───未来への飛翔/黒の夢V───
【ケース856:カオス/黒の夢9】 コキュゥウウィイイッ!!!! カオス『ブラスティングミーティアァアーーーーーッ!!!』 炎風を纏ったオレが流星の如く。 バイソン将軍(笑)のサイコクラッシャーのように空を飛び、オリジンへと突っ込む! しかしそれはあっさりと躱され、擦れ違い様に手刀を落とされ、地面に叩き落とされる。 カオス  『〜〜〜っつぅう……!!』 黒オリジン『突風の流星か?大層な名前だが当たらなければ意味がないな』 カオス  『うるせー!名前なんて使用者が勝手につけられるんだから、       どんなに弱くてもカッコイイほうがいいに決まってンだろうが!』 と言いながら何回叩き落とされたことか。 何度も攻撃を当てては吹き飛ばし、反撃を食らって吹き飛ばされの連続。 撃った技のどれもに“ミーティア”がついているのは、 単にギガンティックミーティアの名前が大好きだからである。 懐かしいなぁドラゴンボールZ。 スペルはMeteor。メテオだな、普通に読むなら。 ブロリーほどステキな敵キャラを、様々な作品を通してオレは知らん。 なんかこう、惹かれるわけですよ。 最後は一撃で死ぬというセオリーを忠実に守ってらっしゃるが。 あ、でもバイオブロリーはブロリーファンを敵に回したね、絶対。 そしてジャネンバ編で絶対に出てきてくれると信じたのに出てこなかった…… そんな事実に悲しんだブロリーファンはオレだけじゃない筈だ。 フリーザ様も完全にザコキャラ扱いだったなぁ……。 なんて暢気に構えてはいるが、実際状況はよろしくない。 流石は最果ての精霊だ……圧倒的な力を持っている。 カオス『うぉおおらぁああああっ!!!』 地面を蹴り、宙に浮くオリジン目掛けて刀を振るう。 だが紙一重でそれを躱してみせると、 一瞬で右手に集束させた魔力をオレの腹へと押しつけガバァォンッ!! カオス『ぐあぁあはぁっ!!?』 魔力が爆発すると、俺は体勢を立て直すまでの間、宙を飛ぶこととなる。 立て直してからもすぐ目の前までオリジンが迫っていて、 慌てて振るう刀が杖に弾かれ体勢を崩される始末。 どう見たって魔術師系の精霊だっていうのに、 接近戦にも長けているこの相手に文句のひとつでも言いたくなるってもんだろう。 黒オリジン『Chant!我───』 カオス  『ディスペル!』 黒オリジン『《ガシャアンッ!!》っ───チィ!!』 だが魔術戦に持ち込めば、負けるのはこちらと確定している。 だから相手が詠唱をすれば即座にディスペルで破壊し、 その隙に高速思考を展開して連続魔をブッ放す。 黒オリジン『貴様───!人の魔法を潰しておいて───!』 カオス  『うるせぇクロジン!滅茶苦茶な強さしてるくせに魔法破壊くらいで怒るな!』 黒オリジン『クロジン!?』 黒オリジンじゃあ面倒だ。 もうクロジンかマラジンで十分だ。 そう毒を吐くように吐き捨てて、撃を連ねてゆく。 刀での撃が杖を弾く度に柄と鍔に備わった銃口が火を噴き、 FF8のガンブレードのようにクロジンを襲う。 その銃口はナハトズィーガーであり、 一口に銃撃とはいっても、威力は拳銃なんかの比ではない。 最初から相手を殺し尽くす気で行っている……当然、この銃も既にSUVウェポン。 様々なSUVウェポンの威力を凝縮させた、 倍化能力のSUVウェポン、カイゼルインパクトだ。 当然フルウノングンの効果も混ざっているために、破邪効果や対黒能力は類を見ない。 黒の能力には彰利の死神能力や家系の能力も混ざったものだ。 故に、たとえ精霊であったとしてもこの弾丸はかなりの効果を齎す。 ……もっとも、当たればの話だが。  ガンガガガガガガガォンッ!! クロジン『無駄だ。単調な軌道でしか飛ばぬものを食らってやるものか』 連続して撃っていくが、結果は変わらない。 隙を突くように撃ったところで器用に躱され、やはり当たらないのだ。 だがそんなことは何度も撃ってれば解るってもの。 オレは空中を飛翔しながら銃を乱射し、同時に破天弾や剣閃を放ってゆく。 飛び道具の雨の中を、まるでシューティングゲームのむかつく敵機のように アクロバットに躱すクロジンに流石に呆れ果てるが、今はこれでいい。 こうして撃ち続けてれば、かならず一瞬だろうが隙は出来る。 なにせ、当てるための飛び道具ではなく体勢を崩させるための飛び道具なのだから。 今はこうして───って今!! カオス『疾空刀勢(シックウトウセイ)!!』 銃と剣閃と破天弾を乱射し、ここだと思う瞬間に空気を蹴って一気に間合いを詰める! クロジン『なにっ!?』 カオス 『画竜点睛(フランバージュ)ショットォッ!!!』 そして詰めるや高速回転しながらの灼熱脚!! クロジン『《ヂィッ!》