───精霊休憩期間/まごころを“うぬ”に───
【ケース138:閏璃凍弥/大トロスタジオーニ】 ───昔。 ある山奥に……老父と老婆が居た。 その山はあまり人が寄り付かないことで有名で、 老父と老婆もそれを知ってか知らずか、その山の頂上に家を建てて住んでいた。 元々人付き合いが苦手だった老夫婦はそうして人里から離れ、 子宝を設けることもなく生きてきたのだ。 そして───ある晴天の日。 老婆は老父の仕事着を洗濯するために川へと向かった。 随分前から続いている雨のため、川は危ないという老父の言葉を気にすることもなく。 辿り着いた川はやはり洪水状態。 泥水のような色の濁流はガバガバと音を立てて流れゆき、 晴天の空の下にそれはあまりにも見栄えのするものじゃあなかった。 老婆は仕方なしと諦め、家に戻ろうとした───が、その時だった。 どんぶらっしゃどんぶらっしゃと、 落ち着く間もなく流れてきたのはなんと、大きな大きな桃。 人里離れた山の中、食事には事欠く有様だった老夫婦にとって、 それはきっと恵みの果実だったに違いない。 老婆は脇目も振らずに荒れ狂う濁流へとダイヴし、古式泳法を駆使して桃にしがみついた。 と、その時だった。 水の冷たさに弱まってゆく体力に抗えず、とうとう老婆は沈んでしまったのだ。 沈みゆく老婆……そして流れゆく桃。 と───その時。 桃に、大きな亀裂が入り───桃の中から小さな子供が産まれでたのだ。 そして子供ながらに老婆を助けようと、手を伸ばすその在り方……!! これぞのちに鬼を倒すと言われた桃太郎の《ガボシャアアアアン!!!》 桃太郎「オギャーーーーーッ!!!」 ……溺死の記録である。 ───……。 ……。 凍弥 「という童話を考えてみたんだが」 総員 『童話!?』 みんなの反応は上々だったといえるだろう。 さて……今は夜。 気絶していたやつらものそのそと起き上がり、 やがて普通に話し合いをしつつメシ食ったり水飲んだりして訪れた夜だ。 そろそろヒロラインの話題も尽きてきた頃、 俺達は原中名物“牟吏耶浬務課死罵那死(むりやりむかしばなし)
”とやらを実行していた。 どうして漢字で書く時、『し』が必ず『死』になってるのかは未だ謎だ。 鷹志 「じゃあ次は俺だな。昔々あるところにお爺さんとお婆さんが住んでました」 凍弥 「なんで大体老夫婦なんだろな」 鷹志 「うーさい。……お爺さんは山へグレート司馬狩りに、     お婆さんは川へ人生の選択をしにいきました」 悠介 「……なんかいきなり重い話になってないか?」 彰利 「グレート司馬狩りってのがまたなんとも……」 鷹志 「お爺さんが活きのいいグレート司馬を草刈鎌で斬殺しようとしている頃、     お婆さんはお爺さんを捨てて大都会トーキョーに進出するかどうかを悩みます。     今ならお爺さんはグレート司馬狩り中。     秘密裏に作った桃型ボートを使えば、じいさんの魔の手から逃れられるのです」 中井出「ヘヴィーな昔話だなオイ……」 鷹志 「意を決したお婆さんは桃ボートに乗り、川を降りてゆきました。     その流れは緩やか。気づけば川のせせらぎと爺さんからの解放に安堵し、     気づけばお婆さんは寝入っていました。そして目が覚めると───!!」 丘野 「ふむふむ……!?」 鷹志 「……目の前には鬼ヶ島が!!」 総員 『どんな川だったんだよ!!』 鷹志 「お婆さんはゴクリと息を飲むと、自分で作った吉備団子を食べました。     するとどうでしょう。お婆さんの肉体、魂、精神の全てが、     かつてない強さに包まれるじゃあありませんか!!     実はお婆さんが作っておいた吉備団子に、     悪戯好きなお爺さんがドーピングコンソメスープを入れていたのです」 丘野 「い……悪戯好きにも程がある!!」 鷹志 「ですがそのお蔭でムキムキマッチョになったお婆さんは鬼ヶ島を制圧。     そこを拠点とし、世界を牛耳って王になったのでした。というのが俺のお話」 総員 (大都会トーキョーはどうなったんだろう……) 鷹志 「あ、ちなみに大都会トーキョーも鬼パワーで制圧したって設定な」 総員 『すげぇ婆さんだ……』 というかそもそもそんな時代にコンソメスープはあったんだろうか。 コンソメスープが何年代に作られたのかは、そりゃ知らないけどさ。 とりあえず爺さんは絶対に自爆だな。 悠介 「しかし、よくもまあ咄嗟にそれだけのことが浮かぶもんだ」 彰利 「悠介ならもっと簡単に出来るっしょ?イメージは得意なんだし」 悠介 「うん?ああ、俺ゃダメだ。全部纏まってからじゃないと上手く出せやしない。     解るだろ?創造は過程をスッ飛ばした異常現象だ。     当然、一から全を構築した上で放たれる。     だからさ、話もなにも同じなんだ。纏まってなけりゃ話も出来ん」 彰利 「融通利かねぇのね。