───冒険の書324/番長のく頃に───
【ケース806:弦月彰利/番長ロマンスホリデー】 ざっ、と……その場に辿り着いて最初に気になったのは妙な音楽。 どうやら城の中から鳴っているらしく、 外まで聞こえてきているということは相当な音量なんだろうと思わせる。 ただ、どこまでも魔王城とは無縁の音楽だな、とは思った。 外観は完全に自然が密集した城。 草木の蔓が絡まりあって出来た姿はもはや芸術だ。 それがジュノーンの城、アーベイング城によく似ていて、 それだけの大きさがしっかりとあった。 ただね、やっぱりね……この音楽はね…… 藍田 「……ありゃ?これってサクラ大戦の李紅蘭のBGMじゃないか?」 岡田 「だよな?」 丘野 「また随分外観とは似合わんBGMでござるな」 来流美「RPGの中でも、主人公たちが入るダンジョンでは     こうやって音楽が流れてるんだ〜とか言いたいのかしら」 御手洗「さすがにそれはどうかと思うんだけど」 イントロから始まったBGMがやがて歌になると、なんとも力が抜けてくる。 しかも城の前に立てられた立て札が余計に腹を立たせて─── 彰利 「なんつーかもうホモとか言われると悲しくなりますな。よっしゃあブッ潰すぜ!」 藍田 「外から魔法とかでブチ壊すのか?」 彰利 「麻衣香ネーサンのメテオがあれば出来んこともねーけど、やっぱ攻略っしょ!     これ書いたヤツを直々に殴らにゃ気がすまねー!」 悠介 「よっしゃあよく言った!行くぞ彰利!」 彰利 「オウヨ!!───つーか本当になんとかならねぇ!?この歌!」 藍田 「東京的休日だっけ、李紅蘭の歌」 岡田 「東京ロマンスホリデーだな」 歌っているのはミクだろうね、ちょほいと声が高いよ? どうしてこの歌を歌っているのかは本当に、究極に解らん。 内海 「えっへへー将軍?わたしこの歌得意だよ〜?」 彰利 「おやウッちゃん、確かにキミの声って玉乃腰艶子って声だけどさ」 内海 「お願いだからその喩えはやめて……。せめて森里妹にしてよ……」 彰利 「内海菜子……略して玉乃腰艶子!」 内海 「増えてるでしょそれじゃ!」 岡田 「ってオイオイ!なんかヘンだぞこの歌!ば……え!?」 悠介 「ヘンって……聴いたことがないから解らんが、     なにがヘンなん───あ、いやすまん、なんか解った」 聴いてみて明らかにおかしいと感じるところ。 それは番長だった。 歌声 『ば〜〜んちょ〜〜♪希望〜の街〜〜〜〜♪     ば〜〜んちょ〜ぅ♪自由の都〜〜〜〜♪     ば〜〜〜んちょ〜〜ぉ♪モダン〜の風〜〜〜〜♪     う〜〜〜うぅうぅうう〜う〜〜〜番長ウォーアイニー!     ……それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜〜ぅ♪』 …………、ミクボイスで奏でられる歌は、物凄く異常な歌だった。 番長?何故……ば……え?番長?いやほんとどうしてだ? い、いや待て……これは───! これはいつか、アタイが誰かと作った─── 彰利 「ぬ、ぬうこれは……!番長的休日……!」 悠介 「し、知っているのか雷電……!」 彰利 「う、うむ……伝説だとばかり思っていたが、そもそも伝え説くと書いて伝説……!     し、史実があるのなら真実が含まれているのもう、頷けるというもの……!」  ◆番長的休日───ばんちょうてききゅうじつ  かつて少年サンデーで東京番長という漫画があった。  誰かが誰かを殴ると必ずといっていいほど“ゴッ”と鳴り、  相手が回転することから回転番長ともどっかで呼ばれていたとかいないとか。  ようするに東京的休日だから東京番長からもじって番長的休日。  東京的休日を知っている人は“東京”を“番長”に変えて歌ってみよう。  *神冥書房刊:『クロスハンター、その青春』より ……。 悠介 「それ、お前が作ったとかじゃなく?」 彰利 「いや、俺が作った」 岡田 「クロスハンター全然関係ねーな……なぁ、行かないなら俺達先行くぞ?」 彰利 「おお行く行く。とっとと攻略して魔王打っ潰すぜ〜〜〜〜っ!!     レベルアップや武具強化によってさらに進化したアタイらの力!     