───精霊休憩期間/やかましさMAXモーガン───
【ケース141:弦月彰利/馬鹿と鶏は三歩歩けば忘れると書いたがありゃ嘘だ】 ギャアーーーーー………… 彰利 「ムオ?」 櫻子さんの油性マジック洗顔フォームを借りて、丹念に顔を洗っている時だった。 ふとどこかから絶叫が轟き、俺はただ胸の前で十字を切った。 死神だけどね。 彰利 「ムッフゥ〜〜〜……いやぁ、快適な洗い心地……!     もし洗髪フォームだったら、     イエ〜ス……イエ〜ス……イエェェェ〜〜〜ス!!!     って叫んでたところさ」 もちろんシャンプーはハーバルエッセンスで。 あれ以外は認められねぇぜ? 彰利 「さてと、フェイスも洗い終わったところで、     そろそろハンバーガーでも買いにいきますか」 最後にタオルで顔をフキフキ。 彰利 「ムオッ!?輝く白さ……!驚きのやわらかさだ……!」 どうやら柔軟剤入りのボールドが使用されているらしい。 侮れん……櫻子さん。 鷹志 「どうでもいいから早くどいてくれ……」 彰利 「オオッ、これは失礼。なかなかステキなアートですよドドリアさん」 鷹志 「ほっといてくれ」 俺との入れ替わりにタカちゃんが顔を洗い始める。 と……俺は、開け放たれたままの大浴場に、 “ハーバルエッセンスブランドのシャンプー”があるのを発見。 彰利 「………」(うずり) か、身体が言うことを聞か〜〜〜〜ん!! というわけで誘惑に負けた俺は、顔を洗ってるタカちゃんの足を黒で固定。 月然力・水と月然力・火を効果的に使い、お湯を作って─── 身体を折ったまま顔を洗っているタカちゃんの頭にドバーとかけた!! 鷹志 「ぶわっ!?な、ななななんだぁっ!!」 タカちゃんが姿勢を正そうとする! だがそうはいかん!俺は黒でタカちゃんの身体全体を包み、さっきの状態に固定した!! 鷹志 「いででででででっ!!!な、なん───黒い影!?弦月かっ!!」 彰利 「フフフ、バレちまっちゃあしょうがねぇ……」 鷹志 「隠す気全然なかったくせに“バレちゃあ”とか言うなよ!!」 まあよ、あとは体感してごろうじろ。 俺はスッとハーバルエッセンスを彼の濡れた髪に出し、静かにならしてゆく。 鷹志 「冷てっ!!な、なにかけた!?なにかけ───ハッ!!」 やがて泡が立ちだすと、タカちゃんの様子が変わる……! 彰利 「ああ……っ!なんだこの滑らかな指通りはっ……!!」 鷹志 「イエ〜ス……イエ〜ス……イエェェェ〜〜〜ス!!!」 そこに奇跡が生まれた。 あれほど暴れようとしていたタカちゃんは大人しくなり、 うっとりと目を閉じながらイエ〜スと言っている。 すげぇ……すげぇよハーバルエッセンス。 世界が嫉妬するアジエンスなんて目じゃねぇよ……。 俺は満足気分でタカちゃんの髪についた泡を先ほどと同じ要領で作ったお湯で流し、 月然力・風+火でほどよい温風を実行。 綺麗に乾かすと、黒から解放して握手し合った。 鷹志 「ありがとう。爽快なほどに気持ちよかったよ」 顔を上げた彼は輝いていた。 まるで穏やかな英国紳士のようだった。 ……髪はなんだかガヂガヂに硬そうだったけど。 凍弥 「……なにやってんだ?」 彰利 「むう!」 そして、後方で洗い終わるのをずっと待っていた閏璃の野郎が微妙な顔で俺を見る。 というか散々笑っていたらしく、少し腹を押さえていた。 彰利 「よぅ来た!ゆっくりしちぇけ!」 僕はそんな彼を黒で包み込むと、無理矢理洗面台のところに固定し─── タカちゃんの時と同じくハーバルエッセンス劇場に引き込んだのだった……!! 凍弥 「うわちょっ、なにする気だ!?俺はただ顔を洗いに来ただけ───ハッ!!     あ……が、あああああっ!!!……あぁあんっ!髪の芯まで潤っちゃう♪」 彰利 「ああ……っ!なんだこの滑らかな指通りはっ……!!」 凍弥 「イエ〜ス……イエ〜ス……イエェェェ〜〜〜ス!!!」 やられてみれば確かな触感。 暴れようとしていた彼はやはりイエ〜スと唱えて没落。 遥一郎「はぁ……しかしヒドイことをしてくれたもんだ……」 澄音 「う〜ん、油性だからやっぱりそう簡単に落ちるものじゃないね」 遥一郎「まあ、蒼木がそんな顔になってるのは珍しくはある───うおっ!?」 彰利 「二名さまご案内!!」 ズリュゥウンッ!!! 遥一郎「うわっ!?弦月っ!?な、なにを───」 彰利 「ハーバルエッセンス!!」 遥一郎「な、なんだそりゃぁあーーーーーーっ!!!!」 澄音 「ついでに顔も洗ってくれるのかな」 凍弥 「イエ〜〜〜〜ス!!!」 遥一郎「イエスじゃないだろぉーーーーっ!!!!」 僕はそうして、 ここに訪れる全ての者をハーバルエッセンス地獄へと誘ったのです。本当です。 閏璃くんと橘くんは積極的にハーバルエッセンス劇場に参加してくれて、 それはもう俺達は爆笑しながら人々を巻き込みました。 凍弥 「あの……これ、使ってもらっても……?」 彰利 「……?いいですよ」 閏璃くんがソッと差し出すハーバルエッセンスを不安気に受け取りつつ、 まずは穂岸くんの頭にかけてゆきます。 その瞬間、俺はこの場を黒で象ったオリーブ畑として広げてゆく……!!! 鷹志 「さぁ穂岸!ここで『あぁあん!髪の芯まで潤っちゃう!』と!」 遥一郎「言うかぁーーーーーっ!!!!」 彰利 「ああっ……!なんだこの滑らかな指通りはっ……!!」 凍弥 「イエ〜ス……イエ〜ス……イエェェェ〜〜〜ス!!!」 遥一郎「離せっ!!離せぇええーーーーーーっ!!!!」 こうして僕らは、ハーバルエッセンスが尽きるまで遊び倒しました。 その日の朝、何故か男衆の大半が英国紳士ばりに礼儀正しかった。 その理由を知る者は極僅かです。 ちなみに。 俺がハーバルエッセンスを無断で使い切ったことで、 櫻子さんに少々怒られてしまったのは小さな裏話である。 ───……。 ……。 彰利 「や〜はっは、怒られた怒られた」 櫻子 「消耗品を遊びに使っちゃいけませんよ?     