───冒険の書317/幻の黒飛竜を求めて───
【ケース792:中井出博光/届かないもの】 ───それから。 俺が満足に動けるようになるまで、丸一日かかった。 中井出「………」 戻ってきてみれば、荒れ放題の世界の中心に、 固まって色褪せた血痕と、すっかり泉になっているクレーター。 そして、無造作に転がっているエクスカリバー。 中井出「伯……」 ここでどんな戦いが巻き起こったのか、俺は知らない。 自分の都合で勝手に伯に力を託して、自分は気絶したからだ。 目覚めた時にはとっくに全ては終わり、恐らく伯は─── 中井出「………」 静かに歩み寄り、エクカリバーに触れる。 途端に指から腕へ、腕から脳へと駆け巡る強い“意志”。 “彼”はそこに居て、ずっと俺を待っていた。 声  『……感謝する───』 たったそれだけ。 たったそれだけを俺に伝え、今度は彼が俺へとバトンを渡した。 あとは任せると。 自分が倒し切れなかった相手を、今度はお前が、と。 そう言われた気がして、俺は涙が出そうになるのをぐっとこらえ、柄を握り締めた。 握り締め、立ち上がり、血に塗れたエクスカリバーを掲げ、空を仰ぐ。 眩しい光が、固まった血がこびりついた剣を照らしていた。 中井出「…………一緒に、行こう。俺だけが背負うには、重すぎるよ……」 霊章から火闇が上がる。 ソレはエクスカリバーをこびりついた血液ごと飲み込むと、俺の中へと溶け込ませた。 その途端に頭の中に流れ込んでくる映像。 長き時を孤独に生き、復讐を願い、 誰に理解されることもなく己の意思を貫き通した男の生涯が、俺の中に刻まれる。 中井出「………………うん。覚悟しろよ、伯。もう孤独だなんて思わせないからさ」 行こう。 貴公と、霊章に眠る様々な意思とともに。 俺達は───一心同体だ! 中井出「(よし)!」 どうせ今日も明日もジュノーンは動きやがるだろう。 出来れば今日は遠慮してもらいたいんだが……いや! 備えあれば嬉しいなと天地親父も言っている! ジュノーンの不死をなんとかするためにも戒めの宝玉の破壊を再開させよう。 いい加減果ての見えない争いに決着をつける時だ。 ……ち、違うわよ? 残りの守護竜の素材を使って武具を強化したからとかっ……! そ、そんなんじゃないんだからねっ!?《ポッ》 などと頬を赤らめてる場合じゃなくて。 中井出「じめじめするの嫌いだからさ、貴様の死なんて笑い飛ばしてくれるわ。     うっしゃ〜い行くぜ伯〜〜〜〜っ!!     今度デスゲイズに会った時こそ、あいつの最後だぜ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」 伯の意思によれば、あいつは右腕を失くした。 それだけでも戦いやすくなっただろう。 顔面の骨にもヒビが入り、相当モロくなっている筈だ。 中井出「はぁ……それでもまだまだ強いんだろうけど」 思わず出る溜め息に、自分自身で苦笑した。 さてと……残りの守護竜は、あとスカルドラゴン、デスゲイズ、ジハード……わあ。 確認する度にヘコむ。 そうだよなぁ、スカルドラゴンも居るんだよなぁ。 暴走し始めたスカルさんをナーヴェルさんが死の気配で宥めてくれたのはよかったが、 このまま押さえておける相手でもない。 それと…………ジハード。 世界中を旅してマールと魔王の盾を探したけど、 その姿を見たことなんてただの一度もなかった。 いっそ本当に存在するのかと疑ってしまうくらい、あまりにも幻の存在だ。 何処に居るんだかな……。 中井出「……うむ。今はそれよりもだ」 クレーターの泉で僕を待ってる泉の精霊にお待たせと言って、猫の里へと転移する。 一定量の水があるところにならば転移できるのが強みの彼女は、 実に頼り甲斐のあるおぜうさまだった。 ───……。 ……。 そうして、猫の里に戻るに至り─── 中井出 「だれぞ!だれぞある!!」 アイルー『オウヘルイェー《ズシャア!》』 戻ってくるなり叫んでみると、 大変ありがたいことに長老猫たるアイルーが飛んできてくれた。 中井出 「キミもノリがいいねぇ」 アイルー『旦那さんにだけニャ』 ポスン、と低いハイタッチをして笑い合う。 ……おっと、用件はそれがしたかったってわけじゃなく。 中井出 「猫よ。