そーいう性質の所為でヘンに生真面目なんだろね、キミは」 悠介 「かもしれない」 弦月の言葉を否定もしない晦は、どこかスッキリした顔で笑っていた。 苦笑ばっかりのヤツって印象は……いまはもう、あまり受けなかった。 凍弥 「なぁ晦、お前って……もう感情は取り戻したんだよな?」 悠介 「───9割方は。いきなりどうした?」 凍弥 「気になっただけ。そかそか。で……残りの一割はどんな感じなんだ?」 悠介 「取り戻せるかが怪しいところだ。なにせ、ガラガラに砕けてる」 ここに来ていつもの苦笑。 けどそれも、あまり気負ってるような苦笑じゃあなかった。 9割方戻ってるっていうのはあながち間違いじゃないらしい。 凍弥 「治せないのか?パパーっと」 悠介 「まあ、そう言いたくなる気持ちも解る。     けど、能力ってのはそう万能には出来てないんだ。     切れた腕は生やせても、砕けた記憶は直せない。     そもそも、思い出せないんだから仕方ない。     俺の心が俺自身を閉じ込めちまってるんだ。     なにかきっかけが無けりゃ永遠に半端のままだ」 凍弥 「上手くいかないんだな。大抵のことはこなせるっていうのに」 悠介 「能力者ってのは自分のことになると案外鈍感らしい。ノートの受け売りだけどな。     で、俺と彰利は他とは軍を抜いて鈍感なんだそうだ」 そりゃそうだ。 自分より他人を優先するヤツが鈍感じゃないっていうなら、いったい何が鈍感か。 凍弥 「でも……お前、変わったよ」 悠介 「……閏璃?」 凍弥 「初めて会った時のこと、覚えてるか?」 悠介 「ん……確か、晦の家から神社へ続く階段の前だったな。     閏璃が階段登りに全力で挑戦してた時だ」 凍弥 「そう。それだ。……あの頃に比べると、ほんといい顔で笑うようになったと思う。     ちゃんと感情は育ってるんだ、鈍感がどうとかはこの際どうでもいい。     ただ……もうちょっと自分を大事にしてれば、自然に辿り着けるんじゃないか?」 彰利 「え?どこに?」 凍弥 「感情が砕けてない自分にだよ。     今の晦に至るまで、物凄い時間がかかってるわけだけどさ。     でもそこまでこれたなら、多分なんとかなるんだと思う」  ……シン─── 凍弥 「……オウ?」 突然、部屋の中が静かになった。 しかもみんながみんな俺を見て─── 鷹志 「だっ───誰だてめぇ!!」 さらに突然、友人がステキな言葉で沈黙を爆砕した。 凍弥 「え?いや……い、いきなりどした?」 柿崎 「しゃ、喋ったぞ!」 凍弥 「喋るわ!!」 一体どうしたことか。 俺という男を知る人々が俺を見て怯えともとれる動揺を見せていた。 凍弥 「えーと……」 鷹志 「正体を現せ!凍弥の姿をした悪霊め!」 凍弥 「いや、あのな……」 彰利 「……これと同じ状況、つい最近どっかで見たなぁ……」 悠介 「忘れてしまえ、そんなこと」 脇からそんな声も聞こえたが、こっちはこっちでそれどころじゃなかった。 場の雰囲気を直訳するに、俺が真面目に喋るのは異常らしい。 凍弥 「とりあえず俺の意見を言おう!真面目に話して何が悪い!!」 柿崎 「みんな騙されるな!悪霊はウソをつくのが上手なんだ!───悪霊退散!!」 凍弥 「キサマは“4年1組起立!”のブーか!?」 柿崎 「普段からからかってくれてるお返しだコノヤロー!!     みんなももっと言ってやって!言ってやってくれ!!」 彰利 「日本人ならお茶漬けやろがー!!」 柿崎 「違う!!そういうのじゃなくて!!」 澄音 「あはははは、夜でもお構いなしだね」 御手洗「もう少し静かにしたほうがいいと思うんだけど」 彰利 「別室のおなごどものことなぞ無視!     たまの男だけの集まりじゃい、騒ぐのもよろしかろ」 遥一郎「こういうことしてると修学旅行を思い出すな」 俊也 「あ、確かに。修学旅行の思い出話ってなにかないのか?」 凍弥 「………」 騒ぐだけ騒いだら話を切り替える。 ここに居るやつらは大体がそれを行使するため、あまり話題には困らないのは事実だった。 置いてけぼりにされるのは少々悲しい気分ではあるが。 彰利 「こっちはやっぱ枕投げかね。俺はスタミナハンディーカムで、     提督のエロビデオをダビングしてたわけだけど」 中井出「ビデオでビデオ写すのって虚しくなかったか?」 彰利 「だって俺、それ映してる時はチミたちの枕投げ見てたし」 中井出「まあ……そういやそうだな」 田辺 「あの時は水島の胸触った、とかで随分ガミガミ言われたもんだ……」 中井出「故意だろ?」 田辺 「それは違いますサー!!」 丘野 「あれ?でも田辺って結局水島と結婚したんだろ?それが原因なんじゃないの?」 田辺 「えーと、まあ。