───冒険の書323/関節痛は人類の敵だ。Kも。───
【ケ−ス804:弦月彰利/数日後】 ガンコンカンガンコンカンッ……シャッ、シャッ、シャッ、シャッ……マキィンッ♪ モンスターハンターの砥石を使ったような音ののち、ついに完成した我らの武具。 カイザードランゴたちの素材を剥ぎ取って持ち帰ったアタイたちは、 早速東の皆様を頼り、武具を鍛えてもらっていた。 カイザードランゴたち守護竜の素材は実に素晴らしく、 今までの生物素材などでは届かなかった領域へとあっさりと強化が行き届き、 完成してみれば、もはや怖いものなどないといったくらいの心強さを与えてくれた。 しかもこの軽さときたら……ありがてェもんだねェ鍛冶ってのはよォオ……! と、つい愚地独歩風に言いたくなるくらいありがたい。 彰利 「シャアア!!《シュシュシュッ》」 なもんだから、つけた途端に鉄鋼無敵ロボ子風にパンチを連打。 ……意味なかったからすぐやめたけど。 悠介 「これはいいな……ラグに物凄く馴染んでる」 彰利 「そりゃ元々が竜王素材で出来とるからっしょ。     アタイらの中で一番最初にファンタジーを開拓したのってキミだし」 悠介 「開拓って、あのな」 彰利 「あの頃ァ純粋じゃったよ。ファンタジーとか素直に受け入れられるヤツばっかで。     ところが今はどうだい、光の武具とかの名前、あるだろ?」 悠介 「ああ。三十矢の地槍とかだよな?それがどうした?」 彰利 「アレの読み方がゲイボルグ〜とかになってると……中二病とか言われるんだぜ!」 悠介 「言われん。また随分アホゥな話だな……」 彰利 「アルェー!?なにその“また始まったよ”的な返し方!アタイが悪いの!?」 ブブルバフー、と物凄い濃度の溜め息を吐かれましたよ? いやあの……そげに呆れんでもいいじゃなかですタイ。 彰利 「でもYO、だってYO、昔は受け入れたれたものを中二病だとか言ってるんだよ?     おかしいじゃないそんなの。楽しいものを楽しんでられた頃って最強じゃない」 悠介 「他人を見下して自分を上に見たいだけだろー……?     そういうのは言わせておけばいいんだよ、     そういうヤツこそよっぽど“アレ”なんだから」 彰利 「……ああ、言われてみりゃ確かに」 中二病に敏感に反応して騒ぎまくる……確かに“アレ”だ。 フムリと頷いておると、悠介が欠片を台座に嵌めて、よしと頷いていた。 悠介 「台座も大分埋まったな……あと3欠片くらいだ」 彰利 「そうみたいネ。それが溜まったらついに創造完全解禁か」 悠介 「経験もあるし、以前より上にはなってると思う」 彰利 「ホウホウ、そりゃステキ。あ、ところで中二の話に戻るけど」 悠介 「お前好きだな、そういうの……俺は大嫌いだが」 彰利 「うわまた随分キッパリと。いやアタイも嫌いYO?     でもさ、言いたいことは言っておきたいじゃない?     人の苦悩を差して中二病ってアータ、幸せなヤツらの勝手な見下しじゃん?     今まで人がどんだけ苦悩して苦しんで道切り開いたと思っとんのじゃー!って。     それをたった一言!たった一言“中二病”って!     そんな言葉は過去をでっちあげてキザってる人にだけ言ってください。     表現の自由を守るんだ〜とか言っててこれじゃ、ほんとアホらしい」 悠介 「彰利〜、ちょっと創造の手伝いしてくれ〜」 彰利 「あ……無視なのね?     いやいいけどさ、言いたいこと言えたし、正直ほんとアホらしいし」 十数年前に発足された表現の自由改革に負けた理由も解る気がするよ。 今じゃアニメの再放送もひどい有様だ。 前に夜華さんが見てた銀魂再放送も随分と手が加えられ、つまらないものと化している。 だから僕らにとってはDVDが宝だった。 旧時代の表現の自由は素晴らしい。今はダメだ、なんでもかんでも規制規制で。 アニメや漫画がお堅いものになってはや十数年……ほんとアホらしい。 あ、ちなみにその後、銀魂の再放送も放送禁止になってた。 マイケルのクソアマって言葉がダメだったみたい。 