───冒険の書13/嵐の前の……静かか?これ───
【ケース98:中井出博光/クシャルキャオラ】 藍田 「キャオラァアアーーーーーーッ!!!!」  ベゴパァンッ!! トロール『フギィッ!?』 藍田二等兵の顔面に鋭い上段回し蹴りがヒット!! 藍田二等はそこからさらに身を捻ると、 蹴り込んだ相手の肩を踏み台にするように相手の上空へと跳躍。 そこからさらに回転をし─── 藍田 「“粗砕”(コンカッセ)
!!」  ゴシャア!! トロール『クギャッ!!』 まるで、クラックシュートをさらに高速回転させた踵落としを、 トロールの脳天に叩き込んだのだッッ!! 丘野 「おお!トロールの頭頂がヘコんだでござる!!まるで歯磨き粉のCMみたいに!」 中井出「おお!陥没した首周りが歯周ポケットか!!」 殊戸瀬「美しい……」 麻衣香「美しい……?」 夏子 『さあ……』 木村夏子がモファアと蒸気のようなものを吐き出しながら喋る。 最初こそ怖かったが、もう慣れた。 フルフェイスの脇から漏れる煙は、ハッキリ言って俺達を恐怖のドン底に陥れたもんだが。 今でも思い出す……あのステキな地獄絵図……
【あの頃の愛】 藍田 「“羊肉(ムートン)
ショット”!!」  ドパァン!! オーク『ホギャアアア!!!』 相も変わらずの藍田二等の蹴りが冴える。 そこから連ねられる連撃はまるで舞いのようで、 鋭いソレは幾度も、何匹でも吹き飛ばしてゆく。 ───で。ややあって戦闘が終わってみれば───  ぺっぺらぺ〜♪ 藍田 「お?」 中井出「ぬ?」 丘野 「なんの音でござるか?って……どっかで聞いたような音だったでござる」 藍田 「あ、俺だな。なんかバックパックが光ってる」 丘野 「ぬう、こ、これは……“霊蛙安威天牟(れああいてむ)”」 中井出「し、知っているのか雷電……」 丘野 「う、うむ……見たことがある……」  ◆霊蛙安威天牟───れああいてむ  時折に敵が落とすステキアイテム。  かつて丘野くんが初心者修練場で手に入れたもので、  彼はその時のことを思い出しているのだろう。  敵を倒すと極稀に落とすものであり、その性能は店売りのものとは一線を画す。  敵を倒せば必ず落とすレアアイテムもあるが、  それは大体が固定ノートリアスモンスターが落とすと言われている。  *eb!刊:『ヨーヨーマッとノトーリアスビッグの幻』より 丘野 「して?どんなものを手に入れたでござる?」 藍田 「ん───ってうおっ!?」 藍田二等がバックパックから出したもの……それはなんと鎧ッッ!! 丘野 「お、おおおおお!装備品でござるか!!」 中井出「これでさらに我らが強くなれる!!」 夏子 「やったじゃない亮!」 殊戸瀬「レア防具なら防御力も期待できるし」 麻衣香「売れるならお金にもなるしね」 藍田 「……どーでもいいけど呪われてるぞ?これ」 総員 『な、なんだってぇえええーーーーーーーっ!!!?』 そう、それは呪われていた。 輝くバックパックから出てきたから神々しく見えたんだが…… ところがドッコイ、バックパックから全貌を見せたソレは、物凄く凶々しい鎧だった。 その名は……絶望の鎧。 総員 『…………ゴ、ゴクッ!!』 心に戦慄が走った気がした。 お、恐ろしいッ……!ああJOJO、なんて恐ろしいッ……!! せっかくのレアアイテムなのに呪われてるたぁ…… 中井出「……どうする?コレ」 藍田 「初心の身空、捨てるわけにもいかんしなぁ……」 丘野 「ならば売るでござるか?」 殊戸瀬「無理ね。レアアイテムは売れないらしいし」 丘野 「そうなんでござるか」 麻衣香「じゃあ……どうする?」 藍田 「どうってそりゃ……」 中井出「………」 丘野 「………」 夏子 「え……あ、あれ?なんでわたしを見るのかなぁみんな……」 ……そうして、やることは決まったのだと思う。 