───冒険の書14/闇と雷のシンボルメン───
【ケース100:晦悠介/リフレクト姉さんの幻】  ジャガガギギィンッ!!! 彰利 『ほぎゃぁああああああああっ!!!!』 黒い刃が辺りに散らばる。 黒い霧から突如として放たれるそれは、 予測するくらいの回避率ではないと避けることも出来ない。 彰利 『あ、あぶっ……!あぶねっ……!!って悠介後ろ!!』 悠介 『なぁっ!?』 彰利の言葉に、咄嗟に武器をHPに戻して盾を創造する。 そして漠然と、後ろから来るらしい攻撃目掛けて思い切り振るう。 それは幸いにも闇の刃を弾き、なんとかダメージ無しでくぐり抜けることが出来た。 彰利 『ギャアもうこいつ戦いづれぇ!!     闇の刃しか使わない分、シェイドより性質悪ィYO!!』 悠介 『言ってる場合か!横だ!!』 彰利 『なにぃ!?ぎゃあああああっ!!!』  ショガガガガギギギギギィインッ!!!! 発生する闇の刃の鎌鼬現象を避ける。 そして避けたら一気に疾駆し、とにかく攻撃。 このゲームにはターン制度など無いのだ。 攻撃を避けたらとにかく攻撃しなければ一生勝てやしない。───……んだが。 悠介 『“突き穿つ”(ディグ・スラスト)
!!』  スフィン!ボフゥンッ───!! 悠介 『あ───チィッ!!』 放つ攻撃の全ては、闇に溶け込んだシャドウには届かなかった。 とにかくまあ戦いづらさなら一級の精霊だ。 自分の攻撃が終わると、さっさと闇に溶け込んでこっちの攻撃を無効化しやがる。 彰利 『───悠介!目で追うな!気配を探れ!!』 悠介 『───!』 そうだ。 がむしゃらに追ったっていつまでも長引くだけだ。 だったら、この聖堂に満ちている闇の気配───それがもっとも濃い場所を穿てば……! 悠介 『………』 焦るな。 ただ静かに、音を聞き流れを知り、その上でただ一閃のみに全力を───……!  ズパァンッ!! 悠介 『げは───っ!?』 ……放つに至らない。 つーか─── 彰利 『やーい!ひっかかったひっかかった!!     以前の能力が全然ねぇ俺らに気配探知なんて出来るわけねーべよ!!』 悠介 『お前なぁあああああっ!!!!』 そう、現実世界の能力が無い俺達に、気配探知能力なんかがあるわけないのだ。 それに思い出せずに真面目に探ろうとしてた自分が本気で恥ずかしい。 彰利 『僕はいつだってキミの成長を望んでいるよ……。     僕はキミが成長するためならどんなことだってしよう……』 悠介 『だからってこんなボス戦の時にそんな悪ふざけするんじゃねぇたわけ!!』 彰利 『キャア!ダーリンったら本気で激怒!!     よし!今こそその怒りをシャドウちゃんにぶつけるのYO!!』 悠介 『御託並べるよりお前も戦え!!さっきから俺しか攻撃してねぇじゃねぇか!!』 彰利 『ギャアダーリンたらすっかり不良モード!?     でもアタイがこうして攻撃を避け続けることで、     ダーリンへの攻撃を減らしている事実には気づかなかったでしょう!!     キャア!アタイってば親友思い!もう愛してる!』 悠介 『うそつけ!』 彰利 『即答!?』 だが、いつまでもこのままじゃあ敗北は確実だ。 ったく……!そりゃ現実世界の精霊に比べりゃ遙かに弱い。 弱いが……二人パーティーでなんとかなるような相手じゃないぞこれ……!! 悠介 (けど───) けど、諦めたりなんかしてやらない。 いつだって全力を出して、いつだって───超えてゆく!! 悠介 『覚悟決めろよ、俺───!“創造の理力”(フォースオブクリエイション)!!』 イメージするものは当然アレ。 一点のみで爆発的に解放する───!! シャドウ『ハッ、何をする気だ!今さら貴様らなどになにが───』 悠介  『暗きに住まう者よ退け!!“瞬き乱れる閃光(フラッシングシャイン)”!!』  コォッ───ギシャァアアアアアアアアッ!!!!! シャドウ『ギャァアアアアアアッ!!!?』 聖堂の虚空に鋭い閃光が創造される。 当然暗闇に目が慣れていた俺や彰利も視界をやられたが、 先に目を閉じておけば完全に塞がるようなことはなかった。 そして─── シャドウ『ぐ……!ぐがぁあっ……!』 闇属性の象徴ともいえるシャドウは光に弱く、見る間に霧から人型に戻り、弱っていった。 悠介 『ッ───詰める!!』 俺は閃光を創造したまま、一気に自分の攻撃が届く場所までを疾駆した。 そして、ステータスの全てをSTRとAGLに振り分け、 速度、破壊力のみを高めた上で、創造した閃光を槍の矛先に託し─── 悠介 『捻り穿て閃槍!!“闇を裁く閃光の槍(パニッシュメント・レイ)”!!』 AGLの振り分けにより駈けた勢いを殺さぬままに、 だがSTRの振り分けにより渾身の力を解放しつつ、全力を以って穿つ!!  フォッ───ゾバシィッ!