くぐっ!!』 カオス 『!?』 だがそんな奇襲さえも躱され、すぐさまに突き出される杖の反撃をギリギリで躱し─── カオス『ちぃっ!どこまでアクロバティックなんだよぉっ!!』 出来れば使いたくはなかった奥の手を発動させる。 これを使っちまえば罪悪感が嫌でも膨れ上がる。 けど、勝つためには無駄を遺したくないと思ったから、使った。 カオス 『邪神ゲンドラシルのスキル!“デッドイーター”!!』 クロジン『───!なにっ!?』 途端、この戦いで殺された者や死んだ者の魂がオレのもとへと一気に集う。 ゲーム内ではあまり使う機会がなかった“変身後能力”のひとつだ。 死者の魂を食らい、自分の力に変換するゲンドラシルの能力。 それを以って、オリジンを相手にするには足りなすぎた力に活力を与えてゆく。 クロジン『死んだ者の魂を力に……!?貴様!』 カオス 『生憎とオレは、手段を選びたがらない原中の大半で成形されてるんでね!』 さすがのオリジンもこの行動は予想外だったのか、大きな動揺を見せた。 もちろんその隙を逃す手などなく、再び振り切った灼熱脚が魂の輝きを見せる頃。 月詠街上空に、凄まじき轟音と閃光が高鳴り閃く。 クロジン『ぐあぁはぁっ!!』 振るった蹴りがオリジンの脇腹を強打する。 メキリ、という鈍い音を足に感じながらそのまま横に振りきるのではなく、 力任せに方向転換をして地面目掛けて───振り抜く!! 重力と勢いに導かれるままに地面へ向けて落下するオリジン。 それを疾空刀勢で追い、やはり一気に間合いを詰めると体を回転させ───! クロジン『っ……図に乗るな!ブラストボルト!』 いや───肉迫するよりも早く、オリジンが無詠唱で魔法を仕掛けてくる! だがそんなものを気にかける必要もない。 何故なら、対魔法の究極兵器は我が左手に存在しているのだから。 カオス『マジックキャンセラァアアアアーーーーーーッ!!!』 迫る風雷の塊を、身を捻るのを続けながら振るった左手で───  ガオォンッ!!! まるで空間を削り取るように、消滅させる───! クロジン『───!なんだと!?無詠唱とはいえ、我が魔力で放った魔法が───ハッ!』 カオス 『図が高ぇやつは本当に隙を突くのが簡単でいい……負けて死ね!!      ブゥウウウロシェットォオオオオオオオオオッ!!!!!』 魔力に誇りを持つ精霊だからこその驚愕と動揺。 落下したままに思考を固めるその胸部へと、オレの足が突き刺さるのはその直後だった。  キュゴドガァンッ!!! クロジン『ぐがぁっ!!?がぁああああっ!!!!』 様々な属性、様々な武具効果。 そして魂の宿った螺旋脚がオリジンの体を地面に串刺しにするように突き刺さる。 当然相手の黒としての密集度を考えれば貫けもしなかったのだが、 それでもオリジンは黒の血を吐き出し、悲鳴をあげた。 そうして派手に地面に着地するや、 オレはオリジンを足で固定したままに拳を握り締めると、 そのまま倒れ伏すオリジンの顔面目掛けて拳を振り下ろす!! クロジン『!《ゾルドガァォンッ!!!》』 カオス 『───!チィッ!』 だが拳は地面を殴るだけに終わり、 影に沈んだオリジンはオレの視覚から完全に消え去る。 影───そう、影だ。 影に潜ったということは、地面に居るのは得策じゃない。 そう感じたオレはすぐに地面から離れると、 直後に影から飛び出してきたオリジンを迎え撃つように刀を振るう。 カオス 『野郎ッ……!最初っからこの状況狙ってやがったな!?』 クロジン『空中での戦いに慣れている者など居はしないだろう?      敵の弱点を突くのは戦いにおける常套手段だ。      ……よもや、卑怯とは言うまい!』 カオス 『卑怯者!!』 クロジン『戦士としてのプライドがないのか貴様は!』 カオス 『プライドなんぞで戦いに勝てるか駄阿呆!!』 振るった刀が杖で弾かれる。 晦と彰利が居ないからといって、こちらはレベル50万あたりだってのにこの力量差。 つくづく晦の修行馬鹿っぷりと、 恐らく最果てに辿り着くまで修行しまくっていたであろう時間の長さに呆れを漏らす。 カオス 『我唱えん!我らを宿す黒き大地の上に!      さしずめ、鈍色の剣の如く!太陽の目から遠く!死の岸辺に誘う!』 それでも今は目の前のことに集中。 言を唱え、体中を魔法陣が包むと、それを見たオリジンが可笑しそうにオレをねめつける。 クロジン『馬鹿めが……!この距離で魔法なぞ撃てば巻き込まれるだけだ!』 カオス 『へっ!魔法が撃つだけのものとは限らないぜ!』 昔の格闘漫画の主人公よろしく、 思わず鼻をこすってしまいそうな言葉とともに魔法陣を弾けさせる。 詠唱は頭の切り替えをするためのもの。 