これからは気をつけなきゃダメよ?彰利ちゃん」 彰利 「ウハーイ」 ぴしゃりと怒られた俺は、 櫻子さんとともに蒼空院邸内の大聖堂みたいなダイニングに訪れた。 明らかに老夫婦ふたりでは広すぎるそこには、 誰が買ってきたのか……既にハンバーガーがもっさり置いてあった。 悠介 「どうせ空界暮らしになるなら、これくらいの無駄遣いはな」 彰利 「ありゃ?悠介が行って来たん?」 悠介 「お前が洗面所で辻洗髪してる間に、ボコボコにされた提督と行って来た。     思いっきり嫌な目で見られたけど……ああ、あれはあれで貴重な体験だ」 数にして何個くらいあるのか……ハンバーガー(単品)は、 長いテーブルにズラーと並べられていた。 櫻子 「あらあらあらあらダメよ?悠介さん。     ご飯は明るいところで食べなくちゃもったいないわ。     お外で食べましょ。お行儀なんてどうでもいいから。     さ、一緒に運んでちょうだい」 悠介 「え?あ、ああ……」 彰利 「……なんつーか、とことん明るいお婆様だねぇ」 悠介 「元気な限りは嬉しいもんさ。特に、櫻子さんみたいな老人は」 そう言うと悠介は両手で持てるだけハンバーガーを持つと、 トコトコと歩いていってしまった。 その先には櫻子さんが開け放ってくれていた、庭へと続く通路が。 通路っつっても勝手口みたいな窓をガチャッと開ければOKなんだけどさ。 彰利 「むう」 それにしてもダーリンめ。 どうせ持ってくんだったらこう、一気に全部浮かせていくとかさ。 て……あ、そうだった。 まだ悠介の力ってスッピーが預かってんだっけ。 彰利 「む。そういうことならば俺が受け持とう。とりゃ〜!山田の術〜!!」 ホォ〜ゥホホホッホ〜…… 妙な音とともに、月然力・重力をコントロールしてバーガーどもを浮かす。 ここで重要なのは、重力の場にハンバーガーよりも軽いものが無いことだ。 椅子とかは全然大丈夫。 だがテーブルクロスがちょっと浮いちまってる。 面積が大きいから一箇所だけ浮いてるような感じ……かな。 この分なら大丈夫か。 彰利 「よっしゃいこかー」 こうして俺も、注意しながら勝手口から降りて、バーガーを運んだのでした。 するとそこには既に、新たなテーブルとチェアを創造する悠介の姿が。 悠介 「全部持ってきたのか?」 彰利 「オウヨ!山田の術ってすげぇよね!どういう原理なんだろねアレ!」 不思議ですぜアレ! とまあそれはそれとしてまずはきちんと置かないとね。  ポポスポストスポポストストス…… 一個ずつ丁寧に置いてゆく。 テーブルはあっという間にバーガーで埋め尽くされたがキニシナーイ。 彰利 「ちなみにこれって何個?」 悠介 「400個」 彰利 「ぶほっ!?」 いくつか置かれているテーブル全てにギッシリとあるバーガー。 これ……全部朝食なんでしょうか。 朝からなんでこんなことに……。 や、そりゃドナ様はいい、ドナ様に罪は無い。 だが……ノルマはひとり2個以上ってことになるんだよね? 黒で食う分には無限だからいいんだけど、 バーガーを黒に取り込むなんてことしたくないしなぁ。 それこそドナ様に失礼だ。 彰利 「む……考えるのは後にしようか。そんじゃ俺、みんなを呼んでくるわ」 櫻子 「ええお願いね彰利ちゃん。それじゃあ悠介さん?     わたしは美味しい紅茶を用意してくるわね」 彰利 「……なんで俺は“ちゃん”で悠介は“さん”なんだろね」 櫻子 「あら、だって彰利ちゃんたらどれだけ経っても子供っぽいんだもの」 彰利 「そんな理由だったンスカ」 櫻子 「うふふふふ、い〜じゃないのぉ。     こうやって構ってもらえるうちが、男にとっての華なんだから」 彰利 「………」 櫻子さんの、顔のシワを寄せるように笑う顔は嫌いじゃない。 そういや……俺のばーさんってどんな人だったんだろね。 覚えてないのか、それとも俺が産まれた時にはとっくに死んでたのか。 今じゃあ調べる術が……腐るほどあるけど実行はやめておこう。 そうだよねー、オイラ時空飛べるし死神王だし、調べる方法はあるんだよねー……。 でもいいや、うん。 オイラ現状に満足してるし。 もちろん努力をやめるつもりはねぇぜ? しばらく平和ボケしてて悠介には怒られたが、 俺はちゃんと“強くなる理由”を思い出せたのだ。 悠介 「……?彰利?みんなを呼んでくるんじゃなかったのか?」 彰利 「ウィ?───っと、忘れてた。いかんね、考え事をするとどうも」 アタイは足を弾けさせ、トトンと軽い足取りで蒼空院邸へと走った。 みなさんはそれはもう好き勝手にいろんな場所におりましたが。 もちろん部屋のドアを開ける時はノックンロールを忘れない。 提督のようにはなりたかないからね……。 ───……。 ……。 そんなこんなで皆様が集まったのが現在である。 中村 「そこで俺は思ったわけだ。     最近……いや、俺達がまだ青春時代に立っていた頃より続く悪循環を。     あの頃から漫画だのゲームだのアニメだのは、やれ“萌え”がどうのと。     萌えてりゃなんでもいいって思想がまず気に入らんかった。つーか萌えってなに?     俺は断然こう思うわけだ。“女キャラばっかが輝くもの”より、     主人公がヘタレでもなく天才でもないものこそ輝くと。     だってさ、ヘタレ主人公に惚れる女キャラの気持ちがまるで解らんもん。     やる時ゃやる主人公ならまだしも、終始ヘタレ主人公がモテるっていう、     女キャラばっかを立たせる萌え思考のブツ……ありゃなんだろね?」 田辺 「あ、それ解るわ。アレだよな、女キャラばっか出されても、     主人公に魅力が無いとストーリーにのめりこめないっていう」 中村 「ザッツライッッ!だってのに近年のブツは萌えてりゃなんでも商品化ッ……!!     ヒロインを際立たせるために主人公の影を薄くするなど言語道断ッッ……!!     