───冒険の書314/策とは裏を掻くためにある───
【ケース783:穂岸遥一郎/研究者】 ───キュヴィィイイイ…… 遥一郎「四番接続……五番接続……術式解除」 光の粒子が、聖域の中心部で飛び交う。 ここは魔物たちの聖地ボ・タ。 エルメテウスと呼ばれている聖域だ。 敵というものが魔王とジュノーンに固定されつつある今、 人間や魔物、獣人族が争う理由は特になく。 同盟を結んでからは、 ただひたすらにエルメテウスの管理とこの場での魔法訓練をさせてもらっている。 ノア 「マスター?」 遥一郎「ああ、完成した。これでデスゲイズの索敵能力から逃れられる筈だ」 俺がおこなっていた研究は、この浮遊聖域をデスゲイズの索敵能力から除外させること。 弦月や晦が持ち帰ったデスゲイズ除けの能力的なものを晦に分析してもらい、 それを魔法の感覚として覚えさせてもらった。 あとはそれを上手く膨らませ、色濃くすれば完成。 ……といっても簡単なものでもなく、完成に数ヶ月をかけてしまった。 遥一郎「そっちはどうだ?」 ノア 「相変わらずです。食事はしますが、友好的ではありません」 遥一郎「そっか」 エトノワールの姫様とミク=ツェルストクラングはどうにも非協力的だ。 弦月が“捕虜として捕らえたぜ〜〜〜〜っ!”と自慢してた日から数ヶ月、 今もここに居るわけだが……エトノワールでの話を聞いた時は正直頭が痛かったが、 助けにくるだろうと踏んでの人質も、相手が来ないんじゃあ意味がない。 人質って……どっちが悪なんだろうな、まったく。 雪音 「ホギッちゃんホギッちゃん、完成したなら澄ちゃん探しに行こ澄ちゃん!」 遥一郎「解ってる。ていうか何処から沸いて出たお前」 雪音 「え?さっきからそこで花占いしてたけど。見つかる、見つからない、って」 遥一郎「……なるほど。花たちが無残に引きちぎられているな」 雪音 「言い方が毒々しいよぅホギッちゃん!」 蒼木は依然行方不明になったままだ。 話を纏めてみると、攫ったのは獣人族なんじゃないかって話になったんだが、 獣人族である原中の連中はそんなものは知らないと言った。 蒼木はいったい何に攫われ、今どうしているのか。 ここに集まった同盟軍は、なにも知らなかった。 だから見つけてやらなきゃいけない。 幽閉されているんだとしたら尚更だ。 tellはもう何度も試したが、通じることはなかった。 遥一郎「よし。じゃあまず何処に行こうか」 雪音 「このまま魔王のところに乗り込もー!」 遥一郎「死ぬわ!却下だ却下!」 雪音 「うぬー。じゃあさじゃあさ、西の大陸にでも行ってみない?     ほら、tellにも圏外とかあるかもしれないし」 遥一郎「…………能天気でいいな、お前」 雪音 「のーてんき言うなー!!」 けど、悪くない。 そう思った俺は、魔力を解放させながら魔物たちに出発の指示を出した。 移動にはルナ=フラットゼファーの協力が必要だが、 晦が弦月と二人で旅をしたいと言いだしてからはずっとこのエルメテウスに居る。 …………しばらくして、魔物の言伝が届いたんだろう。 エルメテウスは移動を開始して、最初はゆっくりと、少しずつ速く飛行した。 ノア 「《ジッ》……はい、わたしです。……はい、はい。     ……?そうですか。ええ、解りました。それでは。     マスター、レイチェル様からのtellです。魔王軍におかしな動きが見られると」 遥一郎「おかしな動き?」 ノア 「はい。ずっと町の中などで……まあ、もう町と呼べるのかも解りませんが。     その中で機械を探しているのかと思っていましたが、どうやら違うようです。     もっとべつの、……マール、というなにかを探しているとか」 遥一郎「マール……?」 なんだろうか……見当がつかない。 ノア 「マスター、どうしますか?」 遥一郎「ああ、悪いノア。移動中は俺はここから動けないから、お前に任せる。     マールっていうなにかについて、tellを回してみてくれ」 ノア 「はい」 魔王軍が探しているもの……マール。 