漫画の方もバトル漫画がなくなって、ノリツッコミで叩くキャラも居なくなり、 なんか魔王を説き伏せて世界を救う、実に平和なファンタジーとかばかりがあった。 それはそれでスゲーけど。 僕らの世代の者どもから見れば、 アギュヌェス=コーハンは漫画やアニメを殺した時の人だった。 恋愛漫画でキスが禁じられてるってスゲーよね、 トキメく描写と手を繋ぐ描写が延々と続くんだよ? 彼女の危機に駆けつける彼氏!とかいう描写もなくなった。 なぜなら暴力やイジメも描くことが禁じられていたからだ。 ただひたすらに平凡な日常が続いていう漫画ばかりだ。 だからT樫先生も復活しないに違いねー。 少年漫画はファンタジーが多いのがウリだったと思うんだけどね…… ファンタジーはモンスター描くだけで掲載されないし、(魔物は大抵裸族だから) ギャグ漫画はほぼ死滅したし、 恋愛漫画は彼氏以外の男が女性に触れることさえセクハラと断定。 いやもう漫画家さんなに描けばいいんですかって世界だ。 コーハンのお情けでアニメも漫画もゲームも規制満載で残ったけど、 あんなもんはもう漫画やゲームとは呼べないんじゃなかろうか。 アニメや漫画で無駄なパンチラシーンなどのサービスカットがなくなったのは、 いやもうほんと手放しでハラショーだけどさ。 書店やアニメ専門店は大打撃を受けましたよ、 漫画家やめる人やアニメーターやめる人が多くて。 あ、ちなみに旧時代のアニメとかも一度回収されて、 つまらない内容になったものと交換させられたりもしました。 漫画やアニメで幼女が出ることは一切なくなり、 例の恋愛漫画も熟女との恋愛ものだけになった。 児童ポルノ単純所持違法化によるものでした。 ちなみにそれらを自力で確保し続けている原メイツは既に犯罪グループです。 死んだことになってるから別にどーでもいいんだけどね。 彰利 「なんだったっけ、ヒロインが幼児体形ってだけで捕まった人」 悠介 「そういえば以前お前が騒いでたな……話半分に聞いてたから覚えてない」 彰利 「あらそう……まあそれに伴って、     消費税が飛躍的に上がったのはなんというかアホな話だった」 悠介 「暴動が起こって武力鎮圧が起こって、     外の国のヤツがこっちのことに口出しするんじゃねぇとか言い出して、     コーハンの意見を受け入れた日本が国民の信用を無くしたあの事件だな?」 彰利 「武力行使って怖いね、     今でもあの頃がよかった……っていって自殺する人多いみたいYO?」 悠介 「俺はゲームとかアニメとか漫画はそこまで興味がなかったからな……よく解らん」 彰利 「刃牙の終わり方は壮絶だったね……」 悠介 「ああ、あれは壮絶だった」 無駄に伸ばしまくった結果がアレだもんな……。 血生臭いバトルが禁止されて、流血も喧嘩もストップさせられた時、 あの漫画はただの親子の口喧嘩ものとなった。 もちろん随所にあった長ったらしい解説にたびたび出てきたアレやコレな解説も禁止。 内臓を描くことさえ禁止され、作者に忘れられた脇役のようにピクルが自然消滅し、 最後は規制のためにちゃぶ台さえひっくり返せない勇次郎が刃牙との口論の末、 反論出来なくなって決着。 刃牙は晴れて、地上最強の口喧嘩野郎となったのだ。 人々は言う。 もっと整えたコマ割をしていれば、無駄に巻数増やすこともなく、 大絶賛のまま終われたものを……と。 そもそも少年誌のほぼが市場から姿を消しました。 ヤングシリーズは言うまでもなし。 18歳以上に見えない女性がグラビアなどに出ることも禁じられ、 “熟女ファンだけがこの世の勝者となる”と、 かの有名なストローレインコートさんが言っていた。 ちなみにそのストローレインコートさんも、 孫の写真を所持していただけで児童ポルノ法で捕まった。 うっかり孫娘がプールに入ってきゃいきゃい楽しんでいるところを 写真に収めたのが運のつき。 単純所持禁止は、確実に世の中の老人を悲しませました。 ……あれ?なんでこんな話になったんだっけ。 