確かにさ、主人公ばっか活躍するのはどうかなー、って思うのもある。     だがね?最近俺はこうも考えてるわけだ。“活躍するから主人公”。     だってほら、活躍しないなら“主人公”である意味が無ぇんだもん。     他のヤツより弱くてもいい。     ただ、その他のヤツを助ける意味でも引っ掻き回す意味でも、     “主人公”はちゃんと“主人公”してるべきなんだ」 気づけば始まっていた主人公考察。 近年の商品はなんでも萌えから入るということを毛嫌いしている者達が、 それぞれの意見を言い合う場が今……ここに設けられていた。 中村 「だがしかし、キャラがいっぱい居るにも関わらず主人公しか活躍しないものとか、     主人公より強いヤツが居ないってのはどうかと思う今日この頃。     とりあえずヒロインは後回しにするべきじゃないかと思うんだ」 飯田 「最初は良かったキャラクターがどんどんと堕落していくってのもあるよな。     いわゆる“河内症候群”」 田辺 「あれは作者の陰謀だろ」 蒲田 「主人公もすげぇ性格悪くなってるし」 夏子 「わたし、努力もしないで才能だけで上に上っていく主人公ってキライだな」 蒲田 「俺も!」 清水 「わいも!」 中村 「ぼくちゃんも!!」 灯村 「それがしも!」 岡田 「おいどんも!」 田辺 「わしも!」 丘野 「拙者も!」 皆川 「わても!」 三島 「ミーも!」 島田 「やきいも!!」 みんな嫌いなようだった。 そらそうだ。 俺も今では悔い改めてるところじゃわい。 黒で強くなるあまり、黒が無くなった自分は弱すぎるっていう、妙な恐怖感を持っていた。 これはいけないことだ。 凍弥 「じゃあ逆に───弱い主人公が強い武器を手に入れた、ってのはどうだ?     それを頑張って自分で扱えるようになる物語」 鷹志 「武器に頼りすぎなくせに踏ん反り返ることがなけりゃOKじゃないか?」 中井出「ああ、エレメンタルジェレイドがそんな感じだったっけ。     調子に乗りやすい主人公も案外ダメかもな。俺はクーは好きだけど」 蒲田 「俺も!」 清水 「わいも!」 中村 「ぼくちゃんも!!」 灯村 「それがしも!」 岡田 「おいどんも!」 田辺 「わしも!」 丘野 「拙者も!」 皆川 「わても!」 三島 「ミーも!」 島田 「やきいも!!」 柿崎 「んじゃあ……普段は素っ気無い態度のくせに、     身近に居たヒロインが誰か他の男に近づかれると怒る主人公ってのは?」 遥一郎「鈍感にも程があるだろそれは」 来流美「ん?どーしたのぉ凍弥ぁああ〜〜?なんか急に黙っちゃったけどぉ〜〜〜?」 凍弥 「うーさい」 遥一郎「そういう怒りに任せて相手の男を殴ったりするのはアウトだな。     独占欲が強すぎる主人公は好まれないと思う」 中井出「ふむふむなるほど確かに」 皆様いろいろな意見があるようですじゃ。 そりゃ俺にももちろんありますが……鈍感だとか言われると、ちと肩身が狭ェ思いです。 彰利 「じゃあ恋愛感無視したもので、     最後には何故かヒロインとくっついてる主人公は?」 総員 『サイドストーリーが無いにも程がある』 ええまあ、外国映画でよくあるパターンですが。 彰利 「やっぱ好きになる過程は欲しいところだよね。     じゃあチミたちの理想の主人公像ってどんなん?」 遥一郎「努力家……ってのは外せないと思う。ああ、べつに熱血漢じゃなくてもいい」 凍弥 「頭の良さは普通でいいだろ。ノリは大事だけど」 俊也 「なんつーかこう……憂いのある過去はあるけど、ひたむきなヤツ?」 中井出「口が少々悪くても、相手が傷つくようなことは言わないヤツがいいな。     冗談の解るってのも候補には入ると思う。イヤミったらしいのはアウトだ」 田辺 「金持ちすぎるのもどうかな。生活面は普通のほうがいいかも」 藍田 「家族のために頑張る姿っていいと思うんだ。     その場合、仲のいい幼馴染の女か男が居てもいいと思う」 雪音 「はいはいはーい!えっとね、恋愛より友情を選んじゃって女の子泣かして、     それでその友人に殴られちゃう主人公とかいいと思うよー!」 彰利 「三角関係は重いので、出来れば遠慮してください」 雪音 「えー?」 それからもあーだこーだと会議めいた会話は続く。 なんだかんだで皆様結構バーガーを頬張り、 櫻子さんはそれを穏やかな表情で見渡している。 彰利 「じゃあ理想のヒロイン像は?」 鷹志 「穏やかで時には明るく真面目で清楚で黒髪ロングヘアでカチューシャ付けててやさ     しくて可愛くて綺麗で謙虚な日本人女性!!」 来流美「遠回しでもなんでもないわね……     そこまで言うくらいなら“俺の妻だ”くらい言ったらどう?」 鷹志 「俺の妻だ!!文句あっか!!」 真由美「ちょっ……鷹志ぃ……っ!やめてよ、恥ずかしいよっ……!!」 凍弥 「まあ新婚さんいらっしゃいはほっといて。     そうだな……清楚で黒髪日本人ってのは日本男児なら大半頷くと思う」 来流美「おまけにボケ者?」 凍弥 「うーさい」 彰利 「俺も清楚で黒髪日本人ってのは素直に嬉しいね。     物静かでやさしくて、     主人公にだけ見せてくれる笑顔とか持っててさぁ……ねぇ?」 総員 (ああ……こいつはこいつで苦労してるんだなぁ……) なんか生暖かい上に悲しみを込めた目で見つめられた気がした。 俺はそんな視線を払拭するべく、悠介に話を振る。 彰利 「ちなみに悠介の理想的ヒロインってどんな感じ?」 総員 『───』 悠介 「……なんでみんな一瞬にして静まる」 彰利 「気になるからでは?で、どうなん?」 悠介 「頑張ってるやつ。それだけだ」 彰利 「え……それだけ?清楚で可愛くて〜、ってのは無いの?」 悠介 「……お前だったら、頑張らないヒロインに魅力を感じるのか?」 彰利 「む。そりゃ確かに感じないかも」 悠介 「この際、髪だとか性格だとかは度外視するとして。     “理想的なヒロイン像”だろ?だったら頑張ってるヤツのほうが好感持てる」 彰利 「ガングローリィでタバコふかした女子高生でも?」 中井出「や、彰利一等兵……それって誰もヒロインとして認めないから」 ……そりゃそうッスネ。 少し考えてみりゃ解ることだった。 彰利 「ああでも挫折に立ち向かって乗り越えるヒロインっていいね。     でも俺はやっぱ清楚で可憐でおしとやかな子がいいYO!!     弓矢で狙わない!刀で斬りつけてこない!すぐに誤解しない!     そんなヒロイン───ステキ!!」 夜華 「……彰衛門?それはいったい誰のことを指して言っているんだろうな?」 春菜 「そっかそっかぁ……アっくん、そんなこと考えてたんだぁ」 粉雪 「へぇ〜……いっつもいっつも誤解されるような言動吐いてるのは自分なのに、     ぜぇ〜んぶわたしの所為にしちゃうんだぁ……」 彰利 「真穂さん、冥界の后になって。やさしいキミが一番愛しい」 真穂 「ひえっ!?う、嬉しいけどっ……なんでこんな時に言うかなぁっ!!」 粉雪 「真ぁあああ穂ぉおおおお…………!!!」 夜華 「貴様……あとからしゃしゃりでた者のくせに……」 春菜 「アッくんは渡さないからね……?」 真穂 「みんなも『やさしい人が好き』って弦月くんが言ってるんだから控えようよ!!」 仁美 「アキちゃん、ちなみにわたしは?」 彰利 「あの……平気で子供を殴った教師がやさしいとでも……?     や、そりゃああの頃は純粋に楽しんでましたし、仁美さんは普通に好きだけど」 仁美 「…………えへへー、アキちゃん!」 がばしっ! 彰利 「ややっ!?これ何をいたすか無礼もむぐっ!?」 総員 『ざわ……!!』 それは突然の出来事だった……。 一瞬の油断が命取りとはまさにこのこと……俺の唇は仁美さんによって奪われ、 しかも驚きのあまり硬直したボクに、 さらに仁美さんがしたことはディープなぶっちゅで…… 真穂 「う、わ、わわわ……わぁああーーーーっ!!!ちょちょちょちょっとお母さん!!     むむ娘の前でそんな!なななんてことをーーーーっ!!!」 仁美 「?……じゃあ真穂も」 がしっ。 真穂 「へぅっ?」 グイまちゅっ! 彰利 「ふごっ!?」 真穂 「んむ───っ!?」 さらに仁美さんは、真穂さんを捕まえると頭を固定した状態で、 俺に真穂さんを押し付けた───!! 当然ながら硬直状態を続けていた俺は、 あえなくディープぶっちゅを連続する羽目になり…… ポカンと口を開けたままだった俺と、 びっくりして口を開けていた真穂さんの口が合わさった瞬間、 周りの皆様がようやく正気に戻って───拍手をし出した。 飯田 「ブラボ〜〜〜……」 田辺 「ブラボ〜〜……」 彰利 「───!!ムゴッ!?」 恥ずかしさのあまりになんぞか言ってくれようかと思ったその時だった。 ヤケクソになったのか、真穂さん自らが舌を伸ばして熱いぶっちゅをしてきたのだ!! もちろんボクは、自分の顔面が沸騰するのを確かに感じました。 おずおずと伸ばされる暖かい感触……! 震えるように、だが心許なく我が舌を探るその仕草は初々しさ爆裂……!! つーかなに冷静に思考回転してるんでしょうね俺!! 状況判断なんてどうでもいいじゃん恥ァーーーずかCィーーーーッ!!!! でもここで嫌がると真穂さんを傷つけてしまうということもあり、 ボクは観念して受け入れることにしたのです。本当です。 もうね、我が背後に般若が三人居ることをヒシヒシと感じながらも、 続けるしかなかったんです。本当です。 ああ……なんか今、拳をキツく握る気配と刀を抜く音と弓を引き絞る音が聞こえたなぁ。 ハハ……ありがとう青春。 友情フォーエバー……。 【ケース142:晦悠介/馬鹿は歩く以前に聞いた途端に忘れるケースがほぼである】 ボゴドゴザシュドシュドシュドシュ!!! 彰利 「ギャアーーーーーーーーーッ!!!!」 彰利が殴られ斬られ射られてゆく。 俺はそんな様を苦笑とともに流し、提督と話していた。 中井出「で……これからバージョンアップはやっぱりありそうか?」 悠介 「多分。というより、自由度を唱えるなら“ブレイバーシステム”を無くそうって、     精霊達が話し合ってるみたいだ」 中井出「それってブレイバーギルドとメイガスギルドを無くすってことか?」 悠介 「いつでも職業を変えられるなら、やっぱりそれを支える力も平等であるべきだ。     だからさ、初心者修練場で一番最初に選んだジョブについてくる     おまけスキルとかも、ジョブチェンジした時点で追加されるようにしようって。     そういう話になってる」 中井出「なるほど。確かに縛るモンが無ければ自由度は増すな。     称号みたいなもんは、何かの拍子で手に入るみたいだし」 悠介 「ところでだ。俺的には“シーフ”は     “ジョブ”じゃなくて“人物特性”の内に入ると思うんだが……どうなんだ?」 中井出「あ、それ俺も思ってた。丘野二等が強引に相手の武器盗んだあたりから」 そんなことしてたのか。 まあ提督のパーティーらしいといえばらしい。 悠介 「だから俺はシーフは無くしていいと思う。     盗みたいヤツは普通にとことん盗めって感じだ」 彰利 「だったらブレイバーとメイガスに分けるだけでいいんじゃねぇかい?     悠介だって槍は使うわ剣は使うわ弓は使うわ体術使うわなんだし」 悠介 「それ言ったらジョブシステムが要らなくなるだろうがこの毛フェチが!!」  ボゴシャア!!《顔面ナックル》 彰利 「ヘナップ!もうごめんなさい!ホントもう言いません!!」 中井出「毛フェチってなんだ?」 悠介 「こいつ髪型整えるのに能力使ってるんだ。だから毛フェチ」 彰利 「自称してます」 中井出「胸張って言うなよ……まあジョブシステムは無くなるけどさ、     案外それって空界向けだよな。あそこもそんな感じなんだろ?」 