───冒険の書321/VS崩骨竜───
【ケース800:弦月彰利/芯に潜む者】 ゴォオオオオオオオオオオッ─── 遥一郎「なにか来る!───備えろ!」 それが合図だった。 竜族の墓場上空に来たアタイたちを待っていたのは、あろうことかストームドラゴン。 全員がすぐに戦闘準備に入った瞬間、 上空から放たれたウィンドブレスによって吹き飛ばされる。 田辺 「ぬぉおおあああ!?なんだこの裂帛の気合はァアア!!」 彰利 「たんなる威圧感YO!!ええから備えんしゃい!」 吹き飛ばされながらも無理矢理体勢を立て直して着地。 その時には既にストームドラゴンはエルメテウスの大地に低空浮遊している状態で、 近づくだけでも一苦労な風を纏いながらゴルルルルと唸っていた。 ……まずは調べるを発動。  ピピンッ♪《ストームドラゴン(S)は計り知れない強さだ!》 S!? マッ……マアアこのコったら凛々しい顔してSだなんて! ストームドラゴンったらいけない竜っ(・・・・・・)! なるほど、相手を甚振(いたぶ)るのが好きそうな顔じゃい! ……スカルドラゴンのSだろうけどね。 彰利 「みんな!連携の心得ひとーーーつ!!」 藍田 「ひとつ!好機には己の一発ではなく、次へ繋げる一発と心得るべし!」 岡田 「ひとつ!繋げられた好機は再び次へ繋ぐ一撃に変え、見落とすことなかれ!」 悠介 「ひとつ!隙という隙を穿ち、隙が無くても隙を作る行動で次へ繋げるべし!」 彰利 「おっしゃーーーっ!んじゃあ───ミッションスタートだ!!」 固まっていた仲間が一気に散り、能力を解放しながら対象を中心に円を作り、 戦士 『トランス!』 即座にまずは戦士たちが剣閃を発射! それを風のシールドで吹き飛ばそうとするストームドラゴン! そこへ、 遥一郎     「プチファイア!」 ストームドラゴン『《チリッ……》……グル……!?』 穂岸がストムドラゴンの胸部に小さな種火を発生させる。 次いで魔法ジョブのみんなが一点集中し、 風属性の中心に発生した火属性のマナが散る前に───!! 遥一郎「───まだだ!《ゴコォッキィンッ!!》」 魔術師『エクスプロード!!』 爆発させる!  キュフォァィドォッガァアアンッ!!! ストームドラゴン『グギャァォオオッッ!!!』 風の内側から発生した爆発がストームドラゴンを直接巻き込み、 さらにその爆風が風のシールドを内側から霧散させる! 直後に無数の剣閃が爆煙を斬り裂きストームドラゴンに直撃! その頃には戦士たちは地面を蹴っており、一直線に抜けるように切りかかる!! 戦士 『逆風の太刀!!』  ゾガァッフィィインッ!!! 特殊な歩法で一気に駆け抜け、擦れ違い様にひと太刀。 互いが切り抜けた後には、鱗を傷つけられたストームドラゴン。 さすがに鱗は硬い……! ストームドラゴン『グギャァアォオオオゥウッ!!』 ストームドラゴンが真上へと飛翔する。 だがその上空にも既に手は打ってある。 春菜 『“屠竜”!!』 柾樹 「つぅらぬけぇえええええええっ!!!」 更待先輩殿と柾樹ボーヤだ。 赤の極光を纏う先輩殿と、虹色の極光を纏う柾樹の銃が同時に放たれ、 飛翔すればとりあえず逃げられると油断していたストームドラゴンの体を打ち落とす!! ストームドラゴン『ギ、ギャ……!』 そこには既にゼノとセレっちが待ち構えており、 ゼノ&セレス『はぁああああああああっ!!!!』 落下してきたストームドラゴンを中心に囲い、 闇の爪閃と水の爪閃を嵐のように放ってゆく!! 田辺 『お待ちかねだぁあっ……どぉおおうらぁあああああっ!!!』 その爪閃を風のシールドで吹き飛ばした直後に上空から屠竜奥義の炎弾が放たれ、 纏っていた風さえもを炎が燃え盛るための種として炎上。 ストームドラゴンは悲鳴を上げながら風で吹き飛ばそうとするが、 その風こそがさらにさらにと炎を燃え上がらせ、やがてボガァォンッ! 彰利 『───!?あっつ……!』 ストームドラゴンの体が大きく膨れ上がると、その姿は赤き竜、レッドドラゴンのものに。 ……アルェー!? 彰利 『ア、アルェーーーッ!?悠介!?上手くすりゃ剥ぎ取れるんじゃなかったの!?』 悠介 『ありゃたんなる予想だたわけ!』 彰利 『なんですってーーーーっ!!?』 けど、ストームドラゴンは倒せたって考えて……いいわけねぇよなぁ! コイツ絶対好き勝手に属性変えてくるぞ!? その気になりゃカイザードラゴンとかにだって───っ……あ、焦るな! 大丈夫、確実にダメージを与えていくんだぜ、俺……! 彰利 『各自思い思いに行動せよ!ただし連携の心得は忘れないように!』 全員 『イエス!マイジェネラル!!』 うっしゃあいくぜ! ……と意気込んだ途端、後方から物凄い勢いで魔法が放たれてゆく。 遥一郎「ウォーターバレット!《ピキィン!》スプレッド!《ピキィンッ!》     スプラッシュ!《ピキィン!》ウォーターレーザー!《ギピィン!》     タイダルウェイヴ!《ゴコォッキィン!!》メイルゥ……シュトロォオオム!!」 彰利 『ウヒョオオオオオオッ!!?』 相変わらずですホギっちゃん! 彼の周りはいつでも魔法陣カーニバル! 無詠唱と詠唱と長詠唱の色とりどりの魔法陣が弾けまくり、眩しいくらいだ。 麻衣香ネーサンやその他の皆様も魔法を使ってるんだけど、 その速度はどうあってもホギッちゃんには届かない。 ……トランス覚えてからまた詠唱速度上がったんでねぇの?彼。 っと、こっちもうかうかしてられん。 弱点属性だからってとことん水魔法に飲まれてるレッドドラゴン目掛けて、 出現させたレヴァルグリードに極光を溜めさせる。 ここ二年の修行で足から上全てを具現化できるようになった。 けど、能力で出せる飛翼の数は相変わらず8枚までだ。 いったいなにが足りないのか─── レッドドラゴン『グゴォオゥシャアアアッ!!!』 あ、キレた。 体質変化だ───レッドドラゴンの鱗の色がより濃く紅蓮に染まる! 離れてても熱いくらいの炎を纏って、口から放つレーザーは……五つ! ゼプシオン「こざかしい!ぬぅうううあぁあああああっ!!!」  ゴガァッフィガガガガガァンッ!!! ……でもそれが、ゼプさんの竜殺しの剣閃であっさり滅却される。 巨人化も通常人化も自由自在!強いぞ僕らのギガントヒーロー! ……ええ、正直仲間でいてくれてほんと感謝です。 NPCのゼプさんとはログイン時に融合状態にあったらしいですよ? NPCに魂が宿ったみたいな感じです、平たく言うと。 ほい補足終了! 悠介 『切り開く!ライオットスラスト!!』 剣閃で破壊されたレーザーが爆煙をたてる中、 悠介がメガレールをラグに蓄積した状態で突撃する! 白を解放し、光となった状態での超高速の突撃は、 周囲の爆煙を電磁波吹き飛ばしながら一気にレッドドラゴンへの道を切り開き、 悠介 『せいぃっ!!』 雷を纏った光がレッドドラゴンの体を通り抜けたその瞬間、 その場に眼が潰れるほどの雷が舞い降り炸裂する。 眼が潰れないのはゲームならではか、味方の攻撃だからか。 光が通り抜け、レッドドラゴンの後方で悠介の姿に戻るより速く、 俺達はもう行動を開始していた。 アルベルト「我らの力強き友たちに力と防御の加護を……ブルストルフィート!」 丘野   『いくでござる!濁流剣!』 まずは丘野くんが、 アルさんに攻守ともに強化してもらいながらレッドドラゴンを中心に分身をして、 その中心に居るレッドドラゴンを分身で押しつぶすように一閃。 続く藤堂がローラーダッシュで一気に接近! ワイルドパンチのARMで通り抜け様に拳を一閃させ、 直後にマルドゥークゲイズのARMで衛星から対地レーザーシステムを起動! 反撃しようとしたレッドドラゴンに刹那のレーザーを落とし、スタンさせる! シュバルドライン『続けていくぞ!吹き飛ばす!