彼奴に思い知らせてやるのよ!!」 もはやアタイたちは以前までのアタイたちじゃあ……ねぇぜ! その意気込みを以って、 アタイたちは魔王城(ホモミアゲとは言いたくない)へと乗り込んだ。 ───……。 ……。 ザムゥ〜〜〜……と、恐らく城の中心までまっすぐ歩いた頃だろうか。 彰利 「グムー、わ、分かれ道だ〜〜〜〜〜〜〜っ」 多少広めの広間に、幾つ者違った色の通路が存在する妙な場所に辿り着いた。 岡田 「ど、どちらへ進めば〜〜〜〜〜〜〜っ」 藍田 「ヌ、ヌヌー!な、なにやら通り道ごとに妙な色がつ、ついている〜〜〜〜っ!」 悠介 「これは……」 ゼット「ああ。大方それぞれの属性を持った者が通らなければならない道だろう。     赤は火、茶は地といった感じにだ」 彰利 「ほへー………」 その割に氷と元素と然がねーのね。 然は確か魔王だったし、氷も悠黄奈さんだから解るっちゃ解るけど。 元素がねーのは何故に?ホギーが来ないことを予測してたってこと? …………アレ?なんかヘンですよ? 悠介 「じゃあ……分かれるか。それぞれ自分の属性に合った道を進んでくれ。     俺は雷だから───紫だな」 彰利 「おっとと、んじゃあアタイは黒やね」 ライン「こちらは茶か」 セレス「青、ですね」 藍田 「俺が赤で、と」 夜華 「わたしは緑……か?」 凍弥 「この場合、俺は白でいいのか?」 ルナ 「じゃあわたしは黄色ね」 みさお「わたしが白黒で……」 ゼノ 「我は深紅か」 ゼット「俺の道はこの無色だろうな」 彰利 「無職だけに無色……ブフゥッ!《バゴォ!》ロルチェ!」 ゼット「黙れ」 いや黙れって……なにも殴らんでも。 岡田 「ほんじゃ彰利も殴られたことだし、     あとのヤツは宝玉の属性で通る道決めりゃいいわけだ」 彰利 「せやね……岡田くんは?」 岡田 「速さが重要だから風にしてある。だから緑だな」 田辺 「俺ゃ火力重視だから火だ」 一応皆様、武具鍛えてもらってる内に、 もう一度マイケルジジーソンに宝玉の属性を変えてもらっとった筈。 そうなるとここでかなり最終的な属性が絞られる筈だ。 …………なんて思ってたんだが、 彰利 「うわー……」 悠介 「見事に割れたな……」 魔法使いは水、戦士は火と、一気に割れた。 防御力のために地を選ぶヤツなんざ誰も居やしねー……みんな攻撃大好きっ子だからか。 丘野 「攻撃こそ最大の防御でござるよ!───風でござるがね!」 彰利 「幸せそうでいいね、きみたち」 ともあれ決まった。 アタイらはゴクリと喉を鳴らし、それぞれの道を歩み始める。 さよならは言わないぜ!とか、 じゃあなしみったれたじいさん!とかよく解らんことを口にして。 ……一応、麻衣香ネーサンには外で待機してもらい、 アタイたちから連絡があったらメテオストライクしてもらう方向で。 【ケース807:晦悠介/ふぅ、(らい)の試練】 暗い道を通り、また無駄に広い城を歩く。 清水 「後ろは任せておけ!いつでも刺せる!」 悠介 「刺すなっ!」 お供はひとり雷属性を選んでいた清水。 ライダーだから雷があった方がカッコイイ、というのが彼の説だ。 ロボライダーになった時、その方がイイんだとか。 清水 「しかしこう……なんだな。通路を歩いてると刃牙思い出すなぁ。     所詮は……スポーツマンか……とか言いたくなるような」 悠介 「誰に対して言いたいのかよく解らん」 清水 「それもそうだ」 色のついた通路を抜けると、そこはまた面倒くさそうな構造になっている。 扉がいくつもあり、 溜め息を吐きながら片っ端から開けてみようと一歩を踏み出すと《カチッ》─── 悠介 「……カチ?《ゾクシュッ!》いだぁーーーーーーっ!!?」 清水 「フオオッ!?晦!?」 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜ぅ♪』 突然背中に痛みが! 何事かと手を後ろに回してみれば、なんというか馴染みの深い感触。 柄を掴んで抜き去ってみれば、それは包丁だった。 清水 「…………ミシシッピー?」 悠介 「いや……ゲームじゃなかったら死んでるぞ、これ……」 包丁を手に振り向いてみれば、 壁に小さな穴が空いていて……どうやらこの包丁はそこから飛んできたらしい。 