───光り輝く戦士───
【ケース860:中井出博光(再)/にんげんのたたかい】 黒シェイド『チィッ───!?』 光り輝く我が体を、黒として嫌悪したのか。 やたらと黒い闇の精霊は俺から距離を取ると、 誰も倒れていない平べったい大地に下がり、息を飲む。 しかしこれはまた派手にやられたようだ……見るもの全てが倒れた残党、というか…… 中井出「派手にやられたようだなぁ藍田ぁ」 藍田 「…………」 ぱくぱくと口が動く。 まぁ、喋れないなら好都合だ。 武具宝殿からジークフリードを取り出すと、 その中に眠る武具───みさおちゃんの武具、月華長尺刀・斬冥叢魔刃の意思を解放。 武具に宿るみさおちゃんの意思を経由し、武具自身の力を以って月空力を発動させると、 この場に倒れていた全てのやつらを蒼空院邸まで飛ばす。 黒シェイド『……キサマ』 中井出  「一度言いたかったから言ってやろう。……今度の俺はちょっと強ぇえぜ?」 武具に宿る能力も意思も、アハツィオンの力のお陰で使い放題。 さらにゲーム内という枷が無くなったため、人器だろうがなんだろうが使いたい放題。 こんな僕を止められるものなら止めることなくさっさと死んでくださいお願いします。 中井出  「───っしゃあっ!いくぜ黒野郎!       てめぇを破壊して、俺が望む未来を作り出す!       何者でもない、この俺自身のために!偽善は全て滅ぶがいい!」 黒シェイド『オマエ、楽しませてくれルカ……?』 中井出  「お前に楽しむ気があるならね!!」 地面を蹴り、疾駆。 走るというよりは既に飛翔に近い、地を這うような跳躍。 いつでもどんな対応も出来るよう、 足が地面につく高さで一気に間合いを詰め、遠慮も挨拶も無しに一閃!!  ヒャガガギゾバァン!! 黒シェイド『…………エ?』 受け止められる筈だったんだろう。 しかしそれは適わず、盾にしたシェイドの右腕が宙を舞い、霧散する。 その光景を、どこか他人事のように眺めたシェイドだったが、 直後にその瞳に意思が浮上する。 さっきよりもよほどに意思に溢れた、精霊本来の瞳の色が。 黒シェイド『……!馬鹿な!どれほど黒を密集していると思───』 中井出  「相手の都合考えて命懸けの戦いが出来るかよ───!とっとと退場しろ!!」 続けざまに連ねること三閃!! 一撃目が躱され、返す一閃が肩を斬り裂き、 振り下ろす一閃が黒の装飾を切り落とし、霧散させる───! 黒シェイド『なんだその剣は……!       何故我らが肉体が、こうも容易く《ザゴォッ!》───っ!ぐあああっ!!』 次いで左腕を切り落とし、休む暇無く顔面───ではなく、面積の広い体を狙う! 黒シェイド『ぐっ!くおぉおおおっ!!!《ゾリュガギィンッ!!》』 中井出  「っ!」 突きだした剣があと一歩、というところでシェイドの腕に弾かれる。 黒の密度を上げ、再生を行ったんだろう。 先ほどまでとは黒の濃さが違う両腕が新たに生えていた。 黒シェイド『迂闊だな!デモンズ───ランス!!』 無論、剣を弾かれたままの格好の俺に隙が無い筈もない。 即座に無詠唱魔法を発動させたシェイドは俺の腹目掛けて闇の槍を放ちガギッ! 黒シェイド『ぐむ《ゾボォンッ!》ぐおあぁあっ!!?』 弾かれた格好のままの俺の左手に強引に顔面を掴まれ、刹那に魔法反射能力が発動。 顔面を掴まれたことでそちらに気が入った時には、 シェイドの腹に反射したデモンズランスが突き刺さっていた。 そしてその痛みに体を硬直させた時こそ俺が攻撃に移る瞬間───!! 中井出「うぉおおおおおおりゃぁあああああっ!!!!」  ゴバアアンガァアアアアッ!!! 黒シェイド『ぐおはぁっ!!』 ジークフリードを宝殿に戻し、硬く握り締めた右のファフニールで顔面に爆砕拳を放つ。 耳を劈かんほどの轟音が間近で鳴るが、 そんなことは気にせずに吹き飛んだ相手へと集中する。 黒シェイド『ぐっ……魔法が効かないだと……!?こんな馬鹿な話が───』 中井出  「《キィンッ───》グルグリーズより麻衣香を!───メテオレイン!!」 倒れようとした体を踏みとどまらせたその姿へ、跳躍からの義聖剣! しかし降り注ぐ隕石の規模は通常の義聖剣の比ではなく、 大魔法のメテオがそのままシェイド目掛けて降り注ぐ───!!! 黒シェイド『な、んだと!?ぐ、うぉおおおおおおおあぁあああああっ!!!!!』  ガガガォンガォンガォンガォオオンッ!!!  ズガガガガガガァアアアァァァ───ッ!!! が。 咄嗟のことで反応が遅れたとはいえ、 同じく大魔法を以ってひとつひとつ打ち落としてゆく様はまさに精霊然。 魔力合戦ならば負けはせぬと、目の色を変えてメテオを砕いてゆく。  それこそが狙い─── 空間翔転移で一瞬にしてシェイドの背後に移動した俺は、 すぐに俺の存在に気づいたシェイドの腹部目掛け、既に拳を───突き出していた。  キュボギバァンッ!! 黒シェイド『ぐぼぉはぁっ!!!』 ダークマターより彰利。 光速拳が振り向きザマの腹部に鋭く埋まり、一瞬、シェイドの動きが止まる。 様々な能力により加速された拳は武具に守られ、 速度の壁に破壊することなく突き刺さった。 直後にメテオが降り注ぎ、振り返った時にはもう遅い。 シェイドの姿は隕石の海に飲まれ───バガガァオンッ!! ……いや、そう簡単にはいかないらしい。 降り注ぐ隕石が全て破壊され、散った砂煙の先にはサラマンダーが居て、 隕石が纏っていた炎を起爆装置にするかのように爆発させたのだと理解させた───刹那! 黒サラマンダー『カァアアアアッ!!!』 サラマンダーは蛇のように地を這い、矛を手に襲いかかる! 驚くべきはその速度で、これは───! 中井出「こなくそっ───疾風!!」  フィガガガガガガガガガガァンッ!!!! 目が覚めるような連突を、疾風奥義を以って斬り返す。 サラマンダーでこの速さかよ、と驚くと同時に違和感を感じ、 武器ではなく敵を見据えれば、 敵は既にサラマンダーではなくウィルオウィスプに変わっていた。 恐らく、腕から体へと順に形を変えて襲いかかってきていたのだろう。 道理で速い筈だ───! 黒ウィスプ『ほう!私の速さに付いてこれるとは!       今の速度を受け止めたのは賞賛に値する!       さあ!速度を上げ《ザゴォッファボガガガガォンッ!!!》       ……、ア…………ギ……!?』 高らかに笑うウィルオウィスプの体を斜めに一閃。 刹那に体に亀裂が入り、 黒の血液が噴き出るが───咄嗟に後ろに下がったのか、両断とまではいかなかった。 中井出「ごちゃごちゃやかましいわタコスケ!     何故この博光が貴様の速度展覧会に付き合わねばならぬ!」 最大速度じゃないなら、最大になる前に斬り滅ぼせばいい。 ただそれだけのことをごちゃごちゃごちゃごちゃ───! 黒ウィスプ『ギッ……ナメ、ルナ……!クロ……黒を……もっと黒を───!!       ソウスレバこんな人間なぞに……!マスター以外の者などに───!』 御託はもう十分だった。 超速剣ではなく光速剣でウィスプの体を八つ裂きにし、 たまらず四散する精霊達の中からウィスプの頭を掴み、 相手が息を吐く暇も与えずに、 シュバルドラインのメテオストライクとファフニールの力を合わせた灼光拳で爆砕。 頭が消し飛んだその姿をさらに八つ裂きにし、 魔力の残骸となったその姿をマジックキャンセラーで削り取り、文字通り滅殺した。 黒サラマンダー『……!?ウィルオウィスプがこうも容易く!?         グッ……黒を下ろせ!この密度では相手にならない!!』 黒ゼクンドゥス『……敵はたかが地界人……こんな存在、凍った時の中で───』 黒オリジン  『っ……!?よせゼクンドゥス!ヤツは!』  ゴキズシャゴバァォンッ!!! 時が凍ろうが関係などなかった。 全てが止まる中で間合いを詰めてきたゼクンドゥスの首を左手で掴むと、 驚愕に染まるその顔にヴィジャヤを突き刺し、 その上でブレードオープンを発動、メガレールを暴発させて吹き飛ばした。
