───冒険の書310/カオスバトラーズ───
【ケース775:双月朧弦/最終兵器11】 ───命ってのはあっけないもんだって、誰かが言った。 顔も記憶もない筈なのに、笑顔だけが印象的な影が笑ってた。 そいつは“俺達”にとってはとても大切なヤツで、 うじうじ考えてばっかりだった俺達を、いっつも“楽しさ”の中に連れ出してくれた。 ───いつからだっただろう。 雨ばっかり降っていた心の中に、ゆっくりと陽が差していったのは。 思い返せば涙ばかりで、楽しいことなんてひとつもなかった蒼い季節。 そんなものを埋めてくれる誰かが、俺達の傍には居てくれた。  ───大丈夫    俺達三人が居れば、どんな壁だって─── それはいつ、誰と一緒に唱えた言葉だっただろう。 怖いものだらけだった心が温かさを得て、 いっぱしの中学生くらいには馬鹿やっていられるようになった頃、 誰も居ない教室で、三人で輪になって初めて唱えた言葉。 俺と彰利から始まった二つの手は、 中学を向かえ三人の輪になって、やがて大きな輪になった。 ……怖いものなんてなにもなかった。 褒められたものじゃないけど、教師の弱みを握ったり調子に乗って無茶をやったり。 そう。 ガキだった俺達は、無意味に俺達は無敵だ、なんて言って笑っていた。 ……いつからだろう。 別れが寂しいくせに、寂しくないなんて強がりを言うようになったのは。  ブシャアッ!! 朧弦  『───、……アッ……』 アルビノ「……、ぶ……っ……!」 飛沫が噴いたのはすぐ後ろからだった。 ブレードスラッシャーの余波のためか、 とっくにズタズタだった体で俺と映像の間に割って入ったアルビノの体は、 その半身が赤く染まるほどに深く、取り返しがつかないくらいの赤を放った。 まるでスローモーション。 信じられない光景に集中が高まったのか、 ただゆっくりと赤を噴き出しながら傾いてゆく体に意識が引っ張られ………………なのに。 アルビノ「……《ギ、リィイ……!》」 こちらを見ている俺を叱咤するかのように睨みつけると、 そのあとに……光を失くしていく目で確かに笑んで───……血を吐き、崩れ落ちた。 その笑顔が、誰かの笑顔に重なって見えて………… 無意識に泣き叫びたくなるくらいの感情が俺の胸を締め付け───!!! 朧弦 『っ……』 止まるまい───止まれるものか!! あいつは道は切り開いたと言ったのだ! その道は安全なままに確かに切り開かれた! それをモノに出来ないで、なんのための道だ!! 朧弦 『ブチ抜けぇえええっ!!“神竜剣”!!』  ギヒィン!ギジャグォヴァァアアンッ!!!! オズ 『クギャアアアアアアアアッ!!!!』 皇竜の力と、死神側と神側の家系の力全て、 そして黒と白とを合わせて発揮される反発半動力の全てを込めた一撃を落とす。 雷を孕んだ斬撃はオズの体を斜めに斬り砕きながら爆裂し、 振り切ると同時にオズの体がマシンフィールドの大地を抉りながら吹き飛び転がってゆく。 ───カーネイジを撃ったオズは硬直状態にあった。 フレイアに斬られ、痛んだ片手で撃ったブレードスラッシャーはアルビノに破壊され、 次いで放ったカーネイジもアルビノの命がけの行動で無に終わる。 あれだけの高エネルギーだ。 いくら古代技術の集合体であるノヴァルシオマシンとはいえ、すぐに動けるわけもない。 それゆえに、文句なしのクリティカルヒットだった。 これ以上ないってくらいの手応えがラグから手へ、 手から腕へと伝わり、体の芯に確かに響いた。 追撃をするべきか───と悩んだが、先にアルビノへと駆け寄った。 その傍らには既にミクが居て、回復の歌を歌っているようだが…… 朧弦 『アルビノ!おい!お…………っ……ひでぇ……!』 それでもアルビノの全身はズタズタだった。 いや、外傷と呼べるものは左肩から右足までの深い裂傷…… おそらくブレードスラッシャーによるものだ。 だがそれ以外にも体の傷が多いのはどういうことだ……? しかも、内部から壊れたような有様で……─── 朧弦 『しっかりしろ!おい!っ……傷を癒す霧が出ます!弾けろ!』 すぐに回復の霧を創造する。 するが…………もはや時遅く。 致命に至った傷は治ることなどない。 アルビノ「…………、……」 朧弦  『アルビノ!?おい!解るか!?見えてるか!?』 アルビノ「……悪い……紛いものの……人器、じゃ…………一歩……烈風ってやつで……      走るのが……精、一杯……だった…………」 朧弦  『烈風……?いやいい!それより……!』 アルビノ「ひ、ははっ……!いてぇなぁ……すげぇいてぇ……。      死ぬのかな、俺…………死にたく……ねぇなぁ……」 朧弦  『〜〜〜っ……なんで庇ったりしたんだ!死にたくないなら俺なんか!』 アルビノ「……、自惚れんな、ばかやろ……。      俺……は……お前のためなんかじゃ、なくて……      俺は…………俺、は…………俺の……た……め、に…………───」 アルビノの腕が、宙を彷徨う。 仰向けに倒れ、空を見上げる彼はその先になにを見たのか。 ただ、静かにその瞳から涙をこぼし、 アルビノ「…………ごめ……、オリ、ジナル……。