───冒険の書331/VS低反発針金野郎───
【ケース820:弦月彰利/低反発針金野郎】 ミル・某人間……名をジークン。 空界にて超下等生物ラットンとの縄張り争いを続けていた不死身生物である。 不死身だけどあまりに弱すぎるために、 いつまで経ってもラットンに勝てないやっぱり超下等生物・某人間種。 だがその中でもジークンは別格であり、世界に知られるいくつかの理力─── 創造、器詠、次元のうちの“次元の理力”(ディメンションフォース)を操る。 時間移動はどうかは解らねーけど、転移を始めとする次元操作が可能であり、 それが、充満するマナで能力実行が永久化しようものなら───こうなるわけだ。  ビジュジュジュジュジュジュ!!!  キュボドガボガドガドガガガガォオオンッ!!!! 全員 『ギャアアーーーーーーーッ!!!!』 はっきり言って強ぇこいつ!! 転移しまくって目からビーム撃ちまくってくる! しかもそのビームが痛ぇ痛ぇ!! 悠介 『分析───そこだ!』  ヒュフォズバシャアッ!! ニークン『ギエエエエーーーーーーーーッ!!!』 悠介  『うぉおわっ!?ニ、ニーク《ドガァン!》どわぁあああっ!!!』 捉えたと思えば身代わりでニークンがズタボロになり、その後ろからビームが飛んでくる。 ていうかあの小さい姿でギエエーとか言われると逆に本気で驚く。 しかもジークンが撃ってくるビーム、 通称アンリミテッドストリーム(月清の矢とは違う)は直撃しても防御しても、 被弾すると必ず吹き飛ばされる特性を持っている。 こうね?どれだけ踏ん張ってもドカーンって弾き飛ばされるの。 だから背中に直撃受けた悠介なんて、 バキベキゴロゴロズシャーーーアーーーッ!って吹き飛んでる最中さ。 悠介 『ぶぺっ!ぶっは!土食った……!だぁあくっそ戦い辛いっ!!!』 それでもきちんとレベルが上がるんだから面白いよね。 攻撃当てられないからなかなかストレス溜まって、 コノヤロウって自棄になって突っ込めば突っ込むほど、その闘争本能がレベルを上げる。 ナルホロ、よく出来たシステムだ。 特にふざけた相手が敵だと、熱くなりやすい悠介とかゼットとかゼノには丁度いい。 ゼット『くぅうおおおおおっ!!』  ジュフォォンッ!! ジークン『ギョーーッギョッギョッギョッ!!無駄……無駄ザマス!      適当に振るっていては我を斬ることなど不可能!』 悠介  『今ァ!!』  ヒュゴザゴォンッ!! ニークン『キャーーーッ!!?』 悠介  『キャーーーッ!!?』 藍田  『ちょっと待てぇええ!今の今までジークンだっただろ!』 ジークンの身代わりの術は実に完成されていた。 直撃したかと思えば、他の某人間を差し置いてどうしてかニークンを贄にして代わり、 お土産にビームを放って別の場所に現れる。 そのパターンも読めて来たぜ〜〜〜っ!と先回りしてみるも、 読んだ場所に出てくるのはニークン。 もうボロボロすぎて攻撃するのが躊躇われるが、躊躇うと大抵ジークンが出てきたりする。 粉雪 『彰利光速正面!』 彰利 『ほりゃあっ!!』  ギパァンッ!! ジークン『つぶつぶーーーーっ!!?』 だがヤツが変わり身をする一瞬。 そこを光速で突けば、まだ当たる。 光速釘パンチを唯一の打撃必中ポイントである顔面に叩き込むと、 ジークンの顔面がゴボボボンッ!とヘコミ、一瞬の間を置いて遠くの大木へと激突する!! 彰利  『どうだ!』 ジークン『やったザマスか?』 彰利  『オ、オウヨ!手応えはホワァアアーーーーーーッ!!?』 空手のポーズよろしく、押忍って感じで構えてるアタイの横にジークン! その顔は確かにシンバルみたいになっていたが、 彼がズゴゴゴゴと空気を吸い込んでゆくと───パンッ!! ジークン『ヘイゲリョー!《シャキーン!》』 ヘコンだゴムボールがポコンッと直るみたいにあっさりと完治!! うあぁずりぃ!こいつずりぃ!! ジークン『貴様に一言物申す《バゴォ!》ギャアアアア……!!』 ジャーンとアタイを見上げながら指(?)を突き出してきた途端、 その顔面がシュバちゃんによって殴られた。 トランス状態で集中力が高まっているアタイの視界で、 ペキコキと顔面が歪んでいき、やがて弾かれるように吹き飛ぶ様がありありと上映された。 ライン 『どうだ───!』 ジークン『キミ。確認の前に追撃しに行ったほうがいいと思うよ?』 ライン 『ぬぉおおおっ!!?』 ジークン『どうしても攻撃が当たらない……そんな時はアレさ。      ドラムを想像したまえ。シンバルだ。シンバルを叩きたまえ』 彰利  『シンバルっつーかゴムボールじゃねぇか!      お前の体の何処に楽器的要素があるの!?お前の顔アレだろ!      もう体の細さとかいろいろ混ぜてもおばあちゃんが持ってるようなアレだろ!      肩をポコポコ叩くアレでアレな感じの棒だろもう!!』 ジークン『木琴だ』 彰利  『マレットかよ!楽器っていうかそれもう叩くほうであって、      別の木の棒だろうがなんだろうがどうでもいいってことじゃねーか!!      シンバル関係ねーにもほどがあるだろ!』  ───トスッ。 ジークン『おや?』 彰利  『ひっかかったぁ……っ!!』 会話を延ばし延ばしすることでジークンをその場に固定! そこへ更待先輩殿の影縫いが炸裂し、ジークンの動きを封じる! ロフェフェフェフェ!!これぞ対高速移動生物用作戦! 影縫いをした上からアタイの影と敵の影を繋ぎ、さらに動きを封じて……! 