───震天!!』 そこに飛翔し間合いを詰めるはシュバちゃん! 肉迫し、振りかぶった拳は大地を抉り、 その大地こそをつっかえ棒にするように力を一瞬だけ溜めると、 大地が爆裂するほどの地属性アッパーでレッドドラゴンの巨体を浮かせる! ルナ 『断ち切る!───裂空!』 そこへ、既に跳躍していた金色の光を纏うルナっちが空中から斜め下へ向けての月光斬! 剣閃がまるで実体の刃のようにレッドドラゴンを斜めに斬り付け、 凍弥 『貫く!───斬光!』 落下してきたレッドドラゴンに、疾駆した小僧が閃速の居合いを斜め上に放ち、 夜華 『斬り刻む!───旋風!』 再び浮いたレッドドラゴンに、暴風を纏った夜華さんが、 暴風を刀に送る風情で荒れ狂う風の突きで斬り飛ばし、 藍田 『蹴り砕く!───滅砕!』 風により吹き飛んできた相手を、 エナジードレインと溜めると滅びの母の力と暗黒闘気で溜めるに溜めた灼熱の蹴りで、 シャバちゃんの時のように地面ごと爆砕させながらレッドドラゴンを蹴り上げ、 悠介 『撃ち落とす!───神罰!』 やはり既に空中に跳躍していた悠介が、 太陽のように光り輝く雷をラグに込め、奥義・襲爪雷斬破で斬りつけ、 ゼット『滅ぼす!───割殺撃!』 トドメはゼットが溜めるに溜めた一撃! 悠介の一撃で空中からゼット目掛けて叩き落されたレッドドラゴンは、 身を捻って避けようとするが─── 麻衣香「スフィアコメット!!」 グルグリーズの新能力で天空より放たれる一発メテオが、 身を捻っていたレッドドラゴンの飛翼の付け根に直撃! その勢いもプラスされた直後にパギャゴブギィッ!! レッドドラゴン『グァアアギァアォオオンッ!!!』 硬い硬い鱗ごと、肉はおろか骨まで裂き斬られ、 レッドドラゴンはゼットの後方に吹き飛びゆく。 武器が鋭利すぎて、逆に吹き飛ばすような効果に至らなかったのだ。 だが安心は出来ない。 すぐに追い討ちをと疾駆した───途端、 エルメテウスの大地へと激突する筈だったレッドドラゴンの体が土色に変わり、 勢いをそのままに地面に沈んだ。 ゼット『なに───!?』 彰利 『地の守護竜って地面を泳ぐ竜なん!?───粉雪!』 粉雪 『──────そこ!』 未来視が出来る粉雪に先読みしてもらい、出てくる場所が指差される。 そこは……藍田くんの下!?うわっ!ツイてない! 藍田 『オォゥケェエイ……!!《キュヴァーーーンッ!!》』 既にスキル使用で全力ブッ放した藍田くんが、今度は眩い輝きに包まれる! すると、 オリバ『再会を喜び合おう、なぁジェフ……』 なんとビスケット=オリバに変身! 即座に大きく振りかぶると、 砂が押し出されるように盛り上がった地面目掛けて振り下ろし───! オリバ『ヌォオオォォォオオォオッ!!!!』  ガドォンッ!!! 勢いよく顔を出したアースドラゴンを、モグラ叩きの要領で殴りつける!! ……あ、いえ、叩きなんて生易しいもんじゃねぇやアレ……モグラ潰しだ。 殴られた顔面が自分の勢いも乗せて一気に潰れた。 比喩とかじゃなくて、グシャアッていうか……パギャアっていうか…… 硬いものが砕けたような音とともに。 当然叫ぶ暇もなく、首まで出ていたソレはぐしゃりと地面に倒れ、 しかしすぐに体色を変えると飛び上がる。 その姿は……サンダードラゴン! 雷を纏いながら舞うその姿は、見る者を緊張させる。 そりゃそうだ……ゲームでは雷属性〜とかいって燥げても、 天災としての雷は当たればシャレにならない。 岡田 「なぁ!思ったんだけどさ!     こいつってほんとに倒せるのか!?元が骨なんだろ!?」 彰利 『知らーーーん!』 岡田 「なっ……なんだってぇえーーーーーーっ!!?」 だが死なない相手など居ない!居て欲しくない! それを信じて戦うしか方法はない───ってぇええっ!!? サンダードラゴン『グォオウシャアアアッ!!!』  ギガァアンガガガガガォオオンッ!!!! 最初っから体質変化済みなのか、 サンダードラゴンが怒りの咆哮を発し、あたりに巨大な雷を幾つも幾つも落としてくる! これじゃヂガァンッ!! 彰利 『うぉおひゃぁっ!!?』 めっ……目のっ……目の前に落雷…………っ! ちっ……近づけーーーーん!! グ、グムーーー!お、俺の武器は近接に限り特化する武器! し、しかしこうも雷を放たれてはどうすることもできーーーーーーん!! あ、転移があった───けどその前に! 彰利 『みさお!』 みさお『解ってます!───時の精霊の力を……グロースロゥ!!』 みさおが刀を構え、属性の宝玉を解放すると、 灰色の巨大な時計がサンダードラゴンの前に出現。 重苦しい音を立てて回転する秒針の動きが鈍くなると、周りの雷の速度まで落ちてきた。 彰利 『今だァーーーーーーーッ!!』 それを確認するや、戦士ジョブ全員が一気に疾駆! 遅くなったとはいっても流石は雷、それでも十分に異常な速度で落ちてくるが、 トランスを発動させている今なら……避けられる! ……ってノリで走ったけど、そもそも空いて空中だから走っても意味ねぇ! 悠介 『打ち落とすから構えてろ!───キャプテェン!コレダー!!』 悠介がサンダードラゴンの真下に滑り込み、 自分の足下の大地を雷の精霊の力を込めた拳で殴りつける! すると大きな雷が天から舞い降り、サンダードラゴンを飲み込む……が。  ピピンッ♪《サンダードラゴン(S)のHPが回復した!》 全員 『オィイイイイイイイイッ!!!!』 悠介 『───だぁああしまったぁあああああっ!!!』 補足しましょうか。 僕の親友、案外トランスしてないほうが頭がキレるかも。 高い威力な分、結構回復してしまったサンダードラゴンを見上げて頭を痛めた。 覚えておこう……守護竜ともなると、同属性では回復すると。 と、そこへ細かな魔法で連携を繋いでいた麻衣香ネーサンがとうとうアレを発動! 麻衣香「いくよみんな!《ゴコォッキィン!》───メテオスウォーム!!」 大魔法発動の狼煙があがる! 俺達を見下ろしながら雷を打ちまくってるサンダードラゴンがそれに気づける筈もなく、 雷の音で他の音を消しまくってるお馬鹿な彼はドッガァ!!! サンダードラゴン『クギャァォッ!!?』 メテオの直撃を受け、咄嗟に場所を譲った僕らの目の前の地面へと激突する!! そこへさらにさらにと降り注ぐ隕石……! トランスを会得したことで集中力が増し、 隕石の落下地点を自在に扱えるようになった麻衣香ネーサンのメテオに、 もはや怖いものはねー! ……で、麻衣香ネーサンがメテオを撃つといえば、次はアレなわけで。 麻衣香「さらに!《ピキーン!》───シューティングスタァーーーーーッ!!」 メテオの集中豪雨を食らい、 起き上がろうにも起き上がれなかったサンダードラゴンにさらに追い討ち! 最後のメテオが砕けると同時に、目に見えていた空間が宇宙空間となって、 駆け抜けてゆく幾つもの閃光の粒が、サンダードラゴンを幾度も幾度も貫く! 麻衣香「さらに!《ピキーン!》───シャイニングブライト!」 次いで“虹”奥義! 七色の光が宇宙空間の奥から球体となって放たれ、サンダードラゴンを撃ちつけてゆく! 麻衣香「さらに!《ゴコォッフィィンッ!!》───ビッグバンッ!!」 さあおいでなすったトドメの一撃! 余波があまりにも凄いから、 こっちもMNDにステータス振っておかないと大変なことになる、 強いけど迷惑極まりない一撃! 宇宙空間の奥から閉じた瞼さえ閃光で潰しかねない白が迫り、 宇宙空間ごと全てを破壊し尽くす!!  キシャアガガゴガァアッ!!! サンダードラゴン『───!───……!!』 耳を劈く轟音と、身を引き裂くような衝撃の中、 サンダードラゴンの悲鳴の声にならない悲鳴が轟いた。 ───爆発の中心に居たサンダードラゴンは大きく吹き飛び地面に転がると、 起き上がろうとして崩れ落ち、肉が削げて骨に変わる。  