なんでも、あんな事故のあとだからって注視してる中で、     なんつーかその、はは……俺のいいところをいっぱい見つけちまったとかで……」 中井出「はっはっは、おいおいノロケか田辺二等〜!」 丘野 「コノヤロー、嬉しそうに話やがって〜!」 田辺 「あ、はははっ!お、おいやめろって〜!あはははは!枕ぼすぼす投げるなよ〜!」 藍田 「乙女の純情が炸裂するステキな恋愛ドラマ、いいねぇ〜!     憎んでたのに好きになっちゃいましたってか〜!ニクイねこのっ!」 田辺 「あ、あはっ、えへっ!あははは!!」 清水 「ニクイね〜!」 丘野 「ニクイ!」 藍田 「憎───ニクイ!!」 蒲田 「憎いぞこのっ!!」 飯田 「憎いっ!!」 佐野 「憎いぞコノヤローーーーッ!!!」 田辺 「あはは……いでっ!?ちょ、えっ!?なんでみんないきなりそんな殺気立って!?     いやちょ───マジ痛い!!やめてやめてーーーっ!!!」 彰利 「憎いぞコノヤローーーッ!!」 悠介 「普通に恋愛出来るだけマシだと思えコノヤローーーッ!!!」 田辺 「痛い痛い!マジ痛いって!や、やめギャアーーーーーーーーッ!!!!」 第二次枕投げ大会勃発。 田辺という男はあっという間に枕まみれとなり、やがて動かなくなった。 容赦が無いのも原中仕様らしい。 遥一郎「……ひとつ訊いていいか?結婚したのはみんな同じなのに、     なんでまたその田辺ってやつだけ……」 彰利 「え?いや、そりゃまたなんでと訊かれたらもう、こう答えるしかねぇ」 総員 『原中だからだ!!』 遥一郎「……よくよくカオス部分が密集してる中学だよな、原中って」 蒲田 「あ、じゃあここはひとつ、結婚したヤツとの馴れ初めでも話し合おうか」 鷹志 「俺が真由美と出会ったのはまだ俺がガキ中のガキの頃だった」 飯田 「ウオッ!?橘がいきなり語り出したぞ!?」 中井出「郭鷺真由美の話は俺も随分聞かされたからな……覚悟しといたほうがいいぞ。     なんつーかもう本当に長い。これでもかってくらい長い」 総員 『うわぁ……』 凍弥 「堕とすか?」 彰利 「まあまあ、折角だから聞きましょうや。子供の頃の青春ドラマだけでも」 ……それもそうか。 実際俺も何度も聞かされたが、また聞くのもいいかもと思えた。 俺は要所要所でツッコミを入れつつ、流れる時間に身を委ねたのだった。 【ケース139:晦悠介/満員ザ・ミラー】 彰利 「長い」 メゴキャア!! 鷹志 「うじゅーーり!!」 橘が奇声を上げて倒れた。 そらそうだ、彰利に首を曲げられれば気絶くらいするだろう。 彰利 「馴れ初め話はやっぱ却下の方向で行きましょ……こりゃ案外ラチが空かん」 中井出「俺もそう思ってたところだよ……」 俊也 「修学旅行の話をしてた筈だったのにな」 彰利 「グレゴリ男はババアか夏純ちゃんか、どっちかとラヴ育んだの?」 俊也 「え───いや、べつに。ただ一緒に住んでるだけだな。擬似家族っていうやつ」 彰利 「擬似家族?ナニソレ」 悠介 「孤児とか身寄りの無い子供たちが、     どっかに身を置いて助け合って生きていくっていうアレだよ。     もちろん保証人っていったらヘンだけど、保護者的な役割の人が必要になるが」 俊也 「ああ。それはサチ姉ぇにやってもらってる。     や、厳密に言えば“やってもらってた”か。今じゃもう意味無いし」 悠介 「俊也は構わないのか?空界に住むっていうのは」 俊也 「正直税金だけでも参ってたんだ。     生活が自給自足になるだけだったらドンと来いだ。     それに───夏純は空気が綺麗な方が喜ぶ」 悠介 「そっか」 ならよかった。 半ば強引にこんなことになってしまって、心配してた。 原中が周りを巻き込むのはもう茶飯事だが、人生規模なのは初めてだ。 さすがに心配にはなる。 悠介 「と……そうだ。せっかくだから訊いておきたいんだけど───     空界に住むってことで、なにか異議があるヤツって居るか?」 これは訊いておくべきだと思った。 さすがに後になってからどうのと言われても困る。 ……事実を言えば、もう随分と“後”の部類には入ってるとは思うが。 中井出「あ、じゃあひとつ」 悠介 「ほい提督」 中井出「なにか“コレ”といった絶対規則はあるか?それだけ訊いておきたい」 彰利 「子供を作らないこと。それだけ」 中井出「うおう……そりゃまた……って、俺の子供はいいのか?」 彰利 「それが問題っちゃあ問題かね。     俺と悠介としちゃあ、空界に子孫は残したくないんだわ。     ホレ、悠介って結局アレだろ?守りたいものは守るー!とか言い出して、     俺達の家族全員を守ろうとすると思う。そうなりゃいつか、     増えた人口の数だけ守ろうとして無茶するに決まってる」 中井出「む……なるほど」 悠介 「そこであっさり納得されると複雑だが……。     