───冒険の書10/続・突っ走れ!ワービーストロード!───
【ケース91:弦月彰利/そして時は微妙に流れ───】 ゴトゴトゴトゴト…… 少女 「ねぇお父さん……急がないと危ないよ。     ここって最近、獣人が現れるって噂があるんだよ……?」 父  「はっはっは、ティーユイは心配性だなぁ。     大丈夫だよ、父さんこう見えても昔は王国騎士団で特攻隊長を務めてたんだ。     これでも結構強かったんだぞ?」  ドゴシャァアアアアアアンッ!!!! 父&少女『キャーーーーッ!!?』 走っていた馬車が吹き飛んだ。 べつに超自然現象とかではなく、どこぞのモミアゲさんが吹き飛ばしたわけだが。 父  「うぐぐぐぐ……な、なんだ……?なにが起こって……」 悠介 『───強者……我ト戦エ……』 父  「なっ……、───!?」 ジャキリ、とおっさんに剣が向けられる。 といっても刃ではなく柄の方が。 ようするに悠介が、倒れたおっさんに武器を渡しているような構図。 こんな場面をあたしゃ何度も見て来ました。 その中にはマジモンの強者とかが居て、 さんざんっぱらボコられたのちに獣人神父送りにされたりもしているが、 それでも悠介ってば強者探して戦う日々。 負けたらその分モンスターと戦いまくって己を鍛える日々が続いていた。 どうやら……あの騎士サンに負けたことがよっぽど火種になったらしい。 気持ちは解るけどね、“設定された力”に負けるのがどれほど悔しいか、ってのは。 父  「おのれ魔物め……!」 おっさんは即座に剣を取り、その剣に異常が無いかを調べたのちに向き直った。 ……やる気だ。 父  「来い……!二対一でも私は負けんぞ!!」 悠介 『勘違イスルナ、弱イニンゲン。戦ウノハ我ヒトリダ。     生キ延ビルタメニ足掻イテミロ。全力ヲ出シ、我ヲ下セ』 父  「……?はぁあああっ!!!!」 話し合いなど無意味だと受け取ったんだろう。 おっさんは剣を構えると一気に駆け出した。 その構えは以前戦った王国騎士の構えのそれと同じものだ。  ガィンッ、ギィンギヂィンッ!! 悠介 『───ッ……!!』 父  「現役を退いたとはいえ、まだまだそこらの魔物などには負けんッ!!」 おっさんは言うだけあって相当な腕だった。 恐らく───家庭を持ったことで死ぬことを恐れた故の現役からの退き。 だが、だからといって剣の修行を怠ったことなど無かったんだろう。 それは、剣の筋を見るだけでも明らかだった。 父  「どうした!そうやって受け止めているだけか!?」 悠介 『───、……』 悠介がどんどんと落ち詰められてゆく。 おっさんの攻撃には隙というものが見受けられず、付け入る隙がまるで無い。 そんな状況下だ、いくらあれから大分レベルを上げたからって、 精霊の力もなんも無い悠介じゃあやっぱり限界ってもんが───  ギギンッ!!フィンッ───ガギィンッ!!  ───ッズザァアアアッ!!! 父  「───……!!!?」 ───前言撤回。 限界なんて言葉、簡単に使うもんじゃあなかった。 特に、悠介に限っては。 そりゃあ今の悠介に『限界超越』や『イーグルアイ』っていう怪物能力は無い。 けど、それに見合った経験はきちんと残っているのだ。 悠介 『様子見ハ終了シタ。悪イナ、弱イニンゲン。     キサマノ太刀筋、全テ見切ラセテモラッタ』 父  「なに……!?馬鹿なことを!     私が学んだ王国剣術はそこいらの獣人なぞに見切られるほど」  ガギゾバシィンッ!!!! 父  「かっ……!?」 悠介 『“王国剣術”ダカラコソ見切レルノダ、タワケガ。     型ニハマリスギタ剣術ヲ我ガ物顔デ振ルウコトニ、     貴様ノ努力ノ末ガドレダケ届クトユウノダ』 鮮血が舞う。 ステータスを全て速度に移し、一気に間合いを詰めた悠介の剣は…… 容赦無くおっさんの脇腹を切り裂いた。 少女 「あ……あぁあ……!お父さん!?お父さぁああん!!」 彰利 『ヤカマシイ』 ズビシッ!! 