───忘れたからこそ求めるもの/覚えているから欲するもの───
【ケース839:弦月彰利/最後のヴァンさん1】 ───……訳も解らないままに今があるってわけでもない。 それでも、ハッとなにかが切り替わった瞬間にだけ残っていた罪悪感がなんだったのか。 それが、今も思い出せない。 でもどうしてだろう。 思い出せないことが確かにあって、苦しくも感じることさえあるのに───  楽しまなきゃいけない その言葉だけは、ずっと胸の奥で暖かく鼓動を続けているような気がするのは。 ノート『……、……』 ……今、スッピーがこれからのことを話してる。 聞いちゃいるけど右から左。 つまり頭に入ってこない有様。 どうしてか泣いてた悠介も今じゃ気を取り直すようにスッピーと話を進めて、 他の皆様もその話を真剣に聞いていた。 ノート『……、し。弦月彰利?聞いているのか』 彰利 「押忍。聞いてるけど頭に入ってコネーッス」 ノート『汝な……これからルドラとの戦いがあるというのに、それでどうする』 彰利 「や、でもねィェ………………ん、まあいいや。     そんで、赤毛のアンは鼻毛も赤いのか否かだったよね?赤いと思うよアタイ」 ノート『……汝なぁあ……!』 彰利 「あ、あれ?違う?」 や、違うのは解ってたんだけど、この釈然としねー気持ちをなんとかしたくてね……。 こうして部屋ン中見渡してみても、足りないと感じるものが確実にある。 ……謎の男は部屋の隅で寝てる。 なんか突付いても起きる気配がないから、 大きなクマのぬいぐるみよろしく、開脚させて壁に寄りかからせてる感じだ。 誰なんだろうね、あれ。 皆様に訊いてみても、全然解らんという。 それは櫻子さんも同じでして……不法侵入者カナーと思いつつも、 悪戯描きでもしてくれようと思いつつも、 なんか通報とか追い出すとか、描いてやろうって気にはなれなかった。 ノート『ではこの馬鹿者のためにもう一度おさらいだ。     ルドラは現在、月詠街晦神社に“世界”を創造している。     その奥で世界を飲み込むのを終始傍観するだろう。     そこでだ。当初の予定通り全員が黒を引き寄せ、力を分散させて戦う。     ルドラの狙いはマスター・晦悠介だ。それ以外には興味を示さないだろう。     世界を創造したということは、そこを決戦の場にするということだ。     マスターと、弦月彰利にはそこに向かってもらう。     ルドラ直々の発言だ、“ゲーム開始”は明朝。     朝日が昇った時点で開始する、だそうだ』 彰利 「……およ?アタイと悠介だけ?ゼットンはどうするん?」 ノート『ミルハザードには月詠街で、他の者たちとともに黒を相手にしてもらう。     黒を潰す者が強ければ強いほど都合がいい』 ゼット「……フン、前線ではないのが気に食わんが、いいだろう」 ふぅむ、アタイと悠介が前線っすか……OK。 けどちょほいと待ちなさい? 彰利 「けどさ、そう都合よくルドラが黒を出してくるかね」 ノート『くる。全員が月詠街へ赴けば、     邪魔をされせないためにも精霊を始めとする黒を放ってくるだろう。     そもそもルドラ自身が我々を下に見ている。     直々に来ることが無い以上、黒を放ってくるのは必然的。     それらを片っ端から潰してやればいい』 彰利 「うへぇ……力技じゃねぇ……!」 ノート『武具の複製も済み、それぞれ力を超越させてある。     ゲーム世界のものよりも扱いやすく強力な筈だ。     せっかくの不可能を可能にする力だ、残った力も有効利用しなければな』 彰利 「無茶すんねぇ……」 言いながらも、とっくに腕と足に装着してあるレヴァルグリードに熱いベーゼをかます。 おお、しっくりくるこの安定感……素晴らしい。 悠介 「けどノート、精霊が出てくると厄介だろ。勝てるのか?」 ノート『たわけ、私たちとて精霊だ。     マスターである汝が強くなったことで、私たちもともに力をつけている。     さらに、汝から預かった力も不可能を可能にする力の糧として振り分けた。     我々精霊も既に超越済みだ、そこまで遅れはとらない』 悠介 「……なるほど、力技だ」 彰利 「………………?ありゃ?でもさ、ドリアードのネエサンは?」 ノート『……?』 スッピーが部屋を見渡す。 が、ニンフたちの中心に居る筈のドリねーさんは居ない。 ニンフたちに問いかけてみても、その行方は謎のままだった。 その行方はゲームの中に入ってから行方が解らなくなり…… けど既に生命反応が無いのでは、ゲームの世界にはもう居ない。 じゃあ何処かに居るのか? それともゲームの世界とともに───と考えるが……解らん。 ノート『……いや、今はいい。時間がないから伝えられることだけ伝えておこう。     既に閏璃葉香を走らせ、町の住人の避難をおこなわせている。     言うことを信じずに逃げない者はこの際どうなろうと構わん。     故に、これだけは言っておく。“誰も助けるな”。     未来へと至りたいなら己のことのみを考え、     地界人がどうなろうがやるべきことのみを遂行しろ。     なにかに気を移して勝てるほど、甘い相手ではないと知れ』 全員 『………』 みんなが静かに息を飲む。 それは主に女性陣から。 特に月詠街に住んでるやつらにとっちゃあこれはちと酷だ。 ノート『そして……これは大切なことだから言っておく。     降りたいヤツは今のうちに武具を捨て、降りろ。     この戦い……誰が死んでもおかしくないものだ。     今ここで逃げようとも、誰も責めないだろう。     だが降りるのであれば、我々に関する記憶と経験の全てを消させてもらう』 全員 『───……』 やはり沈黙。 そんな中……一本だけ腕が上がり………… ノート『───!……汝……正気か……!?』 彰利 「あの、便所行ってきていい?」 手を挙げて便所宣言した僕は、般若面になったスッピーにボコボコにされた。 ───……。 ジョヴァーーナーーー……!! 彰利 「ふ〜〜〜、なかなかしぶといビッグであった」 悠介 「その顔でサワヤカに言われてもな……」 言いつつ便所に並んでる皆様。 ……うん、そりゃそうだよね。 ずっと寝てりゃあ、そりゃ溜まるもんもありますよ。 それをなんだい、勇気を出して一歩を先んじたアタイをボコボコだなんて。 彰利 「………」 でも、これで皆様の緊張は結構ほぐれたと思う。 あのままじゃ全員、緊張に潰されてたよ絶対。 そげなことを思いながら、すっかり夜な屋敷を歩く。 時は既に日を跨ぎ、日付的に言うなら秋の初め。 ご丁寧に夏の終わりに襲ってくるなんて、ルドラも律儀っつーかなんつーか。 彰利   「そう思わん?ゼプちゃん」 ゼプシオン「───貴様か」 彰利   「アルェ!?いきなり貴様呼ばわり!?…………い、いやいいけどさ……」 夜の景色が見える廊下の窓から外を眺めているゼプちゃんを発見。 声をかけてみたら貴様呼ばわりだった。 彰利   「すまんねゼプちゃん、急にこげなことに巻き込んじまって」 ゼプシオン「晦悠介には狭界と空界を救ってもらった借りがある。安いことだ」 彰利   「………」 ヒロライン内で、ゲーム側のゼプちゃんと融合させられたゼプちゃん。 その力は如何に!?と訊ねてみると、足手まといにはならんだろう、とだけおっしゃった。 足手まといなんてとんでもない、頼りにしてますマジで。 ……つーかゲーム内のゼプちゃんの能力もしっかりついてるのかな。 融合させられた〜とは聞いてるけど。 しかしゲームか……ゲームの中で力をつけて、 まさか現実世界でそれを使うことになるなんて、最初の頃はてんで思いもしなかった。 彰利   「はぁ〜んあ……結局覇王にはなれんかったなぁ……」 ゼプシオン「覇王?」 彰利   「オウヨ。ヒロライン───…………ありゃ?       そういやどうしてヒロラインって言うんだったっけか…………まあいいや。       ゲームん中でね?全精霊武具と全稀色武具を合わせたものを装備すると、       覇王ってジョブになれるってのがあったのよ。       難しすぎてちとなれるわけがねー、とは思ったんじゃけんども……       そういや稀黄剣ってどうなったんだろ……」 な〜んか引っかかってるような。 確か魔王が居たんだよね?で、そいつが…………なんか持ってたような。 あれ?そいつの名前がヒロミツとかそういう名前で、 そいつの野望を打ち砕くためのゲームだから博光の野望オンライン? …………適当に考えれば考えるほど、無理矢理辻褄が作られていく感じだ。 なんかいい気分じゃない。 グムー、でもスッピーに作ってもらったコピーを今は装備してるとはいえ、 オリジナルはゲームん中に置きっぱなしなんだよね。 案外それ掻き集めたヤツが居たとしたら、覇王になってたり…………ないか。 なってたとしても、世界と一緒に消えちまったら意味がない。 彰利 (…………あれ?そういや……) 部屋に倒れてたあの男、魔王に似てるような…………あれ? でも魔王の顔が思い出せない。 それどころかあの男、って誰? なんかヘンだぞ……“あの男”って関心を向けるたびに、 あの男の記憶が何度も何度もゼロに戻されてる気がする。 それがおかしいって思うのに、忘れてしまうから何がおかしいのかも解らない。 そう思ってる間に再び忘れ、なにを考えていたのかさえ解らなくなった。 彰利 「……なにしてたんだっけ、俺」 ……あ、そうそう、朝に備えてメシ作ろうとしてたんだっけ。 いかんなぁ、ボケたかな。 そんな風にして頭をコリコリと掻きながら、 外を眺めていたゼプちゃんをそのままに歩き出した。 ───……。 ……。 ジュ〜〜〜ッ!ジュッジュッジュッジュ〜〜〜〜ッ!!! 彰利 「出でよ鳳凰!!」 中華鍋で料理してるとやりたくなることっていったらコレだと思うんだ、うん。 そげなわけで今日の夜食はこってり料理! 夜だからさっぱりしたものを食うなど……軟弱! どうせ寝すぎで眠れねーんだし、こげな時こそこってり系で楽しむべきYO。 彰利 「うしゃー!6品目完成!」 遥一郎「こっちもできた」 悠介 「こっちもだ」 真由美「これでいい……かな」 今宵は料理特別。料理スペシャルって言いたいんです、はい。 特別料理って言うべきですかね、うん。 料理が上手い人のみを掻き集め、こうして料理をしている次第さ。 雪音 「ホギ」 遥一郎「却下」 雪音 「うあぁあん即答だぁあーーーーーっ!!」 もちろん料理下手なやつは却下っ………………!即却下っ…………! そわそわと厨房を覗きにくるやつらをヤクザキックで追い返し、 料理の続きをいたします。 彰利 「……………………」 しかし、なんだ。 な〜んか……もう一人平凡に料理が上手いヤツが居たような……。 こう、秀でたものはないんだけど、家庭的な料理が滅茶苦茶上手いやつが…… 彰利 「───……」 消えた。解らんからいいや。 ───……。 そんなこんなでお夜食でゴンス。 彰利 「それでは貴様らっ……!拝借っ…………お手を拝借っ…………!」 全員 『いただきますっ…………!』 遥一郎「なあ……この奇妙なノリの良さはなんとかならないのか……?」 彰利 「腐れ外道だなぁ、なんとかなってるからこの状況があるんじゃない」 遥一郎「言うにことかいて腐れ外道ってお前……     普通そこは馬鹿だなぁ、とかで済ませるとこじゃないか?」 彰利 「馬鹿が!!」 遥一郎「言い改めろなんて言ってないっ!!」 言いながらも食事は続きます。 あ、ちなみに謎の男は櫻子さんが空いてる部屋のベッドに寝かせてくれた。 ほんと何者なのか……と考えるとなんかボーっとするので、次第に考えなくなりました。 どうでもいいじゃない?謎の男のことなんて。 それよりも、最後になるやもしれんこの晩餐を楽しもうや。 彰利 「いやしかし、緊張感とかあんまりないなぁ」 凍弥 「正直な話……勝てそうか?」 彰利 「さあ。勝つ気でいるけど、絶対ってのは気軽に使えない状況やね。     キミらがどれほど黒を潰してくれるか。それにかかってるとアタイは思うのYO」 閏璃 「メシ食ったら体慣らしとかないとまずそうだよな……。     超越コピーしてくれた武器にも慣れておかないと」 彰利 「そういや悠介、キミラグナロク置いてきたんだよね?ディル助は?」 悠介 「ん?ああ、武具と融合した状態だったから、それごとコピーされてる。     正直ヘンな感じだけど、まがい物だとかそういうやつじゃないんだ。     細胞レベルからコピーされてるから、本当にそのまま。     ……超越されてる部分はさすがに俺も解らないが」 彰利 「うおう」 けどまあ弱くなったわけじゃないんならカマンッ!て感じよねィェ。 夜華   「彰衛門、その肉だんごを取ってくれないか」 彰利   「ノォゥ!僕のだぞ!」 夜華   「誰のものかなど決めていないだろう!       いいからよこせ!わたしは今肉を食したいのだ!」 彰利   「なにを言っているのだ!これは僕ら低松組のものだぞ!!」 閏璃   「なんだって!それは僕ら大友組のものだ!お前たちなんかにはやらないぞ!」 彰利   「いきなりなにを言い出すのだ!これは僕のものだ!」 閏璃   「てめえがいえたぎりかーーーーっ!それは僕のものだ!」 彰利   「《ガッ!》あっ!やる気か!」 閏璃   「《グイッ!》僕のものだといったら僕のものだ!」 夜華   「や、やめろやめろ!