───冒険の書320/幕間劇とその先への分岐───
【ケース797:中井出博光/粘土で燥ぐのは子供だけ……とは限らない】  ギャァア〜〜〜〜〜〜〜ン!! 僕に電撃走る…………っ! 中井出「なにぃ!?それはまことか!」 ナギー『まことなのじゃ!』 ローラ『ええ、間違いありません。自然を通じて得た情報です。     東で修錬を終えた同盟軍が、竜族の墓を目指して移動を開始したと』 おやつタイムのほのぼのした時間の中、ナギーとローラの口から語られる衝撃の事実! 次回!博光の野望オンライン!意思を継ぐ者!……ごらん、あれ。 ……ウソです。 中井出「んんんん〜〜〜〜〜〜〜っ!!!     許せーーーん!私の遊びを邪魔しおってーーーっ!!」 閏璃 「そこでギースの真似できる余裕があるなら十分じゃないか?」 中井出「そうだね」 予想通りなら、やつらはスカルドラゴン戦でかなりのパワーアップが出来る筈。 それを思えば、邪魔する理由は……あるね。 中井出 「でもせっかくだから───ヘイジョニー!」 ジョニー『《ズシャアッ!》そこまでニャッ!』 呼びかけるとともに、ジョニーがキャプテンコマンドーのように飛んでくる。 そんな彼に、やつらの進行の妨害をしてきて?と依頼。 ジョニー『はいニャ!』 ジョニーはあっさり頷くと、僕に初期装備のリクエストをしてきた。 で、準備が整うやクサナギジェットで空を飛び、 エルメテウス目掛けて全速突撃していった。 要塞みたいなデカいものはダメだが、 猫くらいの小ささならデスゲイズに探知されないのは確認済みだ。 きっと上手くやってくれることでしょう。 定期的に邪魔とかしとかないと、やつらにとっての刺激にならないからなぁ。 ただでさえ村や町に危害を加えてないんだ、魔王は実はいいやつとか思われたら大変さ。 ……ところで。 中井出「ねぇ、僕スカルドラゴンの素材が欲しいんだけど」 閏璃 「だと思った」 ナギー『今まで全ての守護竜の素材を集めておるからの』 もちろんジハードのも。 黄竜剣とかで破壊した爪や鱗を持ち帰っては、ドワーフに頼んで鍛えてもらっていたのさ! 回復すればまた生えてくるし、お陰で武器も防具も鍛え放題……! なんというリサイクル!……あれ?リサイクルとはちょっと違う? そんな考えをしながら、やはり皆様と一緒になって微笑みながらおやつを食う。 うん美味い。このデザートは正解だった。 閏璃    「いやしかし、俺達までなんか悪いよな、武具鍛えてもらって」 ジハード  『砕けた鱗と爪を惜しんでも仕方ないだろ。べつに構やしない』 閏璃    「…………彼、なんて?」 中井出   「この代償は体で払ってもらうって」 閏璃&レイル『ヒィ!?』 中井出   「うそです」 閏璃&レイル『あのなぁああああああっ!!!』 それから始まる、本気ではない取っ組み合いの喧嘩。 頬を抓ったり大外刈りしたり、二段背負い投げで人間の跳躍力を超越してみたり、 ブルドッキングヘッドロックで湖にダイヴして遊んでみたり、いろいろやった。 極めつけはもちろんガブリ。 中井出「おや?」 閏璃 「あ」 レイル「おおっ」 いつの間に近くに来ていたのか、 ガノちゃんが僕の下半身を軽く噛み、その状態で泳ぎだした! 鼻先だけを水面に出したまま、こう、僕の上半身だけが水面を走ってるみたいに! こ、コレはッ…… 中井出「マーメイド…………ッ!!」 両手を真横に伸ばし、風を身に浴びながら恍惚の表情で進みゆく……! 閏璃 「マーメイドとかそういう次元の話じゃないだろ!!」 レイル「どこまでアンバランスなマーメイドだよ!下半身魚竜じゃねぇか!!」 中井出「う、うるせーーーーーっ!!」 なにを言われようとも面白いなら素晴らしい! 僕はマーメイド状態でガノトトスに語りかけると、 閏璃とレイルが待つ川のほとり(違う)にレッツゴー! 関係ないけど“川のほとり”って発音が大好きです。 湖のほとりと言うよりもやっぱり川のほとりだと思うんですよ。 ……ちなみにほとりってのは水際のことです。 閏璃 「《バッシャアアッ!!》うおぉっ!?つめてっ……!!」 中井出「関係ないけどさ、この格好ってなにかのクリーチャーっぽくない?」 レイル「ガノトトスに食われる提督だな」 ナギー『うむ、どう見てもガノトトスに食われるヒロミツなのじゃ』 中井出「うん……そうだよね……」 うすうす感じてはいました。 そんなわけでガノちゃんに解放してもらった僕は、 みんなの傍らに座るとおやつの続きに入る。 ガノちゃんも満足したのか湖の中心に戻ってゆき、僕らは再び談笑の渦の中へ。 ……と、そこで少々気になることを耳に。 武具の“つなぎ”に使う特殊な石の発掘作業中、 どうしても出てくる“粘土”の処分に困っているんだとか。 アイルーとダルトロス老が話す声を耳にした僕は、ならばと湖畔の中心で愛を叫んだ。 余るのなら、作品にすればいいのよ!と。 中井出「えー!第一回〜!粘土作品対決〜〜〜〜〜っ!!」 総員 『ハワァアーーーーーーーッ!!』 中井出「さあ今週もやってまいりました、無益な争いだけど楽しければOKバトル!     用意してもらったこの大量の粘土!     これを使って、今回は皆様に造形技術の高さを競ってもらいたいと思います〜!     ルールは簡単!この湖畔に掻き集められた粘土を好きな量取って、     象って固めて最後に焼いて、ステキなカタチに治めたら終了!     みんなが作り終わるのを待って、ナンバーワンを決定します!」 総員 『ハワァアーーーーーーーーーーーッ!!!』 中井出「では各自!作業に移ってください!あ、おやつまだあるから、作業休みにどうぞ」 皆様が早速大量の粘土に近づいてゆき、塊からモヂリ、と捻り取ってゆく。 もちろん僕も捻り取り、ペチペチと叩いて、その冷たさと程よい硬さに懐かしみを覚える。 閏璃 「粘土ってどうしてか殴りたくなるよな……」 中井出「な……」 レイル「そうだよな……」 そんなわけでまずはナックル。 硬いところをほぐすように、 中井出「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」  ドトトンッ!ドンットンットンッ!! と殴りに殴りまくってゆく。 その際、ステータス移動をするのを忘れて、 ヘドロのように潰れてしまったのは言うまでもない。 ……。 ぺたぺた……ネジリ、バンパンパンッ! しばらくするとそこかしこから叩く音や捻る音、殴る音が聞こえてくる。 粘土を練ってると、静かになるか煩くなるかのどっちかだよね。 中間がない。 ミク 『できました!』 総員 『早ッ!!』 そしてあっという間に完成するミクの作品。 いったいなにを……と皆様が注目する中で、ミクの作品といえば…… ミク 『見てくださいマスター!ネギです!』 一本の土色の長ネギが、見事な状態で再現されていた。 倒れないようにと、石の上に粘土の塊を数個丸めたものを置き、 それらに挟むように立てられたネギはまさに……!! 中井出「こ、これは……!ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲で     はないか……!完成度高けーなオイ。     かつて世界を二度焼き払ったといわれるあの極悪殺戮兵器がなぜここに」 ミク 『違いますよ!?ネオッ……なんたらじゃないです!     どう見たってネギじゃないですか!そうですよね!?レイルさん!』 レイル「なんだよオイ、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃ     ねーか。完成度高けーなオイ。     天上内戦で暴徒鎮圧に使われた極悪破壊兵器をなんだってお前さんが再現してる」 ミク 『違いますよ!!そもそも天上ってどこですか!?     う、閏璃さぁん!なんかおかしいですこの人たち!』 