───冒険の書318/相性の問題───
【ケース793:晦悠介/その後の彼ら彼女ら】 太陽の光が降り注ぐ空の下、剣を構え、意識を沈める。 剣はいつでも振れるよう軽く、だが振ってもすっぽ抜けない程度の脱力を以って握る。 悠介 「トランス《キィイイ……》───疾ッ」  フォファファフォフォフォフォフォンッ!! 悠介 「……はぁ」 修錬もいよいよ大詰めに入り、武具の修錬に入ってから数週間が経った頃。 “虹”の使い方も理解し、それが馴染むと、 キリトはゆっくり頷き、基本修錬の終了を告げる。 全員 『うっしゃあああーーーーーーーい!!!』 その言葉に全員が喜びの声をあげ、 それぞれがハイタッチやハグをして喜びを確かめ合った。 だが……終わったのは“基本修錬”。 残る実戦修錬を終えなければ、真の治めとは言えなかった。 長老 「実戦修錬はそう難しく考えることはない。     たった一人をお前ら全員で倒せばいい。ただそれだけだ」 彰利 「そのたった一人がとんでもない相手なんですよね?長老サマ」 長老 「ああ。お前らもよく知る相手だ」 悠介 「よく知る……まさか魔王とか言うんじゃ───」 長老 「いいや、それよりももっと世話になっている筈だ。     ───では頼むぞ。こてんぱんにしてやってくれ」 世話に……?と考えを巡らせるより先に、ずっとそこで待っていたのか、 少し離れた位置にある大木の後ろから出てきて、ゆっくりと歩いてくるソイツ。 ………………その顔に、嫌が上でも見覚えを……覚えるどころか、見間違えるわけがない。 神父 「では始めよう。わたしが貴様らの相手、無の精霊の神父さまだ」 全員 『ホゲェエエーーーーーッ!!!?』 俺達に電撃走る…………っ! まさか、ここに来てまさかの神父…………! 神父 「はっはっは、頑張れよ貴様ら。無の戒めが破壊されてないからって、     俺様は他の精霊よりやさしくねーぞ」 彰利 「しっ……神父らしからぬ口調!」 藍田 「なんなのお前今まで猫でも被ってたの!?」 神父 「被っていたのはシベリア虎だ」 岡田 「猫科だけど意味なさそう!!」 清水 「居るの!?この世界にシベリア虎居るの!?」 神父 「というわけでおらー、とっととかかってこーい」 彰利 「長老!?こいつ滅茶苦茶やる気ないんですけど!?」 長老 「戦えば解る。己の強さを知り、敵の強さを噛み締めろ、今回はそういう修錬だ。     なにも本当に勝てとはいわない。己の最大と最低を頭に叩き込め」 と、言われてもな……いや。 ここで積んだことに無駄はなかった。 だったら以前の自分とは違うと信じて、己の最大と最低を見極める!! 悠介 「彰利」 彰利 「む……う、うし、OK。皆のものゆくぞ!将軍様に続け!!合戦である!!」 全員 『ウォオオーーーーーーーッ!!!』 彰利が篭手を纏った右手を天へと突き上げると、後ろに居た全員が武具を手に吼え猛る! よし!気合い十分!まずはトランス無しの“最低”を見極める───!!  …………その後、5分と経たずに全員ブチノメされたのは言うまでもない。 ───……。 ……。 長老 「なんというか……随分とまあ底辺を知ったようだな」 全員 『強すぎなんだよこの神父がっ!!』 神父 「はっはっはっはっは。……おお旅人よ!負け犬の遠吠えとは情けない!!」 全員 『うぐぐおおぉっほぉおおおお…………!!!!』 つくづく人を怒らせるのが上手い神父である。 そんな神父がざっと俺達を見渡して、 神父 「うん?なんだ、あの村人男は居ないのか」 とだけ言う。 比較的前側に居た俺と彰利に届いた程度で、それはひどく小さな声だった。 神父 「まあいい、ホレ立て、もうあらかた回復しただろ。     次はトランス状態で全力だ。勝てたら褒美が出るかもしれねーぞー」 彰利 「マジで!?」 神父 「俺はウソが嫌いだ」 彰利 「よっしゃあ忘れんじゃねーぞその言葉!」 神父 「忘れねぇ忘れねぇ。出るかもだから、出すも出さないも俺の勝手だしな」 彰利 「ホントウソ嫌いですねアナタ!!」 そんなこんなで二回戦、トランスバトル。 説明すると、トランスってのは一種の集中状態だ。 それは一般的に“ゲームに集中する〜”とかそういったものではなく、 精神を集中させるもの。 精神統一……だな、ああ、それが近い。 “余計”を一切無くす、精神ごとを武器にする神秘。 自分にはそれが出来ると信じさせる、一種の催眠状態だ。 そんなトランス状態を解放したまま自分の意識を織り交ぜるために必要になったのが、 この“虹”の能力だった。 虹には精神力を爆発的に向上させる能力が秘められており、 技として精神の爆発を放てば“シャイニング”という無属性の攻撃にもなる。 だがそれをあくまで精神のバックアップに回し、 自分の意思を幅広く保ったままにトランス状態を続けるのが、虹とトランスの相乗能力。 その点に関しては、虹の素材が揃っていたことは運が良かったと長老は笑う。 だからこそ、もしあそこで魔王が虹色の貝殻をくれなければ、と考えることがある。 神父 「おら〜、さっさとトランスしろ〜」 ……っと、余計なことだったな。 今は集中しよう。 ……。 …………ちなみに。トランスしても10分保つこともできなかった。 【ケース794:中井出博光/月の聖域にて】 ………………。 中井出「………………」 満月を待って数週間。 ……満月はまだでしょうか。 ナギー『ヒロミツ〜……退屈なのじゃ〜……』 霊章から出現させた自然要塞の砲台広場で寝転がっている僕。 そんな僕の腹の上にポフリと乗っかってきて、 うつぶせに寝転がりながら、ぶー、と口を尖らせる。 うん、そんなの僕だって同じなのですよナギー。 ……ここ、月の聖域は相変わらず殺風景な場所だった。 唯一、シャモンがなにか感じるものがあるのか、飽きずに飛び回っているくらいで、 もう何週間もこの場に釘付けな僕らはいい加減ぐったりマイハート。 ナギー『ヒロミツヒロミツ、あれをやるのじゃ〜』 中井出「ぬうまたか?いいけどさ」 くるり……ガッ!ガキッ! 中井出「ロメロスペシャル!!」 ナギー『《ぐい〜〜〜……!》はぐぐぐぐ……うぃいいい〜〜〜……♪』 僕の腹の上でうつ伏せ状態だったナギーを仰向けにさせて、 その足に器用に自分の足をからめ、 さらに腕を捻るように掴み、一気に天空へと持ち上げる。 退屈な時間が続くと、意味のないことでも楽しめてくるから不思議である。 このロメロスペシャルも以前、同じく俺がここで寝転がってる時に、 構ってくださいと駄々をこねたミクにお見舞いして以来、 なにかというと要塞のみんながやってくれとねだってくる技のひとつである。 ……なんでも、背中の筋が自分の意思とは関係なしに伸ばされるのがたまらんのだとか。 ちなみにミクさんはこれがくすぐったいらしく、意地でもやられたがりません。 代わりによく僕の脇腹をマクラにして寝ます。 暇に任せて一緒に歌うことも今ではよくあり、 そうなると要塞内のみんなで歌うことになり、 人前で声をあげる恥ずかしさなんてなんのその、 ヒートアップする頃にはみんな笑顔で歌ってたりする。 