食べ物での争いなど、過去だけで十分だ!」 彰利&閏璃『ババア!!』 夜華   「なバッ───!?」 彰利   「───あ」 閏璃   「あ、あー……い、いや今のはついなりきりすぎててっていうか……」 風が吹き荒れました。 おかしいなぁ……窓は締め切ってるのになぁ……。  ゾンゾシャザグゾシュザンゾンザン!!!      ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………………… ───……。 ……。 シュウウプスプス…… 彰利 「俺……刀で切り刻まれて廊下に立たされたの、生まれて初めて……」 閏璃 「しかも水たっぷりのバケツ持たされてな……」 メシ、まだ食い途中だったのに……。 閏璃 「よぅ弦月、ガッコフケんベヨ」 彰利 「オッ、いいねぇ〜」 閏璃がなんか不良っぽい口調で逃走を誘ってきた。 アタイはそれにあっさり頷くと、バケツを置いて……いや、持ったまま歩き出した。 閏璃 「どうするんだ?それ」 彰利 「や、最後の夜くらい思いっきり遊びたいじゃない?     ……な〜んかさ、俺……楽しまなきゃいけない気がしてさ」 アイテムを手に入れたら遊ばないのはウソだぜ? やあ、でもほんと緊張感ない。 閏璃 「ん……それは俺もなんだけどな。だが腹が減ってはなんとやら。     俺は腹を満たしたいんだが……どうしようか」 彰利 「ぬう。じゃあこの水飲む?今ならプロテイン溶かし込んであげるけど」 閏璃 「いや、それは堪忍」 言いながら歩いてゆく。 食堂には敵がいっぱいさ。 したらどうする?……外食っきゃねーべよ。 とりあえずバケツはいらんね、フケたのがバレんようにどっか別の場所に置いていこう。 ……居ない時点でバレバレだけどね。 彰利 「ラーメン食いに行くべヨ。キミのおごりで」 閏璃 「さりげなく俺の金なんだな……いいけどさ。何処行く?     夜中にやってるラーメン屋なんてそうそうないだろ」 彰利 「アタイ、屋台ラーメンが食いたい!」 閏璃 「……お前天災?いいなそれ!」 彰利 「オウヨ!……でもあれ?なんか今天才って部分に災い的なものを感じたんだけど」 そげな遣り取りをしながら、僕らは駆け出した。 ウルーリィが財布取ってくる〜って言って、階段上がっていくのをホールで見送りつつ、 アタイはなにかの初心者のようにその場でぐるぐると歩き回った。 なにか、とは言いません。アタイもよー知らんし。 しばらくすると戻ってきたウルーリィとともに屋敷を出る。 夜の空気は夏……はもう過ぎてたな。 秋の初めにしちゃあ涼しいもんでした。 不思議だよね〜、寝ようとすると寝苦しいってのが夏とかなのに、外に出るとこの快適さ。 蚊とかが居なけりゃ絶対外で寝るね、もう。 閏璃 「で……屋台探すにしてもどうやって?」 彰利 「博多あたりならありそうじゃない?」 閏璃 「いや……今から博多って……」 彰利 「大丈夫!俺様のはキサマのなさけない舞空術とは違うんだ!」 閏璃 「なにぃ、空なんて飛んでないぞ俺」 彰利 「えーがらえーがらおいさんゆーことききゃーせえ。ほれ背中に乗って」 言いながら月空力で空を飛び、空中でうつ伏せになるように浮く。 その上に、ウルーリィが乗り─── 彰利&閏璃『そりゃーーーっ!マッスルインフェルノーーーッ!!』 跨ぐのではなくそのまんま乗った彼とともに、 アタイは風を切り空を舞い─────案の定風圧に負けたウルーリィが大空より落下した。 【ケース840:弦月彰利(再)/最後のヴぁんさん2】 デゲデーーーーン!! 彰利&閏璃『はっかったっのっ塩っ♪』 野球の練習中、ボールを取る寸前にでも口ずさんでください。 きっとお菓子が好きになります。 そんなわけで夜の空をゆく。 流石に一度落ちて懲りたのか、ウルーリィはアタイの背に跨った状態で─── 閏璃 「ぼうやぁ〜〜〜〜良い子でネンネだね〜〜〜♪」 言葉が少しだけ違うだけでなにやら怪しげな歌になっている昔話のOPを歌っていた。 どっから出したのか、謎の太鼓みたいな小槌ももってる。 彰利 「そういやウヴなネンネってどういう意味だっけ」 閏璃 「歳のわりにマア幼稚!的な意味なんじゃないか?」 彰利 「ワーオそうなん?アタイもっとアハン的なものかと思ってた。     だってホレ、昔のドラマとか漫画とかだとさ、その〜……」 閏璃 「不良が女に言い寄って怪しいことしようとしてる時とかに?」 彰利 「そーうそうそうそういう感じ!そんでサのつくアレ!」 閏璃 「サ……サタン」 彰利 「ってなんでいきなりサンタ物語になってんのォオオオ!!!」 閏璃 「お前が急に捻じ曲げたんだろうがサがどうとかってェエエエ!!!」 夜空を飛びながらサンタの話……マロンじゃねぇか。じゃなくてロマンじゃねぇか。 でもそろそろ降りていこうね。 こんなに高くちゃ屋台の屋の字すら見れねー。 彰利 「……んーでどうよ。屋台、ありそげ?」 閏璃 「おー……っとちょっと待ってくれ〜……?     何年も前から地界も不景気だからなぁ……屋台なんてのが今残ってるかどうか」 彰利 「あらー、そりゃ確かに不安だわいな」 それでも探します。 いや〜、ごっちゃり並んだ町並みが邪魔くさいこと邪魔くさいこと。 いっそデュンケルヘイト・セロで見晴らしよくしてくれようか。 閏璃 「おっ、あそこなんてどうだ?ほら、あの公園の」 彰利 「“今夜講演、ジャパニーズ巫女さま風雲録”……?     オイオイ、あんな伝説的な演劇見て腹満たせっての?     演劇ホールじゃポップコーンも売ってねぇだろ。     カーネギーホールで公演したらチケット売れ残りまくりだよ?」 閏璃 「そのコウエンじゃなくて!ほれあっち!あそこだあそこ!」 彰利 「あ〜〜〜ん……?…………ホームレスの方が集まって宴会やってるな」 閏璃 「……袋ラーメンでも買って、あそこに乱入するか……?」 彰利 「あ、うそ、冗談冗談。せっかくおごってくれるっつーなら高ェエエの食うべヨ」 閏璃 「現金なやつだなぁ」 しかしまたジャパニーズ巫女さまとは懐かしい。 何年以来でしょうねえ。 彰利 「……神降に屋台ラーメンってあるかね」 閏璃 「これから神降行くのか?まず目先のラーメンだろ。     この吼え猛るストマックはラーメン一杯くらいじゃ満たされないぞ」 彰利 「……OH、それもそーやね。ほいじゃあまずはあの屋台ラーメンだ!GO!」 降りてゆく。 夜に紛れながら、公園の端っこに。 しかしあと少しで地面ってところで、親と秘密の特訓キャッチボールでもしてたのか、 こんな夜中にやるじゃねィェーってくらいの時間なのに ボールを構えていた子供と目が合う。 瞬間アタイは思考を切り替え月空力を解除! ストレートに地面に落下し、 アタイは綺麗に着地、ウルーリィが脇腹をしこたま打ち付けて悶絶した。 閏璃 「うげぇっほごっほ!……こ、ここはどこだ……?」 彰利 「地球よ。よく来たわね」 それでもセオリーは忘れない彼は、ほんとノリがいいと思います。 子供は親と一緒にポカーンとこっちを見とったけど、 彰利&閏璃『特撮じゃよーーーーっ!!』 ……納得した。 すぐにキャッチボールを始めた彼らを余所に、 僕はウルーリィに手を貸して起き上がらせると屋台を目指して歩き出した。 閏璃 「屋台のラーメン…………考えてみれば初めての経験。     こんな夏場の夜中にラーメンとは考えたこともなかったが───」 彰利 「美味けりゃいーよ。無意味にオーガの真似しとらんとさっさと食うべーよ」 閏璃 「そうね」 彰利 「ほんとそう」 そんなわけで屋台。 暖簾(のれん)をくぐる前からフワリと漂っていた香りに肺を喜ばせながら、 僕らは木製の長椅子にどっかりと腰を下ろした。 旦那 「へいらっしゃい」 そこにはダンディなおやっさん。 親指を立てて出迎えてくれたのは…………どうしてか(マゲ)を結っていたおっさんだった。 彰利 「いやあの……これなんてデジャヴ?     俺こいつと同じ人、銀色の魂で見たことあるんだけど」 閏璃 「アニメと現実をごっちゃにするんじゃないよ。     きっとアレだよ、これアレだから。ただの江戸好きのおっさんだから」 彰利 「江戸好きのおっさんがなんで夜中に公園でラーメン売ってんだよ……」 閏璃 「だからさぁ、アレだよォ〜……     江戸って響きって江戸前って言葉思い出させるだろぉ?     男前とかけてるんだよ、ほらこのおっさんダンディだし。     男前って言葉10回くらい繰り返してみろって。     なんかラーメンって響きになってくるだろ」 彰利 「ならねーよ!!どうやってもならねぇよ!!」 閏璃 「あ、おっさん俺博多らーめん背油多めでね。もちろん大盛りで」 彰利 「あ、俺も同じものを。味濃い目でね」 旦那 「ヘイッ」 とりあえず注文完了。 けどこうしてる間が暇なんだよねェエ…… どっかの店みたく単行本があったりするわけじゃないしさァアア……。 彰利 「しかしアレだね、さっきの話じゃないけど〜……     どうして日本人はマゲをやめちゃったんだろうねぇ。     昔は当然だったのに、今やると奇異の目で見られる」 閏璃 「それはアレだよ、マゲを結うのは偉い人ばっかだったからだろ。     帯刀が禁じられたご時世でなにを思ってマゲ結うの。     なに、お相撲さんになりたいの?」 彰利 「違ェエよォ、ただこう〜、髪型ぐらいでガタガタぬかすなって言いたいんだよ。     ちょんまげだろうがモヒカンだろうが、心がそのままならそれでいーじゃねぇか。     Jリーグカレー食ってラモスになったマサオさんだって、     今やどっかでムスカ大佐のスク水姿描いてるんだからさぁ」 閏璃 「いやそれマサオさん違いだから。スク水描いてないからマサオ」 出された水を飲みながら談笑。 しかし物足りなくなって酒を飲んだらもうダメでした。 彰利 「おえらいさんしか許されないマゲってのはアレか。貴族の証みたいなもんなのか」 閏璃 「そうだよー?おえらいさんはみんなマゲ結ってたのさ。     もう子供の頃から親に偉いって言われりゃマゲデビューだよ」 彰利 「すげぇなそりゃ。マゲデビューするとなにがあるんだ?」 閏璃 「帯刀が許されたんだ。多分そうだよ」 彰利 「そりゃすげぇ」 言ってることもどんどん適当になったところでラーメンの登場。 その途端に僕らは酒気をボファアと飛ばし、真顔で割り箸を手に取ると合掌。 まずはレンゲでスープをすすり、その店の味を利いてから麺をいただく。 彰利 「…………《モムモム……ゾボボボボボ!!……モムモム》」 閏璃 「…………フゥム」 味は…………普通。 でもなんか美味い。美味いよ、ウン美味い。 でもさ、なんつーかこれ味しねーよ。と虹村億泰くんの真似をしてみる。 ウマイのに味がしねーとはどういう意味だったのか………… 僕らはまだ、その答えを見つけられないでいる。 彰利 「ごっつぉさん」 旦那 「ヘイッ」 お金を(閏璃が)払って、屋台をあとにする。 しばらく歩いてからささやくような小さな声で感想を言い合う。 基本ですね、なんつーか。 彰利 「……肉…………硬かったな」 閏璃 「スープ……薄かったな……」 結論。 あんま美味くなかった。 とことんまでに普通だった。 おかしいなぁ、もっと屋台のラーメンって美味いもんだと思ってたのに。 高望みしすぎた?いやいや、こんなものではない筈。 彰利 「夜中に食うラーメンってのは美味いもんだ。     それはたとえインスタンティヴなものであってもそうあるべき。     ───よし!神降いくべ!」 閏璃 「こうなったら何処まででも付き合うぜ〜〜〜〜っ!!」 そんなわけでセットイン! 人の目も気にせず空を飛び、驚いてる皆様には特撮じゃよの魔法の言葉であっさり解決。 さあ……目指すは!シドニーだ! …………違うけどね。 【ケース841:弦月彰利(再々)/最後のヴぁんさん3】 やってぇんきました神降町! 彰利 「OWEE(オヴェエ)…………!!キラキラ……♪》」 早速神気にあてられたアタイは道端で吐いてました。 さっき食ったヌードルとスープが電信柱にマーキングをしていきます。 彰利 「ヤバイよコレェエ……!明らかにヤバイ空気漂ってるよ即嘔吐だよォオ……!!」 閏璃 「到着した途端に食欲失くすようなもの見せるなよ……」 彰利 「うぐっぷ……いや、失礼……もう大丈夫だ。     ここに来たからには衣川さんとこのラーメン食いたいところだが……     残念ながらこの時間じゃやってねーデショ。つーわけだから屋台探すべ屋台」 閏璃 「そだな。やっぱ……公園?」 彰利 「デショ」 言いつつもウルーリィを背中に空を飛ぶ準備。 すっかりホカホカになった電信柱にごめんなさいして、僕らは空に飛び立った。 閏璃 「しかし神気ねぇ……どんな感じなんだ?」 彰利 「神気臭ぇなぁ……とか言いたくなる感じ」 閏璃 「それシンキ違いだから。臭くないからそれ」 空を飛ぶ。 一応、肉眼で屋台が確認できるくらいの高度で。 さて……屋台か公園か…………オッ! 彰利 「ウルーリィ!あれ!あれ!」 閏璃 「オッ!屋台じゃないか!…………でもあれ、おでんとか書いてあるぞ?」 彰利 「いやその横の旗!ラーメンって書いてあるじゃん!」 閏璃 「おっとこれは盲点だ!是非行こう!」 彰利 「うしゃー!」 閏璃 「むしゃー!」 ターゲットロックオン! 空へと昇るその香りに誘われ、今アタイたちが降臨!