少女 「はぴゅっ!?」 ……ドシャア。 死んだ。……じゃなくて気絶した。 なに、軽く手刀落としただけですわ、うなじに。 父  「や、やめろ!娘には手を───」 悠介 『勘違イヲスルナ、弱イニンゲン。我ラ獣人、無意味ニ人ヲ殺シタリハシナイ。     出血ハヒドイガ傷ハソウ深イモノジャアナイ。     コノ薬草ヲ貼リ付ケテオケバスグニ直ル』 父  「なに……?」 悠介 『学バセテモラッタ。貴様ニ感謝ヲ』 父  「ま、待て……。貴様、最初から戦うことがけが目的で……!?」 悠介 『……?用件ナラバ最初ニ言ッタ筈ダ。我ト戦エト。他ニナニガアル』 父  「………」 悠介 『ソレヨリ貴様。ヨリ強イヤツガ何処ニ居ルカ知ッテイルカ』 父  「強いやつ……?」 悠介 『我ラハ、ヨリ強イ者トノ戦イヲ望ンデイル。     ダガ“レオン”トユウ男ハ別ダ。ソイツニハマダマダ歯ガ立タヌ。     レオン以外ノ名ヲ、今ココデ唱エロ』 父  「………」 悠介 『サア』 悠介がおっさんに詰め寄る。 と、おっさんは小さく息を吐いて悠介を睨みながら開口した。 父  「東だ……」 彰利 『ジョー?』 悠介 『違ウ』 そりゃそうだった。 父  「東に……足技だけで猛獣を倒したというひとりのスチュワードが居ると聞く……。     最近名が知れ渡りだしたブレイバーだが……」 彰利 (ブレイバー……しかもスチュワードっつーと) 悠介 (……ああ。間違い無い、藍田だ) 他のヤツがジョブチェンジしたって可能性もあるけど、 この期間で既に執事の上級職のスチュワードになってるっつーことは、 最初っから執事のジョブで通してたヤツしか考えられない。 そうなると相手は藍田ってことになる。 彰利 『ヨシ、デハ行クトシヨウ』 悠介 『ソウダナ』 俺たちは早速移動することにした。 おっさんがなんだか微妙な目つきで俺たちを見てたけど、まあどうということも無し。 野良ルルカを駆って移動を開始した。 ───……。 ……。 彰利 『しかし、なんだね。プレイヤーキャラに会うのも随分久しぶりじゃねぇかい?』 悠介 『そだなー。     レオンにこっぴどくやられて以来だから……もう一週間くらいになるか?』 彰利 『みんなそれぞれ目的決めて頑張ってんでしょうな。     俺たちゃ相変わらず蛮族っぽいことしてっけど』 悠介 『獣人の領域を広げるためだ、文句なんて言ってられないだろ』 彰利 『けど、よく許可したよな、獣人神さんも』 襲ったニンゲンを始末せずに逃がすなんて行為、普通だったら敵視される行為だ。 なのに我らはむしろ褒められてる。 それがなんでかっつーと……これもまた我が親友の説得によるものだったりする。 俺も手伝ったけどね? 彰利 『獣人の恐怖を知らしめるためには、恐怖を伝える者が必要、か。     なるほどねぇ、人を無闇に殺さないようにするにはうってつけの言葉だ。     悠介、やっぱお前って根っからの悪にはなれねぇよ。向いて無い』 悠介 『うーさい』 結局こやつは非情には成りきれなかったのだ。 ゲームの中とはいえ頑張って今を生きている存在─── その未来を妨害するようなことを私利私欲のために潰すなんてことが、出来なかった。 ほんに甘チャンよ。 でもそんなこやつだからこそ親友だと胸張って言えるわけだ。 ノリノリで暴走する悠介も嫌いじゃないけどね。 彰利 『しっかし藍田ねぇ……。もしやオリバ化でも出来るようになったんかな』 悠介 『多分普通にスチュワードやってると思うぞ?     単に木村と一緒に居ると強くなりすぎるってだけで』 彰利 『主人の前の執事か。そりゃ最強だわ』 根拠はないが、そうなのだ。 執事や女中は主人に尽くす存在。 故に主人の前では何者にも負けぬ強さをあふれ出させるものなのだ。 そして藍田にはそれに加えて『オリバ』がある。 変身後のステータスボーナス(オリバ)をその身に備える藍田亮は、 それはもう強いだろう。 