悠介 「トラップか……やってくれるな、魔王」 清水 「ゲームにしちゃあちゃちなトラップな気もするけど」 ……というかな、さっきの見透かしたような番長ソングはなんだったんだ? ああいや、気にしないほうが良さそうだ。 歩くにも慎重に、床をよく見て《ピピッ》───ピピ? 悠介 「《ゾグシュ!!》いだぁーーーーーーーっ!!」 清水 「おわぁっ!?───せ、せんせい!」 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 謎の音が聞こえてくるや、再び飛んでくる包丁。 清水 「せいせいだいじょうぶですか!なんということだ、     せんせいがだれかのしかけにひっかかってしんでしまうとは……     あぁもしさいしょからやりなおすことができれば」 悠介 「やかましい!」 清水 「い、いや、場を和ませようと……」 包丁を抜き取って辺りを見てみれば、壁、というか木の蔓の隙間に小さな機械が。 くっはぁああ……!センサーまでついてるのかよこのハイテク城はァアア……!!! 悠介 「だったら───分析、開始……!」 見えている景色を文字の羅列に変換。 その目で機械と自然の区別をつけ、いざ一歩前へ《スカッ》─── 悠介 「うぁー…………」 清水 「晦ぃいいいいーーーーーーっ!!!?」 ……出た途端、地面の蔓が横に動いて足場が無くなり、俺は落下した。 相当な高さから落下し、頭を切り替えて風でも創造しよう、と判断。 ───した途端にドグシャアと落下。 ……した途端に転移装置でもあったのか、清水が居る部屋の入り口へと戻される。 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 悠介 「…………《ひくくっ……》」 なんとなく、この歌が選ばれた理由が解った気がした。 普通なら気にならないだろうが、歌い方がねちっこい上に番長がむかつく。 東京、だったら絶対に気にならなかった。番長がむかつく。 しかも今まで普通に歌ってたのに、罠にかかるとわざわざ“それが番長”って歌いやがる。 清水 「こ、このゆかはだれかのわなだったんだ!     このたかさからおちたのではせんせいは……     あぁもしさいしょからやりなおすことができればなんんとかなるのに……」 悠介 「無駄に細かく再現するなよ!“なんんとか”はそっとしといてやれ!」 清水 「《ビビクゥッ!》ひょぎゃわぉう!?つつつ晦!?あれ!?今下に落ちて……」 悠介 「下に転移装置か転移魔法が仕掛けられてた……気づいたら入り口に立ってたよ」 清水 「リトライ機能まで搭載か……ちょっとしたゼルダだな」 悠介 「ゼルダだったらどれだけいいことか……。進んでみろ、清水。よ〜く解るから」 清水 「お、言うねぇ。だったら俺は───スピードで勝負!」 清水がステータスをAGIに託し、一気に駆けゴバァン!! 清水 「あわば!《ゾグシュ!!》うぁー……」 悠介 「ああ……」 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 走り出した途端に、スピードセンサーでもあるのか地面から硬い木が生え、 虚を突かれた清水は顔面から激突……した途端に後ろからナイフが。 ミシシッピーがごとく、うぁー……とか細く呟くと、本気で痛がった。 ……VIT0だもんな、痛いよそれは。 清水 「怖ェエ……ここの製作者、俺達の行動を読んでやがる……!」 悠介 「それは考えすぎだろ。     とにかく、これだけかかればもう罠なんて《スカッ》うぁー……」 清水 「せんせい!」 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 悠介 「《マジュンッ》うるせえ!!」 穴に落ちて腰を打って転移させられて怒鳴った。 というかちょっと待て!一度引っかかった罠までかかるのかこれ! 清水 「一度かかったやつでも作動するんだな、これ……。     え、ええと……?あそこがナイフでこっちもナイフで、そこが包丁で……」 悠介 「記憶力なら任せてくれ。…………よし、ルートはこっち側だ。     