……フィィイイン……─── シャドウ『ガッ───……』 槍がシャドウの胸を刺す。 途端、閃光が闇の精霊に埋もれたために、再びこの聖堂に闇が訪れる。 シャドウ『……、……チィ……!』 だが───シャドウは倒れない。 それを確認した俺は、既に雀の涙ほどしかないHPをさらに削り、再び閃光の創造を─── シャドウ『───よせ、やめておけ。そのままでは貴様が倒れる』 悠介  『……シャドウ?』 聞こえた声に敵意を感じなかった俺は、ポカンとしながら目の前の精霊を見た。 シャドウ『いいだろう、私の負けだ。      正直こんな低レベルのやつらに追い詰められるとは思ってもみなかった』 悠介  『え……いいのか?』 シャドウ『これ以上やるなら貴様も無遠慮に全力を出すだろう。      アイテムでHPを回復させられて閃光ばかり放たれてはかなわん』 悠介  『……ははっ』 よかった。 正直に言うと、もう回復アイテムなんぞは尽きていたのだ。 相手が諦めてくれるならこれ以上ありがたいことはない。 シャドウ『ではここに、闇の宝玉を授ける。大事に───』 悠介  『あ、待った。貰いたいのは俺じゃなくてあそこの───』 彰利  『あぁああ〜〜〜っ!!目がぁ……目がぁあああああ〜〜〜〜っ!!!      目がぁああ〜〜〜〜っ!!あぁああ〜〜〜〜っ!!目がぁああ〜〜〜っ!!!』 悠介  『あそこの…………たわけだ』 彰利は未だに閃光に目をやられていた。 シャドウ『……待て。あいつは私とは“戦っていない”に等しいぞ。      そんなヤツになぜ宝玉を渡さなければならない』 悠介  『……頼む。俺としてもかなり情けない状況だが、      俺の目的は闇の宝玉じゃなくて雷の宝玉なんだ』 シャドウ『本人を目の前に随分な物言いだな。私の宝玉は要らぬか』 悠介  『要らない、とかじゃない。      それぞれ目当てのエキストラボーナスアイテムは決めておいたんだ。      俺は雷であいつが闇。不愉快かもしれないけどさ、頼むよ』 シャドウ『……やれやれだ。まあいいだろう。      時にはこんな馬鹿馬鹿しい授け方も、味があっていい』 ひどい言われようだった。 シャドウ『では受け取れ。闇の精霊の名のもとに、貴様に闇の加護をくれてやる』  コォオオ……シャラァアアアン♪ シャドウが取り出し、放った闇の光が彰利に溶け込んでゆく。 すると彰利のステータスバーに“E”という文字がつき、 エキストラボーナス用のステータス枠が追加された。 だが当の本人はといえば…… 彰利 『目がぁあ〜〜〜……目がぁああ〜〜〜っ……!!』 ……能力を貰ったことにも気づかず、 いつまでもいつまでも目を押さえつつムスカ大佐の真似をしていたのだった……。 ───……。 ……。 ……ややあって、闇の聖堂から出た俺達は、陽の当たる場所に安堵をしつつ歩いていた。 彰利 『やぁ、ブラックオーダーな俺だけど、     ここまで陽の光がありがたいって思ったのは久しぶりだね』 隣には『今までは暗ければ暗いほどよかったのにねィェ〜』と続ける彰利。 俺は俺で、とりあえずHPを回復させつつルルカが待っている場所へと歩いた。 彰利 『んでさ、精霊の野郎をブッ潰したことでレベルが30になったわけだけど。     クラスチェンジってどうやってするん?』 そうなのだ。 先ほどのシャドウの聖堂に行くまで敵をコロがしまくり、 さらにシャドウを倒したことでレベルが30に至った。 既にクラスチェンジが出来る状態ならば、早めにやっておいたほうが特だったりする。 悠介 『いいか?まずシステム開いてジョブチェンジウィンドウを開く』 彰利 『ふむふむ』 彰利が俺の言葉に習うようにシステムを操作してゆく。 で、ジョブチェンジウィンドウを開くと、 そこには新たに“クラスチェンジ”の文字があり、金色に点滅していた。 彰利 『コレ?』 悠介 『そう、そのクラスチェンジの文字だ。     それを選ぶと道場送りにされて、中位クラスと奥義が授けられる』 彰利 『おぉそうなん?では早速』  カチリ───ビジュンッ!! 決定した途端に道場へと転移させられる彰利。 俺もそれを追うように決定をし、すぐさまに転移した。 ───……。 ───ビジュンッ!! 悠介 『っ……と……』 ……が。 転移してみれば、そこは道場ではなくよく解らん空間だった。 悠介 『……?なにか間違えたか?』 疑問符が頭に浮かぶ。 辺りを見渡してみても、あるのは広いけどなにも無い真っ白な部屋。 水晶で出来ているように透き通っている部屋─── その中心に、ひとつのクリスタルのようなものがあるだけ。 悠介 『………』 ほとんんど無意識だったと思う。 俺は部屋の中心へと歩き、それに触れてみた。 すると─── 水晶 《よくぞ来た、創造者よ》 悠介 『───』 ……触れた先から頭に直接声が届き、少々驚いた。 