───冒険の書316/宙を舞う災厄2───
【ケース790:中井出博光/界芯大崩壊バトル】  ゴンガギギギギギギィインッ!!! 初っ端からのメテオストライクをエターナルディザスターで倍返ししつつ、 飛翔して接近するやジークを回転させ、黄竜の光を込める! ……ってダメだ!弾き返した魔法で回復してやがるよあいつ!ええい面倒な! 中井出「死ねやぁああああっ!!!!」  キシャゴバドンガァアッ!!! デスゲイズ『クゲァアアォオゥッ!!!』  ピピンッ♪《クリティカル!デスゲイズの骸套を破壊した!!》 まずは周りの屍の鎧を破壊! あっという間にボロボロの布切れと本体の紫色の骸と化したソイツを見据え、 さらにさらにと力を溜めてゆく。 常に力を溜めるはこういう時に役に立つ……けど、休んでる暇はそうもない。 ジュノーン『アレを弾くか……思えばお前に魔法を放ったことは無かっ───』 中井出  「格好つけて喋るのも大概にしろタコ!御託はいいから戦えってんだよタコ!       すげぇ弾きやがった!そういやお前に魔法撃ったことなかったっけ!       くらいの軽さで言ってみろってんだタコ!       もしくは“なん……だと……?”だけでいいんだタコ!       それだけ言ってあとは自分の心の中でいろいろ考えてろタコ!!」 ジュノーン『いや…………すまん』 まったくもうちゃんと戦ってよね!? これだからヘンにプライドの高いボンボンタコ野郎は! 解説に回ることで戦おうとしない気なんだよきっと! ちくしょう俺もそうしてぇ!! デスゲイズ『ゲグァアォウッ!!!』 そんなことを思っているとデスゲイズが俺に向けて、デカい氷魔法を放ってきた! だが甘し!魔法なぞ弾き返して───ダメだ! そういやこいつ、魔法で回復するんだっけ!? じゃあ吸収する!!恐れることなく自ら突っ込んでぇええっ───!! 中井出「ジーク!《キュボォンッ!》───吸収完了死ねぇえっ!!」  キィンッ!ギシャゴバァォオンッ!!! 黄竜剣!! デスゲイズの顔面に真っ直ぐに振り下ろし、強烈な炸裂音とともに黄竜の光を四散させる。 だが、骸の鎧を一撃で破壊してみせたソレも、 デスゲイズ本体にはさほどのダメージを与えていないようだった。 そのダメージの低さに思わず息を飲んだ瞬間、視界の隅でなにかが動き───  ドゴォンッ!! 中井出「おぉわっ!?」 振るわれた鋭い爪が、ジュノーンによって弾かれる。 ジュノーン『ホウケるとはお前らしくもない。       手の内を隠したまま勝てる相手でもないだろう、全力でかかれ』 中井出  「今までなにもしなかったキミに言われたくないんだけど……」 ともあれ、確かにそうだ。 様子見なんて馬鹿げてるね、本当にそう思うよ。 ……よ、様子見だよ?決して忘れてたわけじゃないからね? 中井出「六閃化&冥空斬翔剣!!」 長剣状態のままに六閃化と冥空斬翔剣を付加させる。 双剣にしては威力が半分に落ちるからだ。 こいつ相手には長剣くらいじゃなければ大したダメージは与えられない。 長剣のまま、ゲオルギアスの能力を付加させてゆく。 エンペラータイム中だ……どんな無茶でも通るのがスキルという名のファンタジー。 中井出「うぉおおおらぁ───ってとわぁっ!?」 再び斬撃をと突っ込んだ途端に再び爪攻撃。 慌てて振る方向を捻じ曲げ、身を逸らすようにデスゲイズの左爪を斬り弾く。 刹那に爆発と鎌鼬。 紅蓮蒼碧の長大剣に斬り弾かれたソレは爆発した途端に爆煙ごと鎌鼬に切り刻まれ、 もはや血とは思えない液体を散らす。 次いで振り下ろされた右爪は再びジュノーンに押さえられ、 斬り刻まれると大きく裂け、だがすぐに塞がる。 ジュノーン『チィ……!やはり属性が合わん……!』 ありがとう役立たずのボスキャラパターン。 もう攻撃押さえてくれるだけで十分です。いっそ泣きたくなります。 あれだけ強かった敵が、味方に回った途端にこれです。 どこのゴルベーザさまでしょうかこの不死王サマ。 