───冒険の書23/走れ、ジョリーン───
【ケース124:中井出博光/猫耳は眠らない6】 ドゴォンドゴォンドゴォンドゴォン!! 蒼飛竜『グゥォオオオオオゥウウンッ!!!!』 中井出「はっ……ふはっ……!!はぎゃぁあああああああっ!!!!」 轟音を高鳴らしながら、その二本の巨大な足で大地を駆ける飛竜! その先を速度重視ステータスで全力疾走する我等!! 丘野二等は……全ジョブ中最高の素早さを生かし、グングンと先の方を走っている。 蒼飛竜『グォオウッ!!』  ゴォッッキィンッ!!! 中井出「ヒイッ!?」 俺のすぐ後ろで飛竜の顎が勢いよく閉ざされた───つーか怖い!!なに今の!! 人間がどれだけ勢いよく歯をぶつけ合ってもあんな音鳴らないよ!? 噛まれたら一撃即死は夢じゃない! 中井出「こ、の───!逃げてばっかだと思うなぁっ!!」 俺は顎を閉じた状態のまま少しもたついていた蒼飛竜へと振り向き様の一閃を奔らせる! が───ガギィンッ!!───と弾かれた!! 中井出「かっ───!」 かってぇえええええええっ!!!! なんだこりゃあ!剣握ってたこっちの手がシビレたぞ!? なにこの鱗の硬さ!!悪夢!?これ悪夢!?ここまでの圧倒的な差が!? 蒼飛竜『グォオッ───ルォオオゥウッ!!!』  バオォオンッ!!!! 中井出「あらおわぎゃぁあああああーーーーーーーっ!!!!」 麻衣香「きゃああああああああっ!!!?」 丘野 「へっ!?な、なんギャアーーーーーッ!!!!」 殊戸瀬「…………!!」 一瞬何が起きたのか解らなかった。 が───呆気に取られてた俺目掛けて、蒼飛竜がブレスを吐いてきたらしい。 火のブレスだとかレーザーではなかった。 俺達は焼けしななかったことを心のどこかで安堵しつつ───  ゴォドォッガァアアアアアアアアアンッ!!!!! 総員 『ゲハァーーーーーッ!!!!』 遠くの岩山まで吹き飛ばされ、岸壁に激突したところで後悔したのだった。 そう……相手は蒼飛竜。 あれはただ息を吹きかけたのではなく、火竜が吐くブレスとほぼ同じ。 ようするに火竜が火球を吐くのなら、風の竜は風を吐く。その理論だ。 それは突風なんてものじゃなく、あっさりと俺達を空の旅に誘った、ということだ。 中井出「げっ……げほっ……!!いっ……てぇ……!!」 あまりの痛さに素直に『痛い』という言葉が漏れた。 なんとか麻衣香を受け止めることには成功したが、その分のダメージはやはり俺にあった。 丘野も……やはり俺と同じらしい。 麻衣香「博ちゃん!?大丈夫!?博ちゃん!!」 中井出「げほっ……ごほっ……!し、心配すんな……!傷つくのは男の役目だから……!」 麻衣香「でもっ!そ、そうだ回復!」 麻衣香が魔法を詠唱する。 一方の殊戸瀬は丘野二等に自分が調合したであろう薬を飲ませ、すぐに回復させていた。 麻衣香の方の魔法詠唱もすぐ終わり、回復の奇跡が俺に降りかかる。 それで少しは落ち着いた。 が……自然治癒は発動しない。 やっぱ……完全に見失わせるか、倒すかしなきゃ自然治癒は発動しないようだ。 無茶苦茶にもほどがある。 竜騎士になるのは大変そうだぞ殊戸瀬二等〜……。 中井出「よ、よし。とりあえず一刻も早く今居るこの場から離れよう。     じゃないと───あ」 丘野 「……?ど、どうしたんだ提督!急がないと───あ」 ふと傾けた視線の先───そこには……骨に囲まれるようにして幾つかの卵が。 え───えぇ!?ここって文字通りあの飛竜の巣!? 中井出「………」(チラ……チラリ) 丘野 「………」(……コクリ) 俺と丘野二等はゴクリと息を飲んだのちに、卵をバックパックの中へ───キキンッ。 中井出「あ、あらっ!?入らねぇ!」 丘野 「何故!?もしかしてこういうキーアイテムってバックパックにゃ入らない!?」 とかなんとか慌ててる内にギシャアアォオン!!という声。 俺と丘野二等はもう覚悟を決めて、フンッ……!