彰利 「ストローレインコートさんはあの性格が嫌いだったからべつにいいけどね」 悠介 「いきなりなにを言い出してるんだお前は」 悠介が創造したハトを受け止めながらぼやいた。 いやはや、ほんとつまらん世の中になったものです。 ヘンだなぁ、少し前まではなんか違った世の中だった気がするのに。 彰利 「なんか引っかかってることがあるんだけどさ。     あのー……もし世の中の歴史が変わって、     たった一人だけが存在しないことになったとしたらさ、世界ってどう動くんだろ」 悠介 「それはお前の方が詳しいだろ。何度も歴史を繰り返したんだろ?」 彰利 「オウヨ。アタイの行動ひとつで随分と景色が変わったYO。     適当に助けてみた誰かさんが総理大臣の息子で、     世界の在り方が随分変わった〜なんてこともあったねぇ」 悠介 「じゃ、そういうことだろ。誰か一人が居なくなるってのは案外大変なことだ。     途中で死ぬとかじゃなく、最初から居ない歴史になるっていうのが一番厄介だろ」 彰利 「だよね」 ハトをキャッチボールしながら言うことじゃねーけどね。 でもこのハト、悠介が創造したボールみたいなハトでさ。 投げられて受け止めた時の感触がなんともいえないのです。 彰利 「たとえばさ、そやつが影で児童ポルノ法をブッ潰してくれてたりしたら、     世の中ももっと違う歴史があったんかね」 悠介 「お前本当に児童ポルノ法に文句言うの好きだな」 彰利 「好きだとも」 でも……なんだろな。 そんなことを率先してやってくれるようなヤツが、 なんか昔居たような………………んなわけないか。 そんなやつが居たとしても、どうやって上を納得させるのかだよな。 たとえば相手の思考を具現化させて、この過去をこの世に配信されたくなかったら……! とか言って脅迫するとか…………はぁ。 どこまでいっても“想像”の域だよなぁこんなの。 過ぎたことぐちぐち言ってもしゃーのないことですね、忘れましょう。
【Side───彼】 中井出「じゃーーーっくしょい!!」 ナギー『ふぎゃわぁあーーーーーーーっ!!』 中井出「《ずずり……》ふう、誰かが僕を噂しているようだぜ……!」 恐ろしい僕……! きっと今頃世界は僕の話でもちきりさ! …………魔王だものね。 ナギー『だぜではないのじゃー!急になにをするのじゃヒロミツ!』 中井出「いや違うんだよ?べつに狙ってやったとかそんなんじゃなくてさ。     誰かが僕を噂したから出たんであって、     いっつも貴様を狙ってくしゃみしてるとか、そんなことあるわけないって。     そう……あれもこんな薄暗い世界でのことだった」 レイル「地下空洞なんだから当たり前だろ」 中井出「ほっといてよもう!いやさ、空界で暮らし始めて大分経った頃ね?     僕の家に彰利がやってきて、     アギュヌェスから僕らの世界を守るんだ!とか言ってきてさ。     急に転移したと思ったら目の前にアギュヌェスとお偉いさん方。     俺はいつの間にか黒い服着させられて、     世紀末の魔術師ですって無理矢理名乗らされた」 レイル「お前らほんとになんでもやってるな……」 閏璃 「アギュヌェスっていうと……児ポ法か」 中井出「そうそうソレ。     それを取りやめにするのにいろいろと姑息な手ェ使ってさ、脅迫したの」 児童ポルノ法がなんなのかなんてよく解らなかったけど、面白いから手を貸した。 ただそれだけの、心温まる過去です。 閏璃 「それで、どうにかなったのか?」 中井出「うむ。なったと聞く。でも実際、今はどうなの?     僕が居なかったことになってるなら……えーとそのー」 閏璃 「児ポ法は通ったぞ?今現在の世界はとんと娯楽に欠ける。     まあ、児童がダメってことで、     一時期熟女ブームが無理矢理な風情で巻き起こったんだけどさ。     いや〜40代熟女ちゃんフィギュアとかが出た時は腹抱えて悶絶笑いしたもんさ」 レイル「あ、それ天界で見てたから知ってるぞ。     