中井出「ぬぅううぉおおおおおっ!!!」 やはり頼れるのは自分のみッッ!! 大丈夫なら頼る気満々だったけどね!?弱い僕を許してください! ……え?弱いんじゃなくて外道?もちろんだとも!!  ザギシャゴバババアォオンッ!!! ───二十四閃の黄竜剣を以って切り刻みまくる! 双剣ほどの手数は流石に無いが、 それでもストライクブラストやオーガインパクトなどの効果が威力を高め、 確実にダメージを与えてゆく。 が───どうにも剣でのダメージはそう高くない。 中井出「グ、ググー!」 やっぱり骨相手には打撃なのでしょうか。 ええい迷ってる暇などもはや無し! ジークの力を篭手と具足に移してGO!! 二十四閃化が発動だったため、両篭手両具足ともにそれぞれが二十四の連ねと化す。 その状態で、 中井出「千歩氣攻拳!!うぉおおおおらららららあぁああああああっ!!!!」  ドンドゴドゴドゴドゴドゴドゴゴパァンッ!!! デスゲイズに向けて、練った闘気の波動を撃ちまくる! 一分に一発しか撃てないジョブアビリティでも、今ならいくらでも撃てる! ソレが飛び道具ということもあり、イーグルアイも発動済み。 弱点と思われる骨の尾あたりを狙い、だがあくまで当てることを前提に放ってゆく。 デスゲイズ『クキキゲグ……!!』 ……効いてる。 やっぱり剣よりも打撃属性の方が効果があるらしい……んだが、 デスゲイズ『クゲェエルアァアアォオオウッ!!!』 中井出  「怯まねぇええええええっ!!!」 一発で二十四閃、それを左右音速で放ちまくってるってのに全然怯まないよこのガイコツ! 押されるどころかそのまま前に突っ込んできて……うおおぉおおおおおっ!!!? 中井出「空間翔転移!!《ビジュビジュンッ───!!》」 咄嗟にデスゲイズの背後にまで転移してぶちかましから逃れ、 すぐさま弱点である尾骨目掛けて 中井出「龍神烈火拳!!おぉおおおりゃぁああああああっ!!!」 千歩氣攻拳に龍属性を込め、一気に十三連撃を放つ!! 攻撃を十三放つまで攻撃力二倍のソレは、 十三×二十四発分全て……とまではいかなかったがほぼが尾骨に直撃。 直後に振り向いたデスゲイズは怒りを露にしたかのように速度をあげ、 俺へと飛び掛るように飛翔する。 OK再びぶちかましか!だったら─── 中井出「絶対回避!アァーーーンドッ……神威クラッシュ!!」 勢いよく飛翔するデスゲイズに向けて、こちらも全出力での突撃開始! レッツゴークライシス!だがダメージを食らうのは貴様だけだ!! 中井出「どぉっせぇええええええい!!」  ドゴォオッパァアアンッ!!!! デスゲイズ『ゴゲェエルアァアアッ!!!』  ギョヒィンッ♪《ぶんどるが成功!真龍王の芯骨を入手した!》 デスゲイズの鼻っ柱(骨だけど)に、我がHPの半分を使っての全力タックル!! 半分を消費した甲斐あってデスゲイズは圧縮されたスプリングのようにぐしゃりと曲がり、 直後に叫び声をあげて後方へと吹き飛んだ。 ……ええ、当然僕は無傷です。HP半分使ったけどね。 でもいいんだ! 使わないままはもったいないって思って、一応ずっと発動させてたぶんどるが成功したし! 中井出「庭師剣【白楼】、【楼観】、【白楼観】解放!!」 ならば追撃しかあるまいよ! グミをポーションで喉に流し込んで再びクライシスハートを発動させると、 一撃を十撃に変え、威力を上げ、アンデッドキラーを解放!! この両手に全てを込めてぇえええええっ!!! 中井出「ギース様!技を借りるぜぇええっ!!《ビジュビジュンッ!!》」 吹き飛ぶデスゲイズの上空に転移して、その顔面目掛けて渾身の掌底を打ち下ろす!! 中井出「奥義!転移!羅生門!!」  ギガァッパァアアンッ!!! 突き出された掌底が二百四十のアンデッドキラーの撃と化し、デスゲイズを打ち抜く! その瞬間、その場には音速を超えた証である衝撃波が円状に広がり、 まるでそれをカタパルトにしたかのように、デスゲイズが一瞬にして大地へと激突する。 