俺は……けひゅ、ひゅう……      俺、は……っ……蒼空の、下で……死ん……じま………………───」 そう言って…………やがて、右手を空に向けた姿のまま、塵になった。 残された言葉にどういう意味があったのかは解らない。 解らないけど、アルビノは蒼空の下以外で死にたかったんだろうか。 それとも……オリジナルと言われたヤツが、 蒼空ではない場所で死ぬという意味が込められていたんだろうか。 やっぱり解らなかったけど…………がしゃん、と落ちるアガートラームを見て、 どうしてか胸の奥から込み上げる嗚咽が止められず、俺は……俺達は泣いた。 朧弦 『…………』 どうしてこんなに辛いんだろう。 ちょっと知り合って、ちょっと気安くなった程度の相手だ。 戦いの中で、戦う者が死ぬことはいつあってもおかしくないことだ。 だからそんなこと、覚悟していた筈なのに。 あの顔が、あいつが死んでしまうことが、どうしてか叫び出しそうになるほど辛かった。 一瞬、なにかを思い出せそうになったのに、“俺の内側”がそれを拒絶した。 思い出すな。今思い出すわけにはいかない、と。 朧弦 『っ───集中せよ汝───!』 涙を拭い、立ち上がる。 ……まだ終わってない。 泣くのなんて、全て終わらせてからで十分だ。 だから─── 朧弦 『自己回復能力ごと破壊してやる……!     っ……覚悟しろよガラクタ野郎ォオオオッ!!』 裡に燃える怒りを糧に、走りだす。 余力なんて知ったことじゃない。 朧弦 (壊さないと気が済まない……!     粉微塵になるまで、何度でも破壊し尽くしてやる!!) ───怒り狂って前しか見えなくなった獣になった気分だった。 だがそんな俺の前に、ひとつの影。 思わず脚を止めてしまった俺の前に立っていたのは───悠黄奈だった。 悠黄奈「だめです!怒り任せで戦ったら───」 朧弦 『うるさい!あいつの所為で!あいつの所為で───が!!……!?』 ……が? 誰だ……? なにか、大切な人の名前を呼んだ気がしたのに、俺の口はなにも口に出していなかった。 けどそれがとても大切なものだったことは、 裡に眠る思いの頑なさが逆に思い知らせてくれる。 ……そう。 俺は……誰かを忘れているのだ。 朧弦 『…………悠黄奈。俺はなにを忘れてる?』 悠黄奈「教えません」 朧弦 『なっ……』 ひどいくらいの即答だった。 あまりの即答ぶりに、一瞬息がつまるくらいだ。 朧弦 『教えないって、どうして』 悠黄奈「覚えている人だけが覚えていればいいことだからです。     ……少しは頭が冷えましたか?では、いきましょう」 朧弦 『……へあっ!?ちょ、ちょっと待て!冷えると思ってるのか!?』 悠黄奈「ええ。ドス黒い殺気がなくなってますから、一応成功だと思ってます。     ……それより、オモシロそうですね。わたしとも融合してみませんか?」 朧弦 『え……あ、いや……』 悠黄奈「上手くいけば忘れていること、解るかもしれませんよ……《ヴォソォリ……!》」 朧弦 『ヴ……くぐっ……だぁあもう!なるようになれ!月操力&創造月操力!!』 悠黄奈(……まあ、無理でしょうけど) 悠介と彰利を融合させたように、自らと悠黄奈に月操力をかけて融合を開始する! ……ていうかもうヤケクソだ。 気絶してるヤツ全員飲み込んで大暴れしてやる!! 朧弦 『合体!アーサー童子!!』 既にアルビノの死に対しての悲しみなど何処吹く風。 何故そうするのか。全力で悲しんでやるべきなんじゃないのかって思った。 思ったけど、それはあいつがちっとも喜ばない気がした。 あいつはきっと楽しいことが好きなのだと、妙な確信があったのだ。 やがてシリアス空間は吹き飛び、しかし怒りは忘れぬままに融合を完了させる。 すると─── カオス『…………《ムキーン》ほぎゃあああああああああっ!!!!』 両腕だけがアルティメットマッスルだった!! なんかヘンだと思ったんだよ! 藍田と融合する時、俯いた藍田の目がゴシャアアアアアって光ってた気がしたし! あいつ絶対に意識戻ってたって!融合する瞬間、絶対にオリバ化しやがったんだ! ど、どうするんだよこのアンバランスな体……! うわダメだ!手が大きくてラグがフィットしない! こりゃつまり素手で戦えってことか!? オリバ  (フフ、当然ダ。グラップラーガ武器ヲ使ウ……ソレハモウ格闘デハナイ……) 悠介&彰利(うるせぇよ!!) レイル  (あーあーもうどうすんだよこのカオス的状況) 閏璃   (…………ダイの剣しかあるまい!!《バーーーン!!》) 総員   (なに脈絡もなく命名してんだよ!!) 岡田   (そりゃアレか!?俺達融合体に対する命名か!?) 閏璃   (いや……違うな。小学の頃、顕微鏡でみたケンミジンコの名前。       来流美に名前でも付けてあげたら?ってからかわれたことがあってさ。       その名前を今の今まで考えに考えてて) 彰利   (なしてここでケンミジンコ!?) そもそも剣ですらなかった。 などという融合内会議を繰り広げてたために───俺達は気づかなかった。 アルビノが消えたことで落ちたアガートラームが、 突然現れた黒の炎に飲まれ、消えた事実に。 