閏璃 「見事だな……このネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲。     完成度高けーなオイ。     最後まで戦い続けた日本軍を壊滅の危機に追い遣った極悪殺人兵器だ」 ミク 『違いますぅうっ!!そんなのじゃないですぅううっ!!     マールさん!マールさんなら解ってくれますよね!?』 マール『これは……!ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃあ     ないですか……!完成度高けーなオイ。     かつてノヴァルシオと真っ向から戦ってみせたエルメテウス……!     その極悪最終兵器をどうして貴方が……!』 ミク 『違いますって!こんな兵器があったらそっちの方がいやですよ!     ロイドさぁあん!みんながひどいんです!なんとか言ってやってくださいぃ!』 ロイド『なんだなんだまったくムオォオオオッ!!?こ、これは……!忘れもしない、ネオ     アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲……!     完成度高けーなオイ。     まだ亜人族たちがバラバラだった時、魔物たちが用意した極悪殲滅兵器……!     お前さん、いったい何者……!?』 ミク 『違いますってばぁああっ!!』 うん、どう見ても小型のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だ。 先端が丸くないから違うけど。 中井出「ミクの作品はネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲か。     この短時間でよくもこれほどまでの完成度を……」 ミク 『うぅうう……マスタァアア〜〜〜……』 中井出「《ぐいぐいぃい……!》い、いや……そんな涙目で腕引っ張られても……。     だってほら、物凄い完成度だよ?これほどまでのネオアームストロングサイクロン     ジェットアームストロング砲を前にして、     完成度高けーなオイって言わないのは逆に失礼ってもんだよ?」 ミク 『ネギですっ!ネギなんですぅううっ!!     ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないですぅ!』 あらまあすっかり名前覚えちゃって……。 中井出  「ま、まあまあ。じゃあ焼いて色つけてみような?       そうすればお前の納得できるものに仕上がるに違いない」 ミク   『そ、そうです!望むところですよ!……あの、どうやって焼くんですか?』 ダルトロス『工房の釜を提供しよう。大きすぎるものは主の炎を頼るといい』 中井出  「そうだね」 主って言われるのもこの二年で慣れました。 主って誰のこと!?って驚いたもんだけどね。 中井出「よ〜〜〜し!それじゃあどんどん作っていくぜ〜〜〜〜〜っ!!」 レイル「おお!あんな完成度を見せられちゃあ負けてられねぇ!」 閏璃 「ああ……たまげるほどの完成度だったぜ……」 ジノ 「あれがネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲……!     完成度高けーなオイ。忘れないよう眼に焼き付けておこう……!」 ラキ 「俺も……」 タキ 「俺もだ……」 ミク 『う、うあぁああああーーーん!!違いますよぅーーーーーーっ!!』 いいものを見せてもらった。 そんな心を胸に、僕らもミクに負けないよう、いつしか超真剣に取り組んでいた。 ───……。 ……。 やがて……焼きが終了。 色を塗りたくり、それぞれが表現したかった全てが完成……! ミク 『どーですかマスター!どう見てもネギです!     この見事な造形を見てもまだ言いますか!?言えないですよねっ!     じゃ、じゃあ褒めてください!なでなでしてくだ───……マスター?』  