バギャアンッ!《雷属性を破壊!サンダードラゴンの能力が失われる!》 ───あれか! 彰利 『悠介!スカルドラゴンだ!』 悠介 『ああ!』 サンダードラゴンの体が崩れ落ちると、剥き出しになった鬼火を纏った骨竜が飛び出る。 その大きさはサンダードラゴンよりもよほどに大きく、 恐らくこいつは変身するたびに骨の密度を変える竜なのだろう、と判断できた。 と、その竜が大きく跳躍し、完全に視界から消える。 何事……?と不思議に思ったが、それよりなにより肉! 骨から崩れ落ちたサンダードラゴンの肉! 全員 『ウォオオーーーーーーーッ!!!!』 全員が全員同じことを考えていたらしく、 骨がなくなって肉と皮だけになったソレを全員で剥いでゆく。 ややあってそれらをバックパックへ収納し終えた時、 ズズンと重い音を立ててスカルドラゴン……いや、これは……! 彰利 『っ……《ごくっ……!》』 明らかに今までの守護竜とは雰囲気が違う。 視界に入った瞬間、寒気を通り越して感動すら覚える威圧感……そして、圧倒的な存在感。 震える意思をなんとか固めて、視界の隅のナビを起動させ、調べるを……! そうした瞬間、その竜はキカカ……!とゆっくりと口を開け、首を振るうように─── ドラゴン『クォオカカカギシャアォオンッッ!!!』 全員  『くあぁああああああっ!!!?』 ───耳はおろか全身さえ劈く咆哮を放つ!! ゼット『───フン……なるほどそういうことか……!』 彰利 『え!?なに!?なに一人で納得してんの!?』 悠介 『ああ……俺もようやく理解した。     体色や姿は変えても、感じる気配がまるで一緒だった理由がこれだ───!』 彰利 『悠介まで!?なに!?』 ホワイ!?アタイのけもの!? 悠介 『彰利!こいつはな!もうスカルドラゴンなんかじゃない!     骸として竜族の墓場に飛んだあと、どうやったのかは知らないが     スカルドラゴンの意思なんかとっくに食いつぶしちまってたバケモノだ!』 彰利 『え?え?竜ですらないってこと?』 悠介 『いいや竜だ───カイザードラゴンっていう、とんでもない竜族の皇帝だ!!』 彰利 『カイザー……こいつが!?……っと!?』   ピピンッ♪《カイザードラゴンは常軌を逸した強さだ!!》 彰利 『うぃいっ……!?』 ぞくっと来た。 計り知れないなんて問題ではなく、常軌を逸したって……!? 悠介 『カイザードラゴンの特徴は、バリアチェンジっていう属性変更にあるって───     …………だ、誰かに聞いた気がする!思い出せないが確かに聞いた!     つまりさっきまでのサンダードラゴンとかは、     バリアチェンジの結果にすぎないってことだ!』 彰利 『ホエェ!?じゃ、じゃけんどこいつ今カイザーなんしょ!?』 ゼット『恐らくこの状態でなければ、     カイザードラゴン本体にはダメージは通らないということだろう。     他の体色の時に致死のダメージを与えようが、     その体色の守護竜の肉が崩れ落ちるだけだ』 彰利 『…………』 ま、待ちなさい? それって途方もなく面倒な話なんじゃ─── 悠介 『いくぞ彰利!ホウケるよりも突撃だ!     将軍が戦ってる部下ほったらかしてどうすんだよ!』 彰利 『───お、おう!!』 そうだ、ホウケてる場合じゃない。 この状態の時じゃなきゃカイザードラゴンにダメージが通らないなら、今しかないのだ。 ……今しかないのに。  ザゴファゾガキブワァッガァアアッ!!!! 戦士ジョブ『ぐえぎあぁあああああっ!!!!』 っ……! 彰利 『つ……!強ぇえ……!!』 連携とろうにも体がデカすぎて囲めるもんじゃない……! FF5の神竜を黒くしたみたいな姿してるだけあって、その能力もゴッド級なのか……!? けど明らかに神竜とは違う。 蛇のような龍族ではなく、前足後ろ足ときちんとあるタイプの竜族。 そのデカさときたら、巨人の数倍はあろうかというデカさ。 巨体だというのに行動が細かく速やかで、 爪撃、噛み付き、尾撃だけで戦士たちが一瞬にして瀕死だ……! 遥一郎「くそっ───フレアストライク!」 アルベルトや麻衣香ネーサンが回復に回る中、時間稼ぎのためにホギーが魔法を放つ。 ただの時間稼ぎではない……相当量の魔力を乗せた本気の一撃だ。 カイザードラゴン『ルガァアッ!!』  ゴシャァアッキィンッ!!《バリアチェンジ!氷の膜が魔法を弾き返す!!》 遥一郎「な《バァンガアアッ!!》げぁあっはぁあああっ!!!」 彰利 『ホギー!!』 だが、カイザードラゴンはこともなげにそれをホギーに向けて反射させると、 吹き飛び転がるホギーの状態など確認することもなく追撃にかかる! 彰利 (───やべぇ!こいつ、他の竜族なんかと違って慢心が全然ねぇ!!) すぐに起き上がり、体勢を立て直すホギーだが、その眼前には既に皇帝竜。 既に振るわれていた尾撃が、ホギーの一瞬の視認の直後に激突。 ……モノとモノがぶつかった音とは思えない、なにかが砕けた音が耳に響いた時。 吹き飛ぶ間もなくホギーは塵と化していた。 悠介 『……、……』 悠介が息を飲む音が聞こえた。 神経は集中のまま……正直逃げ出したくなる自分を抑えるのでやっとだ。 はは……悪い冗談だ……。 骸になっていたってことは、こいつを倒したヤツが居るんだろ……? しかも俺の記憶は、どうやらそいつが魔王だと言いたいらしい。 こんなヤツの先に居るのだ───……たった一人の地界人が。 彰利 『……くそっ!』 挫けそうな心をしっかり固める。 視界に映るみんなも心底震えているのか、恐怖で動けないヤツが何人か居た。 こんな状態じゃ、誰かが先んじて動かないと誰も動けやしない。 彰利 (恐怖がなんだ……!どのみち動かないと死ぬんだぞ……!!     気合いっ……入れやがれぇえええええええええっ!!!!) 歯を食いしばり、心の中で雄叫びをあげる───!! そうしてからキッとカイザードラゴンを見据え、地面を蹴り弾いて疾駆!! 胆力とか関係なしに普通に動いていたオリバと戦っている皇帝竜の背中目掛け、 一定距離を走ってから跳躍をルヴォドガァンッ!!! 彰利 『げぶぁっ!?』 力を足に込め、跳躍しようとした瞬間に尾撃で叩き潰された……! こいつ……後ろも見ないで……!! 悠介 『彰利!体色だ!風に変わってやがる!』 彰利 『───!』 まさか……、っ!やっぱりだ! ゆっくりだけど異質な風が張られてやがる……! これで感知したってのか!?竜が!?  ゾリュゥッ───! 彰利 『がっ……!?』 起きて反撃を、と立ち上がろうとすると、 それを察知した尻尾の先端が俺の体に巻きついてくる。 すぐに転移ブギャアッ!! 彰利 『───、……』 悠介 『あきっ……!?』 転移、もクソもなかった。 巻きついた途端に、ソレは俺の五体を引き裂き、潰したのだ。 締めて苦しませるなんていたぶりも見せないそれは…… 実に容赦のない、竜の皇帝らしい行動だった。 【ケース801:晦悠介/VS皇帝竜】 ヴァアッガァアアアアッ!!! オリバ「ヌォオオオオオッ!!」 彰利が塵と化した次の瞬間、オリバがぶちかましで吹き飛ばされる。 体勢を立て直そうとするが、無茶だ。 オリバは勢いよく吹き飛び、味方の何人かを巻き込んでその先にあった岩石に激突。 すぐに起き上がろうとしたが、その一歩がふらつき倒れる。 ……ゲーム内に蓄積されたオリバへの恐怖心と尊敬の念。 そこから生み出されたバカげたタフさや力も、ここまでくると長続きはしない。 既に血に塗れた彼から力が完全に抜けると、その姿は藍田のものへと戻った……その直後。 波動風を放たれ、塵も残らず滅ぼされた。 悠介 『っ……風の弱点属性は……氷!悠黄奈───は居ない……!     ───ハトを氷属性に変える力!』 ハトを創造、なにかに変換、という動作を一瞬で構築。 手にした氷属性をラグにエンチャントし、疾駆する! そして、この熱風を放つ敵目掛け───熱風……? 悠介      『バリアチェンジ!?この一瞬で!?』 カイザードラゴン『クガァシャアッ!!』 悠介      (尾撃───右!) 思考を回転させろ───! 間に合う!いや───間に合わせる! 悠介 『氷属性を───《ゴギィンッ!!》っ……水属性に変える力!!』 盾として構えたラグが氷から水へと変化した属性の盾となる。 ステータスポイントは全てVIT。 が、攻撃をは受け止めたが勢いまでは殺せず、 なにも出来ないままに遙か後方へと吹き飛ばされ、歯噛みする。 田辺 『ナメんなうらぁっ!───幻魔!!』 俺に攻撃をしたことで出来た多少の隙───それを縫うように突撃をするは田辺!  ゾガァンゾガァンッ!!ヴミンズバァァアッ!! 左右から一度ずつ往復の斬撃を尾に放ち、トドメの跳躍縦斬りがキまる。 田辺 『……!硬ぇ……けど斬れる!     諦めんなみんな!近づくので精一杯だけど───ダメージあるぞ!!』 全員 『───!』 その言葉に、恐れていたみんなの目に光が戻る。 そうだ……こいつが倒されたのなんて、12年も前のこと。 その間に成長していた俺達の攻撃が通用しないなんてこと、あるわけがない───! 田辺 『よっしゃあ!もういっちょ《ゾンッ》……え?』 岡田 「あ───」 田辺の六の腕が飛ぶ。 振るわれた爪が、あっさりと腕を切り取っていった。 引き裂くなんて、ギザギザ的な表現じゃない。 オモチャの人形の腕がコロンと取れるみたいに、スパッといった。 田辺 『お───あ、……あぁあああああっ!!!!』 岡田 「田辺ぇええええっ!!」 鮮血が噴き出る。 気が狂うほどの痛みであろうソレが田辺を襲い、 その場でフラついた時にはもう終わっていた。 田辺は自分がどうなったかも解らないままに噛み砕かれ、一瞬にして塵と化す。 シュバルドライン『ぬぅううううっ───おぉっ!!!』  ガゴォンッ!! 噛み付きという隙の多い行動を見逃さずに攻撃したのはシュバルドライン。 地属性の渾身の拳が皇帝竜の後ろ足を殴りつけ、大きく体勢を崩させる。 凍弥 「閃光斬!」 そこへ畳み掛けるように凍弥が走り、閃光斬でもう片方の足を思い切り払い、 夜華 『紅葉刀閃流!嵐華穿-崩牙-!!』 軽く持ち上がる勢いが死ぬ前に、篠瀬が暴風を纏った跳躍斬りで払い上げる! だが敵さんも素直に倒れるほど馬鹿じゃない。 飛翼をはためかせると風を巻き起こし、自分の巨体を軽々と浮かせて飛翔する。 だがそれこそがこちらの狙いだ。 麻衣香「そこっ!クェーサー!!」 既に飛翔するだろうと踏んでいた綾瀬が、溜めていた魔法を解放! 空中の皇帝竜を小さな隕石が襲い───直撃! 不意をついた故か避けることすら、出来、ず……に……!? 麻衣香「……え?……そんな……なに、あれ……!」 一撃目は確実に直撃。 だが二発目の小さな隕石が全く効いてない。 それどころか吸収されていって─── 悠介 『───分析、開始───!』 思考を切り替えて分析モードにする。 視界を文字の羅列で捉え、皇帝竜を見上げると───……霧闇竜の能力!? 属性ラーニングに魔法レーザー能力……な、なんだこれ───!! 悠介 『綾瀬ぇええっ!!今すぐ魔法を止めろ!じゃないと大変なことに』  ギガァッチュドッガァアアッ!!!  ……ゴコッ……バラバラ…… 悠介 『〜〜〜……!』 間に合わなかった。 馬鹿みたいな速さの魔法レーザーを放たれた綾瀬は、悲鳴もあげられないままに塵に。 カルナ「てめ《ドンッ!!》……え?あ……」 駆け出した七草も高圧縮水撃で心臓を貫かれ、塵に。 悠介   『……馬鹿げた強さ、ってのは……こういうことを言うんだろうな……』 ゼプシオン「弱音か?主よ」 悠介   『主はもうよしてくれゼプシオン、昔のことだろ。───それより』 ゼプシオン「ああ……まずいな。様々な竜を見てきたが、コレはケタが違う」 ゼット  『ケタ、か。言ってくれるな斬竜王』 ゼプシオン「お前も感じているだろうミルハザード。       アレの能力は“竜”の域を超えている。勝てるか?お前一人の力で」 ゼット  『出来ない、とは言えないな。       竜族として生きたプライドではない、男の意地にかけてだ』 ゼプシオン「いい返事だ。黒竜王から聞けるとは思わなかったがな」 悠介   『で……どうする?相手はあの強さで、あいつを倒せたのは魔王だけだ』 ゼプシオン「魔王……あの男か。たった一人でか?」 悠介   『ああ。記憶に残骸がある……間違いはないらしい。       たった一人であの皇帝竜を殲滅して見せてる』 ゼット  『………』 小さく、ゼットの喉が鳴ったのを聞いた。 恐怖からじゃないな……そんな強いヤツが、と…… 強者が獲物を見つけた時にするような唾飲みだ。 ゼット『なるほど……“アイツハドコダ”は魔王を差しているのか』 悠介 『はぁ。そういうことらしい。あいつの頭の中、魔王への復讐でいっぱいだ』 ゼット『フフッ……ならば魔王でも呼びつけるか?この場に』 悠介 『へぇ、そりゃオモシロそうだ。……方法は?』 ゼット『さて、それが問題なんだがな。ヤツは“武具宝殿”(サウザンドブレイダー)だったな。     ならば未だ討伐されていないスカルドラゴンの骨塊……欲しくないわけがない』 悠介 『連絡手段は?』 ゼット『“アレ”は我らと同じ“冒険者”なのだろう?敵だろうが構わん、ナビで呼べ』 悠介 『…………』 ゼット『……?なんだ、人の顔をアホ面下げて見るな』 悠介 『いや……お前がナビとか言うから』 ゼット『チッ───!さっさとしろ!やるならやる、やらないならやらないと!     既に残りは俺達だけだ!決定打がなければ勝てんのは明らかだ!……チッ!』 勝てないとは言いたくないとはいえ、事実は付き纏うもんだぜ、ゼット。 ようはその口にしてしまったことを現実にしなけりゃチャラだ。 ……絶対に勝つぜ、どんなことをしてもだ。 悠介 (魔王の名前は───……?) ナビに、よくtellを飛ばす相手の名前が並ぶ。 そのてっぺんに……中井出博光。 悠介 (……え…………?《ドクン……》) 待て。 どうして…………いや、なにか俺、忘れて─── ゼット  『───!……!』 ゼプシオン「───!」 ゼットとゼプシオンが叫んでる。 もはや俺達三人だけ。 そうだ、俺はやらなきゃいけないことがあるからナビを開いて─── 悠介 (……〜〜〜……) 震える視線で、tellを発信させた。 ……数コールののちに……通信。 声  『……ほう、俺に───』 悠介 『───茶番は終わりにしよう』 声  『なに……?』 悠介 (……え?) 茶番……? どうして第一声がこんな─── 悠介 『もういいだろう?     お前がなにを思って俺達を成長させようとしてたのかは知らない。     けど、こんなのはなにか違うって俺の深遠が叫んでる。     ……なぁ、俺とアンタは知り合い……だったんだろ?どうして───』 声  『……なるほど、茶番だ。俺は貴様の戯言に興味などない。     二度とかけてくるな、偽善者が』 悠介 『偽善……?な、なんだよそれ!俺がいつ───!』 声  『ひとつ問題を出してやろう。“お前はなにも救えない”。     守ろうとすればするほど守れない。それがお前の辿る道だ。     お前はそれをどう思う?』 悠介 『っ……今はそれどころじゃっ……!守護竜がボ・タを襲って───!』 声  『それがお前の答えか……ならばそれでいい。     守ろうとするのも守らないのもお前の勝手だと俺は言った。     それをずっと心に刻んでおくがいい。