中井出「木村二等!貴様にこの防具の装着を申し渡す!!」 夏子 「え───えぇえええっ!!!?」 丘野 「そうでござるよ!そうすれば防御力もグンと跳ね上がるでござる!!」 夏子 「や、で、でも!───亮、なにか言ってやってよ!」 藍田 「俺は夏子が無事でさえいてくれたらそれで満足だ」 夏子 「うわメッチャいい顔ッ!!     ちょ、やめてよ!わたしはこのままでいいんだってば!!」 中井出「麻衣香、殊戸瀬二等……やぁっておしまい!!」 女性陣『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 夏子 「や、やぁああめてぇえええええーーーーーーーーーっ!!!!!!」 麻衣香と殊戸瀬二等がハイパーストレングスで駆け出した。 木村夏子もハイパーストレングスで対抗したが、 そこはそれ、他の女性とは一線を画す殊戸瀬二等のSTRは規格外だった。 あっさりと押さえつけられ、麻衣香が絶望の鎧を手に木村夏子の装備を外しにかかった。 殊戸瀬「男は見るんじゃないのっ!!」 男性陣『ラーサー!!』 夏子 「それ以前に見せられないようなことしないでぇええーーーーーーっ!!!!!!」 ゴサゴソソガシャン、ガショガショ…… ───……。 ……。 ……で。 夏子 「うう……」 許しが出て振り向いた時、彼女は絶望に包まれていた。 中井出「おお、さすがは絶望の鎧。木村夏子が絶望に包まれている」 丘野 「さすがはゲーム……名称はウソをつかんでござるな……」 夏子 「呆れてるのよっ!!」 絶望ではなかったらしい。 中井出「しかし……見れば見るほど凶々しいなぁ」 丘野 「ウムス……これは怖いでござるな」 藍田 「夏子?」 鎧  《オォオオオ〜〜〜〜〜ッ……》 藍田 「うおっ!?」 中井出「よ、鎧が返事したっ!!」 丘野 「この鎧は木村殿でござったのか……」 夏子 「うわぁああん!鎧と同じ名前なんてヤだぁあああーーーーーーーっ!!!!」 藍田 「───ところで夏子。体の自由を奪われるとかの副作用はあるか?」 夏子 「うぅ……それは大丈夫みたいだけど……」 シェシェイシェイシェイと腕や足を振る木村二等。 どうやら自由ではあるらしい。 ……名前だけで、べつに呪われるってわけじゃないんだな。 中井出「うむそうか!呪われることもなく防御力が上がるのであれば良し!!     それでは!総員総力を挙げて他の部位の装備を集めるものとする!!     木村二等の防御力を上げれば、藍田二等はパワーダウンに至らぬ!!     その意を以って、他の装備を集めよ!!」 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 夏子 「やめてぇえええーーーーーーーっ!!!!!」 広大なる空の下、木村二等の叫び声だけが響いた。 【Side───End】
中井出「……思い出すなぁ、あの頃……」 丘野 「なにをでござるか?」 中井出「あ、いや、最初の装備くらいなら良かったのになぁ、って」 丘野 「……ああ、木村殿のことでござるか。     驚いたでござるなぁ、呪いの防具一式を揃えた途端、     “呪い”のスキルが発動して外れなくなった時は」 中井出「無意味に意思なんて持っちまうもんだから性質が悪かったなぁ」 今となってはただただ懐かしい……。 そして彼女は凄まじき防御力とともに、体の自由を奪われたわけで。 中井出「さて……どうしたもんかな」 丘野 「木村夏子をでござるか?」 中井出「や、そうじゃなくて。ほら、考えてもみろ。     バトルが藍田二等任せになっているだろう」 丘野 「おお、そうでござるな」 中井出「このままじゃあ双剣ガザミが錆びる」 丘野 「拙者の武器もでござるなぁ」 中井出「……ふむふむ。