水晶 《ここは創造の聖堂なり。頂きを目指す者よ、我が名はアストラルケイジ。     古に絶えた創造の技法を記憶石に封じ込め、後世に残す者なり》 悠介 『アストラルケイジ……?     あ、ちょっと待て、俺はクラスチェンジしに来たんであって───』 水晶 《残念だが、創造者は他の中位ジョブにはなれない。     汝はシーフのようだが、シーフスキルなどより創造の熟練が高い。     それでは師範も奥義を託すには心許なかろう》 悠介 『ぐあ……!じゃ、ちょ、ちょっと待て!?俺の盗賊王の夢は───』 水晶 《創造者を極めるまで届かぬ夢だ》 悠介 『なんてこった……』 何気に楽しみだったというのに……。 どこまで創造に縁があるんだ俺は……。 水晶 《気を落とすな。代わりに汝には創造者の称号と創造の中位奥義を贈る》 悠介 『……創造に奥義なんてあるのかよ……』 水晶 《気を落とすなと言ったんだがな。     汝には“スピリットセーバー”のスキルを贈る。     創造時のHP消費を半減させ、創造出来るものの種類の幅を広げるものだ》 悠介 『盗賊王が……』 水晶 《……落ち込むな鬱陶しい。     人は創造を手にすると喜ぶと聞いたが、汝は異常者なのか?》 悠介 『鬱陶しいとはなんだ!!     楽しみにしてたものを先送りにされた俺の気持ちが貴様なんぞに解るかぁっ!!』 俺は徐に水晶をグワシィと掴み、ブンブンと振り始めた!! 水晶 《あっ!こらっ!やめろ!!壊れる!     壊れたら汝は二度とクラスチェンジ出来なくなり、     そうなれば他のジョブにもチェンジ出来なくなるんだぞ!!》 ───いっそ叩き壊してくれようかと思ったりもしたが、さすがにそれは困る。 水晶 《まったく……!能力を受け継がせてゆく我をなんだと思って……!》 悠介 『はぁ……』 溜め息が出た。 どの道俺は、創造者を極めない限りは盗賊王にはなれそうにないらしい。 そんな考えを頭に思い浮かべつつ、水晶をそっと元の位置へと戻した。 水晶 《……次のクラスチェンジは60レベルからだ。     それから、汝のバトルギルドシステムをエンチャンターに書き換えておいた》 悠介 『なぁっ!?ちょ、待て!俺はブレイバーで行くつもりで───!!』 水晶 《創造者は代々エンチャンターだ。     創造者でブレイバーかメイガスなど聞いたこともなければ、     そもそも効率よく戦えん。故に登録を刻ませてもらった。     汝は一生をエンチャンターとして生きてゆくのだ》 悠介 『かっ───てめぇええええええっ!!!!!』  グワシィッ!! 今度こそてっぺんきた!! 見せたる!俺の百万馬力!! 水晶 《なっ……こ、こらやめろ!!》 悠介 『塵と砕いてくれる!貴様の未来に絶望のみをくれてやる!!     後世がなんだコノヤロー!!     望まんものばっか寄越す伝承者に意味なんてねぇわぁああーーーっ!!!』 水晶 《───!!》  ヴンッ─── 悠介 『───!?とわっ!?あ、こ、こら!てめぇなにしやがった!!』 俺の体が透き通り、水晶は何事もなかったかのように元の位置へと戻ってゆく。 水晶 《次のクラスチェンジはレベル60からなり。     それまで精々精進をするのだ、創造を伝える者よ》 その、あまりにもお決まりの言葉を最後に俺の体が消えてゆく。 おそらくさっきまで居た場所に戻されようとしているんだろう。 悠介 『こ、のっ……!!覚えてろキサマ!!レベル60になったら今度こそぶっ潰す!』 水晶 《大丈夫だ。ここから出れば、ここで起こったことは都合よく忘れている。     なにに対して怒っていたかも忘れるだろうよ》 悠介 『なっ───水晶てめぇ!!』 水晶 《ではさらばだ。より頂を目指せ、創造者よ》 悠介 『やろっ……!!思い出したら覚えてろよてめぇええええええっ!!!』 水晶 《覚えておこう。だから……汝はその感情を大事にしろ。     いずれ、その感情こそが汝の未来を変えてゆく》 ……そうして。 俺が見ていた景色は急速に遠退き、 気づけば俺は常闇の領域から離れた場所にある草原に立っていたのだった。 ───……。 ……。 キィイイ……シャラァン…… 彰利 『美しい……』 しばらくホウケていると、俺の目の前に彰利が現れた。 転移の輝きの中で妙なポーズを取っていたそいつは、 本人が言うに美しさには程遠いほどに奇妙だった。 彰利 『おお、悠介のほうはもう終わってたのか』 悠介 『ん……そうらしい』 実際、なにがどうなって終わったのかはよく覚えてなかったりする。 ただ……なにか物凄く嫌なことがあった気がするのは何故だろうか。 しかもジョブがローグじゃなくて創造者なのは何故だろうか。 ……いろいろと謎が残る。 悠介 『んー…………』 よし解らん。 