と唸ったのちに卵をひとつ持ち上げた!! 中井出   「麻衣香!殊戸瀬二等!───逃げるぞ!!」 麻衣香   「えぇっ!?見つかってる状態で持ってくの!?」 殊戸瀬   「計画性ってものがないのね、提督」 中井出   「だぁーーまらっしゃあぁああいっ!!!俺達はなにをしている!?        冒険だ!そう、冒険!冒険に危険はつきもの!!故に叫ぼう!」 中井出&丘野『モンスターハンターは狩り!!』 狩りはしないがとりあえず逃げる!! と、その前に─── 丘野 「て、ててて提督!?なにやってんだ!早く逃げようぜサー!!」 近づいてくる飛竜の気配を知覚探知したのか、丘野二等がおかしなくらいに狼狽える。 だが待て、ここになら絶対にアレがある筈……!!  ゴソ、ゴソソソ……マキィンッ♪《蒼竜の鱗を手に入れた!》 中井出「あったぁーーーーーっ!!!」 これだ!これが欲しかった!! あと一枚!あと一枚さえあればドゴォッシャアアアアアアアンッ!!! 蒼飛竜『ルゥウウォオオオオッ!!!!』 総員 『来たァーーーーーーッ!!!!そして全力で怒ってらっしゃるーーーっ!!!!』 巣の出入り口らしき場所の岸壁を破壊するほどの勢いでスッ飛んで来た蒼飛竜。 その目が俺の腕の中の卵を確かに睨み……あ、ヤバイ。 蒼飛竜『───ッ……』 中井出「みっ……耳塞げ!!全力でだぁーーっ!!」 総員 『サ、サーイェッサー!!』 蒼飛竜『グバァシャァアアッ!!!!』  ゴォッッキィイイイイイインッ!!!! 中井出「〜〜〜〜〜〜〜っ……!!!!」 放たれる咆哮。 一方のみしか通気口が無いそこでは、竜族の咆哮は刺激的すぎた。 聞くだけで脳が破壊されそうな痛みと、大気に放たれた震動が体をビリビリと震わせる。 そんな中で、その震動と勢いに舞わされた骨やクズの中───大漁の鱗を発見した。 中井出「───!」 俺はもちろん、咆哮が終わると同時にすぐさまそれを拾ってバックパックへGO!! そして卵を抱えると、 中井出「総員!退避ィーーーーーーーーッ!!!!」 総員 『……!?……!!』 中井出「アレ?」 自分で言った言葉さえ自分に届いてないことに気づいた。 つーか耳が完全にイカレてる。 中井出「…………」(逃げんべ) 丘野 「…………」(んだ) だから原中奥義“眼混拓渡(アイコンタクト)
”で意思を伝え合って逃走開始!! 蒼飛竜『グォゥシャァアアアアアアッ!!!!』 それでもまだ飛竜の咆哮だけは脳が受け付けちまうんだから泣きたかった。 俺たちはすぐに人が通れるくらいの、 飛竜にしてみりゃ小さな穴から飛竜の巣を抜け出した!! ───直後、その穴の入り口からドォッゴォオオンッ!!という轟音。 どうやら衝突したらしい。 ザマァミロだがとにかく今は逃げるしかない!! 総員 『うぉおおおおおっ!!!とんずらぁあああーーーーーーーっ!!!!』 俺達は走った……走って走って走りまくった……!! “敵から逃げる”という条件に基づいて疲れようが、それはもう逃げ回った。 ───……。 ……。 夏子 「あーあ……スケルトンたちがあっさりと敵に皆コロがし……悲しー」 藍田 「まあまあ……っと、あれ?あれって提督じゃないか?なんで前の方から……」 中井出「逃ぃいいいいげぇえええろぉおおおおおおっ!!!!」 藍田 「え?あ、うわうわぇあぁああああっ!!!?」 逃げる最中で藍田二等と合流。 どうやら藍田が進んでいた道が飛竜の巣へ続いていたらしい。 ……それはともかくとして俺達はやっぱり逃げた。 藍田 「なんでいきなり見つかってんだよ!!!」 中井出「すまん、いろいろあったんだ」 麻衣香「博ちゃんがあんなところであんな大声あげるからでしょ!?」 藍田 「提督貴様の所為か!!」 丘野 「喋ってる場合じゃねぇえーーーーーーっ!!!!来たァアーーーーーッ!!!!」 ようやく耳が回復したところで、空から聞こえる風を切る音っ……!! 