───冒険の書311/勇気をお出し……───
【ケース778:カオス(再)/愛すべき馬鹿野郎】 ズドドドドドドドッパァアアンッ!!! シド 「ぐぉうはぁっ!?《ビッタァンッ!》っ……は……!」 カオス『伯!?』 伯がブロリー並みのラリアットをされて、 遙か先のマシンフィールドの見えない壁へと衝突した。 魔王 『さあ……来るがいい……。チャンスをォオあたえてやろう……』 一方で魔王は腕を下げた状態のまま指だけを折り、チョイチョイとこちらを挑発してくる。 カオス『馬鹿にしやがって───!』 疾駆する。 距離は簡単に詰まり、拳を突き出し殴りにかかったがガボォン! カオス『うおっ!?』 魔王 『ひっかかったぁ……っ!!』 何故か突然の浮遊感。 そののちに体がマシンフィールドに肩ほど埋まり、 すぐに出ようとするが……厄介なことに穴の中に粘着性に優れたなにかが……!! 魔王 『まあま落ち着きなさい。あのね、もう戦いは終わったの。解る?』 カオス『解るかっ!魔王であるお前がどうやってオズを乗っ取ったのかなんて知らない!     知らないがこうして敵意剥き出しで対立したからには!』 魔王 『失礼な!僕が敵意を向けたのは伯だけさ!     ……ごらん、ドッピオが入ったブチャラティのように痙攣してる』 カオス『そういう問題じゃなくて《バサバサボサ……!!》うぶわっ!?     ちょっ……なにすっ……!なぁっ!?』 魔王が俺の肩に土を乗せてゆく。 一瞬目に土が入りそうだったから目を瞑り、 開けた瞬間───空は蒼空から夜の空へと変わっていた。 魔王 『バーチャルシフトを解除した。もうここは仮想空間じゃないのさ。     さて……と。おーいそこのミクさん』 ミク 『?』 と、ここで魔王はミクに声をかけて、チョイチョイと手招きをする。 そして……巨大な黒の斧を取り出してみせるとミクに渡し、 魔王 『好きにしろ』 首だけ出ている俺のまさに首の横へとセットイン───って! カオス『ま、待てやめろ!こんな北斗チックなことはぁあああっ!!!』 魔王 『悪いね、機械文明とレゾンデートル暦が終わりを迎えた今、     わざわざ貴様らと戦う理由がないのだ。     伯の野郎は“ここで死のうと思う”とかほざいたからぶちかましただけだし』 言うや、魔王は伯のところまで歩くと彼を持ち上げ、肩に乗せて歩きだした。 魔王 『ではさらばだ勇者たちよ。この博光はこれよりこの世界を支配する。     それが嫌なら強くなるがいい……この博光を明確な悪とし、討伐しに来るがいい!     それまでその命……預けておこう』 カオス『っ……こ、んのっ……偉そうに言ってんじゃぁあっ……ねぇええええっ!!』  バゴォッ!メゴモゴォッ!! カオス『うぉらぁああああああっ!!!』 オリバ式の腕力に任せ、無理矢理トラップから這い出る。 もともと仮想空間を利用して作ったトラップだったのか、 景色が現実風景に戻った時には粘着性はなくなっていた。 そうして対峙するに至り─── 閏璃 (……弦月!俺とレイルと悠黄奈さんを切り分けてくれ!俺に考えがある!) 彰利 (オ?……オウヨ!分散して戦おうってハラじゃね!?OK!) 彰利が月切力を使い、閏璃とレイルと悠黄奈を解放。 早速対峙し直し、考えとやらを訊ねる。 すると閏璃たちはコクリと頷くとなんのためらいもなく魔王へと疾駆する! カオス『おいっ!?まっ───まさか囮に!?』 閏璃 「作戦内容を伝える!…………答えは───馬鹿めだ!!」 カオス『なぁっ!?』  デゲデデーーン!《閏璃、レイル、悠黄奈、ミクが裏切った!!》 カオス『ミクまでもかよ!おいちょっ……待てぇええええっ!!!』 悠黄奈「判断を誤りましたね!