それがなんなのかは解らないが、先に探し出すことが出来れば、 なにか特別な意味を手に入れることが出来るのかもしれない。 つくづく、それがなんなのかも解らないが……こちらには人数って武器がある。 少なくとも魔王軍よりは情報は多いものだと考えよう。 しかしとんでもないことになったもんだ……って、この考えも何度目だろうか。 はぁ……平和に旅をしていた頃が懐かしいとさえ思える。 【ケース784:簾翁みさお/大地を往く者】 ニャーンニャーンニャーンニャーンニャーンニャーンワーーーオ!! アイルー『………』 みさお 「………」 ある日、森の中。 ……猫さんに出会いました。 それも、背中に竜族の飛翼が生えた猫です。 蹲って尻尾をフリフリしていたと思ったら、急にこちらを向いてワーオです。 悲鳴こそ上げなかったものの、とんでもなく驚きました。 アイルー『やあニャ』 みさお 「や、やあです」 挨拶されました。 ここは旧死人の森近辺の森。 ナーヴェルブラングが復活したことで、もうここらには死気はなく、 見渡せば自然だらけの綺麗な景色が広がってます。 わたしはここに、エクストラジョブの素材を探しに遠路はるばるとやってきたわけですが。 アイルー『この場に何用ニャ娘ッ子。      ここは先にボクが探索してるんだから、邪魔しちゃダメニャ』 みさお 「探索……って、なにをですか?」 アイルー『魔王の盾ニャ!……ぐあっ!やっちまったニャ!      問われたら答えてしまう悲しい猫のサガニャ!』 とても素直な猫さんでした。 みさお 「魔王の盾……?それじゃああなたもエクストラジョブの素材を!?」 アイルー『おっとここからはお代を頂くニャ!いくらボクがアイルーだからって、      もはや敵となったヤツラに情報をホイホイ渡すほど落ちぶれてないニャ!』 みさお 「む……!」 アイルー『というわけで魔王の盾は何処ニャ?』 みさお 「知りませんよそんなの!」 アイルー『残念だニャ……それじゃあもう帰るニャ。ボクらこう見えても忙しいニャ。      探し物してるとすぐにキミたちの仲間が来て、      挑戦だー!とか決闘だー!とか言って襲い掛かってくるニャ。      ボクら、キミたちになにか迷惑かけてるニャ?』 みさお 「え?……いえ……それは……───敵、ですから」 アイルー『……そうですかニャ。なら───誠意を以って答えねばならんニャ!!』  ゴバァン!! みさお「ひえっ!?」 猫さんの飛翼が大きく伸び開かれる! 頭部には二本の角が生えて、後ろ足の爪が鋭く伸びて、目つきもギラリと鋭いものに! アイルー『キミらが好き勝手に襲ってきておいて、      ボクらが襲うのはダメとは言わせないニャ!      行く先々で襲われる猫たちの恨み……今こそ思い知るがいいのニャ!!』 みさお 「〜〜っ!《チャギッ》」 刀に手をかける。 それが合図だった。 猫はその前足になにかしらのナイフを出現させると、 アイルー『奥義……ナイフストリーム!!』  ゴカァッ───!! 口から巨大な衝撃波を放ってってうひゃああああああっ!!? みさお「ひえぇああっ!!?」 慌てて横に避けると、その衝撃波は木々を切り刻みながらやがて消滅した。 みさお 「ナイフ関係ないじゃないですか!!」 アイルー『我がナイフは天地とひとつ。故にナイフは無くともよいのですニャ』 みさお 「じゃあナイフを取り出した意味はなんなんですか!?」 アイルー『うるさいニャ!こっちにも事情があるんだニャ!      ハウリングナイフじゃダメニャ!もっと素敵なのがいいニャ!』 そう言って、猫さんはナイフを前足の中に消す。 どうやっているのか解りませんが、どうやらいろいろとカラクリがあるようです。 みさお「───詰める!」 けどその隙を穿たない手はありません。 わたしは地面を蹴り弾くと一気に間合いを詰めて───! アイルー『───コレニャ!《ガションッ!》』 みさお 「ふえっ!?いやちょっ───」 今まさに切りかからんとした時、猫の右前足に出現したのは樹の根で象られたような大砲。 