中井出「武装錬金!!」 だが終わりじゃないのは当然解っている。 敵の状態を確認することもなく全身甲冑を見に纏い、 ナックルガードを合わせて超巨大化!そんでもってぇえっ!! 甲冑男爵『全身甲冑の屠竜奥義!弾丸男爵!!』 地面に減り込んでいるデスゲイズ目掛けてガンザックフルバースト!! 一つの巨大な流星と化し、大地さえ砕くつもりで  キュヴォガドォンッ!!!  ヴァンガガガガガガォオオオオンッ!!! ───突撃を、終了させる……!! 大地は突撃を身に受けたデスゲイズを中心に崩壊し、 クレーターと巨大な亀裂を作る。 途端、亀裂から水が溢れ出し、 まるで噴水のように立ち上るとデスゲイズと俺の体を濡らしてゆく。 すぐさま離れ、甲冑と巨大化を解くと、ホズに雷を込めて───竜撃砲を発射!! ソレはデスゲイズが水に沈んでゆくクレーターへと落ち、……霧散する。 中井出  「アレェッ!?」 ジュノーン『超純水だ。雷の伝導さえ一切殺す水を指す』 中井出  「なんだってそんなもんがここに!?       なにもこんなタイミングで溢れることないじゃん!」 ジュノーン『地面を割ったのはお前だろう』 中井出  「グウ……!」 ノートン先生……もしかしてマジでここでジュノーン倒したいからって邪魔してる? 俺の頑張りは無に帰るんですか? 確かにそう出来れば未来は開けるだろうけど……はっきり言おう!無理だ! それは貴様が一番解ってるだろうに! 中井出  「ちょっとお待ち!……なんでここに出る水が超純水だって解るの貴様」 ジュノーン『お前はギガブレイクが好きだからな。       アレを利用して消してやるつもりだった。       盛大に笑ってやろうと思ったんだがな』 中井出  「じゃあ笑え今笑え可笑しいだろ笑え笑えウヒャハハハハァーーーーッ!!!」 ジュノーン『そう自棄になるな。敵はまだまだ倒れやしないぞ』 中井出  「気楽でいいですね、アナタ」 僕はもう泣いてるよ。 ともあれ純水の泉となったクレーターからゆっくりと浮き上がってくるソイツを目にして、 それなりにダメージは与えただろうけど敵の最大HPを思うと眩暈がする僕。 きっとHPは大変な量なんでしょうね。 中井出「フェルダール中のみんな……俺に元気を分けてくれ!!」 だったらそのHPごと破壊してくれるわ! エーテルドライヴとマナ集気法とアガードラームと灼紅蒼藍剣とで自然や大気中、 霊章内のユグドラシル、武具の中の意思やフェルダール中のみんなから、 マナと元気と思いと想いを掻き集める!! それは俺が空へと掲げる両手の先の先に一瞬にして巨大なエネルギーの球体を作り、 集まる先から圧縮していくが、すぐに膨張し、やはり巨大な球体へと固まってゆく。 だが……まだまだ、もっともっとぉおおお……!! デスゲイズ『ルゲォギャァアアゥウッ!!!』 中井出  「!やべっ!気づかれた!───GOジュノーン!!」 ジュノーン『解っている。少しくらいは役に立たんとな───』 突撃してきたデスゲイズに真っ向から向かってゆくジュノーン。 剣ではなく拳でデスゲイズをブン殴り、 ダメージこそ大して与えないものの、吹き飛ばしてみせた。 うへぇ……なんの攻撃力効果もしないでアレかよ……勝てない筈だ。 中井出「霊章輪・月、解放……!精刀氣、集中、解放ォオオ……!!     もっと……もっと……!もっと集まれ……もっとぉおっ……!!」 霊章輪・月で集束したマナを増幅させてゆく。 さらに精刀氣と集中を合わせ、圧縮濃度を高めてゆく。 しかし……集まりが悪い。 以前集めたばかりだからか、それとも必要を求めすぎているのか。 否!構わん!自然よ……今この時のみ、俺の無茶を許してくれ! 中井出「気張れよ霊章!───うぅおおおおぁあああああっ!!!」 空中に集った巨大なエネルギー体を、俺の体へと落としてゆく。 正確には霊章にであり、既にスピリッツオブラインゲートにより脈動している霊章が、 さらに巨大なマナと思いと想いとを受け止め、灼闇が金色の炎へと変わってゆく。 