では全力で戦闘に参加するとしよう」 丘野 「そうでござるな」 言うや否や、駆け出してモンスターどもに襲い掛かった。 藍田二等にはデカモンスターを任せ、我らは他モンスターを屠ってゆく。 中井出「武器はしっかり二刀流!!」  マキィンッ!! 双剣ガザミを頭の上で交差させて、マグニファイを発動! 双剣ガザミの潜在能力、鬼人化を引き出す───するとステータスが二倍に! 中井出「二刀流奥義!モンスターハンター式乱舞!!」 両手に持ったガザミを振って振って振りまくる!! その攻撃は弾かれようがなにしようが斬って斬って斬りまくる!! そうすると相手モンスター……ジェントルマンはゴシャア!! 中井出「うべぇっ!?」 “こんにちは”を使用してきた。 体が長い上に背が高いため、お辞儀をしてきた際に丁度俺の顔面に相手の頭が減り込んだ。  ◆こんにちは  ジェントルマンの技。気を付けをしてただお辞儀をするだけ。  だが、固まった粘土モンスターのような相手の頭突きはそれはもう痛いわけで。  あまりナメてると痛い目を見る。ところで、ジェントルマンはとにかく固いんですよ?  他には“とれた”や“キシャ沙雨”などがあり、  肩についたゴミを唐竹割りチョップで取ろうとしてくれたり、  拳(?)で連続突きをしてきたりする。やられるともちろん痛い。  *eb!刊:『テイルズシリーズの代表紳士』より 中井出「うぶっ!ぐぶぶっ……!!」 丘野 「提督殿!戦闘中に鼻血を出すとは!いったい何を考えているでござるか!!」 殊戸瀬「……こんな時くらい助平なこと考えるのはやめなさいよね」 中井出「え───あ、いや違う!違うよ!?俺そんなこと考えてないよ!?     なんで真っ先にそういうこと考えんの!?今攻撃されたの見てたでしょ!?     ちょっ……殊戸瀬!?なんで軽蔑の眼差しで見てんの!?」 丘野 「提督殿……貴殿がそこまでエロマニアだったとは」 中井出「違うっつーの!!」 藍田 「エロマニアに背中を預けるのって物凄い勇気だよな……」 中井出「違うって!!」 丘野 「いや!提督殿にはもうそのままエロマニアを貫き通してほしいでござる!」 中井出「貫き通す以前に貫いてもいねえって!!人の話聞けてめぇら!!」 つーか戦闘中ってこと完全に忘れてんじゃないだろうなこいつら……。 中井出「丘野二等!」 丘野 「なんでござるかエロ提督!!」 中井出「ええいエロをつけるな!!今は戦闘中だぞ!気を引き締めろ!!」 丘野 「しかしサー!!戦闘中にエロ思考全開で、     鼻血を噴いた提督にそんなこと言われたくないでござる!!」 中井出「この鼻血はそうじゃねぇって言ってるだろが!!」  ボゴシャア!! 中井出「ぶへぇっ!!」 とかなんとか言ってるうちに肩のゴミをチョップで取られる俺。 つーかそもそもゴミなんて無かった筈だが。 丘野 「おお……さすがジェントルマンでござる。なんとお優しい」 中井出「ジェントルマンは     粘土のバケモノでも手刀でゴミを取るバケモノでもねぇだろ!!」 麻衣香「どうでもいいからさ、戦おうよ」 中井出「俺は戦う気満々だっての!!」 麻衣香「博光が戦闘中なのにエロ全開で鼻血なんか出すからでしょ!?」 中井出「ちぃいいいがうっつーーのぉっ!!!」 既に俺の言うことなど微塵にも聞いてくれない猛者どもだった。 ああ……第一印象って物凄く大事なんだなぁ……。 こいつらに会う前にエロを断ち切れていられたなら、 こう……血の涙すら流せそうな気分に陥ることもなかったのに。 中井出「今なら血の涙すら流せる気がする……」 殊戸瀬「エロが極まって、目からも鼻血を出す気?」 中井出「出すかっ!!出せるかっ!!」 丘野 「た、大変でござる!肩からも鼻血が出てるでござるぞ提督殿!!」 中井出「いつから俺の血液は全部鼻血になったんだよ!!」 藍田 「エロに目覚めた時からだろ?」 