【ケース776:中井出博光/きっと温和そうな先生っぽい人あたりがやりそう】 ゴコッ……ガシャゴシャ……!! 中井出「うげぇっほ!えっほ!ごほっ!う、うげぇええ……!!」 神威ではなかったが、ぶちかまされて吹き飛んだ俺は、 再びガラクタを持ち上げながらスクラップから産まれ出ることとなった。 その際に見えたT260Gは、 なにか上空を仰ぎながらテロテロリンとプログラムを作動させている。 なんだかと〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っても嫌な予感がする中───  キィイイイン……………… 今は以前と同じように、肘辺りまでしぼんでしまった霊章に、なにか暖かさを感じた。 そして……いろいろと理解する。 中井出「───、……そうか。アルビノが逝ったか」 俺自身が使えなくても、灼闇自身が動いたんだろう。 “外”にあったらしいアガートラームを“闇蝕”で食らった火闇が腕に戻るのを感じて、 俺はそれがアガートラームであることと、アルビノが死んだ事実を読み取った。 そして…………このアガートラームには、アルビノの意思が宿っていることも。 中井出(ていうかあのー、なんか武具が本調子じゃないなーとか思ってたんだけど、     外に出てたから力を出せなかったんですか?     そもそもいつから機械を伝っての能力伝達なんて……) レオン(ミクとビットシステムと器詠の理力の手柄だが) 中井出(……なんで!?) レオン(あのな……少しは考えてから) 中井出(考えたもん!考えたけど解らなかったんだもん!) レオン(いや、あのな…………。ああ……つまりはな。     器詠の理力は武具の意思を受け取れるな?     意思だけでなく、内側に眠る力も引き出せる) 中井出(うす) レオン(それを、ミクの力で機械側に傾けただけだ。     意思の伝達能力と“機械”という特性を生かし、まあ、なんだ。     意思と想いを飛ばした。さすがに灼闇がまで飛ばすとは思わなかったが) 中井出(……それ絶対にセトとバハムートがやったことだから、僕関係ないよ?) レオン(解っている) ……でもありがとうをあなたに。 自分の意思を貫いて散った者よ……俺は貴様を笑いはせぬ。 ともに歩もう。この博光は貴様を歓迎する。 中井出(そんなわけで。アルビノ。アルビノ〜?) レオン(まだ意思が鮮明化していない。今語りかけても返事はないと思うぞ) 中井出(あれ?そうなの?) それは困った。 いや、べつに困らないか。 レオン(それよりも前を見ろ。来るぞ) 中井出(お、押忍) あいつが空に向けてなにを発動させてたのか。 それはもう言うまでもなくアレでしょう。 ならば僕もやることはやっておきましょう。 えーと……ブレイブポット、No.20発動、っと。 と発動させた途端、T260Gはボディパーツ内でも結構デカイ、 ウィングチックな肩を開き、 なんとそこからいくつもの小さなメカニカルボディバージョンのを放ってくる!! 中井出「な、なんの負けるか!No.22!びっくりソルジャー!!」 ならばとこちらもびっくりソルジャーを発動! 何匹もの小さなアイルーが武具から射出され、小さなT260Gを迎え撃つ! 中井出「&ハイペリオンミサイル!!吹き飛べコノヤロー!!」  ドゴォッシュウウウウウン!!! さらに巨大な核ミサイルを発射! 一瞬その大きさに視界が塞がり……敵を見失った瞬間! 中井出「へっ!?」 すぐ横から、淡い黄緑色の閃光が突っ込んできてうわやべぇ!! 中井出「Vシステム《ヂッ!》ほわぁああああっ!!」 ポットネームを言うのも半端なまま、Vシステムを発動させるとコスミックレイヴを解放。 相手と同じく宙を飛行すると、鼻先を掠めたT260Gの体当たりから逃れた。 フロートが使えない今、他に飛行が出来る能力っていったらこれくらいだろう。 ……それはともかくとして。 中井出(あっ、あぶっ……あぶねっ……!) あんな一瞬でVシステム発動させるなよぅ! びっくりするじゃない……か───ってホワァアアッ!!? 中井出(───ヒィイドキドキする暇すらない!) コスミックレイヴの恩恵で空中を思う様に飛行するT260Gの背中や肩が開いて、 そこから無数の光の矢、スターライトシャワーが俺目掛けて放たれる! 中井出(だが負けん!サモン・サボテンダー!!) ならばと召喚したのはNo.19:サボテンダー! 空中に召喚させたソレは、 向かってくるスターライトシャワー目掛けて何本もの針を飛ばす! 予想通りスターライトシャワーは衝撃を受けると爆発し、霧散した……んだが、 それすらも俺の注意を逸らすための敵さんの作戦にすぎなかった。 ええまあ、俺に気づかれてちゃ意味はないんですが。 中井出「鋼鉄の肉体ィイイイイイイイッ!!《ムキィーーーン!!!》」 No.13!メタルボディ解放! もはやすぐ背後に来ているT260Gの体当たりを振り向きザマに受け止め、 中井出「ブッ飛べカラミティイイイイイッ!!!」 こちらも渾身を込めた一撃を───振り抜くッッ!!  ゴゾバァッキィドッガァアアアンッ!!! 一切の遠慮もなく、手に感じた抵抗さえ砕く意気で振り抜いた一撃は、 T260Gを空中から地面のガラクタの山へと突っ込ませた。 