【Side───黒オリジン】 黒オリジン『…………こんな…………ことが…………!』 目の前で起こっている事実をどう受け止めよう。 ルドラと……晦悠介とともに最果てに至り、強さというものを極めたつもりでいた。 だが、ならばこれはなんなのだ。 強さを極め、黒という力で増幅した能力も悉く破壊され、 小さな油断を見せれば息を吐く刹那に両断されている。 水が殺され、火が殺され、氷が殺され雷が殺され然が殺され……! なんだこれは……!たかだか地界人ごときに、何故我々が───! 黒オリジン『シェイド!戻れ!もはや加減をして勝てる相手ではない!』 黒シェイド『───!チッ……!なん《ギシャゴバァォンッ!!》』 ……、……そうして、全てが死んだ。 残っているのは私だけであり、散り散りに霧散した精霊の全てが、 放たれた眩い光りによって完全に消滅すると…… 男は私に向けて刃を突き出し、心底呆れた、といった風情で言う。 男    「……加減?ふざけんなよ狭界の精霊王。       こっちが命懸けで戦ってるっていうのに、加減してこのザマか?       いい気なもんだよな、人間の命を軽く見てるヤツは。       見せてみろよ、本気。これが本気ならとんだお笑い種だぜ?」 黒オリジン『〜〜〜……地界人風情が───思い上がるな!』 もはや許さぬ!ただではおかぬっ!! 精霊としての誇りを! 最果てまで至ったこの身を!人間風情が鼻で笑うか!! いいだろう!その身、その魂!全て砕いて滅ぼし尽くしてくれる!! 黒よ!黒よ───!我がマスターよ! 我に、より多くの力を寄越せ! こんな地界人ごとき、軽く潰せる力を───!! 【Side───End】
 フォガァアアアアーーーー…………!!! ……集束する黒の力により、まるで大気が吸い込まれるかのように風が吹き荒ぶ。 それはオリジンと相対し、大地に立つ俺の体も激しく打ちつけながら、オリジンのもとへ。 中井出(…………黒を削らないといけないとはいえ……挑発はマズイよなぁ……) 本当に、馬鹿みたいだ。 相手を挑発して自分を窮地に追い込むだなんて。 こんなのブリーチのキャラしかやらないだろ。 これで敵がパワーアップしたら、俺はピンチになるまで能力解放しちゃいけないんだって。 いや、ほんと頭が下がるぞブリーチキャラ……いや、心底……土下座してもいいくらい。 けど、やらなきゃいけない状況が揃ってしまっている。 中井出「こんな隙だらけなのに待ってなきゃいけないんだよ……勘弁だよなぁ……」 と、思いつつも攻撃を実行。 ルドラ側から黒を通して密度を上げるオリジンの腕を切り落とし、即座に消滅させる。 黒オリジン『きさっ───』 中井出  「力溜めてるからって隙だらけなんじゃないか!?王様よっ!!」 漫画とかならば絶対に反撃されて終わるキャラの言葉をそのままに。 そして僕は言うのだ。 これを言ったら帰れない、伝説の言葉を……! 中井出「俺……この戦いが終わったらドリアードと結婚するんだ……」 言ってて寒気がしました。 うん、これ死ぬね……ほんと死ぬ言葉だ。 でも、それがキツケになる。 ……一度は本気で死ぬと思った。 淵に至っても死にたくないと願い、今の自分がここに居る。 中井出「───」 目の前で、感じる波動が大きくなる。 時間をかけることなどせず、一気に膨れ上がった黒が圧縮され、オリジンの姿になると…… ソレはすぐに魔法を連発し、俺を攻撃する。 それを反射するつもりで武器を振るうが、魔法は反射出来たが、 織り交ぜられた黒の刃が俺の身を裂いていった。 中井出  「こりゃあ……」 黒オリジン『魔法が効かないのであれば効くようにすればいいだけのこと───!       貴様、ただで死ねると思うなよ!』 俺達人間よりもよほどに人間らしく、剥き出しの感情をぶつけてくるオリジン。 そんな精霊を前にして、俺は小さく舌打ちをした。 そんな感情が出せるのなら、もっと早くにルドラに教えてやればよかったものをと。 主の成長を願うあまりになにも教えず、挙句の果てがあんな世界で。 支えることも出来なかった、 しようともしなかった“ともに在る者”が敵にばかりこんな感情を向けるなんて。 中井出「ただではだのなんだの……!     こっちはもうただで済ませられるほど穏やかな日常を生きてねぇんだよ!     全てだ!お前達が俺の“楽しい”の全てを破壊した!     破壊したことさえ都合よく忘れた貴様らが、俺をただでは死なさんだと!?     貴様らこそただで死ねると思うな!     その感情、恐怖でいっぱいにしてからこの世界から消してやる!!     ───はぁっ……───っ…………こう、風紀的に!」 だが怒りだけに飲まれるアホなことはしない。 臆病者と呼ばれても、一歩譲れることが勇気だとマイペースに教わりました。 そして俺は、臆病者でいいから自分を保ったままで進みたい。 だから怒り任せの言の最後に、自分らしさを残すためにも要らん言葉を混ぜた。 黒オリジン『ふはははは!はっはっはっはっは!!       ならばどうする!貴様を始末する方法などそれこそ腐るほどある!       どれだけ貴様が力を見せつけようが、全ては余興!暇潰しにすぎんのだ!       貴様には絶望をくれてやる!マスターより流れる黒をどれだけ殺そうが、       底を尽かそうが、貴様らは絶対に我々には勝てぬと知れ!!』 闇が収束する。 元素の精霊の力だろうか、 ノートン先生とは違い、無から有を作るのではなく根源から物体を作り出す。 それは、塵から固まりを作るのと同じく、風から嵐を作るが如く。 そしてこいつが言った言葉は恐らく真実で、 どれだけ削ろうがこいつは土壇場で俺を超越するのだろう。 その時に俺が見せる絶望を見たい……ただそれだけの理由で、 こいつは今すぐに超越を使わない。 黒で散々と俺を痛めつけ、俺が出せる全力を出したと見るや、俺を越えるつもりなのだ。 ……つくづく、馬鹿げている。 黒オリジン『はっはっはっはっはぁっ!!』 中井出  「───!」 黒が走る。 散弾のように乱射されるそれを烈風で躱し、時には剣圧で吹き飛ばし、潜り抜けると斬撃。 だがようやく辿り着いたところでオリジンは影にもぐると、 別の場所に出ていて高らかに笑う。 影踏みの鬼じゃああるまいし、なんて逃げ方だ、と思わず笑う。 それが癪に触ったのだろう。 錫杖のような杖を握り締めると接近戦に持ち込み、 風をブッ叩斬るような速度で俺を殺しにかかる。 振るわれる杖からは黒の散弾が幾度も反射され、 リングシールドだけでは捌ききれないそれを、黒操術・バレットアームズで破壊してゆく。 黒オリジン『なんだと……!?地界人風情が黒を操る───!?馬鹿な!』 覇王ジョブの特権。 それは全てのジョブ能力を使用可能になることにある。 そしてそれは俺自身が操りきれなくても、 武具の中に眠る猛者どもを始めとする意思たちが制御してくれる。 俺だけだったらこんなに上手くなど行くはずもない。 黒オリジン『なんなんだ貴様は───!理解に至らぬ者など消えろ!!目障りだ!!』 連撃。 振るわれる全てを双剣で弾き、一瞬の隙間を見るや双剣を手放し、間隙を縫っての光速拳。 ドンッ!!───と突き抜ける音がして、目の前には体を折るオリジン。 もちろんいつまでも止まっていることなどせず、 光速ニ撃目を放つ頃には体を霧散させ、後方に下がっていた。 黒オリジン『まだだ……!まだ足りない……!まだ足りぬ……!!』 再び吸収を開始したんだろう。 俺を睨みつけたまま動くことをやめ、やはりその体がより黒に染まるとドゴォン!! 中井出「つっ───!?」 ……もう、そいつはさっきまでのそいつじゃあなかった。 予備動作も無しに襲いかかってきたそいつの杖を篭手で流すと、 仰け反りながら蹴りをぶち込む。 しかし怯むことさえせずに俺の右足を左手で掴むと、 力任せに振り回して後方の大地にドッガァッ!! 中井出「ぐっは……!!」 叩きつける、と同時に黒魔力を込めた右手を俺の背中目掛けて───!! 中井出(やべぇっ!背中は───っ……くぅぉおおおおおおっ!!!) 痛がる余裕なんてありゃしない。 掴まれたままの足を軸にして身を捻り、 そのままの動作でジークムントを振るって魔力の篭った右手を斬り裂く! 指が何本か飛び、魔力も霧散してくれたが、黒は即座にその傷を回復。 