ジノ 「シャル姉さん!僕とその……つ、付き合ってください!」 シャル「わたくしはヒロミツの王妃ですからお断りですわ」 ジノ 「提督の!?……提督ぅうううっ!!     恩を仇で返すようなっ……なんたる不忠義ぃいっ!!     ごめんなさぁあああいい!!《びゃぁあああーーーーーっ!!!!》」 中井出「わーーー!わかったわかった!頼むからその滝泣きやめてぇえええっ!!」 どんなスキルなのか、シャルが粗相をして滝泣き(滝のような涙泣き)をしてから、 子供たちまで滝泣きを真似し始めた。 しかもそれが本気泣きだから始末に負えません。 そしてこんな暮らしを続ける中で、 どんどんと現実世界のドリアードさんが静かに嫉妬を募らせてゆき……! 中井出「へ、へへ……嫉妬されるのは男の勲章……だぜ?」(注:やせ我慢) 俺は麻衣香を愛していた。 だがもはや歴史は変わり、麻衣香はカルナを愛してる。 紀裡もカルナの子供って歴史に変わってしまってるんだろう。 だから俺が未練を残すわけにもいかないし、 相手にしてみりゃ俺が勝手にどう思ったって俺は魔王でしかないわけで。 もういいかなって思える頃には、僕も自然とドリアードを受け入れてました、ハイ。 ドリアードの方はもう、僕が“婚約する”って言った時点から心に決めてくれてたみたい。 それでも彼女は耐える女です。尽くす女です。 でも時々そのゼラスー(ジェラシーといいたい)が零れ出して、 自然満載のこの世界が僕を攻撃したりする。 なんならいっそ汝も入ってみるか?とのノートン先生の提案もあったんだけど、 ドリアードはその先を想像して、気絶してしまったそうな。 想像で気絶するなら、傍に居るのは相当危険だよね、うん……。 ……とまあ、デスゲイズ強化の一件も、なんとか撃退できたから追及はしなかったけど。 それによって伯が死んだんだ〜とか精霊側に言う気もなかったし、 伯は自分がそうしたいから命を賭した。 それをあーだこーだ言うのは、彼の命に対して失礼無礼で最低だ。 本人がそれで良しってやったんだったら、周りの意見なんてどうでもいいんだ。 シャル「ヒロミツ、わたくしは諦めてなどいませんからね?」 中井出「諦めていいんだけど……」 そんなこんなで、僕もドリアードを受け入れたわけですが、 そうなると困るのがシャルロットとの一方的婚約騒動。 ええ、もちろん僕も男じゃけぇ、 僕には愛し合う相手が居る!ときっぱり言って婚約は破棄。 その場は頷いてくれたものの、シャルはあれで結構僕を気に入ってるらしい。 恋愛は自由だとは言うけど、僕……モテとかそういう次元に居ていい人間じゃないから、 勘弁してくださいと本気でお断りしました。 シャルはとても悲しそうな顔で…… ていうか泣いて僕にビンタを一撃どころか何発も気が済むまでかましましたが、 途中で叩いたことを後悔したのかごめんなさいして、 お互い泣きながら(俺は頬の痛みで)謝って元のサヤ。 仲間であることは認めてくださいと請われ、仕方なしもなく、素直に了承。 べつに嫌いになったわけじゃないしね。 ミク 『マスター!歌いましょう!』 中井出「よしきた!」 そんなわけで俺達の関係は、多少変わったものの、静かな状態を続けている。 ナギーがやたらと甘えてくるのはドリアードの心故と受け取っていいのかなぁと思いつつ、 来る者拒まずで甘やかしまくってとろけさせてる僕だけど、 ノリに乗れば甘やかしてばかりでもない。 中井出「お〜さ〜〜〜ないぃあ〜の〜日ぃにぃ……は〜はにぃ抱ぁか〜れぇて〜……     い〜つもぉ聞いてぇいぃた、歌が〜懐か〜し〜い〜……♪」 ナギー『うう……!心にズンと来る歌よの……!』 中井出「アイキャンフラァーーーーイ!!」 ナギー『ジューーールド!!』 中井出「ユーキャンフラァーーーーイ!!」 ミク 『ジューーールド!!』 中井出「ウィーキャンフラァーーーイ!!」 シード『ジューーールド!!』 総員 『モットモットォーーーーーーーッ!!!』 ジュール=ド=モット伯を称える歌を歌いつつ、今日も満月ではない月夜に騒ぐ。 退屈なら騒げばいい。 幸いにして、ここに居るみんなは騒ぎ好きで、 誘えばすぐにでも笑い合える気心知れた連中だった。 閏璃 「提督さん提督さん!ついにやったぞ!幻の銀蝿を捕まえた!!」 レイル「マジでか!?───うわぁマジだ!!」 中井出「うぉおお本当に銀だ!すげぇ!銀蝿すげぇ!!……硬い!すげぇ硬い!!」 ネネ 『旦那さん旦那さん!畑でオオモロコシが採れたニャ!     焼きオオモロコシにしてみんなで食べるニャー!』 ミク 『マスターマスター!オリジナル曲作りましょうよぅ!』 中井出「銀蝿狩猟記念で“ギンヴァエ”というオリジナル曲を!!」 総員 『イエーーーッ!!提督イエーーーッ!!』 ミク 『なんかいやですーーーーーーっ!!!』 中井出「大丈夫だよミク……俺が貴様を蔑ろにするものか。     ちゃんと作ったら一番に歌わせてやるからな……?」 ミク 『マスター!?目が物凄く笑ってますよ!?』 中井出「笑ってるとも!面白いんだから当然だ!」 楽しめる世界に居る。 それは、なによりも得難く眩しいものだろう。 俺はそれを大事に……とは行かないまでも、自然体にずっと続けばいいなと思った。 ───……。 ……。 そして……やがてなんだか目的意識も薄れてきていた夜。 東の長老に教わった修錬を閏璃やレイル、子供たちに教える日課が終わった頃、 再びみんなで騒ぎ始め、今日はナギーと協力して花火を作ったぜ〜〜〜っ!と燥ぐ僕ら。 大小様々、色とりどりの花火を輝かせ…… やがてシメの超特大粉塵花火を打ち上げようと、筒に繋がった導火線に火をつけた時、 それは起こった。 シャモン『ク……クキュ……』 中井出 「……?シャモン?」 ふと、肩に乗っかっていたシャモンに異変。 なに?と見てみると、シャモンはカタカタと震え、体を輝かせ始めたと思うや───  ピキ……ゴバァンッ!! 中井出「《メキメキメキメキ……♪》うぁだいだだぁああーーーーーいあぁああっ!!?」 僕の肩の上でシャモンが巨大化! 月光を身に浴びて、白銀の鱗が眩く輝いてゆく!! これは───はうあ!そういや僕ら満月を待ってたんだっけ!?……満月じゃん!! やあこれはテンテンうっかり!なんて言ってる場合じゃないんだってばさ!! シャモン『コァアアアカカカカォオオオンッ!!!!』 俺の肩から飛び立ち、飛翼をはためかせるその姿は、神々しささえ感じさせるほど美しい。 守護竜の名に相応しい体躯となったシャモンは、 飛翔しながら月を見上げ、遠吠えをするように吼える。 普段なら耳を劈く守護竜の咆哮……だというのに、 シャモンの声はとても綺麗で、もっと聞いていたいとさえ思えた。 そして───月明かりがシャモンの白銀の体を照らし続けると、 やがてそれを吸収したかのようにシャモンの体は輝きを増し───……あ。  『満月の夜、月光竜が───』  『ジハードは純粋な光に惹かれ───』 …………来る。 