まるで隕石だ。 そして、一秒もかからず地面に落下したT260Gが埋もれるガラクタ山目掛け、 俺は次の仕掛けを発動させる。 ……と同時に、メタルボディの効果が切れた。 背中に攻撃させなかった甲斐あって、ダメージもそう大したものじゃない。 中井出「お待たせしましたNo.20!サテライトリンカー!!カモン次元衛星砲!!」 そう、サテライトリンカーである。 どこにあるかも解らんソレを発動させ、 かつてドワーフの遺跡を貫いた破壊の光を今ここに! 発動までに時間がかかる上に、当たる確率が低いからあまり役立たないが……知りなさい。 次元衛星砲の威力は我が斬撃の15倍!! これをくらって平気で居られる者などそうおらぬわ!  ビシュンッ─── 先に届いたのは一本の線みたいな蒼い光。 それだけで、映像内とはいえ空にあった雲は巨大ななにかに貫かれたように螺旋に広がり、 その開いた分の雲の中心を射抜くように、巨大な蒼白の閃光が降ってくる!! …………何故か俺に。 中井出「あ、あれ?ほぎゃあああああああーーーーーーーーーーーっ!!!!」 思い出してみましょう。 僕がサテライトリンカーを使う前、T260Gはなにをしてたでしょう。 ……ええ、僕より先にリンカー使ってましたね。 だからこれがT260Gの次元衛星砲であることは当然なのですね……反省します。  ヂガァンガガガガガォオオオッ!!!! 中井出「げ、あっ……ぎあぁああああああああああああっ!!!!」 VITを全開にしても足りないくらいの激痛。 それでも背中は守らなければと空を仰いで受け止めなきゃいけない地獄。 真正面から巨大な光に射抜かれ、皮膚は破壊され、血が消され、肉が散ってゆく。 中井出(〜〜〜……無理だ!耐え切る前に死ぬ!!) そう判断してからは速かった。 マグニファイを発動させ、二倍になったステータスを全てVITに集める! 空間翔転移が出来ればよかったんだが、残念ながらウィルスによって封印中だ! だったら……今出来る全てでこの攻撃を乗り切る! 中井出「死んでぇええっ……たぁああまるかぁああああああっ!!!」 焼けゆく体でジークを持ち、天に向けて両手で構える! そうしてからギミックを発動させ、チャクラム状にすると───全ての武器を解放! 高速回転させ、体を穿とうとする光を音速回転する刃で可能な限り霧散させてゆき、 だが体にかかる圧力に耐え切れず、地面に押しつぶされるカタチで落下した。 中井出「っ……が、げはっ……!」 幸いと言っていいのか。 その瞬間に衛星砲は消えてくれて───いや、幸いじゃあなかった。 オメガ『追撃シマス!』 中井出「っ……く、お……!」 衛星砲に耐え切るだけで精一杯だった俺の視界に、 ソイツは空をバックに襲い掛かってきていた。 ……死ぬ。 あのメガビームソードを食らえば、俺は間違い無く……! 中井出「ぐ……うあぁああああっ!!!」  ドォッゴォオオオオオオンッ!!!! 斬撃が俺の服へと接触した瞬間、巨大な爆発が起こる。 ソレは俺の体とT260Gの体を巻き込み、天を衝くほどの巨大な火柱を立て…… オメガ『巨大ナ爆発ヲ確認……敵ノ状態…………生存』 中井出「ふ、ぐっ……かっかっか……!!     自爆すりゃ……!嫌でもHPは1だからな……!     瀕死になりゃ……物理攻撃は効かねぇ!!」 オメガ『───!』 中井出「リミットグローヴ……!!《メギャアッ……!!》」 握り締めていたメガビームソードを、柄ごと握り潰す。 リミットグローヴ……HPが1の状態の場合のみ、 鬼神の如き力を発揮するブレイブポット能力だ。 それに加え、既に発動している神威/殺戮の殺戮側の能力、“ジェノサイドハート”。 これが俺の体を深淵から熱くさせ、 相手が古代文明の遺産の名残だろうがなんだろうが、構わずに握り潰した。 潰された手を外そうと、 T260Gはゼンマイ仕掛けのオモチャのように拳を振り下ろしてくるが、 それはサガフロンティア内の多段斬りの格好のようで、あまりに迫力がなく─── 当然、皇帝竜の逆鱗が発動している俺に通用するわけもなかった。  さあ、初仕事だぜアルビノ───  お前の想い、力、魂、意思……全部まるごと、解放させてやる!! 中井出「全能力解放!!《ゴバァォン!!》」 オメガ『異常ナ生体反応を確認───危険!距離ヲ取リマ《ヂャリンッ!》───!』 中井出「ッチィ!さすがに反応が速い!」 能力解放と同時に剣を振るったが、紙一重で躱される。 その距離は一瞬で呆れるくらいに開き、だがすぐさまに後を追う。  ───薄緑の光と光が、ぶつかりながら空を彩る。 まるで一対の蛍が宙を舞うかのような光景だろうが、 実際はそんなに暖かなものじゃない。 コスミックレイヴの光がぶつかり合う度にひどい震動が伝わり、 既に何度かジークを落としそうになっていた。 離せばそれがロスになる。 霊章が封印されている今、霊章転移が出来ないからだ。 オメガ『異常───コレハ既ニ人ノ動キヲ越エテ《ガゴォンッ!》ゴギッ!?』 中井出「捉えたぜ……!」 状況分析をしようと一瞬止まったT260Gの腹部に拳を叩き込み。 既に人器は100%。 