まずこっち側に《バイィンッ!》とわっ!?《スカッ》うぁー……」 清水 「せんせい!」 壁伝いに歩いたら、壁から強力なスプリングが飛び出て吹き飛ばされ、 勢いが弱まった頃、着地した場所は落とし穴の罠があってやはり落下した。 悠介 「《マジュンッ》いぢぢぢ……!地味に痛いぞこれ……!」 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 悠介 「うるせぇええーーーーーーーーっ!!!!     ああもういい!わざわざ歩くからいけないんだよ!     機械センサーの穴を塞ぐ強化ガラスが出ます!弾けろ!!」 まずはセンサーを封じる! 途端にナイフや包丁が飛び出しまくってるのか、ガラスの先でカンカンと鳴るが、 そんなものは見ずに風を創造して一気に扉までを飛ワシャーーーン!! 悠介 「ほぴっ!?《スカッ》うぁー……」 清水 「せんせい!」 飛んだ途端に天井からタライが落下。 虚を突かれて驚いた俺は集中を乱し、 風を消してしまった時点で…………落とし穴の床に落下。 悠介 「《マジュンッ》こ、ここここのやろっ……!」 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 悠介 「ギィイイーーーーーーーッ!!!!」 清水 「い、いや、晦……?一度落ち着いたほうが───」 悠介 「これが落ち着いてられるかぁっ!!     天上と床を塞ぐ強化ガラスが出ます!弾けろ!!」 入り口とドア以外の部分を全てガラスで封殺! 堂々とガラス貼りの床を歩き、ドアノブを掴んで《ニチャア……》 悠介 「………」 手にニチャリとした感触。 ドアノブを離して見てみれば、手にべっとりとついたソレは、よく噛まれたガムだった。 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 悠介 「ごっ……ごぉおおおおおお…………!!!!」 清水 「な、なんだ?どした?……うあっ、ガムかこれ。ドアノブにガムって……」 パッと見じゃ解らないように、ドアノブの下の方に設置されていたのだ。 握ればそりゃあ、べっとりといく。 悠介 「鬼ィェエエエエエエエエエッ!!!」 キェエと叫びつつドアをドバーンと解放!した途端に頭にザクリとナイフが。 悠介 「うぁー……」 清水 「せんせい!」 悠介 「じゃなくて!」 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 悠介 「黙れえぇえええっ!!」 念のためVITに全てを振っていたことで、 頭に刺さろうがダメージ的にはどうってことなかった。 なんてことはなく、とても痛い。 皮膚を傷つけただけで済んだソレをゴシャーン!と床に叩き付け、 怒りを露にのっしのっしとドアの向こうへと《スカッ》 悠介 「うぁー……」 清水 「せんせい!」 落とし穴だった。 いや……いや、さすがにな、悠介?もう学習しよう。 もう解った、さすがにもう解ったよ俺。 この道はトラップ地獄だったんだ。 だったらさ、もうこの先の道は全部ガラスで埋めてしまおう。 な? 悠介 「《マジュンッ》我極めたり……」 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 悠介 「うるせぇえーーーーーーっ!!!」 清水 「怒りかたを極めたのか?」 悠介 「違うわ!!───強化ガラスが出ます!」  がしゃーーん!! 悠介 「───へっ?」 強化ガラスを創造。……した途端に、飛んできた剣閃みたいなものに破壊される。  ピピンッ♪《この城では、同じものの創造は一回限りとさせていただいております》 そしてナビに届くメッセージ。 ……マテ。 じゃあ進む方法がなくなったら、それこそ罠を掻い潜っていくしかないってことか? 悠介 「も……木製の壁が出ます」  ポムゴシャア!! 悠介 「うおぉわっ!?」 清水 「ひぃっ!?ななななんだこりゃあーーーっ!!     ナイフが木製の壁ブチ壊したぁっ!どんだけの勢いで飛び出てんだこれ!!」  