あと、人は殺さないことと、無闇矢鱈とモンスターは殺さないこと。     あとこれは絶対領域だが……竜族の領域には入らないこと。     許可無しで入るとまず死を覚悟する前に死んでると思う」 総員 『ざわ……』 悠介 「もちろん、侵入した時点で竜族の誰かが引き返せ、的なことを言ってくる。     けど竜族の言葉は人間には解らない。     だから、もし何処かに行って、     急に竜族が目の前に現れたら速やかに元来た道を戻ること。     無視して進んで殺されても、さすがに手助け出来ない」 総員 『グ、グゥウウ〜〜〜ッ、わ、わかった〜〜〜っ』 悠介 「………」 いや……なんでそこでキン肉マン風なんだ? 丘野 「あ、じゃあこうしないか?子供を作ることが禁止だっていっても、     やっぱ好きな人とはどうあってもそういう……その、関係に走ることもあるだろ?     だからさ、弦月のデスティニーブレイカーだっけ?     それで俺達の“子供が作れる要素”を破壊してもらうとか」 彰利 「おお、そりゃええ考えじゃわい。けど……ええのん?」 総員 『わたしは一向に構わんッッ!!』 彰利 「うおう……」 あまりの気迫に、彰利が押され気味だった。 だがウムスと頷くと、影から鎌を引きずり出して解放する。 もちろん、他の鎌を全て骨子にした状態での最大解放だ。 一度使えば、それこそデスティニーブレイカー自身で解除しない限りは 取り返しはつかないだろう。 彰利 「お覚悟……よろしいな!?」 総員 『応!!』 彰利 「では“運命破壊せし漆黒の鎌(デスティニーブレイカー)”よ!!     ここに居るみなさまの中にある“子供を作れる”という既定を破壊せよ!!」 ガカァアアアンッ!!!! 薄暗い部屋に、さらに漆黒の輝きが齎される。 その光は俺達の身体を照らすと……何かを消し去り、やがて光自身も消え去った。 彰利 「ムフウ、終了じゃわい。これでチミたち種無しね?」 中井出「たっ……種無しとか言うな!!」 鷹志 「大体それを言うなら弦月!お前だって種無しだろうが!」 彰利 「え〜?だって俺べつに子供欲しくて結婚したわけじゃねぇ〜も〜ん。     だから種無しとか言われたって全然悔しくねィェ〜〜〜〜ッ!!!」 中井出「ぬおお……!なんだこの屈辱感は……!!」 鷹志 「俺だって子供が欲しくて結婚したわけじゃないのに、     認めちまったら自分の娘たちを否定するような気がして出来やしない……!」 凍弥 「あ、ちと質問。子供欲しくて結婚したわけじゃないなら、     なんだって弦月は死神は子供を作れないって運命を破壊したんだ?」 彰利 「あっ!こ、これっ!ここでそういう話はだねっ……!!」 中井出「言われてみれば……」 丘野 「危ないでござる……危うく騙されるところだったでござるよ……」 藍田 「丘野、口調が忍者になってるぞ」 形勢は、ここに逆転したと言える。 飄々と話をしていた彰利は一変、おろおろとする側の仲間入りを果たした。 中井出「さて……彰利一等兵?我らが質問に答えよ」 遥一郎「自信満々に“子供が欲しくて結婚したわけじゃねぇも〜ん”とか言ってたんだ、     理由くらい簡潔にまとめられるよな?」 俊也 「さあ言ってみろ」 凍弥 「さあ」 丘野 「さあさあさあ」 彰利 「ア、アゥワワワ……!!」 あっという間に逆転された彰利はオロオロするのみだ。 ゴルゴのようにダラダラと汗を流し、必死に言い訳を考えている。 彰利 「ゆ、悠介たすけてぇ!」 悠介 「すまん、俺も聞いてみたい」 彰利 「僅か一秒でこの裏切り!?ひでぇ!!」 中井出「さぁ〜あどうした彰利一等兵!キサマそれでも一等兵か!」 彰利 「ち、ちくしょ〜〜〜っ!じゃあ僕、悠介が言ったら喋るもん!!」 悠介 「俺はお前の運命破壊に巻き込まれただけだ。終了」 彰利 「早ッ!?」 中井出「晦一等兵は言ったぞ!さあ!!」 彰利 「ウ、ウググーーーッ!!アレェーーーーッ!!!」 中井出「アレーじゃない!言うのだ彰利一等!!」 彰利 「ウーーーン!!」 凍弥 「うん、と言ったぞ!さあ言え!」 彰利 「ゲェエーーーーーーーッ!!!!」 どこまでも妙なところで不幸なやつだった。 彰利 「ウ、ググ……!じ、実はおなごたちに頼まれて……!」 遥一郎「それで実行したのか?」 凍弥 「子供を作りたくなかったんなら否定できた筈だろ?」 彰利 「で、でも僕は誓ったのだ!妻が子供が欲しいというのなら叶えてやろうと!!     僕はそれに応えたのだ!だから鎌を発動させたのだ!     大友くん!キミがこれ以上追求を続けるというのなら、僕はキミをグーで殴る!」 悠介 「だったら僕はキミに証拠を二度問い詰めたあとにグーで殴る!」 彰利 「なんで!?」 悠介 「知れたこと……」 総員 『面白いからだ!!』 