狂系脈も発動させているため、空中の行動でも思うさまに人体能力を発揮できる。 狂系倭刀術/疾空刀勢は空中移動の急ブレーキに非常に役に立っている。 本来なら跳躍時、体にかかる跳躍による浮力と重力とがゼロになった瞬間、 筋肉をバネにさらに跳躍するか突進するかの能力だったが、人器能力あればこそ。 それは強引なブレーキ能力であり、相手が円を描くように動く中で、 俺は直角に移動してみせ、背後に一撃を加えることができた。 殴った拳はそのままT260Gを吹き飛ばし、俺はそれを追ってうおぉおおおおっ!!? 中井出「ミミミミサイルゥウウウウウウウッ!!!?」 どうやらヘッジホグシステムも搭載されているらしい。 攻撃を当てたことでカウンターミサイルが発動したらしく、 またもT260Gの型から無数の小型ミサイルが発射された! こいつ肩にどれだけ兵器搭載してるの!?僕もう帰りたい!! 中井出「うおおおお一撃たりとも通させん!」 通ったら死ぬしね! あのミサイルに属性が込められてなければ、死なないとは思うけど。 中井出「かかってこいオラァ!!」 だが退かぬ! 数多くの物体が飛んでくるのはむしろ好都合! ストックしてあった精霊斬を解放、災の恩恵と闇月鱗、絶氷の膜と……水鏡の月を解放! 残り一つのストックは困った時のワールドデストロイヤー。 災の恩恵と闇月鱗で攻撃力を極大上昇×2、絶氷の膜であらゆる攻撃を防ぎ、 水鏡の月で───敵の行動を真似ることができます。 中井出「ワハハハハ!!コピー!《コキーン♪》ヘッジホグミサイル!!」 発動させた途端に、敵のミサイル目掛けて幾つもの小さなミサイルが放たれる! グオッフォフォ……!!そう……俺自身は飛び道具が使えんが、コピーなら別よ……! 中井出「GO!」 ミサイルがミサイルを破壊するのを横目に、T260Gを見失わないように目で追う。 こちとらあまり長い時間の100%には慣れていないのだ。 出来るだけ速く突撃を……そこ! 中井出「マグニファイ!!《ゴシャーン!》」 とっくに10分経ってたが、 ストックがキャリバーで埋まってたためにストック出来なかった10分アビリティを発動! ていうかあのー……アレはまだですか? ……ええいなるようになる!GOだ! 中井出「説明しよう!このコスミックレイヴと狂系脈が合わさり、     さらにマグニファイの鬼人化によって能力が二倍になりし時!     界王拳を使ったわけでもないのに、     まるで界王拳を使った時のような物凄い動きが出来るといいね!」 そんなことを叫びながら、T260Gを追って飛翔。 だが出来る……出来る確信がある。 霊章や武具に宿る皆様が器詠の理力を通して教えてくれる。 もっと我らを信じろと。過信しすぎるくらい信じてみろと。 そうでなくては我ら武具と意思を受け止めるなど、とてもとても……とてもとても…… 中井出「っ!《ドッコンッッ……!》」 体の組織という組織が躍動した。 器詠の理力を、人器を通し、狂系脈も手伝って、全ての細胞が燃え上がっているような…… レオン(あまり一人で突っ込みすぎるな。あまり冷たいことを言うな。     我らはいつもお前とともに───) 中井出(失礼な!僕はいつだってキミたちに頼りっぱなしのザコですよ!?) レオン(いやそうだが……あ、いや……     今私がいいことを言おうと……いや……いいんだがな……) 中井出(僕がキミたちを置いて一人で突っ込む!?死んじゃうよそんなの!だからやだ。     何度でもなんべんでも唱えよう……僕とキミたちは……一心同体だ!!……あ) レオン(うん?……あ) そうこうしているうちに敵を見失いました。 中井出  「馬鹿!レオンの馬鹿!見失っちゃったじゃないか!」 レオン  (ばっ……こ、この状況でまずすることが私への罵倒か!?) サイナート(後ろだ、バカモン!) 中井出  「馬鹿とはなんだこの野郎!!」 意思総員 (言ってる場合か!!) 中井出  「ひぃっ!ご、ごめんなさい!」 でも言ってみたかったんだよぅ! あたかも二足歩行のカエルが、投げ捨てられたバナナの皮にトキメクくらいに! なんて遣り取りをしながらも後ろへと向き直ると───目前にミサイルの嵐!! うひゃぁあああああのヤロッ!全弾発射使いやがったなぁああああああっ!!!? 中井出「っ……うおおおちくしょおおおおおおっ!!───エンペラータイム!!」 出来れば使いたくなかったのに! だが知りなさい……人は筋肉痛を越え、鍛えられてゆくのです。 俺の場合、人器に必要な器が構築されていくだけだけどね……。 中井出「《キャリィンッ!》音速剣疾風斬!!」 ともあれ……発動させたからには、リミット解除された武具たちの能力を思うさま振るう! まずはこのミサイルの嵐を地面まで引き付けて……双剣に変化されたこの剣で叩き落す! ええ、ご丁寧にホーミングです。 中井出「おぉおおおおりゃぁああああああああっ!!!!」  キシバボボガババババババババ!!!! 大地にしっかり足を下ろし、音速を利用して破壊してゆく! もちろん12回斬ったらキャリバーをストックするのも忘れぬわ! そのための、剣での叩き落しです。 