───冒険の書319/仮想的大円の中で───
【ケース795:閏璃凍弥/今日も今日とて】 ギシャゴバァアォオオンッ!!! ドンガガガガガガゴギャァアアォオオンッ!!! ギガァッチュヂガガガァンッ!!! …………。 閏璃 「……おはよ〜」 レイル「おうおはよう。随分ゆっくりだな」 閏璃 「いや……ちょっと夜更かししてて……。轟音で目ぇ覚めた……またなのか……?」 レイル「おお。眠たくて全力出せなかったからリゾンベだー!って、     今回は提督さんから仕掛けたぞ」 閏璃 「そっか〜…………リベンジって言いたかったんだろうな。     あ、牛乳もらっていい?俺、朝は牛乳って決めてるんだ……」 レイル「牛乳だったら全部シャモンが飲んでったけど」 閏璃 「…………じゃあお茶でいい……」 レイル「ジハードが茶葉ごと飲んでいったけど」 閏璃 「……コーヒー……」 レイル「グレイドラゴンが苦いものをよこせ、って豆ごと噛み砕いていった」 閏璃 「……コ、ココアかなんかは……」 レイル「提督さんが目潰しのために持ってった」 閏璃 「もう水でいいです……」 レイル「あいよー」 さて、提督さんが強引にジハードとのバトルをしてから一日。 万全の準備が整ったらしい提督さんはジハードに喧嘩を売ったらしく、 多分昨日と同じ場所……ここから大分離れた場所で戦っている。 それでも十分轟音が聞こえるんだから、いったいどんなバトルをしてるんだか。 殺しはご法度とは言っていたけど、うっかりとかないのか不安だ。 レイル「んー…………はい五分」 閏璃 「バトル始めてからか?じゃあもう決着つくかな」 そう思って要塞から降りて、 里の森林をのんびりと歩いてネコット農場の湖まで顔を洗いに歩くと、 その綺麗な水面に顔を近づけてヴァッシャアアアンッ!!!! 中井出 「ぷわぁっはぁあーーーーい!!どーだ見たかわりゃわりゃーーーっ!!」 ジハード『ぶはぁっ!お前なんだよありゃ!あんなの隠してたのか!?』 中井出 「脳が無くても敵に全てを見せとく鷹はおらぬわ!!      ワハハハハハ!!やった!勝った!仕留めた!!」 ジハード『くぅうっ……!次は絶対俺が勝つからな!』 中井出 「えぇっ!?まだやるの!?ぼ、僕の勝ちで治めようよ!」 ジハード『そりゃ勝ち逃げっていうんだよ!絶対にまたやるからな!?いいな!?』 中井出 「うう……僕がなにをしたと……」 …………。 水面に顔と手を近づけた途端、 ところどころがボロボロの提督さんとジハードが湖に落ちてきた。 どうやら今回は提督さんが勝ったらしく、ご満悦の表情だ。 閏璃  「おーい提督さーん」 中井出 「《ビビクゥッ!!》だだ誰!?……おお閏璃!モーニン?」 声をかけた途端に本気でビクゥ!と震え、辺りをキョロキョロ見渡す提督さん。 ……本当に、臆病なんだか度胸があるのか解らん人だ。 閏璃  「おー!モーニンだー!提督さんは朝からバトルかー!?」 中井出 「うん!あのね!?僕勝ったの!      真っ向勝負でジハードに勝ったんだよ!?すごいでしょ!」 ジハード『剣閃いっぺんに一万以上も放たれて勝てっかぁああああっ!!!』 中井出 「勝ちは勝ちじゃないか!男らしくないよキミ!!」 ジハード『お前武器の合成だけで強くなりすぎだ!!      あんなのに耐えられるわけねぇだろうが!!死ぬかと思ったわ!!』 竜族の言葉は解らないが、ともかくジハードが悔しがってるってことはよ〜く解った。 つい先日出会って、敵だった筈なのにこの順応性。 なんというか提督さんって種族とか関係なしに取っ付き易いヤツなのかもしれない。 中井出 「でもな、あの場面での創造はやっぱり……」 ジハード『……おっ、なるほど。お前頭いいな』 中井出 「性根が捻じ曲がってるだけよグエフェフェフェ」 ジハード『グヘヘヘヘヘ……!!』 ……ジハードも竜族特有のプライドの塊みたいのがない所為か、 提督さんの言葉にもきちんと耳を傾けてるみたいだし、 その所為かたった一日でものすごい仲良しっぷりだ。 