妙な確信があった。 満月の月明かりと、それを受けて月よりも闇に輝くシャモンの体。 知らされていた材料全て揃っている。 そして……この言い様の無い霊章の躍動が、 まるでバハムートがジハードとの邂逅を待ち望んでいるような─── 閏璃 「───あっ!提督さん!あそこっ!空中の!」 中井出「ぬう!?───オワッ!?」 閏璃に促された見上げた空中。 闇夜の空と満月しかなかったそこに、妙な歪みが現れる。 やがてそこが大きく開き、ついに───俺達は目にする。 幻を、伝説を───!!  コヒューーーンドォンガァアアアッ!!!! ジハード『ゴギャーーーーーーーッ!!!』 総員  『ほぎゃあああああああああっ!!!?』 ジハードだ!と思った瞬間には、空へと放たれた粉塵花火が黒飛竜の顔面に直撃。 直後に大爆発を巻き起こし、 よもや空間の先でこんなものが待っているとは思ってもみなかったであろうジハードを、 この聖域の大地へと打ち落とした。 中井出「ハッ……ハワッ……ハワワワワァアアーーーーーーッ!!!!」 やべぇ……やべぇ!! 最近ほんと目的忘れてたから、調子に乗って粉塵にいろいろ付加させてたのに……!! うわわわわジハードさん思いっきり目ェ回しちゃってるよどうしよう!! どうし……どう………… 中井出「モンスターハンターは狩ァりィイッ!!」 昏倒しているなら今が旬!! 僕はやるなら今!と判断するや烈風脚で一気に接近!! 剥ぎ取りナイフを腰の背面の皮の鞘から抜き取ると、 目を回しているジハードの背中に乗り、目を凝らして─── 中井出 「キャット!」 アイルー『解っていたニャ!キャットアイ!《ギシャーン!!》      ………………そこの赤黒い鱗だニャ!!』 中井出 「おっしゃーーーーっ!!」 猫が示した鱗へと剥ぎ取りナイフを奔らせる!! ───直後!ジハードは急に起き上がり、 背中に乗っていた俺を弾き飛ばして宙へと一気に舞い上がる!! 中井出「《どしゃあっ!》いっづ……!!……うえぇっ!?     た、倒れてたってのに一気に飛び上がるか!?普通!!」 だがよ、へへ……!手応えはあったぜ……!! 見よ……我が左手に黒飛竜の稀紅鱗(きこうりん)……!!……アレ?尖鱗じゃねー。 アイルー『よくやったニャ旦那さん!材料はそれでいいんだニャ!      それは尖鱗の中でも特に稀少と云われる稀紅鱗というものニャ!!      それさえあれば尖鱗なんてゴミも同然ニャーーーッ!!』 中井出 「そ、そうか!それはよかった総員退避ぃいいいっ!!!」 ジハード『ギヴァアアシャァアアアアッ!!!!』 総員  『ひっ……!ひぃいいいいいいいいっ!!!!』 もう悲鳴を上げるしかなかった。 冗談じゃねぇ……!!こいつ本当に飛竜か……!? 威圧感とか恐怖心が半端じゃない……!! 散り散りになったみんなを霊章に戻し、霊章に入れない奴らは自然要塞に逃げてもらう。 そしてすぐさまに浮遊して脱走。 操作はナギーに任せ、俺はシャモンとともにジハードの前に対峙していた。 ジハード『───……その気配……真龍王か……?』 中井出 「アドルフである!!《バーーーン!!》」 シャモン『パパ……それちがう』 中井出 「ホワッ!?シャモン!?シャモ……喋った!シャモンが喋った!!      かかかカアサン!赤飯だ!!」 大きさでいえば飛竜種であるジハードよりも、守護竜であるシャモンの方が大きい。 満月の光を浴びるまでは立場は逆だったんだろうが、 相応の大きさへと変化したシャモンはこう……なんというか格好よかった。 ジハード『真龍王ではないのか……?』 中井出 「……真龍王は死んだ。デスゲイズに殺されてだ。      俺はその弔い合戦のための武器の素材のために貴様の鱗が必要だった。      言い回しがヘンだが、必要だったからこそ頂戴した。      ちなみに最初の一撃に関しては偶然だ」 ジハード『…………竜の言葉が解るのは何故だ』 中井出 「真龍王の力のおかげだとでも思っててください。      そして───デスゲイズに殺された者たちが報われんという理由で、      俺は俺の意思でデスゲイズをブチコロがそうと決めた。      そのために貴様が持つであろう創造の宝玉と竜宝玉が欲しい!くれ!」 ジハード『断る』 中井出 「ゴヘェ!?そんなキッパリと!?」 本当にあっさりきっぱり断ってくださいました。 ていうか俺、竜にお願いして通ったためしがないね、脅迫以外。 ジハード『弔い合戦など私には関係がない。      骸に敗れる真龍王にも、その敵討ちに心を煮やす者の意思にもだ。      私が求めるもの……それは我が同胞のみ。      気づけばその場に存在し、気づけば創造を使えた。      己でも解らぬ力に振り回され、いつしか』 中井出 「長い!!」 ジハード『ぇなっ!?な、ななながっ……!?』 中井出 「うだうだぬかすでないわ!宝玉ください!それで解決!!」 ジハード『断ると言った。どうしても欲しければ───』 中井出 「金か!足もと見やがっていくら欲しいんだテメー!!」 ジハード『違う!!』 中井出 「な、なにぃ……!?金じゃ……ない、だと……!?」 ジハード『…………』 異世界の飛竜はまるで、イエティでも見たヒューメンのような風情で、 信じられないものを見る目で僕を見ていた。 うむ、それでいい……これも時間稼ぎの知恵のひとつよ……! 出来るだけ遠くに逃げるのです、ナギー……!あ、デスゲイズに出会わないようにね? ジハード『見たところお前は剣士…………剣、け…………ど、何処の村人だお前』 中井出 「やったぞシャモン、神竜を困惑させた」 シャモン『ええと……うう……』 どう反応していいか解らなかったようだった。 うん、僕もどうしたもんか。 ジハード『まあいい。私と相対しても怯まぬ胆力を人間が持つとは嬉しい誤算だ。      かつては“飛竜ごときが”と随分馬鹿にされたものだが、      今はこうして誰にもごとき扱いされることなどない。私は───』 また語り始めちゃった。 ううむ……ごとき、ごときねぇ。 こいつはそんなことを気にしてるのか? 中井出 「黒い飛竜ごときが神竜呼ばわりされて崇められるとは!      ちゃんちゃら可笑しいわ!」 ジハード『《ぶるっ……》……お前、今なんと言った』 中井出 「黒い飛竜ごときが神竜呼ばわりされてと言ったのだ!      こういうことに種族も階級も関係ないから言わせてもらおう!      貴様はごとき扱いされたくなくて強くなったのか!?      それとも崇められたいから強くなったのか!?」 ジハード『《ぞくり、ぞくり……!》いいや、違う……ふふ、違うぞ……!      私は生きるために強くなった───』 中井出 「ならば相手からの評価など軽く受け流して笑ってみせよ!      悟った喋り方など実にくだらん!      そんなものは楽しみたい時にのみ使えばいいものよ!      では最後の質問だなんか黒い飛竜さん!