走りながら空を見上げてみれば、こちらへと飛翔してくる巨大な影ッ……!! しかも大きく首を回すようにして息を吸って……って───!! 中井出「ややややべぇぇええっ!!!!フォーメーションアルファ!散ッッ!!」 総員 『サーイェッサー!!』  バシュンッ!! 俺の掛け声とともにそれぞれがそれぞれの方向へと散る!! 説明せねばなるまい……フォーメーションアルファとは、 我等がまだ原中に居た頃の特殊な散り方のひとつである。 当時迷惑部だった我等には敵が多く、 当然教師からの追撃を遣り過ごす際にもこれが使用された。 猛者どもがこれを覚えていてくれて助かった……!!  ドゴォッ!!シュゥウウウウンッ!!!! で───もちろん飛竜のブレスは俺目掛けて放たれたわけで。 俺はすぐに丘野二等に目配せをすると、 中井出「ヘイボーーース!!!」 ラグビーよろしくの華麗なパスを通し、メゴロシャァアアアッ!!! 中井出「ほぎゃああああああーーーーーーーーっ!!!!!!」 舞い降りた爆風に吹き飛ばされ、逃走経路の遙か先の壁に激突することとなった。 【ケース125:丘野眞人/ランナウェイ!】 メゴシャア!! 中井出「へぶしーーーーーーっ!!!!」 丘野 「て、提督ーーーーーーっ!!!!」 提督が風に吹き飛ばされて壁画と化した。 次は自分がああなるのかもしれないとか考えると、心底ゾッとする。 丘野 「く、くぉおおおおおっ!!!!」 既にステータスは速度のみに注ぎ込んだ! だってのに───速い!速すぎですボス!!やっぱ飛竜って速ぇえよ!!  ッ……ォオオオオオオオオ───ゴフォォオゥウウンッ!!!!! 丘野 「ひぇええぁあああああっ!!!?」 あまりに近づいてきた音に、反射的に屈んだ。 すると───目の前を通り過ぎてゆく巨大な影……!! あ、危ねぇ……!!立ってたら頭が胴体とオサラバしてたんじゃないか今の……!! うおぉ帰りてぇ!たっけてママーーーン!!! 今なら晦が映像の中で『帰りてぇ』とか言ってた意味が物凄く解ります!! これ怖ェエ!めっちゃ怖ェよ!! 丘野 「かはっ!くそっ!息切れがこんなに邪魔だって思ったことは無ェぞ……!!」 ペース無視で走り続けた所為か、呼吸は早くも乱れてきた。 テントを通り過ぎたところでここがようやく中腹だというのに、道のりはまだまだ長い。 しかも先の先まで行って着陸した飛竜が今度はこっちに突進してきてギャアアア!!!! だめ!無理!これ避けられねぇって!! 丘野 「か、かくなる上はぁああーーーーっ!!藍田ァッ!!あとは任せたぁああっ!!」 投擲で鍛えた絶対なる命中度! 俺は的確に藍田の進行方向と卵を投げた先が重なるように計算し、卵を投擲! 直後ドゴォッシャアアアアンッ!!!! 丘野 「へぶしぃーーーーーーっ!!!!」 蒼飛竜のビッグバンタックルにより大空を舞うこととなった。 【ケース126:藍田亮/ジョリーのようには走れない。だからジョリーンのように】 ドゴォオオオオンッ!!!! 丘野 「ギャーーース!!!」 藍田 「丘野ォオオオーーーーーッ!!!!」 物凄い勢いで地面と水平にスッ飛び、やはり提督と同じく壁画と化す丘野。 そして俺の周りには既に誰も居ない状態。 え……俺って最終防衛ライン? つーか夏子は!?夏子はいったい何処へ!? 夏子 「───……、……」 って居たァッ!! 藍田 「夏子!?立ち止まるな夏───夏子!?」 夏子 「ルゲイム、アルゲルイ、ガルディオル、ガルディエル!!」 杖を手に何かを唱えた夏子の足元からスケルトンが産まれ出た。 ……そうか!アンデッドモンスターを盾にすれば少しは───! 夏子   「いけっ!パパトスカーニ!!」 トスカーニ『ケキョキョエァアアーーーーッ!!!!』  カッショカッショカッショカッショ……ゴシャーン。 ……あっさり潰された。 つーかなんでスケルトンでパパトスカーニ? 夏子 「なにやってるの亮!