その隙にドンナーから雷を放雷。 オリジンの手を無理矢理外し、転がるように後ろに下がるや烈風で突進! 黒オリジン『ぐぉおうらあっ!!』  ゴギィンッ!!! もはや冷静沈着の精霊などこの場には居ない。 居るのは力と黒に飲まれた憐れな精霊だけだ。 魔法が効かないのならば力を、素早さをと暴走し、 だが己の意思を以って俺を潰しにかかっていた。 剣と杖がぶつかり、圧し負けるのは───果たして、俺だった。 中井出「ぐあっつぅっ!!?」 腕の骨や筋が悲鳴を上げるほどの圧力。 押しやられ、解放されたと思えば自分の足は地についておらず、 身を翻して無理矢理地面に剣を突き立てて強引に止まった。 中井出「〜〜っ……」 ほんとつくづく思う……!こんなのが出来るんだったら最初から加減すんなって……! 別に俺みたいに目的があって力を抑えてるわけじゃあるまいし……! って思ってる暇もねぇ!目の前ッ!右ッ! 中井出「オォオッ!!」  ガギィンッ!!ギキャァン!キフィィンッ!!! 杖の一撃を右篭手を構え、そこに左拳を重ねることでガード! 次ぐ連撃をリングシールド、魔力効果を付加した一撃を正面戦士の盾で弾くとともに反射! 一瞬怯んだオリジンに再び光速拳を叩き込み、たたらを踏んだ隙に接近&─── 中井出「羊肉(ムートン)!!」  キュボドガァンッ!! 黒オリジン『ぐおはぁっ!!』 光速居合い蹴りで藍田の一撃を叩き込み、吹き飛ぶ体を空間翔転移で追尾! 追いつくと同時に両手にビッグバンかめはめ波を込めて───地面に吹っ飛ばす!! 中井出「羅生門!!」  ドパドッガァアアアッ!!! 勢いに持っていかれる体を強引に地面に向けて吹き飛ばし、 大地にクレーターを作ったその体へとさらに追撃! 中井出  「串焼き(ブゥロシェット)ォオオオオッ!!!!」 黒オリジン『っ……!!がぁあっ!!』  ゴッ───ドゴォンッ!! ウロボロスより放たれるゴッドブレスが俺の体を地面目掛けて飛ばし、 その勢いとともに落とす螺旋踏みつけ。 しかしオリジンは無理矢理クレーターから逃げ出すとそれを躱し、 躱すついでに黒の固まりを俺目掛けて放ちまくる! 中井出「ラグナロク!!」 それを武具宝殿から引き出した皇竜剣で斬滅!! その動作を突いて杖を振るうオリジン目掛け、 中井出「喝ァアアッ!!!」 雷神シド流、気合砲を発射! 不可視の力に一瞬押されたオリジンはしかし、それでも無理矢理に攻撃を仕掛ける! だがこちらも、一瞬でも動作が遅れてくれるなら取り戻せるというもの! 中井出  「スピードファング!」 黒オリジン『《ギャリィンッ!!》ぬぐっ!?』 決して間に合わぬだろうと思われた、敵の攻撃からの迎撃。 それを早撃ちによって可能にし、ラグナロクでオリジンの杖を斬り弾く! 斬り弾けばそれで良し─── 剣の重さに腕が持っていかれるより先にラグナロクを離し、宝殿へ収納と同時に烈風。 徒手空拳のままに拳を握り締め、自らの突進速度も加えた光速拳を───! 黒オリジン『がぁあっ!!』  ゾガァッフィィンッ!! 中井出「ぐああっ!?」 否。 烈風で踏み込んだ途端に振るわれた黒の刃が、左肩を斬り裂いてゆく。 見れば、いつの間にそこにあったのか。 オリジンは黒のマントを羽織り、 それを勢いよくはためかせることで黒の剣閃を放ってきていた。 中井出「くっそ……!KOFの髭ゼロじゃああるまいし……!」 筋が切れたりでもしたのか、左腕はだらんと垂れたまま動かない。 痛みは感じず、すぐに治せる程度の傷だったが─── 黒オリジン『グガァアアアアッ!!!』 治るまで、待ってくれそうにもなかった。 中井出「こンのっ───疾風ゥッ!!」  ガガァンガァンガガガァンガァンッ!!! 爆発系魔法の魔力付加がされた杖が連続して振るわれ、 俺はそれを右手に持った神速剣エレインで弾いていた。 しかし片手では思うように力を乗せられず、 敵の力にどんどんと圧されていくのが肌で感じられた。 だが───! 中井出「奥義!飛燕!虚空殺!!」  ゾガガガガガガガガガフィンッ!!! 一瞬にして十連撃を放つ抜刀居合いで形勢を逆転させる! 次いで、半撃分追い返してやったその姿へ“杓死”で接近&連撃。 切り刻みながら後方へ回り、連撃に体勢を崩しかけた背中へとランペルージュの熱と─── 中井出「炎雷覇ァッ!」 ドンナーの雷を合わせた炎雷を纏った蹴りをぶち込む!!  ドガシャァアンッ!!! 中井出「ぬおっ!?」 しかし急造で張られた魔法の壁によって、 破壊こそしたが威力を削がれ、大打撃には至らず。 片足を突き出すという困った体勢の俺目掛け、振り向きざまの魔力大砲が─── 俺の腹に直接、ぶち込まれる!!  ドバァッガァォオンッ!!! 中井出「げがぁああああっ!!!」 炸裂する腹部。 魔法効果をどれだけ反射しようが吸収しようが、炸裂する衝撃まで殺せるわけもなく、 腹に、神経に響く痛みが思いきり俺を吹き飛ばし、怯ませた。 口から勝手に飛び出る血液がバタタッ───と地面に赤を彩り、 内臓がイカレたことを報せる。 だがむしろ好機と、遠くの地面に叩きつけられて、 跳ね、無理矢理体勢を立て直しながらもキャリバーで内臓と肩を癒すと、 着地と同時に烈風。 追撃をせんと地面を滑るように突進してきていたオリジンと正面からぶつかり、 衝突した杖と剣とが爆発的な衝撃を放ち、一瞬ではあるが空気を円状に吹き飛ばした。 黒オリジン(解せん……!!) 杖は相変わらず魔法効果をエンチャントしてあって、 剣とぶつかる度に、痺れるくらいの衝撃が体を突き抜ける。 黒オリジン(なんなのだこいつは……!人間……!?       人間だというのに、この力、この強さ……!) 火花が散り、圧されるのは俺。 どういう圧力で潰されたのか、真ッ平らな地面を滑るように押しやられ、 それでも圧力が無くなるや切り返し、後退ばかりを良しとしない。 黒オリジン(分析をしたところで“人間”という事実以外に何も得られぬ……!       ならば真実人間だというのか!?       人間に、我ら精霊がこうも容易く殺されたと!?) 圧される、圧される、圧される……! 剣を振り、圧し返そうとするも、僅差でこちらが負けてしまう。 さっきから敵の黒を削れていない事実に歯噛みした。 ……だったら。 中井出「武器はしっかり二刀流ゥウウッ!!」 全ての能力が制限無しで使える中で、 自ら後ろに下がりながら双剣化させた武器を頭上で交差。 赤い闘気に包まれる自分の体を視界に納めて笑むと、 追撃をしに来たオリジンを真っ向から迎え撃つ!!  ───果たして。吹き飛んだのはオリジンだった。 杖を吹き飛ばされ、 突撃のために勢いづいていた体を強引に捻じ曲げられるように後方へ押しやられ、 体重の乗った一撃のために大地に一踏した脚は嫌な音を立ててヘシ折れ、 さっきの俺のように大地を跳ね転がると、しかし倒れ伏すのではなく起き上がる。 黒オリジン(なんなのだこいつは……!解せぬ……!こんな存在が、何故ここに───!) もはや鬼人化で疲労することもなく、むしろ人器が100%まで扱える今、 その行動は体を活性化させる以外に効果を齎さない。 ステータスが二倍になる効果はもちろんあるが、 マイナスになるものなどなに一つとして存在しない。 しかしそんな能力を使っても、思うことはひとつだけ。  つくづく馬鹿げてる。 力があるのなら敵が最大を放つ前に倒す。 それが自分の信念であり戦闘方法だからだ。 わざわざ敵の出方を見て、その度に順々に自分を強化するなど……そう、馬鹿げている。 なのにそれをしないのは、かつての友を信じているからだろう。 中井出「おぉおおおおおおっ!!!!」 一閃。二閃。三閃。 振り払う一撃一撃がオリジンの体を砕き、霧散させてゆく。 わざと時間をかけ、黒を吸収する時間を作るために。 黒オリジン『……!!』 途端、自分が加減されていることに気づいたのだろう。 オリジンは額に血管を浮き出させると、自らの体から黒を噴き出させた。 ……いや、引き出した黒が、勢い余ってオリジンという器から零れ出たのだろう。 膨張する黒は留まることを知らないかのように溢れ、 だが途端に矮小になると、オリジンの姿へと治まる。 黒オリジン『加減……!加減だと……!?