【Side───おでん屋】 御田屋主人「クックック……」 私はスーパージャパニーズポトファー御田 屋主人(おでん やおひと)。 この神降でも有数のおでん屋です。 日々を堕落に生き、仕事や人間関係に疲れて一人やってくる女性をターゲットに、 この界隈を仕切っているスーパーレイパーです。 疲れた女ってのは酒を飲みたがりますからね。 その酒に、今は禁止されているが裏ルートから手に入れた目薬を入れ、 飲ませて眠らせて……あそこにある公衆トイレで、というのが私の手法です。 この公園はあまり人目につかず、女性がヤケ酒をするのにはもってこいですからね。 自分が酔っ払う姿を見られるのを嫌がる女性としては、 ここは絶好のスポットというわけです。 そして今日も哀れなウサギちゃんが暖簾をくぐり─── ククッ……今日はどんな女性でしょうかねぇ……! ツンツン頭「うぉ〜〜っす、あ、まず酒、熱燗で」 ショート頭「あ、おでん適当にみつくろって。あとラーメン。大盛りでね」 ……チッ、野郎ですか。 時々こうして空気の読めない男どもがやってきます。 こういう時は適当に流し、さっさと帰ってもらうに限りますね。 まずいものを食べさせれば怒ってすぐに帰るでしょう。 そもそもこんな場所にあるような店、味など期待していないでしょうからね。 ───……。 ……。 御田屋主人「クックック……」 私はスーパージャパニーズポトファー御田 屋主人(おでん やおひと)。 なんの冗談か私のお楽しみの夜の時間を邪魔しに来た男二人が、 今わたしが作ったばかりのまずいおでんとラーメンを口に放り込んでいる。 ククッ、お嬢さんにはとてもとても美味しい巾着袋を食べさせてあげるところですが、 男に食わせる美味しいものなどありません。 どれも賞味期限のきれた材料で作ったものですよ。 さあ、さっさと怒ってでも何処かへ───  ドゴォオオーーーーーン!!! ツンツン頭「このおでんを作ったのは誰だあっ!!」 御田屋主人「ふひぇっ!?」 な、なんです!? 尖った頭の男が急に立ち上がって……! 御田屋主人「ど、どうしたんです?お客様……」 ツンツン頭「貴様か!貴様はクビだ!出ていけぇっ!!」 と、とんでもない迫力ですよ!? これは想定外です……! たまに居るんですよ、不味いものを食べたためにキレるヤツが……! これだから男は……! ですがこれは好都合ですよ? ここは穏便かつさっさと帰ってもらうためにも……! 御田屋主人「し、失礼しました……お代は結構ですので、どうか───」 ツンツン頭「やかましい!腕の良し悪し以前の問題だ!こやつに料理をする資格はない!」 ううっ、金に興味のない食通ぶった相手ですか……!これは少々厄介ですね……! ですが……クックック、 このスーパージャパニーズポトファー御田 屋主人(おでん やおひと)をナメてもらっては困ります。 私はこう見えて様々な人種との対応を学んできた男。 ただ眠った女性を襲わんがために、今までの時間を費やしてきたのです……! ショート頭「う、海原先生、そのへんで……!」 ツンツン頭「なんだこの料理は!この雄山にこんなものを食わせるとは!       だから食に招かれるのは嫌なのだ!       人を招いておいてこんなものを食わせるなど!!」 御田屋主人「も、申し訳ありません、ですがここは私のお店……       ここで出せるものを出しただけなのにそう言われましても……」 ショート頭「そうですよ海原先生っ……!店には店の味、というものがあります……!」 ツンツン頭「うーぬ……!店主!酒だ!酒を出せ!」 御田屋主人「は、はいはいっ!」 チッ……しつこいですねぇえ……!さっさと帰ればいいものを……! ───……。 ……。 御田屋主人「クックック……」 私はスーパージャパニーズポトファー御田 屋主人(おでん やおひと)。 そうして男とブス用の安い酒を飲み始めた男たちは、顔を赤くしながら話を続けました。 ええい鬱陶しいですね……!いつになったら───おっと、女性がやってきましたよ。 スマイルスマイル……。 女性   「おにーさん、お酒、お酒ちょうだい。はぁっ……もうやってらんないわよ」 御田屋主人「はい、お酒ですね」 クックック……!待ってましたよぉ!なかなかの上玉じゃないですか! しかも相当疲れているご様子! これはすぐにお酒が回って……眠ったら体よく“気分が悪そうなので”と言って、 男どもを置いて公衆トイレで……クックックック……! ツンツン頭「あれ何ィ、嫌なことでもあったのォ?お嬢さん」 女性   「あん……?ああ……いいわ、聞きなさいよ。       アタシ二駅先の会社で働いてんだけどね……そこの上司がさぁ、       なにかっていうとアタシの体触ってくるのよ……。       いっそ殴ってやろうかって思うけど、アタシにも生活があるでしょ?       そんなことすればせっかく頑張って勝ち取った今の地位が台無し。       それが解ってるのかあのハゲ親父も調子に乗ってサ……」 ツンツン頭「あ〜、そりゃ大変だ……あ、まま、一杯」 女性   「あ……あんがと……《クピぶふぁあ!》うっわまずっ!       ちょっ……なによこれマズイわね!」 ツンツン頭「え?いやこのおにーさんが当店オススメの酒だって」 御田屋主人「ぎっ……あ、え、その……!」 ま、まずいですよぉおお……!なんてことをするんですかこの男は……!! 女性   「あー…………はぁ。そうなの。       お酒なんて初めてだから……ごめんねおにーさん、せっかくのお酒を。       酒って美味しい美味しい言われてるけど、アタシの舌には合わないみたい」 御田屋主人「はっ……」 ふぅ……!とりあえず、信用をなくすようなことにはならなかったようですねぇ……! 女性   「でもね、今はマズくてもいいわ。酔って忘れたいの。       ね、安いのでいいからお酒ちょうだい」 ツンツン頭「およ?アタイの酒は飲めねーの?」 女性   「んん?あぁ、はは違うわよ。アタシは自分のお酒がほしーの。       他人のじゃ思いっきり飲めないじゃない」 ツンツン頭「ナルホロ」 クックックック……! それなら今からとっておきをあげますよぉ! これを飲めばどんな嫌なことからもさようなら! そして夢の中で私のエキスをたっぷりと飲ませてあげましょう! ショート頭「ん……しかしこのラーメン、意外に珍味かも」 ツンツン頭「え?マジで?」 ショート頭「ああ。なんかちょっと酸っぱさがあってさ。こう……今までにはない味?」 ツンツン頭「へー、ちょっといい?」 クックックック……! そうでしょうとも……! そのラーメンには私が特殊に配合したミックス下剤がふんだんに入ってますからねぇ……! 一度すすれば、あとはもうおトイレ地獄! その隙に私はこの女性と女子トイレでハッスルですよぉ! ───……。 ……。 御田屋主人「クックック……」 私はスーパージャパニーズポトファー御田 屋主人(おでん やおひと)。 今私は─── 女性   「あっはっはっはっは!あっははははははは!!あそーれ!」 ツンツン頭「じょーだんじゃなーいわよぅ!」 ショート頭「じょーだんじゃなーいわよぅ!」 ……すっかり出来上がった女とともに燥ぐ男たちを前に、笑顔を引きつらせていました。 睡眠酒の効果はスッと自然に現れるように私が配合しましたから、 効き目が出るまで少しかかります。 が、この男たちはどういうことなんでしょう。 ラーメンを全て食べ、 スープまで飲み干したというのに一向にトイレに行く気配がありません。 配合を間違えましたか……? ショート頭「《ググッ》ウオッ!?……あ、あれ?なんか腹が……!」 おっ?……クックック、どうやら効いてきたようですねぇ! さあ!さっさとトイレへGOですよぉ! 御田屋主人「クックック、お腹を冷やしてしまいましたか?       丁度あそこに公衆トイレがありますから、どうぞそちらへ」 ショート頭「おおすまん!───ていうかその笑い声なんなんだ!?」 御田屋主人「ああ、不快に思われたならすいません。どうにも癖なのですよ」 ショート頭「そ、そうなのか。癖なら仕方ないな」 そう言いながら片方の男は走っていきます。 クックックック、あとはこちらの男ですよぉ! 女性   「ん……あふ……。んむ……なんか……眠くなってきちゃった……」 ツンツン頭「なんと!?まだ夜は長いというのに!       まだまだ寝かさんぞ!ラーメン食いいこう!ツレのおごりだぜ!?」 女性   「んー……ごめん、パス…………すごく眠い……」 ツンツン頭「いかん!まだ若い女性がこげなところで寝るなど!       家はどこかね!?送ってしんぜよう!」 なんですって!?なんて余計なことを! ……いや、待ってください?送ってゆく? まさかこの男、私と同業じゃないでしょうねぇ……! 御田屋主人「い、いえいえ、そんな男の方が女性を送るなんて、       せっかくですけど危険ですよぉ」 ツンツン頭「なんと貴様!この弦月彰利がおなごを襲うように見えるか!」 御田屋主人「いえいえとんでもない!確率問題の話ですよぉ!       女性の視点から見てみれば、       昨日今日会った人間に家まで送ってもらうのは怖いものでしょう!?」 ツンツン頭「ウヌ……キミ頭いいなぁ」 御田屋主人「クックック、いえいえ……」 頭がいいとかそういう問題ではない気もしますが、いいでしょう。 褒められて悪い気はしませんよぉ? ツンツン頭「じゃあしゃあないね。ここで寝かせてあげますか」 御田屋主人「───!クックックック、ええ、ええ。私が責任持って見守りましょう」 ……朝まで、ね……! クックック、胸が高鳴りますねぇ! どんな風に蹂躙してあげましょうかねぇ! ツンツン頭「ところで店主」 御田屋主人「はい?なんでしょう」 ツンツン頭「ここいらにラーメン屋台ってない?       こうして売ってる貴様に訊くのもなんだなとは思うけど、       こうして売ってるからこそ知ってる場所とかあるっしょ?」 ───!ここです! ここで店を教えてあげれば邪魔者は消えますよぉ! そうすればこの女性とあそこに公衆トイレで……クックック! 御田屋主人 「クックック、ええ、知ってますよとびっきりの場所。        丁度チラシがあるのであげましょう。        ここに行けば美味しいラーメンが食べられますよぉ」 ツンツン頭 「おお、謝謝」 チラシを渡すと、男は顔を綻ばせて立ち上がりました。 そして隣に居た男の荷物から財布を抜き取ると、金を置いて去ります。 ……クックック!何故かあの男には下剤が効かなかったようですけど、 とうとうお楽しみタイムの始まりです!さあウサギさん!? こんなところで寝ていては体が冷めてしまいます! 今私が暖めてあげますからねぇえええっ!! ───……。 ……。 御田屋主人「クックック……」 私はスーパージャパニーズポトファー御田 屋主人(おでん やおひと)。 今私は女子トイレに女性を連れ込み、  ゴルルロロブリピィニリチチチ!モリブリ!! 声  「ごぉおおおおお……!!」 声  「響くっ……響くぅう……!!」 …………頭を痛めました。 御田屋主人「ど、どうしました?何故女子トイレに……」 声    「お、おおその声はおでん屋の店主……!       いやね、なんかね、男子トイレ故障中でね?」 声    「仕方ねーからこっちに転がり込んで……ハオッ!       な、なんか立ち上がったら急にハラに来てね……!       そ、そんな店主さんは何故ここに……?」 御田屋主人「えっ……い、いえ、私はこの女性が気分が悪いと言うものですからねぇ」 チィイ予想外ですよぉお……!! まさか男子トイレが修理中だったとは……! …………いえ?それならばそっちを使えば誰にも邪魔されないのでは…… 御田屋主人「さ、さすがにここで女性に吐かせるわけにもいきませんねぇ。       仕方ありません、男子トイレに行ってきますよぉ」 声    「す、すまんね……!」 声    「すこぶる申し訳なっ───ハオオッ!」 ……クックック、では楽しませていただきましょうかぁ! ここは私の王国! 今まで襲った女性も、全て写真に納めて脅迫済み! 誰も私を通報することが出来ないし、私は夜の自由の王国を手に入れたのですよぉ! ───……。 ……。 御田屋主人「クックック……」 私はスーパージャパニーズポトファー御田 屋主人(おでん やおひと)。 男子トイレにやってきて、さあこれから、という時。 ポリス「逮捕する」 私は警察に捕まっていました。 御田屋主人「な、何故!?私はこの女性を介抱しようとしただけですよぉ!?」 ポリス  「貴様に襲われた女性の勇気ある発言が証拠だ。       貴様、近くのおでん屋で使用禁止になった薬物を酒に混ぜ、       眠らせた女性を襲っていたらしいな」 御田屋主人「なっ……ち、違いますよぉ!?私は!」 女    「とぼけても無駄ですよ……!」 御田屋主人「……!げぇっ!あなたはっ!」 い、一番最初に襲った女性がそこに居た。 ば、馬鹿な……そんな馬鹿な!あれほど脅迫したというのに、何故ですかぁ!! 女    「あの日からいろいろ考えて、それでもやっぱり忘れられなかった……!       勇気っていうのは黙ることじゃなく、罪を罪と発言することと見つけたり!       私は───あなたを許さない!」 警察   「……さて、ご同行願えますね?」 御田屋主人「はっ!ちがっ……み、見間違いです!私はこんな女───!」 警察   「往生際が悪いですよ……さあ!来るんだ!」 御田屋主人「ひっ……ひぃいいいいいいいいいっ!!!」 …………。 【Side───End】