ここは私に任せて早く!!」 藍田 「だ、だが!!」 夏子 「わたしももう守られてばっかりじゃないの!ネクロマンサー……上等じゃない!     そんなわけだから早く行って!!お金ならもう全部睦月に渡してあるから!」 藍田 「いつの間に!?……解った!死ぬなよ!絶対に!!」 夏子 「解ってる!だから早く!!」 藍田 「くっ……!!」 俺は駆け出した。 もう振り返らない。 後ろのほうでアンデッドモンスターの呻き声が聞こえようが、 炸裂音とともになんか骨っぽいのが飛んでこようが振り向かずに走った。 つーか炸裂音がどんどん大きくなって───っておぉおおおおい!! 夏子 「ごめーーーん!!わたしのこと完全無視でそっち行っちゃったーーー!!」 藍田 「そんなんありかぁーーーーっ!!?うわぁーーーーっ!!!」 振り向けばそこに蒼飛竜!! しかも俺目掛けて牙を今まさに落とさんとしてる! 藍田 「ひっ───」 頭の中が恐怖で支配される。 誰かにパスを通そうにも体が硬直して動かない。 ……いつもそうだ。 俺ってやつはいざって時になると……!!  ギジィッ!! 藍田 「───違う!!」 奥歯を噛み締めて無理矢理恐怖を押し込める。 途端に固まっていた身体は動き出す───と同時に跳躍。 目の前まで迫っていた飛竜の牙は空振りし、 俺はその顔面を蹴り付けることでその猛攻から逃れた。 藍田 「ど、どうだ見たか!お、俺だってやる時ゃやるんだ!」 だが。 素早さのみに集中したステータスで飛竜にダメージなんか与えられるわけもない。 飛竜はまるで意に介さないように俺をギロリと睨むと、回転とともに尾撃を───!! あ、ヤバイ……着地とまったく同時に吹き飛ばされる。 藍田 「くっそ……どうにでもなれぇえええーーーーーっ!!!!」 やぶれかぶれだった。 俺は上空目掛けて卵を放り投げ、次の瞬間には尾撃にバゴシャアと弾かれていた。 【ケース127:中井出博光/猫耳は眠らない7】 麻衣香「大丈夫!?博光!!」 中井出「あ、ああっ!サンキュー麻衣香!で───卵は!?」 壁画となっていた俺を助けてくれたのは麻衣香だった。 俺はすぐさま立ち上がると、 礼を言ったのちにすぐに飛竜が駆けている場所を探す……つーか見つかった。 そりゃそうだ、結構な大きさだ。 中井出「よし!すぐ追いかけよう!」 麻衣香「うん解った!」 そして駆け出す。 逃げ出すわけじゃなく今度は追っているからか、疲れる様子はまるで無い。 と───軽快に走ったまさにその時だった。  バゴシャアアアンッ!!!! 声  「アモゲェーーーーーーッ!!!!?」 遠めに見て何かが上空に飛んだと思ったら、 今度は執事服を着た……恐らく藍田らしき人影が上空を飛んでいるじゃないか。 ……まだ頑張ってくれているのだろう。 駆けつけないわけには─── 中井出「お?」 と、ここで何かが空を飛ぶのを見た。 藍田二等はさっさと重力の法則に従ってゴシャアと森の中に落ちていったが、 その後……藍田二等より先に空に飛んだなにかを、鳥……のような形の骨が掴んだのだ。 あれは木村夏子二等のしもべか……? ……どちらにせよ、やっぱり急いだほうがよさそうだ……!! ───……。 ……。 ドゴォオオンッ!!ゴバシャォオオオンッ!!!! 蒼飛竜  『ルゥウウググォオオオオッ!!!!』 夏子   「パパトスカーニ!GO!!」 トスカーニ『ケキョキョキョ!!』 やがて、辿り着いたそこは異常空間だった。 地面には骨の残骸、その先には木村夏子、そして───蒼飛竜。 パパトスカーニと呼ばれたスケルトンは、 木村夏子が命じるままに地面から出るなり蒼飛竜に襲い掛かっている。 が、その度にゴバシャアと一撃で粉砕。 夏子   「なんの!パパトスカーニ!パパトスカーニ!!」 トスカーニ『キョキェェエエエッ!!!』 トスカーニ『コカカカカカ!!!!』  ゴシャアッ!!メゴシャアッ!! 