この私が……精霊の王がぁああ……!!』 ギリギリと歯軋りをし、血走った目が俺を捉える。 そんなオリジンを前に、 俺は双剣を手の上で遊ばせながら、わざと煽るように言ってやった。 中井出  「加減?ははっ、アホですかお前。       黒に頼らなきゃとっくに負けてるお前が、       なにをそんな自分の力で戦ってるみたいに言ってんだ」 黒オリジン『!!《ブチィッ!!》』 何かがキレる音を耳にする。 まあ、なにかに頼らなきゃ、っていうのは俺も同じだけど、 これが自分の力だなんて思っていない。 それが貴様とこの博光の違いよ。 黒オリジン『グガァアアアアアッ!!!』 まるで吼える獣だ。 既に全身真っ黒だった姿をさらに黒くし、目も口も黒のソイツは、 目に走る赤の色を血走らせ、杖など使わずに獣のような爪を振るってくる。 それを双剣で受けドガァッギィンッ!!! 中井出「───ふえっ?」 ───た途端、吹き飛んでいた。 ドンナーがギャリギャリと音を立てて地面を滑り、 足を踏ん張ろうとすれば、その足にこそ痛みが走るくらいの勢いで。 マア!こんなまるでドラゴンボールみたいな!とか言ってる場合じゃねぇよ! やばい!オリジンの野郎め、キレやがったわ! 休むことなく黒を吸収し続けて、それを自分の力に変えてるもんだから攻撃力とか異常だ! 中井出「……フ、フフフ……!だがこれこそこの博光が仕方なく望んでいた展開よ……!」 望みたくなかったけどね。 中井出「フゥウウウルッ───ブラストォオオオオオオッ!!!」 ならば加減は無用。 大半の強化能力を発動させて、滑ったままの体をドゴォンッと地面に下ろす。 ステータスなど二倍どころの騒ぎではない。 HPの状態により変動を起こすジェノサイドハートとクライシスをルール無用で発動させ、 人器全力解放、鬼靭、背水、冥空斬翔剣、強化できる能力はこれでもかというほど解放。 もちろんキャリバーでの能力上昇も忘れずに完了させ、 黒オリジン『オォオオオオオオオオッ!!!!』 追撃に来たソイツを真正面からドッガァアアンッ!!!! ───ブッ飛ばすッッ!!! 黒オリジン『グアガォウッ!!?ガァアアッ!!』 中井出  「って効いてないの!?うそでしょう!?」 思い切り殴ってやると後方に吹き飛びはしたが、 すぐに体を回転させると地面を蹴り弾いての疾駆。 乱暴に掴みかかってくるオリジンをそのまま デンジャラスアーチで後方の地面に叩きつける───が、やはり効いておらず、 掴みかかったままの二の腕をオリジンの指が突き破る。 中井出「いぎっ……は、なぁっ……せぇえっ!!」 ブリッヂ状態からオリジンごと体を持ち上げて、金色の守護炎陣で爆発させまくる!! たまらず手を離して空中に逃れたオリジンは、 なにを思ったのか空中で魔法を連発し、見上げる俺へと攻撃する。 黒が混ざってないことを視認して反射しよう───そう思った刹那、魔法は俺の体を直撃。 反射すら出来ないままに吹き飛ばし、遠くの地面へと叩きつけた。 中井出「っ……い、……はっ……!?反、射が……効かな……、───!?」 痛む体を起こすが、魔法の直撃を受けた上半身全体よりも、 突き破られた二の腕の痛みのほうが明らかに高いことに気づく。 そうなれば面倒な事態の予想も早かった。 中井出(……あの野郎、魔法反射能力を殺してきやがったのか……?) だとしても恐らくは一時的なもの。 この二の腕の傷が癒えるまで……だろうけど、黒が注入されたのか、治りが遅い。 傷口もどす黒く変色し、 沸騰しているみたいにじゅくじゅくぼこぼこと気泡を跳ねさせていた。 ……正直、見ていると気持ち悪くなる。 中井出(まいったな……魔法馬鹿相手に魔法反射が出来ないとなると……) 途端に戦闘がやりづらくなることは、想像に容易かった。 ……それ以外の能力を殺されてないのは不幸中の救いだろう、 早く振り払ったことが吉に向いてくれたらしい。 と思っている傍から、空中から豪雨のような魔法の嵐。 それらを四十六閃化させたジークムントとジークリンデで……跳ね返す!! 中井出「エターナルッ……ディザスタァアアーーーーーーーッ!!!!     おぉおおおおらららららららうぅうううらぁあああああああっ!!!!」  ギパキャキャキャキャキャキャ!!!!! 降り注ぐ全てを倍返し以上で跳ね返す!! 跳ね返された魔法は災いの輝きを孕み空へ飛び、 降り注ぐ魔法を破壊しながら術者へと襲いかかる! 量が多すぎるために、 手が届かない死角から舞い降りた魔法はデルフリンガーの力で吸収。 弱い魔法なら吸収できたが、強すぎるとさすがにダメージをくらった。 中井出(くっそ冗談ではない!     これだけ強くなれるならもっと早くからしろと声を大にして言いたい!!) こちらにも切り札くらいはあるが、それを使えばこちらもただではすまん! これは……本当にどうしようもなくなった時以外には使う気はないわ! ……だが半端な行動はこちらの死に繋がる。 使いどころを間違えば、使わずに死ぬことだって十分あるのだ。 中井出「かぁあっ!!ほんとアホだなぁ俺ェエエエ!!!」 逃げればよかった。はい本音です。 中井出「守るだの助けるだの救うだの、そんなのは世に言う偽善者がやりゃいいことだ!」 それを率先して、自分の命まで賭けてしようとするヤツの気が知れなかった。 漫画とか小説とかゲームとかアニメとか、誰もが簡単に命を賭けすぎるのだ。 中井出  「空間!翔転移!!《キュフィィンッ!!》」 黒オリジン『───ソレはもう知ってイル───!!』 中井出  「《ガッ!》うおっ!?」 転移と同時に一発、と踏んだが、 オリジンの後ろに飛んだ途端に伸びてきた腕が襟首を掴み、 驚いた俺を地面目掛けて乱暴にってちょ、ちょっと待ドッガァアッ!! 中井出「ぐはぁああっ!!!」 流星に痛覚があったなら、絶対に落ちてこないね。断言できる。 それほどの速度と痛みを以って、俺は地面に叩き付けられた。 かなりの高さからなのに、それはまるで一瞬の出来事のよう。 顔面を庇ったために腕と首の後ろに物凄い衝撃が走り、っ……! 背中は守ったが、脊髄に直接ダメージが通ったような激痛を覚える。 痺れが全身に回ったように動かなくなり、 それが痛覚からきた麻痺だっていうんだから笑えない。 そう、つまり……痛すぎて動けない。 癒しを発動させても空からは一瞬で追い抜いた魔法の雨が降り注ぎ、 回復に集中したい俺を撃ちつけてゆく。 すぐに転移で逃げ出したが、その後ろにオリジンが転移───読まれてる!? 中井出「くっそ───!」 だから加減して戦うのは嫌なんだ! あとで絶対ろくな目に遭いやしない!!  バァンガァッ!! 中井出「っ……!ぎあぁああああああっ!!!!」 背中が爆裂する。 弱点であるそこに、爆裂魔法を直接叩きこまれた俺は、 腹にソレを叩きこまれた時のように吹き飛ぶと地面に激突。 背中や口から噴き出る血がばら撒くように散らばり、 痛みに泣きそうになりながらも回復を実行。 構えもなにもなく、無造作に突っ込んでくるオリジンを双剣で受け止めると、 勢いに勝てずに地面を滑りながら回復を続けた。 中井出「つっ……こんのっ!せいっ!!」 傷が中ほどまで回復すると、オリジンの腹に居合い蹴りをぶち込んで剥がす。 鳩尾に入ったのか、数瞬動きが鈍くなるが、黒を吸収し続けるそいつは即座に回復。 再び襲いかかってきた。 だが───時間がなかったわけじゃない。 確実にダメージを与える秘術は、既に我が腕に───! 中井出「ジェノサイドハート!《コ───ガシャンッ!!》     ブレードッ……スラッシャァアアアーーーーーーーッ!!!!」 四十八閃の剣ではなく、篭手から突き出した剣を、腕ごと振るう! 光速回転を続けるクラウソナスから放たれるは破壊の光。 カーネイジを圧縮させた剣閃は、 馬鹿正直に真っ向から飛んできたオリジンへと───直撃する!!  ザガァアアガガガガガファァアッ!!!! 黒オリジン『───!!ギィイイアァアアアアアッ!!!!』 肉を裂くとか闇を斬り裂くとか、そんな表現では間に合わない。 “剣閃”という言葉がこれほど似合うものが他にあるだろうか。 地面から剣の軌道にかけて、直線にあるもの全てを削り取るかの如き眩き閃光。 