悠介 「まあ……そうだけどさ」 というかいつの間に抜け出してきたんだ彰利のヤツ。 さっきまで囲まれてボコられてた筈なんだが。 彰利 「久しぶりに等身大マスオ人形をスケープゴートに使ってみました。最強!!」 ズビシィと決めポーズを取る彰利。 向うのほうでは等身大マスオ人形が見るも無惨な姿で転がっていた。 ……そして彰利。普通に心を読むのはやめような。 中井出「しかしよくもまあアレって何度も使ってて壊れないよな」 彰利 「壊れてるけど何度も修復してるんですよ。ホレ!ガムテープーーーッ!!!」 ジャジャーン!と出したのはセロテープ。 中井出「ガムテープじゃねぇじゃねーかこのニセ蔵がぁーーーーーーっ!!!!」  ベゴシャア!!!《顔面ナックル》 彰利 「ペサァーーーーーッ!!!!」 奔る拳に歪むフェイス、飛び散る血液。 今日も今日とて原中の雰囲気満載だった。 互いに遠慮はしないこと……それは、頭が忘れても身体が覚えてる。 ノート『ふむ。ならばシーフは称号的なものにでもするか』 三人 『オワッ!?』 突如として横に現れたノートに、俺達三人は肩を跳ねさせる勢いで驚いた。 というかもう少し話に繋がりを持たせようとは思わないのかノートよ。 ノート『実はな。私もシーフの必要性には頭を悩ませていた。     現にシーフジョブの人物は極めて稀……マスター以外に居なかった』 中井出「なに、お前シーフなのか?」 悠介 「ノーコメントだ」 俺はノートに“俺のジョブの話は勘弁してくれ”とアイコンタクト。 それが通じたのか通じないのか、困ったような笑ったような顔をして話を続けるノート。 ノート『シーフジョブは削除するとしよう。特に目立つものでもない。     特徴のあるジョブだけを残すというのも手だが……アーチャーと刀士は必要か?』 中井出「む。確かになんでも装備できるヒロラインの中では、     案外アーチャーと刀士は浮いた存在……」 悠介 「それ言ったらモンクもだろ。ただ武器を拳に変えただけだ」 中井出「それ言ったらホント、空界みたいなバランスが一番ってことになっちまうぞ?     ブレイバーである限りは直接戦闘、または弓で遠距離攻撃を。     メイガスである限りは魔法攻撃を。で、エンチャンターは両方って感じで」 彰利 「……それでええんでないの?     全部のジョブを“称号”ってカタチにしちまえばいいじゃん。     それ系の武器を使ってると、その種類の武器用のアビリティとかを覚えるとか」 ノート『ふむ……なるほど。では武器さえ変えれば様々なアビリティを習得可能……     そうしたほうがいいと言うのだな?』 彰利 「俺はさ、最近のゲームには単純性も必要だと思うんだわ。     複雑な文字だの言葉だのをズラ〜っと出されたって、覚えんの大変っしょ?     あ、もちろん覚えるアビリティは“戦い方によって”変わるとかでいいと思う。     みんな同じアビリティじゃつまらんし」 それは確実だ。 どれだけ頑張っても辿り着くものが同じなら、あまりにつまらない。 人の分だけ個性があるなら、重なる部分はあっても違うものも手に入る筈だ。 俺は彰利の意見にゆっくりと頷いた。 提督もそれに頷き、けど待ったをかけた。 中井出「けどさ、そうなると秘奥義とかはどうするんだ?     ウチの丘野二等は秘奥義を楽しみに目を輝かせていたんだが……。     無くなるとなると相当ショックを受けると思う」 ノート『なに、そこらはまた調整でもするとしよう。武器固有の技や奥義、     秘奥義などはそのままにしておいていいんだな?』 彰利 「もちろんさ!」 ノート『解った。では早速根底から調整するとしよう。     今日の昼には終了すると思う。精霊ももう回復済みだ。     汝らは今しばらく休憩しているといい』 彰利 「ほいりょーかい。ジョブ関連の概念はそのまんまでも構わんってことよね?」 ノート「レベルが60になれば奥義を編み出せる───そんなものでいいだろうよ」 彰利 「あ、なるほど」 中井出「つまり戦い方次第でどんなジョブにもなれるってことだよな?」 彰利 「ウーヌ。悠介みたいなオールマイティー目指すのもいいけど、     俺は是非とも渾身ゲフッ!ゴフッ!……じゃなくて、モンクを極めたいね」 悠介 (もっと気をつけろたわけ……!!) 彰利 (ソ、ソーリー……!でも喉に向けて衝撃創造して地獄突きは無いと思うんだボク) 彰利が喉を押さえながら涙目で意見を発した。 当然却下だ。 彰利 (でもボクは渾身諸刃カウンターをより一層強化させたいと思ってるんだぜ?) 悠介 (中井出の目の前で言ったら一発でバレるから発現はやめとくように) 彰利 (解ってらい。悠介も心配性だなぁ。この俺様を誰だと思っていやがる) お前だから心配なんだが。 という言葉は飲み込んでおいた。 彰利 「さてと、昼まで暇だし……なんかやる?」 中井出「オセロか?」 彰利 「あれはもうやりません。他になんか無いかね」 中井出「そういや地界に住むガキャアどもはどうした?今日はまだ来てないよな」 彰利 「あっちはあっちで付き合いとかもあるんでしょうよ。     べつにえーやん。ガキャアは親にほっとかれて強くなるもんなのよ」 中井出「……普通、こういう時って親の愛情で強くなるとか言わないか?」 彰利 「え?だって俺と悠介って愛情無くても育ったよ?     しかも死神王と精霊というステキな出世っぷり。どうよ」 中井出「いや、そこでどうよとか言われてもな。鞭ばっかだとグレるぞ?」 彰利 「そん時ゃ知らん。勝手にグレて路頭に迷ってくたばれカスがって感じ。     心ン中に一本の芯が無いからそげなことになるのさ。     つーか……そもそも親の愛情ってどんなのなん?提督」 中井出「どうって……───いや、どんなんだろうな」 彰利 「ダメじゃん……」 悠介 「提督よ……頼むよ……」 中井出「俺にそんながっかりした態度取られたってどうしようもないだろうが!」 