必要な言は頭の中で構築済みだ───それを一気に弾けさせると、 魔法で自分の身体能力を向上させてゆく。 魂をブーストにすることで、まあ嫌な表現になるが、“死神側”の能力が極大上昇。 月詠街側のやつらの大半は死神側の人間が多いために、 その上昇率は異常ともとれるほどだった。 カオス(あー……すまん、人の魂吸収することがクセとかになったら耐えてくれ) そう心の中で思いながら、上昇した力を以ってオリジンへ攻撃を仕掛ける。 もちろん空中に逃げたオレを相手が追う形になっているために、 攻め向けの攻撃なんて出来ないが─── カオス 『っ───せいぃっ!!』 クロジン『《ギ、キィンッ!!》ぬっ!?』 刀を弾かれ、多少不利な状況だった体勢。 それを、無理矢理もどした刀で弾き返して立て直す。 そう、足りない能力は他から貰って補う。 それをオレ達はゲームの中で散々と学んできたのだ。 このステータス移動だってそのひとつ。 力負けするんだったら力を上げればいい。 ただそれだけの、シンプルな答えである。 カオス 『しぃっ!!』 だが、シンプルイズベスト。 単純だからこそ、単調だからこそ突き詰められるものがある。 オレ自身あまり好きじゃない言葉だが、正論は正論だ。 振るう刀が杖を弾き、勢いづいていたオリジンを跳ね返すように地面に押しやると、 ようやく大地での戦いが始まる。 卑怯だどうだと言っていた手前、すぐに影に逃げるのはプライドが許さないのだろう。 オリジンは地に足をつけても影に潜ることはせず、正面からオレとの剣合を続けた。  ギィンガギィンギガガガガガガガヂギィンッ!!! クロジン『ぬっ……ぐう!!』 袈裟斬り、振り上げ、連突、薙ぎ払い。 出来るだけ無駄が出ないよう刃を振るい、隙を殺しながらの攻撃。 確かにオリジンは力も素早さもオレなんかより相当に上だろう。 だが、近接戦闘の経験はそう高くない。 力任せに杖を振るい、押し退けることが精々。 だからこうして隙の無い連打には弱く、やがて防戦一方になり、 防御のパターンを読み初めてからは攻撃が当たるようになってゆく。 クロジン『ちぃっ……!フリジット───』 カオス 『ディスペル!』 クロジン『《ガシャアンッ!!》───チィ!ならば』 カオス 『マッジックキャンセラー!!《ガガガガガガガォオオンッ!!!》』 クロジン『くっ……!ぐ……!!』 押す……!圧す、押す……!! 詠唱をディスペルで破壊し、無詠唱魔法をマジックキャンセラーで破壊! その間にも刀での攻撃をやめず、やがて振るう一撃一撃がオリジンの速度を越えてゆく。 相手が構え終えるより早く攻撃できれば当然、相手の防御ごとを軽々と崩せる。 一撃目に弾き、二撃目に崩し、三撃目には無防備な相手へと撃が通る───! カオス 『おぉらあぁっ!!』 クロジン『《ザゴゴバァォンッ!!》ぐ、ぉおっ……!!?』 そうして、ようやく一撃。 今までのような掠る程度のものじゃない。 刃がオリジンの肩から脇腹までを斜に切り裂き、 放たれたSUVウェポンがその傷を一気に広げた。 痛みと斬られた反動にたたらを踏む姿───そこに休むことなく追撃を───!! カオス 『おぉっ───りゃぁっ!!』 クロジン『くっ……図に、乗るなと……言った筈だ!!』  ルフォガギャアンッ!!! カオス『つっ……!?』 とった、と思った追撃は、オリジンが振るった杖によって弾かれる。 無茶な体勢から振るった割には強烈な一撃─── しかも弾かれた武器から手に流れるように、奇妙な気だるさが滲み込んでいき…… カオス 『な、なんだ、こりゃ……力が抜ける……!?』 クロジン『魔法が使えない、消されるのならエンチャントさせればいいだけのことだ。      ……どうだ?束の間の優勢は心地よかったか』 カオス 『、くそっ……』 クロジン『マジックキャンセラーを使えば、貴様を包む魔法効果も消えるが、いいのか?      それ無しで戦えるほど、私は弱くないぞ』 カオス 『動けないよりはぁ……マシなんだよ!!』 痺れた右手に左手のマジックキャンセラーを当て─── クロジン『フッ!愚かなことだ!』 ───ようとすると、オリジンが杖を振るってくる───という予想の範疇を捉え、 振るわれたエンチャントロッドを左手で受け止める!! クロジン『なにっ!?貴様!』 カオス 『甘いんだよっ!魔法馬鹿のお坊ちゃんが!!』 そうしてから完全に動かなくなる前に右手力を込め、 体ごとぶつかるようにして刀を突き出す!! 咄嗟に魔法を使おうとするが、 杖をマジックキャンセラーで掴まれているためにエンチャントも出来ず、 無詠唱で魔法を使おうが詠唱をしようが、こちらはこの攻撃をやめるつもりはなかった。 一撃くらいは覚悟の上!だからその命をこのオレに差し出しやがれ!! クロジン『チイィッ!!』 