中井出「どんな人体構造してんだよ俺ゃあ……!!」 殊戸瀬「ああほら、こんな話があるじゃない。     どうやっても固体にならなかったニトログリセリンが───」 中井出「俺の中でどんなシンクロニシティが発生したんだよ!!」 麻衣香「博光がスケベだったのはそんな理由があったのね……。     まさか世界規模のスケベだったなんて」 中井出「いきなり世界規模にすんな!!頼む!聞いててマジで泣きたくなってきたから!」 つーか完全無視されてるモンスターに申し訳なささえ感じる。 もう俺、なにもかもを投げ出してとんずらしてぇ……。 ───……。 ……。 ───ぺぺらぺっぺぺ〜♪ で、戦闘が終わってみれば上がるレベル。 丘野 (……提督殿のエロレベルが上がったでござる……) 藍田 (上がったな……エロレベルが……) 殊戸瀬(一段とスケベに……) 麻衣香(さすがエロマニア……) 夏子 (スケベ大王……) 中井出「おーいぃ……聞こえてるぞ〜……」 勘弁してほしい。 こいつらもう俺をからかう気満々だ……。 それが原中大原則に則ったものだって解るから余計に性質悪い。 立場が逆ならむしろ喜んで加わるだろうし。 藍田 「これで提督も丘野も30レベルだな」 中井出「だな。ようやくクラスチェンジが出来る」 丘野 「忍者の次のクラスはなんだったでござるかな」 藍田 「まあ、行ってみりゃ解るだろ」 ごもっとも。 中井出「んじゃ、俺と丘野二等で師範の道場まで行ってくるから。     そっちはそっちで頑張ってくれ」 藍田 「オーライ」 師範の道場にはシステムから入ることが出来る。 そこで、初心者修練場を出る前に出会ったそれぞれのジョブの師範に、 クラスチェンジと奥義を授かることになるとか。 藍田 「じゃ、俺達は適当に戦って待ってるから」 中井出「おお。それでは丘野二等兵!レッツダイヴ!」 丘野 「サーイェッサー!!」 システムを設定して“師範道場”に転移をした。 ───……。 ……。 で、景色が草原から道場に切り替わった時。 師範 「うむ!よく来た!私だ!教官だ!」 早速、剣士の師範が俺の前に現れた。 師範 「よくぞ既定レベルにまで達した!我輩も嬉しいぞ!!     ここに貴様の成長を認め、グラディエーターのクラスと奥義を授ける!!」 中井出「おおそうか」 師範が俺に妙な勲章を渡してくれた。 するとステータスバーの中の文字が“剣士”から“グラディエーター”へと変わった。 おお……ステータスも地味に上がってる。 師範 「それから奥義だな。いいか?まずは回ってキックサンダーを」 中井出「いらん」 師範 「なんと!?」 中井出「冗談はいいから奥義を寄越せ」 師範 「むう、我輩は悲しいぞ。だがまあいいだろう。     受け取れ、これが我が剣術道場の奥義、鬼靭斬りである!!」 中井出「鬼靭斬り?ほほう、効果は?」 師範 「敵を斬りつければ斬りつけるほどにTPが回復するのだ。     しかもTPがMAXの時に敵を切りつけると“昇華技”が発動可能だ」 中井出「昇華って……付加みたいなもんか?」 師範 「剣を振るうと火の出るフラッシュファイアがあっただろう。     その火の勢いが増したり、そもそも攻撃力が上がったりする効果があるのだ」 中井出「ほほう、そりゃ便利」 師範 「ただし鬼靭モード発動の最中はなにをしていてもTPが徐々に減ってゆく。     鬼靭モード解除は、解除を強く意識することで勝手に解除される。     まあアレだ、その場その場で上手く使い分けるがいい!!」 中井出「……これって他の能力と併用も出来るのか?鬼人化中に鬼靭モードになれるとか」 師範 「可能だ!」 ……おお。 こりゃ便利だ。 師範 「では、渡すものは全て渡した!次のクラスチェンジは60レベルだ!     それまで精々精進するがいい!!