だが、俺達は親の愛情らしい愛情を知らないのは事実だ。 もちろん子供にどう接すればいいのかも謎。 殴ったりしないだけ上等……なのかな。解らん。 丘野 「提督ー!バーガーが無くなったでござるー!」 藍田 「提督ー!これからどうするでありますかー!」 と、考え事をしていた時。 丘野と藍田が上機嫌のままに俺達に絡んできた。 その顔は……何故か真っ赤である。 彰利 「ぶわっ!酒くせぇ!!キミら一体なに飲んだん!?」 丘野 「ウヒャヒャヒャヒャ……睦月が調合してくれたリキュールボトルをぐいっと……」 中井出「また殊戸瀬かい!」 藍田 「状態異常回復ゥウウウウウフフフフフ……い、犬より強い……ぜ?」 悠介 「お前らのその現状が一番異常だたわけ!!」 中井出「比較対照が何故犬なのかも気になるところだが」 藍田 「なぁ〜〜〜〜あぁああ〜〜〜晦ぃいい〜〜〜〜……     なぁああに話してたんだよぉおおおお〜〜〜〜……」 悠介 「うおっぷ酒臭ぇ!!ちょ……こらっ!絡み酒にも程があるだろ!!」 藍田 「気にすんなよぉお〜〜〜……───ヴ」(ゴポリ) 総員 『!!』 シュバザザザァッ!!! 悠介 「え───おまっ!待て!落ち着け!話せば解る!なっ!?やめろ!     ちょ───離れろぉおおおおっ!!!」 力を込めて押しのけようとする!───が、力が入らない!! 何故!? 殊戸瀬「……ああごめんなさい。“脱力香”の調合に成功したところなの」 悠介 「殊戸瀬ぇええええええっ!!!てめぇえええええええっ!!!!」 つーかなんでわざわざ風上のところに立ってんだお前は!! さっきまでチェアに座ってただろお前!! 藍田 「うぶっ!ぐ、ヴブ───!!」 悠介 「うおぉノート!!ノートォーーーーーッ!!!     力返してくれ!力!!こいつストレングスMAXにした状態で酔ってやが───     キャアアアアアーーーーーーーーーッ!!!!!!」 ゲブバッ!ブシャアッ!!キラキラ…… 悠介 「おぅわわわわぎゃああああああーーーーーーーーっ!!!!!!」 ……その日。 恐らくは人生の中で最大級となろう俺の絶叫が、蒼空院邸の庭に轟いた……。 ───……。 ……。 悠介 「あ゙〜〜……ひどい目にあった……」 朝っぱらから風呂に入った俺は、頭をワシワシとタオルで拭きながら庭に戻った。 夏の暑い日にはこれくらいの格好が丁度いいっていうんで、 櫻子さんが用意してくれたラフな服に着替えて。 彰利 「おぉ悠介───うおう、夏少年」 彰利が短パンとシャツだけの俺を見て驚く。 他のみんなの反応も……まあ概ねそんな感じだ。 中井出「晦がそういう格好してるのはレアだな。うむ、素直にレアだ」 彰利 「つーかそれって俺のでは?」 悠介 「ん……知らん。櫻子さんが適当に用意してくれたヤツだから。     そもそもなんでお前の衣類がここにあるんだ?」 彰利 「そりゃおめぇ、キミが着てるところ見たかったからに決まってんじゃん。     キミってば夏でも絶対長ズボンだしさ」 彰利が、俺が着ているシャツの中心にプリントされてる“闘魂”の文字を指でなぞる。 当然くすぐったいからすぐにやめさせたが。 しかし…… 悠介 「えーと。俺、もしかしなくても格好だけで浮いてるよな」 中井出「思いっきり」 彰利 「女子の視線を欲しいままにしてるぜ?さあここで一言!」 悠介 「ご婦人方にまたモテそうだ」 瞬時に流し目でもするかのようにキリっと表情を変えてボーマンさんの真似をする。 瞬時にこれくらい出来ないようなら原ソウルは語れない。 語れないが……長続きするでもなく、俺は真っ赤になってそっぽを向いた。 彰利 「ナイスナイスナ〜イス!!キミの感情はきちんと成長してる!!     その真っ赤な顔もその賜物だ!!顔見せれ!そっぽ見ずに見せれ!!」 グワシィと、彰利が背中から抱きつくように顔を向かせる。 抵抗するが、悲しいかな……脱力香が効いているようで抵抗出来やしない。 悠介 「うわちょっ……やめろこらっ!!」 彰利 「おぉ〜〜〜っほっほ!!赤い赤い!!もぉ〜ぅウヴなんだかるぁ〜!     さっすが感情クソガキャ男!この調子ならいつか、     ルナっちにしっかりした告白するんかね!!愛してる!とか!ブフゥ!!」 ブスッ。 彰利 「オーーーーーヒャーーーーーーッ!!!!」 やかましい親友にサミングを贈った。 すると感動の血涙を流す親友。 実に爽快だった。 彰利 「ごわぁっ……!!い、いてぇっ……!!目がぁっ……目がぁああっ……!!」 身体を折って痛がる彰利を余所に、俺は軽く温風を創造して髪を乾かしてゆく。 さらに、熱を持ってた所為で汗が止まりそうにないってことで、 シャツを脱いで上半身も少し風に当てる。 その間もチラチラ見られているが、もう開き直ることにした。 照れててもしかたないしなぁ。 夏子 「うわぁ〜ぁああ……晦くんって無駄な贅肉無いんだねー」 中井出「体脂肪率とか計らせたいなこりゃ……」 彰利 「ドラミちゃんの♪」 悠介 「ダイナマァイ♪」《ムキッ》 彰利 「ブフゥーーッ!ステキ!ステキよ悠《ボゴシャア!!》つぶつぶーーーっ!!!」 悠介 「お前はぁああああああああっ!!!!     どうしてそう人で遊ぶことばっか考えてんだこのタコォーーーッ!!!!」 彰利 「もうごめんなさい!ホントもう言いません!言わないけどやります!     つーかなんでみんな鼻ばっか狙うの!?俺の鼻になんの恨みが!?」 悠介 「力が出ないんだから弱い部分を狙うしかねぇだろうが!!     そんなことよりちったぁ悔い改めろタコ!!」 彰利 「無駄さ!!何故なら俺は死神!神に懺悔なぞ誰がするかタコ!!     俺だってなぁ!!脱いだらマッスルなんだぞこの野郎!!」 ヌギヌギ……と、言葉の途端に脱ぎ出す彰利。 で、俺と同じく上半身裸になるとポージングを取った。 彰利 「ジャングルボディ〜!