ゴ……ゴクリ……! 中井出「こ、これは……!やはりネオアームストロングサイクロンジェットアームストロン     グ砲ではないか……!完成度高けーなオイ。     白を塗ることでさらにその完成度が際立つ……!」 ミク 『なんかもう無理矢理言ってませんか!?シャルさん!ツェルさん!     あなたたちはちゃんとネギだって言ってくれますよね!?』 シャル「こ、これはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲……!     完成度高けーなオイ。     父様が極秘裏に開発しようと描いていた設計図そのままの形……!」 ミク 『えぇえっ!?レイナートさん、ネギでなにしようとしてたんですか!?』 ツェル「ええ……これはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲。     完成度高けーなオイ。     マザーコンピュータ:オズをレイナートが拾ってきたときに、     オズに組み込んでいたプログラムのカタチ……!」 ミク 『そんなのデータにないですよ!?え……ほんとにあるんですか!?     ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲って!』 いや、だって……ねぇ? シェーラ『お前らなにをそんなに騒いでいるんだ、粘土細工のひとつやふたつで』 ミク  『あっ、シェーラさん!』 シェーラ『自分で作ったものになら自分が名をつけ胸を張る。      それが造形者の責任というものだろう』 ミク  『ですよねですよね!ほら見てくださいみなさん!間違ってるのは───』 シェーラ『見てみろこのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を。      完成度高けーなオイ。      これをネギだなんて言う方が失礼というものだろう』 ミク  『えぇえっ!?あのちょっ……!?      ぞ、造形者はわたしでネギと言ってるのもわたしですよ!?』 シェーラ『なに!?…………………………な……、え……!?』 ミク  『どうしてわたしとネギを見比べて汗を流すんですか!?      ネッ……ネギですよ!?どう見たってネギじゃないですか!!』 中井出 「そろそろ認めろよミク……これはネオアームストロングサイクロンジェットアー      ムストロング砲なんだよ完成度高けーなオイ。      そしてお前はこのつわものの中でこれだけの完成度を誇る作品を作った……。      あの短時間でだ。……これはもう、文句無しの優勝だろう」 アイルー『すごいニャ!ミク!』 ジハード『お前には負けたぜ……』 シード 『さすがの僕にもあの完成度は無理だ……』 レアズ 『おめでとう』 エィネ 『おめでとう!』 マール 『おめでとうございますっ』  ガスガスガスガスガスガス!!! ミク 『あ、ああ……あぅ……!?』 みんながミクを囲んで、何故かナンディさんの拍手で彼女を称える。 ナンディさんについては女神転生シリーズを知ってればなんとかなる。 なんか違った気もするけど気にしない。 中井出 「頑張ったなミク。俺もマスターとして鼻が高いよ」 ミク  『《なでなで》……ふぐっ!?う、うう……うー!うわぁああああああん!!!』 中井出 「おおっ!?ミクが泣いた!?」 アイルー『感動の涙ニャ!』 レイル 「おめでとう!」 閏璃  「おめでとう!」 ミク  『こんなっ……こんなカタチで頭撫でられるなんて嫌ですーーーーーっ!!!』 …………。 ……。 ちなみにその後、ミクには優勝賞品としてネギ料理フルコースが送られました。 何故かふてくされてたミクだったが、 それをたいらげる頃には満面の笑顔だったことは言うまでもない。 【ケース798:弦月彰利/一路、竜族の墓へ】 エルメテウスで移動を開始してしばらく。 