こういう時はあれこれ考えるよりも前向きに成長するだけだ。 だが怒りは忘れん。 なんていうか、“その感情を大事にしろ”とか言われた気もするし。 彰利 『よしゃ、これでちったぁ戦いが楽になるねィェ〜。     俺が拳闘士でキミがローグ……ってアレ?なんでキミ、ローグじゃないの?』 悠介 『あー……そこんとこだが俺にも解らん。     どっかに飛んで、気づいたら名実ともに“創造者(クリエイター)”になってた』 彰利 『あらそうなん?解らんのなら仕方ないけど……』 悠介 『………』 手を開き、閉じてみる。 べつに異常は無いし、むしろ前よりも体がしっくりと来る感はある。 ……ローグになれなかったのは残念ではあるけど……これでもいいって思えた。 悠介 『彰利、そっちの奥義ってなんだったんだ?』 彰利 『ム?あ、ああ奥義ね。奥義は気光系の特技の昇華だった。     それと格闘スキルに+修正。一纏めにしたのが“錬気”ってスキルだった。     んで───そっちは?』 悠介 『ん……ちと待ってくれ』 システムを開いて自分のスキルを見る。 と───“スピリットセーバー”という永続アビリティが増えているのに気づいた。 悠介 『創造する時のHP消費が半減されて、創造できる種類が増える能力みたいだ』 彰利 『ほへ……じゃあもう完全にクリエイターってこと?』 悠介 『……だな。今考えてみても、シーフらしいことをてんでやってなかったし……     まあこれはこれでいいってことにしとこう。     ジョブチェンジシステムが開けないことにかなりの不安と陰謀を感じるが』 さっきからアクセスしようとしてるんだが、ジョブの部分だけ黒く変色してしまっていた。 ……こりゃ絶対になにかの巨大な陰謀だ。 彰利 『じゃあ悠介ってずっと創造者?』 悠介 『みたいだ』 べつに嫌なわけじゃない。 実際、この能力には随分と助けられたんだ。 感謝することはあっても、邪魔だなんて思うことは絶対に無い。 たとえ過去、この能力の所為で周りからの目が変わってしまったのだとしても。 悠介 『いいさ、こうなったからには意地でもこの能力を使いこなす。     他のジョブも強化したいって思ってたけど、やっぱりこっちの方がしっくりくる』 彰利 『だろうね。俺も“ブラックオーダー”とかってジョブがあれば、     迷うことなくそっちにしたのに』 悠介 『俺としては上達させてあるものより、     別のものを成長させることで上を目指したかったな。     盗賊なんてやったことがなかったから丁度良かったのに』 彰利 『そか。でも他のジョブでもべつに───………………ダメか。     剣士もモンクも魔物使いも魔法使いも弓使いもなんもかもやったことあるし』 悠介 『そういうこと』 彰利 『あ、けど忍者とか執事とかは?メイドは無茶としても』 忍者、執事か……。 んー…… 悠介 『……………………すまん。そういうことやってる自分がまるで想像出来ない』 彰利 『まあそれは。俺の予想の範疇でもあったけどさ。     俺から言わせてもらえば盗賊だけでも十分だったよ』 俺としてはまだまだ盗み足りなかったんだが。 どうせ変わるなら思いっきり変わりたかったし。 悠介 『ん───よし。そんじゃ一度町に行ってアイテム整えてから雷の聖堂に行くか』 彰利 『せやね。でもさ、この格好で誰がアイテム売ってくれると?』 悠介 『……盗むか?』 彰利 『シーフじゃなけりゃ出来ないんじゃないかね。大丈夫かい?』 悠介 『っと……そっか。こりゃ困った』 彰利 (つーか悠介の口から素直に『盗むか』とか聞けるとは。     これもこの少年の……感情の成せる業なのか) 悠介 『ん……なんか言ったか?』 彰利 『や、べつに。ただ感情が順調に成長してるようでよかったと』 悠介 『そか』 小さく笑い合って、俺達はとりあえず歩き出した。 金は何げに溜まってる。 だったら、今は獣人装備を外して町に入ろう。 その旨を彰利に伝えると、彰利は兼ねてから装備したがっていた “虎ガラの道着”をバックパックから取り出すと装着。 彰利 「イエイ」 まるで、虎系統の装備を手に入れた山田太郎のように喜んでいた。 彰利 「よっしゃあ悠介!早速町行こう町!!人として動くなんてもう久しぶり!最強!」 悠介 「なんでお前はそうなんでも最強に重ねたがるかね」 俺は、目立つ彰利とは逆に控えめの装備を取り出した。 どれも、敵をコロがしまくって手に入れたものだ。 もしくは盗んだもの。 あまり防御力の高いものじゃないが、アイテムを買うだけの間なら十分だ。 悠介 「よしっ!それじゃあ久しぶりの人の姿での町、存分に楽しもう!」 彰利 「オウヨーーーッ!!」 こうして俺達は、常闇の領域の傍にある街、アトモノスへと向かった。 