わたしたちはもともと、     戦わなければいけなかったから共闘しただけ!」 レイル「お前らに肩入れする理由なんてありはしないのさ!」 閏璃 「まっ───まさか囮に!?《ハラハラ……!》」 カオス『《カァアアッ……!!》ぐおぉおおおおおおこの野郎ォオオオオオオッ!!!』 そりゃ確かにそういう条件で戦ってたわけだが……! ていうか閏璃!ハラハラ顔で真似するな!物凄く悔しい!! 魔王 『悔しいか?ン?悔しいだろォオオ……?     仲間だと思ってたヤツに裏切られることほど悔しいことはないからなぁあ……!』 カオス『くぐっ……!こんにゃろっ……!』 魔王 『これで解っただろう。この乱世、一歩先でどんなことが起こるかなど解らぬわ。     故に強くなれ。貴様らの今の実力では未来を目指すことなどとてもとても……』 カオス『言わせておけばっ───!《ダンッ!》だぁああああああっ!!!』 前へと突撃する跳躍。 地面とほぼ平行に突撃し、その勢いのままにゴギィンッ!!  キピィンッ♪《渾身クリティカル!魔王に0ダメージ!》 カオス『っ……!?ん、な……!攻、撃が……ぶち当たって…………』 魔王 『…………《にこり》』 カオス『───!《ぞくり───!》』 やばい! なにがヤバイのか解らないが、直感的に受け止められるくらいにヤバ─── 魔王 『ブッ飛べカラミティイイイイイイイッ!!!!』 振るわれる攻撃。 それは今の俺なら後ろへの跳躍で避けられるものの筈だった。 ……そう、普通の剣ならば。 だがこいつの剣の馬鹿げたデカさと長さといったらなんだ。 普通なら避けられた筈の刃が俺の右足に減り込む……ことはせず、 触れた瞬間に切れていた。 肌に包丁を押し当てても切れないが、これは違う。 触れたら切れる……それほどの切れ味を以って、 俺の右足を、腿の先から切り飛ば─── 彰利 (やべぇっ!月切力!!)  バジュウンッ!!ズバァンッ!! 彰利 「っ……ぐあぁああああっ!!!」 悠介 「彰利!」 剣が足を確実に斬るものだと判断した瞬間、彰利は全員を月切力で切り離した。 融合していたやつはそれぞれ地面に着地するが、 右足を斬り飛ばされた彰利だけはそうはいかない。 悠介 「くっ……傷を癒す霧が出ます!」 ルナ 「このっ……!なんなのよぉっ!!」 悠介 「!?ルナ!よせぇっ!!」 突然の状況に怒りが先に走ったのか。 ルナが魔王に向かって飛んでゆき、鎌を振るう。 だがそれもやはり通用せず───掌で受け止めたそれを、 魔王は軽々とルナごと持ち上げ…… ルナ 「やっ!?ちょ……離《ドボォッホォン!!》けひゅうっ!?」 手を離した瞬間に振り被り、あろうことかルナを殴り飛ばして遠くの地面へと叩きつけた。 悠介 「な…………、っ……」 岡田 「てめぇっ……!女だぞ!」 魔王 『……?見れば解る』 岡田 「───イカレてんのかてめぇええええええっ!!!」 ……だめだ……! 怒りで、感情論でどうにかなるような相手じゃない……! やめろ岡田……!悔しいが今は───今は勝てない……!!  ドゴバガァンッ!! 岡田 「げぎゃうっ!!」 向かっていった岡田は早撃ちを仕掛けるも、 その速度よりも速く背後に回り込まれ、拳一発で地面に叩きつけられ、気絶した。 続くゼノも、セレスも、そこに例外などなく…… 魔王 『理解しろ。これが貴様らの実力の程度だ。なんだこれは、話にもならん。     傷一つつけられないとは笑わせる』 悠介 「くっ……!」 気づけばまともに動ける奴なんて俺だけで…… 魔王は俺を見下すように立ち、小さく笑っているようだった。 魔王 『もう一度言うぞ。死に物狂いで強くなれ。     たった一人でもこの博光を倒せるほど強くだ。     