貴様は───」 ジハード『ただの黒い飛竜だ───!!』 自分をどう思っている、と訊ねようとした途端、 ジハードが襲い掛ゴガギィンッ!! 中井出「どわぁあっち!?」 はっ……()ッェエエエーーーーッ!!? ばばば馬鹿げた速さ……!飛竜ならではの呆れた速さ……!! 咄嗟にジークでガードしたけど、体が随分と吹き飛ばされたぞ……!? ジハード『居た……居た!まだ居た!!私を……“俺”を飛竜として見てくれるヤツが!      そうだ、俺は神竜でも守護竜でもない!飛竜として生まれた!      ただ創造の力を手にしていただけで、そこから全てが曲がった!!      ただそれだけだ───!!』 中井出 「ア、アワワ……」 ジハードは喜びか怒りか解らない威圧感を撒き散らしながら、 シャモンは見ずに俺のみを狙ってくる! 俺はシャモンに別のことを頼むと、ジハードの突撃攻撃をジークで受け止め─── やはり喜びなのか、興奮のあまりにジークに噛み付き、 それを持った俺ごと宙に飛び上がる! 中井出 「サミング!!」 ジハード『《ドゴォン!!》グォアアアアアアアアアッ!!!』 僕は空いている左拳でジハードの瞳を殴りつけ、痛みに剣を離す姿に蹴りを入れて逃れる。 愚かな……!この博光を前に、無防備にも眼球を晒すなど!! ジハード『くっ……く、ふふ……!なにが竜族だ、なにが誇りだ……!      俺はそんなもの、最初から必要としていなかった……!      力があるが故に勝手に守護竜に、神竜に祭り上げられて、      力があるから全てに恐れられ……!      バハムートはそんな俺をただの飛竜として見て、      軽く蹴散らしてくれたヤツだ……!あいつだけは認めていた……なのに……!      真龍王を継ぐ人間!俺はお前が気に入った!だから付き合え!      一分だ!真正面からぶつかってそれだけ耐えられたら認めてやる!』 中井出 「ほははははははは!!一分!?耐えられたら!?馬鹿をお言いでないよ!!」 ジハード『なに……!?』 中井出 「この博光、力があるが故に魔王だの殺人鬼だのに祭り上げられし者!!      力があるが故に恐れられ、今や亜人以外の仲間など極僅かなものよ!!      そんな俺だからこそ貴様に言ってやる!なにが竜族だだの吼えるならなぁっ!      相手が人間だからって見下して!      耐えられたらだの認めてやるだのほざいてんじゃあねぇっ!!」 ジハード『………』 中井出 「答えよジハード!      貴様はジハードであってそれ以外のなにものでもないと申すか!      はたまたジハードという名であり、あくまで竜族であると申すか!      我が名は中井出博光!人間であり、人であることに最強の拘りを持つ男!!」 ジハード『………』 ジハードは空中で月の聖域の大地に立つ俺を見下ろし、 考え込むようにリアクションをとらない。 だがその口の端が少し釣り上がると、 ジハード『いいぜ……種族が定まらないのは鬱陶しいしな……!      俺はジハード!飛竜族であり、自分のために強さを求めた馬鹿だ!』 中井出 「あーはい、じゃあ一分ね。はいお疲れ〜」 ジハード『てめぇ汚ぇぞ!!』 中井出 「ゲバハハハハ馬鹿めぇええ!挑戦してきたのは貴様だァアア!!      俺は馬鹿をお言いでないよとは言ったが断るとは言ってないわァアアアッ!!      真正面からぶつかった!会話で!はい一分!俺の勝ちだ!」 ジハード『オッ……オォオオオオオほんと容赦なくむかつくなぁてめぇえええ!!      〜〜〜……いいぜ、認めてやる。      竜族相手にそこまで裏掻けるなんて普通じゃねぇ。      普通じゃねぇから……俺と戦え!!』 中井出 「なに!?き、貴様ァアア!      ───次に貴様は“認めてやるとは言ったが戦わないとは言ってねぇ”と言う」 ジハード『認めてやるとは言ったが戦わないとは───はっ!?』 中井出 「死ねぇえええええっ!!!」  ギガァアッチュゥウウウウンッ!!! ジハード『なっ!?は……うぉおおおおっ!!!?』 言葉遊びに虚を疲れたジハード目掛け、レイジングギガフレアを解放!! すぐさまグミをポーションで流し込んで回復すると、 Vシステム“コスミックレイヴ”を発動! 虚を突かれたにも係わらず余裕で躱したジハードの進行方向へ先回りすると、 中井出 「神威クラッシュ!!」 ジハード『な《ガゴォンッ!!》ぐおぎゃあああああっ!!?』 HP半分を支払ってクライシスハート爆裂! 神威クラッシュでギガフレアの極光の中へと吹き飛ばし、 輝きの中に飲み込まれてもらった。 敵を吹き飛ばすことならこの神威クラッシュ……他に遅れを取りません!! ……と、走り去る閃光と爆煙を眺めていると、その爆煙に違和感。 月明りを受けているソレが、内部に怪しい球体を見せるのだ。 あれは───バリアに違いない! ジハード『ははははっはっはっはぁっ!!今のは驚いたぜ人間……いや、ナカイデ!      まさか竜族のレーザーを撃てる人間が居るとはな!だが、俺には通用しねぇ!』 やっぱりバリアだ! ヤツめ、バリアを創造してレーザーに耐えきりおったわ!! フッ……だがこの博光、創造に関してなら晦の映像でいろいろ研究した猛者よ。 思考映像化能力を得て以降、何度もその映像を見たこの博光……ただでは負けぬ! とか思ってると、バリアが消えた途端に彼の前に出現する幾つもの極光。 あ、あれ?もしかして─── ジハード『耐えろよナカイデ───ルゴォシャァアアアッ!!!』  ギャガガガチュゥウウウンッ!!! 中井出「ホワッ……!?」 ジハードが俺目掛けて、自分のレーザーと創造レーザーを同時に放ってくる!! その数……五つ!! 中井出「間に合えぇえっ!!紅蓮に業火!蒼碧に災厄!義聖剣!!」 ならばとこちらも義聖剣! 火と災を合わせ、レッドドラゴンの体質変化奥義を解放!! 中井出「フュンフレイジ!!」 ジークフリードの先端に五つの赤い極光を作ると、それを一斉発射!! 一撃で止められるとは思ってない……属性が続く限り発射しまくる!! 中井出「ぬおおおおおおおおっ!!!」  ガンガガガガガガガチュゥウウンッ!!!! 撃ちまくる撃ちまくる撃ちま───強ぇえええええええっ!!! 散々撃ってるのに少しも止まらず飛んできてるよこのレー……ギャアアアアアアアアア!! 声   『はっはっはぁ!それはレッドドラゴンのレーザーだったよなぁ!      面白いなお前!まさか他の守護竜の力も継いでるのか!?』 中井出 「へ?……後ろ!?」 ジハード『正解だ……♪』 レーザーを根性でなんとかしながら振り向けば、 楽しげに口に極光を溜めているジハードさん! なん……だと……!?見えなかった……!? ジハード『俺の黒色は夜に溶け込むだろう?      自分の特徴を最大に《ひょいっ……カロ……》あん?なんか口の中に』 中井出 「ヘルユー」  ゴンチュゥンボッガァアンッ!!! ジハード『グギャァアアォオオオオッ!!!!』 