彰利 『オッシャ今だぁーーーーっ!!』 全員 『ウォオーーーーーッ!!!』 全員でフルボコルボバルボ!! 連携もなにも関係ねぇ! こういう時はとにかく攻撃!これに尽きるゼ!! よってたかって殴る蹴るどつく叩く斬る爆破する! あらゆる武具と魔法が飛び交う中、不死身である対象はやはり死ぬこともなく、 だが動くことも出来ないままにボコボコにされてゆく! フオオオオ!!レベルが上がる上がる! 特に途中参戦の七草とかスゲー勢いで上がってる!! ジークン『景気はどうだね』 彰利  『オウヨ絶好調ホゲェーーーーッ!!?      ホッ……ホワイ!?あれ今っ……アルェー!?』 皆様が突撃する中、影での標的固定をしているアタイの横に何故かジークン! あれ……!?じゃああそこでボコられてるのって……!? 彰利  『あのー、つかぬことをお訊きしますが』 ジークン『ニークンぞ』 ああ……やっぱり……。 ジークン『クックック……我は既に次元を超えた生物よ。      貴様らの常識で我を捕らえることは不可能。      いくら影を縛ろうが、転移を封じたわけではないのだ。      ……あ、ちなみに我らは魔王に取り込まれた身。      故に誰であろうとレベルは1万以上の猛者。      既に我ら自体が魔王の“武具”なのだ。      つまりニークンをボコろうが我をボコろうが、入る経験値も同じ』 彰利  『フツーにひでぇねてめぇ』 ジークン『フフフハハハハ……!魔王の理論には我も同意見なのだよ……!      戦場で汚い卑怯など、正義気取りの勝手な理論ぞ。      戦場とは戦う場所。戦場とは勝たねばならぬ場所。      そこで卑怯だのと語るヤツに、頂上など目指せるものか』 彰利  『……ナルホロ。んじゃーニークンこのままボコっててもいいの?』 ジークン『───』 彰利  『───?』 ジークンが腕を組みながら、アタイの目を見てくる。 そのまま一時停止。 少しののちにもう一度ボコボコ劇場を眺めると、 ジークン『私は一向に構わんッッ!!』 頭を細かく震動させながら、そう言った。 ジークン『だが忘れるな少年。我もまた戦いの最中だということを《ビジュンッ!》』 彰利  『ム?───ってやべぇ!!みんな逃げろぉおっ!!!』 ジークンが転移する。 現れた場所は、みんなが固まっている場所の上空。 みんなを見下ろした状態で空中に転移したジークンは、 棒剣ジークスフィアをシャフィンと振るうと、 突然のアタイの絶叫を耳にして、 逃げもしないで言葉の意味を確かめようとこちらを見る皆様目掛けて───! ってなんで逃げねーのテメーら! ええいもう! 彰利 『月空力!異翔転移!!』 固まっている全員を標的にして、一気にアタイの後ろに転移させる! 直後、上空から放たれた光が地面に激突! ……ポスンッ、と気の抜ける音を立てて、消え去った。 彰利 『……ホエ!?』 え?なに……?あんなにデケェ光だったのに、ポスッて……ドガァン!! 全員 『うぎゃぁああああああああああっ!!!!』 彰利 『ぬぉおあぁ!?』 首を傾げたところで後方で爆音と突風! 背後を見やれば、吹き飛んでゆく皆様と……爆煙の先に居るジークン!! ジークン『コココ……!味方思いの貴様のことだから、必ず助けに入ると思っていた……!      見掛け倒しの光にまんまと騙され、      味方を無防備にさせることこそ狙いぞ……!』 彰利  『キ、キキキキッサマァア……!!』 吹き飛んだ皆様は相当なダメージを負ったのか、倒れたまま動かないヤツも居れば、 立ち上がろうとしても出来ないヤツ、すぐに立ち上がるがグミに手を伸ばすヤツが大半。 それでも立ち上がる意思が働きかけるとレベルが上がり、すぐにHPTPともに回復する。 ジークン『ククク……さあ、終わらない歌を歌おうベイベー。      貴様らにはこれから我が、埋葬歌を歌わせてくれる。      ───“次元の理力”(ディメンションフォース)!誘おう、不思議な世界へ!!』 ジークンの体を灰色の空間の渦が包む! 転移でもするのかと思いきや、 渦はジークンの周りに集うと灰色のモヤのようなものになり、ジークンの周囲を歪ませる。 ジークン『棒剣ジークスフィアは棒人間専用装備ぞ。      武具に合成させることで能力は得られるが、真の力までは引きだせねー』 彰利  『《ビリビリビリ……!!》っ……それが真の力だってか……!      大したことねーんじゃねーのかい……?キョホホ……!!』 強がってはみるが、空気が張り詰めすぎてて肌が削られていくみたいな震動さえ感じる。 威圧感とかそんなもんじゃない。 これは……空気、どころじゃない……空間が震動してる。  ムォンッ─── 彰利 『ヌ?……ナニコレ』 空間震動を黒で防いでいるところに、黒の球体が飛んできた。 なかなかに大きく、ナニコレと触れてみると……あっさりと擦り抜ける。 固体ではないらし《ゾンッ》───ぐぉおあぁああっ!!? 彰利 『《ガクッ!》……う、っ……お……!?     なんだ、こりゃ……!力が抜けてく……!?』 状態異常かなにかか、とステータスを見てみると、 状態異常が無い代わりにHPが8割減っていた。 つまり、あれは─── ジークン『フォホホホホホ!!!ディメンションフォースとはつまり無の力ぞ!      そこから生み出される暗黒物質は、触れた対象の生命力を奪い取るのだ!』 彰利  『くっは……!グラビデかよ……!      