ピピンッ♪《なお、木製などの自然材料のものは通用しません》 悠介 「ちょっ……ちょっと待てぇえーーーーーっ!!!」 いくらなんでもそれはっ……! この世界がどれだけ自然物で構築されてるのか解ってて言ってるのかコイツは!  ピピンッ♪《ちなみにこの城のどこかに月の欠片があります。頑張れ》 悠介 「オィイイイイーーーーーーーッ!!!」 そりゃアレか!? 俺に探せって言ってるのか!? この面倒な場所で探せっていってるのか!? 悠介 「………」 清水 「つ……晦……?お、おいー……?」 悠介 「ふっ……ふ、ふふ……ふふふっ……!上ォオオオ等ォだこの野郎ォッ!!     見てやがれよ魔王!ここにある宝全部手に入れて絶対にてめぇをブチノメす!     主に私怨で!むしろ私怨だ!!」 いくぞ俺……!今までの経験で磨いた勘を総動員しろ! …………───、───! 悠介 「ここ、そこ、そして───!」 疾駆する! 速度が出過ぎないよう注意しながら、それでも前へ、前へ───! 勘を頼りに足を捌き、やがてもうひとつの扉へと……辿り着いた! 悠介 「よしっ!どうだこのヤ《ガチャバインッ!スカッ》うぁー……」 清水 「せんせい!」 喜びと興奮のあまり、勢いよく扉を開けた先には強力なスプリング。 押し戻された俺はやっぱり落とし穴の床へと降り立ち……落下。 神様……俺は…… 声  『それがば〜〜〜んちょ〜〜〜〜〜う♪』 悠介 「《マジュンッ》ちっ……ちぃいいっくしょおおおおおおおっ!!!!」 俺は本当に馬鹿なんでしょうか……。 【ケース808:弦月彰利/最終兵器彼氏彼女の事情】 プスプスプスプス…… 彰利 「カカカカカ……!!」 体から煙をあげつつ爆心地から脱出。 なんなんでしょうねこの城は……!トラップだらけでひと部屋抜けるだけで大変ですよ。 彰利 「転移すると次元斬で斬られるし、     闇に紛れて影から影へと移動しようとすると、     その途中に光を直射されて消されそうになるし……」 魔王め……なんだかアタイらの行動全てを読んでやがるぜ? これは周到に用意された罠だったんだ。 やっぱり最初っから魔法でブチ壊しておくべきだったのかもねえ……そんなわけで。 彰利 「…………あ、悠介?アタイ彰利。そっちどう?……え?ミシシッピー?     番長が腹が立つのは解るけど……いや、アタイのところにゃ主に爆弾が……ウィ。     ほんでね?なんかもうメテオで破壊してもらおうと思うんだけども。     うん、うん……OK、では麻衣香ネーサンに連絡を。え?もうした?     き、キサマ!独断先行は───」  ドガァアンッ!!! …………。 彰利 「……え?なに?」 なにやら強烈な音と地震。 どうやら外っぽいけど……あれ?もしかして麻衣香ネーサン? tell:綾瀬麻衣香、と…… 彰利 「……………………あれ出ねぇ!!あれちょっ……麻衣香ネーサン!?     あの!?《ブッ》あ、繋がった。麻衣香ネーサン?どげんとした?」 声  『…………魔法撃とうとしたら、     空から次元衛星砲が降りてきた……。今獣人神父のところ……』 彰利 「ゲエッ……それってもしかして……」 声  『うん……魔法カウンターみたい……。     城を魔法で攻撃しようとしたら発動したから、多分……』 彰利 「………」 どこまでも用意周到ですね、魔王サマ!? だが俺達は負けねぇぜ!? 必ずテメェを仏血斬離(ぶっちぎり)にしてヤッかんヨ!? そこんとこヨロシク!? ……なぜ疑問系なのかはそれらしい漫画の作者に訊いてみてください。 ワシャ知らんよ? 彰利 「グ、グウウ……これはまいったぜ〜〜〜〜〜〜っ」 やっぱ爆発掻い潜って行くしかねーよね。 ……うう、やだなぁ。 彰利 「よ、よし」 覚悟を決めて参りま───あれ? 彰利 「………」 ふと、壁に立てかけてある物体を発見。 それは……竹の槍だった。 彰利 「───ああ!」 なるほど!爆発といえばあれか! それに気づいたアタイは竹の槍をチャキリと手に取り、腰を低くして駆け出した!! 彰利 「うおおおおおおおおお!!     どんどんきやがれイワンめ!地獄への道連れだ!!」 