背後をとってまでゆっくり語ってくれた、 ブリーチ的なあなたの口にゴブリン特製爆弾投げ。 急な爆発に驚いたのかジハードは天を仰いで叫び、 その拍子にレーザーは上空へと放たれた。 こちらもなんとかレーザーは相殺しきれた。 さっさと転移で逃げればよかったんだろうが、 そうしなかったことにはもちろん理由があるともさ! 中井出「1バトル一回だけの奇跡をあなたに!グングニル!!」 義聖剣のために長剣化させていたジークフリードを突き出し、 その切っ先から赤のレーザーを発射! 痛がりながらもそれを見たジハードは咄嗟にバリアを創造し、やはりこれも防ぐ……! ジハード『げほっ!ごほっ!む、無茶苦茶しやがる……!      だがこんなレーザーじゃ俺は《ちょんちょん》あん?───ゴヘッ!?』 中井出 「やあ」 バリアを張っているジハードの、そのバリアの内側への転移。 そう、この驚いた顔が見たくて、あえてレーザーを相殺しきったのさ。 ジハード『なっ……なんでおまっ───』 中井出 「ゼロ距離、もらった───!」 既にチャージは終わってる。 “常に溜める”で飽くなきパワーストックを続けたこの奥義、受けるがいい! 中井出「ハァアトブレイクゥウッ!!───ショット♪」  ヒュゴドゴォッホォオンッ!!! ジハード『ガッ……げはぁっ!?』 硬い硬い鱗へと右拳を突き出して、 振り向き様の、恐らく心臓があるであろう部分へと“徹し”での渾身ナックル。 表面……皮膚、鱗には衝撃は通らず、 内側を貫く一撃が、たとえ心臓に届かなくとも内臓に直接ダメージを与える。 生憎とデスゲイズみたいな中身があるのかないのか解らんヤツには通用しないが、 相手が竜族……それも飛竜のような、ドラゴンよりも小さなヤツなら話は別だ。 中井出 「…………徹った」 ジハード『《ゴプシャアッ!》ぐはぁあっ……!!』 ジハードは身を折り、血を吐く。 その瞬間にバリアも消え、 しかしジハードは身を折った動作さえ行動に移し、俺へと牙を剥いてくる───! 中井出 「ハイペリオン《ジャゴォンッ!》」 ジハード『へ───?』 そんな彼の大口にハイペリオンミサイルを構えて射出!! 僕はすぐさま転移して逃走し、ガギンッ、とミサイルに噛み付いてしまった彼の視界で、 天使の微笑みをしながらやさしく手を振るった。  キシャヴァボォッガァアアアアンッ!!!! 声  『グォオギャァアアアアアアッ!!!!』 耳も目も劈くような強烈な爆発の中で、ただジハードの絶叫が聞こえました。 でもここは危ないだろうから転移ジャゴォンッ!! ジハード『ギハァッ!……!居ない……!?』 うおう、まさかとは思ったけどほんとに突っ込んできてた。 爆発が起きた時点で、同じところに居るのってすごい危険だと思うんだよね、僕。 だからこそこうして転移したお陰で、ダーガージョーを避けることが出来たし。 ……ていうか歯と歯を合わせた音じゃないでしょ、ジャゴォンは。 うん、でもやっぱりヤツは“飛竜”だ。どこまでいっても飛竜。 確かに硬いけどカイザードラゴンやサウザンドドラゴンにあった、 圧倒的な威圧感と恐怖感が今はない。 そんな彼が離れた位置の大地に立っている僕を発見すると、 同じく大地に下りて、ギラリと僕を見る。 ジハード『……強いな、お前』 中井出 「いや。きっとキミが戦ってきた竜族が馬鹿正直なだけだったんだって。      僕は敵の意表を突くのが好きなだけで、まともにやりあったら負けるの僕だよ」 ジハード『ああ、それは譲れないな。      竜族の誇りってやつに興味はないが、俺だって負けるのはごめんだ』 中井出 「それで……やっぱり続けるの?」 ジハード『当たり前だ。お前、全力は出してないだろ』 中井出 「いや、様子見とか嫌いだから全力だよ?      ペナルティ付きの能力を解放してないだけで」 ジハード『じゃあそれも解放しろ。俺はな、全力を出し切りたいんだ。      バハムートとやりあった時……あの時は全身が震えた。      気味悪がられた俺の全力を余裕で受け止めて蹴散らすあの姿……最高だった。      俺はな、あの高揚をもう一度味わいたい。お前ならそれが出来る……!』 中井出 「………」 え……?あの……え?なんなのこの状況。 僕が最強ランクの飛竜の全力を受け止めるって……えぇ……? そんなことされたら僕木っ端微塵っていうか、それこそ神父さまのお世話に……。 ジハード『───やらねぇんだったらお前の首が飛ぶだけだ……いくぜ!』  バガァオンッ!! 中井出「キャーーーーッ!!?」 来た。 地面を蹴り弾くどころか、 地面に減り込ませた状態のまま飛翼をはためかせて、真っ直ぐに! あまりの勢いに地面が耐え切れなくなったのかあっさりと抉られ、 その足に抉られた岩がまず俺目掛けて投げられる! 中井出「焚!《パゴシャア!》」 それをまず左掌底で破壊! 次いでグライダースパイクでぶちかましを狙うジハードに対して─── 中井出「オールバースト!!」 もはや埒も無し! 5分間の奇跡をあなたに捧げる!  ガシィッ!! ジハード『……へ?』 ぶちかましと呼ぶより、飛竜が空中から獲物を捕らえようとするハンティング。 両の足の爪で対象を捕まえる、 または傷つけようとする行動のまさにその足の爪の一本を強引に掴み取ると、 中井出 「うぉおおおおらぁあああああっ!!!」 ジハード『なっ、ぉおわっ!?《グリィッ!どっがぁあんっ!!》ぶはっ……!』 一本背負いの要領で後方の地面に叩きつける!! さらに烈風で地面を蹴り弾くと勢いを殺さずに尻尾を掴んでぇええっ!!! 中井出 「STRマックス!ジャァアアイアントォッ……音速スウィイイイングッ!!!」 ジハード『ぐおわぉああああああああっ!!!?』   世界が回る! 全強化能力とエンペラータイムが織り成すサイクロン空間! 実際にその場には竜巻が発生し、 その風よりも速く回ることでジハードの飛翼が風にもっていかれ、 ミキミキと嫌な音を立てる───! ジハード『ギ……!こ、の───!』 だがそこは最強飛竜さん。 この速度の中で無理矢理僕を見ると、その口を開けてドガァンッ!! ジハード『ブギッ!?』 極光を溜める前に、音速で地面に叩きつけた。 愚かよ……!フルバースト状態のこの博光、反射神経も動体視力も捨てたものではない! 思考しながら追い討ちをと仕掛けるが、途端に虚空に出現する創造の極光。 放たれてすぐに横へと大きく避けたが、 やはりと言うべきか、レーザーは俺目掛けて曲がってくる。 だが甘い……甘いのだよジハード。 創造物での攻撃ってのは“条件”が付き纏う。 なになにに当たるまで追いかけろ、なんてのはな─── 中井出「変ッ!身ッ!《ゴシャーーーーン!!》」 自分がなにかに変わっちまえば、どうとでもなるのさ───!  ゴシュゥウウウ…………───…… マラジンに変化した僕の横を、巨大な極光のレーザーが通り過ぎてゆく。 ジハード『な……に……?』 マラジン『いい加減目覚めなさい……アナタの創造は実に幼い!      