ストックがいっぱいになったら双剣のままで精霊斬、義聖剣を発動。 リミットブレイク中だから長剣化する必要もなく、思うさま解放することが出来た。 ……相変わらず剣閃やレーザーといった飛び道具は不可能だったが。 くそう、レイジングロアとかが使えれば一発だったんだが……! いや落ち着け僕!高性能な技ばかりに依存するのはいけない行動だ! それが僕をダメにする!だってこうして、レイジングロアや飛び道具、 六閃化を使わなくても打ち落とせているじゃないか! なになにが効率がいいから、なんてのは関係ない! 僕は……僕はこの武具すべての能力が愛しい!! あ、でも背中が弱点なのは愛せないですごめんなさい。 オメガ『釘付ケニ成功。コレヨリ背後ヲトリマス───!』 中井出「ホワッ!?」 気づけば後ろにTさん! なん……だと……!?この博光が気づけなかった……!? …………いつものことですね、解ります。 だが甘し! 中井出「ジョブ秘奥義……絶対回避!!……30秒の奇跡をあなたに」  ヒュカァンッ───!! オメガ『……!神威クラッシュノ空振リヲ確認……!直撃ダッタハ───』 中井出「退避ィーーーーーッ!!!」 背中から神威クラッシュ襲ってきたTさんはしかし、 僕の体を擦り抜けるとミサイルの豪雨の中へと突っ込んだ。 僕はそれを見届けながら逃走し、幾度も爆発する景色を安全地帯で眺めていた。 やがて先に撃っておいたハイペリオンミサイルがトドメとして落下。 吹き飛ばされそうになるほどの爆風を巻き起こし、……あ、さっきのトドメやっぱりなし。 これがトドメだ。ようやく来た。  ヂガガガガガガォオオオンッ!!!! 巻き起こる爆風も爆煙も貫き吹き飛ばす無情の閃光……名を次元衛星砲。 普通ならばこの、最終兵器の体内が見ている上空から降り注ぐのだろうが…… もうここはバーチャルシフトによって変化させられた、ひとつの世界だ。 だからこそこの場に降り注ぐ。 ……普通に外から降り注いだら、ジェノサイドハートも僕もただじゃ済まないだろうし。 そして……知ってください。 今の僕は様々な能力によってSTRはとんでもないことに。 もちろん空が蒼白く光った瞬間、STRはマックスにしてありますともさ。 その15倍の威力……思う存分味わってください。 中井出「すぅ……はぁ……すぅ……」 そんな景色を見ながら、俺がすることは深呼吸。 おかしな話だが、不思議な感覚だった。 体は熱いくらいに躍動しているのに、意識はひどく鮮明だ。 頭に血が上ってひとつのことしか考えられなくなる時みたいな、あんな無鉄砲さがない。 勢い任せに飛び出していっても、 なにかしらの咄嗟の判断が余裕で間に合いそうな、そんな予感を齎してくれる。 セト (ただ人器がより馴染んだだけなんじゃないか?) レオン(人は脳で動く存在だろう?人器はその脳を100%活性化させることから始まる。     ようするに、それだけ脳の使用に慣れてきたということだろう) 中井出「え?そうなの?…………もしかして僕、脅威の記憶術とか得られたり!?     状況分析能力にも長けて、物凄い早口とかをズヴァーって!」 セト (ああ、はははっ、可能だろうけど人器使い終わったら忘れるだろうな) 中井出「…………」 うん…………そうだよね……。 活性化してるの、人器使ってる間だけだもんね……。 だが見よこの動体視力! なんか今なら弾丸の弾すら指で摘んで止められそう! それくらい、今回の人器解放は俺の体に影響を与えていた。 体が……ゆっくりとじっくりと、人器の器としての完成を見せ始めている。 にも係わらず、武具が無ければ子供も負けれる自信がある超ザコに大変身! 伊達マッスル……それが彼のあだ名である。 なんかそんな風に書かれそう。刃牙とかだと。 マッスルって言うほど、筋肉は目立ってないんだけど。 中井出「……よし」 深呼吸を終えて、ゆっくりと視線の先で散ってゆく爆煙を見た。 中井出(エンペラータイムは終了していない……敵さんは確実に無事だ) とはいえ飛び道具が使えん今、ここで出来る行動といえば突っ込むか様子を見るか。 敵が無事かどうかの様子見が大ッ嫌いな俺にとって、 ここで様子を見ているのは物凄く歯がゆいものです。 ああ!なんだ!じゃあ行動決まってるじゃないか! 中井出「GO!!」 レオン(あっ!こらっ!ここは様子) 中井出「断る!《どーん!》」 レオン(せめて最後まで喋らせろ馬鹿者め!) 漫画などである“や……やったか……?(ゴクリ……!)”とかって大嫌いです。 やったかどうかの不安が無くなるまで攻撃を仕掛けりゃあいいじゃないか! それともなにか!?生け捕りになさいとか上の命令でもきているのか!? 構わん無視なさい!前線で戦わず、命令だけするお偉いさんに! 死線を潜る貴様らの気持ちなど一切解らないのだから! 中井出「ぬおおおおおおおおおお……お…………ぉぉお……」 ズダー!と走っていったは良かった。 良かったんだが……煙が完全に消えたのち、 そこにある巨大な穴を見て、思わず足を止めてしまった。 こ、これはこれは……なんと大変なことに……。 シド 「げほっ!うぉっほっ!ム、ムウウ……!ヌシ!少しは周りのことも考えろ!」 