だが忘れるな。     “お前は守りたいものこそを守れない”。お前が躍起になればなるほどだ。     ……いいか、お前が守りたいのは“自分”だ。     周りがあるから自分が自分でいられる。それが大きくなっているだけだ。     お前がする誰かのための善行などすべてが己のため。     それを認められるんだったら、助けてやろう』 悠介 『……、助け………………?』 助け……あれ……? 声  『だが、訊こうか。お前は憎んだ相手に助けを求めるほどの状況に立っているか?     それとも楽をしたいだけか?全力を出しつくしても手詰まりな状況にあるのか?』 悠介 『………』 助け?どうして俺は、こんなにあっさり魔王なんかに助けを─── 声  『では切る───うあちょっとナギー!?寝ぼけて抱きついてこないで!     あのね僕今とっても大事な話を……!ミク!?ちょっとミク!?     キミ起きてるでしょ!ねぇ!ちょ……抱きつかないで抱きつかないでぇええ!!』  ブツッ─── 悠介 『………』 よく解らないことだらけのままで通信が切れる。 その頃にはゼットもゼプシオンも劣勢状態にあり、俺に罵倒を投げかけていた。 話ひとつにいつまで手間取っているんだ、と。 ……悪いけど、交渉は決裂だ。 俺はあいつに“助け”を求めたかったんじゃない。 あいつを巻き込みたいと思っただけ……の筈だ。 それに俺は力を出し尽くしてなんかいない。 悠介 『……すぅ……はぁ……───!』 大きく深呼吸をひとつ。 キッと前を見て、神々の力を引き出してゆく。 その影響で髪は金に、目は蒼碧に染まり、同時に力が溢れ出してくる。 力を体に馴染ませ、いざ進もうとした時、 尾撃をガードしたゼットが俺の隣に飛ばされてきた。 ゼット『《ゾザァッ!》ぐぅううっ……!!チィ……!馬鹿げた強さだ……!』 ボロボロの体に回復の霧を弾けさせ、すぐに回復。 その行為にゼットは抵抗しようとしたが、一度小さく歯噛みをすると受け入れる。 一人では勝てないのだと確信したのだろう……それほどの相手なのだ、目の前の竜は。 悠介 『シィッ───!!』 だからといって立ち止まれない。 獣人神父の前で目覚めたであろう仲間たちもじき来るだろう。 それまでなんとか粘れれば───!  フオゾギィンッ! 疾駆ののちに斬撃。 振り下ろされる剣は、確かに田辺の言うとおり弾かれるものでもなく鱗ごど肉を斬る。 ダメージは確実に与えられているのだ。 それは相手の元が“肉付きの骨竜”だからか、それとも俺達が強くなれたからなのか。 どちらともとれないし、どちらでもいい。 倒せなくちゃ……魔王には辿り着けない! ゼプシオン「ぬぅううううっ!!!」 悠介   『おぉおおおおぉおっ!!』 ゼット  『ガァアアアアアアッ!!!』 かつては様々な理由の先に戦った三人での協力戦闘。 二人で気を逸らし、その隙を一人が突き、 その一人に気が向いたらあと一人を混ぜた二人で気を逸らしてもう一人が穿つ。 理屈的には簡単だろうが、これが難しい。 なにせ下手をすれば一撃で殺され兼ねない。  ズバドガガゴゴギィンッ!  ヂャゴズバゾフィンガフィィンッ!! カイザードラゴン『ルシャァアアォオオオンッ!!!!』 剣が、斧が、カイザードラゴンを切り刻む。 風の壁を出されようが強引に突き進み、吹き飛びながらも斬りつける。 だが……なにかを忘れているような気がしてならない。 こいつは、竜族ならば大抵のヤツが使うものを───と、思った時だった。  ギガァアガガガチュゥウウウウウンッ!!! 三人 『───!しまっ───』 た、と口にした時にはもう遅い。 てんで使わず、魔法レーザー以外では特に見せなかった極光レーザーが、 首を振るって放たれた瞬間に勝負は決まっていた。  ……いや!ダメでも諦めるな!ゲームだろうと、これは命だ───! 悠介 『破界神バルバロッサの力を!《ゴギィンッ!!》』 右腕にバルバロッサの力を解放させる! ソレはすぐに右手に持つラグにも伝わり、 死を連想させる蠢くような赤黒い光が腕とラグから漏れてゆく。 いや、考えるのは後───! 悠介 『うぅぉおおおおおおおおおっ!!!!』 広範囲に放たれたレーザー。 それに向けて、ラグと腕に篭った光を振るうようにして斬撃を払い上げる!  ゾガバシャァアアンッ!!! その刹那、レーザーは轟音とともに砕け、吐き続けようとしたレーザーも例外なく砕ける! カイザードラゴン『グル……!?』 カイザードラゴンが疑問に唸っても、その事実は曲がらなかった。 レーザーは完全に掻き消え、あとは隙だらけな竜が残されるのみ───! すぐに追撃───といきたかったが、バルバロッサ解放に伴い、 俺の右腕は腕の回路ごと焼き切れていた。 痛みも感じなければ、動かすこともできない。 ……古の神々の力を使った末路だ……これは、治すのに一苦労しそうだ。 だが命は繋いだ。道を切り開いた。 あとはあいつらに……! ゼプシオン「ぬうっ……《メコォッ!》オォオオオオオオオッ!!!!」  ヂギャァッフィズバァンッ!!! カイザードラゴン『───!クギャァアォオオオッ!!!』 ゼプシオンが放つ滅竜剣閃が、カイザードラゴンの胸部に大きな斜めの斬痕を描く! 激痛に体を揺らすカイザードラゴン……その隙を穿つのはゼット。 飛翼を出現させ、竜人状態となって飛翔。 傷口をなぞるように大きな斧を振るい、肉と骨を裂く音を高鳴らせる!! その間にグミを飲み下しながら回復の霧を創造するが……黒くくすんだ右腕は回復しない。 バルバロッサを使ったのはまずかったか……回復が遅すぎる。 大抵のものを破壊することが可能だが、 こちらの回路まで破壊するんだから始末に負えない。 けどこれであいつの“レーザー”は破壊した。 それを思えば、腕の一本くらい安いもんだ……! カイザードラゴン『ルゥウウォオオオオオオオッ!!!』 カイザードラゴンが大きく首を振り、再びレーザーを吐こうとする。 ゼットもゼプシオンも身構えるが、俺は二人に“攻撃し続けろ”と叫んだ。 ……考えることはあれど、こんな状況だ。 躊躇する暇はないと断じたのか、二人は再び攻撃に移る。 ───やがて、口を開いたカイザードラゴンが、 眼下でもがく二人へと極光を───………………放てるわけがない。 カイザードラゴン『ガ───!?』 バルバロッサの二つ名は“破界”。 世界の破壊などは出来ないが、斬った対象こそを破壊する。 それは魔法でもレーザーでも同じであり、 人を斬りつけたところで人を滅ぼせるわけもないが、代わりに能力の破壊が可能。 レーザーを斬れば“レーザー”を破壊、使用さえ出来なくする。 もっとも、これは“カイザードラゴンのレーザー”を破壊したというだけで、 竜族全部のレーザーを破壊できたわけじゃない。 それに……破壊する場合、自分の体も破壊される。 対価ってやつだろう……今回はそれが右腕に来ただけだ。 悠介 『はぁ……!』 深い息をひとつ、ラグを左手に持ち替えて走る。 右腕は感覚もまるで通っておらず、 走るたびにバタバタと右半身に当たって気持ち悪ささえ感じる。 ずっと肩にマネキンの腕がついているような感覚が想像できるだろうか。 この感覚はきっと、ソレによく似ていた。 カイザードラゴン『ギシャァアアアアアォオオンッ!!!!』  ルブォドガァンッ!!! ゼプシオン「ぐおはぁっ!!」 再び尾撃。 まともにくらったゼプシオンは遠くにあった大木までの距離を一瞬で飛び、激突。 激突の反動を利用して無理矢理体勢を立て直して着地するが、そこまで。 血を吐くと、剣を地面に突き立て屈んだ状態で立てなくなっていた。 悠介 『“伎装砲術”(レンジ/アロー)!!ライブレイク!』 その尾撃の隙を穿ち、左手に持ったラグをブレードオープンさせ、 雷の極光を溜めた状態で左前足に斬撃を落とす。 