見下ろす限りの大自然に、やっぱり唖然としながらも進みゆく。 時々見える町も自然と一体化しているような感じで、二年前より牧場が増えた感があった。 用意しなくても自然が盛りだくさんだから、エサに困らんからかもしれん。 彰利 「……ねぇ夜華さん。魔王って結局なにがやりたかったんカナ」 夜華 「さあな。世界征服を目論む者の心など到底解らん。     だが───征服とはいっても、別の見方もあったのかもしれない」 彰利 「別の見方?」 夜華 「そうだ。敵、と決め付けるのではなく、相手には相手なりの考えがある。     機械文明とやらが嫌で自然を生やした。これには少なくとも共感できる。     そして見てみろ、征服とは言っても魔王は別になにもしていない。     民に圧力をかけるわけでもない。     ただ生きたいのなら自給自足で生きろと、そう示している。     ……わたしはむしろ、以前の世界よりも地界よりも、この世界こそが眩しい」 彰利 「…………」 解らないでもなかった。 魔王が向かわせた未来は、ひどく穏やかだ。 機械文明によって暴れていたモンスターも今は落ち着き、 凶暴化していた竜族も今は静かだ。 こうして空を飛んでいても、気を付けるべきはデスゲイズくらいで、 争いといった争いなど存在していなかった。 夜華 「なあ彰衛門。おかしいと思わないか?     人から離れたからこそ隠れ里や離れた場所に居たじゃぽん人や集落の人々、     彼らは何故あんなに協力的だった。     人から離れたというのに、簡単にわたしたちを受け入れたのは何故だ」 彰利 「そりゃあ…………グウ……」 それは俺も悠介も引っかかっていたことだ。 夜華 「わたしたちはなにか間違いをしていないか?魔王は本当に倒すべき相手なのか?     わたしは……それがどうにも腑に落ちんのだ」 彰利 「でもね、夜華さん。ヤツは空界の皆様を皆殺しにした───」 夜華 「それも聞いた。聞いたが、その証拠は何処にある。     たとえそうだとしても、理由があったと何故考えられない。     言われたから鵜呑みにして、それでいいのか?     それで、取り返しがつかないほど敵視してしまっていいのか?」 彰利 「グウウ〜〜〜〜ッ!!し、しかし、ではどうしろというのだ〜〜〜〜〜っ!!」 夜華 「この二年、ずっと考えた。人殺しは大変な重い罪だ。     だが……正直な話をしよう。わたしは、誰とも知らぬ者が殺されたから、     殺した者を恨み続けろと言われてそう出来る女ではない。     皆殺しにした、と聞かされた時は、     その理屈よりもあまりの惨たらしさに頭に血が上った。     ……しかし今は逆だ。彰衛門、一度冷静になって考えてみてほしい。     わたしたちは本当に……魔王と戦うべきか?」 彰利 「………」 戦うべきか……そりゃ、戦うべきだと思う。 確かに悩むところだけど、俺にとっても悠介にとっても知り合いが居た世界だ。 そんな世界のやつらを皆殺しにされて、 笑って済ませられるほどのほほんとなんかしちゃいない。 彰利 「戦う理由が俺にはある。だから俺は戦う。夜華さんに強要はしないけど───     ……どうやら相手さんはそうは思ってくれてないみたいだ」 夜華 「なに……?」  デッテッテーーケテーーーーン!! 彰利 「夜華さん!上だ!」 夜華 「上……はっ!」 キャッツ&ドッグスの忍者猫のテーマが鳴ったのを感じ、空を見てみれば一匹の猫! ジェット噴射で飛んできたソイツは、 シュタッと華麗に降り立ってみせると俺達を見てニヒルに笑った……! ジョニー『最初に言っておくニャ。ボクはパ〜〜〜〜〜〜フェクトだニャ』 その名はジョニー。 コートとテンガロンハットとサングラス姿のニヒルな猫である。 ジョニー『狙っていたエモノを横取りされそうになって、魔王さまはお怒りだニャ。      即刻引き返すニャ』 彰利  「……エモノ…………って?」 