40代熟女ちゃんって確か熟女ブームのマスコットだったヤツだろ」 閏璃 「ああ……あれはひどいブームだった。なにせストラップが干し首だ」 中井出「彰利が居たならあいつだけでも止めそうなもんだけどな」 閏璃 「だって弦月、ゲームっていったらパイロットウィングスだけで、     アニメや漫画も熱読するほどの面白いものがないってぼやいてたくらいだし。     だから自分だけで行動起こす気にはなれなかったんじゃないか?」 中井出「ウヌー」 まあ……そうなのかも。 僕を忘れただけで、女性に手を上げられない軟弱な原中を作り上げてしまったほどだ。 ……すごいなぁ、たった一人の影響で世界はこんなにも変わるのか。 僕も“漫画やアニメを違法化する”って聞かなければ、 あそこまで脅迫したりはしなかったけどね。 レイル「ところでさ。提督さんが最初から居なかったことになってるんなら、     俺達との出会いはどういうものにでっちあげられたんだろ。     辻褄、合わないだろ」 中井出「僕が別の世界からやってきたって設定が作られてるんじゃないかな。     ほら、一応空界に住んでたわけだし」 レイル「あ、なるほど」 【Side───End】
……。 彰利 「ほんで?これってなんの意味あるん?」 創造の手伝いって言ったけど、なんだろねこれ。 ハトをキャッチボールするだけ? 悠介 「いや、意味はとんと無い。     そういえばお前とこういうことしたことなかったなって思ってさ」 彰利 「…………ダ、ダーリン……!」 悠介 「こういう反応するのが解ってたからやらなかったんだが」 彰利 「あ、うそうそ!     やろうぜキャッチ……あの、ボールにしません?《ポムンッ》オアッ!?」 言葉にした途端にハトがボールに! な、なにごと!? 悠介 「タネ明かしは創造の応用の練習だ。     誰かの言葉がスイッチになって変換が始まる創造。面白いだろ?」 彰利 「ほへぇえ……こりゃスゲェや。あ、でもハトはどうなるん?」 悠介 「ボールになったな」 彰利 「や、そーでなくて、命とかそっちのほう」 悠介 「死んだ」 彰利 「そうなん!?」 悠介 「冗談だ。いろいろ話すと長いんで割愛だ。とりあえず生きてる。     それから、命を利用して戦うなんてとか言うなよ?     俺はお前と違って、戦うからにはなんでも利用するって………誰かに誓ったんだ」 彰利 「誰かって誰さ」 悠介 「…………思い出せん。最近多いんだよな、こういうの。     まあけど、戦場に立ったら男女差別無しでかかるぞ俺は。     命の遣り取りしてるんだ、     相手が女だから子供だからって理由で迷うのは馬鹿らしい」 彰利 「ふむ」 アタイの場合、女に手ェ上げるってのがちとね。 あのクソ親父の所為でそういうのがまるでダメだ。 女に手ェ上げるって時点で、あいつみたいになっちまうのが怖いと感じてる。 あんなやつのこたぁ気にしなけりゃいいんだろうけどね、 なかなか頭と理性が噛み合わさってくれん。 やめたいと思うものほど、そうなるっていうね。 なんて会話をキャッチボールしながら言ってると、 次々と武具を身につけた仲間たちが工房から出てくる。 藍田 「すげぇぜ……誰にも負けねぇ!」 彰利 「敗北フラグ立てとらんと、さっさと体慣らしといたほうがええよ?」 藍田 「出てきた途端に敗北フラグとか言うなよ。しかし見てくれよこれ!     ランペルージュがさらに進化した!フラムベルグの力は元より、     守護竜素材が属性値を思い切り上げてくれたんだよ!」 彰利 「あ、属性で思い出した。ゼノってもう精霊武具もらってた?」 藍田 「スルーか……あー、もらってたもらってた。     爪装備で、魔人拳爪ディアボロスってやつだった。     こうなるとあとは黒竜王の精霊武具だけだよな」 悠介 「確か“覇王”ジョブになるために必要なものに書いてあったな。     確か───ジャガーノート」 彰利 「なんだかヘッドクラッシュとか出来そうな名前ですね」 悠介 「ああ。