ジョヴァーー………… 彰利 「ふ〜〜〜〜、なかなかしぶといビッグであった……!」 閏璃 「うう……嫌な汗掻いちまった……」 女子トイレから出てくると、おでん屋に誰も居なくなってた。 ありゃ?まだ男子トイレでおなごの介抱しとんのかな。 ……と、男子トイレを覗いてみると、壁に寄りかかってすーくー寝ているおなごを発見。 こいつぁ〜いけません、おなごが体を冷やすもんじゃあねぇ。 店主が居ないのが気になったけど、そげなことは後回しじゃい。 アタイはおなごを背負うと、ウルーリィと頷き合って移動を開始した。 このラーメン屋ってのに行ってみましょう。 【ケース842:弦月彰利(超再)/最後のヴぁんさん4】 スタスタスタスタ………… 彰利 「えーと地図によるとここらへんで……」 閏璃 「はて。なにやら民草どもが我らを見ているような……」 彰利 「フッ、閏璃よ。それは俺達が輝いているからさ」 閏璃 「フッ、なるほど。格好よいのも罪というものよな」 絶対違うだろうけどね。 さて、こうしてわざわざ徒歩で大通りまで来たアタイらは、 屋台を求めて地図にある場所を彷徨っていた。 ここらでいい筈なんじゃけんど……っと、あれか? こんな夜だというのに人が並んでおるわ。 彰利 「…………ニセモノだな」 閏璃 「ああニセモノだ。屋台はなんつーかこう、もっと静かじゃなきゃいけねーよ」 人がごっちゃりしすぎてる。 これじゃあせっかくの屋台ラーメンが、うるさい店舗ラーメンと変わらなくなってしまう。 彰利 「……別ンとこ、行くべ」 閏璃 「そうだな」 そう言い合って歩き出した───その時だった! 男  「おいっ!お前ら!」 彰利 「え?俺?」 なにやらハゲた中年男性が、我らにつっかかってきたのだ。 男  「お前ら!智子くんになにをするつもりだ!」 トモコくん?……誰? ……我らが顔を見合わせて首を傾げていると、男が苛立った風情のままで言う。 背中の女性のことだ、と。 おお、智子くんイイマスか。 彰利 「やぁ、なんか酔い潰れて寝ちゃってたからね、     あんなところに寝かしとくのもなんだなと思い運んでいる状況ですが」 男  「運ぶ……!?何処にだね!」 彰利 「とりあえずラーメン屋。ラーメンの香りを嗅げば起きるに違いねー。     酒飲むと塩分欲しくなるって言うしね」 男  「だったらここに置いていきなさい!私は智子くんの上司だ!     私が責任を以って預かろう!そ、そう!責任を以って!」 彰利 「………」 閏璃 「………」 こいつ…………今唾飲み込まなかった? よし。 彰利 「……旦那ァ、股間が盛り上がってまっせ?」 男  「っ!?はっ、いや、これは───!」 うわっ!マジで盛り上がってやがったの!?こいつ! サイテー!こいつサイテーYO!! 彰利 「本性を現したなセクハラ魔人め!」 閏璃 「貴様なんかに智子ねーさんは渡さん!」 男  「と、智子……ねーさん……!?」 閏璃 「従姉弟だよ!そんなことも知らずに怒鳴りつけてきたのかよ!     ちょっと誰のことか解らないフリをするとこれだ!」 彰利 「貴様のようなスケベに姉は渡せぬ……失せろ!」 男  「な、なにを言うんだ……!これはさっきそこで酒を飲んだからで……!     盛り上がってきたら盛り上がってしまっただけだ!」 ウソですな!俺達のもウソだけど! つーかなんてダジャレ吐きますかこのおっさん! 閏璃 「とにかく!俺達はこれで失礼する!」 彰利 「アディオス!」 男  「〜〜〜…………《ご、ごくっ……》───うるさい!いいから渡せ!」 彰利 「《がっ!》なにっ!?」 閏璃 「な、なにをする!」 男  「うるさい……!私がどれだけその女のために口を利いてやったと思ってる……!     そろそろ見返りがあってもいいだろう……!     その、その体を一晩でいいから私に委ねれば───!」 彰利 「な、なにをするんですか!」 閏璃 「姉さんになにをする気です!」 男  「なにをする……!?そんなの決まっているだろう!     既成事実を作るんだ!お前らみたいな子供は知らなくていいことだ!」 彰利 「……《カチッ》あ、今の録音させてもらったんで」 閏璃 「……奥義。原中流録音術」 男  「───…………なぁああああああああっ!!?」 愚かな。 急に何も知らない青少年のような声を出した時点で気づくべきだったのに。 しかしおっさんは諦めない! ならば余計にと!どうせ人生終わるならと、おなごの体を執拗に求める! ───そんな時!! ポリス「キミ、ちょっといいかな」 男  「え?……な、なんだお前は」 ポリス「警察だが?ピエロにでも見えるかね」 男  「そ、その警察が私になんの用だ!?私は課長だぞ!私は───」 ポリス「はいはい。悪いことをすれば総理大臣だって捕まるんだ。     ほら、とっとと歩け」 男  「な、なにをするっ!離せっ!離せぇええええええっ!!」 ………………。 彰利 「……すげぇな神降って……。日常的にあんなヤツが居るんかね……」 閏璃 「録音がどうとか以前に、天下の往来だってのにあんな大声で……」 じゃけんどもこれでこのねーさんの悩みも解消されますな。 めでたしめでたしだ。
【Side───ポリス】 警察官「クックックック……」 私はスーパーポリスメン警察 官(いましせち つかさ)。 警備をしてると見せかけ、酔い潰れて路上で倒れている女性を拾ってはお持ち帰りをし、 駐屯所……派出所の奥で美味しく頂いている警察官です。 今日も警官の帽子を目深く被り、目を隠しつつ警備ですよ。 警察官「クックックック」 べつに酔い潰れていなくてもいいんですよぉ。 気分が悪いとかいう女性を連れ帰り、無理矢理やって写真を撮るのもいいものです。 ただあまり騒がれるのも困るので、やはり眠っている女性が一番いい。 さて、今日も夜の街の平和を守りましょうかね……クックック。 ツンツン頭「あ、すんませーん、ちょっと道訊きたいんですけどー」 ショート頭「おいおい悪ぃよ、ポリスさん巡回中みたいだしさ。       あ、こんな夜中までご苦労さまッス」 チッ……誰が声をかけてきたかと思えば男ですか。 ……いえ?しかしその背中で眠っているのは……ほほっ、これはなかなかの肉体……! これは是非ともお持ち帰りするしかありませんよぉ! 警察官  「いえいえクックック、       私のことなら気にしないでいいですよぉ、これが仕事ですからねぇ」 ショート頭「おおっ……警察官の屈みだ!」 ツンツン頭「おお!素晴らしい!……あれ?でも今なんか       頭に“前”をつけたくなるような響きの“カガミ”じゃなかった?」 ショート頭「気の所為だって気の所為」 ククク、いえいえ、べつにそれでも構いませんよぉ、間違ってはいないんですからねぇ。 警察官  「ところでその女性は?酔い潰れさんですか?」 ツンツン頭「おお、そうなんよ。酒飲むの初めてだったらしくて、飲んだらコレモンよ」 ショート頭「初めての顔合わせだったんだけどね、       あのままにしておくわけにもいかないし」 警察官  「おやおやそれはそれは、クックック……」 ショート頭「…………ところで神降の人ってみんなそーなの?クックックって」 警察官  「いえいえ、これは生来の私なりの笑い方でして。       気に障ったなら謝りますよぉ、よくヘンな笑い方だと言われるんですよぉ」 ツンツン頭「ぬう、そりゃ失礼した。誰にだってクセみたいなの、あるよね」 ショート頭「失礼した。まさか生来のものだったとは」 クックック、べつにいいですよぉどれほど誤解しても。 その女性を私に渡してくれればねぇ! 警察官  「それではその女性、本官が預かりましょう。       丁度屯所も近くですからねぇ、奥にベッドもありますし、       そこで寝かせて起きたあたりに住所を訊いて届けるとしましょう」 ツンツン頭「なんと!?いいのかね!?」 ショート頭「自ら面倒を背負うとは…………あんたいい人だ!」 クックック……!私からすればあなた方のほうがよっぽどいい人ですよぉ! わざわざ今日の晩御飯を持ってきてくれたんですからねぇ!! ショート頭「あ、ところでポリスさん。ちょっと屯所のお湯借りていい?       なんか無性にクノールカップスープ飲みたくなってきた」 ツンツン頭「おっ、いいねぇ〜〜」 警察官  「ククッ、いえいえいけませんよ。屯所は食ベもの屋ではないのですからね」 ショート頭「そう固いことおっしゃらず。熱湯貸してくれるだけでいいですから」 ……ここはあまり邪険にしないほうが得策ですかねぇ。 苛立って女性ごと逃げられても困りますしねぇ。 警察官  「仕方ないですね、今回だけですよ?ククッ」 ツンツン頭「謝謝!」 こうして私は今晩のお楽しみを手に入れました。 ククッ、今から楽しみですねぇ! ───……。 ……。 警察官「クックックック……」 私はスーパーポリスメン警察 官(いましせち つかさ)。 小僧が背負う女性を屯所に連れて帰り、今バッシャア!! 警察官「ぐわぁあああああああああっ!!!!!」 な、なんですか!?熱いですよぉおおお!!? ツンツン頭「ゲ、ゲェエーーーーーーッ!!!」 ショート頭「うわわ馬鹿なにやってんだ!」 ツンツン頭「いやだってこんなところにヒモが落ちてたから足が絡まって!」 シュンシュンとコンロで湧いていたヤカンのお湯を盛大にぶちまけられ、 それを頭から被った私は床を転がり悶絶しました。 あ、あれは……昨日の子猫ちゃんが髪を結わいていた髪飾り……! 私としたことが片付け忘れるとは迂闊ですよぉ……! ツンツン頭「しっかりしめされいポリスメン!傷は……ううむ、ふ、深そうだ……!」 だが……火傷程度で食事を諦めて病院に駆け込むほど、 私のリビドーは弱くなどありませんよぉおおおおっ!! 警察官「だ、大丈夫ですよぉ……!それよりも本官には、     あの女性が目覚めるまで守ってあげる義務がありますからねぇ……!!」 そう、見守ってあげませんとねぇ……! あのやすらかな寝顔が歪んでゆく様をたっぷりと! ショート頭「《ぐっ……》ポリスさん……俺ゃあアンタに惚れたぜ……!」 ツンツン頭「ここまで警察道に真っ直ぐな男が居たとは……!」 クックック、ええ、私の脳内は真っ直ぐですよぉ! ただし、警察道ではありませんがねぇ!! ツンツン頭「火傷の手当てをさせてくれ!───能力……はだめだ!       それをやっちゃあポリスさんの誠意に傷がつく!実力で!」 警察官  「い、いいですよぉ!それよりももう遅いから、キミたちはもう帰りなさい!」 ショート頭「だめだ!それじゃあ俺達の気が済まない!───弦月!」 ツンツン頭「オウヨ!!」 な、なにをする気ですか!? 急に救急箱から包帯を取り出しヒュバギュキィッ!!! 警察官  「もっがっごっぐ!!《コキコキ……♪》」 ツンツン頭「奥義……ひんやり冷水で湿らせた包帯縛り!!」 ショート頭「さらに冷却シート地獄!」 ちょ……待ってください!? 冷水で湿らせた、って……それで顔全体を包んだら、呼吸が───! 警察官  「もぐ!もがっ!ががぁあっ!!」 ショート頭「え?なに?」 ツンツン頭「待て、この手の動きは……ゼスチャーだ!       なになに……?こんな、ものでは……足りない?」 警察官  「もがぁっ!?」 なにを勘違いしてるんですかぁ!? 私はこんなことされたら、死んでしまう、と───! ショート頭「誠意が足りなかったか!それではオイサァッ!!」 ツンツン頭「トリャサーーーッ!!」  ボギャア!! …………おや?強く締め付けられた先で、奇妙な音がなりましたよ? ……おお!お花畑で綺麗な女性が手を振っていますよぉ! 幸い誰も居ない様子……すぐに快楽の扉を開かせてあげますよぉおおお!! 【Side───End】
……ごとり。 彰利 「あれ?…………ゲェエーーーーーーーッ!!!!」 ポリスさんがごとりと倒れた! やべっ……やべぇYO! 彰利 「ど、どうしましょどうしましょ!」 閏璃 「とんずらぁああーーーーーーっ!!!」 彰利 「え?あれあぁっ!待ってよぉぅ!!」 閏璃が脇目も振らずに逃走! アタイも慌ててその姿を追い、足早に屯所を後にしました。 ───……。 ……。 ザムザム………… 彰利 「ヤバイよコレェエ誰かに見つかったらァア……!     一発アウトだよ即通報だよォオ……」 閏璃 「……あのさ。なんでおなごさん、一緒に背負って来てんのさ」 彰利 「…………あれ?ゲェエーーーーーーーッ!!!」 ば、馬鹿な!しっかりベッドに寝かせてきた筈なのになしてアタイは! 閏璃 「まあでも妥当か……ポリスさんが気絶してたりしたら、     いつ誰が侵入するか解らないもんな」 彰利 「オッ……そうそう、ソレよ」 きっとそんな直感が働いたに違いねー。 ……いやそれにしてもラーメン食いに来た筈が、 このねーちゃんと出会ってからしっちゃかめっちゃかデェス!! 彰利 「は〜あ……幸せそうなツラしちゃってもう……」 閏璃 「で、どうする?まだ屋台探すか?」 彰利 「オウヨ。こうなりゃナイトフィーバーよ!     屋台食い倒れツアーだ!絶対ェエエ美味い場所見つけっぞー!」 閏璃 「おー!!」 さあ食うぜ!超食うぜ!片っ端から食って食って、美味い場所を見つけてくれるわ!!