あえてトボケてみる。 が、ジュニーはニヤリと笑うと、 ジョニー『とぼけたって無駄ニャ。      キミたちがスカルドラゴン討伐に行こうとしてることなんて、      自然を通して知っているのニャ』 彰利  「ぬ───……ねぇ、キミ一匹?」 ジョニー『そうだニャ』 彰利  「……だったら、ちぃと黙っててもらうぜ。      俺達ゃ引き返すわけにはいかん。だから貴様にはここで気絶してもらう」 ジョニー『ニャッフッフ……それは出来ない相談だニャ。      何故なら……ここで気絶するのはキミたちの方だからニャ!!』  ゴヴァーーーン!!《ジョニーが襲い掛かってきた!!》 彰利  「うおっ……ちょっ、お待ちなさい!」 ジョニー『《ピタリ》……なにニャ?』 彰利  「のわっ!?……ま、待つのね、律儀に。      あーうーいやそのぅ、……や、夜華さん?」 夜華  「ああ。……ひとつ訊ねたい。      魔王はいったいなにがしたくて世界を征服したんだ?      自然だらけにしておいて、      誰に迷惑をかけるでもない、民たちの自由にさせている。      わたしは魔王の行動の動機が知りたい。教えてもらえないだろうか」 ジョニー『“悪”を行うためニャ』 夜華  「悪?それはわたしたちにとっても悪なのか?」 ジョニー『悪は悪だニャ。他人のことなんて知らない、      旦那さんが悪だと貫いている悪だニャ。      その理解はキミたちが辿り着いちゃいけない場所にあるものニャ。      だから、キミたちは黙って帰ればいいニャ』 彰利  「断る……って言ったら?」 ジョニー『それはもちろん───伝統的な切り替えしに決まっているニャ!』  ゴヴァーーーン!!《ジョニー が 1体現れた!!》 彰利 「夜華さん!他のやつら呼んできて!」 夜華 「……だ、だが……」 彰利 「迷ってる場合じゃねー!解らねぇの!?仕掛けてきたのは魔王軍なのよ!?」 夜華 「〜〜〜……解った!」 夜華さんが崖側を離れ、エルメテウスの奥地へと“風”を行使して駆けてゆく。 猫は……止めようと思えば止められただろうに、それを見逃してゆく。 彰利  「……どういうつもりか訊いていいかね?」 ジョニー『喧嘩を売りに来たニャ。ただそれだけニャ』 彰利  「───ああそうかいっ!《ゾ……フィィインッ!!》』 最初からトランス&破面解放! 猫との距離を一気に詰めて殴りかかる! ジョニー『ニャニャ!?《バガァンッ!!》ゴニャアアッ!!』 以前とは比べ物にならない速度に驚いたのかついてこれなかったのか、 ジョニーは顔面で俺の拳を受け止めることとなり、遠くの地面に激突した。 …………よし!強くなってる!これならいける! ジョニー『ギニャニャッ……!驚くべき成長ニャ……!      ただ荒々しかっただけの力が、こんなに安定してるなんて驚きニャ……!』 彰利  『御託はいらねーっしょ!すぉおおおうり《ビシッ》つっ───!?』 なに……?頬になにか……《チャリンッ》……£……?───やべぇ!! ジョニー『───ミストファイニャー!!』  ゾガシャシャシャシャシャシャズバシャォゥンッ!!!! 彰利 『ぐぁああああああっ!!!!』 頬に当たり、地面に落ちた硬貨に気を取られた刹那に剣舞。 鞭のようにしなる無数の剣の軌跡が、俺の体を切り刻んでいった。 が……!こんな痛み、修錬に比べりゃ屁でもねぇ!! 彰利  『ツガァアアアアッ!!!』 ジョニー『ニャ!?《バガドガァンッ!!》ギャニャアッ!!!』 攻撃をされても構わず突っ込み、地面目掛けて殴り潰す!! ジョニーは殴られた刹那に地面に激突、バウンドしてから地面に倒れこんだ。 ジョニー『ニャ……ニャアゥ……』 彰利  『今まで随分梃子摺らせてくれたな猫野郎め……!      だがこれ《ビムンッ》だっ!!───オッ!?』 ……なんだ!? なんか今……あれ?