【ケース101:弦月彰利/闇側の町アトモノス】 スタスタスタスタ…… 彰利 「ほうほう……これが町か」 悠介 「どこの田舎ものだよ」 彰利 「や、人の町なんて随分久々だったもんだから」 懐かしき希望の園!おお、今俺達、人だ! 彰利 「やあ、しかし青い空の下、     獣人装備をせずに歩くことにここまで開放感を覚えるとは」 悠介 「確かに肩が凝るってのはあったかもな。     逆にいつでも誰とでも闘えて面白かったが」 彰利 「それもそうなんだけどね」 などと言いつつ、マップを見ながら一直線にアイテム屋へ。 そこでアップルグミやポーションを買い、ついでにハイポーションなども買っておく。 獣人勢力になってからは案外金を使わない生活してたから、金なら結構あったりする。 おっさん「毎度っ」 彰利  「毎度なんか来ちゃいねーや」 炸裂、片桐節。 そこには開久の愛が詰め込まれています。 しかし悠介は俺の隣でモシャアと苦笑を漏らすばかり。 ぬう、ここんところは一緒になって騒いでくれたほうが面白いんだが。 ……普通に考えて、毎度なんか来ちゃいねーやって言葉から何かが繋がればの話だが。 とかなんとかやってる時だった。 アイルー『ついたニャー』 豆村  「だっはっ……!!あ゙〜〜っ……!!長旅だった……!」 刹那  「なんだってこんな遠方まで……!」 アイルー『辛抱するニャ。ここらへんはいい鉱石が掘れるから、      鍛冶や彫金にはうってつけなのニャ』 ……どっかで見た顔が、大荷物を背負って噴水広場の前に腰を下ろしていた。 そう……忘れる筈もない。 あれは───ああ、あれは───!! 彰利 「悠介悠介!あそこあそこ!」 悠介 「ああ、気づいてる。気づいてるからあんまり騒───」 彰利 「アイルーが居る!!」 悠介 「そっちかよ!!」 彰利 「すげぇ!生アイルーだ生アイルー!!     ちゃんとピッケルもリュックもドングリも持ってるよ!!」 悠介 「……お前はもう少し、自分の息子を労わる心を持ったほうがいいと思う」 彰利 「馬鹿言っちゃいかん。     俺ゃ宗次よりゃあ家族を大事にしてる自信は世界の誰よりもあるぜ?」 悠介 「………」 彰利 「……な、なんすかその目は」 なんつーか生暖かい目で見られた。 けどすぐに目を逸らされると、あいつらと合流しようと促される。 まあ……いいけどね? あいつと同じように見られない限りは。 悠介  「なぁ、ちょっといいか?」 アイルー『ゴニャニャニャッ?ゴニャア』 で、オイラを置いてさっさと二人と一匹に合流した悠介は、 バテてる二人ではなくその隣のアイルーに話し掛けた。 アイルーはアイルーで姿勢を正したのちにお辞儀をして、 それから『ゴニャア……』と鳴きつつ顔を洗い始めた。 アイルー『お客様は神様ニャー。僕は旅の雑貨屋だニャ、入用ですかニャ?』 悠介  「ああ。回復アイテムを適当に見繕ってほしい」 アイルー『お安い御用だニャ。予算はどれくらいですニャ?』 悠介  「そうだな……、───彰利」 彰利  「っと、ほいほいほい」 悠介に呼ばれてからようやく駆け出して、会話に混ざる。 その間、ようやくみずきと刹那坊やが俺達に気づいたが、当然無視。 彰利  「金なら二万あるね。どうする?」 悠介  「そか。じゃあ五千で頼む」 アイルー『かしこまりましたニャ。えーと、ポーションもアップルグミも持ってるニャ?』 悠介  「ああ、さっき道具屋で揃えた」 アイルー『残念だニャ……僕のところで買ってほしかったけど、      さっき到着したばっかりだったニャ。      ───……えーと、レモングミとミックスグミを10個ずつと、      癒しの護符を見繕ったニャ。これでいいかニャ?』 彰利  「癒しの護符?なんすかそれ」 アイルー『ゴニャッ!よく聞いてくれたニャ!      これは僕が手に入れたもののなかでもレア中のレア、      戦闘中でもHPが自動回復する不思議なお守りニャ!      追加料金5000A$で手を打つニャ』 彰利  「なんと!自分で見繕ったとか言いながら、なんと商売上手な……!」 アイルー『そこのところは見逃して欲しいニャ。      こっちも商売だから、多少強引じゃないと誰も相手してくれないのニャ』 彰利  「な、なんと……!そんな不憫な身の上話に今の行動が派生するなんて……!      ゆ、悠介!買ってやろ!?ね!?はい!ね!?」 悠介  「落ち着け、言われなくてもちゃんと買うから」 アイルー『ニャニャニャッ!毎度ありニャ〜!!』 彰利  「毎度なんて買っちゃいねぇや」 アイルー『気分の問題ニャ』 つまり営業スマイルみたいなものだと言いたいらしいです。 それか商売人としての根性。 多分どっちもなんだろうけど。 アイルー『確かに合計1G$頂きニャ。お客様は神様ニャー』 彰利  「誰が便所の神様だこの野郎!!      