今の貴様らではどれだけ勇敢に立ち上がろうが、     どの戦いにおいても無駄死にするのみだ』 悠介 「なんだと……!?」 魔王 『これをくれてやる……餞別だ』 言うや、魔王は俺の目の前に巨大な虹色の貝殻を置いた。 …………これは───ズキィッ! 悠介 「いぐぅっ……つ……!?」 な、なんだ……? 頭が急に痛く……! ……そうだ……虹色の貝殻……。 太陽石と合成させて“虹”を作るって……誰かと話して……。 ラグをラグだけとして見るんじゃなくて、もっと強化していくんだって、誰かと……。 魔王 『ジェノサイドハートの体内に保管してあったものだ。せいぜい大切に使うがいい』 悠介 「……なんの真似だ……どうしてこんなことを……」 魔王 『強くなれと言った筈だ。今の貴様らでは暇の潰し役にもなりはしない。     故にだ。…………強くなれ。もっと、もっと強く……。     そして強くなった時、訪れるがいい。     我はこのフェルダールの何処かで貴様らを待つとしよう』 ザッ……! 魔王が去ってゆく。 そのあとを、閏璃とレイルと悠黄奈とミクが追ってゆき───…… やがて、俺達は戦いが終わったという感覚も味わえないままに、力無くその場で項垂れた。 …………俺達は、無力だ、と。 悠介 「………」 虹色の貝殻に触れる。 夜だというのに七色に輝くそれは、見る者の心を奪うかのように、 あんなことのあとだと言うのに暖かな溜め息を漏らさせた。 悠介 「強く……」 強くならなきゃいけない。 魔王は全然、てんで本気じゃあなかった。 それなのに攻撃が弾かれる始末だ。 機械を操ってるからとか、そんな次元の問題じゃない。 あの時、既に魔王は自分の体で俺達の前に立っていた。 悠介 「……強く……なる。なろう、じゃない。なるんだ」 彰利 「ああ……ここまでブチノメされりゃあな……」 迷うことなんてなにもない。 俺達は俺達に出来るあらゆる方法で、上を目指そう。 ……けど、今はもう限界。 睡眠無しでの大暴れはキツすぎた。 ………………うん?……なんで睡眠無しだったんだろうか。 ……だめだな、思い出せない。 そんなことを思いながら、やがて俺達は夜の空の下、眠りに着いた。 風邪でも引かなきゃいいが。 【ケース779:中井出博光/愛】 エトノワール跡地から既に遠く離れた場所で、 ノヴァルシオをミク(融合)に託し、 中井出「ぶっはぁああああああああっ!!!ううぉおおあサッブウウウウッ!!!     ギャアアアサブイボが!サブイボが!鳥肌がぁああああっ!!     なにあの“俺強ぇんだぜ”チックな喋り方!自分で言ってて寒気がする!!     ダメ!俺ダメああいうの!おふざけでしか使いたくない!     使いたくないのに使った所為で鳥肌がっ……寒気がっ……!     ひぃいいなにあの強い自分に酔ってますYな言葉!!     ぎゃああああああああああああああああっ!!頭から消えてぇええええっ!!!     消え《ビキッ》あらっ!?あ、あらやだちょっと……!     ここで筋肉痛なんてイヤ《ズキーーーン!!》ギャオアーーーーーーッ!!!」 現在激烈筋肉痛な男……こんばんわ、中井出博光です。 霊章が上手く機能してくれないから闇蝕することが出来ず、 ノヴァルシオは今、ミク(融合)の手の上に乗っかってる状態だ。 あれだけデカかった核がこんな小さな飴玉みたいになるんだもんな、 不思議なものです。ええ不思議。 うん、こんな風にわざと意識をずらさないと耐えられんくらい痛い。 閏璃 「すげぇ、ここまで強い自分に拒絶反応持つヤツ初めて見た」 レイル「普通男って、頭の中じゃあ最強の自分とか描いてるもんじゃないか?」 悠黄奈「特殊ですから、博光さんは」 閏璃 「だが安心しろ提督!     