しかも既にクラスチェンジまで終了済みとくれば……なぁ? 彰利 『クラスチェンジか……そういや奥義とか教えてもらったんかな』 悠介 『───』 彰利 『悠介?』 悠介 『……スチュワードになった時に師範から教えてもらう奥義が何か、知ってるか?』 彰利 『?……んにゃ、全然。悠介は知って───るか。     ジョブシステムとかは悠介が担当したんだもんな。     で、どんな奥義がもらえるんだ?』 悠介 『………』 彰利 『……悠介?』 沈黙が怖い。 もしやとは思うが…… 悠介 『ジョブスキル“献身”にボーナスが入る能力が貰える』 彰利 『ゲェエエエエーーーーーーッ!!!!?』 ビンゴだった。 聞いた話じゃ女中や執事ジョブってのは相当に強いらしい。 もっともそれは、主人として設定した者の傍でならだが─── たださえ強いそやつらがさらに強くなるジョブスキルがプラスされたら…… 彰利 『うおお怖ェエ!!マジ!?マジで戦う気なんか悠介!!』 悠介 『勝算が無いわけじゃない。木村夏子をなんとか先に仕留められれば、     逆に強ければ強いだけ能力が下がるって設定なんだ』 彰利 『うおう……それじゃあマジで主人が居なけりゃ究極ザコ?』 悠介 『その代わり、主人の傍だと鬼人より性質が悪い』 なんという嫌な設定か。 でも木村夏子さえ亡き者にできれば余裕で勝てるわけだ。 なんだ、案外簡単じゃん。 彰利 『よっしゃあ!じゃあ早速向かおうぜ!     クラスチェンジしてる相手をブチノメせば経験値だって相当な筈だ!』 悠介 『だな。よし!行くぞルルカ!東へ向けて全速全身!!』 ルルカ『ウェヴァヴァヴァ……ゴェエエエォオウウッ!!!!』 悠介 『………』 彰利 『……なんでルルカって鳴き声がイャンクックかねぇ……』 姿形はかわいいのに。 もったいねぇ。 ───……。 ───。 ドカカカカッ…… 彰利 『───!居た!あれだろ!?』 ルルカに乗ったまま、遠くを歩く姿を凝視した。 人数は……提督、藍田、丘野くん、綾瀬、殊戸瀬……と───謎の物体の6人だ。 悠介 『………』 彰利 『………』 いや……誰? 悠介 『な、なぁ……』 彰利 『え?あ、ああ……』 提督、藍田、丘野くん、綾瀬、殊戸瀬は解った。 装備はあれから随分と変わってるけど、一目瞭然だ。 けど───なんだいありゃあ。 岩……い、いや、鉱石の塊が動いてる……? 彰利 『な、なんすかありゃあ……!!な、なに……?機動重装甲殺戮兵器……!?』 悠介 『ちと待て……“調べる”発動……』 悠介が調べるを実行。 やがて─── 悠介 『……“木村夏子”だ』 彰利 『えぇっ!?』 あれが!? あの鉱石の塊みたいなアレが!? グラビモスの素材から作ったグラビドメイルなんて目じゃねぇよ!?(多分) 悠介 『装備は……血塗られた盾に絶望の鎧、悪魔の篭手に破滅のフルフェイス、     鬼人の具足に魔人の腰当、堕天の腿当……って全部呪い系装備じゃねぇか!!』 悠介が戦慄した。 彰利 『そげなもん序盤で手に入るもんなの……?』 悠介 『あー……まあその、呪われるわけだしな。     自分の意思とは関係無く体が動いたりするから、     誰も好き好んで装備しないだろうってことで。ああ、もちろんイドの仕業だ』 彰利 『………』 言っちゃなんだけどさ。 このゲームってイドの所為で凄まじく捻じ曲がってねぇかい? 彰利 『ど、どうするんだ?呪い系ってくらいだから防御力も相当なんだろ……?』 悠介 『あの装備からすると、100以上はいってるな』 彰利 『ダメージ与えられねぇよそれ!!!』  ギシャアンッ!! 彰利&悠介『だわぁあああああっ!!!?』 光った!今、魔人夏子がこっちをギュルリって振り向いて、目ェ光らせた!! やべぇ見つかった!! 機動重装甲キムラ『ウォオオオオオオオオゥウウウウッ!!!』  バッ!!ゴォッ───ズシャアアアアアアアッ!!!! 彰利 『ヒィイ!!?』 