可愛いからって人様ンこと馬鹿にすると撫で回すぞ!!」 悠介  「訳が解らんから黙ってろボケ」 彰利  「グ、グウムッ……」 ボケって言われてしまった……。 でも……うう、ちくしょうカワイイ。 彰利  「ちょっといいかいボーイ」 アイルー『ゴニャ……なんですかニャ?』 彰利  「ちとテイクアウトしたいブツがあるんだが……よいかね?」 悠介  「だめだ」 彰利  「なんで!?いいじゃん!」 悠介  「いいわけあるか!お前どうせアイルーを連れ去ろうとか考えてるんだろ!!」 彰利  「な、何故解った!!キサマ───エスパー!?このマミめが!!」 悠介  「解らいでか!そして誰がマミだ!!」 アイルー『ニャニャニャ……冷やかしはお断りニャ。      用が無いんだったら───ニャニャ、そろそろ行くニャ』 豆村  「マ、マジか……ちょっと休もうぜ……」 刹那  「そうだよ……大体、      この世界って歩いたり走ったりしても疲れないんじゃないのか……?」 アイルー『技師は体力が第一ニャ。      だから弟子になった時点で、VITが上昇するようになるニャ。      基本VITが上昇するから振り分けには使えないけど、      レベルアップしないでもステータスが上がるのは嬉しい事実なのニャ』 豆村  「俺ゃ疲れない自分が愛しい……」 刹那  「情けないけど俺も同じだ……」 ほんに情けない限りだった。 俺も人のこと言えんけどね。 彰利 「んで?坊主ども。お前ら二人だけ?」 刹那 「あー……ビーンファーザー」 彰利 「……俺ゃマメ目マメ科の親になった覚えはねぇんだが。     んで?お前ら二人だけなのか?     俺ゃてっきり他のおなごどもとパーティー組まされてると思ってたのに」 豆村 「あ、えっと、親父……それは……」 刹那 「悪ぃ、おやっさん。紗弥香さんと深冬ちゃんと郭鷺、置いてきちまった」 豆村 「せっ───刹那!!」 刹那 「事実だろ?隠すなよ」 ……ふむ。 彰利 「置いてきたって、なんでかね?」 刹那 「親友が困ってた。ただそれだけだ。     他に理由なんて無いし、俺にはその理由だけで十分だった」 豆村 「刹那……」 彰利 「ははぁ〜〜〜ん?おめぇまさかぁ〜〜、     深冬ちゃんに告白してあっさりフラレたんで逃げてきたんじゃねぇか〜〜〜っ!?     えぇ〜〜〜っ!!?」 豆村 「ぐっ……!やろっ───!!」 彰利 「クォックォックォッ!図星!?     そうか図星かね!情けねぇことよのゥォ〜〜〜ッ!!     そィでのこのこと女性陣ほっぽって逃走かよ!     そりゃ根性あるっつゥか馬鹿だぜスッパァーーーッ!!」 刹那 「っ───おやっさん!それが傷心の息子にかける言葉かよ!!」 彰利 「言葉だ!!」  どーん!! 刹那 「……っ……すげぇ……!胸張って言い切りやがった……!」 悠介 「刹那。こいつにゃ普通の人間が持ってる良心ってのは望めないから。     お前もちったぁ慰めの言葉くらいかけたらどうだ」 彰利 「………………」 慰め……つーてもね。 彰利 「慰めの言葉って……どんなん?」 悠介 「どうって…………なぁ、刹那?」 刹那 「知らないんですか!!」 悠介 「あー……すまん、考えてみりゃすぐ解ることだった。     親が子供に向けるやさしさとか慰めを俺達に望むのは、そりゃ無茶ってもんだ」 彰利 「そゆこと。なにせ慰め方も励まし方も知らん。     子供がなにをされれば喜ぶのかも知らんし、なにをされれば元気になるのかも。     刹那や、それを我らに望むのは、それこそ馬鹿ってもんじゃぜ?」 刹那 「っ……けどっ!そんなのあんまりだ!     解らないからって、フラレたことをネタにからかっていいわけないだろっ!!」 彰利 「そうか?」 悠介 「常識的にはマズイんだろうな。     俺と彰利はそうやって互いを励まし合ってきたから解らないだけで」 刹那 「……そんなのが励ましになんて───」 悠介 「なるんだよ。俺達は他とは違う。俺と彰利はそういう生き方してきたんだ。     どんな言葉でどれだけ傷つくのかくらい、なんとなく解る。     もっとも───そういう生き方に慣れた分、     他人にまでそうやって接するのがヤバいんだが」 彰利 「でもYO、今さらマイサンにやさしい言葉なんて……ねぇ?     お前さ、俺から慰めの言葉貰って嬉しい?散々クソ親父呼ばわりしてきた俺に」 豆村 「………」 マイサンは気まずそうに目を逸らした。 彰利 「ほれ見ろこのクズが!!」 刹那 「……悠介さん。よくこの人の親友やってられますね……」 悠介 「聞くこと見ることだけで全てを知ろうとするからダメなんだよ。     それだけじゃこの馬鹿は理解出来やしない」 刹那 「………」 悠介 「刹那、べつに俺はお前が深冬たちを置いて旅に出たことを恨んじゃいない。     