それは一気に鱗を破壊、肉の少々を裂いたが、 次の瞬間には振るわれた顎で地面に叩き落されていた。 体勢を立て直す、なんて余裕がないほどの一瞬で、バガァン、と地面を跳ねていた。 悠介 『ぐっ……げほっ!』 なにもかもがケタ外れ……! たった一撃でこのザマか……! 悠介 『ぐ……う、ぐ……ぅうう……!!』 剣を突き立て立とうとするが、脳が痺れたような感覚が伴い、上手く体が動いてくれない。 そうこうしてる間にカイザードラゴンの尾撃が振るわれ、俺は無抵抗のままに塵と化した。 【ケース802:弦月彰利/VS皇帝竜2】 作戦を立て、戻ってきた時にはゼットと、倒れ伏したゼプちゃんのみだった。 場は呆れるほどに見えていた景色を変え、 一瞬、そこがエルメテウスの大地だったのかどうかを疑うほどだ。 彰利 『んじゃ───いいね?』 藍田 『オーライ』 遥一郎「上手くいくかは実力次第か……」 既に全員が能力解放状態。 それらが疾駆して、一気にカイザードラゴンを囲む。 だがカイザードラゴンはそれに驚くようなこともせず、 咆哮一発で俺達の“覚悟”を削いでゆく。 特になにも出来ずにコロがされたヤツなんて、この一発で行動不能だ。 そんなやつらにtellで喝を入れるとミッションスタート。 遥一郎「サンダーブレード!!」 まずはホギー。 大きな魔法陣を弾かせ、放つのはサンダーブレード。 雷で象られた巨剣が空から舞い降り、カイザードラゴンへと突き刺さる───その瞬間、 カイザードラゴンはバリアチェンジで体色を闇へと変換! 再び魔法を吸収してみせる───その時!! 藍田 『ブッ飛べぇえええ!!』 疾風の如くでカイザードラゴンの眼前へと蹴り飛んでいた藍田が、 物凄い回転とともに踵落としを仕掛ける! バリアチェンジの状態では相手は動けないと確信した故の行動! 魔法が効かない今なら、打撃には弱い筈! そう思ったからこその作戦。 カイザードラゴンは口を大きく開くと、構えていた藍田をひと飲みにし───かかった!! 彰利 『連携いくぞ!しくじんなよてめぇらぁっ!!』 全員 『オォオオオオオオオオッ!!!!』 狙った作戦はなにも打撃だけじゃない。 硬い鱗や肉なんて後回し───ようはモロいだろう口内を狙えばいいだけのこと!! そしてその作戦を担ったのが藍田で、いけるなら口へ潜り込むというものだった! 俺達が一気に駆け出し、魔法兵団が魔法陣を解放したまさにその時、 カイザードラゴンの口から極光が溢れ、為す術もなく超爆発が巻き起こる!! カイザードラゴン『グアオギャァアアアアッ!!!!』 藍田のファイナルエクスプロージョンだ。 これで藍田はこのバトル中、 能力解放を失ったが───今はそれを気にしている時じゃない。 吐き出された藍田を田辺が空中でキャッチ、地面に降ろすと、田辺も一気に駆けた。 既に連携は始まっている。 痛みのあまりの暴れまわるカイザードラゴンを順序よく攻撃し、 ゲームにおける連携効果も利用して撃を連ねてゆく。 だが当然、こちらのダメージも相当だ───が!  バギャアアンッ!!《闇属性を破壊!ダークドラゴンの能力が消滅する!》 全員 『おっしゃあああーーーーーーっ!!!!』 それでもこの人数だ。 ゴリ押しでなんとか出来ないわけじゃない! 魔法吸収能力が無くなった瞬間に放たれる大魔法の嵐に、戦士たちは一旦後方へ。 すぐに回復を開始し、それが済むと詠唱の合間に突撃を開始。 惜しいが、崩れ落ちた霧闇竜素材の回収は後回しだ! 彰利 『オォオオオオオッ!!光速拳・十連釘パンチ!!』 振るわれた尾撃に向けて、同じ箇所に光速拳を十連打!! 向かってきた尾撃を無理矢理止めると同時にダメージを徹すが、瞬時に腕が悲鳴をあげる。 その痛みを黒で覆って無理矢理繋ぎ、衝撃が吸収されるより速く十連打されたために、 大きくヘコんだままの元のカタチに戻る前の尻尾へと 彰利 『イィイイイヤァアッ!!!』 黒から出現させたレヴァルグリードの打突で、一気に貫く!!  ゾヴォォッシャアッ!! カイザードラゴン『クギャァォオッ!!?』 二重の極み十連バージョンみたいなもんだ。 衝撃が殺される前なら、どんな攻撃だって通ると信じていた。 んでもってぇええっ───!! 彰利 『おぉらああっ!!』 貫いた尻尾の内側から引き裂くようにして、硬い肉を引き裂く! これには流石のカイザードラゴンも悲鳴をあげ、暴れ、無理矢理俺を引き剥がした。 彰利 『よしっ!《ビギィッ!》あがぁっ!?     ……〜〜〜っ……!やっぱ十連は無茶だった……!』 黒で誤魔化しても誤魔化しきれない痛みが両腕を襲う。 だがそんなものなにするものぞ! 今は攻めの時……全軍、打って出る!! カイザードラゴン『カォオッ!!《パキィンッ!!》』 彰利      『オ……アッ……!?』 だがその一歩が、絶氷の膜によって妨害される。 絶対防御の膜の中でカイザードラゴンは荒い息を吐き、 どうやっているのか傷の回復を開始させる。 遥一郎   「させるか───!《ゴコォッキィンッ!!》───マクスウェル!!」 マクスウェル『ホッホ……ゆくぞい!』 そこで精霊召喚を開始させたのがホギー。 隣のスマイルくんと頷き合うと、行動に出た。 澄音 「多分、薄皮一枚を砕くので手一杯だと思うけど……───ディスペル!!」 まず発動するのはディスペル。 話し合いの結果、二年も離れ離れだった彼のために取っておかれたエクストラジョブ、 法王の法衣に身を包んだ彼が精霊魔法破壊を発動させる。 だが言葉通り、ソレは絶氷の膜のほんの表面を砕くだけに終わる。 澄音 「うん、よし───!《フォガァッフィィイインッ……!!》」 彰利 『あ───そうか!』 次いで解放されたのは、スミーの両腕に光輝く極光! あの光は───! 澄音 「LuminousDestory(至光にて万物を砕かん)───Fill agains Fill. Sword of SupremeRuler(満たし、更に満たせ。その意が覇王の剣と化するまで)───!!」 対竜族魔導極光剣、エクスカリバー! スミーはそれを両腕に宿し、見えない剣を両手で握るようにして構える───! その横ではホギーが長ったらしい詠唱を始め、 少しでも絶氷の膜の強度を下げるためか、幾つもの魔法を放っていた。 いや……これは案外、カイザードラゴンの周りにマナを散らせるためなのかもしれん。 澄音 「魔導(エクス)……極光剣(カリバー)!!」 放たれる魔導剣閃。 リヴァっちやヤムヤムのモノとは明らかに違う、屠竜奥義としての“魔法”。 それが風を裂き、一瞬にして絶氷の膜にまで接触すると、 屠竜の効果か、膜に亀裂が走る───! 彰利 『おっしゃあ!あともう一息!』 俺が───といきたいところだったが、腕が悲鳴あげててそれは出来そうになかった。 みさお『いくよ、聖ちゃん!』 聖  『うん───!』 そこに喝入れをしたのがみさおと聖。 地面に鎌剣を突き立て、この場に居る月の家系、死神の能力を一気に向上させ、 向上した能力全てをみさおが鎌剣に呼び戻し、吸収。 さらにそれを─── みさお『任せましたよ!』 岡田 「おう任された!!」 岡田くんの影に突き刺し、影を通して岡田くんに送る! 家系でも死神でもない影を通す─── 神と死神と人の能力を持つ中立者のみさおだから出来る行動だ。 ともあれそれを受け取った岡田は身を捻り、ダンシングソードを解放! 様々な効果のためか揺れる刃と、そこに届けられた俺達死神関係のやつらの力。 それを解放し、放たれるものは───! 岡田 「インスタントブースターフルブースト!!     エースインザァアッ……フォォオオオオーーール!!!」 斬撃ではなく剣閃として放たれる極光だった。 