中井出 「よ〜ぅし回復終了!メシにすっべ〜!」 ジハード『昨日のヘンな液体、もうないのか?』 中井出 「クオリティーナッシャーは作るのが面倒なんだ。      ニココ梨をいっぱい使う割に、あんまり量が絞れない。あれは宴会用だね」 ジハード『クオリティーナッシャーっていうのか。うん、あれは美味かった』 回復も終わったのか、世話話をしながら湖から上がってくる一人と一頭は、 水をバシャバシャと滴らせつつ、俺の横を通り過ぎてゆく。 ……ほんと、妙な組み合わせだよなぁ。 人と飛竜がどしんどしんと並んで歩くところなんて、多分初めて見たぞ。 中井出「あ、閏璃」 閏璃 「んあ?どした?」 ふと、途中で歩みを止めた提督さんが向き直って訊ねてきた。 内容は───グレイジャーゴン、今どこ居る?というもの。 俺はそれに、起きたばっかだから解らんと返して、今度こそ顔を洗う。 声  『あいつの話はやめようぜ……』 声  「多分、ジャーゴンに同じこと言っても同じ風に返されるよ」 ジハードの言葉は解らないが、まあなんとなくは予想が立てられた。 一通り顔を洗うとすぐに二人(?)を追いかけて、朝食の話を切り出した。 なんだかんだで、腹は減っている。 ……さあ、今日も一日の始りだ。 ───……。 ……。 声  「エェェエエエクスッ───カリバァアアーーーーッ!!!!」 声  『ギャアーーーーーッ!!!』 で……朝食後の運動と称して外(里の外)へと突貫する提督さんとジハード。 賑やかな声が要塞にまで届き、 中井出 「ちくしょ〜〜〜……」 ジハード『はぁっ……!はぁっ……!こ、こいつ……!ほんととんでもねぇ……!!』 今回は提督の負けで終わったらしく、見事にボロボロな姿で戻ってきた。 ナギー 『懲りぬの、おぬしら』 中井出 「いや、これがジハードとの戦いは余計なこと考えなくていいから面白いんだよ。      こう……ねぇ?アレが効かないからコレ使おうっていうんじゃなくて、      もう全力で、限界ブッチギリバトルでゴシャメシャと。      それでもお互い生きてられる丁度良さってのがあってさ」 ジハード『いや〜〜ああバハムートとはまた違った緊張感にプラスして、      オモシロさまであるんだから文句なんてねぇよ。こいつ最高だ。      でもエクスカリバーとカーネイジとブレードスラッシャーはやめてほしいね。      ありゃ死ぬわ、冗談抜きで危なすぎる』 中井出 「お前だってどんどん悪知恵つけてきて創造が性質悪くなってるだろうが!」 ジハード『お前の入れ知恵だろうが!!』 中井出 「しまったそうだった!」 竜の言葉が解らない俺にしてみれば、提督さんがギエエ〜と叫んでるだけなのだが、 ちゃんと話は通じてるらしく、二人(?)はさらにヒートアップ。 閏璃 「実際まともに戦えてるのか?」 中井出「うむ!今ならば結構いける!というのもエクスカリバーUのスキルのお陰で、     随分と攻撃に関しての鋭さが増した」 閏璃 「スキルって?」 中井出「斬れ味+ってやつ。     鋭さが増して、斬れなかったものが斬れるようになるステキスキルだ。     あとは黄竜剣と黄竜斬光剣の攻撃力に+修正の他、     剣閃系の攻撃の威力にも+修正。     剣士にしてみりゃ喉からマドハンドが出るほど欲しいブツさ」 閏璃 「へええ…………あ、そういえばあれ、どうなったんだ?     ほら、えーと……戒めの創宝玉と竜宝玉」 思えば創造精霊なんて聞いたことないから、壊したところで意味無さそうだけど…… 中井出 「うむ、それなら既に確認済みよ。しっかり持っておったわ。      ……その時に面白いことが解ったけどね?」 閏璃  「面白いこと……?」 中井出 「うむ。ジハードのこと。おかしいって思わない?      創造の竜族なんて、この世界には居ない。      親にそういうヤツが居ないのに、突然変異にしたって理由がない。      