FFじゃあるまいし、時空魔法なんざ使ってくるんじゃねィェーーーッ!!』 佐知子 「ようは当たらなければいいんでしょ!?───フルウノングン!!」  ガパパパパパパァンッ!!! サチねーさんが銃を乱射すると、なんとグラビデが消滅する! 強ぇえ!フルウノングン強ぇえ!! ジークン『ゲェーーーッ!!お、おのれ貴様!我の目論見を邪魔するとはなんと太い!』 佐知子 「ふてぇ野郎だ、とかちゃんと言いなさいよ!      太いだけだとわたしが太ってるみたいでしょうが!」 ジークン『………』 佐知子 「………《パパパパパァンッ!!》」 ジークン『《ビスビスビスビス!》キャーーーッ!!?』 佐知子 「フオッホホホホ……!あらやだなんで黙るのかしら……!」 デヴとか言いたいわけじゃあねぇんだろうけど、なんか気持ちは解るかも。 こういう場面だととりあえず黙ってみたくなるよね? とまあノリツッコミ的な状況下で攻撃は見事に当たったわけだが、 ジークンはものともせずさらに行動! ……しようとした筈なのだが、ドシャアと倒れて顔面をしこたま打ち付けていた。 ジークン『おや?』 …………。 ジークン『……ふんっ!はっ!ハイィイイイーーーーッ!!…………ギョオ』 シュッシュッバッバッと、覇王Y愛人のアレの真似をするが、 特別なにか起こるわけでもなし。 ……つーか何やってんデショこいつ。 ジークン『ギョオオオオッ!!《ガーーーン!!》』 終いには頭を抱えて……抱えてっていうのか?あの手で。 詳しく言うとボールみたいな自分の頭にその細ッこいハリガネハンドを押し当て、 少し天を仰ぐようにして顔に縦線引いて叫んだ。 すげぇ、顔に縦線出すヤツなんて初めて見た。 漫画的表現だと思ってたのに、まさか本当に出来るヤツがおるなんて。 悠介  『…………《じーーー……》』 ジークン『ハッ!い、いかんやめなさい!我を分析するな!目が腐るぜ!?』 悠介  『へ……あ、彰利!こいつ今次元の理力が使えないらしいぞ!』 彰利  『なんですって!?』 ジークン『キャーーーッ!!?』 なんたる暴露! もしやフルウノングンの効果が彼を一時的に鎮めたとでも……いうのだろうか。 彰利    『オッシャア転移とビームが無くなれば怖いものはねぇ〜〜〜〜〜っ!!!』 ライトニング『ジョワジョワジョワ、ならば我らも本気を出さざるをえまい〜〜〜っ!!』 サンダー  「ヌワッヌワッヌワッ、せいぜい我らの力の糧となるがいい〜〜〜〜っ!!」 ライトニング『少しは慎めサンダージョワジョワ』 サンダー  「自分だって……」 彰利    『キミらそっちの変身すると弱ぇえんだから今すぐ戻りなさい!』 ライトニング『ジョワジョワジョワ、正義超人らしい押し付けっぷりじゃねぇか。        俺達が俺達のやりたいことをやりたい時にやってなにが悪いってんだ』 サンダー  「ヌワヌワ、そ」 ライトニング『少しは慎めサンダージョワジョワ』 サンダー  「まだ“そ”しか言ってねぇでござるよ!?」 ええい今はいいでしょう! ライトニング藍田とサンダー丘野をほっぽって、ジークンへと突撃をかける! もちろん皆様で。 ジークン『フッ……いいだろう人間ども。存分に……かかってこい!!《クワッ!》』 対するジークンは俺達を見ずに少しだけ横に向かってヒタヒタと歩くと、 突然顔だけをこちらに向けてクワッと睨みつける! そんな彼の顔面をバゴォンッ!! ……サッカーボールシュートしました。 ギョッ!とかいう叫び声が聞こえたが構いません。 バムンバムンとジャングルの景色を跳ね回る低反発野郎を追って、 ゲームをするかのように我らは跳ね返しを続けた。 彰利 『センタリングッ!《バムンッ!》』 セレス『任せます!《バゴォンッ!》』 藍田 『任されたぜ〜〜〜〜っ!!《ジョバァンッ!!》』 蹴ったり殴ったりすると物凄い勢いで飛ぶもんだから、大木を壁に喩えて殴る蹴るどつく! 吹き飛ぶジークンが大木に弾かれて戻ってくると、 それをまた弾いてを続けて……うん、やっぱゲーム感覚ヨ。 なんにせよ、ライトニングから元に戻った藍田くんに蹴られる時が一番痛そうだ。 蹴られる時、顔面歪んでるしね。 だが、そんなことを何回か続け、心に油断が出来た時、それは起こった。  スコンッ─── 丘野 「おや?《───ぶしぃっ!》……《どしゃあ……》」 彰利 『ありゃ?丘野くん?丘野くーーーーーん!!!』 丘野くんが突然、額から血を噴き出させて死亡! 倒れた丘野くんの傍には、クルクルヒタリと回転して着地するジークン……! ジークン『やってくれましたねみなさん……初めてですよ、ここまでコケにされたのは』 彰利  『キ、キサマァア……!なにをした!』 ジークン『…………《スッ》』 彰利  『…………?』 俺の問いに、ジークンは静かに右手(右ハリガネ?)を持ち上げるだけ。 意味が受け取れず悩んでいると、 ジークン『我のこの手でスコンッ…………とね』 彰利  『スコンッて……』 え?なに?あの細いハリガネハンドで突いただけ? ジークン『名を刺突(シトツ)という。もはやこのジークン、辛抱たまらん。      貴様ら一人一人に地獄巡りの片道切符をくれてやる!!《クワッ!》』 彰利  『ぬ、ぬうう!!』 なんという威圧感! でも元が元なために、視覚的威圧感はゼロです。 だって棒人間だし。 飯田 「てめぇ〜〜〜っ!こちらが甘くしてりゃあつけあがりやがって〜〜〜〜っ!」 島田 「やっちめぇ!おりゃ〜〜〜っ!!」 彰利 『ハッ!