既に顔すら見えないくらいの漆黒の装備に身を纏った木村夏子が逃走経路を塞いだ。 すげぇ……あの距離を一回の跳躍で……!! しかも暴走していらっしゃるよこの人!! 彰利 『オ、オノレ妖怪!!』 そんな彼女を見て最初の感想がそれだった。 まるでぬ〜べ〜だ。 機動重装甲キムラ『はぁ……また犠牲者が……。          一応聖職ジョブの身として祈りは捧げておくね。          体は言うことは聞かないけど、口と思考だけは比較的まともだから』 彰利      『イヤ……ソンナ、口カラ蒸気ミタイナノ出サレナガラ言ワレテモ……』  トンッ─── 悠介 『───!避ケロ!』 彰利 『ヌッ!?』 藍田 『“空軍・(アルメ・ド・レール)
パワーシュートォッ”!!!』  バシュゥンッ!! 藍田が何かを蹴り弾き、飛ばしてきた!! そしてそれは───意外!なんとそれは提督だった!! そしてその両手には妙な形の武器がひとつずつ! 中井出「100万パワー+100万パワーで200万パワー!     いつもの2倍のジャンプが加わって200万×2の400万パワー!!     そしていつもの3倍の速度が加われば400万×3!!     貴様らを屠る1200万パワー!!     さらにマグニファイ発動!10分アビリティを発動させれば能力は通常のニ倍!!     2400万パワーだぁああーーーーーーっ!!!!」 ど、どういう方程式か解らんがともかく凄い迫力だ! 提督が……提督が輝いてる!! でも避ける。わざわざ当たってあげるのも面倒だし。  シュゴォオーーーーーー……………… 声  「あぁあああぁぁぁぁぁーーーーーー………………」 ドゴシャッ!ドゴッ!ゴシャッ!バキベキゴロゴロズシャアアアーーーアーーーッ……!! 物凄い勢いで飛んでいった提督が、地面に激突して跳ね転がって滑って動かなくなった。 ぬおお、恐るべし2400万パワー。 あの提督が自ら自滅して動かなくなるほどとは……!! 丘野 「瞬時にあの戦法の弱点を見破るとは……!なかなかやるでござるな……!!」 殊戸瀬「見破られないって思ってる方がどうかしてるの」 俺もそう思う。 丘野 「提督殿の仇でござる!いくでござるよ───生分身の術!!」 ブワァアアッ!!───丘野くんが25人へと分裂する!! だが悠介は何を思ったのか砂利を拾い上げると構え、それを投擲した!! すると砂利が分裂し、分裂していた丘野くんへとヒットするとその悉くを消し去った!! 丘野 「ややっ!?」 あとに残されたのは丘野くん本体だけだった。 彰利 (うわぁ〜おぅ……こげな弱点があったとは) 悠介 (分身は必ず『一発で死ぬ』。それはお前も解ってたことだろ?) 彰利 (あ……そういや) どんな方法であれ一発は一発なのか。 じゃあ悠介みたいに投擲スキルは上げておいたほうがいいかもな。 悠介ってば『上げられるもの』はとことん上げる人だから、 スキルはもう大変なことになってる。 俺もそれに追いつこうと頑張ったんだけど……要領の悪さに差が出たのか、 思いっきり差をつけられてしまった。 だってねぇ……オイラ悠介ほど実戦経験無いし。 そもそも俺は鍛錬型というより一挙成長型だったし。 確かに成長する喜びはあるんだけど、思うように成長しないと挫折してしまうのだ。 つまりはそこで差が出来た。 成長しないからやってられーん、って投げ出した俺と、 成長しなくても鍛錬を続けて成長しちまった彼。 そげな構図が今の僕と彼の状態。 加えて悠介は相手が強者なら誰にだって挑んでる。 もちろん負けた回数も相当だが、金は全部俺が預かってるから半分になることもなし。 彰利 『………』 ……アレ?もしかして俺って今、とっても輝いてない? 彰利 『ギャアアアアアアアアム!!!!』 悠介 『ウオッ!?ド、ドウシタ!?』 突如叫んだ俺に、前に立っていた悠介が肩を跳ねさせて驚いた。 彰利 『俺ダ!俺ガヤル!!』 悠介 『オ、オイ!?』 