《チャギィンッ……》うぬを猫と見込んで頼みがある」 アイルー『ニャッ…………そうかニャ……シドが逝ったニャ……?』 取り出したジークからエクスカリバーをエジェクトしてみせると、 アイルーは悲しそうに頭を下げた。 けどすぐに気を取り直すと、俺の目を真っ直ぐに見て先を促す。 アイルー『旦那さんがそれをボクに見せるっていうことは、      なにかしてほしいことがあるってことだニャ?』 中井出 「うむ。伯とセトの記憶によると、このエクスカリバーは未完成だ。      いや……未完成って意味とはちょっと違う気もするけど、      とにかく足りないものがある。それがなんなのか、お前の目で確かめてほしい」 アイルー『……キャットアイ《カッ!》…………英雄剣エクスカリバー。      古の鍛冶屋がノヴァルシオの秘宝を用いて鍛えた二振りの内のひとつニャ。      鍛えた本人はこれで満足していたようだけど、      もう一人居た鍛冶屋はそれで納得しなかったニャ。      それをセトとシドには話しておいたけれど、      その材料はついに手に入らなかった。      材料の名前は───静寂の雫、真龍王の芯骨、黒飛竜の尖鱗』 中井出 「………アレ?」 真龍王の芯骨、って………… 中井出 「あの。僕真龍王の芯骨だけなら持ってるんだけど……」 アイルー『ニャニャアッ!?バ、バハムートがデスゲイズに負けて以来、      絶対に入手不可能って言われてたのニャ!どこで手に入れたニャ!?』 中井出 「あの……デスゲイズに“ぶんどる”やったら盗めて……」 アイルー『大したハンター根性ニャ、旦那さん……』 それは、褒めているのか呆れているのかよく解らない、微妙な視線だったという。 アイルー『ケド旦那さん。静寂の雫に関してなら、もう手に入ってるニャ』 中井出 「……え?そうなの?」 アイルー『この自然要塞に安置してあるテオダール。      王の静寂から零れ落ちるソレがそうニャ。      数年に一度だけ零すと云われていて、今丁度一雫だけあるニャ』 中井出 「じゃあ、あとは───」 アイルー『黒飛竜の尖鱗……神竜ジハードの鱗だニャ』 ジハード……見たこともないって思ったばっかりなのに、 よりにもよってそいつの鱗が必要って…… 中井出 「言ってはなんだが猫よ……ジハードは本当に存在するのか?      ここ二年でいろいろな場所を回ったが、それっぽいのは見たこともないが」 アイルー『一度だけ見たことがあるニャ……───飛竜にして守護竜。      その強さはどの守護竜よりも上と云われ、      飛竜でありながら“神竜”と呼ばれるほどの存在として崇められ、      今でもその存在を崇める“鬼面衆”という軍団があるほどなのニャーーッ!!』 中井出 「………」 アイルー『………………。……鬼面?』 こてり?と……猫の首が傾いた。 中井出&アイルー『アァアーーーーーーッ!!!!』 鬼面!鬼面って───!! 中井出 「仮面の軍団!!」 アイルー『マールを連れ去ったヤツニャーーーーッ!!!』 中井出 「馬鹿!ルーちゃんの馬鹿!なんで今までそれを黙ってたの!」 アイルー『ボクだってド忘れくらいするニャーーーッ!!      ボクが今までどれほど生きてきてると思ってるニャーーーッ!!?』 中井出 「ぬ、ぬう!それもそうだった!おじいちゃんおこづかいちょうだい!?」 アイルー『旦那さん混乱してる場合じゃないニャ!』 中井出 「はうあそうだった!!」 な、なんということだ……!こんなところに糸口が……!手がかりが……! そうだよな……この世界のことで、 アイルーが知らないことなんてほぼ無いって言っても過言じゃない……! 伯が様々なことについて博識だったのと同じく……いや、それ以上に、 鍛冶屋猫という誰かと接触しやすい職業に立つ超猫!! その情報力は他者に追随を許さぬ量だった筈! それを本猫が忘れてりゃ世話ないけどね、うん。 中井出 「で!その鬼面の集団は何処に!?」 アイルー『さすがに知らないニャ!』 中井出 「じゃあそのジハードは何処に!?」 アイルー『……《スゥウウ……》───天!!《ビッシィイイイッ!!》』 中井出 「は、ああ……!!」 ラオウのように雄々しく天を指差す猫を前に、 思わずごくりと息を───飲んでる場合でもなくて! 