い、いかーーーん!     今出て行くと物語のザコよろしく、殺されてしまいますよ!?』 アタイの静止も虚しく、飯田くんと島田くんが駆ける! その勇みは凄まじく、勇敢にも斬りかかるが─── スコンッ!ズバンッ!という効果音ののちに塵となった。 彰利  『ぬ、ぬう……!手で人を斬り裂く……だと……!?』 ジークン『クフフフフフ……我の手は剣にも槍にも鞭にもなるのさ』 彰利  『つーかその剣使わねぇならなんのために持っとるの!?』 ジークン『我と剣は天地とひとつ。故に剣はなくともよいのです』 彰利  『ワケ解らんよ!?』 ジークン『フフ、キミ、天地無用を想像したまえ。      マスターキーだ。マスターキーを思い浮かべたまえ』 彰利  『マスターキー!?……天地剣のことよね?』 ……剣は力を引き出すだけのもの。 あなた自身の力を……信じてください、と、津奈美さまも言ってたね。 ……んじゃあつまり力を引き出すためのものってこと? つーかどうしてこいつ天地無用のこと知っとるの? そういや今の若者って初代天地無用のことなんか知っとるのかね。 ジークン『我の手は防具以外ならどんなものをも貫通しましょう。      あんまり硬いのは無理だけど。というわけで死ぬがいい!《ヒタンッ!》』 ジークンが特攻をかける! でも蹴り弾いた地面から鳴ったのは緊張感のない音。 お陰で一瞬タイミングってものを見失ったけんども、かまわず突貫! 彰利  『そぉうりゃ!』 ジークン『ハハン無駄ザマス《スルリ》』 彰利  『なに《ベパァン!!》ぶべっしぇ!!』 まずはナックル! しかし簡単に避けられ、顔面に流れるような動作のニールキックをぶちかまされる。 ぬおっ!なんだこりゃ痛みが尋常じゃ……ハッ! き、斬れてる!蹴られただけなのに斬れてるぞ頬! ジークン『見せてやるぜ……斬撃拳ッッ』 彰利  『ホアアァ!!やべぇ!こいつやべぇYO悠介!』 悠介  『言ってても仕方ないだろ!』 いや解っちゃいますけどね!? こいつちっこい所為で攻撃当たらねぇんだもの! 彰利  『コンニャロッ……!なしてそげに小せぇのよ!』 ジークン『おお!長身がお好みか!ならば《ズュルリ》……ヘロウ』 ……。 形容しがたい効果音が鳴り、ジークンの頭から下が大いに伸びる。 なにかの冗談みたいに、漫画みたいにズルリと。 股関節から下程度の大きさだったのに、今やアタイらより少し高いってくらいの身長に!! 由未絵「ふっ……ふ、ふえぇええ〜〜〜〜っ!!?」 鷹志 「ああっ!支左見谷が混乱し始めた!」 来流美「大丈夫よ由未絵!視覚的な問題があるだけで、べつに怖くないから!ね!?」 いやでも実際キモいよコレ! どうすんのコレェ!って言いたくなるくらい異常にキモイ! 体の長さに応じて頭も微妙に大きくなってる! なんなのこいつ!何処まで謎生物なのさ! ジークン『さあ!かかってこい!《ビッシィーーーン!!》』 彰利  『ポーズ取るんじゃありません!キモイから!』 ジークン『し、失敬だなキミ!』 それでも闘う僕らが居る。 キモさと強さに抗いながら、立ち向かう気持ちがアタイらを強くする。 しかし攻撃範囲が相変わらず頭しかないくせに、 長身になったことでリーチが伸びたジークンは、歩く兵器のようなものになっていた。 コロがされた先から大木で復活したヤツがリベンジに戻ってくるも、 頭を貫かれるとほぼ即死ってこともあって上手く近寄れない。 しかし何度もコロがされてくると、次第に避け方ってのも身に着いてくるもので───  ズパパパパパパパァンッ!!! ジークン『ギョオ!?我の連撃刺突を全て受け止めた!?』 岡田  「マ・ワ・シ・受け……見事な……!」 彰利  『矢でも鉄砲でも火炎放射器でももって来い───やぁっ!!』 ジークン『《ボゴゴゴゴォンッ!!》ギョボフォヘアーーーーッ!!!』 至近距離での攻撃を全て捌き、隙だらけになった相手の顔面へと5連釘パンチ! 直撃を受けたジークンは吹き飛び、 木を何本か破壊したのちにズシャアアアと地面を滑っていった。 え?釘パンチってなんなのかって? フフ、キミ、電動釘打ち機を想像したまえ。 二重の極みだ。二重の極みを素で放つんだ。  ◆釘パンチ───くぎぱんち  超高速で放つ拳が織り成す奇跡。  柔らかいものを殴るとヘコンだのちに元に戻るが、  それが戻る前にさらに衝撃を加え、ダメージを芯へと送る奥義。  二重の極みはひとつの動作でこれを成し遂げる業だが、  釘パンチは腕の速度でこれを為すため、二重の極みよりもダメージが芯に残る。  しかし呆れるほどの速度が必要なために腕に物凄い負担がかかる。  その理論でいくと“らんま1/2”の乱馬は、  一瞬にして何百発ものパンチが放てるそうなので、  何連でも釘パンチできるんじゃなかろうか。  *神冥書房刊:『トリコ“そのグルメ道”』より とまあそげなわけで。 音速〜光速拳でなけりゃ流石に実現出来ん業なので、良い子のみんなは真似すんな! 彰利 『《ミシィッ……!》ぬぐぅっ!……黒で覆っててもこの痛みだもんなぁ……!』 イメージ関節の数はもはや異常。 トランス状態における超集中力で光速の域にまで達したけど、 さすがに連続には向かない奥義だ。 ジークン『フフフ……!《ムクリ》なかなかいい拳だったザマスよ……!』 ……不死身野郎相手にはもっと向かないね。 それでも上がるレベルにアタイシャッキリ! 彰利  『フッ……こうなりゃ腕が千切れるまで闘ってくれるわぁああああああっ!!!』 