そんな悠介を押しのけて前に出る俺。 そう……このままではいかん!! 悠介が我が未来を守るのだとするならば、その親友の未来を守るのがこの俺の役目!! そしてそれは、 こんな風に親友の戦う姿のみを見続けることで叶えられるものではなぁあーーーーい!! 故にファイト!!闘狂ビッグファイト!! 彰利 『我ガ名ハ獣人ゴルベーザ。ソシテコッチガ獣人ゴルダーク。     故アッテ貴様ラヲ打チ滅ボシニ来タ』 丘野 「ゴルベーザとゴルダーク……でござるか?」 藍田 「なんつーかどっかで聞いた名前だな。     ちと精霊たちのネーミングセンスに呆れを感じる今日この頃……」 ほっとけぃ、どうせパクリじゃよ。 でもね、それを言ったら確かにこの世界にも パクリっぽい名前っつーかパクリな名前はあるのだ。 ひとつの国の名前とその王の名前なんだが、それがまた懐かしい名前でねぇ……。 なんつったっけ?国が“トリスタン王国”で、王の名前が“ジュノーン”ときてる。 ちなみにそのトリスタン王国ってのが死人の国で、王ってのがあの不死戦士。 不死ってくらいだから、 あの魔法使いのオッサンとの戦いで死んだりしてねぇだろうと思ってたが、 思いっきり生きてやがった。 不死戦士ってのは通り名で、本名はジュノーン。 さらにこれまた予想通りに“黒き死仮面”の異名も持っている。 もちろん性別は女じゃなくて男だが。 つまりこの世界には三つの国の他に、 巨人の国イルザーグと、さっき上げたトリスタン王国が存在する。 イルザーグ王国の主ってのがこりゃまた困ったことにゼプシオンで、 既に一度悠介が単身で乗り込んで一撃で屠られてる。 容赦無しにマジで強いッス。 ゼプシオンの戦闘パターンを想定しての戦いだった筈が、 予想を上回る速度と圧倒的なパゥワァ〜の前に瞬殺。 もはや二度と闘うまいと思わせるほどの圧倒的名力だったよ、うん。 とまあそげなことは良しとして。 俺は悠介に$を全部渡すと、一呼吸ののちに構えた。 丘野 「ほほう……モンクでござるか。     獣人なのに職業を持っているとはなかなかに天晴れでござる。     では拙者も全力でいかせてもらうでござるよ」 丘野くんが二刀を構える。 俺もそれに合わせて戦いやすい距離を保ち、やがて足を踏み込ま─── 丘野 「行くでござる!!」 彰利 『ンナッ!?』 こっちがいざ飛び掛ろうとした瞬間だった。 やべぇ、いきなり虚を突かれた! 狙ってやったんなら相当だぞこれ!! 丘野 「えィやぁっ!!」  フフォンギギィンッ!! 双方から襲い掛かる二刀を拳で弾く。 ナックルは既に+25まで上がっている───相手の攻撃を弾くことくらい造作もない。 けど、驚くべくはその速度だった。 相手が忍者ジョブだってのは結構前から知ってたことだが、 その速度、精密性ともに結構なもんだ。 彰利 『焚ッ!!』  ボリュッ───ゥンッ…… 彰利 『っ……チィ……!』 放った拳はあっさりと躱される。 速度に差がありすぎるのだ。 だったら───トンッ! 丘野 「───?速度が……」 ステータスを速度重視にして突っ込む!! このままじゃあ諸刃カウンターを狙えたとしても避けられる可能性がある。  ───フオンッ! 拳から力を抜き、速度重視のままに素早く撓らせ攻撃する。 速いだけの拳ならいくらでも打てる。 そのどれかが当たった時が狙い目だ───! 丘野 「〜〜……獣人もなかなかやるでござるな……!」 よく言う。 攻撃の全ては避けられ、しかも案外余裕そうに笑んでやがるくせに。 と、心の中で舌打ちをしていた時だった。 丘野くんが懐から尖った鉄のようなものを取り出し、 丘野 「活殺飛び苦無!!」 投擲してきたのはなんと苦無! って、ちょ、待て!いきなりそんなのアリですか!? 彰利 『オォオオオッ!!』 だがその全てを拳で叩き落す!! 目では追いつけているんだ、あとは速度MAXにして叩き落してやればいい。  