カオス 『《ガクンッ!》うっ───!?』 力を込めて握っていた杖から、相手の力が消える。 あろうことかオリジンは杖を放棄し、 空いた手に魔法を圧縮させるとすぐさまにオレの腹へと押し当ててきた! 直後に、右手に手応え。 突き出した刀はオリジンの腹を貫き、 オリジンが押し当てた魔法はオレの体をバガァッチュゥウンッ!! カオス『ッ……ぐがぁあああああっ!!!!』 ───強烈な爆発で、後方へと思いきり吹き飛ばした。 吹っ飛んだのは一瞬だと思いきや、その距離は呆れるくらいのもので─── 体勢を立て直して着地するつもりが、 予想以上の勢いに体を持っていかれ、着地と同時に転倒。 地面を跳ね転がり、 血を吐きながら倒れ伏した頃にはオリジンの姿は遙か遠くのものとなっていた。 カオス『いっ……づ……!!』 視界が揺れる。 立ち上がろうとしたがなかなか上手くいかず、 刀を立てながらようやく立ち上がれはした程度。 一撃くらう覚悟でいったのはよかったが、一撃でのダメージがデカすぎる。 魔力量のケタが違うんだ。 これじゃあもし古代魔法でもくらった日には、跡形もなく吹き飛んでしまうだろう。 カオス『つぅ……!無茶苦茶だな、くそ……!』 右腕に走る痺れをキャセラーで消すと、痺れと同時に消えてしまった強化魔法を掛け直す。 だが……違和感。 ヨロヨロと立つオレを追撃もしないで、オリジンはいったいなにをしているのか。 そう思った時、遠く離れたオリジンの遙か頭上の空。 そこに巨大な灰色の球体が作られていくのを見た。 カオス(あれってまさか……古代魔法!?いや、それよりも上……やばい!) そう思った瞬間には、灰色の炎の塊のような巨大な球体がオレ目掛けて放たれる。 空中から斜に落ちるそれは、避ければこの地一帯が焦土と化すことはおろか、 ここだけでは済む筈がないことを瞬時にオレに理解させた。 ディスペルで破壊出来る魔力量は限られているし、マジックキャンセラーだって同じだ。 右手に“幻想殺し”(イマジンブレイカー)でもあれば、まだ違ったんだろうけど。 いいよなー、あれ。 なんて暢気に言ってられる状況じゃない。 世界を守るなんて大義名分なんて欲しくもないし、 地界を見捨てることで勝てるんだったら喜んでそうする。 が、残念なことにオリジンにとってのこれは、 何発でも撃てる魔法の弾丸のひとつでしかないのだ。 そんなのを避けまくった果てに地界が崩壊しては、空界にも影響が出る。 カオス『……はぁっ……!』 溜め息まじりの気合いをひとつ。 同時に高速思考を展開させて連続魔を発動。 近づいてくる巨大な魔法の塊にディスペルを掛けまくりながら疾駆し、 同じくこちらへ突撃を仕掛けながら、 手に魔力を溜めているオリジンへ向けて地面を蹴り続ける。 オレの左手にはオリジンの杖。 これを相手が以っていないって意味では、武器による魔力補助はないって考えていいが…… それでも相手が手に込められている魔力の量を感知すると、泣きたくなる。 カオス『…………』 なにかの拍子に奪われてはかなわない。 左手に持った杖をバックパックに仕舞いこむと、突っ込んでくるオリジンを迎え撃つ!  ガドォッ!! クロジン『なにっ───!?』 ……と見せかけて空気投げ。 正面からぶつかる気満々だったのだろう、 魔力を溜めた右手を盛大に空振ったオリジンは、 疾駆の勢いをそのままに右手を突き出した状態でキリモミしながら大地に落ちる。 それを確認すると、間近に迫った灰色の球体を振り向きザマにキャンセラーで破壊。 散々とディスペルをかけたソレはもう小さいもので、苦もなく掻き消せた。 そうして左手を突き出した遠心力を利用して再び振り向くと、 起き上がりと同時に低い体勢で飛び出したオリジンが、 右手に篭る魔力でオレを攻撃しようとしているところで─── カオス 『シュゥッ!!』 クロジン『《ヂパァンッ!!》ぐっ!?』 その顔面に居合い蹴りをかまし、怯んだ隙に右手にキャンセラーを重ね、魔法効果を抹消。 さらに掴んだままの手を強く引くと、 致死率の高い顔面ではなく面積の広い体を穿たんと刀を奔らせる。 だが掴んだ手ごと強引にこちらが引きこまれ、体勢を崩した拍子に刀は掠るだけに終わり、 ならばと自ら引かれるままに飛び込むと、 間合いの狭さを生かした膝蹴りをオリジンの顔面に叩きつける!  ドゴゴバァンッ!! カオス 『げはっ!?』 クロジン『っ……!』 だが、またも同時。 左手に魔力を溜めたオリジンの拳がオレの腹部に突き刺さり、 視界が点滅するくらいの鋭い痛みが腹に走る。 ───地面から離れそうになる足。 膝蹴りをしたために片足一本だったオレは、その攻撃に耐えられる筈もなく───否!!  ザシャアッ!! 