むしろここは自由を第一に考えるゲーム空間だ。     それに、お前にゃお前の考えがあったってことくらい解る。     ……少なくとも、柾樹とみずきとお前の中じゃ、     お前が一番思い遣りってもんを持ってる。お前はお前の思うように生きろ。     他人に遠慮なんかして、     自分が一番大切な時間ってのを無くすことが無いようにな」 刹那 「悠介さん……」 悠介 「───ただし。お前が親友のことを悪く言われて怒るように、     俺だってこいつを悪く言われるのは我慢ならない。     お前が理解してないだけで、こいつはちゃんと信用が出来るたわけなんだからな」 彰利 「そうだこのタコ!!」 刹那 「……これでですか?」 彰利 「コレ呼ばわりかよ」 何気に傷ついた。 悠介 「だーから理解してないってんだ、たわけ。     まあ、今から理解しようとしても絶対無理だから軽く流しとけ。     こいつが妙に人にからんでくる時は、     大体がそいつのことが気になってしょうがない時だから」 豆村 「えっ───」 彰利 「えぇっ!?そうなの!?あ、いや、そそそそんなことねぇぜ!?     誰がこんなマイサンを気にするっての!!俺気にしてないよ!?ホントだよ!?」 刹那 「うーわー……すげー慌て様……」 悠介 「とまあ、これで解ったろ?言葉と様子からじゃこいつは計れやしない。     どれだけ嫌味なこと言ってようが、     こいつは本気で人を貶めようなんてことはしないんだ。     俺だってそうだ。自分がそういう生き方をしてくりゃ、     その痛みを知ってる分、そんなことが出来なくなる」 刹那 「………」 悠介 「でもま、サンキュな。友達のために本気で怒れるヤツ、俺は嫌いじゃないぞ」 刹那 「あっ……いや、さっきのはっ……」 刹那坊やが顔を真っ赤にして慌てる。 おお……どうやらこの小僧、何気にシャイボーイっつーか照れ屋らしいぜ? 彰利 「悠介ー?アイテムの補充も済んだし、そろそろ行くべー」 悠介 「っと、そうだな。それじゃあな、二人とも。     俺達これから行かなきゃならん場所があるから」 刹那 「あ……もしかしてエトノワールの戦争に参加するんですか?」 悠介 「……?なんだそりゃ。彰利、知ってるか?」 彰利 「んにゃ知らん」 ナンデショ。 そげな話なんぞまるで知らんよ? ……や、そりゃ国や町に寄らずに獣人とともに戦ってたわけだし。 刹那 「知らないんですか?……いったいどんな旅してきたンすか……」 悠介 「悪いがそれだけは言えない。校務仮面の素顔くらい秘密事項だ」 彰利 「うむ、かなり秘密だ」 刹那 「まあいいッスけど……。     なんかヤバイものがトリスタンって国から出てるらしくて、     それをブッ潰すために戦争するんだって……。     今、町も村もその話でもちきりなんですよ?知らないのがどうかしてるんだ」 彰利 「なんだと貴様コンチクショウ……」 悠介 「あーはいはい、つまらんいざこざなんて捨てとけ馬鹿」 彰利 「やっ……馬鹿って……」 ストレートに言われちまった……。 刹那 「戦争への参加は自由らしいです。     べつにエトノワール国民じゃなくても参加できるんだとか。     それとは逆に死人側に協力……なんて、     しようとしたら逆に死人に攻撃されますね」 彰利 「………」 獣人ならばと思ったんだが、確かに死人側には獣人も人も同じに数えられるだろう。 むう、ちと残念。 でも─── 悠介 「───彰利」 彰利 「あーあー、解ってるよ。どうせ参加しようってんだろ?     お前ってほんとこういうのに首突っ込むの好きな。     巻きこまれる俺の身にもなれってんだ」 悠介 「とりあえずお前にだけは言われたくない。つーかお前が言うな」 おお……言われてますな、俺。 豆村 「あの……悠介さん、なんか口調が……」 彰利 「へあ?あーあー、今の悠介ってば不良モードだからね。     こうなった時の悠介は怖ェエよ?     なんてったって些細なことで殴る確率が通常の三倍はある」 悠介 「なんだってお前は物事を喩える倍率が絶対に三倍なんだ」 彰利 「ヌ……なんでだろ。     まあひとまずは通常の三倍磯野カツオ効果だとでも思っといてくれ」 悠介 「余計に解らんわ」 これぞ和みマジック。 まあそれはいいとして。 彰利 「ほいじゃあそろそろ行くかい?」 悠介 「だな。じゃあな、二人とも。いい旅を」 豆村 「あ、あの……悠介さん、俺───」 悠介 「……馬鹿者。いいって言ってるんだから、今さら謝ったりなんかしようとするな。     あいつにゃいいリハビリになるだろ。今までが守られっぱなしだったんだ。     それに、そろそろ思いっきり動かせてやったほうがいい。