ジークン『フハハハハ!いいだろう!そして知るがいい!      不死身という存在がどれほど面倒で嫌な存在なのかを!!』 全員  『他に知らしめたいこととかないのかよ!!』 ジークン『ねぇザマス』 再び始まる大乱闘。 木々を薙ぎ倒し草花を吹き飛ばし泉を蒸発させ、それでも止まらぬバトルを繰り返す。 次第にフルウノングンの効果も切れ、 再び次元の理力が解放された時には僕らは地獄を見せられた。 だがそれでも戦えば戦うだけレベルもあがり、 HPTPともに回復するし強さも上がるわけだから、 この強さなら負けねぇ〜〜〜っ!!と誰もが躍起になって─── なった先からコロがされてゆく。 ジークン『ギョーーーーッギョッギョッギョッギョ!!!』 藍田  『オラオラセイフリャソラソラソラァーーーーーッ!!!』  ギンガガゴガガガゴガィンゴィンギャリィンッ!!! 武具は下手に剣などじゃなく、篭手と具足が一番安定していた。 なにせガードがしやすい。 殴られたり刺されたりするとほぼコロがされる状況にあって、 ガードが成功するのとしないのとじゃあ明らかに違ってくる。 てゆかさ、あんなハリガネハンドをガードして、 ギャリィンとか鳴るのってなにかウソな感じがするんですが? 岡田 「捉えた!エースインザァッ《ムォオゥン……》……グヘッ!《ゴプシャア!》」 藍田 『岡田ァーーーッ!!』 丘野 「岡田殿がグラビデにやられたでござ《ボゴチュゥン!》ギャアーーーーッ!!」 藍田 『うおぁっ!?お、丘野ォオーーーーッ!!』 気を抜くとすぐこれだ。 グラビデとアンリミテッドストリームを多彩に操り、 こちらを撹乱しては隙を突いての攻撃。 だがいい加減立ち回りにも慣れてきているアタイたちに! 今更そげな攻撃なぞ───! リアナ「姉さん!」 リオナ「ああ!」 リアナ嬢、突貫! 地面を滑るように接近し、駆け抜けると同時に一閃! 足を弾かれ中空に弾き飛ばされたジークンを、リオナ嬢が大魔法で追撃! 爆発し、吹っ飛んだ姿をさらにリアナ嬢が追い、跳躍して空中剣舞!! トドメに地面に向けて切り落とすが、その姿はやはりニークン! リオナ「なっ……《トチュッ》───!?……ぐはっ《どしゃり》」 リアナ「え……あっ!ねぇさぁあーーーーーん!!」 その隙を突かれ、頚動脈を突き刺されたリオナ嬢が昏倒。 死んではいないようだが倒れ伏し、 駆け寄ったリアナ嬢ごとキュゴァドンガガガガォオン!!! ……目を疑うような巨大ビームにて一気に殲滅。 野郎ォオ……こちらの行動をきちんと把握してやがる……! 夜華  『貴様───!《ヒュゴォッ───!!》』 ジークン『む!』 夜華さん疾駆! トンラス+風を纏っての突撃はもはや神業! アタイでもあそこまで速くは、ってくらいの速度で間合いを詰めると、 目にも留まらぬ連撃でジークンを切り刻んでゆく! …………、い、いや!あれは! ジークン『ふにふにふにふにふにふにふに』 夜華  『ぬぁあああっ!!?何故だ!何故当たらない!!』 ふにふに避けだ! ターちゃん謹製のふにふに避けで、夜華さんの斬撃の全てを避けている!! 彰利 『ちぃい!連携GO!!』 全員 『オーラァイ!!』 言うや皆様が一気に駆け、ジークン目掛けて各々の武器を振るう! その瞬間に夜華さんは跳躍し、上空から翔風斬魔刀の能力を解放! 武器固有能力ゴッドブレスを発動させ、ジークンを空から押し潰す! 夜華さん自身の魔力量が足りないからさほど高い効果は得られないが、 動きを鈍くさせるくらいの能力はある! ていうか夜華さん!? それ使う時はINTマックスで出しなさいとあれほど……! 藍田  『スラッシュキィーーーック!!』 ジークン『刺突!』 藍田  『───と見せかけて“粗砕”(コンカッセ)!!』  ギュルドゴォッ!! ジークン『ホブベ!?ギャアアアアアア!!《ズシャーーーーアーーーーッ!!》』 フェイント踵落としを食らったジークンが、技の勢いと己の軽さで予想以上に吹き飛ぶ! しかしそこは既に円で囲んである我ら! 俊也 「天雷槍!!」 飛んできたジークンを掬いあげるような一撃で斬り上げるのはトッスィー! 次いでその肩を蹴り、宙に浮かされたジークンを追って飛ぶのは田辺! 田辺 『タイランパニッシュ!おぉうらぁあああっ!!!』 右腕だけ妖魔化最大解放! 巨大なバケモンチックになった腕で、キュルキュル回転してるジークンを殴り落とす! 直撃を受けたジークンは地面に思い切り叩きつけられ、バウンドしたところをさらに追撃! 凍弥 「翔破ァッ!裂光閃!!」 無数の閃光突が閃き、ジークンの身を突きまくる! どうせここでもうニークンに代わってたりするんだろうと、辺りの気配を探ってみる。 だが反応はなく、ニークンもさっきのチェンジの状態のまま地面に転がっていた。 じゃあ今食らってるのは間違い無く───い、いや!  キャリャリャガガガガガガガキガガ───!!! 凍弥  「なっ……え、うぉえぇえっ!!?」 ジークン『フハハハハハハ!!!技を出せば当たると思ったら大間違いぞ!      無駄だ無駄無駄ムハハハハハ!!!』 当たってると思っていた翔破裂光閃は、 なんとジークンのハリガネのような手で全て捌かれていた! どんだけの速度が必要だと思っとんのかねコイツ! 夜華 『ならば追撃だ!烈空刃!!』 しかしそこへ夜華さんが滑り込み、翔破裂光閃の波に烈空刃を織り交ぜる! さすがにこれは───ゲ、ゲェエエエ!! ジークン『ヌハハハハハ!!物理的攻撃ならいざ知らず!      