井出「ぐあぁあっつ!?」 T260Gの肩部から、その重火器が壊れるほどの威力で放たれた粒子砲。 咄嗟にリングシールドを展開したが、あっさり破壊され、余波だけで吹き飛ばされた。 マ……マグニファイか今の! 怖っ!まともに当たってたら風穴空いてたぞ!? ってしまった!離れたら来た来た来たぁああああああっ!!!? 中井出「いやちょっと待って神威は!神威だけは」  ヴァゴルガァンッ!!! 中井出「ひゃぎゅ《ドガァッシャゴガァンッ!!》」 息が詰まるほどの衝撃。 脚はとっくに地面から離れていて、 呼吸を……酸素が欲しいとようやく思えた頃にはガラクタの山に激突していた。 言ってみればただの体当たり。 しかし、ロボの寿命を削るほどの威力を持つ、 全身全霊のぶちかまし……それが神威クラッシュだ。 ガシャゴシャとガラクタの山から起き上がるが、起き上がったところで眩暈に襲われる。 中井出「〜〜〜っ……う、ぉおっ……」 あの……はい、困りました滅茶苦茶痛いです。 冗談抜きで涙出てます。 喉の奥からはか細い悲鳴が漏れて、 数歩歩いただけで体が勝手に体を庇って屈みこんでしまうくらい痛い。 グミがどうとか考えるより先にこんな体勢をとってしまう有様だ。 だが相手もタダでは済まなかった。 やはり衝撃が強すぎたらしく、煙を出しながら半停止状態…………だったんだが。  キャラリラァン♪《自己修復!T260GのHPが回復する!》 中井出「っ……く、っは……!」 そうだ、あれがあった。 メカたちにはあれが……! 休ませたらダメだ……攻めて攻めて攻めまくらないと……! 中井出「ふ、ふっ……ふぅっ……!」 然の加護により少しずつ傷が回復、痛みも引いてきたところで、ようやくグミをかじる。 そうしてようやく回復してから、もう一度覚悟を決め直して─── 中井出「は、はぁ……!……すぅ……はぁあああ……!!よし!人器解放!!」 引き出すのは筋肉痛が起こらないギリギリまでの幅。 相手をナメているわけじゃなく、100%は場面を選んで使わないと、 倒せなかった場合になにも出来ないままコロがされる可能性が高いからだ。 こいつ、ホンキで強い。 だからこその半解放だった。 中井出「なんかもう俺の方が臆してるけど───もう一度言おう!     T260Gよ……臆さぬならば!かかって……きたぁあああああああっ!!!」 ジェットブーストでゴシャーーアーーー!と飛んできたT260Gを前に、思わず悲鳴! く、くそう怯えるな僕の心!しっかりして胆力さん! これから始めるプロジェクト博光のためにも、こんなところで躓くわけにはいかんのだ! Next Menu back