やがて全てを霊章に閉じ込めると、さらにそこから超ためるを全力解放!! 霊章の中で爆発しそうなそれを溜めて溜めて溜めまくり───!! 中井出「───!《ドッコンッ……!!》」 爆発すると同時に、金色の炎を纏ってデスゲイズへと突撃を開始する!! 細かいことは考えるな───全てをこの一撃……この右拳に託し───! 中井出「つゥウウらぬけェエエエッ!!     (しゃっ)(こう)(そう)(らん)()《ドクンッ!》───!?」 拳、と……硬く握りしめた手を突き伸ばそうとした時だった。 突然体に異変が起こり、空を裂き突撃していた筈の体は落下。 勢いのままに地面に落ち、数度跳ね転がってクレーターの泉へと落下した。 中井出「……、かっ……!」 ……ついてない。 タイムリミットだ……せっかく溜まったってのに……! そう頭が理解した瞬間、俺の体は麻痺と激痛に襲われ、 ラインゲートの反動か、 痛みの全てに吐き気さえ感じるほどの強烈な気持ち悪さに包まれる。 霊章から立ち上る火闇も消え失せ、 ただただ頭に焼き鏝でも突きつけられているような激痛が俺を襲い続ける。 幸いにしてなのか不幸なのか、着水は仰向けだったおかげで息は出来るが─── …………いや。 うつ伏せで沈んで死んでいたほうがマシだ、なんて考えないぞ俺は……! どれだけ痛くても苦しくても、命を放棄するなんてこと、したくねぇ……! 中井出「く、そ……!こんな、とこ……ろで……!!     くはっ……俺は…………死なん、ぞ…………!」 麻痺して、まるで鉛のように重い腕を無理矢理動かしてゆく。 刹那、腕に激痛が走る。 だが……今しかない。 まだ霊章に凝縮したマナと思いと想い……“元気”が残ってるうちに……! くそ……!体が……動か……ねぇ……!  ───そんなあなたのお悩みをズバッと解決。泉の精霊はいかがですか? ───へ?  バシャアアア……! 精霊 『あなたが欲しているのはこの銀のシドルファスですか?     それとも金のベンザブロックですか?』 中井出「───」 金のベンザ!と言いたくなるのをグッと堪え、 普通のシドルファス=オルランドゥだと告げる。 そうだ……これがあった。 あそこからここまで伯だけで走って来るには遠すぎる。 だったら、移動する能力があるヤツを頼れば─── 精霊 『……《にこり》』 泉の精霊は穏やかな笑みを浮かべると、 泉から泉へと伯を転移させ、この場に召喚してくれた。 シド 「《バシャアッ……!》すまんな───少々時間がかかったか」 中井出「……へへへ……いや……間に合った(・・・・・)」 シド 「《ガッ》なに───?」 霊章の灯火が完全に消えてしまうより速く、 麻痺と激痛に、歯を噛み砕くくらい噛み締めて耐えながら、 伯のエクスカリバーに手を添え─── 中井出「自然と……この……フェルダール全ての……“元気”、だ……」 お前に、託す。 あとは───…… そこまで喉を絞って吐き出すと、 俺の意識はブレーカーが落ちるようにバヅンッと消え去った。                                    【ケース791:シドルファス=オルランドゥ/命を賭すということ】 中井出博光と呼ばれている若者は、そうして気を失った。 その体を泉の精霊が抱き締め、ワシに頷いてみせると転移する。 シド (ワシ、か……歳をとったものだ) “元気”とやらを受け取った時、一瞬だがセトを見た。 あいつは笑って“俺”の胸をノックし、“しっかりキメてこいよ”と言って笑った。 ああ、言われるまでもない。 シド 「どれ……ふふ、この老体で何処までいけるか───」 もはや不死ではない体を動かし、泉から出る。 飛行能力なぞ無い故に見上げることしか出来ないが、 空の先でデスゲイズと戦っているジュノーンと目が合うと、 そいつは笑ったような気がした。 ジェノーン『そら───!貴様の遊び相手の到着だ!』 