中井出 「空!?また空なのか!?」 アイルー『ボクはかつて、イルムナルラの聖域でジハードを見たニャ。      満月の夜、大空に白銀の竜が舞ったその日、ボクは確かに見たんだニャ。      夜の空なんて明らかに薄いって思える、漆黒の飛竜を。      もうず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと昔のことだから、      あまりアテにならないけどニャ』 中井出 「む、むう」 月光竜の聖域っていうと、僕がデスゲイズの呪いを解いたあそこですね? あそこに行って満月まで待って、って…………わあ、物凄く気長な作業になりそう。 だがやろう!またシャモンのメタモルフォーゼ見るのもオモシロそうだし! 中井出 「よぅし!これからしばらくは月見パーティーだちょーーーーっ!!」 アイルー『ニャニャッ?空の大陸に行くのかニャッ?』 中井出 「イエスアヴドゥル!さあみんな乗った乗った!      ……そういやさ、霊章融合させてないやつらを乗せたまま、      エーテルアロワノンを霊章に仕舞ったらどうなるんだろう」 アイルー『ベキッ!ゴキッ!ミシッ……!      ある日うっかり誰かを乗せたまま要塞を仕舞った旦那さんは、      自分の腕から骨が砕ける音と肉を破裂させて血が噴き出る音を耳に……!』 中井出 「おっかないこと言わないでよもう!!」 アイルー『冗談だけど多分それは無理だニャ。      旦那さんの霊章の中はひとつの世界になってるけどニャ、      そこに入れるのは意思になった者と、ボクらのような融合した存在だけニャ』 中井出 「そっか……じゃあ───」 声   「行きますわ」 中井出 「なに!?誰だぁあっ!!」 突然の声に振り向いてみれば、そこには───! 中井出「なんだシャルか」 シャル「なんだとはなんですか!!」 シャルロットさんが居た。 中井出「あれ?ツェルは?」 シャル「わたくしとあの方をセットで考えるのはやめてくださいませ。     ……ヒロミツ?わたくしを置いていこうなどと考えていたのなら」 中井出「そうそう月見行こう月見!みんなで!     何ヶ月も探索ばっかでみんな疲れたでしょ!?だから月見に行こう!     なーにデスゲイズに遭遇する確率ゼロで空の大陸に行くことくらい簡単さ!」 シャル「…………へ?行っていいんですの?」 中井出「バカモン!この博光、仲間を蔑ろにして楽しむほど外道ではない!     ただしその場合、捉えられたりしている者は度外視するが。     ともかーく!月見だ月見!この世界の月の満ち欠けは解らないから今日から月見!     喜べシャモーーーン!!貴様の故郷(?)に今から早速向かうのだ!」 ココンッと竜玉を突付いてシャモンを召喚! クキュウ〜と相変わらず綺麗な声で鳴いて現れるソイツを荒々しく掴むと、 ゴシャーーアーーーーッ!とその場で回転して喜びを露にする! シャモンはそんな荒々しさにも全く動じず、 そればかりか遊んでもらえてると思ってるのか上機嫌だった。 ……さすが、小さくても守護竜ですね。 中井出    「ナギー!シード!」 ナギー&シード『《ズシャアッ!》ここに』 呼びかけると一歩後ろに跪いて出現する二人。 いっつも思うけど、何処で僕の声聞いてるんだろうね……。 中井出「話した通りである!これより我らは天へと……月の聖域へと向かう!」 シード『父上、移動手段は……』 中井出「妖精のゲートをくぐり、浮遊大陸のゲートへ出る。     一番最初に俺達がグラウベフェイトー山を目指した方法である。     だがさすがにこの大人数で向かうわけにもいかん。     霊章融合していない者たちには先に要塞内のゲートで妖精界に飛んでもらい、     融合してある者たちは要塞ごと霊章内に収納。     のちにこの博光が銀水晶でゲートを開き、妖精界へと飛ぶ。     それからは徒歩である」 ナギー『おおなるほどの。考えおるのぅヒロミツ』 中井出「フフフ任せてくれたまえよ。というわけで───ファイクミー!!」  ザザァッ!! 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「これより我らは天!