【Side───ラーメン屋】 チャッ、チャッ、チャッ…… 拉麺屋「クックックック…………」 私はスーパーラーメン屋拉麺 屋(くだむぎこ おく)。 ラーメン道を進みつつ、 コラーゲンを求めてラーメン屋を巡る女性を逆に食らう、屋台ラーメン仕事人です。 さあ、今日もコラーゲンを求める女性に私のエキス配合のとんこつラーメンを───!  どがしゃああーーーーーーんっ!!! 声  「く、食い逃げだぁあーーーーーーっ!!」 声  「とんずらぁあーーーーーーーーっ!!!」 おや?なにやら遠くの方が騒がしいですね。 まあ構いません、どうせすぐ治まることでしょう。 それよりも私はこの熱い気持ちを静めたくて……クックック。 声  「お前っ!俺の財布はぁっ!!」 声  「落とした!!」 声  「おとっ───あ、あれにいくら入ってたと思ってんだぁああああああっ!!!」 声  「アイムソーリー!?ア、アイムソーリー!!」 うるさいですねぇ、やれやれ、さっさと去ってほしいものですが。 ……はて?なにやら声が近づいてきているようなドゴシャッ!! 拉麺屋  「ぶぎゅぶ!?」 ツンツン頭「ゲェエエーーーーーーーッ!!!!」 ショート頭「馬鹿止まれ……って言ってる傍からぁああああああっ!!!!」 ツンツン頭「ヤベェエエーーーーーッ!!!       見知らぬおじさんにビッグバンクラッシュやっちまったぁあーーーーっ!!       おじさん!?おじさぁん!平気だよね!?ね、おじさん!?       平気でしょ!?ね、おじさん!?平気だって言ってよ!ねおじさん!       ねおじさん!?ねおじさんったら!ヨォオ!しっかりしてくれよォオ!!」 拉麺屋  「《ベゴパァン!!───ガクッ》……」 ツンツン頭「あれ?ねおじさん?……ねおじさァアーーーーーーん!!!」 謎の男たちにぶちかましをされた私は、トドメのビンタで何処か遠くに旅立ちました。 【Side───End】
…………。 彰利 「ヤバイよコレェエ……行く先々で問題起こしてるよ前科数犯だよォオ……!!」 閏璃 「なんでラーメン食いに来てこんなに問題抱え込まなきゃなんねーんだ……?」 さすがのウルーリィも腐ってらっしゃった。 でも大丈夫! ……問題っつーか物理的に抱えてんの俺だけだから。 な〜んで律儀に負ぶってくるかなぁ、このねーちゃん。 彰利 「しかし困った。金がないんじゃ食えん」 閏璃 「勘弁してくれよ…………あぁ……俺の財布ぅう……」 彰利 「いやあの……ほんとすんませんした……」 最初のおでん屋で財布ン中身見た時、素直にたまげるほどの金だったからね……。 それを落としたっつーたらおめぇ……ヤバすぎるっしょ。 なんてことを話してた時でした。
【Side───不良】 ザムゥ〜…… 不良生徒「クックックック……」 私はスーパーヤンキー不良生 徒(ふらじょう いたず)。 気弱な生徒から金を巻き上げては、ソレを夜の金に使っている頭脳派不良生徒です。 ククッ、まあ私の本性を知る者は私を不良“性”徒と呼んでいますがね。 今日はこの拾った財布の中身で夜の町を蹂躙してやるとしましょう。 およそ財布に収める金額ではない金が入っていますからね。 クックック、今日はたっぷり楽しめそうですよぉ! ツンツン頭「レンタベイビー!!」 バゴシャアッ!!ギキィーーーードゴォンッ!! ツンツン頭「ゲゲェーーーーーーッ!!!」 【Side───End】
プスプスプス…… 彰利 「ヤベェエーーーーーーーーーッ!!!     ウルーリィの財布取り戻すためとはいえドロップキックやったら思いの他吹っ飛ん     でその先の道路で不良学生が盛大に車に撥ね飛ばされたぁあーーーーーーっ!!」 閏璃 「うおお馬鹿やろぉおおおおーーーーーーーーっ!!!!」 彰利 「だ、大丈夫!もう影伝って月生力流して治したから!     しかもほれ!影通してサイフも取り戻した!ずらかんべヨ!!」 閏璃 「ああもうお前最悪だぁああっ!!!」 ……。 …………。 はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ!! 彰利 「き、危機一髪でしたね!!」 閏璃 「影が使えるなら蹴り飛ばさないで捕縛すればいいだろうがぁああっ!!」 彰利 「……───ハッ!しまったそうだった!」 サイフを落とした罪悪感からか無意識にも慌てていたんでしょう…… 考えるより先に足が出ておったよ、あぶなやあぶなや。 それでもサイフは取り戻した! これを失くさないうちにウルーリィに返して、と。 彰利 「……なんかもう……ラーメンとかそんな気分じゃなくなってきた……」 閏璃 「さすがに目の前で人が撥ねられの見るとなァ……」 内臓飛び出てたし。 咄嗟に回復させなきゃ死んでたぜ? 彰利 「モツ鍋食いに行こう!」 閏璃 「勇ゥウウウウ者ァアアアアアアッ!!!!」 でもやっぱり我らはチャレンジャーだった。 内臓見ておいてモツ……とんだじゃじゃ馬奏者さ。
【Side───モツ屋】 グツグツグツグツ…… 物屋店員「クックックック……」 私はスーパーモツ屋物屋 店員(ものや みせかず)。 美しい女性のグループにのみ睡眠薬を混ぜ、 早々に立ち去ってもらい、帰り道で別れたところを襲う頭脳派プレイヤーだ。 ツンツン頭「ウメーウメー」 ショート頭「ウマイウマイ」 今日も客がぎっしり……クク、 その中でも目の届く場所に居る二人の男と一緒に居る女性は格別の容姿。 あの鍋にはもちろん特製の睡眠薬が混ぜてありますよぉ! ツンツン頭「……まーたクックック笑ってるヤツが居る」 ショート頭「あ、もしかして神降ッ子はみんなあんな笑い方なのかも」 ツンツン頭「ああ!方言とかそういうヤツか!」 クク、違いますけどね。 まあいいでしょう、私の笑い方を侮辱した罪は、 その女性の体で返してもらうとしましょう。 ツンツン頭「店員さーん!シメのちゃんぽん玉よろしくー!」 おっと、クックック、ちゃんぽん玉ですか。 早くもシメとはよほど眠いに違いありませんよぉ! ええ、ここで眠ってしまっても構いません! そうしたらあの女性を私の車に連れ込んで……クックック! 物屋店員 「お待たせいたしました」 ツンツン頭「待ってない待ってない。       ところで店員さん、モツの汁の味ってなにがいいと思う?」 ショート頭「やっぱ醤油でしょ。ね、おじさん?」 ツンツン頭「いやいや、やっぱ味が濃い塩だと思うわけよ。ね、おじさん?」 物屋店員 「ククッ、いえいえ、やはりそれは好みによりけりでしょう」 ツンツン頭「そんなことねーって。確かにそうかもだけど、       統計とれば見えてくるものだってあるって。ね、おじさん?」 物屋店員 「え……な、なぜこの流れで私に振るのですか?」 ショート頭「いやいやぁ、それでも人それぞれは人それぞれだろ。       多数決で決まったからってそれを押し付けちゃいけねぇよ。ね、おじさん?」 物屋店員 「いえ、ですから何故私に───」 ツンツン頭「バッキャロテメコノヤロォ!       俺ゃべつにそれが正義だ〜って言ってるんじゃあねぇのよ!       ただそういう考えもありますよって言ってるんじゃねぇか!ねおじさん?」 物屋店員 「ねおじさん!?い、いえ私は───」 ショート頭「そういう考え方もありますよって思えるなら、       人それぞれって考えでもいいじゃねぇか!ねおじさんもそう思うよね?」 物屋店員 「い、いえですから……       あの、それじゃあ私がねおじさんって名前みたいに……」 ツンツン頭「いーぜそこまで言うんだったら決めてもらおうじゃねぇか!ねおじさん!?」 ショート頭「絶対に人それぞれだよねねおじさん!?醤油だよねねおじさん!?」 ツンツン頭「いいや塩だね塩!塩がいいに決まってます!ねおじさん!?」 物屋店員 「いやちょ……!何故私が食べるみたいな方向にっ!       まっ……そんな熱いの鍋ごと!       ちょ、やめギャアアアアアアアアアアアア!!!」 …………。 ショート頭「ほーらやっぱ醤油だよね!ねおじさん!?」 ツンツン頭「塩だよねぇねおじさん!?       ……あれ?ねおじさん?ねおじさぁあーーーーーん!!」 【Side───End】
ズドドドドドドド!!! 彰利 「ヤベェエエーーーーーーーーッ!!!     店員に火傷負わせた上に金払わずに逃げてきちまったぁあーーーーーっ!!!」 閏璃 「ちくしょオオオ!神降に来てからこんなんばっかじゃねぇかァアアア!!     なんなんだよもうこのトラブルの多さはァアア!!     つーか眠ッ!!なんか今すごく眠い!」 彰利 「アルェー!?キミも!?オイラもなんか滅茶苦茶眠いよ!     やっぱよく動いてよく食ったからかなぁ!     あ、でもヒロライン時に散々寝てた所為かどんどん中和されてゆく!     これってどんな不思議!?ねぇ智子くん!?」 ……と肩越しに覗いてみると、モツ屋の店員ねおじさん。 彰利 「あ、あれ?ねおじさん?あんたアタイの背中でなにしてんの?     あれぇ!?智子くんは!?」 閏璃 「さっきの店に忘れてきたんだ!ヤベェエエエ戻るぞ!!」 彰利 「えぇ!?でも金払ってねーのに!」 閏璃 「払えばいいだろうが!金取りにいってましたーとか言って!」 彰利 「……お前天才?」 閏璃 「当たり前のことだぁああっ!!」 そんなわけで来た道を逆走! ああもう忙しいねぇ!!