彰利 「人を殴る喜びなんて捨ててしまいなさい!!     つーか悠介って性格悪くなってません!?」 悠介 「甘いわ!俺ゃ元々不良だ!!」 彰利 「前まではこんなこと大声で言うようなコじゃなかったのに!!     おおなんということでしょう神様……!このコは悪魔に獲り憑かれてしまった!」 凍弥 「や、死神のお前が憑いてる時点で十分だろ」 彰利 「うっさいやい!!つーか憑いてるとか言うなよぅ!!」 凍弥 「ところで弦月よ。お前の感情はどうなのだ?完全?」 彰利 「パーペキだっぜぇ〜〜い!!」 中井出「……なぁ、晦よ」 悠介 「ああ……話を摩り替えられたことに……気づいてないな、ありゃ」 閏璃のやつは本当に好き勝手に話を変える。 それもやっぱり、話を途切れさせないためのテクニックといえばテクニックなんだろう。 凍弥 「へぇ……晦と違って、欠けたままの部分ってのは無いのか」 彰利 「オウヨ。俺の場合、中に眠ってたレオが俺の情報吸収してたからね。     それが裏返っちまえば、結果的にゃあ全部俺のモンになるわけよ」 凍弥 「そうなのか?じゃあ晦は───」 悠介 「俺の中にも死神は居たんだろうけどな。     俺の情報を吸収してくれるほど我は強くなかったみたいだ。     結局は創造の理力と一緒に流れ込んできたソードに吸収されて、     そのままルドラの糧になった」 丘野 「ということは?」 悠介 「俺が感情を全て取り戻すことが出来るとしたら、     バラバラになった過去の記憶を自分自身で思い出すしか無さそうだ。     まあ、急いでどうにかなるでもなし。のんびりやっていくさ」 凍弥 「そか」 と言ったものの───正直、記憶が戻る確率は極めて少ない。 逝屠に一家惨殺の事態を引き起こされた時に生じた記憶の混乱─── そして、ロディエルとの戦いで否定した家族との絆─── それらが、思い出すべき記憶をさらにバラバラにしてしまったのだ。 なんていうかそう。 某テーマソングに喩えてみれば、記憶を疑う前に記憶に疑われてる、と……そんな感じ。 十六夜の家に居た自分はまさにソレだった。 混乱してたとはいえ、十六夜の親を本当の両親と思ってたってのが今思い出しても凄い。 ……それほどショックだったんだよな。 家族が……あの人が、目の前で殺されたことが。 悲しみを唱えたら、断片的ではあるだろうけど…… きっと尽きることなく唱えられるんだと思う。 だけどべつに運命を呪うつもりはなかった。 大切な人との別れは、それは辛い。 でもその先で別の出会いがあることも確かで─── 俺は彰利や、ここに居るみんなと出会えた。 思えば、全てが偶然のピースで彩られたパズルのようだ。 今までの人生の全てが偶然。 ただ俺とノートの出会いだけが運命のようで……それ以外が全て偶然で彩られていた。 俺が朧月の子として産まれたこと。 逝屠が俺の家族を惨殺し、 記憶の混乱を起こした俺を自分の身代わりとして十六夜に置いたこと。 殴られながら生きる中、彰利と出会うことが出来たこと。 十六夜の一家が晦の親に追い詰められ、一家心中をし───俺がルナに助けられたこと。 ルナが俺をシェイドに会わせ、さらに記憶の封印をしてもらったこと。 晦神社へと続く階段の前で彰利と再会したこと。 晦の両親が自殺したことや、彰利の中の死神が覚醒し、惨殺事件が起きたこと。 全てのピースはバラバラだった。 けど今は、それが普通の状態にある。 だから、この心の中に沈んだままの記憶と感情も、いつかは元通りになる時がくるだろう。 きっとなんとかなる。 いつだって運命に抗い続けてきた俺達なら。 そこまで考えて、ノートが言っていた『未来は変わる』という言葉が気になった。 あの言葉はいったいなんだったのか。  ドス。 悠介 「フオッ!?」 彰利 「人の話きいてはりますの!?なにボケッとしてるんだい!」 悠介 「いきなり脇腹に貫手をするのはやめろ……!びっくりするだろうが……!」 彰利 「へんっ!そんなん避けられないくらい考え事に夢中のキサマが悪いんじゃい!     で……なに考えてたん?俺だけにそっと聞かせれ?     他のやつら、もう大半眠っちまったから」 早ッ! ……だが確かに周りを見てみれば、 寝転がりながら話していたとはいえ……いつの間にか寝てるヤツが結構居た。 悠介 「んー……ちょっとな、創造の理力が俺の中に流れ込んだ時のこと、考えてた」 彰利 「それって……ルナっちとの出会いの時の?」 悠介 「ああ。死神との契約特典だかなんだか知らないが、     どうして創造の理力だったのか、って。考えてみれば当然だよな。     空界で俺の理想論なんかを信じて契約してくれたノートだ。     きっと、見守る程度の感覚で俺に力をくれたんだと思う」 彰利 「最初はハトだけだったっけ。