で、そんなジハードの存在の過程なんだけどさ」 ジハード『お、おお……』 閏璃  「ふむふむ……?」 中井出 「実は、ジハードの前世って“創造の精霊”なんです」 …………。 総員  『なんだってぇええーーーーーっ!!?』 アイルー『ほんとかニャ!?そんな精霊聞いたこともないニャ!』 中井出 「いやほんとほんと。ほら、この戒めの宝玉。      これに意思通してみたから間違いないって。      これによると……創造の精霊ってのは随分と変わった思考の持ち主で、      精霊である自分が好きじゃあなかったそうだ。      いつも自分の姿を隠すための膜を創造していて、      誰の目に留まることなく日々を生きてきたって。      彼を知る者といえば月の精霊のルナくらいで……      ジハードがシャモンに惹かれたのも、そこんところが関係してるのかも」 ジハード『なばっ……!!お、おおお俺はべつにっ……!』 中井出 「ジハード、自分は気づけば飛竜として存在してて、      気づけば創造の力を持ってたって言ったよね?      つまりさ、親なんて居なかったの。      居るわけないんだよ、自分が自分で創造竜になったんだから」 ジハード『………』 ジハードがどう受け止めてるかは別としても、なるほど。 創造する竜なんて聞いたことがない。 どんな経緯があったにせよ、そんな竜族が生まれる過程は想像できなかった。 ……でもな、魔法を使う竜族が居るんだ、創造が出来ても───…………次元が違うよな。 ジハード『んじゃあ……俺は創造の精霊だったから創造が使えて、      精霊だったから草食な飛竜で、      精霊だったから竜族としての誇りってのがないのか?』 中井出 「誇りに関してはジハード自身の性格だと思うけど、多分」 ジハード『……そっか。まあ、だからってなにがどうなるわけでもないしな。      俺は俺だ。お前に宣言したとおり、ジハードって名前の黒い飛竜だよ』 中井出 「うむ!うだうだ難しく考える必要などアラズ!故に───」 提督さんが、掌に持っていた宝玉をヒョイと真上に放り投げると、 ジークムントを取り出して真っ二つに破壊。 途端、  ゴシャーン♪《戒めの創宝玉を破壊!創属性が解放された!》 というメッセージが、ログに流れた。 でも、意味ないんじゃ─── ジハード『ん……あ、あ……?なんか頭の奥が熱ぃ……』 中井出 「創造の属性の解放とは即ち!貴様の能力の解放を意味する!      ルナ子さんが月属性でパワーアップできたように、      貴様もまた創造の属性でパワーアップが可能!多分晦も!」 ジハード『パワーアップ…………そ、そうなのか!?よし!じゃあバトるぞナカイデ!』 中井出 「……あれ?」 言うや否や、ジハードは提督さんの村人の服の襟首を銜え、ゴシャー!と空へ飛んでゆく! 中井出「いやちがっ……!僕こんなのを望んで説明したわけじゃっ……キャーーーッ!!」 さようならフェイドアウト。 遠くなってゆく提督さんの声を耳に、 その場に居た全員はゆっくりと水を飲んで、溜め息を吐いた。 ───……。 ……。 中井出 「エェイドォオリアァーーーンッ!!!!」 ジハード『カヘッ……コヘヘッ……ゴゲッ……!』 しばらくして、二人(?)は戻ってきた。 今回は圧勝だったのか、提督さんがジハードを担いだ状態で。 ジハード『こ、このうそつきやろ……!なにがパワーアップだ……!』 中井出 「フフフ……愚かな。僕が強くなったと言ったのは、創造についてだ。      べつに貴様自身が強くなったなどとは一度も言っておらぬわ」 ジハード『テ、テメ……!』 大方全然変わらない自分の力に戸惑ってるところをボッコボコにされたんだろう。 対面するととことん容赦ないからなぁ提督さん。 中井出 「はい、回復回復。……おお、回復キャリバーも強化されてる。      