俺、いつの間に拳振り下ろして─── 声  『相手が勝利を確信した時、既にそいつは敗北しているニャ』 彰利 『───!うし《ゾンッ……!》───いっ……あ、がぁああああああっ!!!』 振り向いた途端、左腕が飛んだ。 直後に脳天を突き刺すような激痛。 だがトランスがなんとか暴れ出したくなる衝動を抑えてくれたお陰で、 取り乱しすぎることなく腕を黒で繋ぎ、すぐに反撃に出る。 彰利 『おぉおおおおおおおおっ!!!』  ギンギャンギャリンガィンッ!! 猫の武器は、いつの間に出したのか双剣になっていた。 それは、記憶が確かなら魔王が持っていた双剣。 だが…… ジョニー『ニャニャー!      やっぱり旦那さんの武具は器詠の理力がないと力を引き出せないニャー!』 言葉の意味は理解できなかったが、 ジョニーが魔王の武具を扱いきれてないのはもはや明白。 攻撃する度に武具に振り回されて隙だらけだ。 彰利  『そこっ!』 ジョニー『《ズパァン!》ニャーーーッ!!?』 剣を避けた瞬間、鋭く足払いをキメてやると、 猫は大きく宙に舞いズバガァンッ!! ジョニー『ニギャウッ!!』 そこに禊の手刀をプレゼントして、再び地面に叩きつけてやった。 ジョニー『ニャ……ニ、アア…………《ドサッ》』 ジョニーは起き上がろうともがいたが、やがて倒れ……塵となった。 彰利 『…………勝てた?《バシュンッ》」 ……勝てた。 割とあっさり、破面は解放したけどレヴァルグリードの力一切無しで。 か……勝てた!勝てたよおい! 彰利 「すげぇ!勝てちゃったよ!すげぇ!修行ってすげぇ!」 無駄じゃなかったのは当然だと思ってたけど……すげぇ……! こんなに強くなれてるとは思わなかった……! 見ればダメージも大したものじゃなく、 ミストファイニャーに驚きはしたものの、苦戦の痕跡がまるでなかった。 いける……いけ───いや待て!高揚に飲まれるな! 彰利 「落ち着け〜……落ち着くんだオックスベア……!」 深呼吸、深呼吸……! ………………うん、よし、落ち着いた。 慢心は敵だ。 たとえ圧勝出来ても、挑戦者の心を忘れるなかれだ。 でも今日この瞬間の喜びは忘れないでおこう。 猫の中でもナンバー2、ジョニーに圧勝できたこと……俺は忘れないよ? 夜華 「彰衛門!皆を…………うん……?終わった……のか?」 彰利 「オウヨ!なんか一人で楽々倒せちゃった!」 藍田 「うえっ!?マジか!?ジョニーだったんだろ!?それを……!」 彰利 「強くなってる……オイラたち強くなってるぜ!?     でも慢心は敵でございます!調子に乗ったら後悔しきり大決定!」 藍田 「そりゃもちろんだけど…………そっか……。     なんか実感沸かなかったけど……ジョニーに勝てるんだったら確実だ!」 彰利 「やってやろうぜスカルドラゴン!」 全員 『ウォオオーーーーーーーッ!!!』 遥一郎「叫んでるところ悪いけど、見えてきたぞー!竜族の墓場だー!」 全員 『なんだってぇえーーーーっ!!?』 もう!?心の準備が……! い、いや、大丈夫だ……慢心は捨てるが、自分への信頼を完全に捨てる必要はない。 俺は……俺を信じてゆく。 彰利 「よっしゃあいくぞ野郎どもぉおおーーーーーーーっ!!!!」 全員 『将軍閣下に続けぇえーーーーーーっ!!!』 そう……自分と、仲間たちの力を信じて! 突き進め青春! 【ケース799:中井出博光/誰が突付いたか解らないポコペン】 ズキィッ!! 中井出「ぬぐおおおおおっ……!!?」 閏璃 「《ビクゥッ!》おわぁっ!?どっ……どうした提督さん!」 中井出「はぁっ……はぁっ……!ば、馬鹿な……!     シンバル……じゃなかった、ジョニーがやられた……!」 閏璃 「なにぃ!?ジョ、ジョニーが!?     猫界のニヒルキャットと呼ばれたあのジョニーが……!」 中井出「う、うむ……今は霊章の中で傷を癒しているが……なんということだ……。     んんん〜〜〜〜っ!許せーーーーん!!私の遊びを邪魔しおってーーーーっ!!」 