それはかつて、ジェノサイドクロウが放ったブレードスラッシャーにも似て、 狙い済ましたかのように飛翔するソレは、スミーがつけた亀裂へと直撃!! とうとう幕を破壊し、それだけでは飽き足らずカイザードラゴンの胸の傷を切りつけた!  ───響く絶叫。 その瞬間に氷の属性が破壊され、地面に氷の守護竜の素材が崩れ落ちる。 だが終わりじゃない。 続いて発動されたソレは、カイザードラゴンを必ず絶望へと落とす至高の魔術───!! 遥一郎「《ガカァッフィィンッ!!》くらえ!エターナルファイナリティ!!」 細かく放っていた様々な魔法。 幕によって破裂したマナの全てを使い、ホギーが空中に巨剣を精製! カイザードラゴンへと落とし、硬い鱗を破壊、肉を抉ろうとする───! カイザードラゴン『ガ───!』 それだけで全員が理解した。 即座に全員がホギーの周りに集まると、意識を集中、トランスを全力で解放し、 自分たちのTP全てをホギーに託す。 遥一郎「続けていくぞ!《ギキィンッ!》エターナルインフィニティ!!」 次いで発動するのは極光の“弾く壁”。 巨剣の柄の後方に現れたそれは、 抵抗を続けるカイザードラゴンに突き刺さる巨剣を一気に弾くように押し、 強引に地面に串刺しにすると無属性の雷を落としてスパークさせる! カイザードラゴン『ゴガァアアアアアッ!!!』  バギィン!《火属性が崩壊!レッドドラゴンの能力が崩壊する!》 それでも生きている。 巨剣で串刺しにされようが眼光は死んでおらず、 魔法巨剣に噛み付くと、あろうことかそれを───ガッシャァアアン!! 全員 『っ……!』 破壊、しやがった……!! カイザードラゴン『ギギャァアォオオオオンッ!!!!』 真っ直ぐに突撃してくる。 もはや誰が一番危険なのかを悟った故だろう。 真っ直ぐにホギーならび、俺達の方へと向かってきたカイザードラゴンは、 ゾガァアアガガガフィイインッ!!! カイザードラゴン『グギャオッ!!?』 横から飛翔してきた剣閃に尻尾を切断され、地面に落下する。 エターナルファイナリティで傷ついていたとはいえ、アレだけデカいのを斬るなんて─── ゼプシオン「っ……、く、お……!《ドシャアッ……》」 剣閃を放ったゼプシオンはいよいよ限界に至ったのか、再び地面へ崩れ落ちた。 つくづくキメる時は決めてくれるヤツだ……本気で思う、味方でよかったと。 彰利 『トドメ、いくぜ───!』 全員 『おぉおおぅ!!』 マナが集中する。 俺達全員のTPを光に変える光の粒子が、全てホギーとマクスウェルへと集中し……! 全員 『紡がれし光の波動!!インフィニティーリヴァイヴァァアアアッ!!!』 そのマナの全てが全てを貫く雷となり、倒れ伏したカイザードラゴンへと降り注ぐ!! 耳を劈き、目を焼かんとするほどの轟音と閃光。 だが俺達は前を向く。 鼓膜は破れないし、眩しくもない。 ただその輝きを、貫かれ焼かれる竜を見て、油断をせずに次を構える。 倒せるだなんて思っちゃいない。 しかし───  バギャアン!!《水属性が───》  バギャアン!!《地属性が───》 次々と破壊される属性と、落ちる素材にもしかしたらと期待する。 いや。期待した次の瞬間、それは起こった。 空から眩い光のレーザーが放たれ、この場に居た全員がそれで死滅した。 彰利 『ぐあぁああっ……!!』 瞬間的に転移で逃げても、避け切れなかった俺は身を焦がし、地面に転がる。 なんだ今のは……!レイ……!?あんなバカデカいのが……!? カイザードラゴン『グォオオオギャァアアアアッ!!!』 マナの集中が無くなったためにリヴァイヴァーも消え、 のちに残されたのは───  バギャアン!《光の属性が崩壊!ホーリードラゴンの力が霧散する!》 死と然の属性を残すのみとなったカイザードラゴンと、 俺と藍田とゼットとゼプシオン程度だった。 藍田 「つっ……は……!くそ……!あれでも死なないなんて……!」 彰利 『あの野郎、他の属性全てを犠牲にして自分だけ生き残りやがった……。     いや……違うか。俺達に負けるわけにはいかないから、生き延びたんだ。     犠牲なんかじゃない……勝つための手段だ』 綺麗ごとで乗り越えられるほど、戦いってのは生易しいものじゃない。 だとするなら、カイザードラゴンがとった行動のなんと男らしいことよ。 そうだ、俺達は綺麗事を並べたくて戦ってるわけじゃない。 己の意地のため、またはべつの譲れないなにかのために戦ってるんだ。 綺麗事を並べるのは、戦いもしないで見ているだけの傍観者だけで十分───!!  パキキキキ……!!《皇帝竜の体質変化!物理攻撃が一切無効になる!!》 彰利 『───!んなっ……!』 藍田 「ここにきてそれかよ……!もう……勘弁してくれ……!」 思わず弱音が出てしまう藍田を、誰が責められよう。 それでも戦うしかない俺達にとって、この状況はもはや絶望的だった。 けどだ。 物理攻撃が効かないなら、飛び道具……月操力なら効く筈。 諦めるなよ俺……!最後の瞬間まで、一瞬だろうが存在する勝機を見逃すんじゃあねぇぜ! 彰利 『アイーダ!魔神破天弾なら効くだろうからキバれ!     心で既に負けてたらおめぇ……アレだぁ、実際にも負けちまうんだぜぇ!?』 言って走る。 月醒力が効くっていうなら、遠くからじゃなく近くからだ。 拳から徹しで、内側に炸裂させてやる……! 俺のアルファレイドは痛いぜぇええっ!!? 藍田 (……解ってる。解ってるんだよ彰利…………けどさ……。     俺はもう奥の手を使っちまってる……ろくな攻撃出来ねぇんだよ……。     帯熱も暗黒闘気もエナジードレインもない……。     それらを使えるようにするには一度死ぬか、戦いを終わらせるしかない……。     けどここで死んだら、俺は命を投げ出すようなヤツになっちまう───) 走る走る! その間にも打透勁を放ちながら間合いを計り、隙あらばアルファレイド! いやあ、やっぱ遠距離って面白いネ! 状況的にはシャレになってねーけど! 物理攻撃が効かないんだったら遠距離エネルギー波とか魔法だろうけど、 その攻撃自体が、高すぎる皇帝竜の魔法防御とか防御力に弾かれてちゃ意味がねー! なんでかレーザー全然使ってこねーけど、それならそれで逆にありがたいわい! 彰利 『どぉっせぇええええいっ!!!』 攻撃を転移や移動で躱しつつ、ついに辿り着いた皇帝竜の眼下! 疾駆の速度もプラスさせ、ぶつけるのはやっぱりこれ! 彰利 『“排撃”(リジェクト)!!』  ドッガァンッ!!! カイザードラゴン『グォゥグ!?』 皇帝竜の後ろ足に手を当て、徹しで内部に衝撃を送る! だがそれも大して効いちゃいない……こりゃまいった、強いわマジで……。 彰利 『だったら《バガァン!》ぐごぉあっ!!?』 距離を取ろうとした途端に尾撃。 横薙ぎに振るわれたそれをなんとかガードしたが、結構な距離を吹き飛ばされる。 しかも物凄い速度でこっちに飛んできてうおおおちょっと待てもしかしてぶちかまし!? 彰利 『く、くそったれぇっ!!“レヴァルグリード”!!』 武具の飛翼と自分の飛翼、合わせて十七翼を出現させる! そしてそれらの密度を高めてレヴァルグリードの上半身として生成! 彰利 『いくぜレヴァちゃん!怒りの業火!!エグゾートフレイム!!』 黒の力を全解放! 余力なんて残さず、持てる限りの力を全てこの一撃に!! レヴァルグリード『ルゴォオウシャアアアッ!!!!』 バヂィン!と弾き合わされる両前足! そこに篭る黒の極光が景色を歪ませ、歪んだ全ての力を右前足に移すと、 レヴァルグリードはその前足を突き出してエグゾートフレイムを発射! 竜だから口から放たなきゃいけねーなんてことは知りません! そうしたいからそうしてもらう!ただそれだけだ!! 彰利 『くらいやがれぇえええええええっ!!!!』 