それって力って言えたんかなぁ」 悠介 「子供に急速な成長を望むようなヤツじゃないよ、ノートは。     だからこそのんびり見守ってくれたんだろうさ。     そして……俺の理想論がどれだけ真実味を帯びていたものだったのか、     それを見極めたかったんだと思う」 彰利 「……そっか。そういう考え方も出来るか。でも意地悪じゃねぇかい?     ヤバイ時にはもっとこう、ズバーと助けるとかさ」 悠介 「それに甘えたら、それこそ理想論に成り下がるだろ。     理想論は唱えるだけなら安い。     それを実行出来るか次第で、ただの屁理屈にも理想にもなるんだ。     俺は……本当に、ここまで来れて良かったって思えてる。     父さんの死を喜びたいわけじゃない。     でもさ、この時間軸を歩めることが嬉しいよ、俺は」 仰向けになって、暗い天井を見上げる。 たくさんの死を見て、たくさんの人と出会った。 別れた人はどのくらいだろう。 再会した人はどれくらいだろう。 喜びと悲しみはどれほどあって、俺はその全てを覚えていられただろうか。 考えることはたくさんあった。 それでもゆっくり考えていけばいい。 焦る必要なんてきっと無いから。 悠介 「……寝るか」 彰利 「せやね」 やがて、適当に毛布を被って眠りゆく。 今はまだこのままで、出来ることから少しずつ。 のんびり……そう、のんびりやっていこう。 ───つまんなくったって生きていけるのなら、 楽しければもっと前向きに生きてゆけるのだろうから。 【ケース140:中井出博光/超者ボロティーン】 すー……スカー……くかー……むごー…… 中井出「ククク……」(ゴゾォ……) 時は満ちた。 辺りはすっかり静まり返り、今この瞬間起きているのは原中の極僅かの猛者どものみ。 原中の大原則に則り、“如何なる時でも遊びに徹せよ”を実行する。 行動出来る限りは、 もしくは楽しんでいられる状況ならば確実に楽しそうなことを実行する。 これぞ原中魂。 中井出(では早速、彰利の顔にステキなアートを描きたいと思います……) まるで寝顔拝見テレビのようにゆっくりと近づき、マジックのキャップを外す俺。 おお、静寂の神様よ、今こそ我に力を。 中井出(寝顔スースー……コンバートォゥ……いいじゃん枯らそぅ……ダァンゴォゥ……) コキュッ……キュキュ……キュ…… ひとまず額に“M”を書いた。 やっぱ額が見えやすいヤツには“肉”よりも“M”だと思う。 続いてヒゲも書きたいところだが、鼻の下ってのは案外匂いで起きてしまう。 だから、やるとしたら最後ナリ。 丘野 (……なかなか面白いことをやっているでござるな、提督殿……) 中井出(おお、丘野二等……貴様起きておったか……) 丘野 (当然でござるよ……ここで素直に寝たら、     きっと書かれていたと思って起きていたでござる) 起きていた丘野二等は、雰囲気に合わせてか忍者語だ。 そんな丘野二等は懐からマジックを取り出し、閏璃の額に“K”を書いてゆく。 テリー・ザ・キッドだろう。 そしてすぐに別の者へと視線を移すと、今度は橘の頬に“69”という文字を描く。 ブリーチの檜佐木副隊長だろう。 俺ももちろん次へと移る。 疲れているのか、熟睡中の晦の顔にゆったりと静かに美しきペイントをしていった。 他の起きている原中の猛者も思い思いにマジックを走らせる。 俺は一旦部屋を出て、 適当な厚紙などを入手してくるとそれを適度な大きさに切ったり貼ったりを繰り返した。 そうして気づいた時には20分あまりが経過し─── 眠気が限界に達した俺達はモゾモゾと寝ることにした。 ───……。 ……。 そして朝。 彰利 「ぶははははははは!!ぶはははははははは!!ぶっは!ぶはははははははは!!」 悠介 「………」 彰利 「ぶははははは!!ぶはっひゃ!ぶほはっ!ぶあはぶはははぶははははははは!!!     ぶひゅうっ!ぶぶほっ!ぶっほ!ぼほほはははははぶはははははは!!!     あぶはっ!あはあはははははは!ひあっ!は、はっひ!!ぶはははははは!!!」 コメカミをヒクヒクさせながら目を閉じ震えている晦を前に、 彰利は抱腹絶倒悶絶乱舞で笑っていた。 彰利 「ねべっ……ねぇゆぶはっ!いう……ぶはははは!!!ゆぶすけっ……!?     剥き歯してみて剥きバフゥ!!こうニッって感じでバフゥーーーーッ!!!!     ぶはははははははは!!やめっやめろぉおおっ!!!     これ以上俺を笑わせてどぶはっ!!ぶっはぶははははははははは!!!     あっ……あぁーーーーははははははは!!!うはははははははは!!!     あっはあははははは───ひゅーーはひゅーーは!!あはははははは!!!」 他のやつらもそれぞれの顔を見て笑ったりなんだりしてたが、 晦の顔を見るヤツは揃いも揃って大爆笑していた。 ……俺は、そっと晦の顔を覗き見た。 