エクスカリバーってすごいんだなぁ……」 ジハード『はぁ……すごくなけりゃこんなに負けるもんかよ……』 閏璃  「おーい提督さ〜ん、バトルの余韻を噛み締めてるところ悪いけどさ〜」 中井出 「え?なに?」 きっちりと回復のキャリバーでジハードを癒した提督さんが、 きょとんとした顔でこちらを見る。 どうしてこの人はこう、純粋っていうか、動作がいちいち可愛いんだろうか。 閏璃 「いや、これからどうするのかなって。     やっぱりあれか?スカルドラゴンにも挑戦するのか?」 中井出「……う、うううむ……そう、なるね……任せていい?」 閏璃 「いきなり他人任せは勘弁してくれ」 中井出「だって怖いもん!」 閏璃 「それがたった今までジハードと戦ってた人の言葉か!?」 中井出「言うだけならタダなんだいっ!!」 閏璃 「いつまで何処まで臆病者で居続ける気だあんたぁあーーーっ!!」 時々、本気で提督さんが強い状況がウソのように思えるときがある。 なのにあのハチャメチャっぷりなんだから、なにかがウソだ。 閏璃 「じゃあもういいや、今から行こう」 中井出「ホゲェッ!?いっ……今から……!?」 閏璃 「そ、今から。うだうだ考えたって仕方ないんだろー?」 中井出「ア、アウウ……!」 だらだらと汗を流し始める提督さん。 その横で、ジハードがクァア〜と欠伸をしていた。 多分呆れてるんだと思う。 閏璃  「それともやっぱり怖いのか?」 中井出 「怖いよ!?でも怖くないと見栄を張っておこう!だだだだって僕魔人だもん!      よ、よっしゃあ行ってやろうじゃないか!戦うのは閏璃ひとりってことで!」 閏璃  「なにぃ!?ちょっと待て提督この野郎!!」 中井出 「懐かしいけど提督この野郎は勘弁して!」 閏璃  「提督てめぇ!」 中井出 「それもイヤァアーーーッ!!」 ジハード『どうでもいいけど結局どうすんだよ。行くのか、行かないのか』 中井出 「閏璃がやっつけてくれるって!」 すっかりその気らしい提督さんを前に、ちょっと頭を痛めた。 骨相手に銃でダメージ与えられるのか……? という、前向きなのか後ろ向きなのか解らない思考で。 閏璃 「いやしかし、ごほんっ。     提督さん、最近人外に好かれるスキルに随分と磨きがかかったんじゃないか?」 中井出「え?そう?」 きょとんと再び首を傾げる彼の両腕には、いつから居たのかミクと種坊主。 頭にはナギ助が肩車で乗っかっていて、左肩にはシャモン、右肩にはマール…… まあ両肩についてはナギーの足があるから、 どっちかっていうとナギーの足に乗っかってる感じではあるが、 傍らにはジハードで、考えてみりゃ一声かければ集まる亜人族の皆様方。 ……これで磨きがかかってないっていったら、それもまたウソだろ。 本人がそれに気づいてないのが一番どうかしてるんだが。 中井出「まあまあ、旅が続けば仲間も増えるって。     それよりこれからのこと、みんなで相談しようか。     みんな〜!おやつのロコミルキのプリンを解放するから、     ネコット農場湖前に集合ね〜!」 総員 『ハワァアアーーーーーーーッ!!!!』 閏璃 「…………これも餌付けっていうんだろうなぁ」 草食のジハードは、すっかり提督さんのおやつ(デザート)に夢中だ。 グレイドラゴンも、おやつを食すシャモンにデレデレ状態で、 それを見るためだけにわざわざ集まるくらい。 普段は森の奥に新たに作られた竜の巣で眠ってるんだが。 ジハード『ナカイデ、ナッシャーはないのかよナッシャーは』 中井出 「梨のままでよければあるけど」 ジハード『渋いんだろ?それ』 中井出 「加工しないとあの甘さと美味さは出ないんだよな……不思議だ」 シェーラ『わらわはシャーベットを食したいんだがな』 中井出 「おお、それならすぐだから作るよ」 シェーラ『そうかそうかっ』 アイルー『旦那さん、ボクはカツオムシが食べたいニャ』 中井出 「あれは手間かかるんだけど……スチームレイザーでやってみるかな……」 マール 『なんだかカツオの昆虫みたいな名前ですね……どんなものなんですか?』 