こんなこともあろうかと、まえに弦月に頼んで……っと、これこれ。     ほい!《どすんっ!》ロビンダイナスティ謹製!ロビン印のプロテイン!!」 中井出「……!!《ズキズキガタガタ……!!》」 レイル「物凄く絶望色の表情をしだしたが」 閏璃 「でもなぁ、筋肉痛っていったら良質蛋白質をとらないと。     筋肉鍛錬後に、一回14キロずつ飲んでくれってさ。     晦の協力もあって、一生尽きないプロテインボトルだ」 レイル「……泣き出したが」 閏璃 「嬉し泣きだ」 レイル「嬉し泣きか」 悠黄奈「言ったもの勝ちですね、これって……」 その後わたしは筋肉痛で動けないのをいいことに、 14キロのプロテインを流し飲みさせられた。 いろいろと開花するものもあった所為か、今回の筋肉痛はさらにひどく。 あまりの不味さに吐き出そうとしても、 喉の筋肉とかも引きつった状態で、吐き出せずに流し込まれるしかなかった。 …………。 そんなことがあってしばらく。 シド 「ふぅ……うむ……。まったく、無茶をしてくれる。     人の死地を勝手に奪うとは、どういう神経か」 中井出「フフフ伯よ……貴様が死ぬのはノヴァルシオではない……!     貴様の死に場所は……デスゲイズとの戦場だ!!」 ミク 『痛みに涙しながら言われても』 中井出「ほっといてよもう!!《ズキーン!》ヌファラァーーーーーッ!!!」 閏璃 「そんな、キン肉マンキャラが言ってそうで言ってなさそうな叫び方しないでも」 中井出「好きで言ったんじゃないやい……!《ズキキキキキ……!!》」 うう、涙ながらにしか語れねぇ。 この痛み、アンナの痛み……! とりあえずなんの罪もないギルバートを恨むことで、 僕はぐったりと横になりっぱなしになっていた。 横、といっても既に解放してある自然要塞の中でだが。 中井出「ところでミクさん(融合)や?貴様はこれからどうするの?」 ミク 『歌を歌います。どこか賑やかなところか、はたまた人目につかないところか。     あなたには既に専属のミクが居るので、一緒にというのは無いです』 中井出「そか。じゃあ……ジャポンなんかどうだろうか。     きっと素晴らしき和歌が貴様を待っている」 ミク 『ジャポン……データには一応ありますが、全貌まではありません。     なるほど、未知に踏み出してみるのもいいかもしれないです。     ……では、わたしはジャポンに向かうとします。あなた方は?』 中井出「世界を征服する魔王の真似をします」 閏璃 「それを手伝いつつレベルを上げていきます」 レイル「背後に同じ……なんでお前俺の後ろで喋ってるんだ?」 閏璃 「仲間の真似事。     ほら、RPGでやたらとキャラが後ろをついて回る時代、あっただろ?」 レイル「まあ……あったな」 悠黄奈「実際にやり続けたらただのストーカー行為ですよ」 閏璃 「だよね」 あの頃のRPGはいつだって仲間が後ろを歩いていた。 ああ素晴らしきかな青春時代。 そんなことを思いつつ、ペコリとお辞儀して歩いてゆくミクを見送った。 中井出「さてと……よし。tell:ナギー、と…………     あ、もしもしナギー?うん僕博光」 声  『ヒロミツ!?おおヒロミツー!     退屈してたのじゃー!は、話相手になってたもー!』 中井出「だめだ」 総員 『うわひっでぇ!!』 レイル「こっ……断るにしたってもうちょっと言い方ってもんが……!」 閏璃 「物凄い即答だったな……思わず叫んでしまったZE……!」 声  『うぅ……ヒロミツぅ……ヒロミツはわしのことが嫌いになったのか……?』 中井出「否!それよりも重要なことがあったからtellしたまでよ!」 声  『《ぐさっ!》ふぐっ!……わ、わしとの会話よりも重要な……     ふぐっ……えぅうう……!』 