それがわたしに向けられて、一瞬にして眩い光を───あーーーーーーっ!!! 【ケース785:晦悠介/ヒガン=ジョー(対話編)】 ………………ブツッ。 悠介 「みさおがボロ負けしたそうだ」 彰利 「あいやぁ……」 エルメテウスの嬉しい報せから少し後、みさおがアイルーに負けたことが知らされた。 が、得るものがなにもなかったわけじゃない。 どうやら猫たちは……みさおの推測だが、 魔王を通じて様々な武器能力を引き出すことが出来るらしい。 が、それは武器を出現させないと発動できないらしく、そこには多少なりとも隙があると。 言われてみれば確かに、と頷ける場面があった。 もう散々ボロ負けしてるからな……わからないほうがおかしかったのかもしれない。 さて、話を戻そう。 東を求めて三千里、ただ漠然と広がる大自然の中を歩く俺達は、 未だ手がかりらしい手がかりを見つけられないでいた。 一度東へ到着したことがあるらしい藍田に話を聞いて、 集落の位置をマップマーカーの送信でナビを通じて送ってもらったんだが、 そこに行っても集落はなかった。 ここ10年の間に移動したんだろう。 どうしたものか……そう困っていた俺達の目に、一匹の猫。 ……やばい、ジョニーだ。 ワーニングキャットランキングNo.2のジョニーだ。 No.1は言うまでもなくアイルーだが。 ジョニー『ハッピーエンドの条件はァア……ヒーローが負けることと見つけたりニャ!』 型破りもいいところである。 二足で立って、何故かコートとテンガロンハット風の帽子を被り、 イカしたサングラスをした猫が花を投げていた。 腰には刀。 なんの刀かは解らないが、気をつけたほうがいいのは確かだ。 ジョニー『こんにちわニャ、冒険者さん。本日はお日柄もよく……なんだっけニャ?』 知るか。 彰利 「おー!?やる気かコノヤラー!」 そして彰利はやる気だ! しかし猫はスッスッと首を横に振り、そんな気はないニャと言った。 ジョニー『探しものをしてるんだニャ。      危害を加えられない限り、アンタたちの相手はしないつもりニャ』 悠介  「探しもの───」 そういえばみさおが言ってたな。 猫たちは魔王の盾を探してるって。 それと、穂岸のところのノアからはマールってものを探してるって。 悠介  「……もし、邪魔をしたら?」 ジョニー『この世界のありとあらゆる自然から分けてもらった特大元気玉で、      木っ端微塵にするニャ。      アンタら二人を倒す分なら一秒かからず集められるニャ』 悠介  「《ぞくぅっ!》───わ、解った。邪魔は……しない」 彰利  「……!」 ……解った気がした。 どうして魔王のヤツが、この世界をこんなにも自然で満たしていたのか。 俺が邪魔はしないと言うより速く、彰利が俺の肩を掴んで制止したくらいだ。 なんてことだろう……魔王にとってはこのフェルダールそのものが武器だ。 ジョニー(ハフゥ……!旦那さんにはこう言えって言われてたけど、      ホントに襲ってこられたらおっかなびっくりだったニャ……!!《ドキドキ》) なにやらジョニーが額を拭うような動作をしているが、 あれもこちらを油断させる行動なのかもしれない。 迂闊に手が出せない……いや、今は虹を作ることだけを考えるべきか。 悠介  「……なぁ。東の集落がどこにあるか、知ってるか?」 ジョニー『ニャニャッ、場所案内なら100£ですニャ!』 彰利  「いきなり商売に走りやがったよコノヤロウ……」 仲間にtellをしてみても、東の集落だけはまだ見つけてないっていうしな。 ここは……頼むしかないだろう。 悠介 「解った、100£だな?」  コシャンッ♪《100£支払った!》 ジョニー『ニャニャッ、毎度アリニャ。それじゃあマップを出すニャ』 悠介  「……ほんとに大丈夫なんだろうな」 ジョニー『商売猫を侮辱することは許さないニャ!      ボクら、代金さえ払ってもらえれば仕事キッチリがモットーニャ!』 彰利  「じゃあ魔王を裏切って?とか言ったら?」 ジョニー『プライスレス……お金で買えない価値あるニャ。