削るごとに黒を滅しているのか、幾度も幾度も瞬くフラッシュが目を焼く。 中井出「負けてやらぬ……!負けるが死ぬにイコールするなら絶対に負けぬ!     貴様を殺して俺は生きる!だからさっさとくたばれてめぇ!!」 やがて剣閃が消える頃にはオリジンは吹き飛び、地面を転がって───いや。 すぐに身を跳ねさせると、獣が大地に爪をたてるように四つん這いになり、 地面を滑る勢いを溜めに使うが如く、 弾き飛ばされたのかと見紛うほどの速度で───突っ込んでくる!! 中井出「うおぉおっ!?」 ピクルのスーパー頭突きじゃああるまいしっ!! って意思たちの記憶使って納得してる場合ではないわ! 中井出「あれ食らって肩が抉れるだけかよ!!どういう耐久力してんだ!?」 ───いや違う! ありゃあ呆れるくらいの速度で黒を吸収してやがるんだ! 崩れても再構築して、切られても繋いで! こっちの攻撃が間に合わないほどに黒を吸収して───! 中井出「てめぇらぁっ!!いったい億の年月の中でどれほど何を食ってきた!!     自分を高める修行だけで───!そんなに黒が存在するわけねぇだろ!!」 確信に近い疑惑。 空界や狭界で彰利が得た黒…… それだけでは足りないほどの質量を見れば、これは異常だって解る。  ドガァンッ!!  ギギャギャギャギャギャギャギャリィンッ!!! 衝突と同時に攻撃……! 双剣を振るい、四十八閃をぶつけていくが、多少の肉を削る程度で破壊には至らない。 俺の問いに答える気もないのか、血走った赤の目が俺を睨み付けていた。 黒オリジン『クッハッ……クハハハハハ!!?ハァーーーッハッハッハッハッハ!!       俺達は何も食っていない……!       ただ哀れな人間どもの魂をイドが吸収しただけよ!       億の時、億以上の死する魂を食らい、それら全てが黒となって存在する!       人も魔物も幻獣も!亜人ですらも死すれば全て吸収した!       それらと一体になり、マスターとともに極へと至った我らが!       貴様ごとき人間なぞに負ける道理などはないわぁああああああっ!!!』 中井出  「……!!」 振るっているのは俺……なのに、どうして圧される……! 全ての攻撃が、武器でもなんでもない法衣に阻まれ、多少を削るだけにしか至らない……! 黒オリジン『そうだ!我は極に至りし者!黒に堕ちた今、黒であることこそ全て!       私一人が黒ではなく、黒全てが私ならば───この力の全て!我がもの!!       我が力に頼り、貴様を潰すことになんの憂いがあろう!』 中井出  「《メキッ!ベギキ……!》ぐ……あ……!!」 いつしか剣を振るう手は止まっている。 圧せられる力に負け、大地に立てた足がメキメキと悲鳴を上げ…… 黒オリジン『貴様の力など!所詮億を生きた我らの前では無意味!       なんの大義があってこの場に降り立ったのか知らんがなぁ!フハハハハ!!       貴様の力で出来ることなど所詮はこの程度よ!』 血が噴き出る。 背中の回復は……完了。 内臓も肩も全快だ。 足は……大丈夫、まだやれる。 やれるなら……まだ前を向いてられるよな? 中井出  「……大義。そんな大層なもん、俺は振り翳しちゃいねぇよ……」 黒オリジン『ほう……!?ではなにを以って戦う!偽善か!?くだらぬ正義感か!!』 中井出  「……馬鹿馬鹿しい……そんなもののために命なんかかけられるか……!!」 黒オリジン『《ググッ……!》……む……!?』 押し返す。 圧せられるだけだった力を、力にて。 中井出「教えてやるよ、精霊王……!俺を動かすもの……俺が命をかけるもの……!     それは……覚悟っていう名前のっ───!!     決して曲がらない俺の“芯”だぁああああああああっ!!!!」  ゴカアァアッ!!! 黒オリジン『っ───!?この光───まずい!!』 霊章から光が溢れる。 さらに四十八の剣には黄竜の力が溢れ、俺を金色の戦士へと変えてゆく。 黒オリジン『……!英雄王アハツィオンの力……!?馬鹿な!これを人間が扱うだと!?       我が主であろうとこれを内包する力などないというのに、それを人間が!?』 オリジンは光を嫌い、突撃をやめると後方へと下がる。 忌々しげに俺を睨むや魔法を無遠慮に放ちギシャゴバァォンッ!!! 黒オリジン『く、お……!?』 その魔法を黄竜剣で破壊してみせると、ギリ……と歯を軋ませて怯む。 中井出「負けてなんかやらねぇ……!今確信したぞ精霊王……!     お前の主は英雄なんかじゃなかった!     人の魂も魔物の魂も食らうヤツは英雄になんかなれやしない!!     お前らはただの“食い潰す者”だ!お前らこそが未来に存在した災いだった!!     人を生かすだけ生かして!滅ぶことを人の所為にして!     自然の摂理を曲げてまで守ることに没頭したお前らは……!     地界や空界においての破壊者でしかなかったんだよ!!」 一歩を踏み出す───それが合図だ!! 黒オリジン『ほざくな人間がぁああああああっ!!!』 さらにさらにと黒を吸収し続けるオリジンと真っ向から衝突!! 魔物の腕や爪、牙などを様々な場所から生やした、 もはや精霊とは呼べないそいつと黄竜四十八閃を以って激突する!! 四十八の黄竜剣が弾け、幾重ものエモノがそれを受け、だがそれでも力は……互角!? 黒ってのはどこまでバケモンなんだよ!! 中井出「《ミシィッ!!》いっが……!!」 しかもさらに強くなっていってやがる!四十八閃で受け止めてるっていうのに圧される!? じょっ……冗談じゃねぇ!痛ぇぞおい!!って言葉遊びしてる場合じゃなく! 中井出「くそ……!カーネイジ!!」 虚空にビットを召喚! そこからカーネイジを放ち、反射させずに直接攻撃!! しかし一瞬、皮膚を削ったように見えただけですぐに修復。 ……だめだ。 もう、半端以上の攻撃でもすぐに回復されるレベルに達してる。 やるなら本気。 それも、全力に近い力を出さなければ───敗北は確実なのだ。 中井出(けど───) これだけ引き出して尚、強くなる目の前のバケモノ。 果たして今全力を出して滅ぼしたとして、晦たちはルドラに勝てるのか。 中井出「───へっ、いいや───!」 勝てるって信じてる。 勝てるって信じられるさ、なにせ俺の勝手な信頼だ。 周りのことなんて知らない。 俺が俺の信念のために命をかけているのなら、全力を出す瞬間なども自分の都合で決める。 そしてそれは、今この時にこそ───!! 中井出「ユグドラシル解放!!覚醒しろ!!    万象担う灼碧の法鍵(スピリッツオブラインゲート)ォオオッ”!!!」 幾重にも襲いかかる爪や牙や腕を弾きながら、霊章にある大樹に活力を。 ───強化能力を全て使った。 だが、武器を全て解放したわけじゃない。 全ての武器防具は力の限りを放っているだろうが、まだ、唯一が。 中井出「おぉおおおおおおおおあぁあああああっ!!!!』 体が、声がブレてゆく。 全てを武具とし、己さえも敵を滅ぼす剣と成す。 覇王の力、武具宝殿の力を最大まで高め、金色の光を宿しながら───!! 黒オリジン『……!?な、んだ、これは───!』 俺の力ひとつで足りないなら、我が身を武具とし48体に! 48で足りぬなら、庭師剣の力にて480体に! その力を一つに圧縮し!立ち向かう覚悟を英雄王の武具にて!! 黒オリジン『チッ!目障りだ!消えろ!!』 全身を包む金色の霊章が、俺を光で包む。 吹き荒れる金色の炎と光を嫌ったのか、 舌打ちをするオリジンは魔力を込めた牙爪で襲ドバァォンッ!!!! 黒オリジン『グギャァアアアアアアアアッ!!!?』 ───いかかろうとする姿を、光速拳で怯ませる。 黄竜剣とエクスカリバーから始まる様々な力を付加した一撃は、 オリジンの牙爪の群れを一撃で破壊し、腹に風穴を空けてみせる。 追撃を───と迫るが、無詠唱で虚空に出現された魔法が一気に弾け、行く手を阻む。 そうしているうちに黒をさらに吸収したオリジンは一層に密度を高め───! 黒オリジン『在り得ぬ───!!アリエヌ、アリエヌアリエヌアリアリアリィイイ!!!』 