ナイスポォ〜ズ♪」 中井出「ジャングルの王者ターちゃんのCMかよ……」 鷹志 「お前らってなんでそう細かいことを覚えてるんだ……?」 中井出「原中だからだ」 鷹志 「訳解んねぇよ!!」 中井出「まったくだ!!」 麻衣香「でも弦月くんも筋肉すごいね……」 彰利 「体脂肪率0%ですよ?」 真穂 「えぇっ!?それって物理的に出来るものなの!?」 悠介 「黒ならではだ。真面目に聞き流せ」 彰利 「真面目に聞き流すの!?え───なにそれ!!」 麻衣香「あ、そっか。黒だから身体つきなんて思いのままなんだっけ」 彰利 「や……そこで納得されると、     俺のボディが元はたるんでるように聞こえるんだけど……」 彰利の身体は引き締まってるのは知ってる。 今の状態も、黒を受け入れる前とそう変わらない。 や、さすがに体脂肪率0%は無いとは思うが…… こいつなら有り得そうなのがちょっと怖い。 柿崎 「けど今の晦って伊達マッスルなんだよな?」 悠介 「不本意ながらそうなるのか……?」 凍弥 「“REVIVE〜蘇生〜”の主人公って呼んでいいか?」 悠介 「それだけはやめてくれ」 由未絵「凍弥くん、なにそれ」 凍弥 「うむ。“REVIVE〜蘇生〜”の主人公というのはだな。     オープニングムービーでバイクに乗ってるシーンの時はしっかりマッスルなのに、     ゲーム本編だとそのマッスルさを発揮することが一度もないままに、     あっさりと死ぬことが多々あるという伊達マッスルのまさに代表と言える男だ。     ちなみに類似語でドラゴンボールZ(アニメ)の後半の悟空たちは、     無意味に筋肉に光沢があるためにテカテカマッスルと呼ばれている。     そして孫悟飯はSFCソフト超武闘伝3にて圧倒的な弱さを見せたことから、     “REVIVE〜蘇生〜”の主人公と同じく伊達マッスルの異名を持つのだ」 由未絵「そ、そうなんだ……」 凍弥 「ちなみにこの“REVIVE〜蘇生〜”はドリームキャストソフトとして発売。     なんでものちに18禁ゲームとして再販されたらしいが、     売れたかどうかは謎であるらしい。───同オープニングムービー中、     主人公のニセマッスルっぷりもツッコミどころ満載であるが、     ムービー中、女キャラたちがよう解らんオーラを巻き起こしているのにも     ツッコミどころが存在した、真実謎のゲームだった。     えー、ちなみにヒロインたちは至って普通の女たちです。     ゲーム中、オーラなんぞ放ってる場面は一度たりとも無い筈です。     狭い導線だらけの配管のような場所を通り、     伊達マッスル代表の主人公さまが感電死する様が今でも心に残っております」 鷹志 「いやな紹介だなオイ……」 彰利 「そういやホントマジであのオーラってなんだったんだろ……」 詳しくは知らんが、どうやらよっぽど奇妙なゲームだったらしい。 話には加わることは出来ないが、 聞いてるだけでももう混乱を招くゲームであることは確かだ。 彰利 「ああいうゲームって……ホント容赦無く死ぬよね?」 中井出「慟哭とかもだな。一歩間違えると絶対死ぬ。ただ桂さんの声は好きだったな」 彰利 「あぁ、あの主人公よりもまずヒロインを殺すことに躍起の二枚目さん?」 中井出「どういう喩えなのかは解らんが、あの桂さんだ」 彰利 「とある部屋ン中で誰ぞかに追われてる〜っていうツインテール娘を匿う時ね。     あれって不思議だよね?     何処におなごを隠しても絶対におなごがブッ殺されんのね。     だからやり直して隠れる場所をおなごと交代しても、     絶対おなごがブッ殺されんの。やっぱヒロイン殺すことに躍起の二枚目さんだ」 中井出「結局絨毯の下の倉庫っぽいとこに隠れさせないと死ぬしな。     もちろん鍵も無しにイベント発生するとどうあっても死ぬわけだが」 彰利 「まるで選択肢をひとつミスると死ぬくせに、     選択肢が無駄に多い長編ゲームみたいだ。     そういやもうセガサターンも見なくなったなぁ」 ぼやきを聞きつつもシャツを装着。 髪も乾いたことだし……どうするか。 鷹志 「セガサターンの名作と言えばなんだろな」 彰利 「リアルサウンド」 鷹志 「それは迷作な」 凍弥 「訊かれて第一声がそれとは……弦月貴様……通だな?」 鷹志 「どういう基準に基づいてるんだよ」 中井出「セガサターンの名作といえばこれしかない。ガーディアンヒーローズだ」 総員 『あぁ〜〜あぁ〜〜あぁ〜〜〜っ!!!』 ゲームをやったことがありそうなヤツ全員が声とともに何度も頷く。 もちろん俺もガーディアンヒーローズなら知っている。 あれは隠れた名作中の名作だ。 雪音 「やはぁ〜……あれはいいものだったよー」 遥一郎「知ってるのか?」 雪音 「ゲーム好きな人なら大体知ってるよぅ。ホギッちゃんってば勉強不足」 遥一郎「お前にだけは言われたくない」 悠介 「じゃ……穂岸。ゲームを知らん者は知らん者同志、別のことで話し合うか」 遥一郎「そだな」 澄音 「僕も混ざっていいかな」 由未絵「えと、わたしも」 仁美 「わたしもいいかな」 真穂 「ごめん、わたしも」 夜華 「げいむとやらはわたしは苦手だ……」 みさお「もちろんわたしもこちら側に」 ゼット「身になる話の方がいいに決まっている」 俊也 「俺もゲームが出来るほど金があったわけじゃないし」 佐知子「わたしたちの村にゲームなんて無かったから」 夏純 「♪」 聖  「あなたは嫌いですけど、ゲームを知らないのは確かですから」 悠介 「嫌いでも混ざるなとは言わないから気にするな」 ルナ 「こっちはどんな話をしよっか、悠介」 悠介 「適当な世話話でいいだろ。ゼット、なにかあるか?」 ゼット「……何故俺に訊く」 悠介 「意外性。それだけ」 ゼット「………」 特に無いらしい。 もちろん俺もだ。 