大方“あの人間に当たるまで追い続けろ”とかイメージを込めたんだろうが、      ……生憎このワシは、強ぇえのよ……!』 話が繋がってないが、とりあえず言いたかったので言ってみました。 ジハード『だったら“敵”だ!俺の敵を追い続ける光を!』 極光が放たれる! だが僕は静かにそれを避けると、飛んでいってしまう光を見送った。 ジハード『なっ……』 マラジン『敵対心を解きました』 ジハード『な、な、な……なななな……!!お、俺が!俺が敵だと認識してるんだぞ!?』 マラジン『HAHAHA、急にこんな姿な僕で、しかもこの姿で攻撃をしてない僕を、      そんな完全に敵って認識できるわけもない。───本能で戦え!      貴様に足りないもの、それは……思考の自由度だ!』 ジハード『……、…………』 少なからずショックを受けてるのか、少しよろりと後退るジハードさん。 そんな彼を余所に元の姿に戻ると───時間もないので仕掛ける!! 中井出 「死ねぇえええええええっ!!!」 ジハード『っ!お、うおぉおおおおおおおっ!!!』 僕、突撃!ジハード、突撃!! 僕は拳でジハードは今度こそ飛翔タックル! やがて月明かりの中、影と影がぶつからんとするその時!! 中井出「絶対回避&徹し神威クラッシュ!!」  ヴァゴルシャアッ!!! ジハード『ペギャアアアアーーーーーーッ!!!!』 デスゲイズにもやった極悪無敵タックルをぶちかました。 相手が速ければ速いほど威力も増します。 僕はやはりスプリングのようにしなったのちに吹き飛んでゆくジハードを眺めつつ、 グミとポーションで回復回復。 中井出「教えてやろう、黒飛竜よ……。     残念だが貴様と僕との戦闘相性は、貴様にとって最悪だ」 確かに強い。速い。創造はとんでもない。 だが日々敵の裏と隙を穿つことばっか考えてる外道な僕からすれば、 鮮明に思考を具現化しなければ武器にできない相手など……グオッフォフォ……!! それに彼、なんだかんだで真っ直ぐっぽいし。 そんな相手の裏を掻くことなどこの博光にとっては朝飯どころか間食前よ! おまけに僕の武具は竜殺しに長けすぎている。 相手が竜って時点で、基本的に有利に立っているのだ。 ジハード『ゲ、ガ、……?お、起き上がレ、ねェ……?』 そりゃあ、頭からのタックルだったし、 徹しだったから神威クラッシュの衝撃が、全部脳にブチかまされたってことだろうし。 それで立てたら博光困っちゃう。 そんな風にしてガクガクと震えながら起き上がろうとするジハードの傍に立ち、 静かに言ってやる。 中井出 「若すぎる……遅すぎる……そしてなんと弱い……」 ジハード『…………!』 その時のジハードの顔を、僕はきっと忘れません。 最強の飛竜と呼ばれ、創造竜と、神竜と崇められていたそいつにとって、 こんな風に無様にやられ、弱いと言われるのは初めてのことだっただろう。 そして僕も、竜族にこんなことを言った最初の人類だと思います。 ジハード『よ、わい……?俺が……?』 中井出 「貴様は強いと言われ続け、図に乗ってしまったのだ。      せっかくの創造を磨くことも忘れ、現状を維持しすぎた。      創造が出来ようが、それを応用出来ないようでは下の下……      そんな有様では、存在として敵を怯ませることは出来ても、      実力で怯ませることなどとてもとても……」 ジハード『ぐ、うぅ……!』 中井出 「さて……竜よ」 STRをマックスにして、唇を突き出すようにしてさらに白目。 そんな状態でジハードの顎を片手で掴み、無理矢理持ち上げる。 中井出「……まだやるかい?」 愛の花山さんスタイル。 これで断ったら、揺れている脳天にさらに徹しナックルを叩き込みます。 千歩氣攻拳と龍神烈火拳付加のSTRマックスで。 ジハード『…………、……俺の…………負けだ……』 中井出 「……!《ぱぁあっ……!》」 よ……よかった!よかった!! ママン、僕勝ったよ!しっかり強化スキルも自動で消えてくれた! 危なかった!もうしばらく続いてたら筋肉痛地獄だったよ!! そんな喜びを心の中で満載にして、ジハードをゆっくりと離した。 ジハード『……はぁ……人間に負けちまった……』 中井出 「むしろそこは貴重体験として笑い飛ばしましょう」 ジハード『お前、ヘンなヤツだな』 中井出 「モットーである!《ヴァーーーン!!》」 だってヘンに生きるほうが面白いし。 中井出 「と、そうだ。キミの崇拝者、鬼面衆っていったっけ?      そいつらが妖精と人間を連れ去ってこなかった?」 ジハード『急に話題振るなよ……落ち込んでんだぞ俺』 中井出 「なにを言っとるんだこの男は……」 ジハード『なにをって……負けたら普通悔しいだろ!』 中井出 「真正面からぶつかって、一分で認めるんだろ?だったらもう十分じゃん。      認めた相手に負けるの、そんなに悔しいか?」 ジハード『…………あ……いや…………───そっか。      人間はそんな考え方、できるんだな………………そっか。      そうだよな、会話と戦いとで合計二分以上。これ以上なにを認めろってんだか』 中井出 「そういうこと。もっと楽しくいこう。      べつに憎しみ合って戦ったわけじゃないんだし」 むしろアナタがそんな性格で大変よかった。 いつものプライド馬鹿な竜族だったら、きっと僕消滅してました。 ガチンコバトルばっかりだったから、 たまにはこんな決着がないと命がいくつあっても足らん。 ジハード『ああ。鬼面のやつらなら確かに妖精と人間を攫ってきたぞ。      あいつら、心が純粋なやつを攫っては俺の生贄にしようとする。      なにを考えてるのか知らねぇけど、迷惑な話だ。      俺は人間も妖精も食えねぇってのに』 中井出 「へぇ……好物は?」 ジハード『俺は草食なんだ。肉は食わねぇ。普段は木の実とか食ってるぞ』 中井出 「おおう……」 草食竜……!飛竜なのに草食竜……! なんと素晴らしいヤツなんだこいつ……! ……と、感動はいいから。 中井出 「えっとさ、俺、その妖精と人間に用があるんだけど……なんとかならない?」 ジハード『ああ、それなら───《キッ!》───ほら』 ジハードが空間を睨むと、空中に穴が出現。 飛竜一頭が通れるだけの大きさの、その先には……広い空間と巣らしき場所があり、 そこで暢気に欠伸をする妖精と、平和そうにのほほんと微笑む男が。 中井出 「………」 ジハード『なんだ?取って食ったりしてたとでも思ったか?』 中井出 「いや。散々探し回ったってのにこうあっさり差し出されるとさ……」 ジハード『いいじゃねぇか、俺に勝った人間はお前が初めてだ。      戦利品ってことで受け取っとけよ』 中井出 「……そだね」 素直に頷いておこう。 そんなこんなで二人を救出することに成功した僕は、 マールさんには心地よいマナを感じますと慕われ、 スマイルさんには魔王ってことで少々怯えられた。 ……それでも笑顔を絶やさぬキミに幸アレ。 ジハード『で……お前はなんだってそいつら探してたんだ?