床がバゴォオオンボッコォオオンと爆発する中で、 竹の槍を装備していると何故か爆発を受けない! やはりだ……野郎め、地界の漫画を知り尽くしてやがる! ということはあと数歩で─── 彰利 「そいやーーーっ!!」 一定距離を走ると跳躍! するとあと一歩ってところの床が爆発し、ガラスのハートをヒヤリとさせた。 彰利 「ふぅ、危なかっただぜ」 扉の前にスチャリと華麗に下りると、わざとらしく顎を腕で拭っての一言。 だぜ、に執着する意味?そげなもんはありません。 そんなわけでガチャッと避ける!! 彰利 「………………あれ?」 どうせまた開けた途端にスプリングでも出てくると思ったのに……なにもないとは珍しい。 と見せかけて時間差!…………あれ? 彰利 「…………ああ!ここ正解か!」 なぁんだだったらと見せかけて避ける! …………やっぱり来ない。 えーと……未来視!……………………なにも起こってませんな。 じゃGO!!バッシャアッ!! 彰利 「《ジュウウウウ!!》ギャアアアアアアアアアム!!!!」 突如として天井から液体!しかも硫酸!?硫酸かこれ! 迂闊!前ばかり見ていたもんだからこの仕掛けに気づけなかった! しかも仕掛けが発動した途端に扉の先の部屋に白スーツで鼻の尖ったグラサン男が現れ、 こっちを見てカタカタカタカタカタ!と肩を揺らしてやがる! こ、これは……スパイ&スパイ!かつて過去の時代にフレイア嬢にもやったあの……! 彰利 「お、おのれぇええ!この、俺がぁああああ!!《ジュウウウウ……!!》」 溶ける……溶けてゆく! この俺がこんな志半ばでぇえええええ!! ………………。 …………………………。 彰利 「………………。さて」 服だけが溶けやがった。 いや……いいんだけどね?アタイの装備って黒だしさ、出そうと思えば出せるから。 それよりも《ビムンッ!》───へ? 桐生 「《どすっ!》ひゃんっ!……あ、いたた……!     あ、あれ?ここ───あ、アッく───《ぴしり》」 彰利 「ゲッ……!」 野郎……やりやがった。 この仕掛けはこれが狙いか! お、おのれぇええ!!絶対にゆるさんぞ魔王めぇえええ!! ───って怒りに拳を握ってる場合じゃねィェーーーーッ!!! 桐生 「きっ……きゃーーーーーーっ!!」 彰利 「キャーーーッ!!?キャーーーーッ!!!」 桐生 「きゃーーーっ!!きゃーーーっ!!?」 彰利 「キャーーーッ!きあーーーーっ!!」 桐生 「きゃぁああああっ!!きゃぁあああっ!!!」 彰利 「きゃあああああああっ!!!!」 その後私は真っ赤なお顔のキリュっちに裸族のままボコボコにされた。 その際に流れ続けた番長ロマンスホリデーが怒りを誘発させ、 僕は必ず魔王をこの手でブチノメしてやろうと心に誓ったのです。 ……ええ、しっかりスマタノモロチンの状態で正座させられましたさ。 【ケース809:簾翁みさお/突き進むが吉】 はぁ〜〜〜あああ…… みさお「うう……力使いすぎました……補給が間に合いません……」 冥月刀を持っている限り、能力には困らない筈なのに。 どういう仕掛けの量なんですかここは……次から次へと……。 みさお「ここで……最後ですよね……」 破壊しつくした横の扉の群を眺める。 一応、注意しながら開けてみると…………中にはひとつの宝箱。 いかにも胡散臭い……と思うものの、 冒険者として宝箱の魅力には勝てないのがサガといいますか。 未来視……異常なし。捏造未来…………異常なし。 サウザンドドラゴンの時のように捏造の方も調べておかないと、 大変なことになりますからね。 それじゃあ…… みさお「あ……わあっ」 小さめの宝箱を開けた途端、ふわっとやさしく、甘い香りが漂った。 思わずその場に足を止めてしまうくらいそれはやさしくて、 この場にずっと居たいような─── みさお「はっ!?まさかこの隙に罠が発動して───……………………きませんね」 …………なんなんでしょうかこれは。 さっきまでの慌しさとは裏腹に、全然、とても可愛らしい仕掛けです。 宝箱の中にはなにもないようですけど…………あれ? 外観の割に中が随分と高いような……もしかしてこれ、上げ底ですか? え、と……ここをこうして───パカリ。 みさお「あ、やっぱり……ってまさかここに罠が!………………わあっ……!」 