中井出 「カツオ出汁とカツオの身とカツオブシなど、      カツオをふんだんに使った茶碗蒸し。これが猫たちに大好評でさ」 マール 『そうなんですか……あ、あの……』 中井出 「ん?あ、マールもなにかリクエストある?」 マール 『い、いいんですかっ?わたしなんかが……』 中井出 「いいのいいの。ほら、言ってみて」 マール 『はい……あの、はちみつをいっぱい使った、甘い食べ物がほしい……です』 中井出 「はちみつか……よし、やってみよう。丁度ネコット農場に行くから、      そこで新鮮な蜂蜜取って考えるのも面白い」 マール 『《ぱあぁっ……》あ、ありがとうございますっ』 中井出 「はっはっは、いやいや」 ミク  『マスター!わたしは───』 中井出 「ネギね」 ミク  『マスター!?わたしのことただのネギ好きって考えてませんか!?      違いますよ!?わ、わたしにだって好きな食べ物のひとつやふたつ!』 中井出 「この前ネギを炭火であぶって、      醤油をハケってじゅわっと焼いたら美味くてさぁ」 ミク  『…………《じゅるり》』 中井出 「ネギね」 ミク  『違いますよぅ!!』 客観的に、一歩下がってみてみる。 飛竜と会話する人間と、その両脇両肩頭、 後方には号令を聞いた亜人族たちがわらわらと集まって列を作っている。 ……大名行列ともまた違うオモシロさが、ここにあった。 話すタイミングっていうのをみんなが学んでいるのか、会話がごっちゃになることもない。 そんな場所に自分も混ざってることに、 なんかくすぐったいくらいの居心地の良さを感じた俺は、 途中で合流したレイルと一緒に提督さんを追いかけた。 閏璃 (……ほんと、こんな穏やかさならいつまで続いてもいいくらいなのにな……) そんなことを考えながら、また今日が始まる。 今日なにをするのかなんて、あとで考えよう。 今はこうして燥ぐ時間を大切に、面白おかしく生きるために。 【ケース796:晦悠介/で……】 ペゴシャア!! 悠介 「ゲヒャーーーッ!!」 殴り潰された。 神父 『だめだなぁお前ら。多少良くなってるけど連携ってのが解っちゃいない。     せっかくこれだけの雁首がそろってるってのに、そんなにバラバラでどーすんだ。     特にお前。せっかく潜在能力が上がったと思ったのに、     てんで創造使ってないだろ』 悠介 「へ?……つ、使っていいのか?」 神父 『底辺も最高も見極めたなら全力でくるのが戦士ってもんだ。     お前らも、さっさと能力解放して突っ込んで来い。まとめて蹴散らしてやるから』 粉雪 「だったら───未来視もアリってことね!《ピキィンッ!》彰利!社長命令だ!』 彰利 「なしてまずアタイに言うの!?やるけどさ!」 唐突に能力解放全開バトル開始。 日余が時眼視・冥で先を読み、それぞれが日余の言葉通りに動いてゆく! 粉雪 『彰利!若葉!木葉!みさお!椛!社長命令だ!     言葉で伝えるのが面倒だから影で全員を繋げ!今すぐだ!』 若葉 「偉そうですねぇほんと!!」 木葉 「姉さん、今は勝つことを優先するべき」 若葉 「解ってますっ!!」 一瞬にして、日余を中心に繋がれる月影力。 そうなってからは頭に直接どう動けばいいのかが叩き込まれ、 死神と月の家系の者たちは全力を以ってそれに従った。 ……ゼノは従わなかったが。 神父 『おっ、おっ、おぉっ、いいぞ、ちゃんと連携取れるじゃないか』 彰利 『余裕で弾いてるヤツにそげなこと言われたかねぇよ!』 神父 『隙ありだ』 彰利 『《パゴシャア!》デップ!』 彰利が顔面に掌底をくらい、 神父の掌を軸に逆上がりでもするかのように回転し、地面に崩れ落ちる。 ───その途端! 神父 『《ガッ!》ぬ───!?』 春菜 『とった───!』 伸びきった腕に先輩が腕ひしぎの要領で掴みかかり、 全力を以ってその右腕を動かせなくする! 神父 『───まさか!