総員 『なっ……泣いたぁあーーーーーーっ!!』 閏璃 「ば、馬鹿なぁああっ!!     あの強がりプリンセスナーギーズエンジェルとして名を馳せたナギッ子が!!」 悠黄奈「て、天変地異の前触れですか!?すぐに祈祷を!!」 レイル「お、おおおう……っ!」 ドコトコトコトンッ♪ドコトコトコトンッ♪ 閏璃 「カシガミ様に祈りを捧げろーーーーーっ!!!」 ああ……なんかあっという間に鎮魂祭みたいなのが始まってしまった。 まるで漠然とした不安感を前にした人々のようだ。 どこから持ってきたんだ?あの太鼓……ってそうか、 夢見る一日祭の時に使ってたアイルーたちの太鼓か。 中井出「見えるかナギー!貴様が泣き出すから民たちが本能的に祈祷を始めてしまった!」 声  『よ……よく解らんがっ……ひぐっ……泣いてなどおらぬのじゃ……!』 中井出「いや、三千院節はいいから。     ……よいかナギー、一回しか言わないからよ〜く聞くのだ」 声  『なんなのじゃ〜……!どうせわしなぞヒロミツにとっては要らない───』 中井出「今エーテルアロワノンに居るから、自然の気配辿ってここに戻っておいで。     話なぞ───それからいくらでも出来るわ!」 声  『存在……なの、……じゃ……?…………ヒロミツ?』 中井出「え?なに?」 声  『その……わ、わしは……ヒロミツの傍に居てよいのかの?     い、いいぃい……要らない存在では……』 中井出「バカモン!誰がいつそんなことを言いましたか!見くびらんでもらおう!     この博光!思ったことは本人に直接言う修羅よ!     必要じゃなくなったら堂々と宣言してみせるわ!     故に来いナギー!!新たなる冒険が───貴様を待っている!!」 声  『…………ぐしっ…………うぁああああんヒロミツーーーーーーーッ!!!』  ブツドゴズキーーーーーーン!! 中井出「ほんぎゃああーーーーーーーっ!!!」 tellが切れるや、筋肉痛の我がボディに衝撃!しかも背中!! 横向きで寝転がってた僕の、見事なまでの背中の中心にタックルを決めてくれたその者! 名をナギー……のちの朝青龍である。じゃなくて! あ、話は変わるけど魔人ブウって朝青龍に似てるよね!……でもなくて! ナギー『ヒロミツ!ヒロミツー!うぁあああん退屈だったのじゃーーーーっ!!』 中井出「さ、寂しかったと言わずに退屈と言うその精神……!実に天晴れである!!」 レイル「多少でも感動の場面だと思った俺が馬鹿だった」 中井出「ははは、僕らの間で感動など。冗談はよしてくださいよ」 レイル「……《ごくり……》……感動全否定しやがった……」 閏璃 「大きいのか小さいのか読めない人だなぁ提督さんは。……で、種は?」 中井出「種って……まあ種だけどさ。ツァイゲディヒ!ナーヴェル!」 まずはナーヴェルさんを召喚!……ついでにシャモンも召喚して準備OK! 中井出「tell:シード……と。……あ、もしもし?うん僕博光」 声  『ち、父上!今……今何処に!?』 中井出「うむ!細かい話はあとだ!シードよ……世界、征服するぜ?」 声  『《ぞわ……!》……〜〜〜〜父上ぇえっ!ついに!ついにその気に!?     解りました父上!このシード、必ずや父上のお役に立つことをここに宣言します!     ともに進みましょう!僕たちのロード……!!』 中井出「うむ!ではまずはナーヴェルブラングの“死の気配”を辿り、転移せよ!     そこに───全てが待っている!」 声  『はい!父上!』 ナーヴェルブラングを苦手としているのにこの即答……! よほどに浮かれていると見えるわ。 それから程なくしてシードが到着。 僕は大激痛に苦しみながらも揃った我が子二人を抱き締め、思い切り撫で回した。 