剣閃での攻撃ではこの次元の歪みを超えることなぞ出来ねぇザマス!』 野郎め!自分の周囲の次元を歪めて、風剣閃と光剣閃の効果を消してやがる! こ、これではどうすることもできーーーん!! みさお『任せてください!《キィンッ》───次元斬!!』  ゴカァッフィィインッ!!! 彰利 『おおっ!』 みさおが振るう斬冥叢魔刃(冥月刀)が空間を削り取るように空中に斬痕を残す! だがそこには既にジークンの姿はなく、 空気が抜けた風船のように動きの読めない飛び方をしながら、 みさおに襲い掛かる姿を確認! みさお『そう来ると思ってましたよ───!月聖力+月空力!絞臥陣・縛!』 ザンッ!とみさおが地面に刀を突き刺すと、刺された地面の小範囲が完全に停止する! 地面から天井までの空間が完全に聖なる領域として切り離されたかのように、 飛んできたままの状態で1ミリも動かず、ジークンの動きは停止した。 彰利 『ホォオオ……よく出来たねこれ……。     アタイも融合月操力はよく使うけど、これだけはダメだ。     上手く使えた試しがねぇ』 みさお『わたしも苦手ですけどね。ここ二年の修行でなんとかモノにしました』 そこから発動させるは時間蝕。 対象の時間を蝕み、一気に化石状態にまでする恐ろしい能力YO! 当然既に発動しているんだろうが──────────── みさお『あ、あれぇ!?石化しませんよ!?かれこれ千年以上は飛ばしてるのに!』  びしぃっ!! 彰利 『キャア!?……ゲェッ!?聖域に亀裂!?も、もしや───』  バキッ……ペキコキッ……ガシャッ!ごわぁっしゃぁああああんっ!!! みさお『はくぅうっ!!』 彰利 『ヌォオァアア!!?』 割れた……割れた! よもや聖域の凍結がこげにあっさり……! ジークン『無駄……無駄ぞ……!この我を誰だと思っている!我はG……ジークンぞ!      次元の理力を持つ我に時空能力など無駄!逆に破壊して《ピコーン♪》ムッ!?      ……いかん時間である!───それではごきげんよう!』 彰利  『なにっ!?』 ジークンがヒタタタタと走りだす!つーか逃げ出す! 当然アタイたちは周り込み、その行く手を阻んだ! ジークン『なにをなさるの?』 彰利  『時間ってーのはアレかい?魔王との約束の時間ってのか』 ジークン『そうザマス。彼が来れば我なぞ用済み。      ここで学んだことを存分に吐き出すがよいザマス』 そう言うと、ジークンはハリガネハンドをヒタリと顎下あたりで合わせると、 ペコリとお辞儀をして───ビジュンッと消えた。 途端、弾かれるようにぺぺらぺっぺぺ〜という音があちこちから鳴りまくる。 彰利 『うーわー……』 藍田 『お情けでレベルアップしてるみたいで納得いかねぇ……』  ピピンッ♪《レベルが10000を越えました!》 彰利 『おや?』  ピピンッ♪《おめでとうございます。        10000越えの褒美として、能力倍化が付加されます。        どの能力を倍化させますか?》 ば……ばば倍化? 倍化って……え?マジですか!?ええのこんなステキ能力! 神父 『……スピリットオブノートが、     不可能を可能にする力の前借りで付加させた能力だ。     初期の頃から少しずつお前らの体の芯で育んできた芽のようなもの。     それを1万越えを合図に芽生えるように、     それまでの経験を倍化に耐えられる体作りに利用した』 悠介 『ノートがそんなことを……!?無茶するなあいつ……けど待て、     前借りって言ったって、それをするための力が……マナが無いだろ』 神父 『ああ。だが準備は滞りなく進んでいた。いい加減種明かしをしよう。     空界での人間殲滅作戦は無駄じゃない。     今や空界もこの世界とそう変わらん。自然に溢れた大地となっている』 悠介 『空界が……?───まさか』 彰利 『え?なに?』 神父 『さすがに理解が速いな。そう……全ては勝つためだ』 ……ホワイ? いったいなに?アタイにも解るように平明に答えてほしいのですが? 神父 『皆殺し自体は想定外のことだったが、     マナを育むという意味では人間は邪魔だった。     故に、イドに操られた魔王を止めもせず空界中の皆を殺させた』 悠介 『……ああ』 彰利 『ちょ、お待ちなさい!だからって───』 悠介 『彰利。……魔王の真意が解るかもしれない。止めずに聞かせてくれ』 彰利 『…………オ、オウヨ』 そりゃ、気になるっちゃ気になるけどさ。 神父 『空界中の人々が死ぬことで、場所を選ばず自然を延ばすことが出来た。     全て、癒しの大樹とマナの大樹から伸びた木々だ。     マナの増幅も速く、空界は瞬く間にマナで溢れる世界になった。     これで3分の1。そしてこの世界。魔王博光によって支配されたこの世界で、     魔王が然の精霊たちと力を合わせ、自然だらけの世界を作った。     さらに、生まれてくるマナを月の属性で増幅させ、     こうしている今も世界中からマナが生まれている。これで3分の2。     やはりスピリットオブノートの力を満たすには至らなかったが、     あとの力を地界の大樹で補い、完全には届かない故の前借りとなった。     解るか?空界だけでは満たすのに100年以上は必要だったものを、     その大半をこの世界だけで魔王が集めたのだ』 彰利 『魔王が!?……って、まさか……     この自然世界って、最初からそのために───?』 