閏璃 「ギースの真似はいいから!……で、これからどうするんだ?」 中井出「むう……」 おやつも食べ終わったし、他のみんなはお昼ねタイム。 起きているのは僕と一緒に、 ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を作ってた閏璃だけだ。 今回は粘土じゃなくて土だけどね。 中井出「私の可愛いジョニーをよくも……と言いたいところだが、これでいい。     ジョニーも解っててこの任務を受けてくれたのだ」 閏璃 「……オエ?解ってて、って……負けると解っててって意味か?」 中井出「うむ。考えてもみてほしい。才能が器詠の理力しかなく、     それも冥界でもらった鎌が無ければ発動させることすら出来ない僕と、     それ以外の才能に溢れた皆様とでは、基本からして差があるんだ。     そんな彼らが二年もの時を己の鍛錬のみに集中して鍛えた。     ……僕はね、基本では既に負けているのです。     そして猫たちは僕が持つ武具の能力を3分の1程度しか引き出せない。     負ける理由なんて揃いすぎているのだ」 閏璃 「そうなのか」 中井出「うむ。それなのに快く引き受けてくれたジョニーに感謝だ。     きちんとやつらに発破をかけることには成功したと見えるから、     あとは彼らがどこまで僕を悪と信じて強くなってくれるかだ」 閏璃 「…………なあ、ほんとにそれでいいのか?     それじゃあ提督さんがあんまりにも───」 中井出「閏璃。キミもいつかは僕を忘れる。歴史の捏造がどうとかの問題じゃないんだ。     ルドラって存在が、僕って存在を片っ端から消していってるんだ。     残念だけど僕らではその力に抗えない。そんなキミだからこそ言おう。     ───俺のこと忘れても、あいつらと一緒に絶対に未来に辿り着いてくれ」 閏璃 「………」 俺の言葉に、閏璃は俯いた。 けどすぐに俺を見ると、 閏璃 「なぁ。それってもう、自分の未来を諦めてるから言うことか?」 中井出「違うわバカモン!この博光、何処まででも自分の未来を諦めたりなどせぬわ!     ただ僕のことをみんなが忘れることは確実だから、     俺はキミらの輪には入れないの!解る!?     だから僕のこと忘れても、って言ってるでしょ!?」 閏璃 「……それでいいのか?」 中井出「構わん!たとえ貴様らが僕を忘れても、     僕は貴様らと過ごしたこの夏のことを忘れん!     貴様らが全てを忘れることになろうとも、その全てをこの博光が覚えていよう!」 故に僕は記録者(クロリスト)博光! 博光ファンタジー・クリスタルクロニクル! 中井出「だから、安心して今を生きなさい。     どれだけ切羽詰った状態になろうとも、貴様は貴様の夏を謳歌しろ。     俺を忘れることになっても、気にすることすらなくなるんだ。     俺はそれでいいって思ってるよ。……それが忘れるってことで、     それを噛み締めて歩いてゆく俺そのものが、忘れないってことなんだから」 閏璃 「俺は嫌だ」 中井出「……うん、ありがとうを貴様に。だが忘れる未来にゃ抗えねー!     そんなわけだから次はジャスタウェイでも作ろう。     俺まだ合成らしい合成したことなかったんだ。作り方教えて?」 閏璃 「この状況でジャスタウェイかよ…………いや、いいけどさ」 悲しいことはつまらないね。 だからもっと楽しいことで自分の周りを埋めていきたいよ。 何処まで走れるか解らないけどさ。 せめて誰も俺を覚えてない世界に迷い込んだとしても、 思い出だけで最後まで突っ走れる自分でありたいからさ。 閏璃 「じゃ、まず火薬だな」 中井出「火属性の粉塵でいいかな」 閏璃 「……それでジハード撃ち落としたの、忘れた?」 中井出「激烈覚えてます」 もうちょっとだけでいい。 もうちょっとだけ、この心地いい世界で笑っていられますように。 Next Menu back