【Side───痴漢】 変態痴漢「クックックック…………」 私はスーパーモレスター変態 痴漢(かさま しれから)。 様々な店に立ち寄り、水のみを飲みつつ酔い潰れた女性を狙っているハイエナ的存在です。 今日はたまたま立ち寄ったモツ屋にて上玉の女性をガッシャアアア!!! ツンツン頭「おったわぁあーーーーーっ!!!」 変態痴漢 「オパァアーーーーーッ!!!!?」 倒れている女性に歩み寄った私へと、窓をぶち破りつつ蹴り込む存在! そのまま私の頭ごと床にゴドゴォンと着地すると、女性を抱き上げて─── ツンツン頭「お騒がせしてスンマセンッス!       窓ガラスは全部このおっさんが弁償するんで!ね、おじさん!」 変態痴漢 「へばっ!?あ、あぶぁあーーーーーっ!!」 踏まれた拍子に顎が外れたのか、まともに喋れない私を置いて逃走する男! ま、待ちなさい!どうせ逃げるならその女性を置いて─── 店員  「それではお客様?窓ガラスの代金と彼らの食事代金、合計しまして───」 変態痴漢「ほぼおっ!?」 差し出された伝票に驚愕しました。 ゼロが多すぎますよ!?これを払えと!? い、いえ、よく見ればなかなか綺麗な店員……!これは体で返すしかないでしょぉ! その旨をゼスチャーで伝え、彼女の腕を掴んで歩き出す───と、私の腕が掴まれる。 いいですよぉ頑張って抵抗してください! その抵抗がやがては───と振り向いてみると、 大男  「おぉっと何処へ行く気だい?ボ・ウ・ヤ?」 変態痴漢「はごあっ!?」 ムキムキマッシヴな大男が。 ───……その後私はこの店の店主に逆に掴まれ、 奥の部屋に連れて行かれると───…………抵抗も虚しく花を散らしました。 【Side───End】
ズドドドドドドド……!!! 彰利 「ヤベェエエエエーーーーーーーッ!!!!金支払うつもりが、     弁償とか全部見知らぬおっさんに押し付けてきちまったぁあーーーーっ!!!」 閏璃 「なにやってんだアンタァアーーーーーーッ!!!!」 しかも結局智子くん連れて来ちまって……! と、そんな時だ。 お姫様抱っこしてた智子くんがもぞりと動き、うっすらと目を開けた。 智子 「……んあ?」 彰利 「モーニン」 そげな気配を察して、一応立ち止まると地面に立たせてやる。 そりゃ、さすがにこれだけ騒いでこれだけ揺れれば起きもしませう。 彰利 「ヤホー?起きとる〜?」 智子 「ん、んー……あれ……?アタシ……おでん屋さんで…………?」 彰利 「うむ、急に眠りおった。あのままじゃ風邪ひくだろうから、     とりあえず連れてきましたが」 智子 「…………、───!?な、なにもしてないでしょうね《ベパァン!》はぶぅ!?」 閏璃 「ビンタァーーーーッ!!?」 彰利 「いきなりなにを申すかこの馬鹿が!言うにことかいて開口一番がそれ!?     おーおだったらおでん屋に置きっぱなしにすりゃよかったわ!     そしたら親切な誰かさんがキミをお持ち帰りしてたでしょーよ!!」 智子 「あ、な、う……!」 彰利 「まったくもって不愉快だ!いきますよウルーリィ!」 閏璃 「そだな。あ〜あ馬鹿らしい」 ぐったりと疲れた。 ほんと開口一番にそりゃねーべよ。 そりゃあ、男二人が酔い潰れたおなご連れてりゃそう思うかもしれねーけどさ。 それでも俺たちゃな〜んもやましいことなんて考えてなかった。 それをあげな……! 閏璃 「……で、これからどうする?」 彰利 「悪戯電話でもかけようか、蒼空院邸に」 閏璃 「考えることがいちいち子供じみてるよな〜俺達」 彰利 「達、って……じゃあキミも?」 閏璃 「提案されなきゃやってたなぁ」 お見事! ならばやるしかあるまいよ! と歩みを速めた途端、 声  「ま、待って!」 と後ろから呼ぶ声! それは間違いなく智子くんのもので───だが面倒だったんでそのまま走って逃げました。 声  「ちょ、待───」 待て?なにを言っているんだネ? 何故私がキミの言葉に従わなければならんのだネ。 声  「ここっ!何処よォオオーーーーーーーーッ!!!」 …………OH。 そういや適当に逃げ回りすぎた所為で、すっかり見知らぬ場所に。 これはさすがにほうっておくわけにもいかず、 アタイらは彼女を家まで送ることになりました。 ───……。 ……。 チャリ……カチャ、キィ…… 智子 「そ、それじゃあ、その…………送ってくれてありがと」 彰利 「次何処行く?やっぱラーメン」 閏璃 「ここまで来たらラーメンっしょ。     結局ちゃんぽん玉もねおじさんに食わせちまったし」 智子 「うわ……なにアンタら、女がしおらしくお礼言ってるっていうのに……」 彰利 「貴様になぞ興味ない」 閏璃 「我らは屋台ラーメンを求め、夜を彷徨い歩く修羅よ」 智子 「興味ない、って…………はぁあ……。     これでも容姿には少しくらいは自信あったのに……。     ま、いいわ。拾ってくれたのがアンタたちみたいな馬鹿でよかったよ」 彰利 「良かったね。それじゃあアタイらはこれで」 閏璃 「歯ァ磨けよ〜」 智子 「るっさい」 チャーオーと手を振り合ってアディオス。 さて、屋台ラーメンを求めて移動開始!
【Side───空き巣】 ゴゾォオ…… 空巣泥棒「クックックック……」 私はスーパースニークティーヴィンガー空巣 泥棒(そらじょう でいほう)。 目をつけた子猫ちゃんの帰りを侵入して待ち、一人になったところを襲う泥棒です。 この数年で身につけた私のスーパー開錠術があれば、開かれない扉などありません。 そして今回のターゲットは驚くほど上玉! 私のタマタマも震え上がってきましたよぉ! 空巣泥棒「クックック」 女性  「誰!?」 空巣泥棒「ゲエエエーーーーーーーーッ!!!!」 しまった見つかってしまいましたよぉ!? ついつい笑いに力がこもってしまいました! ですがもう構いません! なぜならこのマンションは完全防音! ここで誰を襲おうが周りには聞こえないんですよぉ! 女性  「《がしぃっ!》やっ……ちょ、なにすんのよ!」 空巣泥棒「なにをする!クックック!そんなもの、決まっているでしょお!」 女性  「───!やっ───やぁあああっ!!!」 いいですねぇこの恐怖に怯えた顔! わ、私はもう辛抱たまりまドバァーーーーーン!!!! ツンツン頭「チャーーオーーー智ちゃーーーーん!!       なんか結局クノールカップスープ飲めなかったからお湯貸し───…………」 女性   「………」 空巣泥棒 「………」 な、なんですあの男……!か、帰ったのでは……!? これは予定外ですよぉ!まさかこんな……! ツンツン頭「あっ───」 空巣泥棒 「っ……!」 あ───空き巣、と叫ぶのですか!? ええ私は空き巣!故にどう叫ばれようともやることをやるだけです! 叫びたければ叫びなさい! どうせこういう時、慌てることしか出来ないのが人間というものですよぉ! ツンツン頭「あ、あぁあ……!こ、ここにあったわポット……!       ごごごめんなさいねぇいつまでも気の利かないアタイで……!」 ……と思いきや、何故かイケナイ場面に出くわしたお母さんのような風情で、 ポットを手に取るとそそくさと出ていこうとする男。 クックック、どうやら私を彼女の彼かなにかだと勘違いしたようですねぇ! 女性   「ちょっ───待って!違うの!       アタシこんなヤツ知らない!不法侵入でアタシを襲おうとしてるの!」 ツンツン頭「───《ピクリ》」 うっ!こ、この女余計なことを言いますねぇえ……! 口を塞いでなかった私も私ですが、それでは明らかに怪しいとバレてしまいますからねぇ! ツンツン頭「嫌がる女性を無理矢理……そんなもの、漢に非ず……!       下がれ下郎がァアアアアアッ!!!」 ごおっ!と恐ろしい気迫で睨まれますが……クックック、 こんなことをする私が日々をなんの鍛錬もなく過ごしていると思いますか? 私はこれでも空手有段者でパグシャア!! 【Side───End】
ポリス「あぁこいつですこいつ……!最近多いんですよ……!     家の中に侵入して、俺はなんでも出来る、とか思い込むヤツ……!」 ポリスに突き出しました。 なんかね、余裕の表情でニヤニヤしてたから顔面ナックルしたらあっさり気絶した。 スゲー空き巣も居たもんだ。 智子 「はぁ……もうやだ……。どうなってんのよあそこの警備……」 彰利 「んじゃー閏璃!お湯ももらったしクノール飲むべーヨ」 閏璃 「おうっ!」 智子 「……こっちはこっちで女に興味がないとくるし……」 彰利 「失敬だなキミ!なにを言ってるんだキミは!」 閏璃 「女に興味はあるさ!だがそれは貴様ではない!それだけのことさ!」 智子 「うわ……今のざっくり来たわ……。あのさ、ないの?なにか気の利いた言葉。     だったら俺ン家泊まるか〜とかさ」 彰利 「断る」 閏璃 「昨日今日会った女性を何故家に上がらせねばならぬ、汚らわしい」 智子 「汚らわっ……!?そ、そこまで言う!?」 彰利 「じゃー知り合ったばっかの男、家に上げられる?」 智子 「…………解ったわよ、確かに汚らわしいわよ……」 納得してくれてなにより。 お湯を借りるんだからともう一個買ってきといたクノールを智ちゃんに渡し、 道端で三人スープをすするの図。 彰利 「ん〜〜んあったま───ウオッ!?」 閏璃 「き、気づいたか弦月……!」 彰利 「あ、ああ……これは流石に気づかなかった……!」 智子 「……え?え?な、なに、なによ」 彰利 「このスープ……クノールじゃなくてテノールだ!!」 …………。 智子 「……あ、ああ……なんだそんなこと。最近流行ってるのよ、こういうパチモン」 閏璃 「まあでもフツーにあったまるしいいか」 彰利 「そうね」 閏璃 「ほんとそう」 テノールカップスープを飲む。 うんあったまる。 こういうのにいちいち美味い不味い言っても始まらんから、それは割愛しましょう。 暖まればいいじゃない。 彰利 「ほいで?貴様これからどうすんの?」 智子 「貴様、って……はぁ、もうなんでもいいわ。     どうしようかな……ホテルにでも───」 閏璃 「うわなに貴様、ブルジョワ?」 智子 「やめてよそういう言い方……安いホテルって意味よ。     お金なんてそんな持ってるわけないでしょ……     あのマンションは警備体制がいいっていうから借りたの。それがあれでしょ?     もうなにを信じていいのか……」 彰利 「そりゃおめぇ、自分っきゃねーべよ」 閏璃 「信じる者は救われる!     それは自分を信じた先に光を見たヤツが言える言葉なんだぞ?     他人信じて失敗すりゃあ他人の所為にして自分は逃げる。     そんな生き方をしてるヤツに、     信じる者は〜なんて言葉が真に信じられるわけがない」 智子 「哲学?やめてよ、そういうの嫌いなのアタシ」 閏璃 「哲学じゃない。俺の言葉だ」 彰利 「なんでもかんでも哲学だとかそっち側に括るのやめよーや。     もっと自分の言葉でイコーぜ?既存は確かにありがたし。     けど既存があるからそればっか信じてちゃ、いつか自分を見失うぜ?」 閏璃 「どっかで得た知識ば〜っかりひけらかして、     自分は頭がいいとか思ってるヤツみたいにな」 智子 「………」 一緒になって道路の縁石に腰掛けながら喋るアタイらを、 珍しいものを見る目で見ながら智ちゃんはずずっ……とスープをすすっていた。 智子 「あんたら妙に達観してるよね。なに?もしかして童顔なだけで結構歳いってる?」 彰利 「人生経験が違うのよ」 閏璃 「俺は……フツーに育ったな。弦月ほどひでぇ人生歩んでない」 智子 「ひどい人生って?」 閏璃 「子供の頃に一家惨殺。親族の大半も死んで、生き残りはこいつだけ、的な」 智子 「うわ……」 彰利 「まぁよ。そいでもアタイは元気です。     他人の人生と他人の価値観なんだから偉そうに介入する気なんてゼロだし、」 飲み終えたカップを近くにあったごみ捨て場に投げて、立ち上がりながら伸びをする。 彰利 「昨日今日会ったヤツにえらそうに説教なんざくらいたくねーっしょ?」 智子 「…………ま、そうだわ」 座ってる智ちゃんを見下ろしながら言うと、 智ちゃんも飲み終えたカップをごみ捨て場に投げて立ち上がる。 智子 「ん、あんがと。パチモンも結構イケるじゃない」 彰利 「オウヨ。ほんじゃーね、キミも気をつけて夜をすごしめされい」 智子 「ええ。───ってちょっと待ちなさいっ!     