月の聖域を目指すものとする!     なお今現在も探索中の亜人族や僕のキミタチには悪いが、強制収集をかける!     霊章転移!おいでませ!遙か彼方のキミたちやすぐ近場のキミたち!!」  マキーン♪ズゴドシャァアッ!!! 総員 『ぴぎゃあああーーーーーっ!!!』 一度みんなを(目の前に居たやつらも)霊章に引き込み、一気にこの場へ解放! 全亜人族や妖精、時々魔王などが一気に飛び出て、山になったみなさまにやあと挨拶。 ナーヴェル『なっ……なにしやがるっ……!』 中井出  「収集である!これより我らは月の聖域を目指すものとする!       何故か!それは───そこで月見をするからである!!」 総員   『な……なんだってーーーーっ!!?』 主に亜人族の皆様が驚き、ところどころでニャーとかヒエーとか妙な声が上がる。 ジョニー『でも旦那さん、探索はどうするニャ?』 中井出 「うむ、それなんだがなジョニーよ。      アイルーの話によると、怪しいのはその月の聖域らしいのだ」 ミク  『マスター!それはつまり、そこにマールさんが居るということですかっ?』 中井出 「うむ!確信は持てんが怪しいことには変わりなし!!」 ミク  『で、でもでもですよ?以前月の大陸を探した時には、      そんなもの見つかりませんでしたよっ?』 シェーラ『そうだ。空の大陸にわたしたち以外の住人など居なかった』 中井出 「そう…………その知識こそが穴っ…………!      見落としてしまう小さなっ…………!」 シェーラ『なに?』 カイジ顔で汗を垂らしながら言ってみても、いまいち緊迫感は得られなかったらしい。 普通に返されてしまった。 アイルー『ボクの考えはこうニャ。イルムナルラが満月の光で変化するように、      仮面の軍団……鬼面衆も、      なんらかのカタチで変化を得て現れるんだと思うニャ。      たとえば妖精界のように別の世界の住人だとか、      満月の夜でなければその世界への扉が開かないとか、きっとそんなところニャ』 言われてみて、それはなるほどと思った。 満月じゃなければ開かない扉……それはありそうだ。 じゃなかったら、あれだけくまなく探しても見つからなかった、なんて事実も頷ける。 シェーラ『だがこの変態の呪いを解く際、月の光を利用した時はそんな扉など───』 中井出 「ム」 それはそうかも。 あ……じゃあ。 中井出  「じゃあグレイジャーゴンに訊いてみればいいんだ。       ずっと空の大陸に居る彼ならきっと、そのことも知ってるだろうし」 アイルー 『それは名案だニャ!』 シード  『さすが父上だ!それでは早速───』 中井出  「───!待て!シード!」 シード  『《ビクッ!》はっ……ち、父上?なぜ……』 中井出  「シード……落ち着くのだ……!貴様は大切なことを忘れている……!」 シード  『た……《ごくり……》大切な…………こと……!?』 中井出  「うむ……!───月見に行くのに団子を作らんでどうする!!」 シード  『《ガァアーーーン!!》そっ……そうだった!!       父上……僕はもう少しで……!もう少しで大変な過ちをするところでした!』 中井出  「うむ……!うむ……!解ればいい……!解ればいいんだ……!!」 ナーヴェル『…………なぁ。あいつらいつもあんななのか?』 アイルー 『いまさらだけど、まあ概ねそうニャ』 ナーヴェル『………』 アイルー 『羨ましいなら混ざるニャ』 ナーヴァル『そーだなっ!シードォオッ!魔王ぉおおっ!!』  がっしぃいっ!! よく解らんノリのまま、僕らはガシィと抱き合った。 それを見て羨ましく思ったナギーが飛びつき、 ミクが飛びつき、ノリに釣られたジョニーが飛びつき、 やがてその飛びつきはとうとう総勢にまで及び、のちに意味もなく大声で笑った。 そうする頃には霊章の中の伯も鮮明に意識を手にして……暖かく、笑っているようだった。 ───……。 ……。 ジャジャーーーーン!!! 中井出「勇ゥウウウ者ァアアアーーーーーーーッ!!!」 ブブー!! 中井出「解ってたさ……」 そんなこんなで妖精界。 せっかくだから久しぶりに勇気を示しに来てみたけど、 石碑は赤く光るばかりで、僕に武具を譲っちゃくれませんでした。 