初対面って感じだけど』 中井出 「マールさんに出会うことで、僕はもっと強くなる!」 ジハード『それ以上強くなってどうする気だよお前!』 中井出 「これではまだ足りん。実力だって確実にキミの方が上さ。      ただ相性が合わなかっただけだって。だからね、これは必要なことなのさ」 ジハード『…………わ、解った。そんじゃあ強くなったらもう一度俺と戦え。      殺しは無しで、本気バトルだ』 中井出 「…………」 ジハード『いや……そこで怯えられても困るんだけどな……負けたこっちとしては』 仕方ないじゃない! 覚悟解いた僕なんてこんなもんなんだから! ジハード『……まあ、いいや。お前って人間が解ってきた。      ───ていうかな。ここの空気、随分と綺麗になったな。      以前来た時はもっとどんよりしてて、      だからもう来るのはよそうって思ってたんだが』 中井出 「ああそれで……」 随分と待たされたわけですね。 お陰でこっちは楽しかったけど散々だったよ。 ジハード『あー……ところであのー、アレだ。      お前と一緒に居たあの竜よ、お前のことパパとか言ってたけど───』 中井出 「うむ。月光竜イルムナルラ……我が娘にしてシャモンという名の守護竜よ」 ジハード『そ、そっか。シャモンっていうのか。………』 中井出 「娘はやらんぞ!!」 ジハード『ま、まだなにも言ってないだろうが!!』 飛竜族が竜族に恋……だと……!?身分違いの恋……面白!! でも恋路の応援は腐ってもしないと心に誓っております故、絶対に応援などしません。 中井出「ふう、よし。じゃあ……ええとスマイルさん」 澄音 「澄音でいいよ、魔王さん」 中井出「うむ、では澄音さん。貴様にはこれから二年分頑張って修行してもらいます。     みんなに遅れをとらないように───」 マール『よく解らないですけど、彼ならずぅっと修行してましたよ?     妖精族に伝わる古代修錬法で』 中井出「……そうなの?」 澄音 「うん。なにもしないでいるよりは、って」 …………。 相手が魔王だっていうのに、このフレンドリーな対応はどうでしょう。 さすがスマイルさんだ。 中井出 「そ、そうだったのか……ではもはやなにも言うまい。      貴方を東の集落へ送りましょう。───シャモン!!」 シャモン『クシャァアォオオゥ!!!』 クキューではなく、立派な声で鳴く竜が、僕の呼びかけに応えて降りてゆく。 ホントは月光を浴びて力を溜めてもらって、 隙をついてジハードを……って作戦だったんだけど、 戦いが終わった今ではもう関係ない。 月光を溜めるに溜めたのか、金色に光るシャモンは僕の肩にオワーーーーーーッ!!  ドシィッ…………ィイイン……!! 中井出「《ミシメシメキメキ……!!》ごぉおおおおおお……!!」 ドシンとっ……ドシンと乗っかってきました……! あ、あのシャモンちゃん……!?あなた今小さくないんだから……!! ……否!どんな姿をしていようが娘は娘!この娘は……わたしの子です! 中井出 「《シャキィンッ!》話を続けましょう」 ジハード『脂汗流れまくってるぞ』 中井出 「ほっといてよもう!!」 ともあれ、シャモンに乗っての移動を開始。 東の集落までレッツゴーってことになったんだけど、 金色に輝く光に誘われて、どこからともなく登場するグレイジャーゴンと、 その美しさに惹かれて何故かついてくるジハードが、この度合流。 グレイドラゴン『…………』 ジハード   『…………』 あ。 なんか一発で互いの関係を確認したらしい。 大きくなったシャモンになんの疑問も抱かず接しようとするジャーゴンには驚いたけど、 なるほど、こうなれることを知ってるからサイズの違いを気にせず恋してたのかな。 それでも互いに攻撃し合わないのは、きっとシャモンの前だからだと思います。 この娘ったら怖がりだから。 中井出「はふぅ」 ……こうして、失踪騒動は決着。 スマイルさんは無事東の集落へと送り、僕らもマールさんを連れて猫の里へ。 みんな既に戻っていたらしく、危険はなかったと笑顔で迎えてくれた。 …………で………… グレイドラゴン『………』 ジハード   『………』 彼らが一緒に居るのは、どうしてなんでしょうね。 誰か教えてください。 いや……そりゃ猫の里大きいしさ、 守護竜や飛竜が一ニ頭降りたって全然隠れられるけどさ……。 中井出「……深く考えるの、よそう……」 僕は素材とマールさんを抱えて、暗い雰囲気をあえて忘れるように駆け出しました。 もちろん、猫たちが待つ鍛冶工房へ向けて。 同行者にはもちろんミク。 さあ……全てを合わせる時だ! ───……。 ……。 ガンンコココココカキキコンッ!! ガンッ!コンッ!カンッ! アイルー『……!ニャニャッ!お待ちしてたニャ旦那さん!      早速だけど素材とエクスカリバーを見せてもらうニャ!』 中井出 「うむ!頼むぞ猫よ!」 武具を打つ音が絶えない鍛冶工房に辿り着くと、 早速アイルーに見つかり、言われるままに台に素材を置いてゆく。 その様子をミクとマールはわくわく顔で見ていて、なんだか僕も誇らしい気分です。 アイルー『ゴニャッ、確かに黒飛竜の稀紅鱗と真龍王の芯骨ニャ!      あとはこの静寂の雫と溶け合わせれば……!      だ、旦那さん、悪いけどすぐ作業に取り掛かりたいニャ!      これだけの素材を扱うのも久しぶりニャ!      集中したいから、外で待っててもらっていいかニャ!?』 中井出 「うむ!貴様が頑張っているその間、我らはノヴァルシオとの融合を果たそう!      貴君の健闘を祈る!!《グッ》」 アイルー『アイサーニャ!《テシンッ!》』 曲げて突き出した僕の腕に、アイルーが勢いよく自分の前足をぶつける。 うむよし!では行こう! 要塞の外で、キミと握手!じゃなくてノヴァルシオと融合を果たす! ……。 というわけでハイ外。 念のため猫の里からも出て、絶壁めいた里の山から大分離れたところでの作業となる。 ミク 『それじゃあ展開しますよー』 中井出「準備オッケー」 マール『いつでもこいですっ』 中井出「……ところでマールさん?キミってどうしてシスター服着てるの?」 マール『古の妖精はみんなこうだったんですよ?     神に仕える、ってわけじゃないんですけど、     ただ単に着たいからという妖精も多かったですけど。わたしのこれは聖衣です。     ノヴァルシオを任される妖精は神子(みこ)と呼ばれて、     この服を着て一生をノヴァルシオで過ごすんです』 中井出「なんと……」 ミクがノヴァルシオを解放、目の前に巨大な浮遊島が出現すると、 マールはなにかしらを唱えて、この場にゲートを作る。 マール『案内します。ついてきてください』 中井出「お、おお」 ミク 『はい』 まずマールがゲートに入り、続いて俺、ミクの順にゲートをくぐる。 すると一歩先はオメガバトル中に見えた謁見の間のような場所に続いていて、 マールはそこにあった玉座に座ると、 伸びてくる……機械ではなく植物の根を受け止め、目を閉じた。 