唾を吐き散らしながら、もはや紅蓮にも染まった赤い目で、 黒の固まりとなったソイツは吼えた。 ……もはや、オリジンとは呼べぬ姿で。 黒  『我々精霊ハァアア全てノ種族ニおイて……最高位ノ……存在ィイ…………!!     人間ゴとキに……人間、ご、とき、にぃいい…………!!』 だがそれでもプライド故か。 無理矢理に己の形を取ると───目の前から消え───左!!  ドガァオンッ!!! 中井出「ぎっ……!!」 黒  『───!!忌々シイ……!!忌々しいぃいい!!』 それが己が吸収出来る最大なのか。 それ以上の吸収をやめたオリジンは、 武器でも幻獣の牙でも爪でもなく、拳で向かってきた。 ……いや。 もはや武器を、魔法を使うという考えが出来ないほどに自我が薄れているのかもしれない。 拳を腕でガードしてみせれば、 忌々しいと歯を軋らせ、さらに速いスピードで大地を蹴った。 中井出「っ───!」 ならばと俺も地面を蹴る。 もはや能力は現在で出せる精一杯。 アハツィオンの能力を解放しての行動は、長時間行使すれば身を滅ぼすことを、 俺は武具を伝って知っていた。 だから全力───にはいかないまでも、 “自分”が無くなってしまわない程度の全力で立ち向かう。 それでも倒せない時は──────きっと、諦めるしかないのだろう。 中井出「おぉおおおおおおおおっ!!!!」 黒  『グォルギャァアアアアアッ!!!!』  ドガガガガガガガガガ!!!!  ガガォガォンガォンガガガォンガォンッ!!! 拳の弾幕が空間を歪ませる。 ぶつかり合うや、大地に足をしっかりと下ろし、光速拳や居合い蹴りで応戦。 力任せに振るわれる攻撃を時には躱し、時にはまともにくらいながら、 それでも真正面からぶつかり合い、拮抗する力と力を存分に発揮した。 全ての武具は我が身に。 故に素手でしか戦えないが、一撃一撃の全てはジークフリードのソレと遜色ない。 黒  『人間風情ガ……!!人間風情ガァアアッ!!!』 中井出「っ……こんのっ……うるせぇってんだよ精霊風情が!!     精霊ってだけで守る者のつもりか!?普段は見守るだけのくせに、     こんな時だけ秩序だの均衡だの言うだけの馬鹿が偉そうにしてんじゃねぇ!!」 黒  『貴様ニ何ガ解ル!!貴様ニィイイイイ!!!』 中井出「てめぇのことなんかなんにも解らねぇよ!!     知ってもらう努力もしなかったクズ野郎のことなんて解るわけがねぇだろうが!」  ドガォンドガォンドガォンドガォン!!!!  ガッ!ゴッ!バァンパァンパァンッ!!! 殴る、殴る殴る殴る……!! 己の意思を、全ての意思を拳に、足に込めて、互いの思いを敵にぶつけるように……!! 中井出「最初から人間と共存してりゃあよかったんだ!!     悪いことを悪いって常に教えて、いいことはいいことだって教えて!!     最初から姿も見せずに隠れて暮らしてたくせに、     急に出てきて意見を押し付けるだけのヤツを!誰が信じるっていうんだよ!!」 黒  『ほざくな人間ンンッッ!!!     未知のものを捕縛シ、全てヲ研究の材料トすル人間が!!     最果てノ何も知ラぬ分際で好き勝手に囀ルなぁああアァああっ!!!!』 中井出「そうならないように!     最初から人間たちと共存してりゃあよかったって言ってんだよ!!     ああそうだ!俺は最果てのことなんざ知らない!知りたくもない!!     今この時を生きるだけで精一杯なんだ!     この一歩先でさえ自分が生きているかも解らないっていうのに!     そんな、それこそ最果てにある未来のことなんか考えてなんていられねぇ!!」 黒  『っ……貴様ァアアアアアッ!!!』  ガドォオンッ!!! 中井出「がぁあっくっ!!」 頬に、重い一撃が放たれる。 数瞬意識が飛びかけるが、続けて放たれる打撃をキツケとするように意識を回復。 次いで振るわれた拳に合わせて拳を振るい───破壊する!!  ベゴキャアッ!! 黒  『───!ルォオオッ!!!?』 中井出「ッ……けどな……!!そんなの誰だって同じだ……!!     自分ひとりのことで精一杯で……それでも誰かと一緒の道を選んで……!     重く圧し掛かる人生って“今”を精一杯に生きる───それが生命だ……!     長く生きるお前らは“解らない”んじゃねぇ……“知ろうとしなかった”んだ!!     生きることに必死にならないお前らが!自分の10分の1も生きられない人間を!     理解しようとしなかっただけじゃねぇか!!     それを、最果てにおいて滅びる世界だから今を壊しに来た!?ふざけんじゃねぇ!     それこそてめぇらには解らねぇよ!     最果てまで無駄に英雄気取りで生きてきたてめぇらには!」  ドガァ!ドガァンッ!バガァッ!! 腹に一撃、体が折れたところへアッパー、仰け反ったところへストレート……!! 中井出「なにが英雄だ!なにが過去の修正だ!!     自分が一番偉いだなんて思って、世界の理に手を出した挙句に修正!?     自分の人生、自分の時間軸の中でさえ満足な生命を生きられなかったてめぇらが!     他の時間軸に手を出して、それを救世主気分で居るなんて笑わせる!!」 黒  『グッ……ホザクなト……言ってイるゥウッ!!!』 黒の唾を吐き捨て、黒が反撃に移る。 中井出「噛み砕いて言ってやろうか!!」 振るわれる攻撃を左腕で弾き、 中井出「てめぇらの壊れた最果て!!」 その動作と同時に振り上げた左ハイキックが黒の右頭部を捉え─── 中井出「その中で間違ったのは人間たちじゃあねぇ!!」 怯んだ瞬間、体勢を立て直す捻りの動作をそのまま速度に生かし、右の光速拳! 中井出「全てを守ろうだなんて思って!」 さらに左の光速拳! 中井出「全てを生かし続けたてめぇらこそが!!」 次いで両手での音速掌打! 中井出「てめぇらが生きていた最果ての!」 その状態から─── 中井出「間違いの……全てだったんだよ!!!」 エクスカリバーを気に変えての羅生門!!  キュボドボゴォオッハァアアンッ!!! 黒  『ギッ……ガァアアアアアアアッ!!!!』 徹しスキルが火を噴き、エクスカリバーの閃光が黒の背中より爆発するように噴き出る。 それを確認した頃には黒は吹き飛び、体勢を立て直そうともがくが、 それすら勢いに殺されて出来ないでいた。 そして俺はそんな黒の遙か後方へと転移して、 吹き飛んでくる黒目掛けて身を振るい、身体速度音速化し、 さらに烈風で勢いを付けるだけ付けて───!! 中井出「ブチ抜けぇっ!!おぉおりゃぁあああああっ!!!」 右手に全てを込め、全てを託した一撃を、狂気に染まったその顔面に!! 黒  『く……オォオオオオオオオオオッ!!!!』 転移を───そう思ったことだろう。 だがその能力を霊章に宿る時の精霊が殺し、驚愕に染まる顔面を───この手が砕いた。  ゴバガォオンッ!!! ギ……という悲鳴だけが、腕を伝って鼓膜に響いた。 砕け散る顔面と、噴き飛ぶ場所を忘れたかのように真下の大地に激突する体。 それを確認した途端に限界が訪れ、俺の体から金灼の色が消える。 中井出「っ……ぐ、あ……!!」 体を襲う疲労感。 筋肉痛なんてものはもはや起こることもなく、人にあらざる英雄の力を使った反動だろう、 意識が薄れる今に、なんとか抵抗するだけで精一杯の自分が居た。 ふらふらと体が後方に傾き、やがて潰れた黒から少し離れたところで尻餅をつく。 中井出「う、くっ……くそっ……!」 力が入らない。 視界はどこかヒビ割れた感じで、 全力で解放したわけでもないのに自分が壊れゆくような感覚。 それでも……動けるうちは動かないわけにはいかない。 だって……  メギ……メギョメギョッ……!! 顔面を崩されても、黒が潰れても、再び黒を吸収するバケモノが……生きているのだから。 中井出「く……あっ!!」 ならば。 ここからでも出来ることをと、武具宝殿より武器を構え、メガレールカノンを発射。 だが黒は瞬時にカタチだけを作るとこれを回避。 空中に飛び上がり、さらにさらにと黒を集めてゆく……! 中井出「……はは……まいったなぁ……」 力が抜けてゆく。 意識が傾いてゆく。 