勇者の武具ねぇ……ほんとにもらえるヤツ居るのかな、これ。 ───……。 ……。 で!はい!空の大陸です! 相変わらず綺麗な景色! 自然のマナがここにも届いてたのか、やっぱり大自然風景が広がってる! まさに絶景! ジノ 「提督、これからどちらへ?」 中井出「うむ!もう十二年も前なので行き先を忘れた!!」 ジノ 「そ、それは……さすがというか」 既に子供たちも僕の本性になど気づいている。 それでも慕ってくれるのは……どうしてなんだろうねぇ? エィネ『わたしが案内しますよ、博光さん。まずあそこのワープホールに入ってください』 中井出「謝謝」 シャル「魔王なのに知識が薄いのは相変わらずなのですね」 中井出「ほっといてよもう!」 言いながらワープホールを通り、別の大陸へと転移。 エィネ『次にあそこの……右から三番目のワープホールへ』 中井出「うむ」 促されるままに潜り、再び転移。 次も、その次もと繰り返し、グラウベフェイトー山へ。 以前はそこにあったマクスウェルの空中要塞は既に無く、半球のように抉れた大陸が、 確かにそこに要塞があった事実を物語っていた。 そういや落ちたんだっけ、あれ。……正確には俺が宝玉盗んで落としたんだけどさ。 ここまで来ればもう各馬一斉に〜って飛んでもいいんだけど、 月見とはやはり辿り着き、そして帰るまでが月見! ピクニック気分で徒歩できたのなら、最後まで徒歩るのが北斗神拳。 じゃなくてピクニック。 そんなわけだから最後まで徒歩りきるとしましょう。 ジノ 「すごい……見上げたことはあったけど、こうして歩けるなんて……」 タキ 「空にある時は小さいと思ってたのに、こんなに広かったなんて……」 ラキ 「すごいなぁあ……!」 子供たちは燥ぎ通しだ。 やはりまだまだ子供……こういったものごとにはワクワクさんが押さえられんようだ。 もちろんそれを咎めることはしない。 仕事とプライベートは別ってやつさ。 修行している時以外は燥いでもいいじゃない。 もちろん、修行も楽しく出来るのが一番だけど。 中井出「YEAH(イエア)ァアーーーーッ!!!《コシュッ》」 そんなわけでグレイジャーゴンの巣に辿り着くや、両手を天に伸ばして指パッチンをする。 ……見事に失敗して、コシュッて鳴っただけに終わったけど。 グレイドラゴン『…………』 中井出    「………」 あの……なんですかその“またお前か”ってフェイス。 グレイドラゴン『またお前か……』 言われた! ジノ 「ド、ド……!」 ラキ 「ドラ……ド……!」 シャル「ハ、ハワ……ハワワ……!!」 ツェル「…………」 ……あれ?……あ、そういやみんな初めて会うんだっけ。 月見気分でやってきてみりゃ竜族と邂逅じゃあ、さすがにたまげるよね。 中井出「みんな紹介するね?元素の守護竜にして月光竜のことならなんでもお任せ!     グレイドラゴンさんである!!」 シャル「しゅごっ……しゅごごっ……!守護、竜……!?これが……!?」 中井出「うむ!」 威厳ある顔立ちに、コルルル……と唸るたびに空気さえ震えているような感覚を覚える。 守護竜の中で唯一ガチンコバトルに発展せずに宝玉をくれた存在だ。 グレイドラゴン『今度はなんの用だ……貴様の顔など見たく───』 中井出    「シャモンと月見をしに来たんだ。シャモ〜ン?《ココンッ》」 シャモン   『クキュウ〜〜〜ッ♪』 グレイドラゴン『《デレェッ!!》お……おぉ〜〜〜ぉおイルムナルラァ〜〜〜ッ!!!』 ジノ     (うわっ!鋭い顔つきが一瞬でデレデレなだらしない顔に!) ラキ     (すごい!) タキ     (守護竜すごい!) ジノ     (守護竜すごくキモい!) タキ     (キモい!) 言われてんぞ守護竜サマ。 中井出    「ところであのー、訊きたいことがあるんだけど」 グレイドラゴン『《キリッ》何故我が貴様の言葉にいちいち返事を───』 中井出    「じゃあ帰る。行くよ、シャモン」 シャモン   『キュウ』 グレイドラゴン『任せるがいい!なにを隠そう、我は会話の達竜だぁあっ!!』 相変わらず可哀想なくらいチョロいヤツだった。 グレイドラゴン『それで……なにを訊きたいんだ』 中井出    「あの……真面目な顔して僕を見ながらシャモンに頬擦りするの、         気持ち悪いんでやめてもらえませんか?」 