思わず涙も出てしまって、 シードとナギーがわしのために泣いて僕のために泣いて……とか言って感極まっていた。 ……うん、ごめん、これただ体が痛いからなんだ。 ……。 それからまたしばらく。 ようやく痛みが治まってきた頃、 大盛りたこ焼きそばモードで猫の里に戻ってきていた僕らは、 再び天使族の幻惑の力で安全地帯に居た。 空を飛んでもよかったんだが、 伯にきっぱり“やめておけ”と言われたので、こんな大盛りたこ焼きそば。 デスゲイズは確かにデスゲイズ避けを嫌がりはするが、 決して襲ってこないわけじゃないというのだ。 ともあれ、もはや辺りは静まり返り、 僕が寝かされていた寝室の葉っぱベッドでは、両脇にナギーとシードが寝ている。 しっかりと腕を掴まれているために動くことが出来ん。 中井出「長き一日よ……別了(ビエラ)」 静かな空間、静かな場所にその言葉を届けた。 時々トカトカと何かが走る音が聞こえる。 多分、猫の誰かがなにかをやっているんだろう。 でも、それもそう気になるものでもない。 俺はゆっくりと目を閉じて─── 声  『……寝たらだめですよ』 中井出「誰!?」 聞こえた声に飛び起き───れなかった。 あ、あらちょっと!?ナギーさん!?シードさん!? そんなに強く掴まれてたら僕動けな───アレーーーーッ!! ドリアード『夜分遅くに失礼します。わたしです、初代ドリアードです』 中井出  「き、貴様ァア……何故ここにっ!」 ドリアード『はい。さっぱり言ってしまうと契約しに来ました』 中井出  「契───……はい?」 ドリアード『契約です』 中井出  「えーとキミは……ラファティくんだったね?」 ドリアード『混乱しないでください。わたしは、あなたと契約したいと言っているんです』 中井出  「本音は?」 ドリアード『うまティーの味が忘れられな自然のためです《キリッ!》』 こ、こいつ……クズだ……! そんなクズっぷりが気に入ったので、契約したのは言うまでもない。 もちろん名前は変更の方向で。 中井出「貴様に愛称を与える!…………アンドリューカーネギー!略してネギー!」 ネギー『お断りですね』 中井出「ドリュアス!」 ドリュ『ダメです』 中井出「ダメなの!?断るとかじゃなくて!?」 ドリュ『ドリュアス=フローラム=ドリアード。それがわたしの真名です。     ……光栄に思ってください、本名を明かしたのはあなたが初めてです』 中井出「ああうん断る。で、愛称だけど《キュッ》おや?───ンッガッゴッゴ!!」 なんと!ジローラモさんが僕の首を絞めてきた! どうやら即答で断ったのが勘に障ったらしい!なんて短気!! 中井出「うごごげげげななななにをなさるの……!?」 ドリュ『本名を呼ぶことを許可していると……!そう言っているのですが……!?』 中井出「バカモン!僕は愛称がつけたいのだ!本名など知りません!」 ドリュ『なっ……!なんて自分勝手な……!』 中井出「いえあの……!気に入らないからって首絞めるのも物凄く自分勝手な気が……!」 この精霊さん、自然の精霊にしては物凄く自分勝手だ! いや、それはナギーもか? じゃあこの世界の然の精霊はそういう者の集まりなのかもしれぬ。 自然を慈しみつつ自分勝手…… 自然を大事にしているからこそ然の精霊である自分も……ああ!そういうことか! 中井出「ナルシストめ!《ベパァン!》ピグマ!」 ドリュ『誰がナルシストですか誰が……!口を慎みなさい!     わたしは一代目然の精霊ドリアード!』 中井出「のちの朝青龍であ───」 ギャヒィイイーーーーーーーーーー……………… ……。 …………。 ドリュ『忘れないでくださいましね?