それは出来ない相談ニャ』 彰利  「まあそうだろうねぇ……」 言いながら、彰利は俺のマップにマーカーをつけてくれている ジョニーの帽子やコートを触ってる。 彰利  「すげぇねこれ……どこで作ったん?」 ジョニー『これは旦那さんの武具のひとつでブリュンヒルデっていうニャ。      思った通りのカタチになってくれる、とてもありがたい霊装ニャ。      旦那さんがボクにはこの格好が似合ってるっていうからやってみたニャ』 彰利  「ああうん……それはもう、拍手したくなるくらい似合ってるけどさ」 なんてったてジョニーだし、と続ける彰利は、小さく笑っていた。 ……さて、マーカーをつけてもらった俺はマップをしまうと、 ジョニーに別れを告げて歩き出す。 未だジョニーの服に関心があった彰利もすぐに追ってきて、また旅の始りだ。 彰利 「意外だったわ。案外話せるもんだね」 悠介 「魔王直属の猫ってだけで、俺達が襲い掛かりすぎてただけだろ……」 主に原中がだが。 あいつら程度ってものを知らないから。 彰利 「《ジッ》おおっ!?……なんぞね急に!びっくりするじゃない!」 声  『いえ、少々急ぎの用なので。結論から言いましょう。     ミクとシャルロット姫が自殺しました』 彰利 「じさっ───えぇっ!?」 声  『外の景色を見たいと言うので、解放していたのですが……。     飛行中なので脱走など出来ないでしょうと踏んだのですが、     急に走りだすとそのまま崖から───』 彰利 「…………確認は?」 声  『死体観賞の趣味はありませんので』 彰利 「……だろうね」 飛び降り自殺……あまり想像したくないな。 数ヶ月に及ぶ幽閉状態が、彼女らの心を痛めつけてしまったんだろうか。 ……今となってはそれを知る手段は───ジッ! 悠介 「お、と……こちら晦…………ああ、ああ。     ……へ?いや、姫さんとミクが……えぇ!?」 彰利 「悠介?どぎゃんしたとよ。キミナビの音量低いよ?もっと大きくしなせぇ」 悠介 「いや……地上探索舞台の藤堂が、     飛び降りた姫さんとミクが、飛行する猫に回収されたのを見た……って」 彰利 「………」 ……やられた。 恐らくなにかしらの手段で姫さんたちと魔王は話を通していたんだ。 たとえば、簡易版のナビかなにかで。 あとは脱出の機会を伺って、油断したところを───と。 たとえばエルメテウスがようやく動かせる状況になり、 飛行中ならば脱出など出来ないだろうと油断したまさにその時。 問題はいつの間にその通話手段を持たせたか、なんだが…… 最初から姫さんかミクが持っていたか、 それとも捕まる以前より誰かから渡されて、そのまま忘れられていたのか。 今となっては解らないが、逃げられた以上はそういうことだろう。 ……いや、もしくはそういうのを見越して、 猫たちがエルメテウスの崖っぷちに張り付いていたのかもしれない。 どのみちこれで人質は居なくなったわけだ。 彰利 「……ノアっち、ホギーに繋げられる?」 声  『すぐ傍に居ますから。……音量をあげます。……どうぞ』 彰利 「ホギー、話は聞いとった?」 声  『いや、聞こえなかった。ノアの返事で大体予想はついたけど』 彰利 「ほか。ほいじゃあ長ったらしい話は抜きじゃい。     人質作戦はもちろん無しで、猫が飛んでった方向とか割り出せるかね?」 声  『ああ。多分“然の塔ラスペランツァ”だ。     馬鹿正直にそっちに飛んでくれればだが』 彰利 「……違うだろうね。くそ、転移で奪い返そうと思ったけど無理か。     OK、訊きたかったのはそれだけじゃい」 声  『ああ』 tellが切れると、その場に訪れる静寂。 風が吹くたびに草花が揺れる音が聞こえるが、それでも静寂すぎる気配がそこにはあった。 彰利 「ほんと、後手をとってばっかだなぁ……」 悠介 「仕方ないだろ、なっちまったもんは。     それより急ごう。こうしてる間にも後手に回るんじゃ、やってられない」 彰利 「せやね」 歩くのをやめ、走り出す。 