上げ底を開けると、さらにやさしい香りが。 うう、どう喩えましょうか……嗅いでいるだけで幸せになれるような……! う、動きたくありません……───ハッ!まさか今度こそ! ………………なにもきませんね。 みさお「……あ、月の欠片です」 宝箱の上げ底の下に月の欠片がひとつ。 それ以降は、どう分解してみても欠片のひとつも見つからない。 そのうちに香りは消えて、わたしは心身ともにリラックスしたまま、 箱の後方にあった扉を開けて……落下したタライの直撃を頭に受け、転倒した。 みさお「ほああああ……!!な、なるほど……!     幸せからドン底に落とされたほうが体にも心にもキクというわけですね……!」 ズキズキと痛む頭を撫でつつ、よいしょと起き上がって扉の先を見やる。 ……と、薄暗いその先の中心には魔法陣。 白黒の、“時の色”を表わした砂嵐のような色の魔法陣が存在していた。 多分……各通路のさきにもこんな部屋があって、そこにみんなが集まると…… みさお「なるほど……それじゃあわたしはここで待っていれば《スカッ》うぁー……」 魔法陣に足を踏み入れた途端に足場が無くなって、わたしは落下した。 扉からでは暗くて見えなかったけど、中心まで来てようやく見えた正面の壁には扉。 みさお(……なるほど、謀られたというわけです《ドグシャア!》かぁぅっ!?) 自分を反省しながら転移しようとした矢先に尻餅。 ……を、ついた途端に入り口へと転移させられて、 わたしはおしりをさすりながら涙目で部屋を見る。 ……魔法陣はすっかり消えていた。 みさお「もっ……もーーーーっ!!」 なんだか悲しくなって突撃。 正面の扉へと走って《スカッ》うぁー……───《ドグシャアッ!!》 みさお「《ビジュンッ》…………」 魔法陣はなくなっても、落とし穴はあったみたいでした……。 あの……わたし泣いてもいいでしょうか……。 みさお「………」 再び痛むおしりを撫でさすりながら、 とぼとぼと扉の前まで歩いて、かちゃりとドアを開ける。 なにも起こらずにホッとするさなかで、目の前の景色に唖然。 あの黒い人『ビ○ーズブートキャンプへようこそ!大丈夫!キミなら出来《バタン》』 …………。 閉めた。 ええと……他の行き道は……………………どうしましょう、無いです。 みさお「………」 ガチャリ。 あの黒い人『ビ○ーズブ《バタン》』 ……閉めた。 あの……どうしてあの教官が居るんでしょうか。 …………ガチャリ。 あの黒い人『ビ○ーズブートキャンプへようこそ!大丈夫!キミなら出来る!       俺の言う通りにエクササイズをすれば必ず痩せられる!人生も変わる!       さあ!キミも一緒にブートキャンプトレーニングだ!       みんな!これは何トレ!?』 みんな  『筋トレェ〜〜〜ィ!』 あの黒い人『え!?なんだって!?』 みんな  『筋トレェ〜〜〜ィ!』 あの黒い人『オォオッホホホォ〜〜ゥ、ノーノーノー……違うだろ!       ブートキャンプトレーニングだろ!これは何トレ!?』 みんな  『筋トレェ〜〜〜ィ!』 あの黒い人『いい加減にしろてめぇら!!』 みんな  『うるせぇ!解ってるならわざわざ訊くんじゃねぇ!       こちとらてめぇが歩き回ってる最中もずっと動いてて疲れてんだよハゲ!!』 あの黒い人『なんだとてめぇら!トゥーモアセッ!回転数あげて!イッツダボゴー!!』 みんな  『てめぇいっつもトゥーモアとかワンモアとか言って、       三回以上やらせてんじゃねぇか!御託なげーんだよハゲ!!       言う通りにエクササイズもなにもてめーが守らねーでどーすんだハゲ!』 あの黒い人『うるせぇこっちの歳も考えろてめぇら!!』 …………。 勝手に喧嘩を始めた彼らを無視して、わたしはその先にあるであろう扉を……………… 扉、を………………うわぁああ無いですぅううう!! シェリー 『あらアナタ?       ここではブートキャンプを全力でこなさないと次の道が開けないのよ?』 みさお  「なんでですか!?いっつも損な役回りのシェリーさん!」 シェリー 『それはパパがそう決めたからなの。       