ま、まさかこのままサヨナラって言うつもりじゃないでしょうね……!」 彰利 「え?まだなんかある?」 智子 「やっ、ほら……っ……あるでしょもっと……ケータイの番号、とか……」 彰利 「ケータイ?なに?なにか携帯してるの?」 智子 「…………なに、って…………ケータイよケータイ!持ってるでしょ!?」 彰利 「なに!?貴様まさかアタイがサイフを携帯してると思い恐喝を!?」 智子 「そうじゃなくて!ああもう!携帯電話よ携帯電話!     ……番号、教えなさいよ……暇だったらかけてあげるから……」 彰利 「なんだ携帯電話か……それならそうと最初から言やぁいいんだよぉ〜〜〜!」 智子 「ケータイで解らないほうがどうかしてるわよ!」 そうでしょうか……ケータイとか言われたって、携帯ってのは持ってる、って意味だろ? いきなり“持ってる”とか言われたってなにがなにやら。 彰利 「でもダメ。アタイ携帯電話なんざ持ってないから」 智子 「持ってない!?えぇ!?今時子供でも持ってるわよ!?」 彰利 「必要ないからね。会おうと思えば会えるヤツらばっかだし、     アタイには“家の黒電話”がある!!」 智子 「黒電話!?黒電話ってあの昔に絶滅したっていう伝説の!?」 彰利 「オウヨすげぇだろ。回して回してジーコロロだぞ。     あの味はそんな薄っぺらなプッシュ式には永劫出せん」 智子 「な、なんか自分でどんどん情けなくなっていってない?」 彰利 「オ?そんなことあるわけねーべよ。ありゃ我が家の財産だぜ?     今も俺の親友が、遊びに来る度に輝く瞳で見つめて羨ましそうにするくらいだ」 智子 「…………あんたの友達って…………」 あ、なんか同類なのね……って顔された。 まあ、いろんな意味で同類だけどね。 と、そんな時。ウルーリィも飲み終わったのか、カップを捨てて立ち上がった。 閏璃 「ぷふぅ、……で、これからどうする?ラーメン行くか?」 彰利 「オウヨ。あ、でもちょっと待って。智ちゃん、その電話貸して」 智子 「え?あ……まあ、いいけど……」 うす。 智ちゃんから携帯電話を借りて、番号をプッシュ。 先は蒼空院邸だ。  ナルルルル───ブツッ。 声  『もしもし、蒼空院邸ですが───』 おや。この声は聖? なんとまあまさか聖が出よるとは。 彰利 「キャンディケ〜〜〜イ……退屈なんだ……私は退屈なんだ……。     誰でもいい……私の相手をしてくれないか……」 閏璃 「ぶふしゅっ!?」 智子 (ちょっ……もしかしてイタ電!?やめてよ人のケータイで……!) すかさず悪戯電話に走るアタイを智ちゃんが止めようとしますが、まあまあ、となだめる。 声  『キャ、キャンディ……?あの、お電話番号、間違えてませんか……?』 彰利 「ああ……そんな冷たいことを言わないでおくれキャンディケ〜〜イ……     私だよラスティ・ネイルだよ……解るだろうキャンディケ〜〜〜イ」 智子 (い、いいからっ……ぶふっ……や、やめなさい、よっ……ぷっ、くくく……!) アタイの発音がツボに入ったのか、 止めようとしていた智ちゃんは次第に口を押さえて屈みこむ。 ウルーリィは……離れた位置で盛大に爆笑してる。 映画・ロードキラーの真似だが、 あの切ない声を忠実に再現した途端に思い切り噴き出していた。 声  『……もしかして悪戯電話ですか?』 彰利 「ああ……違うんだキャンディケ〜〜〜イ……     私はただ寂しいだけなんだ……私に愛をくれキャン《ブツッ》あ」 …………切られた。 智子 「〜〜〜〜、…………!……!ぶぐふっ!!あはははははははは!!!!     あはっ!あはは!ぷくわはははははあははははははは!!!」 閏璃 「ぶははははははぶはははははははぶっは!ぶはははははは!!!     き、きっき切られたぁ!キャンディ言い途中で切られたあははははははは!!!」 彰利 「………」 アタイの反応で状況を悟ったんでしょう。 閏璃はもちろん、智ちゃんも限界を超えて大爆笑。 縁石をテシテシ叩いて笑いまくってる。 でも───僕は負けませんよ。 キリッと真顔になるともう一度プッシュ。 なんかケータイとかいうのにはり、り〜……りだいやる?とかゆーのがあるらしいが、 そんなものは知らんので普通にプッシュ。 しばし待機…………のちに応答。 声  『ほいほいこちら蒼空院〜』 ……ぬう、マイサンではないか。 閏璃 (ダ、レガ、デ、タ……?) 彰利 (マイ、サン……!) 電話をかけるなり真顔になってゼスチャーを送る閏璃に、アタイもゼスチャーを返す。 彼はあーあーとしきりに頷くと、ゲッドラック!と指を立てた。 え?ええ、やることなんてもちろん決まってます。 それを期待しているからこそ閏璃の口の端は震えてるんでしょうし。 声  『んあ?もしもし?もしもーし?』 智子 (……?さっきは女の声だったけど……次は男?) 彰利 「ああ……キャンディケ〜〜〜イ……どうしてさっきは切ってしまったんだ」 智子 「ぶほぉっ!?」 ウヒョオ!? 智ちゃんが!智ちゃんが盛大に噴き出した!! ……どうやら相手が男だと解ってるのに、 そのままキャンディを突き進んだのがツボに入ったらしい。 声  『キャンディ、って……それロードキラーの真似か?     おいおい……人がいろいろ覚悟決めてる夜に悪戯はやめてくれよ……』 彰利 「そんなことを言わないでくれキャンディケ〜〜〜イ……!     私は寂しいんだ……私の悲しみを癒しておくれキャンディケ〜〜〜イ」 ……チラリと脇を見てみる。 と、二人は壁と対面しながら蹲り、肩を盛大に震わせていた。 彰利 「ところでキャンディケ〜〜〜イ……キミは今どんな下着をつけているんだい……     キミの容姿を教えておくれキャンディケ〜〜〜イ……」 二人 『ばぶふっ!〜〜〜〜〜っ…………!!』 二人の悶絶度が上がった。 声  『うわ、もしかして変態か!?…………あのな、解ってると思うけど俺男だぞ?』 彰利 「ああ……キャンディケ〜〜〜イ……キミは音子という名前なのか……。     素晴らしい名前だねキャンディケ〜〜〜〜イ……」 声  『すげぇポジティヴな受け取り方だなおい!!     しかも音子とか言っておきながらまだキャンディ・ケイ言うのかよ!     あ、あのなぁ!俺は男で!つけてる下着は当然トランクスだ!』 彰利 「そうなのかキャンディケ〜〜〜イ……     男ものの下着をつけるのが趣味なのかキャンディケ〜〜〜イ」 声  『人の話を聞けよ!!おぉおおおおおおおこいつ腹立つ!すげえ腹立つ!!』 彰利 「ああ……怒らないでおくれキャンディケ〜〜〜イ……     私はただ話相手が欲しかっただけなんだ……。     キミを怒らせるつもりなんてなかった……信じておくれキャンディケ〜〜〜イ」 声  『怒らせる気満々だろうが!なんなんだよお前!!』 二人 『ぶばっ!ごっは!ぷははははははは!もうだめ!ぶはははははは!!!』 声  『……?おい、誰か笑ってるのか!?やっぱり悪戯じゃねぇか!』 彰利 「ち、違うんだキャンディケ〜〜〜イ……!     あれは通りすがりの酔っ払いが笑っているだけで……!     私は悪戯などしていない……信じておくれキャンディケ〜〜〜イ」 二人はもう服が汚れるのも構わず、道路を転がりまわって笑ってる。 あのね、こういうの、やってる本人も結構笑いこらえるの大変なんですよ? 彰利 「お、お詫びに私の容姿を教える……     キミもきっと気に入ってくれるさキャンディケ〜〜〜イ……。     私は頭から足首へと下にいくにつれ、     ボンッ、キュッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、キュッ、といった悩ましボディで」 声  『土偶じゃねぇかよそれ!!』 二人 『ほがあぁああはははははは!ぶはははははははは!!!!』 二人の笑撃が今、頂点へと達しました。 彰利 「お、怒らないでおくれキャンディ《ブッ》あ」 また切られてしまった。 そして彼と彼女の息はとっくに切れていた。 閏璃 「ひはっ……はひっ、ひぃっ……!」 智子 「も、もーだめっ……もうやだっ……は、あはははっ……!」 うむうむ。 楽しそうでなにより。 ……これだよな、やっぱ。 なんかしっくりくる。 こうして現実世界に戻ってきて、こうして時間がある時─── どうしてか、誰かの分まで楽しまないといけない気がした。 だからこんな状況なのに笑っていることは、間違いじゃない。 彰利 「…………ふぅっ……」 なんだろうな。 本当に訳の解らない感情だけど…………誰かに、心の底からありがとうを贈りたかった。 俺たちは元気でやってるって、どうしてか絶対に届かないと確信しているその言葉を、 それでも誰かに届けたい気分だった。 そんな気分をゆっくりと深呼吸とともに噛み締めながら、 どうしてか緩むことをやめない頬のまま、閏璃を起こして歩き出す。 閏璃 「あ……やっぱか」 彰利 「ああ、やっぱりだ」 閏璃も顔がニヤケたままだった。 笑ってないとウソだって気がするから、にしたってニヤケが止まらない。 だから俺とウルーリィは肩を組んで、 ドラゴンボールZ初期OPの大猿のようにリズムに乗りながら、 スキップみたいな歩きをした。 智子 「って、だからちょっと待ちなさいって……!」 彰利 「OH?」 閏璃 「どうした智ちゃん」 智子 「どうした、って…………ねぇあんたら何処に住んでるの?」 彰利 「貴様に言う必要などない」 閏璃 「禁則事項です♪」 智子 「ねぇ。あんたらほんっっとに女に興味がないの?」 彰利 「だってアタイら既婚者だもん。     結婚すりゃ……いや、恋人が出来たらその子にゾッコンラヴですよ?」 閏璃 「その通りだ。子供だって居るぞ?」 智子 「うぇええええっ!!?えっ……い、今何歳……!?」 彰利 「1040あたり?いちいち覚えてねーや」 閏璃 「適当に50あたりでいいんじゃないか?ヒロラインのも合わせて」 彰利 「おお、せやね」 智子 「ちょっと……真面目に訊いてるんだけど?」 彰利 「信じる信じないは貴様の勝手さ。だが俺達ゃウソは言ってねー。     マイサンはもう高校だし」 ポカン、という擬音がよ〜く似合いそうな顔で停止された。 まあいいやね、もう会うこともあるめーよ。 彰利 「ほいじゃーね智ちゃん。アタイらはもうちっと遊んで行くわ」 閏璃 「お土産どうしようか」 彰利 「やっぱあれじゃね?頭にネクタイ巻いてさ、     千鳥足で焼き鳥の包みを人差し指と親指で摘んで帰る」 閏璃 「おお!昔懐かしの典型的な酔っ払いお父さんスタイルだな!」 歩いてゆく。 ほんと、酔っ払いみたいに無駄に燥ぎながら。 けど酒はそう回っておらず、むしろハイになってるのは心だけ。 暖かい心が俺達をこんな気分にさせた。───そんな時。 声  「きゃああああーーーーーーーーっ!!!!」 離れた位置から聞こえる悲鳴───ぬうこの声は智ちゃん!? 彰利 「ウルーリィ!」 閏璃 「おお!」 ともに引き返す! しかし元々歩いてでの行進だったので、そう時間はかからず元居た場所に辿り着き…… タケオ「キ、キ、キ……キミカワイイねぇ……!!ハァハァ……!《ウネウネウネ……!》     うぅう〜〜〜んその嫌がる顔!たまらないねぇえ〜〜〜!!《ウニョオオオ!》」 智子 「やだぁあああ!!汗臭い!!」 …………竹尾タケオと出会いました。 うわー、こいつまだ居たんだ。 最後に会ったのってキリュっち助けた時だったっけ? 相変わらずウネウネ動いてて気持ち悪い。 彰利 「おいこらー、そこのタケオー?」 タケオ「ううん!?なんだいキミは!僕は今この娘と話しているんだよぉ〜〜〜!?」 彰利 「嫌がっているじゃないか」 タケオ「それがやがて快感に《バゴォ!》ぶげっぴ!」 彰利 「価値観を押し付けないっ!───漢らしくねぇ!」 タケオ「な、殴ったね!?僕を!     価値観だかなんだか知らないがっ……じゃあなにが漢らしいっていうんだい!?」 彰利 「曲がらぬ信念!いやさ“芯念”!!     男ってのはなぁ、力で田を支えるって意味で成り立っている!     田ってのは糧を育む領域だ!     それを力で守っていて、そこで育まれたものが個々の個性!!     みんなそれを振りかざして生きてんだ!     だがそれが多念すぎたら個性じゃなく蔓延しているどこにでもある他性だ!     だからみんなそこに一本の芯を差し込むんだよ!     