描いたのは自分自身であるためか、他のみんなよりは笑撃は少ない。 だが気を抜くと笑ってしまいそうだ。 晦の顔は……なんていうか、正面から見て輪郭に沿った少しの間隔を残し、 中心部はほぼ真っ黒だった。 顎と耳には妙な突起物。 それと頭には妙なカタチの帽子もどき。 見る人が見れば一発で解る、護廷十三隊十二番隊隊長及び技術開発局二代目局長。 その名もマユリ様。 俺が夜中に起きて懸命に描き、作り、完成したのはそういう物体だった。 彰利 「剥きっ……!剥き歯っ……!ほらっ!ニッて!ね!?はい!ニッてブホッ!!     ぶはははははははは!!ぶははははははははは!!ぶっは……!!     ぶははははははははは!!!いって……!腹……!たすけてぇええはははは!!」 悠介 「提督貴様……俺になんの恨みがあって……」 中井出「恨みなぞ無いわ!!そこに面白さがある……実行理由などそれで十分!!」 原中生『それこそが原ソウル!!』 中井出「フフフ、晦一等兵。貴様こそ油断大敵という言葉を知らんようだ。     あの時俺が持っていたのがマジックではなくハバネロエキスだったら、     貴様は今頃感動の涙に頬を濡らしていたことだろう!!」 悠介 「今でももう泣きそうなんだが……     つーかハバネロエキスを持ってたら目薬代わりにするつもりだったのか提督」 中井出「うむ!」 悠介 「頼むから否定してくれ……」 晦がブブルバフーと溜め息を吐きつつ、顔のアートを理力で綺麗に洗顔。 さらに厚紙で作った突起物と帽子もどきを外してもう一度溜め息。 まあそれはそれとして。 中井出「じゃ、どうするか。朝飯───はどうする?何処で食う?」 凍弥 「鈴訊庵に言ってガキャアどもに作らせるってのはどうだ?     練習にもなっていいと思う」 鷹志 「失敗したら目も当てられんが」 彰利 「んじゃあ多数決で決めよう。みんなー、なんか食いたいものってあるかー?」 柿崎 「あ、俺“すき家”の朝食メニュー───」 中井出「マ!!」 丘野 「ク!!」 藍田 「ド!!」 中村 「ナ!!」 灯村 「ル!!」 原中生『ドォーーーーッ!!!』 彰利 「というわけで今朝はドナ様貢献劇場ということに決定!!」 中井出「何者か!依存は!?」 原中生『サー!ノォサー!!』 悠介 「ちなみに価格はどれくらいのを行くんだ?」 中井出「男は黙ってハンバーガー!!(単品)」 悠介 「100円以下の愛か……」 中井出「馬鹿者晦コノヤロー!!愛は金か!?はたまた金が愛か!?違うだろう!!     貢献する心!これこそが最強の愛!!解るか!?     金があればなるほど、バーガーは買えるだろう!     だが金があるのならバーガーじゃなくてもいいと思う者など腐るほど居るわ!!     そこで重要なのがバーガーを買いたいという心!!     その心が無ければ既にドナ様はディズニーのアヒル野郎に敗北してるわ!!」 悠介 「いや……そんなピンポイントな怒り文句を俺に言われてもな」 中井出「ドナルドと聞いてアヒル野郎を思い出すなんざどうかしてる!!     “ドナルドゆぅたらピエロやぞ?”は     我ら原中の大原則大辞典の目次にデカデカと記されておるわ!!」 悠介 「ところで……なぁ、前々から気になってたんだが……。     ドナルドって少しでもピエロらしいことしたか?」 中井出「カァアーーーーーーッ!!!」 ボゴシャア!! 彰利 「つぶつぶーーーーっ!!!」 中井出「こぉーのタワケモンがぁーーーーっ!!!!ピエロの格好をしているからといって     ピエロピエロしいことをしなければいけないなど誰が決めた!!     だったらセーラー服を着た女子高生は船旅に出なきゃいけないのかコノヤロー!」 彰利 「いがががが……!!な、なんで俺……?」 中井出「避けられては盛り上がりに欠けるからである!     彰利一等兵……!キサマの協力に感謝する!!」 彰利 「て、提督殿……!!もったいないお言葉……!!」 凍弥 「え?気の済むまで殴っていいの?」 彰利 「なんでそうなんの!?べつに俺を殴れば殴るほど盛り上がるわけじゃねぇよ!?」 中井出「そんなわけでこれよりマクドナルドへ突貫する!!全員!小銭の準備は十分か!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「腹は空いているか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「いつも心にトキメキではなくドナ様を抱いているか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「妻を愛しているか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「笑う時は紳士が如く歯茎は見せていないか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「“タンプラー”がグラスだと知ったのは“美味しんぼ”を見てからか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「カポーンという擬音は風呂桶が無いと鳴らないな!