ここが自然に溢れた場所だということと、     わたしが然の精霊だということを』 中井出「忘れたことなどないわ」 ギャヒィという悲鳴から数分。 僕の周りには鋭く尖った木々や葉が俺に向けられていて、 迂闊なことを喋ろうものならザックリひょうたん島。 中井出「じゃあもうなんかもうあれだなもう。ローラでいいね」 ローラ『フローラムのローラですか』 中井出「………」 ホントはローランド=イスタスの略称でそうつけただけだけど。 グヘヘヘヘ、気づかれなけりゃあいいのよ気づかれなけりゃあ……! ローラ『…………』 イスタスはすぅ……と息を吸うようにして目を閉じ、 胸に手を当てて反芻しているようだった。 やがてそれが終わると目を開き、僕の目を見ながら言うのです。 ローラ『悪くありません。ローラと呼ぶことを許可しましょう』 中井出「よろしくイスタス」 ローラ『…………あの。ローラと』 中井出「うん。ローランド=イスタス。略してローラだ」 ローラ『…………待ちなさい。フローラムのローラだと───』 中井出「僕なんにも言ってなぁあ〜〜〜いもぉ〜〜〜ぅん!!」 ローラ『……《ひくり》』 中井出「あ」 その夜、僕は彼女が飽きるまでイスタス様おんみずからの拳で殴られ続けました。 そうして薄れゆく景色の中(VITマックスなので痛くない。むしろ眠い)、 そういえばシャルを回収するのを忘れてたことに気づき、やべぇええ……と頭を抱えた。 ……殴られながら。 どうしよう。今や彼女はモンスターユニオンの中。 助けに行くべきかどうするべきか………… 女を助けに行って窮地に陥るパターンの映画が大嫌いなので、無視することにした。 中井出「わっはははははは!!なっちゃったものはしかたないちょーーーっ!!」 ……やっぱり殴られながら。 ───……。 ……。 おはようございます皆様。朝ですよ。 どこかから聞こえてくる、ミクのおはよう朝だよが目覚まし時計のようさ。 中井出「んむ……ん、くぅうあぁあああ〜〜〜〜っ…………はぁっ……!」 よ〜〜〜〜く伸びをして気だるさを払拭! 未だくっついているナギーとシードを厳しく起こし、まずは点呼。 ナギー『1!』 シード『2!A班、異常ありません!!』 中井出「うむ!」 素直な子供たちが大好きです。 思わず頭を撫でまくり、朝から心をぽっかぽかにしました。 中井出「では朝食だ!」 ナギー『ヒロミツの作ったものが食べたいのじゃー!』 シード『父上!僕は以前作ってもらったうどんが……!』 ナギー『朝からうどんはきついのじゃ!     ヒロミツヒロミツ、いたわりぞーすいを作ってたもれ?』 シード『なにを言う!朝こそしっかりと食べるときだろう!父上!うどんを!』 中井出「うむ!ではまずうどんを軽く食し、その汁で雑炊を作る!ファイクミー!」 二人 『《ザザァッ!》サーイェッサー!!』 もう提督じゃない僕だけど、この二人を前にすると自然とこうしてしまう僕。 ううん、なんだかむず痒い感じ。 ともあれ朝だ! 猫たちももう起きて、 料理を作ったりレィディォゥ体操(ミクの歌に合わせて)をしていたりする。 賑やかだ……これに混ざらん手はないでしょう! 中井出「えー皆さん!……あ、作業しながらでいいです、ごめんなさい。     えー皆さん!先日、ついに機械皇国エトノワールが崩れ去りました!     10年前に始まってしまったレゾンデートルの歴史!いかがお過ごしだったかは、     自然が極端に潰えたあの景色を思い浮かべれば大体想像がつくものです!     だが!今ここにレゾンデートル暦は滅んだ!僕らは帰ってきたのだ!     この素晴らしき“フェルダール”の歴史に!!!」 亜人族『ハワァアアアーーーーーーーッ!!!!』 中井出「今日は楽しみましょう!