その刹那、振るわれた爪を蹴り弾くと強引に体勢を変え、 胴回し回転蹴りをデスゲイズの脳天に叩き込む!!  コヒュどっがぁああああんっ!!! シド 「ヌ……ム……!」 ズシンッ、と全身を震わせる地震とともに、ソイツは落ちた。 だがさすがの躯骸王。 まるでダメージを受けた様子を見せず起き上がると、 眼球の無い目でワシを睨み、飛翔してくる! シド 「───天の願いを胸に刻んで心頭滅却!聖光爆裂破!」 だが臆することなく言を唱え、エクスカリバーを逆さに立てた状態で突き出す! すると柄と刃の境目にあるオーブから聖なる極光が放たれ、 突撃してきたデスゲイズを弾くほどの衝撃波となり吹き飛ばす! デスゲイズ『ギギィイアァアアアッ!!!!』 吹き飛びながら無理矢理体勢をを捻じ曲げ戻し、 血なのだろうが既に血の色をしていないなにかを吐き出しながら叫ぶ。 ───直後、虚空より隕石の魔法がワシ目掛けて襲い掛かる! シド 「すぅっ───()ァアアッ!!!」  ゴンババババガガガガォオオンッ!!!! それを気合いと闘気のみで全て破壊し、エクスカリバーを強く握り、疾駆する。 シド 「待ち兼ねた……どれほどこの時を待ち兼ねたか……!」 次いで氷の魔法。 八方より襲い掛かるそれを振り切る剣圧のみで破壊、さらに前へ───! シド 「幾日、幾月、幾年生きたか……!     仲間の全てを失くしたあの日から、どれほど血を吐く思いで生き続けたか……!」 放たれる呪いの眼光を眼光で破壊し、伸ばすことで襲い掛かってきた爪を斬り砕き、 次いで放たれた風の特殊攻撃を風の流れを読んで避けてみせる。 デスゲイズ『ギ……!』 再び魔法。 それを先読みし、言を唱え、エクスカリバーより稲妻を放つ。 シド 「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん!無双稲妻突き!」 突き出したエクスカリバーから突き型の剣閃が放たれ、 氷魔法を貫き破壊すると、デスゲイズの額に突き刺さり霧散する。 デスゲイズ『ギギルゲェエゥウウ……!!ガァアアッ!!!』 再度魔法を放とうとするが……無駄に終わる。 魔法の奇跡は起こらず、デスゲイズは困惑することも知らずに吠えるだけだ。 シド   「我が稲妻は沈黙の戒め。その口煩い魔法攻撃、封印させてもらったぞ」 デスゲイズ『ルゲェエエッ……ガァアアッ!!!』  ズドォンズドォンッ!! 吠え猛るデスゲイズが地面に両手の爪を突き立て、前傾姿勢で構える。 次の瞬間には大地を抉るように助走を身に宿し、駆けるワシ目掛けて突撃を仕掛ける! 爪では埒が明かんと踏んだのか、握り拳を振るってだ。 シド 「死兆の星の七つの影の経絡を断つ!北斗骨砕打!」 ワシはその拳へと突き出した掌を合わせドガァンッ!! デスゲイズ『ゲギャァアアアアアアッ!!?』 その先の五の指を闘気で折り砕く……!! シド 「見縊るなよ骸よ……!ワシが歩んだ苦痛の日々……!     それは───貴様の五指程度で砕けるほど弱くはないわ!!」 敵は眼前。 砕けた指を庇おうともせず再び振るうそいつ目掛け、 シド 「鬼神の居りて乱るる心、されば人かくも小さき者なり!乱命割殺打!」 エクスカリバーの柄底、その石突きでデスゲイズの砕けた拳を受け止め、 接触した柄から闘気を解放! 瞬間的に地震を起こしたかのようにズシンッ……!と震える大気と、 刹那に亀裂を走らせるデスゲイズの拳が、その威力を物語っていた。 シド   「知るがいいデスゲイズ……!戦うということは!       武具を手に敵の前に立つということは!命を賭して戦うということ!       己の命を守るため!志を守るため!己が意思に賭けて、戦うことだ!!       まともな意識もなく!ただ浮く者を狙うだけの貴様には、       そんな覚悟を手にすることすら叶うまい───!!」 デスゲイズ『ギゲギャグァアアォオオゥッ!!!』 言葉など通じない。 