ギャリィンッ!!! そして即座にガードポイントを引き上げて丘野くんの追撃を弾く───!! 彰利 『ッ……ナカナカヤルナ、弱イニンゲン……!!』 丘野 「そっちこそなかなかやるでござる……!!     こうまで攻撃が当たらないのは久々でござるよ……!!     だが───生憎ながらおぬしの敵は拙者だけではないのでござるよ!!」 彰利 『ヌ……!?』 声  「“羊肉(ムートン)ショット”!!」 彰利 『ア』 やべぇ!いつの間にか横に居たオリバが俺目掛けてメゴシャア!! 藍田 「ぶべっ!?」 彰利 『……アラ?』 丘野 「おやっ!?」 ……と思ったら、さらにその横から駈けてきた悠介にスラッシュキック食らわされた。 あーあ、顔面だ……痛いぞアレ……。 悠介 『ソッチコソ忘レルナ。コチラモ一人デハナイ』 藍田 「…………やるじゃない」 藍田が口から出ている血をグイッと拭った。 そして足を軸とした構えを取ると、悠介と真正面から向き合う。 藍田 「さて……。夏子が呪刻魔人になった今、     俺を弱体化させる要因なんてひとつもねぇ。     なんの気兼ねもなく戦えるってこった」 悠介 『………』 藍田 「ではお客様。早々にボコられて塵と化してくださいませ」 悠介 『断ル』 そりゃそうだ。 とはいえ、向うに意識を回してる暇はないな。 提督が自滅してくれて本気で助かった。 丘野くん、何気に結構強いぞ? だがしかし。 丘野 「これで最後でござる!!」 彰利 『イキナリカ!?』 丘野 「丘野流忍術究極奥義!!疾走剛撃!!」 丘野くんが一旦後ろに飛び、全てのステータスを速度に変え、俺目掛けて一気に横跳躍!! さらに勢いをそのままに全てのステータスを力に変え、二刀を構えて飛んでくる!! 彰利 『───!!』 これだ!この時を待っていた!! ならば俺も最大の攻撃で迎え撃とう!! 我が拳に焔よ宿れ!! 彰利 『絶殺!!渾身諸刃カウンター!!』 説明しよう! 渾身諸刃カウンターとは諸刃カウンターの上位技である!! いわばロマンシングサガ2で言うカウンターの上位、ジョルトカウンター!! これを受けて立ち上がれたヤツは居ねぇ!! 彰利 (フフフ……あの勢いから察するに、俺も無事じゃあ済まねぇだろう……。     だがよ、へへ……一発勝負に出られたなら真っ向から受けるのが男ってもんだぜ?     ……提督のことは忘れるとして) 丘野 「とぅぅうううあぁあああああああっ!!!!」 彰利 『オ亡クナリニナリヤガレェエエエーーーーーーーッ!!!!』 やがてふたつの影が衝突する!! 風を切り、己が武器を振るい、今まさに衝突───!!  ゴカゴガァッパァアアアアアアンッ!!!!! ───………… …… 丘野 「………」 彰利 『……名ヲ、聞イテオコウカ』 丘野 「……丘野、眞人」 彰利 『……ソウカ。イイ勝負ダッタゾ、久シク見ヌ強キニンゲン』 丘野 「……───グッ」 ドゥッ…… 丘野くんが俺の背後で力尽き、倒れた。 一方の俺は……残りHP1でギリギリ生きてます。 ……と、そげな俺をニコリと笑顔で見据えるおなごがひとり。 殊戸瀬「死ぬ覚悟、出来てるわね?」 彰利 『ソウハナラナイ』 死ぬ覚悟なんて決めてやらん。 だから俺はバックパックからアップルグミを取り出すと、鬼のような速度で食いまくった。  ガシュリゴフガフショショリショリショリ……ゲェフッ……!!……ポムポム。 それはまるで、モンスターハンターの“こんがり肉”を食う男の姿のようだった。 しっかりと腹も叩いたし。 彰利 『完!全!回!復!』 殊戸瀬「……忌々しいわね」 随分とドスの聞いた声だったという。 彰利 『フフフ、サテ……今ノ技ハ一子相伝ガ故ニ、貴様ラニハ死ンデモラウ』 麻衣香「なぁっ!?ななななにそれ!     あなたが勝手に見せたんじゃない!!あなたトバル2のカエル!?」 彰利 『俺ノ理想像ダ』 殊戸瀬「随分寂しい理想像だこと……」 ほっといてくメゴシャアッ!!! 