拳や腕の太さときたら、大木どころの騒ぎじゃない」 藍田 「腹巻き常備ってのがまたニクい演出だよな」 それでも強いアナタが好き。 さて、そろそろ皆様装備整備が終わったようだし─── 彰利 「んーじゃ……そろそろやってみる?」 悠介 「……世界大戦か。けどな、魔王がどこに居るか、知ってるのか?」 彰利 「そりゃおめぇ、あれだ。地図でも開いて怪しい場所でも調べてみりゃあ……」 と、ナビに記録したマップを開いてみると………… 彰利 「…………、なにこのホモミアゲ城っての」 悠介 「よーし喧嘩売ってんだな親友」 彰利 「いやなに秒と待たずに俺の所為にしてんの!?違いますよ!?     アタイだったらもっとこう、     ジャパニックモミアゲートとかよく解らん名前を《バゴォ!》たわば!!」 悠介 「誰もお前だったらどう名づけるかなんて訊いとらんっ!ちょっと見せてみろっ!」 そう言って、結構頭にキテるのか、 自分のマップ開けばいいのにアタイの横に並ぶダーリン。 けどアタイと悠介って結構伸長差あるんだよね、ダーリン背ェ小さめだし。 ちょっと見下ろす感じで見てみると、 屈め屈めと催促してくる顔が結構かわゆかったりします。 彰利 「どうしてこれで女じゃねーんだか。悠黄奈さんはかわゆいのにねぇ」 悠介 「なに考えてたのかよく解らんが、人の女人化に欲情するのはよせ」 彰利 「俺とお前ってさ、多分性別が対照的だったら絶対にこう……」 悠介 「ぐーたらなお前を俺が裁きで起こしてメシ作って食わせてガッコ行って妙な雰囲気     になって襲い掛かってきたお前が俺にキャベツ食わされて死んでただろうな」 彰利 「ゴメンナサイ」 だからキャベツは……ほんとキャベツだけは勘弁してください。 謝って許されるなら土下座だってします、だからほんとキャベツだけは……! 彰利 「け、けどさぁ!?悠介ってやっぱ結構背ェ低い方だしさ!     ホレ!以前とある学園祭で姫様衣装《ガシィッ!!》オワッ!?」 悠介 「あのことは忘れろ……今すぐだ」 彰利 「イ……イエッサ師匠……」 物凄い形相で腕掴まれました。 しかも視線は依然としてアタイのマップ見てるもんだから逆に怖い。 悠介 「ホモミアゲ城……本当にあるな」 彰利 「つーかさ、自分でマップ開けばよかったんじゃねーの?」 悠介 「!《カァアッ……!》……いや……まあそのなんだ、…………そうだな……」 おお、自分の失敗を素直に認めた! 逆切れしないだけ他のヤツらより大人ですね、ぶっちゃけ大人ですけど。 悠介 「と、とにかくだっ!こんなふざけた名前の城を魔王が作るわけ───」 藍田 「オアー、これエトノワール帝国跡地に建てられてるじゃん」 岡田 「説明に“魔王築、ホモとモミアゲジェノサイドパーク”って書いてあるぞ」 悠介 「壊すかっ」 彰利 「せやねっ」 とてもステキな笑顔でした。 立てた親指に漫画的アオスジがあるのは気の所為さ。 だって俺達これから世の中の役に立つために土木工事しに行くだけだもん。 もちろんお給金はハートの癒しで。 ……プライスレス。お金で買えない価値がある 藍田 「面白そうだな、俺も行っていいか?」 彰利 「つーかもうエルメテウスで行くからみんな乗りやー!     乗り遅れたヤツは置いてッかんヨ!!」 遥一郎「あ、じゃあ俺は用事があるから。頑張れ」 彰利 「テメーが居なきゃデスゲイズ除け発動出来ねーでしょーが!!」 遥一郎「何処まで勝手なんだお前はっ!     俺は魔王とかそういうのに興味がないんだよ!俺が欲しいの自由だ!」 彰利 「だったらこのジユーって生魚あげるから。時間過ぎててエラ呼吸もしてないし、     ピクリとも動かず呪いのサンマブレード並みに異臭放ってるけど」 遥一郎「全力で要らん!!」 彰利 「要らんなんて言うなよ、これあれだよ?伝説の剣だよ?     今まで誰も手にすることが出来なかった伝説の。これ握れればお前勇者よ?」 遥一郎「じゃあお前が勇者でいいから!俺はな、魔法を極めようって決めたんだよ!     頭の回転しか取り得のない俺だ……使い道はこれしかない!」 