片足が地面を離れるより速く、膝蹴りをしていた右足を無理矢理地面に落とすと、 全身に力を込め、歯を食い縛り、 吹き飛びそうになる体を強引にこの場に踏みとどまらせる……!! 勢いに持っていかれそうになる体を、筋肉が攣りそうになろうが地面に固め、 フラつくオリジンの顔面目掛けてぇええええええええええっ!!!!! カオス『くぉおおおおらぁああああああっ!!!!』 刀を……!振り下ろ─── クロジン『っ……無駄だぁっ!!』 否!オリジンは刀を振り下ろさんとする俺の姿に渾身を見るや、 一気に黒の密度を高め、感じられる殺気を倍化以上とも思えるほどに増幅させる!  ───ここだ! ここしかない!───そう思った俺は一度きりの超越を解放!! 刹那、驚愕に染まるオリジンの姿へと、勢いのままに刀を振り落としてぇえええっ!!  ザガァアッフィィンッ!!! 振り切った刃が肉を削ぎ、黒を斬り裂く!! 目の前で黒が飛び散りゾボォッ!! カオス『……、え……?』 ……二つに斬り裂かれ、飛び散った黒が二つの生き物になる。 途端に隙だらけのオレの腹に冷たい感触。 見下ろすと、オレの腹には黒いなにかが突き刺さっていて…… カオス(……なんだよ……これ───) 血が零れる。 二つに分かれた生き物はそれぞれサラマンダーとシェイドに変わり、 オレの腹に突き刺さっているシェイドの腕が、じわり……とオレから生命を削っていった。 声  『茶番は終わりだ、人間』 声  『束の間の優勢を崩すのは楽しいものだ……クク』 体が傾き、倒れ伏す。 ……なんてこと。 最初っから俺は踊らされていたのだと、すぐに理解できてしまった。 倍化以上なんてのは容易く引き出せて、 こいつらはそんな状態で二つに分かれても、俺を十分に倒せるほどの存在で…… カオス(なんだよ……じゃあ俺は……) 本当に、最初から遊ばれていただけなのだ……。 小さな笑い声を遠くに聞きながら、オレはやがて意識を手放した。 【ケース857:弦月彰利/決戦4】 タタタッ……トンッ─── 彰利 『無駄に長いねえまったく……オラァー!     アタイ様の惨状じゃあーーーーっ!!……惨状!?』 自分の言葉に驚きながらも、辿り着いた神社の境内……ではない場所で辺りを見渡す。 景色は似てはいるが、雰囲気もなにもかも違い過ぎている。 たとえばアタイが昔作った大樹っぽいのは同じ場所にはあるが、 神社のようなものは一切無し。 そう……喩えて言うなら、神社の境内があった場所にアタイの家の敷地っつーのか…… 約束の草原を持って来たような、そんな景色がここにある。 けど、進んで行けばきっとあるであろう滝壺や、 見上げれば存在する山々は神社の境内の景色そのままだと言える。 そんで───その広い草原の中心に、そいつは居た。 ルドラ『……彰利か』 彰利 『ランポスです。気軽に最終兵器ランポスと呼んでください。     アタイのモンハンシリーズのギルドカードの称号はそうして構成されている』 ルドラ『そんなことはどうでもいい』 一蹴でした。 彰利 『てめぇ……ダルシムの悪口ならいくらでも言っていいが、     ランポスをどうでもいいと言うのは許せんぞ』 ルドラ『………』 あ、無視した。 彼にとってダルシムはどうでもいい存在らしい。 ルドラ『……晦悠介は生きていたようだな』 彰利 『オウヨ?なにが言いてーのかよく解らんが、     下のほうでスコットノートンと戦っておるよ。そィで?キミはどうするんヨ』 ルドラ『……それはお前の目的にも関係していることだろう』 彰利 『自殺してください』 ルドラ『するかっ!!』 彰利 『や、だってさぁ……最近戦いばっかでいい加減疲れるってモンっしょ?     アタイは吉良吉影みたいに静かに暮らしてーのよ。みなさまと一緒に』 ルドラ『お前は……それが本当に静かに暮らすことになると思っているのか?』 彰利 『…………すんませんウソついてました』 考えてみれば静かな筈がねー! でも貫く志は失くさぬままに、今日もゆくゆく男ォーーー道ィーーーーッ!! ルドラ『……御託は必要か?要らんのならすぐにでも始めよう』 彰利 『あ、待った。御託必要だわ。死んで?』 ルドラ『それは御託とは言わん!』 どうあっても自殺はしてくれんらしい。 ルドラ『───……いいや、してもいいが、それは晦悠介を殺した時だ』 彰利 『じゃあここにアタイの影で作った悠介を用意。     ブレイカーでこれは影じゃなく悠介ってことにして、これを殺します。     はい死んで?』 ルドラ『死ぬかっ!!』 彰利 『なんだよこのウソつきが……』 ルドラ『ぐくっ……!このたわけはどの時代でも……!!』 彰利 『………』 ああ、なんだ。 結局はこいつは悠介なんだ。 