マール『……、……』 そして、再び詠唱。 すると地震が起き始めて、離れた場所にあった窓から外を見てみると、 そこから見えるノヴァルシオの都市が沈んでゆき、カタチを変える。 マール『これから武具に融合させやすいよう、カタチを変えます。     火闇、というもので飲み込めれば融合は可能だと聞きましたが、     問題は機械との相性だと言ってましたね』 中井出「うむ。さすがに一度飲み込もうとしたことがあったが、     機械だからなのか機械自体が意思を持ってるからなのか、合成できなかった」 マール『……ええ。どうやらこの都市の意思が融合を拒んでいるようです。     貴方に都市の再生を邪魔されたからだと言っていますが……』 中井出「事実である。機械文明を蔓延させようとしてたので全力で阻止した。     何故って……ドナルドは自然がだぁ〜〜い好きなんだっ《ニコッ》」 マール『誰ですか?ドナルドって』 中井出「気にしないでください。     ともかく、機械文明を作りたいなら僕の霊章の中でどうぞ。     この世界を機械文明にはさせたくない」 マール『いえ、もう落ち着かせたから大丈夫ですよ。     オズ……今のノヴァルシオのメインブレインですが、     彼も兵器だらけの都市など本当は望んでいなかったそうですから。     …………、…………はい、合成が可能です。……あ、ええと……』 中井出「中井出博光である。博光と気軽にどうぞ」 マール『では……博光さん。その腕のものもどうぞ』 中井出「っと、そうだったそうだった。……じゃあ、よろしく」 僕の言葉にこくりと頷くと、マールはこれからするべきことを事細かに教えてくれた。 自分は核になってここでノヴァルシオを管理しなければいけないこと、 それはずっと続いてきたことだから寂しくはないこと。その他いろいろ。 これでお別れだから、せめて笑顔で送り出してくださいと笑って、 やがて目の前の景色は元に戻る。 マールを残したノヴァルシオは人間の子供程度の大きさにまで縮み、 今では手で持ち上げられるくらいの球体になって、俺の手の中にあった。 ……それを、灼闇スキル・闇蝕で包み込み、食らってゆく。 中井出「…………」 ミク 『………』 話すことは特にない。 マールは別れを告げ、僕は彼女がまだ存在するであろう都市を炎で食らう。 だがお忘れでないよ? マールはお別れを言ったが、僕はそれを返してない。 何故なら───  ギピィンッ♪《ノヴァルシオとクラウソナスを武具に合成させた!!》 中井出「うむよし!では───サモン・マール!!」 我が灼闇に闇蝕されるということは、僕とともにあるということ! 故に───ポムンッ♪と霊章から弾きだされた彼女は、 わけがわからずキョロキョロと辺りを見渡していた。 中井出「……ようこそエーテルファミリーへ。僕はキミを歓迎するよ」 マール『あ……』 差し出された僕の手と僕の顔を何度も見比べるようにして、妖精シスターは戸惑っていた。 けど、やがて目を瞑り、思い切って僕の手を……というか人差し指をキュッと掴むと、 マール『よ、よろしく……お願いしますっ』 泣き笑いみたいな顔で、僕を見上げてそう言った。 ……うんうん、善き哉善き哉……。  ズシンッ……! 中井出「おや?」 突然地震。 なに?と……何気なく後ろを向くと、 ジハード   『俺もよろしくお願いするぜ……』 グレイドラゴン『私もだ人間……』 中井出    「ア、アワ……アワワーーーーーッ!!?」 そこには血管ムキムキでゴスゴスと場所争いするかのように、 肩あたりでタックルをやり合う落ち着きのない守護竜さんたちが……! ジハード   『なんだよ!俺の真似するんじゃねぇよ!』 グレイドラゴン『黙れ小童が!貴様ごときの真似など誰がするか!』 ジハード   『チッ……おいナカイデ、シャモン出してくれよシャモン』 グレイドラゴン『なにを気安くシャモンなどと呼んでいるか貴様ァア!!』 ジハード   『いっ……いいじゃないかよ名前くらい!』 …………。 えーと、どうしましょう。 よろしくなのは歓迎だけど、いやもう……ほんとどう対処していいのか……。 マール『あの……』 中井出「うん……まあその、こんな場所だけど、退屈はそうそうしないと思うから……」 マール『……はいっ』 今度はしっかりと笑う彼女の頭をなでなでして、猫の里目指して歩ぐきぃっ! 中井出「ホゲエ!?」 ミク 『見ました……見ました!妖精さんにはなでなでして、     どうしてわたしにはしてくれないんですかマスター!』 中井出「《メキメキメキメキ……!》グアッ!ゴゲッ!アベシャリッ……!ゲリッ……!」 マール『わぁあミクさんミクさん!首!首が折れます!』 ミク 『あっ……ひゃわぁマスター!?し、しし白目剥いてます!』 声  「残像だ」 ミク 『ハッ……!?』 ミクが振り向く!……と、そこには僕。 ミク 『え!?あれ!?残像……でもわたし、首の感触がちゃんと……』 中井出「その感触さえ幻よ……見たもの触れたもの全てを騙す妙技……!     これぞ秘奥義幻影無光拳……!」 マール『うそですね?』 中井出「はいうそです」 早速遊んでみました。 ノヴァルシオのスキルで、ドッペルさんを一体作れるようになったんです。 残念ながら一回攻撃を受けると消えちゃうけど。 中井出「しかしキミも若いね。旧時代から生きてるんだよね?」 マール『わたしもアイルーさんと似たようなものです。竜の泉の恩恵ですね。     わたしの場合は“飲まされた”んですけど』 中井出「そうなのか」 他愛ない話や重い話を思うさま話し合いながら歩いてゆく。 マールは、まるで今までの孤独や寂しさを払拭するかのようによく喋り、 僕とも、そして里のみなさんともあっと言う間に打ち解けた。 その日は、まだ夜明け前ということもあって、マールさんようこそパーティーが開かれる。 月の聖域で散々騒いだってのに、懲りることを知らん僕らです。 今日は本当にいろいろあって、みんながみんなドッキリの申し子となったに違いない。 ……一番驚きなのが、 ジハードとグレイドラゴンがここに居ることだとは、里のみんなの言葉だが。 やがて朝日が昇り、朝が過ぎ、昼が来てこの里に綺麗な光が差し込む頃。 ついに完成した“エクスカリバーU”を手に、里中のみんなが雄叫びを上げた。 ジハード『よっしゃバトルだナカイデ!』 中井出 「眠らせてぇえええええええっ!!!!」 宣言通りバトルを挑まれた頃には僕の眠気もピークに達していて、 それでも無理矢理バトルに引きずりだされた僕は───  なに博光?眠気が強くて戦えない?  博光、それは無理に起きていようとするからだよ。  逆に考えるんだ、“眠っちゃってもいいさ”と考えるんだ。 中井出(ジョッ……ジョースター卿!!) ……眠気のあまりに幻覚を見て、黒の飛竜さんにボコボコにされた。 逆に考えたらそれこそ戦えませんでした、ジョースター卿……。 Next Menu back