神父 『さて、そこまでは知らないがな』 藍田 『つーかアンタ、この世界がゲームだってこと……』 神父 『知っていなければ言うわけがあるまい』 藍田 『………そういや今までの言動に、ちらほらそれっぽいのが混ざってたかも。     つーか修行の時と口調が違うぞテメー』 神父 『偉そうに語りたい時くらい空気を読むぞ、この神父は』 彰利 『………』 魔王がどうして自然を増やしまくったりするのか。 マナをこんなにも溢れさせてどうするつもりだったのか。 てっきり俺達を簡単にコロがすためだとばっかり思っとったけど…… 悠介 『魔王がそうするのは、空界の人たちを殺した罪滅ぼしなのか……?』 神父 『馬鹿をぬかせ、途中から自分の意思もあっただろうが、     元を正せばイドに操られて殺したこと。     根本的に言えばあいつが責任を感じることはなにもない。     止めに入らなかった精霊たちにこそ、イドにこそ責任がある』 リヴァ「待て。だが殺したのはあいつなのだろう?ならば───」 神父 『ただの地界人に、未来のイドの洗脳に抗う力があると思うのなら、     貴様は心底馬鹿だなこの馬鹿』 リヴァ「バッ───!?」 神父 『とにかくだ。ヤツは罪滅ぼしなんてことをこれっぽっちも考えていない。     それら全てを起きてしまったことだと受け入れて、その上で未来を目指している。     文句をいつまでも垂れるだけならイジケた子供にも出来るぞ』 リヴァ「ぐっ……」 神父 『そんなわけだ、存分に倍化をするがいい。     ただし、倍化が実行できるのは、この場所。     マナが凝縮され、月の属性の力でさらに増幅しているこの場だけだ。     故に皆、ここで10000を越えろ』 彰利 『オウヨ!こりゃいい!ブヘヘハハ魔王め!     こげなところに招きよせて、逆にアタイらを強くさせてちゃ世話ねぇや!』 神父 『……ふぅ……面白いものだ。ただの人の目論見がこうも人を強くする。     全ては予定通りか?魔王博光───』 彰利 『んあ?なんか言った?』 神父 『……いいや。覚悟というのは強いものだな、とな』 ……よく解らんがまあいいや。 それよりも倍化!倍化YO! まだアタイと悠介くらいしか出来ねーみてぇだけど、 これが全員のものになれば……すげぇぜ!誰にも負けねぇ! ………………でもちょっとお待ち?倍化っつーたってなにを倍化させりゃあ…… 彰利 『ハルえも〜〜〜〜ん!!どうすればいいか解らないんだよ〜〜〜っ!』 悠介 『ハルえもん言うな!俺は……まだ保留だ。     月の欠片が揃ってからじゃないと意味がない』 彰利 『あらそう?じゃあアタイは黒に!考えてみたけどこれしかねぇYO!』  キチチッ───《能力倍化完了!よいクエスターライフを!》 ……。 設定が終わると、ナビはさっさと黙りました。 なんか“ガッツ3倍になれ”って言われて3倍の強さを得たみたいな気分だ。 あっさりしすぎだろ、オイ。 だが……クォックォックォッ……!倍化……倍YO! ここまで成長させればいくらレヴァルグリードだって…………うあ、まだ九翼行けねぇよ。 ───なんてことをやっていた時だった。  キュドォンッ!! 彰利 『オワッ!?』 悠介 『なんだ───なんて言うのは、おかしいよな……!』 空から飛来し、大地に降り立つなにか。 その登場はあたかもバキで言うオーガのようで、思わずごくりと喉を鳴らす。 どれだけ高い位置から降りたのか、爆煙と見紛うほどの土煙があがり、 夜華さんがそれを風で吹き飛ばすと───! 魔王 「オワァ〜〜〜ゥハァ〜〜ハァ〜〜ハァ〜〜〜……!!     アァ〜〜ゥハ〜ハハ〜〜〜ゥ……!!」 あんまりに勢いが良すぎた所為か、 足を骨折して吹き替え外国人男性のように苦しみもがく魔王が居た。 いやもう……何処まで緊張感ねぇのよこいつ……。 だが、10000越えで能力倍化を得たアタイはもはや極みの域に先んじる男! 彰利 『キョホホ……魔王?言っとくが今回ばかりは負けねぇぜ?ホハハハハハ!!』 悠介 『……彰利?相手も10000越えしてる上に、     それプラス4000以上のレベルがあるって解ってて言ってるか?』 彰利 『ホハ───キャアそうでした!』 だが負けん! 状況がどうであろうが、黒の能力がそう簡単に負けるわけがねぇ! 人の能力が倍化したところでこっちは黒の能力倍化させてんだ……! それがそう簡単に負けてなるもんですかい! 人間が死神に勝てるかっていったらまず無理! その人間が能力二倍にしたところで、死神には勝てん! ……ただそのー、問題点としましては……。 その人間が、人体に宿る能力を100%引き出せるとして、 ソレが二倍になってたりすると…… 彰利 『《だらだらだら……!!》……!……!』 魔王 「あれ?どうしたの?そんな凄い汗流して」 全員 『復活早ッ!!』 魔王 「そりゃ早いさ!だってここは僕たちのテリトリー!!     そんな場所へホイホイついて来てしまった貴様らに、     これから僕が希望or絶望!ヘルorヘヴンをプレゼント!     未来を勝ち取りたければ抗い続けるがいい!」 蒲田 「へへっ、ここで経験を積んだ俺達に《ゾパァンッ───》」 彰利 『へ?』 蒲田くんの首が飛んだ。 そんな事実に、全員が息を飲んだ時。 蒲田の周囲に居た猛者ども大半が消し飛び、 離れていたヤツ大半にメテオレインが降り注ぐ! 彰利 『んなっ───てめっ!』 魔王 「ブゥハハハハハ!!