一度の解放でこの有様…………じゃあ、全力で解放したら、俺はどうなってしまうのか。 中井出「馬鹿なこと考えてるよな……俺……」 生きたいのなら、それがどんな結果であれ生き延びることこそが答え。 それがたとえ逃げることでも、世界から罵倒されることでも、 生きたいと思うのなら……結果に伴うもの全てを受け入れるという覚悟。 俺はそれを─────────手放した。 中井出「解ってるよ……ああ、解ってる……」 逃げられない。 たとえ転移で逃れても、あいつは追ってくるだろう。 世界の、そして時間軸の全て、何処に逃げても…… 今殺さなければいつか自分が殺されることを、本能的に理解している。 ならば俺が選ぶべきは“生きるために逃げること”ではなく─── 自分を失ってでも生き延びること───! 中井出「本当に……とんでもないことに巻き込まれたなぁ……」 勝ち目なんて、本当にあるのだろうか。 自分を失くすだけで済むのだろうか。 失くした自分は、いつか取り戻せるのだろうか。 様々な思いが頭の中をぐるぐると回り、それでも─── 逃げることだけは出来ないと理解できていた。  ザンッッ……!! 武具宝殿よりジークフリードを。 相棒に身を預け、杖代わりにして立ち上がる。 黒が黒を飲み込み、頭を、そして体を構築する間に、 潰れた景色や、その先に在る景色を見渡した。 もはや誰も居ない、こんなことになってもまだ、他人に任せっぱなしの世界を。 自衛隊が来たところでどうとかなる問題でもない。 核ミサイルでどうにかなるなら、ハイペリオンを何度でも撃ち出そう。 でも……もう、人間の力ではどうにもならないところまで、事態は進んでしまっていた。 それでも……それでもだ。 人であることを手放すということが、こんなにも───  ゾンッ───!! 中井出「!《バガァンッ!!》げはっ───」 息を吐いた瞬間……だっただろうか。 突然目の前に黒いものが現れた……時には、俺はもう吹き飛んでいた。 なにをされたのかも解らず吹き飛び、痺れるような感覚に体勢を立て直すことも出来ず、 やがて地面を跳ね転がり、為す術もなく倒れる。 中井出「…………」 その時、空が見えた。 こんな時だっていうのに空を飛ぶ鳥が居て……それがハトだって気づいた時。 俺は、今この時も戦っているであろうかつての級友を頭に描き、笑った。  ヒュバゴギィンッ!! 黒  『ヌ……!?』 ……金灼が、燃える。 俺の意思とは関係なしに振り上げられたジークフリードが、 顔面目掛けて振り下ろされた黒の一撃を受け止めた。 中井出「ふっ……ふふふっ……あっはっはっはっは…………、……おい。     てめぇ、いったい誰と戦ってると思ってやがる……」 ……ゆっくりと、蔓が伸びるように。 中井出「てめぇの言う精霊サマってのは、     弱った人間に執拗に追い討ちをかけるほど下衆であらせられますか……」 体に、マナが伸びる。 中井出「大した精霊サマだよ……“人間風情”がそんなに怖いかよ───」 疲労で動かぬ体。 それを、必死に繋ぎ止めるかのように。 途端に人器に活力が通り、体は───動いた。  ガギィンッ!! 黒  『キサマ……!』 黒の拳を弾くや転移と同時に大地に立つ。 正直、長引かせることなんて不可能。 体が、もう解放状態に耐えられるほど余力を残していない。 だから……これで、最後。 黒  『マダ立つカ……愚かナ人間ヨ……』 そんな、ふらふらの俺に向けて、黒が愉快そうに言う。 愚か……愚かか。 中井出「ああ……そうだな……。     誰かの未来なんて知ったことじゃない、なんて言いながら……     自分のためだ、なんて言いながら……こうして出娑張ってちゃ、愚かだよ……。     でもな───……お前には、解んねぇよ……───《キィンッ》」 意思、解放。 中井出「いいか───精霊野郎……!今から……人の“強さ”ってのを見せてやる!     意地ってものを!想いってものを!!     それを受け止めてもまだ笑っていられたなら───てめぇの勝ちだ!!」 ジークフリードに武器や防具の全てを預け、鞘までもを宿し、 我が身を捨て身として全てを解放!! 中井出「ジークフリード!アガートラーム解放!!……目に焼きつけやがれ……!!!     これが───っ!未来を目指す“人間の剣”(にんげんのつるぎ)だぁああああああっ!!!」 ジークフリードとアガートラーム。 二つの“想いを力に変えるモノ”の能力を解放し、 霊章や武具に宿る意思や魂、そして─── 黒  『……!?ナんダ、コレは……!!』 この場で死した者、離れた場所で生きている者、今までの時の中、 この世界を生きた者や死した者の意思が、想いが───そして自然より流れるマナが、 金色に染まる稀紅蒼剣へと流れ込んでゆく。 中井出「見ろ……!俺達はこんなにも生きたがっている!!     見ろ!!この世界はこんなにも生きたがっている!!     焼きつけろ!!誰もてめぇらの勝手な修正なんて望んでなんかいないんだ!!     てめぇらの未来が絶望だったからって、     どうして俺達の未来までもが絶望だって決め付ける!!     結局てめぇらは!自分が起こした最果ての絶望を!     なかったことにしたかっただけじゃねぇか!!」 金色の炎と金色の風が吹き荒れる。 大気はそのあらぶる力に怯えるどころか、眩き光に手を添えるように包み込み、 さらなる力をジークフリードに注ぎ込んでゆく───!! 中井出「この世界に英雄なんて要らなかった!!     お前が知らなきゃいけなかったのは……そんな簡単なことだけだったんだよ!!」 やがて暴風にも似た想いの嵐の全てが剣に治まると、一瞬だけ世界は無音となり─── 中井出「だから……全部打っ潰してやる!!     てめぇが幻想したこの軸の最果ても!!ルドラが求めた希望も!全てを!!」 俺は剣を手に、烈風にて一歩を踏み出す!! 黒  『ぬかせぇっ!!人間ごときの思念がどれほど集まったところで───!』 その瞬間、俺の突進を殺すためか、俺と黒との中間に張られる黒と魔法の膜。 それをたったのひと振りで破壊して見せ─── 黒  『───!!クッ!!』 その威力を知ってか、黒は本能で空へと逃げた。 食らえば生きてはおられぬと。 いかに身を何億もの魂で固めようと、この剣には耐えられぬと。 生命として危機を感じ取ったかのように。 だから───気づかなかった。 その上空にこそ、既に自分の敵が存在していたことに。 カオス『ビッグバンッ……画竜点睛(フランバージュ)ショットォオオオオッ!!!』 黒  『なっ───!?』 そう、既にそこに存在していた。 大人しく寝てることなんて出来なかったんだろう─── 蒼空院邸に飛ばした筈のかつての仲間たちが居たのだ。 足にビッグバンを付加させ、全ての力を込めたのだろう、 太陽のように赤く輝く右足で─── 俺を見下ろしながら必死に逃げようとしていた黒の体を、この……大地へと。  キュバァッガドォオンッッ!!!! 黒  『グギャァアォオオオッ!!!!』 落下する時間など1にも満たない。 黒はそれこそ刹那の間に地面に叩き付けられ─── 起き上がろうとした時にはもう、射程距離内に存在している自分を嘆くしかなかった。 中井出「(しゃっ)!!」  ゾ───バァッフィィインッ!!! 烈風での加速を乗せた振り下ろしが、左肩から右脇腹までを一気に斬り裂く!! 吹き飛ぶ黒をさらなる烈風で追い、肉迫するや剣を構え───!! 中井出「(こう)!!」  ザガァアッフィィインッ!!!! 次ぐ振り上げの一閃が、黒の吸収にて塞がろうとする傷口をさらに斬りつけ───!! さらに烈風───!! 中井出「(そう)!!」  ズゴォアァアッフィィイインッ!!! このままでは殺されるのみ、と踏んだのだろう。 魔法を放ち、反撃をしようとした左手を、突き上げた剣が肩ごと貫き殺し───!! 中井出「(らん)!!」  ギガァアッフィィイイインッ!!!! 左肩を庇おうとしたその姿を、下から上へと飛ばすように斬り上げ───!! 中井出「()ぇええーーーーーん!!!!」  ゾッ───ザガァアアガガガガガアアッ!!! その斬り上げた体へと、身を翻して遠心力をつけることで力を溜め、 地面を蹴ることで跳躍───同時に剣に宿る力を全力で解放し、空へと向けて斬りつける! 