中井出「やだ」 シド 「ムゴッ!?」 戦闘中に他人を気遣って全力が出せない奴、傷つく奴、死ぬ奴……ありゃあ馬鹿だぜ! そんな馬鹿が好きな僕も馬鹿だが! でも僕自身はやらないよ? 中井出「それで!?まだニートさんはアクセス終了出来ないの!?」 シド 「あれだけ暴れられて集中できると思っとるのかこのバカモンがーーーっ!!」 中井出「バッカモーーーン!!そんな状況にこそ全力を出せないでなにが脇役か!!     おどきなさい!貴様に脇役の底意地ってものを見せてくれる!」  バキベキムシムシドゲシャア!! レイナート「《ガンガンガン!》ジェーーン!!」 ニートさんに絡まっている機械群を無理矢理引き剥がし、ニートさんを玉座から蹴落とす。 階段を転がり落ちたけど知ったことじゃあありません。 代わりに僕がドーーーン!と、某空手部部長のように座る。 人間椅子じゃないのが残念です。 と、そんなことを平和的に思っていた次の瞬間にはもう機械群が僕を包み、 僕を核にでもするように情報を抜き取ろうとした。 なるほど、こうしてニートさんを捕らえてたから、 基本意識がニートさんだったんだね、ジェノサイドハートさん。 ……いや、肉体がニートさんだったからか?まあいいや。 中井出「グフフェハハハハハハッハッハッハ……!!     さあ読み取ってみるがいい繋がってみるがいい……!!それが……………………?     ……あのー、オモシロそうだから座ってみたけど、これってどう操作するの?」 シド 「たわけぇええーーーーーーーーっ!!!」 物凄い勢いで怒られました。 晦やノートン先生以外じゃあ、初めて“たわけ”呼ばわりされたかも。 と思ってたんだけど、機械が僕の皮膚に吸い付くように接触するや、 なにやらいろんなものが内部から吸い取られていくような感覚が…………おおなるほど! これに合わせて意識を集中すればいいのですね!? 中井出「ミクさん!」 ミク (ふわはっ、は、はいなんでしょうマスター!) 中井出「隠れてお菓子食べてたのを見つかったみたいな驚き方しないの!     バックアップをよろしくお願いします。     機械に意識を飛ばすなんて、僕初めてだし」 ミク (え?でも器詠の理力があれば───) 中井出「無機物にはやったためしがないの!確かに意思を持った機械なんだろうけど、     ほら、それってあのー……ギャルゲーとかのと違って、AIとかでしょ?     ギャルゲーとかのはなんていうかもはやAIとは言い切れないくらいにハキハキと     笑顔で答える可愛いロボ子さんがウヘヘヘヘ」 ミク (マスター!?正気に戻ってください!どこに行く気ですか!) 中井出「おおごめんなさい!やっぱり一人身になるとさびしいのかなぁ僕の心」 でももう貴様のことは悲しむまい麻衣香よ……。 僕は僕で強く生きてゆく。 カルナくん……妻を、じゃないな……幼馴染を、頼んだよ……。 声  『うん?一人身?……汝、ドリアードと婚約するんじゃなかったのか?』 中井出「エ?あ、あれ?ノートン先生?……婚約!?なにそれ!」 声  『本契約の際、自然と婚約すると言って指輪を薬指に嵌めただろう』 中井出「………………アーーーーーーッ!!!」 思い出した!確かにした! レベルEの馬鹿王子の真似して、コキャーンと光る大樹の円環を指に……! しかもその指輪は霊章融合により僕の体内へと消え、もはや……! 声  『さて。なにか言うことはあるか?』 中井出「ド、ドリアードさん!ぼ、僕とその……つ、つきあってください!!」  …………ドサ。 どっかでなにかが倒れるような音が聞こえた気がした。 声  『スピリットオブノート!またドリアードが気絶した!』 声  『なに!?またか!───……まあいい、いつものことだ』 声  『気絶し始めたのは本日だが』 声  『構わん。それで、中井出博光よ。その言葉に偽りはないか?』 中井出「…………えーと。それってニンフ全員と婚約しろとか、そんなんじゃないよね?」 声  『私としてはそれも面白そうでいいのだが』 中井出「や、それは断ります。僕は愛すのなら一人と決めているので」 や……それにしてもこの状況でいきなり告白する破目になろうとは…… は、春ですか?僕にまた春が?自然という名の春が? なんてことを、機械群が肌に貼り付いていることも忘れ、考えていた。
【Side───外】 ざわ……! 悠介 (お、おい!オズがハートをバラ撒きながら悶え始めたぞ!?) 彰利 (自分の肩を掻き抱いてウネウネ動いてる!) レイル(スゲェ!) 閏璃 (オズスゲェ!) 岡田 (オズスゲェキモい!) 藍田 (キモい!) いったい相手がなにを思い、あんな行動を取り出したのか……俺達には解る筈もなかった。 【Side───End】