うわっはっはっはっはっは!!」 師範がそう言った途端、視界が光に包まれる。 ……どうでもいいが、 何故師範の笑い方が雄山笑いだったのかが無性に気になった瞬間だった。 ───……。 ……。 ゴォッ───シャキィンッ♪ 中井出「ふぅっ……」 丘野 「帰還でござる」 そうして道場から出てきてみれば、丁度一緒に降り立った丘野二等兵が。 藍田 「あ、終わったんか?」 中井出「おお。見事に新たなクラスと奥義を受け取ってきたぞ」 麻衣香「どんなの?どんなの?」 中井出「こっちは鬼靭モードってやつだった。     斬れば斬るほどTPが回復して、TPMAXの状態で攻撃が当たると発動する。     なんでも、技が昇華するらしいけど……試してみなけりゃよく解らん。     丘野二等、そっちはどうだった?」 丘野 「聞いて驚くでござるよ!なななんと!真・生分身を会得したでござる!!」 藍田 「……なんだそりゃ」 丘野 「生分身を拙者の身体に溶け込ませる奥義でござる!     お蔭で攻撃を25回くらうまで無敵!最強でござる!!」 藍田 「………」 中井出「……いや」 殊戸瀬「……眞人。それって多分騙されてる」 丘野 「な、何故でござるか睦月!!25回でござるよ!?25回!!」 殊戸瀬「……じゃあ問題だけど。敵が近づいてきて攻撃を連ねられるとして、     それを連続して喰らうと何秒保つと思う?」 丘野 「よ、避けるでござるぜ!?拙者、頑張って避けるでござる!!     見くびってもらっては困るでござる!     こちとら全ジョブ中最高の素早さを持つ忍者でござる!     しかも今はアサシン!!忍者よりさらに素早さが上がってるでござる!!」 殊戸瀬「今、眞人の“ござる語”を聞いてて違和感感じてたんだけど……ねぇ。     思うんだけど、アサシンになったんじゃあもう忍者じゃないのよね?」  グサァッ!! 丘野 「ッ……!!」  ザッ……ザムゥ…… 丘野二等が崩れるように両膝を、そして両手を大地についた。 中井出「お、丘野二等ォーーーッ!!?」 藍田 「ど、どうしたんだ丘野!丘野!?」 丘野 「…………」 中井出「ああっ!なんかわざわざ体育座りに変更したのちに『の』の字を書き始めた!!」 藍田 「し、しっかりしろ!傷は浅いぞ!」 丘野 「深い……深いよコレ……深すぎる……」 麻衣香「わぁ、なんか標準語に戻ってる」 殊戸瀬「自分がもう忍者じゃないって自覚したんでしょ」 夏子 『ジョブが忍者なだけで、元々忍者だったわけじゃないしね』 中井出「な、なぁに気にするな丘野二等!     レベル60になれば“忍者マスター”になれるんだぞ!」 丘野 「───!お、おお……!そ、そうだ!そうでござった!拙者はまだ───」 殊戸瀬「どちらにしろ今は忍者じゃなくてアサシンでしょ?」  グサァッ!! 丘野 「───……!!」 中井出「あ」 藍田 「あ〜……」 麻衣香「うわ……丘野くんの顔が漂流教室の飢えた子供みたいに……」 中井出「あー……き、気にするなぁ〜?     丘野二等〜……お、俺はお前のござる言葉が好きだぞ〜……?」 藍田 「そ、そうだぞ〜……?べつに忍者じゃなくても使いたいなら使うべきだぞ〜……」 丘野 「フ、フフ……ワイは忍者やない……。犬や……負け犬や……」 藍田 「……忍者じゃなければ負け犬なのか?」 中井出「そりゃ……忍者としては負け犬なんだろうさ」 丘野 「もういいよ……そろそろ頃合なのかもしれないし……。     俺、忍者マスターになるまで標準語で行くよ……」 中井出「や、今さら普通に喋られても……」 殊戸瀬「キモイわね」 丘野 「うわヒデェ!!お前それでも妻か!?」 殊戸瀬「眞人、冗談も冗談と受け取れないんじゃいい男になれないわよ」 丘野 「……お前が言うと冗談に聞こえないんだっつの」 しかし実際、丘野二等が普通に喋るなんて久しぶりだ。 