速く虹を作ってみんなと一度合流しよう。 そうすれば月の欠片も大分揃う筈だ。 【ケース786:中井出博光/グレートキャッツガーデン】 ゴシャーーー……ストッ。 それは……エルメテウスに張り込んでもらっていた猫から、 猫伝で報せが来て少し経った頃のことでした。 今日も見つからなかった妖精マールさんと魔王の盾のことを思いながら、 ナギーをとろけるくらいに甘やかして、寝かせたあとのこと。 この猫の里に、二匹の飛行猫が舞い降りました。 一匹はクサナギを、一匹はテオブランドのフロート能力を身に着けた猫である。 クサナギ猫に引っ張られる感じで飛んできたフロート猫は、 しっかりと計画通りにシャルとオリジナルミクを連れてきてくれたのです。 中井出「おお!お帰りお二方《ベパァン!!》げひゅんっ!!」 再会一番にビンタを食らいました。 首がもげるかと思うほどのこの衝撃、まさに国宝級である。 シャル「ヒィイイロミツゥウウウッ!!     このわたくしをよくもこんな長い間あんな薄暗い場所にっ……!!     何故すぐに助けに来ませんの!?」 中井出「ええはい、さっぱり言いますと男が女のために必死になる映画って大嫌いなので。     いろいろな映画で思うわけですよ。     この映画、ヒロイン居なけりゃ大作じゃんって思うヤツ。     無意味にラヴ入れるからつまらなく《ベパァン!》げひゅんっ!!」 喋り途中のビンタはとても痛烈でした。 ええ、舌を思い切り噛みましたし。 中井出「ごほっ……おごっ……!ち、血が……」 シャル「血がじゃあありません!」 中井出「……け、血液が《ペパァン!》げひゅん!!」 シャル「そういうことを言っているのではありません!」 そりゃ解ってるけどここまでベシバシ叩かなくても……。 と、痛がってる僕をじっと見つめるツェルストクラング……ツェルさんだね、うん。 ツェルさんに気づいた。 中井出「な、なに?まさかキミまで僕を……」 ツェル「いえ。……A-20012……アルビノは何処に?」 中井出「死にました《きっぱり》」 ツェル「え───…………えぇっ……!?そんな!」 中井出「だが……大丈夫。彼は今も僕の胸の中に居《ベパァン!!》げひゅんっ!!」 叩かれました。 中井出「う、うそつき……!叩かないって言ったのに……!」 ツェル「そんなっ……そんな気休め!聞きたくありません!!     アルビノが胸の中で生きてるなんて!勝手な妄言じゃないですか!」 中井出「いやそうじゃなくて!ほんと生きてるんだって!     今会わせてやるから待ってろテメー!」 言いながら、灼闇スキル“デアボリス”でアルビノの意思を召喚! ツェルさんの前に立たせて、あとは勝手にしろモード。 シャル「で……ヒロミツ?あなた今度はなにをしているのですか?」 中井出「なにって……いろいろありすぎて解らんのだが」 シャル「全部ですっ!」 中井出「ぬ、ぬう……まず魔王の盾と妖精マールさんを探している。     魔王の盾は当然、レイルを魔王に仕立て上げるためだ。     他の材料は揃ってるから、あとは盾だけなのだ。     そしてマールさんを探している理由は、ノヴァルシオを武具に融合させるためさ」 今のノヴァルシオはミクが機械へと意思を通して操ってるにすぎない。 だから一応はカーネイジも使えるけど、毎回使えるわけじゃない。 アガートラームも闇蝕で飲み込めばすぐ融合できるけど、 どうせならノヴァルシオとともに飲み込もうかな〜と思ってる。 同じマシンウェポンだしね。 今は普通に腕に装備してるだけの状態。 ファフニールとの相性も中々良く、 炎のブレードスラッシャーとか撃ててカッチョエエのですよ。 中井出「ここ何ヶ月かで敵さんのレベルも経験も随分と高まった。     魔物も獣人も同盟結んでるから逆にレベル上げづらいだろうに、     よくもまあここまでってくらいに。……定期的に亜人族に襲わせてるからかな。     たま〜に倒されたりすると、モンの凄い勢いでレベル上がるのね」 多分基礎の底上げをしているために、 実践で得られる経験値ってのが上がってるんだと思う。 