守護竜がみんなこんな風だったら、 あそこまで死闘を繰り広げることもなかったんだけどなぁ。 ジョニー『ニャニャアアアーーーーウ!!あんなところに鉱石があるニャーーーッ!!』 ジニー 『早速掘るニャ!』 イッケク『空の岸壁の鉱石ニャ!きっと珍しいに違いないニャ!』 猫たちは猫たちで、勝手に霊章から出ては素材探索ツアーに出かけちゃうし。 ああ、ほんと緊張感ないね。嬉しいけどさ。 中井出    「ええっと、訊きたいことっていうのは……鬼面衆のことなんだけど」 グレイドラゴン『《ピクリ》…………その名を、何処で知った』 あれ?なんだか急に空気が張り詰めたものに…… 中井出    「あそこで鉱石採掘してるアイルーの族長に」 グレイドラゴン『……あの猫か、なるほど。         ということは目当ては月見などではなく───ジハードか』 中井出    「解るの?いや、そもそも知ってるの?」 グレイドラゴン『ジハードはこの世界の飛竜ではない。         空間から空間へと移動を続けるとんでもない飛竜だ。         それ故に時折妖精の世界で見ることもあり、         それもまた空間移動をするが故の発見だろう』 中井出    「く、空間移動する飛竜……?」 なんだそりゃ……転移出来る竜、って考えていいのか……? 中井出    「その、ジハードはどうやって空間移動なんかを───」 グレイドラゴン『ヤツは“空間の捻れ”を創造する。一部で創造竜とも呼ばれ、         ヤツを信仰する鬼面衆どもは、だからこそ創造主、神竜と呼び、崇める。         鬼面衆どもはな、ジハードが開けた捻れを通してこの世界へ現れる、         厄介な異空間の住人だ。この世界でどう探したところで、         そうそう発見できる存在ではない』 あ……たはー、道理で……。 二年も探して見つけられない理由がそれか。 ……と、過去を残念がるよりもだ。 中井出    「……そいつが創造出来るのって、空間の捻れ…………だけ?」 グレイドラゴン『馬鹿な。それだけで創造竜と呼べるものか。         ヤツは様々なものを創造する。         飛竜種だというのに守護竜の名を冠するのだぞ。         バハムートとやり合って死ななかった飛竜なぞあいつくらいなものだ』 ……あ、どうしよ。 今どうしようもないほどに“うへぇ……”って言葉が喉から出た。 中井出    「竜なのに創造が使える……不思議!         でもそのジハードの尖鱗ってのが欲しいって言ったら!?」 グレイドラゴン『死にに行くようなものだ』 中井出    「ですよねー!」 なんかもう僕ってこんなのばっかりですね。 どうしてこう強いヤツとの遭遇率が高いんでしょう。 それは僕が強い武具を求めるからですね。解ります。 ジニー 『だめでさ、銀どころか錫さえねぇ』 ジョニー『親方、空から女の子が!』 アイルー『降ったりしてきてないから掘るニャ!!』 猫たちは猫たちで妙にハッスルして掘りまくってるし。 だがやると決めたなら博光よ、既に行動は始まっているんだ。 中井出    「それで、ジハードの出現する場所ってのは?」 グレイドラゴン『ヤツは夜を好む。だが漆黒を好むわけではない。         現れるとするなら満月の夜だ。闇に存在する眩い光を最も好む』 中井出    「なるほど、だから満月に」 グレイドラゴン『そういうことだ。光は純粋であればあるほどいい。         能力などで無理矢理作った光には惹かれはしない』 中井出    「そ、そうですか」 難しいところだなぁ……ていうかやろうと思ってたことを先読みして潰すのやめよう? 無駄な労力使わないで済んだけどさ……。 中井出 「そうと解ればレッツビギンだ!さあみんな!月の聖域に───」 シャル 「びゃああああーーーーーーーーっ!!!」 ツェル 「あ、あのっ、魔王さん、シャルさんがその、あまりの恐怖に粗相を……!」 ジノ  「……ステキだ……《ポッ》」 閏璃  「ディーガー!ディ−ガー!」 レイル 「わーかめ好き好きわーかめ好き好き!」 閏璃  「なんたぁってなんたあって!」 