そもそも話題があれば自分から振ってるだろうし。 さて困ったな……どうしたもんか。 遥一郎「ふむ……じゃあ楽しかった思い出でも話すか?」 悠介 「楽しかった───思い出?」 遥一郎「ああ。不幸自慢したってしょうがないだろ?だから思い出話だ。     じゃあ時計回りってことで、出だしは晦から」 悠介 「───……」 遥一郎「晦?」 みさお「父さま?」 悠介 「そう……だな。楽しかった思い出……うん。     ……父さんと遊んだ時代。それが……ただ訳も無く楽しかった」 遥一郎「へぇ……」 みさお「父さまの父上───というとどなたですか?実父殿ですか?」 悠介 「ああ。名前も思い出せないけど……うん、酷く楽しかったのだけは覚えてる」 俊也 「それから?」 悠介 「いや……それだけだ」 遥一郎「……それだけ?」 悠介 「ああ、これだけだ。“楽しかった”って事実しか思い出せないんだ。     紙飛行機を飛ばした。竹とんぼを飛ばした。タンポポの種を飛ばした。     ……それだけだ。そのあとになにがあった、とか……そんなことも思い出せない」 それが悲しいと言えば悲しかった。 思い出したいのに思い出せないなんて、 人間ってやつはどうして都合よく出来てないんだろう。 遥一郎「そっか。あんまり問いただすのも悪いな。じゃあ次は───」 由未絵「あ、あれ?わたしだ……えっと」 悠介 「………」 そんな感じで会話は進んでいった。 不幸話なんてそれこそ無い。 ゼットもみさおも一緒に暮らしていた時のことを話し、穏やかに笑っていた。 そんな中で……俺だけが、思い出せない記憶に対して無力感を溜めていた。 【ケース143:弦月彰利/そして時は満ちて───】 最近───特に、親父さんの夢を見た辺りから、明らかに悠介はおかしくなったと思う。 by.今の僕の心のコメント。 いや〜ンァ、なんつーのかね、憂いが多いっつーのか。 とにかく影が差してる気がするね、うん。 せっかくオイラが話を振って、 ボーマンさんの真似やダイナマイトをやらせたというのに。 なんだろなー……なんか覇気が足りないんよ。 そりゃまあしっかりと感情が成長過程にあるって考えりゃあ納得はいくんだけどさ。 このまま悩むばっかの感情にならんことを切に願う。 ともなれば……オヤジさんのことが解決しない限りは無理だろね。 どういう人だったんかな……気になる。 ちょっと行ってみようか?過去に。 彰利 「よっしゃそれがE。そうと決まれば善は急げだー。悠介誘って過去の旅にGO!」 ええこれはもちろん後悔の旅じゃござんせんよ?本当の自分を知る旅です。 などと頷いた時でした。 ノート『イメージが纏まった。そろそろ第二次博光の野望オンラインを開始する』 彰利 「なんと!?」 体内時計を調べてみれば、確かに既にお昼を回っている時間!! あ、ちなみに俺の中の体内時計ってのは、俺が黒で吸収した腕時計のことです。 結構前に絡んできたヤクゥザがね?い〜〜ぃ時計つけてやがったのよ。 だから吸収して体内時計に変換。 俺が死なん限り、永久に動き続けますよ? というわけでお昼です。 ヒロラインが始まるとあっちゃあ親父さんのことは後回しにするしか……ねェぜ!? 彰利 「ヘーイスッピー!結局秘奥義とかってどうなったのよーーーぅ!!」 ノート『詳しいことはナビで調べろ。さて、汝ら準備はいいか?』 彰利 「ま、待て!そういえば風呂場に設置してきた録音テープに入ってると思われる、     悠介のイエ〜スの声を聞いてなかった!!」 悠介 「そんなろくでもねぇことで待ったかけるなダァホ!!」 彰利 「駄アホ!?」 中井出「こいつらはほうっておくとして!     なにか新しいアイテムとかって増えたのかー!?」 ノート『無論だ』 彰利 「なんと!?するってぇと用途不明なアイテムももっさりと!?     正当な商品から錬金術に使うような珍品奇品までなんでもござれ!?」 中井出「取り出だしましたるは世にも恐ろしい珍品奇品!     インド産のガマの油だーーっ!!」 彰利 「ギャアーーーーッ!!」《ドロドロ……》 中井出「まだ何もやっとらん!!つーか普通に溶けるな気持ち悪い!!」 ノート『絶好調なところ悪いが、そんなアイテムは無い』 あっさり切り落とされました。 否!僕らの夢は終わらねぇ!! 彰利    「では新モンスターは!?もちろんおるよね!?」 中井出   「うむ!世界は広い!強豪なんぞいくらでも居る!!        “胃の中のオカズ、大腸を知らず”だな!!」 鷹志    「井の中の蛙、大海を知らず……な」 彰利&中井出『黙れ小童!!』 鷹志    「こわっぱ!?」 彰利    「貴様の今の発言は丼の中の蛙に───」 中井出   「“井”な?“丼”じゃなくて」 彰利    「……し、知ってるやい!わざとだよ!?もちろんわざとさコノヤロー!!        ともかく!今の発言は淡水生物に海水に浸って死ねと言ってるようなもの!        それじゃあお前アレだ!アンデッドモンスターに        “てめぇ生かして帰さねぇ!”とか言ってるのと同じですよ!?        かなり違うけど!!やべぇ!自分で言ってて訳解んねぇ!!」 ともかく僕らのステキは終わりません。 浪漫倶楽部ってなんで終わっちまったんだろね。 ちなみに蛙が海水に浸って、というのは浪漫倶楽部であった物語だった筈。 悠介 「すまんノート……こいつら妙にハイになってるんだ……。     出来ればすぐにでもヒロラインを開いてくれ……」 ノート『そうか。では始めよう。汝らの子供たちはのちほど呼び出して送るとしよう。     こちらのことはこちらに任せておけばいい』 彰利 「あ!こ、これ!まだ訊きたいことは山ほど───」 そこまで言ったのが限界でした。 庭の景色が瞬時に悠介の自室に移ったかと思うと、 意識はあっさりとヒロラインへと飛翔したのでした……。      Next Menu back