ほんといっつも話が始まるとシェリーを見てみよう、とか……       勘弁してほしいわよね……』 みさお  「あ……やっぱり自覚ありましたか」 シェリー 『男に構うことがまずないのよね……。       大体ブートキャンプって軍隊式筋肉トレーニングでしょ?       筋トレって返してなにが悪いのよ、ねぇ?』 みさお  「それ言ったら可哀想ですよ……」 あの黒い人『休んでもいい!だが諦めるな!そこのキミもさあレッツトライ!』 みさお  「えぇ!?い、いいいいいですよわたしは!だ、だって胴着ですし!」 わたしの着ているものは紅葉刀閃流胴着だ。 こんなものでさすがにブートキャンプは無理……というかそもそもしたくないです。 あの黒い人『大丈夫!キミなら出来る!』 みさお  「なにを根拠に言ってるんですかなにを!!」 あの黒い人『自分に打ち勝つんだ!諦めたらそこで終わりだ!       さあ最初から!まずは体に血を巡らせる!カーヌェーラァッ!』 みさお  「カネラ!?」 シェリー 『カウントしてくれ、って言いたいのよ。はい、じゃあ呼吸合わせて。       ワァン、トゥー、スリィー、ファォーゥ』 みさお  「ふぁ、ファァイ、スィックス、スェーヴン、エェィ……」 シェリー 『出来るじゃない、じゃ、続けて』 みさお  「そ、そうですか、出来てますか。ええと…………」 …………。 ……。 あの黒い人『今回の訓練はまさに“戦い”だった。これは全て基礎だ。       次の応用編へとつなぐための体作りだ。       それじゃあ次の機会にまた会おう。       ファァイブ、フォォーゥ、スリィー、トゥー、ワァン!』 全員   『ヴィィクトルィーーーッ!!       ハワァーーーーーーーッ!!!!』 シェリー 『ご苦労さまミサオ!』 みさお  「はぁ、はっ……はい!やりまし───ハーーーーーーッ!!?」 な、なにを最後まで真面目にやってますかわたしーーーーっ!! こっ……ここここんなところで50分も時間を無駄に……! 扉!扉は!? あの黒い人『おぉ〜〜っとぉ、ン〜ハハハァ〜ゥ、最後の最後で協調を乱す者を発見だ。       みんな!最初からだ!まだ扉を開かれないぞ!』 みんな  『イエッサァーーーゥッ!!!』 みさお  「えぇえええええーーーーーーーーっ!!?」 あの黒い人『さあ次は応用編だ!帽子を取っておこう!さあキミも!』 みさお  「たぁあすけてぇえええええーーーーーーーーーーっ!!!!!」 その後わたしは、どういう原理か疲れがちっとも回復しない空間で、 延々とブートキャンプをするハメになりました。 ───……。 ……。 がちゃっ……ばたんっ…… みさお「ううぅ……やっと……やっと開きましたぁあ……」 ようやく認められた時には既に最終プログラム卒業レベル。 常人並みに能力を低下させられていたのか、 もう体中ガタガタで、しかも体が汗くさいです。 どこかにせめて体を拭くだけでいいですので水とタオルがあれば─── みさお「………」 ……泉……というか、沼ならありました。 ただし、なんか暗くて手が生えてますけど。 どこのマドハンドですかあれは。 みさお「えぇっと…………はぁ」 困ったことに道がマドハン(どう)しかありません。 みさお「月聖力……」 斬冥叢魔刃をしゃらんと振るって沼の淵に突き立てる。 と、声が出るわけでもないけど、 表現的にはギャーが似合いそうな暴れ方をしたのちに沼が浄化。 綺麗な泉となって、その場に残された。 みさお「……あ」 そうです。 あとはタオルがあれば───と見渡してみてもあるわけもない。 バックパックを漁ってみても、そんなものは───あ。 みさお「…………面倒ですしこのまま」 どっぱーんと泉(というか深い水溜り)に身を投じて、泳ぎ回って汗を拭うように流す。 そして反対側の通路の先へと上がると、体を月然力・火で乾かしていざ出発。 最初からこうすればよかったんですよね……月然力で水も出せるわけですし。 みさお「うんっ、気分もすっかりサワヤカですっ!このまま《スカッ》うぁー……」 声  『それがば〜〜〜んちょぉぉお〜〜〜〜ぅ♪』 落ちた。 もういやです……もう帰りたいです父さま……。 Next Menu back