既にあと数メートルといったところまで飛んできていたカイザードラゴンに、 はたして極光は直撃する!! だが怯むことなく無理矢理突撃を続けるカイザードラゴンは、 ぎしぃいいと口を開くと極光の一部分を噛み砕きやがった! 直後に再び極光の波に飲まれるが、それでも怯むことを知らないように突撃を続ける……! 俺も、負けてられっかとさらに出力を上げ、押し返そうとする。 が…………っ!くそっ!どういう体力してんだこいつ! 直撃し続けてるってのに怯みもしない! やせ我慢か!?それにしたって我慢しすぎだろ!も、もう休んでもいいんだぞ!?オイ!! カイザードラゴン『ルグォオウシャアアアッ!!!』 彰利      『───!やべ《ザゴォッ!》……、ぶっ……《ゴポッ……!》』 強烈な咆哮で、一瞬極光が押し戻された瞬間にそれは起こった。 突き出された巨大な鋭角が、俺の右半身を削り取っていったのだ。 ───血が喉から漏れ、意識がブッ飛びそうになる。 だがここが踏ん張りどころ……! 月生力を全力で解放しながら、左半身でバックパックからグミを取り出し口に突っ込む。 強烈な痛みが走る中で、 穿たれた半身は無理矢理にでも俺と皇帝竜の角に刺さった半身とを繋ぎ、 皇帝竜は血を撒き散らしながらも無理矢理繋がろうとする俺の半身を、 やはり無理矢理引き裂こうとする。 彰利 (ナメるなよオロチ……!俺は血の宿命などに負けたりはせん……!) 関係ねーけどね! 彰利 『ゲホッ……!根ッ……性ォオオオオオオオオオッ!!!』 大きな角を自分の半身と半身とで無理矢理押さえ、踏ん張る足は大地を抉り、 食いしばる歯はミシミシと音を立て、流れる血液が角と大地を染めてゆく……! そして、放ち続けるエグゾートフレイムが皇帝竜の体を焼き、 少しずつでも確実に滅ぼしてゆく……! 彰利 『見さらせぇ……!これが火事場のクソ力じゃああああああっ!!!』 地に着く足に力を! 角を掴む腕に力を! 食いしばる歯にさらなる力を! 千切れてはくっつこうとし、離れぬ我が身にこそ全力を───!! そうやって踏ん張った瞬間、この場へ一気に駆けてくる影───藍田くん! 藍田 「っ……正直役立つかなんて解んねぇけどよ!     傍観なんて出来ないって思ったんなら仕方ねぇよな!───いくぜ将軍!」 彰利 『……オウヨ!それでこそ男よ!     おぉおおおりゃぁあああああっ!!!!』  ドッガブアォオッ!! 一瞬の全力……! 藍田くんが皇帝竜の腹下へと潜り込み、アンチマナーキックコースで蹴り上げ、 その反動を利用して、巨体を上空へと投げ飛ばす!! カイザードラゴン『グゥォオオウウゥウッ!!!!』 すぐに体勢を立て直そうとするが、投げられることが意外だったのだろう。 それはほんの数瞬動作が遅れ、その数瞬のうちに行動は終わっていた。 彰利 『わり……あと、任せる……』 藍田 「フ、フフフ……いや……俺も今ので足痛めた……」 彰利 『ゲェエ……!』 力を振り絞り尽くした俺と藍田くんは倒れ───だが。 既に駆けつけていたみんながトドメに向かう。 そう、作戦会議なんてことをしなけりゃこの場所は俺達にとって都合のいい場所。 死んでも獣人神父が蘇らせてくれ、走れば一分とかからずこの場へ出る。 あとはもう、魔法と剣閃と奥義の嵐だ。 空中に放り出された皇帝竜は一瞬にして攻撃の嵐へと飲み込まれ、 その姿を魔法と剣閃の海によって視認出来なくされる。 力を使い果たした俺はその様子を見ながら、ゆっくりと塵に─── 悠介 『お疲れさん』 彰利 『……、……』 ……いいや。 どうやらそうならなくて済むらしい。 麻衣香ネーサンのクレイジーコメットから繋がる秘奥義と、 ホギー&マクスウェルの精霊魔法から繋がる秘奥義が炸裂しまくる中で、 俺は親友に救われ、なんとか命を取り留めた。 ようやく立ち上がれた体で見た景色は魔法的宇宙空間に飲まれていて、 その先では隕石系の禁呪が放たれ続けている。 トゥィンクルスターやらデュアル・ザ・サン、 ミックスマスターやらマクスウェル・ロアーやディメンジョナルマテリアル…… といった隕石系の魔法や流星系の魔法が入り乱れ、 その中心で身を穿たれまくる皇帝竜がいっそ哀れになるほどの魔法の嵐に飲まれていた。 やがて禁呪大会も終焉を迎える頃、 魔法効果で宇宙空間となっていた景色は緑と水に溢れた景色へと変わり、 プリンセスオブマーメイドというビッグバンに続く破壊力の麻衣香ネーサンの奥義と、 ブルーアースというホギーの最強HP回復能力へと繋がれ、 回復と破壊によって幕を下ろす。 彰利 『《キヒャァアン!》うおっ……───すげぇ……HP全回復だよ……』 悠介 『……ああ。皇帝竜も……あれじゃあもう動けないだろう』 悠介の言葉に視線を動かしてみれば、もはや鱗も剥がれ、 命が尽きようとしているためか、 ゆっくりと崩れ落ちてゆく体で……それでも起き上がろうとする皇帝竜が。 あれくらって生きてるなんて、どういう生命力だ……? 心の中で、その執念に逆に敬意を覚えてしまうくらいの生命力。 ……そんな目が急に見開かれ、上空へと向けられた。 なに───?と空を仰ぐと、そこに───!! 魔王 『やあ』 黒の甲冑に身を包んだ影……魔王が───!! 彰利 『てめぇっ……!なにしに来やがった!!』 魔王 『……あれ?助け要るんじゃなかったの?あ、ああまあいいや。ゴホン。     不甲斐ない貴様らを見かねて出てきてやったまでのこと。     だがどうやら乗り越えたらしい……無様だなぁ皇帝竜。     せっかく復活したというのに復讐の意思に飲まれ、軍勢に不覚を取るなど』 見下ろす視線は皇帝竜に。 そんな魔王の言葉を聞いて、恐らくこの場に居るみんなが怒りを覚えたことだろう。 ……なに言ってやがる、無様なんかじゃない、 こいつは本当に強く、己の意思に真っ直ぐなやつだった、と。 そんな時、皇帝竜が耳を劈くような咆哮を放つと、死力を振り絞り飛翔───! 空中の魔王目掛け、その牙をゾガァォンッ!!! カイザードラゴン『……、ガ……!』 ……一撃だった。 放たれた極光の剣閃が皇帝竜を真っ二つにし、 残った勢いだけで魔王の元へと辿り着いた死んだ体が、 トン、と魔王によって受け止められる。 魔王 『……ごめんな。お前は……誇り高き竜だった。     お前だけは……他の誰にもやられてほしくなかった』 その時、魔王の口が動いたような気がしたが───それは聞き取れず、 やがて落下する皇帝竜を見下ろした魔王は一瞬だけどもりを見せ、しかしすぐに笑う。 地面に落ちた皇帝竜はその衝撃で体を崩し、完全に絶命。 残されたスカルドラゴンも完全に両断されていて、既にそこに命はなかった。 彰利 (なんつぅ威力だ……!     弱ってたからって、相手はあのカイザードラゴンだぞ……!?) 悠介 (っ……これが魔王の実力……!) 地面に降り、その骸から宝玉を抜き取る姿を、俺達は見守るしかなかった。 皆が見守る中で魔王はスカルドラゴンの素材までを剥ぎ取ると、再び浮遊。 特に言葉を残してゆくこともなく飛翔し、やがて見えなくなった。 全員 『………』 勝った気などもはやない。 それでも俺達のレベルはその瞬間に大きく跳ね上がり、 聞き飽きるほどのレベルアップ音が、多少なりともこの無力感を消してくれる。 どんな理由があったにせよ、俺達は勝ったのだと。 彰利 「…………あ、あぁ……うん……。───よしっ!剥ぎ取るぞ野郎どもぉっ!!」 全員 『ウォオオオーーーーーッ!!!!』 そして……不思議なことにカイザードラゴンの経験値さえも、俺達にきちんと流れていた。 あの一瞬、魔王は俺達の味方をしていたのだろうか……そんなことも考えてしまうが、 そうなったとしても湧き上がるのは怒りだけ。 俺達は打倒魔王を心に誓い、より結束を深めていった。 Next Menu back