彰利 「極めたらどうすんの?……まさかこの伝説の剣の呪いを解除出来るとでも……!」 遥一郎「それは呪いじゃなくて腐ってるだけだ!どうしろっていうんだお前は!」 彰利 「ともに…………ゆきましょう?」 遥一郎「断る」 即答でした。 彰利 「魔法使わせたら最強クラスの仲間が冷たいよハルエモン」 悠介 「だーれがハルエモンか。……けど、それでいいのか?     魔王に興味がないからって、それは───」 遥一郎「……ははっ、まあそのうち解る。俺はな、どっちかっていうとあいつ側だから」 彰利 「……?あいつ側?」 遥一郎「“奇跡側”のヤツはな、本人が直接消したいって望まない限り、     そうそう記憶を飛ばしたりしないもんだってこと。     修行はすごくありがたかったよ、じゃーな、また会おう」 くつくつと笑って、ホギーは手をひらひらさせて去っていった。 ハテ……忘れないとはいったい? 彰利 「ってアレ!?スミー貴様も!?」 澄音 「え?ああううん、それは違うよ。ただ見送ろうかと思って。     僕が忘れてしまったことを彼が覚えてるのはちょっと悲しいけど、     それは彼が選んだ道だからね」 彰利 「……?わけがわからねーのですが」 澄音 「忘れたフリを続けるのも難しいってことだよ、うん。     そうでもしないと強化が出来なかったから、とも言ってたけど」 彰利 「…………」 余計に解りませんでした。 彰利 「よく解らんけど……そんじゃまあ……その……い、いく?」 悠介 「そうだな。なんとかデスゲイズに会わないように…………走るか」 藍田 「よっしゃ賛成!」 岡田 「走りか!いいぜかかってこい青春!」 ルナ 「夕陽に向かって走るの?」 彰利 「その通りだぜルナっち!よっしゃあアタイに続けぇえーーーーっ!!」 全員 『イエスマイジェネラル!!』 こうしてアタイたちはホモミアゲ城を目指して走り出しました。 合服アイテムなどは自家栽培の東の特産品を分けてもらっての突貫。 グミまでもを作れるようで、本当にありがたかった。 【ケース805:穂岸遥一郎/トラップパラダイスへようこそっ!】 ……さてと。 そんなわけでホモミアゲ城なんだが………… ご丁寧に立てられた立て札がまた物凄く腹を立たせるな。 ホモミアゲ城へようこそ、ホモ野郎!とか普通に書くなよ……。 ……っと、こんなことをしに来たんじゃなかったよな。 遥一郎「ていうか……どうして城にインターホンが……」 解らない……相変わらず彼の思考パターンは謎だらけだ。 遥一郎「中井出ー!中井出ー!?ちょっといいかー!?」 試しに声をかけてみる……が、返答なし。 それでも、スパイ作業をしてたってわけでもないが、 まあいろいろあって本名を叫べるくらいには覚えている相手を呼ぶ。 ……やはり反応なし。 遥一郎「……いっそ魔法で吹き飛ばして」 声  『ダメですっ』 遥一郎「へ?」 掌に魔力を込めた途端、頭上から声。 なんだ、と見上げてみれば……妖精? 妖精 『わ、わたし、この城の門番を任されたマール=ローレルアムラスターといいます。     この城にどんな用ですかっ?』 遥一郎「………」 妖精なのに何故シスター? ヤツの趣味だろうか。 マール『い、いけないんですよ、壊したりしちゃ……!     みんなが頑張って作ったんです、     壊したりしたらわたし、怒っちゃいますよ……っ?』 カタカタ震えながら涙目で言われてもな。 声  『あーいいいいマール。そいつは敵じゃないから』 マール『え……あ、博光さ───誰!?』 城の奥から人影! だが……誰!? 謎の仮面をつけてて、もうなにがなんだか……! 仮面の男『やあ』 遥一郎 「……中井出、だよな?あのな、お前に大事な話が───」 仮面の男『ウフフ違うよ、僕の名前は…………』 遥一郎 「……《ごくり……》…………名前は……?」 仮面の男『………』 遥一郎 「………」 仮面の男『…………《ガポリ》』 遥一郎 「へ?」 中井出 「で、話ってなに?」 