先に言った筈だ!!     俺は貴様らの本気が見たくてここに居るのではない!     卍解して俺と戦え!なんて言うヤツとはもはや背負っている覚悟が違う!     外道だろうが最低だろうが!目指しているものにただひたすらに突き進む!     貴様らにはあるか!それだけの覚悟が!」 悠介 『っ───やめやがれこのっ!!』 話しながらも高速移動をしながら味方を薙ぎ倒す姿に、悠介が光で追いつき食い止める。 長剣と長剣とがぶつかり合うと、衝突部分を中心に風が巻き起こり、 一瞬だがジャングルにある自然が軋む。 悠介 『お前は《ドボゴバァン!!》げぇっはぁっ!!』 彰利 『悠介!』 直後に腹に掌底。 話そうとしていた悠介は不意を突かれ、さらに腹の内側を徹しで爆破されたのか、 異常なくらいの血を口から吐き出し、その場に蹲った。 魔王 「……これが最後の忠告になる。昔馴染みだ、大切な言葉くらいは贈ろう」 彰利 『言葉……?』 悠介が腹を癒す中で、様子を見ることもなく突撃する。 様子見は無しで、と言った。 言ったからにはこいつは、瀕死の状態のヤツでも躊躇なく殺すだろう。 だから突撃を仕掛けた。 それにより悠介から俺へとターゲットは移り─── 魔王 「───覚悟を。決して折れぬ覚悟を持て。     大切なものと衝突することになろうとも、仲間と争うことになろうとも。     家族を失おうとも、たとえ自分が死ぬ未来を見せつけられようとも───!!     自分はその未来の先に辿り着く!そのための覚悟を刻み込め!!」 彰利 『───!?』 殺気が溢れる───やべぇ!! そう直感した時、魔王を追っていた足は自然と止まり、防御体勢を勝手に取る。 直後に衝撃。 魔王の左腕から大砲めいたなにかが放たれ、 ガードの上からでも芯に届く爆発によって、 体勢を立て直すとかそんな次元を軽く超えた勢いで吹き飛び、 無様に転がり、地面に倒れる。 魔王 「俺は目指すって決めた!そのためならなんだって利用すると決めた!     たとえその先で一人になろうと構わない───!     俺は!俺が望む未来のために!抗い続ける覚悟を決めたんだ!     ───相応の覚悟を以ってかかってくるがいい!!以ってなかろうが殺すがな!!     我が名は博光!そう───遠き者は耳に聞け!近き者は目にも見よ!!     我こそ元・原沢南中学校迷惑部提督!中井出博光である!!     全ての苦しみも悲しみも!楽しさも嬉しさも俺が覚えていよう!     故に貴様らは好きなだけ忘れ、好きなだけ未来を謳歌するがいい!!     俺の目指す未来は俺が楽しいと心から思える世界!!     その未来のために!俺自身の身勝手のために!!     俺は!!貴様らがたった一人でも欠けることを絶対に許さん!!」 っ……! すげぇ気迫───って、あれ?視界が滲んで…………───なんだろ。 なんで俺、魔王の言葉が嬉しいって感じられて、だけど絶対にさせちゃいけないって─── 彰利 『〜〜〜っ……ワケ解らねぇことをごちゃごちゃと!!     迷惑部は俺と悠介で作ったもんだ!てめぇなんて存在は知らねぇ!!     いいぜ───やってやる!そのふざけた幻想ごと!てめぇをぶっ倒す!!』 滲んだ涙を拭い捨て、感情を真っ直ぐに持つ。 芯が戦うなと叫ぶが、そんなものさえ殴り捨てて。 そんな時だ。不意に魔王が何かを取り出し、蹲る悠介の傍らに投げた。  チャリンッ─── 音を立てて小さく跳ねたそれは……月の欠片? 悠介 『げは……あ……?、これ……』 魔王 「最後の欠片だ。使え。嵌め込んだ時が合図だ。     俺はもう、お前らに一切の慈悲をかけない」 悠介 『………』 悠介が、欠片を拾う。 そして月の台座を取り出すと……まずは自分を回復してから、嵌め込み───  ピピンッ♪《月の大盤が完成した!創造に関する能力が復元、上昇!》  ピピンッ♪《世界創造が容易になった!》  ピピンッ♪《創造範囲の制限がほぼ無くなった!》 悠介 『……!よし!能力倍化!俺は創造に全てを支払う!』  ピピンッ♪《能力倍化!“創造”の能力が倍増!》 よし───これで準備はザゴォンッ!! 悠介 『───……!?ぐ、ぁぁあああああっ!!!』 彰利 『……え……』 月の大盤を持っていた悠介の右腕が飛んだ。 振るわれたのは魔王の巨大長剣。 腕は大盤を持ったまま宙を舞い、その途中で大盤を手放すと、音を立てて地面に転がる。 そして大盤は……魔王の手に。 魔王 「約束だからな。大盤は完成した。これは頂戴する。     それと……嵌め込んだ時点で一切の情もかけない」 彰利 『てめぇ!』 最初から全力! 大盤を灼闇の炎で飲み込んだ魔王を前に、黒を解放して向かい合う……! いや、そうした途端、悠介が疾駆した。 おまっ、右腕は───と口にしそうになったが、 その腕が既にくっついているうえにラグナロクを掴んでいた。 飛んだ腕をブラックホールで吸い込んでくっつけたんか───? 相変わらず無茶な創造好きだなぁ僕の親友! 悠介 『魔王ォオオオオオッ!!』 彰利 『っ───ッシャァアアアアアッ!!!』 もはや待ったなし。 俺と悠介とが突撃する様を見て、他の連中も走り、魔王一人を狙う。 絶対に倒す。ブチノメして、俺達は俺達の力でと。 ただ……そう思った瞬間や、殺す気で魔王に攻撃を放つたび、 心の芯がとても痛くなるのは……どうしてなのだろう。 そんなことを思いながら、俺は魔王への攻撃を繰り返した。 Next Menu back