夏子   「パパトスカーニ!パパトスカーニ!パパトスカーニ!」 トスカーニ『ホキョキョキョキョ!!』 トスカーニ『キョエッキョエッキョエッ!!』 トスカーニ『ケアアアアッ!!!』  ドゴシャメゴシャゴバシャアアッ!! 夏子 「パパトスカーニパパトスカーニパパトスカーニパパトス───」 中井出「何体居るんだよ!!」 潰されても潰されても現れるスケルトン(パパトスカーニらしい)たち。 そしてやはり現れるたびに潰されるスケルトン(パパトスカーニらしい)たち。 見てるとさすがに不憫になったので、つい声をかけてしまった。 夏子 「あっ───提督さん!今のうちにあのボーンバードから卵を受け取って逃げて!」 中井出「っと───やっぱりあれって木村夏子二等のしもべか!!     解った!うだうだ言うのは後にしたほうがいいらしい!     どうやって受け取ったらいい!?」 夏子 「今からあの飛竜の気をこっちに逸らすから!その内に降下させるからその隙に!」 中井出「OK!俺は出口に向かって走るから───任せたぞ木村夏子二等!!」 夏子 「サーイェッサー!!」  ダタッ─── そして再び走り出す。 友の生き様をこの胸に刻め!そして振り返らずに進むのだ!! ああ男塾、男意気、己の道を魁よ!! 声  「ルゲイム、アルゲルイ、ガルディオル、ガルディエル……!!     勇敢たる戦士たちの残骸よ。ネクロマンサーの名の下に具現せよ!!     10分アビリティ発動!“冥哭の泉”!!出でよアンデッドゴーレム!」  ゴォッ!キィイインッ───ドォッゴォオオオンッ!!! アンデッドゴーレム『ウゴォオオオオオッ!!!!』 ゲッ……気を逸らすって、あれでか!! と、ついつい振り向いてしまった後方では、 飛竜に負けず劣らずの巨大さを誇るアンデッドゴーレムが召喚されていた。 それとともに上空を飛んでいたボーンバードが降下してきて、 俺にドサリと卵を渡してくれた。 中井出「この美しき連携プレイ……無駄にはせん!!行こう麻衣香!」 麻衣香「う、うん!」 遠くで轟音が聞こえる……高鳴る絶叫は誰のものか。 今となっては確認することは出来そうにない。 つーか丘野と殊戸瀬は何処へ? そんな疑問も、既に“逃げる側”に回った頭では考えるに至らなかった。 そうこうしてる間も森となった道を抜け、どんどんと斜面を降りてゆく。 そんな中───木々の先に、ゆらりと立ち上がる姿を見た。 中井出「───!藍田二等!?無事だったのか!」 藍田 「……ここは俺に任せて、先に行ってくれ提督」 中井出「なっ……貴様死ぬ気か!?」 思わず足を止めようとスピードを緩める。と─── 藍田 「止まるな!……止まるんじゃあねぇぜ提督よ……。     今なら……今なら解るんだ、俺は……。提督の言う通り……     この世界はまだまだいろんなことを学ばせてくれるんだってな……!     それに……俺が行かなきゃ誰が夏子を守るんだ……?」 中井出「藍田二等……」 藍田 「幸い俺の能力はまだ落ちちゃいない……夏子はまだ無事ってことだ。     だから……行ってくれ。俺は少しでもヤツを引き付けとく!」 中井出「だ、だがしかしだ!     貴様の顔、それはまるで仲間を先に行かせて自分だけ残り、     静かに微笑むような漢の顔ではないか!」 藍田 「どんな顔だよ!!……あぁもういいから行けっ……!     その卵がきっかけで始まったこの俺のワクワクさんは、もう止められねぇのさ。     だからその卵はなにがなんでも絶対に持ち帰る!だからさぁ行け!!」 中井出「藍田二等……───藍田二等に敬礼!!」  ビシッ!! 麻衣香とともに敬礼をしたのち、俺達は再び全力で走り出した。 もう振り向かない。 俺達は全力で……この卵を死守するんだ───!! 藍田 「……敬礼か……はは、縁起でもない……。よし……待ってろよ夏子……今」  ドゴゴゴゴシャシャシャシャシャアアアアアアアアッ!!!! 