遥一郎 「なにも思いつかないなら最初から怪しい出現の仕方するなよ!!」 どんな名乗りをするのかと不覚にも緊張した途端、普通に仮面を取って続きを催促された。 遥一郎「ああいやいい、今はいい……。それより、気づいてると思うけど───」 中井出「知ってたよ?うん知ってた。     だから貴様もみんなを強くするためにいろいろやってくれたんだろ?」 遥一郎「───……驚いたな。解ってたのか?俺の記憶が消えてないって」 中井出「え?マジで?」 遥一郎「カマかけただけかよ!!ええいこの男はどこまで話の腰を折ればァアアア!!」 中井出「まあハハハ、立ち話もなんだし中に入ってよ。魔法使いは歓迎するよ?     是非とも遊んでいってくれ。どうせリミットももうそろそろだし、     こんなサプライズがあったほうが面白い」 遥一郎「リミット?…………俺達がお前のことを完全に忘れるリミットか」 中井出「察しがいいなぁ。そう、僕のことをみんなが完全に忘れるリミットまであと少し。     ……いいかい?そのリミットが“ルドラ”の行動の合図だ。     俺のことは忘れてもいいから、それだけは覚えといてくれ」 遥一郎「……そっか。解った、刻んでおく」 俺の返事に頷いたのか、中井出はうん、と頷いて笑った。 踵を返すと、俺を案内するために先んじる。 中井出「しかしなんだってまたこっち側に?戦いとかには興味なさそうなのに」 遥一郎「魔王にも戦いにも興味はないよ。     俺はさ、自分が消えるかもしれないってのに、     それでも頑張れるヤツを応援したいだけなんだ。     蒼木もそうだったんだろうけど、あいつにはお前の記憶がないからな……。     命をかけてお前を信じる理由ってのが、なかったんだと思う」 中井出「…………貴様にはあるの?」 きょとんとした顔で、歩きながら振り返る。 俺?俺には─── 遥一郎「あるさ。言ったろ、消えるかもしれないヤツの応援がしたいって。     それだけで十分なんだ、俺には」 中井出「…………、ふ〜ん……」 中井出はコリ……と頬を一度掻くと、てくてくと歩いてゆく。 なんとなく……照れてるのが見て取れた。 言葉で誤魔化したりしないあたり、相当照れてるんだろう。 遥一郎「なぁ。お前はどうしてそんなにあいつらのために───」 中井出「えぇとなんかもう訂正するの面倒だから言うけど、     僕自分のためにしか動いてないからね?」 遥一郎「………………そか」 中井出「ん」 まあ、なんだ。 そいつの言葉があまりにも本音だったから、すとんと降りてしまった。 こいつは本当に自分のためにしか行動してない。 どこまでも人間だなって思ったけど─── 遥一郎「なぁ。家族からお前に残された言葉とかって、なにかあるか?」 中井出「ん?んー……自分のために誰かにやさしく出来る子になりなさい、だったかな」 遥一郎「そっか」 中井出「じーさんがさ、俺の頭撫でてくれた何日か後に言ってくれたんだよ。     聖人にはなるな、卑怯でも悪くてもいいから、自分の行動に胸を張って〜って。     ガキだったからよく解らなかったけどさ、卑怯とか悪いって言葉はまあ解った。     だから自分のためにこう、悪になろうかなーって」 遥一郎「ウソだな?」 中井出「うんウソ。家族はな〜んも残しちゃくれなかったよ。     だって、全員急死だ。残せる言葉なんてないし、別れだって誰にも言えてない。     こうして鎌になって出会えても、もう意思なんて残ってない。     けど、命がある。ばーさんが残してくれて、じーさんが生かしてくれた俺が居る。     それでいいんじゃねーかな、俺が生きてる理由なんてさ。     べつに死んだ人の分まで楽しもうだなんてこと、考えてないよ。     死んだ人に伝えられる感謝や謝罪なんてありゃしないし、     死んで詫びても死ぬだけでなにも返せない。     ……けどさ、責任感じて一生を生きるくらいなら、     周りから最低だとか殺人鬼とか言われても……せめて笑っていたいじゃないか」 遥一郎「───……」 口調はおちゃらけたものだった。 