黒  『ガッ……グッ……!!グギィイアァアアアッ!!!』 天を貫けと云わんばかりに力を放出し!光で黒を焼き殺さん勢いで!! 空へと向かい飛びながら!剣に黒を引っ掻けるようにして殺し続ける!!  ザガガガガガガガガァアアォオオッ!!!! 黒  『キ……消エル……!!滅ビル……!!我ガ体ガ……我が核ガ……!!     オノレ……オノレオノレオノレェエエエエエエッ!!!!     コンナモノガアルカラ……!!コンナ、コンナァアアアアアアッ!!!』 だがその途中。 何を想ったのか、黒の手がジークフリードを掴み─── 黒  『許サヌゾ人間!!我ガ滅ブモノカ!!     滅ブノハ───貴様、ダァアアッ!!ガァアアアアアアアッ!!!!』 ただでさえ物凄い力の解放、手に余る能力の範疇を超えた光を孕んでいた剣─── それが、今───  ビギッ……バガァッシャァアアアアアッ!!!! 中井出「───!!?なっ───ジーク!?」 黒の渾身により、俺の目の前で……砕けた。 同時に俺を包んでいた全ての能力は霧散し、 柄だけを握った俺は勢いのまま上空へ投げ飛ばされ、 逆に相手は滅された黒の多さからか、身動きが取れないままに空中を漂い─── 中井出「ジー……ク……?」 全てが霧散した。 柄だけが残ったジークフリードからはなんの反応もなく、 ただ……俺の傍で破裂した剣の欠片が、空より降り注ぐ陽の光を受けて輝いていた。 黒  『グッ……ク、ハハハハ……!!クヒハハハハハハハ!!!     終ワリダ、人間!自慢ノ武器ガ死ネバ、モハヤ戦エマイ!!     ダガ私ハ違ウ!体ハ動カヌガ、コンナモノ……黒デ再構築スレバ───!』 黒の声が何処か別のところで叫ぶナニカのように、流れてゆく。 何が起こったのか理解できず───けど、たったひとつだけ。 中井出「───」 そう、たったひとつだけ解っていることがある。 それは…… 中井出「ルドラ───使わせてもらうぜ、今───!!」 眼下の黒野郎を、殺さなくちゃいけないってことだ───!! 中井出「“夢食いの腕輪”よ!持ち主であるこの博光が命ずる!!     ───この世界に存在する全ての者から!     この夏の間に得た記憶と経験の全てを吸収しろ!!」 黒  『───ナニ……!?』 唱えた途端、ルドラにもらった夢食いの腕輪が悲鳴にも似た音を立て、 暴風を吸い込むようにしてこの世界にある、あらゆる経験と記憶を吸い取ってゆく! それとともに俺が霊章に呼びかけると、 散らばったジークの欠片や、 霧散した“想いの力”までもが光の筋となって俺のもとへと集ってくる───!! 黒  『ナ、ンダ……!?ナンダコレハ───!!』 我が身は武具宝殿。 たとえ武具を破壊されようが、我がもとに集い、我が身に納まれば再び形を取り戻す。 だが今はそうすることでジークフリードを構築するのではなく、 全ての経験と記憶、そして想いとマナとを柄の先に密集させ、 真の想いの剣を構築してゆく───!! 世界の各地から光の筋が集まり、剣と化してゆくその姿は幻想以外のなにものでもなく…… それを眼下で見上げる黒は、 やがて全てが集い、金色の剣と化すのを……ただ黙って驚愕の瞳のままに見上げていた。  ───さあ…………行くぜ……。     見せてみろ、お前の……精霊に出来る、最高の“覚悟”ってやつを───!         代わりに、俺の“人間”を───くれてやる───!!  ギュフォォンッ!!ヂャガァッキィインッ!!! 金灼の剣を構える。 途端に剣を振ったものとは思えない音が大気に響き渡り、 それと同時に───潰れていた大地はまるで、 潰れたことなど無かったことのように元に戻り、死した筈の人々さえもが生を取り戻す。 黒  『全テノ記憶ト経験ヲ無カッタコトニ……!?馬鹿ナ!コンナ───!!』 なにが馬鹿な、だ。 出来るか出来ないかなんてことは、てめぇの大将に……ルドラに訊きやがれ───!! 中井出「うぉおおおおおおおおおっ!!!!」 アハツィオンの力を“全力で”解放する!! 途端に景色がバキベキとヒビ割れていくが、歯を噛み締めて真っ直ぐに眼下を見下ろす!! 家が再生している中、その景色へと落ちていっている敵を、違えることなく!! 光となり、落ちるのではなく飛ぶように落下し、一気に黒との距離を縮めてゆき───! 中井出「俺が全部持っていく!痛みも辛さも悲しさも憎しみも!     お前らが最果てで見た絶望ごと!     今お前らに潰されようとしている世界の思いと一緒に───!!     この夏にあった全ての出来事と一緒に───!!     こんな戦いなんて無かったことにする!全て消えろ!俺とともに!!」 今、全身全霊を込めた一撃を───!! 黒  『───!!ハハッ!無駄ダァッ!!     忘レタカ!私ニハ“超越”ガアルコトヲ───!!』 ───叩きこむ直前に、黒の赤き目が鈍く光り、俺を───超越した。 黒  『貴様ニ私ハ殺セヌワ!!この能力ガ在ル限リ───……カ、ギ…………!?     ナ……ナゼダ!?何故コンナニモ“力”ガ落チル!何故───!!』 だが。 そんな超越なんてもの、最初から俺相手には意味を成さなかったんだ。 いつやっても、誰がやっても結果は同じ。 どんな時にやったところで、“越える者”は俺にだけは勝てやしない。 俺は……俺自身は、武具の力で戦っている“少し強い人間”に過ぎないのだから。 中井出「───あばよ。無様な覚悟だったぜ、精霊王」 黒  『ヒ───!ク、黒ッ……黒ヲォオオオオッ!!!     消エタク───死ニタクナイィイイイイイイッ!!!!』 黒がルドラから全力で、必死の必死に黒を掻き集める。 相当に必死だったのだろう、一瞬にして黒の密度は先ほどの限界を超え───  ギガシャォオゥンッ!!!! ───その全てが、たった一撃によって完全に霧散した。 塵一つ残らず、残さず、残ることを許さず。 同時に俺の体から完全に力が抜け落ち、金灼の剣が手から零れ落ちる。 が……すぐにそれを霊章転移で回収……したところで、もう、動けなくなった。  そして─── ……いつか、晦がゼットを斬り滅ぼした時のように、 億以上もの黒を一瞬で死滅させるほどの斬撃によって開かれた、次元の切れ目。 力が抜け、落下するだけの俺は……そこへ落ちていくことに抗うことも出来ず─── 中井出「───、……」 何処に飛ぶかも解らない。 どうなってしまうかも解らない先のことを思い、ならばせめてと───  キィンッ! ドリアード『……!え……!?』 霊章からドリアードを解放して、逃がした。 ドリアード『博光さん!?どうして───!!』 中井出  「………」 落下していく俺へと手を伸ばすドリアード。 その手へと……その瞳へと、俺は小さく首を振って応えた。 ドリアード『───!』 意識が薄れてゆく。 そんな中、思い返すのはアハツィオンの言葉。  ───汝の願いを叶えよう。汝の理想を叶えよう。     だが知れ。我が武具は人の手で扱い切れるものに非ず。     その力全てを解放し、限界を越えし時。     汝は───                       人の姿を、保っていられなくなるだろう─── ……俺は、人間以外のなにかになる。 そして、俺が俺以外の何かになるってことは───  …………ああ、そっか─── ……小さく、なにかが繋がった気がした。 その途端に体は人の姿から別のものへと変わってゆく。 人から、なにか別のものへと。 ドリアードは俺のもとへと来ようとするけど、俺はそれを拒絶した。  ……いつか必ず会いに行くから、それまで待っててくれ、と。 俺は全然、別のものになっているけど、必ず会いに行くから。 俺が俺以外の何かになるっていうことは、お前をずっと檻に閉じ込めるのと同じだから。  だから……忘れてくれてもいい、幸せになってくれ、と。  そう呟いて、俺は……俺でなくなるのと同時に───  未だルドラの力が影響するこの世界で“別の何か”になることで、  “中井出博光”に関する全ての記憶を奪われ…………次元の渦へと消え去った。 Next Menu back