夏子 「あわわわわわぁあああああああっ!!!     なんでこんなところに斜面がぁあーーーっ!!     って───えぇっ!?ど、どどどいてどいて亮ーーーーっ!!!!」 藍田 「へ───!?てギャアアアアアアアーーーーーーーーーーッ!!!!!」 ───……。 ……。 ゴゴゴゴゴゴゴゴドッガァアアアアアアンッ!! バキベキゴロゴロズシャアアーーーーッ!!!! 中井出「どわぁあああああっ!!!?」 麻衣香「きゃあああああっ!!?」 突如、今まで俺達が走ってきた斜面にゴーレムと蒼飛竜が絡まるように転がってきた。 藍田 「は、はーー!!はーー!!!ししし死ぬかと思ったぁーーーっ!!」 夏子 「はー……は、はは……う、上手く避けてくれてありがとう亮……!!」 で、ゴーレムの上には藍田二等と木村夏子二等。 さすがの飛竜も斜面から転がり落ちると眼を回したらしく、 今は唸りながら倒れたままになっている。 中井出「…………」(逃げんべ) 藍田 「…………」(んだ) 声を出すよりよっぽど安全と踏んだ俺は、もう一度アイコンタクトを使用。 そそくさと、ゴーレムを重石にしたままに駆け出したのだった。 ───……。 ……。 ドゴォオオオオオオンッ!!! 蒼飛竜『ギシャァアアアアォオオンッ!!!!』 総員 『だぁあーーーーっ!!しつけぇええーーーーーーーーっ!!!!』 そして……ヤツが目覚めて激怒状態になって襲い掛かってきたのが10秒前。 俺達は出口を目前に再び襲われることとなった。 と───その時!! 声  「眼を瞑って。早く」 中井出「へ───」 淡々と喋られた言葉に、瞬時に従って眼を閉じた───途端!!  ゴカァアッ───ギシャァアアアンッ!!! 声  『グォオゥッ!?ギァアアアアォオンッ!!!』 瞼の裏さえ劈くような閃光ののち、蒼飛竜の悲鳴だけが耳に届いた。 声  「今のうちに走って。早く」 中井出「う、うむ───って殊戸瀬二等!?」 殊戸瀬「閃光玉を使ったわ。今のうちにフィールドまで逃げて」 藍田 「姿が見えないと思ったら……そんなもん調合してたのか……?」 殊戸瀬「光蟲が中々見つからなくて困ってたわ」 中井出「そ、そか……」 ともあれ俺達は無事、 ダンジョン扱いの山からフィールド画面へと画面切り替えをすることに成功! 丘野二等が斉王から逃げていた時と同じ要領で、見事に卵をゲットしたのだった!! 麻衣香「って……睦月?その背中のリュックって……」 殊戸瀬「……?飛竜の卵よ」 総員 『なっ……なんだってぇえーーーーーっ!!?』 殊戸瀬「提督たちが騒いでくれたお蔭で助かったわ。これで安心して竜騎士を目指せる」 総員 (すげぇ……すげぇ用意周到っぷりだ……つーかここまでの苦労ってなに……?) 殊戸瀬「それより。……眞人は?」 総員 『』 ───……。 【ケース128:丘野眞人/おいてけぼり】 ヒュォオオオオオ……ゥウン…… 丘野 「あのさ……どうでもいいけど……誰か助けてくれないの……?」 壁画になったままの俺は、自力じゃ出られない悲しさにただもがき苦しむだけだった。 ああ……今日も悲しい風が吹いてるなぁ……。 丘野 「ぶあっ!ヤブ蚊が!ヒィ!バタフライが!!助けてぇえーーーっ!!     ヤバイよ!なんか綺麗なお花畑が見えるーーーーーっ!!!     ……ハッ!そういや飛竜から逃げる時、生分身使えばこんなことには!     ああくそ!なんてこった!お花畑が綺麗だ!───じゃない!!     助けてぇーーーっ!!脳の奥から溶かされていくように幻覚が広がる!     やめてぇバタフライさん!それ以上羽ばたかないでぇーーーっ!!     つーか痒い!!とても痒い!刺さないでヤブ蚊さん!助けてぇええっ!!!」 いつの間にか静かになっていた飛竜の山の中。 俺の悲しみの叫びだけが、ただ虚しく響いていた……。 Next Menu back