なのに、それは全て本音で─── こいつはいったいどれくらいの覚悟を以ってこの道を選んだのか。 それを、ふと一緒に背負いたくなってしまう。 けどそれは許されない。 こいつは自分のために自分だけで突っ走るだろう。 それが解ってて訊くのは…………ああ、解ってる。ヤボってもんだよな。 中井出「楽しいことが大好きだ。辛いことを忘れるためのなんかじゃなくて、     辛いことも胸にしまっておくための釣り合いとして楽しむことが。     悩んじまうヤツは俺が生きてる理由は〜とか存在価値は〜とか言うけどさ。     だったらわざわざ死ぬ理由ってなんだろな。     世の中って確かにいろんなものに縛られててつまらんことばっかだけど、     全く娯楽がないわけでもないだろ?     まったくないっていうならまあどうぞって感じだが。     俺の見てないところで誰が死のうと、関係ないことだろ?」 遥一郎「さっぱりしてるんだな」 中井出「まあまあ。これも一度話したことだしいーじゃん。     死にたいヤツは死んどけ。でもその前に、     本当に死ななきゃいけないのかをよ〜く考えてみるんだ。     その結論としてよし死のうってことになったんなら、そりゃもう自分の意思だ。     イジメられた〜とか不幸だ〜とかは関係ない、自分の死の覚悟だ。     それが決まったんなら他人が口出しすることなんてないだろ?     死ぬがいい心ゆくまで」 遥一郎「まあ、そうだな」 頷きながらも生々しい話だなぁとは思っていた。 先に死が待つ人間ってのはこれで、案外妙に悟れるのかもしれない。 ……そんな時期を体験したことが……俺にもありました。 あれも……結局は自分のためだったんだろうか。 自分の“先”をサクラに、凍弥に託すようにして消えることが。 ……ああ、自分のためだな。 俺はそれでもいいって満足の中で消えることが出来た。 だったらそれが答えなんだろう。 遥一郎「……未来、切り開けるかな」 中井出「出来るさ。なにせ、現在過去未来、あらゆる時代に、     同じ意思を共有する仲間が居るんだからな」 遥一郎「現在未来は解るが、過去はなんだよ」 中井出「なんだろね。言ってみたかっただけだから」 ケタケタと笑うと、中井出はスキップでもしそうな風情で前を歩き、鼻歌を歌い始めた。 中井出「一応みんな強くなったし、ここで俺を倒せれば大丈夫なんじゃない?     一回だけならジュノーンの撃退に成功してるし、     それ以降も武具の強化は怠っておりません。     ええ、逆に言うならここで俺に負けるようじゃあ未来は…………」 遥一郎「シビアな話だな……」 中井出「シビアだよねー。ま、なんにせよ。───ようこそ、エーテルファミリーへ。     たとえ貴様がスパイだろうが僕は貴様を歓迎しよう。     何故って───その方が面白いからだ!!」 いつの間に到着していたのか、ふとあたりを見渡せばそこは自然要塞。 ……あれ?どうやって来たんだっけ。 ………………まあ、いいか。 遥一郎「ああ、よろしく。俺も楽しみたいと思ってる」 中井出「よろしい!では早速勇者どもの歓迎パーティーだぜェエエエ!!」 総員 『ニャーーーーーッ!!!』 中井出の掛け声とともに、待機していた猫たちが叫ぶ! 要塞の上でエイオーと叫ぶ亜人族たちを見上げ、ふと気になって視線を移してみると、 虚空にあるのは妙な映像。 中井出「ミクー!監視は如何にー!?」 ミク 『オールグリーンですマスター!勇者一行は徒歩できている様子です!』 中井出「うむそうか!では───これよりオペラツィォン・トラップバトルを開始する!」 総員 『ハワァアアーーーーーーーーッ!!!』 遥一郎「………」 休む暇もなかった。 けど、いいか。 今まで散々と敵に回ってたんだ、 味方に回ったからには即戦力にでもなんにでもなってやるさ───! 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