《ガッ!》ぬうっ!?』 聖  『そのまさかです!』 先輩を引き剥がそうと左腕を伸ばした刹那、その左腕を聖が()める! 夜華 『彰衛門は囮だ!貴様は既に詰まれているのだ!』 神父 『《パァンッ!》ぬおっ───』 次いで篠瀬が神父の足を飛燕龍-凪-で思い切り払い、神父を地面に転倒させると、 いよいよ先輩と聖の腕ひしぎ十字固めが極まる。 ……そう、神父相手に厄介なのは見切りと魔法にある。 腕力があるわけじゃないのだ。 だから腕を固められれば腕力では返せない。 神父 『考えたな───だが魔法を封じたわけじゃ』 悠介 『ハバネロタバスコが出ます!』 神父 『《ゴボシャア!》ひょんげぇえええぇっ!!!』 口が開いた瞬間、神父の口の中に大量のタバスコを創造!! だがそれでも怯まない!神父は腫れた口では詠唱は無理だと断じ、 無詠唱魔法(それでも高位魔法)を発動させ、 澄音 「ディスペル!!」  ガッシャァアアアアアンッ!!!! 神父 『……!ふがっ……!』 あっさりと、蒼木に破壊された。 澄音 「……ごめん、精霊魔法は撃たせないよ。     そういうのに詳しい妖精さんと、ずっと修行していたからね。     解るんだ、精霊魔法の組み立て方が。もちろん、その崩し方も」 神父 『ぬごっ……!ほごぉおおおおっ!!』 相手の魔法を破壊する魔法に本気で驚いた俺達だったが、それでも準備は整った! あとは───! 彰利 『さあ……懺悔の時間だベイベー《メキメキメキメキ……!!》』 神父 『んごぉっ!?ふごっ!ふぐー!むぐー!!』 喉まで腫れてるのか、もはや口を塞がれているような喋り方の神父の視線の先に、 下半身以外の全てが存在する巨大な竜。 その竜が、拳を固め、彰利の背後で思い切り振りかぶる! 彰利 『レヴァルグリード!ゴッドハンドインパクト!!』 皇竜王『グヴァアアシャァアアアアアッ!!!!』 神父 『ほがぁあああああああああっ!!!!』  ドガァアアアーーーーーンッ!!!! ───……。 ……。 シュゥウウウ………… 神父 「…………あー……貴様ら地獄に落ちろ……」 彰利 「うるせぇ負け神父」 藍田 「負け神父が」 岡田 「クズが」 神父 「やかましい!動けない相手に最終奥義を使う馬鹿が何処に居る!」 彰利 「アホかてめぇ!確実に当たるからこそ最終奥義を発動させるんだろうが!」 藍田 「負け神父が!」 岡田 「クズが!!」 神父 「やかましい!」 彰利 「それよりオラテメー!勝ったんだからなんかよこせよオラー!     それともなにか?オ?負けたことが悔しくて渡したくないでちゅか〜〜?     あ〜〜〜〜〜〜〜ん!?」 神父 「ギ、ギィイイーーーーーーーーッ!!!!」 そう、なにはともあれ勝った。 これにて修錬は終了であり、なにもしなかったやつらは少し微妙な顔だが、 それでも終わりを迎えたことに素直に喜んでいた。 長老 「うむ。では治めの証として、これをさずけよう。     どうせ神父はなにも用意しとりゃせんだろう」 神父 「いや……あのな」 と、ここで何処に行ってたのか、 さっきまで居なかった長老がネックレスのようなものを持ってやってきた。 悠介 「これは?」 長老 「アバンのしるしだ。     これを失くさず奪われず、来たる日まで大事に身につけておけ。     そしてそれが指し示す道の先にあるものをお前が手に入れられたなら……     一億五千万どころか、十億でも百億でも、お前は手に入れることが出来るだろう」 彰利 「なんか混ざってません!?     三千院の遺産じゃねーんだからそげなもんもらったところでどーしろっての!」 長老 「ある者にそう言えと言われてな。まあいい、卒業の祝いだ。     集落の皆で作った。持っていけ。トランスを行いやすくなる力が込められている」 彰利 「なんと!?…………素朴な疑問なんだけど、どうやってそげな力を……」 長老 「この谷の底にな、そういう魔力を帯びた石がある。