デスゲイズは懲りもせず、今度は砕けていない腕を振るうと、 ワシを串刺しにしようと爪を伸ばして攻撃してくる。 シド 「我に合見えし不幸を呪うがよい……星よ降れ!星天爆撃打!」 揃えられたそれを高速で振り下ろした肘で打ち下ろし、練った闘気とで破壊。 次いで突き出した拳の弾幕でこちらの指も破壊する頃には、 デスゲイズは───本能だろうか、薄汚れた布の外套だが、 妙に高い魔力を秘めた布のようなマントで己の体を包み込もうとする。 シド 「身の盾なるは心の盾とならざるなり───油断大敵!強甲破点突き!」  ゾギャァッパァアンッ!!! だがそれさえも闘気を練ったエクスカリバーのひと突きで粉砕。 塵にし、霧散させた。 シド 「……、っ……」 だが、不死ではないこの老体での連続錬気は、予想以上に体に負担をかけた。 数瞬眩暈に襲われ、追撃の機会を逃してしまう。 シド (……、) 風邪であればよかったのだが。 ごほりと咳き込んだ時、咄嗟に口を覆った手には血がべっとりとついていた。 あの日から二年だ。 風邪だ風邪だと周囲を誤魔化しはしたが、恐らく皆知っていた。 だからこそヤツもワシをここに呼んだのだろう。 シド (……ああ) 死ぬにはいい場所だ。 仲間の仇であるこいつに挑み、勝とうが負けようが死へと向かう。 倒して無念が晴らせるわけでもない。 だが───全力で戦い、全力で抗わなければいけない気がしたのだ。 故に、ワシは─── シド (感謝するぞ、中井出博光よ…………ここで死ねることを───) 言を口にする。 デスゲイズはワシという存在を理解しかねたのか初めて戸惑いを見せ、 だがワシの言を聞いた途端に、ワシを押し潰そうと砕けた両の手を振り下ろす! 直撃の軌道だ……避けられん! シド 「氷天の砕け落ち、嵐と共に葬り去る───滅びの呼び声を聞け!咬撃氷狼破!」 ならばと逆さにし、突き出したエクスカリバーが光り輝き、 呼びかけに呼応するようにクレーターの泉の水が集束! 瞬間的にデスゲイズの巨体を水の球体の中に閉じ込め、氷結させる! シド 「命脈は無常にて惜しむるべからず……葬る!     オォオオオオオオオオオオッ!!!───不動無明剣!」 そこへさらに、闘気をエクスカリバーを地面に突き出し、 込めた闘気の数だけ、デスゲイズの周囲より巨大な楔の剣が突き出る!! それはデスゲイズを閉じ込めた氷球ごとデスゲイズを四方から串刺しにして、 デスゲイズの動きを封じてみせた。 シド 「これで───っ……うぅっ!ぶぐっ……!」 再びの吐血。 忌々しいことだが……今しばし待て、死神よ……! まだ、やらなければならないことが残っている……! 元々デスゲイズの呪いによって生きながらえたこの命……今、貴様に返すぞ……! シド 「死ぬも生きるも剣持つ定め……!地獄で悟れ!!《ゴコォッキィンッ!!》」 エクスカリバーに宿る、託されし力を解放!! 心臓の痛みによって震える体に鞭打ち走り、 身動きの取れないデスゲイズ目掛けてエクスカリバーを振るう!  ガギッ……ビギシィッ……!!バガァアンッ!! 途端、轟音を立てて砕ける氷と楔の剣。 解放され、ワシという存在を確認するや、怒り狂ったように砕けた拳でワシを殴りつけた。 体が衝撃に持っていかれるが───構えた剣は決して揺らすことなく……!!  ……ふふ……今ゆくぞ、セト、ヒルダ─── 眩き光に包まれた剣を今、その顔面目掛けて……振り下ろす!!  ヒギャァンッ!! デスゲイズ『ギ───』 ……綺麗な、音だった。 我が体の骨が砕ける音よりも、よほどに心地の良い斬撃音。 惜しむべきは、殴られたことで斬点を外してしまったことか……すまない。 だが───  ザンガガガガガガガォオオオオンッ!!!! デスゲイズ『ギィイリリィイギャァアアッ!!!!』 それでも振り切った斬撃がデスゲイズの右角から顔面の右側部、 そして肩から先を斬滅していった。 それと同時に我が体が大地へとボロ雑巾のように投げ出され、 ぐちゃりと音を立ててその場を赤く濡らした。 ……もはや力も尽き、手放してしまったエクスカリバーが宙で弧を描き、 仰向けに投げ出されたワシの顔のすぐ横にゾギンと突き刺さり、鈍く輝いた。 デスゲイズ『リギャァアアッ!!       グギャァォギィイアアアッ!!!』 体の三分の一を持っていかれたことが悔しいのか、デスゲイズは怒り狂い、 眼無き目でワシを見据え、トドメを刺さんと押し寄せてくる。 シド 「く……ふふふ……!ははははは、はっはっは、ぐ、つぅ……!     生憎、だな……躯骸王……!ワシは、貴様に殺されてなどやらん……!!」 もはやこの身、助かるまい。 だが貴様に穢され滅びるくらいならば───! シド 「───我が名はシドルファス=オルランドゥ!!     病に侵されようと!致命傷で死に迷おうと!     敵の手に掛かり死にゆく道など決して選ばぬ!     我は死にゆくまで戦人!死にゆくまで戦に生きし修羅!!     見るがいい!これが───雷神シドの散り様よ!!」 神に背きし剣の極意……その目で見るがいい!! シド 「かぁあっ!!」 地面に残りカスのような闘気を放ち、無理矢理体を宙に吹き飛ばさせる! その過程でエクスカリバーを引き抜き、眼前に迫ったデスゲイズの額に向けて───!! シド 「我が生命の全て……くれてやる!!     っ……ぬぅううあぁああああああああっ!!!!」 己の命を力に変える、我が祖先、亜人の剣技を解放し、振り下ろす!! 刹那に耳を劈く轟音と、大気まで震わす闘気の波の衝撃。 デスゲイズの顔面の骸は袈裟に亀裂が走り、それが確認出来た途端、 斬撃の威力によって吹き飛び、地面に叩きつけられ、豪快に転がりゆく。 シド 「───、……」 それを確認し、地面に落下したあたりで、自分の意識も限界だった。 命が燃え尽きた今、立ち上がることも指を動かすことも出来ず、 傍らに転がるエクスカリバーを眺めながら……………… シド (ふ……ふふ…………ははははは…………) おかしくなって笑い、……やがて塵となって消えた。 最後に見ることが出来た、セトとヒルダの幻を眺めながら。 【ケース792:ジュノーン/英雄の在り方】 ……そうして、雷神シドの命は消えた。 残されたエクスカリバーだけがその場に転がり、ヤツがその場に居た証といえば、 せいぜいその場に染み付いている血痕程度だった。  ゴボッ……ゴゾォオ……!! ……。 遠くに聞こえる音。 視線を移せば、しぶとくも起き上がり、悲鳴のような雄叫びを上げるデスゲイズ。 やはりアレでは無理だったか───そう思い、構えを取るが─── デスゲイズ『ギゲェエルルギギャァアォオオッ!!!』 ジュノーン『なに……?』 デスゲイズは俺に目もくれず、 宙へ浮かび上がると空の彼方へと飛翔し、やがて見えなくなる。 それは……ヤツが傷ついた故に取る、逃走という名の行為だった。 ジュノーン『………』 その場に残された俺は、辺りを見渡してみる。 散々と崩れた山や木々、そして大きく抉られたクレーター。 そこかしこに散らばる血液と、死んだ者が所有していた古の英雄剣。 ジュノーン『これが……勝利と言えるのか……?』 呟いてみたところで、そんなものは俺には解らない。 それを決めるのは魔王……中井出博光であり、 恐らくヤツは───…………いや、考えるまい。 ジュノーン『………』 エクスカリバーを拾おうとして、やめた。 剣に拒まれている気がして、手を伸ばすことが阻まれたのだ。 この剣には既に意思が宿っている……俺が持つべきものじゃない。 俺はもう一度血の滲んだ地面を見やり、英雄の在り方を静かに考えた。 もう二度と考えるまいと思っていたことを、もう一度。 だが……それでも、英雄であった自分に誇れるものなどなかったのだと確信する。 …………もう行こう。 この場には、もうなにもない。 ───そうして俺は飛び立った。 争いの痕と剣だけが残った、世界の中心を目に焼きつけながら。 Next Menu back