彰利 『オゲェエッ!!?』 突然の衝撃!! 我が背中に何かがブチ当たり、俺は果てしなき空の旅をドゴシャシャシャシャア!!! 彰利 『ギャアーーーーッ!!!』 ……いや、果てなんて案外すぐだった。 地面に顔面を痛打しながら転がり、木にブチ当たって止まった。 彰利 『ウググググ……ナ、ナニゴト……?』 俺にぶつかったらしき物体をどかしつつ眺める───と、それは悠介だった。 彰利 『エエッ!!?』 悠介 『グ……イツツ……!!』 ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……!! 悠介がこうもあっさりと吹き飛ばされて……!? 悠介 (……あー、彰利。気をつけろ。オリバ、ちと強すぎだ) 彰利 『ウゲェ……』 聞きたくなかった言葉が聞けましたとさ……。 彰利 (えーと、どうしよう) 悠介 (勝てないって解ってるのに戦うのは得策じゃないな……) 彰利 (キミにだけは言われたくない) 悠介 (悪かったな……!どうせ無茶してるよ!!) ともあれ次の行動は決まった。 藍田 「さてお客様。そろそろメインディッシュを運ばせてもらいます」 彰利 『フフフ、ソウ粋ガッテイラレルノモ今ノウチダゼ』 藍田 「……?なにか策でもあると?」 彰利 『アル!』 悠介 『ソウナノカ!?』 彰利 『アア、アルゼ……トッテオキナノガナ』 藍田 「ほほう。それは?」 彰利 『逃ゲルンダヨォオオオ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!』 ドカラタタタタ───俺は逃げ出した!! 一瞬遅れて悠介も走り出し、俺たちはそう───風になった!! 藍田 「ここまで引っぱってそれかよ!!」 どうとでも言え!だが我らは生き残る! そしてより強くなった時こそ貴様が死ぬ時だ!! 藍田 「ったく───お客様、料金未払いでの飲食及び逃亡は控えてくださるよう───」 トンッ───ババババババッ!!! 彰利 『へ?』 大きく何かが動く音を聞いて振り向いた。 と───なんと藍田が縦回転しながらこちらへ向かってくるではないか!! 藍田 「“三級挽き肉(トロワジムアッシ)”!!」 彰利 『アァアアーーーーーーッ!!!!』 気づいた時にはもう遅い。 我が顔面に勢いのついた飛び蹴りがドガガガガンと連続で突き刺さり、 さらに一旦引いてさらに勢いの付けた飛び蹴りが俺の顔面目掛けて 藍田 「“木犀型斬(ブクティエール)シュートォッ”!!!」  バガァンッ!! 彰利 『アガァアアアアアアッ!!!』 ……吹き飛んだ。 もうこれでもかってくらい吹き飛んで転がり滑った。 悠介は俺に蹴り込んで隙だらけになってた藍田に向けて、自分も飛び蹴りを決行したが…… 身体を捻り、すぐさまに地面を蹴って跳躍した藍田に驚愕。 やがて空中で身動きが取れない状態のままに藍田に見下ろされ─── 藍田 「“(ブロ)───」 悠介 『あ……やべ───!!』 藍田 「───焼き(シェット)オォッ”!!!!」  ドォッゴォオオオオオオオンッ!!!!! 悠介 『っ……がはぁああああっ!!!?』 錐揉み回転を加えた鋭い蹴りが、悠介の身体を地面へと叩きつけた。 つーかちょっと待て!強っ……オリバ強すぎ!! これじゃあ変身後のオリバなんて是非とも見たくねぇYO!?  シャァアアン…… あ、ぁああ〜〜……悠介が塵になってゆく……。 この魔物……あまりに危険よ!!(注:どちらかというと魔物は彼) 藍田 「……獣人でも死ぬと塵になるのか。なるほど。つーことは……」 ギヌロと、その目が俺を射抜いた。 彰利 『ギャアアアアアアム!!!!』 や、まるで蛇に睨まれたカエルだね。 俺は思わず叫び、再びジョセフなジョースターさんのように逃げ出した。 が。 藍田 「食事中は極力音を立てぬよう───“反行儀(アンチマナー)キックコース”!!!」  メゴシャドッパァアアアアアンッ!!!!! 