今日一日戦いのことなど忘れ、思うさまに!     さあミク!賑やかな歌を頼むよ!」 ミク 『はいっマスター!』 にこにこ笑顔で頷いて、歌い始めるミクさん。 うん、いい朝だ。本当にいい朝だ。 賑やかっていいなぁ……“帰ってきた”って気に───…………あ。 ……そっか。俺、もう地界にも空界にも帰る場所、ないんだっけ……。 はは、そっか…………そっか。 いつの間にか、ここが俺の帰る場所になってたんだ。 おかしな話だ。 ゲーム感覚で旅をしてきたこの世界自体が、自分の居場所になるだなんて。 レイル「おーい提督さーん!     ネコット農場の爆弾採掘猫が気絶したまま意識戻さないんだがー!」 中井出「何故いきなりそんなことに!?」 ちょっぴりの悲しみが突然、その言葉によって裸足で逃げてった。 ようこそシリアスブレイク! 閏璃 「ミスリルが欲しくて頼んだらこんな有様だー!」 悠黄奈「傷はないから大丈夫ですー!音にびっくりして気絶しただけみたいなのでー!」 中井出「そ、そうかー!爆弾はなに使ったんだー!?」 閏璃 「対巨龍爆弾」 中井出「死ぬよそれ!!」 ちなみに。 大タル爆弾が攻撃力80で、大タル爆弾Gが150。 対巨龍爆弾においては攻撃力400である。 閏璃 「大丈夫大丈夫。ちゃんと爆弾は採掘場の奥に置いてきて爆発させたんだ。     ただ爆風があんまりにもすごくて、入り口前で待機してたこいつが……ね?」 中井出「………」 ぐったりとノビてるルンナの頭をゴリゴリと撫でた。 すると、ンンゴゴゴゴゴゴニァアアア……!と、 まるで蹴られたアイルーのように前足を天に延ばし……コテッとして、動かなくなった。 ……芸が細かい。 芸なのかどうかは別にして。 中井出 「よし。じゃあ食材はネコット農場から調達するとして。うどん粉あったっけ?」 イッケク『お任せニャ!キッチンアイルーの名に恥じることはしないニャ!      今日も挽きたてのうどん粉がたっぷりニャ!』 中井出 「……どこで仕入れてるっていったっけ?」 イッケク『?ネコット農場だニャ。ジャポンで貰った小麦を大切に育てて、      立派な粉にしてみせたのがこれニャ』 ゴウィッニャァォ、と奇妙な鳴き声を出しながら、 腰にぶらさげたポーチから小さな袋に入った粉を両前足で差し出すイッケク。 それを受け取って味を見てみると……おお、確かに。 イッケク『うどんを作るならオススメニャ』 中井出 「だな。よし、あとで分けてくれ」 イッケク『お任せニャ!』 うどんを作るのが楽しみだ! でもその前にと。 中井出「ナギー!シード!」 二人 『《ズシャア!》ここに』 呼びかけると、すぐに僕の少し後ろへと跪いた姿で現れる二人。 どこの刺客なんでしょうか彼と彼女は。 中井出「メシの前に材料の調達だ!ネコット農場へGO!」 ナギー『おお!自分の分は自分で……じゃな!?』 シード『任せてください!こう見えても僕は!山菜取りの達人!』 閏璃 「俺もいくぜ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」 レイル「どおれ今朝も早よから大暴れしてやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」 悠黄奈「元気ですねぇみなさん……わたしはどうも朝は弱くて……くわひゅひゅひゅ……」 中井出「ブツの採取は少年の冒険さ!いこうぜみんな!」 総員 『ハワァアーーーーーーーーッ!!!』 そうして駆け出した。 これからも続いてゆくであろう日常の朝に。 さあ行こう……僕らの旅は……始まったばかりなのだから───! 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