決して己が曲がってしまわないように!     さんずい!くさかんむり!口!ニ!そこに芯を通して足とする!     田を育む水を脇に!草の冠被って口で語り!     両手を伸ばして芯を大地に立てる足とする!それが漢!!     ただの男である貴様などでは到底理解出来ぬ領域……それが漢!!」 タケオ「……なにを言ってるんだ〜〜い?邪魔だからさっさと───」 彰利 「漢とは!なろうと思い至るものに非ず!己の生き様こそが!通してきた芯こそが!     心に誓った覚悟こそが!男を漢へと変えるのだ!!     故に欲望に正直だろうが多少のことで心を折るであろう貴様は……漢に非ず!!     よって制裁を加える!歯ァ食いしばれ!!」 タケオ「な、なにを《バゴシャア!!》ぶぅっひぃ!?」 再びナックル! 拍子に地面をゴロゴロズダーーーーッ!と滑った竹尾タケオをゆっくりと追い、 バキベキと指を鳴らしながら筋肉を隆起させる。 彰利 「愛を知れ……竹尾タケオ。貴様のそれは愛ではなくただの下品な妄想でしかない。     エロに愛を注ぐのならば、より深みに沈むがいい……。     貴様の所業は全て半端。極に至れぬまがい物よ───!」 タケオ「ひっ!ま、待ちたまえぇえ!僕は」 彰利 「おぁあああたぁあああああっ!!!」  ボリュドガァンッ!! タケオ「ひぇぎゃぁあああああああああっ!!!!」  シュゴォオーーーーーーーーッ…………キキーードカーーン…… 竹尾タケオのでっぷりとした腹を殴り、遙かに続く道の先へと吹っ飛ばした。 その先の先でなんか車に撥ねられてたみたいだけど───ゴシャア! 声  「うわぁああーーーっ!!!だだだ誰かが車に撥ねられたぞーーーーっ!!」 声  「そのまま地面に叩きつけられるかと思ったら     誰かに当たって無事だったぞーーーーっ!!」 声  「下敷きになった男は首が460度回ってるぞぉおーーーーーーっ!!!」 声  「頭から地面に叩きつけられた所為で頭蓋が露出してるぞぉおーーーーーっ!!!」 声  「顎が外れて頬の皮が裂けて夥しい量の血が流れてるぞぉーーーーーっ!!!」 声  「い、いや大丈夫!生きてる!生きてるぞぉおおーーーーーーーっ!!!!」 …………。 彰利 「武流豚くん…………こんな夜中になにやってたんだろ……」 閏璃 「え!?武流豚くん!?     俺ナマ武流豚くん見たことないんだけどほんとに武流豚くん!?」 彰利 「首が460度捻れて頭蓋が露出して出血多量でも生きてる……     そんなのは武流豚くんしかおるめぇよ」 閏璃 「……………………それ、人間なのかなぁ」 彰利 「間違いなく人間です」 智子 「きゅ、救急車呼ばなくちゃ!」 彰利 「大丈夫だって。武流豚くんだし」 閏璃 「……だな、武流豚くんだっていうならなぁ」 智子 「えぇ!?で、でもだって!輸血とかしなくちゃ死んじゃうわよ!?」 彰利 「いやぁ大丈夫だろ、武流豚くんなら」 閏璃 「そだな。武流豚くんだし」 智子 「えぇえええ…………!?」 彰利 「キミねぇ、神降に住んでるんなら武流豚くん伝説くらい知っとかなきゃいかんよ?     ジャパニーズ巫女様とゴッドハンドに次ぐくらいの神降伝説の一つなんだから」 智子 「ジャパニーズ巫女様とゴッドハンドは知ってたけど……ぶ、武流豚くん……」 閏璃 「ゴッドハンドって……あれか?」 彰利 「オウヨ、その方にかかればどんな怪我も治ると云われたあの伝説」 閏璃 「あったなぁ〜そういうの。一時を境に、忽然と消えたとかいうけど」 お懐かしい限りです。 彰利 「つーわけでキミもう家帰りなさい」 閏璃 「なんか貴様と居るとトラブルに巻き込まれそうだ。主に頭がイカレた男どもの」 智子 「うう……」 しぶる智ちゃんを無理矢理転移で連れ出すと、智ちゃんのマンションまでひとっとび! 智ちゃんはえらく驚いてたけど、特撮じゃよ〜の一言で納得してくれた。 そんな智ちゃんのマンションに月聖力を張り巡らせ、 邪な思いで近寄る者を近寄れなくする結界を作った。 これでおーけーね? 智子 「……なんかもう酔っ払ってるんだ〜ってことにしとく。酒の所為でいいわもう」 彰利 「うす。ほいじゃあぬくくしてろな?」 智子 「その……あんがとね。あそこまで笑ったの久しぶりだった。     学生時代の自分思い出せたみたいで……その、楽しかったわよ。     ……それだけ。それじゃ」 キィ……バタンッ。 ……悪は去った。 彰利 「よっしゃー次いくべー!次こそラーメンじゃーーーい!!」 閏璃 「おーーっしゃーーーっ!!」 肩を組んでずったか歩き。 腰をそこまで屈めないコサックダンスをするような歩き方で、 アタイらはラーメン巡りの旅に出たのでした。 【ケース843:弦月彰利(再バイマン)/最後のヴァンさん5】 でげでーーーーん! 彰利   「静粛に〜〜!!」 閏璃   「静粛に〜〜!!」 彰利   「ア〜ッ!ア〜ッ!」 閏璃   「こりゃこりゃ!」 彰利   「さんはいっ!」 彰利&閏璃『行進始め〜!!』 ドトシャーーーーーンッ! ファ〜〜〜ファカファッファッファッファッ♪ ファ〜〜〜〜ファカファッファッファッファッヒョロロ〜〜〜〜ッ!! デーゲーデテンッ!ドンッ! 彰利 「ル〜〜〜〜〜〜〜〜ファウスールーファウス〜神羅っ♪」 でん!てんっ! 閏璃 「ル〜〜〜〜〜〜〜〜ファウスールーファウス〜神羅っ♪」 でんっ! 彰利 「われらが〜〜〜しぃ〜〜〜んん〜〜らぁっ」 テンッ! 閏璃 「カ〜〜ンパ〜ニィ〜イッ」 テンッ! 彰利&閏璃『あぁーーーーーーたらしぃーーーーーっ!!!!       社長ォオオオオオーーーーーーーッ!!!!』 デーゲテンッ♪ 彰利 「お〜〜〜おお〜〜お〜〜おおっおっ神羅〜〜〜〜〜♪」 閏璃 「おっおっ神〜羅〜カン〜〜〜〜〜パ〜〜〜〜ニ〜〜〜〜〜〜♪」 彰利 「ニュウエイ〜〜ジ〜じだ〜〜い〜〜〜を〜〜〜〜ぉ〜〜〜♪     きっずっく〜〜〜♪ル〜〜ゥファウスッ新っしゃっちょぉおお〜〜〜〜♪」 閏璃 「お〜〜〜おお〜〜お〜〜おおっおっ神羅〜〜〜〜〜♪」 彰利 「おっおっ神〜羅〜カン〜〜〜〜〜パ〜〜〜〜ニ〜〜〜〜〜〜♪」 閏璃 「ニュウエイ〜〜ジ〜じだ〜〜いを〜つく〜〜るっ♪     こっれっかっらっも〜神羅が〜一〜〜番っ♪」 デンテンッ!でんてんっ!でげでででででででんてんっ♪ 彰利 「ル〜〜〜ファ〜ウスルーファウス神っ羅っ」 デ〜ゲデッテッテッテ♪ 閏璃 「ル〜〜〜ファ〜〜ウスルーファウス〜神っ羅っ」 デンッ! 彰利 「我らが〜〜し〜〜んん〜〜らっ!!」 テンッ! 閏璃 「カーーンーーパニーィッ!!」 テンッ! 彰利&閏璃『あーーーったらしぃーーーーっ!!!       社長ォオオーーーーーーーッ!!!!』 デーゲテンッ!! 彰利 「おーおおーおーおおっおっ神羅〜〜〜〜♪」 閏璃 「おおっ神〜羅〜カン〜〜〜パ〜〜〜ニ〜〜〜〜♪」 彰利 「ニューエイ〜ジ〜じだ〜〜い〜〜を〜〜〜ぉ〜〜〜♪     きっずっく〜ル〜〜ゥファウスッ新っしゃっちょぉお〜〜〜〜っ!!!」 閏璃 「お〜〜おお〜〜お〜おおっおっ神っ羅〜〜〜♪」 彰利 「おっおっ神〜羅〜カン〜パ〜〜ニ〜〜〜♪」 閏璃 「ニューエイ〜ジ〜じだ〜いを〜つく〜〜〜るっ♪     これからも〜神羅が〜いちぃいいいばんっ♪」 デンテンッ♪シャーン♪デンテンッ♪シャーン♪デゲデデデデデデデンテンッ♪ 彰利 「ルーファーウス〜ルーファウス神羅っ」 デーゲデッテッテッテ♪ 閏璃 「ルーファーウス、ルーファウス、神羅ッ」 デンッ! 彰利 「われらがーしぃーーーぃーーーんん〜らぁっ!!」 デンッ! 閏璃 「カーーーンパーニイーィッ!!」 デンッ! 彰利&閏璃『あぁあーーーたらしぃーーーっ!!!       社長ォオオオーーーーーーーッ!!!!』 デーゲデンッ!!ワシャーーーン!! 彰利   「おーーおおーーー!!おーーおおっおっ神羅ぁあーーーーーーっ!!!」 閏璃   「おっ!おっ!神ンンン羅ァアアカンンンパァアアニィイイイイイッ!!!!」 彰利   「ニュ」 おじさん 「うるせぇぞてめぇら!!!」 彰利&閏璃『あ、ご、ごめんなさい……』 怒られてしまった……。 とまあそげなわけで、 ウルーリィと肩を組んでずったか歩きでかなりの距離を歩いたわけですが。 なんだか楽しくなってきてルーファウスパレードのテーマを歌ってた所存です。 そっちの方でもだんだん熱くなってきまして。 気づいたら大声で熱唱してました。いいよね、あの歌。 でも歌いすぎて、歩いてた道の塀の向こう側の家の窓が開きまして。 顔を出したおっさんに思いっきり怒鳴られてしまいました。 ちぃ、大声を出す素晴らしさの解らんヤツめ。 現代人には“シャウト”が足らんのだ。もっと大声を出さねば。 ちなみに音楽は月奏力で出してました。 くそう、せっかくノってたのに。 閏璃 「で……結局屋台ラーメン見つけられなかったわけだけど」 彰利 「もう夜中っつーか明け方じゃけぇのぉ……」 ちと遊びすぎた。 さすがに屋台だろうがもう撤収してしまった後でしょう。 それでもいろいろメシは食ったからヨシですかね。 ラーメンとは関係ないもんばっか食ってた気がしねーでもないけど。 彰利 「じゃ、いろいろ準備もあるし……今日は戻るか」 閏璃 「そだな。楽しい思いできたし」 そげなわけで帰宅が決定。 どうせならラーメン屋見つけてから帰りたかったけど、こればっかは仕方ないや。 んじゃ、帰りますかい。 いい…………気分転換にはなったと思う。 こうしてゲームの世界から戻ってこれて……生き残れて。 てんで楽しめないままにルドラに殺されでもしたら、なにかが無駄になる気がした。 そればっかりは我慢出来そうになかったからね。 じゃ、帰りますか。 きっとみんな、待っとうぜ。 ───……。 ……。 ぺ〜〜〜ぺ〜〜〜ぺぺっぺっぺ、ぺけぺっぺっぺっぺっぺ♪ デトント♪ 彰利   「きのこっのっこ〜〜〜〜のこ元気ノコ♪」 閏璃   「エリン〜〜〜〜〜〜ギまいたけブナシメジ♪」 彰利   「きのこっのっこ〜〜のこ元気ノコ♪」 閏璃   「おいし〜〜〜〜いキノコは」 彰利&閏璃『ランランルーーーーッ!!!』 …………。 ノート『言いたいことはそれだけか汝ら……』 ……えーと……蒼空院邸に戻ってきた直後の玄関ホールにて。 なんでかアタイら、スッピーを前に恐怖を感じていました。 ルー、の部分で両腕を天高く伸ばしたまま。……ホワイ何故? 彰利 「な、なんで怒ってるの?」 閏璃 「ルー」 ノート『この大事な時に無断で外をうろつき、     せっかくの時間を無駄にしていたからだ……!』 閏璃 「おいおいノートン先生そいつぁ違うぜ、あんたはなにも解ってない」 彰利 「ルー」 ノート『なに?』 彰利 「そうだぜスッピー先生。俺達ゃ“楽しまないとウソだ”という本能に従い、     今までの時間を夜の街ですごしてきたのよ。     そこにゃあ今ンところいっぺんの悔いもない」 閏璃 「ルーーッ」 ノート『悔い……?』 閏璃 「俺達はこれからなにをする?己の未来を賭けた血生臭い殺し合いだろ?」 彰利 「ルーーッ」 ノート『ああ、その通りだな』 彰利 「せっかく生きてヒロラインから出れて。     そしてまたちょっともしない内に殺し合い。     貴様、そんな風に我らを縛って死なせてしまって、     悔いを浄化できる自信がおありか?」 閏璃 「ルーーーッ!!」 ノート『む……』 閏璃 「俺達は楽しんできたぞ。そしたら胸の切なさが少しだけ納まってくれた。     貴殿はどうだ。これから急に死闘に赴くことになってなお、     胸につかえた何かに胸張って顔向け出来るのか?」 彰利 「ルゥーーーッ!!!」 ノート『やかましい!!』 彰利 「ヒィイごめんなさい!!」 ランランルーに対してリアクションがなかったから、 ルールー言いまくってたら何故か俺だけ怒られた。 彰利 「で、でも、少なくとも俺達にゃあそれが出来そうになかったのよ。     胸張って、その“何か”に顔向けすることが。だから走ったのだッッ!」 ノート『ふむ……』 スッピーが自分の胸に手を当て思考を回転させた。 ……すると、思い当たるなにかがあったのでしょう。 小さく笑むと、“武具との同調率を高める、さっさと来い”と言って踵を返した。 彰利 「………」 閏璃 「………」 胸につかえたなにかよ、ありがとう。 俺達ゃどうやら、“あの時ああすりゃよかった”とかそう考えずに戦えそうだ。 Next Menu back