ギリギリと呆れと怒りを堪える時の風情なんて、悠介そのものだ。 でも───……違うん……だよな。 こいつはもうルドラで、俺達が悠介と未来を目指すなら、殺さなきゃいけない相手で。 彰利 『………………ん、OK。覚悟決まったわ。やろうか、ルドラ。     お前が諦めてくれないなら、俺はお前を殺すしかない』 ルドラ『……ああ、それでいい。俺は晦悠介の死と同時に、自分の死も望んでいる。     だが晦悠介を殺せないままには死ねない……ただそれだけだ』 ルドラがラグを抜き、俺が篭手と具足の感触を確かめながら構える。 彰利 『それでも訊きたい。……この時代ででもいい、守らなくてもいい。     俺達と一緒に“楽しい”を探すことは出来ないのか?』 ルドラ『───……無理だ』 即答に近く、けど……どこか苦しげな言葉。 考えたことがなかったわけではない。 そう思わせるなにかが、その声色には混ざっていた。 ルドラ『ここで引いてしまえない理由が、もう俺には出来てしまった。     自分の意思ばかりをわがままに押し付け、     俺は……大切だったなにかを死なせてしまった。     それがなにかもわからないままにここに立っているというのに、これだけは解る。     もう……俺は引けないのだと。     死なせてしまったなにかに謝りながら手に手を取ることなど、今更出来ない』 その目には悲しみを。 心の底から悲しいことがあったのだと思わせる風情を以って、ルドラは俺と対峙していた。 ルドラ『大切なものがあった。     それは晦悠介を殺すことよりも、もしやすれば大切なもので……     だがそれも今は消えてしまったと解る。     なにが欲しくてこの時代に降り、誰に許してほしくて彷徨ったのか。     その全てが理解出来なくなってしまった以上……     俺はもうお前らと一緒の時間を過ごすことすら苦痛でしかない───』 彰利 『ルドラ……』 ルドラ『たった一度だけだ……───心から言おう。     …………すまなかった』 それは。 そのまま泣いてしまうんじゃないかってくらいの、懺悔の言葉だった。 目の前の男がなにを思ってそこまでを言うのか。 なにに対してそこまでを言うのか。 それは俺にも理解出来なかった……出来なかった筈なのに、 謝るくらいなら最初から……!と、喩えようもない怒りが湧き出してくるのが解る。 そこで理解する。 ルドラにとっての“ソレ”が大切なものであったように、 俺にとっても“ソレ”は、きっと大切なものだったのだと。 勝手にこの時代に来て、散々と様々なものを壊そうとしたルドラ。 そんな彼でも心から謝りたいと思ったことがあって、俺はソレに無関係ではなかったのだ。 だって……こんなにも悔しくて、悲しい。 彰利 『……喪失感なら俺の中にもある。     俺達みんなが忘れてるなにかがあって、     それがどれだけ大切だったのかも、今ならなんとなく解る。     その何かがあったからこそ、俺達は悠介との未来を目指すだけの理由じゃなく、     ただ漠然としたままでもお前達に負けたくないって思ってる』 ルドラ『それでいい。許しを乞いたいわけじゃない……俺はもうずっと、     ただ只管に自分が死ぬ理由と死ぬ場所を求めてきた。     この、記憶に残らぬ罪の深さは、俺を死へと誘うためには十分すぎる重さだ。     そして俺は……それを理由に死ねることが、嬉しいとさえ感じている』 ラグをゆっくりと構えるルドラの表情は、どこか穏やかに見て取れた。 ルドラ『晦悠介を軸から抹消する。そして俺も死ぬ。その意思は変わらない。     だがそんな、俺の中の当たり前の中で死ぬことになんの喜びがある。     毎日が楽しかった頃など遙か過去。今生きている俺はただの出来損ないの英雄で、     守ってきたものを自分の手で壊してきた殺人鬼だ。     そんな自分さえ殺そうとしている俺が、漠然とだろうが理由を持って死ねる。     俺はもう……それだけで十分なんだよ』 彰利 『誰かも忘れちまったヤツを理由に死ぬ……?それがお前の本望ってか』 ルドラ『“誰かのため”はもう必要じゃない。俺はただ理由が欲しかった。     全時間軸の晦悠介を殺す。最果てに辿り着いた晦悠介という自分を殺す。     なにかのためだだのと散々叫んできた自分……     そんな自分から離れた理由が欲しかった。     ───誰かも解らないヤツを理由に死ぬ?こんな俺には十分な理由だろう?』 彰利 『………』 ルドラ『それに……お前ももう解っているだろう。     確かに誰かも解らないヤツではあるが、     そいつは俺とお前達に共通した“大切な存在”だった。     