ヤツらはどちらかというと妖精を狙って襲い掛かってくる。 なにせ妖精といったら魔法しか使わない、って先入観があるからだ。 実際何度か妖精さんたちが倒されたりしているってこともあって、 妖精と見たら襲い掛かってくる有様だ。 だからレアズ将軍にヲゥガリランチャーバーストを封入させて旅立たせた時は笑った。 僕と亜人族は一心同体。 故に、武具も一心同体であり、欲しいと思えばいつでも引き出せるポケットバンク博光。 どれだけ離れてても霊章で繋がってる僕らは、いつでも武器の受け渡しが出来ます。 ハウリングナイフを身につければ口から衝撃波出せたりとか、いろいろある。 嬉しいのが猫たちが使う分には、なにかしらの能力を発動させなきゃ解放出来ない能力も、 単体で使うことが出来ること、かなぁ。 マグニファイを使わなくても黄竜剣が使えるとか、そんな感じだ。 その分威力は落ちるみたいだけどね。 シャル「レベルとかなんとか、よく解りませんけれど……     ともかくエトノワールは潰えていて、けれど戦いはまだ続いているのですね?」 中井出「うむ。今は僕と亜人族VS他勢力って感じ」 シャル「ひえぇっ!?     それっ……それはつまり、世界を敵に回しているようなものじゃ……!」 中井出「うむ。だが……負けないよ?簡単に負けたら、僕が頑張る意味がない。     この博光が未来へ辿り着くためにも、     もっともっとやつらの力を引き出さねばならんのだ」 シャル「よく解りませんが、全ては自分のため、と?」 中井出「もっと素直になろうよ。     “キミの笑顔が見たいから”って言葉、相手のためじゃなく自分のためでしょ?     キミのために○○を用意したよ!って言葉も、     喜ぶ相手が見たい自分を満たすため。そう……人よ、素直になれ!     だからね、僕は自分が周りに死んでもらいたくないからキミたちを大切に思う。     それは誰かのためじゃないか?って言われても、俺の中で違えばいいのさ。     俺は俺のために俺の信念を貫く。そのためなら様々な苦難も乗り越えましょう」 シャル「………」 シャルさんはポカンとしていた。 その少し離れた後方で、ツェルもアルビノへの挨拶を済ませたのか、 涙で赤くなった自分の目を拭っていた。 中井出「さて!いろいろ済んだことだし───《シュコー!》     …………口笛なんて吹けなくても生きていけるもん!!」 シャル「な、なんですか急に!!!」 中井出「いいよもう!口笛なんて吹けるほうがおかしいんだもん!!     おーいガキどもぉおおおおっ!!そろそろ時間だぞぉおおおおおおっ!!」 シャル「ガキ……?」 ツェル「?」 声高らかに叫ぶと、森の景色のあちらこちらから集まってくる少年少女。 ……皆、この世界で孤児になった者たちだ。 シャル「……ヒロミツ?これは……」 中井出「フェルダール中で拾ってきた子供たちだ。     ここ猫の里に連れてきて、大自然での生き方を学ばせてる」 拾ってくる際、かつての知り合いに出会ったら、 嫌味ったらしくカルナくんのところに届けてやるかねぇえと言って。 その方が発破になるしね。 でもその実、ここに連れてきて大自然での生き方を学ばせています。 この数ヶ月で随分と強くなったさ。嬉しい限りである。 ジノ 「提督!まだ日課が終わってません!」 中井出「構わん!今日は貴様らに知り合いを紹介する!」 ジノ 「ハッ!」 ジノは晦たちの前で連れ攫った少年だ。 妹とともに強く生き、今では幼児野生団のリーダーを務めている。 実力もそれなりだ。 まだまだ子供だが、子供だからこそ自然への順応は早かった。 中井出「ここに並びしおなご!右からシャルロット、ツェルストクラングである!」 リア 「サー!そのツェル……さんは、ミクさんの姉妹さんですか!?」 中井出「そのようなものである!各自、シャル、ツェルと呼ぶように!」 シャル「なっ……ヒロミツ!?このような子供たちにわたくしを───」 中井出「お黙りなさい!