レイル 「わかーめらーめん!」 アイルー『ディガーの歌からどうしてわかめになるニャ!?』 ジニー 『だめでさ、銀どころか───』 アイルー『それはもういいニャ!』 ナギー 『シード、これはなにに使うものじゃ?』 シード 『これは……供え物とかを置くものだろ。生贄とかにも使うんじゃないか?』 シェーラ『それは供え物を置く台だ。かつて我ら天使族が───』 中井出 「……あの……」 なにこのカオス空間。 アルェー?僕もっとこう、オー!って返事を求めた筈なのに。 ナーヴェル『シードォオオオッ!!ホレ!テンクウヘラクレスオオカブト!       空の大陸にしか生息しないカブトムシだぞぉぅ!』 中井出  「なにそれすげぇ!」 閏璃   「見せて見せて!」 レイル  「オッ……おぉおおカッケェエーーーーッ!!!」 ナーヴェル『なっ!?かっけぇだろ!?おらシード!パパんとこ来い!かっけぇぞ!』 そして言った僕もあっさりカブトムシに夢中になった。 ミク   『マスター!マスター!変わったお花を見つけましたよぅ!       ほら!腐った血肉の香りがするんです!』 中井出  「ただのラフレシアだよそれ!!───ヒィ!蠢いてる!生きてるよそれ!」 ミク   『褒めてください!』 中井出  「何を!?」 ダルトロス『おぉーーぅい!団子一本もらって構わんかー?』 中井出  「メッ!夜まで我慢しなきゃだめでしょ!?」 イッケク 『酒ならあるニャーーーッ!!』 ダルトロス『おぉっほほっ!これこれ!』 レアズ  『ここここここちらにも頼む……!』 アイルー 『レアズ……いい加減外にも慣れるニャ……』 ミク   『褒めてもらいたいんです!       とにかくなんでもいいから褒めてもらいたいんですよぅ!       最近のマスターはいろんなことに気を回してて、       わたしのこと蔑ろにしすぎなんです!わたしヴォーカロイドですよ!?       一緒に歌ったりとか歌を作ったりとかいろいろやって、       上手くできたら一緒に喜んだり褒めてもらったりされたいんですよぅ!』 閏璃   「よっ!提督さん愛されてる!」 レイル  「ヒューヒュー!」 中井出  「やめなさいゴリラ顔でヒューヒュー言うのは!!       ええいもうとにかく褒めればいいのだな!?動くでないぞミクよ!」 ミク   『ふえっ?《シュバババババババシャキィンッ!!》あ……』 中井出  「ポニーテール……完・成……!!──────美しい」 ミク   『《ボッ!》ひひゃえっ!?う、うつ……!?ま、まままますた……!?』 中井出  「はい褒めた!褒めたよ!?ていうかああもう可愛いなぁ!!       やばい!俺やっぱりポニーテール大好き!!       よ〜〜〜〜〜〜しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし!!」 ミク   『《なででででででででで……!!!!》ふやわやわぇあぇあぁああっ!!?』 中井出  「よしよしよしよし《びしゃぁんっ!!》いたぁい!?」 もはや収集つかなくなるほどの騒ぎの中、 ミクを撫で回しまくってたら突然弱点である背中に鞭で叩かれたような痛み! ……しかし振り向いてみても、ゆらゆら動く草があるだけで、誰も居ない。 エ……なに? 大自然が嫉妬してるの?大自然が……自然が……あ。 中井出「いやちょっ……ドリアード!?違うよ!?僕はただミクを褒めてただけで!!     べつに愛を囁いてたとかそんなんじゃ───はっ!     何故か地面からどんどんとツル状植物が生えてきて……!!     いやちがほんとちが婚約したのに浮気とかそんないやちょっとやめほんとやめ僕そ     んなつもりじゃヤメヴァーーーーーーーッ!!!!」 その後わたしは何本も生えたツルの植物によってボコボコにされた。 ツルって案外痛いんですね……。 ほんと鞭みたいで、凶器ですよって言われても思わず頷ける痛さでした。 そんなことがあっても騒ぎ続ける皆様…… もうほんといつの間に霊章から出たんだって感じだけど、 騒ぎ続ける皆様を涙目で眺めながら…………結局、まあいっかって思えた。 少し楽しんでいこうか……夜までまだ時間あるしね。 Next Menu back