そいつを理由に死ねるなら、     中身のない俺がこれを本望と言わずになにを本望と言える』 …………きっと、それはこいつにとっては“決まったこと”なのだ。 ルドラの目には、決意の色以外には何もない。 今までの死んでいるような目ではなく、 そう……まるで子供が夢を持ったばかりのような、そんな希望に溢れた目だった。 だというのに、望みが自分の死だなんて…… ルドラ『ここに来て、生きる理由と死ぬ理由を持つことが出来た。     それだけを心の拠り所にし、俺はこの大地に屍を埋めたいと思う。     だから───彰利。全力で来てくれ。     俺を殺すのがお前ならそれでいい。     だが殺せなかったのなら、俺は俺の手で死出に至ろう。     俺の死の結果は変わらない。     ただ、晦悠介が死ぬか生きるか───その違いなのだろう。     ……もちろん、晦悠介がノートに勝てなければ、勝つ意味すらもないがな』 彰利 『………』 双方ともに、戦闘体勢。 覚悟はとっくに決まっている。 あとは…… 彰利&ルドラ『シィッ!!』 どちらが先に仕掛けるか───それだけだ!! 【ケース858:カオス/黒の夢10】 自分の力を過信していたわけじゃない。 だが、こんなにも一方的であるなんて、誰が想像しただろう。 きっと勝てると思ったからこそこの場に居て、 死ぬわけにはいかないと思ったからこそ抗った。 その結果がこれでは、自分たちの修行や冒険はいったいどれほどこの場で役に立ったのか。 黒シェイド『ふっふっふっはっはっはぁ!!!』 目の前には黒い体をさらに黒くしたシェイド。 サラマンダーを吸収し、単独でオレと向かい合い、オレを殴り続けている。 気絶していたにも係わらず、一撃で目が覚めるほどの衝撃。 目覚めた途端に殴られ、意識を手放しかける馬鹿げた状況。 手には武器もなく、それがシェイドの遙か後方に落ちていることに気づけたところで、 もはや戦局は覆そうにもなかった。 黒シェイド『弱い!弱いなオマエ!』 他の精霊よりもよほどに黒に近いシェイド。 その姿、言動には、もはやかつて映像で見せてもらった冷静さなどは存在していない。 黒に近かったためにルドラの狂気に食われでもしたのか、 戦いに入るやとても正気とは思えない様子を露にした。 戦いに、と言っても、気づけば殴られていたオレは、 最初に目にしたこいつがシェイドであることに中々気づけなかった……それだけの話だ。 カオス『ぐっ!がっ!〜〜〜〜〜っ!!』 受けに回る。 だがどれだけVITにステータスを注ぎ込んでも足りない。 防御の上から殴られ、圧され、痛みに息を荒くする以外になかった。 カオス『っ!』 苦し紛れに、拳が迫るパターンを予測しての空気投げ。 だがそんな瞬速の技も気迫も砕いた上で、やはりオレを殴りつける拳。 瞬時だろうが攻めに回った代償だろう、その一撃は今までのどれよりも身に響き、 立っていられなくなったオレはだらしなく地面を転がった。 カオス『がっ……は、あ……!』 すぐに起き上がろうとした───のに、足が立ち上がることを許してくれない。 ならば回復魔法をと癒しに回ろうとするが、 それよりも速くシェイドの爪先がオレの腹に突き刺さっていた。  初めから解ってたことだろ? 血を吐き、地面を転がる。 転がりながら回復魔法を発動させて、体勢を無理矢理立て直してシェイドを睨みつけた。  精霊に人間が敵う筈がない、って。 すると狂気の形相が目の前にあって、腹部に鋭い痛み。 闇の刃が腹を貫通していて、痛みに絶叫をあげるけど、そんなものに意味はなくて。  ゲームの中で多少強くなったからって調子に乗って。その挙句がこれかよ。 刺された勢いのまま地面に串刺しにされ、逃げられない状況のまま顔面を踏みつけられた。 それこそ、頭蓋が砕けるような痛みを何度も何度も何度も何度も───  なぁ、オレは、お前達は、いったいなにをそんなに思ってこの戦いに─── 痛みの所為で忘れていた月空力の転移を解放。 死にたくないと本気で思った故の行動なのに、 どうしてまた痛い思いをすることになるのか。  死にたくない…… 勝てない……解りきった答えが頭に浮かぶ。  死にたくない…… 体の中が負けを、死を確信する。 一度誰かの心がそう思うと、融合体っていうのはもろかった。  死にたく─── 心の中が死の恐怖に怯え、体の半分以上から抵抗の活力が消える。 それが余計に死に繋がるっていうのに、こいつらは─── カオス『がはぁぁっ!!』 血を吐きながら、邪魔な存在───ガキどもと女どもの大半を融合状態から捨てる。 その瞬間に動くようになった体で転移を発動。 心の弱いやつらを蒼空院邸まで転移させて、振るわれたシェイドの拳をなんとか躱した。 カオス『はっ……がはっ……はっ……!ぐっ……!