彰利 『ほぎゃああああああーーーーーーーっ!!!!!』 ……その日。 俺はかつてない空の向うへと届きそうなくらいに空を飛んだのだった。 ───……。 ……。 彰利 『エー……トユウワケデ!!コレヨリ獣人族強化月間ヲ執リ行イタイト思ウ!!』 獣人 『オォオーーーーーッ!!!』 あれから、結局塵となって舞い戻ってきた我らは、 その悔しさを胸に強さを探求する旨を打ち明けまくっていた。 そして始まろうとしているのだ!己をより高める瞬間が!! 彰利 『コノママ弱イニンゲンドモニ馬鹿ニサレッパナシデハイカン!!     今コソ!今コソ立チ上ガルベキダ!!』 獣人 『オォオオーーーーーーーーッ!!!!』 彰利 『トユウワケデ!コレヨリ6人ズツデパーティーヲ作リ、     レベルアップノタメノ冒険ニデル!!     我ラノ強サ、ニンゲンドモヤモンスタードモニ見セ付ケテヤレ!!』 獣人 『オォオオオオオーーーーーーッ!!!!!』 獣人たちは猛った!! 俺も猛った!! 悠介も猛った!! もはやこのままではおかん!! こうなりゃ意地だ───絶対に!!絶ッッ対にぃい!!! この世界を獣人の力で染めてやる!! 彰利 『やってやろうぜ悠介!!俺ゃもうドタマ来た!!     このまま負けっぱなしでいいわけがねぇ!!』 悠介 『当たり前だ!!絶対にニンゲンどもをぶっ潰してやる!!』 もはや誰にも我らは止められん!! 見境など無いほうがいいのだ!! あ、でもお客様は別だよ?我ら獣人にだって金銭への思いはあるし。 彰利 『そこで聞いといていいか?悠介の変身後スキルってなに?』 悠介 『うん?ああ、“創造”だ。どこまでいってもコレとは切っても切れない仲らしい。     けどあんまり期待しないでくれ。今のところ、精々で食べ物を出すくらいだ。     しかもこれやると相手に俺が誰かってすぐバレる』 彰利 『あ、そか』 悠介 『だから使うとしたら、武器とかを創造出来るようになってからだ。     まさか創造までレベルダウンさせられてるとは思わなかったけど、     これはこれで懐かしい感じがしていいと思う』 言って、ハトを創造する悠介。 ……と、そんな懐かしき光景を見るに至り…… 彰利 『……もしかしてさ。創造の理力がレベルダウンさせられてるっつーことは……     やっぱアレ?体力削って創造するのに戻ってるとか?』 悠介 『……よく解ったな。ハトなら全然平気なんだが、他のヤツはきっちり体力が減る』 彰利 『ウヒャア……』 こりゃまたなんとも……じゃあ悠介ってば懐かしきあの頃の悠介に戻っちまったと。 そういうことですか? 悠介 『まあこれも使ってれば熟練が上がっていくようだから。気長に成長させていくさ。     創造の理力とも随分長い付き合いになる。今さら嫌気なんて差しもしないしな』 そりゃ、かつてクソガキャアだった頃のことを言ってるんだろうか。 ……それもそうか、悠介は創造の理力を見せた所為で、 周りから異常者って見られるようになったんだしな。 最初の頃は、そりゃあ嫌いにもなっただろう。 彰利 『そか。で……どうする?俺とお前が組むのは当然として。他に四人集めるか?』 悠介 『いや、今まで通り俺とお前とでいこう。     ただし、今回からはふたり掛かりで意地でも相手を殲滅する』 彰利 『お、おお……』 もはや正々堂々もなにもあったもんじゃない。 余裕無いのよ今。 何故かって、リージョン情報で調べる限り─── 今現在一番勢力が弱いのって獣人なんだもの。 彰利 『ッシャア野郎ドモ!!意地デモ強クナッテ人間ドモヤモンスター、     亜人族ヤ巨人族ヤ不死族ニ一泡吹カセテヤロウゼェエエッ!!!!』 獣人 『ウオシャアアアアアアッッ!!!!!』 もはや覚悟は決まった!! 俺たちは獣人のために生きて獣人のために死のう!! 一番弱い勢力を最強にする喜びと絶望───今こそ思い知らせてやるぞ、人間どもめ!! Next Menu back