中井出「解った……いいだろう、受けるぞ!その契約!!」 声  『既に気絶中だが』 中井出「ああうん……そうですね」 声  『ではな。戦闘中にすまなかったな』 中井出「───あ、ちょっと待った。     ……ドリアードさん、解ってるんだよね?俺が死ぬってこと」 声  『ああ、解っている。それでもだと言って聞かん』 中井出「うーむ……そこまで好かれる理由が思い当たらん。僕なにかした?」 声  『汝が特別なにかにどうした、というわけではないだろう。     ドリアードが汝を見て、どう思い、ここまで至ったのか。     人の言葉で言えば、恋愛など一方通行のものではないのだろう?     汝がドリアードになにかをすればドリアードが汝を好く。そういうわけではない』 中井出「むう。でも僕、正直とんでもなく情けないところしか晒してないよ?」 声  『ふふ?それをどう受け取るかなど、ドリアードの勝手だろう』 中井出「むっ……」 なんたること……常々思っていることを言われてしまった。 そうか、そうだよな。 なにをどう受け取るのかなんてのは個々の勝手だ。 自分がそう思ったからって押し付けるのはつまらないコト。 ……ていうかあの…… 声  『くふっ……くっく……!ふふふははははは……!!』 中井出「あのー……ノートン先生?なにをそんなに笑ってるの……?」 声  『ははははははは!!ふわはははははは!!』 聞いちゃいねぇ。 声  『なに。お前を言い負かすことが出来て純粋に嬉しいのだろう』 中井出「おや、オリジンさん」 声  『スピリットオブノートも変わったものだ。だが……悪くない。     人と係わるというのを極端に嫌っていたあいつからは考えられん破顔一笑だな』 中井出「むう」 言い負かしか……言われて初めて気づいたけど、なんだかちょっと悔しい気分だ。 だがもう考えまい。 僕は今、僕にしか出来ないことを果たそう。 ていうかもう果たしてはいるわけなのですが。 中井出「さあいくぜオズ……否!ジェノサイドクロウ!     もはや貴様の中枢は俺とミクが支配した!!     グエフェフェフェフェフェ……!!古代技術だかなんだか知らんが     内側を支配してしまえばこちらのものよグオッフォフォ……!!」 声  『お前……本当に黒いな』 中井出「ほっといてよもう!!」 そう、もう機械への侵入は果たした。 中枢管理役だったT260Gを弱らせたのが効いたんだろう。 どうやら次元衛星砲でT260G自体は消滅したらしく、 だがこの空間自体が俺の敵、 みたいなことになっていたためにエンペラータイムは消えなかっただけのことらしい。 それを機械から読み取ったミクが僕に教えてくれて、あとはもう楽だった。 セキュリティの無いパソコンにウィルスがもぐりこむが如く、 僕はミクの意思とともに機械の核を掌握した。 さあ行こうジェノサイドクロウ!俺達の力を見せてやるんだ! ……主に外で戦ってるやつらに! 【ケース777:カオス/最初は仲間!その後に裏切り!その名は……メガネボス!】 ビコーン! オズ 『ボンゲェエエアアアアーーーーーーッ!!!』 カオス『うおおぉっ!!?』 悶えていたオズの目が急に光った!なにごと!?と思ったら、 突然その場に現れたかのように出現し、地面に倒れる伯。 オズ?『ゴエフェハハハハハハ……!!     アビスへようこそ……!これがファンタズマだ……!     俺はついにこいつと一体に………………一体?………………洗脳に成功した……!     もう……誰も俺を止めることは出来るだろうけど出来ないと言っておく……!     ……………………死ね!!』 カオス『………』 ああ……うん、どうしよう。 悠黄奈の記憶からすると、こいつはどうやら魔王確定らしいのだが。 ていうかな、死ねの部分だけどうしてか思いっきり感情が篭っていた気がするんだが? 魔王 『あ、ちなみにレイナートはもう手の施しようがないほどにメカだから、     中に残ってもらうね?一緒に……行きましょう?って誘ったら頷いてくれたし』 シド 「ぬ、う……レイナート、ヌシは……」 魔王 『さあ!勝負だ勇者どもよ!     協力してたのに、兵器を手に入れた途端に裏切るこの快感……!     ああ!物凄くB級ザコ中ボスっぽくてステキ!!シビレル!     でもそういうことするヤツってなんかメガネかけてる印象あるよね。     ……………………あれ?……誰?』 バァッ!と手を払うようにして突き出した魔王だったが、俺を見てきょとんとする。 悠黄奈 (恐らく……超矮小化でジェノサイドハートの体内に残り、      内側から核を掌握、洗脳に成功したんだと思います。      ……気をつけてください。      オモチャを手に入れると、それで全力で遊ぶような子供全開の人ですから) 意思総員(傍迷惑なヤツだなオイ!!) 悠黄奈 (ですが…………いえ。精一杯戦いましょうね。      きっとこれが……あの人なりの訣別の戦いなのでしょうから) 悠介  (悠黄奈?最後が聞こえなかったんだが───) 悠黄奈 (いいえ、なんでも。……頑張りましょう?      せめて、彼が悪を貫き続けられるくらい、全力で) 悠黄奈の言葉に首を傾げるが、そんなことも言ってられない。 魔王 『えーとアンチウィルスは……うおっ!?ねぇ!……ち、ちくしょー!』 こんな状況は想定外だが、 どのみち勝てなければ大変なことになるであろう考えは変わらない。 だったらもうどっちが本当の敵だったのかなんて関係ない。 オズごと、魔王を叩き斬る……それだけだ! Next Menu back