それを削って細工したものだ。     手っ取り早く言えば精神を落ち着かせる効力がある」 彰利 「オ……ナルホロ」 チャラリチャラリとアバンのしるしが配られてゆく。 調べるを発動させるも、しっかりとアバンのしるし。 ……どうしろというのだろう。 長老 「……さて。これからどうするのかを訊いてもいいかな?」 悠介 「魔王をブチノメす」 彰利 「だぁね。ヤツが強ぇええから修行してたようなもんだし。     だからヤツに挑んでヤツをブチノメす!」 長老 「相手は一人でジハードをブチノメした相手だが?」 悠介 「へぇ……ジハひょげぇえあぁっ!!?」 彰利 「ジハッ……ゲェエエーーーーーーーッ!!?」 ジハード!?ジハードってあの、伝説の最強の飛竜!? 飛竜なのに守護竜なみに強いっていうあの!? 神父 「まあ落ち着け。何も用意してなかったことは確かだが、この俺が契約してやろう」 彰利 「それよりなんか武器くれ武器」 神父 「おお、くれやるぞ。俺と契約して無の戒めを解けば、精霊武具をくれてやる」 彰利 「よっしゃあ頑張れゼット!」 ゼット「いいだろう、契約してやるからさっさと黙れ」 神父 「…………温かみのないヤツだな」 以前配布した指輪を翳し、ゼットが神父と契約を果たす。 で、契約の楔で繋がるや、神父はさっさとゼットが指に嵌めた指輪に引っ込み、 それっきり姿を現さなくなった。 きっとシャイなのよ、とは彰利の言葉だ。 彰利 「おーしゃー。あとはデスゲイズをブチノメーションすりゃOKってわけか」 悠介 「そうだな。……残りの戒めは?」 木葉 「スカルドラゴンの持つ死の宝玉のみとなっています。竜、という意味ではですが」 悠介 「そっか………………ん?」 彰利 「あ、悠介も引っかかった?」 悠介 「ああ。……創造の戒めが破壊された感覚は確かに感じたんだ。     けどな………………“創造”の精霊の武具ってないのか?」 そりゃ、創造の精霊なんて見たことないんだから、あるわけないのかもしれないが。 ……いや、そもそも俺、雷の精霊と契約してるんだからな……契約の指輪もなしに、 そんな都合よく武具だけ貰えるわけもない。 溜め息を吐きながらも身支度を済ませると、 俺達は集落のみんなに別れを告げて、やがて根城へ向けて動き出した。 やるべきことはいろいろあるだろうが、 まずは自分が住んでた環境と、それに慣れていた自分を取り戻さないとな───
【Side───その頃の彼ら】 ジハード『…………《キャリィンッ》あん?……なんだこりゃ』 中井出 「酒だ!飲め!」 ジハード『じゃなくてよ。ほらこれ。……ここのコレから出てきた』 中井出 「?」 ひょいと見てみれば、ジハードの鋭い尻尾には、妙な環状の物体があった。 年季の所為か結構色褪せてるけど…………うわ、これ契約の指輪だ。 指輪って大きさじゃないだろこれ……。 で……落ちたこれって、もしかして精霊武具?  コシャンッ♪《環宝(ゲンポウ)オメテオトルを手に入れた!》 中井出「……?」 オメテ……?メテオ? なにこれ。 …………困った時の調べる発動!  ◆環宝オメテオトル───げんぽうおめておとる  創造神、神の中の神、オメテオトルの加護を得た指環。  二面性の神として知られ、一対と言えるもの、たとえば光と闇や静と動、  混沌と秩序や男と女など、“対のあるもの”を意味する名を持つ“万物の主”の神具。  持ち主に真の危機が迫った時、その危機に相反する力を放ち、相殺すると云われている。  相当な危機でもない限り発動しないため、防御面ではあまり役に立たない。  所持していると、創造の精度が向上する。  創造の精霊武具なので、創造が使えなければ当然持っていても意味がない。 ……。 中井出 「………」 ジハード『俺、そんなもん付けられねぇぞ?』 中井出 「だよね」 ……うむ、ちょっと癪だけど晦にあげよう。 向こうが勝手に強くなるのは万歳だけど、どうして武具とか装飾品ともなると、 あげるのがもったいなく感じるんだろうね。不思議さ。 【Side───End】