冗談、じゃ……ねぇ……!!     死にたくない、って……思う、んだったら……!     震えるだけじゃなくて……抗ってみせやがれ役立たずどもが……!』 その怯えの所為でどれだけ他のやつらが、自分が、死に晒されると思ってやがる。 威勢ばかりいいだけで、覚悟のなにも決まってなかったやつらは、 逃げ出して記憶でも消されてりゃよかったんだ……! シェイド『力が呆れるほど弱まった……ツマラナイ』 カオス 『っ……』 抗う。 潰される。 回復する。 削られる。 そんなことを幾度繰り返しただろう。 意識は朦朧として、自分が扱える能力の底が訪れて─── どれだけ全力を出しても、今出せる全力なんてタカが知れていて。 ……妙な予感があって、その途端に殴られて……オレ達の融合は解けた。 このままではいっぺんに殺されるだけだ、と……みさおちゃんが判断したのかもしれない。  ……これが絶望じゃなくてなんだろう。 融合状態でも防戦一方。 勝てるわけないって思わされた相手に、作戦通りに黒を削ることさえ出来ないまま、 信じてくれてる晦や彰利の期待を裏切って、オレたちは…………  …………死ぬ、のだろう─── …………。 ………… ……                             キィンッ─── ───音。 なにか、綺麗だけどどこか渇いた音が耳に届いた。 藍田 「…………」 うっすらと目を開ける。 血まみれで、回復も出来ず、ぐったりと倒れる自分をまるで他人事のように思いながら。 丘野 「……、……」 うっすらと目を開ける。 息を吐くのもつらくて、涙さえ滲ませながら……  ……、…… 視界に広がった青空が綺麗だった。 大地はこんなにも冷たいのに、手を伸ばせばまだあの夏の暖かさに届く気がした。 蒼い季節───子供の頃にも見上げたあんな空へと、 帰れるのなら帰りたいと……そう願った。  ……いつだっただろう。 俺達は腐っていた。 小学はそれなりに楽しく、だけど高学年になるにつれ、 大人になってゆく自分に、甘えられなくなってゆく自分に歯噛みした。  ……迎えてくれるヤツが居て、大人になっても子供でいられることを知った。 中学には馬鹿が居た。 腐った世界を散々と引っ掻き回してくれて、 じゃじゃ馬みたいな俺達をひとつにまとめてくれる、とんでもない人が。  ……彰利の顔が浮かんだのに、どうしてか……その頃一緒に見上げた蒼に、一致しない。 誰もが忘れた誰かが居た筈だった。 そんなことを思うのは、自分が死んでしまいそうだからなのだろうか。 それでも……あの蒼に手が届くなら、きっと答えが見つかる気がした。 藍田 「………」 丘野 「………」 手を伸ばした。 周りから聞こえる苦しそうな呻き声を耳に、 伸ばした自分の腕が蒼の景色に赤を混ぜる光景を眺める。 ……なのに、届かない。 あの頃の蒼に届かなくて、俺達は───  ……、……死にたく…… 視界に黒が混ざる。 俺を見下ろし、狂気に満ちた顔で……俺達一人一人をゆっくりと殺す気なのだろう。 巨大な虎のようなものを自分の黒から生み出して…… その馬鹿みたいな牙が、俺を、俺達を砕こうとして─── 藍田 「…………」 丘野 「…………」 つまらない最後だ。 “楽しい”の中にずっと居たいって思って走ってきた筈なのに、 いつのまにか“大人と子供”を両立できなくなっていて。 なにが足りなくてそうなってしまったのかも解らないままに、 こんな場所で俺の物語は閉ざされるのか。 そう思ったら悔しくて、悲しくて。  ……無様でもいい、せめて抗い続けなきゃ報われないと思った。 だから、腕一本を動かすのがやっとだった体を無理矢理起こそうとした時。   …………ふと気づけば、自分の視界は光でいっぱいになっていた。 ギシャゴバァオオオンッ!!! 大虎  『グギャァアアアォオオオオッ!!!!』 シェイド『なにっ───!?』 虎が一撃で滅びる。 眩いくらいの光の闘気が弾け、その光に当てられ。 いったいなにが起きたのかも解らず、だけど───自分の傍に降り立ったその光が、 ただどうしようもなく嬉しくて、暖かくて…… その光が、一人の男が光に包まれているのだという事実を知っても、 ただ眩しく思うばかりで、その存在を否定しようだなんて思えなかった。 ……そして思い出すのだ。 いつか、ヒロラインで聞いた言葉を。  ───世界が闇に覆われ、人々に危機が迫りし時。  闇を斬り裂きし光り輝く戦士によって、世界は救われるだろう─── 元エーテルアロワノンの教会にあった石版。 ステンドグラスの下に、目立たないけど存在していたものの意味。 それは、今、目の前に…………! 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