標準がどうとか言うより違和感が……まあいいか。 中井出「さて……それじゃあ」 声  「あれー!?提督さーん!?」 中井出「ヌ!?」 突然の声!───に、振り向いてみれば…… 真穂 「やーほー!」 遠くで手を振る桐生二等の姿が。 その後ろには晦や彰利の妻なる者がゾロゾロと。 このゲームで初めて、他パーティーと出会えたな。(注:そうでもない) 中井出「桐生二等……?へぇ、お前らこっちの方に飛ばされてたのか」 真穂 「うんまあ。そっちは?」 中井出「ここから結構離れた砂漠のオアシスに飛ばされた。それからはもう戦う日々だよ」 真穂 「へぇ〜……」 夜華 「おい貴様ら。彰衛門か悠介殿を見なかったか?」 中井出「貴様って……ああいや、見てないけど」 夜華 「そうか……」 ルナ 「悠介ってば何処でなにやってるんだか。心配だなぁ、なにやってるのかなぁ」 春菜 「言ってもしょうがないでしょ?     それに悠介くんならわたしたちよりも経験多いんだから、     な〜んにも心配することなんてないってば」 ルナ 「波動娘には解らないわよ。悠介ってアレで、妙なところで失敗するんだから。     今だってきっと、強い時の自分をリセット出来ずに失敗して、     敵にボッコボコにやられたりしてるかもしれないんだから」 夜華 「馬鹿な。悠介殿に限って───」
【Side───その頃の彼】 悠介  『カタをつける!!無限と型成せ!“皇竜(ラグ)
───”はうあ!!』 シャドウ『何をしようとしたのかは知らんが───隙だらけだ!!』  ビジィッ!ゴシャシャシャァアアアアンッ!!! 悠介 『あぐががぁあああああああっ!!!!』 闇の刃が俺を襲う。 いざって時にポカをやらかすのは、まだどうにも直っていなかった。 彰利 『バカじゃなかと!?こんな時にポカやらかすなんて!     これで負けたらどこもこもなかろうモン!?     アタ自分がなんしょっとかわかっとーと!?はらくしゃあ!!』 悠介 『自分でも呆れ果ててるわぁああーーーーーっ!!!!』 【Side───End】
───……。 真穂 「へぇえ……もうクラスチェンジしたんだ」 中井出「一応な。つーかさっきチェンジしたばっかりなんだ。     正直スキルの使い勝手も理解してない」 仁美 「こっちはまだ20にもなってないのにね」 粉雪 「や、桐生先生、これは絶対提督さんとかのピッチが異常なだけだから」 真穂 「そうそう」 中井出「まあ、殊戸瀬二等と藍田二等のお蔭で、     異常な速度のパワーアップをしたのは認めるが」 粉雪 「て、そうだ。提督さんは知ってる?」 中井出「知らない」 粉雪 「……まだなにも言ってないんだけど」 春菜 「あぁそうそう、近いうちにエトノワールがトリスタンに攻め込むとかなんとか。     最近の町とか村はその話題でもちきりだよ」 中井出「攻め込むって……戦争ってことか?」 ルナ 「他に喩えがあるなら聞いてみたいけど」 中井出「………」 それもそうかも。 夜華 「一応、戦闘に参加することは出来ると聞く。貴様らはどうする?」 中井出「他国の戦争に首を突っ込むのもな……」 藍田 「他国っつってもアンデッドどもと人間の戦いだろ?     見物するか、死人と戦うかどっちかでいいんじゃないか?」 丘野 「戦う気は満々なのな」 真穂 「それよりさ。さっきから気になってたんだけど……」 チラリ、と桐生二等が俺達の後ろに居る凶々しい物体を見る。 物体……というか、木村夏子なんだが。 中井出「き、気にするな?なんでもないからっ」 真穂 「で、でもなんかモフシャアアアって蒸気みたいなの口から出してるし」 仁美 「ものすごく気になるよ?」 中井出「気にしたら負けだ、本当に」 こればっかりは本当に。 