身体も心もな」 彰利 「ミッフィーはキミに心がどーとか言われたくないと思うな、ボク」 悠介 「お前だってかつては心が死んでたトンガリだろうが。同じ穴の狢だ」 深冬ちゃんをミッフィーって呼ぶことに関してはスルーらしい。 さすが悠介、妙に細かいくせにヘンなところで大雑把だ。 彰利 「つーかトンガリ言うんじゃねィェーーッ!なにさそっちはモミアゲのくせに!!」 悠介 「やかましいこの変態オカマホモコンが!!     不名誉系のあだ名を欲しいままにしてるお前にあーだこーだ言われたかないわ!」 彰利 「な、なんですとこの!!     その大半がキミがつけてるもんだってことをお忘れでないよ!?」 悠介 「そんなことは知らん」 彰利 「なんと!」 野郎……しらばっくれようって気か? 悠介 「というかそもそも、俺がお前につけたあだ名なんてあったか?」 彰利 「そりゃキミ───……アレ?」 なんかあったような気がするんだけど……なんだったっけ? 変態オカマホモコンは水穂ちゃんだし……ってマテ? 今にして思えば───水穂ちゃんは“変態オカマホモさん”って言っただけで、 変態オカマホモコンってつけたのって悠介じゃなかったっけ。 彰利 「そう───そうだよ!今まで騙されてた!     キミだ!キミが僕に変態オカマホモコンのあだ名をつけたのだ大友くん!!」 悠介 「……そうだったか?」 彰利 「忘れたとは言わせないぞ!キミの一言で僕の人生は!」 悠介 「忘れた」 彰利 「言ったァアーーーーーッ!!!」 言わせないと言ったばかりだったのに言われてしまった……。 つーかこの言葉おかしいよ……。言葉を喋るのは本人の好きでいいじゃん……。 そんなの、他人に強制しようが叶うわけねぇじゃん……。 悠介 「じゃ、行くか」 彰利 「うう……そうね……」 ここで問答してても始まらんとか言いそうだし、もういいや……。 大体あだ名が多いのは俺がそういう生き方をしてきちまったからだし……。 彰利 「ところでさ。フルフルもあだ名になるのかな」 悠介 「や、真面目にそういうこと訊かれてもな」 贈られたものはやっぱり苦笑だったのでした。 やぁ、ほんと悠介って苦笑が多いよね。 ───……。 ……。 と……そんなわけで。 彰利 「やってぇんきましたヴォルトの山!!」 悠介 「テインジングマウンテンだろ」 彰利 「いいじゃん、覚えづらい名前なんてどうでも。むしろティンズィンで十分」 悠介 「十分なのか?それ」 知らんね。 まあそれはいいとして、オイラと悠介はこうしてティンズィン様山にまで来たわけある。 ホントはテインジングマウンテンって名前なんだけどね、ティンズィン様で十分かと。 彰利 「で……ここにヴォルトが居るん?」 悠介 「確信は無いんだけどな。     ……と、もう町から大分離れたし、そろそろ装備変えるか」 彰利 「えぇ〜?今すぐかぁ〜?オラ」 悠介 「腹は関係無いだろ。ほら、さっさとする」 彰利 「グ……」 見破られていたようだった。 でもまあ確かに腹関係ないよね。 なんだって悟空ってどんな時でも空腹に関連づけるんだか。 死ぬほど腹減ってるなら解るったって、ねぇ? 力が無くなるほどの空腹ってアータ。 彰利 「って、空腹で思い出した!食料買ってくりゃ良かった!」 悠介 「……しまった。精神消費のこと思考の範疇に入れてなかった」 グミ系統は食ってはいるが、そろそろ安定させといた方がいいのも事実。 ええいどうしたもんか。 悠介 「彰利、バックパックになにか食材は入ってるか?」 彰利 「えーと……?硬イモムシとペッパーの実と……     まあ、軽いもんを作れるくらいには」 悠介 「そか。じゃあここらで一度休憩取るか。寝るのもいいかもしれない」 彰利 「そうじゃね。んじゃあここにキャンプでも張るか。もちろん獣人の旗掲げて」 悠介 「基本だな」 俺と悠介は獣人製のキャンプ道具一式を取り出すと、 それをゴシャゴシャと組み立て始めた。 いわゆるテントだな、皮製の。 もちろんそのテントには獣人の紋章が縫われており、 そりゃもう一目で獣人だと解る仕様になっている。 そこで俺達の装備を獣人装備に変えれば───アラ不思議! 立派な獣人パーティーの出ッ来上がりでィ!! 彰利 『FUUUM、やはり着心地はステキだ』 悠介 『あとは獣人の旗を立てて、と……よし、完璧だ』 彰利 『ウム、どっからどう見ても獣人拠点。これぞベースキャンプ』 悠介 『ただのテントだけどな』 しかしそのテントこそが、我らを獣人勢力だと物語っておるのじゃ。 おお美しい、ビバ獣人ライフ。 彰利 『ほいじゃあ適当になにか作って、それ食ったら寝るか』 悠介 『だな。……ところで精神世界で寝ることって出来るのか?』 彰利 『………』 心配ごとがひとつ増えた瞬間だった。 Next Menu back