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「ましてや大浴場に一人、湯船に浸かってるだけの状態では鳴らないな!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!正義は我らにあり!!     それでは総員!それぞれ妻を誘拐してドナ様に貢献せよ!!     イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」 ザザッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 そうと決まれば即行動。 俺達は己の裡から沸き上がる熱いハートをそのままに、女子が居る部屋へと駆け出した。 ハートを燃やしている原料はもちろん心の巴里である。 その原料が燃え尽きぬうちにドアをズバームと開け放つ! すると─── 女性陣『っ……───』 着替え中だったのか、寝巻きを半脱ぎ状態のまま硬直する皆様方。 中井出「……よし晦一等兵!」 悠介 「な、なんだよ……」 中井出「ここで一円を出すのだ」 悠介 「ぶはっ!?な、ななななんでそんなくだらねぇことばっか覚えてやがるんだ!!」 中井出「面白いからだ!!」 悠介 「てめぇえええええっ!!!!」 中井出「いや、いいんだ……解ってる。     貴様にとって女性の肌が一円程度だということは、     キサマの記憶の映像でよ〜く解ってるから。     義妹の着替えの場面に立ち入ってしまった事故……     その時、キサマが無言で出した一円玉……今でも脳裏に焼きついて離れやしない」 悠介 「アレは一種の気の迷いだっ!!今すぐ忘れろ!!」 中井出「ダメさ!!」 悠介 「てめぇえぇえええええっ!!!!!」 ポムポム。 中井出「ヌ?誰?我らは今、晦を熱烈盛大にからかって……」 麻衣香「……言うことは、それだけ?」 中井出「………」  ピシャアンッ!! 中井出「アウチィーーーッ!!」 麻衣香「晦くんに習って無言で一円玉なんて出さないの!!」 中井出「そっ……そっちだってご丁寧にベルトで叩くなぁーーーっ!!」 麻衣香「いいからさっさと出るっ!!それからノックくらいしないとダメでしょっ!?」 中井出「なにぃ!?我らは一蓮托生!責任を俺だけに押し付けるのはどうか!!」 麻衣香「……?一連托生って……博光と晦くん以外に誰が居るっていうの」 中井出「誰って……アレ?」 後ろを向いてみると、誰も居ない空間がそこにあった。 え……?あ、あれ……?おかしいなっ……あれっ……?あれっ……? 悠介 「……全員、状況察してとっとと逃げたぞ」 中井出「ゲェエエエーーーーーーッ!!!!」 素直に叫んだ。 そして、俺と晦一等兵に向けられる無情なる殺気。 麻衣香「……なにか言い訳はある?」 悠介 「スマン……。     提督に急ぎの用があるって言われて無理矢理連れて来られたらこれだ……。     まさかこんな堂々とした覗きに付き合わすためだったなんて……。     気づけなかった俺が未熟だった……スマン……」 中井出「晦ィイーーーーーーッ!!!?」 麻衣香「ひぃいいいろぉおおみぃいいいつぅうううう……!!?」 無情なる殺気が俺だけに向けられたことに気づいたのはその時だった。 中井出「え───違うよ!?俺そんなこと言ってないよ!?ほんとだよ!?     ちょっ……晦!?ウソだって早く───あれ居ねぇ!!     あ……あれ!?ちょ、晦!?何処!?どんなマジックなのこれ!!ねぇ!!     えっ……な、なんでみんな半笑いのまま俺に近づいてくるの!?     なんでみんな揃いも揃ってステータスいじってんの!?ち、違うよ!?     ほんとに俺違うよ!?俺ただみんなとハンバーガー……待って!!     現実世界で武器なんか使っちゃ危ないよ!?刀はヤバイって刀は!!     ───だからってハンマーがいいわけじゃないよ殊戸瀬!!     なんでキミはそう危険なモンばっか出すの!?     いやちょっ……やめっ……キャアアアアーーーーーーーーーッ!!!!!!!」 その日。 蒼空院邸の一角で、一人の男の絶叫が木霊したという……。 そして一部で俺がエロマニアだという噂が再浮上してしまったのは……悲しい事実である。 Next Menu back