……ぶるるいっ! 悠介 「うおおっ……!」 彰利 「……?なに?スモールでもしたくなった?」 悠介 「そういった類の震えじゃないっ!」 ……なんだ?あまりよくない予感というか悪寒というか、 とにかくそれらしいのが体を包んだんだが。 まあそれはともかく。 現在久しぶりの自宅……じゃないな、元浮遊要塞闘技場内。 平たく言えばマクスウェルが管理していた空中大闘技場だ。 空から落ちたそこを同盟軍の根城にしている俺達は、 東から戻って久しぶりに風呂だの箸で食べる食事だのを満喫していた。 ……あそこは全部素手で食べてたからな……。 女性軍が“手が荒れないのが救いだわ……”と神妙に話し合ってたのを覚えてる。 風呂から出た俺は彰利とともに、髪をわしゃわしゃ拭いながら闘技場の武舞台に来ていた。 そこで悪寒を感じたのが今現在。 住む環境を戻してからも、 その空気の中でトランスが出来るように鍛錬は怠るな、というのが長老の教えだ。 彰利 「ぷふぅ、さてと……どうする?」 悠介 「戦力数でいえば負けてない。     魔王相手に怖いのは、今では正直魔王だけだって考えていいと思う」 彰利 「過信は危険じゃけどね。けど確かにこれで、     トランス状態でも通用しないとかだったら修行の意味がそもそもねーし」 悠介 「ああ。……問題なのは、たった一人でジハードをブチノメした実力なんだが」 彰利 「……強さが未知数のルドラより、ある意味こっちの方が怖く感じるよ俺」 悠介 「実は俺もだ」 どのみちいつかは戦わなければいけない。 そのためにも、もっと強くならないとな……。 悠介 「まず全員でスカルドラゴン討伐に向かおう。     腕試し……って言ったらヘンな言い方になるけど、     守護竜と戦ってみるのはいい刺激になると思う」 彰利 「せやね。けどスカルジャーゴンか……どげなヤツなんだろ。やっぱ骨なんかね。     それとも墓場から他の竜の記憶を吸収して、     たとえば今までの守護竜の姿になって襲い掛かってくるとか」 悠介 「……あるな、それ」 彰利 「ありそうだよね、これ……」 どういう因果か竜族では最後の守護竜となった相手だ。 そんな状況から察するに、きっとそうなる。 悠介 「いや、今ならきっと大丈夫だと信じよう。     それにそれだけの守護竜と戦えるってことは、     かつて取れなかった素材を剥ぎ取れるってことだろ?」 彰利 「ソレダ」 悠介 「それにレベルも相応に上がる筈。そうなれば、いくら魔王が相手だって───」 彰利 「…………《ニヤリ》」 悠介 「よし!そうと決まればスカルドラゴン討伐だ!     みんな集めてすぐ行こう!こればっかりは魔王に先越されるわけにはいかない!」 彰利 「オッケーざますーーーっ!     レベル上げと武具強化の絶好のチャンス!逃す手はねぇやね!     あ、でも素材手に入れたとして、どこで鍛えてもらおっか」 悠介 「…………また集落に世話になるか」 彰利 「せやね……」 やることは決まった。 決まってしまえば、あとは突っ走るのみだ。 どうしてあっさりと、ジャポンのやつらや東のやつらが協力してくれたのかは解らないが、 協力してくれるからにはそれを最大に活用させてもらおう。 魔王を倒せないようじゃあ、ルドラを倒すことなんてどう足掻いても無理なのだから。  ───こうして俺達は、何も知らないままに一歩を踏み出す。  知ろうともしなかったそれを、いつか後悔することになるとも知らずに。  全ては滅びと絶望へと向かうのか。  それとも犠牲はあれど希望が存在する未来に向かうのか。  仮想という名に包まれたこの世界で、俺達は一つずつを自分で選択し、歩んでゆく。  その道が何処で、誰と擦れ違い別れゆく道なのか。  ……そんなことも知らないままに、標のない子午線(仮想世界)をひたすらに歩んでいた─── Next Menu back