粉雪 「でも予想はつけられるでしょ。提督さんが居て麻衣香が居る。     丘野くんが居て睦月が居る。で、藍田くんとくれば───えぇっ!?」 確信に迫った彼女が驚愕した。 そして恐る恐る凶々しい物体に近寄るが─── 夏子 《キシャァアアアーーーーーッ!!!!》 粉雪 「ひゃぁああああああっ!!!!」 突然咆哮され、飛び上がった。 ああ、まあその……あんな物体にいきなり叫ばれりゃあ、そりゃビビるわ。 粉雪 「さ、さささ叫んだ!いきなり叫んだぁあっ!!」 夜華 「おのれ妖怪!!」 丘野 「落ち着けぬーべー!!」 夜華 「誰がだ!!」 夏子 『大体ちょっと待ってよ!いきなり妖怪呼ばわりされても困るってば!』 中井出「そうだぞ!今の木村はただの怪物だ!」 夏子 『提督さん!?』 中井出「あ、いやっ!冗談冗談!!つい原中魂がっ……キャアアアアーーーーーッ!!!」 ……その後。 俺は機動重装甲キムラによってボコボコにされた。 【ケース99:桐生真穂/王大人】 ───ドシャア。 提督さんが大地に崩れ落ちた。 真穂 「うわ……ボッコボコ」 丘野 「庇っておいて怪物呼ばわりじゃあなあ」 ピクピクと痙攣してるけど、一応は生きているらしい。 さすがにコロがされちゃシャレにもならないけど。 真穂 「そっちはこれからどうするの?」 丘野 「このまま旅を続けるんかねぇ。どうよ藍田」 藍田 「そうなるだろ。なんたって、俺達ゃどこの国にも属してない自由人だし」 殊戸瀬「わたしとしてはさっさとバトルギルドに入りたいんだけど」 麻衣香「そういうのって大きい町か城下町とかにしか無いみたいでね」 丘野 「で、こうやって当ても無く旅してるわけだ」 丘野くんが大袈裟に肩を竦めて言う。 でも案外そういう状況も楽しんで見えるのは、わたしだけじゃないと思う。 丘野 「んで?そっちはこれからどうすんだ?」 夜華 「彰衛門を探す」 ルナ 「悠介を探す」 春菜 「弓術を磨く」 仁美 「モンスターを仲間にする」 粉雪 「拳を鍛える」 真穂 「式神を完全に扱えるようになる」 丘野 「……見事にバラバラなのな」 まったくだった。 ここまで協調性の無いパーティーも珍しい。 藍田 「て……桐生?式神ってのは?」 真穂 「うん?ああ、コレコレ」 わたしは装備していた錫杖をシャランと振り上げると、 望月双角ご用達の式神“雷神”を召喚した。 雷神 『ヴェエエエエエエッ!!!』 丘野 「うおぉっ……!?」 麻衣香「うわはっ……こりゃまた……」 藍田 「そういや変身後能力のやつで、     武器が錫杖の場合だけ召喚できるとか晦が言ってたっけ……」 春菜 「結構……じゃなくてかなり助けられてるよ?」 粉雪 「もうね、無惨弾なんて相当に惨たらしいけど強いし」 とっても痛いけどとっても強い業、無惨弾。 HP半分削る分、ヒットすれば強いけど外しやすいのも事実で…… 丘野 「ま、まあ……そっちも上手くやってるようで安心した。     そっちにゃそっちの予定があるみたいだし、一緒には行けないな」 真穂 「そうだね。それに、そっちにはそっちのペースもあるでしょ?」 丘野 「だな。んじゃまあそういうことで」 真穂 「ばいばーい」 はたはたと手を振って、わたしたちは別れた。 それぞれ別の目的があるのだ、一緒に居ても行動しづらくなるだけだ。 それに…… ルナ 「うぅ……悠介ぇ〜……」 夜華 「くそ……何処に居るんだ彰衛門め……!」 ……もともと、このパーティーは協調性のカケラも無い。 ただでさえ目的がバラバラだっていうのに、その上他の人が増えるなんて冗談じゃない。 真穂 「はぁ……このパーティーを編成した精霊さん、本当に恨むよ……?」 わたしはヒロラインに降りてから、 もう何十回目かも忘れた溜め息を吐きつつ、そう呟いたのだった。 Next Menu back