ここは容赦無用の自然空間!     上下関係なく自然に付き合うのがこの里のルールよ!     故にシャル!貴様も呼び捨てにされたからといって憤慨せぬよう!」 シャル「う、うううう……!!」 ツェル「ツェル、ですか……ぐすっ……ふふ、はい……解りました」 中井出「了!では紹介を終える!」 シャル「えぇっ!?ちょ……子供たちの名前は!?」 中井出「そんなものはあとで自分で知るように!ではヒヨッコども!     食料を調達してこい!それが終わったら……美味いメシ、食わせてやるから」 子供達『〜〜〜っ……Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』  サササササ……!! 子供たちはまるで忍のように、音を立てずに散ってゆく。 それを眺めつつうんうんと頷く僕と、やっぱりポカン顔のシャルが居た。 シャル「……慕われているのですね」 中井出「親が居ない気持ちは解るから。愛情と厳しさをきっちり与えてやる。     それが拾った者の心意気だと僕は考えてます。     ……ただね、甘えタイムに入るとナギーとシードとの喧嘩がすごくて」 もう僕ひとりを巡ってのギャースカさんは留まることを知らない。 いっつもゲームで勝者を決めて、勝った順に可愛がるようにしてるんだけどね。 ツェル「あの、子供たちが腰の後ろにつけていたナイフは……」 中井出「パプニカのナイフだ。猫たちが子供用に鍛えてくれた鋭いナイフ。     岩くらいならスパッと切れる、恐ろしい切れ味です」 ツェル「なっ……なんでそんなものを……?」 中井出「自分の身は可能な限り自分で守ること。それがこの里の掟No.02だからさ。     たまに狩場に連れていって実戦訓練もさせるんだけど、     ラットンくらいならもう狩れるよ」 ツェル「ラットン……弱いとはいえ立派なモンスターじゃないですか」 シャル「あんな子供が……」 中井出「生きるためには頑張りなさいと言い聞かせてるから」 レベルシステムがないから、さすがに限界もあるだろうけど。 それでも上手く育てばレオンくらいにまではいけるかもしれない。 もし死んでしまっても、ナイフを愛用している限り、その意思を俺が受け取る。 そのために作ってもらったナイフだ。 たとえ死んでしまっても、ナイフを闇蝕で飲み込んで、その意思を霊章に移す。 この博光は貴様ら孤児を一人になどせぬ……! この博光は貴様らの仲間なのだから……! 中井出「そんなわけで、ついこの間ジノのナイフがレベルアップしたの。     ラットラックのスキルがついてさ。少しだけラックが上がるんだって。     ラットンの素材で猫に鍛え上げてもらったらそうなった」 シャル「……よく解りませんわ」 中井出「うん……そうだろうね」 子供たちの武具を鍛えているのは、猫やドワーフの中でもそう技術の高くないやつらだ。 そいつらの練習にもいいってことで、双方の了承を得て、無料で引き受けている。 ふと気づくと子供たちが身につけている服が少し厚手になっていたり、 武器が鋭くなっていたりして、見ていて面白い。 亜人族との付き合い方を学ぶって方向でも、今の状況は悪くなかった。 鍛えてもらって感謝して、鍛えさせてもらって感謝して。 ただ渡して鍛えておけよって見下すわけじゃなく、 猫たちが居るからこそ武具は強くなる、 ということを初日に叩き込んだのが相当効いたようだ。 今では鍛冶が出来る猫たちを尊敬さえしているくらいで、 どうすればこのナイフをもっと上手く扱えるのか。 それを考えては実践しての繰り返しだ。 中井出「さて、じゃあ料理の準備でもするかなぁ。     シャルにツェル、なにかリクエストある?」 シャル「美味しいものならなんでも構いません」 ツェル「わたしも同じ意見です」 中井出「了解。じゃあ……」 どおれいっちょ腕をふるってやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!  今日も猫の里は平和でした。 Next Menu back